(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132815
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】制御装置及び当該制御装置を備える自励発振型DC-DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169283
(22)【出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2023039284
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須藤 稔
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS17
5H730BB22
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730FF05
5H730FG01
5H730VV01
(57)【要約】
【課題】接続する給電装置の内部抵抗に応じて調整可能な最大の電力変換効率でDC-DCコンバータを動作させる技術を提供する。
【解決手段】制御装置100は、入力端子104,102,101と、接続端子21(21_1~21_m)及び22(22_1~22_n)と、出力端子103と、GND端子101から入力端子102へ向かう方向を順方向として入力端子102とGND端子101の間に接続されるダイオード41と、入力端子102とダイオード41との接続点と出力端子103との間に、前記接続点から出力端子103へ向かう方向を順方向とするダイオード42と、デプレッション型NMOSトランジスタ11_1と他の少なくとも1個のMOSトランジスタを有するFET回路10と、GND端子101と入力端子104とを接続する抵抗71と、入力端子104の電圧を所定の電圧にクランプするクランプ回路43とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力端子と、
第2入力端子と、
第3入力端子と、
出力端子と、
第1のデプレッション型電界効果トランジスタと、前記第1のデプレッション型電界効果トランジスタのゲートと接続されるゲートと、前記第1のデプレッション型電界効果トランジスタのソースと接続されるソースと、ドレインとを含む少なくとも1個の電界効果トランジスタとを有し、デプレッション型電界効果トランジスタ及びエンハンスメント型電界効果トランジスタのうち、少なくとも一方の電界効果トランジスタが複数個であるスイッチング素子回路と、
前記スイッチング素子回路が有する前記デプレッション型電界効果トランジスタの個数と同数の接続端子であって、前記デプレッション型電界効果トランジスタのドレインとそれぞれ接続される第1接続端子と、
前記スイッチング素子回路が有する前記エンハンスメント型電界効果トランジスタの個数と同数の接続端子であって、前記エンハンスメント型電界効果トランジスタのドレインとそれぞれ接続される第2接続端子と、
前記第1入力端子と前記第2入力端子との間に、前記第2入力端子から前記第1入力端子へ向かう方向を順方向とする第1の整流素子と、
前記第1入力端子と前記第1の整流素子との接続点と前記出力端子との間に、前記接続点から前記出力端子へ向かう方向を順方向とする第2の整流素子と、
前記第1のデプレッション型電界効果トランジスタのゲート及び前記第3入力端子に接続される第1端と、前記第2入力端子と接続される第2端とを含む抵抗と、
前記第3入力端子の電圧を所定の電圧にクランプするクランプ回路と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記抵抗と並列に接続される第2の電界効果トランジスタをさらに備える請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第2入力端子の電圧と前記出力端子の電圧との電圧差が基準電圧に対して大きいか否かに応じて、第1信号レベル及び第2信号レベルの何れか一方の信号レベルの制御信号を生成し、前記第2の電界効果トランジスタのゲートに供給する制御回路をさらに備える請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1のデプレッション型電界効果トランジスタのゲート長Ld1に対するゲート幅Wd1の割合Wd1/Ld1を基準とした場合、
前記スイッチング素子回路が有する前記デプレッション型電界効果トランジスタは、そのゲート長に対するゲート幅の割合が、前記割合Wd1/Ld1に対して、2のべき乗数倍に構成される請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記スイッチング素子回路は、第1のエンハンスメント型電界効果トランジスタを含む少なくとも1個のエンハンスメント型電界効果トランジスタを有し、前記第1のエンハンスメント型電界効果トランジスタのゲート長Le1に対するゲート幅We1の割合We1/Le1を基準とした場合、
前記スイッチング素子回路が有する前記エンハンスメント型電界効果トランジスタは、そのゲート長に対するゲート幅の割合が、前記割合We1/Le1に対して、2のべき乗数倍に構成される請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第1の整流素子と、前記第2の整流素子と、前記スイッチング素子回路が有する前記電界効果トランジスタと、前記クランプ回路とは、集積化された集積回路である請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の制御装置と、
一次側第1端子と、前記第1接続端子の何れか1個と接続される一次側第2端子と、前記第3入力端子と第1の容量を介して接続されるとともに前記第1入力端子と第2の容量を介して接続される二次側第1端子と、二次側第2端子とを有する変圧器と、
を備えることを特徴とする自励発振型DC-DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置及び当該制御装置を備える自励発振型DC-DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
給電装置の一例である熱発電装置が一次側に接続された従来の自励発振型DC-DCコンバータは、例えば、変圧器及び容量を備え、変圧器の二次巻線のコイル(インダクタ)と容量(キャパシタ)とで共振回路が形成されている(例えば、特許文献1参照)。また、従来の自励発振型DC-DCコンバータは、さらに、整流素子及びスイッチング素子を備えている。整流素子であるダイオードは、変圧器の二次巻線の一方の端子である正極端子に接続されている。スイッチング素子であるトランジスタには、ゲート・ソース間電圧が0(ゼロ)Vであっても導通するデプレッション型の電界効果トランジスタ(以下、「FET」とする)が適用されている。
【0003】
このように構成される従来の自励発振型DC-DCコンバータは、変圧器の二次巻線のコイルと容量とで形成される共振回路によって自励発振し、ダイオードによって整流されて直流電圧が供給される。
【0004】
熱発電装置は、一般に、熱発電装置に加えられる温度差に比例した電圧を発生させるため、熱発電装置にかかる温度差が低ければ発電電圧は小さくなる。熱発電装置を利用した熱発電では、例えば、100mV程度の小さな発電電圧でも、そのエネルギーを利用して発電できることが望ましい。小さな発電電圧を利用するには、変圧器のコイルの巻数比がある程度大きいことが必要である。例えば、100mVの変圧器の一次側の入力電圧に対して、巻数比50であれば、5Vの変圧器の二次側の出力電圧を発生させることができる。
【0005】
また、スイッチング素子であるデプレッション型のFETに対して、さらに並列にMOSトランジスタ又はバイポーラトランジスタを接続することによって、スイッチング素子であるトランジスタの駆動能力を高める技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0176859号明細書(
図4)
【特許文献2】特開2005-304231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、抵抗値R0の内部抵抗を含む電圧源から電力を取り出す場合、当該電圧源に接続される負荷のインピーダンスの実数部(抵抗値)Rが抵抗値R0と等しい(R=R0の)場合に、最大の電力を取り出すことができる。事前に接続する給電装置が、内部抵抗の抵抗値にばらつきがほとんど無く、その抵抗値が既知の場合、その抵抗値に合わせて最大の電力を取り出し可能なDC-DCコンバータを設計することも可能である。
【0008】
しかしながら、上述した従来のDC-DCコンバータの一次側に、例えば、熱発電装置のような抵抗値にばらつきがある内部抵抗を含む給電装置を接続して、二次側に電力を伝送する場合、内部抵抗の抵抗値ばらつきによって、電力変換効率もばらついてしまう。
【0009】
熱発電装置を例に挙げて説明を補足する。熱発電装置は、内部抵抗を含む熱発電素子を有して構成されている。熱発電素子の内部抵抗の抵抗値は、熱発電素子の構造や大きさ等によってばらつきを生じる。したがって、同製品に係る熱発電装置であっても、当該熱発電装置が有する熱発電素子の個体によって内部抵抗の抵抗値のばらつきがあり、一の熱発電装置で最大の電力を取り出すことができるように設計されていたとしても、他の熱発電装置では電力変換効率が低下、すなわち電力損失が大きくなってしまう場合があった。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、接続する給電装置が有する発電素子の個体によって内部抵抗の抵抗値にばらつきがある場合においても、その内部抵抗の抵抗値に応じて、電力変換効率の極大化が可能な制御装置及び及び当該制御装置を備える自励発振型DC-DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る制御装置は、第1入力端子と、第2入力端子と、第3入力端子と、出力端子と、第1のデプレッション型電界効果トランジスタと、前記第1のデプレッション型電界効果トランジスタのゲートと接続されるゲートと、前記第1のデプレッション型電界効果トランジスタのソースと接続されるソースと、ドレインとを含む少なくとも1個の電界効果トランジスタとを有し、デプレッション型電界効果トランジスタ及びエンハンスメント型電界効果トランジスタのうち、少なくとも一方の電界効果トランジスタが複数個であるスイッチング素子回路と、前記スイッチング素子回路が有する前記デプレッション型電界効果トランジスタの個数と同数の接続端子であって、前記デプレッション型電界効果トランジスタのドレインとそれぞれ接続される第1接続端子と、前記スイッチング素子回路が有する前記エンハンスメント型電界効果トランジスタの個数と同数の接続端子であって、前記エンハンスメント型電界効果トランジスタのドレインとそれぞれ接続される第2接続端子と、前記第1入力端子と前記第2入力端子との間に、前記第2入力端子から前記第1入力端子へ向かう方向を順方向とする第1の整流素子と、前記第1入力端子と前記第1の整流素子との接続点と前記出力端子との間に、前記接続点から前記出力端子へ向かう方向を順方向とする第2の整流素子と、前記第1のデプレッショントランジスタのゲート及び前記第3入力端子に接続される第1端と、前記第2入力端子と接続される第2端とを含む抵抗と、前記第3入力端子の電圧を所定の電圧にクランプするクランプ回路と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る自励発振型DC-DCコンバータは、前記制御装置と、一次側第1端子と、前記第1接続端子の何れか1個と接続される一次側第2端子と、前記第3入力端子と第1の容量を介して接続されるとともに前記第1入力端子と第2の容量を介して接続される二次側第1端子と、二次側第2端子とを有する変圧器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内部抵抗の抵抗値にばらつきがある給電装置をDC-DCコンバータの一次側に接続する場合においても、接続する給電装置の個体によらず高い電力変換効率でDC-DCコンバータを動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る制御装置及び自励発振型DC-DCコンバータの回路図である。
【
図3】本実施形態に係る制御装置が備えるFET回路の回路図である。
【
図4】本実施形態に係る制御装置が備える充電制御回路の回路図である。
【
図5】本実施形態に係る制御装置の第1変形例の構成を示す回路図である。
【
図6】本実施形態に係る制御装置の第2変形例の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る制御装置及び自励発振型DC-DCコンバータについて、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る自励発振型DC-DCコンバータの一例であるDC-DCコンバータ1の回路図である。
【0017】
DC-DCコンバータ1は、GND端子101と、入力端子102,104と、出力端子103と、自然数m個の接続端子21_1~21_mと、複数n個の接続端子22_1~22_nとを備える制御装置100と、変圧器50と、を具備している。ここで、m個の接続端子21_1~21_mを包括的に説明する場合、枝番号を省略して「接続端子21」と称する。接続端子21と同様に、n個の接続端子22_1~22_nを包括的に説明する場合、「接続端子22」と称する。
【0018】
DC-DCコンバータ1は、例えば、変圧器50の一次側第1端子511に給電装置が接続され、出力端子103に電力を蓄電可能な容量性素子である容量63に接続されて使用される。接続される給電装置としては、例えば、熱電変換素子(以下、「TEG」とする)40の様な内部抵抗を含む発電素子又は内部抵抗を含む発電素子を少なくとも1個有する装置がある。
【0019】
変圧器50の一次側第2端子512は、例えば、接続端子21_1等の接続端子21_1~21_mのうち何れか1個と接続される。また、一次側第2端子512は、その他の接続端子21_2~21_m及び接続端子22_1~22_nのうち、少なくとも1個と接続される。
【0020】
変圧器50の二次側第1端子521は、第1の容量としての容量61を介して入力端子104と接続され、第2の容量としての容量62を介して入力端子102と接続される。変圧器50の二次側第2端子522は、接地端子2に接続される。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る制御装置の一例である制御装置100の回路図である。
【0022】
制御装置100は、GND端子101、入力端子102,104、出力端子103、接続端子21_1~21_m、及び接続端子22_1~22_nに加え、FET回路10と、充電制御回路30と、ダイオード41,42と、クランプ回路43と、抵抗71と、FETの一例であるN型のMOSトランジスタ(以下、「NMOSトランジスタ」とする)72と、を備えている。
【0023】
FET回路10は、m個のデプレッション型のFET(以下、「DFET」とする)を含むDFET回路11と、n個のエンハンスメント型のFET(以下、「EFET」とする)を含むEFET回路12と、を有している。
【0024】
DFET回路11は、第3入力端子としての入力端子104と接続される第1入力端13と、第2入力端子としてのGND端子101と接続される第2入力端15と、m個の接続端子21_1~21_mとそれぞれ接続される接続端17_1~17_mと、を有している。ここで、第1入力端13と入力端子104との接続点をノードN1と呼称し、第2入力端15とGND端子101との接続点をノードN2と呼称とする。
【0025】
EFET回路12は、ノードN1で入力端子104と接続される第1入力端14と、ノードN2でGND端子101と接続される第2入力端16と、n個の接続端子22_1~22_nとそれぞれ接続される接続端18_1~18_nと、を有している。
【0026】
充電制御回路30は、出力端子103と接続される第1入力端31と、GND端子101と接続される第2入力端33と、制御信号を出力する出力端32と、を有している。
【0027】
第1整流素子としてのダイオード41は、第1入力端子としての入力端子102とGND端子101との間に、GND端子101から入力端子102へ向かう方向を順方向として、接続されている。第2整流素子としてのダイオード42は、入力端子102及びダイオード41のカソードとの接続点であるノードN3と出力端子103との間に、ノードN3から出力端子103へ向かう方向を順方向として、接続されている。
【0028】
すなわち、ダイオード41は、ノードN2に接続されるアノードと、ノードN3に接続されるカソードを含んでいる。ダイオード42は、ノードN3に接続されるアノードと、出力端子103に接続されるカソードを含んでいる。また、ダイオード42のカソードは、さらに充電制御回路30の第1入力端31と接続されている。
【0029】
抵抗71は、ノードN1とノードN2との間に接続されている。NMOSトランジスタ72は抵抗71と並列に接続されている。また、NMOSトランジスタ72のゲートは、充電制御回路30の出力端32と接続されている。すなわち、NMOSトランジスタ72は、ノードN1に接続されるドレインと、出力端32と接続されるゲートと、ノードN2に接続されるソースとを含んでいる。
【0030】
クランプ回路43は、ノードN1の正側電圧を所定値にクランプする回路であり、ノードN1に接続される第1端と、ノードN2に接続される第2端とを有している。クランプ回路43は、例えば、ノードN2に接続されるアノードと、ノードN1に接続されるカソードとを含むツェナーダイオードで構成されている。
【0031】
制御装置100がクランプ回路43を備えているのは、FET回路10に含まれるFETのゲート・ソース間電圧Vgsと閾(しきい)値電圧Vtとの差である電圧(Vgs-Vt)を一定値に制御するためである。MOSFETの非飽和領域におけるオン抵抗の抵抗値Ronは、次式(1)で表すことができるため、電圧(Vgs-Vt)を一定値に制御できれば、MOSFETのサイズ、すなわちゲート長Lに対するゲート幅Wの割合(=W/L)を調整することによって、抵抗値Ronの調整が可能となる。次式(1)によれば、電圧(Vgs-Vt)が定数とみなせる場合、抵抗値Ronは、W/Lに反比例する(ゲート長Lに比例し、ゲート幅Wに反比例する)。
【0032】
【0033】
μ:電子の移動度
Cox:単位面積当たりのゲート容量
W:ゲート幅
L:ゲート長
Vgs:ゲート・ソース間電圧
Vt:閾値電圧
図3は、DFET回路11とEFET回路12とを有して構成されるFET回路10のより詳細な構成を示す回路図である。
【0034】
DFET回路11は、m個のDFETの一例であるデプレッション型NMOSトランジスタ11_1~11_mを含んでいる。第1のデプレッション型電界効果トランジスタとしてのデプレッション型NMOSトランジスタ11_1は、第1入力端13と接続されるゲートと、第2入力端15と接続されるソースと、接続端17_1と接続されるドレインと、を含んでいる。
【0035】
デプレッション型NMOSトランジスタ11_2~11_mは、デプレッション型NMOSトランジスタ11_1と同様に、第1入力端13と接続されるゲートと、第2入力端15と接続されるソースとを含んでいる。デプレッション型NMOSトランジスタ11_2~11_mのドレインは、それぞれ、接続端17_2~17_mと接続されている。すなわち、デプレッション型NMOSトランジスタ11_1~11_mは、互いのゲートがノードN1で接続されているともに、互いのソースがノードN2で接続されている。そして、デプレッション型NMOSトランジスタ11_1~11_mの各ドレインは、それぞれ、接続端17_1~17_mと接続されている。
【0036】
デプレッション型NMOSトランジスタ11_1~11_mは、それぞれサイズを変えて構成されている。デプレッション型NMOSトランジスタ11_1~11_mのサイズ比は、例えば、デプレッション型NMOSトランジスタ11_1~11_mのうち、最も小さいトランジスタのゲート長Ld1に対するゲート幅Wd1の割合「Wd1/Ld1」を基準(=1)とした場合、2のべき乗数倍、すなわち、1(=20):2(=21):…:2m-1に形成される。
【0037】
また、デプレッション型NMOSトランジスタ11_1~11_mは、オフ状態に遷移可能とするため、閾値電圧が-0.6Vよりも高く(絶対値では小さく)設定される。これは、ノードN1の負側電圧(ローサイドの電圧)がNMOSトランジスタ72の寄生ダイオードによって約-0.6Vでクランプされるためである。
【0038】
EFET回路12は、n個のEFETの一例であるエンハンスメント型NMOSトランジスタ12_1~12_nを含んでいる。エンハンスメント型NMOSトランジスタ12_1~12_nは、デプレッション型NMOSトランジスタ11_1~11_mと同様に、互いのゲートがノードN1で接続されているともに、互いのソースがノードN2で接続されている。そして、エンハンスメント型NMOSトランジスタ12_1~12_nの各ドレインは、それぞれ、接続端18_1~18_nと接続されている。すなわち、エンハンスメント型NMOSトランジスタ12_1~12_nは、それぞれ、第1入力端14と接続されるゲートと、第2入力端16と接続されるソースと、接続端18_1~18_nと接続されるドレインと、を含んでいる。
【0039】
エンハンスメント型NMOSトランジスタ12_1~12_nは、それぞれサイズを変えて構成されている。エンハンスメント型NMOSトランジスタ12_1~12_nのサイズ比は、例えば、エンハンスメント型NMOSトランジスタ12_1~12_nのうち、最も小さいトランジスタのゲート長Le1に対するゲート幅We1の割合「We1/Le1」を基準(=1)とした場合、2のべき乗数倍、すなわち、1:2:…:2n-1に形成される。
【0040】
図4は、充電制御回路30のより詳細な構成を示す回路図である。
【0041】
充電制御回路30は、第1入力端31と、第2入力端33と、出力端32と、基準電圧を供給する基準電圧源34と、抵抗35,36と、ヒステリシス特性を持つヒステリシスコンパレータ37と、を有している。
【0042】
基準電圧源34は、基準電圧を供給する第1端と、第2入力端33と接続される第2端と、を有している。
【0043】
抵抗35及び抵抗36は、直列に接続されており、抵抗分圧回路を構成している。直列接続された抵抗35及び抵抗36は、第1入力端31と第2入力端33との間に接続されており、第1入力端31と第2入力端33との間に印加される電圧の分圧電圧を得ることができる。
【0044】
ヒステリシスコンパレータ37は、抵抗35と抵抗36との接続点であるノードN5に接続される非反転入力端子(+)と、基準電圧源34の第1端と接続される反転入力端子(-)と、充電制御回路30の出力端32と接続される出力端と、を有している。
【0045】
続いて、上述したように構成される制御装置100及びDC-DCコンバータ1の作用及び効果を、変圧器50の一次側第1端子511にTEG40を接続し、出力端子103に容量63を接続した場合を例に挙げて説明する。
【0046】
制御装置100は、変圧器50の一次側第2端子512に接続される端子を、接続端子21_1~21_m及び接続端子22_1~22_nの中から、接続端子21_1~21_mから少なくとも1個を含めて1個以上を選択して使用する。制御装置100では、接続端子21_1~21_mから少なくとも1個を選択することによって、DFET11_1~11_mから少なくとも1個が一次側第2端子512に接続されることになる。また、接続端子22_1~22_nから1個以上を選択して使用すれば、一次側第2端子512に接続されるDFETに対してさらに並列にEFETを接続することができる。
【0047】
ここで、接続端子21_1~21_m及び接続端子22_1~22_nの中から変圧器50の一次側第2端子512に接続される端子の何れを選択するかは、例えば、DFET11_1~11_m及びEFET12_1~12_nのゲート長Lに対するゲート幅Wの割合(=W/L)と、DFET11_1~11_m及びEFET12_1~12_nのオン抵抗の抵抗値、及びTEG40の内部抵抗の抵抗値とを考慮して決定するのが好ましい。高い電力変換効率を得るためには、負荷となるDC-DCコンバータ1のインピーダンスの実数部の値がTEG40の内部抵抗の抵抗値に近いほど有利なためである。
【0048】
このようにして、接続端子21_1~21_m及び接続端子22_1~22_nから選択した接続端子を変圧器50の一次側第2端子512に接続した後、TEG40が動作を開始すると、DC-DCコンバータ1は、変圧器50の二次巻線のインダクタンスと容量61のキャパシタンスとで決まる周期で共振する共振回路によって自励発振が開始される(発振動作状態)。自励発振が開始されると、TEG40から供給される電力が、変圧器50の二次側及び制御装置100を経由して容量63へ蓄電される。
【0049】
DC-DCコンバータ1内では、容量62、ダイオード41及びダイオード42によって、コッククロフト・ウォルトン型の電圧倍増回路が形成される。したがって、出力端子103に現れる電圧は、変圧器50の二次側第1端子521と二次側第2端子522との間に現れる二次側電圧に対して倍増される。
【0050】
また、出力端子103に現れる出力電圧Voが上昇又は下降すると、充電制御回路30内の第1入力端31と第2入力端33との間の電圧は上昇又は下降する。ヒステリシスコンパレータ37の非反転入力端子(+)に入力されるノードN5の電圧VN5は、第1入力端31と第2入力端33との間の電圧の変動に伴って変動する。ここで、ノードN5の電圧VN5と、微小電圧αと、基準電圧源34から供給される基準電圧Vrefとを用いて、ヒステリシスコンパレータ37の動作を説明する。
【0051】
ヒステリシスコンパレータ37は、非反転入力端子(+)に入力される電圧VN5と、反転入力端子(-)に入力される基準電圧Vrefとを比べ、例えばハイ(以下、「H」とする)レベルとロー(以下、「L」とする)レベルの二つの信号レベルの何れか一方の信号レベルを含む制御信号を出力する。VN5>Vref+αの場合、ヒステリシスコンパレータ37の出力端からは、Hレベルの制御信号が出力される。一方、VN5<Vref-αの場合、ヒステリシスコンパレータ37の出力端からは、Lレベルの制御信号が出力される。
【0052】
ヒステリシスコンパレータ37からの制御信号は、出力端32からNMOSトランジスタ72のゲートへ供給される。Hレベルの制御信号がNMOSトランジスタ72のゲートへ供給されると、NMOSトランジスタ72はオンし、DFET11_1~11_m及びEFET12_1~12_nのゲート電圧を、ノードN2と同じ電圧、すなわち接地電圧に下げて、自励発振を停止する(発振停止状態)。一方、Lレベルの制御信号がNMOSトランジスタ72のゲートへ供給されると、NMOSトランジスタ72はオフし、自励発振を開始する。
【0053】
充電制御回路30は、NMOSトランジスタ72のゲートに制御信号を供給してオンとオフとを切り替えることによって、出力電圧VoがVref-α≦Vo≦Vref+αの範囲となるように、DC-DCコンバータ1を発振動作状態と発振停止状態とに切替制御している。
【0054】
クランプ回路43は、DFET11_1~11_m及びEFET12_1~12_nの各ゲートの電圧、すなわちノードN1の正側電圧(ハイサイドの電圧)を所定値にクランプするため、電圧(Vgs-Vt)が一定値に制御される。一方、ノードN1の負側電圧(ローサイド電圧)は、NMOSトランジスタ72の寄生ダイオードによって約-0.6Vでクランプされ、約-0.6Vよりも低く(絶対値で大きく)ならない。
【0055】
以上、制御装置100、及び制御装置100を具備するDC-DCコンバータ1によれば、DC-DCコンバータ1の一次側に接続する給電装置の内部抵抗の抵抗値に応じてスイッチング素子であるFETのサイズを選択的に切り替えることができる。したがって、内部抵抗の抵抗値にばらつきがある給電装置をDC-DCコンバータ1の一次側に接続する場合においても、接続する給電装置の個体によらず高い電力変換効率でDC-DCコンバータ1を動作させることができる。
【0056】
また、制御装置100は、NMOSトランジスタ72を備えることで、EFET12_1~12_nの導通と非導通との切り替えによって、DC-DCコンバータ1の自励発振のオンとオフとを切り替えることができる。すなわち、DC-DCコンバータ1の自励発振のオン/オフ制御が可能となる。制御装置100は、さらに、充電制御回路30を備えることで、出力端子103の電圧の高低に応じたDC-DCコンバータ1の自励発振のオン/オフ制御が可能となり、出力端子103の電圧値を、ある一定の範囲に制御できる。
【0057】
DFET11_1~11_mのサイズ比、すなわちゲート幅Wとゲート長Lの比(=W/L)を、それぞれ異なる2のべき乗数とすることで、DC-DCコンバータ1と接続するDFETのサイズ調整を容易化することができる。例えば、3個のDFET11_1~11_3のサイズ比を、1:2:4とすることで、DC-DCコンバータ1と接続するDFETのサイズを1~7の7段階に調整することができる。DFET11_1~11_mのサイズ比と同様に、EFET12_1~12_nのサイズ比についても、それぞれ異なる2のべき乗数とすることで、DC-DCコンバータ1と接続するEFETのサイズ調整を容易化することができる。
【0058】
また、DFET11_1~11_m及びEFET12_1~12_nを集積化することで、ディスクリート素子で構成される場合と比べて、小型化かつサイズ比を精度良く揃えることができるので、DFET11_1~11_m及びEFET12_1~12_nのサイズ調整、ひいてはDC-DCコンバータ1のインピーダンス調整を、容易化かつ高精度化することができる。
【0059】
さらに、クランプ回路43を含めて回路を集積化すれば、DFET11_1~11_m及びEFET12_1~12_nのオン抵抗を、ゲート幅Wに反比例させることが容易になるので、DC-DCコンバータ1のインピーダンス調整をさらに容易化かつ高精度化することができる。
【0060】
さらにまた、GND端子101と接続されるアノードと入力端子102と接続されるカソードとを含むダイオード41と、ノードN3と接続されるアノードと出力端子103と接続されるカソードとを含むダイオード42を含めて回路を集積化することで、出力端子103と接地端子2との間に容量63を接続して適用する際に、入力端子102と接続される容量62、ダイオード41、及びダイオード42は、コッククロフト・ウォルトン型の電圧倍増回路を形成し、より高い電圧を得ることができる。
【0061】
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、上述した実施例以外にも様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、追加、置き換え又は変更することができる。
【0062】
例えば、本実施形態に係る制御装置は、クランプ回路43を備える制御装置100のクランプ回路43の代わりにクランプ回路45を備える制御装置200(
図5参照)としてもよいし、クランプ回路43又はクランプ回路45の代わりにクランプ回路46を備える制御装置300(
図6参照)としてもよい。
【0063】
図5及び
図6は、ぞれぞれ、制御装置100の第1変形例である制御装置200及び制御装置100の第2変形例である制御装置300の構成を示す回路図である。
【0064】
クランプ回路45(
図5参照)は、クランプ回路43と同様に、ノードN1の正側電圧を所定値にクランプする回路である。クランプ回路45は、例えば、入力端子104(ノードN1)に接続されるアノードと、出力端子103に接続されるカソードとを含むダイオード等の整流素子で構成される。クランプ回路43の代わりに、クランプ回路45としての1個のダイオードを備える制御装置200では、入力端子104の電圧、すなわちノードN1の電圧が、出力端子103の電圧+約0.6Vにクランプされることになる。
【0065】
図6に例示されるクランプ回路46は、クランプ回路43の代わりに、k個のゲートとドレインを接続した、いわゆるダイオード接続のMOSFET46_1~46_kを直列に接続して構成される。ここで、kは自然数(k≧1)である。すなわち、クランプ回路46は、直列に接続されたk個のダイオード接続されたMOSFET46_1~46_kを有している。なお、上述したクランプ回路46を、クランプ回路45の代わりに適用してもよい。
図6において、GND端子101を入力端子104に、入力端子104を出力端子103に読み替えれば、読み替えた
図6は、クランプ回路45の代わりにクランプ回路46を備える制御装置300の構成を示す回路図に相当する。
【0066】
本実施形態では、NMOSトランジスタ72及び充電制御回路30を備える制御装置100を例に挙げて説明したが、制御装置100はこの例に限定されない。本実施形態に係る制御装置は、例えば、
図1に例示の制御装置100から充電制御回路30を省略した制御装置100としてもよいし、NMOSトランジスタ72及び充電制御回路30を省略した制御装置100としてもよい。また、制御装置100は、制御装置200又は制御装置300に置換されていてもよい。
【0067】
また、DFET回路11とEFET回路12とを有するFET回路10を例に挙げて説明したが、FET回路10は、EFETを有さずに、複数のDFETを有する構成、すなわちDFET回路11としてもよい。この場合、FET回路10は、同じデプレッション型のFETだけで構成できるので、素子数を削減できるという利点がある。
【0068】
本実施形態では、整流素子としてダイオードを適用した例を説明したが、DC-DCコンバータ1において同期整流を可能とする素子であれば、ダイオードに限定されない。例えば、ダイオード以外にも、FET等を適用してもよい。また、FETの一例として示したMOSトランジスタは、MOSトランジスタの代わりに、例えば、接合型FET(JFET)や金属絶縁膜半導体型FET(MISFET)等のMOSFETと異なる種類のFETが適用されてもよい。
【0069】
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 DC-DCコンバータ
10 FET回路(スイッチング素子回路)
11_1~11_m DFET(デプレッション型電界効果トランジスタ)
12_1~12_n EFET(エンハンスメント型電界効果トランジスタ)
21(21_1~21_m) 接続端子(第1接続端子)
22(22_1~22_n) 接続端子(第2接続端子)
30 充電制御回路(制御回路)
41 整流素子(第1の整流素子)
42 整流素子(第2の整流素子)
43,45,46 クランプ回路
50 変圧器
511 一次側第1端子
512 一次側第2端子
521 二次側第1端子
522 二次側第2端子
61、62 容量(第1の容量、第2の容量)
71 抵抗
72 NMOSトランジスタ(電界効果トランジスタ)
100,200,300 制御装置
101 GND端子(第2入力端子)
102 入力端子(第1入力端子)
103 出力端子
104 入力端子(第3入力端子)