(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132750
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】けい酸質肥料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C05D 9/00 20060101AFI20240924BHJP
C05D 3/02 20060101ALI20240924BHJP
C05G 5/12 20200101ALI20240924BHJP
【FI】
C05D9/00
C05D3/02
C05G5/12
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043666
(22)【出願日】2023-03-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000185949
【氏名又は名称】クリオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137970
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 康央
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敬信
(72)【発明者】
【氏名】谷田貝 敦
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴也
【テーマコード(参考)】
4H061
【Fターム(参考)】
4H061AA02
4H061AA04
4H061CC04
4H061CC11
4H061CC60
4H061FF07
4H061GG13
4H061GG70
4H061HH07
4H061KK09
4H061LL22
(57)【要約】
【課題】本発明は、イネ科植物のみならず、さまざまな野菜等の作物にも使用可能で、イネ科植物にとっても、有効な、汎用性のある、中性~弱アルカリ性のALC炭酸化肥料であるけい酸質肥料の製造法を提供するものである。
【解決手段】軽量気泡コンクリート(以下、ALC)を炭酸化処理することによって得られた炭酸化ALC粉粒状物を用い、又は、前記炭酸化ALC粉粒状物と、ALC粉粒状物を混合することで、pHを8以上10.5以下に調整したけい酸質肥料の製造方法を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量気泡コンクリート(以下、ALC)を炭酸化処理することによって得られた炭酸化ALC粉粒状物を用い、又は、前記炭酸化ALC粉粒状物と、ALC粉粒状物を混合することで、pHを8以上10.5以下に調整したけい酸質肥料の製造方法。
【請求項2】
前記炭酸化ALC粉粒状物中の炭酸カルシウムの結晶形態がバテライト型、アラゴナイト型、又はカルサイト型のいずれかの一つを主体とし、トバモライトのエックス線回折主ピークのないことを特徴とする請求項1記載のけい酸質肥料の製造方法。
【請求項3】
軽量気泡コンクリート(以下、ALC)を炭酸化処理することによって得られた炭酸化ALC粉粒状物を用いて、又は、前記炭酸化ALC粉粒状物と、ALC粉粒状物を混合して、施肥して、種まきの土、本圃、培養土のいずれかのpHを6以上7.3以下に調整する、けい酸質肥料の使用方法。
【請求項4】
前記炭酸化ALC中の炭酸カルシウムの結晶形態がバテライト型、アラゴナイト型、又はカルサイト型のいずれかの一つを主体とし、トバモライトのエックス線回折主ピークのないことを特徴とする請求項3記載のけい酸質肥料の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、けい酸質肥料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、軽量気泡コンクリート(以下、ALC)は、珪酸質原料として、天然の珪石、珪砂等と、石灰質原料として、石灰石からの生石灰、セメント、石膏を主原料とし、水を加え、これらの混合スラリーに金属アルミニウム添加して発泡させ、半硬化状態とする1次養生で得られたグリーンケーキをピアノ線で所定寸法に切断した後に2次養生としてオートクレーブを用いた高温高圧下での水蒸気養生をすることによって得られる。
【0003】
得られたALCは、各種成形品へと所定寸法に切削加工することによって、ALCパネルなどの建築材料として、各種外壁、間仕切り、屋根、床などに広い用途を有する。
【0004】
従来、このALCの粉状物あるいは粒状物を肥料とすることが行われていて、肥料取締法の中でけい酸質肥料に分類されている。主成分である可溶性珪酸は、ケイ化細胞を形成することで、病害虫に対する抵抗力が向上し、作物の発育を助ける働きをする有用元素である。また、カルシウム成分は、土壌の酸性を改良するとともに、細胞壁の形成や作物に栄養を与える働きをする二次要素である。
【0005】
カルシウムの溶出によりpHが高くなるが、pHの値によっては、適さない作物もある。例えば、水稲の苗の生育に関し、可溶性珪酸は必要だが、pHが高い場合、苗の成長が阻害されるため、ALC粉粒状物を原料としたけい酸質肥料は適さなかった。また、カルシウムの溶出量が早く、pHが高い場合、拮抗作用により他の栄養素、たとえば肥料三要素であるカリウムなどの吸収を阻害していた。
【0006】
特許文献1の特開2004-244549「ALC廃材を用いた園芸用土および土壌改良材並びにその製造方法」に、炭酸化度40%以上、特許文献2の特開平06-141671「無機質多孔体」に82.6%(実施例3)の炭酸化ALCが記載され、pHを制御したけい酸質肥料として用いられる旨、記載される。特許文献3には、炭酸化度の低いALCを用い、非結晶質シリカを比較的多量に含んだけい酸質肥料が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-244549
【特許文献2】特開平06-141671
【特許文献3】特許第5912887号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1、特許文献2の利用方法では、炭酸化度が一定なALCのみを使用することとなり、さまざまな土質と生育物に対応することが困難であった。特許文献3の方法では、弱酸性~中性の湛水条件で施用し、非結晶質で水溶性のケイ酸量が多く、ケイ酸が作物(例えば、イネ科植物に限定して)に吸収される利点があるが、やはり、さまざまな土質と生育物に対応することが困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、イネ科植物のみならず、さまざまな野菜等の作物にも使用可能で、イネ科植物にとっても、有効な、汎用性のある、中性~弱アルカリ性のALC炭酸化肥料であるけい酸質肥料の製造法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、鋭意検討の結果、次発明を提供するものである。
[1] 軽量気泡コンクリート(以下、ALC)を炭酸化処理することによって得られた炭酸化ALC粉粒状物を用い、又は、前記炭酸化ALC粉粒状物と、ALC粉粒状物を混合することで、pHを8以上10.5以下に調整したけい酸質肥料の製造方法、を提供する。
[2] 前記炭酸化ALC粉粒状物中の炭酸カルシウムの結晶形態がバテライト型、アラゴナイト型、又はカルサイト型のいずれかの一つを主体とし、トバモライトのエックス線回折主ピークのないことを特徴とする[1]記載のけい酸質肥料の製造方法、を提供する。
【0011】
[3] 軽量気泡コンクリートを炭酸化処理することによって得られた炭酸化ALC粉粒状物を用いて、又は、前記炭酸化ALC粉粒状物と、ALC粉粒状物を混合して、施肥して、種まきの土、本圃、培養土のいずれかのpHを6以上7.3以下に調整する、けい酸質肥料の使用方法を、提供する。
[4] 前記炭酸化ALC中の炭酸カルシウムの結晶形態がバテライト型、アラゴナイト型、又はカルサイト型のいずれかの一つを主体とし、トバモライトのエックス線回折主ピークのないことを特徴とする[3]記載のけい酸質肥料の使用方法を、提供する。
【0012】
本発明のけい酸肥料はALCを炭酸化処理することによって得られた炭酸化ALC粉粒状物を用い、又は、これと、ALCを破砕して得たALC粉粒状物を混合処理することで得られる。
【0013】
ALCに炭酸ガスを接触させることで、ALC中のケイ酸カルシウム水和物が炭酸化されて、炭酸カルシウムが生成する。ケイ酸カルシウム水和物は、トバモライトである。オートクレーブ養生軽量気泡コンクリートは、ケイ酸質原料と石灰質原料を主原料とし、これに発泡剤を加えて予備養生させた後、オートクレーブ中で水熱合成して得られる多孔質ケイ酸カルシウム水和物を主成分とする軽量気泡コンクリートである。該コンクリートは、建材や断熱材として大量に製造され、オートクレーブ養生軽量気泡コンクリートの製造工程において生じる不良品や、建設現場で発生する端材を利用してもよい。
【0014】
上記ALCは炭酸ガスとの反応性を向上させる観点から、予めクラッシュー、ピンミル、ボールミル等の粉砕機を用いて粗粉砕して、粉粒状にしたものを用いることが好ましい。粒径範囲は、大略1.2mm~4.0mmであり、粒度は、篩目開きで、0.85mm未満、0.85mm以上2.0mm未満、2.0mm以上の分画で、それぞれ70%以上、30%未満、0%の細粒であるか、目開き0.85mm未満、0.85mm以上2.0mm未満、2.0mm以上4.0mm未満、4.0mm以上の分画で、それぞれ30%未満、60%未満、10%以上、0%の粒径分布を持つ粒状物であるがこと好ましい。あまり細かい粉状だと、畑などに使用する時、飛散してしまうからである。
【0015】
上記炭酸ガスは、セメント工場における石灰石由来の炭酸ガスを用いることができ、カーボンフリー、カーボンリサイクル、カーボン固定に多大の寄与が可能となる。
このとき、炭酸ガス雰囲気における炭酸ガス濃度は、処理時間の短縮化、及び、炭酸ガス雰囲気の形成の容易性の観点から、好ましくは、4~40体積%、より好ましくは5~30体積%である。該濃度が4体積%未満であると、炭酸化処理に時間がかかり問題となる。処理を行う際の温度は、処理時間の短縮化の観点から、反応温度は、20~80℃までとし、好ましくは30~60℃である。結晶形態の単一相を得る条件とも関連する。
該温度が20℃未満であると、炭酸カルシウムを生成するのに多大な時間を要するので好ましくない。該温度が80℃を超えると、熱エネルギーのコストが増大して好ましくない。更に、固体二酸化炭素(ドライアイス)を発生源に用いて炭酸化することができる。このときは、100体積%に近い炭酸ガス雰囲気が得られるが、反応容器内温度は、20~80℃までとし、好ましくは30~60℃である。
【0016】
また、炭酸化処理を行う際の相対湿度は、処理時間の短縮化、及び、目的とする相対湿度の調整の容易性の観点から、好ましくは2~100%、より好ましくは40~95%、特に好ましくは50~80%である。該湿度が2%未満であると、炭酸カルシウムを生成するのに多大に間を要するので好ましくない。処理を行う時間は、処理条件により異なるが、極端に短いとALC中の炭酸カルシウムの含有率が少なくなる場合がある。なお、処理圧力を高くすることで、より短時間での炭酸化処理を行うことができる。
【0017】
ALCの炭酸化により生成した炭酸カルシウムは、カルサイト、アラゴナイト、バテライトである。その結晶形態により、カルシウムの溶出する速さが異なる。例えば、カルサイト型の場合、結晶形態が安定のため、カルシウムの溶出による酸性土壌を中和する効果が小さいが、長くpHを調整することができる。例えば、アラゴナイト型の炭酸カルシウムは、結晶構造が針状の為、カルシウムの溶出による酸性土壌を中和する効果が大きく、速い。
【0018】
また、バテライト型の炭酸カルシウムは、結晶構造が板状のため、アラゴナイト型よりも酸性土壌を中和する効果は小さいが、比較的長くpHを調整することができる。バテライト型の炭酸カルシウムは、不安定で、他の結晶構造に転位することが知られているが、ALC粉粒状物を炭酸化させた場合、二酸化炭素濃度、雰囲気温度、湿度、pHなどを調整することで、比較的に安定な結晶構造のものを得ることができる。加えて、バテライト型の炭酸カルシウムは、土壌中の重金属など、有害な成分の吸着固定も知られている。
【0019】
粗粒のALC炭酸化前後で、空隙形状の変化が小さく、体積変化が小さいので、かさ密度がほとんど変化しない。
図1は、炭酸化前ALC粒状物の拡大図、
図2は、炭酸化後ALC粒状物の拡大図である。スケールは、図内に示した通りである。
【0020】
ALC粉粒状物
炭酸化しないALCは、炭酸化ALCとの混合を円滑にするため、クラッシュー、ピンミル、ボールミル等の粉砕機を用いて粗粉砕して、粉粒状にしたものを用いることが好ましい。粗砕ALCの平均粒径の上限は、好ましくは4mm以下、より好ましくは2mm以下である。
【0021】
混合処理方法
炭酸化しないALCと炭酸化ALCとの混合処理の方法は、リボンミキサーやポットブレンダー、回転型混合機などを使用することで容易に均一に混合することができる。炭酸化しないALCと炭酸化ALCは、かさ比重が近いため、混合による分離が生じず、また、炭酸化による形状変化も少ないことにより均一に混合しやすい。2種の異なる肥料を混合した場合、かさ比重の差により分離して均一に混合することが困難である。
【0022】
pHの測定方法
混合した肥料のpHの測定は、肥料1に対して蒸留水又は精製水2.5の割合になるよう加え、30分間攪拌した後、上澄み液を市販pH計により測定した。また、蒸留水又は精製水で湿らせ、30分間放置した肥料を直接測定しても同結果が得られた。なお、土壌のpH測定においても、同様の手順で測定した。ただし、直接測定した場合は、上澄み液を測定した場合よりも測定値がばらつくため、5回の平均値とした。
【0023】
炭酸化したALC粉粒状物単独の場合、pHが8以上9以下となるまで、十分に炭酸化することが好ましい。このとき、炭酸化度は80%以上であり、トバモライトの粉末エックス線回折主ピークは確認できないことが好ましい。この十分に炭酸化したALC粉粒状物とALC粉粒状物を混合したけい酸質肥料自体のpHは、8以上10.5以下に調整することが好ましい。
【0024】
このpH領域の肥料をもって、様々な土質と生育物に対応することができる。pH8未満では、酸性に強い植物に対しても、アルカリ肥料としての効果が小さく、pH10.5以上では、この領域のアルカリ質土壌を好む植物が少ないからである。
【0025】
また、前記炭酸化ALC粉粒状物中の炭酸カルシウムの結晶形態がバテライト型、アラゴナイト型、又はカルサイト型のいずれかの一つを主体とし、炭酸化を十分行うため、トバモライトのエックス線回折主ピークが検出下限以下であることが好ましい。こうして、pHが9以下の炭酸化ALC粉粒状を得ることができる。
【0026】
更に、軽量気泡コンクリートを炭酸化処理することによって得られた炭酸化ALC粉粒状物を用いて、又は、前記炭酸化ALC粉粒状物と、ALC粉粒状物を混合して、施肥して、種まきの土、本圃、培養土のいずれかのpHを6以上7.3以下に調整することが好ましい。
【0027】
このpH領域の土壌を、炭酸化ALC粉粒状物単独物か、これと、ALC粉粒状物の混合比率を変えながら、pHを小さくするときは、炭酸化ALC粉粒状物を多く混合して、得ることができる。土壌1リットルに対して、肥料50g程度が目安となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の効果として、けい酸質肥料において、炭酸化したALC粉粒状物とALCを混合することで、また、結晶形態を選定した炭酸化したALCを混合することで、カルシウムの溶出速度とpHを調整し、多様な作物に対応でき、様々な土壌環境に適したけい酸質肥料を製造し、使用することができる。
【0029】
例えば、当初のpHが5.5未満の土壌の場合、ALC粉粒状物単独でも有効であるが、pHが8.5以上の土壌の場合は、炭酸化したALC粉粒状物単独を用いることが好ましい。pHが、5.5以上8.5までの土壌の場合は、両者の混合比率を適宜調整して、生育する植物に対して最適な比率をもって、施肥ができることとなった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】十分に炭酸化後のALC粒状物の拡大図である。
【
図3】十分に炭酸化したALC粒状物と、炭酸化前のALC粒状物の粉末X線回折図を示した図である。
【
図4】苗床にトマトを播き、イオン交換水を加えて充分に灌水させて育苗し、生育状況を上方から比較した結果を示した図である。
【
図5】苗床にトマトを播き、イオン交換水を加えて充分に灌水させて育苗し、生育状況を横方向から比較した結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施例によって本発明を説明する。
使用原料:以下に示す原料を使用した。
(1)ALC:クリオン社製の軽量気泡コンクリートの端材
(2)培養土:ホーネンス培土3号(水稲)、苗美人N200(キャベツ)、ニッピ園芸培土1号(トマト)、pHは、それぞれ、5.8、6.0、6.3である。
(3)水稲:コシヒカリ、キャベツ:あさしお、トマト:りんか、
(4)水:水道水
【0032】
使用原料の化学組成を、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(島津製作所社製「EDX-8000」)を用いて分析を行った。酸化物表示の分析結果を表1に示す。
【0033】
【0034】
[実施例1]
ALCの端材を、粉砕機を用いて、4mm以下の粒度になるまで粉砕した。得られた粒状のALCを炭酸化容器に入れて、ALC中のトバモライト等が炭酸カルシウム(CaCO3)になるよう、固体二酸化炭素(ドライアイス)を入れ、2日間静置して、炭酸化ALCを得た。
得られた炭酸化ALCを、粉末X線回折装置 (リガク社製「MultiFlex 2kW」)を用いて定性分析を行った。
炭酸カルシウムの定量は、(リガク社製「Thermo plus EVO2」TG-DTA)を用いて測定した。炭酸化度は、次の式1で示される値である。
【0035】
式1:炭酸化度(%)=C/Cmax×100
ここで、CはALCの炭酸化で生成する炭酸カルシウムが、熱分析で600~800℃において炭酸ガスを分解することによる重量減少量をCaO換算量とした値、Cmaxは炭酸化ALCが含有する全カルシウムのCaO換算量である。炭酸化度は、80%以上であり、トバモライトの2θ=7.8度の回折主ピークが完全消失することが好ましい。十分に炭酸化され、pHを8以上9以下とするためである。
【0036】
1.鉱物組成
炭酸化ALC粒状物、炭酸化前のALC粒状物の粉末X線回折図を
図3に示す。
(1) ALCの炭酸化粒状物:クリオン株式会社製のALC粒を炭酸化させた粒炭酸化率:80.6%
かさ密度:0.75kg/L
主な構成成分:カルサイト、石英
トバモライトの回折主ピーク(2θ=7.8度)が検出できないほどに炭酸化したカルサイトを含有している。
(2) ALC粒状物:クリオン株式会社製のALC粒
かさ密度:0.75kg/L
主な構成成分:トバモライト、石英
【0037】
鉢上げ後のトマト育苗結果:
育苗トレイ(プラスチック製)に育苗培養土(pH:6.3)を充填し、播種する。播種後、炭酸化ALC粉粒状物又はALC粉粒状物を覆土する。覆土後は、冠水し、その生育状況比較を表2に示す。
【0038】
【0039】
トマト育苗用培養土(日本肥糧社製、ニッピ園芸培土1号、pH6.3)3Lに各肥料を150gの施用量覆土し、苗床とした。該苗床にトマトを播き、イオン交換水を加えて充分に灌水させて育苗試験を行った。生育状況の比較結果を
図4、
図5に示す。
【0040】
図4、
図5に示されるように、左側の炭酸化ALC粉粒状物単味のけい酸質肥料施肥培養土では、右側のALC粉粒状物肥料の培養土に比べて、トマトの成長量が増大することがわかる。
【0041】
水稲、キャベツ、トマトの生育比較実験
pHが5.8から6.3の培養土3Lを用い、合計150gのALC粉粒状物と炭酸化ALC粉粒状物の割合を変更した肥料における肥料のpHと評価について表3に示す。各評価は、葉数、葉長、根張り、葉色を総合的に評価した。評価準は、(良い)◎>○>○△>△(普通)である。
【0042】
【0043】
表3に示されるように、生育する植物により成長度合いが異なる。例えば、水稲苗やトマトの生育の場合、ALC粉粒状物の割合が0%と比較的pHの小さい領域で生育が良好である。反対に、キャベツの生育の場合、ALC粉粒状物の割合を80%近辺のpHの高い領域で生育が良好である。ALC粉粒状物の割合を100%としたとき、土壌のpHが高い場合、植物の種類によっては、生育に不具合が生じることがあるが、土壌のpHが低い場合でも、ALC粉粒状物の割合を多く使用することで、pHを調整でき、植物の生育に適した環境にすることが可能となる。表4には、ALC粉粒状物と炭酸化ALC粉粒状物の割合を変更した肥料を施肥したキャベツ土壌のpH値を示した。
【0044】
【手続補正書】
【提出日】2023-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量気泡コンクリート(以下、ALC)を炭酸化処理することによって得られた炭酸化度80%以上の炭酸化ALC粉粒状物を用い、前記炭酸化ALC粉粒状物と、炭酸化しないALC粉粒状物を混合することで、pHを8以上10.5以下に調整したけい酸質肥料の製造方法。
【請求項2】
前記炭酸化ALC粉粒状物中の炭酸カルシウムの結晶形態がバテライト型、アラゴナイト型、又はカルサイト型のいずれかの一つを主体とし、トバモライトのエックス線回折主ピークのないことを特徴とする請求項1記載のけい酸質肥料の製造方法。
【請求項3】
軽量気泡コンクリート(以下、ALC)を炭酸化処理することによって得られた炭酸化度80%以上の炭酸化ALC粉粒状物を用い、前記炭酸化ALC粉粒状物と、炭酸化しないALC粉粒状物を混合して、施肥して、種まきの土、本圃、培養土のいずれかのpHを6以上7.3以下に調整する、けい酸質肥料の使用方法。
【請求項4】
前記炭酸化ALC粉粒状物中の炭酸カルシウムの結晶形態がバテライト型、アラゴナイト型、又はカルサイト型のいずれかの一つを主体とし、トバモライトのエックス線回折主ピークのないことを特徴とする請求項3記載のけい酸質肥料の使用方法。