(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132807
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】スタビライザー装置
(51)【国際特許分類】
B60G 21/055 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B60G21/055
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023161589
(22)【出願日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2023043110
(32)【優先日】2023-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼山 年雄
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA04
3D301DA66
3D301DA73
3D301DA76
3D301DB18
(57)【要約】
【課題】 利用者が被係合部と係合部との相対位置を意識することなく、第1スタビライザーと第2スタビライザーとを連結することが可能なスタビライザー装置の一例を開示する。
【解決手段】 スタビライザー装置1は、カムリング13Bをオフ位置からオン位置に変位させるための駆動バネ15Aと、駆動バネ15Aを弾性変形させる力を発揮する電動モータ15Bとを少なくとも備える。これにより、仮に、ロックフックに対して凹部がずれた位置にある場合には、駆動バネ15Aは、復帰力をロックフックに作用させた状態のままとなる。そして、第2スタビライザーが変位してロックフックと凹部とが一致したときに、駆動バネ15Aの復帰力によって、カムリング13Bがオフ位置からオン位置に変位する。したがって、利用者が被係合部と係合部との相対位置を意識することなく、第1スタビライザーと第2スタビライザーとを連結することが可能となる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のロールを抑制するためのスタビライザー装置において、
第1スタビライザー及び第2スタビライザーと、
前記第1スタビライザーと前記第2スタビライザーとを連結するオン状態と当該連結が解除されたオフ状態とを切り替えるための係合部であって、前記第2スタビライザーに設けられた被係合部と係合してオン状態となる係合位置と、当該被係合部から離間してオフ状態となる非係合位置との間で変位可能な係合部と、
前記係合部を非係合位置から係合位置に変位させるためのカムであって、前記係合部を係合位置とするオン位置と前記係合部が非係合位置となることを許容するオフ位置との間で変位可能なカムと、
前記カムをオフ位置からオン位置に変位させる弾性力(以下、復帰力という。)を発揮可能な弾性部材と、
復帰力を生成させる向きに前記弾性部材を弾性変形させる力を発揮する操作部と
を備えるスタビライザー装置。
【請求項2】
前記カムは、
前記第2スタビライザーの軸心線を中心に回転可能な環状のリング部、並びに
前記リング部の内周面から前記第2スタビライザー側に突出した凸部であって、前記リング部がオフ位置からオン位置側に回転変位したときに、前記係合部と滑り接触して当該係合部を係合位置とする凸部を有しており、
さらに、前記弾性体は、捻り変形したときに復帰力を発生する捻りコイルばねである請求項1に記載のスタビライザー装置。
【請求項3】
前記操作部は電動モータであり、
前記電動モータの回転出力を減速して前記捻りコイルばねに伝達して当該捻りコイルばねを捻り変形させる伝達機構を備えており、
さらに、前記伝達機構は、ウォーム及び当該ウォームと噛み合うウォームホィールを有して構成されている請求項2に記載のスタビライザー装置。
【請求項4】
前記係合部を非係合位置に向けて変位させる弾性力を発揮する第2の弾性部材を備え、
前記電動モータは、復帰力を発生させる向き及び当該向きと逆向きに回転可能である請求項3に記載のスタビライザー装置。
【請求項5】
前記捻りコイルばねの変形量が予め決められた変形量となったか否かを検出するセンサと、
前記電動モータの稼働及び停止を制御する制御部であって、前記センサにより前記捻りコイルばねの変形量が予め決められた変形量となったことが検出されたときに当該電動モータを停止させる制御部と
を備える請求項4に記載のスタビライザー装置。
【請求項6】
前記カムをオン位置からオフ位置に変位させる弾性力を当該カムに作用させる戻しバネを備え、
前記カムがオン位置にあるときに前記戻しバネが当該カムに及ぼす弾性力は、前記カムがオン位置にあるときに前記捻りコイルばねが当該カムに及ぼす弾性力より大きい請求項5に記載のスタビライザー装置。
【請求項7】
前記捻りコイルばねの一端側が係止された歯車であって、前記ウォームホィールの出力を当該捻りコイルばねに伝達する歯車を備え、
前記歯車には、前記捻りコイルばねの一端側が係止された係止穴が設けられており、
さらに、前記係止穴は、前記歯車の回転方向に延びる長穴にて構成されている請求項6に記載のスタビライザー装置。
【請求項8】
前記被係合部は、前記第2スタビライザーの中心軸線に向けて陥没した凹状の溝により構成され、
さらに、前記被係合部の円周方向一端面及び他端面には、テーパ状の傾斜面が設けられており、当該傾斜面は、前記中心軸線に近づくほど溝幅が小さくなるように、前記係合部の変位方向に対して傾斜した面である請求項1ないし7のいずれか1項に記載のスタビライザー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車体のロールを抑制するためのスタビライザー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発明では、第1スタビライザーと第2スタビライザーとを連結する状態と当該連結が解除された状態とを切り替えることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、第2スタビライザーに設けられた凹状の被係合部に係合部が嵌り込むことにより、第1スタビライザーと第2スタビライザーとを連結する。このため、被係合部に対して係合部がずれた位置にあるときには、第1スタビライザーと第2スタビライザーとを連結することができない。
【0005】
ところで、スタビライザーを直接的又は間接的に操作する利用者は、通常、被係合部と係合部との相対位置を把握することができない。このため、利用者が第1スタビライザーと第2スタビライザーとを連結しようとしたときに、被係合部に対して係合部がずれた位置にあるときには、第1スタビライザーと第2スタビライザーとを連結できない。
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、利用者が被係合部と係合部との相対位置を意識することなく、第1スタビライザーと第2スタビライザーとを連結することが可能なスタビライザー装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
車体のロールを抑制するためのスタビライザー装置は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
すなわち、当該構成要件は、第1スタビライザー(3)及び第2スタビライザー(5)と、第1スタビライザー(3)と第2スタビライザー(5)とを連結するオン状態と当該連結が解除されたオフ状態とを切り替えるための係合部(13A)であって、第2スタビライザーに設けられた被係合部(16A)と係合してオン状態となる係合位置と、当該被係合部(16A)から離間してオフ状態とする非係合位置との間で変位可能な係合部(13A)と、係合部(13A)を非係合位置から係合位置に変位させるためのカム(13B)であって、係合部(13A)を係合位置とするオン位置と係合部(13A)が非係合位置となることを許容するオフ位置との間で変位可能なカム(13B)と、カム(13B)をオフ位置からオン位置に変位させる弾性力(以下、復帰力という。)を発揮可能な弾性部材(15A)と、復帰力を生成させる向きに弾性部材(15A)を弾性変形させる力を発揮する操作部(15B)とである。
【0008】
これにより、当該スタビライザー装置では、仮に、被係合部(16A)に対して係合部(13A)がずれた位置にある場合には、弾性部材(15A)は、復帰力を係合部(13A)に作用させた状態のまま、つまり弾性変形した状態のままとなる。
【0009】
そして、第2スタビライザー(5)が変位して被係合部(16A)と係合部(13A)が一致したときに、弾性部材(15A)の弾性力である復帰力によって、カム(13B)がオフ位置からオン位置に変位する。このため、係合部(13A)が係合位置となるので、第1スタビライザー(3)と第2スタビライザー(5)とが連結されたオン状態となる。
【0010】
したがって、利用者が被係合部と係合部との相対位置を意識することなく、第1スタビライザー(3)と第2スタビライザー(5)とを連結することが可能となる。
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るスタビライザー装置の外観図である。
【
図2】第1実施形態に係るスタビライザー装置の構造を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るスタビライザー装置の作動説明図である。
【
図4】第1実施形態に係るスタビライザー装置の作動説明図である。
【
図5】第1実施形態に係るスタビライザー装置の作動説明図である。
【
図6】第1実施形態に係るスタビライザー装置の作動説明図である。
【
図7】第1実施形態に係るロックフック及び凸部等の拡大図である。
【
図8】第1実施形態に係るカムリングを示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る伝達機構を示す図である。
【
図10】第1実施形態に係る伝達機構を示す図である。
【
図11】第1実施形態における電動モータの制御系ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0013】
なお、各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されない。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示すものではない。
【0014】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示されたスタビライザー装置は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位のうち少なくとも1つを備える。
【0015】
(第1実施形態)
<1.スタビライザー装置の概要>
スタビライザー装置は車体(図示せず。)のロールを抑制する装置である。
図1は本実施形態に係るスタビライザー装置1を示す。スタビライザー1装置は、第1スタビライザー3、第2スタビライザー5、及びジョイント装置10等を備えている。
【0016】
第1スタビライザー3は、トーション部3A及びアーム部3Bを有する1本の鋼材にて構成されている。第2スタビライザー5は、トーション部5A及びアーム部5Bを有する1本の鋼材にて構成されている。
【0017】
トーション部3A、5Aは、主に捻り変形する丸棒状の部位である。アーム部3Bは、トーション部3Aの長手方向と交差する方向に延びている。そして、当該アーム部3Bの延び方向先端側は車体に回転可能に連結される。
【0018】
アーム部5Bは、トーション部5Aの長手方向と交差する方向に延びている。そして、当該アーム部5Bの延び方向先端側は車体に回転可能に連結される。なお、アーム部3B、5Bが車体に連結された状態では、トーション部3A、5Aの長手方向は、車両幅方向と略一致する。
【0019】
<2.ジョイント装置>
<2.1 ジョイント装置の概要>
ジョイント装置10は、トーション部3A(以下、第1トーション部3Aという。)とトーション部5A(以下、第2トーション部5Aという。)との連結状態をオン状態又はオフ状態とするための切替装置である。
【0020】
オン状態では、第1トーション部3A及び第2トーション部5Aのうち少なくとも一方に入力された回転力を、他方に伝達することが可能である。オフ状態では、当該回転力の伝達が遮断される。
【0021】
ジョイント装置10は、
図2に示されるように、ケーシング11、係合装置13、駆動装置15等を少なくとも有して構成されている。ケーシング11は、第1トーション部3A及び第2トーション部5Aのいずれか一方が固定され、他方を回転可能に支持する。
【0022】
本実施形態に係るケーシング11には、第1トーション部3Aがスプライン3Cを介して固定され、第2トーション部5Aが軸部材16を介して回転可能に支持されている。軸部材16は、軸受17A~17Cを介してケーシング11の筒部11A内に回転可能に支持されている。
【0023】
なお、軸部材16は、クロムモリブテン鋼等の第1トーション部3A及び第2トーション部5Aに比べて硬度の大きい材質にて構成されたロックバーである。カバー17は、筒部11Aの開口を閉塞する。
【0024】
そして、第2トーション部5Aは、スプライン5Cを介して軸部材16に固定されている。したがって、第2トーション部5Aは、ケーシング11に対して回転可能に支持された状態となる。
【0025】
本実施形態では、軸部材16と第2トーション部5Aとが一体化されている。このため、以下の説明では、軸部材16も含めて第2トーション部5Aという。なお、キャップ18は、第2トーション部5Aが軸部材16から脱落することを規制する。
【0026】
係合装置13は、第2トーション部5Aがケーシング11に対して回転可能となる状態と当該第2トーション部5A軸部材16がケーシング11に対して回転不可となる状態とを切り替える。駆動装置15は、係合装置13の状態を切り替えるための電動式のアクチュエータの一例である。
【0027】
<2.2 係合装置の詳細>
係合装置13は、
図3に示されるように、ロックフック13A、カムリング13B及び復帰バネ13C等を少なくとも有して構成されている。ロックフック13Aは、オン状態とオフ状態とを切り替えるための係合部の一例である。
【0028】
具体的には、ロックフック13Aは、第2トーション部5A(本実施形態では、軸部材16)に設けられた被係合部16A(
図4参照)と係合する係合位置(
図5参照)と、当該被係合部16Aから離間する非係合位置(
図6参照)との間で変位可能である。
【0029】
したがって、なお、ロックフック13Aが係合位置に位置すると、ジョイント装置10はオン状態となる。ロックフック13Aが非係合位置に位置すると、ジョイント装置10はオフ状態となる。
【0030】
ロックフック13Aは、複数(本実施形態では、3つ)設けられている。被係合部16Aはロックフック13Aと同数設けられている。それらのロックフック13A及び被係合部16Aは、
図6に示されるように、第2トーション部5Aの中心軸線Loを中心とする円周上に等間隔で設けられている。
【0031】
なお、複数のロックフック13Aは、ケーシング11の一部に係合されている。このため、複数のロックフック13Aは、ケーシング11、つまり第1トーション部3Aと一体的に回転する。
【0032】
復帰バネ13Cは、各ロックフック13Aを非係合位置に向けて変位させる弾性力を発揮する第2の弾性部材の一例である。このため、各ロックフック13Aが非係合位置に向けて変位可能な状態になると、復帰バネ13Cの弾性力により各ロックフック13Aが非係合位置に変位する。
【0033】
本実施形態に係る復帰バネ13Cは、リング状のバネ鋼鋼材の一部に切断部が設けられた略C字状のバネである。なお、本実施形態では、複数のC字状のバネにより、復帰バネ13Cが構成されている。
【0034】
各被係合部16Aは、
図7に示されるように、中心軸線Loに向けて陥没した凹状の溝により構成されている。複数の被係合部16A(以下、凹部16Aという。)それぞれの円周方向一端面及び他端面には、テーパ状の傾斜面16C、16Dが設けられている。
【0035】
各傾斜面16C、16Dは、中心軸線Loに近づくほど溝幅Wが小さくなるように、ロックフック13Aの変位方向に対して傾斜した面である。なお、円周方向とは、第2トーション部5Aの回転方向と一致する方向である。
【0036】
ロックフック13Aの変位方向とは、第2トーション部5Aの径方向と一致する方向である。溝幅Wとは、ロックフック13Aの変位方向と直交する仮想面に投影された円周方向と平行な方向の寸法である。
【0037】
そして、各ロックフック13Aのうち傾斜面16C、16Dと面する部位は、当該傾斜面16C、16Dと略平行な傾斜部13Dが設けられている。傾斜面16C、16D及び傾斜部13Dは、ロックフック13Aを確実に非係合位置に変位させるための構成である。
【0038】
すなわち、各ロックフック13Aが係合位置にある状態(
図5参照)において、第2トーション部5Aに回転力が作用すると、各ロックフック13Aには、傾斜面16C、16Dから当該ロックフック13Aを非係合位置に変位させる力が作用する。
【0039】
カムリング13Bは、各ロックフック13Aを非係合位置から係合位置に変位させるためのカムの一例であって、当該ロックフック13Aを係合位置とするオン位置(
図5参照)と当該ロックフック13Aが非係合位置となることを許容するオフ位置(
図6参照)との間で変位可能である。
【0040】
具体的には、カムリング13Bは、
図8に示されるように、リング部13E及び凸部13F等を少なくとも有する。なお、リング部13Eと凸部13Fとは、一体成形にて一体化された一体品である。
【0041】
リング部13Eは、中心軸線Loを中心に回転可能な環状の部位である。凸部13Fは、リング部13Eの内周面から第2スタビライザー5側、つまり凹部16Aに向けて突出した凸部である。なお、凸部13Fは、ロックフック13Aと同数設けられている。
【0042】
そして、各凸部13Fは、リング部13Eがオフ位置(
図6参照)からオン位置(
図5参照)側に回転変位(以下、オン変位という。)したときに、対応するロックフック13Aと滑り接触して当該ロックフック13Aを係合位置とする。以下、オン変位と逆向きの回転変位をオフ変位という。
【0043】
このため、各ロックフック13A及び各凸部13Fのうち少なくとも一方には、カムリング13Bをオン変位させる回転力を、ロックフック13Aを変位させる力に変換する傾斜面13G(
図5参照)が設けられている。なお、本実施形態に係る傾斜面13Gは、各ロックフック13Aに設けられている。
【0044】
そして、カムリング13Bは、戻しバネ13H(
図2参照)から常に弾性力を受けている。当該戻しバネ13Hは、カムリング13Bをオン位置(
図5参照)からオフ位置(
図6参照)にオフ変位させる弾性力を発揮する。
【0045】
<2.3 駆動装置の詳細>
駆動装置15は、
図9に示されるように、駆動バネ15A、電動モータ15B、伝達機構15C及び出力部15D(
図10参照)等を少なくとも有する。なお、駆動装置15は、カバー15M(
図2参照)により覆われている。
【0046】
駆動バネ15Aは、リング部13Eをオフ位置からオン位置に変位させる弾性力(以下、復帰力という。)を発揮可能な弾性部材の一例である。本実施形態に係る駆動バネ15Aは、捻り変形したときに復帰力を発生する捻りコイルバネである。
【0047】
電動モータ15Bは、復帰力を生成させる向きに駆動バネ15Aを弾性変形させる力を発揮する操作部の一例である。なお、本実施形態に係る電動モータ15Bは、減速機が一体化されたギヤードモータである。
【0048】
伝達機構15Cは、電動モータ15Bの回転出力を減速して駆動バネ15Aに伝達して当該駆動バネ15Aを捻り変形させる機構である。具体的には、当該伝達機構15Cは、ウォーム15E、ウォームホィール15F、第1セクタ歯車15G及び第2セクタ歯車15H等を少なくとも有して構成されている。
【0049】
ウォーム15Eは電動モータ15Bの出力軸(図示せず。)から駆動力を受けて回転する。ウォームホィール15Fは、ウォーム15Eと噛み合う歯車である。第1セクタ歯車15G及び第2セクタ歯車15Hは、ウォームホィール15Fの出力を駆動バネ15Aに伝達する。
【0050】
図9に示されるように、駆動バネ15Aの一端側15Kは、第2セクタ歯車15Hに係止されている。当該第2セクタ歯車15Hには、駆動バネ15Aの一端側が係止された係止穴15Nが設けられている。
【0051】
係止穴15Nは、第2セクタ歯車15Hの回転方向に延びる円弧状の長穴状にて構成されている。駆動バネ15Aの他端側15Lは、出力部15Dに係止されている。そして、出力部15Dは、リング部13Eに設けられた歯車部15J(
図10参照)に噛み合っている。
【0052】
また、カムリング13Bがオン位置にあるときに戻しバネ13Hが当該カムリング13Bに及ぼす弾性力は、カムリング13Bがオン位置にあるときに駆動バネ15Aが当該カムリング13Bに及ぼす弾性力より大きくなるように構成されている。
【0053】
なお、本実施形態では、カムリング13Bがオン位置にあるときに駆動バネ15Aが当該カムリング13Bに及ぼす弾性力は略0、つまりカムリング13Bがオン位置にあるときには、駆動バネ15Aは殆ど弾性変形していない。一方、カムリング13Bがオン位置にあるとき、戻しバネ13Hは弾性変形している。
【0054】
以下、カムリング13Bをオン変位させる場合の出力部15Dの回転の向きをオン回転という。カムリング13Bをオフ変位させる場合の出力部15Dの回転の向きをオフ回転という。
【0055】
そして、電動モータ15Bは、復帰力を発生させる向きのオン回転、及び当該オン回転と逆向きであるオフ回転のいずれも回転可能である。当該電動モータ15Bの作動は、
図11に示されるように、制御部15Pに制御される。
【0056】
制御部15Pには、センサ15Qの検出信号が入力されている。そして、制御部15Pは、センサ15Qの検出信号を利用して電動モータ15Bの停止及び駆動を制御する。センサ15Qは、駆動バネ15Aの変形量が予め決められた変形量となったか否かを検出する。
【0057】
具体的には、制御部15Pは、オン回転にて電動モータ15Bを回転させた後、センサ15Qにより駆動バネ15Aの変形量が予め決められた変形量となったことが検出されたときに当該電動モータ15Bを停止させる。
【0058】
なお、本実施形態に係るセンサ15Qは、リミットスイッチ又は近接スイッチ等により構成されている。制御部15Pは、マイクロコンピュータを利用した制御回路、又は専用の電気回路(ハードウェア)に構成された制御回路である。
【0059】
<3.本実施形態に係るスタビライザー装置の作動及びその特徴>
各ロックフック13Aが非係合位置(
図6参照)にあるときに、出力部15Dがオン回転すると、駆動バネ15Aが捻り変形するので、復帰力が発生する。このため、カムリング13Bは、当該復帰力によりオフ位置(
図6参照)からオン位置(
図5参照)にオフ変位しようとする。
【0060】
このとき、仮に、各凹部16Aに対して各ロックフック13Aがずれた位置にある場合には、駆動バネ15Aは、復帰力を各ロックフック13Aに作用させた状態のまま、つまり弾性変形した状態のままとなる。
【0061】
そして、第2トーション部5Aが回転変位して各凹部16Aと各ロックフック13Aとが一致したときに、復帰力によってリング部13Eがオフ位置からオン位置に変位するので、各ロックフック13Aが係合位置(
図5参照)となる。
【0062】
このため、第1トーション部3Aと第2トーション部5Aとが連結されたオン状態(
図5参照)となる。したがって、利用者が凹部16Aとロックフック13Aとの相対位置を意識することなく、第1トーション部3Aと第2トーション部5Aとを連結することが可能となる。
【0063】
なお、各ロックフック13Aが係合位置(
図5参照)にあるときに、出力部15Dがオフ回転すると、駆動バネ15Aの復帰力が消失するので、カムリング13Bは、戻しバネ13H(
図2参照)により、オン位置(
図5参照)からオフ位置(
図6参照)にオフ変位する。
【0064】
このため、復帰バネ13Cの弾性力により、各ロックフック13Aは、係合位置から非係合位置に変位する。なお、仮に、第2トーション部5Aに回転力が作用したままであっても、当該回転力により、各ロックフック13Aには、傾斜面16C、16Dから当該ロックフック13Aを非係合位置に変位させる力が作用するので、各ロックフック13Aは、確実に、係合位置から非係合位置に変位する。
【0065】
伝達機構15Cは、ウォーム15E及びウォームホィール15Fを有して構成されている。これにより、仮に、第2トーション部5Aからカムリング13Bを回転させる力が入力された場合であっても、操作部である電動モータ15Bが回転してしまうことを抑制できる。
【0066】
これは、ウォーム15Eからウォームホィール15Fに回転力を伝達することは容易であるが、ウォームホィール15Fからウォーム15Eに回転力を伝達することは困難であるからである。
【0067】
第2セクタ歯車15Hには、駆動バネ15Aの一端側が係止された係止穴15Nが設けられ、当該係止穴15Nは、第2セクタ歯車15Hの回転方向に延びる円弧状の長穴状にて構成されている。これにより、カムリング13Bがオン位置にあるときに駆動バネ15Aが当該カムリング13Bに及ぼす弾性力を確実に略0とすることができる。
【0068】
すなわち、仮に、係止穴15Nが単純な丸穴であると、駆動バネ15A等の寸法バラツキによって、カムリング13Bがオン位置にあるときに駆動バネ15Aが弾性変形した状態となる可能性がある。
【0069】
そして、カムリング13Bがオン位置にあるときに駆動バネ15Aが弾性変形した状態であると、カムリング13Bがオン位置にあるときに戻しバネ13Hが当該カムリング13Bに及ぼす弾性力が、カムリング13Bがオン位置にあるときに駆動バネ15Aが当該カムリング13Bに及ぼす弾性力以下となる状態(以下、弾性力の逆転状態という。)が発生するおそれがある。
【0070】
弾性力の逆転状態が発生すると、カムリング13Bをオン位置に保持することができなくなるので、各ロックフック13Aが係合位置から非係合位置に変位してしまい、スタビライザー装置1がオフ状態となってしまう。
【0071】
これに対して本実施形態に係るスタビライザー装置1では、カムリング13Bがオン位置にあるときに駆動バネ15Aが当該カムリング13Bに及ぼす弾性力を確実に略0とすることができるので、カムリング13Bを確実オン位置に保持することができる。
【0072】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、操作部として電動モータ15Bが用いられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、操作ケーブルを手動操作することより出力部15Dを回転させる操作部であってもよい。
【0073】
上述の実施形態に係る伝達機構15Cは、ウォーム15E及びウォームホィール15Fを有して構成されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、複数の平歯車により構成された伝達機構であってもよい。
【0074】
上述の実施形態では、復帰力を発揮可能な弾性部材として、捻りコイルバネが用いられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、通常のコイルバネであってもよい。
【0075】
上述の実施形態では、傾斜面16C、16D、13Dが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、傾斜面16C、16D、13Dのうち少なくとも1つが廃止された構成であってもよい。
【0076】
上述の実施形態では、凹部16Aが軸部材16に設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、軸部材16が廃止され、第2トーション部5Aに凹部16Aが設けられていてもよい。
【0077】
上述の実施形態では、伝達機構15Cが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、伝達機構15Cが廃止され、駆動バネ15Aを直接的に操作する構成であってもよい。
【0078】
上述の実施形態に係る制御部15Pは、センサ15Qの検出信号を利用して電動モータ15Bの停止を制御した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、センサ15Qを廃止するとともに、駆動バネ15Aの変形量又は第2セクタ歯車15Hの回転角が所定量を超えることを規制するストッパを設けてもよい。
【0079】
そして、ストッパにより電動モータ15Bの回転が強制的に停止して当該電動モータ15Bの駆動電流が所定値を超えたときに、当該電動モータ15Bを停止する制御であってもよい。
【0080】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1… スタビライザー装置 3…第1スタビライザー 3A… 第1トーション部
5… 第2スタビライザー 5A…第2トーション部 10… ジョイント装置
11… ケーシング 13…係合装置 13A… ロックフック(係合部)
13B… カムリング 13C…復帰バネ 13E… リング部
13F… 凸部 15…駆動装置 15A… 駆動バネ 15B…電動モータ
15C… 伝達機構 15D…出力部 15E… ウォーム
15F… ウォームホィール 15G…第1セクタ歯車 15H… 第2セクタ歯車
15J… 歯車部 16…軸部材 16A… 凹部(被係合部)