(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132821
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】工具およびクランプボルト
(51)【国際特許分類】
B23C 5/28 20060101AFI20240920BHJP
B23C 5/26 20060101ALI20240920BHJP
B23F 21/10 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
B23C5/28
B23C5/26
B23F21/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172738
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2023040646の分割
【原出願日】2023-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 誠
【テーマコード(参考)】
3C022
3C025
【Fターム(参考)】
3C022PP05
3C025EE00
(57)【要約】
【課題】工具寿命の向上が図られる工具およびクランプボルト、を提供する。
【解決手段】工具は、カッター41と、工具ホルダ20と、カッター41を工具ホルダ20に固定するためのクランプボルト51とを備える。クランプボルト51は、工具ホルダ20に螺合される雄ねじ部56と、雄ねじ部56よりも工具ホルダ20の回転軸の半径方向外側に張り出すとともに、工具ホルダ20の回転軸の軸方向に延び、工具ホルダ20の回転軸の軸方向においてカッター41を工具ホルダ20に対して押し付ける基部61とを含む。基部61は、工具ホルダ20の回転軸の軸方向において工具ホルダ20と対向する対向面61aを有する。基部61には、対向面61aに開口し、その開口を通じて工具ホルダ20から供給されるクーラントが導入され、カッター41に向けてクーラントを吐出するクーラント通路70が設けられる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッターと、
工具ホルダと、
前記カッターを前記工具ホルダに固定するためのクランプボルトとを備え、
前記クランプボルトは、
前記工具ホルダの回転軸上で延び、前記工具ホルダに螺合される雄ねじ部と、
前記雄ねじ部よりも前記回転軸の半径方向外側に張り出すとともに、前記回転軸の軸方向に延び、前記回転軸の軸方向において前記カッターを前記工具ホルダに対して押し付ける基部とを含み、
前記基部は、前記回転軸の軸方向において前記工具ホルダと対向する対向面を有し、
前記基部には、前記対向面に開口し、その開口を通じて前記工具ホルダから供給される流体が導入され、前記カッターに向けて流体を吐出する流体通路が設けられる、工具。
【請求項2】
カッターを工具ホルダに固定するためのクランプボルトであって、
前記工具ホルダの回転軸上で延び、前記工具ホルダに螺合される雄ねじ部と、
前記雄ねじ部よりも前記回転軸の半径方向外側に張り出すとともに、前記回転軸の軸方向に延び、前記回転軸の軸方向において前記カッターを前記工具ホルダに対して押し付ける基部とを備え、
前記基部は、前記回転軸の軸方向において前記工具ホルダと対向する対向面を有し、
前記基部には、前記対向面に開口し、その開口を通じて前記工具ホルダから供給される流体が導入され、前記カッターに向けて流体を吐出する流体通路が設けられる、クランプボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工具およびクランプボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2004-276136号公報(特許文献1)には、アーバーの下端部に取り付けられた正面フライスカッターを締結するために使用される締結ボルトが開示されている。締結ボルトは、アーバーの雌ねじ部に螺合される雄ねじ部と、正面フライスカッターの底面部を押圧する本体部とを有する。
【0003】
締結ボルトには、ボルト内流路が設けられている。ボルト内流路は、雄ねじ部の軸心に沿って延び、アーバーから供給される切削油が流下する主流路と、主流路の終端から分岐しつつ、本体部の外周面に向けて下降傾斜して設けられ、正面フライスカッターのスローアウェイチップに向けて切削油を吐出する複数の分岐流路とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に開示される締結ボルトにおいては、切削油が、複数の分岐流路の開口を通じてワークの加工点に向けて吐出される。しかしながら、各分岐流路における流路抵抗によって、切削油の吐出量が十分に得られなかったり、複数の分岐流路が正面フライスカッターの回転方向(周方向)に間隔を開けて開口することに起因して、ワークの加工点に対する切削油の供給量にばらつきが生じたりする可能性がある。これらの場合、切削油の供給によって工具の摩耗を抑制する効果を十分に得ることができず、工具寿命が短くなる懸念が生じる。
【0006】
また、上述の特許文献1に開示される締結ボルトにおいては、ボルト内流路の主流路が、アーバーに螺合される雄ねじ部に設けられている。このような構成では、雄ねじ部の剛性を十分に確保することができないため、雄ねじ部が破損することによって工具寿命が短くなる懸念が生じる。
【0007】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、工具寿命の向上が図られる工具およびクランプボルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の1つの局面に従った工具は、カッターと、工具ホルダと、カッターを工具ホルダに固定するためのクランプボルトとを備える。クランプボルトは、基部を含む。基部は、工具ホルダの回転軸の軸方向に延び、回転軸の軸方向においてカッターを工具ホルダに対して押し付ける。基部には、工具ホルダから供給される流体をカッターに向けて吐出する流体吐出溝が設けられる。流体吐出溝は、回転軸の半径方向外側を向いて開口しつつ、回転軸を中心に周回する溝形状をなす。
【0009】
この発明の1つの局面に従ったクランプボルトは、カッターを工具ホルダに固定するためのクランプボルトである。クランプボルトは、基部を備える。基部は、工具ホルダの回転軸の軸方向に延び、回転軸の軸方向においてカッターを工具ホルダに対して押し付ける。基部には、工具ホルダから供給される流体をカッターに向けて吐出する流体吐出溝が設けられる。流体吐出溝は、回転軸の半径方向外側を向いて開口しつつ、回転軸を中心に周回する溝形状をなす。
【0010】
この発明の別の局面に従った工具は、カッターと、工具ホルダと、カッターを工具ホルダに固定するためのクランプボルトとを備える。クランプボルトは、雄ねじ部と、基部とを含む。雄ねじ部は、工具ホルダの回転軸上で延び、工具ホルダに螺合される。基部は、雄ねじ部よりも回転軸の半径方向外側に張り出すとともに、回転軸の軸方向に延び、回転軸の軸方向においてカッターを工具ホルダに対して押し付ける。基部は、対向面を有する。対向面は、回転軸の軸方向において工具ホルダと対向する。基部には、流体通路が設けられる。流体通路は、対向面に開口し、その開口を通じて工具ホルダから供給される流体が導入され、カッターに向けて流体を吐出する。
【0011】
この発明の別の局面に従ったクランプボルトは、カッターを工具ホルダに固定するためのクランプボルトである。クランプボルトは、雄ねじ部と、基部とを備える。雄ねじ部は、工具ホルダの回転軸上で延び、工具ホルダに螺合される。基部は、雄ねじ部よりも回転軸の半径方向外側に張り出すとともに、回転軸の軸方向に延び、回転軸の軸方向においてカッターを工具ホルダに対して押し付ける。基部は、対向面を有する。対向面は、回転軸の軸方向において工具ホルダと対向する。基部には、流体通路が設けられる。流体通路は、対向面に開口し、その開口を通じて工具ホルダから供給される流体が導入され、カッターに向けて流体を吐出する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、工具寿命の向上が図られる工具およびクランプボルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】この発明の実施の形態における工具を示す部分断面図である。
【
図3】
図1中のクランプボルトを示す側面図である。
【
図4】
図1中のクランプボルトを示す斜視図である。
【
図5】
図1中の2点鎖線Vで囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図1中のクランプボルトの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態における工具を示す部分断面図である。図中では、後述の工具ホルダ20が外観形状で示され、後述のカッター41およびクランプボルト51が断面形状で示されている。
【0016】
図1を参照して、本実施の形態における工具100は、ワークの加工に用いられる。工具100は、マシニングセンターまたは複合加工機などの工作機械の主軸に装着され、中心軸101を中心に回転することによりワークを加工する。
【0017】
まず、工具100の全体構造について説明する。工具100は、工具ホルダ20と、カッター41と、クランプボルト51とを有する。工具ホルダ20は、カッター41を保持するとともに、工作機械の主軸に対して着脱可能に構成されている。カッター41は、加工対象であるワークと接触し、ワークを加工する部分である。カッター41は、工具ホルダ20により保持されている。クランプボルト51は、カッター41を工具ホルダ20に固定するための締結具である。
【0018】
ワークの加工時、工作機械の主軸からの回転運動が、工具ホルダ20を通じて工具100に伝達される。工具ホルダ20、カッター41およびクランプボルト51は、一体となって、中心軸101を中心に回転する。中心軸101は、工具100の回転軸に対応している。中心軸101は、工具ホルダ20、カッター41およびクランプボルト51の各々の回転軸に対応している。
【0019】
図2は、
図1中の工具ホルダを示す斜視図である。
図2を参照して、工具ホルダ20は、ホルダ本体部21と、シャンク部22とを有する。ホルダ本体部21およびシャンク部22は、中心軸101を中心に延びている。
【0020】
ホルダ本体部21は、カッター41を保持する部分である。シャンク部22は、工作機械の主軸に固定されたり、工作機械の自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)においてアームに把持されたりする部分である。シャンク部22の仕様は、CAPTOである。シャンク部22の仕様は、特に限定されず、たとえば、BTであってもよいし、HSKであってもよい。
【0021】
ホルダ本体部21は、中心軸101を中心に円筒状に延びている。中心軸101の軸方向におけるホルダ本体部21の端部は、シャンク部22に接続されている。
【0022】
ホルダ本体部21は、第1軸部26と、第2軸部31とを有する。第1軸部26および第2軸部31は、中心軸101の軸方向に互いに連なって設けられている。中心軸101を中心とする第1軸部26の直径は、中心軸101を中心とする第2軸部31の直径よりも大きい。第1軸部26は、シャンク部22に接続されている。第1軸部26は、段差面26aを有する。段差面26aは、中心軸101と直交する平面からなる。第2軸部31は、段差面26aから中心軸101の軸方向に突出している。段差面26aは、第2軸部31の周りでリング状に延在している。
【0023】
第1軸部26には、複数のキー27が設けられている。キー27は、第2軸部31から中心軸101の半径方向外側に離れた位置で、段差面26aから突出するように設けられている。複数のキー27は、中心軸101の周方向において互いに間隔を開けて設けられている。
【0024】
工具ホルダ20は、ホルダ端面31aを有する。ホルダ端面31aは、中心軸101と直交する平面からなる。ホルダ端面31aは、中心軸101の軸方向における工具ホルダ20(ホルダ本体部21)の端部に設けられている。ホルダ端面31aは、段差面26aから突出する先に配置される第2軸部31の端面に対応している。ホルダ端面31aは、後述する雌ねじ部36の開口の周りでリング状に延在している。
【0025】
工具ホルダ20には、雌ねじ部36が設けられている。雌ねじ部36は、ホルダ本体部21の内周面に設けられている。雌ねじ部36は、中心軸101を中心に延び、ホルダ端面31aに開口している。
【0026】
工具ホルダ20には、第1クーラント供給通路32pと、第2クーラント供給通路32qとがさらに設けられている。第1クーラント供給通路32pおよび第2クーラント供給通路32qは、ホルダ本体部21に設けられている。
【0027】
第1クーラント供給通路32pおよび第2クーラント供給通路32qは、第2軸部31に設けられている。第2クーラント供給通路32qは、第2軸部31の外周面31cから凹み、中心軸101の軸方向に延び、ホルダ端面31aに開口する溝形状をなしている。第1クーラント供給通路32pは、中心軸101の半径方向に延びている。第1クーラント供給通路32pは、中心軸101の半径方向内側の端部で、第2軸部31の内側の空間に連通し、中心軸101の半径方向外側の端部で、第2クーラント供給通路32qに連通している。
【0028】
第1クーラント供給通路32pおよび第2クーラント供給通路32qが対になって、クーラント供給通路32が構成されている。複数のクーラント供給通路32が、中心軸101の周方向に間隔を開けて設けられている。複数のクーラント供給通路32は、中心軸101の周方向において等間隔で設けられている。
【0029】
工具100によるワーク加工時に、工作機械の主軸から工具ホルダ20の内側の空間にクーラントが供給される。
図2中の点線の矢印に示されるように、工具ホルダ20の内側の空間に供給されたクーラントは、第1クーラント供給通路32pおよび第2クーラント供給通路32qを挙げた順に通って、クランプボルト51に向けて供給される。
【0030】
図1を参照して、カッター41は、嵌合部46を有する。嵌合部46は、中心軸101を中心に円筒状に延びている。嵌合部46は、第2軸部31の外周上に嵌合されている。嵌合部46は、中心軸101の軸方向において、段差面26aに当接している。第2クーラント供給通路32qは、中心軸101の半径方向外側において、嵌合部46によって覆われている。
【0031】
嵌合部46には、複数のキー溝44が設けられている。複数のキー溝44には、それぞれ、工具ホルダ20側の複数のキー27が挿入されている。キー27およびキー溝44の嵌合構造は、工具ホルダ20に対するカッター41の周り止めとして機能している。
【0032】
嵌合部46は、凸部43を有する。凸部43は、嵌合部46から中心軸101の軸方向に突出する凸形状をなしている。凸部43は、後述の切刃部47よりも中心軸101の半径方向内側に設けられている。
【0033】
カッター41は、切刃部47をさらに有する。切刃部47は、ワークを加工するための切刃形状をなしている。切刃部47は、嵌合部46から中心軸101の軸方向に突出している。
【0034】
本実施の形態では、カッター41が、ワークに歯車を加工するためのスカイビングカッターからなる。カッター41は、ハイスまたは超硬合金等の金属により一体に成形されている。ワークと、工具100とを互いに同期させて回転させつつ、中心軸101の軸方向、かつ、中心軸101の半径方向におけるカッター41(切刃部47)の先端部42を、ワークに接触させることによって、ワークの外周面または内周面に歯形を形成する。
【0035】
なお、本発明におけるカッターは、上記のスカイビングカッターに限定されず、たとえば、複数枚のスローアウェイチップが着脱可能に取り付けられるフライスカッターであってもよい。
【0036】
図3は、
図1中のクランプボルトを示す側面図である。
図4は、
図1中のクランプボルトを示す斜視図である。
図5は、
図1中の2点鎖線Vで囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。
【0037】
図1から
図5を参照して、クランプボルト51は、金属により一体に成形されている。クランプボルト51は、基部61と、雄ねじ部56と、頭部57とを有する。
【0038】
雄ねじ部56は、工具ホルダ20に接続される部分である。雄ねじ部56は、中心軸101の軸上で延びている。雄ねじ部56は、中実の軸体からなる。雄ねじ部56は、工具ホルダ20の雌ねじ部36に螺合されている。
【0039】
基部61は、中心軸101を中心に延びている。基部61は、雄ねじ部56よりも中心軸101の半径方向外側に張り出している。中心軸101を中心とする基部61の直径は、中心軸101を中心とする雄ねじ部56の直径よりも大きい。基部61は、カッター41の切刃部47の内側に配置されている。
【0040】
基部61は、対向面61aと、ボルト端面61bとを有する。対向面61aおよびボルト端面61bの各面は、中心軸101と直交する平面からなる。ボルト端面61bは、中心軸101の軸方向において、対向面61aとは反対側を向いている。
【0041】
対向面61aは、中心軸101の軸方向において、工具ホルダ20のホルダ端面31aと対向している。対向面61aは、中心軸101の軸方向において、カッター41の凸部43と当接している。雌ねじ部36に対する雄ねじ部56の締め付け力によって、基部61は、中心軸101の軸方向においてカッター41(嵌合部46)を工具ホルダ20に対して押し付けている。嵌合部46が、中心軸101の軸方向において段差面26aおよび対向面61aの間で挟持されることによって、カッター41が工具ホルダ20に固定されている。
【0042】
対向面61aおよびホルダ端面31aの間には、隙間81が設けられている。隙間81は、中心軸101の軸方向において一定の高さを有しながら、中心軸101を中心にリング状に延びる空間からなる。隙間81は、中心軸101の半径方向において、雄ねじ部56および凸部43の間に区画形成されている。第2クーラント供給通路32qは、隙間81に連通している。一例として、中心軸101の軸方向における隙間81の高さは、0.5mm以上1.5mm以下の範囲である。
【0043】
頭部57は、中心軸101の軸上に設けられている。頭部57は、ボルト端面61bから中心軸101の軸方向に突出している。中心軸101の軸方向に見た場合に、頭部57は、スパナ等を引っ掛けることが可能な六角形状を有する。
【0044】
続いて、工具ホルダ20から供給されるクーラントをカッター41に向けて吐出するためのクランプボルト51の構造について説明する。
【0045】
図1から
図5を参照して、基部61には、クーラント通路70が設けられている。クーラント通路70は、複数の第1開口部72と、第2開口部77とを有する。クーラント通路70は、複数の第1開口部72と、第2開口部77との間で延びている。各第1開口部72は、工具ホルダ20からクランプボルト51に対するクーラントの流入口をなしている。第2開口部77は、クランプボルト51からカッター41に対するクーラントの吐出口をなしている。
【0046】
複数の第1開口部72は、対向面61aに開口している。第1開口部72は、円形の開口形状をなしている。複数の第1開口部72は、中心軸101の周方向において互いに間隔を開けて配置されている。クーラント通路70は、複数の第1開口部72を通じて隙間81と連通している。
【0047】
第2開口部77は、基部61の外周面61cに開口している。第2開口部77は、中心軸101の軸方向において、対向面61aおよびボルト端面61bの間に配置されている。第2開口部77は、中心軸101の軸方向において一定の高さを有しながら、中心軸101を中心に360°周回する帯状の開口形状をなしている。
【0048】
クーラント通路70は、複数のクーラント導入孔71と、クーラント吐出溝76とから構成されている。クーラント導入孔71には、工具ホルダ20から供給されるクーラントが導入される。クーラント吐出溝76は、クーラント導入孔71から流入したクーラントをカッター41に向けて吐出する。
【0049】
複数のクーラント導入孔71は、それぞれ、複数の第1開口部72を有する。クーラント導入孔71は、第1開口部72から、中心軸101の軸方向において対向面61aから遠ざかる方向に延び、その先端でクーラント吐出溝76に接続されている。複数のクーラント導入孔71は、中心軸101の周方向において互いに間隔を開けて設けられている。複数のクーラント導入孔71は、中心軸101の周方向において等間隔に設けられている。
【0050】
クーラント導入孔71は、中心軸101に対して斜め方向に延びている。クーラント導入孔71は、第1開口部72からクーラント吐出溝76に近づくに従って、中心軸101の半径方向内側から半径方向外側にシフトするように延びている。
【0051】
なお、クーラント導入孔71は、上記に限られず、たとえば、中心軸101と平行に延びてもよいし、第1開口部72からクーラント吐出溝76に近づくに従って、工具100の回転方向、または、工具100の回転方向とは反対方向にシフトするように延びてもよい。
【0052】
クーラント吐出溝76は、第2開口部77を有する。クーラント吐出溝76は、第2開口部77において、中心軸101の半径方向外側を向いて開口しつつ、中心軸101を中心に周回する溝形状をなしている。
【0053】
クーラント吐出溝76は、中心軸101と直交する平面に平行に設けられている。クーラント吐出溝76は、中心軸101の軸方向において一定の高さを有し、中心軸101を中心に360°周回するリング状の空間を区画形成している。
【0054】
基部61は、クーラント吐出溝76の溝壁をなす一対の壁部64(64u,64v)を有する。各壁部64は、中心軸101と直交する平面からなる。一対の壁部64は、中心軸101の軸方向において、互いに対向している。クーラント導入孔71は、壁部64uに開口している。
【0055】
中心軸101の軸方向におけるクーラント吐出溝76の高さ(一対の壁部64間の距離)Taは、たとえば、1mm以上2mm以下の範囲である。中心軸101の軸方向におけるクーラント吐出溝76の高さTaは、中心軸101の軸方向における隙間81の高さ以上であってもよいし、中心軸101の軸方向における隙間81の高さ未満であってもよい。
【0056】
壁部64uおよび壁部64vの各壁部を中心軸101の半径方向外側に向けて延長した場合に、カッター41の先端部42は、壁部64uの延長面と、壁部64vの延長面との間に位置している。
【0057】
中心軸101の軸方向における対向面61aおよびクーラント吐出溝76(壁部64u)の間のクランプボルト51(基部61)の厚みTbは、中心軸101の軸方向におけるクーラント吐出溝76(壁部64v)およびボルト端面61bの間の厚みTcよりも大きい(Tb>Tc)。
【0058】
本実施の形態における工具100およびクランプボルト51においては、クーラント吐出溝76が、中心軸101の半径方向外側を向いて開口しつつ、中心軸101を中心に周回する溝形状をなしている。
【0059】
このような構成によれば、クーラント吐出溝76からカッター41に向けて、クーラントを中心軸101の周方向においてより均等に、かつ、大流量で吐出することができる。これにより、カッター41における切刃部47の摩耗の進行を抑制して、工具100の寿命を向上させることができる。加えて、カッター41およびワークの間から切屑を効率的に排除することで、ワークの加工精度を向上させることができる。
【0060】
また、本実施の形態における工具100およびクランプボルト51においては、工具ホルダ20からのクーラントが導入され、カッター41に向けてクーラントを吐出するクーラント通路70が、基部61に設けられている。
【0061】
このような構成によれば、クーラント通路70が雄ねじ部56に設けられていないため、雄ねじ部56の剛性を十分に確保することができる。これにより、雄ねじ部56の破損を防いで、工具100の寿命を向上させることができる。
【0062】
さらに本実施の形態では、基部61が、各々が中心軸101と直交する平面からなり、中心軸101の軸方向において互いに対向し、クーラント吐出溝76の溝壁をなす一対の壁部64を有する。
【0063】
このような構成によれば、クランプボルト51が工具ホルダ20と一体となって中心軸101を中心に回転することによって、クーラント吐出溝76を流れるクーラントに対して中心軸101の半径方向内側から半径方向外側に向けた遠心力が作用する。この場合に、クーラント吐出溝76の溝壁をなす一対の壁部64の各々が、中心軸101と直交する平面からなるため、複数のクーラント導入孔71からクーラント吐出溝76に流入したクーラントを、遠心力によってより円滑にクーラント吐出溝76の第2開口部77に向かわせることができる。
【0064】
また、基部61は、中心軸101の軸方向において工具ホルダ20と対向する対向面61aを有する。基部61には、対向面61aに開口し、その開口を通じて工具ホルダ20から供給されるクーラントが導入され、クーラント吐出溝76に連通する複数のクーラント導入孔71が設けられる。複数のクーラント導入孔71は、中心軸101の周方向において互いに間隔を開けて配置される。
【0065】
このような構成によれば、複数のクーラント導入孔71を流れるクーラントが、中心軸101の周方向において互いに間隔を開けた位置からクーラント吐出溝76に流入するため、中心軸101の周方向において、クーラント吐出溝76に対するクーラントの流入量にばらつきが生じることを抑制できる。
【0066】
また、クランプボルト51は、対向面61aから中心軸101の軸方向に突出し、工具ホルダ20に螺合される雄ねじ部56を含む。工具ホルダ20は、中心軸101の軸方向において対向面61aと対向するホルダ端面31aを有する。対向面61aおよびホルダ端面31aの間には、雄ねじ部56の周りで周回し、工具ホルダ20からのクーラントが流入する隙間81が設けられる。
【0067】
このような構成によれば、対向面61aおよびホルダ端面31aに設けられる隙間81が、工具ホルダ20から複数のクーラント導入孔71に導入されるクーラントが一時的に貯まる空間として機能する。これにより、工具ホルダ20から複数のクーラント導入孔71に対して、クーラントをより円滑に導入することができる。
【0068】
また、基部61は、中心軸101の軸方向において、工具ホルダ20と対向するとともにカッター41と当接する対向面61aと、中心軸101の軸方向において、対向面61aとは反対側を向くボルト端面61bとを有する。クランプボルト51は、対向面61aから中心軸101の軸方向に突出し、工具ホルダ20に螺合される雄ねじ部56をさらに含む。中心軸101の軸方向における対向面61aおよびクーラント吐出溝76の間のクランプボルト51の厚みTbは、中心軸101の軸方向におけるクーラント吐出溝76およびボルト端面61bの間のクランプボルト51の厚みTcよりも大きい。
【0069】
このような構成によれば、基部61の対向面61aがカッター41と当接することによって、クランプボルト51は、中心軸101の軸方向においてカッター41を工具ホルダ20に対して押し付ける。この場合に、上記のTb>Tcの関係によって、クランプボルト51の剛性を十分に確保することができる。
【0070】
また、カッター41は、スカイビングカッターである。クーラント吐出溝76は、中心軸101の軸方向、かつ、中心軸101の半径方向におけるカッター41の先端部42に向けてクーラントを吐出する。
【0071】
このような構成によれば、スカイビングカッターにおいて加工点となるカッター41の先端部42と、ワークとの間から効率的に切屑を排除することができる。
【0072】
図6は、
図1中のクランプボルトの変形例を示す断面図である。
図6を参照して、本変形例では、クーラント吐出溝76が、中心軸101を中心とする円錐面と平行に配置されている。クーラント吐出溝76は、中心軸101と直交する平面に対して傾斜している。クーラント吐出溝76は、中心軸101の半径方向内側から半径方向外側に向かうに従って、中心軸101の軸方向において対向面61aから遠ざかるように延びている。
【0073】
クランプボルト51には、
図1中の頭部57に替わって、六角レンチ等を挿入可能な六角穴58が設けられている。
【0074】
本変形例に示されるように、クーラント吐出溝76が延びる方向は、中心軸101の半径方向内側から半径方向外側に近づく方向であれば、特に限定されない。
【0075】
なお、
図6中では、クランプボルト51が、カッター41の先端部42よりも中心軸101の軸方向に突出するように設けられているが、本発明において、クランプボルトは、カッターの先端部から突出しない形態で設けられてもよい。また、本発明における流体は、クーラントに限定されず、たとえば、空気であってもよい。
【0076】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
20 工具ホルダ、21 ホルダ本体部、22 シャンク部、26 第1軸部、26a 段差面、27 キー、31 第2軸部、31a ホルダ端面、31c,61c 外周面、32 クーラント供給通路、32p 第1クーラント供給通路、32q 第2クーラント供給通路、36 雌ねじ部、41 カッター、42 先端部、43 凸部、44 キー溝、46 嵌合部、47 切刃部、51 クランプボルト、56 雄ねじ部、57 頭部、58 六角穴、61 基部、61a 対向面、61b ボルト端面、64,64u,64v 壁部、70 クーラント通路、71 クーラント導入孔、72 第1開口部、76 クーラント吐出溝、77 第2開口部、81 隙間、100 工具、101 中心軸。