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特開2024-132846高鉄含有量の非晶質ナノ結晶軟磁性合金を調製するための過冷却凝固法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132846
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】高鉄含有量の非晶質ナノ結晶軟磁性合金を調製するための過冷却凝固法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/153 20060101AFI20240920BHJP
   C22C 45/02 20060101ALI20240920BHJP
   B22D 11/06 20060101ALI20240920BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01F1/153 133
C22C45/02 A
B22D11/06 360
H01F1/147 166
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023201698
(22)【出願日】2023-11-29
(31)【優先権主張番号】202310255467.X
(32)【優先日】2023-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】呉▲ちん▼
(72)【発明者】
【氏名】王克冰
(72)【発明者】
【氏名】張心陽
(72)【発明者】
【氏名】厳密
(72)【発明者】
【氏名】金佳瑩
【テーマコード(参考)】
4E004
5E041
【Fターム(参考)】
4E004TA01
4E004TA03
5E041AA02
5E041BC01
5E041BD03
5E041HB17
5E041NN18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高鉄含有量の非晶質ナノ結晶軟磁性合金を調製するための過冷却凝固法及び非晶質ナノ結晶成分を提供する。
【解決手段】過冷却凝固を行った合金を、溶融物の急速冷却法又は噴霧法により帯状部材又は粉末に急速に固化し、熱処理して結晶合金を得る。非晶質ナノ結晶合金の化学式がFeSiBMであり、ここでMがP、C、Nb、Mo、Zr、Hf、Mo、Y、Cu及びCoの1種以上の元素であり、各合金元素の原子百分率は、Feが80.0~89.0at%、Siが1.0~9.0at%、Bが3.0~12.0at%、Pが0~5.0at%、Cが0~5.0at%、Nbが0~3.0at%、Zrが0~3.0at%、Hfが0~3.0at%、Moが0~3.0at%、Yが0~5.0at%、Cuが0~2.0at%、Coが0~16.0at%であり、合計が100%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス純化を循環的過熱又は電磁懸濁溶融と組み合わせる方法を用いて合金を過冷却凝固にさせ、鉄基非晶質ナノ結晶軟磁性合金に添加される非磁性元素の量を減らし、Fe元素の割合を増やすことにより、飽和磁化強度を高め、保磁力を下げるという目標を達成する
ことを特徴とする高鉄含有量の非晶質ナノ結晶軟磁性合金を調製するための過冷却凝固法。
【請求項2】
前記のガラス純化を循環的過熱と組み合わせる方法は、
S1、非晶質ナノ結晶合金の化学式がFeSiBMであり、ここでMがP、C、Nb、Mo、Zr、Hf、Mo、Y、Cu及びCoの1種以上の元素であり;
合金原料の酸化物被膜を除去して洗浄し、特定の質量比に従って原料を量り、量られた原料を真空感応溶融炉又は真空アーク溶融炉に装填し、真空化が10-3Paに達した後、不活性ガスを入れてそれの保護で溶融を行い、4~6回溶融を繰り返して合金鋳塊を得ることと、
S2、合金鋳塊を坩堝に入れ、それの上面と下面を特定の質量比のガラス純化剤で覆い、ガラス純化剤に合金鋳塊を完全に包ませるようにすることと、
S3、真空化が10-2Paに達した後、不活性ガスを入れてそれの保護で合金を加熱して溶かし、ひいては温度を1200~1500℃に上げ、1~10分間保温し、加熱電源が止まって合金を自然に冷却させることと、
S4、「加熱-保温-凝固」循環的な処理を3~6回実施し、合金に所望の過冷却度を獲得させるようにすることと、
S5、過冷却凝固を行った合金を、溶融物の急速冷却法又は噴霧法により帯状部材又は粉末に急速に固化することと、
S6、得られたストリップまたは粉末を焼鈍して内部応力を除去して鉄基非晶質合金を得るか、結晶化焼鈍して鉄基ナノ結晶合金を得る、
ことを特徴とする請求項1に記載の過冷却凝固法。
【請求項3】
前記不活性ガスは純度が99.9vol%以上のアルゴン又は窒素であることを特徴とする請求項2に記載の過冷却凝固法。
【請求項4】
前記坩堝の耐熱温度は1400°C以上であることを特徴とする請求項2に記載の過冷却凝固法。
【請求項5】
前記ガラス純化剤の調製プロセスは、純度98%以上の粉末
を計量してそれぞれ高純度鋼玉坩堝に置き、400~600℃で1~8時間焼成した後、ひいては800~1000°Cで2~16時間溶融焼成し、焼成された
を混合して純化剤を得、両方の質量比が1:1~20である
ことを特徴とする請求項2に記載の過冷却凝固法。
【請求項6】
前記ガラス純化剤と前記合金鋳塊の質量比は1:1~5であることを特徴とする請求項2に記載の過冷却凝固法。
【請求項7】
前記の電磁懸濁溶融の方法は、
S1、非晶質ナノ結晶合金の化学式がFeSiBMであり、ここでMがP、C、Nb、Mo、Zr、Hf、Mo、Y、Cu及びCoの1種以上の元素であり;
合金原料の酸化物被膜を除去して洗浄し、特定の質量比に従って原料を量り、量られた原料を真空感応溶融炉又は真空アーク溶融炉に装填し、真空化が10-3Paに達した後、不活性ガスを入れてそれの保護で溶融を行い、4~6回溶融を繰り返して合金鋳塊を得ることと、
S2、真空化が10-3Paに達した後、不活性ガスを入れて保護を行い、合金鋳塊をぶら下っているコイルの下方に送り、電磁界と誘導電流との間の相互作用によって形成されたローレンツ力の作用下で母合金を加熱コイルの中心に安定して浮かせることと、
S3、加熱コイルの感応で合金を加熱して溶かし、ひいては温度を1200~1500℃に上げ、1~10分間保温し、その後加熱電源が止まって合金を自然に冷却させることと、
S4、「加熱-保温-凝固」循環的な処理を3~6回実施し、合金に所望の過冷却度を獲得させるようにすることと、
S5、過冷却凝固を行った合金を、溶融物の急速冷却法又は噴霧法により帯状部材又は粉末に固化することと、
S6、得られた帯状部材又は粉末を応力除出又は結晶化に焼き戻して鉄基ナノ結晶合金を得ることとを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の過冷却凝固法。
【請求項8】
前記高鉄含有量の非晶質ナノ結晶軟磁性合金の化学式がFeSiBMであり、ここでMがP、C、Nb、Mo、Zr、Hf、Mo、Y、Cu及びCoの1種以上の元素であり、各合金元素の原子百分率は、Feが80.0~89.0at%であり、Siが1.0~9.0at%であり、Bが3.0~12.0at%であり、Pが0~5.0at%であり、Cが0~5.0at%であり、Nbが0~3.0at%であり、Zrが0~3.0at%であり、Hfが0~3.0at%であり、Moが0~3.0at%であり、Yが0~5.0at%であり、Cuが0~2.0at%であり、Coが0~16.0at%であり、合計が100%である
ことを特徴とする請求項2又は7に記載の過冷却凝固法。
【請求項9】
前記不活性ガスは純度が99.9vol%以上のアルゴン又は窒素であることを特徴とする請求項7に記載の過冷却凝固法。
【請求項10】
非晶質合金の焼き戻しは結晶化温度以下50~100°C温度範囲内にあり、ナノ結晶の焼き戻し温度は結晶化温度以上0~100°C温度範囲内にあることを特徴とする請求項7に記載の過冷却凝固法。
【請求項11】
焼き戻しは不活性ガス雰囲気又は10-1Pa以下の真空度の雰囲気中で行われることを特徴とする請求項10に記載の過冷却凝固法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過冷却凝固により高鉄含有量の非晶質ナノ結晶軟磁性合金を調製する方法に関し、金属軟磁性材料の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
鉄基非晶質ナノ結晶軟磁性合金は、それの特殊な微細構造のため、結晶質軟磁性合金に比べて低い保磁力や高い抵抗率等の大きな利点を備える。しかしながら、鉄基非晶質ナノ結晶軟磁性合金には大量の非晶質形成元素が存在すると飽和磁化強度が低下するようになるため、関連する軟磁性部品の高出力及び小型化の開発を制限する。飽和磁化強度の約1.55Tである典型的な非晶質軟磁性合金(国際記号Metglas 2605SA1、中国記号1K101)と、飽和磁化強度の約1.24Tである典型的なナノ結晶軟磁性合金(国際記号Finemet、中国記号1K107)とは、どちらもケイ素鋼の飽和磁化強度(約2.12T)よりもはるかに低くなる。
【0003】
非晶質ナノ結晶軟磁性合金につては、様々な電子機器における潜在用途を十分に広めるために、鉄基非晶質ナノ結晶軟磁性合金中のFeを主とする磁性素子含有量と飽和磁化強度を高めることが急務となる。高鉄含有量の非晶質ナノ結晶軟磁性合金を調製する難題は、非晶質基質を得るための厳しい要件という点にあり、即ち溶融合金の冷却速度は105℃/S以上に達する必要がある。Inoue非晶質原則によるとは、非晶質結構の形成を促進するように常に合金に約20at%の非磁性元素を添加する必要がある。ナノ結晶軟磁性合金は、非晶質合金を結晶化し焼き戻すことで形成され、多くの場合、結晶核を形成し結晶粒成長を抑制する非磁性元素を追加する必要がある。これらの元素の導入は、非晶質ナノ結晶軟磁性合金中の強磁性元素の含有量を大幅に制限するため、高い飽和磁化強度を得ることが難しくなる。
【0004】
現在、鉄基非晶質ナノ結晶軟磁性合金の飽和磁化強度を高める方法は、主に成分制御の方に焦点を当てている。一方では、Co元素を添加して合金中の強磁性交換強度を強めることで合金の飽和磁化強度を高める。例えば、特許ZL201410728540.1は、6~20at%Coを添加することでナノ結晶合金の飽和磁化強度を1.80Tに高め、並びに保磁力が10~35A/mの範囲に入るという
合金を開示した。他方では、Si、B、C、P等の半金属元素の量を調節する。例えば、特許ZL200510066862.5は、cが12~18at%の範囲に入り、且つb≦(0.5×a-36)×d1/3の条件を満たす場合、鉄基非晶質部材の飽和磁化強度が1.60T以上に達する可能性があるという
合金を開示した。その上、特許ZL201410285976.8は、半金属元素の添加割合を調整することで得られた
合金が最も高い飽和磁化強度1.69Tを備えるという
合金を開示した。これらの方法は、一方では、Inoue非晶質原則により、半金属元素の添加割合を調整して合金の混合エンタルピー及び原子サイズの違いに影響を与えることで、合金の非晶質形成能力を向上させ、ひいては強磁性元素の含有量を増やす。他方では、半金属元素の2p電子がFeの3d電子に影響を及ぼす可能性があり、ひいてはFe原子の磁気モーメントの大きさに影響を与えることで合金の飽和磁化強度を調節する。上記の特許から、半金属元素の含有量を調節する方法については、異なる元素の比例関係を正確に制御する必要があり、且つ強磁性元素の添加量の増加が依然として有限であるため、飽和磁化強度の更なる改善を制限することがわかる。
【0005】
本発明は、ガラス純化を循環的過熱と組み合わせるか、電磁懸濁溶融を利用することで鉄基非晶質ナノ結晶軟磁性合金の過冷却凝固を実現し、合金に添加される非磁性元素の量を減らし、合金に添加される強磁性元素の量を有効的に高め、合金の飽和磁化強度を強め、低い保磁力を維持することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、既存の鉄基非晶質ナノ結晶軟磁性合金の調製技術の欠点を克服し、過冷却非平衡凝固法により、合金に添加されるア非晶質形成元素の量を減らし、高鉄含有量の非晶質ナノ結晶軟磁性合金の調製を実現し、ひいては鉄基非晶質ナノ結晶軟磁性合金の設計範囲を広げ、合金の飽和磁化強度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって採用される技術的解決策は以下のとおりである:
ガラス純化を循環的過熱又は電磁懸濁溶融と組み合わせる方法を用いて合金を過冷却凝固にさせ、鉄基非晶質ナノ結晶軟磁性合金に添加される非磁性元素の量を減らし、Fe元素の割合を増やすことにより、飽和磁化強度を高め、保磁力を下げるという目標を達成する高鉄含有量の非晶質ナノ結晶軟磁性合金を調製するための過冷却凝固法。
【0008】
好ましくは、前記のガラス純化を循環的過熱と組み合わせる方法は、
S1、非晶質ナノ結晶合金の化学式がFeSiBMであり、ここでMがP、C、Nb、Mo、Zr、Hf、Mo、Y、Cu及びCoの1種以上の元素であり;合金原料の酸化物被膜を除去して洗浄し、特定の質量比に従って原料を量り、量られた原料を真空感応溶融炉又は真空アーク溶融炉に装填し、真空化が10-3Paに達した後、不活性ガスを入れてそれの保護で溶融を行い、4~6回溶融を繰り返して合金鋳塊を得ることと、
S2、合金鋳塊を坩堝に入れ、それの上面と下面を特定の質量比のガラス純化剤で覆い、ガラス純化剤に合金鋳塊を完全に包ませるようにすることと、
S3、真空化が10-2Paに達した後、不活性ガスを入れてそれの保護で合金を加熱して溶かし、ひいては温度を1200~1500℃に上げ、1~10分間保温し、加熱電源が止まって合金を自然に冷却させることと、
S4、「加熱-保温-凝固」循環的な処理を3~6回実施し、合金に所望の過冷却度を獲得させるようにすることと、
S5、過冷却凝固を行った合金を、溶融物の急速冷却法又は噴霧法により帯状部材又は粉末に急速に固化することと、
S6、得られたストリップまたは粉末を焼鈍して内部応力を除去して鉄基非晶質合金を得るか、結晶化焼鈍して鉄基ナノ結晶合金を得る。
【0009】
好ましくは、前記不活性ガスは純度が99.9vol%以上のアルゴン又は窒素である。
好ましくは、前記坩堝の耐熱温度は1400°C以上である。
好ましくは、前記ガラス純化剤の調製プロセスは、純度98%以上の粉末
を計量してそれぞれ高純度鋼玉坩堝に置き、400~600℃で1~8時間焼成した後、ひいては800~1000°Cで2~16時間溶融焼成し、焼成された
を混合して純化剤を得、両方の質量比が1:1~20である。
好ましくは、前記ガラス純化剤と前記合金鋳塊の質量比は1:1~5である。
【0010】
好ましくは、前記の電磁懸濁溶融の方法は、
S1、非晶質ナノ結晶合金の化学式がFeSiBMであり、ここでMがP、C、Nb、Mo、Zr、Hf、Mo、Y、Cu及びCoの1種以上の元素であり;合金原料の酸化物被膜を除去して洗浄し、特定の質量比に従って原料を量り、量られた原料を真空感応溶融炉又は真空アーク溶融炉に装填し、真空化が10-3Paに達した後、不活性ガスを入れてそれの保護で溶融を行い、4~6回溶融を繰り返して合金鋳塊を得ることと、
S2、真空化が10-3Paに達した後、不活性ガスを入れて保護を行い、合金鋳塊をぶら下っているコイルの下方に送り、電磁界と誘導電流との間の相互作用によって形成されたローレンツ力の作用下で母合金を加熱コイルの中心に安定して浮かせることと、
S3、加熱コイルの感応で合金を加熱して溶かし、ひいては温度を1200~1500℃に上げ、1~10分間保温し、その後加熱電源が止まって合金を自然に冷却させることと、
S4、「加熱-保温-凝固」循環的な処理を3~6回実施し、合金に所望の過冷却度を獲得させるようにすることと、
S5、過冷却凝固を行った合金を、溶融物の急速冷却法又は噴霧法により帯状部材又は粉末に固化することと、
S6、得られた帯状部材又は粉末を応力除出又は結晶化に焼き戻して鉄基ナノ結晶合金を得ることとを含む。
【0011】
好ましくは、前記高鉄含有量の非晶質ナノ結晶軟磁性合金の化学式がFeSiBMであり、ここでMがP、C、Nb、Mo、Zr、Hf、Mo、Y、Cu及びCoの1種以上の元素であり、各合金元素の原子百分率は、Feが80.0~89.0at%であり、Siが1.0~9.0at%であり、Bが3.0~12.0at%であり、Pが0~5.0at%であり、Cが0~5.0at%であり、Nbが0~3.0at%であり、Zrが0~3.0at%であり、Hfが0~3.0at%であり、Moが0~3.0at%であり、Yが0~5.0at%であり、Cuが0~2.0at%であり、Coが0~16.0at%であり、合計が100%である。
【0012】
好ましくは、前記不活性ガスは純度が99.9vol%以上のアルゴン又は窒素である。
好ましくは、非晶質合金の焼き戻しは結晶化温度以下50~100°C温度範囲内にあり、ナノ結晶の焼き戻し温度は結晶化温度以上0~100°C温度範囲内にある。
好ましくは、焼き戻しは不活性ガス雰囲気又は10-1Pa以下の真空度の雰囲気中で行われる。
【発明の効果】
【0013】
上記の非平衡凝固法により調製された非晶質ナノ結晶軟磁性合金は、高い非晶質形成能力を備え、合金中に添加される非晶質形成元素の量を減らし、強磁性元素Feの含有量を増加させるのに役立つ。上記方法により調製された高鉄含有量の非晶質ナノ結晶軟磁性合金は、高い飽和磁化強度及び低い保磁力という軟磁気特性を備える。
【発明を実施するための形態】
【0014】
我々は、次に本発明の実施例を詳細に説明すると、合金組成及び過冷却度を調節することで高い飽和磁化強度を備える高鉄含有量の非晶質ナノ結晶軟磁性合金を獲得する。
【実施例0015】
実施例1
過冷却凝固法によりFeSiB非晶質合金を調製する
FeSiB系合金を調製したことになり、合金1にはFe含有量が83.0at%であり、Si含有量が8.0at%であり、B含有量が9.0at%であり;合金2にはFe含有量が85.0at%であり、Si含有量が7.0at%であり、B含有量が8.0at%であり;合金3にはFe含有量が88.0at%、Si含有量が3.0at%であり、B含有量が9.0at%である。
S1、合金原料の酸化物被膜を除去して洗浄し、特定の質量比に従って原料を量る。量られた原料を真空アーク溶融炉に装填し、真空化が8×10-4Paに達した後、純度が99.9vol%であるアルゴン・ガスを入れてそれの保護で溶融を行い、5回溶融を繰り返して合金鋳塊を得る。
S2、合金鋳塊を坩堝に入れ、それの上面と下面を
の混合した純化ガラスで覆い、両方の質量比を1:5にすると、ガラス純化剤に合金鋳塊を完全に包ませるようにする。
S3、真空化が5×10-3Paに達した後、純度が99.9vol%であるアルゴン・ガスを入れてそれの保護で合金を加熱して溶かし、ひいては温度を1350°Cに上げ、2分間保温し、加熱電源が止まって合金を自然に冷却させる。
S4、「加熱-保温-凝固」循環的な処理をそれぞれ4回と6回実施し、合金に約190℃と260℃の過冷却度を獲得させるようにする。
S5、過冷却凝固を行った合金は溶融物を介して急速冷却にされ、帯状部材に固化される。
S6、得られた帯状部材を300℃で応力除出に焼き戻して鉄基非晶質合金を得る。
【0016】
様々な過冷却度での合金の飽和磁化強度と保磁力は、次の表に示される。
表1 様々な過冷却度でのFeSiB系非晶質合金の飽和磁化強度と保磁力
【実施例0017】
実施例2
過冷却凝固法によりFeSiBPC非晶質合金を調製する
FeSiBPC系合金を調製したことになり、合金1にはFe含有量が84.0at%であり、Si含有量が2.0at%であり、B含有量が8.0at%であり、P含有量が5.0at%であり、C含有量が1.0at%であり;合金2にはFe含有量が84.0at%であり、Si含有量が2.0at%であり、B含有量が8.0at%であり、P含有量が1.0at%であり、C含有量が5.0at%であり;合金3にはFe含有量が89.0at%、Si含有量が2.0at%であり、B含有量が8.0at%である、P含有量が0.5at%であり、C含有量が0.5at%である。
S1、合金原料の酸化物被膜を除去して洗浄し、特定の質量比に従って原料を量る。量られた原料を真空アーク溶融炉に装填し、真空化が7×10-4 Paに達した後、純度が99.9vol%である窒素・ガスを入れてそれの保護で溶融を行い、6回溶融を繰り返して合金鋳塊を得る。
S2、合金鋳塊を坩堝に入れ、それの上面と下面を
の混合した純化ガラスで覆い、両方の質量比を1:4にすると、ガラス純化剤に合金鋳塊を完全に包ませるようにする。
S3、真空化が4×10-3 Paに達した後、純度が99.9vol%である窒素・ガスを入れてそれの保護で合金を加熱して溶かし、ひいては温度を1400°Cに上げ、3分間保温し、加熱電源が止まって合金を自然に冷却させる。
S4、「加熱-保温-凝固」循環的な処理をそれぞれ4回と6回実施し、合金に約160℃と255℃の過冷却度を獲得させるようにする。
S5、過冷却凝固を行った合金は溶融物を介して急速冷却にされ、帯状部材に固化される。
S6、得られた帯状部材を300℃で応力除出に焼き戻して鉄基非晶質合金を得る。
【0018】
様々な過冷却度での合金の飽和磁化強度と保磁力は、次の表に示される。
表2 様々な過冷却度でのFeSiBPC系非晶質合金の飽和磁化強度と保磁力
【実施例0019】
実施例3
過冷却凝固法によりFeSiBC非晶質合金を調製する
FeSiBC系合金を調製したことになり、合金1にはFe含有量が84.0at%であり、Si含有量が2.0at%であり、B含有量が8.0at%であり、C含有量が6.0at%であり;合金2にはFe含有量が85.0at%であり、Si含有量が2.0at%であり、B含有量が8.0at%であり、C含有量が5.0at%であり;合金3にはFe含有量が89.0at%、Si含有量が2.0at%であり、B含有量が8.0at%であり、C含有量が1.0at%である。
S1、合金原料の酸化物被膜を除去して洗浄し、特定の質量比に従って原料を量る。量られた原料を真空感応溶融炉又は真空アーク溶融炉に装填し、真空化が8×10-4Paに達した後、不活性ガスを入れてそれの保護で溶融を行い、6回溶融を繰り返して合金鋳塊を得る。
S2、真空化が4×10-3Paに達した後、純度が99.9vol%である窒素・ガスを入れて保護を行い、合金鋳塊をぶら下っているコイルの下方に送り、電磁界と誘導電流との間の相互作用によって形成されたローレンツ力の作用下で母合金を加熱コイルの中心に安定して浮かせる。
S3、加熱コイルの感応で合金を加熱して溶かし、ひいては温度を1500°Cに上げ、5分間保温し、加熱電源が止まって合金を自然に冷却させる。
S4、「加熱-保温-凝固」循環的な処理をそれぞれ3回と5回実施し、合金に約150℃と225℃の過冷却度を獲得させるようにする。
S5、過冷却凝固を行った合金は溶融物を介して急速冷却にされ、帯状部材に固化される。
S6、得られた帯状部材を300℃で結晶化に焼き戻して鉄基非晶質合金を得る。
【0020】
様々な過冷却度での合金の飽和磁化強度と保磁力は、次の表に示される。
表3 様々な過冷却度でのFeSiBC系非晶質合金の飽和磁化強度と保磁力
【実施例0021】
実施例4
過冷却凝固法によりFeSiBCuナノ結晶合金を調製する
FeSiBCu系合金を調製したことになり、合金1にはFe含有量が80.5at%であり、Si含有量が7.0at%であり、B含有量が12.0at%であり、Cu含有量が0.5at%であり;合金2にはFe含有量が85.0at%であり、Si含有量が2.5at%であり、B含有量が12.0at%であり、Cu含有量が0.5at%であり;合金3にはFe含有量が85.0at%、Si含有量が1.2at%であり、B含有量が12.0at%であり、Cu含有量が1.8at%である。
S1、合金原料の酸化物被膜を除去して洗浄し、特定の質量比に従って原料を量る。量られた原料を真空感応溶融炉に装填し、真空化が9×10-4Paに達した後、純度が99.9vol%であるアルゴン・ガスを入れてそれの保護で溶融を行い、4回溶融を繰り返して合金鋳塊を得る。
S2、合金鋳塊を坩堝に入れ、それの上面と下面を
の混合した純化ガラスで覆い、両方の質量比を1:20にすると、ガラス純化剤に合金鋳塊を完全に包ませるようにする。
S3、真空化が5×10-3Paに達した後、純度が99.9vol%であるアルゴン・ガスを入れてそれの保護で合金を加熱して溶かし、ひいては温度を1320°Cに上げ、5分間保温し、加熱電源が止まって合金を自然に冷却させる。
S4、「加熱-保温-凝固」循環的な処理をそれぞれ3回と4回実施し、合金に約205℃と255℃の過冷却度を獲得させるようにする。
S5、過冷却凝固を行った合金は溶融物を介して急速冷却にされ、帯状部材に固化される。
S6、得られた帯状部材を450℃で応力除出に焼き戻して鉄基ナノ結晶合金を得る。
【0022】
様々な過冷却度での合金の飽和磁化強度と保磁力は、次の表に示される。
表4 様々な過冷却度でのFeSiBCu系ナノ結晶合金の飽和磁化強度と保磁力
【実施例0023】
実施例5
過冷却凝固法によりFeSiBNbCuナノ結晶合金を調製する
FeSiBNbCu系合金を調製したことになり、合金1にはFe含有量が80.0at%であり、Si含有量が7.0at%であり、B含有量が9.0at%であり、Nb含有量が3.0at%であり、Cu含有量が1.0at%であり;合金2にはFe含有量が82.0at%であり、Si含有量が6.0at%であり、B含有量が9.0at%であり、Nb含有量が2.0at%であり、Cu含有量が1.0at%であ;合金3にはFe含有量が85.0at%であり、Si含有量が4.5at%であり、B含有量が9.0at%であり、Nb含有量が0.5at%であり、Cu含有量が1.0at%である。
S1、合金原料の酸化物被膜を除去して洗浄し、特定の質量比に従って原料を量る。量られた原料を真空アーク溶融炉に装填し、真空化が8×10-4Paに達した後、純度が99.9vol%であるアルゴン・ガスを入れてそれの保護で溶融を行い、6回溶融を繰り返して合金鋳塊を得る。
S2、合金鋳塊を坩堝に入れ、それの上面と下面を
の混合した純化ガラスで覆い、両方の質量比を1:10にすると、ガラス純化剤に合金鋳塊を完全に包ませるようにする。
S3、真空化が8×10-3Paに達した後、純度が99.9vol%である窒素・ガスを入れてそれの保護で合金を加熱して溶かし、ひいては温度を1380°Cに上げ、1分間保温し、加熱電源が止まって合金を自然に冷却させる。
S4、「加熱-保温-凝固」循環的な処理をそれぞれ5回と6回実施し、合金に約190℃と225℃の過冷却度を獲得させるようにする。
S5、過冷却凝固を行った合金は溶融物を介して急速冷却にされ、帯状部材に固化される。
S6、得られた帯状部材を550℃で応力除出に焼き戻して鉄基ナノ結晶合金を得る。
【0024】
様々な過冷却度での合金の飽和磁化強度と保磁力は、次の表に示される。
表5 様々な過冷却度でのFeSiBNbCu系ナノ結晶合金の飽和磁化強度と保磁力
【実施例0025】
実施例6
過冷却凝固法によりFeSiBMoCuナノ結晶合金を調製する
FeSiBMoCu系合金を調製したことになり、合金1にはFe含有量が80.0at%であり、Si含有量が7.0at%であり、B含有量が9.0at%であり、Mo含有量が3.0at%であり、Cu含有量が1.0at%であり;合金2にはFe含有量が82.0at%であり、Si含有量が6.0at%であり、B含有量が9.0at%であり、Mo含有量が2.0at%であり、Cu含有量が1.0at%であり;合金3にはFe含有量が83.3at%であり、Si含有量が5.0at%であり、B含有量が9.0at%であり、Mo含有量が0.7at%であり、Cu含有量が1.0at%である。
S1、合金原料の酸化物被膜を除去して洗浄し、特定の質量比に従って原料を量る。量られた原料を真空感応溶融炉に装填し、真空化が8×10-4Paに達した後、純度が99.9vol%であるアルゴン・ガスを入れてそれの保護で溶融を行い、4回溶融を繰り返して合金鋳塊を得る。
S2、合金鋳塊を坩堝に入れ、それの上面と下面を
の混合した純化ガラスで覆い、両方の質量比を1:1にすると、ガラス純化剤に合金鋳塊を完全に包ませるようにする。
S3、真空化が1×10-2Paに達した後、純度が99.9vol%であるアルゴン・ガスを入れてそれの保護で合金を加熱して溶かし、ひいては温度を1370°Cに上げ、6分間保温し、加熱電源が止まって合金を自然に冷却させる。
S4、「加熱-保温-凝固」循環的な処理をそれぞれ3回と5回実施し、合金に約175℃と255℃の過冷却度を獲得させるようにする。
S5、過冷却凝固を行った合金は溶融物を介して急速冷却にされ、帯状部材に固化される。
S6、得られた帯状部材を500℃で応力除出に焼き戻して鉄基ナノ結晶合金を得る。
【0026】
様々な過冷却度での合金の飽和磁化強度と保磁力は、次の表に示される。
表6 様々な過冷却度でのFeSiBMoCu系ナノ結晶合金の飽和磁化強度と保磁力
【実施例0027】
実施例7
過冷却凝固法によりFeCoSiBCCuナノ結晶合金を調製する
FeCoSiBCCu系合金を調製したことになり、合金1にはFe含有量が80.0at%であり、Co含有量が5.0at%であり、Si含有量が1.5at%であり、B含有量が9.0at%であり、C含有量が3.0at%であり、Cu含有量が1.5at%であり;合金2にはFe含有量が80.0at%であり、Co含有量が5.0at%であり、Si含有量が1.5at%であり、B含有量が9.0at%であり、C含有量が3.0at%であり、Cu含有量が1.5at%であ;合金3にはFe含有量が80.0at%であり、Co含有量が5.0at%であり、Si含有量が1.5at%であり、B含有量が9.0at%であり、C含有量が3.0at%であり、Cu含有量が1.5at%である。
S1、合金原料の酸化物被膜を除去して洗浄し、特定の質量比に従って原料を量る。量られた原料を真空アーク溶融炉に装填し、真空化が8×10-4Paに達した後、純度が99.9vol%であるアルゴン・ガスを入れてそれの保護で溶融を行い、5回溶融を繰り返して合金鋳塊を得る。
S2、合金鋳塊を坩堝に入れ、それの上面と下面を
の混合した純化ガラスで覆い、両方の質量比を1:3にすると、ガラス純化剤に合金鋳塊を完全に包ませるようにする。
S3、真空化が8×10-3Paに達した後、純度が99.9vol%である窒素・ガスを入れてそれの保護で合金を加熱して溶かし、ひいては温度を1350°Cに上げ、8分間保温し、加熱電源が止まって合金を自然に冷却させる。
S4、「加熱-保温-凝固」循環的な処理をそれぞれ3回と6回実施し、合金に約150℃と265℃の過冷却度を獲得させるようにする。
S5、過冷却凝固を行った合金は溶融物を介して急速冷却にされ、帯状部材に固化される。
S6、得られた帯状部材を400℃で応力除出に焼き戻して鉄基ナノ結晶合金を得る。
【0028】
様々な過冷却度での合金の飽和磁化強度と保磁力は、次の表に示される。
表7 様々な過冷却度でのFeCoSiBCCu系ナノ結晶合金の飽和磁化強度と保磁力
【実施例0029】
実施例8
過冷却凝固法によりFeSiBZrHfCuナノ結晶合金を調製する
FeSiBZrHfCu系合金を調製したことになり、合金1にはFe含有量が80.0at%であり、Si含有量が6.0at%であり、B含有量が9.0at%であり、Zr含有量が3.0at%であり、Hf含有量が1.0at%であり、Cu含有量が1.0at%であり;合金2にはFe含有量が80.0at%であり、Si含有量が6.0at%であり、B含有量が9.0at%であり、Zr含有量が1.0at%であり、Hf含有量が3.0at%であり、Cu含有量が1.0at%であり;合金3にはFe含有量が87.0at%、Si含有量が2.0at%であり、B含有量が9.0at%であり、Zr含有量が0.5at%であり、Hf含有量が0.5at%であり、Cu含有量が1.0at%である。
S1、合金原料の酸化物被膜を除去して洗浄し、特定の質量比に従って原料を量る。量られた原料を真空感応溶融炉又は真空アーク溶融炉に装填し、真空化が8×10-4Paに達した後、不活性ガスを入れてそれの保護で溶融を行い、6回溶融を繰り返して合金鋳塊を得る。
S2、真空化が4×10-3Paに達した後、純度が99.9vol%である窒素・ガスを入れて保護を行い、合金鋳塊をぶら下っているコイルの下方に送り、電磁界と誘導電流との間の相互作用によって形成されたローレンツ力の作用下で母合金を加熱コイルの中心に安定して浮かせる。
S3、加熱コイルの感応で合金を加熱して溶かし、ひいては温度を1400°Cに上げ、10分間保温し、加熱電源が止まって合金を自然に冷却させる。
S4、「加熱-保温-凝固」循環的な処理をそれぞれ4回と6回実施し、合金に約210℃と270℃の過冷却度を獲得させるようにする。
S5、過冷却凝固を行った合金は溶融物を介して急速冷却にされ、帯状部材に固化される。
S6、得られた帯状部材を550℃で結晶化に焼き戻して鉄基ナノ結晶合金を得る。
【0030】
様々な過冷却度での合金の飽和磁化強度と保磁力は、次の表に示される。
表8 様々な過冷却度でのFeSiBZrHfCu系ナノ結晶合金の飽和磁化強度と保磁力
【実施例0031】
実施例9
過冷却凝固法によりFeSiBYCuナノ結晶合金を調製する
FeSiBYCu系合金を調製したことになり、合金1にはFe含有量が81.0at%であり、Si含有量が4.0at%であり、B含有量が9.0at%であり、Y含有量が5.0at%であり、Cu含有量が1.0at%であり;合金2にはFe含有量が84.0at%であり、Si含有量が4.0at%であり、B含有量が9.0at%であり、Y含有量が2.0at%であり、Cu含有量が1.0at%であり;合金3にはFe含有量が87.0at%、Si含有量が2.0at%であり、B含有量が9.0at%であり、Y含有量が1.0at%であり、Cu含有量が1.0at%である。
S1、合金原料の酸化物被膜を除去して洗浄し、特定の質量比に従って原料を量る。量られた原料を真空アーク溶融炉に装填し、真空化が8×10-4Paに達した後、不活性ガスを入れてそれの保護で溶融を行い、4回溶融を繰り返して合金鋳塊を得る。
S2、真空化が5×10-3Paに達した後、純度が99.9vol%であるアルゴン・ガスを入れて保護を行い、合金鋳塊をぶら下っているコイルの下方に送り、電磁界と誘導電流との間の相互作用によって形成されたローレンツ力の作用下で母合金を加熱コイルの中心に安定して浮かせる。
S3、加熱コイルの感応で合金を加熱して溶かし、ひいては温度を1500°Cに上げ、3分間保温し、加熱電源が止まって合金を自然に冷却させる。
S4、「加熱-保温-凝固」循環的な処理をそれぞれ3回と6回実施し、合金に約180℃と255℃の過冷却度を獲得させるようにする。
S5、過冷却凝固を行った合金は溶融物を介して急速冷却にされ、帯状部材に固化される。
S6、得られた帯状部材を500℃で結晶化に焼き戻して鉄基ナノ結晶合金を得る。
【0032】
様々な過冷却度での合金の飽和磁化強度と保磁力は、次の表に示される。
表9 様々な過冷却度でのFeSiBYCu系ナノ結晶合金の飽和磁化強度と保磁力
【0033】
要約すると、本発明の技術的効果は、ガラス純化を循環的過熱と組み合わせるか、電磁懸濁溶融を利用することで、鉄基合金の非晶質形成能力を向上させ、非晶質形成元素の含有量を減らし、強磁性元素の含有量を増やすという目標を達成し、高い飽和磁化強度と低い保磁力の両方を備える非晶質ナノ結晶軟磁性合金を得る。この技術的効果を達成する原理は、ガラス純化を循環的過熱と組み合わせる過程で、溶融ガラスが溶融合金の異質核生成点を吸着できるだけでなく、過熱及び加熱-保温-冷却の冷熱循環も異質核生成点を高温で熱分解し、内部及び表面における熱対流の過程で物質交換を引き起こし、合金内部の異質核生成点を有効的に減少できる。電磁懸濁溶融の過程では、無容器溶融により溶融過程で合金への不純物の導入を有効的に回避し、且つ高温過熱により合金内部の異質核生成点を熱分解する。どちらの方法も、結晶化を低減又は回避でき、非晶質形成能力を向上させる。一方では、異質核生成点を減らすと、合金の微細構造を最適化し、磁気交換の結合効果に対する破壊効果を弱め、合金の飽和磁化強度を高めることができる。他方では、合金の非晶質形成能力の向上は、より無秩序な非晶質結構の形成を助長し、磁気結晶異方性を有効的に排除し、また、磁気反転に対する異質核生成点の障害を低減又は回避し、低い保磁力を得る。