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特開2024-132843テンション要素および耐荷重システム
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  • 特開-テンション要素および耐荷重システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132843
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】テンション要素および耐荷重システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/06 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B66B7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201341
(22)【出願日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】18/185,333
(32)【優先日】2023-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Otis Elevator Company
【住所又は居所原語表記】One Carrier Place,Farmington,Connecticut,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100140361
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 幸二
(72)【発明者】
【氏名】ブラッド ギラニ
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305BB02
3F305BB14
(57)【要約】
【課題】 改良されたテンション要素および耐荷重システムを提供する。
【解決手段】 エレベーターシステムの耐荷重部材に使用するためのテンション要素は、複数の第一ワイヤを有する第一層、及び複数の第二ワイヤを有する第二層を含む。第二層は、第一層の半径方向外向きに位置決めされ、第一層を包囲する。第一層は第一敷設方向を有し、第二層は第二敷設方向を有する。第二敷設方向は、第一敷設方向と反対である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターシステムの耐荷重部材に使用するためのテンション要素であって、
複数の第一ワイヤを有する第一層であって、第一敷設方向を有する、前記第一層と、
複数の第二ワイヤを有する第二層であって、前記第二層は前記第一層の半径方向外向きに位置決めされ、前記第一層を包囲し、前記第二層は第二敷設方向を有し、前記第二敷設方向は前記第一敷設方向と反対である、前記第二層と、
を含む、テンション要素。
【請求項2】
前記第一敷設方向は反時計回りであり、前記第二敷設方向は時計回りである、請求項1に記載のテンション要素。
【請求項3】
前記第一敷設方向は時計回りであり、前記第二敷設方向は反時計回りである、請求項1に記載のテンション要素。
【請求項4】
前記複数の第一ワイヤを被包するコーティング層をさらに含む、請求項1に記載のテンション要素。
【請求項5】
前記複数の第二ワイヤは、前記複数の第一ワイヤよりも多い、請求項1に記載のテンション要素。
【請求項6】
前記複数の第二ワイヤは、前記複数の第一ワイヤよりも少ない、請求項1に記載のテンション要素。
【請求項7】
前記複数の第一ワイヤは第一直径を有し、前記複数の第二ワイヤは第二直径を有し、前記第二直径は前記第一直径とは異なる、請求項1に記載のテンション要素。
【請求項8】
前記第二直径は、前記第一直径よりも大きい、請求項7に記載のテンション要素。
【請求項9】
前記第二層の半径方向外向きに位置決めされ、前記第二層を包囲する少なくとも1本の第三ワイヤを有する第三層をさらに含む、請求項1に記載のテンション要素。
【請求項10】
前記第三層は前記第一敷設方向を有する、請求項9に記載のテンション要素。
【請求項11】
前記第三層は前記第二敷設方向を有する、請求項9に記載のテンション要素。
【請求項12】
前記第三層は、第三直径を有する複数の第三ワイヤ、及び第四直径を有する複数の第四ワイヤをさらに含み、前記第四直径は前記第三直径よりも大きい、請求項9に記載のテンション要素。
【請求項13】
耐荷重部材を含むエレベーターシステムに使用するための耐荷重システムであって、
前記耐荷重部材は、
第一層及び第二層内に配置された複数のワイヤを有する少なくとも1つのテンション要素であって、前記第二層が前記第一層を包囲するように、前記第二層は前記第一層の半径方向外向きで、かつ前記第一層に直接隣接して位置決めされ、前記第一層は第一敷設方向を有し、前記第二層は第二敷設方向を有し、前記第二敷設方向は前記第一敷設方向と反対である、前記少なくとも1つのテンション要素と、
前記少なくとも1つのテンション要素を被包するジャケット材料と、
を含む、耐荷重システム。
【請求項14】
前記第一敷設方向は反時計回りであり、前記第二敷設方向は時計回りである、請求項13に記載の耐荷重システム。
【請求項15】
前記第一敷設方向は時計回りであり、前記第二敷設方向は反時計回りである、請求項13に記載の耐荷重システム。
【請求項16】
前記耐荷重部材は、前記第一層を被包するコーティング層をさらに含む、請求項13に記載の耐荷重システム。
【請求項17】
前記少なくとも1つのテンション要素に動作可能に結合され、前記少なくとも1つのテンション要素の電気抵抗を監視するように動作可能である点検デバイスをさらに含む、請求項13に記載の耐荷重システム。
【請求項18】
前記少なくとも1つのテンション要素は、前記耐荷重部材の幅にわたって側方に離隔された複数のテンション要素をさらに含み、
前記点検デバイスは、前記複数のテンション要素のそれぞれに動作可能に結合される、請求項17に記載の耐荷重システム。
【請求項19】
前記複数のワイヤは第三層内にさらに配置され、前記第三層は、前記第二層の半径方向外向きに位置決めされ、前記第二層を包囲する、請求項13に記載の耐荷重システム。
【請求項20】
前記第三層は、前記第一敷設方向か前記第二敷設方向かいずれかを有する、請求項19に記載の耐荷重システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示されている例示的な実施形態は、エレベーターシステムに関し、さらに特に、エレベーターかご及び/または釣合おもりの懸吊及び/または駆動のためにエレベーターシステムに使用されるような耐荷重部材に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターシステムは、建物内の様々な階床間で乗客、貨物、またはその両方を搬送するために有用である。いくつかのエレベーターは、トラクションに基づいたものであり、エレベーターかごを支持してエレベーターかごの所望の運動及び位置決めを達成するためのロープまたはベルトなどの耐荷重部材を利用する。
【0003】
ロープが耐荷重部材として使用される場合、個々のロープはそれぞれ引張力を伝達するためのトラクションデバイスであるだけでなく、牽引力の伝達にも直接関与する。ベルトを耐荷重部材として使用する場合、エラストマー製ベルト本体に複数のテンション要素を埋設する。テンション要素は、引張力を伝達するためにのみ機能し、エラストマー材料は、牽引力を伝達する。その上にそれらの力が作用することで、これらのテンション要素のそれぞれは、通常、複数のファインスチール要素またはワイヤから形成される。
【0004】
耐荷重部材の劣化は、経時的にエレベーターの通常動作によって引き起こされることができる。主な劣化源は、エレベーターが昇降路内で上下に移動する場合に駆動用綱車の周りでの耐荷重部材の周期的な曲げである。耐荷重部材の状態がエレベーターの動作の安全性にとって重要であるため、耐荷重部材の状態を監視し、テンション要素の例えば腐蝕、フレッティング、断線などの劣化を検出することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、上記の不利な点が低減されるように、冒頭で述べた種類の耐荷重部材を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、エレベーターシステムの耐荷重部材に使用するためのテンション要素は、複数の第一ワイヤを有する第一層、及び複数の第二ワイヤを有する第二層を含む。第二層は、第一層の半径方向外向きに位置決めされ、第一層を包囲する。第一層は第一敷設方向(first lay direction)を有し、第二層は第二敷設方向(second lay direction)を有する。第二敷設方向は、第一敷設方向と反対である。
【0007】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、第一敷設方向は反時計回りであり、第二敷設方向は時計回りである。
【0008】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、第一敷設方向は時計回りであり、第二敷設方向は反時計回りである。
【0009】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、複数の第一ワイヤを被包するコーティング層を含む。
【0010】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、複数の第二ワイヤは複数の第一ワイヤよりも多い。
【0011】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、複数の第二ワイヤは複数の第一ワイヤよりも少ない。
【0012】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、複数の第一ワイヤは第一直径を有し、複数の第二ワイヤは第二直径を有する。第二直径は第一直径とは異なる。
【0013】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、第二直径は第一直径よりも大きい。
【0014】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、第二層の半径方向外向きに位置決めされ、この第二層を包囲する少なくとも1本の第三ワイヤを有する第三層を含む。
【0015】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、第三層は第一敷設方向を有する。
【0016】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、第三層は第二敷設方向を有する。
【0017】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、第三層は、第三直径を有する複数の第三ワイヤ、及び第四直径を有する複数の第四ワイヤをさらに含む。第四直径は第三直径よりも大きい。
【0018】
一実施形態によれば、エレベーターシステムに使用するための耐荷重システムは耐荷重部材を含む。耐荷重部材は、第一層及び第二層内に配置された複数のワイヤを有する少なくとも1つのテンション要素を含む。第二層が第一層を包囲するように、第二層は、第一層の半径方向外向きで、かつ第一層に直接隣接して位置決めされる。第一層は第一敷設方向を有し、第二層は第二敷設方向を有する。第二敷設方向は、第一敷設方向と反対である。ジャケット材料は、少なくとも1つのテンション要素を被包する。
【0019】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、第一敷設方向は反時計回りであり、第二敷設方向は時計回りである。
【0020】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、第一敷設方向は時計回りであり、第二敷設方向は反時計回りである。
【0021】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、耐荷重部材は、第一層を被包するコーティング層をさらに含む。
【0022】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、少なくとも1つのテンション要素に動作可能に結合され、少なくとも1つのテンション要素の電気抵抗を監視するように動作可能である点検デバイスを含む。
【0023】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、少なくとも1つのテンション要素は、耐荷重部材の幅にわたって側方に離隔された複数のテンション要素を含む。点検デバイスは、複数のテンション要素のそれぞれに動作可能に結合される。
【0024】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、複数のワイヤは、第二層の半径方向外向きに位置決めされ、この第二層を包囲する、第三層内に配置される。
【0025】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、第三層は第一敷設方向を有する。
【0026】
上述の特徴のうちの1つ以上に加えて、または代替として、さらなる実施形態では、第三層は第二敷設方向を有する。
【0027】
以下の説明は、決して限定的なものであるとみなされるべきではない。添付の図面を参照すると、同様の要素には同様の番号が付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】トラクション式エレベーターシステムの一例の斜視図である。
図2】一実施形態による、エレベーターシステムの耐荷重部材の断面図である。
図3】一実施形態による、耐荷重部材のテンション要素の詳細な断面図である。
図4】別の実施形態による、耐荷重部材のテンション要素の詳細な断面図である。
図5】別の実施形態による、耐荷重部材のテンション要素の詳細な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
開示される装置の1つまたは複数の実施形態の詳細な説明が、図面を参照して、限定ではなく、例証として本明細書に提示される。
【0030】
ここで図1を参照すると、エレベーターシステム10の一例が示されている。エレベーターシステム10はエレベーターかご14を含み、このエレベーターかごは、複数のかごガイドレール(図示せず)に沿って昇降路12内で垂直方向の上方及び下方に移動するように構成される。エレベーターかご14の頂部及び底部に取り付けられたガイドアセンブリは、かごガイドレールに係合して、エレベーターかご14が昇降路12内で移動する場合、エレベーターかご14の適切なアライメントを維持するように構成される。
【0031】
またエレベーターシステム10は釣合おもり15も含み、この釣合おもりは、昇降路12内で垂直方向の上方及び下方に移動するように構成される。釣合おもり15は、従来のエレベーターシステムで既知であるように、エレベーターかご14の運動と概して反対方向に移動する。釣合おもり15の運動は、昇降路12内に取り付けられた釣合おもりガイドレール(図示せず)によってガイドされる。図示された、非限定的な実施形態では、少なくとも1つの耐荷重部材30、例えば、ベルトは、エレベーターかご14及び釣合おもり15の両方に結合され、駆動機20に取り付けられたトラクション駆動用綱車18と協働する。トラクション駆動用綱車18と協働するために、少なくとも1つの耐荷重部材30は、トラクション駆動用綱車18の周りで第一方向に曲がる。
【0032】
エレベーターシステム10の駆動機20は、昇降路12または機械室の一部では、例えばベッドプレートなどの支持部材22の上の取り付け位置に位置決めされて支持される。本明細書に図示されて記載されたエレベーターシステム10が1:1のローピング配置を有するが、別のローピング配置を有するエレベーターシステムも本明細書で企図されることを理解されたい。さらに、別の昇降路レイアウトを有するエレベーターシステムも本開示の範囲内にある。
【0033】
ここで図2を参照すると、ベルト形式の耐荷重部材30の一例の断面図が示されている。示されるように、ベルトは、少なくとも1つのテンション要素と、いくつかの実施形態では、ベルト30の長さに沿って長手方向に延出する複数のテンション要素32とを含む。複数のテンション要素を含む実施形態では、複数のテンション要素32は、実質的に同一であってもよく、または代替に、異なる配置を有してもよい。さらにテンション要素32は、隣接するテンション要素32が接触して配置されないように、互いから離隔される、または分離される。図示された、非限定的な実施形態では、複数のテンション要素32は、耐荷重部材30の側方の幅にわたって等間隔または不等間隔に置かれる。
【0034】
一実施形態では、1つ以上のテンション要素32は、ジャケット材料34内に少なくとも部分的に封入されることで、テンション要素32を保護するだけでなく、その相対運動を拘束する。ジャケット材料34は、トラクション駆動用綱車18の対応する表面に接触するように構成されたトラクション面を画定し得る。ジャケット材料34の材料の例には、ポリウレタン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、SBS/SEBSプラスチック類、シリコーン、EPDMゴム、その他の硬化性ジエン系ゴム、ネオプレン、非硬化熱可塑性エラストマー類、硬化性押出成形性ゴム材料類、熱可塑性プラスチック類、例えばナイロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンなどが含まれるが、これらに限定されず、それぞれが溶液、エマルジョン、プレポリマー、またはその他の流体相の形態にあることができる。しかしながら、耐荷重部材30の必要な機能に適したあらゆる材料が本開示の範囲内にあることを理解されたい。例えば、ジャケット材料34の主な機能は、耐荷重部材30とトラクション駆動用綱車18との間に十分な摩擦係数を与えて、その間に所望のトラクション量をもたらすことである。ジャケット材料34は、トラクション荷重もテンション要素32に伝達する必要がある。さらに、ジャケット材料34は、例えば、耐摩耗性である必要があり、衝撃による損傷、化学物質のような環境要因への曝露からテンション要素を保護する必要がある。
【0035】
耐トラクション性及び耐環境性のような性能を高めるために、1つ以上の添加材料をジャケット材料34に組み込み得る。例えば、カーボンブラックは、エラストマーの耐UV性の改善に非常に有効であり、カルボジイミドは、ポリウレタンの耐加水分解性の改善に非常に有効である。
【0036】
図示された、非限定的な実施形態では、ベルトまたは耐荷重部材30は、9つのテンション要素32を含む。しかしながら、図示されたテンション要素32の数が一例として意図されたものにすぎず、単一テンション要素、2、3、4、5、6、7、8、10またはそれ以上のテンション要素32などのあらゆる適切な数のテンション要素を有する耐荷重部材30が本開示の範囲内であることを理解されたい。さらに、テンション要素32は実質的に円形の断面を有するものとして示されているが、この描写は単なる例にすぎない。本明細書では、例えば楕円形または卵形の断面のような別の断面形状を有するテンション要素32が企図される。
【0037】
ここで図3を参照すると、一実施形態による、例示的なテンション要素32の断面図がより詳細に示されている。示されるように、各テンション要素32は、複数のワイヤから形成される。テンション要素32の各ワイヤが本明細書では単一のワイヤまたはフィラメントとして図示されて描写されているが、他の実施形態では、各ワイヤが実際には、撚り合わされた配置を有するような束または複数のワイヤであってもよいことを理解されたい。
【0038】
テンション要素32のワイヤは、少なくとも、第一層またはコア40と、第一層40の半径方向外向きに位置した第二層42とを含む、複数の積層または同心円層内に配置されてもよい。図示された、非限定的な実施形態では、第一層40は、複数の実質的に同一の第一ワイヤ44を含む。ただし、例えば図5に示されるような、他の実施形態では、複数の第一ワイヤ44の第一直径は異なってもよい。例えば、複数の第一ワイヤは、少なくとも2つの異なる直径を有する2本以上のワイヤを含み得る。図5の図示された、非限定的な実施形態では、複数の第一ワイヤは、3つの異なる直径を有するワイヤを含む。さらに、第一層40が3本の第一ワイヤ44を有するように示されているが、第一層40が単一ワイヤ、2本のワイヤ、または3本超のワイヤを含む、任意の数の第一ワイヤ44を有する実施形態が、本開示の範囲内であることを理解されたい。
【0039】
一実施形態では、複数の第一ワイヤ44は、裸線である、またはいずれの材料によってもコーティングされていない、またはいずれの材料の内にも被包されていない。しかしながら、他の実施形態では、コーティング層46は、複数の第一ワイヤ44を被包するために、第一層40の外側の周りに適用されてもよい。コーティング層46の材料の例には、ポリウレタン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、SBS/SEBSプラスチック類、シリコーン、EPDMゴム、その他の硬化性ジエン系ゴム、ネオプレン、非硬化熱可塑性エラストマー類、硬化性押出成形性ゴム材料類、熱可塑性プラスチック類、例えばナイロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンなどが含まれるが、これらに限定されない。コーティング層46を形成するために使用される材料は、ジャケット材料34と実質的に同じであってもよく、または代替に、それとは異なってもよい。
【0040】
同様に第二層42も複数の第二ワイヤ48を含む。第二ワイヤ48は、第一層40を包囲するように、または封入するように配置される。第二層42は、通常、図3及び図4に示されるように、第一層40よりも多い数のワイヤを含む。しかしながら、図5に示されるように、第一層40内に配置された第一ワイヤ44の数が第二層42内の第二ワイヤ48の数よりも多い実施形態も、本開示の範囲内である。図示された、非限定的な実施形態では、第二層42は、9本の第二ワイヤ48を含む。しかしながら、任意の適切な数のワイヤを有する第二層42が本明細書で企図されることを理解されたい。一実施形態では、複数の第二ワイヤ48は、互いに実質的に同一であってもよく、第二直径を有してもよい。第二直径は、第一ワイヤ44の第一直径と等しくてもよく、または異なってもよい。図示された、非限定的な実施形態では、第二直径は第一直径よりも大きいが、他の実施形態では、第二ワイヤ48の第二直径は第一ワイヤ44の第一直径よりも小さくてもよい。
【0041】
示されるように、テンション要素32は、第二層42の半径方向外向きで、かつ第二層に直接隣接して位置しており、隣接する層42を包囲するように構成された複数のワイヤを有する、例えば第三層50のような、1つ以上の追加の層を含み得る。この配置の結果、第三層50は、通常、第二層42よりも多いワイヤを含む。例えば、図3に示された非限定的な実施形態では、第三層50は14本のワイヤを含む。しかしながら、任意の適切な数のワイヤを有する第三層50が本明細書で企図されることを理解されたい。
【0042】
図示された、非限定的な実施形態では、第三層50は、例えば、複数の第三ワイヤ52など、第三直径を有する少なくとも1本の第三ワイヤ52と、複数の第四ワイヤなど、第四直径を有する少なくとも1本の第四ワイヤ54とを含む。第四直径は第三直径よりも大きくてもよい。しかしながら、第三層50のすべてのワイヤが実質的に同一である実施形態も、本明細書では企図される。第三直径は、第一直径及び第二直径のうちの少なくとも1つと実質的に同一であってもよく、または異なってもよい。図示された、非限定的な実施形態では、第三直径は、第一直径に実質的に等しい。同様に、第四直径は、第一直径及び第二直径のうちの少なくとも1つと実質的に同一であってもよく、または異なってもよい。図示された、非限定的な実施形態では、第四直径は、第一、第二及び第三直径よりも大きい。
【0043】
テンション要素32の形成中、各層40、42、50内のワイヤが撚り合わされる。各層の撚り方向(direction of twist)は、敷設方向(lay direction)としても知られている。例えば、テンション要素32の形成中、複数の第一ワイヤ44は、所望の相対位置に配置され、互いに概して平行に向けられる。適切に位置決めされると、複数の第一ワイヤ44は一斉に、中心軸を中心に、反時計回り方向などの第一方向か、時計回り方向などの反対方向の第二方向かいずれかで撚り合わされて、第一層40を形成する。この撚り合わせが完了した後、第二層42の複数の第二ワイヤ48は、第一層40の外周部の周りに位置決めされ得る。適切に位置決めされると、第一層40の位置は固定されたままであり、次いで複数の第二ワイヤ48は第一方向か第二方向かいずれかで第一層40の外側の周りに撚り合わされる。
【0044】
同様に第三層50の複数のワイヤ52、54は、第二層42の外周部の周りに位置決めされ、次いで第一及び第二層40、42に対して、第一方向か第二方向かいずれかで第二層42の外側の周りに撚り合わされる。追加の層を含む実施形態では、各層のワイヤを位置決めし、次いで、その層の複数のワイヤを、テンション要素32の既に形成された層に対して撚り合わせるという同じプロセスが実行されることを理解されたい。
【0045】
一実施形態では、テンション要素32の第一層40は第一敷設方向で形成され、第一層40に直接隣接して位置したテンション要素32の第二層42は、反対の第二敷設方向で形成される。したがって、いくつかの実施形態では、第一層40は反時計回りの敷設方向を有し、第二層42は時計回りの敷設方向を有する。代替に、第一層40は時計回りの敷設方向を有してもよく、第二層42は反時計回りの敷設方向を有する。テンション要素32が第二層42の半径方向外向きに配置された例えば第三層50などの1つ以上の層を含む実施形態では、第二層42から半径方向外向きで、かつ第二層に直接隣接して位置した層50の敷設方向は、図4に示されるように、第二層42と同じ方向(図3を参照)であってもよく、または代替に、第二層42と反対方向であってもよい。
【0046】
エレベーターシステム10の安全な動作を維持するために、劣化及び/または損傷について周期的または持続的に耐荷重部材30を監視することが望ましい。このような監視を行う1つの方法は、点検デバイスによって、耐荷重部材30のテンション要素32の電気抵抗を測定することを含む。これらのような点検デバイスの例は、当技術分野で既知である。耐荷重部材30及び耐荷重部材に動作可能に結合された点検デバイス(図示せず)は、耐荷重システムとみなされることができる。
【0047】
第一層40の敷設方向、及び第二層42の敷設方向が同じである場合、第二ワイヤ48が線に沿って第一ワイヤ44に接触して配置される(線接触)と考えられる。この線接触の結果、このようなテンション要素32の曲げ動作中に生じる、例えばトラクション駆動用綱車18の周りなどの、ワイヤ間接触応力は最小になり、テンション要素32のフレッティングまたは劣化を検出することが困難になる。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、敷設方向が対向しているテンション要素32の第一層40及び第二層42を形成することは、その結果、第二層42のワイヤ48と第一層40のワイヤ44との間での線接触ではなく、点接触を生じさせると考えられる。点接触の頻度及びそれにより生じる接触応力の増加は、フレッティング挙動を促進し、曲げ動作の繰り返し後に電気抵抗における検出可能な増加をもたらす。
【0048】
「約」という用語は、出願時に利用可能である器具による特定の量の測定に関連付けられた誤差の程度を含むことが意図されている。例えば、「約」は、所与の値の±8%または5%または2%の範囲を含むことができる。
【0049】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するだけの目的であり、本開示を限定することを意図していない。本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈が別段に明確に示さない限り、複数形も含むことが意図される。さらに、「含む(comprise)」及び/または「含んでいる(comprising)」という用語は、本明細書で使用されるとき、述べられる特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/またはそれらのグループの存在もしくは追加を排除するわけではないことを理解されたい。
【0050】
本開示は例示の1つまたは複数の実施形態を参照して説明されているが、本開示の範囲から逸脱することなく、種々の変更が行われてもよく、また均等物がその要素の代わりをする場合もあることは当業者によって理解されるであろう。加えて、本開示の必須の範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本開示の教示に適合させるために多くの修正が行われる場合もある。したがって、本開示は、本開示を実施するために企図された最適な態様として開示される特定の実施形態に限定されるのではなく、本開示は、本明細書の範囲内に収まる全ての実施形態を含むことが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5