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特開2024-132729噴流はんだ装置の予熱機構及び噴流はんだ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132729
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】噴流はんだ装置の予熱機構及び噴流はんだ装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20240920BHJP
   B23K 1/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H05K3/34 507D
B23K1/08 320Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043624
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】392002929
【氏名又は名称】株式会社弘輝テック
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】坂田 浩二
【テーマコード(参考)】
4E080
5E319
【Fターム(参考)】
4E080AA01
4E080AB03
4E080AB05
4E080CA20
5E319AA02
5E319AB01
5E319AC11
5E319CC24
5E319CC47
5E319GG03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板のスルーホール上部まではんだが留まることなく孔上部に達することができる噴流はんだ装置の予熱機構及び噴流はんだ装置を提供する。
【解決手段】溶融はんだ1を噴流ノズル40から汲み上げてプリント配線基板10のはんだ付け箇所を部分的にはんだ付けするはんだ付け装置に付随して、はんだ付け箇所及びその周辺を予熱する噴流はんだ装置の予熱機構50において、少なくとも、1又は複数の電磁コイル51と、該電磁コイル51を噴流ノズル40の周辺に設置するための載置部52と、該電磁コイル51に交流電流を流すとともにそのON/OFF制御を行う交流電源及び制御部53を備え、電磁誘導加熱によりプリント配線基板10のはんだ付け箇所及びその周辺を予熱できる位置に載置部52が配置され、交流電源及び制御部53により加熱のタイミングと加熱時間及び1又は複数の電磁コイルへの印加電力が制御される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融はんだを噴流ノズルから汲み上げてプリント配線基板のはんだ付け箇所を部分的にはんだ付けするはんだ付け装置に付随して、前記プリント配線基板のはんだ付け箇所及びその周辺を予熱する噴流はんだ装置の予熱機構であって、
少なくとも、
1又は複数の電磁コイルと、
前記1又は複数の電磁コイルを前記噴流ノズルの周辺に設置するための載置部と、
前記1又は複数の電磁コイルに交流電流を流すとともにそのON/OFF制御を行う交流電源及び制御部
を備え、
前記1又は複数の電磁コイルを用いた電磁誘導加熱により前記プリント配線基板のはんだ付け箇所及びその周辺を予熱できる位置に前記載置部が配置され、前記交流電源及び制御部により加熱のタイミングと加熱時間及び前記1又は複数の電磁コイルへの印加電力が制御されることを特徴とする噴流はんだ装置の予熱機構。
【請求項2】
前記1又は複数の電磁コイルにはソフトフェライト系のコアが付与されていることを特徴とする請求項1に記載の噴流はんだ装置の予熱機構。
【請求項3】
当該予熱機構は、さらに、前記プリント配線基板に対して加熱ガスを供給する加熱ガス供給機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の噴流はんだ装置の予熱機構。
【請求項4】
前記ソフトフェライト系のコアはキュリー温度が200℃以上であることを特徴とする請求項2に記載の噴流はんだ装置の予熱機構。
【請求項5】
前記ソフトフェライト系のコアは、前記噴流ノズルを囲うように円筒状に形成され、前記電磁コイルは、該円筒状のコアの高さ方向に沿って巻き付けられていることを特徴とする請求項4に記載の噴流はんだ装置の予熱機構。
【請求項6】
前記ソフトフェライト系のコアは、U字型であり、該U字型のコアを前記噴流ノズルの周囲に1又は複数箇所に設置していることを特徴とする請求項4に記載の噴流はんだ装置の予熱機構。
【請求項7】
前記ソフトフェライト系のコアに溝部が形成され、前記溝部に前記電磁コイルを埋めて巻かれていることを特徴とする請求項5に記載の噴流はんだ装置の予熱機構。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の予熱機構を備える噴流はんだ装置であって、
複数のはんだ付け箇所が点在するワークを支持するワーク支持手段と、
前記はんだ付け箇所に向けて溶融はんだを噴出させる噴流ノズルと、
前記噴流ノズルの周辺に設けられた予熱機構と、
自動はんだ付けの実行中には前記噴流ノズルから前記複数のはんだ付け箇所までの距離をそれぞれ接近させる一方で待機中には前記距離を遠ざけるアクセス手段
を備えることを特徴とする噴流はんだ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融はんだを噴流ノズルから汲み上げてプリント配線基板のはんだ付け箇所を部分的にはんだ付けするはんだ付け装置に付随して、プリント配線基板のはんだ付け箇所及びその周辺を予熱する噴流はんだ装置の予熱機構及び噴流はんだ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板のスルーホール(プレインホール)にリード部品を挿入し、はんだ付けする場合に、はんだ付け面(主に下面)から、溶融はんだを円筒形の噴流ノズルから噴出して行う局所はんだ付け装置がある。
【0003】
局所はんだ付け装置においては、局所はんだ付けのため、プリント配線板の一部しか加熱されず、周辺や部品面(基板上面)の温度上昇が少ない。これは、周辺部品への熱ストレスが少ない利点がある一方で、はんだ凝固によって、はんだの濡れ拡がりやスルーホール内上部への濡れ上がりが悪い欠点もある。
【0004】
上記対策として、はんだ付け面(主に下面)から、熱風(加熱空気、加熱窒素ガスなど)や輻射加熱(赤外線ヒータなど)で加熱を行う場合もあるが、はんだ付けしたいパターンや部品電極より、周辺の基板樹脂(基材)の温度上昇が速くなってしまう。
【0005】
局所加熱のため、はんだ付けしたいパターンや部品電極は、熱伝導が良く、周辺に放熱されやすく、また、大きな部品など熱容量の大きなパターンや電極は、加熱に時間を要する。
【0006】
例えば、特許文献1乃至3には、高周波誘導加熱ヘッドをはんだ付け箇所に配置してはんだ付けを行うことが記載されており、特許文献4には、電磁誘導加熱により半田接合対象部位を誘導加熱して半田接合することが記載されている。
【0007】
特許文献1乃至4に係る発明はいずれも噴流ノズルによる溶融はんだを供給するものではなく、電磁誘導加熱によりはんだを溶融してはんだ付けすることを目的としている。また、特許文献1乃至3に係る発明では、高周波誘導加熱ヘッドにより電極を挟む、もしくは、電極に近接させてはんだを溶融させているため、例えば、複数列並んだコネクタ端子の場合は、挟むことができず、はんだ溶融することができない場合が生じる。
【0008】
また、特許文献5には、電磁誘導加熱により電子部材を取外す装置が記載され、特許文献6乃至8には、2つの接合部材の間に介在させたはんだを電磁誘導加熱により溶融させることが記載されている。
【0009】
しかしながら、特許文献5乃至8に係る発明は、局所リフローや小さい部品に限定されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2022-059164号公報
【特許文献2】特開2021-190295号公報
【特許文献3】特開2022-122539号公報
【特許文献4】特開2017-163015号公報
【特許文献5】特許第7128994号公報
【特許文献6】国際公開2019/073581号公報
【特許文献7】特許第6915843号公報
【特許文献8】国際公開2018/051475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上記従来技術の実情に鑑み、基板のスルーホール上部まで効率的に加熱することができ、はんだが凝固して濡れ上がりが留まることなく孔上部に達することができる噴流はんだ装置の予熱機構及び噴流はんだ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、溶融はんだを噴流ノズルから汲み上げてプリント配線基板のはんだ付け箇所を部分的にはんだ付けするはんだ付け装置に付随して、プリント配線基板のはんだ付け箇所及びその周辺を予熱する噴流はんだ装置の予熱機構であって、少なくとも、1又は複数の電磁コイルと、1又は複数の電磁コイルを噴流ノズルの周辺に設置するための載置部と、1又は複数の電磁コイルに交流電流を流すとともにそのON/OFF制御を行う交流電源及び制御部を備え、1又は複数の電磁コイルを用いた電磁誘導加熱によりプリント配線基板のはんだ付け箇所及びその周辺を予熱できる位置に載置部が配置され、交流電源及び制御部により加熱のタイミングと加熱時間及び1又は複数の電磁コイルへの印加電力が制御される。
【0013】
このとき、本発明の一態様では、1又は複数の電磁コイルにはソフトフェライト系のコアが付与されているとしてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様では、予熱機構は、さらに、プリント配線基板に対して加熱ガスを供給する加熱ガス供給機構を備えていてもよい。
【0015】
また、本発明の一態様では、ソフトフェライト系のコアはキュリー温度が200℃以上であるとしてもよい。
【0016】
また、本発明の一態様では、ソフトフェライト系のコアは、噴流ノズルを囲うように円筒状に形成され、電磁コイルは、円筒状のコアの高さ方向に沿って巻き付けられているとしてもよい。
【0017】
また、本発明の一態様では、ソフトフェライト系のコアは、U字型であり、U字型のコアを噴流ノズルの周囲に1又は複数箇所に設置しているとしてもよい。
【0018】
また、本発明の一態様では、ソフトフェライト系のコアに溝部が形成され、溝部に電磁コイルを埋めて巻かれているとしてもよい。
【0019】
本発明の他の態様は、上述した予熱機構を備える噴流はんだ装置であって、複数のはんだ付け箇所が点在するワークを支持するワーク支持手段と、はんだ付け箇所に向けて溶融はんだを噴出させる噴流ノズルと、噴流ノズルの周辺に設けられた予熱機構と、自動はんだ付けの実行中には噴流ノズルから複数のはんだ付け箇所までの距離をそれぞれ接近させる一方で待機中には距離を遠ざけるアクセス手段を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、熱風や輻射加熱では、加熱しにくいもしくは、加熱が遅い金属部(パターンや電極)が電磁誘導加熱(IH:Induction Heating)により自己発熱するため、効率良く狙った箇所を加熱することができる。また、スルーホール上部も温度上昇させることができ、はんだが凝固し濡れ上がりが止まることなく、溶融はんだが孔上部に達しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る噴流はんだ装置の一態様を示す斜視図である。
図2】本発明に係る噴流はんだ装置の他の態様を示す斜視図である。
図3】(A)は、プリント配線基板に実装された電子部品を噴流ノズルによりはんだ付けする様子と、噴流ノズルの周囲に配置された本発明の一態様に係る予熱機構を示す断面図であり、(B)は、本発明の他の態様に係る予熱機構を示す断面図である。
図4】(A)は本発明の一態様に係る予熱機構に関するソフトフェライト系のコアを含む電磁コイルの設置の態様を示す図であり、(B)は、(A)の図から電磁コイルを外した状態を示した図である。
図5】本発明の他の態様に係る予熱機構に関するソフトフェライト系のコアを含む電磁コイルの設置の態様を示す図である。
図6】(A)は従来の噴流はんだによりスルーホールに部品リードをはんだ付けした際の部品面側から見た状態を示す図であり、(B)は本発明に係る予熱機構を適用した噴流はんだによりスルーホールに部品リードをはんだ付けした際の部品面側から見た状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る噴流はんだ装置の予熱機構及び噴流はんだ装置について図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能である。
【0023】
本発明の一態様は、溶融はんだを噴流ノズルから汲み上げてプリント配線基板のはんだ付け箇所を部分的にはんだ付けするはんだ付け装置に付随するものである。まず、本発明が適用される噴流ノズル型はんだ付け装置について説明し、その後、本発明に係る予熱機構の構成について説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る噴流はんだ装置の一態様を示す斜視図であり、電子部品が実装されたプリント配線基板をローラコンベアで所定位置まで搬送し、噴流ノズルによりはんだ付けする様子を示している。図1に示すように、本発明の一態様は、後述する予熱機構50を備える噴流はんだ装置100であって、複数のはんだ付け箇所が点在するワーク(プリント配線基板10)を支持するワーク支持手段20と、はんだ付け箇所30に向けて溶融はんだ1を噴出させる噴流ノズル40と、噴流ノズル40の周辺に設けられた予熱機構50と、自動はんだ付けの実行中には噴流ノズル40から複数のはんだ付け箇所30までの距離をそれぞれ接近させる一方で待機中には距離を遠ざけるアクセス手段60を備える。
【0025】
図1における噴流はんだ装置100では、ワーク支持手段20はワーク搬送手段としての役割も兼ねており、一例として、ローラコンベアであって、図1に示すように、ワーク(プリント配線基板10)の両側を挟むように縦型5軸のローラ21~25が連なって配設され、チェーン26掛けにより搬送方向27に統一されて回転することにより、搬送方向27(矢印)へワークを搬送する機能を発揮する。
【0026】
ワーク支持手段(ワーク搬送手段)20は、プリント配線基板10をはんだ付け工程の進捗に応じて搬送する。噴流はんだ装置100に投入されたプリント配線基板10は、ワーク支持手段20により、はんだ付け工程が実行される位置まで到達する。噴流ノズル40は、噴流はんだ装置100が稼動中であれば、常時溶融はんだ1を噴出させており、近付けられたプリント配線基板10のはんだ付けする箇所30に届くように溶融はんだ1を噴出させる。アクセス手段60(ノズル駆動部)は、噴流ノズル40をはんだ付け箇所30に近づけるようにXYZ方向へ移動させることが可能な駆動機構である。ワーク支持手段20(ワーク搬送手段)やアクセス手段60(ノズル駆動部)の駆動制御は、例えば、制御装置61により統合制御される。
【0027】
なお、本発明において、ワークは主にプリント配線基板10としているが、プリント配線基板10以外のワークであっても、はんだ付け箇所を予熱した方が良いようなワークであれば本発明に係る予熱機構を適用することが可能である。
【0028】
図2は、本発明に係る噴流はんだ装置の他の態様を示す斜視図である。図2に示すように、噴流はんだ装置200は、固定式のはんだ槽15と、そのはんだ槽15の上方に位置するテーブルX軸駆動部(「X軸駆動レール」ともいう)33Xと、テーブル支柱33YZと、そのテーブル支柱33YZの上でX方向に移動可能なワーク固定テーブル(以下、「テーブル」と略す)31を備えている。また、テーブル31にはワーク(プリント配線基板10)が着脱自在に固定されている。なお、図2における噴流はんだ装置200では、ワーク固定テーブル31がワーク支持手段に対応し、テーブルX軸駆動部33X(X軸駆動レール)およびテーブル支柱33YZがアクセス手段に対応している。
【0029】
噴流ノズル40は、はんだ付け箇所に向けて溶融はんだ1を噴出させる。アクセス手段33は、自動はんだ付けの実行中には噴流ノズル40から複数のはんだ付け箇所までの距離をそれぞれ接近させる一方で待機中には距離を遠ざける。アクセス手段33は、ワーク支持手段(ワーク固定テーブル31)によって支持されたワーク(プリント配線基板10)を噴流ノズル40に対してXYZ方向に移動可能である。
【0030】
図1に示す噴流はんだ装置100と図2に示す噴流はんだ装置200との主要な相違点は、噴流ノズルとはんだ付け箇所とのアクセス動作において、噴流はんだ装置100(図1)ではノズル側が動き、噴流はんだ装置200(図2)ではワーク側が動くという点である。本発明に係る噴流はんだ装置の予熱機構50は、このいずれの噴流はんだ装置100,200に対しても適用可能である。
【0031】
次に、本発明に係る噴流はんだ装置の予熱機構について説明する。図3(A)、(B)は、プリント配線基板に実装された電子部品を噴流ノズルによりはんだ付けする様子と、噴流ノズルの周囲に配置された本発明の一態様に係る予熱機構を示す断面図である。なお、図3(A)は、後述する図4(A)、(B)の態様を示した図であり、図3(B)は、後述する図5の態様を示した図である。本発明の一態様は、溶融はんだ1を噴流ノズル40から汲み上げてプリント配線基板10のはんだ付け箇所30を部分的にはんだ付けするはんだ付け装置に付随して、プリント配線基板10のはんだ付け箇所30及びその周辺を予熱する噴流はんだ装置の予熱機構50であって、少なくとも、1又は複数の電磁コイル51と、1又は複数の電磁コイル51を噴流ノズル40の周辺に設置するための載置部52と、1又は複数の電磁コイル51に交流電流を流すとともにそのON/OFF制御を行う交流電源及び制御部53を備え、1又は複数の電磁コイル51を用いた電磁誘導加熱によりプリント配線基板10のはんだ付け箇所30及びその周辺を予熱できる位置に載置部52が配置され、交流電源及び制御部53により加熱のタイミングと加熱時間及び1又は複数の電磁コイルへの印加電力が制御される。
【0032】
本発明に係る噴流はんだ装置100によりはんだ付け処理が施されるプリント配線基板10は、一例として、主面に所定の回路パターンやランド11等の導体部をプリント形成するとともに、多数個のスルーホール12を形成した基板13の主面上に、リード端子14をスルーホール12に貫通させて電子部品を組み付けて構成される。プリント配線基板10は、スルーホール12を貫通されたリード端子14及びランド11にはんだ付けを施して、電子部品を基板13に電気的かつ機械的に結合して実装する。
【0033】
例えば、図3(A)、(B)に示すように、電子部品のリード端子14が、プリント配線基板10の部品面(上面)からはんだ面(下面)へと貫通し、はんだ面に銅箔が露出したスルーホール12から、短く切り残された状態で突出している。一方で、噴流はんだ装置100においては、制御装置61がノズル駆動部60を制御し、噴流ノズル40をはんだ付け箇所30に接近させる。このように、噴流ノズル40が、はんだ1を噴出させながら、はんだ付け箇所30に接近すると、リード端子14はランド11にはんだ付けされる。
【0034】
本発明では、噴流ノズル40の周辺に1又は複数の電磁コイル51を配置する。電磁コイル51に交流電流を流すことで、磁力線F(交番磁界)を発生させ、この磁力線Fによりプリント配線基板10のスルーホール12部分のリード端子14及びランド11に渦電流が生じ、電気抵抗によって発熱する電磁誘導加熱(IH)を起こす。これにより、プリント配線基板10のスルーホール12を予熱しておくことができるため、噴流はんだ装置100の噴流ノズル40によりはんだ付けを行う際に、はんだがスルーホール12の途中で凝固してしまうことなく、スルーホール12内の下部から上部の全てに亘ってはんだを行き渡らせることが可能となる。
【0035】
載置部52は、1又は複数の電磁コイル51を噴流ノズル40の周辺に設置するために設けられる。噴流はんだ装置100では、はんだ実行時には、噴流ノズル40からはんだが供給され、余ったはんだは噴流ノズル40の外壁を伝って還流されるため、載置部52はこれらの噴流はんだの流れを妨げないように噴流ノズル40の周囲に設置される。また、1又は複数の電磁コイル51による電磁誘導加熱(IH)が効率的にプリント配線基板10のはんだ付け箇所30に生じる位置に調整することが望ましい。一例として、1又は複数の電磁コイル51は、噴流ノズル40の直径2~20mmに応じてノズル中心部から水平方向に10~40mmの位置に配置される。1又は複数の電磁コイル51は、余った噴流はんだの還流及び加熱ガスの経路を妨げない範囲で噴流ノズルに近い方が望ましい。載置部52は、噴流ノズル40に対して固定の位置に設置してもよいし、1又は複数の電磁コイル51の位置や角度が可動となるように設置してもよい。
【0036】
交流電源及び制御部53は、1又は複数の電磁コイル51に交流電流を流すとともにそのON/OFF制御を行う。これにより、はんだ付け箇所30を電磁誘導加熱するタイミングと加熱量を時間及び電磁コイルへ51への印加電力でコントロールすることができる。印加電力の制御は、例えば、印加電圧を切り替えた電力調整により行うことができる。電磁コイル51が複数ある場合には、個別の電磁コイルごとにON/OFF制御ができるようにしてもよい。また、本発明においては、溶融はんだ1を用いた噴流はんだ装置100の予熱機構50として用いるため、上述した先行技術文献(特許文献1乃至4)のように、必ずしもはんだ付け箇所30をはんだの融点以上に加熱する必要はない。したがって、本発明においては、予熱機構50による予熱温度をはんだの融点以下となるように設定してもよい。
【0037】
本発明の一態様では、1又は複数の電磁コイル51にはソフトフェライト系のコア54が付与されていることが好ましい。ソフトフェライトは、電磁コイルに電流が流れて磁界が発生すると磁石として作用し、電磁コイルに電流が流れなくなって磁界が消失すると元に戻って磁気が無くなるフェライトであり、酸化鉄を主原料とするセラミックスの一種である。ソフトフェライト系のコアを用いることにより、電磁コイルから発生する磁束を効率よくプリント配線基板10のはんだ付け箇所30に照射して電磁誘導加熱(IH)を起こすことができるとともに、交流電源及び制御部53のON/OFF制御に連動して電磁誘導加熱するタイミングと加熱量を制御することができる。
【0038】
本発明の一態様では、予熱機構50は、さらに、プリント配線基板10に対して加熱ガスHを供給する加熱ガス供給機構56を備えていてもよい。一例として、加熱した窒素ガスを下方から噴流ノズル40のノズル口周辺に向かって供給する機構を備える。このようにすることで、プリント配線基板10のはんだ付け箇所30を加熱することができるとともに、噴流ノズル40のノズル口の周囲を窒素ガス雰囲気として、溶融はんだ1の酸化を抑制することができる。
【0039】
本発明の一態様では、ソフトフェライト系のコア54はキュリー温度が200℃以上であることが好ましい。上述した加熱ガス供給機構56から供給される加熱ガスHにより、ソフトフェライト系のコア54も加熱されるため、磁力を失って電磁誘導加熱ができなくなるのを防止するため、キュリー温度が200℃以上の素材を用いることが好ましい。
【0040】
図4(A)は本発明の一態様に係る予熱機構に関するソフトフェライト系のコアを含む電磁コイルの設置の態様を示す図であり、図4(B)は、図4(A)の図から電磁コイルを外した状態を示した図である。本発明の一態様では、図4(A)に示すように、ソフトフェライト系のコア54は、噴流ノズル40を囲うように円筒状に形成され、電磁コイル51は、円筒状のコア54の高さ方向に沿って巻き付けられているようにすることができる。また、本発明の一態様では、図4(B)に示すように、ソフトフェライト系のコア54に溝部55が形成され、溝部55に電磁コイル51を埋めて巻かれている構造とすることができる。このようにすることで、ソフトフェライト系のコア54内に電磁コイル51を埋設させて、噴流はんだ装置100の作動中に電磁コイル51の位置がずれたりしないように固定することもできる。なお、ソフトフェライト系のコア54の溝部55に関しては、1本の溝に沿って電磁コイル51を巻く方法でもよいし、溝の壁に複数のスリットを入れて外側もしくは内側をそれぞれ戻す巻き方でも良い。図4(A)、(B)において、電磁コイル51はガラスチューブ内に銅線を有するものであるが、この態様に限定されるものではなく、素材、太さ、コイルの巻き数等は、予熱の程度や予熱箇所などに応じて適宜選択すればよい。
【0041】
図5は、本発明の他の態様に係る予熱機構に関するソフトフェライト系のコアを含む電磁コイルの設置の態様を示す図である。本発明の他の態様では、ソフトフェライト系のコア54は、U字型であり、U字型のコア54を噴流ノズル40の周囲に1又は複数箇所に設置するようにしてもよい。例えば、図3(B)では、噴流ノズル40を挟むように、電磁コイル51A,51B及びソフトフェライト系のコア54A,54Bが2箇所に設けられているが、噴流ノズル40の前後左右に4箇所設けてもよいし、それ以上設けてもよい。(なお、図3(A)でも、電磁コイル51及びソフトフェライト系のコア54は噴流ノズル40を挟むように左右に図示されてはいるが、図3(A)の態様では、ソフトフェライト系のコア54は円筒状であるため、左右の電磁コイル51及びソフトフェライト系のコア54は1つの円環状につながっている。)それぞれの電磁コイル51A,51Bは、個別に交流電源及び制御部53と接続すれば、各電磁コイル51A,51BごとにON/OFF制御を行うこともできる。なお、図5の態様においても、電磁コイル51の素材、太さ、コイルの巻き数等は、予熱の程度や予熱箇所などに応じて適宜選択すればよい。
【実施例0042】
以下に示す実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0043】
図6(A)は従来の噴流はんだによりスルーホールに部品リードをはんだ付けした際の部品面側から見た状態を示す図(比較例)であり、(B)は本発明に係る予熱機構を適用した噴流はんだによりスルーホールに部品リードをはんだ付けした際の部品面側から見た状態を示す図(実施例)である。
【0044】
図6(A)の比較例(従来例)においては、部品面側から見たスルーホール内に空隙が生じているのを見て取ることができ、スルーホール内の上部まではんだが上がりきっていないことが分かる。一方で、図6(B)の実施例(本発明)においては、部品面側から見たはんだがスルーホールの上部にまで充填されていることが見て取れる。
【0045】
以上のように、本発明によれば、基板のスルーホール上部まで効率的に加熱することができ、はんだが凝固して濡れ上がりが留まることなく孔上部に達することができる噴流はんだ装置の予熱機構が実現できていることを確認できた。
【0046】
なお、上記のように本発明の一実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0047】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、噴流はんだ装置の予熱機構及び噴流はんだ装置の構成も本発明の一実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 溶融はんだ、10 プリント配線基板、11 ランド、12 スルーホール、13 基板、14 リード端子、15 はんだ槽、20 ワーク支持手段、21~25 ローラ、26 チェーン、27 搬送方向、30 はんだ付け箇所、31 ワーク固定テーブル、33 アクセス手段、33X 軸駆動部、33YZ テーブル支柱、40 噴流ノズル、50 予熱機構、51,51A,51B 電磁コイル、52 載置部、53 交流電源及び制御部、54,54A,54B ソフトフェライト系のコア、55 溝部、56 加熱ガス供給機構、60 アクセス手段(ノズル駆動部)、61 制御装置、100,200 噴流はんだ装置、F 磁力線、H 加熱ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6