(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132823
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】光センサ
(51)【国際特許分類】
G01V 8/12 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01V8/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174239
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2023142174の分割
【原出願日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2023040357
(32)【優先日】2023-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 潤平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼市 克志
(72)【発明者】
【氏名】都築 良介
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB17
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE02
2G105HH04
(57)【要約】
【課題】コンパクトで操作性に優れた光センサを提供する。
【解決手段】光センサ1は、光源5と、光源5から発せられたビームAの光路上に配置されている光学素子50A~50Cを切り換えることによりビームAのスポットSの形状を切り換え可能に構成されているスポット可変機構9と、を備えている。スポット可変機構9は、ビームAの進行方向Xに交差する第1方向Yに沿って直線状に並べられた複数の光学素子50A~50Cと、複数の光学素子50A~50Cを第1方向Yに沿って直線的に往復移動させることが可能な直動機構93と、を備えている。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から発せられたビームの光路上に配置されている光学素子を切り換えることにより前記ビームのスポットの形状を切り換え可能に構成されているスポット可変機構と、を備え、
前記スポット可変機構は、
前記ビームの進行方向に交差する第1方向に沿って直線状に並べられた複数の光学素子と、
前記複数の光学素子を前記第1方向に沿って直線的に往復移動させることが可能な直動機構と、を備えている、
光センサ。
【請求項2】
前記直動機構は、ラックアンドピニオン機構であって、
前記第1方向に沿って直線状に延在しているラックと、
前記ラックに噛合しているピニオンと、を備えている、
請求項1に記載の光センサ。
【請求項3】
前記光源を収容している筐体を更に備え、
前記進行方向及び前記第1方向の双方に交差する第2方向に面した前記筐体の第1面から前記ピニオンを操作可能に構成されている、
請求項2に記載の光センサ。
【請求項4】
前記光源を収容している筐体と、
前記光センサの設定に関する情報を表示可能なディスプレイと、を更に備え、
前記ディスプレイが配置されている前記筐体の第1面から前記ピニオンを操作可能に構成されている、
請求項2に記載の光センサ。
【請求項5】
前記複数の光学素子は、第1の光学素子及び第2の光学素子を含み、
前記スポット可変機構は、
凸部と、
前記ビームの光路上に前記第1の光学素子が配置されたとき、前記凸部に対向する第1の凹部と、
前記ビームの光路上に前記第2の光学素子が配置されたとき、前記凸部に対向する第2の凹部と、
前記凸部を付勢する付勢部材と、を更に備え、
前記ビームの光路上に配置されている光学素子を前記第1の光学素子から前記第2の光学素子に切り換えるとき、前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1の凹部と前記凸部との係合が解除され、前記付勢部材の付勢力によって前記第2の凹部と前記凸部とが係合するように構成されている、
請求項1に記載の光センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光の反射を利用してワークの欠品等を検出する光センサがある。ワークに凹部や貫通孔があると、光の反射率が局所的に変化する。例えば、ワークがパレットの上に並べられたボトルである場合、隣り合うボトルとボトルとの隙間に深い谷間が生じる。レーザを当てるスポットのサイズをワークの凹部よりも大きく広げると、そのようなワークであっても安定して検出できるようになる。特許文献1には、レーザダイオードと投光コリメータとの間に光路長を変更する平板を配置してスポットのサイズを変更することができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザダイオード等の光源から照射される光は、スポットの中央部が明るく周縁部が暗いガウシアン型の光強度分布になっている。特許文献1に記載の技術のように、スポットを単純に広げただけでは、ガウシアンビームが維持される。スポットのサイズを広げると全体的に暗くなるため、中央部よりも暗い周縁部では、スポットのサイズを広げた場合に、ワークの検出に必要とされる光強度を得られないことがある。光強度が不足すると、ワークの有無を正確に検出できないおそれがある。
【0005】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、スポットの中央部と周縁部との光強度の差異を小さくすることができる光センサを提供することを目的とする。
【0006】
また、特許文献1に記載の技術のように、回転盤である変換素子ホルダに複数の平板を円周状に並べると、ビームの光軸と変換素子ホルダの回転軸とが平行になる。変換素子ホルダを回転させるトリマ操作部が本体ケースの背面に配置されるため、操作しながらでは光軸を目視で確認しにくい。また、光源である発光素子は、本体ケースの背面と変換素子ホルダとの間のスペースに配置される。変換素子ホルダが回転盤であると、本体ケースの背面から変換素子ホルダまで延びるトリマ操作部のシャフトは、発光素子が占めるスペースによって長くなる。シャフトが長くなるほど、変換素子ホルダの駆動に必要なトルクに耐えるためにシャフトが太くなる。光センサの小型化が困難である。
【0007】
また、特開2001-264453号公報に記載の技術のように、光源に対して投光レンズを近づけたり遠ざけたりしてスポットの形状を変更することもできる。しかしながら、特開2001-264453号公報に記載の技術では、スポットの可変範囲が光軸方向における投光レンズの変位量に依存する。特許文献1に記載の技術と同程度に可変範囲を大きくしようとすると投光レンズを変位させる機構の占有スペースが大きくなるため、特許文献1に記載の技術以上に光センサの小型化が困難である。
【0008】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、コンパクトで操作性に優れた光センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る光センサは、ガウシアンビームを発する光源と、少なくとも一つの分布変更素子と、を備えた距離設定形の光センサであって、少なくとも一つの分布変更素子の各々は、光源から出射したガウシアンビームをガウシアン型以外の光強度分布のビームに変更するように構成されている。
【0010】
この態様によれば、スポットの中央部が明るく周縁部が暗いガウシアン型の光強度分布のビーム(ガウシアンビーム)からガウシアン型以外の光強度分布のビームに変更することができるため、スポットの中央部と周縁部との光強度の差異を小さくすることができる。
【0011】
上記態様において、少なくとも一つの分布変更素子は、第1の分布変更素子及び第2の分布変更素子を含む複数の分布変更素子であり、第1の分布変更素子と第2の分布変更素子とを切り換えてガウシアン型以外の光強度分布のビームのスポットの形状を切り換え可能に構成されていてもよい。
【0012】
凹部や貫通孔がないワークでは、スポットのサイズが小さい方が、外乱で誤動作しにくく安定してワークを検出できる。他方、凹部や貫通孔があるワークでは、スポットのサイズを広げた方が、凹部で光の反射率が変化しても安定してワークを検出できる。ワークに合わせてスポットのサイズを拡大したり縮小したり変更したい要請がある。この態様によれば、第1の分布変更素子と第2の分布変更素子とを切り換えることにより、ワークに合わせてスポットのサイズを拡大したり縮小したり変更することができる。
【0013】
上記態様において、少なくとも一つの分布変更素子の各々は、光源から出射したガウシアンビームをトップハット型の光強度分布のビームに変更するように構成されていてもよい。
【0014】
上記態様において、少なくとも一つの分布変更素子の各々は、光源から出射したガウシアンビームをスポットの中央部よりも周縁部の方が強い光強度分布のビームに変更するように構成されていてもよい。
【0015】
スポットのサイズを広げると全体的に暗くなるため、スポットの中央部が明るく周縁部が暗いガウシアン型の光強度分布では、中央部よりも暗い周縁部において、スポットのサイズを広げた場合に、ワークの検出に必要とされる光強度を得られないことがある。これらの態様によれば、スポットの周縁部であってもワークの検出に必要とされる光強度を得やすく、ワークの有無を安定して検出することができる。
【0016】
上記態様において、光源から出射したガウシアンビームをコリメートして少なくとも一つの分布変更素子に入射させるコリメータを更に備えていてもよい。
【0017】
この態様によれば、分布変更素子に入射するガウシアンビームや分布変更素子から出射するビームの強度を計算しやすくなるため、所望のスポットの形状になるように分布変更素子を設計しやすい。
【0018】
上記態様において、光センサは、一定の周期で投光したビームがワークに反射して返ってくるまでの時間に基づいて距離を測定するTOFセンサであってもよい。
【0019】
ワークの欠品等を検出する光センサとして距離設定形の光センサを用いると、受光量ではなくワークとの距離を測定してワークの有無を検出するため、ワークの色や形状による影響を受けにくい。距離設定形の光センサの例として、TOFセンサ、三角測距センサ等がある。距離設定形の光センサのうち、三角測距センサは、投光部及び受光部が並ぶ軸をY軸、ガウシアンビームが進む軸をZ軸とすると、X軸に広がるラインビームと相性がよく、ラインビームのスポットのサイズが広がってもワークの有無を安定して検出することができる。距離設定形の光センサのうち、TOFセンサは、ラインビームだけでなく、円形、矩形等を含む種々の形状のスポットと相性がよく、スポットのサイズが広がってもワークの有無を安定して検出することができる。スポットの形状を制限されないため、距離設定形の光センサの中でもTOFセンサがとりわけ好ましい。この態様によれば、スポットの周縁部であってもワークの検出に必要とされる光強度を得やすいため、TOFセンサにとりわけ好適である。
【0020】
上記態様において、分布変更素子は、複数の球面レンズ又は複数のシリンドリカルレンズを含むマイクロレンズアレイであり、光源から出射して複数の球面レンズの各々又は複数のシリンドリカルレンズの各々を通過したガウシアンビームを互いに重ねてガウシアン型以外の光強度分布のビームに変更するように構成されていてもよい。
【0021】
上記態様において、分布変更素子は、回折光学素子であり、光源から出射したガウシアンビームを拡散させてガウシアン型以外の光強度分布のビームに変更するように構成されていてもよい。
【0022】
上記態様において、分布変更素子は、少なくとも一つの凹レンズ及び少なくとも一つの凸レンズを含む多段レンズであり、光源から出射したガウシアンビームを少なくとも一つの凹レンズにより発散させかつ少なくとも一つの凸レンズにより収束させてガウシアン型以外の光強度分布のビームに変更するように構成されていてもよい。このとき、凸レンズのうちの一部又は全部が液体レンズで構成されていてもよい。
【0023】
これらの態様によれば、光源から出射したガウシアンビームをガウシアン型以外の光強度分布のビームに変更する分布変更素子を入手しやすく廉価な部材を用いて構成することができる。
【0024】
本開示の他の一態様に係る光センサは、光源と、光源から発せられたビームの光路上に配置されている光学素子を切り換えることによりビームのスポットの形状を切り換え可能に構成されているスポット可変機構と、を備えている。スポット可変機構は、ビームの進行方向に交差する第1方向に沿って直線状に並べられた複数の光学素子と、複数の光学素子を第1方向に沿って直線的に往復移動させることが可能な直動機構と、を備えている。
【0025】
この態様によれば、回転機構によって複数の光学素子を回転させるのではなく直動機構によって複数の光学素子を直線的に移動させるため、光軸と回転軸とが平行にならない。光軸を目視で確認しながらトリマを操作できる。しかも、投光レンズを変位させたり回転盤を回転させたりしていた従来技術と比べて光センサを小型化しやすい。そのため、コンパクトで操作性に優れた光センサを提供することができる。
【0026】
上記態様において、直動機構は、ラックアンドピニオン機構であって、第1方向に沿って直線状に延在しているラックと、ラックに噛合しているピニオンと、を備えていてもよい。
【0027】
この態様によれば、ラックとピニオンだけの少ない部品点数で直動機構を構成できる。
【0028】
上記態様において、光源を収容している筐体を更に備え、進行方向及び第1方向の双方に交差する第2方向に面した筐体の第1面からピニオンを操作可能に構成されていてもよい。
【0029】
上記態様において、光源を収容している筐体と、光センサの設定に関する情報を表示可能なディスプレイと、を更に備え、ディスプレイが配置されている筐体の第1面からピニオンを操作可能に構成されていてもよい。
【0030】
これらの態様によれば、光軸を目視で確認できる第1面側からピニオンを操作したり、ディスプレイを目視で確認できる第1面側からピニオンを操作したりできるため、作業性に優れている。
【0031】
上記態様において、複数の光学素子は、第1の光学素子及び第2の光学素子を含み、スポット可変機構は、凸部と、ビームの光路上に第1の光学素子が配置されたとき、凸部に対向する第1の凹部と、ビームの光路上に第2の光学素子が配置されたとき、凸部に対向する第2の凹部と、凸部を付勢する付勢部材と、を更に備え、ビームの光路上に配置されている光学素子を第1の光学素子から第2の光学素子に切り換えるとき、付勢部材の付勢力に抗して第1の凹部と凸部との係合が解除され、付勢部材の付勢力によって第2の凹部と凸部とが係合するように構成されていてもよい。
【0032】
上記態様によれば、複数の光学素子を切り換えたとき、各々の光学素子の対応する凹部に凸部が係合するため、光学素子が光路上の所定の位置に配置されていることを作業者が把握しやすい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、スポットの中央部と周縁部との光強度の差異を小さくすることができる光センサを提供することができる。
【0034】
また、本発明によれば、コンパクトで操作性に優れた光センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の光センサの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、複数の分布変更素子を切り換える切換機構の一例を示す斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、ガウシアンビームの光強度分布の一例を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、ガウシアンビームから変更されたビームの光強度分布であって、トップハット型の光強度分布の一例を示す図である。
【
図3C】
図3Cは、ガウシアンビームから変更されたビームの光強度分布であって、スポットの中央部よりも周縁部の方が強い光強度分布の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、マイクロレンズアレイを用いた分布変更素子の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4に示されたマイクロレンズアレイの変形例を示す図である。
【
図6】
図6は、回折光学素子を用いた分布変更素子の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、多段レンズを用いた分布変更素子の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態の光センサの一例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示されたスポット可変機構の一例を斜め前方から見た斜視図である。
【
図10】
図10は、
図8に示されたスポット可変機構の一例を斜め後方から見た斜視図である。
【
図11A】
図11Aは、スポットの形状が集光タイプであることを示すピクトグラムの一例とスポットの形状が通常タイプであることを示すピクトグラムの一例とを示す平面図である。
【
図11B】
図11Bは、スポットの形状が拡散タイプであることを示すピクトグラムの一例とスポットの形状が通常タイプであることを示すピクトグラムの一例とを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の参照符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。以下、図面を参照して各構成について詳しく説明する。
図1から
図7において、光センサ1の一例として、一定の周期で投光したビームBがワークWに反射して返ってくるまでの時間に基づいて距離を測定するTOF(Time of Flight)センサを開示している。光センサ1は、図示した例に限定されず、TOF方式以外の距離設定形の光センサであってもよい。TOF方式以外の距離設定形の光センサの一例として、三角測距センサ等が挙げられる。
【0037】
図1に示すように、光センサ1は、投光部2、受光部3、回路基板4等を備えている。投光部2は、光源5を備え、ワークWにビームBを投光する。受光部3は、CMOSイメージセンサ等の受光素子を備え、ワークWに反射して返ってきたビームBを受光する。回路基板4は、投光部2及び受光部3に接続され、投光部2から投光されたビームBがワークWに反射して返ってくるまでの時間を計測することで光センサ1とワークWとの距離を演算する。
【0038】
投光部2は、光源5に加え、少なくとも一つの分布変更素子10を備えている。任意の構成として、光源5と分布変更素子10との間に配置されるコリメータ6、複数の分布変更素子10を切り換える切換機構9等を備えていてもよい。光源5は、レーザダイオード等であり、ガウシアン型の光強度分布のビームAを発する。コリメータ6は、光源5から出射したガウシアンビームAをコリメートして分布変更素子10に入射させる。分布変更素子10は、光源5から出射したガウシアンビームAをガウシアン型以外の光強度分布のビームBに変更する。
【0039】
図4から
図7を参照して後で詳しく説明するが、分布変更素子10は、複数の球面レンズ21や複数のシリンドリカルレンズ22で構成されたマイクロレンズアレイ20のような光学素子であってもよい。回折格子30のような光学素子であってもよい。多段レンズのような光学素子であってもよい。分布変更素子10を「光源5から出射したガウシアンビームAをガウシアン型以外の光強度分布のビームBに変更する光学素子」と言い換えてもよい。
【0040】
図2は、複数の分布変更素子10を切り換える切換機構9の一例を示す斜視図である。切換機構9は、例えば、複数の分布変更素子10が直列に並べられたスライダ91、スライダ91を操作するためのトリマ、トリマの回転をスライダ91に伝達するラックアンドピニオン機構93R,93P、スライダ91を摺動可能に支持するフレーム94等を備えている。図示した例では、スライダ91に第1~第3の分布変更素子10A~10Cが配置されている。切換機構9の構成は、図示した例に限定されず、モータに回転駆動される円盤に複数の分布変更素子を並べてもよい。
【0041】
第1~第3の分布変更素子10A~10Cの各々は、光源5から出射したガウシアンビームAをガウシアン型以外の光強度分布のビームBに変更するように構成され、かつ互いに異なる形状のスポットSになるように構成されている。例えば、第1の分布変更素子10Aと第2の分布変更素子10Bとを切り換えれば、ビームBのスポットSの形状を切り換えることができる。ワークWに合わせてスポットSのサイズを拡大したり縮小したり変更することができる。
【0042】
図3Aは、ガウシアンビームAの光強度分布の一例を示す図である。
図3Bは、ガウシアンビームAから変更されたビームBの光強度分布であって、トップハット型の光強度分布の一例を示す図である。
図3Cは、ガウシアンビームAから変更されたビームBの光強度分布であって、スポットSの中央部よりも周縁部の方が強い光強度分布の一例を示す図である。
【0043】
図3Aに示されたガウシアンビームAの光強度分布は、単一のピークを有している。これに対し、
図3B及び
図3Cに示されたガウシアン型以外の光強度分布は、複数のピークを有している。例えば、
図3Bに示されたトップハット型の光強度分布は、略同一の強度の複数のピークが連続している。
図3B及び
図3Cに示されたガウシアン型以外の光強度分布は、スポットの中央部が明るく周縁部が暗いガウシアン型の光強度分布と比べて、中央部と周縁部との光強度の差異を小さくすることができる。
【0044】
図4は、マイクロレンズアレイ20を用いた分布変更素子10の一例を示す図である。
図5は、
図4に示されたマイクロレンズアレイ20の変形例を示す図である。
図4に示した例では、マイクロレンズアレイ20が複数の球面レンズ21で構成されている。
図5に示した変形例のように、マイクロレンズアレイ20を複数のシリンドリカルレンズ22で構成してもよい。
【0045】
マイクロレンズアレイ20は、光源5から出射して複数の球面レンズ21の各々又は複数のシリンドリカルレンズ22の各々を通過したガウシアンビームAを互いに重ねてガウシアン型以外の光強度分布のビームBに変更するように構成されている。
【0046】
マイクロレンズアレイ20を複数の球面レンズ21で構成すると、
図4に示すように、円形ビームと呼ばれる長径と短径との差異が小さい楕円形(略円形)のビームBに変更できる。マイクロレンズアレイ20を複数のシリンドリカルレンズ22で構成すると、
図5に示すように、ラインビームと呼ばれる長径と短径との差異が極端に大きい楕円形(略線形)のビームBに変更できる。ビームBのスポットSの形状は特に限定されず、矩形にしてもよいし、多角形にしてもよい。
【0047】
図4に示した例では、光源5とマイクロレンズアレイ20との間にコリメータ6が配置され、マイクロレンズアレイ20を構成する複数の球面レンズ21の各々にコリメートされたガウシアンビームAが入射する。複数の球面レンズ21の各々に入射するガウシアンビームAの強度を計算しやすくなるため、所望のスポットSの形状になるようにマイクロレンズアレイ20を設計しやすい。
【0048】
図6は、回折光学素子30を用いた分布変更素子10の一例を示す図である。
図6に示すように、回折光学素子30の表面には、光源5から出射したガウシアンビームAを拡散させる微細な凹部31及び微細な凸部32の凹凸パターンが形成されている。回折光学素子30は、ガウシアンビームAを中央部から周縁部へ拡散させてスポットSの中央部と周縁部との光強度の差異を小さいガウシアン型以外の光強度分布のビームBに変更するように構成されている。
【0049】
図7は、多段レンズ40を用いた分布変更素子10の一例を示す図である。多段レンズ40は、少なくとも一つの凹レンズ41及び少なくとも一つの凸レンズ42を含む多段レンズである。多段レンズ40は、光源5から出射したガウシアンビームAを少なくとも一つの凹レンズ41により発散させ、かつ少なくとも一つの凸レンズ42により収束させて、ガウシアン型以外の光強度分布のビームBに変更するように構成されている。図示した例では、凸レンズ42が液体レンズで構成されている。
【0050】
以上のように構成された本実施形態の光センサ1によれば、スポットSのサイズを変更することができ、かつスポットSの中央部と周縁部との光強度の差異を小さくすることができる。スポットSの周縁部であってもワークWの検出に必要とされる光強度を得やすく、ワークの有無を安定して検出することができる。
【0051】
続いて、
図8から
図10を参照して本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の光センサ1は、光源5から発せられたビームAの光路上に配置されている光学素子50A~50Cを切り換えることによりビームAのスポットSの形状を切り換え可能に構成されたスポット可変機構9を備えている。レンズの数は、図示した例に限定されず、四つ以上であってもよいし、二つであってもよい。第2実施形態において、複数の光学素子50A~50Cの各々は、光源5から出射したガウシアンビームAをガウシアン型以外の光強度分布のビームBに変更するように構成された分布変更素子10に限定されず、光源5から出射したガウシアンビームAをガウシアンビームAのまま透過する光学素子であってもよい。図示した例では、光学素子50A~50Cの各々が板厚の異なる平板レンズで構成されている。
【0052】
図8は、本発明の第2実施形態の光センサの一例を示す断面図である。
図8に示すように、光センサ1は、筐体100と、筐体100に収容された投光部2、受光部3、回路基板4等と、を備えている。投光部2は、光源5、スポット可変機構9、投光レンズ7等で構成されている。図示した例では、投光部2が
図1に示されたコリメータ6を備えていない。スポット可変機構9は、第1実施形態で説明した切換機構9と略同一の構成を備えている。
【0053】
筐体100は、正面101、背面102、天面105、底面106、左側面、右側面を有する略直方体に形成されている。投光部2から投光されたビームA,B(
図1に示す)は、正面101からワークW(
図1に示す)に向かう。天面105には、光センサ1の設定に関する情報を表示可能なディスプレイ8、スポット可変機構9を操作するためのトリマ92等が配置されている。
【0054】
図9は、
図8に示されたスポット可変機構9の一例を斜め前方から見た斜視図である。
図9に示すように、スポット可変機構9は、ビームAの進行方向Xに交差する第1方向Yに沿って直線状に並べられた複数の光学素子50A~50Cと、複数の光学素子50A~50Cを第1方向Yに沿って直線的に往復移動させることが可能な直動機構93と、を備えている。図示した例では、直動機構93が、ラックアンドピニオン機構93R,93Pであって、第1方向Yに沿って直線状に延在しているラック93Rと、ラック93Rに噛合しているピニオン93Pと、を備えている。
【0055】
ピニオン93Pは、光の進行方向X及び第1方向Yの双方に交差する第2方向Zに面した筐体100の天面105側から操作可能に構成されている。天面105には、前述したディスプレイ8が配置されている。天面105は、第1面の一例である。図示した例では、光の進行方向Xが前後方向であり、光学素子50A~50Cの並び方向である第1方向Yが左右方向であり、光の進行方向X及び第1方向Yの双方に交差する第2方向Zが上下方向である。
【0056】
なお、直動機構93の構成は、ラックアンドピニオン機構93R,93Pに限定されない。例えば、筐体100の天面105に設けられたレバーを第1方向Yに動かしてレバーの動きに従動する光学素子50A~50Cを第1方向Yに往復移動させるように構成してもよい。例えば、ボールねじであってもよい。第2方向Zにナットが往復移動するボールねじであれば、トリマ等の操作部を筐体100の天面105に設けることができる。
【0057】
図10は、
図8に示されたスポット可変機構9の一例を斜め後方から見た斜視図である。
図10に示すように、スライダ91には、複数の光学素子50A~50Cの各々に対応する凹部95A~95Cが設けられている。フレーム94には、凸部96が設けられている。ビームAの光路上に光学素子50Aが配置されたとき、凸部96に凹部95Aが対向する。同様に、ビームAの光路上に光学素子50Bが配置されたとき、凸部96に凹部95Bが対向し、ビームAの光路上に光学素子50Cが配置されたとき、凸部96に凹部95Cが対向する。
【0058】
光学素子50Aは、第1の光学素子の一例であり、凹部95Aは、第1の凹部の一例である。同様に、光学素子50Bは、第2の光学素子の一例であり、凹部95Bは、第2の凹部の一例である。スライダ91及び/又はフレーム94は、樹脂材料から形成されて可撓性を有している。ビームAの光路上に配置されている光学素子50A~50Cを切り換えるとき、スライダ91及び/又はフレーム94が変形し、変形したスライダ91及び/又はフレーム94が復元しようとする付勢力によって凸部96に対向している凹部95A~95Cのいずれか一つと凸部96とが係合する。
【0059】
例えば、ビームAの光路上に配置されている光学素子を光学素子50Aから光学素子50Bに切り換えるとき、スライダ91を第1方向Yの左方へ移動させると、スライダ91及び/又はフレーム94が変形し、変形したスライダ91及び/又はフレーム94が復元しようとする付勢力に抗して凹部95Aと凸部96との係合が解除される。スライダ91を更に左方へ移動させると、凸部96に凹部95Bが対向し、変形したスライダ91及び/又はフレーム94が復元しようとする付勢力によって凹部95Bと凸部96とが係合する。スライダ91及び/又はフレーム94は、凸部96に対向している凹部(図示した例では、凹部95B)に向かって凸部96を付勢する付勢部材の一例である。
【0060】
ビームAの光路上に光学素子50Bが配置されている状態におけるスポットSの形状を通常タイプとすると、ビームAの光路上に配置されている光学素子を光学素子50Bから光学素子50Bよりも板厚が大きい光学素子50Aに切り換えると、ビームAを集光してスポットSのサイズを縮小することができる。
図11Aは、スポットSの形状が集光タイプであることを示すピクトグラム97Aの一例とスポットSの形状が通常タイプであることを示すピクトグラム97Bの一例とを示す平面図である。ビームAの光路上に配置されている光学素子を光学素子50Bから光学素子50Bよりも板厚が小さい光学素子50Cに切り換えると、ビームAを拡散させてスポットSのサイズを拡大することができる。
図11Bは、スポットSの形状が拡散タイプであることを示すピクトグラム97Cの一例とスポットSの形状が通常タイプであることを示すピクトグラム97Bの一例とを示す平面図である。
図11Aに示した例では、トリマ92の現在位置を山形のマークで示し、トリマ92の選択可能な位置をドットマークで示し、トリマ92の移動経路を円弧のマークで示している。トリマ92を時計回りに回転させるとスポットSの形状が集光タイプになり、トリマ92を反時計回りに回転させるとスポットSの形状が通常タイプになることを作業者は直感的に把握しやすい。図示した例では、トリマ92の位置が三つの取りうる位置のうちの中間位置にあるとき、スポットSがどのタイプになるかはピクトグラムで明示されていないが、集光タイプとも通常タイプとも異なり、両者の中間状態にあたる、やや集光しているタイプになる。なお、トリマ92の現在位置、選択可能な位置、移動経路のマークは図示した例に限定されない。また、
図11Bに示した例でも
図11Aに示した例と同様である。そのため、重複する説明を省略する。
【0061】
以上のように構成された第2実施形態の光センサ1によれば、回転機構によって複数の光学素子を回転させるのではなく直動機構93によって複数の光学素子50A~50Cを直線的に移動させるため、ビームAの光軸とトリマ92の回転軸とが平行にならない。光軸を目視で確認しながら天面105に配置されたトリマ92を操作できる。しかも、投光レンズを変位させたり回転盤を回転させたりしていた従来技術と比べて光センサ1を小型化しやすい。そのため、コンパクトで操作性に優れた光センサ1を提供することができる。
【0062】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0063】
[付記1]
ガウシアンビーム(A)を発する光源(5)と、少なくとも一つの分布変更素子(10)と、を備え、
前記少なくとも一つの分布変更素子(10)の各々は、前記光源(5)から出射したガウシアンビーム(A)をガウシアン型以外の光強度分布のビーム(B)に変更するように構成されている、
光センサ(1)。
【0064】
[付記2]
光源と、
前記光源(5)から発せられたビーム(A)の光路上に配置されている光学素子(50A~50C)を切り換えることにより前記ビーム(A)のスポットの形状を切り換え可能に構成されているスポット可変機構(9)と、を備え、
前記スポット可変機構(9)は、
前記ビーム(A)の進行方向(X)に交差する第1方向(Y)に沿って直線状に並べられた複数の光学素子(50A~50C)と、
前記複数の光学素子(50A~50C)を前記第1方向(Y)に沿って直線的に往復移動させることが可能な直動機構(93)と、を備えている、
光センサ(1)。
【符号の説明】
【0065】
1…光センサ、2…投光部、3…受光部、4…回路基板、5…光源、6…コリメータ、7…投光レンズ、8…ディスプレイ、9…切換機構(スポット可変機構)、10…分布変更素子、10A~10C…第1~第3の分布変更素子、20…マイクロレンズアレイ、21…球面レンズ、22…シリンドリカルレンズ、30…回折光学素子、31…凹部、32…凸部、40…多段レンズ、41…凹レンズ、42…凸レンズ、50A~50C…光学素子、91…スライダ(付勢部材の一例)、92…トリマ、93…直動機構、93P…ピニオン、93R…ラック、94…フレーム(付勢部材の一例)、95A~95C…凹部、96…凸部、97A~97C…ピクトグラム、100…筐体、101…正面、102…背面、105…天面、106…底面、A…ガウシアン型のビーム(ガウシアンビーム)、B…ガウシアン型以外のビーム、S…スポット、W…ワーク、X…ビームの進行方向、Y…第1方向、Z…第2方向。