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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132781
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240920BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H02M7/48 M
F04B39/00 106Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110987
(22)【出願日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2023039643
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 駿
(72)【発明者】
【氏名】永田 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】川島 隆
(72)【発明者】
【氏名】深作 博史
(72)【発明者】
【氏名】安保 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】白石 和洋
【テーマコード(参考)】
3H003
5H770
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB05
3H003AB06
3H003AC03
3H003BA00
3H003CD01
3H003CF01
5H770AA05
5H770BA05
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770JA13W
5H770KA01W
5H770LA00W
5H770QA01
5H770QA25
5H770QA28
5H770QA31
(57)【要約】
【課題】より優れたダンピング効果が得られる電動圧縮機を提供する。
【解決手段】ノイズ低減部50は、コモンモードチョークコイル51と、非磁性体からなる第1ダンピング部54とを有している。コモンモードチョークコイル51は、環状のコア60と、コア60に巻回される第1巻線61と、コア60に巻回されるとともに第1巻線61と間隔を空けて並ぶ第2巻線62とを有している。第1ダンピング部54は、第1巻線61と第2巻線62とを囲んでいる。コア60から漏れる漏れ磁束の変化に抗う磁束が発生するように第1ダンピング部54に誘導電流が流れることにより、第1ダンピング部54はノーマルモードノイズを低減させる。ノイズ低減部50は、磁性体からなり、第1ダンピング部54を間に挟んでコモンモードチョークコイル51とは反対側に配置され、ノーマルモードノイズを低減させる第2ダンピング部55を有している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動するモータと、
前記モータを駆動するインバータ装置と、
前記圧縮部、前記モータ、及び前記インバータ装置を収容するハウジングと、
を備え、
前記インバータ装置は、
直流電力を交流電力に変換するインバータ回路部と、
前記インバータ回路部の入力側に設けられ、コモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させるノイズ低減部と、
を有し、
前記ノイズ低減部は、
環状のコア、前記コアに巻回される第1巻線、及び前記コアに巻回されるとともに前記第1巻線と間隔を空けて並ぶ第2巻線を有し、前記コモンモードノイズを低減させるコモンモードチョークコイルと、
前記コモンモードチョークコイルと共にローパスフィルタ回路を構成する平滑コンデンサと、
非磁性体からなり、前記第1巻線と前記第2巻線とを囲み、前記コアから漏れる漏れ磁束の変化に抗う磁束が発生するように誘導電流が流れ、前記ノーマルモードノイズを低減させる第1ダンピング部と、
を有する電動圧縮機であって、
前記ノイズ低減部は、磁性体からなり、前記第1ダンピング部を間に挟んで前記コモンモードチョークコイルとは反対側に配置され、前記ノーマルモードノイズを低減させる第2ダンピング部を有していることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記ノイズ低減部は、少なくとも1つの前記第2ダンピング部を有し、前記第2ダンピング部は、前記コアの外周において前記コアの周方向に配置されている請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記インバータ装置は、板状の本体部及び前記本体部から立設された筒部を有する樹脂製のホルダを有し、
前記コモンモードチョークコイル及び前記第1ダンピング部は、前記コアの軸方向が前記筒部の軸方向に延びるように前記本体部と前記筒部とによって区画された収容空間に収容されている請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記第2ダンピング部は、前記筒部の外周面に取り付けられている請求項3に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記第2ダンピング部は、前記筒部の内周面に取り付けられている請求項3に記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記第2ダンピング部は、前記第1ダンピング部と前記本体部との間に取り付けられている請求項3に記載の電動圧縮機。
【請求項7】
前記ノイズ低減部は、複数の前記コモンモードチョークコイルと、複数の前記コモンモードチョークコイルの各々に設けられた前記第1ダンピング部とを有し、
複数の前記コモンモードチョークコイルは、前記第1ダンピング部を間に挟んで前記コモンモードチョークコイルとは反対側に配置された前記第2ダンピング部に取り囲まれている請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項8】
前記コモンモードチョークコイルは、前記第1ダンピング部を間に挟んで前記コモンモードチョークコイルとは反対側に配置された前記第2ダンピング部によって取り囲まれ、
前記第2ダンピング部には、延在方向において磁気抵抗を大きくする空隙部が設けられ、
前記空隙部は、前記コアの軸方向と前記第1巻線及び前記第2巻線が並ぶ方向の両方に対して直交するとともに前記第1巻線と前記第2巻線との中間に位置する仮想直線に対して線対称に設けられている請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項9】
前記コモンモードチョークコイルは、前記第1ダンピング部を間に挟んで前記コモンモードチョークコイルとは反対側に配置された前記第2ダンピング部によって取り囲まれ、
前記第2ダンピング部には、延在方向において磁気抵抗を大きくする空隙部が設けられ、
前記空隙部は、前記コアの軸方向と前記第1巻線及び前記第2巻線が並ぶ方向の両方に対して直交するとともに前記第1巻線と前記第2巻線との中間に位置する仮想直線に対して非線対称に設けられている請求項1に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動するモータと、モータを駆動するインバータ装置と、圧縮部、モータ、及びインバータ装置を収容するハウジングとを備えている。インバータ装置は、インバータ回路部とノイズ低減部とを有している。インバータ回路部は、直流電力を交流電力に変換する。ノイズ低減部は、インバータ回路部の入力側に設けられている。ノイズ低減部は、コモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させる。
【0003】
ノイズ低減部は、コモンモードチョークコイルと、平滑コンデンサと、ダンピング部とを有している。コモンモードチョークコイルは、環状のコアと、コアに巻回された第1巻線と、コアに巻回されるとともに第1巻線と間隔を空けて並ぶ第2巻線とを有している。コモンモードチョークコイルは、コモンモードノイズを低減させる。平滑コンデンサは、コモンモードチョークコイルと共にローパスフィルタ回路を構成している。ダンピング部は、非磁性体からなる。ダンピング部は、第1巻線と第2巻線とを囲んでいる。
【0004】
第1巻線及び第2巻線にノーマルモード電流が流れる際、コアから磁束が漏れる。ダンピング部には、コアから漏れる漏れ磁束の変化に抗う磁束が発生するように誘導電流が流れる。そして、ダンピング部を流れる誘導電流が熱エネルギーに変換されることにより、ダンピング効果が得られる。ダンピング部は、ノーマルモードノイズを低減させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第W02017/170817号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような電動圧縮機では、より優れたダンピング効果を得ることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動するモータと、前記モータを駆動するインバータ装置と、前記圧縮部、前記モータ、及び前記インバータ装置を収容するハウジングと、を備え、前記インバータ装置は、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路部と、前記インバータ回路部の入力側に設けられ、コモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させるノイズ低減部と、を有し、前記ノイズ低減部は、環状のコア、前記コアに巻回される第1巻線、及び前記コアに巻回されるとともに前記第1巻線と間隔を空けて並ぶ第2巻線を有し、前記コモンモードノイズを低減させるコモンモードチョークコイルと、前記コモンモードチョークコイルと共にローパスフィルタ回路を構成する平滑コンデンサと、非磁性体からなり、前記第1巻線と前記第2巻線とを囲み、前記コアから漏れる漏れ磁束の変化に抗う磁束が発生するように誘導電流が流れ、前記ノーマルモードノイズを低減させる第1ダンピング部と、を有する電動圧縮機であって、前記ノイズ低減部は、磁性体からなり、前記第1ダンピング部を間に挟んで前記コモンモードチョークコイルとは反対側に配置され、前記ノーマルモードノイズを低減させる第2ダンピング部を有していることを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、ノイズ低減部は、非磁性体からなる第1ダンピング部を有している。第1ダンピング部は、第1巻線及び第2巻線を囲んでいる。このため、コアから漏れる漏れ磁束の変化に抗う磁束が発生するように、第1ダンピング部には誘導電流が流れる。そして、第1ダンピング部に流れる誘導電流が熱エネルギーに変換されることによって、ダンピング効果が得られる。
【0009】
また、ノイズ低減部は、磁性体からなる第2ダンピング部を有している。第2ダンピング部は、第1ダンピング部を間に挟んでコモンモードチョークコイルとは反対側に配置されている。コアから漏れる漏れ磁束が第2ダンピング部を流れると、第2ダンピング部には渦電流が生じる。第2ダンピング部に生じた渦電流は、熱エネルギーに変換される。これによっても、ダンピング効果が得られる。
【0010】
このようにノイズ低減部が第1ダンピング部及び第2ダンピング部を有することによって、第1ダンピング部のみを有する場合と比較して、第2ダンピング部が追加された分だけ漏れ磁束の漏れ量が増加する。したがって、より優れたダンピング効果が得られる。
【0011】
上記電動圧縮機において、前記ノイズ低減部は、少なくとも1つの前記第2ダンピング部を有し、前記第2ダンピング部は、前記コアの外周において前記コアの周方向に配置されていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、少なくとも1つの第2ダンピング部が、コアの外周においてコアの周方向に配置されるため、第1ダンピング部のみを有する場合と比較して、より優れたダンピング効果が得られる。
【0013】
上記電動圧縮機において、前記インバータ装置は、板状の本体部及び前記本体部から立設された筒部を有する樹脂製のホルダを有し、前記コモンモードチョークコイル及び前記第1ダンピング部は、前記コアの軸方向が前記筒部の軸方向に延びるように前記本体部と前記筒部とによって区画された収容空間に収容されていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、コモンモードチョークコイル及び第1ダンピング部が収容空間に収容されることによって、コモンモードチョークコイル及び第1ダンピング部の位置がずれにくくなる。
【0015】
上記電動圧縮機において、前記第2ダンピング部は、前記筒部の外周面に取り付けられていてもよい。
上記構成によれば、第2ダンピング部をホルダに容易に取り付けることができる。第2ダンピング部は、筒部の外周に配置されている。これにより、第1ダンピング部及びコモンモードチョークコイルに対して、第2ダンピング部を筒部によって絶縁できる。
【0016】
上記電動圧縮機において、前記第2ダンピング部は、前記筒部の内周面に取り付けられていてもよい。
上記構成によれば、第2ダンピング部をホルダに容易に取り付けることができる。また、第2ダンピング部を筒部の外周に配置する場合と比較して、第2ダンピング部をコアに近づけることができるため、より優れたダンピング効果が得られる。
【0017】
上記電動圧縮機において、前記第2ダンピング部は、前記第1ダンピング部と前記本体部との間に取り付けられていてもよい。
上記構成によれば、第2ダンピング部を第1ダンピング部とホルダとの間に容易に取り付けることができる。また、第2ダンピング部の位置がずれにくくなる。
【0018】
上記電動圧縮機において、前記ノイズ低減部は、複数の前記コモンモードチョークコイルと、複数の前記コモンモードチョークコイルの各々に設けられた前記第1ダンピング部とを有し、複数の前記コモンモードチョークコイルは、前記第1ダンピング部を間に挟んで前記コモンモードチョークコイルとは反対側に配置された前記第2ダンピング部に取り囲まれていてもよい。
【0019】
上記構成によれば、複数のコモンモードチョークコイルは、第1ダンピング部を間に挟んでコモンモードチョークコイルとは反対側に配置された第2ダンピング部に取り囲まれている。したがって、複数のコモンモードチョークコイルで第2ダンピング部を共用できる。また、隣り合うコモンモードチョークコイルの間に第2ダンピング部が配置されない分、コモンモードチョークコイルが並ぶ方向においてノイズ低減部を小型化できる。
【0020】
上記電動圧縮機において、前記コモンモードチョークコイルは、前記第1ダンピング部を間に挟んで前記コモンモードチョークコイルとは反対側に配置された前記第2ダンピング部によって取り囲まれ、前記第2ダンピング部には、延在方向において磁気抵抗を大きくする空隙部が設けられ、前記空隙部は、前記コアの軸方向と前記第1巻線及び前記第2巻線が並ぶ方向の両方に対して直交するとともに前記第1巻線と前記第2巻線との中間に位置する仮想直線に対して線対称に設けられていてもよい。
【0021】
上記構成によれば、第2ダンピング部には、延在方向において磁気抵抗を大きくする空隙部が設けられている。コアから漏れる漏れ磁束は、第2ダンピング部において、空隙部が設けられている経路よりも空隙部が設けられていない経路の方に流れやすい。また、上記構成によれば、空隙部は、仮想直線に対して線対称に設けられている。このため、第2ダンピング部における漏れ磁束の流れやすさは、仮想直線よりも一方側に位置する部分と、仮想直線よりも他方側に位置する部分とで同程度になる。したがって、第2ダンピング部のうち、仮想直線よりも一方側に位置する部分の温度と、仮想直線よりも他方側に位置する部分の温度とを同程度にすることができる。
【0022】
上記電動圧縮機において、前記コモンモードチョークコイルは、前記第1ダンピング部を間に挟んで前記コモンモードチョークコイルとは反対側に配置された前記第2ダンピング部によって取り囲まれ、前記第2ダンピング部には、延在方向において磁気抵抗を大きくする空隙部が設けられ、前記空隙部は、前記コアの軸方向と前記第1巻線及び前記第2巻線が並ぶ方向の両方に対して直交するとともに前記第1巻線と前記第2巻線との中間に位置する仮想直線に対して非線対称に設けられていてもよい。
【0023】
上記構成によれば、第2ダンピング部には、延在方向において磁気抵抗を大きくする空隙部が設けられている。コアから漏れる漏れ磁束は、第2ダンピング部において、空隙部が設けられている経路よりも空隙部が設けられていない経路の方に流れやすい。また、上記構成によれば、空隙部は、仮想直線に対して非線対称に設けられている。このため、第2ダンピング部における漏れ磁束の流れやすさは、仮想直線よりも一方側に位置する部分と、仮想直線よりも他方側に位置する部分とで異なる。したがって、第2ダンピング部のうち、仮想直線よりも一方側に位置する部分の温度と、仮想直線よりも他方側に位置する部分の温度とを異ならせることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、より優れたダンピング効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】電動圧縮機を示す側断面図である。
図2】電動圧縮機の電気的構成を示す回路図である。
図3】ホルダの一部及び第2ダンピング部を示す斜視図である。
図4】コモンモードチョークコイル及び第1ダンピング部を示す分解斜視図である。
図5】ホルダ、コモンモードチョークコイル、第1ダンピング部、及び第2ダンピング部を示す正面図である。
図6】電動圧縮機の一部を示す部分断面図である。
図7】第2ダンピング部が巻線と第1ダンピング部との間に配置されている場合の漏れ磁束を説明する説明図である。
図8】共振周波数における第1ダンピング部及び第2ダンピング部による合計の抵抗値を示すグラフである。
図9】変更例における第2ダンピング部を示す正面図である。
図10】変更例における第2ダンピング部を示す分解斜視図である。
図11】変更例における電動圧縮機の一部を示す部分断面図である。
図12】変更例における第2ダンピング部を示す正面図である。
図13】変更例における第2ダンピング部を示す正面図である。
図14】変更例におけるノイズ低減部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、電動圧縮機を具体化した一実施形態を図1図9にしたがって説明する。本実施形態の電動圧縮機は、車両に搭載される。本実施形態の電動圧縮機は、車両空調装置に用いられる。
【0027】
<車両空調装置>
図1に示すように、車両空調装置100は、電動圧縮機10と外部冷媒回路101とを備えている。外部冷媒回路101は、電動圧縮機10に対して流体としての冷媒を供給する。外部冷媒回路101は、例えば、図示しない熱交換器及び膨張弁等を有している。車両空調装置100は、電動圧縮機10によって冷媒が圧縮され、かつ外部冷媒回路101によって冷媒の熱交換及び膨張が行われることによって、車内の冷暖房を行う。
【0028】
車両空調装置100は、空調ECU102を備えている。空調ECU102は、車両空調装置100の全体を制御する。空調ECU102は、車内温度やカーエアコンの設定温度等を把握可能に構成されている。そして、空調ECU102は、車内温度やカーエアコンの設定温度等のパラメータに基づいて、電動圧縮機10に対してON/OFF指令等といった各種指令を送信する。
【0029】
<電動圧縮機>
電動圧縮機10は、ハウジング11と、回転軸12と、冷媒を圧縮する圧縮部13と、圧縮部13を駆動するモータ14と、モータ14を駆動するインバータ装置15とを備えている。
【0030】
ハウジング11は、回転軸12、圧縮部13、モータ14、及びインバータ装置15を収容している。ハウジング11は、金属製である。本実施形態のハウジング11は、アルミニウム製である。ハウジング11は、車両のボディに接地されている。ハウジング11は、吸入ハウジング21と、吐出ハウジング22と、インバータハウジング23とを有している。
【0031】
吸入ハウジング21は、板状の端壁21aと、端壁21aの外周部から筒状に延びる周壁21bとを有している。吐出ハウジング22は、吸入ハウジング21の開口側の端部に連結されている。吐出ハウジング22は、吸入ハウジング21の開口を閉塞している。吸入ハウジング21と吐出ハウジング22は、吸入室S1を区画している。回転軸12、圧縮部13、及びモータ14は、吸入室S1内に収容されている。モータ14は、吸入室S1内において圧縮部13と吸入ハウジング21の端壁21aとの間に配置されている。
【0032】
インバータハウジング23は、板状の端壁23aと、端壁23aの外周部から筒状に延びる周壁23bとを有している。インバータハウジング23は、ボルトBによって、吸入ハウジング21の端壁21aに連結されている。吸入ハウジング21の端壁21aとインバータハウジング23は、インバータ収容室S2を区画している。インバータ装置15は、インバータ収容室S2内に収容されている。
【0033】
インバータハウジング23の端壁23aには、コネクタ16が取り付けられている。コネクタ16は、車両に搭載された蓄電装置103に電気的に接続されている。蓄電装置103は、車両に搭載された機器に電力を供給する電源である。蓄電装置103は、直流電源である。蓄電装置103は、例えば、二次電池やキャパシタである。
【0034】
ハウジング11は、吸入口11aを有している。吸入口11aは、吸入ハウジング21の周壁21bに形成されている。吸入口11aは、吸入ハウジング21の周壁21bのうち、吐出ハウジング22よりも端壁21aに近い部位に形成されている。また、ハウジング11は、吐出口11bを有している。吐出口11bは、吐出ハウジング22に形成されている。吸入口11aは、外部冷媒回路101の一端に接続されるとともに、吐出口11bは、外部冷媒回路101の他端に接続されている。
【0035】
回転軸12は、ハウジング11に対して回転可能な状態で支持されている。回転軸12の軸方向は、吸入ハウジング21の周壁21bの軸方向と一致している。
圧縮部13は、回転軸12に連結されている。圧縮部13は、回転軸12が回転すると、冷媒を圧縮する。圧縮部13は、例えば、吸入ハウジング21に固定された図示しない固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される図示しない旋回スクロールとから構成されるスクロール式である。
【0036】
モータ14は、ロータ31及びステータ32を有している。
ロータ31は、円筒形状のロータコア33と、ロータコア33に設けられた図示しない永久磁石とを有している。回転軸12は、ロータコア33に挿通されている。回転軸12は、ロータコア33に固定されている。回転軸12は、ロータ31と一体回転可能である。
【0037】
ステータ32は、ロータ31と回転軸12の径方向に対向している。ステータ32は、円筒形状のステータコア34と、u相コイル35u、v相コイル35v、及びw相コイル35wとを有している。ステータコア34は、吸入ハウジング21の周壁21bの内周面に固定されている。u相コイル35u、v相コイル35v、及びw相コイル35wはそれぞれ、ステータコア34に巻きつけられている。u相コイル35u、v相コイル35v、及びw相コイル35wは、例えば、Y結線されている。u相コイル35u、v相コイル35v、及びw相コイル35wの結線態様は、Y結線に限られず、任意である。u相コイル35u、v相コイル35v、及びw相コイル35wの結線態様は、例えば、デルタ結線でもよい。
【0038】
u相コイル35u、v相コイル35v、及びw相コイル35wが所定のパターンで通電されることにより、ロータ31は回転する。ロータ31が回転すると、回転軸12が回転する。これにより、圧縮部13が駆動する。したがって、モータ14は、圧縮部13を駆動する。圧縮部13は、外部冷媒回路101から吸入口11aを介して吸入室S1内に吸入された冷媒を圧縮する。圧縮部13により圧縮された冷媒は、吐出口11bを介して外部冷媒回路101に吐出される。
【0039】
図1及び図2に示すように、インバータ装置15は、回路基板41と、ホルダ42と、インバータ回路部43と、制御部44と、ノイズ低減部50とを有している。
回路基板41は、回転軸12の軸方向において吸入ハウジング21の端壁21aとインバータハウジング23の端壁23aとの間に配置されている。回路基板41の厚さ方向は、回転軸12の軸方向と一致している。
【0040】
ホルダ42は、樹脂製である。ホルダ42は、回路基板41と吸入ハウジング21の端壁21aとの間に配置されている。
ホルダ42は、板状の本体部45を有している。本体部45の板厚方向は、回転軸12の軸方向と一致している。本体部45は、第1面45a及び第2面45bを有している。第1面45a及び第2面45bはそれぞれ、本体部45の板厚方向と直交する面である。本体部45の第1面45aは、吸入ハウジング21の端壁21a側に位置している。本体部45の第2面45bは、回路基板41側に位置している。
【0041】
図3に示すように、ホルダ42は、本体部45の第1面45aから立設された筒部46を有している。本体部45の第1面45aと筒部46の内周面46aとは、収容空間47を区画している。
【0042】
本実施形態の筒部46は、八角筒状である。筒部46は、一対の第1壁部461と、一対の第2壁部462と、4つの第3壁部463とを有している。一対の第1壁部461は対向している。一対の第2壁部462は、一対の第1壁部461が対向する方向とは直交する方向に対向している。第3壁部463は、第1壁部461と第2壁部462とを接続している。
【0043】
インバータ回路部43は、直流電力を交流電力に変換する。本実施形態では、インバータ回路部43は、回転軸12の軸方向においてホルダ42の本体部45と吸入ハウジング21の端壁21aとの間に配置されている。インバータ回路部43は、回路基板41に実装されている。
【0044】
図2に示すように、インバータ回路部43は、2本の接続ラインEL1,EL2を有している。インバータ回路部43は、u相コイル35uに対応するu相スイッチング素子Qu1,Qu2を備えている。インバータ回路部43は、v相コイル35vに対応するv相スイッチング素子Qv1,Qv2を備えている。インバータ回路部43は、w相コイル35wに対応するw相スイッチング素子Qw1,Qw2を備えている。各スイッチング素子Qu1~Qw2は、例えば、IGBT等のパワースイッチング素子である。なお、各スイッチング素子Qu1,Qu2,Qv1,Qv2,Qw1,Qw2には、それぞれ還流ダイオードDu1,Du2,Dv1,Dv2,Dw1,Dw2が接続されている。
【0045】
各u相スイッチング素子Qu1,Qu2は、直列接続されている。各u相スイッチング素子Qu1,Qu2の間は、u相コイル35uに接続されている。そして、各u相スイッチング素子Qu1,Qu2の直列接続体は、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されている。
【0046】
各v相スイッチング素子Qv1,Qv2は、直列接続されている。各v相スイッチング素子Qv1,Qv2の間は、v相コイル35vに接続されている。そして、各v相スイッチング素子Qv1,Qv2の直列接続体は、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されている。
【0047】
各w相スイッチング素子Qw1,Qw2は、直列接続されている。各w相スイッチング素子Qw1,Qw2の間は、w相コイル35wに接続されている。そして、各w相スイッチング素子Qw1,Qw2の直列接続体は、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されている。
【0048】
制御部44は、インバータ回路部43を制御する。制御部44は、各スイッチング素子Qu1~Qw2のスイッチング動作を制御する。制御部44は、例えば、1つ以上の専用のハードウェア回路、及び/又は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(制御回路)によって実現することができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、例えば、各種処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ即ちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0049】
制御部44は、コネクタ16を介して空調ECU102と電気的に接続されている。制御部44は、空調ECU102からの指令に基づいて、各スイッチング素子Qu1~Qw2を周期的にON/OFFさせる。詳細には、制御部44は、空調ECU102からの指令に基づいて、各スイッチング素子Qu1~Qw2をパルス幅変調制御(PWM制御)する。より具体的には、制御部44は、キャリア信号(搬送波信号)と指令電圧値信号(比較対象信号)とを用いて、制御信号を生成する。そして、制御部44は、生成された制御信号を用いて各スイッチング素子Qu1~Qw2のON/OFF制御を行うことにより直流電力を交流電力に変換する。
【0050】
<ノイズ低減部>
ノイズ低減部50は、インバータ回路部43の入力側に設けられている。ノイズ低減部50は、コモンモードノイズ及びノーマルモードノイズを低減させる。本実施形態では、ノイズ低減部50は、回転軸12の軸方向においてホルダ42の本体部45と吸入ハウジング21の端壁21aとの間に配置されている。ノイズ低減部50は、回路基板41に実装されている。
【0051】
ノイズ低減部50は、コモンモードチョークコイル51と平滑コンデンサ52とを有している。平滑コンデンサ52は、コモンモードチョークコイル51と共にローパスフィルタ回路56を構成している。ローパスフィルタ回路56は、接続ラインEL1,EL2上に設けられている。ローパスフィルタ回路56は、回路的にはコネクタ16とインバータ回路部43との間に設けられている。コモンモードチョークコイル51は、両接続ラインEL1,EL2上に設けられている。
【0052】
平滑コンデンサ52は、コモンモードチョークコイル51に対して、インバータ回路部43側に設けられている。平滑コンデンサ52は、インバータ回路部43に対して並列接続されたXコンデンサである。平滑コンデンサ52は、両接続ラインEL1,EL2に電気的に接続されている。そして、コモンモードチョークコイル51と平滑コンデンサ52とによって、LC共振回路が構成されている。したがって、本実施形態のローパスフィルタ回路56は、コモンモードチョークコイル51を含むLC共振回路である。
【0053】
ノイズ低減部50は、2つのYコンデンサ53を有している。2つのYコンデンサ53は、直列接続されている。2つのYコンデンサ53の間は、ハウジング11を介して車両のボディに接地されている。2つのYコンデンサ53は、コモンモードチョークコイル51に対してインバータ回路部43側に設けられている。2つのYコンデンサ53は、コモンモードチョークコイル51に対して並列接続されている。2つのYコンデンサ53は、平滑コンデンサ52に対して並列接続されている。2つのYコンデンサ53は、コモンモードチョークコイル51と平滑コンデンサ52との間に位置している。
【0054】
コモンモードチョークコイル51は、車両側で発生する高周波ノイズが電動圧縮機10のインバータ回路部43に伝わるのを抑制する。コモンモードチョークコイル51は、コモンモードノイズを低減させる。また、コモンモードチョークコイル51は、漏れインダクタンスをノーマルインダクタンスとして利用する。これにより、コモンモードチョークコイル51は、ノーマルモードノイズ(ディファレンシャルモードノイズ)を除去するためのローパスフィルタ回路(LCフィルタ)56におけるL成分として用いられる。すなわち、コモンモードチョークコイル51は、コモンモードノイズ及びノーマルモードノイズ(ディファレンシャルモードノイズ)に対応可能である。したがって、本実施形態の電動圧縮機10では、コモンモード用チョークコイルとノーマルモード(ディファレンシャルモード)用チョークコイルとをそれぞれ用いるのではなく、コモンモードチョークコイル51で両モードノイズに対応している。
【0055】
図4に示すように、コモンモードチョークコイル51は、コア60と、第1巻線61と、第2巻線62とを有している。
コア60は、環状である。コア60は、強磁性体からなる。コア60は、例えば、フェライトコアである。コア60は、第1巻回部601と、第2巻回部602と、一対の連結部603とを有している。第1巻回部601及び第2巻回部602はそれぞれ、直線状に延びている。第1巻回部601と第2巻回部602は、平行に延びている。一方の連結部603は、第1巻回部601の一端部と第2巻回部602の一端部とを連結し、他方の連結部603は、第1巻回部601の他端部と第2巻回部602の他端部とを連結している。コア60は、第1端面60a及び第2端面60bを有している。第1端面60aは、コア60の軸方向の一端面であり、第2端面60bは、コア60の軸方向の他端面である。
【0056】
第1巻線61は、コア60の第1巻回部601に巻回されている。本実施形態では、第1巻線61の一部は、コア60の一対の連結部603にも巻回されている。第1巻線61の両端部は、コア60の第1端面60aから一対の第1リード部63として引き出されている。
【0057】
第2巻線62は、コア60の第2巻回部602に巻回されている。本実施形態では、第2巻線62の一部は、コア60の一対の連結部603にも巻回されている。第2巻線62は、第1巻線61と間隔を空けて並んでいる。第2巻線62の両端部は、コア60の第1端面60aから一対の第2リード部64として引き出されている。
【0058】
第1巻線61及び第2巻線62はそれぞれ、コア60の第1端面60aに位置する第1部位65と、コア60の第2端面60bに位置する第2部位66と、コア60の外周面60cに位置する第3部位67とを有している。
【0059】
<第1ダンピング部>
図4に示すように、ノイズ低減部50は、ノーマルモードノイズを低減させる板状の第1ダンピング部54を有している。第1ダンピング部54は、導電性非磁性体からなる。第1ダンピング部54は、例えば、銅やアルミニウムからなる。
【0060】
本実施形態の第1ダンピング部54は、環状である。第1ダンピング部54は、第1被覆部54aと、第2被覆部54bと、第3被覆部54cと、第4被覆部54dとを有している。第1被覆部54a、第2被覆部54b、第3被覆部54c、及び第4被覆部54dはそれぞれ、矩形平板状である。第1被覆部54a及び第2被覆部54bは平行である。第2被覆部54bには、貫通孔54hが形成されている。貫通孔54hは、第2被覆部54bを板厚方向に貫通している。第3被覆部54cは、第1被覆部54aの長手方向の一端部と第2被覆部54bの長手方向の一端部とを連結している。第4被覆部54dは、第1被覆部54aの長手方向の他端部と第2被覆部54bの長手方向の他端部とを連結している。第3被覆部54c及び第4被覆部54dは平行である。
【0061】
図5及び図6に示すように、コモンモードチョークコイル51の一部は、第1ダンピング部54の内側に配置されている。コア60の軸方向と第1ダンピング部54の軸方向は、互いに直交している。コア60の第1巻回部601及び第2巻回部602と、第1巻線61のうち第1巻回部601に巻回された部分と、第2巻線62のうち第2巻回部602に巻回された部分は、第1ダンピング部54の内側に位置している。コア60の一対の連結部603と、第1巻線61のうち連結部603に巻回された部分と、第2巻線62のうち連結部603に巻回された部分は、第1ダンピング部54の外側に位置している。一対の第1リード部63及び一対の第2リード部64はそれぞれ、第1ダンピング部54の軸方向の両側に位置している。
【0062】
第1被覆部54aと第2被覆部54bとは、コモンモードチョークコイル51をコア60の軸方向に挟み込むように配置されている。第1被覆部54aは、コア60の第1端面60a側に位置している。第2被覆部54bは、コア60の第2端面60b側に位置している。第1被覆部54aは、第1巻線61及び第2巻線62の第1部位65を覆っている。第2被覆部54bは、第1巻線61及び第2巻線62の第2部位66を覆っている。
【0063】
第3被覆部54cと第4被覆部54dとは、コモンモードチョークコイル51を第1巻線61及び第2巻線62が並ぶ方向に挟み込むように配置されている。第3被覆部54cは、第1巻線61の第3部位67を覆っている。第4被覆部54dは、第2巻線62の第3部位67を覆っている。
【0064】
このように第1ダンピング部54は、第1巻線61と第2巻線62とを囲んでいる。第1ダンピング部54は、第1巻線61及び第2巻線62の第1部位65、第2部位66、及び第3部位67を覆っている。
【0065】
コモンモードチョークコイル51及び第2ダンピング部55は、ホルダ42の収容空間47に収容されている。コア60の軸方向と筒部46の軸方向は一致している。第1被覆部54aにおけるコモンモードチョークコイル51と対向する面とは反対側の面は、ホルダ42の本体部45の第1面45aと対向している。各第1リード部63及び各第2リード部64は、本体部45を貫通する挿通孔45hに挿通されている。各第1リード部63及び各第2リード部64は、例えば、回路基板41にはんだ付けされている。これにより、第1巻線61及び第2巻線62はそれぞれ、回路基板41と電気的に接続されている。第2被覆部54bにおけるコモンモードチョークコイル51と対向する面とは反対側の面と、吸入ハウジング21の端壁21aの外面との間には、図示しない放熱グリスが設けられている。第3被覆部54c及び第4被覆部54dにおけるコモンモードチョークコイル51と対向する面とは反対側の面は、筒部46の一対の第1壁部461の内面と対向している。
【0066】
<第2ダンピング部>
図3及び図5に示すように、ノイズ低減部50は、ノーマルモードノイズを低減させる板状の第2ダンピング部55を有している。第2ダンピング部55は、導電性磁性体からなる。第2ダンピング部55は、例えば、鉄や電磁鋼からなる。本実施形態の第2ダンピング部55の厚さは数百μmである。ただし、図面では、第2ダンピング部55の厚さを誇張して図示している。
【0067】
本実施形態の第2ダンピング部55は、筒部46とインサート成形されることによって、筒部46の外周面46bに取り付けられている。第2ダンピング部55は、筒部46の各第1~第3壁部461~463の外面に設けられている。したがって、第2ダンピング部55は、筒部46の外周において筒部46の周方向に延在している。第2ダンピング部55は、コモンモードチョークコイル51を取り囲むようにコア60の外周においてコア60の周方向に延在している。
【0068】
第2ダンピング部55は、第1端部55a及び第2端部55bを有している。第1端部55a及び第2端部55bは、筒部46の周方向における第2ダンピング部55の端部である。第2端部55bは、第1端部55aとは反対側に位置する端部である。第2ダンピング部55は、第1~第8部位551~558を有している。第1~第8部位551~558は、第2ダンピング部55の第1端部55aから第2端部55bに向かってこの順に並んでいる。第1部位551は、筒部46の一方の第1壁部461の外面に設けられている。第5部位555は、筒部46の他方の第1壁部461の外面に設けられている。第3部位553は、筒部46の一方の第2壁部462の外面に設けられている。第7部位557は、筒部46の他方の第2壁部462の外面に設けられている。第2部位552、第4部位554、第6部位556、及び第8部位558はそれぞれ、筒部46の第3壁部463の外面に設けられている。したがって、第2ダンピング部55の第1端部55a及び第2端部55bは、一方の第1壁部461と1つの第3壁部463との接続部分に位置している。
【0069】
本実施形態の第2ダンピング部55には、第2ダンピング部55の延在方向において磁気抵抗を大きくする空隙部Gが設けられている。すなわち、第2ダンピング部55には、コア60の周方向において磁気抵抗を大きくする空隙部Gが設けられている。
【0070】
本実施形態では、空隙部Gは、コア60の軸方向と第1巻線61及び第2巻線62が並ぶ方向の両方に対して直交するとともに第1巻線61と第2巻線62との中間に位置する仮想直線Lに対して非線対称に設けられている。具体的には、第2ダンピング部55の第1端部55aと第2端部55bとの間に空隙部Gが設けられている。言い換えると、第2ダンピング部55の第1部位551と第8部位558との間に空隙部Gが設けられている。
【0071】
本実施形態では、空隙部Gは、第2ダンピング部55の厚さ方向の全体に亘って設けられている。また、空隙部Gは、コア60の軸方向における第2ダンピング部55の全体に亘って設けられている。このため、第2ダンピング部55は、空隙部Gにより、第2ダンピング部55の延在方向において不連続になっている。したがって、第2ダンピング部55の第1端部55aと第2端部55bとは、電気的に接続されていない。
【0072】
第2ダンピング部55のうち、一対の第2壁部462の外面及び4つの第3壁部463の外面に位置する部分、すなわち第2~第4部位552~554及び第6~第8部位556~558は、筒部46を介して、コア60の一対の連結部603の外周面60cを覆っている。第2ダンピング部55のうち、一対の第1壁部461の外面に位置する部分、すなわち第1部位551及び第5部位555は、第1ダンピング部54の第3被覆部54c及び第4被覆部54dの外面を覆っている。つまり、第2ダンピング部55は、第1ダンピング部54を間に挟んでコモンモードチョークコイル51とは反対側に配置されている。上述したように、本実施形態では、第2ダンピング部55は、コモンモードチョークコイル51を取り囲んでいる。したがって、本実施形態のコモンモードチョークコイル51は、第1ダンピング部54を間に挟んでコモンモードチョークコイル51とは反対側に配置された第2ダンピング部55によって取り囲まれている。筒部46の軸方向における第2ダンピング部55の一端面は、吸入ハウジング21の端壁21aの外面に当接している。
【0073】
[本実施形態の作用]
本実施形態の作用を説明する。
第1巻線61及び第2巻線62にノーマルモード電流(ディファレンシャルモード電流)が流れると、コモンモードチョークコイル51のコア60から磁束が漏れる。
【0074】
ノイズ低減部50は、非磁性体からなる第1ダンピング部54を有している。第1ダンピング部54は、第1巻線61と第2巻線62とを囲んでいる。このため、コア60から漏れる漏れ磁束は、第1ダンピング部54に鎖交する。すると、第1ダンピング部54には、漏れ磁束の変化に抗うような磁束を発生させるべく、第1ダンピング部54の周方向に流れる誘導電流が生じる。第1ダンピング部54に流れる誘導電流は、熱エネルギーに変換される。これにより、ダンピング効果が得られる。
【0075】
また、ノイズ低減部50は、磁性体からなる第2ダンピング部55を有している。第2ダンピング部55は、第1ダンピング部54を間に挟んでコモンモードチョークコイル51とは反対側に配置されている。コア60から漏れる漏れ磁束が第2ダンピング部55を流れると、第2ダンピング部55には渦電流が生じる。第2ダンピング部55に生じた渦電流は、熱エネルギーに変換される。これによっても、ダンピング効果が得られる。
【0076】
このようにノイズ低減部50が第1ダンピング部54及び第2ダンピング部55を有することによって、第1ダンピング部54のみを有する場合と比較して、第2ダンピング部55が追加された分だけ漏れ磁束の漏れ量が増加する。したがって、より優れたダンピング効果が得られる。
【0077】
本実施形態では、コモンモードチョークコイル51は、第1ダンピング部54を間に挟んでコモンモードチョークコイル51とは反対側に配置された第2ダンピング部55によって取り囲まれている。第2ダンピング部55には、延在方向において磁気抵抗を大きくする空隙部Gが設けられている。コア60から漏れる漏れ磁束は、第2ダンピング部55において、空隙部Gが設けられている経路よりも空隙部Gが設けられていない経路の方に流れやすい。
【0078】
本実施形態では、空隙部Gは、コア60の軸方向と第1巻線61及び第2巻線62が並ぶ方向の両方に対して直交するとともに第1巻線61と第2巻線62との中間に位置する仮想直線Lに対して非線対称に設けられている。具体的には、空隙部Gは、第2ダンピング部55の第1部位551と第8部位558との間に設けられている。このため、図5に示すように、コア60から漏れる漏れ磁束は、第2ダンピング部55の第1部位551を通る経路R1よりも、第5部位555を通る経路R2に流れやすい。したがって、第5部位555の温度は、第1部位551の温度よりも高くなる。すなわち、第2ダンピング部55の温度は、仮想直線Lよりも一方側に位置する部分と、仮想直線Lよりも他方側に位置する部分とで異なる。
【0079】
上述したように、筒部46の軸方向における第2ダンピング部55一端面は、吸入ハウジング21の端壁21aの外面に当接している。このため、第2ダンピング部55の熱は、吸入ハウジング21の端壁21aに放熱される。また、第1ダンピング部54の第2被覆部54bと、吸入ハウジング21の端壁21aとの間には、図示しない放熱グリスが設けられている。このため、第1ダンピング部54の熱は、吸入ハウジング21の端壁21aに放熱される。さらに、第1巻線61及び第2巻線62の熱は、第1ダンピング部54を介して吸入ハウジング21の端壁21aに放熱される。また、第1巻線61及び第2巻線62の熱は、貫通孔54hを介して吸入ハウジング21の端壁21aに放熱される。吸入ハウジング21の端壁21aは、吸入室S1内に吸入された冷媒によって冷却される。
【0080】
図7に示すように、第2ダンピング部55が第1巻線61の第3部位67と第1ダンピング部54の第3被覆部54cとの間、及び第2巻線62の第3部位67と第1ダンピング部54の第4被覆部54dとの間に位置する場合について説明する。この場合、コア60から漏れる漏れ磁束は、第1ダンピング部54の内側において第2ダンピング部55を通るループφ1と第1ダンピング部54の外側を通るループφ2とに分岐する。第2ダンピング部55を通る漏れ磁束は、第1ダンピング部54に鎖交する磁束である。また、第2ダンピング部55を通る漏れ磁束の方向は、第1ダンピング部54の内側においてコア60を通る磁束の方向と反対方向である。このため、第2ダンピング部55を通る漏れ磁束と第1ダンピング部54の内側においてコア60を通る磁束とが打ち消し合うことにより、第1ダンピング部54に鎖交する磁束は減少する。つまり、第2ダンピング部55を通る磁束により、第1ダンピング部54に鎖交する磁束は減少する。第1ダンピング部54に鎖交する磁束が減少すると、第1ダンピング部54に流れる誘導電流も減少する。その結果、第1ダンピング部54によるダンピング効果が低下する。
【0081】
図7では、第2ダンピング部55が第1巻線61の第3部位67と第1ダンピング部54の第3被覆部54cとの間、及び第2巻線62の第3部位67と第1ダンピング部54の第4被覆部54dとの間に位置する場合を示している。しかしながら、この場合に限らず、第2ダンピング部55が巻線61,62と第1ダンピング部54の第1被覆部54aとの間に位置する場合にも、第1ダンピング部54によるダンピング効果が低下する。また、第2ダンピング部55が巻線61,62と第1ダンピング部54の第2被覆部54bとの間に位置する場合にも、第1ダンピング部54によるダンピング効果が低下する。つまり、第2ダンピング部55が巻線61,62と第1ダンピング部54との間に位置している場合、第1ダンピング部54によるダンピング効果が低下する。
【0082】
これに対し、本実施形態では、第2ダンピング部55は、第1ダンピング部54の外側に配置されている。つまり、第2ダンピング部55は、第1ダンピング部54を間に挟んでコモンモードチョークコイル51とは反対側に配置されている。この場合、第1ダンピング部54の内側において第2ダンピング部55を通るループφ1は生じない。つまり、コア60から漏れる漏れ磁束は、第1ダンピング部54の外側を通るループφ2を描く。したがって、第1ダンピング部54に鎖交する磁束が減少しないため、第1ダンピング部54に流れる誘導電流も減少しない。その結果、第1ダンピング部54によるダンピング効果が低下することを回避できる。
【0083】
図8は、比較例及び実施例1~3について、共振周波数での第1ダンピング部54及び第2ダンピング部55による合計の抵抗値を示すグラフである。抵抗値が大きいほど、ダンピング効果に優れている。
【0084】
比較例では、ノイズ低減部50は、第1ダンピング部54を有しているが、第2ダンピング部55を有していない。一方、実施例1~3では、ノイズ低減部50は、第1ダンピング部54及び第2ダンピング部55の両方を有している。
【0085】
実施例1~3では、第2ダンピング部55の形状及びコモンモードチョークコイル51及び第1ダンピング部54に対する第2ダンピング部55の配置が異なっている。実施例1は、本実施形態に対応する実施例である。実施例1では、第2ダンピング部55は、コア60の周方向に延在している。実施例1では、第2ダンピング部55は、コア60の一対の連結部603の外周面60cと、第1ダンピング部54の第3被覆部54c及び第4被覆部54dとを覆っている。実施例2,3では、第2ダンピング部55は平板状である。実施例2では、第2ダンピング部55は、第1ダンピング部54の第3被覆部54cの外面を覆うように配置されている。実施例3では、第2ダンピング部55は、第1ダンピング部54の第1被覆部54aの外面を覆うように配置されている。
【0086】
図8から明らかなように、実施例1~3の抵抗値は、比較例の抵抗値よりも大きい。つまり、ノイズ低減部50が第1ダンピング部54に加えて第2ダンピング部55を有することによって、より優れたダンピング効果が得られる。また、実施例1の抵抗値は、実施例2,3の抵抗値よりも大きい。つまり、コア60の周方向に延在するように第2ダンピング部55を配置することによって、さらに優れたダンピング効果が得られる。
【0087】
[本実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1)ノイズ低減部50は、非磁性体からなる第1ダンピング部54を有している。第1ダンピング部54は、第1巻線61及び第2巻線62を囲んでいる。このため、第1ダンピング部54には、コア60から漏れる漏れ磁束の変化に抗う磁束が発生するように誘導電流が流れる。そして、第1ダンピング部54に流れる誘導電流が熱エネルギーに変換されることによって、ダンピング効果が得られる。
【0088】
また、ノイズ低減部50は、磁性体からなる第2ダンピング部55を有している。第2ダンピング部55は、第1ダンピング部54を間に挟んでコモンモードチョークコイル51とは反対側に配置されている。コア60から漏れる漏れ磁束が第2ダンピング部55を流れると、第2ダンピング部55には渦電流が生じる。第2ダンピング部55に生じた渦電流は、熱エネルギーに変換される。これによっても、ダンピング効果が得られる。
【0089】
このようにノイズ低減部50が第1ダンピング部54及び第2ダンピング部55を有することによって、第1ダンピング部54のみを有する場合と比較して、第2ダンピング部55が追加された分だけ漏れ磁束の漏れ量が増加する。したがって、より優れたダンピング効果が得られる。
【0090】
(2)例えば、第2ダンピング部55が巻線61,62と第1ダンピング部54との間に配置されている場合、コア60から漏れる漏れ磁束は、第1ダンピング部54の内側において第2ダンピング部55を通るループφ1と第1ダンピング部54の外側を通るループφ2とに分岐する。すると、第2ダンピング部55を通る磁束により、第1ダンピング部54に鎖交する磁束が減少するため、第1ダンピング部54に流れる誘導電流も減少する。その結果、第1ダンピング部54によるダンピング効果が低下する。
【0091】
これに対し、本実施形態では、第2ダンピング部55は、第1ダンピング部54を間に挟んでコモンモードチョークコイル51とは反対側に配置されている。この場合、第2ダンピング部55を通る磁束により第1ダンピング部54に鎖交する磁束が減少することが回避されるため、第1ダンピング部54に流れる誘導電流は減少しない。したがって、第1ダンピング部54によるダンピング効果が低下することを回避できる。
【0092】
(3)第2ダンピング部55の存在により、コモンモードチョークコイル51の漏れインダクタンスは高くなっている。このため、ローパスフィルタ回路56の共振周波数を低くすることができる。したがって、共振周波数よりも高い周波数帯域のノーマルモードノイズをより低減できる。
【0093】
(4)本実施形態の第2ダンピング部55は、コア60の周方向に延在している。この場合、例えば、平板状の第2ダンピング部55が第1ダンピング部54の第3被覆部54cの外面や第1被覆部54aの外面を覆うように配置される場合と比較して、さらに優れたダンピング効果が得られる。
【0094】
(5)本実施形態のインバータ装置15は、板状の本体部45及び本体部45から立設された筒部46を有する樹脂製のホルダ42を有している。コモンモードチョークコイル51及び第1ダンピング部54は、コア60の軸方向が筒部46の軸方向に延びるように本体部45と筒部46とによって区画された収容空間47に収容されている。この構成によれば、コモンモードチョークコイル51及び第1ダンピング部54の位置がずれにくくなる。
【0095】
(6)本実施形態の第2ダンピング部55は、ホルダ42の筒部46の外周面46bに取り付けられている。この構成によれば、第2ダンピング部55をホルダ42に容易に取り付けることができる。また、第2ダンピング部55は、筒部46の外周に配置されている。これにより、第1ダンピング部54及びコモンモードチョークコイル51に対して、第2ダンピング部55を筒部46によって絶縁できる。
【0096】
(7)本実施形態では、コモンモードチョークコイル51は、第1ダンピング部54を挟んでコモンモードチョークコイル51とは反対側に配置された第2ダンピング部55によって取り囲まれている。第2ダンピング部55には、延在方向において磁気抵抗を大きくする空隙部Gが設けられている。コア60から漏れる漏れ磁束は、第2ダンピング部55において、空隙部Gが設けられている経路よりも空隙部Gが設けられていない経路の方に流れやすい。
【0097】
本実施形態では、空隙部Gは、コア60の軸方向と第1巻線61及び第2巻線62が並ぶ方向の両方に対して直交するとともに第1巻線61と第2巻線62との中間に位置する仮想直線Lに対して非線対称に設けられている。このため、第2ダンピング部55における漏れ磁束の流れやすさは、仮想直線Lよりも一方側に位置する部分と、仮想直線Lよりも他方側に位置する部分とで異なる。したがって、第2ダンピング部55のうち、仮想直線Lよりも一方側に位置する部分の温度と、仮想直線Lよりも他方側に位置する部分の温度とを異ならせることができる。
【0098】
これにより、例えば、発熱部品が第2ダンピング部55の片側にのみ配置されている場合には、第2ダンピング部55のうち、発熱部品に近い側の部分の温度が、発熱部品から離れた側の部分の温度よりも低くなるように、第2ダンピング部55の温度を調整することができる。例えば、ハウジング11など、第2ダンピング部55の熱を放熱させることができる冷却面が第2ダンピング部55の片側にのみ配置されている場合には、第2ダンピング部55のうち、冷却面に近い側の部分の温度が、冷却面から離れた側の部分の温度よりも高くなるように、第2ダンピング部55の温度を調整することができる。したがって、第2ダンピング部55を効率良く放熱させることができる。
【0099】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0100】
○ インバータ装置15は、ホルダ42を有していなくてもよい。
○ ホルダ42の筒部46は、筒状であれば、八角筒状でなくてもよい。
○ 第2ダンピング部55を筒部46に取り付ける方法は、インサート成形に限定されない。例えば、第2ダンピング部55は、接着剤によって、筒部46に取り付けられてもよい。
【0101】
○ 第2ダンピング部55の形状は適宜変更されてもよい。第2ダンピング部55は、例えば、平板状であってもよいし、L字状やU字状であってもよい。
○ 第2ダンピング部55は、第1ダンピング部54を間に挟んでコモンモードチョークコイル51とは反対側に配置されるのであれば、コモンモードチョークコイル51及び第1ダンピング部54に対する第2ダンピング部55の配置は適宜変更されてもよい。第2ダンピング部55は、例えば、コア60の一対の連結部603の外周面60c及び第1ダンピング部54の第1~第4被覆部54a~54dの外面のうち、任意の1つ以上の面を覆うように配置されていてもよい。
【0102】
○ 第2ダンピング部55には、空隙部Gが設けられていなくてもよい。すなわち、第2ダンピング部55の第1端部55aと第2端部55bとは、電気的に接続されていてもよい。
【0103】
○ 筒部46の軸方向における第2ダンピング部55の一端面は、吸入ハウジング21の端壁21aの外面に当接していなくてもよい。この場合、第2ダンピング部55の一端面と吸入ハウジング21の端壁21aとの間に放熱グリスが設けられていてもよい。
【0104】
図9に示すように、第2ダンピング部55は環状であってもよい。図9では、第2ダンピング部55は、第2ダンピング部55の軸方向がコア60の軸方向と一致するように配置されている。
【0105】
第2ダンピング部55の軸方向は、コア60の軸方向と一致してなくてもよい。第2ダンピング部55は、第2ダンピング部55の軸方向がコア60の軸方向と直交するように配置されてもよい。この場合、第2ダンピング部55の軸方向は、第1ダンピング部54の軸方向と一致していてもよいし、第1ダンピング部54の軸方向と直交していてもよい。
【0106】
図9に示すように、第2ダンピング部55は、筒部46の内周面46aに取り付けられていてもよい。この場合、第2ダンピング部55と、コモンモードチョークコイル51及び第1ダンピング部54との絶縁を確保する。絶縁を確保する方法としては、例えば、第2ダンピング部55とコモンモードチョークコイル51及び第1ダンピング部54との絶縁距離を確保する方法や、第2ダンピング部55の内周面に絶縁処理を施す方法などが挙げられる。第2ダンピング部55が筒部46の内周面46aに取り付けられることによって、第2ダンピング部55をホルダ42に容易に取り付けることができる。また、筒部46によって、第2ダンピング部55と、回路基板41に実装されている他の電子部品との絶縁を確保することができる。さらに、第2ダンピング部55を筒部46の外周に配置する場合と比較して、第2ダンピング部55をコア60に近づけることができるため、より優れたダンピング効果が得られる。
【0107】
図10及び図11に示すように、平板状の第2ダンピング部55は、樹脂製の平板状のベースプレート57とインサート成形されることによって、ベースプレート57の片面に取り付けられていてもよい。
【0108】
第2ダンピング部55は、ベースプレート57とともに、筒部46及びコア60の軸方向において、第1ダンピング部54とホルダ42の本体部45との間に取り付けられている。第2ダンピング部55及びベースプレート57は、第1ダンピング部54と本体部45とによって、筒部46及びコア60の軸方向に挟まれている。第2ダンピング部55におけるベースプレート57と対向する面とは反対側の面は、本体部45の第1面45aと対向している。ベースプレート57における第2ダンピング部55と対向する面とは反対側の面は、第1ダンピング部54の第1被覆部54aの外面と対向している。
【0109】
第2ダンピング部55が第1ダンピング部54と本体部45との間に取り付けられることによって、第2ダンピング部55を第1ダンピング部54とホルダ42との間に容易に取り付けることができる。また、第2ダンピング部55の位置がずれにくくなる。さらに、第1ダンピング部54及びコモンモードチョークコイル51に対して、第2ダンピング部55をベースプレート57によって絶縁できる。
【0110】
第2ダンピング部55は、ベースプレート57に取り付けられていなくてもよい。この場合、第2ダンピング部55と、コモンモードチョークコイル51及び第1ダンピング部54との絶縁を確保する。
【0111】
○ 第2ダンピング部55は、インサート成形によって筒部46に内蔵されていてもよい。
○ コア60は環状であれば、コア60の形状は適宜変更されてもよい。コア60は、例えば、円環状であってもよい。
【0112】
○ 上記実施形態では、コア60は1つの部品で構成されていたが、2つ以上の部品で構成されていてもよい。
○ 第1ダンピング部54は、第1巻線61及び第2巻線62を囲んでいれば、第1ダンピング部54の形状は適宜変更されてもよい。第1ダンピング部54は、例えば、円環状であってもよい。
【0113】
○ 上記実施形態では、第1ダンピング部54は1つの部品で構成されていたが、2つ以上の部品で構成されていてもよい。
○ 上記実施形態では、ノイズ低減部50は、1つの第2ダンピング部55を有していたが、複数の第2ダンピング部55を有していてもよい。
【0114】
例えば、図12に示すように、ノイズ低減部50は、4つの平板状の第2ダンピング部55を有していてもよい。4つの第2ダンピング部55は、コア60の外周においてコア60の周方向に配置されている。各第2ダンピング部55は、筒部46の第1壁部461の外面又は第2壁部462の外面に取り付けられている。筒部46の各第3壁部463の外面には、第2ダンピング部55は設けられていない。この場合、ノイズ低減部50が4つの第2ダンピング部55のうちの1つの第2ダンピング部55を有する場合と比較して、さらに優れたダンピング効果が得られる。
【0115】
○ 上記実施形態では、空隙部Gは、第1部位551と第8部位558との間に設けられていたが、これに限定されない。空隙部Gは、例えば、第1部位551の延在方向の途中に設けられていてもよい。つまり、空隙部Gは、部位間だけでなく、部位の途中に設けられていてもよい。
【0116】
図13に示すように、第2ダンピング部55には、複数の空隙部Gが設けられていてもよい。
図13に示すように、空隙部Gは、仮想直線Lに対して線対称に設けられていてもよい。例えば、空隙部Gは、第1部位551と第8部位558との間、第1部位551と第2部位552との間、第4部位554と第5部位555との間、及び第5部位555と第6部位556との間に設けられている。この場合、第2ダンピング部55における漏れ磁束の流れやすさは、第1部位551を通る経路R1と、第5部位555を通る経路R2とで同程度になる。このため、第1部位551の温度と、第5部位555の温度とは同程度になる。
【0117】
つまり、空隙部Gが仮想直線Lに対して線対称に設けられていることにより、第2ダンピング部55における漏れ磁束の流れやすさは、仮想直線Lよりも一方側に位置する部分と、仮想直線Lよりも他方側に位置する部分とで同程度になる。したがって、第2ダンピング部55のうち、仮想直線Lよりも一方側に位置する部分の温度と、仮想直線Lよりも他方側に位置する部分の温度とを同程度にすることができる。その結果、第2ダンピング部55の温度の偏りを抑制できる。
【0118】
○ 上記実施形態では、空隙部Gは、第2ダンピング部55の厚さ方向の全体に亘って設けられていたが、これに限定されない。空隙部Gは、第2ダンピング部55の厚さ方向の一部分に設けられていてもよい。
【0119】
○ 上記実施形態では、空隙部Gは、コア60の軸方向における第2ダンピング部55の全体に亘って設けられていたが、これに限定されない。空隙部Gは、コア60の軸方向における第2ダンピング部55の一部分に設けられていてもよい。
【0120】
○ 上記実施形態では、第2ダンピング部55のうち、仮想直線Lよりも一方側に位置する部分には空隙部Gを設けるとともに、仮想直線Lよりも他方側に位置する部分には空隙部Gを設けないことにより、空隙部Gを仮想直線Lに対して非線対称に設けていたが、これに限定されない。
【0121】
例えば、第2ダンピング部55のうち、仮想直線Lよりも一方側に位置する部分に設ける空隙部Gの数と、仮想直線Lよりも他方側に位置する部分に設ける空隙部Gの数とを異ならせることにより、空隙部Gを仮想直線Lに対して非線対称に設けてもよい。
【0122】
例えば、第2ダンピング部55のうち、仮想直線Lよりも一方側に位置する部分に設ける空隙部Gの幅と、仮想直線Lよりも他方側に位置する部分に設ける空隙部Gの幅とを異ならせることにより、空隙部Gを仮想直線Lに対して非線対称に設けてもよい。
【0123】
○ 上記実施形態では、ノイズ低減部50は、コモンモードチョークコイル51、第1ダンピング部54、及び第2ダンピング部55を1つずつ有していたが、これに限定されない。
【0124】
例えば、図14に示すように、ノイズ低減部50は、2つのコモンモードチョークコイル51と、2つのコモンモードチョークコイル51の各々に設けられた第1ダンピング部54とを有していてもよい。つまり、ノイズ低減部50は、コモンモードチョークコイル51及び第1ダンピング部54を2つずつ有していてもよい。
【0125】
この場合、ホルダ42は、2つの筒部46を有している。2つの筒部46が並ぶ方向は、一対の第2壁部462が対をなす方向と一致している。なお、図14に示す例では、一方の筒部46の第2壁部462は、他方の筒部46の第2壁部462でもある。つまり、2つの筒部46で第2壁部462を共用している。
【0126】
2つの筒部46のうち、一方の筒部46の内側には、一方のコモンモードチョークコイル51及び一方の第1ダンピング部54が配置されている。2つの筒部46のうち、他方の筒部46の内側には、他方のコモンモードチョークコイル51及び他方の第1ダンピング部54が配置されている。2つのコモンモードチョークコイル51は、並べて配置されている。図14に示す例では、2つのコモンモードチョークコイル51が並ぶ方向は、第1巻線61と第2巻線62とが並ぶ方向に対して直交している。一方のコア60の第1巻回部601と他方のコア60の第1巻回部601は、一直線上に並んでいる。一方のコア60の第2巻回部602と他方のコア60の第2巻回部602は、一直線上に並んでいる。
【0127】
ノイズ低減部50は、1つの第2ダンピング部55を有している。第2ダンピング部55は、第1ダンピング部54を間に挟んでコモンモードチョークコイル51とは反対側に配置されている。また、第2ダンピング部55は、2つのコモンモードチョークコイル51を取り囲むように延在している。したがって、2つのコモンモードチョークコイル51は、第1ダンピング部54を間に挟んでコモンモードチョークコイル51とは反対側に配置された第2ダンピング部55によって取り囲まれている。
【0128】
図14に示す例では、第2ダンピング部55には、延在方向において磁気抵抗を大きくする2つの空隙部Gが設けられている。各空隙部Gは、第2ダンピング部55のうち、一方の筒部46の第1壁部461の外面に設けられた部分と、他方の筒部46の第1壁部461の外面に設けられた部分との間に設けられている。つまり、空隙部Gは、仮想直線Lに対して線対称に設けられている。
【0129】
この場合、第2ダンピング部55には、2つのコモンモードチョークコイル51のそれぞれのコア60から漏れる漏れ磁束φが流れる。つまり、2つのコモンモードチョークコイル51で第2ダンピング部55を共用できる。また、隣り合うコモンモードチョークコイル51間に第2ダンピング部55が配置されない分、コモンモードチョークコイル51が並ぶ方向においてノイズ低減部50を小型化できる。
【0130】
第2ダンピング部55が設けられていない場合には、隣り合うコモンモードチョークコイル51間の距離は抵抗値に影響する。具体的には、隣り合うコモンモードチョークコイル51間の距離が短いほど、抵抗値は大きくなる。これに対し、上記構成のように第2ダンピング部55が設けられている場合、隣り合うコモンモードチョークコイル51間の距離による抵抗値への影響よりも、第2ダンピング部55を設けることによる抵抗値への影響の方が十分大きい。したがって、第2ダンピング部55が設けられていない場合と比較して、隣り合うコモンモードチョークコイル51間の距離の自由度が向上する。
【0131】
なお、ノイズ低減部50は、3つ以上のコモンモードチョークコイル51と、コモンモードチョークコイル51と同数の第1ダンピング部54とを有していてもよい。この場合、全てのコモンモードチョークコイル51が、第1ダンピング部54を間に挟んでコモンモードチョークコイル51とは反対側に配置された第2ダンピング部55によって取り囲まれていてもよい。
【0132】
2つのコモンモードチョークコイル51は、2つのコモンモードチョークコイル51が並ぶ方向が第1巻線61と第2巻線62とが並ぶ方向と一致するように並べて配置されていてもよい。
【0133】
2つの筒部46は、一対の第2壁部462を各々有していてもよい。つまり、2つの筒部46で第2壁部462を共用していなくてもよい。
第2ダンピング部55には、空隙部Gが設けられていなくてもよい。つまり、第2ダンピング部55は、延在方向において連続する環状であってもよい。この場合、第2ダンピング部55が延在方向において分割されないため、2つのコモンモードチョークコイル51の各々に対して第2ダンピング部55が個別に設けられる場合と比較して、ノイズ低減部50の部品点数を削減できる。
【0134】
第2ダンピング部55は、2つの空隙部Gのうち、何れか一方のみを有していてもよい。つまり、空隙部Gは、仮想直線Lに対して非線対称に設けられていてもよい。この場合、第2ダンピング部55が分割されないため、2つのコモンモードチョークコイル51の各々に対して第2ダンピング部55が個別に設けられる場合と比較して、ノイズ低減部50の部品点数を削減できる。
【0135】
○ 圧縮部13は、スクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
○ 電動圧縮機10は、燃料電池車に搭載されてもよい。この場合、電動圧縮機10は、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部13により圧縮するものであってもよい。
【符号の説明】
【0136】
10…電動圧縮機、11…ハウジング、13…圧縮部、14…モータ、15…インバータ装置、42…ホルダ、43…インバータ回路部、45…本体部、46…筒部、46a…内周面、46b…外周面、47…収容空間、50…ノイズ低減部、51…コモンモードチョークコイル、52…平滑コンデンサ、54…第1ダンピング部、55…第2ダンピング部、56…ローパスフィルタ回路、60…コア、61…第1巻線、62…第2巻線、G…空隙部、L…仮想直線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14