(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132734
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】スルフォラファンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 11/00 20060101AFI20240920BHJP
C12P 21/00 20060101ALN20240920BHJP
C12N 1/16 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
C12P11/00
C12P21/00 G
C12N1/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043632
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小野 美玉
(72)【発明者】
【氏名】増尾 直久
(72)【発明者】
【氏名】川崎 秀紀
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AE01
4B064CA06
4B064DA16
4B065AA72X
4B065BD32
4B065CA15
4B065CA16
4B065CA60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スルフォラファンの製造方法と、さらに、安定化したスルフォラファンを得る方法を見出すことを課題とする。
【解決手段】スルフォラファン又はその類縁体の中から選択される少なくとも1種のイソチオシアネート類とグルタチオン含有酵母菌体を混合し酵母発酵工程を有する、スルフォラファン又はその類縁体とグルタチオン抱合体の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルフォラファン又はその類縁体の中から選択される少なくとも1種のイソチオシアネート類の含有物とグルタチオン含有酵母菌体を混合し酵母発酵工程を有する、スルフォラファン又はその類縁体とグルタチオン抱合体の製造方法。
【請求項2】
スルフォラファン又はその類縁体の中から選択される少なくとも1種のイソチオシアネート類の含有物とグルタチオン含有酵母菌体との混合工程を有する、スルフォラファン又はその類縁体とグルタチオン抱合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2の工程を含む、スルフォラファン類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルフォラファンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタチオンは、システイン、グルタミン酸、グリシンからなるトリペプチドであり、γ -L -グルタミル-L -システイニル-グリシンとも呼ばれる。このグルタチオンは、生体内に広く分布し、肝臓、脾臓、副腎、などは、特に多く含まれている。
【0003】
グルタチオンは、生体内で、様々な機能を発揮することが知られている。例えば、活性酸諸種(ROS)の消去による抗酸化作用、メラニン産生抑制、コラーゲン産生促進による美白、美肌作用、非アルコール性脂肪肝への治療効果、カルボニル化合物の解毒作用などである。(特許文献1)
【0004】
また、アブラナ科の植物には、イソチオシアネート類であるスルフォラファンが含まれている。スルフォラファンは、生体内で、免疫賦活作用、抗酸化作用、肝臓機能改善などの機能を発揮することが知られている。スルフォラファンは、腸細胞内に進入すると、グルタチオンに抱合され代謝されることが知られている(特許文献2)。さらにスルフォラファンは、油状物質であること、特有の臭気、刺激などがあり、食品、化粧品に使用しにくいという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2016/140237
【特許文献2】WO2010/001096
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようななか、本発明は、スルフォラファンの製造方法と、さらに、安定化したスルフォラファンを得る方法を見出すことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、酵母菌体を使用することで、植物等のスルフォラファンを含む組成物からスルフォラファンを製造できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下のような発明である。
(1) スルフォラファン又はその類縁体の中から選択される少なくとも1種のイソチオシアネート類とグルタチオン含有酵母菌体を混合し酵母発酵工程を有する、スルフォラファン又はその類縁体とグルタチオン抱合体の製造方法、
(2) スルフォラファン又はその類縁体の中から選択される少なくとも1種のイソチオシアネート類とグルタチオン含有酵母菌体との混合工程を有する、スルフォラファン又はその類縁体とグルタチオン抱合体の製造方法、
(3)前記(1)又は(2)の工程を含む、スルフォラファン類の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、スルフォラファン類をアブラナ科の植物等の粉砕物又は抽出物からスルフォラファン類とグルタチオンの抱合体を製造することができ、アブラナ科の植物等から抽出効率があがり、さらにスルフォラファン類の安定性を増す複合体を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で、スルフォラファン類とは、スルフォラファン又はスルフォラファン前駆体であるグルコラファニン(スルフォラファングルコシノレート)、スルフォラファンの類縁体、及びアブラナ科植物に含有するイソチオシアネート類を含めてスルフォラファン類とする。さらに、スルフォラファン類を含む野菜類、スルフォラファン類を含む組成物等をスルフォラファン類含有物と記載する。また、スルフォラファン類、スルフォラファン類含有物を合わせて、スルフォラファン類含有物等と記載することもある。
【0010】
本発明は、スルフォラファン類含有物を酵母の培地中に添加し、酵母を培養させる工程又は、スルフォラファン類含有物と酵母を混合する工程を含むである。本発明により、アブラナ科の植物などのスルフォラファン類含有物から、スルフォラファン又はスルフォラファン類縁体を効率的に単離できる。
【0011】
本発明で使用する酵母は、グルタチオンを産生する酵母又はグルタチオンを含む酵母を使用することができる。使用する酵母は、グルタチオンを含む酵母であれば制限なく使用できるが、食用酵母を使用することが好ましい。例えば、パン酵母などのサッカロマイセス属に属する酵母、クリベロマイセス属酵母、キャンディダ属酵母、ピヒヤ属酵母などが例示できす。グルタチオンは、発酵時にグルタチオンを菌体内に産生する酵母、又はグルタチオンを酵母菌体外に放出する酵母のいずれでも良い。グルタチオンの含量に制限はないが、菌体中に0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上含む酵母菌体を使用する。
【0012】
酵母を培養する際の培地には、炭素源として、ブドウ糖、酢酸、エタノール、グリセロール、糖蜜、亜硫酸パルプ廃液等が用いられ、窒素源としては、尿素、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸塩などが使用される。リン酸、カリウム、マグネシウム源も過リン酸石灰、リン酸アンモニウム、塩化カリウム、水酸化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の通常の工業用原料でよく、その他亜鉛、銅、マンガン、鉄イオン等の無機塩を添加する。その他は、ビタミン、アミノ酸、核酸関連物質等を使用しないでも培養可能であるが、これらを添加しても良い。コーンスチーブリカー、カゼイン、酵母エキス、肉エキス、ペプトン等の有機物を添加しても良い。
【0013】
培養温度やpH等の培養条件は、特に制限なく適用でき、使用する酵母菌株に合わせて設定すれば良い。一般的には、培養温度は20~37℃、pHは3.0~8.0など、当業者が適宜調整できる範囲で良い。
【0014】
本発明の培養形式としては、バッチ培養、あるいは連続培養のいずれでも良いが、工業的には後者が望ましい。培養時の撹拌、通気等の条件は特に制限なく、一般的な方法でよい。培養時間も制限はないが、使用する酵母が産生又は菌体中に保持しているグルタチオン量により、当業者が適宜調整することができる時間で良い。通常は、スルフォラファン類とグルタチオンは速やかに反応するため、30分から6時間程度培養する。
【0015】
本発明では、前段までに記載した酵母の培養時に、スルフォラファン類又はスルフォラファン類含有物を培地中に添加する。添加するスルフォラファン類含有物等は、特に制限はない。市販されているスルフォラファン含有物や精製品、粗精製品を使用することもできる。スルフォラファン類含有物を培地に添加する工程は、特に制限がない。培養開始時である酵母を植菌時に添加しても良いし、定常期から添加しても良い。
【0016】
さらに、本発明では、スルフォラファン類又はスルフォラファン類含有物とグルタチオン含有酵母を混合するだけでも良い。混合比率は、当業者が適宜調整できる範囲の混合比でよく、制限はない。例えば、スルフォラファン類の重量に対して、5倍重量以上の酵母菌体、好ましくは10倍重量以上の酵母菌体を混合する。具体的にはスルフォラファン類含有物中のスルフォラファン類が10mg含有する場合、酵母菌体を50~100mg混合する。菌体重量は、乾燥菌体重量換算とする。混合時の溶媒は、培地を用いても良いし、緩衝液を用いても良い。スルフォラファン類含有物等と酵母菌体を混合した場合は、攪拌をしたほうが良い。攪拌は、酵母培養に当業者が通常採用される攪拌方法、条件で良い。混合時間は、0.5~4時間混合攪拌する。
【0017】
本発明で使用するスルフォラファン類含有物は、アブラナ科の植物の粉末、破砕物、抽出物を使用することもできる。アブラナ科の植物である、ブロッコリー、ブロッコリースプラウト、キャベツなどは、スルフォラファンの前駆体である、グルコラファニン(スルフォラファングルコシノレート)として含まれている、本発明では、前駆体の状態でも良いが、スルフォラファンに変換してから、培地に添加しても良い。スルフォラファンへの変換方法は、当業者が採用できる方法で良いが、ミロシナーゼで変換する方法が一般的である。ミロシナーゼは、アブラナ科の植物細胞にも含まれるため、ブロッコリーやブロッコリースプラウト、キャベツを破砕、粉砕等し、アブラナ科の植物細胞中のミロシナーゼを利用する方法でも良い。
【0018】
本発明では、アブラナ科の植物等の一部又は全部をそのまま、破砕、粉砕したものをそのまま使用することができる。破砕、粉砕の方法は、周知の方法で良い。粉砕、破砕後は、乾燥したものでも良い。本発明でスルフォラファンを使用する場合は、アブラナ科植物を加熱せず、破砕、せん断、搾汁等することで、植物に内在するミロシナーゼを反応させて、スルフォラファンに変換させる方法も採用できる。植物などの破砕物を使用する場合は、固形分を含んでいても良く、遠心やろ過により、固形分を除去したものや後述の抽出物を使用しても良い。
【0019】
本発明では、前段の粉砕物からスルフォラファン類を抽出した抽出物を使用することもできる。抽出方法も周知の方法で良い。例えば、溶媒で抽出する方法を例示することができる。溶媒としては、特に制限はないが、経口摂取されるため、水又はエタノール、エタノール水和物を使用することが特に好ましい。抽出方法は、周知の熱水抽出、エタノール抽出など方法でよい。
【0020】
本発明で使用するアブラナ科植物は、ブロッコリー、ブロッコリースプラウト、キャベツなどのアブラナ科の野菜、ワサビなどを使用することができる。ブロッコリースプラウトなどの種子もスルフォラファン類を多く含むため使用することができる。
【0021】
スルフォラファン含有物の培地中への添加量は、培養開始時の酵母菌体重量に対して、スルフォラファンが0.0001~10重量%添加されるようにスルフォラファン含有物を培地に添加する。なおスルフォラファンの濃度測定は、本明細書の実施例の記載による。
【0022】
培養終了後は、菌体のみを使用することも可能であるが、菌体と培地をすべて利用することもできる。菌体を使用する場合は、遠心分離、ろ過などにより、集菌し、滅菌、乾燥工程により、本発明の組成物を得る。菌体と培地成分を使用する場合は、滅菌、乾燥をすることで、本発明の組成物をえることができる。滅菌、乾燥は、周知の方法で良く、加熱滅菌、噴霧乾燥、ドラムドライ乾燥などを選択することができる。
【0023】
さらに、グルタチオンとスルフォラファン抱合体を抽出、精製をしても良い。抽出方法は、公知の酵母菌体からグルタチオンを抽出する方法で良い。具体的には、特開平6-56884の記載の方法を例示することができる。常法により銅塩を形成させ、硫化水素で脱銅することにより、グルタチオンを含む溶液を得る。該グルタチオン含有液を酢酸形とした弱塩基性陰イオン交換樹脂に通液し、水で洗浄する。次いで酢酸水溶液を用い溶離する。さらに水で溶離を続けても良い。これに加えて、弱塩基性陰イオン交換樹脂から溶出液を直列に接続した弱塩基性陰イオン交換樹脂に通液する。このように、公知のグルタチオンの精製法を採用でき、揮発性のスルフォラファン類を容易に得ることができる。本発明により得られる組成物は、グルタチオンとスルフォラファン類の抱合体を含む組成物であるが、本組成物をそのままスルフォラファン類として使用でき、さらにグルタチオンとしても利用することができる。
【0024】
前段までの製造方法により得られた組成物は、他の物質を添加することができる。添加できるものは、通常のサプリメント、飼料、医薬品、化粧品に添加される賦形剤、各種ビタミン剤、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などの無機物、乳酸、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸、タンパク質、乳酸菌抽出物、ポリフェノール、植物抽出物などの有機物などを適宜添加しても良い。また、一般食品に添加される、酸味料、甘味料、香料、安定化剤なども添加することができる。
【0025】
本発明品を医薬品として投与する方法は、特に限定されず、経口投与、静脈内、腹膜内もしくは皮下投与等の非経口投与をあげることができる。具体的には、錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、浸剤・煎剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、等の経口剤、又は注射剤、点滴剤、クリーム剤、坐剤等の非経口剤のいずれでもよい。これらの錠剤等の調整方法は、常法を採用でき、本発明での制限はない。
【0026】
本発明の組成物は、医薬品だけでなく、機能性食品、栄養補助食品としても摂取可能であり、その場合、前段の摂取量になるよう摂取すればよい。
【0027】
本発明の組成物は、化粧料、外用剤としても利用できる。化粧料又は外用剤として使用する場合、化粧料等に一般的に使用される他の物質と混合して使用することができる。
【実施例0028】
以下に、本願の発明をより詳細に説明する。しかし、本願発明は、以下の説明によって、限定されるものではない。
【0029】
(スルフォラファンの濃度測定方法)
本発明のスルフォラファン及びSNF-GSHの含量測定は、高速液体クロマトグラフ法(HPLC)を用いた。下記の条件で濃度既知の標準水溶液、及び試料水溶液を分析し、ピーク高さの比から組成物中のスルフォラファン含量を測定した。
移動相:A:アセトニトリル:水=1:19/10mM酢酸アンモニウム+2%ギ酸
B:アセトニトリル:水=19:1/10mM酢酸アンモニウム+2%ギ酸
カラム:Develosil C30 column(150x2.0 mm, 3 ?m)
温度:30℃
流速:0.25mL/min
プログラム:0min: A=92%, 8min: A=0%, 8.01min: A=92%, 20min: A=92%
LC-MS:ESI
【0030】
(グルタチオン(GSH)の濃度測定方法)
本発明のグルタチオン含量の測定には、高速液体クロマトグラフ法(HPLC)を用いた。下記の条件でグルタチオン濃度既知の標準水溶液、及び試料水溶液を分析し、ピーク高さの比から組成物中のグルタチオン含量を測定した。
移動相:40mMリン酸アンモニウム緩衝液(pH3.2)
カラム:ODSカラム(150×4.6mm、ポアサイズ5μm)
温度:35℃
流速:1.0mL/min
検出波長:210nm
【0031】
(実施例1)
グルタチオン含有トルラ酵母(NBRC0988)と市販のスルフォラファン(SFN)を使用し、YPD培地、培養温度30℃で以下の検討をした。
SFN-GSH抱合体の形成可否を検討するために、まずSFNの添加濃度を検討した。植菌時にSFNを1, 10, 100, 1000 ug/ml添加し、2日間培養した。結果、SFN 100, 1000 ug/ml添加群においては、細胞毒性により全く増殖が見られなかった。一方で増殖が見られたSFN 1, 10 ug/ml添加群においては、GSH抽出と同じ方法で抽出を行い、SFN-GSHの測定を行った。その結果、SFNを添加することで酵母内にSFN-GSH抱合体を形成することが確認された。
【0032】
酵母が定常期になってから、SFNを添加し抱合体形成可否を検討した。詳しくは植菌に2日間培養した後、SFNを添加し、最長で24時間培養を行った。本結果においても、抱合体の形成が確認された。また、SFN添加1hr後でもSFN-GSH確認されたので、SFNが早い段階で酵母内に入ることが確認できた。
以上から、SFNの添加時期は、特に制限がないことが分かった。
【0033】
(実施例2)
培地に添加するSFNの濃度を変更してSFN-GSH抱合体の形成を検討した。培養条件は、実施例1と同様で、酵母がコンフルエントになってから、SFNを添加した。SFN(0, 25, 100, 250 ug/mL)を添加した後、30℃に設定した培養振とう機にて1時間反応させた。その後、熱水抽出を行い、エキス中のSFN-GSH含量をLC-MSにて分析した。その結果、SFN添加濃度依存的にSFN-GSH含量も増加することを確認した。SFN250ug/ml添加において、SFN-GSHの対菌体含量が0.2%であることが確認された。
【0034】
(実施例3)
酵母をパン酵母に変えた以外は、実施例1と同様にSFN-GSH抱合体の形成を確認した。使用したパン酵母は、ダイヤイースト、ダイヤイーストREIZO、ダイヤイーストMILD2(いずれも三菱商事ライフサイエンス社製)を使用した。各酵母中のGSH含量は、ダイヤイースト1.1重量%、ダイヤイーストREIZO1.1重量%、ダイヤイーストMILD21.3重量%であった。実施例1と同様の培養条件で、SFN添加によるSFN-GSH抱合体の形成を確認した。各酵母の1%と10%溶液を調整し、SFN(100ug/mL)を添加し、60min後のSFN-GSH抱合体の量を検討した。結果、いずれの酵母においてもSFN-GSH抱合体が確認できた。結果は表1に示す。
【0035】
【0036】
(ブロッコリー抽出物の使用)
市販のブロッコリー抽出物を使用し、実施例3のダイヤイーストを使用しSFN-GSH抱合体の形成を確認した。市販のブロッコリー抽出物は、SFNの前駆体を含んでいるため、ミロシナーゼで処理した。具体的には、ブロッコリー抽出物(0.1%)にミロシナーゼを添加した溶液18mlを1hr酵素反応させた後、10%に調整したダイヤイーストを2ml添加(ダイヤイーストの終濃度:1%)し、さらに60min間反応させて、SFN-GSH抱合体の形成を検討した。ネガティブコントロールとして、ダイヤイーストを添加していないブロッコリー抽出物を用いた。結果、ブロッコリー抽出物群において、SFNは検出されたが、SFN-GSH抱合体は確認できなかった。
結果は表2に示す。
【0037】
【0038】
(ブロッコリー破砕物の使用)
市販のブロッコリーを未加熱でフードプロセッサーにて破砕した。破砕後、固形物を含めて、培地に添加した。培養条件は、実施例3と同様で、SFN濃度は、固形物をフィルターろ過で除去後の溶液中の濃度を測定した。
ブロッコリー破砕物を使用しても、SFN-GSH抱合体を確認できた。
グルタチオンの精製法を採用し、 SFN-GSH抱合体を精製した。具体的には、常法により銅塩を形成させ、硫化水素で脱銅することにより、グルタチオンを含む溶液500mlを得た。該グルタチオン含有液を酢酸形とした弱塩基性陰イオン交換樹脂を詰めたカラム(内径45mm、高さ180mm)に通液し、500mlの水で洗浄した。次いで6.0%の酢酸水溶液260mlを用いて溶離した。さらに水で溶離を続けた。カラムよりグルタチオンの溶出が始まると同時に、直列に接続した弱塩基性陰イオン交換樹脂(内径30mm、高さ170mm)に通液し、SFN-GSHを回収した。
回収物を本明細書の記載の方法で、SGN-GSHの含有を確認し、精製出来ていることを確認した。