(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132725
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】センサホルダおよび車輪用軸受装置
(51)【国際特許分類】
G01P 1/02 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01P1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043617
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須間 洋斗
(57)【要約】
【課題】センサ支持部内に浸入した異物を排出し易く、センサ支持部の底部に確実に樹脂を充填することができるセンサホルダおよび車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】センサホルダ12は、キャップ部121と、回転速度センサ13を支持するセンサ支持部122と、回転速度センサ13をキャップ部121に固定するためのナット124を保持するナット保持部123とを備え、センサ支持部122とナット保持部123とは互いに分離した状態で形成され、センサ支持部122は、隙間を有して配置される第1部122aと第2部122bとを有し、第1部122aは第1部122aに接続される第1補強部125を有し、第2部122bは第2部122bに接続される第2補強部126を有し、第1補強部125および第2補強部126の少なくとも一方には、キャップ部121から軸方向一端側へ突出するゲート部127が接続される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ部と、
前記キャップ部から軸方向一端側へ突出し、エンコーダの変位を検出するセンサを支持するセンサ支持部と、
前記キャップ部から軸方向一端側へ突出し、前記センサを前記キャップ部に固定するためのナットを保持するナット保持部と、
を備え、
前記センサ支持部と前記ナット保持部とは互いに分離した状態で形成され、
前記センサ支持部は、互いに隙間を有した状態で対向して配置される第1部と第2部とを有し、
前記第1部は、前記キャップ部から軸方向一端側へ突出し、前記第1部の基端部に接続される第1補強部を有し、
前記第2部は、前記キャップ部から軸方向一端側へ突出し、前記第2部の基端部に接続される第2補強部を有し、
前記第1補強部および前記第2補強部の少なくとも一方には、前記キャップ部から軸方向一端側へ突出し、前記センサホルダを金型を用いて成形する際に金型内に樹脂を充填するための入り口となる箇所に形成された部分であるゲート部が接続されるセンサホルダ。
【請求項2】
前記第1補強部の前記キャップ部から軸方向一端側への突出量は、前記第1部の前記キャップ部から軸方向一端側への突出量よりも小さく、
前記第2補強部の前記キャップ部から軸方向一端側への突出量は、前記第2部の前記キャップ部から軸方向一端側への突出量よりも小さい請求項1に記載のセンサホルダ。
【請求項3】
内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、
外周に軸方向に延びる小径段部を有したハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、前記複列の外側軌道面に対向する複列の内側軌道面を有する内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
前記内方部材の軸方向一端部に支持されるエンコーダと、
前記外方部材の軸方向一端部に嵌装される請求項1または請求項2に記載の前記センサホルダと、
を備える車輪用軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサホルダおよび車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の懸架装置において車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。車輪用軸受装置においては、アンチロックブレーキシステム(ABS)を制御するために車輪の回転速度を検出する回転速度センサが付加されたものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される車輪用軸受装置においては、回転速度を検出するための回転速度センサが付加されており、回転速度センサを支持するセンサホルダが外方部材の軸方向一端部に嵌装されている。
【0004】
センサホルダは、外方部材の軸方向一端側に嵌装されるキャップ部と、キャップ部から軸方向の一端側へ突出し、回転速度センサを支持するセンサ支持部と、キャップ部から軸方向の一端側へ突出し、センサをキャップ部に固定するためのナットを保持するナット保持部とを備えている。回転速度センサは、回転速度センサをセンサ支持部に嵌装した状態で取付フランジ部をボルトによりナットに締結することで、キャップ部に固定されている。
【0005】
センサ支持部は筒状に形成されており、底部が樹脂で密封されている。センサ支持部の内周面には、軸方向に延びセンサ支持部の先端側に開口する溝が形成されており、溝部においてはセンサとセンサ支持部との間に隙間が存在している。従って、回転速度センサが嵌装されたセンサ支持部内に泥水等の異物が浸入した場合、浸入した異物は溝に沿って外部へ排出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、センサ支持部の底部は閉塞していて、溝部は先端側が開放されているのみであるため、センサ支持部に泥水が浸入した場合には、水分は排出できたとしても、泥は排出されずに堆積するおそれがある。
【0008】
また、センサ支持部の底部は、車輪用軸受装置の内方部材に設けられたエンコーダとのギャップが大きくなりすぎないように薄く成形する必要があるが、センサホルダを樹脂により一体成形した場合には、肉薄に形成される底部に樹脂が回り込みにくかった。
【0009】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、センサ支持部内に浸入した異物を排出し易く、センサ支持部の底部に確実に樹脂を充填することができるセンサホルダおよび車輪用軸受装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、センサホルダは、キャップ部と、前記キャップ部から軸方向一端側へ突出し、エンコーダの変位を検出するセンサを支持するセンサ支持部と、前記キャップ部から軸方向一端側へ突出し、前記センサを前記キャップ部に固定するためのナットを保持するナット保持部と、を備え、前記センサ支持部と前記ナット保持部とは互いに分離した状態で形成され、前記センサ支持部は、互いに隙間を有した状態で対向して配置される第1部と第2部とを有し、前記第1部は、前記キャップ部から軸方向一端側へ突出し、前記第1部の基端部に接続される第1補強部を有し、前記第2部は、前記キャップ部から軸方向一端側へ突出し、前記第2部の基端部に接続される第2補強部を有し、前記第1補強部および前記第2補強部の少なくとも一方には、前記キャップ部から軸方向一端側へ突出し、前記センサホルダを金型を用いて成形する際に金型内に樹脂を充填するための入り口となる箇所に形成された部分であるゲート部が接続される。
【0011】
また、車輪用軸受装置は、内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、外周に軸方向に延びる小径段部を有したハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、前記複列の外側軌道面に対向する複列の内側軌道面を有する内方部材と、前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記内方部材の軸方向一端部に支持されるエンコーダと、前記外方部材の軸方向一端部に嵌装される請求項1または請求項2に記載の前記センサホルダと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、センサ支持部内に浸入した異物を排出し易くなり、センサ支持部の底部に確実に樹脂を充填することができる
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】インナー側の軸方向から見たセンサホルダを示す図である。
【
図7】第2実施形態に係るセンサホルダをインナー側の軸方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0015】
[車輪用軸受装置]
図1に示す車輪用軸受装置1は、本発明に係るセンサホルダを備えた車輪用軸受装置の一実施形態であり、自動車等の車両の懸架装置において車輪を回転自在に支持するものである。
【0016】
車輪用軸受装置1は第3世代と称呼される構成を備えており、外方部材である外輪2と、内方部材であるハブ輪3および内輪4と、転動列である二列のインナー側ボール列5およびアウター側ボール列6と、磁気エンコーダ11と、センサホルダ12とを具備する。
【0017】
以下の説明において、軸方向とは車輪用軸受装置1の回転軸心Xに沿った方向を表す。また、インナー側とは、軸方向における一端側であって車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車体側を表し、アウター側とは、軸方向における他端側であって車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車輪側を表す。
【0018】
外輪2のインナー側端部には、センサホルダ12が嵌合可能なインナー側開口部2aが形成されている。外輪2のアウター側端部には、アウター側シール部材9が嵌合可能なアウター側開口部2bが形成されている。
【0019】
外輪2とハブ輪3とによって形成された環状空間Sの軸方向一端側の開口となるインナー側開口部2aにセンサホルダ12を嵌合するとともに、環状空間Sの軸方向他端側の開口となるアウター側開口部2bにアウター側シール部材9を嵌合することで、軸受内部となる環状空間Sを密封している。
【0020】
外輪2の内周面には、インナー側の外側軌道面2cと、アウター側の外側軌道面2dとが形成されている。外輪2の外周面には、外輪2を車体側部材に取り付けるための車体取り付けフランジ2eが一体的に形成されている。車体取り付けフランジ2eには、車体側部材と外輪2とを締結する締結部材(ここでは、ボルト)が挿入されるボルト孔2gが設けられている。外輪2は、ハブ輪3および内輪4の外径側に位置している。
【0021】
ハブ輪3のインナー側端部には、外周面にアウター側端部よりも縮径された小径段部3aが形成されている。ハブ輪3のアウター側端部には、車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジ3bが一体的に形成されている。車輪取り付けフランジ3bには、複数のボルト孔3fが形成されている。ボルト孔3fには、ハブ輪3と車輪又はブレーキ部品とを締結するためのハブボルト3eが圧入されている。
【0022】
ハブ輪3の外周面には、外輪2のアウター側の外側軌道面2dに対向するようにアウター側の内側軌道面3cが設けられている。つまり、内方部材のアウター側には、ハブ輪3によって内側軌道面3cが構成されている。ハブ輪3における車輪取り付けフランジ3bの基部側には、アウター側シール部材9のシールランド部3dが形成されている。
【0023】
ハブ輪3の小径段部3aには、内輪4が設けられている。内輪4は、圧入およびかしめ加工によりハブ輪3の小径段部3aに固定されている。内輪4は、転動列であるインナー側ボール列5およびアウター側ボール列6に予圧を付与している。内輪4は、インナー側端部にインナー側端面4bを有している。ハブ輪3のインナー側端部には、内輪4のインナー側端面4bにかしめられたかしめ部3hが形成されている。
【0024】
内輪4の外周面には、外輪2のインナー側の外側軌道面2cと対向するようにインナー側の内側軌道面4aが設けられている。つまり、内方部材のインナー側には、内輪4によって内側軌道面4aが構成されている。
【0025】
転動列であるインナー側ボール列5とアウター側ボール列6とは、転動体である複数のボール7が保持器8によって保持されることにより構成されている。インナー側ボール列5は、内輪4の内側軌道面4aと、外輪2のインナー側の外側軌道面2cとの間に転動自在に挟まれている。アウター側ボール列6は、ハブ輪3の内側軌道面3cと、外輪2のアウター側の外側軌道面2dとの間に転動自在に挟まれている。
【0026】
つまり、インナー側ボール列5とアウター側ボール列6とは、外方部材と内方部材との両軌道面間に転動自在に収容されている。外輪2は、インナー側ボール列5およびアウター側ボール列6を介してハブ輪3および内輪4を回転可能に支持している。
【0027】
車輪用軸受装置1においては、外輪2と、ハブ輪3および内輪4と、インナー側ボール列5と、アウター側ボール列6とによって複列アンギュラ玉軸受が構成されている。なお、車輪用軸受装置1は複列アンギュラ玉軸受に替えて複列円錐ころ軸受を構成していてもよい。
【0028】
内輪4の軸方向一端部であるインナー側端部には、支持環10が嵌合されている。支持環10は、内輪4の外径に圧入される円筒部10aと、この円筒部10aのインナー側端部から外径側および内径側に延びる立板部10bとを備え、立板部10bのインナー側の側面に磁気エンコーダ11が加硫接着によって一体的に接合されている。磁気エンコーダ11は、合成ゴムにフェライト等の磁性体粉が混入され、周方向に交互に等ピッチで磁極Nと磁極Sとが着磁されている。磁気エンコーダ11は、エンコーダの一例である。
【0029】
外輪2の軸方向一端側の開口となるインナー側開口部2aには、インナー側開口部2aを塞ぐようにセンサホルダ12が嵌装されている。センサホルダ12は、内輪4の軸方向一端側に位置している。センサホルダ12の磁気エンコーダ11と対向する位置には、回転速度センサ13が取り付けられている。なお、軸方向一端側は、軸方向におけるインナー側端部へ向かう側である。
【0030】
回転速度センサ13と磁気エンコーダ11とは、軸方向において、センサホルダ12を介して所定のエアギャップ(軸方向すきま)を有した状態で対向配置されている。そして、回転速度センサ13により磁気エンコーダ11の変位を検出することで、内輪4の回転速度を検出することが可能となっている。回転速度センサ13は、エンコーダの変位を検出するセンサの一例である。
【0031】
[センサホルダ]
センサホルダ12は、インナー側端部にエンコーダ11を支持した内輪4のインナー側に位置し、内輪4を回転可能に支持する外輪2のインナー側端部に嵌装されるセンサホルダであり、例えば合成樹脂を射出成形した樹脂部材により形成されている。
【0032】
図2~
図5に示すように、センサホルダ12は、キャップ部121と、センサ支持部122と、ナット保持部123と、ナット124とを備えている。
【0033】
キャップ部121は、外輪2のインナー側開口部2aに圧入される円筒状の嵌合部121aと、嵌合部121aから径方向内側に延びてインナー側開口部2aを塞ぐ底面部121bとを有しており、外輪2にインナー側開口部2aを塞ぐように嵌装されている。キャップ部121の底面部121bは、軸方向と直交する面であり、軸方向におけるインナー側に面している。
【0034】
センサ支持部122は、キャップ部121の底面部121bから軸方向一端側へ突出しており、回転速度センサ13を支持している。センサ支持部122は、底面部121bにおける磁気エンコーダ11と対向する位置に配置されている。本実施形態においては、車輪用軸受装置1に嵌装されたセンサホルダ12のセンサ支持部122は、底面部121bにおける上端部に位置している。
【0035】
センサ支持部122は、軸方向から見て円弧形状に形成される第1部122aと第2部122bとを有している。第1部122aと第2部122bとは互いに隙間を有した状態で対向して配置されており、センサ支持部122は、全体として上端部と下端部とにギャップG(
図2参照)を有した略円筒状に形成されている。
【0036】
センサ支持部122には、軸方向の一端側から回転速度センサ13が挿入される。センサ支持部122に回転速度センサ13が挿入された状態において、センサ支持部122の内部に泥水等の異物が浸入した場合でも、ギャップGから外部に排出することが可能となっている。この場合、ギャップGからは泥水の水分のみならず、泥をも容易に排出することが可能である。
【0037】
第1部122aは、キャップ部121から軸方向一端側へ突出し、第1部122aの底面部121b側の端部となる基端部に接続される第1補強部125を有している。第1補強部125は、第1部122aおよび底面部121bと一体的に形成されている。第1補強部125を形成することで、センサ支持部122における第1部122aの剛性を向上している。
【0038】
図4に示すように、第1補強部125のキャップ部121における底面部121bから軸方向一端側への突出量はH1であり、第1部122aのキャップ部121における底面部121bから軸方向一端側への突出量はH2である。第1補強部125の突出量H1は、第1部122aの突出量H2よりも小さく形成されている(H1<H2)。つまり、第1補強部125は、第1部122aの剛性を向上するのに必要な量だけ突出して形成されている。
【0039】
このように、第1補強部125の突出量H1を第1部122aの突出量H2よりも小さく形成することで、第1部122aの剛性を向上しつつ、センサホルダ12を形成する樹脂の量を抑えることが可能となっている。
【0040】
第2部122bは、キャップ部121から軸方向一端側へ突出し、第2部122bの底面部121b側の端部となる基端部に接続される第2補強部126を有している。第2補強部126は、第2部122bおよび底面部121bと一体的に形成されている。第2補強部126を形成することで、センサ支持部122における第2部122bの剛性を向上している。
【0041】
図5に示すように、第2補強部126のキャップ部121における底面部121bから軸方向一端側への突出量はH3であり、第2部122bのキャップ部121における底面部121bから軸方向一端側への突出量はH4である。第2補強部126の突出量H3は、第2部122bの突出量H4よりも小さく形成されている(H3<H4)。つまり、第2補強部126は、第2部122bの剛性を向上するのに必要な量だけ突出して形成されている。
【0042】
このように、第2補強部126の突出量H3を第2部122bの突出量H4よりも小さく形成することで、第2部122bの剛性を向上しつつ、センサホルダ12を形成する樹脂の量を抑えることが可能となっている。
【0043】
センサ支持部122の軸方向における底面部121b側の端部には、センサ支持部122の底部となる底面122dが形成されており、センサ支持部122は軸方向において非貫通となっている。つまり、底面部121bにおけるセンサ支持部122が形成されている部分は、底面122dを構成している。従って、センサ支持部122に挿入された回転速度センサ13は、底面122dを介して磁気エンコーダ11と対向することになる。底面122dは、他の底面部121bに比べて薄肉に形成されている。
【0044】
ナット保持部123は、キャップ部121の底面部121bから軸方向一端側へ突出している。ナット保持部123は、センサ支持部122とは互いに分離した状態で不連続に形成されており、底面部121bにおいてセンサ支持部122よりも内径側に位置している。つまり、ナット保持部123は、センサ支持部122よりも回転軸心Xの近くに位置している。
【0045】
本実施形態においては、回転軸心Xから外径側へ延び、回転軸心Xとセンサ支持部122の中心Pとを結ぶ直線L上に、ナット保持部123の中心Qが位置している。つまり、回転軸心Xと中心Qと中心Pとが、同じ直線L上に並んでいる。但し、ナット保持部123の中心Qは、直線Lからずれた位置にあってもよい。
【0046】
ナット保持部123とセンサ支持部122とを分離した状態で形成することで、センサ支持部122とナット保持部123とを接続するための樹脂部材の肉厚が大きくなる部分を設ける必要がない。これにより、センサ支持部122およびナット保持部123を、円筒形状の肉厚が周方向において均等となるように形成することが容易となる。
【0047】
また、センサ支持部122およびナット保持部123を、肉厚の大きくなる部分が存在しないように形成することで、センサホルダ12の成形時における樹脂のヒケや反りによる変形を抑制することができる。さらに、センサ支持部122とナット保持部123との間の肉厚が大きくなる部分の肉抜きを行う必要がないため、センサホルダ12を成形するための金型の形状を簡素化することができる。
【0048】
ナット保持部123は円筒状に形成されており、ナット保持部123の内部にはナット124が保持されている。ナット124は、センサホルダ12を成形する際にインサート成形等によってセンサホルダ12と一体的に成形することができる。また、ナット124は、センサホルダ12の成形後にナット保持部123に圧入により嵌装することもできる。さらに、ナット124は、ナット保持部123に嵌装した後に接着することで、ナット保持部123に固定することもできる。
【0049】
回転速度センサ13には、取付フランジ部14が固定されている。取付フランジ部14は、径方向において回転速度センサ13からナット保持部123側へ向けて延出しており、ナット保持部123に保持されるナット124と対向する位置に、軸方向に貫通する固定用孔14dを有している。
【0050】
回転速度センサ13をセンサ支持部122に嵌装した状態で、取付フランジ部14の固定用孔14dにボルト15を挿入し、取付フランジ部14をボルト15によりナット124に締結することで、回転速度センサ13がセンサホルダ12に固定されている。つまり、ナット124は、回転速度センサ13をキャップ部121に固定するためのものである。
【0051】
図2、
図3に示すように、センサホルダ12はゲート部127を有している。ゲート部127は、キャップ部121から軸方向一端側へ突出している。ゲート部127は、センサホルダ12を金型を用いて成形する際に、金型内に樹脂を充填するための入り口となる箇所に形成された部分である。
【0052】
ゲート部127は、第1補強部125および底面部121bと一体的に形成されている。ゲート部127は、第1補強部125と接続されている。
図6に示すように、ゲート部127は、第1補強部125を介してセンサ支持部122の第1部122aと接続されており、ゲート部127によりセンサ支持部122の剛性を向上することが可能である。
【0053】
また、
図2に示すように、ゲート部127は、径方向においてセンサ支持部122とナット保持部123との間に位置している。本実施形態においては、ゲート部127は、径方向においてセンサ支持部122の中心Pとナット保持部123中心Qとの中間位置に配置されている。
【0054】
また、ゲート部127は、第1補強部125を介してセンサ支持部122と接続されており、センサ支持部122の底面122dの近くに位置しているため、センサホルダ12を成形するための金型内に樹脂を充填する際に、金型の樹脂の入り口となるゲート部127が形成される部分から、センサ支持部122の底面122dを形成する部分までの距離が近くなる。
【0055】
これにより、金型におけるゲート部127が形成される部分から底面122dが形成される部分までの樹脂の流動性を向上することができ、薄肉部である底面122dを形成する部分へ確実に樹脂を充填することが可能となって、センサホルダ12の製造を容易とすることができる。また、センサホルダ12の底面122dに確実に樹脂が充填されることとなり、センサホルダ12のキャップ部121によって、車輪用軸受装置1の内部と外部とを確実に区画することができる。
【0056】
なお、本実施形態においては、ゲート部127は第1補強部125に接続されており、第1補強部125および底面部121bと一体的に形成されているが、ゲート部127を第2補強部126および底面部121bと一体的に形成して、ゲート部127が第2補強部126に接続されるように構成することもできる。つまり、ゲート部127は、第2補強部126を介してセンサ支持部122の第2部122bと接続されるように形成することもできる。
【0057】
この場合においても、ゲート部127によりセンサ支持部122の剛性を向上することが可能である。また、金型の底面122dを形成する部分へ確実に樹脂を充填することが可能である。
【0058】
[センサホルダの第2実施形態]
センサホルダ12は、
図7に示すセンサホルダ12Aのように構成することもできる。センサホルダ12Aは、金型内に樹脂を充填するための入り口となる箇所に形成された部分であるゲート部として、ゲート部127およびゲート部128を有している点で、ゲート部127のみを有しているセンサホルダ12と異なっている。センサホルダ12Aのその他の構成は、センサホルダ12と同様である。
【0059】
ゲート部128は、キャップ部121から軸方向一端側へ突出している。ゲート部127は、センサホルダ12を金型を用いて成形する際に、金型内に樹脂を充填するための入り口となる箇所に形成された部分である。
【0060】
ゲート部128は、第2補強部126および底面部121bと一体的に形成されている。ゲート部128は、第2補強部126と接続されている。ゲート部128は、第2補強部126を介してセンサ支持部122の第2部122bと接続されており、ゲート部128によりセンサ支持部122の剛性を向上することが可能である。
【0061】
また、ゲート部128は、径方向においてセンサ支持部122とナット保持部123との間に位置している。本実施形態においては、ゲート部128は、径方向においてセンサ支持部122の中心Pとナット保持部123中心Qとの中間位置に配置されている。
【0062】
また、ゲート部128は、第2補強部126を介してセンサ支持部122と接続されており、センサ支持部122の底面122dの近くに位置しているため、センサホルダ12Aを成形するための金型内に樹脂を充填する際に、金型の樹脂の入り口となるゲート部128が形成される部分から、センサ支持部122の底面122dを形成する部分までの距離が近くなる。
【0063】
これにより、金型におけるゲート部128が形成される部分から底面122dが形成される部分までの樹脂の流動性を向上することができ、薄肉部である底面122dを形成する部分へ確実に樹脂を充填することが可能となって、センサホルダ12Aの製造を容易とすることができる。また、センサホルダ12Aの底面122dに確実に樹脂が充填されることとなり、センサホルダ12Aのキャップ部121によって、車輪用軸受装置1の内部と外部とを確実に区画することができる。
【0064】
特に、センサホルダ12Aにおいては、第1補強部125および第2補強部126の両方にゲート部127、128が接続されているため、金型の底面122dを形成する部分へ、より確実に樹脂を充填することが可能である。
【0065】
また、本実施形態における車輪用軸受装置1は、ハブ輪3の外周に内側軌道面3cが直接形成されている第3世代構造の車輪用軸受装置1として構成されているがこれに限定するものではなく、ハブ輪3に一対の内輪4が圧入固定された第2世代構造であってもよい。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0067】
1 車輪用軸受装置
2 外輪
2c (インナー側の)外側軌道面
2d (アウター側の)外側軌道面
3 ハブ輪
3a 小径段部
3c (ハブ輪の)内側軌道面
4 内輪
4a (内輪の)内側軌道面
5 インナー側ボール列
6 アウター側ボール列
13 回転速度センサ
11 磁気エンコーダ
12、12A センサホルダ
121 キャップ部
122 センサ支持部
122a 第1部
122b 第2部
123 ナット保持部
124 ナット
125 第1補強部
126 第2補強部
127、128 ゲート部
H1 (第1補強部の)突出量
H2 (第1部の)突出量
H3 (第2補強部の)突出量
H4 (第2部の)突出量
X 回転軸心