(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132849
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】薄膜のパターン形成方法、及びその処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240920BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240920BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240920BHJP
C23F 4/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L21/306 F
H01L21/302 105A
H01L21/30 576
C23F4/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204300
(22)【出願日】2023-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2023042321
(32)【優先日】2023-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】399084074
【氏名又は名称】城戸 秀作
(72)【発明者】
【氏名】城戸 秀作
【テーマコード(参考)】
4K057
5F004
5F043
5F146
【Fターム(参考)】
4K057DA12
4K057DB01
4K057DB05
4K057DD01
4K057DE01
4K057DM28
4K057DN01
5F004BA03
5F004DA01
5F004DA04
5F004DA06
5F004DA16
5F004DA17
5F004DA18
5F004DA20
5F004DA23
5F004DA24
5F004DA25
5F004DA26
5F004DB01
5F004DB03
5F004DB07
5F004DB09
5F004EA10
5F004EA28
5F004EA37
5F004FA01
5F043AA26
5F043BB18
5F043CC01
5F043CC09
5F043CC11
5F043CC16
5F146AA28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】下地膜のサイドエッチングを抑制した薄膜のパターン形成方法及びパターン形成処理装置を提供する。
【解決手段】サイドエッチングを抑制した下地膜T0である薄膜のパターン形成方法として、通常の下地膜のエッチング時間を3回以上、最適には、4~10回以上に分割してエッチング処理する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング対象となる下地膜上に形成した少なくとも1種類の有機物質を含む有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクを形成後、エッチング対象となる下地膜のエッチングを少なくとも3回以上、最適には4回以上の回数エッチングを行い、少なくとも有機膜パターンで覆われていない部分の下地膜を全て除去すること特徴とする薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項2】
前記エッチング対象となる下地膜のエッチングを少なくとも3回以上、最適には4回以上の回数エッチングする場合において、エッチング対象となる下地膜の各回のエッチング量の合計、又は各回のエッチングレートと各回の処理時間の積より計算される各回のエッチング量の合計は、エッチング対象となる下地膜の膜厚と同じ値を割合100%の値とすると、それに対し少なくとも割合100~200%以内、最適には、割合110~150%以内の値であることを特徴とする前記請求項1に記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項3】
前記エッチング対象となる下地膜のエッチングを少なくとも3回以上、最適には4回以上の回数エッチングする場合において、エッチング対象となる下地膜の各回のエッチング量、又は各回のエッチングレートと各回の処理時間の積は、下地膜の全膜厚をエッチング回数で割った値と同じ値を割合100%の値とすると、それに対して少なくとも割合100±50%、最適には、割合100±20%の範囲内の値であることを特徴とする前記請求項1乃至2のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項4】
前記エッチング対象となる下地膜のエッチングを少なくとも3回以上、最適には4回以上の回数エッチングする場合において、エッチング対象となる下地膜の各回のエッチング量、又は各回のエッチングレートと各回の処理時間の積は、下地膜の全膜厚をエッチング回数で割った値と同じ値を割合100%の値とすると、それに対して、最終回以外は、少なくとも割合100±20%、最適には、割合100±10%であり、最終回のエッチングのみ少なくとも割合100+0~100%、最適には割合100+0~50%の範囲内であることを特徴とする前記請求項1乃至3のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項5】
前記薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置において、少なくとも2回目以降の各エッチングの前に、前記有機膜パターン、又はレジスト膜パターンのマスクの特性や形状を変化させる処理を行うことを特徴とする前記請求項1乃至4のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項6】
前記少なくとも1種類の有機物質を含む有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクが、前記有機膜パターン、又はレジスト膜パターンのマスクの特性や形状を変化させる処理により、下地膜との密着性を回復させたり、少なくとも増大させたりすることを特徴とする前記請求項1乃至5のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項7】
前記少なくとも1種類の有機物質を含む有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクが、前記有機膜パターン、又はレジスト膜パターンのマスクの特性や形状を変化させる処理により、軟化、屈曲、湾曲、液状流動化(リフロー)等の変形をすることを特徴とする前記請求項1乃至6のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項8】
前記少なくとも1種類の有機物質を含む有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクが、前記有機膜パターン、又はレジスト膜パターンのマスクの特性や形状を変化させる処理により、軟化、屈曲、湾曲、液状流動化(リフロー)等の変形した後、下地膜との密着性を回復させたり、少なくとも増大させたりすることを特徴とする前記請求項1乃至7のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項9】
前記少なくとも1種類の有機物質を含む有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクが、前記有機膜パターン、又はレジスト膜パターンのマスクの特性や形状を変化させる処理により、下地膜のサイドエッチングが起こった部分の少なくとも一部、最適には、その全てを覆い隠すように変形することを特徴とする前記請求項1乃至8のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項10】
前記少なくとも1種類の有機物質を含む有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクに対し、各種レジスト特性変更処理を何回も繰り返し行なった場合にも、そのマスク材料の特性として、毎回において、下地膜との密着性を回復させたり、少なくとも増大させたり、軟化、屈曲、湾曲、液状流動化(リフロー)等の変形や、下地膜のサイドエッチングが起こった部分の少なくとも一部、最適には、その全てを覆い隠すような変形を繰り返すことが可能な材料を選択して使用することを特徴とする前記請求項1乃至9のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項11】
前記少なくとも1種類の有機物質を含む有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクが、下地膜の膜厚1/2以下、最適には1/4以下、又は0.5µm以下、最適には、0.25µm以下に形成することを特徴とする前記請求項1乃至10のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項12】
前記薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置において、少なくとも2回目以降の各エッチングの前に前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクの特性や形状を変化させる処理を行った後に、2回目以降の現像処理である再現像処理や、アッシング処理を行うことを特徴とする前記請求項1乃至11のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項13】
前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクの特性や形状を変化させる処理が、前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクの少なくとも一部が、下地膜との密着性や、又は密着面積を回復、増大させたりする処理を含むことを特徴とする前記請求項1乃至12のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項14】
前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクの特性や形状を変化させる処理が、前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクの少なくとも一部が、軟化、湾曲化のみで、溶解や、液状流動化(リフロー)等を起こさず、下地膜との密着性を向上させたり、又は密着面積を回復、増大させたりする処理を含むことを特徴とする前記請求項1乃至13のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項15】
前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクの特性や形状を変化させる処理が、前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクの少なくとも一部が溶解や、液状流動化(リフロー)等を起こし、下地膜との密着性を向上させたり、又は密着面積を回復、増大させたりする処理を含むことを特徴とする前記請求項1乃至14のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項16】
前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクの特性や形状を変化させる処理が、前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクに対し、加熱ベーク処理を行うのみであることを特徴とする前記請求項1乃至15のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項17】
前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクの特性や形状を変化させる処理が、前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクに対し、有機溶剤の薬液に晒す処理であることを特徴とする前記請求項1乃至16のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項18】
前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクの特性や形状を変化させる処理が、前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクに対し、有機溶剤の薬液に晒す処理と、加熱ベーク処理とを組み合わせた処理であることを特徴とする前記請求項1乃至17のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項19】
前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクに対し、有機溶剤の薬液に晒す方法が、有機溶剤の薬液の蒸気にさらす方法か、有機溶剤の薬液と不活性ガスのN2、Ar等のガスと同時噴射する方法か、有機溶剤の薬液中に不活性ガスのN2、Ar等のガスをバブリングさせたガスにさらす方法によることを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項20】
前記再現像処理が、前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクに対し、露光感度により除去量に差のある処理であることを特徴とする前記請求項1乃至19のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項21】
前記再現像処理が、現像処理に用いる薬液の濃度を薄くした薬液を用いる処理であることを特徴とする前記請求項1乃至20のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項22】
前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクの特性や形状を変化させる処理が、前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクに対し、加熱ベーク処理を行う場合の温度が、前記有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクのキュアー温度以下、又は、100~130℃以下あることを特徴とする前記請求項1乃至21のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項23】
前記エッチングが、ウェットエッチング、又はドライエッチングであり、特に、エッチングガスのプラズマ状態から、ラジカルガス部分のみを取り出して別途処理を行うケミカルドライエッチングであることを特徴とする前記請求項1乃至22のいずれかに記載の薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項24】
前記請求項1乃至23に記載の薄膜パターンの処理装置において、その処理ユニットが、レジストの形状や特性を変更する処理ユニット、乾燥や温度を冷却又は安定化する処理ユニット、エッチングする処理ユニットの少なくとも3つのユニット備えることを特徴とする薄膜パターンの処理装置。
【請求項25】
前記請求項1乃至24に記載の薄膜パターンの処理装置において、レジストの形状や特性を変更する処理ユニットが、基板に対し加熱ベークする処理ユニットのみか、有機溶剤の薬液に晒す処理と加熱ベークする処理を組み合わせた処理ユニットであることを特徴とする薄膜パターンの処理装置。
【請求項26】
前記請求項1乃至25に記載の薄膜パターンの処理装置において、乾燥や温度を冷却又は安定化する処理ユニットが、基板温度を常温等にする冷却処理のみか、乾燥処理のみか、乾燥処理と冷却処理を組み合わせたユニットであることを特徴とする薄膜パターンの処理装置。
【請求項27】
前記請求項1乃至26に記載の薄膜パターンの処理装置において、レジストの形状や特性を変更する処理ユニット、乾燥や温度を冷却又は安定化する処理ユニット、エッチングする処理ユニットでの処理を少なくとも2回以上、最適には3回以上繰り返す処理を行うことを特徴とする薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置。
【請求項28】
前記請求項1乃至27に記載の薄膜パターンの処理装置において、レジストの形状や特性を変更する処理ユニット、乾燥や温度を冷却又は安定化する処理ユニット、エッチングする処理ユニットでの処理順に、少なくとも2回以上、最適には3回以上繰り返す処理を行うことを特徴とする薄膜パターンの形成方法、及びその処理装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機マスクを利用した薄膜のパターン形成方法、及びその処理装置に関する。本発明に関する現時点での技術水準をより十分に説明する目的で、本願で引用され或いは特定される特許、特許出願、特許公報、科学論文等の全てを、参照することでそれらの全ての説明を組入れる。
【背景技術】
【0002】
有機膜により形成されたマスク(以下有機マスク、有機膜パターンと呼ぶが、レジストマスク、レジスト膜マスク、レジストパターンマスクもその1例としその範疇に含むものとする)の一例として以下レジストパターンをマスク(以下レジストマスク、レジストパターンマスク、レジスト膜マスク、レジスト膜パターンマスク、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクのいづれかを呼ぶが、いづれも同義とする)を例にとり説明する。レジストマスクとして使用し下地膜をエッチングする工程は、半導体装置を形成する際に必須の工程である。エッチングとしては、ウエットエッチングに代表される等方性エッチングと、ドライエッチングに代表される異方性エッチングとがある。本願明細書で言う等方性エッチングとは、エッチングの方向が、上下のみならず左右方向にもエッチングが進行する場合を示しており、必ずしも上下左右が同一エッチング速度で進行しない場合も含むものとする。更に本願明細書で言う異方性エッチングとは、有機マスクの下部には、エッチングがほとんど進行しないほど上下と左右方向のエッチング速度が異なる場合を言うものとする。但し、ドライエッチングの中でも、プラズマ放電の方式、処理圧力、エッチング対象材料、処理ガスの種類によりその性質が異なり、比較的に等方性の傾向が強く見られる場合(以下、等方性ドライエッチングと呼ぶ)と、異方性の傾向が強い場合(以下、異方性ドライエッチングと呼ぶ)がある。これら異なる性質のエッチングは、エッチングを行う際の条件を考慮してより適当な方が選択される。レジストパターンをマスクとして下地膜をエッチングする場合には、レジストパターン端部(レジストパターンの有る部分と無い部分の境界)において、いわゆるサイドエッチング(又は、アンダーカット)と呼ばれる現象により下地膜がレジストパターンより異なった寸法で形成されという問題点があった。特にその傾向が強いか、細いパターン(例えば1μm以下)の場合には、下地膜パターンが大きく異なった寸法で形成されるだけでなく、下地膜パターン自体が消失し形成されないという問題があった。このため、前記いずれかのエッチング方法であっても下地膜のサイドエッチング(又は、アンダーカット)を極力抑制することが強く求められる。
【0003】
ウエットエッチングを使用してエッチングした際に下地膜のサイドエッチング(又は、アンダーカット)を抑制する従来技術が特許文献1(特開昭50-37374号)に開示されている被処理体の主表面にホトレジスト膜を部分的に形成し、これをマスクとして被処理体を選択的にエッチングするエッチング法において、上記被処理体の主表面に熱可塑性のホトレジスト膜を部分的に形成した後、これをマスクとして被処理体をエッチングして溝を形成し、次に被処理体を加熱することによりホトレジスト膜を軟化させて前記溝の側面部を覆い然る後、さらにエッチングし、前記ホトレジスト膜の軟化および被処理体のエッチング処理を1階ないし多数回行って貫通孔を形成することを特徴とする技術が記載されている。
【0004】
特許文献2(特開昭60-234982号)には特許文献1と同様に被エッチング層の上のレジストを加熱し、レジストがキュア(レジストフローを起こす温度でキュアと別途記載有り)する温度に加熱処理するが、その前後に部分的にエッチングする方法でサイドエッチングを抑制する方法が記載されている。
【0005】
特許文献3(特開平05-327179号)には特許文献1、2と同様に被エッチング層をハーフエッチング後に、被エッチング層上に設けるレジスト層を軟化させてから、残りのエッチングを行い方法が記載されており、レジストを軟化させる方法として通常は熱処理による軟化(同文献の段落番号0016)と記載されている。
【0006】
特許文献4(特開平11-214826号)には特許文献1、2と同様に被エッチング層(この文献では導体層)上にレジスト膜を部分的に形成し、被エッチング層の一部をエッチングした後、真空圧着装置のクッション板でエッチング端のレジスト膜を加熱しながら折り曲げる方法が記載され、その加熱について(同文献の段落番号0010、0011、0021、0032より)軟化温度まで加熱させることが記載されている。
【0007】
特許文献5(特開昭53-77848号)には特許文献1、2、3、4と同様のエッチング途中においてレジスト膜を軟化させる方法として、レジスト膜を有機溶剤中に浸漬して膨潤させる方法が記さている。更にその浸漬する有機溶剤の例として炭化水素類、ケトン類、アルコール類、エステル類等が記されている。
【0008】
特許文献6(特開昭57-16169号)には特許文献1、2、3、4と同様のエッチング途中にマスク層(本文献でのマスク層は、他の文献のレジスト膜と同様)を折り曲げる方法に、マスク層をパラフィン系の炭化水素、いわゆる白灯油或いは芳香族炭化水素、キシレン、トルエン等膨潤液に浸漬させて膨潤させる方法を用いている。
【0009】
また、特許文献7(特開2002-334830号)には、有機膜(レジスト膜、レジストマスクを含む)を溶解する薬液を有機膜に浸透させ(すなわち、少なくとも有機膜を溶解する薬液に浸漬か、その有機溶剤の蒸気にさらす)ことにより、有機膜を溶解させリフロー(薬液溶解リフロー(又は薬液ガス暴露)又は薬液ガス暴露等と呼ぶ)させるが、その有機膜の溶解後に下地膜をエッチングする方法が記載されている。
【0010】
特許文献1乃至特許文献4に開示の前述した従来技術はいずれもレジスト膜を加熱処理してレジスト膜を軟化させたり、フローさせる方法を採用するが、その処理温度はレジスト膜がキュアする付近である。その処理温度は、レジスト膜のプリベークや、ポストベーク温度よりも高温であり、レジスト膜中の溶剤成分の大部分が蒸発する為、その処理後は硬化し、レジスト剥離が困難になるという不具合も起こり、更には、再度そのレジスト膜を軟化させるのはほぼ不可能であった。その為、特許文献1に記載のフォトレジスト膜(レジスト膜と同義)の1回目の軟化と下地膜の2回目のエッチング以降のレジスト膜は2回目の軟化以降は困難であると言わざるを得ない。
【0011】
特許文献5乃至特許文献6に開示の前述した従来技術はいずれもレジスト膜を有機溶剤に浸漬する方法によりレジスト膜を膨潤させているが、膨潤ではレジスト膜が膨張するのみで、しかも液中なので下地膜の表面をフローし保護する効果を生み出し難く、浮力により下地膜のサイドエッチング部にうまく貼り付かない可能性が高く、有機溶剤中の浸漬によりレジスト膜の表面等の一部は溶解する可能性もあり、その場合には下地膜の表面をフローするというより、むしろ液中に一部溶けることにより消失する可能性があった。
【0012】
ここでレジスト膜を薬液に浸漬して溶解させフローさせることを以下、薬液浸漬溶解リフローと呼び、レジスト膜を薬液の蒸気にさらして溶解させフローさせることを薬液蒸気溶解リフローと呼ぶ。
【0013】
特許文献7に開示の前述した従来技術はレジスト膜を有機溶剤に浸透させる方法として、第1の方法として薬液浸漬溶解リフローする方法か、第2の方法として薬液蒸気溶解リフローを採用している。この場合、第一の方法(薬液浸漬リフロー)は、前記特許文献5,6と同一の問題点(レジスト膜が液中にて溶解消失等)があり、もう一方の第2の方法(薬液蒸気溶解リフロー)は、有機溶剤を気体状にしてさらすので、レジスト膜の表面を溶解させ、フローさせることが出来るが、レジスト膜を大きく1~4μm以上にもリフローさせて下地膜をエッチングさせる方法なので、レジスト膜とは寸法が大きく異なる下地膜が出来るという1つ目の問題点と、リフローさせるレジスト膜と下地膜の密着性を向上させる為のリフロー後のベークについて記されておらず、サイドエッチングが起こりやすい状態であることの加えて、下地膜をレジスト膜のリフロー前後に1回ずつ合計2回行うのみなので、サイドエッチング抑制効果は少なかった。
【0014】
特許文献8に開示の前述した従来技術はレジスト膜を有機溶剤に浸透させる方法として、こちらの場合も第1の方法として薬液浸漬溶解リフローする方法か、第2の方法として薬液蒸気溶解リフローを採用している。この場合も、第一の方法(薬液浸漬リフロー)は、前記特許文献5,6と同一の問題点(レジスト膜が液中にて溶解消失等)があり、もう一方の第2の方法(薬液蒸気溶解リフロー)は、有機溶剤を気体状にしてさらすので、レジスト膜の表面を溶解させ、フローさせることが出来るが、フローしたレジスト膜と下地膜の密着性を当初のレジスト膜と下地膜の密着性より悪くしたまま下地膜のエッチングをすることで下地膜のサイドエッチングをわざと起こさせることで下地膜の端部をテーパー化しているので、本発明の目的と逆であり、更にエッチングも1回のみなので、サイドエッチングは通常より起こりやすいという問題点があった。
【0015】
従って、上記従来技術が抱えていた欠点及び問題が生じることのない(サイドエッチングを抑制した)下地膜である薄膜のパターン形成方法、及びその処理装置を提供することが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開昭50-37374号公報(第3欄第4行目乃至第15、第8欄第4行目乃至第9行目行目、第1図及び第2図)
【特許文献2】特開昭60-234982号公報(第3欄第4行目乃至第14、第3欄第13行目乃至第4欄第12行目、第1図、第2図及び第3図)
【特許文献3】特開平05-327179号公報(段落番号0008、段落番号009、段落0016及び
図1)
【特許文献4】特開平11-214826号公報(段落番号0013、段落番号0014及び
図4)
【特許文献5】特開昭53-77848号公報(第3欄第1行目乃至第10、第5欄第14行目乃至第6欄第8行目、第2図)
【特許文献6】特開昭57-16169号公報(第7欄第10行目乃至第8欄第9行目及び第1~第5図)
【特許文献7】特開2002-334830号公報(段落番号0039、段落番号0041、段落番号0043~段落番号0053及び第1図、第2図)
【特許文献8】特開2005-303151号公報(段落番号0017、段落番号0018、段落番号0019、段落番号0020、段落番号0021、段落番号0022、段落番号0023、段落番号0043及び第1図、第2図、第3図、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、上記従来技術が抱えていた欠点及び問題が生じることのない(サイドエッチングを抑制した)下地膜である薄膜のパターン形成方法を提供することが第一の目的である。
【0018】
本発明の第二の目的は、本発明に関する(サイドエッチングを抑制した)下地膜である薄膜のパターン形成方法を実現する処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
[エッチングによる薄膜のパターン形成方法]
本発明の第一の目的であって、下地膜上に形成した少なくとも1種類の有機物質を含む有機膜パターン、又はレジスト膜を使用したパターンのマスクの端部における下地膜のサイドエッチングを抑制した薄膜のパターン形成方法は、通常の下地膜のエッチング時間、すなわちレジスト膜で覆われていない部分の下地膜全体をエッチング除去する最短時間とその5~30%(もしくは、0~100%)のオーバーエッチング時間を合計した全エッチング時間を3回以上、最適には、4~10回に分割してエッチング処理する方法を用いている。また、より微細(3μm以下等)なパターン加工の場合には、11~数十回にもエッチング回数を分割する方法を用いる場合もある。
【0020】
但し、エッチングの分割は、全処理時間でなく、エッチングする下地膜の全膜厚を対象に分割する方法を取ることも可能で、その分割は前記同様に、下地膜のエッチングする膜厚を対象に3回以上、最適には、4~10回、より微細なパターンの場合には、11~数十回に分割してエッチング処理する方法とすることも可能である。
【0021】
1回目のエッチング処理前には、現像後のポストベーク処理(エッチング前のプリベーク処理でもある)を行い、2回目以降のエッチング処理前に、毎回(2回目以降~最終回のエッチング処理の各回の前に)少なくともレジスト特性変更処理とレジスト安定化処理を行い、必要に応じて、レジストマスクの再現像処理、又はアッシング処理(主にO2ガスのプラズマ雰囲気中処理)を追加した後、毎回のエッチング処理することを特徴としている。
【0022】
但し、前記レジスト特性変更処理とレジスト安定化処理後のエッチング処理の前に加熱ベーク処理(キュア温度以下の90~130℃以下)と温調(冷却)処理を追加する場合もある。
【0023】
ここで、レジスト特性変更処理とは、a)エッチング後にレジストマスクと下地膜の密着面積を回復、又は増大させたり密着性が悪化した部分に対し、少しでも回復させる効果のある処理:レジスト密着強化処理、b)レジストマスクの形状を変化(少なくとも一部が固体のまま、又は液状化せず軟化することにより、屈曲化、湾曲化)させ下地膜とレジスト膜の密着面積を回復、又は増大させたりする処理:レジスト変形処理1、c)レジストマスクの形状を変化(少なくとも一部が液状化し、溶解、リフロー、流動化)させ下地膜とレジスト膜の密着面積を回復、又は増大させたりする処理:レジスト変形処理2、d)前記a)や前記b)や前記c)のいずれかの組み合わせ処理、の4種の内いずれかの事である。
【0024】
また、基板安定化処理とは、a)基板の温度を常温や、最適な温度したり、冷却する処理:基板温調処理、b)基盤に付着した液体等を温冷風、ドライAir、N2等のブローで除去、乾燥させたりする処理:基板乾燥処理、c)基板に付着した液体等を真空中に置くことで除去、乾燥させたりする処理:基板真空処理、d)前記a)や前記b)や前記c)のいずれかの組み合わせ処理、の4種の内いずれかの事である。
【0025】
更に、必要に応じて追加するレジストマスクの再現像処理、又はアッシング処理は、1)レジストマスクに対し、少しでも現像効果(感光/非感光による溶解速度差のある溶解効果)のある溶解処理、2)レジストマスクへのいわゆるアッシング処理(主にO2ガスのプラズマ雰囲気中処理によるレジストマスクの少なくとも一部の除去処理)のいずれかのことである。但し、1)の再現像処理の場合、レジストマスクを露光後の環境による感光度が影響するので、露光後も感光しない状態に維持しておいた方がより効果的である。
【0026】
ここでエッチングは、ウェットエッチング、ドライエッチングいずれでも可である。特にドライエッチングの場合は、等方性エッチングの場合が効果的である。
【0027】
[エッチングによる薄膜のパターン形成処理装置]
本発明の第二の目的であるパターン形成処理装置は、本発明の第一の目的である下地膜のサイドエッチングを抑制した薄膜のパターン形成方法を実現する処理装置であり、最低限必要な処理ユニットとして、1)エッチング処理ユニット、2)レジスト特性変更処理ユニット、3)基板安定化処理ユニットにより構成された処理装置である。
【0028】
また、基板安定化処理ユニットとは、1)レジストマスクの温度を常温や、エッチング前として最適な温度にする効果のある処理ユニット、2)レジストマスクに付着した液体を除去したり、乾燥させたりする効果のある処理ユニット、1)+2)の合わせた効果のある処理ユニットのいずれかの事である。
【0029】
更に、必要に応じて追加するレジストマスクの再現像処理ユニット、又はアッシング処理ユニットは、1)レジストマスクに対し、少しでも現像効果(感光/非感光による溶解速度差のある溶解効果)のある溶解処理ユニット、2)レジストマスクへのいわゆるアッシング処理(主にO2ガスのプラズマ雰囲気中処理によるレジストマスクの少なくとも一部の除去処理)のいずれかのユニットのことである。但し、1)の再現像処理ユニットの場合、レジストマスクを露光後の環境による感光度が影響するので、露光後も感光しない状態に維持しておいた方がより効果的である。
【0030】
更にその処理装置は、前記本発明の第一の目的である下地膜のサイドエッチングを抑制した薄膜のパターン形成方法により、その処理順序と処理条件に基づいた1)マルチユニット処理機能の装置、又は、2)連続ユニット処理機能の装置のいずかで構成されているものである。
【0031】
但し、前記レジスト特性変更処理ユニットとレジスト安定化処理ユニット後のエッチング処理ユニット前に加熱ベーク処理(キュア温度以下の90~130℃以下)ユニットと温調(冷却)処理ユニットを追加する場合もある。
【発明の効果】
【0032】
本発明の第一の目的である下地膜のサイドエッチングを抑制した薄膜のパターン形成方法は、通常の下地膜のエッチング時間を少なくとも3回以上、処理能力(時間当たりの効率的処理数)考慮すると最適には4~10回程度に分割してエッチング処理することが効果的であり、しかも毎回のエッチング処理前にレジストマスクに対し、レジスト特性変更処理を行い、レジストマスクと下地膜の密着性が、エッチングにより分離、劣化している状態をエッチング前とほぼ同等の密着状態と横寸法密着位置(その処理方法、処理条件をJ1条件とする)か、密着状態のみほぼ同等状態(その処理方法、処理条件をJ2条件とする)まで回復させること、すなわち、下地膜とレジスト膜の密着面積を回復、又は増大させたりすることが可能である。その為、各回のサイドエッチング量は、大幅に抑制されるので、全体(合計)のサイドエッチング量も、(J1条件時に)分割した1回目分のみか、(J2条件時に)少なくとも2回分以下のサイドエッチング量に抑えることが可能となる。
【0033】
その為、従来の1回のみで全エッチングを行う場合のサイドエッチング量をS1とし、本発明の分割するエッチング回数をn回とすると、本発明の全(合計)のサイドエッチング量をSnとすると、
例1)レジスト特性変更処理の処理方法、処理条件が、J1条件の時
Sn≒(S1/n) (≒は、約、ほぼ同等の意)
例2)レジスト特性変更処理の処理方法、処理条件が、J2条件の時
(S1/n)≦Sn≦ (2×S1/n) (≦は、以下の意)
とすることが出来、そのnの回数が多いほど効果的に全(合計)のサイドエッチング量を抑制することが出来る効果がある。
また、この計算上も、nの回数が2回では不足し、少なくとも3回以上にすることがサイドエッチングを従来より抑制するには重要で、必要であることを示している。
【0034】
更に、微細なパターン(3µm以下)をウェットエッチングにて形成する場合等では、処理能力より微細パターン形成能力をより重視し追及すると、11~数十回にもエッチング数を分割することで、より微細パターン形成の実現が可能となる効果もある。
【0035】
すなわち、
図1の従来の下地膜を1回のみでエッチング完了する処理の場合の全エッチング量をE1y、全サイドエッチング量をE1xとし、
図2の下地膜を2回のみでエッチング完了する処理の場合の全エッチング量をE2y、全サイドエッチング量をE2xとすると、
合計の各エッチング量:E1x=E2xは、同じであり、
合計の各サイドエッチング量:E2y≒1/2E2y (≒は、同等の意)
の関係になる。
【0036】
また、本発明の第二の目的であるパターン形成処理装置は、本発明の第一の目的である下地膜のサイドエッチングを抑制した薄膜のパターン形成方法を実現する処理装置であり、その繰り返し処理の部分、すなわち少なくとも、1)レジスト特性変更処理ユニット、2)基板安定化処理ユニット、3)エッチング処理ユニットを含んだマルチ処理ユニット装置か、連続繰り返し処理ユニット装置として構成され、本発明の第一の目的であるパターン形成方法による処理順序と処理条件に基づき、各ユニットでマルチ処理、または連続繰り返し処理されるものであり、本発明の第一の目的であるパターン形成方法による処理を効率的に行え、全体の処理時間も短縮される効果がある。
【0037】
但し、この装置に置いて、必要に応じて他の処理ユニットも追加し、処理を追加することも有り得ること。更に、前記本発明のレジスト特性変更処理の処理方法、処理条件JI、J2としては、例として、
J1条件:基板のレジストマスクの有機溶剤暴露処理(レジストマスクが一部溶解リフローし、レジストマスク寸法が1/10~2/10膨張する程度)と110~130℃の加熱ベーク処理を3~10分した後、基板全体が常温(約25℃)等になるように冷却処理すること。
J2条件:基板のレジストマスクの有機溶剤暴露処理(レジストマスクが一部溶解リフローするが、レジストマスク寸法がほとんど変化しないか1/10以内の膨張程度)と110~130℃の加熱ベーク処理を3~10分した後、基板全体が常温(約25℃)等になるように冷却処理すること。
但し、前記J1、J2条件において、レジストマスクの溶解リフローが、キュア温度以下で繰り返し起こせる(冷却し元に戻る)レジストマスク材料の場合は、有機溶剤蒸気暴露は不要で、加熱、冷却のみで可である。
【従来の技術】
【0038】
以下従来の技術を図を参照して説明する。
図1は、従来の技術1としての等方性エッチングであるウェットエッチングの例である。まず、下地膜T0上にレジスト膜を塗布、プリベーク(前加熱)、露光、現像、ポストベーク(後加熱)を経て、レジストマスクパターンP1を形成した後、下地膜T0をエッチングし下地膜パターンT1とする。この場合の下地膜を例として0.5μmの銅(Cu)膜とし、ノボラック系樹脂と感光剤よりなるポジ型レジスト膜をスピンコーター等で1~3μm塗布し、プリベークとして100~110℃で1~3分間加熱処理した後、露光、現像(アルカリ系水溶液)し、パターン幅2μmのレジストパターンP1を形成する。更にポストベークとして110~120℃で3~5分間加熱処理して
図1(a)の状態となる。
【0039】
次に下地膜T0の銅(Cu)膜のエッチング液としては、例として塩化第二鉄溶液、塩化第二銅溶液、アルカリ性アンモニア(アルカリ性アンモニア)溶液、硫酸過酸化水素(硫酸+過酸化水素)溶液等が用いられ、そのエッチングレートは、例として25℃で0.25~0.5μm/分のエッチングレートになるような組成で用いられ、今回硫酸過酸化水素(硫酸+過酸化水素)溶液を0.5μm/分のエッチングレートとなる組成で66秒間(ジャストエッチング60秒+オーバーエッチング6秒)処理して下地膜パターンT1が形成され
図1(b)の状態になる。
【0040】
この従来の技術1の場合において、0,5μmの膜厚のエッチングを0.5μm/分のエッチングレートで66秒処理しており、等方性エッチングである為、サイドエッチングは、各両端より最低でも0.5μm以上となり、下地膜パターンT1の上部は1.0μm以下となってしまうことになる。
【0041】
図2は、従来の技術2として、例えば特許文献1~8においても記されている下地膜T0を2回のエッチングで完了するものであり、各エッチング時間は全体のエッチングに必要な時間を均等に1/2に分けて行う(この場合、合計66秒なので、各回33秒となる)。この場合の下地膜T0を従来1と同様0.5μmの銅(Cu)膜とし、ノボラック系樹脂と感光剤よりなるポジ型レジスト膜をスピンコーター等で1~3μm塗布し、プリベークとして100~110℃で1~3分間加熱処理した後、露光、現像(アルカリ系水溶液)し、パターン幅2μmのレジストパターンP1を形成する。更にポストベークとして110~120℃で3~5分間加熱処理して
図2(a)の状態になる。
【0042】
次に、下地膜T0の銅(Cu)膜のエッチングを行うが、エッチング液は、前記従来技術1と同様の硫酸過酸化水素(硫酸+過酸化水素)溶液等25℃で0.5μm/分のエッチングレートになるような組成で33秒間処理して下地膜パターンT1が形成され
図2(b)の状態になる。
【0043】
次に、高温(レジスト膜のキュアしフローする:軟化点付近の140℃~200℃)加熱処理するか、有機溶剤薬液に浸漬、又は蒸気にさらして薬液溶解リフロー(又は薬液ガス暴露)処理し、レジストパターンP1のフローを起こさせレジストパターンP2と変形させる。但し、高温加熱処理の場合と薬液溶解リフロー(又は薬液ガス暴露)処理の場合のフロー量と形状は異なり、後者の方が低温でより液状で流動的なフローとなり易い特徴がある。それは、前者がレジストパターン1中の溶剤を蒸発除去させるのに対し、後者はレジストパターン1中に溶剤を浸透させ実際にその表面の少なくとも一部を液状化させ変形させることでレジストパターンP2を形成しているからである。
【0044】
次に、前者の高温加熱処理はそのままで、後者の薬液溶解リフロー(又は薬液ガス暴露)させた場合のみポストベークとして110~120℃で3~5分間加熱処理して
図2(c)の状態になる。
【0045】
次に、2回目の下地膜パターンT1の銅(Cu)膜のエッチングを行うが、エッチング液は、前記従来技術1と同様の硫酸過酸化水素(硫酸+過酸化水素)溶液等であり25℃で0.5μm/分のエッチングレートになるような組成で33秒間処理して下地膜パターンT2を形成し
図2(d)の状態になる。
【0046】
この従来の技術2の場合において、0.5μmの膜厚の下地膜T0のエッチングを0.5μm/分のエッチングレートで合計66秒処理を各33秒づつ2回実施しているが、等方性エッチングである為、サイドエッチングは進むが、各回のサイドエッチング量は、1回のエッチング量以下となるので、最終的なサイドエッチング量は、通常の1/2で済むことになる。
【0047】
但し、ここで重要なことは、1回目のサイドエッチング量と、2回目のサイドエッチング量がまだ大きく、エッチングレートも早い為に、エッチング液がレジスト界面に浸透し易く、結果として予想より大きいサイドエッチングを起こしてしまい、従来の技術1ほどではないが、前記段落番号0035に記したサイドエッチング量以上に大きいものとなることである。
【発明の実施の形態】
【0048】
以下本発明の実施の形態を図を用いて説明する。ここでは、本発明のエッチングによる薄膜のパターン形成方法について説明する。
【実施例0049】
図3に本発明の実施例1を示す。この実施例1では、下地膜T0を3回のエッチングで完了するものであり、各エッチング時間は全体のエッチングに必要な時間をエッツチング回数により均等に1/3に分けて行う(この場合、合計66秒なので、各回約22秒となる)。但し、1回当たりのエッチング時間が短くなりすぎると、エッチングの制御性が悪くなる為、エッチング液の組成を調整し、エッチングレートを1/2~1/5に落として使用する。この場合、1/5のレートにし、合計330秒(ジャストエッチング300秒+オーバーエッチング30秒)になる様に調整して実施することとし、各回110秒づつエッチングする。
【0050】
この場合の下地膜T0は、0.5μmの銅(Cu)膜とし、ノボラック系樹脂と感光剤よりなるポジ型レジスト膜をスピンコーター等で1~3μm塗布し、プリベークとして100~110℃で1~3分間加熱処理した後、露光、現像(アルカリ系水溶液)し、パターン幅2μmのレジストパターンP1を形成する。更にポストベークとして110~120℃で3~5分間加熱処理し、その後基板の温調(冷却)処理をして基板の温度を常温(25℃付近)にして、
図3(a)の状態になる。
【0051】
次に、下地膜T0の銅(Cu)膜のエッチングを行うが、エッチング液は、前記段落番号0039で記したように硫酸過酸化水素(硫酸+過酸化水素)溶液等25℃で0.1μm/分のエッチングレートになるような組成にしたエッチング液で110秒間処理して下地膜パターンT1が形成され
図3(b)の状態になる。
【0052】
次に、レジストマスクパターン(以下、レジストマスク、レジストパターンと呼ぶ場合も有る)P1に対し、レジスト特性変更処理を行うが、レジスト特性変更処理とは、
図11-7に示すように、
(a)レジスト密着強化処理:エッチング後にレジストマスクと下地膜の密着性が悪化した部分に対し、少しでも回復させる効果、すなわち下地膜とレジスト膜の密着面積を回復、又は増大させたりする処理
(b)レジスト変形処理1:レジストマスクパターンの少なくとも一部が固体のまま、又は液状化せず軟化し、屈曲、又は湾曲化等させ下地膜とレジスト膜の密着面積を回復、又は増大させたりする効果のある処理
(c)レジスト変形処理2:レジストマスクパターンの少なくとも一部が液状化し、溶解、又はリフロー、流動化等させ下地膜とレジスト膜の密着面積を回復、又は増大させたりする効果のある処理
(d)は、(a)、(b)、(c)の組み合わせた処理
のいずれかの事である。但し、寸法の点において、少なくとも一部が液状化する変形のレジスト変形処理2では、変形後の縦、横、厚みの寸法のいずれかの大きな変化が有り得るが、固体のまま、又は液状化しない変形であるレジスト変形処理1では、変形後も縦、横、厚みにおける各合計の寸法は大きく変化しないことも特徴である。
【0053】
その後、更にレジストマスクパターンP1に対し、基板安定化処理を行うが、基板安定化処理とは、
図11-8に示すように、
(a)基板温調処理:レジストマスクの温度を常温や、エッチング前として最適な温度にする効果のある処理
(b)基板乾燥処理:レジストマスクに付着した液体を除去したり、乾燥させたりする効果のある処理
(c)基板真空乾燥処理:レジストマスクに付着した液体を除去したり、乾燥させたりする為、真空乾燥する処理
(d) (a)、(b)、(c)の組み合わせた処理
のいずれかの事である。但し、レジスト特性変更処理、基板状態安定化処理は、本実施例1では、以下の例を示すが、それに限らず可能である。
【0054】
但し、この実施例1では、
図11-7のレジスト特性変更処理における、(c)レジスト変形処理2として有機溶剤薬液の蒸気にさらして薬液溶解リフロー(又は薬液ガス暴露)処理の例を示し、レジストマスクパターンP1中に溶剤を浸透させ実際にその表面の少なくとも一部を液状化させ変形させることでレジストマスクパターンP2を形成し、更に(a)レジスト密着強化処理として、ポストベーク110~120℃で3~5分間加熱処理した後、
図11-8の基板状態安定化処理における(a)基板温調処理として、基板温度が常温になるように常温のプレート上に基板を置き3~5分放置して常温に冷却されるのを待ち、
図3(c)の状態になる。
【0055】
次に、2回目の下地膜パターンT1の銅(Cu)膜のエッチングを行うが、エッチング液は、硫酸過酸化水素(硫酸+過酸化水素)溶液等で25℃、0.1μm/分のエッチングレートになるような組成で110秒間処理して下地膜パターンT2を形成し
図3(d)の状態になる。
【0056】
次に、レジストマスクパターンP1からP2に変化させる処理である前記段落番号0052~0054に記載の処理と同様の方法で、レジストマスクパターンP2に対し行うことで、レジストマスクパターンP3のように変化させ、
図3(e)の状態になる。
【0057】
次に、3回目の下地膜パターンT2の銅(Cu)膜のエッチングを行うが、エッチング液は、硫酸過酸化水素(硫酸+過酸化水素)溶液等で25℃で0.1μm/分のエッチングレートになるような組成で110秒間処理して下地膜パターンT3を形成し
図3(f)の状態になる。
【0058】
この本発明の実施例1の場合において、0.5μmの膜厚の下地膜T0のエッチングを0.1μm/分のエッチングレートで合計330秒処理を各110秒づつ3回実施しているが、等方性エッチングである為、サイドエッチングは進むが、各回のサイドエッチング量は、1回のエッチング量以下となるので、実施例1の最終的なサイドエッチング量は、通常の1/3で済むことになる。
【0059】
但し、ここで重要なことは、上中下層のエッチング厚みの3層に分けてみて見ると、下地膜T0のエッチングを3回に分け、しかも各エッチング処理後に、薬液溶解リフロー(又は薬液ガス暴露)処理とポストベーク処理を行っているので、2,3回目のエッチングにおいてレジストマスクパターンP1,P2は下地T1,T2への密着力は強く、しかもエッチングレートは低く抑えられており、処理時間も各層にエッチング厚み分のエッチング量しかない為、少なくともエッチングの3回目の下層のエッチングにおいては、1回目の上層のエッチング領域までは、影響を及ぼさない。
【0060】
ここことが、従来の技術1,2のサイドエッチング量と比較して、本発明の実施例1のサイドエッチング量が低く抑えられる理由である。
更に、本発明の特徴である3回以上に分割してエッチングすることが重要であることと、2回以下エッチングに対して大きな有意差があることを示している。
【0061】
更に、必要に応じて前記処理の途中でレジストマスクの再現像処理、又はアッシング処理を追加することがあり、それは、1)レジストマスクに対し、少しでも現像効果(感光/非感光による溶解速度差のある溶解効果)のある溶解処理、2)レジストマスクへのいわゆるアッシング処理(主にO2ガスのプラズマ雰囲気中処理によるレジストマスクの少なくとも一部の除去処理)のいずれかのことである。但し、1)の再現像処理の場合、レジストマスクを露光後の環境による感光度が影響するので、露光後も感光しない状態に維持しておいた方がより効果的である。これは、レジストマスクのレジスト変形処理1、2による寸法膨張(特にレジスト変形処理2の場合は大きい)を抑制、縮小、又は元の寸法に戻す(すなわち、そのマスクパターンの寸法膨張による下地膜パターンのエッチング後の寸法膨張を抑制、縮小、又は元の寸法に戻す)為に追加するものである。
この本発明の実施例2の場合において、0.5μmの膜厚の下地膜T0のエッチングを0.1μm/分のエッチングレートで合計330秒処理を各82.5秒づつ4回実施しているが、等方性エッチングである為、サイドエッチングは進むが、各回のサイドエッチング量は、1回のエッチング量以下となるので、実施例2の最終的なサイドエッチング量は、通常の1/4で済むことになる。
更に、必要に応じて前記処理の途中でレジストマスクの再現像処理、又はアッシング処理を追加することがあり、それは、1)レジストマスクに対し、少しでも現像効果(感光/非感光による溶解速度差のある溶解効果)のある溶解処理、2)レジストマスクへのいわゆるアッシング処理(主にO2ガスのプラズマ雰囲気中処理によるレジストマスクの少なくとも一部の除去処理)のいずれかのことである。但し、1)の再現像処理の場合、レジストマスクを露光後の環境による感光度が影響するので、露光後も感光しない状態に維持しておいた方がより効果的である。これは、レジストマスクのレジスト変形処理1、2による寸法膨張(特にレジスト変形処理2の場合は大きい)を抑制、縮小、又は元の寸法に戻す(すなわち、そのマスクパターンの寸法膨張による下地膜パターンのエッチング後の寸法膨張を抑制、縮小、又は元の寸法に戻す)為に追加するものである。