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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132744
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/24 20180101AFI20240920BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240920BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240920BHJP
   C09J 199/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C09J7/24
C09J7/38
C09J201/00
C09J199/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043658
(22)【出願日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴士
(72)【発明者】
【氏名】小倉 透
(72)【発明者】
【氏名】山本 大輔
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA04
4J040DF021
4J040JB09
4J040MA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、加工時においても塩素の発生がなく、切削加工時にバリ又はヒゲの発生がない表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、基材層及び該基材層の一方の面に積層される粘着層からなる被着体の切断加工時に被着体に貼着する表面保護フィルムであって、基材層が、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層であり、レーザー回折散乱法により得られる体積基準の累積50%粒子径(D50)が、1μm以上8μm未満の炭酸カルシウムを基材層全体に対して2質量%以上を含有する切断加工時に被着体の表面に貼着する表面保護フィルムに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層及び該基材層の一方の面に積層される粘着層からなる被着体の切断加工時に被着体に貼着する表面保護フィルムであって、基材層が、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層であり、レーザー回折散乱法により得られる体積基準の累積50%粒子径(D50)が、1μm以上8μm未満の炭酸カルシウムを基材層全体に対して2質量%以上を含有する切断加工時に被着体の表面に貼着する表面保護フィルム。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂が、低密度ポリエチレンである請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記炭酸カルシウムのレーザー回折散乱法により得られる体積基準の累積50%粒子径(D50)が、1μm以上6μm未満である請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記炭酸カルシウムが、表面処理された炭酸カルシウムである請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。
【請求項5】
表面処理が、親油性処理である請求項4に記載の表面保護フィルム。
【請求項6】
親油性処理が、脂肪酸処理である請求項5に記載の表面保護フィルム。
【請求項7】
切断加工が、せん断加工である請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。
【請求項8】
被着体が、金属板である請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断加工用の表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切断加工する際に適した表面保護フィルムとしては、軟質ポリ塩化ビニルを基材とし、その裏面側に粘着剤層を設けたものが多用されてきた。
上記軟質ポリ塩化ビニルからなる基材を使用した表面保護フィルムは、その加工時に比較的切れにくい強度特性とその基材の汎用性より現在も非常に多く使用されているが、焼却時有害な塩化水素を発生することからその廃棄物処理の問題があった。
【0003】
これに対して、環境にやさしく、切断面に糸状のバリを発生させない切断加工性に優れた粘着シートとして、基材層の少なくとも一面に粘着層が積層されている粘着シートであって、(a)23℃における縦方向の引張弾性率(MD-M)と横方向の引張弾性率(TD-M)とが、50~2000MPaの範囲にあり、縦方向の引張弾性率(MD-M)と横方向の引張弾性率(TD-M)との比{(MD-M)/(TD-M)}が、0.5~2の範囲にあり、(b)23℃における縦方向の引裂強さ(MD-T)と横方向の引裂強さ(TD-T)とが、1~100N/mmの範囲にあり、縦方向の引裂強さ(MD-T)と横方向の引裂強さ(TD-T)との比{(MD-T)/(TD-T)}が、0.5~2の範囲にあり、(c)基材層が、オレフィン系重合体を含有する特徴を有する粘着シートが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、被着体に表面保護フィルムが貼着された状態で被着体を切断加工する際に、表面保護フィルムがきれいに切断され、糸引き、毛羽立ち等の外観不良を生じず、なおかつフィルム剥離後の被着体表面への糊残り等の汚染が極めて少ない表面保護フィルムとして、エチレン系重合体(A1)を主成分とする基材層と、非晶性α-オレフィン系重合体(B1)5~40質量%、及び密度が0.880~0.938g/cmである直鎖状低密度ポリエチレン(B2)60~95質量%の混合樹脂を主成分とする粘着層とを積層した共押出積層フィルムを有することを特徴とする表面保護フィルムが知られている(特許文献2参照)。
【0005】
また、被着体に表面保護フィルムが貼着された状態で被着体を切断加工する際に、表面保護フィルムがきれいに切断され、糸引き、毛羽立ち等の外観不良を生じない切断加工性を有する表面保護フィルムとして、粘着層(I)と基材層(II)とを有する表面保護フィルムであって、該粘着層(I)が、結晶性オレフィンブロックを有するブロック共重合体(Ia)と、密度が0.880~0.938g/cmである直鎖状低密度ポリエチレン(Ib)とを主成分とし、該基材層(II)の主成分が、エチレン系重合体(IIa)であり、特に直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、又は低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの混合樹脂であることを特徴とする表面保護フィルムが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-68420号公報
【特許文献2】特開2009-166277号公報
【特許文献3】特開2010-36448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記した先行技術に記載された表面保護フィルムにおいても、表面保護フィルムを貼着した被着体、特に金属板を切断加工するとき、特にせん断加工するときにバリ又はヒゲ等の発生がない加工特性の点について、その特性が不十分であるという問題があった。
本発明は、切断加工時においても塩素の発生がなく、バリ又はヒゲの発生がない切断加工時に被着体に貼着する表面保護フィルムを提供することを課題する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、基材層と粘着層からなる表面保護フィルムにおいて、基材層を特定の平均粒径を有する炭酸カルシウムを特定量含むポリオレフィン系樹脂を主成分とする層とすることにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、基材層及び該基材層の一方の面に積層される粘着層からなる被着体の切断加工時に被着体に貼着する表面保護フィルムであって、基材層が、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層であり、レーザー回折散乱法により得られる体積基準の累積50%粒子径(D50)が、1μm以上8μm未満の炭酸カルシウムを基材層全体に対して2質量%以上を含有する切断加工時に被着体の表面に貼着する表面保護フィルムに関する。
前記ポリオレフィン系樹脂が、低密度ポリエチレンであるのが好ましい。
前記炭酸カルシウムのレーザー回折散乱法により得られる体積基準の累積50%粒子径(D50)が、1μm以上6μm未満の範囲であるのが好ましい。
前記炭酸カルシウムが、表面処理された炭酸カルシウムであるのが好ましく、さらに表面処理が、親油性処理であるのが好ましく、さらに親油性処理が、脂肪酸処理であるのが好ましい。
また、切断加工が、せん断加工であるのが好ましい。
さらに被着体が、金属板であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の表面保護フィルムを用いることによって、本発明の表面保護フィルムを貼付した被着体の加熱時加工時又は本発明の表面保護フィルムの加熱処理時においても塩素系の有毒ガスの発生がなく、本発明の表面保護フィルムを貼付した被着体の切断加工時に該表面保護フィルムにバリ又はヒゲが生じないという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の表面保護フィルムは、基材層及び該基材層の一方の面に積層される粘着層からなる表面保護フィルムであって、基材層が、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層であり、レーザー回折散乱法により得られる体積基準の累積50%粒子径(D50)が、1μm以上8μm未満の炭酸カルシウムを基材層全体に対して2質量%以上含有し、被着体の切断加工時に被着体に貼着される。
【0012】
本発明の表面保護フィルムを構成する基材層は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂層である。ここで、本発明において「主成分」とは、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは80重量%以上であり、最も好ましくは90重量%以上であることを意味する。
【0013】
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン単量体の単独重体若しくはこれらの共重合体、又は前記オレフィン単量体と酢酸ビニル等のアルケン誘導体との共重合体であれば、特に限定されない。より具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低結晶性或いは非晶性のエチレン-α-オレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体(ランダム共重合体及び又はブロック共重合体)、プロピレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-n-ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
なお、前記α-オレフィンとしては、プロピレン、又はエチレンと共重合可能であれば特に限定されない。具体的には、例えば、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン-1、ペンテン-1、ヘプテン-1等が挙げられる。
【0015】
前記ポリオレフィン系樹脂として、低密度ポリエチレンであるのが好ましい。前記低密度ポリエチレンとして、具体的には、超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE)、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)等が挙げられる。その密度は、0.880g/cm~0.940g/cmの範囲が好ましく、0.910g/cm~0.930g/cmの範囲がより好ましく、0.915g/cm~0.925g/cmの範囲がさらに好ましい。
【0016】
本発明に用いられる炭酸カルシウムとは、貝殻、鶏卵の殻、石灰岩、白亜などの主成分である組成式CaCOで表されるカルシウムの炭酸塩であれば特に限定されない。より具体的には、石灰石を粉砕、分級して得られる重質炭酸カルシウム(天然炭酸カルシウム)、前記重質炭酸カルシウムと化学反応により得られる軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)が挙げられる。本発明においては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムのいずれも用いることができるが、表面処理をすることを考慮し、軽質炭酸カルシウムを好ましく用いることができる。前記炭酸カルシウムは、カルサイト結晶(三方晶系菱面体晶)、アラゴナイト結晶(直方晶系)、バテライト結晶(六方晶)等の結晶多形のうち、いずれも用いることができるが、中でもアラゴナイト結晶であることが好ましい。
【0017】
前記炭酸カルシウムは、表面処理された炭酸カルシウムであることが好ましい。ここで、表面処理炭酸カルシウムとは、炭酸カルシウムの表面を表面処理剤が覆う状態となっている炭酸カルシウム、又は少なくとも炭酸カルシウムの表面に表面処理剤が付着した状態となっている炭酸カルシウムを示す。炭酸カルシウムの表面処理剤として、具体的には、脂肪酸及びその誘導体、樹脂酸及びその誘導体、シリカ、有機ケイ素化合物、縮合リン酸及び縮合リン酸塩等が挙げられる。中でも、脂肪酸の金属塩が好ましく、特に脂肪酸ナトリウム塩又は脂肪酸カリウム塩が好ましく挙げられる。前記脂肪酸として、具体的には、炭素数が6~24の飽和又は不飽和脂肪酸、好ましくは炭素数が10~20の飽和又は不飽和脂肪酸等が挙げられる。前記脂肪酸として、具体的には、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸(ペラルゴン酸)、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ペンタデカン酸(ペンタデシル酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、イコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、エイコセン酸、エルカ酸等が挙げられる。これらの脂肪酸及びその金属塩を、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
前記表面処理された炭酸カルシウムは、例えば、前記脂肪酸を水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ金属水溶液中で加熱しながら、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を得、次に、炭酸カルシウムと水とのスラリーに、脂肪酸アルカリ金属塩水溶液を添加して攪拌し、さらに得られた炭酸カルシウムスラリーをフィルタープレス等の方法によって脱水し、箱型乾燥機等を用いて乾燥することによって製造することができる。
【0019】
表面処理された炭酸カルシウムを含む前記炭酸カルシウムのレーザー回折散乱法により得られる体積基準の累積50%粒子径(D50)は、1μm以上8μm未満であり、より好ましくは1μm以上6μm未満である。D50が1μm未満及び8μm以上では、流れ方向のトラウザー法引裂強度が増加してフィルムが伸び、前記表面保護フィルムを貼付した被着体を切断加工する際に、前記表面保護フィルムのバリ又はヒゲが生じる。
【0020】
前記基材層中に含まれる前記ポリオレフィン系樹脂と前記炭酸カルシウムの含有量は、前記基材層全体の質量に対して、前記ポリオレフィン系樹脂98質量%以下、前記炭酸カルシウム2質量%以上の範囲が好ましく、前記ポリオレフィン系樹脂98~50質量%及び前記炭酸カルシウム2~50質量%の範囲が好ましく、前記ポリオレフィン系樹脂98~60質量%及び前記炭酸カルシウム2~40質量%の範囲、前記ポリオレフィン系樹脂98~70質量%及び前記炭酸カルシウム2~30質量%の範囲、前記ポリオレフィン系樹脂98~80質量%及び前記炭酸カルシウム2~20質量%の範囲がさらに好ましく、前記ポリオレフィン系樹脂98~90質量%及び前記炭酸カルシウム2~10質量%の範囲が特に好ましい。
【0021】
前記基材層中には、必要に応じて添加剤を含めることができる。前記添加剤として、具体的には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、表面潤滑剤、可塑剤、低分子ポリマー、腐食防止剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機及び有機の充填剤(例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等)、金属粉、着色剤、顔料、耐熱安定剤、目ヤニ防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
【0022】
前記基材層の厚さは、特に限定されないが、2~200μmの範囲が好ましく、10~180μmの範囲、50~160μmの範囲が好ましく、60~140μmの範囲がより好ましく、80~130μmの範囲が特に好ましい。
【0023】
本発明に用いられる粘着剤層は、主成分として樹脂成分を含有し、必要に応じて、粘着付与剤や軟化剤等から構成される。これらの各成分の種類や配合量を適宜調整することによって、粘着剤層の粘着力及び引張弾性率を調整することができる。
【0024】
前記樹脂成分として、具体的には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、EVA系樹脂、ゴム系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等が挙げられる。特に、ポリオレフィン系樹脂、EVA系樹脂、アクリル系樹脂、及びゴム系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、中でも低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、アクリル系樹脂、及びゴム系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。前記樹脂成分は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
前記粘着付与剤として、具体的には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油系樹脂、脂環族石油系樹脂、芳香族系樹脂等の公知の粘着付与剤が挙げられる。前記粘着付与剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
前記粘着付与剤の配合量は、前記樹脂成分100質量部に対して、1~50質量部の範囲であることが好ましく、1~30質量部の範囲であることがより好ましく、1~20質量部の範囲であることがさらに好ましい。
【0027】
前記軟化剤として、具体的には、低分子量のゴム系材料、プロセルオイル(パラフィン系オイル)、石油系軟化剤、エポキシ系化合物が挙げられる。前記軟化剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
前記軟化剤の配合量は、前記樹脂成分100質量部に対して、1~25質量部であることが好ましく、5~25質量部であることがより好ましく、5~15質量部であることがさらに好ましい。
【0029】
前記粘着剤層には、前記した成分以外にも、必要に応じて、紫外線防止剤、酸化防止剤、充填剤、滑剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0030】
前記粘着剤層を作製する際に、前記樹脂成分と前記樹脂成分以外の成分(以下、「他の成分」ともいう)を混合して押出成形するか、あるいは予め他の成分を前記樹脂成分に練り込んだマスターバッチを押出成形することで、前記樹脂成分に配合することができる。
【0031】
前記粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、5~20μmの範囲が好ましく、7~18μmの範囲がより好ましく、9~15μmの範囲がさらに好ましい。
【0032】
本発明の表面保護フィルムの製造方法は、特に限定されない。具体的には、粘着剤層を作製するための押出成形機に粘着剤層を構成する成分(以下、「粘着剤層成分」ともいう)を供給し、基材層を作製するための押出成形機に基材層を構成する成分(以下、「基材層成分」ともいう)を供給し、2台の押出機から各々の材料を一つのダイスから共押出しする二層共押出法により一体に成形する方法、公知のインフレーション法、Tダイ法、カレンダ法などにより予め成形した基材層をコロナ処理などの表面処理した後に粘着材料を塗布・乾燥する方法や、剥離シートに粘着材料を塗布・乾燥した後に予め成形された基材層と圧着する方法、又は予め成形された基材層に、粘着層を溶融押出しラミネートする方法等が挙げられる。
【0033】
前記基材層成分は、前記熱可塑性樹脂と前記添加剤を混合して押出成形機に供給してもよく、予め前記添加剤を前記熱可塑性樹脂に練り込んだマスターバッチを押出成形機に供給してもよい。また、前記粘着剤層成分は、前記樹脂成分と前記他の成分を混合して押出成形機に供給してもよく、予め前記他の成分を前記樹脂成分に練り込んだマスターバッチを押出成形機に供給してもよい。
【0034】
本発明の表面保護フィルムの膜厚は、特に制限されないが、60~220μmの範囲が好ましく、70~180μmの範囲がより好ましく、80~140μmの範囲がさらに好ましい。
【0035】
前記表面保護フィルムは、粘着剤層が設けられた面とは反対側の面に離型層を備えていてもよい。前記離型層としては、離型性を有する材料であればよく、例えば、シリコーン樹脂、有機樹脂変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アミノアルキド樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。また、離型性を向上させるために、前記粘着剤層に剥離助剤を添加してもよい。剥離助剤としては、例えば、シリコーン系剥離助剤、パラフィン系剥離助剤、ポリエチレンワックス、アクリル系重合体等が挙げられる。
【0036】
本発明の表面保護フィルムは、被着体の切断加工時に被着体に貼着して使用される。
前記表面保護フィルムが貼着される被着体は、特に限定されないがが、具体的には、光学デバイス(液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、無機ELディスプレイ、有機ELディスプレイ、陰極管表示装置、表面電界ディスプレイ、電子ペーパー等)、光学フィルム(偏光板、円偏光板、位相差板等)、金属板、塗装した金属板、樹脂板、ガラス板、木材等が挙げられる。中でも、SUS板、アルミニウム板等の金属板を好ましく挙げられる。
【0037】
前記切断加工として、具体的には、切断水、又は水に研磨剤を混ぜたものを細いノズルから噴射し、その勢いを使って材料を切断するウォータージェット切断、電気を放電させたときに発生するアーク(プラズマ)の熱で材料を溶かして切断する電気(プラズマ)切断、レーザー光をレンズで集約し、その熱で材料を溶かして切断するレーザー切断等が挙げられるが、中でも、機械切断が好ましく、さらに、せん断加工を好ましく挙げられる。せん断加工は、プレス機、シャーカッター等を利用してせん断力により材料を切断する方法であれば、特に限定されないが、具体的には、シャーリング(切断)加工、打ち抜き加工(パンチング加工)、切り欠き加工(ノッチング加工)等が挙げられる。
【実施例0038】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0039】
(参考例1)
低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、ノバテックLD、LC620)80質量部、炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、PO―320-B-10、レーザー回折散乱法により得られる体積基準の累積50%粒子径(D50):1.20μm)20質量部を190℃で溶融混合し、炭酸カルシウムが分散したマスターバッチを得た。得られたマスターバッチ12質量部と低密度ポリエチレン88質量部を押出温度210℃でフィルム厚さが90μmとなるようにTダイで押出して本発明の基材層となるフィルム(以下「基材層用フィルム」という)を作製した。
【0040】
得られた基材層用フィルムを以下の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0041】
(破断伸度)
JIS K7127:1999に準拠して破断伸度を測定した。測定には、幅15mm×長さ75mmのサイズの上記基材層用フィルムを用いた。サンプルの測定方向はMD方向(フィルム形成時の溶融樹脂の流れ方向)とTD方向(フィルム形成時の溶融樹脂の流れ方向に直交する方向)とした。チャック間距離は50mmとした。試験速度は300mm/分とした。
【0042】
(引裂強度)
JIS K7128-1:1998に規定されたトラウザー法に準拠して引裂強度を測定した。測定には、幅50mm×長さ150mmのサイズの上記基材層用フィルムを用いた。サンプルの測定方向はMD方向とTD方向とした。試験速度は200mm/分とした。
なお、測定中に所定の切り込み方向から少なくとも一部が外れた引裂が認められた場合を「破断」とした。
【0043】
(参考例2)
炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、PO―220-B-10、レーザー回折散乱法により得られる体積基準の累積50%粒子径(D50):2.10μm)を用いる以外は、参考例1と同様に行い、基材層用フィルムを作製し、同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0044】
(参考例3)
炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、PO―150-B-10、レーザー回折散乱法により得られる体積基準の累積50%粒子径(D50):3.90μm)を用いる以外は、参考例1と同様に行い、基材層用フィルムを作製し、同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0045】
(参考例4)
炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、PO―120-B-10、レーザー回折散乱法により得られる体積基準の累積50%粒子径(D50):5.20μm)を用いる以外は、実施例1と同様に行い、基材層用フィルムを作製し、同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0046】
(比較参考例1)
炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製、PO―100-B-10、レーザー回折散乱法により得られる体積基準の累積50%粒子径(D50):8.00μm)を用いる以外は、参考例1と同様に行い、基材層用フィルムを作製し、同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0047】
(比較参考例2)
低密度ポリエチレンを91質量部、炭酸カルシウムマスターバッチを9質量部を用いる以外は、参考例3と同様に行い、基材層用フィルムを作製し、同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0048】
(比較参考例3)
炭酸カルシウムを用いない以外は、参考例1と同様に行い、基材層用フィルムを作製し、同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【実施例0050】
粘着剤層成分として、アクリル系粘着剤及び硬化剤を混合して得たアクリル系粘着層用組成物を用い、参考例1で作製した基材層用フィルムに乾燥後の粘着層厚さが12μmとなるようにアクリル系粘着層用組成物を塗布し、エアバスを用いて60℃で3分間乾燥させることにより、基材層の厚みが90μm、粘着剤層の厚みが12μm、膜厚が100μmである表面保護フィルムを得た。得られた表面保護フィルムについて、以下のように評価した。その結果を、表2に示す。
【0051】
<打ち抜き性の評価>
得られた上記表面保護フィルムを0.2mm厚さのアルミニウム板に貼付して室温で24時間放置した。その後、穴あけパンチ(50mmφ)を用いて打ち抜き、打ち抜かれた表面保護フィルムの端部の形状を光学顕微鏡で観察し、評価結果とした。
なお、評価結果は下記の基準で判断した。
◎:打ち抜かれた保護フィルム端部の形状は平滑であった。
〇:打ち抜かれた保護フィルム端部にヒゲ等の発生がわずかに観察された。
×:打ち抜かれた保護フィルム端部のヒゲ等の発生が観察された。
【0052】
(実施例2~4、比較例1~3)
参考例2~4で調整した基材層用樹脂組成物を用いる以外、実施例1と同様に行い、実施例2~4の表面保護フィルムを作製し、同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
また、参考比較例1~3で調整した基材層用樹脂組成物を用いる以外、実施例1と同様に行い、比較例1~3の表面保護フィルムを作製し、同様の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
以上のことから、基材層用樹脂組成物から得られるフィルムのMD方向のトラウザー法による引裂強度と打ち抜き評価に、相関性があることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の表面保護フィルムは、切断加工において、バリ、ヒゲ等が発生しないため、加工用の金属等の被着体の表面保護フィルムとして有用である。