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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132752
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/329 20060101AFI20240920BHJP
   H01L 29/872 20060101ALI20240920BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L29/86 301P
H01L29/86 301F
H01L29/86 301E
H01L29/91 L
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023057083
(22)【出願日】2023-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-08
(31)【優先権主張番号】202310239019.0
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519009105
【氏名又は名称】合肥晶合集成電路股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100230086
【弁理士】
【氏名又は名称】譚 粟元
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】田矢 真敏
(72)【発明者】
【氏名】中野 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】夏目 秀隆
(57)【要約】
【課題】半導体装置の大型化を抑制しつつ、製造コストを増加することなく、半導体装置の性能低下を抑制することができる半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、シリコン基板10に第1型不純物を注入することにより第1領域NW1を形成する工程と、ショットキーバリアダイオード(SBD)形成領域おいて、シリコン基板の幅方向H2における中央領域Cを挟んで幅方向両側に第2領域PW1を形成する工程と、第1半導体形成領域及び第2半導体形成領域に、不純物濃度が第1領域よりも高い第3領域を形成する工程と、SBD形成領域において、中央領域の幅方向における両側の各縁部よりも内側に設けられたインプラント領域Im及び第2半導体形成領域に対して第1型不純物を注入する工程と、コバルトよりも仕事関数が高い材料を用いて、SBD形成領域のアノード形成領域をシリサイド化する工程と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板上に第1半導体領域、第2半導体領域及びショットキーバリアダイオード(SBD)領域を形成する半導体装置の製造方法であって、
前記シリコン基板に対して第1型不純物を注入することにより第1領域を形成する第1領域形成工程と、
前記第1領域におけるSBD形成領域のアノード形成領域において、前記シリコン基板の厚さ方向に直交する幅方向における中央領域上面をマスクした状態で、前記第1型不純物と反対極性の第2型不純物を注入することにより、前記中央領域を挟んで幅方向両側に第2領域を形成する第2領域形成工程と、
第1半導体形成領域の前記第1領域及び第2半導体形成領域の前記第1領域に前記第1型不純物を注入し、不純物濃度が前記第1領域よりも高い第3領域を形成する第3領域形成工程と、
前記第1半導体形成領域において少なくともチャネル領域が形成される領域の上面、及び、前記SBD形成領域において、前記中央領域よりも幅が狭く、かつ、前記中央領域の幅方向における両側の各縁部よりも内側に設けられたインプラント領域の上面以外をマスクした状態で、前記SBD形成領域におけるマスク開口部及び前記第2半導体形成領域に対して前記第1型不純物を注入する高濃度領域形成工程と、
コバルトよりも仕事関数が高い材料を用いて、前記SBD形成領域の前記アノード形成領域をシリサイド化し、ショットキー接合を形成するショットキー接合工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1領域形成工程において注入する前記第1型不純物の不純物濃度は、1e+16~4e+16[/cm]であり、
前記第2領域形成工程において注入する前記第2型不純物の不純物濃度は、1e+16~6e+16[/cm]であり、
前記第3領域形成工程において注入する前記第1型不純物の不純物濃度は、1e+17[/cm]よりも高く、
前記高濃度領域形成工程において前記第2半導体形成領域及び前記インプラント領域に注入する不純物のドーズ量は2e+12~1.5e+13[ions/cm]であり、
前記高濃度領域形成工程後の前記インプラント領域の不純物濃度は、1e+18~1e+19[/cm]である請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記高濃度領域形成工程において、前記インプラント領域の深さは前記シリコン基板表面に対して深さ100[nm]の範囲内である請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記高濃度領域形成工程において、前記中央領域の各縁部から前記SBD形成領域に設けられる前記マスクの開口部の各縁部までの幅方向の距離が、0.1~0.3[μm]とされている請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記高濃度領域形成工程において、注入する不純物はヒ素(As)である請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記高濃度領域形成工程において、イオン注入エネルギーは50[keV]以下である請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
シリコン基板に形成されたショットキーバリアダイオード(SBD)領域と、
前記シリコン基板に形成され、第1型不純物が注入されたチャネル領域を備える第1MOSトランジスタ領域と、
前記シリコン基板に形成され、第1型不純物が注入されたチャネル領域を備える第2MOSトランジスタ領域と、
を備え、
前記SBD領域は、コバルトよりも仕事関数が高い材料を用いて、アノード形成領域がシリサイド化された第1層と、前記第1層の下方に設けられるとともに、前記シリコン基板の厚さ方向に直交する幅方向の中央領域付近に設けられ、前記第1型不純物が注入されたインプラント領域とを備え、
前記インプラント領域の不純物濃度は、前記第2MOSトランジスタ領域の前記チャネル領域の不純物濃度から前記第1MOSトランジスタ領域の前記チャネル領域の不純物濃度を差し引いた濃度に対して±10%の範囲内とされている半導体装置。
【請求項8】
前記第2MOSトランジスタ領域は、SRAMに用いられる請求項7に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ショットキーバリアダイオード(SBD)を備える半導体装置の製造において、55[nm]プロセスノードでは、ニッケル(Ni)をシリサイド化してショットキー接合部を形成することが提案されている。
例えば、特許文献1には、MOSトランジスタのゲート電極及びソース/ドレイン領域のコンタクト材料にニッケル(Ni)をシリサイド化した材料であるニッケルシリサイド(NiSi)を用いることが記載されている。
ニッケルシリサイドは、コバルトシリサイド(CoSi)やチタンシリサイド(TiSi)よりも少ないシリコン原子で同じ膜厚の金属シリサイド膜を形成することができ、ジャンクションリーク特性を劣化させずに、シリサイド膜を低抵抗化することができるとの特徴がある。
【0003】
また、SBDは、小型パネル用Display Driver IC(DDIC)やTouch and Display Driver Integration(TDDI)等、様々な電源が搭載されたデバイスにおいてラッチアップ防止用に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/070804号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SBDを有する半導体装置において、シリサイドに用いる材料にニッケル(Ni)のような仕事関数が高い材料を用いる場合、SBDの順方向電流Iが、コバルトを用いる場合の1/10以下に減少してしまう。また、ニッケル(Ni)を用いる場合において、コバルトを用いる場合と同程度の順方向電流Iを確保するためには、半導体のサイズを大型化する必要があり、コストが増大してしまう。
【0006】
また、SBDを小型パネル用DDICやTDDI等、様々な電源が搭載されたデバイスにおいてラッチアップ防止用に利用する場合、例として25[V]以上の高い降伏電圧を確保することが求められる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、半導体装置の大型化及び製造コストの増大を抑制しつつ、半導体装置の性能低下を抑制することができる半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1態様に係る半導体装置の製造方法は、シリコン基板上に第1半導体領域、第2半導体領域及びショットキーバリアダイオード(SBD)領域を形成する半導体装置の製造方法であって、前記シリコン基板に対して第1型不純物を注入することにより第1領域を形成する第1領域形成工程と、前記第1領域におけるSBD形成領域のアノード形成領域において、前記シリコン基板の厚さ方向に直交する幅方向における中央領域上面をマスクした状態で、前記第1型不純物と反対極性の第2型不純物を注入することにより、前記中央領域を挟んで幅方向両側に第2領域を形成する第2領域形成工程と、第1半導体形成領域の前記第1領域及び第2半導体形成領域の前記第1領域に前記第1型不純物を注入し、不純物濃度が前記第1領域よりも高い第3領域を形成する第3領域形成工程と、前記第1半導体形成領域において少なくともチャネル領域が形成される領域の上面、及び、前記SBD形成領域において、前記中央領域よりも幅が狭く、かつ、前記中央領域の幅方向における両側の各縁部よりも内側に設けられたインプラント領域の上面以外をマスクした状態で、前記SBD形成領域におけるマスク開口部及び前記第2半導体形成領域に対して前記第1型不純物を注入する高濃度領域形成工程と、コバルトよりも仕事関数が高い材料を用いて、前記SBD形成領域の前記アノード形成領域をシリサイド化し、ショットキー接合を形成するショットキー接合工程と、を有する。
【0009】
本開示の第2態様に係る半導体装置は、シリコン基板に形成されたショットキーバリアダイオード(SBD)領域と、前記シリコン基板に形成され、第1型不純物が注入されたチャネル領域を備える第1MOSトランジスタ領域と、前記シリコン基板に形成され、第1型不純物が注入されたチャネル領域を備える第2MOSトランジスタ領域と、を備え、前記SBD領域は、コバルトよりも仕事関数が高い材料を用いて、アノード形成領域がシリサイド化された第1層と、前記第1層の下方に設けられるとともに、前記シリコン基板の厚さ方向に直交する幅方向の中央領域付近に設けられ、前記第1型不純物が注入されたインプラント領域とを備え、前記インプラント領域の不純物濃度は、前記第2MOSトランジスタ領域の前記チャネル領域の不純物濃度から前記第1MOSトランジスタ領域の前記チャネル領域の不純物濃度を差し引いた濃度に対して±10%の範囲内とされている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体装置の大型化を抑制しつつ、製造コストを増加することなく、半導体装置の性能低下を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置のSBD領域において、高い降伏電圧を確保するための設計の例図である。
図3】本発明の一実施形態に係る半導体装置のSBD領域の断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示した図である。
図5】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示した図である。
図6】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示した図である。
図7】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示した図である。
図8】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示した図である。
図9】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示した図である。
図10】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示した図である。
図11】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法の工程を示した図である。
図12】本発明の一実施形態に係る半導体装置の第1半導体領域及び第2半導体領域における、半導体基板表面に対する深さと各領域の不純物濃度の関係を示したグラフである。
図13】本発明の一実施形態に係る半導体装置のSBD領域における、半導体基板表面に対する深さと各領域の不純物濃度の関係を示したグラフである。
図14】本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造されたSBDの性能評価を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る半導体装置及びその製造方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
(半導体装置の構造)
図1は、半導体装置100の断面図である。本実施形態において、図1に示すように、シリコン基板の厚さ(深さ)方向H1に直交する方向を幅方向H2という。また、厚さ方向H1及び幅方向H2のそれぞれに直交する奥行き方向については、図1に示すような断面が所定範囲に亘って連続して形成されているものとし、その説明を省略する。
図1に示すように、半導体装置100は、シリコン基板を基材とする半導体基板10上に複数の半導体が形成されている。具体的には、半導体装置100には、ショットキーバリアダイオード(SBD)であるSBD領域1と、Low Voltage PMOS(LVPMOS)である第1半導体領域2及び第2半導体領域3と、High Voltage PMOS(HVPMOS)である第3半導体領域4が形成されている。
【0014】
(SBD領域の構造)
図2は、本実施形態に係る半導体装置のSBD領域1において、高い降伏電圧を確保するための設計の例図である。SBD領域1は、小型パネル用DDICやTDDIのラッチアップ防止等に利用されるため、25[V]以上の降伏電圧が求められる場合がある。降伏電圧を25[V]以上の高さにするためには、SBD領域1に逆方向電圧を印加した場合に、キャリアが移動する領域である第1Nウェル領域に発生する横方向の空乏層領域DLと縦方向の空乏層領域DVとをそれぞれ拡大する必要がある。さらに、空乏層領域DL及び空乏層領域DVの空乏層を拡大するためには、空乏層領域DL及び空乏層領域DVを含む領域Rの不純物濃度をアノードAn近傍の不純物濃度よりも十分に低くする必要がある。すなわち、領域Rの不純物濃度を低くすることにより降伏電圧を高めることができる。
【0015】
図3は、本実施形態の半導体装置のSBD領域の断面図である。
半導体装置100のSBD領域1は、半導体基板10、第1Nウェル領域NW1、第2Nウェル領域NW2、第1Pウェル領域PW1、中央領域C、インプラント領域Im、アノードAnであるシリサイド領域20、カソードK、絶縁部22、シリサイドブロック24を含んで構成される。また、第1Pウェル領域PW1の中央領域C側の縁部を縁部PW1eとする。
【0016】
第1Nウェル領域NW1は、半導体装置100の動作時においてキャリアが移動する領域である。第1Nウェル領域NW1は、半導体基板10表面に対して深さが3~6[μm]の範囲において不純物濃度が1e+16~4e+16[/cm]となるように形成される。また、第1Nウェル領域NW1の表面には、ショットキー接合部SJが形成される。また、カソードKは、SBD領域1におけるカソードの電極である。
【0017】
第2Nウェル領域NW2は、アノード-カソード間の電流経路の抵抗を低減するために形成され、カソードKを覆うウェル領域である。第2Nウェル領域NW2の不純物濃度は1e+16~6e+16[/cm]であり、第1Nウェル領域NW1よりも不純物濃度が高く、第1Pウェル領域PW1に対する接合耐圧が所望の降伏電圧より下がらないよう抑えられている。なお、第2Nウェル領域NW2は、図3に示すようにSBD領域1の断面図における幅方向H2において後述のインプラント領域Im(高濃度領域)の両側に、例えば、対称形に形成される。
【0018】
第1Pウェル領域PW1は、ショットキー接合領域であるシリサイド領域20の一部の下面を覆うように形成され、中央領域Cを挟んで幅方向両側に形成される。第1Pウェル領域PW1は、半導体基板10表面に対して深さが1~3[μm]の範囲において不純物濃度が1e+16~6e+16[/cm]となるように形成される。また、領域P+は、シリサイド領域20と第1Pウェル領域PW1をオーミックコンタクトさせるために形成される。
【0019】
中央領域Cは、SBD領域1のシリサイド領域(アノードAn)20において、幅方向H2のほぼ中央に位置する領域である。換言すると、中央領域Cは、第1Pウェル領域PW1の縁部PW1eに挟まれた領域であり、後述のインプラント領域Imが形成される領域である。
【0020】
インプラント領域Imは、第1Nウェル領域NW1に対してヒ素(As)を例とするN型の不純物を注入することにより、第1Nウェル領域NW1の中央領域Cの一部の不純物濃度を高濃度化した領域である。インプラント領域Imは、半導体基板10表面に対して深さ100[nm]程度の範囲内に分布し、シリサイドに接触する最表面の不純物濃度が1e+18~1e+19[/cm]となるように形成される。なお、インプラント領域Imは第1Pウェル領域の中央領域C側の縁部PW1e、換言すると、中央領域Cの幅方向における両側の各縁部PW1eと所定の距離Xを空けていることが好ましく、所定の距離Xは0.1~0.3[μm]であることがより好ましい。
【0021】
シリサイド領域(アノードAn)20は、半導体基板10と金属材料が加熱されてシリサイド化した領域であり、ショットキー接合部に相当する。シリサイド領域20は、例えば、ニッケル(Ni)等の比較的融点が高い金属がスパッタリングにより半導体基板10上に堆積され、アニール処理によって加熱されることにより形成される。なお、シリサイド領域20において、インプラント領域Im表面とニッケル(Ni)の界面でシリサイド化が起こることによりアノードAnが形成される。
【0022】
絶縁部22は、第2Nウェル領域NW2と第1Pウェル領域PW1との間の電界を緩和するために設けられる絶縁体領域である。絶縁部22は、例えば、シャロートレンチアイソレーション(STI)である。絶縁部22がSTIである場合、パターニング及びエッチングにより半導体基板10の所定位置に溝が形成され、さらに溝に絶縁材料を埋め込むことにより絶縁部22が形成される。また、半導体基板10がシリコン(Si)である場合、絶縁材料は、シリコン酸化膜(SiO)やシリコン窒化膜(SiN)等である。
【0023】
シリサイドブロック24は、アノードAn上に堆積するニッケル(Ni)を絶縁部22の端部から所望の距離だけ離すことを目的として設けられる絶縁膜である。また、アノードAn上においてNiを堆積する所定の領域をシリサイドブロック24で挟むことにより、シリサイド膜を形成する領域を選択することができる。これにより、半導体基板10表面において、シリサイド化する領域とシリサイド化しない領域とを分断する。
【0024】
(第1半導体領域及び第2半導体領域の構造)
図1の説明に戻り、第1半導体領域2及び第2半導体領域3は、ともにLVPMOSであり、ゲートLVG1下部のNW3領域の不純物濃度が異なる。
第1半導体領域2は、MOS構造として、ゲートLVG1と、ソース/ドレイン部SDと、第1Nウェル領域NW1と、第3Nウェル領域NW3と、絶縁部22とを備える。ゲートLVG1は、半導体基板10表面に形成されるゲート酸化膜LVGOX上に形成される。
【0025】
第2半導体領域3は、高濃度チャネル領域Chを有する点を除いて、第1半導体領域2と同様の構造である。高濃度チャネル領域Chは、第2半導体領域3のゲートLVG2下部の第3Nウェル領域NW3に対してヒ素(As)を例とするN型の不純物を注入することにより、第3Nウェル領域NW3の一部の不純物濃度を高濃度化した領域である。
【0026】
第2半導体領域3が高濃度チャネル領域Chを有することにより、半導体装置100は、閾値電圧が異なる複数のLVPMOS(第1半導体領域2及び第2半導体領域3)を備える。
第2半導体領域3が高濃度チャネル領域Chを有するため、第2半導体領域3の閾値電圧は、第1半導体領域2の閾値電圧よりも高い。なお、第1半導体領域の閾値は、第3Nウェル領域NW3の形成条件によって変化する。本実施形態においては、第3Nウェル領域NW3の不純物濃度は1e+17[/cm]~1e+18[/cm]とする。第2半導体領域3は、閾値電圧を上げるために、第3Nウェル領域NW3に対してN型不純物を注入する。また、N型不純物の注入はSBD領域1においてインプラント領域Imを形成する際の工程と同様である。
【0027】
また、第1半導体領域2及び第2半導体領域3の第3Nウェル領域NW3は、SRAM(Static Random Access Memory)を形成する領域内に形成することが好ましい。第3Nウェル領域NW3をSRAM領域内に形成することにより、SRAMの各製造工程において形成される他の各領域の不純物濃度との比率を好適化することができ、第1半導体領域2及び第2半導体領域3は所望の性能を確保することができる。
【0028】
なお、本実施形態において、第3半導体領域4については、従来のHVPMOSと同様であるため説明を省略する。第3半導体領域4において、第1半導体領域2、第2半導体領域3及びSBD領域1と同一の符号が付された各領域は、それぞれ同一の不純物濃度である。
【0029】
(半導体装置の製造方法)
以下、SBDを含む半導体装置100の製造方法について説明する。図4図11は、それぞれ半導体装置100の製造方法の工程を示した図である。
なお、以降の各工程における各領域及び各部の形成方法については、一般的な半導体の製造フローであり、本発明の趣旨ではないため詳細な説明は省略する。
また、以降の各工程において、SBD領域1を形成する領域をSBD形成領域1b、第1半導体領域2を形成する領域を第1半導体形成領域2b、第2半導体領域3を形成する領域を第2半導体形成領域3b、第3半導体領域4を形成する領域を第3半導体形成領域4bとする。
【0030】
図4に示すステップS10において、半導体基板(シリコン基板)10上の領域を酸化し、半導体基板10表面に酸化膜を形成する。酸化膜の形成プロセスは、例えば、WET酸化である。さらに、SBD形成領域1b、第1半導体形成領域2b、第2半導体形成領域3b及び第3半導体形成領域4bにN型の不純物(第1型不純物)を用いてイオン注入処理及びアニール処理を行い、半導体基板10表面に対して深さ3~6[μm]の範囲に不純物濃度が1e+16~4e+16[/cm]の第1Nウェル領域(第1領域)NW1を形成する。ここで、N型の不純物は、例えば、リン(P)やヒ素(As)である。
【0031】
図5に示すステップS12において、半導体装置100のSBD形成領域1b及び第3半導体形成領域4bに第2Nウェル領域NW2を形成する。まず、半導体基板10表面において、第2Nウェル領域NW2に対応する開口部(マスク開口部)を有するマスクとして機能するレジスト層を形成する。レジスト層は、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることにより形成する。そして、レジスト層をマスクとして、半導体基板10表面にN型の不純物を用いたイオン注入処理を行う。イオン注入処理後、レジスト層は除去する。その後、アニール処理を行う。
【0032】
さらに、第2Nウェル領域NW2と同様の形成方法により、半導体装置100のSBD形成領域1b及び第3半導体形成領域4bにP型の不純物(第2型不純物)を用いてイオン注入処理及びアニール処理を行い、半導体基板10表面に対して深さ1~3[μm]の範囲に不純物濃度が1e+16~6e+16[/cm]の第1Pウェル領域PW1(第2領域)を形成する。ここで、SBD形成領域1bの幅方向H2における中央領域Cは、後の工程においてSBD領域1のアノードが形成される領域であるため、P型の不純物を注入する際にはフォトレジストによってマスクされる。なお、半導体基板10表面に注入するP型の不純物は、例えば、ボロン(B)等を用いる。
【0033】
図6に示すステップS14において、第1半導体形成領域2b、第2半導体形成領域3b及び第3半導体形成領域4bにおいてゲートLVG1、LVG2、HVG3を形成する所定の位置の両側、及び半導体装置100の各領域の境界となる位置に絶縁部22としてSTIを形成する。
まず、半導体基板10表面において、シリコン窒化膜(SiN)を堆積した後、STIに対応する開口部を有するマスクとして機能するレジスト層を形成する。次に、半導体基板10表面をエッチングし、レジストを除去した後、エッチングによって形成した溝内を10[nm]程度酸化する。次に、溝が埋まるように二酸化シリコン(SiO)等の絶縁物を堆積し、アニール処理を行う。その後、CMPによって平坦化処理を行い、シリコン窒化膜(SiN)を除去する。
【0034】
次に、第3半導体形成領域4bにおいて、Tetra ethoxy silane(TEOS)を用いたCVD法により、後の工程においてゲートを設ける所定の領域にゲート酸化膜HVGOXを形成する。
【0035】
図7に示すステップS16において、半導体装置100の第1半導体形成領域2b及び第2半導体形成領域3bに第3Nウェル領域(第3領域)NW3を形成する。
まず、半導体基板10表面に、半導体装置100の第1半導体形成領域2b及び第2半導体形成領域3bに対応する開口部を有するレジスト層を形成する。レジスト層をマスクとして、N型の不純物を半導体基板10表面にイオン注入する。イオン注入後、レジスト層を除去する。その後、アニール処理を行う。これにより、半導体装置100の第1半導体形成領域2b及び第2半導体形成領域3bに不純物濃度が1e+17[/cm]~1e+18[/cm]の第3Nウェル領域NW3を形成する。
【0036】
図8に示すステップS18において、第1半導体形成領域2b及び第2半導体形成領域3bにゲート酸化膜LVGOXを形成する。
まず、半導体基板10表面において、第1半導体形成領域2b及び第2半導体形成領域3bの第3Nウェル領域NW3に対して開口部を有するレジスト層を形成する。次に、第1半導体形成領域2b及び第2半導体形成領域3bの第3Nウェル領域NW3の表面にある下敷き酸化膜をWETエッチング等で除去した後、レジスト層を除去する。次に、厚さ3[nm]未満のゲート酸化膜LVGOXを形成する。
【0037】
次に、SBD形成領域1bにインプラント領域Imを形成し、第2半導体形成領域3bに高濃度チャネル領域Chを形成する。
まず、中央領域Cよりも幅が狭く、かつ、中央領域Cの幅方向における両側の各縁部に相当する第1Pウェル領域PW1の縁部PW1eよりも内側に設けられたインプラント領域Im以外のSBD形成領域1bの全領域と、第1半導体形成領域2bの第3Nウェル領域NW3と、第3半導体形成領域4bの全領域に対してレジスト層(マスク)PRを形成する。換言すると、SBD形成領域1bにおけるインプラント領域Im上、及び第2半導体形成領域3bの第3Nウェル領域NW3上には、レジスト層PRの開口部が位置している。このとき、インプラント領域Imの各端部と第1Pウェル領域PW1の各縁部PW1eとの距離Xが、それぞれ0.1~0.3[μm]となるように形成されることが好ましい。
【0038】
次に、SBD形成領域1b及び第2半導体形成領域3bに対してN型の不純物であるヒ素(As)を注入する。注入するN型の不純物のドーズ量は2e+12~1.5e+13[ions/cm]である。SBD形成領域1bにおいてヒ素(As)が注入された領域であるインプラント領域Imは、第1Nウェル領域NW1表面に対して深さ100[nm]の範囲内において、第1Nウェル領域NW1表面における不純物濃度が少なくとも1e+18~1e+19[/cm]の領域となる。同様に、第2半導体形成領域3bにおいてヒ素(As)が注入された領域は、不純物濃度が他のNW3領域よりも高い領域であり、後述の工程により高濃度チャネル領域が形成される領域である。SBD形成領域1b及び第2半導体形成領域3bにヒ素(As)を注入した後、レジスト層PRを除去する。
【0039】
なお、SBD形成領域1b及び第2半導体形成領域3bに対して注入されるヒ素(As)は、リン(P)に比べて拡散係数が小さいため、プロセス中の熱処理による不純物の拡散が少ない。これにより、インプラント領域Imは、半導体基板10表面に対して浅い領域に形成される。さらに、インプラント領域Imを半導体基板10に対して浅い領域に形成するためには、ヒ素(As)の注入エネルギーは50[keV]以下とすることが好ましい。
【0040】
図9に示すステップS20において、第1半導体形成領域2b及び第2半導体形成領域3bの各ゲート酸化膜LVGOX上及び第3半導体形成領域4bのゲート酸化膜HVGOX上にゲート電極用のポリシリコン膜をそれぞれ堆積し、パターニング及びエッチングを行うことにより所定の形状のポリシリコン膜を形成する。
【0041】
次に、第1半導体形成領域2b及び第2半導体形成領域3bの所定の箇所を開口したレジスト層を形成し、P型の不純物を用いた注入処理を行う。次に、レジスト層を除去した後にアニール処理を行うことで、第1半導体形成領域2b及び第2半導体形成領域3bの各ゲートLVG1及びLVG2の両端部に対応する第3Nウェル領域NW3表面には、LVP拡散領域LVPexを形成する。
【0042】
図10に示すステップS22において、第1半導体形成領域2b、第2半導体形成領域3b、第3半導体形成領域4bにおいて、各ゲートLVG1、LVG2、HVG3にサイドウォールを形成するとともに、ソース/ドレイン部SDをそれぞれ形成する。また、SBD形成領域1bにカソードKを形成する。
まず、TEOSを用いたCVD法により、各ゲートLVG1、LVG2、HVG3に酸化膜を形成した後、異方性エッチングを行い、各ゲートLVG1、LVG2、HVG3の側壁にのみ酸化膜を形成する。各ゲートLVG1、LVG2、HVG3の側壁に形成された酸化膜がサイドウォールとなる。なお、成膜にはTEOSに加えて、CVD法によるシリコン窒化(SiN)膜を積層してもよい。
【0043】
さらに、SBD形成領域1b、第1半導体形成領域2b、第2半導体形成領域3b、第3半導体形成領域4bの各領域において、所定の領域に1e+15[ions/cm]以上のN型不純物又はP型不純物を注入し、アニール処理を行う。これにより、各領域にソース/ドレイン部SD又はカソードKを形成する。また、各ゲートLVG1、LVG2、HVG3にはP型不純物を注入することでP型ゲートを形成する。
【0044】
図11に示すステップS24では、SBD形成領域1bにシリサイドブロック24を形成し、各ゲートLVG1、LVG2、HVG3、各ソース/ドレイン部SD、アノードAn及びカソードKの各表面をシリサイド化する。
まず、SBD形成領域1bにおいてアノードAnを絶縁部22の端部から所定の距離だけ離すために、TEOSを用いたCVD法及びエッチングを行い、SBD形成領域1bにおいて半導体基板10表面の所定の位置にシリサイドブロック24を形成する。
【0045】
次に、各ゲートLVG1、LVG2、HVG3表面、各ソース/ドレイン部SD表面、アノードAn表面及びカソードK表面に対して、ターゲットにニッケル(Ni)を用いたスパッタリングを行う。スパッタリングにより、各ゲートLVG1、LVG2、HVG3表面、各ソース/ドレイン部SD表面、アノードAn表面及びカソードK表面にNiの粒子が堆積する。その後、アニール処理を行うことにより、ニッケル(Ni)の粒子が堆積された各ゲートLVG1、LVG2、HVG3表面、各ソース/ドレイン部SD表面、アノードAn表面及びカソードK表面における各界面が加熱され、各界面においてシリサイド化が発生する。
【0046】
(半導体装置の各領域における不純物濃度の比較)
図12は、第1半導体領域2及び第2半導体領域3の各領域について、半導体基板10表面に対する深さと各領域の不純物濃度の関係を示したグラフである。横軸は半導体基板10表面に対する深さであり、縦軸は不純物濃度である。また、図12において、破線は第1半導体領域2の第3Nウェル領域NW3及び第1Nウェル領域NW1におけるN型不純物濃度を示し、実線は第2半導体領域3の高濃度チャネル領域Ch、第3Nウェル領域NW3及び第1Nウェル領域NW1におけるN型不純物濃度を示し、一点鎖線は半導体基板10におけるP型不純物濃度を示す。さらに、第1半導体領域2の半導体基板10表面に対して深さ10[nm]の地点における不純物濃度をn1とし、第2半導体領域3の半導体基板10表面に対して深さ10[nm]の地点における不純物濃度をn2とする。
【0047】
同様に、図13は、SBD領域1のインプラント領域Im及び第1Nウェル領域NW1領域について、半導体基板10表面に対する深さと各領域の不純物濃度の関係を示したグラフである。横軸は半導体基板10表面に対する深さであり、縦軸は不純物濃度である。また、図13において、実線はSBD領域1のインプラント領域Im及びNW1領域におけるN型不純物濃度を示し、一点鎖線は半導体基板10におけるP型不純物濃度を示す。さらに、SBD領域1の半導体基板10表面に対して深さ10[nm]の地点における不純物濃度をn3とする。
【0048】
図12及び図13によれば、第1半導体領域2、第2半導体領域3及びSBD領域1の各不純物濃度は、いずれも半導体基板10表面に対する深さが深くなる程低下している。また、第2半導体領域3の不純物濃度は、上記の製造方法のステップS18において第3Nウェル領域NW3にヒ素(As)を注入したことにより、深さ0.1[μm]までは第1半導体領域2の不純物濃度よりも高く、該領域は図1に示す高濃度チャネル領域Chに相当する。さらに、半導体基板10の表面に対する深さ10[nm]地点の各不純物濃度n1、n2及びn3は、以下の関係を有する。
(n2-n1)=n3 (1)
図1に示す半導体装置100において、上記式(1)を満たすことで上記製造方法のように高濃度チャネル領域Ch及びインプラント領域Imの形成工程を共通化することができる。
【0049】
(半導体装置の性能評価)
さらに、図14は、本実施形態に係る製造方法によって製造されたSBDの性能評価を示すグラフである。
図14において、「●」はコバルトシリサイドを用いた従来のSBDである。また、「▲」はニッケルシリサイドを用いた従来のSBDである。「■」は本実施形態に係る製造方法によって製造されたSBDである。また、図14のグラフにおいて、横軸は、0.3[V]の順方向バイアスを印加した場合の順方向電流Iを示す。縦軸は、-15[V]の逆方向バイアスを印加した場合のリーク電流Iを示す。
【0050】
従来のSBDの構造(図14における「●」及び「▲」)では、シリサイドをコバルトシリサイドからニッケルシリサイドに変更することにより、すなわちショットキー接合に用いる金属材料を変更することによりI性能が大きく劣化していた。本実施形態に係る製造方法によって製造されたSBDを備える半導体装置によれば、CoシリサイドのSBDと同程度のI性能を有しており、ニッケルシリサイドを用いた従来のSBDと比較し、I性能の劣化が大幅に改善される。また、逆方向バイアスを印加した場合の降伏電圧は従来のSBDと同等の30[V]以上を有する。これにより、ニッケルシリサイドを用いながらも高い降伏電圧及び高い順方向電流が確保されるため、DDICやTDDI等の高い電圧を扱う半導体製品に適したSBDを製造することができる。
このように、本実施形態に係るSBD領域1の製造方法によれば、製造工程やマスクを新たに追加することなく、すなわち製造コストを増加することなく、SBDの性能を改善することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法によれば、シリコン基板(10)上に第1半導体領域(2)、第2半導体領域(3)及びショットキーバリアダイオード(SBD)領域(1)を形成する半導体装置(100)の製造方法であって、シリコン基板に対して第1型不純物を注入することにより第1領域(NW1)を形成する第1領域形成工程(S10)と、第1領域におけるSBD形成領域(1b)のアノード形成領域において、シリコン基板の厚さ方(H1)向に直交する幅方向(H2)における中央領域(C)上面をマスクした状態で、第1型不純物と反対極性の第2型不純物を注入することにより、中央領域を挟んで幅方向両側に第2領域(PW1)を形成する第2領域形成工程(S12)と、第1半導体形成領域の第1領域及び第2半導体形成領域の第1領域に第1型不純物を注入し、不純物濃度が第1領域よりも高い第3領域(NW3)を形成する第3領域形成工程(S16)と、第1半導体形成領域において少なくともチャネル領域が形成される領域の上面、及び、SBD形成領域において、中央領域よりも幅が狭く、かつ、中央領域の幅方向における両側の各縁部(PW1e)よりも内側に設けられたインプラント領域(Im)の上面以外をマスクした状態で、SBD形成領域におけるマスク開口部及び第2半導体形成領域に対して第1型不純物を注入する高濃度領域形成工程(S18)と、コバルトよりも仕事関数が高い材料を用いて、SBD形成領域のアノード形成領域をシリサイド化し、ショットキー接合を形成するショットキー接合工程(S24)と、を有する。これにより、マスクや製造工程を新たに増やすことなく、SBD領域におけるショットキー接合箇所に対応する領域の不純物濃度を高めることにより、高い降伏電圧を確保し、かつ順方向電流Iが改善された半導体装置を製造することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法によれば、各領域の不純物濃度を所望の値とするために各工程において注入する不純物の種類及びドーズ量を規定する。これにより、高い降伏電圧を確保する等の所望の性能を実現した半導体を製造することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法によれば、高濃度領域形成工程において、インプラント領域の深さが、シリコン基板表面に対して深さ100[nm]の範囲内とされている。これにより、第1領域内の狭い範囲のみを高濃度化し、降伏電圧の低下を抑制するとともに順方向電流Iの性能を改善することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法によれば、中央領域の各縁部からSBD形成領域に設けられるマスクの開口部の各縁部までの幅方向の距離が、0.1~0.3[μm]とされている。これにより、インプラント領域を小さく形成することにより、SBD領域の電界強度が高くなることを抑制し、リーク電流を低減することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法によれば、高濃度領域形成工程において、注入する不純物はヒ素(As)である。これにより、アニール工程等の熱処理による不純物の拡散をリン(P)に比べて抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法によれば、高濃度領域形成工程において、ヒ素(As)のイオン注入エネルギーは50[keV]以下である。イオン注入エネルギーが低いため、イオン注入直後の不純物の分布範囲を半導体基板表面から50[nm]未満に収めることができ、アニール工程等の熱処理後の分布範囲を100[nm]程度に抑えることができる。ここで、注入エネルギーは半導体基板表面の酸化膜の膜厚を透過するよう最適化されているものとする。
【0057】
本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法によれば、シリコン基板(10)に形成されたショットキーバリアダイオード(SBD)領域(1)と、シリコン基板に形成され、第1型不純物が注入されたチャネル領域を備える第1MOSトランジスタ領域(2)と、シリコン基板に形成され、第1型不純物が注入されたチャネル領域(Ch)を備える第2MOSトランジスタ領域(3)と、を備え、SBD領域は、コバルトよりも仕事関数が高い材料を用いて、アノード形成領域がシリサイド化された第1層(シリサイド領域20)と、第1層の下方に設けられるとともに、シリコン基板の厚さ方向に直交する幅方向の中央領域付近に設けられ、第1型不純物が注入されたインプラント領域(Im)とを備え、インプラント領域の不純物濃度は、第2MOSトランジスタ領域のチャネル領域の不純物濃度から第1MOSトランジスタ領域のチャネル領域の不純物濃度を差し引いた濃度に対して±10%の範囲内とされている。
【0058】
また、本実施形態に係る半導体装置及びその製造方法によれば、第2MOSトランジスタ領域は、SRAMに用いられる。これにより、SRAMの各製造工程において形成される他の各領域の不純物濃度との比率を好適化することができ、第2MOSトランジスタは所望の性能を確保することができる。
【0059】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、製造工程の追加または削除、各領域を形成する際の各値等について、種々変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 :ショットキーバリアダイオード(SBD)領域
1b :ショットキーバリアダイオード(SBD)形成領域
2 :第1半導体領域
2b :第1半導体形成領域
3 :第2半導体領域
3b :第2半導体形成領域
4 :第3半導体領域
4b :第3半導体形成領域
10 :半導体基板
20 :シリサイド領域
22 :絶縁部
24 :シリサイドブロック
100 :半導体装置
An :アノード
C :中央領域
Ch :高濃度チャネル領域
DL,DV :空乏層領域
HVGOX,LVGOX :ゲート酸化膜
:順方向電流
:リーク電流
Im :インプラント領域
K :カソード
LVG1,LVG2,HVG3 :ゲート
NW1 :第1Nウェル領域
NW2 :第2Nウェル領域
NW3 :第3Nウェル領域
PR :レジスト層
PW1 :第1Pウェル領域
R :領域
SD :ソース/ドレイン部
SJ :ショットキー接合部
LVPex :LVP拡散領域
n1,n2,n3 :不純物濃度
X :距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14