(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013283
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】電気駆動式車両
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20240125BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20240125BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20240125BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240125BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20240125BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20240125BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20240125BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60L50/61
B60L7/14
B60L1/00 L
B60L58/10
B60K6/46 ZHV
B60W10/30 900
B60W10/26 900
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115238
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】北口 篤
(72)【発明者】
【氏名】高田 知範
(72)【発明者】
【氏名】門田 充弘
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB15
3D202BB18
3D202BB47
3D202BB59
3D202CC06
3D202CC16
3D202DD01
3D202DD05
3D202DD06
5H125AA12
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA09
5H125BB05
5H125BB09
5H125BC11
5H125BC25
5H125BD00
5H125CB02
5H125DD11
5H125EE01
5H125EE42
5H125EE44
5H125EE52
5H125EE57
5H125EE62
(57)【要約】
【課題】走行モータの回生電力が発生する機会を増やし、それを利用することにより燃費を低減することが可能な電気駆動式車両を提供する。
【解決手段】コントローラ100は、惰性走行状態を検知した場合の少なくとも一部において、走行モータ35,36が回生電力を発生させるように走行用インバータ33,34を制御し、コンバータ60を作動させ、コンバータ60の出力電力Pおよび補機用モータ47~50の駆動電力Qを算出し、出力電力Pが駆動電力Q以下である場合は、出力電力Pが補機用モータ47~50にのみ供給されるように補機用インバータ43~46および充放電制御器91を制御し、出力電力Pが駆動電力Qより大きい場合は、出力電力Pが補機用モータ47~50と蓄電池90とに供給されるように補機用インバータ43~46および充放電制御器91を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンによって駆動される主発電機および補助発電機と、
前記主発電機の発電電力を直流電力に変換する主整流器と、
前記補助発電機の発電電力を直流電力に変換する補機整流器と、
前記主整流器から直流電力が供給される主回路と、
前記補機整流器から直流電力が供給される補機回路と、
蓄電池と、
前記蓄電池と前記補機回路との間で電力の受給を行う充放電制御器と、
走行モータと、
前記主回路の直流電力を交流電力に変換して前記走行モータに供給する走行用インバータと、
補機用モータと、
前記補機回路の直流電力を交流電力に変換して前記補機用モータに供給する補機用インバータと、
前記主回路の直流電力を降圧して前記補機回路に供給するコンバータと、
前記走行モータの増速を指示するアクセルペダルと、
前記走行モータの減速を指示するブレーキペダルと、
前記アクセルペダルおよび前記ブレーキペダルからの入力信号に応じて、前記主発電機、前記補助発電機、前記充放電制御器、前記走行用インバータ、前記補機用インバータ、および前記コンバータを制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記ブレーキペダルが操作された場合に、前記走行モータが回生電力を発生させるように前記走行用インバータを制御する電気駆動式車両において、
車速を検知する車速センサを備え、
前記コントローラは、
前記アクセルペダルおよび前記ブレーキペダルのいずれも操作されておらず、かつ前記車速が所定の閾値以上である状態を惰性走行状態として検知し、
前記惰性走行状態を検知した場合の少なくとも一部において、前記走行モータが回生電力を発生させるように前記走行用インバータを制御し、前記コンバータを作動させ、前記コンバータの出力電力および前記補機用モータの駆動電力を算出し、
前記出力電力が前記駆動電力以下である場合は、前記出力電力が前記補機用モータにのみ供給されるように前記補機用インバータおよび前記充放電制御器を制御し、
前記出力電力が前記駆動電力より大きい場合は、前記出力電力が前記補機用モータと前記蓄電池とに供給されるように前記補機用インバータおよび前記充放電制御器を制御する
ことを特徴とする電気駆動式車両。
【請求項2】
請求項1に記載の電気駆動式車両において、
走行面の降り傾斜角を検知するためのセンサを備え、
前記コントローラは、前記惰性走行状態を検知しかつ前記センサにより検出した前記降り傾斜角が所定の閾値未満である場合は、前記回生電力が発生しないように前記走行用インバータを制御し、前記コンバータを作動させない
ことを特徴とする電気駆動式車両。
【請求項3】
請求項1に記載の電気駆動式車両において、
荷台と、
前記荷台の積荷量を検知するためのセンサとを備え、
前記コントローラは、前記惰性走行状態を検知しかつ前記センサにより検出した前記積荷量が所定の閾値以上である場合は、前記回生電力が発生しないように前記走行用インバータを制御し、前記コンバータを作動させない
ことを特徴とする電気駆動式車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプトラック等の電気駆動式車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気駆動式のダンプトラックは、4輪を配置した車体をベースとして、車体フレームの前方上部に運転室およびコントロールボックスを設置し、車体フレームの前方下部にはパワーユニットであるエンジンと発電機と油圧ポンプを配置し、車体フレームの後方下部には走行モータと減速機等で構成されたリアアクスルを設置し、車体フレーム上部の中央から後方にかけて油圧シリンダにより起伏可能な荷台を備え、荷台に砕石物または土砂等の運搬対象物を多量に積載し運搬するものである。
【0003】
ダンプトラックには、投入機(例えば油圧ショベル)により運搬対象物が大量に積み込まれる。ダンプトラックはその運搬対象物を目的地まで運搬し走行した後、油圧シリンダを伸長することにより、ヒンジピンを回転中心として荷台を起伏させて、運搬対象物を放土し運搬を完了し、また積込場に戻り、上記を繰り返す。
【0004】
上記ダンプトラックはエンジンにより主発電機で電気を発電し、インバータとコントローラにより電力をリアアクスル内の電気モータに送電して電気モータを駆動させ、減速機を介してタイヤが回転することにより走行する。また、減速もしくは停止する場合には電気モータによる回生制動により減速する手段(電気ブレーキ)を使用する。そこで発電された回生電力は発熱ブレーキ抵抗装置の発熱抵抗体に通電され、熱に変換され、その熱が送風機で外部に排熱される。
【0005】
また、発電機や走行モータは駆動により発熱するため、冷却する必要があり、その冷却システムを搭載している。冷却システムは主に空冷式であり、冷却ブロワは電気モータで駆動され、冷却風を送風する。その駆動電力は、主発電機とは異なる補助発電機で発電した電力であり、主に冷却対象物が任意の温度以下になるように補機用電気モータをインバータとコントローラで駆動制御している。
【0006】
電気駆動式のダンプトラックの技術を開示する先行技術文献として、例えば特許文献1,2が挙げられる。特許文献1に記載のハイブリッド式ダンプトラックは、発電した電力もしくは減速時に回生した電力を蓄電池に蓄電し、加速走行時に放電して、電気モータを駆動させ走行する。
【0007】
また、特許文献2に記載のハイブリッド車両は、走行時の駆動力が要求されない降坂路において、オートクルーズ状態の電気ブレーキ時の回生電力を蓄電池に充電する際、蓄電池の充電許容量がオーバーフローとなる前に、回生電力で電動ポンプ(補機)を駆動し、回生電力を消費する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-299901号公報
【特許文献2】特開2017-30595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、電気駆動式のダンプトラックは走行モータの駆動と制動により加速、走行、減速、停止等して積載物を運搬して稼働するが、ダンプトラックの燃費を低減して稼働させたい。そのためには車両駆動システムのエネルギーの有効利用が要求される。ここで、特許文献1,2のように蓄電池を搭載して、電気ブレーキ時の回生電力を蓄電池に充電し、その充電電力をモータ駆動時に利用する蓄電池の充放電制御により、燃費低減を図ることは可能であるが、蓄電池を搭載することによりその蓄電池の質量分だけ運搬対象物の積載量を減量することになるため、運搬効率が低下してしまう。
【0010】
運搬対象物の積載量を維持するには、蓄電池を搭載しない、もしくは搭載しても搭載する量が少量であることが求められる。しかし、言うまでもなく、蓄電池を搭載しないと電気ブレーキ時の回生電力を蓄電できず、燃費低減効果が得られない。もしくは蓄電池の搭載量が少量の場合は回生電力を少量しか蓄電できないため、また蓄電池の充放電損失により一部の充放電エネルギーは熱に変換されるため、燃費低減効果が限られる。
【0011】
一方で、電気ブレーキ時の回生電力を蓄電池に蓄電するのではなく、他の補機動力として直接利用する方法があり、蓄電池の利用による充放電損失がないためエネルギー効率は良いが、利用できる時間が限定されるため、燃費低減効果は限られる。
【0012】
以上をまとめると、電気駆動式ダンプトラックの燃費低減を図る課題を解決するには、電気ブレーキ時の回生電力を蓄電池に蓄電することを優先するのではなく、回生電力を発生させる機会を増加し、それを直ちに補機動力として利用することが求められる。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、走行モータの回生電力が発生する機会を増やし、それを利用することにより燃費を低減することが可能な電気駆動式車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、エンジンと、前記エンジンによって駆動される主発電機および補助発電機と、前記主発電機の発電電力を直流電力に変換する主整流器と、前記補助発電機の発電電力を直流電力に変換する補機整流器と、前記主整流器から直流電力が供給される主回路と、前記補機整流器から直流電力が供給される補機回路と、蓄電池と、前記蓄電池と前記補機回路との間で電力の受給を行う充放電制御器と、走行モータと、前記主回路の直流電力を交流電力に変換して前記走行モータに供給する走行用インバータと、補機用モータと、前記補機回路の直流電力を交流電力に変換して前記補機用モータに供給する補機用インバータと、前記主回路の直流電力を降圧して前記補機回路に供給するコンバータと、前記走行モータの増速を指示するアクセルペダルと、前記走行モータの減速を指示するブレーキペダルと、前記アクセルペダルおよび前記ブレーキペダルからの入力信号に応じて、前記主発電機、前記補助発電機、前記充放電制御器、前記走行用インバータ、前記補機用インバータ、および前記コンバータを制御するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記ブレーキペダルが操作された場合に、前記走行モータが回生電力を発生させるように前記走行用インバータを制御する電気駆動式車両において、車速を検知する車速センサを備え、前記コントローラは、前記アクセルペダルおよび前記ブレーキペダルのいずれも操作されておらず、かつ前記車速が所定の閾値以上である状態を惰性走行状態として検知し、前記惰性走行状態を検知した場合の少なくとも一部において、前記走行モータが回生電力を発生させるように前記走行用インバータを制御し、前記コンバータを作動させ、前記コンバータの出力電力および前記補機用モータの駆動電力を算出し、前記出力電力が前記駆動電力以下である場合は、前記出力電力が前記補機用モータにのみ供給されるように前記補機用インバータおよび前記充放電制御器を制御し、前記出力電力が前記駆動電力より大きい場合は、前記出力電力が前記補機用モータと前記蓄電池とに供給されるように前記補機用インバータおよび前記充放電制御器を制御するものとする。
【0015】
以上のように構成した本発明によれば、ブレーキペダルの操作時の他、アクセルペダルおよびブレーキペダルのいずれも操作されていない惰性走行時に走行モータで回生電力を発生させ、当該回生電力で補機用モータの駆動電力を賄うとともに、補機用モータの駆動電力を超える余剰電力を蓄電池に充電し、蓄電池に蓄えた電力を後に補機用モータの駆動に利用することにより、補助発電機の発電を抑制することができる。その結果、エンジンの負荷が低減されるため、エンジンの燃費を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電気駆動式車両によれば、走行モータの回生電力が発生する機会を増やし、それを利用することにより燃費を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施例におけるダンプトラックの概略図
【
図2】本発明の第1の実施例における電気駆動システムの構成図
【
図3】本発明の第1の実施例における電気駆動システムの制御フロー図
【
図4】本発明の第2の実施例における電気駆動システムの構成図
【
図5】本発明の第2の実施例における電気駆動システムの制御フロー図
【
図6】本発明の第3の実施例における電気駆動システムの構成図
【
図7】本発明の第3の実施例における電気駆動システムの制御フロー図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各図中、同等の要素には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。また、本実施形態は、本発明に係る電気駆動式車両をダンプトラックに適用したものであるが、本発明の適用対象はこれに限定されない。
【実施例0019】
図1は、本発明の第1の実施例におけるダンプトラックの側面図である。
図1に示すように、ダンプトラックは、車体フレーム1と、土砂等の積荷2を載せる荷台3とを備えている。車体フレーム1と荷台3はホイストシリンダ4とヒンジピン5で連結されている。ホイストシリンダ4を伸縮動作させることにより、荷台3が車体フレーム1に対してヒンジピン5を支点に上下方向に回動動作し、積荷2を放土することができる。
【0020】
車体フレーム1には、図示しない機構部品を介して、左右の前輪6L,6R、左右の後輪7L,7R、作動油タンク(図示せず)等が取り付けられている。後輪7L,7Rの回転軸部には、後輪7L,7Rを駆動する走行モータ35,36(
図2に示す)と、後輪7L,7Rの回転数を調整する減速機が納められている。
【0021】
ダンプトラックはまた、車体フレーム1の前側に一対の前輪サスペンションシリンダ9L,9Rを備え、車体フレーム1の後側に一対の後輪サスペンションシリンダ10L,10Rを備えている。前輪サスペンションシリンダ9L,9Rは、左右の前輪6L,6Rを独立して上下させることができる独立懸架式のサスペンションシリンダであり、その上端側は車体フレーム1に取り付けられ、下端側は左右の前輪6L,6Rを支持している車輪支持部材(図示せず)に取り付けられている。後輪サスペンションシリンダ10L,10Rは、左右の後輪7L,7Rを独立して上下させることができる独立懸架式のサスペンションシリンダであり、その上端側は車体フレーム1に取り付けられ、下端側は左右の後輪7L,7Rを支持している車輪支持部材(図示せず)に取り付けられている。
【0022】
車体フレーム1の前側には、オペレータが歩行可能なデッキ11が取り付けられている。デッキ11上面には、ダンプトラックの操作を行うためにオペレータが搭乗するキャブ12、各種電力機器が収納されたコントロールキャビネット13、コントロールキャビネット13の余剰エネルギーを熱として放散するためのグリッドボックス14等が搭載されている。また、前輪6L,6Rにより隠れた部分には、主発電機30、補助発電機40(いずれも
図2に示す)、油圧機器用油圧源としてのメインポンプ(図示せず)等からなるパワーユニット15が搭載されている。
【0023】
図2は、本実施例における電気駆動システムの構成図である。
図2において、電気駆動システムは、エンジン20と、主発電機30と、主整流器31と、主回路32と、走行用インバータ33,34と、走行モータ35,36と、チョッパ37と、熱抵抗器38と、補助発電機40と、補機整流器41と、補機回路42と、補機用インバータ43~46と、補機用モータ47~50と、コンバータ60と、アクセルペダル70と、ブレーキペダル71と、車速センサ72と、サスペンション圧力センサ76と、コントローラ100とを備えている。
【0024】
主発電機30および補助発電機40は、エンジン20によって駆動される。主整流器31は、主発電機30の発電電力を直流電力に変換し、主回路32に供給する。補機整流器41は、補助発電機40の発電電力を直流電力に変換し、補機回路42に供給する。主回路32と補機回路42の電力や電圧は大きく異なり、主回路32の方が大電力、高電圧である。
【0025】
走行用インバータ33,34は、主回路32の直流電力を交流電力に変換して走行モータ35,36に供給する。走行モータ35,36は、図示しない減速機を介して駆動輪である後輪7L,7Rを駆動する。また、走行モータ35,36を発電機として作動させることにより、電気ブレーキ力を後輪7L,7Rに作用させて車体を減速することができる。その際に走行モータ35,36で発生した回生電力は、走行の諸条件により電圧や電流が変動する電力であり、走行用インバータ33,34で直流電力に変換され、主回路32に供給される。主回路32に供給された回生電力の大部分は、チョッパ37を介して熱抵抗器38に供給され、熱抵抗器38で熱に変換される。回生電力の残りの一部は、コンバータ60を介して補機回路42に供給される。補機回路42に供給された回生電力は、補機用インバータ43~46で交流電力に変換され、補機用モータ47~50に供給される。この時、補機用モータ47~50の駆動電力Qの少なくとも一部が回生電力で賄われるため、補助発電機40の発電を抑制または停止することにより、エンジン20の負荷を低減することができる。
【0026】
補機用インバータ43~46は、補機回路42の直流電力を交流電力に変換して補機用モータ47~50に供給する。補機用モータ47~50は、冷却ファン80~83等の補機を駆動する。コンバータ60は、主回路32の直流電力を降圧して補機回路42に供給する降圧装置である。コントローラ100は、アクセルペダル70、ブレーキペダル71、車速センサ72、およびサスペンション圧力センサ76からの入力信号に応じて、エンジン20、主発電機30、補助発電機40、走行用インバータ33,34、補機用インバータ43~46、およびコンバータ60を制御する。
【0027】
コントローラ100は、ダンプトラックの惰性走行状態を検知する惰性走行検知部101を有する。惰性走行検知部101は、CPU等の演算装置がROMやRAM等の記憶装置に格納されたプログラムを実行することで実現される機能ブロックである。
【0028】
図3は、本実施例における電気駆動システムの制御フロー図である。以下、各ステップの処理を順に説明する。
【0029】
コントローラ100は、まず、ブレーキペダル71の操作が無いか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101でNoと判定した場合は、ブレーキペダル71の操作量に応じた回生電力が発生するように走行用インバータ33,34を制御し、チョッパ37をONにし、コンバータ60をONにし、蓄電池90の充電をONにし(ステップS102)、当該フローを終了する。これにより、ブレーキペダル71の操作量に応じた電気ブレーキ力が走行モータ35,36で生じ、車体が減速する。また、走行モータ35,36の回生電力の大部分は熱抵抗器38で消費され、回生電力の残りの一部は、コンバータ60で降圧された後、補機用モータ47~50の駆動および蓄電池90の充電に利用される。
【0030】
ステップS101でYesと判定した場合は、アクセルペダル70の操作が無いか否かを判定する(ステップS103)。ステップS103でNoと判定した場合は、アクセルペダル70の操作量に応じた電力が走行モータ35,36に供給されるようにエンジン20、主発電機30、および走行用インバータ33,34を制御し、コンバータ60をOFFにし(ステップS104)、当該フローを終了する。これにより、アクセルペダル70の操作量に応じて車体が加速する。
【0031】
ステップS103でYesと判定した場合は、車速が所定の閾値F以上であるか否かを判定する(ステップS105)。ステップS105でNoと判定した場合はステップS104へ移行する。
【0032】
ステップS105でYesと判定した場合は、回生電力が発生するように走行用インバータ33,34を制御し、コンバータ60をONにする(ステップS106)。ここでいう回生電力は、例えば惰性走行に影響を与えない程度の電気ブレーキ力に応じて発生する回生電力であり、一定でなくてもよい。これにより、惰性走行時に補機用モータ47~50の駆動電力Qの少なくとも一部が回生電力で賄われるため、補助発電機40の発電を停止または抑制することができる。
【0033】
ステップS106に続き、コンバータ60の出力電力Pと補機用モータ47~50の駆動電力Qを算出する(ステップS107)。コンバータ60の出力電力Pは、電圧センサ74で検出したコンバータ60の出力電圧と電流センサ75で検出したコンバータ60の出力電流とに基づいて算出される。補機用モータ47~50の駆動電力Qは、補機用インバータ43~46の出力電力を積算することにより求められる。なお、駆動電力Qは補助発電機40の発電電力とほぼ一致するため、補助発電機40の発電電力を駆動電力Qとして算出してもよい。
【0034】
ステップS107に続き、コンバータ60の出力電力Pが補機用モータ47~50の駆動電力Q以下であるか否かを判定する(ステップS108)。ステップS108でYesと判定した場合は、蓄電池90の充電をOFFにし(ステップS109)、当該フローを終了する。これにより、惰性走行時の回生電力は、コンバータ60で降圧された後、補機用モータ47~50の駆動に利用される。
【0035】
ステップS108でNoと判定した場合は、蓄電池90の充電をONにし(ステップS110)、当該フローを終了する。これにより、惰性走行時の回生電力は、コンバータ60で降圧された後、補機用モータ47~50の駆動および蓄電池90の充電に利用される。
【0036】
(まとめ)
本実施例では、エンジン20と、エンジン20によって駆動される主発電機30および補助発電機40と、主発電機30の発電電力を直流電力に変換する主整流器31と、補助発電機40の発電電力を直流電力に変換する補機整流器41と、主整流器31から直流電力が供給される主回路32と、補機整流器41から直流電力が供給される補機回路42と、蓄電池90と、蓄電池90と補機回路42との間で電力の受給を行う充放電制御器91と、走行モータ35,36と、主回路32の直流電力を交流電力に変換して走行モータ35,36に供給する走行用インバータ33,34と、補機用モータ47~50と、補機回路42の直流電力を交流電力に変換して補機用モータ47~50に供給する補機用インバータ43~46と、主回路32の直流電力を降圧して補機回路42に供給するコンバータ60と、走行モータ35,36の増速を指示するアクセルペダル70と、走行モータ35,36の減速を指示するブレーキペダル71と、アクセルペダル70およびブレーキペダル71からの入力信号に応じて、主発電機30、補助発電機40、充放電制御器91、走行用インバータ33,34、補機用インバータ43~46、およびコンバータ60を制御するコントローラ100とを備え、コントローラ100は、ブレーキペダル71が操作された場合に、走行モータ35,36が回生電力を発生させるように走行用インバータ33,34を制御する電気駆動式車両において、車速を検知する車速センサ72を備え、コントローラ100は、アクセルペダル70およびブレーキペダル71のいずれも操作されておらず、かつ前記車速が所定の閾値F以上である状態を惰性走行状態として検知し、前記惰性走行状態を検知した場合の少なくとも一部において、走行モータ35,36が回生電力を発生させるように走行用インバータ33,34を制御し、コンバータ60を作動させ、コンバータ60の出力電力Pおよび補機用モータ47~50の駆動電力Qを算出し、出力電力Pが駆動電力Q以下である場合は、出力電力Pが補機用モータ47~50にのみ供給されるように補機用インバータ43~46および充放電制御器91を制御し、出力電力Pが駆動電力Qより大きい場合は、出力電力Pが補機用モータ47~50と蓄電池90とに供給されるように補機用インバータ43~46および充放電制御器91を制御する。
【0037】
以上のように構成した本実施例によれば、ブレーキペダル71の操作時の他、アクセルペダル70およびブレーキペダル71のいずれも操作されていない惰性走行時に走行モータ35,36で回生電力を発生させ、当該回生電力で補機用モータ47~50の駆動電力Qを賄うとともに、補機用モータ47の駆動電力Qを超える余剰電力を蓄電池90に充電し、蓄電池90に蓄えた電力を後に補機用モータ47~50の駆動に利用することにより、補助発電機40の発電を抑制することができる。その結果、エンジン20の負荷が低減されるため、エンジン20の燃費を向上させることが可能となる。
【0038】
なお、惰性走行時に発生させる回生電力は、補機用モータ47~50の駆動電力(数10kW)相当であり、ブレーキペダル71を踏み込んだ際に発生する回生電力(数1000kW)と比べて非常に小さいため、走行動作に与える影響はほとんど無い。また、回生電力を補機用モータ47~50の駆動電力として直接利用することにより、回生電力を蓄えるための蓄電池を小容量化できる。これにより、ダンプトラックの積載量が確保されるため、運搬効率を低下させることなく生産性を維持できる。
本発明の第2の実施例について、第1の実施例との相違点を中心に説明する。第1の実施例では、走行面の傾斜角に関わらず、惰性走行時に走行モータ35,36が制動力を生じる。ここで、降り傾斜の惰性走行時は、重力が車体の加速方向に作用するため、走行モータ35,36が制動力を生じても走行動作に影響はない。一方、降り傾斜以外の惰性走行時に走行モータ35,36が制動力を生じると、車速が大きく低下するおそれがある。本実施例はこの課題を解決するものである。
ステップS205で車速が閾値F以上である(Yes)と判定した場合は、降り傾斜角θが所定の閾値α(例えば、3°)以上であるか否かを判定する(ステップS206)。降り傾斜角θは、以下の式で求められる。
ここで、前輪荷重Wfは、前輪サスペンションシリンダ9L,9Rの圧力から求められ、前輪荷重Wfは、後輪サスペンションシリンダ10L,10Rの圧力から求められる。
ステップS206でNoと判定した場合はステップS204の処理を実行し、当該フローを終了する。これにより、降り傾斜以外の惰性走行時は、回生電力が発生せず、走行モータ35,36が制動力を生じないため、走行動作への影響を防ぐことが可能となる。
以上のように構成した本実施例によれば、降り斜面以外の(走行抵抗による減速度が大きい)惰性走行時は、回生電力が発生せず、走行モータ35,36が制動力を生じないため、走行動作への影響を防ぐことが可能となる。なお、本実施例では、サスペンション圧力センサ76の出力を用いて降り傾斜角θを算出したが、車体に搭載した傾斜センサの出力を用いて算出してもよい。