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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132733
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20240920BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
E02F9/22 E
E02F9/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043631
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 賢人
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003AB02
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB06
2D003DB08
2D003DC07
(57)【要約】
【課題】作動環境の変化や油圧構成要素の性能ばらつきおよび性能劣化を含む油圧駆動システムの稼働状態の変動に関わらず、操作入力に対する油圧駆動システムの制御対象要素の制御量の関係を一定に保つことが可能な制御ロバスト性の高い作業機械を提供する。
【解決手段】制御装置114は、制御対象要素113a~113eの目標制御量と油圧駆動システム902の稼働状態とを学習データとして記憶する学習データ記憶部114iと、学習データ記憶部114iに記憶された前記学習データをもとに、前記目標制御量に対する制御対象要素113a~113eの制御量を機械学習する学習部114kと、学習部114kにおける前記機械学習の学習結果を用いて、前記目標制御量に対する前記制御量の予測値である予測制御量を算出する予測部114lと、前記予測制御量が前記目標制御量に近づくように前記制御信号を補正する制御信号補正部114dとを有する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に取り付けられた作業装置と、
前記作業装置を駆動する油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータを駆動する油圧駆動システムと、
前記油圧アクチュエータの動作を指示する操作装置と、
前記操作装置の操作量に応じた前記油圧駆動システムへの制御信号を出力する制御装置とを備えた作業機械において、
前記制御装置は、
前記操作装置の操作量をもとに前記油圧駆動システムの制御対象要素の目標制御量を算出する目標制御量演算部と、
前記油圧駆動システムの稼働状態を検出する稼働状態検出部と、
前記目標制御量と前記稼働状態検出部の検出結果とを学習データとして記憶する学習データ記憶部と、
前記学習データ記憶部に記憶された前記学習データをもとに、前記目標制御量に対する前記制御対象要素の制御量を機械学習する学習部と、
前記学習部における前記機械学習の学習結果を用いて、前記目標制御量に対する前記制御量の予測値である予測制御量を算出する予測部と、
前記予測制御量が前記目標制御量に近づくように前記制御信号を補正する制御信号補正部とを有する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記稼働状態検出部は、
前記油圧駆動システムの動作状態を検出する動作状態検出部と、
前記油圧駆動システムの作動環境を検出する作動環境検出部と、
前記油圧駆動システムの劣化状態を検出する劣化状態検出部とを有する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械において、
前記車体、前記作業装置、または前記油圧アクチュエータの動作を検出する動作検出装置を備え、
前記動作状態検出部は、前記動作検出装置の検出結果をもとに前記油圧駆動システムの動作状態を検出する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項2に記載の作業機械において、
前記油圧駆動システム内を循環する作動油の圧力を検出する圧力センサを備え、
前記動作状態検出部は、前記圧力センサの検出結果をもとに前記油圧駆動システムの動作状態を検出する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項2に記載の作業機械において、
前記制御装置から前記油圧駆動システムへ出力される電気制御信号の電流または電圧を検出する電気信号検出装置を備え、
前記動作状態検出部は、前記電気信号検出装置の検出結果をもとに前記油圧駆動システムの動作状態を検出する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項2に記載の作業機械において、
前記油圧駆動システム内を循環する作動油または冷却水の温度、あるいは外気温を検出する温度センサを備え、
前記作動環境検出部は、前記温度センサの検出結果をもとに前記油圧駆動システムの作動環境を検出する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項2に記載の作業機械において、
前記劣化状態検出部は、前記目標制御量、前記動作状態検出部および前記作動環境検出部の検出結果をもとに前記油圧駆動システムの劣化状態を検出する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項8】
請求項2に記載の作業機械において、
前記油圧駆動システムの劣化に関わる情報である劣化関連情報を前記制御装置へ入力する劣化関連情報入力装置を備え、
前記劣化状態検出部は、前記目標制御量、前記動作状態検出部および前記作動環境検出部の検出結果、ならびに前記劣化関連情報をもとに前記油圧駆動システムの劣化状態を検出する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項9】
請求項1に記載の作業機械において、
前記制御対象要素の制御量を計測する制御量計測装置を備え、
前記制御装置は、前記制御信号補正部が前記制御信号を補正しない状態での前記制御量の計測値と前記予測制御量との乖離度合いである予測誤差が所定の許容誤差を超えているか否かを判定する予測精度評価部を備え、
前記学習部は、前記予測精度評価部により前記予測誤差が前記許容誤差を超えていると判定された場合に、前記機械学習を実行する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項10】
請求項9に記載の作業機械において、
前記機械学習の実行を指示する指示装置を備え、
前記予測精度評価部は、前記指示装置からの指示を受けて、前記予測誤差が所定の許容誤差を超えているか否かを判定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項11】
請求項1に記載の作業機械において、
油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータへ供給される圧油の流れを制御する制御弁とを備え、
前記制御対象要素は、前記制御弁の指令圧を生成する電磁弁であり、
前記目標制御量は、前記電磁弁の目標指令圧である
ことを特徴とする作業機械。
【請求項12】
請求項1に記載の作業機械において、
前記制御対象要素は、前記油圧アクチュエータであり、
前記目標制御量は、前記油圧アクチュエータの目標速度、目標角速度、または目標回転数である
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に油圧を動力とする作業機械の油圧システムは、複数の油圧ポンプと、複数の油圧アクチュエータと、当該複数の油圧ポンプから当該複数の油圧アクチュエータに供給する作動油を制御するための複数の流量制御弁とから構成されている。この油圧構成要素は機械的に直接制御されることが一般的である。例えば、操作レバーの動きが油圧バルブの動作に機械的に作用し、これにより生成される油圧指令によりポンプやバルブの油圧構成要素の動作量が決定される。また、近年は、油圧構成要素の機械的な制御の代わりに電気信号を用いて油圧構成要素を制御する電子制御油圧システムが開発された。
【0003】
電子制御油圧システムでは、入力指令を電流又は油圧構成要素の動作を駆動する信号に変換することができ、油圧構成要素の動作をコントローラによって制御することで様々な操作形態での操作や多様な機能の実装が容易である。その一方で、電子制御油圧システムでは、操作指示入力から油圧構成要素を駆動するまでの間に介在する構成要素が多く、また、それら構成要素が含む性能のばらつきや非線形特性によって生じる誤差の積み重ねにより、作業機械や油圧構成要素へ所望する動作と実際の動作との乖離が大きくなりやすいことが課題である。
【0004】
この課題を解決するための先行技術を開示する文献として、例えば特許文献1がある。特許文献1によれば、トレーニングデータセットに基づく機械学習システムを利用して、油圧構成要素の目標速度を指示する入力コマンドと機械状態データの組合せを、入力コマンドに応答して油圧構成要素の動きを引き起こす油圧バルブの予測変位にマッピングした予測変位マップを生成し、この予測変位マップを用いてバルブ電流を決定することにより、油圧構成要素を目標速度で動かすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2022―532740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の機械制御システムでは、特定の機械動作の実行中に測定したパラメータをもとにトレーニングデータが構築されるため、機械制御システムで発生し得る作動環境の変化などの外乱要素および油圧構成要素の性能ばらつきなどの内乱要素の全てをトレーニングデータセットで網羅することは非常に困難である。そのため、トレーニングデータセットで網羅しきれていない外乱要素や内乱要素の発生有無に応じて、操作入力に対する油圧駆動システムの制御対象要素の制御量が変動する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、作動環境の変化や油圧構成要素の性能ばらつきおよび性能劣化を含む油圧駆動システムの稼働状態の変動に関わらず、操作入力に対する油圧駆動システムの制御対象要素の制御量の関係を一定に保つことが可能な制御ロバスト性の高い作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、車体と、前記車体に取り付けられた作業装置と、前記作業装置を駆動する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータを駆動する油圧駆動システムと、前記油圧アクチュエータの動作を指示する操作装置と、前記操作装置の操作量に応じた前記油圧駆動システムへの制御信号を出力する制御装置とを備えた作業機械において、前記制御装置は、前記操作装置の操作量をもとに前記油圧駆動システムの制御対象要素の目標制御量を算出する目標制御量演算部と、前記油圧駆動システムの稼働状態を検出する稼働状態検出部と、前記目標制御量と前記稼働状態検出部の検出結果とを学習データとして記憶する学習データ記憶部と、前記学習データ記憶部に記憶された前記学習データをもとに、前記目標制御量に対する前記制御対象要素の制御量を機械学習する学習部と、前記学習部における前記機械学習の学習結果を用いて、前記目標制御量に対する前記制御量の予測値である予測制御量を算出する予測部と、前記予測制御量が前記目標制御量に近づくように前記制御信号を補正する制御信号補正部とを有するものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作動環境の変化や油圧構成要素の性能ばらつきおよび性能劣化を含む油圧駆動システムの稼働状態の変動に関わらず、操作入力に対する油圧駆動システムの制御対象要素の制御量の関係が一定に保たれるため、作業機械の制御ロバスト性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの側面図
図2A】本発明の第1の実施例における油圧駆動システムの回路図(1/2)
図2B】本発明の第1の実施例における油圧駆動システムの回路図(2/2)
図3】本発明の第1の実施例における電磁弁の動作特性を示す図
図4】本発明の第1の実施例におけるコントローラの機能ブロック図
図5】本発明の第1の実施例における電磁弁目標指令圧の補正方法を示す図
図6】本発明の第1の実施例におけるコントローラの学習処理に係る演算処理を示すフローチャート
図7】本発明の第1の実施例におけるコントローラの油圧駆動システムの制御に係る演算処理を示すフローチャート
図8】本発明の第2の実施例におけるコントローラの機能ブロック図
図9】本発明の第2の実施例におけるコントローラの学習処理に係る演算処理を示すフローチャート
図10】本発明の第2の実施例におけるコントローラの油圧駆動システムの制御に係る演算処理を示すフローチャート
図11】本発明の第3の実施例における油圧駆動システムの一部を示す回路図
図12】本発明の第3の実施例におけるコントローラの機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る作業機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。油圧ショベル901は、走行体201と、走行体201上に旋回可能に配置され、車体を構成する旋回体202と、旋回体202に上下方向に回動可能に取り付けられ、土砂の掘削作業等を行うフロント作業機203(作業装置)とを備えている。旋回体202は、油圧アクチュエータである旋回モータ211によって駆動される。
【0013】
作業装置203は、旋回体202に上下方向に回動可能に取り付けられたブーム204と、ブーム204の先端に上下方向に回動可能に取り付けられたアーム205と、アーム205の先端に上下方向に回動可能に取り付けられたバケット206と、ブーム204を駆動する油圧アクチュエータであるブームシリンダ204aと、アーム205を駆動する油圧アクチュエータであるアームシリンダ205aと、バケット206を駆動する油圧アクチュエータであるバケットシリンダ206aとを有する。作業装置203には、ブーム204、アーム205、およびバケット206の動作(姿勢や速度など)を検出する動作検出装置212,213,214が設置されている。旋回体202には、旋回体202の姿勢や回転速度を検出するための動作検出装置215,216が設置されている。動作検出装置212~216としては、慣性計測装置(IMU)、傾斜センサ、回転角センサ、ストロークセンサ、加速度センサなどの多様なセンサ用いることができる。
【0014】
旋回体202上の前側位置には運転室207が設けられており、後側位置には作業装置203との重量バランスを確保するためのカウンタウエイト209が取り付けられている。運転室207とカウンタウエイト209の間には、機械室208が設けられている。機械室208には、エンジン(図示せず)、油圧ポンプ1,2,3(図2Aに示す)、旋回モータ211、コントロールバルブ210等が収容されている。コントロールバルブ210は、油圧ポンプから各油圧アクチュエータへの作動油の流れを制御する。
【0015】
本実施形態に係る油圧ショベル901には、以下の各実施例で説明する油圧駆動システムが搭載される。
【実施例0016】
図2Aおよび図2Bは、本発明の第1の実施例における油圧駆動システムの回路図である。油圧駆動システム902は、3つの主油圧ポンプ(例えば、可変容量形油圧ポンプからなる第1油圧ポンプ1、第2油圧ポンプ2、および第3油圧ポンプ3)と、パイロットポンプ111と、油圧ポンプ1~3およびパイロットポンプ111に油を供給する作動油タンク4とを備えている。油圧ポンプ1~3およびパイロットポンプ111は、エンジン(図示せず)によって駆動される。
【0017】
第1油圧ポンプ1の傾転角は、第1油圧ポンプ1に付設したレギュレータによって制御される。第1油圧ポンプ1のレギュレータは、流量制御指令圧ポート1aを有し、流量制御指令圧ポート1aに作用する指令圧により駆動される。第2油圧ポンプ2の傾転角は、第2油圧ポンプ2に付設したレギュレータによって制御される。第2油圧ポンプ2のレギュレータは、流量制御指令圧ポート2aを有し、流量制御指令圧ポート2aに作用する指令圧により駆動される。第3油圧ポンプ3の傾転角は、第3油圧ポンプ3に付設したレギュレータによって制御される。第3油圧ポンプ3のレギュレータは、流量制御指令圧ポート3aを有し、流量制御指令圧ポート3aに作用する指令圧により駆動される。
【0018】
第1油圧ポンプ1の吐出ライン41は、センターバイパスライン42を介して作動油タンク4に接続される。センターバイパスライン42には、上流側から順に、右走行用方向制御弁6、バケット用方向制御弁7、第2アーム用方向制御弁8、および第1ブーム用方向制御弁9が配置される。右走行用方向制御弁6は、第1油圧ポンプ1から、走行体201を駆動する一対の走行モータのうちの図示しない右走行モータに供給される圧油の流れを制御する。バケット用方向制御弁7は、第1油圧ポンプ1からバケットシリンダ206aに供給される圧油の流れを制御する。第2アーム用方向制御弁8は、第1油圧ポンプ1からアームシリンダ205aに供給される圧油の流れを制御する。第1ブーム用方向制御弁9は、第1油圧ポンプ1からブームシリンダ204aに供給される圧油の流れを制御する。
【0019】
バケット用方向制御弁7、第2アーム用方向制御弁8、および第1ブーム用方向制御弁9の各供給ポートは、センターバイパスライン42の右走行用方向制御弁6とバケット用方向制御弁7とを接続する部分から分岐するパラレルライン43に、それぞれ油路44,45、油路46,47、および油路48,49を介してパラレルに接続される。センターバイパスライン42の最下流には、センターバイパスライン42から作動油タンク4へと排出される圧油の流れを制御するブリードオフ弁34が配置される。吐出ライン41は、油路50を介して作動油タンク4へ接続される。油路50には、過剰な圧力上昇から回路を保護するためのリリーフ弁31が設けられる。
【0020】
第2油圧ポンプ2の吐出ライン51は、センターバイパスライン52を介して作動油タンク4へ接続される。センターバイパスライン52には、上流側から順に、第2ブーム用方向制御弁10、第1アーム用方向制御弁11、第1アタッチメント用方向制御弁12、および左走行用方向制御弁13が配置される。第2ブーム用方向制御弁10は、第2油圧ポンプ2からブームシリンダ204aに供給される圧油の流れを制御する。第1アーム用方向制御弁11は、第2油圧ポンプ2からアームシリンダ205aに供給される圧油の流れを制御する。第1アタッチメント用方向制御弁12は、第2油圧ポンプ2から、例えばバケット206に代えて設けられる小割機等の第1特殊アタッチメントを駆動する図示しない第1アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する。左走行用方向制御弁13は、第2油圧ポンプ2から、走行体201を駆動する一対の走行モータのうちの図示しない走行左モータに供給される圧油の流れを制御する。
【0021】
第2ブーム用方向制御弁10、第1アーム用方向制御弁11、第1アタッチメント用方向制御弁12、および左走行用方向制御弁13の各供給ポートは、吐出ライン51から分岐するパラレルライン53に、それぞれ油路54,55、油路56,57、油路58,59、および油路60を介してパラレルに接続される。センターバイパスライン52の最下流には、センターバイパスライン52から作動油タンク4へと排出される圧油の流れを制御するブリードオフ弁35が配置される。パラレルライン53と第1油圧ポンプの吐出ライン41とは油路69を介して接続され、油路69には合流弁37が設置される。油路69のうち合流弁37の下流には、パラレルライン53から吐出ライン41への逆流を防止するためのチェック弁38が接地される。パラレルライン53の最下流には、吐出ライン41からパラレルライン53への逆流を防止するためのチェック弁39が設置される。パラレルライン53は、油路61を介して作動油タンク4へ接続される。油路61には、過剰な圧力上昇から回路を保護するためのリリーフ弁32が設けられる。
【0022】
第3油圧ポンプ3の吐出ライン62は、センターバイパスライン63を介して作動油タンク4へ接続される。センターバイパスライン63には、上流側から順に、旋回用方向制御弁14、第3ブーム用方向制御弁15、および第2アタッチメント用方向制御弁16が配置される。旋回用方向制御弁14は、第3油圧ポンプ3から旋回モータ211に供給される圧油の流れを制御する。第3ブーム用方向制御弁15は、第3油圧ポンプ3からブームシリンダ204aに供給される圧油の流れを制御する。第2アタッチメント用方向制御弁16は、第1特殊アタッチメントに加えて第2アクチュエータを備えた第2特殊アタッチメントが装着された際、または、第1特殊アクチュエータに代えて第1アクチュエータと第2アクチュエータの2つのアクチュエータを備えた第2特殊アタッチメントが装着された際に、第3油圧ポンプ3から第2アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する。
【0023】
旋回用方向制御弁14、第3ブーム用方向制御弁15、および第2アタッチメント用方向制御弁16の各供給ポートは、吐出ライン62から分岐するパラレルライン64に、それぞれ油路65,66、油路67,68、および油路69,70を介してパラレルに接続される。センターバイパスライン63の最下流にはセンターバイパスライン63から作動油タンク4へと排出される圧油の流れを制御するブリードオフ弁36が配置される。パラレルライン64は、油路71を介して作動油タンク4へ接続される。油路71には、過剰な圧力上昇から回路を保護するためのリリーフ弁33が設けられる。
【0024】
バケット用方向制御弁7の供給ポートへ接続される油路44,45、第2アーム用方向制御弁8の供給ポートへ接続される油路46,47、および第1ブーム用方向制御弁9の供給ポートへ接続される油路48,49には、複合操作時に第1油圧ポンプ1から各方向制御弁に供給される圧油の流量を制御する流量制御弁21,22,23がそれぞれ設けられる。第2ブーム用方向制御弁10の供給ポートへ接続される油路54,55、第1アーム用方向制御弁11の供給ポートへ接続される油路56,57、および第1アタッチメント用方向制御弁12の供給ポートへ接続される油路58,59には、複合操作時に第2油圧ポンプ2から各方向制御弁に供給される圧油の流量を制御する流量制御弁24,25,26がそれぞれ設けられる。旋回用方向制御弁14の供給ポートへ接続される油路65,66、第3ブーム用方向制御弁15の供給ポートへ接続される油路67,68、および第2アタッチメント用方向制御弁16の供給ポートへ接続される油路69,70には、複合操作時に第3油圧ポンプ3から各方向制御弁に供給される圧油の流量を制御する流量制御弁27,28,29がそれぞれ設けられる。
【0025】
第1アーム用方向制御弁11に供給される圧油の流量を制御する流量制御弁25は、補助可変絞りを形成するシート形の主弁25aと、主弁25aに設けられ、主弁25aの移動量に応じて開口面積を変化させる制御可変絞り25bと、パイロット可変絞り25iとを有する。主弁25aが内蔵されるハウジングは、主弁25aと油路56の接続部に形成された第1圧力室25cと、主弁25aと油路57の接続部に形成された第2圧力室25dと、主弁25aの内部に設けられた油路25gおよび制御可変絞り25bを介して第1圧力室25cと連通する第3圧力室25eとを有する。油路25gには、逆流防止用のチェック弁25fが設けられる。パイロット可変絞り25iは、第3圧力室31eと油路57とを接続する油路25hに配置される。なお、説明を簡便にするため一部図示を省略しているが、流量制御弁21~29ならびに周辺の機器、配管、および配線は全て同じ構成である。
【0026】
作動油タンク4には、作動油タンク4内の作動油の温度を検出する温度センサ91が設けられる。第1油圧ポンプ1の吐出ライン41には、第1油圧ポンプ1の吐出圧を検出する圧力センサ84が設けられる。吐出ライン51には、第2油圧ポンプ2の吐出圧を検出する圧力センサ85が設けれられる。第3油圧ポンプ3の吐出ライン62には、第3油圧ポンプ3の吐出圧を検出する圧力センサ86が設けられる。
【0027】
ブームシリンダ204aのボトム側とブーム用方向制御弁9,10,15とを接続するアクチュエータライン72aには、ブームシリンダ204aのボトム側のアクチュエータ圧を検出する圧力センサ87aが設けられる。ブームシリンダ204aのロッド側とブーム用方向制御弁9,10,15とを接続するアクチュエータライン72bには、ブームシリンダ204aのロッド側のアクチュエータ圧を検出する圧力センサ87bが設けられる。アームシリンダ205aのボトム側とアーム用方向制御弁8,11とを接続するアクチュエータライン73aには、アームシリンダ205aのボトム側のアクチュエータ圧を検出する圧力センサ88aが設けられる。アームシリンダ205aのロッド側とアーム用方向制御弁8,11とを接続するアクチュエータライン73bには、アームシリンダ205aのロッド側のアクチュエータ圧を検出する圧力センサ88bが設けられる。バケットシリンダ206aのボトム側とバケット用方向制御弁7とを接続するアクチュエータライン74aには、バケットシリンダ206aのボトム側のアクチュエータ圧を検出する圧力センサ89aが設けられる。バケットシリンダ206aのロッド側とバケット用方向制御弁7とを接続するアクチュエータライン74bには、バケットシリンダ206aのロッド側のアクチュエータ圧を検出する圧力センサ89bが設けられる。旋回モータ211と旋回用方向制御弁14とを接続するアクチュエータライン75a,75bには、旋回モータ211のアクチュエータ圧を検出する圧力センサ90a,90bが設けられる。なお、説明を簡略化するため、図示しない左走行モータ、図示しない右走行モータ、図示しないアタッチメントを駆動するアクチュエータのアクチュエータ圧を検出する圧力センサについては、図示を省略してある。
【0028】
図2Bにおいて、パイロットポンプ111の吐出ポートは、パイロット一次圧生成用のパイロットリリーフ弁112を介して作動油タンク4に接続されるとともに、パイロットライン121を介して、電磁弁ユニット113に内蔵される電磁弁113a~113eの一方の入力ポートに接続される。電磁弁113a~113eの他方の入力ポートは、タンクライン122を介して作動油タンク4に接続される。電磁弁113a~113eは、それぞれ、後述するコントローラ114からの制御電流に応じてパイロット一次圧を減圧し、指令圧として出力する。
【0029】
電磁弁113aの出力ポートは、パイロットライン123を介して第2油圧ポンプ2のレギュレータの流量制御指令圧ポート2aへ接続される。電磁弁113b,113cの出力ポートは、パイロットライン124,125を介して第1アーム用方向制御弁11の指令圧ポート11a,11bへ接続される。電磁弁113dの出力ポートは、パイロットライン126を介して流量制御弁25の指令圧ポート25jへ接続される。電磁弁113eの出力ポートは、パイロットライン127を介してブリードオフ弁35の指令圧ポート35aへ接続される。なお、説明を簡略化するため、油圧ポンプ1,3用、方向制御弁6~10,12~16、流量制御弁21~24,26~29、ブリードオフ弁34,36用、および合流弁37用の電磁弁については、図示を省略してある。
【0030】
パイロットライン121には、パイロットライン121を流れる作動油の温度を検出する温度センサ92が設けられる。パイロットライン123には、電磁弁113aから出力される第2油圧ポンプ2の流量制御指令圧を検出する圧力センサ133が設けられる。パイロットライン124,125には、電磁弁113b,113cから出力される第1アーム用方向制御弁11の指令圧を検出する圧力センサ134,135が設けられる。パイロットライン126には、電磁弁113dから出力される流量制御弁25の指令圧を検出する圧力センサ136が設けられる。パイロットライン127には、電磁弁113eから出力されるブリードオフ弁35の指令圧を検出する圧力センサ137が設けられる。なお、図示を省略した電磁弁の出力ポートに接続されたパイロットラインにも同様に圧力センサが設けられる。本実施例における圧力センサ133~137は、油圧駆動システム902の制御対象要素である電磁弁113a~113eの制御量(指令圧)を計測する制御量計測装置を構成している。
【0031】
コントローラ114と電磁弁113a~113eとを接続する信号線には、コントローラ114から電磁弁113a~113eへ出力される電気制御信号(制御電流)を検出する電気信号検出装置として電流センサ143~147が設けられる。なお、図示を省略した電磁弁とコントローラ114とを接続する信号線にも同様に電流センサが設けられる。また、コントローラ114から電磁弁113a~113eへ出力される電気制御信号が制御電圧の場合は、電流センサ143~147に代えて電圧センサが設けられる。
【0032】
油圧駆動システム902は、第1ブーム用方向制御弁9、第2ブーム用方向制御弁10、および第3ブーム用方向制御弁15を切り換え操作可能なブーム操作レバー115a(操作装置)と、第1アーム用方向制御弁11および第2アーム用方向制御弁8を切り換え操作可能なアーム操作レバー115b(操作装置)とを備えている。なお、説明を簡略化するため、右走行用方向制御弁6を切り換え操作する右走行用操作レバー、バケット用方向制御弁7を切り換え操作するバケット用操作レバー、第1アタッチメント用方向制御弁12を切り換え操作する第1アタッチメント用操作レバー、左走行用方向制御弁13を切り換え操作する左走行用操作レバー、旋回用方向制御弁14を切り換え操作する旋回用操作レバー、および第2アタッチメント用方向制御弁16を切り換え操作する第2アタッチメント用操作レバーについては、図示を省略してある。
【0033】
油圧駆動システム902は、電磁弁113a~113eを制御するコントローラ114、バケット206が掘削する際の目標面を設定する目標面設定装置116、およびコントローラ114へ追加学習(後述)を指示する追加学習指示装置117を備えている。コントローラ114には、操作装置115a,115bからの操作信号、目標面設定装置116からの目標面データ、追加学習指示装置117からの追加学習指示、圧力センサ84~86,87a,87b,88a,88b,89a,89b,90a,90b,133~137の出力値、温度センサ91,92の出力値、電流センサ143~147の出力値、動作検出装置212~216からの姿勢データに応じて、電磁弁113a~113eの制御電流を出力する。
【0034】
図3は、電磁弁113a~113eの動作特性を示す図である。電磁弁113a~113eは、コントローラ114からの電磁弁制御電流に応じてパイロット一次圧を減圧し、電磁弁指令圧として出力する。電磁弁制御電流は電磁弁目標指令圧に応じて決定される。この際に電磁弁目標指令圧と実際に生成される電磁弁指令圧との間に差分が生じる。この差分は、時間経過に依存するものでは無いため電磁弁113a~113eの静特性における誤差である。また、電磁弁目標指令圧を変化させた場合には、その変化に対し、実際に生成される電磁弁指令圧の変化には遅れが生じる。この遅れは、時間経過に依存するため電磁弁113a~113eの動特性における誤差である。これらの誤差は、電磁弁113a~113eの個体ばらつき、作動環境の変化、電磁弁113a~113eの劣化など様々な要因、またはそれらの要因の複合的な作用によって生じる。
【0035】
図4は、第1の実施例におけるコントローラ114の機能ブロック図である。コントローラ114は、アクチュエータ目標速度演算部114aと、アクチュエータ目標流量演算部114bと、電磁弁目標指令圧演算部114cと、電磁弁目標指令圧補正部114dと、電磁弁制御電流出力部114eと、目標動作検出部114fと、作動環境検出部114gと、動作状態検出部114hと、学習データ記憶部114iと、劣化状態検出部114jと、学習部114kと、予測部114lと、予測精度評価部114mとを有する。
【0036】
アクチュエータ目標速度演算部114aは、操作装置115a,115bからの操作信号、動作検出装置212~216からの姿勢データ、目標面設定装置116からの目標面データをもとに、フロント作業機203の動作に必要なアクチュエータ目標速度を算出する。アクチュエータ目標流量演算部114bは、アクチュエータ目標速度演算部114aからのアクチュエータ目標速度をもとにアクチュエータ目標流量を算出する。
【0037】
電磁弁目標指令圧演算部114cは、アクチュエータ目標流量演算部114bからのアクチュエータ目標流量をもとに電磁弁目標指令圧を算出する。本実施例における電磁弁目標指令圧演算部114cは、操作装置115a,115bの操作量をもとに油圧駆動システム902の制御対象要素(電磁弁113a~113e)の目標制御量(電磁弁目標指令圧)を算出する目標制御量演算部を構成している。電磁弁目標指令圧補正部114dは、予測部114lからの電磁弁予測指令圧をもとに、電磁弁目標指令圧演算部114cからの電磁弁目標指令圧を補正する。また、電磁弁目標指令圧補正部114dは、追加学習指示装置117からの追加学習指示に応じて、電磁弁目標指令圧を補正するか否かを切り替える。
【0038】
図5は、電磁弁目標指令圧の補正方法を示す図である。油圧駆動システム902では、図中破線で示す目標指令圧に応じた電磁源制御電流を出力した場合に、図中実線で示すように、実指令圧が目標指令圧に大きく遅れることなく立ち上がり、かつ安定後に目標指令圧と一致することが期待される。しかし、油圧駆動システム902の稼働状態によっては、図中二点鎖線で示すように、実指令圧が目標指令圧に大きく遅れて立ち上がり、かつ安定後に目標指令圧よりも低くなることが予測される。そこで、実指令圧が目標指令圧に近づくように(すなわち、実指令圧の立ち上がりが目標指令圧の立ち上がりに近づき、かつ安定後の実指令圧が補正前の目標指令圧に近づくように)、図中点線で示すように、予測指令圧をもとに目標指令圧を補正する。これにより、油圧駆動システム902の稼働状態の変動(電磁弁113a~113eの個体バラつき、作動環境外乱、性能劣化など)に関わらず、実指令圧を補正前の目標指令圧に近づけることが可能となる。
【0039】
図4に戻り、電磁弁制御電流出力部114eは、電磁弁目標指令圧補正部114dからの電磁弁目標指令圧をもとに電磁弁制御電流を生成し、出力する。本実施例における電磁弁目標指令圧補正部114dは、油圧駆動システム902への制御信号(電磁弁113a~113eへの制御電流)を補正する制御信号補正部を構成している。
【0040】
目標動作検出部114fは、電磁弁目標指令圧演算部114cからの電磁弁目標指令圧を電磁弁113a~113eの目標動作データとして生成する。作動環境検出部114gは、温度センサ91,92の出力値をもとに作動環境データを生成する。なお、本実施例では、作動油の温度をもとに作動環境データを生成するが、油圧駆動システム902内を循環する冷却水の温度または外気温をもとに作動環境データを生成してもよい。動作状態検出部114hは、電流センサ143~147および圧力センサ133~137の出力値をもとに電磁弁113a~113eの動作状態データを生成する。本実施例における目標動作検出部114f、作動環境検出部114g、動作状態検出部114h、および劣化状態検出部114jは、油圧駆動システム902の稼働状態を検出する稼働状態検出部を構成している。
【0041】
学習データ記憶部114iは、目標動作検出部114fからの目標動作データ(すなわち電磁弁目標指令圧)、作動環境検出部114gからの作動環境データ、および動作状態検出部114hからの動作状態データからの劣化状態データを入力し、学習データとして記憶する。劣化状態検出部114jは、学習データ記憶部114iに記憶された目標動作データ、作動環境データ、および動作状態データを分析し、電磁弁113a~113eの劣化状態を示すデータ(劣化状態データ)を生成する。学習データ記憶部114iは、劣化状態検出部114jからの劣化状態データも学習データとして記憶する。学習部114kは、予測精度評価部114mからの評価結果(後述)を受けて、学習データ記憶部114iの学習データをもとに機械学習処理を行い、機械学習処理の結果に基づいて、電磁弁目標指令圧演算部114cからの電磁弁目標指令圧に応じた電磁弁制御電流を出力した場合に電磁弁113a~113eで生成されるであろう電磁弁目標指令圧に対する電磁弁指令圧の挙動を予測する推定器を生成する。
【0042】
予測部114lは、学習部114kで生成された推定器を用いて、電磁弁目標指令圧演算部114cからの電磁弁目標指令圧をもとに電磁弁指令圧の予測値(予測指令圧)を算出する。予測精度評価部114mは、追加学習指示装置117から追加学習指示が入力された場合などに、予測部114lからの予測指令圧と圧力センサ133~137で計測された指令圧とを比較して、予測部114lにおける電磁弁指令圧の予測精度を評価する。
【0043】
図6は、コントローラ114の学習処理に係る演算処理を示すフローチャートである。以下、各ステップについて順に説明する。
【0044】
まず、コントローラ114は、特定のタイミング(例えば油圧ショベル901の稼働開始直後)、または一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS101)。また、コントローラ114は、ステップS101と並行して、追加学習指示装置117からの追加学習指示が有るか否かを判定する(ステップS102)。ステップS101およびS102の判定結果がNOの場合は当該フローを終了する。
【0045】
ステップS101またはS102の判定結果がYESの場合は、コントローラ114は、電磁弁目標指令圧補正部114dにて電磁弁目標指令圧を補正せずに電磁弁制御電流を出力する(ステップS103)。
【0046】
ステップS103に続き、コントローラ114は、予測精度評価部114mにて、予測部114lからの電磁弁予測指令圧と圧力センサ133~137で計測された電磁弁指令圧との乖離度合い(予測誤差)を算出し(ステップS406)、予測誤差が予め設定される許容誤差を超えているか否かを判定する(ステップS105)。ステップS105の判定結果がNOの場合は当該フローを終了する。
【0047】
ステップS105の判定結果がYESの場合は、コントローラ114は、目標動作検出部114fにて電磁弁目標指令圧演算部114cからの電磁弁目標指令圧を目標動作データとして生成し、作動環境検出部114gにて温度センサ91の出力値をもとに作動環境データを生成し、動作状態検出部114hにて電流センサ143~147や圧力センサ84~86,87a,87b,88a,88b,89a,89b,90a,90b,133~137の出力値をもとに動作状態データを生成し、劣化状態検出部114jにて劣化状態データを生成する(ステップS106)。
【0048】
ステップS106に続き、コントローラ114は、目標動作検出部114fからの目標動作データ、作動環境検出部114gからの作動環境データ、動作状態検出部114hからの動作状態データ、および劣化状態検出部114jからの劣化状態データを学習データ記憶部114iに保存する(ステップS107)。
【0049】
ステップS107に続き、コントローラ114は、学習部114kにて、学習データ記憶部114iの学習データをもとに機械学習処理を行い、機械学習処理の結果に基づいて電磁弁指令圧の挙動を予測する推定器を生成し(ステップS108)、当該フローを終了する。
【0050】
図7は、コントローラ114の油圧駆動システム902の制御に係る演算処理を示すフローチャートである。以下、各ステップについて順に説明する。
【0051】
まず、コントローラ114は、操作装置115a,115bの入力が有るか否かを判定する(ステップS201)。ステップS201の判定結果がNOの場合は当該フローを終了する。
【0052】
ステップS201の判定結果がYESの場合は、コントローラ114は、アクチュエータ目標速度演算部114aにて、操作信号、姿勢データ、目標面データなどをもとにアクチュエータ目標速度を算出する(ステップS202)。
【0053】
ステップS202に続き、コントローラ114は、アクチュエータ目標流量演算部114bにて、アクチュエータ目標速度をもとにアクチュエータ目標流量を算出する(ステップS203)。
【0054】
ステップS203に続き、コントローラ114は、電磁弁目標指令圧演算部114cにて、アクチュエータ目標流量をもとに電磁弁目標指令圧を算出する(ステップS204)。
【0055】
ステップS204に続き、コントローラ114は、予測部114lにて、学習部114kで生成された推定器を用いて、電磁弁目標指令圧に対する電磁弁予測指令圧を算出する(S205)。
【0056】
ステップS205に続き、コントローラ114は、電磁弁目標指令圧補正部114dにて、予測部114lからの電磁弁予測指令圧が電磁弁目標指令圧演算部114cにて算出された電磁弁目標指令圧に近づくように電磁弁目標指令圧を補正する(ステップS206)。
【0057】
ステップS206に続き、コントローラ114は、電磁弁制御電流出力部114eにて、補正後の電磁弁目標指令圧に応じた電磁弁制御電流を出力し(ステップS207)、当該フローを終了する。
【0058】
(動作)
油圧駆動システム902の動作を説明する。オペレータの操作に応じて操作装置115a,115bから操作信号がコントローラ114へ入力される。コントローラ114は、入力された操作信号等をもとに電磁弁目標指令圧を算出し、電磁弁目標指令圧に応じた電磁弁制御電流を出力する。これにより、電磁弁制御電流に応じた指令圧が電磁弁で生成され、アクチュエータが駆動される。
【0059】
アクチュエータが駆動される間、電磁弁目標指令圧に応じた電磁弁制御電流を出力した場合に生成されるであろう電磁弁指令圧の予測値(電磁弁予測指令圧)が算出され、操作信号等をもとにした電磁弁目標指令圧と電磁弁予測指令圧との差が小さくなるように電磁弁目標指令圧が補正される。これにより、電磁弁で生成される指令圧を補正前の電磁弁目標指令圧に近づけることができる。
【0060】
また、特定のタイミング、一定時間経過する毎、または、追加学習指示が入力されたタイミングで、電磁弁目標指令圧に補正を掛けずに電磁弁が駆動される。そのときに得られた電磁弁指令圧と予測部114lにおいて予測した電磁弁指令圧(電磁弁予測指令圧)とが比較され、予測部114lにおける電磁弁指令圧の予測精度が評価される。予測精度が低下していると判定された場合は、目標動作データ、作動環境データ、動作状態データ、および劣化状態データ(学習データ)が学習データ記憶部114iに蓄積され、蓄積された学習データをもとに学習部にて追加学習が実施される。これにより、予測部114lにおける電磁弁指令圧の予測精度を維持することができる。
【0061】
(まとめ)
第1の実施例では、車体202と、車体202に取り付けられた作業装置203と、作業装置203を駆動する油圧アクチュエータ204a,205a,206a,211と、油圧アクチュエータ204a,205a,206a,211を駆動する油圧駆動システム902と、油圧アクチュエータ204a,205a,206a,211の動作を指示する操作装置115a,115bと、操作装置115a,115bの操作量に応じた油圧駆動システム902への制御信号を出力する制御装置114とを備えた作業機械901において、制御装置114は、操作装置115a,115bの操作量をもとに油圧駆動システム902の制御対象要素113a~113eの目標制御量を算出する目標制御量演算部114cと、油圧駆動システム902の稼働状態を検出する稼働状態検出部114f,114g,114h,114jと、前記目標制御量と稼働状態検出部114f,114g,114h,114jの検出結果とを学習データとして記憶する学習データ記憶部114iと、学習データ記憶部114iに記憶された前記学習データをもとに、前記目標制御量に対する制御対象要素113a~113eの制御量を機械学習する学習部114kと、学習部114kにおける前記機械学習の学習結果を用いて、前記目標制御量に対する前記制御量の予測値である予測制御量を算出する予測部114lと、前記予測制御量が前記目標制御量に近づくように前記制御信号を補正する制御信号補正部114dとを有する。
【0062】
以上のように構成した第1の実施例によれば、制御対象要素113a~113eの目標制御量と油圧駆動システム902の稼働状態とを学習データとする機械学習の学習結果を用いて、制御対象要素113a~113eの目標制御量に対する予測制御量が算出され、当該予測制御量が目標制御量に近づくように油圧駆動システム902への制御信号が補正される。これにより、油圧駆動システム902の稼働状態の変動(制御対象要素113a~113eの個体バラつき、作動環境外乱、性能劣化など)に関わらず、操作入力に対する制御対象要素113a~113eの制御量の関係が一定に保たれるため、作業機械901の制御ロバスト性を向上させることが可能となる。
【0063】
また、第1の実施例における稼働状態検出部114f,114g,114h,114jは、油圧駆動システム902の動作状態を検出する動作状態検出部114hと、油圧駆動システム902の作動環境を検出する作動環境検出部114gと、油圧駆動システム902の劣化状態を検出する劣化状態検出部114jとを有する。これにより、油圧駆動システム902の稼働状態として、油圧駆動システム902の動作状態、作動環境および劣化状態を検出することが可能となる。
【0064】
また、第1の実施例における作業機械901は、車体202、作業装置203、または油圧アクチュエータ204a,205a,206a,211の動作を検出する動作検出装置212~216を備え、動作状態検出部114hは、動作検出装置212~216の検出結果をもとに油圧駆動システム902の動作状態を検出する。これにより、油圧アクチュエータ204a,205a,206a,211の動作をもとに油圧駆動システム902の動作状態を検出することが可能となる。
【0065】
また、第1の実施例における作業機械901は、油圧駆動システム902内を循環する作動油の圧力を検出する圧力センサ84~86,87a,87b,88a,88b,89a,89b,90a,90b,133~137を備え、動作状態検出部114hは、圧力センサ84~86,87a,87b,88a,88b,89a,89b,90a,90b,133~137の検出結果をもとに油圧駆動システム902の動作状態を検出する。これにより、油圧駆動システム902内を循環する作動油の圧力をもとに油圧駆動システム902の動作状態を検出することが可能となる。
【0066】
また、第1の実施例における作業機械901は、制御装置114から油圧駆動システム902へ出力される電気制御信号の電流または電圧を検出する電気信号検出装置143~147を備え、動作状態検出部114hは、電気信号検出装置143~147の検出結果をもとに油圧駆動システム902の動作状態を検出する。これにより、制御装置114から油圧駆動システム902へ出力される電気制御信号をもとに油圧駆動システム902の動作状態を検出することが可能となる。
【0067】
また、第1の実施例における作業機械901は、油圧駆動システム902内を循環する作動油または冷却水の温度、あるいは外気温を検出する温度センサ91,92を備え、作動環境検出部114gは、温度センサ91,92の検出結果をもとに油圧駆動システム902の作動環境を検出する。これにより、油圧駆動システム902内を循環する作動油または冷却水の温度、あるいは外気温をもとに油圧駆動システム902の動作状態を検出することが可能となる。
【0068】
また、第1の実施例における劣化状態検出部114jは、前記目標制御量、動作状態検出部114hおよび作動環境検出部114gの検出結果をもとに油圧駆動システム902の劣化状態を検出する。これにより、油圧駆動システム902の制御対象要素113a~113eの目標制御量、動作状態および作動環境をもとに油圧駆動システム902の劣化状態を検出することが可能となる。
【0069】
また、第1の実施例における作業機械901は、制御対象要素113a~113eの制御量を計測する制御量計測装置133~137を備え、制御装置114は、制御信号補正部114dが前記制御信号を補正しない状態での前記制御量の計測値と前記予測制御量との乖離度合いである予測誤差が所定の許容誤差を超えているか否かを判定する予測精度評価部114mを備え、学習部114kは、予測精度評価部114mにより前記予測誤差が前記許容誤差を超えていると判定された場合に、前記機械学習を実行する。これにより、予測部114lにおける電磁弁指令圧の予測精度が低下した場合に機械学習を実行することが可能となる。
【0070】
また、第1の実施例における作業機械901は、前記機械学習の実行を指示する指示装置117を備え、予測精度評価部114mは、指示装置117からの指示を受けて、前記予測誤差が所定の許容誤差を超えているか否かを判定する。これにより、オペレータの指示に応じて予測部114lにおける電磁弁指令圧の予測精度を評価することが可能となる。
【0071】
また、第1の実施例における作業機械901は、油圧ポンプ1~3と、油圧ポンプ1~3から油圧アクチュエータ204a,205a,206a,211へ供給される圧油の流れを制御する制御弁6~16,21~29とを備え、制御対象要素113a~113eは、制御弁6~16,21~29の指令圧を生成する電磁弁113a~113eであり、前記目標制御量は、電磁弁113a~113eの目標指令圧である。これにより、油圧駆動システム902の稼働状態の変動に関わらず、操作入力に対する電磁弁113a~113eの指令圧の関係が一定に保たれる。
【実施例0072】
本発明の第2の実施例について、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0073】
図8は、第2の実施例におけるコントローラ114Aの機能ブロック図である。コントローラ114Aは、アクチュエータ目標速度演算部114Aaと、アクチュエータ目標速度補正部114Anと、アクチュエータ目標流量演算部114Abと、電磁弁目標指令圧演算部114Acと、電磁弁制御電流出力部114Aeと、目標動作検出部114Afと、作動環境検出部114Agと、動作状態検出部114Ahと、学習データ記憶部114Aiと、劣化状態検出部114Ajと、学習部114Akと、予測部114Alと、予測精度評価部114Amとを有する。
【0074】
アクチュエータ目標速度演算部114Aaは、操作装置115a,115bからの操作信号、動作検出装置212~216からの姿勢データ、目標面設定装置116からの目標面データをもとに、フロント作業機203の動作に必要なアクチュエータ目標速度を算出する。本実施例におけるアクチュエータ目標速度演算部114Aaは、操作装置115a,115bの操作量をもとに油圧駆動システム902の制御対象要素(油圧アクチュエータ)の目標制御量(アクチュエータ目標速度)を算出する目標制御量演算部を構成している。また、本実施例における動作検出装置212~216は、油圧アクチュエータ204a,205a,206a,211の制御量(アクチュエータ速度)を計測する制御量計測装置を構成している。
【0075】
アクチュエータ目標速度補正部114Anは、予測部114Alからのアクチュエータ予測速度をもとに、アクチュエータ目標速度演算部114Aaからのアクチュエータ目標速度を補正する。また、アクチュエータ目標速度補正部114Anは、追加学習指示装置117からの追加学習指示に応じて、アクチュエータ目標速度を補正するか否かを切り替える。本実施例におけるアクチュエータ目標速度補正部114Anは、油圧駆動システム902への制御信号(電磁弁113a~113eへの制御電流)を補正する制御信号補正部を構成している。
【0076】
アクチュエータ目標流量演算部114Abは、アクチュエータ目標速度補正部114Anからのアクチュエータ目標速度をもとにアクチュエータ目標流量を算出する。電磁弁目標指令圧演算部114Acは、アクチュエータ目標流量演算部114Abからのアクチュエータ目標流量をもとに電磁弁目標指令を算出する。電磁弁制御電流出力部114Aeは、電磁弁目標指令圧演算部114Acからの目標制御指令に応じた制御電流を生成し、電磁弁113a~113eへ出力する。
【0077】
目標動作検出部114Afは、アクチュエータ目標速度演算部114Aaからのアクチュエータ目標速度をアクチュエータの目標動作データとして生成する。作動環境検出部114Agは、温度センサ91の出力値をもとに作動環境データを生成する。動作状態検出部114Ahは、電流センサ143~147および圧力センサ84~86,87a,87b,88a,88b,89a,89b,90a,90b,133~137の出力値ならびに姿勢データをもとにアクチュエータの動作状態データを生成する。
【0078】
学習データ記憶部114Aiは、目標動作検出部114Afからの目標動作データ(すなわちアクチュエータ目標速度)、作動環境検出部114Agからの作動環境データ、および動作状態検出部114Ahからの動作状態データを入力し、学習データとして記憶する。劣化状態検出部114Ajは、学習データ記憶部114Aiに記憶された目標動作データ、作動環境データ、および動作状態データを分析し、油圧駆動システムの劣化状態を示すデータ(劣化状態データ)を生成する。学習データ記憶部114Aiは、劣化状態検出部114Ajからの劣化状態データも学習データとして記憶する。学習部114Akは、予測精度評価部114Amからの評価結果(後述)を受けて、学習データ記憶部114Aiの学習データをもとに機械学習処理を行い、機械学習処理の結果に基づいて、アクチュエータ目標速度演算部114Aaからのアクチュエータ目標速度に応じた電磁弁制御電流を出力した場合に得られるであろうアクチュエータ速度の挙動を予測する推定器を生成する。
【0079】
予測部114Alは、学習部114Akで生成された推定器を用いて、アクチュエータ目標速度演算部114Aaからのアクチュエータ目標速度をもとにアクチュエータ速度の予測値(アクチュエータ予測速度)を算出する。予測精度評価部114Amは、追加学習指示装置117から追加学習指示が入力された場合などに、予測部114Alからのアクチュエータ予測速度と姿勢データから算出されたアクチュエータ速度とを比較して、予測部114Alにおけるアクチュエータ速度の予測精度を評価する。なお、本実施例では、アクチュエータ速度の挙動を予測する構成としたが、アクチュエータの角速度や回転数を予測する構成としてもよい。
【0080】
図9は、第2の実施例におけるコントローラ114Aの学習処理に係る演算処理を示すフローチャートである。以下、各ステップについて順に説明する。
【0081】
まず、コントローラ114Aは、特定のタイミング(例えば油圧ショベル901の稼働開始直後)、または一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS101A)。また、コントローラ114Aは、ステップS101Aと並行して、追加学習指示装置117からの追加学習指示が有るか否かを判定する(ステップS102A)。ステップS101AおよびS102Aの判定結果がNOの場合は当該フローを終了する。
【0082】
ステップS101AまたはS102Aの判定結果がYESの場合は、コントローラ114Aは、アクチュエータ目標速度補正部114Anにてアクチュエータ目標速度を補正せずに電磁弁制御電流を出力する(ステップS103A)。
【0083】
ステップS103Aに続き、コントローラ114Aは、予測精度評価部114Amにて、予測部114Alからのアクチュエータ予測速度と姿勢データから算出されたアクチュエータ速度との乖離度合い(予測誤差)を算出し(ステップS104A)、予測誤差が予め設定された許容誤差を超えているか否かを判定する(ステップS105A)。ステップS105Aの判定結果がNOの場合は当該フローを終了する。
【0084】
ステップS105Aの判定結果がYESの場合は、コントローラ114Aは、目標動作検出部114Afにてアクチュエータ目標速度演算部114Aaからのアクチュエータ目標速度を目標動作データとして生成し、作動環境検出部114Agにて温度センサ91,92の出力値をもとに作動環境データを生成し、動作状態検出部114Ahにて電流センサ143~147および圧力センサ84~86,87a,87b,88a,88b,89a,89b,90a,90b,133~137の出力値ならびに姿勢データをもとに動作状態データを生成し、劣化状態検出部114Ajにて劣化状態データを生成する(ステップS106A)。
【0085】
ステップS106Aに続き、コントローラ114Aは、目標動作検出部114Afからの目標動作データ、作動環境検出部114Agからの作動環境データ、動作状態検出部114Ahからの動作状態データ、および劣化状態検出部114Ajからの劣化状態データを学習データ記憶部114iに保存する(ステップS107A)。
【0086】
ステップS107Aに続き、コントローラ114Aは、学習部114Akにて、学習データ記憶部114Aiの学習データをもとに機械学習処理を行い、機械学習処理の結果に基づいてアクチュエータ速度の挙動を予測する推定器を生成し(ステップS108A)、当該フローを終了する。
【0087】
図10は、第2の実施例におけるコントローラ114Aの油圧駆動システム902の制御に係る演算処理を示すフローチャートである。以下、各ステップについて順に説明する。
【0088】
まず、コントローラ114Aは、操作装置115a,115bの入力が有るか否かを判定する(ステップS201A)。ステップS201Aの判定結果がNOの場合は当該フローを終了する。
【0089】
ステップS201Aの判定結果がYESの場合は、コントローラ114Aは、アクチュエータ目標速度演算部114Aaにて、操作信号、姿勢データ、目標面データなどをもとにアクチュエータ目標速度を算出する(ステップS202A)。
【0090】
ステップS202Aに続き、コントローラ114Aは、予測部114Alにて、学習部114Akで生成された推定器を用いて、アクチュエータ目標速度に対するアクチュエータ予測速度を算出する(S203A)。
【0091】
ステップS203Aに続き、コントローラ114Aは、アクチュエータ目標速度補正部114Anにて、予測部114Alからのアクチュエータ予測速度がアクチュエータ目標速度演算部114Aaにて算出されたアクチュエータ目標速度に近づくようにアクチュエータ目標速度を補正する(ステップS204A)。
【0092】
ステップS204Aに続き、コントローラ114Aは、アクチュエータ目標流量演算部114bにて、補正後のアクチュエータ目標速度をもとにアクチュエータ目標流量を算出する(ステップS205A)。
【0093】
ステップS205Aに続き、コントローラ114Aは、電磁弁目標指令圧演算部114cにて、アクチュエータ目標流量をもとに電磁弁目標指令圧を算出する(ステップS206A)。
【0094】
ステップS206Aに続き、コントローラ114Aは、電磁弁制御電流出力部114Aeにて、電磁弁目標指令圧に応じた電磁弁制御電流を出力し(ステップS207A)、当該フローを終了する。
【0095】
(動作)
油圧駆動システム902の動作を説明する。オペレータの操作に応じて操作装置115a,115bから操作信号がコントローラ114へ入力される。コントローラ114は、入力された操作信号等をもとにアクチュエータ目標速度を算出し、アクチュエータ目標速度に応じた電磁弁制御電流を出力する。これにより、電磁弁制御電流に応じた指令圧が電磁弁で生成され、アクチュエータが駆動される。
【0096】
アクチュエータが駆動される間、アクチュエータ目標速度に応じた電磁弁制御電流を出力した場合に得られるであろうアクチュエータ速度の予測値(アクチュエータ予測速度)が算出され、操作信号等をもとにしたアクチュエータ目標速度とアクチュエータ予測速度との差が小さくなるようにアクチュエータ目標速度が補正される。これにより、アクチュエータ速度を補正前のアクチュエータ目標速度に近づけることができる。
【0097】
また、特定のタイミング、一定時間経過する毎、または、追加学習指示が入力されたタイミングで、アクチュエータ目標速度に補正を掛けずに電磁弁が駆動される。そのときに得られたアクチュエータ速度と予測部114Alにおいて予測したアクチュエータ速度(アクチュエータ予測速度)とが比較され、予測部114Alにおけるアクチュエータ速度の予測精度が評価される。予測精度が低下していると判定された場合は、目標動作データ、作動環境データ、動作状態データ、および劣化状態データ(学習データ)が学習データ記憶部114Aiに蓄積され、蓄積された学習データをもとに学習部にて追加学習が実施される。これにより、予測部114Alにおけるアクチュエータ速度の予測精度を維持することができる。
【0098】
(まとめ)
第2の実施例における油圧駆動システム902の制御対象要素204a,205a,206a,211は、油圧アクチュエータ204a,205a,206a,211であり、制御対象要素204a,205a,206a,211の目標制御量は、油圧アクチュエータ204a,205a,206a,211の目標速度、目標角速度、または目標回転数である。
【0099】
以上のように構成した第2の実施例によれば、油圧駆動システム902の稼働状態の変動(油圧アクチュエータ204a,205a,206a,211の個体バラつき、作動環境外乱、性能劣化など)に関わらず、操作入力に対する油圧アクチュエータ204a,205a,206a,211の速度、角速度、または回転数の関係が一定に保たれるため、作業機械901の制御ロバスト性を向上させることが可能となる。
【実施例0100】
本発明の第3の実施例について、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0101】
図11は、第3の実施例における油圧駆動システム902Bの一部を示す回路図である。油圧駆動システム902Bは、パイロットライン121に設けられた温度センサ92(図2Bに示す)に代えて、油圧駆動システム902Bの劣化に関わる情報(劣化関連情報)をコントローラ114Bへ入力する劣化関連情報入力装置118を備えている。劣化関連情報は、例えば作動油の酸化、析出物、成分の劣化などの情報であり、コントローラ114Bよりも高度な分析機能を備えた外部システムなどから入手できる。
【0102】
図12は、第3の実施例におけるコントローラ114Bの機能ブロック図である。劣化関連情報入力装置118からの劣化関連情報は、劣化状態検出部114Bjに入力される。劣化状態検出部114Bjは、学習データ記憶部114iに格納される目標動作データ、作動環境データ、動作状態データ、および劣化関連情報を分析し、劣化状態データを生成する。
【0103】
(まとめ)
第3の実施例における作業機械901は、油圧駆動システム902Bの劣化に関わる情報である劣化関連情報をコントローラ114Bへ入力する劣化関連情報入力装置118を備え、劣化状態検出部114Bjは、制御対象要素204a,205a,206a,211の目標制御量、動作状態検出部114hおよび作動環境検出部114gの検出結果、ならびに劣化関連情報をもとに油圧駆動システム902Bの劣化状態を検出する。
【0104】
以上のように構成した第3の実施例によれば、油圧駆動システム902Bの劣化状態を判断するために必要なデータサイズの大きい長期間稼働データの保存や、劣化状態を診断するための計算負荷の大きい高度な演算処理などを油圧駆動システム902Bの制御を行うコントローラ114Bで実施する必要がなくなるため、コントローラ114Bの計算負荷を抑えつつ、劣化状態の判断精度を向上することができる。
【0105】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0106】
1…第1油圧ポンプ、1a…流量制御指令圧ポート、2…第2油圧ポンプ、2a…流量制御指令圧ポート、3…第3油圧ポンプ、3a…流量制御指令圧ポート、4…作動油タンク、6…右走行用方向制御弁、7…バケット用方向制御弁、8…第2アーム用方向制御弁、9…第1ブーム用方向制御弁、10…第2ブーム用方向制御弁、11…第1アーム用方向制御弁、11a,11b…指令圧ポート、12…第1アタッチメント用方向制御弁、13…左走行用方向制御弁、14…旋回用方向制御弁、15…第3ブーム用方向制御弁、16…第2アタッチメント用方向制御弁、21~25…流量制御弁、25a…主弁、25c…第1圧力室、25d…第2圧力室、25e…第3圧力室、25f…チェック弁、25g,25h…油路、25j…指令圧ポート、26~29…流量制御弁、31…リリーフ弁、31e…第3圧力室、32…リリーフ弁、33…リリーフ弁、34,35…ブリードオフ弁、35a…指令圧ポート、36…ブリードオフ弁、37…合流弁、38,39…チェック弁、41…吐出ライン、42…センターバイパスライン、43…パラレルライン、44~50…油路、51…吐出ライン、52…センターバイパスライン、53…パラレルライン、54~61…油路、62…吐出ライン、63…センターバイパスライン、64…パラレルライン、65~71…油路、72a,72b,73a,73b,74a,74b,75a,75b…アクチュエータライン、84~86,87a,87b,88a,88b,89a,89b,90a,90b…圧力センサ、91,92…温度センサ、111…パイロットポンプ、112…パイロットリリーフ弁、113…電磁弁ユニット、113a~113e…電磁弁(制御対象要素)、114,114A,114B…コントローラ(制御装置)、114a…アクチュエータ目標速度演算部、114b,114Ab…アクチュエータ目標流量演算部、114c…電磁弁目標指令圧演算部(目標制御量演算部)、114d…電磁弁目標指令圧補正部(制御信号補正部)、114e,114Ae…電磁弁制御電流出力部、114f,114Af…目標動作検出部(稼働状態検出部)、114g,114Ag…作動環境検出部(稼働状態検出部)、114h,114Ah…動作状態検出部(稼働状態検出部)、114i,114Ai…学習データ記憶部、114j,114Aj,114Bj…劣化状態検出部(稼働状態検出部)、114k,114Ak…学習部、114l,114Al…予測部、114m,114Am…予測精度評価部、114Aa…アクチュエータ目標速度演算部(目標制御量演算部)、114Ac…電磁弁目標指令圧演算部、114An…アクチュエータ目標速度補正部(制御信号補正部)、115a…ブーム操作レバー(操作装置)、115b…アーム操作レバー(操作装置)、116…目標面設定装置、117…追加学習指示装置、118…劣化関連情報入力装置、121…パイロットライン、122…タンクライン、123~127…パイロットライン、133~137…圧力センサ(制御量計測装置)、143~147…電流センサ(電気信号検出装置)、201…走行体、202…旋回体(車体)、203…フロント作業機(作業装置)、204…ブーム、204a…ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)、205…アーム、205a…アームシリンダ(油圧アクチュエータ)、206…バケット、206a…バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)、207…運転室、208…機械室、209…カウンタウエイト、210…コントロールバルブ、211…旋回モータ(油圧アクチュエータ)、212~216…動作検出装置(制御量計測装置)、901…油圧ショベル(作業機械)、902,902B…油圧駆動システム。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12