(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132832
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】冷媒マニホールド
(51)【国際特許分類】
F02B 29/04 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F02B29/04 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023184407
(22)【出願日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2023040922
(32)【優先日】2023-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 優
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩介
(72)【発明者】
【氏名】牛田 英晴
(72)【発明者】
【氏名】中島 卓也
(57)【要約】
【課題】冷媒経路の形状を単純化することが可能であるとともに、多様な冷媒の流れを実現することが可能な冷媒マニホールドを提供する。
【解決手段】この冷媒マニホールド5は、冷媒が流れる冷媒経路53aと、冷媒経路53aに連通する貫通孔54aを有し、各種の機能デバイスDが接続される複数のデバイス接続部54と、を含むマニホールド本体51を備え、冷媒経路53aは、弧状または直線状に形成されており、3つ以上のデバイス接続部54が設けられている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が流れる冷媒経路と、前記冷媒経路に連通する貫通孔を有し、各種の機能デバイスが接続される複数のデバイス接続部と、を含むマニホールド本体を備え、
前記冷媒経路は、弧状または直線状に形成されており、3つ以上の前記デバイス接続部が設けられている、冷媒マニホールド。
【請求項2】
前記冷媒経路は、前記マニホールド本体の一方表面側から見て、所定の中心点と前記3つ以上のデバイス接続部の各々との間の距離である半径により定められる円弧状に形成されている、請求項1に記載の冷媒マニホールド。
【請求項3】
前記冷媒経路は、前記マニホールド本体の一方表面から窪むように凹状に形成され、
凹状の前記冷媒経路を塞ぐように、前記一方表面側から前記マニホールド本体に取り付けられるプレート部材をさらに備える、請求項1に記載の冷媒マニホールド。
【請求項4】
前記マニホールド本体は、前記一方表面側から見て、前記冷媒経路の外縁に沿って前記冷媒経路の周囲に設けられ、前記一方表面から窪むように凹状に形成された溝部を含み、
前記プレート部材は、前記溝部に対応する形状を有し、前記溝部に嵌め込まれることによって前記マニホールド本体に対して位置決めされた状態で、前記マニホールド本体に取り付けられている、請求項3に記載の冷媒マニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒マニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒マニホールドが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、冷媒が流れる複数の冷媒経路と、冷媒経路に連通しており、冷媒経路に各種のデバイスが接続される接続部とを備えるマニホールドが開示されている。上記接続部は、冷媒経路の一端のみ、または、両端のみに設けられている。すなわち、1つの冷媒経路に設けられる接続部の数は、2つ以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、1つの冷媒経路に設けられる接続部の数が2つ以下であるため、1つの冷媒経路において、1つの接続部から流入した冷媒を複数の接続部から流出させることや、複数の接続部から流入した冷媒を1つの接続部から流出させることなどができない。このため、従来より、1つの冷媒経路において、多様な冷媒の流れを実現することが求められている。また、従来より、冷媒経路の形状を単純化することが求められている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、冷媒経路の形状を単純化することが可能であるとともに、多様な冷媒の流れを実現することが可能な冷媒マニホールドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における冷媒マニホールドは、冷媒が流れる冷媒経路と、冷媒経路に連通する貫通孔を有し、各種の機能デバイスが接続される複数のデバイス接続部と、を含むマニホールド本体を備え、冷媒経路は、弧状または直線状に形成されており、3つ以上のデバイス接続部が設けられている。
【0008】
この発明の一の局面における冷媒マニホールドでは、上記のように、冷媒経路を、弧状または直線状に形成する。これによって、冷媒経路が複数の屈曲部を有するなどの複雑な形状になることを回避することができる。このため、冷媒経路の形状を単純化することができる。このため、冷媒経路の形成時の加工をより容易に行うことができる。また、冷媒経路に3つ以上のデバイス接続部を設ける。これによって、1つのデバイス接続部から流入した冷媒を複数のデバイス接続部から流出させることや、複数のデバイス接続部から流入した冷媒を1つのデバイス接続部から流出させることができるようになる。このため、多様な冷媒の流れを実現することができる。以上の結果、冷媒経路の形状を単純化することができるとともに、多様な冷媒の流れを実現することができる。
【0009】
上記一の局面による金冷媒マニホールドにおいて、好ましくは、冷媒経路は、マニホールド本体の一方表面側から見て、所定の中心点と3つ以上のデバイス接続部の各々との間の距離である半径により定められる円弧状に形成されている。
【0010】
このように構成すれば、冷媒経路を3つ以上のデバイス接続部が接続される円弧状に形成することができるので、冷媒経路の形状をより単純化することができる。また、冷媒経路の加工をより容易に行うことができる。
【0011】
上記一の局面による冷媒マニホールドにおいて、好ましくは、冷媒経路は、マニホールド本体の一方表面から窪むように凹状に形成され、凹状の冷媒経路を塞ぐように、一方表面側からマニホールド本体に取り付けられるプレート部材をさらに備える。
【0012】
このように構成すれば、プレート部材により、冷媒経路となる凹状の部分を塞ぐことができるので、容易に閉空間の冷媒経路の開放部分を製造することができる。
【0013】
この場合、好ましくは、マニホールド本体は、一方表面側から見て、冷媒経路の外縁に沿って冷媒経路の周囲に設けられ、一方表面から窪むように凹状に形成された溝部を含み、プレート部材は、溝部に対応する形状を有し、溝部に嵌め込まれることによってマニホールド本体に対して位置決めされた状態で、マニホールド本体に取り付けられている。
【0014】
このように構成すれば、溝部により、プレート部材をマニホールド本体に容易に取り付けることができる。また、個々の冷媒経路の形状に合わせてプレート部材を形成することができる。このため、冷媒経路の大きさに対して、プレート部材が必要以上に大きくなりすぎることを抑制することができる。したがって、プレート部材の製造に使用する材料を削減することができる。
【0015】
上記一の局面による冷媒マニホールドにおいて、以下のような構成も考えられる。
【0016】
(付記項1)
この発明の冷媒マニホールドは、マニホールド本体の一方表面側から見た冷媒経路の冷媒の流れ方向である長手方向に直交する短手方向において、冷媒経路は、互いに対向する一対の対向面を有し、短手方向における一対の対向面の間の距離は、冷媒経路の長手方向の各位置において、略一定である。
【0017】
このように構成すれば、冷媒が流れる冷媒経路の流路幅の変動を抑制することができるので、流路幅が変動して、冷媒の圧力損失が発生することを抑制することができる。また、冷媒経路が略一定の幅であることにより、冷媒経路の加工をより容易に行うことができる。
【0018】
(付記項2)
この場合、好ましくは、デバイス接続部の貫通孔は、マニホールド本体の他方表面から一方表面に向けた機械加工により、冷媒経路に連通する位置まで形成されることによって、貫通孔の短手方向の幅が、一対の対向面の間の距離よりも大きくなるように構成されている。
【0019】
このように構成すれば、デバイス接続部の貫通孔の機械加工を冷媒経路に連通する位置で止めることができるので、デバイス接続部の貫通孔が冷媒経路を貫くことを回避することができる。
【0020】
(付記項3)
上記冷媒経路が対向する一対の対向面を有する構成において、好ましくは、一方表面側から見て、冷媒経路の長手方向の端部は、一対の対向面を接続する円弧状の円弧面、または、一対の対向面を接続する短手方向に直線状に延びる平坦な直線面により形成されている。
【0021】
このように構成すれば、円弧面、または、直線面の端部により、冷媒経路の形状をより単純化することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上記のように、冷媒経路の形状を単純化することができるとともに、多様な冷媒の流れを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態の金属部材の第1の接合方法により第1金属部材および第2金属部材を接合した金属部材を示した斜視図である。
【
図2】一実施形態の金属部材の第1の接合方法により第1金属部材および第2金属部材を接合した金属部材のうちの接合前の第1金属部材を示した斜視図である。
【
図3】一実施形態の金属部材の第1の接合方法により第1金属部材および第2金属部材を接合した金属部材のうちの接合前の第2金属部材を示した斜視図である。
【
図5】一実施形態の金属部材の第1の接合方法を示したフローチャートである。
【
図6】一実施形態の金属部材の第1の接合方法において第1金属部材および第2金属部材を保持した状態を示した斜視図である。
【
図7】一実施形態の金属部材の第1の接合方法においてレーザ溶接を開始した状態を示した斜視図である。
【
図8】
図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【
図9】一実施形態の金属部材の第1の接合方法においてレーザ溶接が完了した状態を示した斜視図である。
【
図10】一実施形態の第1の接合方法により製造した冷媒マニホールドのマニホールド本体およびマニホールド本体に接続された機能デバイスを示した図である。
【
図11】一実施形態の第1の接合方法により製造した冷媒マニホールドのプレート部材およびマニホールド本体を示した平面図である。
【
図12】一実施形態の第1の接合方法により製造した冷媒マニホールドの互いに接合されたプレート部材およびマニホールド本体を示した平面図である。
【
図13】
図12のXIII-XIII線に沿った断面図である。
【
図14】一実施形態の金属部材の第2の接合方法による接合される第1金属部材および第2金属部材を示した斜視図である。
【
図15】一実施形態の第2の接合方法により製造した冷媒マニホールドのプレート部材およびマニホールド本体を示した平面図である。
【
図16】一実施形態の第2の接合方法により製造した冷媒マニホールドの互いに接合されたプレート部材およびマニホールド本体を示した平面図である。
【
図17】
図16のXVII-XVII線に沿った断面図である。
【
図18】参考例の金属部材の接合方法をバルブボディおよびプレートの接合に適用した適用例を示した斜視図である。
【
図20】参考例の金属部材の接合方法によりバルブボディおよびプレートの接合を完了した状態を示した斜視図である。
【
図22】参考例の金属部材の接合方法の適用例におけるマニホールドの接合方法を示したフローチャートである。
【
図23】一実施形態の第1変形例の金属部材の接合方法においてレーザ溶接を開始した状態を示した斜視図である。
【
図24】一実施形態の第2変形例の金属部材の接合方法においてレーザ溶接を開始した状態を示した斜視図である。
【
図25】一実施形態の第3変形例の金属部材の接合方法においてレーザ溶接を開始した状態を示した斜視図である。
【
図26】一実施形態の第4変形例の冷媒マニホールドのマニホールド本体を示した平面図である。
【
図27】一実施形態の第5変形例の冷媒マニホールドのマニホールド本体を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1~
図17を参照して、実施形態による冷媒マニホールド700について説明する。以下では、冷媒マニホールド700の製造に用いる溶接(第1の接合方法)について説明した後に、冷媒マニホールド700の構成について説明する。
【0026】
(冷媒マニホールドの製造に用いる溶接(第1の接合方法)について)
図1に示すように、金属部材100の接合方法は、第1金属部材1と第2金属部材2とを重ねた状態でレーザL(
図1において二点鎖線で記載)により溶接して、金属部材100に加工するというレーザ溶接についての方法である。レーザ溶接により形成された金属部材100は、第1金属部材1と、第2金属部材2と、溶接部3(溶接ビード)と、非溶接部4とを備えている。第1金属部材1、第2金属部材2、溶接部3および非溶接部4の各々の構成について以下に説明する。
【0027】
ここで、第1金属部材1および第2金属部材2の並ぶ方向をZ方向とし、Z方向のうちの第2金属部材2側をZ1方向とし、Z方向のうちの第1金属部材1側をZ2方向とする。また、第2金属部材2の後述するスリット22の延びる方向をX方向とし、X方向のうちの一方向をX1方向とし、X方向のうちの他方向をX2方向とする。X方向およびZ方向の両方に直交する方向をY方向とし、Y方向のうちの一方向をY1方向とし、Y方向のうちの他方向をY2方向とする。
【0028】
(第1金属部材)
第1金属部材1は、アルミニウムまたは鉄などの金属製の成形品である。
図2に示すように、Z方向において、第1金属部材1は、第2金属部材2の厚みTh2(
図3参照)よりも大きい厚みTh1を有する部材である。なお、
図2では、説明の便宜上、第1金属部材1と第2金属部材2とを溶接する前の状態が示されている。
【0029】
具体的には、第1金属部材1は、底部11と、突出部12と、凹部13とを含んでいる。底部11および突出部12は、一体的に形成されている。
【0030】
底部11は、第1金属部材1の突出部12のZ2方向側の部分を構成している。底部11は、Z方向に厚みTh11を有するとともに、X方向およびY方向に沿って延びる板状の部分である。底部11は、Z1方向側に底面11aを有している。底面11aは、底部11における突出部12以外の部分の面である。
【0031】
突出部12は、第1金属部材1の底部11のZ1方向側の部分を構成している。突出部12は、底部11の底面11aからZ1方向に突出した部分である。すなわち、突出部12は、Z方向において厚みTh12を有している。突出部12は、Z1方向側の端部に先端面12aを有している。先端面12aは、X方向およびY方向に沿って延びる平面である。先端面12aは、第2金属部材2とZ方向において当接する部分である。突出部12は、Z方向に直交する方向において、側面12bを有している。側面12bは、X方向およびZ方向に沿って延びる面である。
【0032】
凹部13は、先端面12aからZ2方向に窪んだ部分である。凹部13は、Z2方向に直交する方向において、突出部12と隣接している。すなわち、凹部13は、底部11の底面11aおよび突出部12の側面12bにより構成されている。凹部13は、第1金属部材1において複数設けられる。
【0033】
(第2金属部材)
図3に示すように、第2金属部材2は、アルミニウムまたは鉄などの金属製の成形品である。Z方向において、第2金属部材2は、第1金属部材1の厚みTh1(
図2参照)よりも小さい厚みTh2を有する板状の部材である。なお、
図3では、説明の便宜上、第1金属部材1と第2金属部材2とを溶接する前の状態が示されている。
【0034】
具体的には、第2金属部材2は、板状部21と、スリット22とを含んでいる。
【0035】
板状部21は、第2金属部材2のスリット22以外の部分を構成している。板状部21は、Z方向に厚みTh2を有するとともに、X方向およびY方向に沿って延びる板状の部分である。板状部21は、Z1方向側に表面21aを有している。表面21aは、X方向およびY方向に沿って延びる平面である。板状部21は、Z2方向側に裏面21bを有している。裏面21bは、X方向およびY方向に沿って延びる平面である。裏面21bのスリット22側の部分は、第1金属部材1の突出部12の先端面12aと当接する部分である。
【0036】
スリット22は、表面21aから第2金属部材2をZ2方向に貫通するとともに、X方向(またはY方向)に延びる長孔である。スリット22は、一対の側面22aと、一対の端面22bとを有している。一対の側面22aは、Y方向において対向している。一対の側面22aの各々は、Y方向およびZ方向に延びる平面である。一対の端面22bは、スリット22の延びる方向における、一方側(X1方向側)の面および他方側(X2方向側)の面である。ここで、一対の側面22aおよび一対の端面22bと、表面21aとは、一対の側面22aおよび一対の端面22bの各々のZ1方向側の端部において連続している。また、一対の側面22aおよび一対の端面22bと、裏面21bとは、一対の側面22aおよび一対の端面22bの各々のZ2方向側の端部において連続している。
【0037】
(溶接部)
図4に示すように、溶接部3は、第1金属部材1および第2金属部材2の各々が溶融凝固されて形成されている。すなわち、溶接部3は、第1金属部材1の先端面12a付近および第2金属部材2の一対の側面22aの各々の付近をレーザL(
図1参照)により溶融させた後、凝固させることにより形成されている。溶接部3は、第1金属部材1と第2金属部材2との接合(溶接)部分である。
【0038】
溶接部3は、第1部分31および第2部分32を含んでいる。第1部分31は、溶接部3のうちの第1金属部材1に設けられた部分である。第1部分31は、Z2方向側に向かうにしたがって幅が小さくなる先細り形状を有している。第2部分32は、溶接部3のうちの第2金属部材2に設けられた部分である。第2部分32は、Z1方向側に向かうにしたがって幅が大きくなる末広がり形状を有している。第1部分31および第2部分32は、一体的に設けられている。Y方向において、第2部分32の最大幅は、第1部分31の最大幅よりも大きい。Y方向において、第1部分31の最大幅は、第2部分32の最小幅と略同じ大きさである。
【0039】
上記したような溶接部3は、
図1に示すように、第1金属部材1の先端面12aと、第2金属部材2の一対の側面22aおよび一対の端面22bと、により囲まれたスリット22内の空間を充填するように配置されている。
【0040】
(非溶接部)
非溶接部4は、スリット22内の空間のうちの溶接部3が充填されない部分である。すなわち、非溶接部4は、第1金属部材1および第2金属部材2の各々が溶融凝固されなかった空間部分である。非溶接部4は、第1金属部材1と第2金属部材2とを接合(溶接)していない部分である。非溶接部4は、一対の端面22bのX1方向側の端面22bと溶接部3との間に設けられている。非溶接部4は、金属部材100外の空間と連通する空間である。なお、非溶接部4は、1つではなく、スリット22内の空間において複数設けられていてもよい。
【0041】
(金属部材の接合方法)
以下に、
図5~
図9を参照して、実施形態の金属部材100の接合方法について説明する。金属部材100の接合方法は、第1金属部材1と第2金属部材2とを接合する際、レーザLにより第1金属部材1と第2金属部材2とを溶融させた部分(溶融金属)への、第1金属部材1にレーザLを照射することにより生じる金属蒸気の侵入を抑制することが可能な接合方法である。
【0042】
ステップS1において、第1金属部材1および第2金属部材2を重ね合わせた状態で、保持する(
図6参照)。ステップS1は、第1金属部材1における、X方向およびY方向に沿った先端面12aに対して、先端面12aの一部が露出するように、第2金属部材2におけるZ2方向に沿った側面22aのZ2方向側の端部を当接するステップである。ここで、第1金属部材1における先端面12aの一部は、スリット22により露出されている。すなわち、露出した部分は、先端面12aのY方向における中央側部分である。また、第1金属部材1における先端面12aの一部は、スリット22を介して、Z1方向、X1方向およびX2方向の各々に金属部材100外の空間に接している。
【0043】
ステップS2において、レーザLの調整が行われる。すなわち、ステップS2は、対向する一対の側面22a間の間隔M(たとえば、約1mm、または、それ以下)よりも小さいスポット径(たとえば、約0.1mm)にレーザLを調整するとともに、焦点位置、レーザLの傾き、レーザLの出力、および、加工方向などが調整される。
【0044】
ステップS3において、スリット22に沿ってレーザLによる溶接が開始される。すなわち、ステップS3は、第1金属部材1の先端面12aの露出した部分、および、第2金属部材2の端側表面部分211aの各々に向かってレーザLを照射することにより、第1金属部材1と第2金属部材2とを互いに溶接して接合するステップである。
【0045】
端側表面部分211aは、第2金属部材2の側面22aのZ2方向側の端部と連続する表面21aのうちの側面22a側の表面である。第2金属部材2の端側表面部分211aは、スリット22のY1方向側の側面22aに連続する部分、および、スリット22のY2方向側の側面22aに連続する部分の各々に設けられている。
【0046】
具体的には、ステップS3は、Z2方向(照射方向)に向かって照射されたレーザLに対して、保持した第1金属部材1および第2金属部材2を相対的にX1方向(X2方向、Y1方向またはY2方向)に移動させながら、調整されたレーザLを、第1金属部材1の先端面12aの露出した部分、および、第2金属部材2の端側表面部分211aの各々に向かって照射するステップである(
図7参照)。
【0047】
ここで、レーザ溶接は、Z1方向側から見て、Z方向に平行な回転軸線回りを円軌道を描いてレーザLを回転移動(旋回)させながら、保持した第1金属部材1および第2金属部材2をレーザLに対して相対的にX1方向(X2方向、Y1方向またはY2方向)に直線移動させることにより、加工(溶接)を行うウォブル加工により行われる(
図7参照)。レーザLが回転移動する円軌道の直径は、対向する一対の側面22a間の間隔Mよりも大きい(たとえば、約3mmなど)ように調整される。そして、端側表面部分211aの面積は、レーザLの回転の直径に合わせて設定される。なお、レーザLが回転移動する円軌道の直径は、間隔Mの2倍以上であることが好ましい。
【0048】
これにより、一対の側面22a間の間隔Mよりも小さいスポット径のレーザLにより、第2金属部材2の端側表面部分211aを溶融させながら、第1金属部材1の先端面12aの露出した部分を溶融させることが可能である。また、端側表面部分211aを比較的広く設定することにより、スリット22の体積の分だけ減少する溶融金属を補うことができるので、溶接部3のZ方向の厚みを確保することができる。これにより、溶接部3の機械的強度を確保することが可能である。
【0049】
このように、ステップS3は、第1金属部材1の先端面12aの露出した部分、および、第2金属部材2の端側表面部分211aの各々に向かってレーザLを照射するステップである。
【0050】
また、ステップS3は、レーザLにより、先端面12aの露出した部分、および、第2金属部材2における一対の側面22aの各々に対応する端側表面部分211aの両方を溶融させつつ、先端面12aの露出した部分と一対の側面22aとに囲まれて構成された空間(スリット22)に溶融させた金属を充填させるステップでもある(
図8参照)。また、ステップS3は、第1金属部材1の突出部12において、充填させた溶融金属が凝固することにより溶接部3をZ1方向側に形成するとともに、溶接部3のZ2方向側の部分は、レーザLにより溶融させない。したがって、ステップS3では、第1金属部材1の突出部12においてレーザLが貫通しない。ステップS3は、スリット22の延びる方向(X1方向)に沿って連続的に上記したようなレーザ溶接を行うステップである。
【0051】
この際、レーザLが第1金属部材1における先端面12aの露出した部分に照射されることにより生じた金属蒸気は、スリット22内の空間において、溶融させた金属が充填された充填部分30ではない排出空間Spから外部空間Exに排出される。排出空間Spは、外部空間Exに連通する空間である。すなわち、レーザLが第1金属部材1における先端面12aの露出した部分に照射されることにより生じた金属蒸気は、たとえば、Va1方向およびVa2方向などの各々に向かって、排出空間Spを介して排出される。なお、レーザLが第2金属部材2における端側表面部分211aに照射されることにより生じた金属蒸気は、直接外部空間Exに排出される。
【0052】
このような、排出空間Spは、レーザLによる溶接に伴って、スリット22内の空間において充填部分30の割合が増加したとしても、スリット22内に必ず設けられているので、レーザLによる溶接開始から終了までの間、金属蒸気を外部空間Exに排出させることが可能な空間である。排出空間Spは、充填部分30のX1方向側の面と、一対の側面22aおよび先端面12aにより形成される空間である。
【0053】
ここで、ステップS3において、レーザLによる溶接は、スリット22のX2方向側の端部から開始されているので、スリット22のX2方向側の端部に溶接部3が形成されている。
【0054】
ステップS4において、スリット22のX1方向側の所定位置までレーザLによる溶接が完了した場合には、スリット22に沿ったレーザLによる溶接が終了する。ここで、ステップS4では、レーザLによる溶接は、スリット22のX1方向側の端部で終了していないので、スリット22のX1方向側の端部に非溶接部4が形成されている。また、ステップS4では、充填部分30の溶融された金属が、冷却されて凝固することにより、溶接部3が形成されている。
【0055】
ステップS4の後、金属部材100の接合方法は終了する。
【0056】
(第1の接合方法を用いて製造される冷媒マニホールドの構成について)
図10~
図13を参照して、上記説明した第1の接合方法の溶接によって製造される冷媒マニホールド5の構成について説明する。
【0057】
図10に示す冷媒マニホールド5は、冷却に利用される各種の機能デバイスDが接続されており、冷媒を流す複数の冷媒経路53a~53dを有している。要するに、冷媒マニホールド5は、冷却回路の中で各種の機能デバイスDに冷媒を分配する経路としての機能を有している。一例ではあるが、冷媒マニホールド5の冷却対象は、車両に用いられる電気モータ、各種の電装品、および、エンジンなどである。機能デバイスDは、水冷コンデンサD1、圧力センサD2、圧力センサD3、膨張弁D4、膨張弁D5、チラーD6およびエバポレータD7などを含んでいる。
【0058】
冷媒マニホールド5は、マニホールド本体51と、プレート部材52とを備えている。なお、マニホールド本体51が、上記の第1金属部材1に相当する。また、プレート部材52が、上記の第2金属部材2に相当する。
【0059】
マニホールド本体51は、Z方向を厚み方向とする部材である。マニホールド本体51は、冷媒が流れる冷媒経路53a~53dと、各種の機能デバイスDが接続される複数のデバイス接続部54とを含んでいる。
【0060】
図11に示すように、プレート部材52は、凹状の冷媒経路53a~53dを塞ぐように、一方表面51a側からマニホールド本体51に取り付けられるように構成されている。プレート部材52は、1つの板部材であり、1つの板部材によって冷媒経路53a~53dを塞ぐように構成されている。プレート部材52には、冷媒経路53a~53dの各々の外縁531に沿って延びるスリット22が設けられている。スリット22は、一方表面51a側(Z1方向側)から見て、冷媒経路53a~53dと重なることはない。スリット22は、1つの冷媒経路53a(53b、53c、53d)に対して複数設けられている。マニホールド本体51にプレート部材52が取り付けられた際に、スリット22を介して、マニホールド本体51の一方表面51a(Z1方向側の表面)が露出する。一方表面51aが、上記の先端面12aに相当する。
【0061】
図11~
図13に示すように、デバイス接続部54は、冷媒経路53a~53dに連通する貫通孔54aを有している。貫通孔54aは、マニホールド本体51の他方表面51bから一方表面51aに向けた機械加工(孔あけを含むドリル加工など)により、冷媒経路53a~53dに連通する位置まで形成されることによって、貫通孔54aの短手方向の幅W1(
図13参照)が、一対の対向面55aの間の距離W2よりも大きくなるように構成されている。すなわち、貫通孔54aを形成する機械加工は、他方表面51b側から開始されて一方表面51aまで行われることはなく、他方表面51bと一方表面51aとの間の途中位置で停止される。なお、途中位置とは、貫通孔54aと冷媒経路53a~53dとが連通する位置である。一例ではあるが、貫通孔54aの機械加工には、冷媒経路53a~53dの幅(距離W2)よりも大きな直径のドリル工具が使用される。貫通孔54aの機械加工は、各冷媒経路53a~53dを基準として行われる。
【0062】
冷媒マニホールド5には、冷媒経路53a~53dの4つの経路が設けられている。冷媒経路53a~53dの各々は、厚み方向(Z方向)に直交する方向に延びている。すなわち、冷媒経路53a~53dの各々の冷媒流れ方向は、厚み方向(Z方向)に直交する方向である。冷媒経路53a~53dは、マニホールド本体51の一方表面51a(Z1方向側の表面)側から窪むように凹状に形成されている。
【0063】
マニホールド本体51の一方表面51a側(Z1方向側)から見た冷媒経路53a~53dの冷媒の流れ方向である長手方向(A1方向)に直交する短手方向(A2方向)において、冷媒経路53a~53dは、互いに対向する一対の対向面55aを有している。また、冷媒経路53a~53dは、Z方向に直交する方向に延びており、一対の対向面55aを接続する底面55bを有している。短手方向における一対の対向面55aの間の距離W2は、冷媒経路53a~53dの長手方向の各位置において、略一定である。
【0064】
冷媒経路53aは、弧状または直線状に形成されており、3つ以上のデバイス接続部54が設けられている。
【0065】
詳細には、冷媒経路53aは、マニホールド本体51の一方表面51a側(Z1方向側)から見て、所定の中心点Pと3つ以上のデバイス接続部54の各々との間の距離である半径Rにより定められる円弧状に形成されている。具体的な一例ではあるが、冷媒経路53aには、4つのデバイス接続部54が設けられている。冷媒経路53aは、所定の中心点Pの周りの30度以上で、かつ、90度以下の角度範囲に設けられた円弧である。なお、冷媒経路の角度範囲は、上記の範囲に限られない。冷媒経路53aに接続されている4つのデバイス接続部54は、略等角度間隔で離間して配置されている。なお、半径Rは、所定の中心点Pから、一対の対向面55aの中間位置Cまでの距離である。
【0066】
また、一方表面51a側(Z1方向側)から見て、冷媒経路53a~53dの長手方向の端部は、一対の対向面55aを接続する円弧状の円弧面55c、または、一対の対向面55aを接続する短手方向に直線状に延びる平坦な直線面55dにより形成されている。冷媒経路53aの長手方向の両端部は、一対の対向面55aを接続する円弧状の円弧面55cにより形成されている。一例ではあるが、円弧面55cの直径は、一対の対向面55aの間の距離W2と略同じ大きさである。また、円弧面55cは、約180度の中心角を有している。
【0067】
本実施形態では、冷媒マニホールド(5、5a)の製造に用いられる溶接が、上記のプレート部材52のスリット22を介してマニホールド本体51を積極的に露出させて行われる溶接に限られることはない。
【0068】
図14~
図17を参照して、以下では、冷媒マニホールド5aの製造に用いる上記説明した溶接(第1の接合方法)とは異なる方法の溶接(第2の接合方法)について説明した後に、この異なる方法の溶接により製造される冷媒マニホールド5aの構成について説明する。
【0069】
(冷媒マニホールドの製造に用いる溶接(第2の接合方法)について)
図14に示すように、第2の接合方法では、溶接は、第1金属部材1aの端面と、第2金属部材2aの端面とを突き合わせた状態で第1金属部材1aの端面と、第2金属部材2aの端面とにレーザLを照射することにより行われる。なお、レーザLを照射する際に、第1金属部材1aと第2金属部材2aとは僅かに離間していてもよい。
【0070】
第1金属部材1aおよび第2金属部材2aは、Z方向を厚み方向とするプレート状の部材である。第2金属部材2aは、第1金属部材1aよりも薄肉に形成されている。第1金属部材1aには、第2金属部材2aが嵌め込まれる溝部6が設けられている。溝部6のZ方向の大きさと、第2金属部材2aのZ方向の大きさとは、略同じである。
【0071】
溶接には、Z1方向側から照射されるレーザLが用いられる。溶接は、レーザL(図示しないレーザ照射装置)を第1金属部材1aと第2金属部材2aとの突き合わせ面F(対向して隣接する面)に沿って、Z方向に直交する方向に移動させることにより行われる。
【0072】
(第2の接合方法を用いて製造される冷媒マニホールドの構成について)
図15~
図17を参照して、上記説明した第2の接合方法の溶接によって製造される冷媒マニホールド5aの構成について説明する。
【0073】
冷媒マニホールド5aは、概して、上記冷媒マニホールド5と同様の構成を有している。同様の構成としては、冷媒マニホールド5aは、冷媒経路53aを有している。冷媒マニホールド5aの冷媒経路53aは、弧状または直線状に形成されており、3つ以上のデバイス接続部54が設けられている。詳細には、冷媒経路53aは、マニホールド本体510の一方表面51a側(Z1方向側)から見て、所定の中心点Pと3つ以上のデバイス接続部54の各々との間の距離である半径Rにより定められる円弧状に形成されている。
【0074】
冷媒マニホールド5aは、マニホールド本体510が溝部6を含んでいる点と、プレート部材52aの数および形状が異なる点とを除いて、上記冷媒マニホールド5と同様の構成を備えている。以下では、上記冷媒マニホールド5とは異なる冷媒マニホールド5aの構成について説明する。
【0075】
冷媒マニホールド5aは、単一のマニホールド本体510と、プレート部材520a~520dとを備えている。マニホールド本体510が、上記の第1金属部材1aに相当する。プレート部材520a~520dが、上記の第2金属部材2aに相当する。
【0076】
マニホールド本体510は、溝部6を含んでいる。溝部6は、一方表面51a側から見て、冷媒経路53a~53dの外縁531に沿って冷媒経路53a~53dの周囲に設けられ、一方表面51aから窪むように凹状に形成されている。溝部6は、一方表面51a側(Z1方向側)から見て、略一定の幅を有している。すなわち、溝部6は、一方表面51a側(Z1方向側)から見て、外縁531を外側にオフセットしたような形状である。溝部6の幅は、冷媒経路53a~53dの幅(距離W2)よりも小さい。また、Z方向において、溝部6の一方表面51aからの深さは、冷媒経路53a~53dの一方表面51aからの深さよりも小さい。
【0077】
プレート部材520a~520dは、それぞれ、冷媒経路53a~53dの溝部6に対応する形状を有し、溝部6に嵌め込まれることによってマニホールド本体510に対して位置決めされた状態で、マニホールド本体510に取り付けられている。プレート部材520a~520dは、それぞれ、冷媒経路53a~53dに対して、圧入にはならないすきまばめ程度の大きさを有している。プレート部材520a~520dは、溶接によって、マニホールド本体510に取り付けられる。したがって、プレート部材520a~520dをマニホールド本体510に溶接する際のプレート部材520a~520dの位置決めが不要となる。なお、溝部6は、マニホールド本体510にプレート部材520a~520dを組み付けて、溶接が行われる前の状態で、溝部6の底面(Z方向に直交する面)の少なくとも一部が、僅かにZ1方向側に露出するように構成されている。
【0078】
溝部6のZ方向に延びる環状の側面61(
図15参照)と、プレート部材520a~520dのZ方向に延びる環状の側面520とが、上記の突き合わせ面F(
図14参照)に相当する。したがって、冷媒マニホールド5aは、一方表面51a側から見て、冷媒経路53a~53dの各々を取り囲む環状の溶接部3を有する。したがって、冷媒マニホールド5aは、冷媒経路53a~53dの全周で溶接することができるので、プレート部材520a~520dをマニホールド本体510に対して強固に固定することができるとともに、冷媒経路53a~53dの高いシール性を確保することができる。
【0079】
一例ではあるが、溝部6の機械加工には、フラットエンドミルを、冷媒経路53a~53dに沿うように設定した所定のパスで移動させるマシンングセンターなどが使用される。溝部6の機械加工は、貫通孔54aの位置が考慮されることなく、各冷媒経路53a~53dを基準として行われる。
【0080】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0081】
本実施形態では、上記のように、冷媒経路53aを、弧状または直線状に形成する。これによって、冷媒経路53aが複数の屈曲部を有するなどの複雑な形状になることを回避することができる。このため、冷媒経路53aの形状を単純化することができる。このため、冷媒経路53aの形成時の加工をより容易に行うことができる。また、冷媒経路53aに3つ以上のデバイス接続部54を設ける。これによって、1つのデバイス接続部54から流入した冷媒を複数のデバイス接続部54から流出させることや、複数のデバイス接続部54から流入した冷媒を1つのデバイス接続部54から流出させることができるようになる。このため、多様な冷媒の流れを実現することができる。以上の結果、冷媒経路53aの形状を単純化することができるとともに、多様な冷媒の流れを実現することができる。
【0082】
本実施形態では、上記のように、冷媒経路53aは、マニホールド本体51(510)の一方表面51a側から見て、所定の中心点Pと3つ以上のデバイス接続部54の各々との間の距離である半径Rにより定められる円弧状に形成されている。これによって、冷媒経路53aを3つ以上のデバイス接続部54が接続される円弧状に形成することができるので、冷媒経路53aの形状をより単純化することができる。また、冷媒経路53aの加工をより容易に行うことができる。
【0083】
本実施形態では、上記のように、冷媒経路53aは、マニホールド本体51(510)の一方表面51aから窪むように凹状に形成され、凹状の冷媒経路53aを塞ぐように、一方表面51a側からマニホールド本体51(510)に取り付けられるプレート部材52をさらに備える。これによって、プレート部材52により、冷媒経路53aとなる凹状の部分を塞ぐことができるので、容易に閉空間の冷媒経路53aの開放部分を製造することができる。
【0084】
本実施形態では、上記のように、マニホールド本体51(510)は、一方表面51a側から見て、冷媒経路53aの外縁531に沿って冷媒経路53aの周囲に設けられ、一方表面51aから窪むように凹状に形成された溝部6を含み、プレート部材52は、溝部6に対応する形状を有し、溝部6に嵌め込まれることによってマニホールド本体51(510)に対して位置決めされた状態で、マニホールド本体51(510)に取り付けられている。これによって、溝部6により、プレート部材52をマニホールド本体51(510)に容易に取り付けることができる。また、個々の冷媒経路53aの形状に合わせてプレート部材52を形成することができる。このため、冷媒経路53aの大きさに対して、プレート部材52が必要以上に大きくなりすぎることを抑制することができる。したがって、プレート部材52の製造に使用する材料を削減することができる。
【0085】
本実施形態では、上記のように、マニホールド本体51(510)の一方表面51a側から見た冷媒経路53aの冷媒の流れ方向である長手方向(A1方向)に直交する短手方向(A2方向)において、冷媒経路53aは、互いに対向する一対の対向面55aを有し、短手方向における一対の対向面55aの間の距離W2は、冷媒経路53aの長手方向の各位置において、略一定である。これによって、冷媒が流れる冷媒経路53aの流路幅の変動を抑制することができるので、流路幅が変動して、冷媒の圧力損失が発生することを抑制することができる。また、冷媒経路53aが略一定の幅であることにより、冷媒経路53aの加工をより容易に行うことができる。
【0086】
本実施形態では、上記のように、デバイス接続部54の貫通孔54aは、マニホールド本体51(510)の他方表面51bから一方表面51aに向けた機械加工により、冷媒経路53aに連通する位置まで形成されることによって、貫通孔54aの短手方向の幅W1が、一対の対向面55aの間の距離W2よりも大きくなるように構成されている。これによって、デバイス接続部54の貫通孔54aの機械加工を冷媒経路53aに連通する位置で止めることができるので、デバイス接続部54の貫通孔54aが冷媒経路53aを貫くことを回避することができる。
【0087】
本実施形態では、上記のように、一方表面51a側から見て、冷媒経路53aの長手方向の端部は、一対の対向面55aを接続する円弧状の円弧面55c、または、一対の対向面55aを接続する短手方向に直線状に延びる平坦な直線面55dにより形成されている。これによって、円弧面55c、または、直線面55dの端部により、冷媒経路53aの形状をより単純化することができる。
【0088】
[参考例(想定される適用例)]
ここで、参考例として、金属部材100の接合方法(
図5参照)は、
図18に示すように、自動車などの車両に搭載されるマニホールド200に対する加工に適用することについて説明する。マニホールド200は、車両用の冷却システムに含まれる、圧縮機300、エバポレータ400、水冷コンデンサ500およびアキュムレータ600を互いに接続する冷媒回路(流路200a)を含んでいる。マニホールド200は、上記した金属部材100に対応する部材である。このような、参考例である適用例について、
図18~
図22を参照して説明する。なお、想定される適用例において、上記実施形態と同様の構成に関しては、同じ符号を付して説明を省略する。
【0089】
図18に示すように、金属部材100の接合方法は、マニホールド200におけるバルブボディ201とプレート202との接合、および、マニホールド200内の冷媒が流れる流路200a(
図21参照)をシールするために行われる。バルブボディ201は、上記した第1金属部材1に対応する部材である。プレート202は、上記した第2金属部材2に対応する部材である。
【0090】
金属部材100の接合方法は、バルブボディ201とプレート202とを重ねた状態でレーザLにより溶接して、マニホールド200に加工するというレーザ溶接についての方法である。レーザ溶接により形成されたマニホールド200は、バルブボディ201と、プレート202と、溶接部3(
図20参照)と、非溶接部4(
図20参照)とを備えている。バルブボディ201、プレート202、溶接部3および非溶接部4の各々の構成について説明する。
【0091】
ここで、バルブボディ201およびプレート202の並ぶ方向をZ方向とし、Z方向のうちのバルブボディ201側をZ1方向とし、Z方向のうちのプレート202側をZ2方向とする。また、プレート202の後述するスリット22の延びる方向をX方向とし、X方向のうちの一方向をX1方向とし、X方向のうちの他方向をX2方向とする。X方向およびZ方向の両方に直交する方向をY方向とし、Y方向のうちの一方向をY1方向とし、Y方向のうちの他方向をY2方向とする。
【0092】
(バルブボディ)
図18に示すように、バルブボディ201は、アルミニウム製の金型による成形品(ダイカスト成形品)である。
図19に示すように、Z方向において、バルブボディ201は、プレート202の厚みTh2よりも大きい厚みTh1を有する部材である。ダイカスト成形品の表面は比較的荒く加工されており、レーザLにより金属蒸気が発生し易いが、金属部材100の接合方法(
図5参照)により効果的に金属蒸気を外部空間Ex(
図8参照)に排出することが可能である。なお、
図18および
図19では、説明の便宜上、バルブボディ201とプレート202とを溶接する前の状態が示されている。
【0093】
具体的には、
図19に示すように、バルブボディ201は、底部11と、突出部12と、凹部13とを含んでいる。底部11および突出部12は、一体的に形成されている。ここで、バルブボディ201の凹部13をプレート202におけるスリット22以外の部分で覆うことにより、冷媒(流体)が流れる流路200aが形成されている。
【0094】
底部11は、バルブボディ201の突出部12のZ2方向側の部分を構成している。底部11は、Z方向に厚みTh11を有している。突出部12は、バルブボディ201の底部11のZ1方向側の部分を構成している。突出部12は、底部11の底面11aからZ1方向に突出した部分である。すなわち、突出部12は、Z方向において厚みTh12を有している。突出部12は、Z1方向側の端部に先端面12aを有している。
【0095】
凹部13は、先端面12aからZ2方向に窪んだ部分である。凹部13は、バルブボディ201において複数設けられる。
【0096】
(プレート)
図19に示すように、プレート202は、アルミニウム製の成形品である。具体的には、プレート202は、板状部21と、スリット22とを含んでいる。
【0097】
板状部21は、プレート202のスリット22以外の部分を構成している。板状部21は、Z方向に厚みTh2を有するとともに、X方向およびY方向に沿って延びる板状の部分である。板状部21は、Z1方向側に表面21aを有している。表面21aは、X方向およびY方向に沿って延びる平面である。
【0098】
スリット22は、表面21aからプレート202をZ2方向に貫通するとともに、X方向(またはY方向)に延びる長孔である。スリット22は、一対の側面22aと、一対の端面22b(
図3参照)とを有している。
【0099】
(溶接部)
図20および
図21に示すように、溶接部3は、バルブボディ201およびプレート202の各々が溶融凝固されて形成されている。すなわち、溶接部3は、バルブボディ201の先端面12a付近およびプレート202の一対の側面22aの各々の付近をレーザL(
図1参照)により溶融させた後、凝固させることにより形成されている。溶接部3は、バルブボディ201とプレート202との接合(溶接)部分である。また、溶接部3は、バルブボディ201とプレート202とを互いに溶接して接合することによって、流路200aをシールする部分である。
【0100】
溶接部3は、第1部分31および第2部分32を含んでいる。第1部分31は、溶接部3のバルブボディ201に設けられた部分である。第1部分31は、Z2方向側に向かうにしたがって幅が小さくなる先細り形状を有している。第2部分32は、溶接部3のプレート202に設けられた部分である。第2部分32は、Z1方向側に向かうにしたがって幅が大きくなる末広がり形状を有している。第1部分31および第2部分32は、Z方向において、一体的に設けられている。
【0101】
(非溶接部)
図20に示すように、非溶接部4は、スリット22内の空間のうちの溶接部3が充填されない部分である。すなわち、非溶接部4は、バルブボディ201およびプレート202の各々が溶融凝固されなかった空間部分である。非溶接部4は、バルブボディ201とプレート202とを接合(溶接)していない部分である。非溶接部4は、マニホールド200外の空間と連通する空間である。
【0102】
(マニホールド(金属部材)の接合方法)
以下に、
図22を参照して、適用例のマニホールド200の接合方法について説明する。マニホールド200の接合方法は、バルブボディ201とプレート202とを接合する際、レーザLによりバルブボディ201とプレート202とを溶融させた部分(溶融金属)への、プレート202にレーザLを照射することにより生じる金属蒸気の侵入を抑制することが可能な接合方法である。なお、ステップS2およびステップS4は、上記した、金属部材100の接合方法と同じ説明なので、説明を省略する。
【0103】
ステップS201において、バルブボディ201およびプレート202を重ね合わせた状態で、保持する(
図19参照)。ステップS201は、バルブボディ201における、X方向およびY方向に沿った先端面12aに対して、先端面12aの一部が露出するように、プレート202におけるX方向に沿った側面22aのX1側の端部を当接するステップである。ここで、バルブボディ201における先端面12aの一部は、スリット22により露出されている。すなわち、バルブボディ201における先端面12aの一部は、スリット22を介して、Z1方向、X1方向およびX2方向の各々にマニホールド200外の空間に接している。
【0104】
また、ステップS201は、バルブボディ201の凹部13をプレート202におけるスリット22以外の部分で覆うことにより、冷媒(流体)が流れる流路200aを形成するステップである。
【0105】
ステップS203において、スリット22に沿ってレーザLによる溶接が開始される。すなわち、ステップS3は、バルブボディ201の先端面12aの露出した部分、および、プレート202の端側表面部分211aの各々に向かってレーザLを照射することにより、バルブボディ201とプレート202とを互いに溶接して接合するステップである。
【0106】
また、ステップS203は、レーザLにより、バルブボディ201とプレート202とを互いに溶接して接合することによって、流路200aをシールするステップである(
図21参照)。
【0107】
ステップS4の後、マニホールド200の接合方法は終了する。
【0108】
[変形例]
今回開示された上記実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0109】
たとえば、上記実施形態では、金属部材100の接合方法は、マニホールド200に対する加工に適用されることが想定されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、金属部材の接合方法は、車両におけるマニホールド以外の金属部材の接合、ジェネレータにおける金属部材の接合、または、車両以外の製品における金属部材の接合に適用されてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、ステップS3は、第1金属部材1の先端面12aの露出した部分、および、第2金属部材2のスリット22の周りの端側表面部分211aの各々に向かってレーザLを照射することにより、第1金属部材1と第2金属部材2とを互いに溶接して接合するステップである例を示したが、本発明はこれに限られない。溶接して接合するステップは、
図23に示す第1変形例のように、第1金属部材701の先端面712aの露出した部分、および、第2金属部材702の端部の周りの端側表面部分721aの各々に向かってレーザLを照射することにより、第1金属部材701と第2金属部材702とを互いに溶接して接合するステップであってもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、レーザ溶接は、Z方向に平行な回転軸線回りを円軌道を描いてレーザLを回転移動(旋回)させながら、保持した第1金属部材1および第2金属部材2を相対的にX1方向(X2方向、Y1方向またはY2方向)に移動させることにより、加工(溶接)を行うウォブル加工により行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。
【0112】
本発明では、
図24に示す第2変形例のように、レーザ溶接は、レーザ照射範囲を対向する一対の側面22a間の間隔Mよりも大きくするために、Y方向にレーザL1およびレーザL2を並べるとともに、レーザL1およびレーザL2のX2方向側にレーザL3およびレーザL4を並べて金属部材800の溶接を行ってもよい。この場合、レーザ溶接は、レーザL1、レーザL2、レーザL3およびレーザL4をスリット22の延びる方向に沿って直線的に移動させることにより、第2金属部材2の端側表面部分211aを溶融させながら、第1金属部材1の先端面12aの露出した部分を溶融させる。また、
図25に示す第3変形例のように、レーザ溶接は、レーザ照射範囲を対向する一対の側面22a間の間隔Mよりも大きくするために、スリット22のY方向における中心位置に配置された直線状のレーザLc、および、レーザLcと同軸状にレーザLcよりも照射範囲が広いリング状のレーザLrにより金属部材900の溶接を行ってもよい。この場合、レーザ溶接は、レーザLcおよびレーザLrをスリット22の延びる方向に沿って直線的に移動させることにより、第2金属部材2の端側表面部分211aを溶融させながら、第1金属部材1の先端面12aの露出した部分を溶融させる。
【0113】
また、上記実施形態では、冷媒マニホールド5の3つ以上のデバイス接続部54が設けられた冷媒経路53aを円弧状に形成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図26に示す第4変形例の冷媒マニホールド5bの3つ以上のデバイス接続部54が設けられた冷媒経路153aを直線状に形成してもよい。なお、3つ以上のデバイス接続部が設けられた冷媒経路は、弧状であれば円弧状ではなくてもよい。
【0114】
また、上記実施形態では、冷媒マニホールド5の円弧状の冷媒経路53aに、4つのデバイス接続部54を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図27に示す第5変形例の冷媒マニホールド5cのように、冷媒マニホールド5cの円弧状の冷媒経路253aに、3つのデバイス接続部54を設けてもよい。また、図示しないが、弧状または直線状の冷媒経路に、5つ以上のデバイス接続部を設けてもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、一対の側面22aは、Y方向およびZ方向に延びる平面である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、一対の側面の各々は、Z1方向側の端部に面取りが行われてもよい。これにより、第2金属部材の厚みが小さくなるので、第1金属部材上に溶融する第2金属部材の量が減少するので、レーザが照射されたことにより第1金属部材から発生した金属蒸気が、溶融した第2金属部材により排出されにくくならないようにすることができる。
【0116】
また、上記実施形態では、第2金属部材2は、スリット22を含んでいる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2金属部材は、2つの部材に分割されて、一方の部材と他方の部材との間に第1金属部材の第1表面を露出させる溝を形成してもよい。また、第2金属部材は、断続的に照射されるレーザの照射位置に合わせて形成された貫通孔を有していてもよい。この場合、レーザは、貫通孔により露出された第1表面に照射される。
【0117】
また、上記実施形態では、金属部材100の接合方法は、第1金属部材1と第2金属部材2とを重ねた状態でレーザLにより溶接する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、金属部材の接合方法は、第1金属部材と第2金属部材とを重ねた状態で電子ビーム(エネルギービームの一例)により溶接してもよい。
【符号の説明】
【0118】
5、5a、5b、5c 冷媒マニホールド、6 溝部、51、510 マニホールド本体、51a 一方表面、52、520a プレート部材、53a、153a、253a 冷媒経路、54a 貫通穴、54 デバイス接続部、531 (冷媒経路の)外縁、D 機能デバイス、P 所定の中心点、R 半径