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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132862
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/24 20060101AFI20240920BHJP
   F02F 1/14 20060101ALI20240920BHJP
   F02F 1/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F02F1/24 H
F02F1/14 D
F02F1/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023216220
(22)【出願日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2023039656
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】和泉 恭平
(72)【発明者】
【氏名】飛田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 淳
【テーマコード(参考)】
3G024
【Fターム(参考)】
3G024AA01
3G024AA04
3G024AA08
3G024AA21
3G024AA24
3G024AA28
3G024BA12
3G024BA23
3G024CA01
3G024CA05
3G024DA01
3G024DA03
3G024DA04
3G024DA10
3G024DA18
3G024EA01
3G024FA13
3G024HA07
(57)【要約】
【課題】1気筒あたり2本の点火プラグを配置しながらも、多気筒エンジンの幅寸法を抑制することができるエンジンを提供する。
【解決手段】本開示のエンジンEは、燃焼室20で混合気に点火する点火プラグ26と、吸排気弁17、19の動弁機構21にクランクシャフト2の回転を伝達する動力伝達部材23と、動力伝達部材23が配置される伝達部材収納空間CTとを備えている。点火プラグ26は、燃焼室20毎に第1の点火プラグ30および第2の点火プラグ32を有し、第1の点火プラグ30がシリンダ6の軸心上に配置され、第2の点火プラグ32が、クランクシャフト2が延びるエンジン幅方向WDにおいて、第1の点火プラグ30に対して、伝達部材収納空間CTの反対側にオフセットして配置されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンの往復運動を回転運動に変えるクランクシャフトと、
前記クランクシャフトを支持するクランクケースと、
前記クランクケースからピストンの往復方向に突出し、前記クランクシャフトが延びるエンジン幅方向に並ぶ複数のシリンダと、
前記シリンダの突出端に連結されたシリンダヘッドと、
前記シリンダおよび前記シリンダヘッドの内部に形成された燃焼室で混合気に点火する点火プラグと、
前記燃焼室に吸気を導入する吸気ポートを開閉する吸気バルブと、
前記燃焼室から排気を導出する排気ポートを開閉する排気バルブと、
前記クランクシャフトの回転に連動して前記吸気バルブおよび前記排気バルブを開閉する動弁機構と、
前記動弁機構に前記クランクシャフトの回転を伝達する動力伝達部材と、
前記シリンダおよび前記シリンダヘッドに形成されて前記往復方向に延び、前記動力伝達部材が配置される伝達部材収納空間と、を備えたエンジンであって、
前記点火プラグは、前記燃焼室毎に第1の点火プラグおよび第2の点火プラグを有し、
前記第1の点火プラグが前記シリンダの軸心上に配置され、
前記第2の点火プラグが、前記エンジン幅方向において、前記第1の点火プラグに対して、前記伝達部材収納空間の反対側にオフセットして配置されているエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンにおいて、前記第2の点火プラグは、前記エンジン幅方向において、各気筒で同じ側にオフセットしているエンジン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエンジンにおいて、前記往復方向と前記エンジン幅方向の両方に直交する直交方向に関して、前記第2の点火プラグは、前記第1の点火プラグと同じ位置で、前記エンジン幅方向に並んで配置され、
前記シリンダヘッドに、前記第1および第2の点火プラグを冷却する冷却液が循環する循環通路が形成され、
前記循環通路の入口部および出口部の一方が、前記シリンダヘッドにおけるエンジン幅方向の一方側端部に形成されているエンジン。
【請求項4】
請求項3に記載のエンジンにおいて、前記伝達部材収納空間が、前記エンジン幅方向の端部に設けられ、
前記循環通路の入口部および出口部の一方が、前記伝達部材収納空間と反対側の前記エンジン幅方向の端部に設けられているエンジン。
【請求項5】
請求項1または2に記載のエンジンにおいて、さらに、
複数の前記シリンダで構成されるシリンダブロックの吸気側の壁面に形成された前記循環通路の入口部と、
前記エンジン幅方向における前記伝達部材収納空間と反対側に形成された前記循環通路の出口部と、
前記シリンダブロックから前記シリンダヘッドに向かって前記往復方向に冷却液を導出する複数の冷却液縦通路と、を備え、
複数の前記冷却液縦通路のうち、前記エンジン幅方向に関して前記伝達部材収納空間に近い冷却液縦通路が、他の冷却液縦通路よりも流路抵抗が小さく設定されているエンジン。
【請求項6】
請求項5に記載のエンジンにおいて、さらに、前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとの間に介在されたガスケットを備え、
前記ガスケットにより複数の前記冷却液縦通路の一部の開口を部分的に覆うことで、前記冷却液縦通路の通路面積を調整して、前記伝達部材収納空間に近い冷却液縦通路の流路抵抗を他の冷却液縦通路の流路抵抗よりも小さくしているエンジン。
【請求項7】
請求項1または2に記載のエンジンにおいて、さらに、
複数の前記シリンダで構成されるシリンダブロックの吸気側の壁面に形成された前記循環通路の入口部と、
前記エンジン幅方向における前記伝達部材収納空間と反対側に形成された前記循環通路の出口部と、
前記循環通路の入口部に装着された接続金具と、
冷却液の温度調節を行うサーモスタットが収納されたサーモケースと、を備え、
前記接続金具と前記サーモケースが一体に構成されているエンジン。
【請求項8】
請求項1または2に記載のエンジンにおいて、さらに、
前記シリンダヘッドにおける前記往復方向の端部に連結されたヘッドカバーと、
前記シリンダヘッドおよび前記ヘッドカバーに形成されて前記往復方向に延び、前記点火プラグのコードが配置されるプラグ孔と、
前記ヘッドカバーに接続されて前記ヘッドカバーから突出する接続部品と、を備え、
前記点火プラグのコードが取り出される向きは、前記往復方向と前記エンジン幅方向の両方に直交する直交方向に関して、前記点火プラグに対して、前記接続部品の反対側に設定されているエンジン。
【請求項9】
請求項8に記載のエンジンにおいて、さらに、前記燃焼室内に燃料を直接噴射する直噴インジェクタを備え、
前記接続部品は、前記直噴インジェクタに燃料を圧送する圧送ポンプであるエンジン。
【請求項10】
請求項9に記載のエンジンにおいて、前記圧送ポンプは、吸気側または排気側の一方の動弁機構により駆動されているエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、乗物の駆動源として用いられる多気筒エンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリンダの内部に燃焼室が形成されるエンジンにおいて、燃焼不良を抑制するために、1気筒あたり2本の点火プラグを配置したものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1のエンジンでは、シリンダヘッドにおけるシリンダ軸線上と、シリンダヘッドにおけるクランク軸心方向の一側面に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-162084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のエンジンは単気筒エンジンである。クランク軸心方向に複数のシリンダが並ぶ多気筒エンジンでは、特許文献1のように点火プラグを配置すると、エンジンの幅方向(クランク軸心方向)の寸法が大きくなる。
【0005】
本出願の開示は、1気筒あたり2本の点火プラグを配置しながらも、多気筒エンジンの幅寸法を抑制することができるエンジンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のエンジンは、ピストンの往復運動を回転運動に変えるクランクシャフトと、前記クランクシャフトを支持するクランクケースと、前記クランクケースからピストンの往復方向に突出して前記クランクシャフトが延びるエンジン幅方向に並ぶ複数のシリンダと、前記シリンダの突出端に連結されたシリンダヘッドと、前記シリンダおよび前記シリンダヘッドの内部に形成された燃焼室で混合気に点火する点火プラグと、前記燃焼室に吸気を導入する吸気ポートを開閉する吸気バルブと、前記燃焼室から排気を導出する排気ポートを開閉する排気バルブと、前記クランクシャフトの回転に連動して前記吸気バルブおよび前記排気バルブを開閉する動弁機構と、前記動弁機構に前記クランクシャフトの回転を伝達する動力伝達部材と、前記シリンダおよび前記シリンダヘッドに形成されて前記往復方向に延び、前記動力伝達部材が配置される伝達部材収納空間とを備えている。前記点火プラグは、前記燃焼室毎に第1の点火プラグおよび第2の点火プラグを有し、前記第1の点火プラグが前記シリンダの軸心上に配置され、前記第2の点火プラグが、前記エンジン幅方向において、前記第1の点火プラグに対して、前記伝達部材収納空間の反対側にオフセットして配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示のエンジンによれば、1気筒、すなわち燃焼室1つあたりに2つの点火プラグを配置することで、通常時には安定した燃焼を実現できるとともに、一方の点火プラグが故障した異常時でも点火性能を確保できる。その結果、エンジンの信頼性が向上する。また、伝達部材収納空間の反対側に第2の点火プラグを配置することで、燃焼室と伝達部材収納空間の反対側との間を詰め、且つ、エンジンの幅寸法を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1実施形態に係るエンジンを示す右側面図である。
図2】同エンジンを示す左側面図である。
図3】同エンジンを示す正面図である。
図4】同エンジンを示す背面図である。
図5】同エンジンを示す平面図である。
図6】同エンジンのシリンダヘッドの縦断面図である。
図7】同エンジンのシリンダヘッドの水平断面図である。
図8】同エンジンのシリンダブロックを示す平面図である。
図9】同エンジンの循環通路の入口部ユニットを示す斜視図である。
図10】同入口部ユニットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の好ましい実施形態について図1~10を参照しながら説明する。本実施形態のエンジンEは、レシプロエンジンであり、例えば、胴体の先端にプロペラが配置される飛行機に用いられる。この場合、胴体内にエンジンEが収容されて、エンジン動力がプロペラに伝達される。エンジンEの用途は、これに限定されず、例えば、船舶の駆動源としても適用可能である。二輪車や四輪車などの車両の駆動源としても適用可能である。
【0010】
以下の説明において、「幅方向WD」とは、エンジンEのクランクシャフト2の延びる方向をいう。幅方向WDにおいて、幅方向中心に向かう方向を「幅方向内側」といい、幅方向中心から離れる方向を「幅方向外側」という。「上下方向VD」とは、エンジンEのピストン3(図6)の往復動方向をいう。「幅方向」と「上下方向」の両方に直交する方向を「直交方向PD」という。
【0011】
本実施形態のエンジンEは、クランクシャフト2が延びる方向に6つの気筒(シリンダ6)が並んだ6気筒エンジンである。ただし、気筒の数はこれに限定されず、例えば、4気筒であってもよい。また、本実施形態のエンジンEは、ガソリンエンジンであるが、燃料はガソリンに限定されない。
【0012】
エンジンEは、クランクシャフト2を支持するクランクケース4と、クランクケース4からピストン3の往復方向に突出するシリンダ6と、シリンダ6の突出端に連結されたシリンダヘッド8とを有している。クランクシャフト2は、ピストン3の往復運動を回転運動に変える。以下の説明において、上下方向VD(ピストンの往復動方向)において、クランクケース4からシリンダ6が突出する方向を「上方」といい、その反対側を「下方」という。
【0013】
クランクケース4は、上下2つ割であり、クランクケースロア4aと、クランクケースアッパ4bとを有している。本実施形態では、クランクケースアッパ4bとシリンダ6は、型成形により一体に形成されている。ただし、クランクケースアッパ4bとシリンダ6が別体であってもよい。以下の説明において、クランクケースアッパ4bとシリンダ6が一体となったものをシリンダブロック10という。
【0014】
エンジンEは、さらに、シリンダヘッド8の上端に連結されたヘッドカバー12と、クランクケース4の下端に連結されたオイルパン14とを有している。シリンダヘッド8とシリンダヘッドカバー12とでカム室を形成する。オイルパン14には、エンジン潤滑液の一種であるオイルが貯留される。
【0015】
シリンダヘッド8における直交方向PDの一端側(図1の右側)の面に吸気ポート16が開口し、直交方向PDの他端側(図1の左側)の面に排気ポート18が開口している。以下の説明において、直交方向PDにおける吸気ポート側を「吸気側」といい、排気ポート側を「排気側)」という。
【0016】
吸気ポート16および排気ポート18はシリンダヘッド8の内部に形成された通路である。吸気ポート16の上流端は、シリンダヘッド8の直交方向PDの一端側に開口し、下流端はシリンダ6内部の燃焼室20に開口している。排気ポート18の上流端はシリンダ6内部の燃焼室20に開口し、下流端はシリンダヘッド8の直交方向PDの他端側に開口している。吸気ポート16および排気ポート18は気筒毎に形成されている。吸気ポート16は、外部の空気を吸気として燃焼室20に導入する。排気ポート18は、燃焼室20から排気を導出する。
【0017】
本実施形態のエンジンEは、吸気ポート16を開閉する吸気バルブ17と、排気ポート18を開閉する排気バルブ19とを備えている。吸気バルブ17および排気バルブ19は動弁機構21により開閉される。本実施形態では、吸気バルブ17および排気バルブ19は、気筒毎に2つずつ設けられている。
【0018】
動弁機構21は、クランクシャフト2の回転に連動して吸気バルブ17および排気バルブ19を開閉する。本実施形態では、動弁機構21は、吸気側と排気側とで独立するカムシャフト21を有している。
【0019】
エンジンEは、カムシャフト(動弁機構)21にクランクシャフト2の回転を伝達する図3の動力伝達部材23を有している。本実施形態では、動力伝達部材23としてカムチェーンが用いられている。ただし、動力伝達部材23は、カムチェーンに限定されず、例えば、シャフトドライブであってもよい。
【0020】
動力伝達部材(カムチェーン)23は伝達部材収納空間CTに配置されている。本実施形態の伝達部材収納空間CTは、カムチェーン23が収納されるカムチェーントンネルCTである。カムチェーントンネルCTは、シリンダ6およびシリンダヘッド8に形成されて往復方向VDに延びている。本実施形態では、カムチェーントンネルCTは、エンジン幅方向WDの一端部に設けられている。
【0021】
以下の説明において、エンジン幅方向WDのうち、カムチェーントンネルCTが配置される側(カムチェーントンネル側)をエンジン幅方向WDの一方側といい、その反対側(反カムチェーントンネル側)をエンジン幅方向WDの他方側という。
【0022】
カムチェーントンネルCT内のカムチェーン23を巻きかけるスプロケット45(図6)を覆うために、シリンダヘッドカバー12におけるエンジン幅方向WDの一方側が部分的に膨らんでいる。つまり、シリンダヘッドカバー12におけるエンジン幅方向WDの一方側端部に、往復方向に膨出する膨出部12aが形成されている。
【0023】
本実施形態のエンジンEは、図1に示す燃焼室20に燃料を直接噴射する直噴エンジンである。詳細には、エンジンEは、燃焼室20に燃料を噴射する直噴インジェクタ22と、直噴インジェクタ22に燃料を圧送する圧送ポンプ24とを有している。本実施形態では、直噴インジェクタ22は、シリンダヘッド8の吸気側の面に取り付けられている。直噴インジェクタ22も気筒毎に形成されている。なお、図4には、直噴インジェクタ22が取り付けられるインジェクタ取付孔25が描かれている。また、本実施形態のエンジンEは、直噴インジェクタ22に加えて、吸気ポート18から燃料を噴射するポートインジェクタも備えている。
【0024】
図1に示す圧送ポンプ24は、ヘッドカバー12に取り付けられている。圧送ポンプ24は、ヘッドカバーから往復方向PDに突出している。つまり、圧送ポンプ24は、ヘッドカバー12に接続されてシリンダヘッドカバー12から突出する接続部品を構成する。
本実施形態では、圧送ポンプ24は、ヘッドカバー12の排気側部の上面に配置されている。つまり、圧送ポンプ24は、排気側の動弁機構21により駆動されている。ただし、圧送ポンプ24は、吸気側の動弁機構21により駆動されてもよい。
【0025】
吸気ポート16から外部の空気が吸気として燃料室20に供給されるとともに、直噴インジェクタ22から燃料室20に燃料が噴射され、燃料と空気の混合気が形成される。燃焼室20内の混合気は点火プラグ26で点火されて燃焼する。燃焼後の排気ガスは、排気ポート18からエンジン外部に導出される。点火プラグ26の詳細は後述する。
【0026】
図3に示すように、エンジン幅方向WD他端側に出力軸40が設けられている。本実施形態では、出力軸40は、エンジン幅方向WDにおけるカムチェーントンネルCTと反対側に配置されている。クランクシャフト2の回転力が減速機構42(図2)で減速されて、出力軸40に伝達される。出力軸40には、直接または動力伝達部材を介して航空機のプロペラ、車両の車輪等が連結される。
【0027】
本実施形態のエンジンEは、直立状態、すなわち往復方向VD(ピストン軸)が上下方向を向く状態で乗物に搭載されている。エンジンEを直立状態とすることで、エンジンEの直交方向PDのバランスがよくなる。また、ピストン軸が上下方向VDに対して傾斜する傾斜状態でエンジンを搭載する場合に比べて、吸排気系のレイアウトの制約が小さくて済み、設計の自由度が増える。
【0028】
[点火プラグ]
つぎに、点火プラグ26について説明する。本開示のエンジンEの点火プラグ26は、複数の点火プラグを有している。本実施形態では、エンジンEの点火プラグ26は、図6に示すように、第1の点火プラグ30と第2の点火プラグ32を有している。つまり、本開示のエンジンEは、気筒毎に2つの点火プラグ30,32を有しており、6気筒の本実施形態では、12個の点火プラグ26が設けられている。第1および第2の点火プラグ30,32は、例えば、シリンダヘッド8に支持される。
【0029】
本実施形態では、2つの点火プラグ30,32の点火タイミングは気筒毎に同じである。つまり、2つの点火プラグ30,32が同時に点火される。また、2つの点火プラグ30,32のうちの一方の点火プラグ30(32)が故障した場合でも、他方の点火プラグ32(30)で最低限の点火性能が確保できるように設定されている。
【0030】
このように、1気筒あたり2本の点火プラグ30,32を配置することで、通常時には安定した燃焼を実現できるとともに、一方の点火プラグが故障した異常時でも点火性能を確保できる。その結果、エンジンEの信頼性が向上する。このようなエンジンEは、特に、航空機において好適に用いられる。
【0031】
第1の点火プラグ30は、気筒の中心に配置されている。詳細には、第1の点火プラグ30は、シリンダ軸心AX上に配置されている。一方、第2の点火プラグ32は、第1の点火プラグ30に対して、エンジン幅方向WDに偏位した位置に配置されている。詳細には、第2の点火プラグ32は、エンジン幅方向WDの他方側、すなわちカムチェーントンネルCTと反対側にオフセットして配置されている。6つの第2の点火プラグ32は、エンジン幅方向WDにおいて、同じ側にオフセットして配置されている。
【0032】
図5に示すように、第2の点火プラグ32は、直交方向PDに関しては第1の点火プラグ30と同じ位置で、エンジン幅方向WDに並んで配置されている。また、第2の点火プラグ32は、幅方向WD一方の吸排気バルブの軸線よりも幅方向一方に配置される。図6に示すように、2つの点火プラグ30,32は、互いに平行、すなわち往復方向VDに平行に延びる。
【0033】
このように、第2の点火プラグ32を配置することで、燃焼室20とカムチェーントンネルCTとの間を詰め、且つ、カムチェーントンネルCTの反対側に第2の点火プラグ32を配置することで、エンジンEの幅寸法を抑制できる。本実施形態では、第2の点火プラグ32は、各気筒で同じ側(幅方向WDの他方側)にオフセットしている。オフセットの向きが気筒毎に異なっていると、隣接する気筒間で、第2の点火プラグ32同士が干渉する。本実施形態では、オフセットの向きが気筒毎に異なっていないので、隣接する気筒間で、第2の点火プラグ32同士が干渉しない。
【0034】
このように、本開示の第2の点火プラグ32は、シリンダ軸心AXに対してカムチェーントンネルCTと反対側にオフセットした位置に配置されている。第2の点火プラグ32が、カムチェーントンネルCTを避けて配置されることで、シリンダヘッド8とカムチェーン23との間の仕切り部分を形成したうえで、プラグ挿入空間を形成することができる。
【0035】
シリンダヘッド8およびヘッドカバー12に、往復方向VDに延びるプラグ孔34が形成されている。プラグ孔34は、往復方向VDに延びる筒状のボス部35で構成されている。プラグ孔34には、点火プラグ30,32のコード44が配置されている。プラグ孔34の上端は、プラグキャップ36で塞がれ、防水されている。
【0036】
プラグ孔34を構成するボス部35の内部の温度が上昇すると、熱膨張やエンジンの振動でプラグキャップ36が脱落する恐れがある。そこで、プラグキャップ36に、空気の出入口である呼吸孔38を設け、プラグキャップ36の脱落を防いでいる。呼吸孔38は、例えば、円筒形のパイプ部材であり、中空孔の一端がプラグ孔34に連通し、他端が外部に連通している。
【0037】
点火プラグ26の呼吸孔38は、点火プラグ26ごとに独立して形成されている。つまり、本実施形態では、図5に示すように、点火プラグ26と同数の12個の呼吸孔38が設けられている。本実施形態では、呼吸孔38は吸気側に開口している。ヘッドカバー12の上面の排気側には、上述の高圧ポンプ24が配置されているので、呼吸孔38を吸気側に向けて、高圧ポンプ24との干渉を回避している。高圧ポンプ24が吸気側にある場合、すなわち、高圧ポンプ24が吸気側の動弁機構により駆動される場合、呼吸孔38は排気側に開口するのがよい。本実施形態では、直交方向に関して、点火プラグ用のコード44が取り出される向きは、接続部品の一種である圧送ポンプ24の反対側に設定されている。
【0038】
以上のように、本実施形態では、第1の点火プラブ30が、気筒の中心(シリンダ軸心AX上)に配置され、第2の点火プラブ32が、すべての気筒でカムチェーントンネルCTと反対側にオフセットされている。また、点火プラグ26の呼吸孔38についても、点火プラグ30ごとに独立して形成されている。
【0039】
[点火プラグの冷却構造]
つぎに、点火プラグ26の冷却構造を説明する。本実施形態のエンジンEは、液冷エンジンであり、冷却液を循環させることで、エンジンEの冷却部位が冷却される。この冷却部位に、ボス部35を含む点火プラグ26のプラグ孔34の周辺部も含まれる。本実施形態では、冷却液として水が用いられている。
【0040】
図4に示すように、本実施形態のエンジンEの冷却液の循環通路50は、内部通路52と外部通路54とを有している。内部通路52は、エンジンEの内部に形成された通路で、入口部56からエンジン内部に導入され、出口部58を介してエンジン外部に導出される。外部通路54は、エンジンEの外部に配置された配管で構成され、上流端が出口部58に接続され、下流端が入口部56に接続されている。
【0041】
外部通路54には、サーモスタット60が設けられている。サーモスタット60は、エンジンを循環する冷却液の温度を検知し、冷却液が低温の場合は入口部56から内部通路52に戻し、冷却液の温度が高くなるとラジエータ循環通路62へ冷却液を送る。ラジエータで放熱された冷却液は、ラジエータ循環通路62から入口部に戻され、内部通路52に供給される。つまり、サーモスタット60は冷却液の温度調節を行う。サーモスタット60は、サーモケース65に収納されている。
【0042】
ラジエータ循環通路62は、サーモスタット60からラジエータ(図示せず)に向かう一次側通路62aと、ラジエータから入口部56に向かう二次側通路62bとを有している。二次側通路62bに冷却液ポンプ64が設けられている。冷却液ポンプ64は、クランクシャフト2の回転力で駆動され、冷却液を循環させる。
【0043】
本実施形態では、循環通路50の入口部56がシリンダブロック10の吸気側の壁面に形成され、循環通路50の出口部58がシリンダヘッド8におけるエンジン幅方向WDの端部に形成されている。詳細には、循環通路50の入口部56がシリンダブロック10の吸気側の壁面におけるエンジン幅方向WDの中間部に形成され、循環通路50の出口部58がエンジン幅方向WDにおけるカムチェーントンネルCTと反対側(他端側)の端部に設けられている。
【0044】
循環通路50の入口56に接続金具66が装着されている。本実施形態では、サーモケース65が接続金具66と一体に構成され、入口部ユニットUNを構成している。入口部ユニットUNは、シリンダブロック10に着脱自在に取り付けられ、内部にサーモスタット60が収納されている。入口部ユニットUNには、外部通路54およびラジエータ循環通路62の一次側通路62aと二次側通路62bが接続されている。
【0045】
図9に示すように、入口部ユニットUNは、外部通路54が接続される第1接続部68と、サーモスタット60が装着されるサーモスタット取付部70とを有している。入口部ユニットUNは、さらに、ラジエータ循環通路62の一次側通路62aが接続される第2接続部72と、二次側通路62bが接続される第3接続部73とを有している。また、入口部ユニットUNには、循環通路50の入口部56に連通する開口69が形成されている。
【0046】
図10に示すように、入口部ユニットUNは、その内部に仕切り壁75を有している。仕切り壁75により入口部ユニットUNの内部空間が区画され、ラジエータ循環通路62の一次側通路62aに向かう冷却液W1と、ラジエータ循環通路62の二次側通路62bから流入する冷却液W2とが混ざらないように構成されている。
【0047】
図9に示すように、仕切り壁75に、外部通路54とラジエータ循環通路62の一次側通路62aとを連通する連通孔75aが形成され、この連通孔75aにサーモスタット60のバルブ60aが装着されている。冷却液が低温のときバルブ60aは閉状態で、外部通路54からの冷却液Wは開口69を介して循環通路50の入口部56に向かって流れる。冷却液の温度が上がってくると、バルブ60aが少しずつ開いて、第2接続部72に接続されたラジエータ循環通路62の一次側通路62aに冷却液が流れるようになる。
【0048】
循環通路50の内部通路52は、シリンダ6およびシリンダヘッド8の内部に形成されている。この内部通路52に、図7に示すプラグ循環通路80が含まれている。プラグ循環通路80を循環する冷却液が点火プラグ26のプラグ孔34の周辺部、詳細には、第1点火プラグ30のプラグ孔34aのボス部35および第2点火プラグ32のプラグ孔34bのボス部35を冷却する。
【0049】
プラグ循環通路80は、シリンダヘッド8に形成され、エンジン幅方向WDに延びている。本実施形態では、幅方向WDの一方側(カムチェーントンネル側)から他方側(反カムチェーントンネル側)に向かってプラグ循環通路80を冷却液が流れる。換言すれば、冷却液は、他方側(反カムチェーントンネル側)の循環通路50の出口部58に向かってプラグ循環通路80を流れる。
【0050】
内部通路52は、シリンダブロック10からシリンダヘッド8に向かって往復方向に冷却液を導出する複数の冷却液縦通路82を有している。図8に示すように、複数の冷却液縦通路82は、気筒に沿ってエンジン幅方向WDに並んで設けられている。入口部56から内部通路52に導入された冷却液は、冷却液縦通路82を通ってプラグ循環通路80に供給される。なお、図8は、シリンダヘッド8を取り外した状態のシリンダブロック10をシリンダ軸心方向のシリンダヘッド8側から見た図である。
【0051】
本実施形態では、複数の冷却液縦通路82のうち、エンジン幅方向WDの一方側(カムチェーントンネル側)の冷却液縦通路82aが、他の冷却液縦通路82bよりも流路抵抗が小さく設定されている。換言すれば、出口部58と反対側の冷却液縦通路82aが、他の冷却液縦通路82bよりも流路抵抗が小さく設定されている。ここで、「エンジン幅方向WDの一方側(カムチェーントンネル側)の冷却液縦通路82a」とは、カムチェーントンネル側の気筒に沿って形成された冷却液縦通路82aをいう。
【0052】
本実施形態では、エンジン幅方向WDのカムチェーントンネル側の冷却液縦通路82aの通路面積をその他の冷却液縦通路82bの通路面積よりも大きくすることで、流路抵抗が小さく設定されている。ここで、「カムチェーントンネル側の冷却液縦通路82aの通路面積」とは、冷却液縦通路82aが複数ある場合、複数の冷却液縦通路82aの通路面積の和をいう。
【0053】
シリンダブロック10とシリンダヘッド8との間にガスケット84が介在されている。本実施形態では、ガスケット84により冷却液縦通路82の一部の開口を部分的に覆うことで、冷却液縦通路82の通路面積を調整して、カムチェーントンネル側の冷却液縦通路82aの流路抵抗を他の冷却液縦通路82bの流路抵抗よりも小さくしている。冷却液縦通路82間で通路面積を異ならせる構造はこれに限定されない。また、通路面積を異ならせるほか、例えば、冷却液縦通路82に抵抗体を配置することにより、冷却液縦通路82間で流路抵抗を異ならせてもよい。
【0054】
このように、カムチェーントンネル側の冷却液縦通路82aの流路抵抗をその他の冷却液縦通路82bの流路抵抗よりも小さくすることで、カムチェーントンネル側の冷却液縦通路82aに優先して冷却液が供給される。その結果、図7に示すように、プラグ循環通路80において、カムチェーントンネル側から反カムチェーントンネル側の出口部58に向かって強い流れFLが発生する。これにより、点火プラグ26のプラグ孔34のボス部35が効果的に冷却される。
【0055】
上記構成によれば、図6に示すように、1気筒、すなわち1つの燃焼室20に2つの点火プラグ30,32を配置することで、通常時には安定した燃焼を実現できるとともに、一方の点火プラグ30(32)が故障した異常時でも、他方の点火プラグ32(30)により点火性能を確保できる。その結果、エンジンEの信頼性が向上する。また、伝達部材収納空間CTの反対側に第2の点火プラグ32を配置することで、燃焼室20と伝達部材収納空間CTの反対側との間を詰め、且つ、エンジンEの幅寸法を抑制できる。
【0056】
本実施形態において、第2の点火プラグ32は、エンジン幅方向WDにおいて、各気筒で同じ側にオフセットしている。オフセットの向きが気筒毎に異なっていると、隣接する気筒間で、第2の点火プラグ32同士が干渉する恐れがある。この構成によれば、オフセットの向きが気筒毎に異なっていないので、隣接する気筒間で、第2の点火プラグ32同士が干渉しない。
【0057】
本実施形態において、直交方向PDに関して、第2の点火プラグ32は、第1の点火プラグ30と同じ位置で、エンジン幅方向WDに並んで配置されている。また、シリンダヘッド8に、第1および第2の点火プラグ30,32を冷却する冷却液が循環する循環通路50が形成され、循環通路50の出口部58が、シリンダヘッド8におけるエンジン幅方向WDの反カムチェーントンネル側の端部に形成されている。この構成によれば、冷却液をエンジン幅方向WDに流す流れを形成しやすい。幅方向の流れにおいて、各点火プラグ26が一列に並ぶことで、点火プラグ26のボス部35が流れを阻害するのを防ぐことができる。
【0058】
本実施形態において、図7に示すように、循環通路50の出口部58が反カムチェーントンネル側の端部に設けられている。この構成によれば、出口部58をカムチェーントンネル側の端部に設けた場合に比べて、エンジンを幅方向WDにコンパクト化できる。
【0059】
本実施形態において、循環通路50の入口部56がシリンダブロック10の壁面に形成され、循環通路50の出口部58が反カムチェーントンネル側に形成され、複数の冷却液縦通路82を介して入口部56から流入した冷却液がプラグ循環通路80に供給されている。複数の冷却液縦通路82のうち、カムチェーントンネルCTに近い冷却液縦通路82aが、他の冷却液縦通路82bよりも流路抵抗が小さく設定されている。この構成によれば、カムチェーントンネルCTからその反対側の出口部58に向かって、冷却液の淀みない流れを形成でき、点火プラグ26の周囲を効率よく冷却できる。
【0060】
本実施形態において、図8に示すように、シリンダブロック10とシリンダヘッド8との間に介在されたガスケット84により、複数の冷却液縦通路82の一部の開口が部分的に覆われている。これにより、冷却液縦通路82の通路面積を調整して、カムチェーントンネルCTに近い冷却液縦通路82aの流路抵抗を他の冷却液縦通路82bの流路抵抗よりも小さくしている。この構成によれば、簡単な構成で、冷却液縦通路82を通過する冷却液の量を設定できる。
【0061】
本実施形態において、図4に示すように、循環通路50の入口部56に接続金具66が装着されており、この接続金具66が、サーモスタット60が収納されたサーモケース65と一体に構成されている。一般に、サーモスタット60は循環通路50の出口部58に設けられることが多い。本実施形態では、点火プラグ26の冷却効果を向上させるために循環通路50の出口部58はエンジン幅方向WDの端部にある。そのため、接続金具66とサーモケース65を一体化(大形化)することは難しい。この構成によれば、循環通路50の入口部56に装着された接続金具66とサーモケース65を一体化することで部品点数を少なくしている。その結果、点火プラグ26の冷却効果の向上と部品点数の低減を両立できる。
【0062】
本実施形態において、図5に示すように、点火プラグ26のコード44が配置されるプラグ孔34が、シリンダヘッド8およびヘッドカバー12に形成されて往復方向VDに延びており、点火プラグ26のコード44が取り出される向きは、直交方向PDに関して、点火プラグ26に対して圧送ポンプ24の反対側に設定されている。この構成によれば、点火プラグ26のコード44と圧送ポンプ24との干渉を防ぐことができる。また、圧送ポンプ24は、排気側の動弁機構21により駆動されている。これにより、吸気側に設けられる燃料配管と、圧送ポンプ24の通路との干渉を防ぎやすい。
【0063】
本開示のエンジンは、以下の態様1~10を含む。
[態様1]
ピストンの往復運動を回転運動に変えるクランクシャフトと、
前記クランクシャフトを支持するクランクケースと、
前記クランクケースからピストンの往復方向に突出し、前記クランクシャフトが延びるエンジン幅方向に並ぶ複数のシリンダと、
前記シリンダの突出端に連結されたシリンダヘッドと、
前記シリンダおよび前記シリンダヘッドの内部に形成された燃焼室で混合気に点火する点火プラグと、
前記燃焼室に吸気を導入する吸気ポートを開閉する吸気バルブと、
前記燃焼室から排気を導出する排気ポートを開閉する排気バルブと、
前記クランクシャフトの回転に連動して前記吸気バルブおよび前記排気バルブを開閉する動弁機構と、
前記動弁機構に前記クランクシャフトの回転を伝達する動力伝達部材と、
前記シリンダおよび前記シリンダヘッドに形成されて前記往復方向に延び、前記動力伝達部材が配置される伝達部材収納空間と、を備えたエンジンであって、
前記点火プラグは、前記燃焼室毎に第1の点火プラグおよび第2の点火プラグを有し、
前記第1の点火プラグが前記シリンダの軸心上に配置され、
前記第2の点火プラグが、前記エンジン幅方向において、前記第1の点火プラグに対して、前記伝達部材収納空間の反対側にオフセットして配置されているエンジン。
[態様2]
態様1に記載のエンジンにおいて、前記第2の点火プラグは、前記エンジン幅方向において、各気筒で同じ側にオフセットしているエンジン。
[態様3]
態様1または2に記載のエンジンにおいて、前記往復方向と前記エンジン幅方向の両方に直交する直交方向に関して、前記第2の点火プラグは、前記第1の点火プラグと同じ位置で、前記エンジン幅方向に並んで配置され、
前記シリンダヘッドに、前記第1および第2の点火プラグを冷却する冷却液が循環する循環通路が形成され、
前記循環通路の入口部および出口部の一方が、前記シリンダヘッドにおけるエンジン幅方向の一方側端部に形成されているエンジン。
[態様4]
態様3に記載のエンジンにおいて、前記伝達部材収納空間が、前記エンジン幅方向の端部に設けられ、
前記循環通路の入口部および出口部の一方が、前記伝達部材収納空間と反対側の前記エンジン幅方向の端部に設けられているエンジン。
[態様5]
態様1から4のいずれか一態様に記載のエンジンにおいて、さらに、
複数の前記シリンダで構成されるシリンダブロックの吸気側の壁面に形成された前記循環通路の入口部と、
前記エンジン幅方向における前記伝達部材収納空間と反対側に形成された前記循環通路の出口部と、
前記シリンダブロックから前記シリンダヘッドに向かって前記往復方向に冷却液を導出する複数の冷却液縦通路と、を備え、
複数の前記冷却液縦通路のうち、前記エンジン幅方向に関して前記伝達部材収納空間に近い冷却液縦通路が、他の冷却液縦通路よりも流路抵抗が小さく設定されているエンジン。
[態様6]
態様5に記載のエンジンにおいて、さらに、前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとの間に介在されたガスケットを備え、
前記ガスケットにより複数の前記冷却液縦通路の一部の開口を部分的に覆うことで、前記冷却液縦通路の通路面積を調整して、前記伝達部材収納空間に近い冷却液縦通路の流路抵抗を他の冷却液縦通路の流路抵抗よりも小さくしているエンジン。
[態様7]
態様1から6のいずれか一態様に記載のエンジンにおいて、さらに、
複数の前記シリンダで構成されるシリンダブロックの吸気側の壁面に形成された前記循環通路の入口部と、
前記エンジン幅方向における前記伝達部材収納空間と反対側に形成された前記循環通路の出口部と、
前記循環通路の入口部に装着された接続金具と、
冷却液の温度調節を行うサーモスタットが収納されたサーモケースと、を備え、
前記接続金具と前記サーモケースが一体に構成されているエンジン。
[態様8]
態様1から7のいずれか一態様に記載のエンジンにおいて、さらに、
前記シリンダヘッドにおける前記往復方向の端部に連結されたヘッドカバーと、
前記シリンダヘッドおよび前記ヘッドカバーに形成されて前記往復方向に延び、前記点火プラグのコードが配置されるプラグ孔と、
前記ヘッドカバーに接続されて前記ヘッドカバーから突出する接続部品と、を備え、
前記点火プラグのコードが取り出される向きは、前記往復方向と前記エンジン幅方向の両方に直交する直交方向に関して、前記点火プラグに対して、前記接続部品の反対側に設定されているエンジン。
[態様9]
態様8に記載のエンジンにおいて、さらに、前記燃焼室内に燃料を直接噴射する直噴インジェクタを備え、
前記接続部品は、前記直噴インジェクタに燃料を圧送する圧送ポンプであるエンジン。
[態様10]
態様9に記載のエンジンにおいて、前記圧送ポンプは、吸気側または排気側の一方の動弁機構により駆動されているエンジン。
【0064】
本開示は、以上の形態に限定されるものでなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態のエンジンEは、自動二輪車、三輪車、四輪バギー(全地形型車両)等の鞍乗型車両にも適用できる。エンジンEは、船外機に用いられてもよいし、航空機の推進源として用いられてもよい。そのほか、エンジンEは、四輪車両や小型滑走艇の推進源として用いられてもよい。気筒数は、6気筒に限定されず、6気筒未満でも、7気筒以上でもよい。エンジンEには、ターボチャージャまたはスーパーチャージャなどの過給機が付与されてもよい。したがって、そのようなものも本開示の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
2 クランクシャフト
4 クランクケース
6 シリンダ
8 シリンダヘッド
10 シリンダブロック
12 ヘッドカバー
22 直噴インジェクタ
23 カムチェーン(動力伝達部材)
24 圧送ポンプ(接続部品)
26 点火プラグ
30 第1点火プラグ
32 第2点火プラグ
34 プラグ孔
50 循環通路
56 入口部
58 出口部
60 サーモスタット
65 サーモケース
66 接続金具
80 プラグ循環通路
82 冷却液縦通路
84 ガスケット
CT カムチェーントンネル(伝達部材収納空間)
E エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10