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特開2024-132870ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制するために用いられる剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132870
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制するために用いられる剤
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20240920BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240920BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240920BHJP
【FI】
G02C7/04
A61P27/02
A61K9/08
A61K47/20
A61K47/22
A61K47/18
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023223147
(22)【出願日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2023043344
(32)【優先日】2023-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100135242
【弁理士】
【氏名又は名称】江守 英太
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸子
(72)【発明者】
【氏名】中田 温子
【テーマコード(参考)】
2H006
4C076
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB06
4C076CC24
4C076DD55
4C076DD60
4C076EE03
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE53
4C076EE54
(57)【要約】
【課題】ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制することのできる製剤を提供すること。
【解決手段】水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、眼科組成物にソフトコンタクトレンズを浸漬した際の該ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制するために用いられる剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、眼科組成物にソフトコンタクトレンズを浸漬した際の該ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制するために用いられる剤。
【請求項2】
眼科組成物にソフトコンタクトレンズを浸漬した際の該ソフトコンタクトレンズの直径の変化量が0.2mm以下である、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減するために用いられる剤。
【請求項4】
水溶性高分子化合物が、ムコ多糖、ビニル系高分子化合物、及びセルロース系高分子化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又3に記載の剤。
【請求項5】
脂溶性成分が、テルペノイド、植物油、鉱物油、動物油、ビタミンA、及びビタミンEからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は3に記載の剤。
【請求項6】
水溶性ビタミンが、ビタミンB12、ビタミンB2、ビタミンB5、及びビタミンB6からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は3に記載の剤。
【請求項7】
pHが5.5~8.5である、請求項1又は3に記載の剤。
【請求項8】
浸透圧比が0.5~1.8である、請求項1又は3に記載の剤。
【請求項9】
請求項1又は3に記載の剤を含有する、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感改善剤。
【請求項10】
請求項1又は3に記載の剤を含有する、ソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
【請求項11】
眼科組成物に、水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、ソフトコンタクトレンズを浸漬した際の該ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制させる作用を眼科組成物に付与する方法。
【請求項12】
眼科組成物に、水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減させる作用を眼科組成物に付与する方法。
【請求項13】
(A)ビタミンB12、(B)脂溶性成分、(C)非イオン界面活性剤、並びに(D)アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される1種又は2種以上を含有する、眼科組成物。
【請求項14】
ソフトコンタクトレンズ用である、請求項13に記載の眼科組成物。
【請求項15】
ビタミンB12を含有する眼科組成物に、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される1種又は2種以上を配合することを特徴とする、ビタミンB12の安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制するために用いられる剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトコンタクトレンズは水分を多く含んでおり、ハードコンタクトレンズに比べて柔らかく装用感が良好であることから、広く使用されている。ここで、ソフトコンタクトレンズに使用するための製剤として、例えば、亜鉛化合物と、クエン酸又はその塩を含有する眼科組成物が報告されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-155414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ソフトコンタクトレンズは、眼科組成物に接触した際に、眼科組成物の組成によってはその形状や物性が変化する場合があり、ソフトコンタクトレンズの直径の変化が大きい、又はソフトコンタクトレンズの弾性率を高めるような製剤を用いると、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時にゴロゴロ感やゴワゴワ感、装用感の悪さ等による不快感が生じるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制することのできる製剤を提供すること、またソフトコンタクトレンズの弾性率を低減することのできる製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、水溶性高分子化合物又は脂溶性成分が、意外にもソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制すること、またソフトコンタクトレンズの弾性率を低減させることができることを見出した。本発明は、これらの知見に基づくものであり、以下の各発明を提供するものである。
【0007】
[1]
水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、眼科組成物にソフトコンタクトレンズを浸漬した際の該ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制するために用いられる剤。
[2]
ソフトコンタクトレンズを浸漬した際の該ソフトコンタクトレンズの直径の変化量が0.2mm以下である、[1]に記載の剤。
[3]
水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減するために用いられる剤。
[4]
水溶性高分子化合物が、ムコ多糖、ビニル系高分子化合物、及びセルロース系高分子化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載の剤。
[5]
脂溶性成分が、テルペノイド、植物油、鉱物油、動物油、ビタミンA、及びビタミンEからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載の剤。
[6]
水溶性ビタミンが、ビタミンB12、ビタミンB2、ビタミンB5、及びビタミンB6からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載の剤。
[7]
[1]~[6]のいずれかに記載の剤を含有する、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感改善剤。
[8]
[1]~[6]のいずれかに記載の剤を含有する、ソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
[9]
pHが5.5~8.5である、[1]~[7]のいずれかに記載の剤又は[8]に記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
[10]
浸透圧比が0.5~1.8である、[1]~[7]のいずれかに記載の剤又は[8]に記載のソフトコンタクトレンズ用眼科組成物。
[11]
眼科組成物に、水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、ソフトコンタクトレンズを浸漬した際の該ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制させる作用を眼科組成物に付与する方法。
[12]
眼科組成物に、水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減させる作用を眼科組成物に付与する方法。
[13]
(A)ビタミンB12、(B)脂溶性成分、(C)非イオン界面活性剤、並びに(D)アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される1種又は2種以上を含有する、眼科組成物。
[14]
ソフトコンタクトレンズ用である、[13]に記載の眼科組成物。
[15]
ビタミンB12を含有する眼科組成物に、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される1種又は2種以上を配合することを特徴とする、ビタミンB12の安定化方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制することのできる製剤を提供することができる。また本発明によれば、ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減することのできる製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本明細書において、特に記載のない限り、含有量の単位「%」は「w/v%」を意味し、「g/100mL」と同義である。
【0011】
〔1.ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制するために用いられる剤、ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減するために用いられる剤〕
本実施形態に係るソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制するために用いられる剤、及びソフトコンタクトレンズの弾性率を低減するために用いられる剤(単に「本実施形態に係る剤」とも表記する。)は、水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
【0012】
〔水溶性高分子化合物〕
水溶性高分子化合物は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0013】
水溶性高分子化合物としては、ムコ多糖類、ビニル系高分子化合物、セルロース系高分子化合物が挙げられる。
【0014】
ムコ多糖類としては、例えば、コンドロイチン硫酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩等が挙げられる。ヒアルロン酸及びコンドロイチン硫酸の塩としては、例えば有機塩基との塩(アミン塩、アルギニン等の塩基性アンモニウム塩等)、無機塩基との塩(アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩等)等が挙げられ、中でもナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩がより好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。ムコ多糖類としては、本発明による効果をより一層高める観点から、コンドロイチン硫酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩が好ましく、コンドロイチン硫酸及びその塩がより好ましい。
【0015】
コンドロイチン硫酸又はその塩の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を顕著に奏することができる観点から、0.1万~10万が好ましく、0.5万~9万がより好ましく、1万~8万がさらに好ましく、2万~7万が特に好ましく、4万~7万が最も好ましい。なお、コンドロイチン硫酸又はその塩の重量平均分子量は、多角度光散乱検出器(MALS検出器)と示差屈折率検出器(RI検出器)をオンライン接続したゲル浸透クロマトグラフィーを使用することによって求めることができる。具体的には、下記の条件が提示される。
<標準試料調製>
コンドロイチン硫酸又はその塩5mgに、0.1M硝酸ナトリウム水溶液10mLを加え、室温で緩やかに攪拌し、完全に溶解させたもの。
<重量平均分子量の測定条件>
装置 :ゲル浸透クロマトグラフ-多角度光散乱計
検出器 :示差屈折率検出器(Wyatt Technology製 Optilab rEX)
多角度光散乱検出器(Wyatt Technology製 DAWN HELEOS)
カラム :Shodex OHpak SB-806M HQ 2本(φ7.8mm×30cm、昭和電工製)
溶媒 :0.1M硝酸ナトリウム水溶液
流速 :0.7mL/min
カラム温度 :23℃
検出器温度 :23℃
注入量 :0.2mL
データ処理 :Wyatt Technology製データ処理システム(ASTRA)
【0016】
ビニル系高分子化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。ビニル系高分子化合物としては、本発明による効果をより一層高める観点から、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0017】
ポリビニルピロリドンのK値は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を顕著に奏することができる観点から、10~200が好ましく、30~150がより好ましく、60~120がさらに好ましい。また、その中でも、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK60、ポリビニルピロリドンK90が好ましく、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90がより好ましく、ポリビニルピロリドンK90がさらに好ましい。なお、ポリビニルピロリドンのK値(粘性特性値)は、第十七改正日本薬局方「ポビドン」に記載の方法に準じて算出される。K値は、表示K値の90~108%であることから、例えば、「K90」とは、K値(粘性特性値)が81.0~97.2の範囲にあるものをいう。
【0018】
セルロース系高分子化合物としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、及びそれらの塩が挙げられる。このような塩としては、例えば有機塩基との塩(アミン塩、アルギニン等の塩基性アンモニウム塩等)、無機塩基との塩(アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩等)等が挙げられ、中でもナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩がより好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。セルロース系高分子化合物としては、本発明による効果をより一層高める観点から、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースが好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)がより好ましい。
【0019】
本実施形態に係る剤における水溶性高分子化合物の含有量は特に限定されず、水溶性高分子化合物の種類、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態等に応じて適宜設定される。水溶性高分子化合物の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、水溶性高分子化合物の総含有量が、0.00001~10w/v%であることが好ましく、0.0001~5w/v%であることがより好ましく、0.0005~5w/v%であることが更に好ましく、0.001~3w/v%であることが特に好ましい。
【0020】
水溶性高分子化合物がコンドロイチン硫酸及びその塩の場合、その含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、コンドロイチン硫酸及びその塩の総含有量が、0.00001~5w/v%であることが好ましく、0.0001~3w/v%であることがより好ましく、0.0005~1w/v%であることが更に好ましく、0.001~0.5w/v%であることが更により好ましく、0.005~0.5w/v%であることが特に好ましい。
【0021】
水溶性高分子化合物がヒアルロン酸及びその塩の場合、その含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、ヒアルロン酸及びその塩の総含有量が、0.00001~1w/v%であることが好ましく、0.0001~0.5w/v%であることがより好ましく、0.0005~0.3w/v%であることが更に好ましく、0.001~0.1w/v%であることが更により好ましく、0.001~0.05w/v%であることが特に好ましい。
【0022】
水溶性高分子化合物がポリビニルピロリドンの場合、その含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、ポリビニルピロリドンの総含有量が、0.0001~10w/v%であることが好ましく、0.0005~5w/v%であることがより好ましく、0.001~5w/v%であることが更に好ましく、0.005~3w/v%であることが更により好ましく、0.01~3w/v%であることが特に好ましく、0.01~1w/v%であることが最も好ましい。
【0023】
水溶性高分子化合物がヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)の場合、その含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)の総含有量が、0.0001~10w/v%であることが好ましく、0.0005~5w/v%であることがより好ましく、0.001~3w/v%であることが更に好ましく、0.005~1w/v%であることが更により好ましく、0.01~1w/v%であることが特に好ましく、0.01~0.5w/v%であることが最も好ましい。
【0024】
水溶性高分子化合物がヒドロキシエチルセルロースの場合、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、ヒドロキシエチルセルロースの総含有量が、0.0001~10w/v%であることが好ましく、0.0005~5w/v%であることがより好ましく、0.001~3w/v%であることが更に好ましく、0.005~1w/v%であることが更により好ましく、0.01~1w/v%であることが特に好ましく、0.01~0.5w/v%であることが最も好ましい。
【0025】
水溶性高分子化合物がメチルセルロースの場合、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、メチルセルロースの総含有量が、0.0001~10w/v%であることが好ましく、0.0005~5w/v%であることがより好ましく、0.001~5w/v%であることが更に好ましく、0.005~3w/v%であることが更により好ましく、0.01~1w/v%であることが特に好ましく、0.01~0.5w/v%であることが最も好ましい。
【0026】
水溶性高分子化合物がカルボキシメチルセルロース及びその塩の場合、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、カルボキシメチルセルロースの総含有量が、0.0001~10w/v%であることが好ましく、0.0005~5w/v%であることがより好ましく、0.001~5w/v%であることが更に好ましく、0.005~3w/v%であることが更により好ましく、0.005~1w/v%であることが特に好ましく、0.005~0.5w/v%であることが最も好ましい。また、カルボキシメチルセルロース及びその塩としては、カルボキシメチルセルロースナトリウムが好ましい。
【0027】
〔脂溶性成分〕
脂溶性成分は水分子との親和性が低い成分である。脂溶性成分は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0028】
脂溶性成分としては、テルペノイド、植物油、鉱物油、動物油、ビタミンA、ビタミンEが挙げられる。
【0029】
テルペノイドとしては、例えば、メントール、メントン、カンフル(「ショウノウ」又は「樟脳」ともいう。)、ボルネオール(「リュウノウ」又は「竜脳」ともいう。)、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、チモール、シメン、テルピネオール、ピネン、カンフェン、イソボルネオール、フェンチェン、ネロール、ミルセン、ミルセノール、酢酸リナロール、ラバンジュロールが挙げられる。テルペノイドはd体、l体及びdl体のいずれであってもよく、例えば、l-メントール、d-メントール、dl-メントール、dl-カンフル、d-カンフル、dl-ボルネオール及びd-ボルネオールが挙げられる。また、本明細書におけるテルペノイドには、テルペノイドを含有する精油(例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油、樟脳油等)も含まれる。
【0030】
テルペノイドとしては、本発明による効果をより一層高める観点から、メントール、カンフル、ボルネオール、メントン、ゲラニオール、ユーカリ油及びベルガモット油が好ましく、メントール、カンフル及びボルネオールがより好ましく、メントールが更に好ましく、l-メントールが更により好ましい。
【0031】
植物油としては、グリセリンに脂肪酸が結合した油を含むものが挙げられる。例えば、ゴマ油、ヒマシ油、ダイズ油、ラッカセイ油、オリーブ油、アボカド油、アルモンド油、小麦胚芽油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、綿実油、ヤシ油が挙げられる。
【0032】
植物油としては、本発明による効果をより一層高める観点から、ゴマ油、ヒマシ油が好ましく、ゴマ油がより好ましい。
【0033】
鉱物油としては、例えば、流動パラフィン、ワセリン、(白色ワセリン、黄色ワセリン等)等が挙げられる。流動パラフィンとしては、比重については特に制限されない。流動パラフィンとしては、流動イソパラフィン、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、軽質流動パラフィン、重質流動パラフィン、重質流動イソパラフィン等があげられる。中でも、流動パラフィン及び軽質流動パラフィン等が好ましく、日本薬局方に収載された流動パラフィンがより好ましい。
【0034】
鉱物油としては、本発明による効果をより一層高める観点から、流動パラフィン、ワセリンが好ましく、流動パラフィンがより好ましい。
【0035】
動物油としては、例えば、ラノリン(精製ラノリン等)、オレンジラフィー油、スクワラン及び馬油等が挙げられる。
【0036】
ビタミンAとしては、レチノール及びその誘導体が挙げられる。レチノール誘導体の具体例としては、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール、レチナール、レチノイン酸が挙げられる。ビタミンAとしては、レチノール誘導体が好ましく、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノールがより好ましく、パルミチン酸レチノールが更に好ましい。
【0037】
ビタミンEとしては、トコフェロール及びその誘導体が挙げられる。トコフェロール誘導体の具体例としては、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロールが挙げられる。ビタミンEとしては、トコフェロール誘導体が好ましく、酢酸トコフェロールがより好ましい。
【0038】
脂溶性成分は市販されているものを使用してもよい。脂溶性成分は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
本実施形態に係る剤における脂溶性成分の含有量は特に限定されず、脂溶性成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態等に応じて適宜設定される。脂溶性成分の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、脂溶性成分の総含有量が、0.00001~1w/v%であることが好ましく、0.0001~0.8w/v%であることがより好ましく、0.0005~0.5w/v%であることが更に好ましく、0.001~0.3w/v%であることが更により好ましく、0.005~0.1w/v%であることが特に好ましい。
【0040】
脂溶性成分がテルベノイドの場合、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、テルベノイドの総含有量が、0.0001~0.5w/v%であることが好ましく、0.0005~0.3w/v%であることがより好ましく、0.008~0.1w/v%であることが更に好ましく、0.005~0.1w/v%であることが更に好ましく、0.005~0.1w/v%であることが更により好ましい。
【0041】
脂溶性成分が植物油の場合、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、植物油の総含有量が、0.00001~1w/v%であることが好ましく、0.0001~0.5w/v%であることがより好ましく、0.0005~0.3w/v%であることが更に好ましく、0.001~0.1w/v%であることが更により好ましく、0.01~0.08w/v%であることが特に好ましい。
【0042】
脂溶性成分が鉱物油の場合、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、鉱物油の総含有量が、0.00001~1w/v%であることが好ましく、0.0001~0.5w/v%であることがより好ましく、0.0005~0.3w/v%であることが更に好ましく、0.001~0.1w/v%であることが更により好ましく、0.001~0.08w/v%であることが特に好ましい。
【0043】
脂溶性成分が動物油の場合、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、動物油の総含有量が、0.00001~1w/v%であることが好ましく、0.0001~0.5w/v%であることがより好ましく、0.0005~0.3w/v%であることが更に好ましく、0.001~0.1w/v%であることが更により好ましく、0.001~0.08w/v%であることが特に好ましい。
【0044】
脂溶性成分がビタミンAの場合、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、ビタミンAの総含有量が、0.0005~0.15w/v%であることが好ましく、0.0015~0.1w/v%であることがより好ましく、0.0025~0.09w/v%であることが更に好ましく、0.004~0.08w/v%であることが更により好ましく、0.005~0.06w/v%であることが特に好ましく、0.005~0.03w/v%であることが最も好ましい。また、ビタミンAの総含有量が、1,000~200,000単位/100mLであることが好ましく、3,000~180,000単位/100mLであることがより好ましく、5,000~150,000単位/100mLであることが更に好ましく、8,000~130,000単位/100mLであることが更により好ましく、10,000~100,000単位/100mLであることが特に好ましく、10,000~50,000単位/100mLであることが最も好ましい。
【0045】
脂溶性成分がビタミンEの場合、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、ビタミンEの総含有量が、0.001~1w/v%であることが好ましく、0.003~0.8w/v%であることがより好ましく、0.005~0.5w/v%であることが更に好ましく、0.008~0.3w/v%であることが更により好ましく、0.01~0.1w/v%であることが特に好ましく、0.01~0.05w/v%であることが最も好ましい。
【0046】
〔水溶性ビタミン〕
水溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンB12(コバラミン及びその誘導体;例えば、シアノコバラミン、メチルコバラミン等)、ビタミンB2(フラビンアデニンジヌクレオチド及びその塩;例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム等)、ビタミンB5(パントテン酸及びその前駆体並びにそれらの塩;例えば、パントテン酸ナトリウム、パントテン酸カリウム、パントテン酸カルシウム、パントテン酸マグネシウム等のパントテン酸の塩、パンテノール、パントテニールエチルエーテル等のパントテン酸前駆体)、ビタミンB6(ピリドキシン及びその塩;例えば、ピリドキシン塩酸塩等)等のビタミンB類;アスコルビン酸及びその塩(例えば、アスコルビン酸ナトリウム等)等のビタミンCが挙げられる。水溶性ビタミンの中でも、本発明による効果をより一層高める観点から、ビタミンB類が好ましく、ビタミンB12、ビタミンB2、ビタミンB5、ビタミンB6がより好ましく、ビタミンB12、ビタミンB6が更に好ましい。また、ビタミンB12の中でもシアノコバラミンが好ましく、ビタミンB2の中でもフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウムが好ましく、ビタミンB5の中でもパントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、パンテノールが好ましく、ビタミンB6の中でもピリドキシン塩酸塩が好ましい。
【0047】
水溶性ビタミンとして、市販されているものを使用することもできる。水溶性ビタミンは、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
水溶性ビタミンの含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、水溶性ビタミンの総含有量が、0.0001~0.5w/v%であることが好ましく、0.0005~0.3w/v%であることがより好ましく、0.001~0.2w/v%であることが更に好ましい。
【0049】
水溶性ビタミンがビタミンB12の場合、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、ビタミンB12の総含有量が0.0001~0.2w/v%であることが好ましく、0.0005~0.1w/v%であることがより好ましく、0.001~0.05w/v%であることが更に好ましい。
【0050】
水溶性ビタミンがビタミンB2の場合、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、ビタミンB12の総含有量が0.0005~0.3w/v%であることが好ましく、0.001~0.2w/v%であることがより好ましく、0.005~0.1w/v%であることが更に好ましい。
【0051】
水溶性ビタミンがビタミンB5又はビタミンB6の場合、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る眼科組成物の総量を基準として、ビタミンB12の総含有量が0.001~0.5w/v%であることが好ましく、0.005~0.3w/v%であることがより好ましく、0.01~0.2w/v%であることが更に好ましい。
【0052】
〔アミノエチルスルホン酸及びその塩〕
アミノエチルスルホン酸(タウリン)及びその塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。アミノエチルスルホン酸及びその塩としては、アミノエチルスルホン酸(タウリン)が好ましい。アミノエチルスルホン酸及びその塩については、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、アミノエチルスルホン酸及びその塩の総含有量が、0.0001~10w/v%であることが好ましく、0.0005~5w/v%であることがより好ましく、0.001~5w/v%であることが更に好ましく、0.005~3w/v%であることが更により好ましく、0.01~2w/v%であることが特に好ましく、0.05~1w/v%であることが最も好ましい。
【0053】
〔クロルフェニラミン及びその塩〕
クロルフェニラミン及びその塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。クロルフェニラミン及びその塩としては、クロルフェニラミンマレイン酸塩が好ましい。クロルフェニラミン及びその塩については、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、クロルフェニラミン及びその塩の総含有量が、0.0001~1w/v%であることが好ましく、0.0005~0.5w/v%であることがより好ましく、0.0005~0.1w/v%であることが更に好ましく、0.0008~0.08w/v%であることが更により好ましく、0.001~0.05w/v%であることが特に好ましく、0.006~0.03w/v%であることが最も好ましい。
【0054】
〔ネオスチグミン及びその塩〕
ネオスチグミン及びその塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。ネオスチグミン及びその塩としては、ネオスチグミンメチル硫酸塩が好ましい。ネオスチグミン及びその塩については、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、ネオスチグミン及びその塩の総含有量が、0.000001~1w/v%であることが好ましく、0.00005~0.5w/v%であることがより好ましく、0.00008~0.1w/v%であることが更に好ましく、0.00008~0.05w/v%であることが更により好ましく、0.0001~0.01w/v%であることが特に好ましく、0.001~0.005w/v%であることが最も好ましい。
【0055】
〔緩衝剤〕
本実施形態に係る剤は、更に緩衝剤を含有することが好ましい。本実施形態に係る剤が緩衝剤を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。緩衝剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0056】
緩衝剤としては、例えば、無機酸由来の緩衝剤である無機緩衝剤、及び有機酸又は有機塩基由来の緩衝剤である有機緩衝剤等が挙げられる。
【0057】
無機緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤等が挙げられる。ホウ酸緩衝剤としては、ホウ酸又はその塩(ホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ土類金属塩等)等が挙げられる。リン酸緩衝剤としては、リン酸又はその塩(リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等)等が挙げられる。炭酸緩衝剤としては、炭酸又はその塩(炭酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ土類金属塩等)等が挙げられる。また、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤又は炭酸緩衝剤として、ホウ酸塩、リン酸塩又は炭酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、ホウ酸緩衝剤として、ホウ酸又はその塩(ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等);リン酸緩衝剤として、リン酸又はその塩(リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等);炭酸緩衝剤として、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等)等が挙げられる。
【0058】
有機緩衝剤としては、例えば、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、乳酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、トリス緩衝剤、AMPD緩衝剤等が挙げられる。クエン酸緩衝剤としては、クエン酸又はその塩(クエン酸アルカリ金属塩、クエン酸アルカリ土類金属塩等)等が挙げられる。酢酸緩衝剤としては、酢酸又はその塩(酢酸アルカリ金属塩、酢酸アルカリ土類金属塩等)等が挙げられる。乳酸緩衝剤としては、乳酸又はその塩(乳酸アルカリ金属塩、乳酸アルカリ土類金属塩等)等が挙げられる。コハク酸緩衝剤としては、コハク酸又はその塩(コハク酸アルカリ金属塩等)等が挙げられる。また、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、乳酸緩衝剤又はコハク酸緩衝剤として、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩又はコハク酸塩の水和物を用いてもよい。より具体的な例として、クエン酸緩衝剤として、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等);酢酸緩衝剤として、酢酸又はその塩(酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム等);乳酸緩衝剤として、乳酸又はその塩(乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム等);コハク酸緩衝剤としてコハク酸又はその塩(コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム等)などが例示できる。トリス緩衝剤としては、例えば、トロメタモール又はその塩(トロメタモール塩酸塩等)等が挙げられる。AMPD緩衝剤としては、例えば、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール又はその塩等が挙げられる。
【0059】
緩衝剤としては、本発明による効果をより一層高める観点から、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤が好ましく、ホウ酸緩衝剤がより好ましく、ホウ酸又はその塩が更に好ましい。
【0060】
緩衝剤は、市販されているものを使用してもよい。緩衝剤は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
本実施形態に係る剤における緩衝剤の含有量は特に限定されず、緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態等に応じて適宜設定される。緩衝剤の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、緩衝剤の総含有量が、0.01~10w/v%であることが好ましく、0.05~5w/v%であることがより好ましく、0.1~3w/v%であることが更に好ましい。
【0062】
〔浸透圧調整剤〕
本実施形態に係る弾性率低減剤は、更に浸透圧調整剤を含有することが好ましい。本実施形態に係る剤が浸透圧調整剤を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。浸透圧調整剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0063】
浸透圧調整剤としては、例えば、無機塩類、アミノ酸類、糖類、糖アルコール類、グリコール類等が挙げられる。無機塩類としては、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の金属の塩化物;塩化アンモニウム;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム等の金属の硫酸塩;亜硫酸水素ナトリウム;亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。アミノ酸類としては、例えば、εアミノカプロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、グリシン、アラニン、リジン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ吉草酸、トリメチルグリシン、及びそれらの塩等が挙げられる。糖類としては、例えば、ブドウ糖等の単糖類;スクロース、トレハロース等の二糖類等が挙げられる。糖アルコール類としては、例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン等が挙げられる。グリコール類としては、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0064】
浸透圧調整剤としては、本発明による効果をより一層高める観点から、無機塩類、アミノ酸類、単糖類が好ましい。無機塩類としては、塩化ナトリウムが好ましい。アミノ酸類としては、εアミノカプロン酸、アスパラギン酸、及びそれらの塩が好ましい。単糖類としては、ブドウ糖がより好ましい。
【0065】
浸透圧調整剤は、市販されているものを使用してもよい。浸透圧調整剤は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
本実施形態に係る剤における浸透圧調整剤の含有量は特に限定されず、浸透圧調整剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態等に応じて適宜設定される。浸透圧調整剤の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、浸透圧調整剤の総含有量が、0.01~10w/v%であることが好ましく、0.05~5w/v%であることがより好ましく、0.1~3w/v%であることが更に好ましい。
【0067】
〔非イオン界面活性剤〕
本実施形態に係る剤は、更に非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。本実施形態に係る剤が非イオン界面活性剤を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。非イオン界面活性剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。
【0068】
非イオン界面活性剤としては、例えば、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロクサマー403、ポロクサマー237、ポロクサマー124等のPOE・POPグリコール類;POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油50、POE硬化ヒマシ油60、POE硬化ヒマシ油80等のPOE硬化ヒマシ油;POEヒマシ油3、POEヒマシ油4、POEヒマシ油6、POEヒマシ油7、POEヒマシ油10、POEヒマシ油13.5、POEヒマシ油17、POEヒマシ油20、POEヒマシ油25、POEヒマシ油30、POEヒマシ油35、POEヒマシ油50等のPOEヒマシ油;モノステアリン酸ポリエチレングリコール(2E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(4E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(9E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(23E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(32E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)(ステアリン酸ポリオキシル40)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(45E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(75E.O.)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(140E.O.)等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類等が挙げられる。なお、上記例示した化合物において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレン、及び括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0069】
非イオン界面活性剤としては、本発明による効果をより一層高める観点から、POEソルビタン脂肪酸エステル類;POE・POPグリコール類;POE硬化ヒマシ油;POEヒマシ油;モノステアリン酸ポリエチレングリコールが好ましく、POE硬化ヒマシ油;POEヒマシ油がより好ましい。
【0070】
非イオン界面活性剤は、市販されているものを使用してもよい。非イオン界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0071】
本実施形態に係る剤における非イオン界面活性剤の含有量は特に限定されず、非イオン界面活性剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態等に応じて適宜設定される。非イオン界面活性剤の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、非イオン界面活性剤の総含有量が、0.001~5w/v%であることが好ましく、0.005~3w/v%であることがより好ましく、0.01~1w/v%であることが更に好ましい。
【0072】
本実施形態に係るソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制するために用いられる剤において、眼科組成物にソフトコンタクトレンズを浸漬した際のソフトコンタクトレンズの直径の変化量は特に限定されるものではないが、コンタクトレンズ装着時の不快感をより一層低減することができることから、0.2mm以下であることが好ましく、0.15mm以下であることがより好ましく、0.1mm以下であることがさらに好ましい。
【0073】
本実施形態に係る剤のpHは、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。本実施形態に係る剤のpHとしては、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、5.0~9.0であることが好ましく、5.5~8.5であることがより好ましく、5.8~8.3であることが更に好ましく、6.0~8.0であることが更により好ましい。
【0074】
本実施形態に係る剤は、必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧比に調節することができる。適切な浸透圧比は、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定され得るが、本発明による効果をより一層高める観点から、例えば、0.5~1.8とすることが好ましく、0.7~1.6とすることがより好ましく、0.9~1.4とすることが更に好ましい。浸透圧比は、第十七改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(凝固点降下法)を参考にして測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
【0075】
本実施形態に係る剤のナトリウムイオン濃度は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。本実施形態に係る剤のナトリウムイオン濃度としては、5~280mMが好ましく、10~250mMがより好ましく、20~220mMがさらに好ましい。なお、ナトリウムイオン濃度は、組成物における濃度を測定(直接的に測定)して得てもよく、組成物を構成する成分(原料)中のナトリウム(イオン)量又は濃度から組成物における濃度を算出(間接的に測定)することにより得てもよい。なお、組成物又は原料中のナトリウム(イオン)濃度は、慣用の方法又は装置(例えば、イオンクロマトグラフィー法など)で測定することができる。
【0076】
本実施形態に係る剤の粘度は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば、特に限定されるものではない。本実施形態に係る剤の粘度としては、例えば、回転粘度計(TV-20型粘度計、東機産業社製、ローター;1°34’×R24)で測定した20℃における粘度が1~100mPa・sであることが好ましく、1~20mPa・sであることがより好ましく、1~10mPa・sであることが更に好ましい。
【0077】
本実施形態に係る剤は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記成分の他に種々の薬理活性成分及び生理活性成分から選択される成分を組み合わせて適当量含有していてもよい。当該成分は特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造販売承認基準2017年版(一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会 監修)に記載された眼科用薬における有効成分が例示できる。眼科用薬において用いられる成分として、具体的には、例えば、次のような成分等が挙げられる。
抗アレルギー剤:例えば、クロモグリク酸又はその塩(例えば、クロモグリク酸ナトリウム)、トラニラスト、ペミロラストカリウム、アシタザノラスト、アンレキサノクス、イブジラスト等。
抗ヒスタミン剤:例えば、ジフェンヒドラミン又はその塩(例えば、塩酸ジフェンヒドラミン)、イプロヘプチン又はその塩(例えば、塩酸イプロヘプチン)、レボカバスチン又はその塩(例えば、塩酸レボカバスチン)、ケトチフェン又はその塩(例えば、フマル酸ケトチフェン)、ペミロラストカリウム、オロパタジン又はその塩(例えば、オロパタジン塩酸塩)、エピナスチン又はその塩(例えば、エピナスチン塩酸塩)等。
ステロイド剤:例えば、プロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン酸フルチカゾン、フランカルボン酸モメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、フルニソリド等。
充血除去剤:例えば、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸フェニレフリン、dl-塩酸メチルエフェドリン等。
眼筋調節薬剤:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、具体的にはトロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピン、塩酸ピロカルピン等。
消炎剤:例えば、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アラントイン、トラネキサム酸、リゾチーム、塩化リゾチーム、インドメタシン、プラノプロフェン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ケトプロフェン、フェルビナク、ベンダザック、ピロキシカム、ブフェキサマク、フルフェナム酸ブチル、イプシロン-アミノカプロン酸、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸又はその塩(例えば、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム)、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛等。
収斂剤:例えば、亜鉛華等。
その他:例えば、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルフイソミジン及びそれらの塩等。
【0078】
本実施形態に係る剤には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その製剤形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択し、1種又はそれ以上を併用して適当量含有させてもよい。このような添加物として、例えば、医薬品添加物事典2021(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物等が挙げられる。
担体:例えば、水、含水エタノール等の水性溶媒。
キレート剤:例えば、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等。
基剤:例えば、オクチルドデカノール、酸化チタン、臭化カリウム、プラスチベース等。
pH調節剤:例えば、塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等。
イオン性界面活性剤:例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、N-アシルタウリン塩等の陰イオン界面活性剤;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性イオン界面活性剤等。
安定化剤:例えば、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、シクロデキストリン、モノエタノールアミン、ジブチルヒドロキシトルエン、ピロ亜硫酸ナトリウム等。
防腐剤:例えば、アルキルポリアミノエチルグリシン類第四級アンモニウム塩(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等)、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ポリドロニウム、安息香酸ナトリウム、エタノール、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、塩酸ポリヘキサニド(ポリヘキサメチレンビグアニド)、アレキシジン等)、グローキル(ローディア社製 商品名)等。
【0079】
本実施形態に係る剤が水を含有する場合、水の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る剤の総量を基準として、水の含有量が、80w/v%以上100w/v%未満であることが好ましく、85w/v%以上99.5w/v%以下であることがより好ましく、90w/v%以上99.2w/v%以下であることが更に好ましい。
【0080】
本実施形態に係る剤に使用される水は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであればよい。このような水として、例えば、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水及び注射用蒸留水等を挙げることができる。それらの定義は第十七改正日本薬局方に基づく。
【0081】
本実施形態に係る剤は、所望量の各成分を所望の濃度となるように添加及び混和することにより調製することができる。例えば、精製水でそれらの成分を溶解又は分散させ、所定のpH及び浸透圧に調整し、濾過滅菌等により滅菌処理することで調製できる。
【0082】
本実施形態に係る剤は、眼科分野で、ソフトコンタクトレンズに接触するように使用されるものであれば、その製剤形態については制限されない。例えば、コンタクトレンズ用点眼剤(ソフトコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤、ソフトコンタクトレンズを装着したまま使用可能な人工涙液を含む)、ソフトコンタクトレンズ用洗眼剤(ソフトコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤。)、コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)、コンタクトレンズパッケージ液等]として用いることができる。なお、「コンタクトレンズ」は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ(イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの双方を包含する)を含む。
【0083】
ここで、ソフトコンタクトレンズの「イオン性」とは、薬生薬審発0330第6号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知,薬生機審発0330第4号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知「ソフトコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズ用消毒剤の製造(輸入)承認申請に際し添付すべき資料の取り扱い等について」(令和3年3月30日)に則り、原材料ポリマーの構成モノマーのうち陰イオンを有するモノマーのモル%が0.5%以上であるものをいう。
【0084】
また、ソフトコンタクトレンズの「含水率」とは、ソフトコンタクトレンズ中の水の割合を示し、具体的には以下の計算式により求められる。
含水率(%)=(含水した水の重量/含水状態のソフトコンタクトレンズの重量)×100
かかる含水率はISO18369-4:2017の記載に従って、重量測定方法により測定され得る。
【0085】
本実施形態に係る剤の使用方法としては、該眼科組成物をソフトコンタクトレンズに接触させることとなる工程を有する公知の方法であれば、特に限定はない。例えば、ソフトコンタクトレンズ用点眼剤の場合、ソフトコンタクトレンズの装着前又は装用中に、該点眼剤の適量を点眼すればよい。また、ソフトコンタクトレンズ用洗眼剤の場合も、ソフトコンタクトレンズの装着前又は装用中、該洗眼剤の適量を洗眼に使用すればよい。なお、ソフトコンタクトレンズ用点眼剤又はソフトコンタクトレンズ用洗眼剤は、ソフトコンタクトレンズを装用している時はもちろん、装用していない時でも点眼や洗眼の目的で使用することができる。また、ソフトコンタクトレンズ装着液の場合、ソフトコンタクトレンズの装着時にソフトコンタクトレンズと該装着液の適量を接触させることにより使用される。更に、ソフトコンタクトレンズケア用液剤の場合であれば、適量の該ケア用液剤中にソフトコンタクトレンズを浸漬したり、該ケア用液剤にソフトコンタクトレンズを接触させて擦り洗いすること等によって使用される。
【0086】
本実施形態に係る剤において、適用対象となるソフトコンタクトレンズの種類は特に限定されず、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ、(非シリコーン)ハイドロゲルコンタクトレンズのいずれも使用することができる。別の態様として、本実施形態に係る剤においては、薬生薬審発0330第6号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知,薬生機審発0330第4号厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課長通知「ソフトコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズ用消毒剤の製造(輸入)承認申請に際し添付すべき資料の取り扱い等について」(令和3年3月30日)においてグループ1~4に分類されるソフトコンタクトレンズを適用対象にすることもできる。ここで、グループ1に分類されるソフトコンタクトレンズは非イオン性で含水率が50%未満であり、グループ2に分類されるソフトコンタクトレンズは非イオン性で含水率が50%以上であり、グループ3に分類されるソフトコンタクトレンズはイオン性で含水率が50%未満であり、グループ4に分類されるソフトコンタクトレンズはイオン性で含水率が50%以上である。本実施形態に係る剤において、適用対象となるソフトコンタクトレンズの種類は、本発明による効果をより一層高める観点から、グループ1、2、及び4に分類されるソフトコンタクトレンズが好ましく、グループ1及び4に分類されるハイドロゲルコンタクトレンズ又はグループ2に分類されるシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズがより好ましい。
【0087】
本実施形態に係る剤が点眼剤である場合、その用法・用量としては、効果を奏し、副作用の少ない用法・用量であれば特に限定されないが、例えば成人(15歳以上)及び7歳以上の小児の場合、1回1~3滴、1~2滴、又は2~3滴を1日2~4回、又は5~6回点眼して用いる方法を例示でき、1回1~2滴又は1回1~3滴を1日4回又は1日5~6回点眼して用いる方法が好ましく、1回1~3滴、1日5~6回がより好ましい。
【0088】
本実施形態に係る剤は、任意の容器に収容して提供される。本実施形態に係る剤を収容する容器については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。好ましくはプラスチック製である。プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリプロピレン、高密度ポリプロピレン、ポリイミド及びこれらを構成するモノマーの共重合体、並びにこれら2種以上を混合したもの等が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレートである。また、本実施形態に係る剤を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。好ましくは透明容器である。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器及び有色透明容器の双方が含まれる。
【0089】
本実施形態に係る剤を収容する容器には、ノズルが装着されてもよい。ノズルの材質については特に制限されず、例えば、ガラス製であってもよく、またプラスチック製であってもよい。好ましくはプラスチック製である。プラスチックとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリプロピレン、高密度ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びこれらを構成するモノマーの共重合体、並びにこれら2種以上を混合したもの等が挙げられる。ノズルの材質としては、本発明の効果をより一層高めるという観点から、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0090】
本実施形態に係る剤を収容する容器は、複数回の使用量が収容されるマルチドーズ型であってもよく、単回の使用量が収容されるユニットドーズ型であってもよい。
【0091】
本実施形態に係る剤を収容する容器の形状及び容量は特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよい。例えば、容器が、点眼剤、点眼して使用する洗眼剤、又はコンタクトレンズ装着液を収容する容器の場合、例えば、容量が0.3mL以上50mL以下であってよく、2mL以上40mL以下であることが好ましく、4mL以上25mL以下であることがより好ましい。また容器が、洗眼カップを使用する洗眼剤又はコンタクトレンズケア用液を収容する容器であれば、例えば、容量が40mL以上600mL以下であってよい。
【0092】
本実施形態に係る剤を収容する容器は、包囲体に密封されてもよい。包囲体は特に制限されず、例えば、エージレスオーマック(三菱ガス化学社製)、オキシガード(東洋製罐社製)、オキシデック(東洋製罐社製)、オキシキャッチ(共同印刷社製)、ダイアミロン(三菱ケミカル社製)、ハイスターO2(スタープラスチック工業社製)、Cryovac(シールドエアー社製)等が挙げられる。
【0093】
本実施形態に係る剤を収容する容器が包囲体に密封される場合、包囲体に脱酸素剤を同封してもよい。脱酸素剤は特に制限されず、例えば、エージレス(三菱ガス化学社製)、StabilOx(Multisorb社製)、ウェルパック(タイセイ社製)、エバーフレッシュ(鳥繁産業社製)、オキシーター(上野製薬社製)、キーピット(ドレンシー社製)、ケプロン(ケプロン社製)、サンソカット(アイリス・ファインプロダクツ社製)、サンソレス(博洋社製)、セキュール(ニッソー樹脂社製)、タモツ(大江化学工業社製)、バイタロン(常盤産業社製)、モデュラン(日本化薬フードテクノ社製)、ワンダーキープ(パウダーテック社製)、鮮度保持剤C(凸版印刷社製)をそのまま、又は適宜包装したもの等が挙げられる。
【0094】
本実施形態に係る剤において、眼科組成物にソフトコンタクトレンズを浸漬した際の該ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制する割合(以下、「レンズ直径の変化抑制率」ともいう)は特に限定されないが、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。ここで、本実施形態におけるレンズ直径の変化抑制率は、以下の式で算出される。
[式]レンズ直径の変化抑制率(%)=比較組成物にソフトコンタクトレンズを浸漬した際の該ソフトコンタクトレンズの直径の変化量(mm)-本実施形態に係る剤にソフトコンタクトレンズを浸漬した際の該ソフトコンタクトレンズの直径の変化量(mm)/比較組成物にソフトコンタクトレンズを浸漬した際の該ソフトコンタクトレンズの直径の変化量(mm)×100
ここで、比較組成物とは、水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩のいずれの成分も含まないこと以外は本実施形態に係る剤と組成が同一である組成物である。
【0095】
また、本実施形態に係る剤において、ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減させる割合(以下、「弾性率の低下率」ともいう)は特に限定されないが、ソフトコンタクトレンズの弾性率の低下率が10~50%であることが好ましい。ここで、本実施形態におけるソフトコンタクトレンズの弾性率の低下率は、以下の式で算出される。なお、本明細書において「ソフトコンタクトレンズの弾性率」とは、AntonPaar社製のMCR302レオメーターを使用し、パラレルプレートPP12/P12を用いることで測定した値を意味する。
[式]弾性率の低下率(%)=比較組成物の弾性率(Pa)-本実施形態に係る剤の弾性率(Pa)/比較組成物の弾性率(Pa)×100
ここで、比較組成物とは、水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩のいずれの成分も含まないこと以外は本実施形態に係る剤と組成が同一である組成物である。
【0096】
水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からからなる群より選択される少なくとも1種を含有する眼科組成物は、ソフトコンタクトレンズを浸漬した際にソフトコンタクトレンズの直径の変化を顕著に抑制させる作用を有している。したがって、本発明の一実施形態として、眼科組成物に、水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、ソフトコンタクトレンズを浸漬した際の該ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制させる作用を眼科組成物に付与する方法が提供される。
【0097】
水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する眼科組成物は、ソフトコンタクトレンズの弾性率を顕著に低下させる作用を有している。したがって、本発明の一実施形態として、眼科組成物に、水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減させる作用を眼科組成物に付与する方法が提供される。なお、本明細書において、「ソフトコンタクトレンズの弾性率」とは、AntonPaar社製のMCR302レオメーターを使用し、パラレルプレートPP12/P12を用いることで測定した値を意味する。
【0098】
ソフトコンタクトレンズに直径変化が生じている、あるいはソフトコンタクトレンズの弾性率が高い状態にある場合、ソフトコンタクトレンズが眼の角結膜上に適切な状態で装用及び/又は装着されない場合があり、装用時及び/又は装着時のゴロゴロ感やゴワゴワ感、装用感の悪さによる不快感が生じる場合があるところ、ソフトコンタクトレンズの直径の変化が抑制されると、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時のゴロゴロ感やゴワゴワ感、装用感の悪さによる不快感をより効果的に改善することができる。また、ソフトコンタクトレンズの弾性率が低下すると、ソフトコンタクトレンズがふんわりとし、これによりソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時のゴロゴロ感やゴワゴワ感、装用感の悪さによる不快感をより効果的に低減することができる。これらのことから、本発明の一実施形態として、水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、眼科組成物にソフトコンタクトレンズを浸漬した際の該ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制するために用いられる剤を含有する、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感改善剤、及び水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減するために用いられる剤を含有する、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感改善剤が提供される。また、本発明の一実施形態として、眼科組成物に、水溶性高分子化合物、脂溶性成分、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする、ソフトコンタクトレンズ装用時及び/又は装着時の不快感を改善させる作用を眼科組成物に付与する方法が提供される。
【0099】
〔2.眼科組成物〕
本発明の一実施態様は、(A)ビタミンB12、(B)脂溶性成分、(C)非イオン界面活性剤、並びに(D)アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される1種又は2種以上を含有する、眼科組成物である。本実施態様に係る眼科組成物は、ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制する効果、及びソフトコンタクトレンズの弾性率を低減する効果を奏する。本実施形態において、眼科組成物に含まれる各成分及びその含有量は、上記〔1.ソフトコンタクトレンズの直径の変化を抑制するために用いられる剤、ソフトコンタクトレンズの弾性率を低減するために用いられる剤〕に記載されたものと同様である。また、本実施形態に係る眼科組成物は、ソフトコンタクトレンズ用であることが好ましい。
【0100】
〔3.ビタミンB12の安定化方法〕
後述の実施例で確認されているとおり、ビタミンB12を含有する眼科組成物にアミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される1種又は2種以上を配合することで、ビタミンB12の分解を抑制し、ビタミンB12を安定化することができる。したがって、本発明の一実施態様として、ビタミンB12を含有する眼科組成物にアミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩からなる群より選択される1種又は2種以上を配合することを特徴とする、ビタミンB12の安定化方法が提供される。
【実施例0101】
以下、試験例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0102】
[試験例1]
<試験液とソフトコンタクトレンズ(SCL)の準備>
表1~3に示す試験液を常法に従い調製した。なお、表1~3における各成分の単位はg/100mLである。ソフトコンタクトレンズ(SCL)は、シリコーンハイドロゲルレンズ(グループ2)として『プレシジョン ワン』(アルコン社製)を使用し、ハイドロゲルソフトコンタクトレンズ(グループ1)として『メダリスト プラス』(ボシュロム社製)を使用し、ハイドロゲルソフトコンタクトレンズ(グループ4)として『2ウィーク アキュビュー』(ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)を使用した。生理食塩液(大塚製薬工場社製)を12ウェルプレート(BD Falcon、No.35-3043)に4mLずつ分注し、各ウェルにSCLを1枚ずつ浸漬させて、4時間以上室温で静置した。SCLの水分をリントフリーペーパーで軽く拭き取った後、表1~3に記載の各試験溶液を10mL入れた10mLねじ口ガラス瓶にSCL1枚を入れて、34℃で24時間静置した。
【0103】
<ソフトコンタクトレンズ(SCL)の直径の変化抑制率の評価>
試験液に浸漬する前および試験液に浸漬した後のソフトコンタクトレンズ(SCL)の直径を万能投影機V-12B(株式会社ニコン)にて測定し、試験液への浸漬によるSCLの直径の変化量を絶対値として求めた。SCLの直径は、試験液に浸漬する前のSCLは生理食塩液を満たしたガラスセルにいれて直径を測定し、試験液に浸漬した後のSCLは試験液を満たしたガラスセルにいれて直径を測定した。その後、対応する比較例の眼科組成物における直径の変化量に対する、実施例の眼科組成物における直径の変化量の抑制率を求めた。具体的には、式1を用いてSCLの直径の変化抑制率を算出した。なお、以下の式1において、実施例1-1~1-2については比較例1を比較例とし、実施例2-1~2-3については比較例2を比較例とし、実施例3-1~3-3については比較例3を比較例とした。結果を表1~3に併記する。
[式1]SCLの直径の変化抑制率(%)=(比較例の眼科組成物に浸漬したSCLの直径の変化量-実施例の眼科組成物に浸漬したSCLの直径の変化量)/比較例の眼科組成物に浸漬したSCLの直径の変化量×100
【0104】
<弾性率の算出>
MCR302レオメーター(AntonPaar社製)を使用し、パラレルプレートPP12/P12(直径12mm、格子目加工;1×0.5、製品番号:23935)、キャッププレートP-PTD200/80-77/SS/P2(格子目加工、製品番号:7894)、測定温度20℃、周波数1Hz、測定時間「時間設定なし」モードに設定し、ひずみ量0.01~1%に対するせん断応力(Pa)を測定した。具体的には、キャッププレートの上に生理食塩液0.5mLを滴下し、その上に水分を拭き取ったソフトコンタクトレンズ(SCL)の凸面を載せ(キャッププレート側にレンズの凸面を向けて載せる)、生理食塩液0.5mLをSCLの上に滴下した。パラレルプレートを降下させてキャッププレートに近づけ、2種のプレートの距離0.1mmでSCLが挟み込まれるように位置を設定し、せん断応力(Pa)の測定を開始した。測定間隔は、ひずみ量0.01~0.1%を均等に5点およびひずみ量0.1~1%を均等に5点で測定した。その後、『プレシジョン ワン』と『2ウィーク アキュビュー』については、ひずみ量0.01~0.1%の測定間隔2点目である0.0325%と、ひずみ量0.1~1%の測定間隔の1%を式2に用いて、弾性率(Pa)を算出した。また、『メダリスト プラス』については、ひずみ量0.01~0.1%の測定間隔2点目である0.0325%と、ひずみ量0.1~1%の測定間隔の0.1%を式3に用いて、弾性率(Pa)を算出した。測定は3回行い、その平均値を弾性率とした。
[式2]弾性率(Pa)=せん断応力/ひずみ量=(ひずみ量1%のせん断応力)-(ひずみ量0.0325%のせん断応力)/(1-0.0325)
[式3]弾性率(Pa)=せん断応力/ひずみ量=(ひずみ量0.1%のせん断応力)-(ひずみ量0.0325%のせん断応力)/(0.1-0.0325)
【0105】
<弾性率の変化の評価>
次に、対応する比較例の眼科組成物に浸漬したソフトコンタクトレンズ(SCL)の弾性率に対する、実施例の眼科組成物に浸漬したSCLの弾性率の低下率を求めた。具体的には、式4を用いて弾性率の低下率を算出した。なお、以下の式4において、実施例1-1~1-2については比較例1を比較例とし、実施例2-1~2-3については比較例2を比較例とし、実施例3-1~3-3については比較例3を比較例とした。結果を表1~3に併記する。
[式4]弾性率の低下率(%)=(比較例の眼科組成物に浸漬したSCLの弾性率-実施例の眼科組成物に浸漬したSCLの弾性率)/比較例の眼科組成物に浸漬したSCLの弾性率
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
コンドロイチン硫酸ナトリウム、又はポリビニルピロリドンK90を含有する実施例1-1~1-2の眼科組成物については、これらの成分をいずれも含有しない比較例1の眼科組成物と比較して、SCLの直径の変化が抑制された。ゴマ油、流動パラフィン、又はポリビニルピロリドンK90を含有する実施例2-1~2-3の眼科組成物については、これらの成分をいずれも含有しない比較例2の眼科組成物と比較して、SCLの直径の変化が抑制された。l-メントールを含有する実施例3-1、l-メントール及びゴマ油を含有する実施例3-2、並びにl-メントール、ゴマ油、及びポリビニルピロリドンK90を含有する実施例3-3の眼科組成物については、これらの成分をいずれも含有しない比較例3の眼科組成物と比較して、SCLの直径の変化が抑制された。なお、実施例の眼科組成物においては、SCLの直径の変化量はいずれも0.2mm以下であった。
【0110】
また、コンドロイチン硫酸ナトリウム、又はポリビニルピロリドンK90を含有する実施例1-1~1-2の眼科組成物については、これらの成分をいずれも含有しない比較例1の眼科組成物と比較して、SCLの弾性率が低下した。ゴマ油、流動パラフィン、又はポリビニルピロリドンK90を含有する実施例2-1~2-3の眼科組成物については、これらの成分をいずれも含有しない比較例2の眼科組成物と比較して、SCLの弾性率が低下した。l-メントールを含有する実施例3-1、l-メントール及びゴマ油を含有する実施例3-2、並びにl-メントール、ゴマ油、及びポリビニルピロリドンK90を含有する実施例3-3の眼科組成物については、これらの成分をいずれも含有しない比較例3の眼科組成物と比較して、SCLの弾性率が低下した。
【0111】
[試験例2]
表4及び5に記載の各試験溶液について、各試験溶液を10mL入れた10mLねじ口ガラス瓶にSCL1枚を入れて、34℃で18時間静置したこと以外は、試験例1に記載の方法に従い試験を行った。結果を表4及び5に併記する。
【0112】
【表4】
【0113】
【表5】
【0114】
ポリビニルピロリドンK90、又はコンドロイチン硫酸ナトリウムを含有する実施例4-1~4-2の眼科組成物については、これらの成分をいずれも含有しない比較例4の眼科組成物と比較して、SCLの直径の変化が抑制された。また、ポリビニルピロリドンK90、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する実施例5-1~5-2の眼科組成物については、これらの成分をいずれも含有しない比較例5の眼科組成物と比較して、SCLの直径の変化が抑制された。
【0115】
[試験例3]
表6に記載の各試験溶液について、試験例1に記載の方法に従い試験を行った。結果を表6に併記する。
【0116】
【表6】
【0117】
シアノコバラミン、ピリドキシン塩酸塩、アミノエチルスルホン酸、マレイン酸クロルフェニラミン、又はメチル硫酸ネオスチグミンを含有する実施例1-3~1-7の眼科組成物については、これらの成分をいずれも含有しない比較例1の眼科組成物と比較して、SCLの直径の変化が抑制された。なお、実施例の眼科組成物においては、SCLの直径の変化量はいずれも0.2mm以下であった。
【0118】
以上の結果から、水溶性ビタミン、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩は、SCLの直径の変化を抑制することができ、また、SCLの弾性率を低減させることができ、それらの作用によりSCL装着時の不快感を低減させることができると考えられる。
【0119】
[試験例4]
<シアノコバラミンの安定性の評価>
表7に記載の各試験溶液について、各試験溶液10mLを10mLねじ口ガラス瓶に入れ、SUNTESTER XLS+(東洋精機社製)を用いて紫外線(照度765(W/m))を48時間照射した。各試験溶液を25℃で十分に恒温化させた後、分光測色計(CM3500d:コニカミノルタ社製)を用いて紫外線照射による色の変化量を測定し、以下の式5を用いて色差ΔEを算出した。得られた色差ΔEを基に式6を用いて色差変化比を算出し、シアノコバラミンの分解による外観(色)の変化を評価した。結果を表7に併記する。
[式5]:ΔE=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2
[式6]色差変化比=実施例2-4~2-7の色差ΔE/実施例1-3の色差ΔE
【0120】
【表7】
【0121】
シアノコバラミン、ゴマ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、及びポリオキシエチレンヒマシ油10を含有する実施例2-4では、光照射後の色差変化率が9.6であり、ゴマ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、及びポリオキシエチレンヒマシ油10を含有しない実施例1-3と比較して、シアノコバラミンの分解による外観(色)の変化が大きくなった。それに対し、シアノコバラミン、ゴマ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、及びポリオキシエチレンヒマシ油10に加え、さらにアミノエチルスルホン酸、マレイン酸クロルフェニラミン、又はメチル硫酸ネオスチグミンを含有する実施例2-5~2-7では、光照射後の色差変化率がそれぞれ2.9、3.9、及び0.3であり、シアノコバラミンの分解による外観(色)の変化がそれぞれ69.8%、59.4%、及び96.9%も抑制されていた。このことから、アミノエチルスルホン酸及びその塩、クロルフェニラミン及びその塩、並びにネオスチグミン及びその塩は、ビタミンB12を含む眼科組成物、特にビタミンB12、脂溶性成分、及び非イオン界面活性剤を含有する眼科組成物において、ビタミンB12の分解を抑制することができ、ビタミンB12を安定化できると考えられる。
【0122】
[製剤例]
下記表8及び9に記載の処方で、処方例1~18が調製される。処方例1~18を、ポリエチレンテレフタレート製の容器に充填し、低密度ポリエチレン製のノズルを装着したものを製剤例1~18とした。処方例1~18を、ポリエチレンテレフタレート製の容器に充填し、キャップ装着時(保存時)において、内容液と接液する可能性のある壁面の全部がポリブチレンテレフタレート製のノズルを装着したものを製剤例19~36とした。処方例1~18を、ポリエチレンテレフタレート製の容器に充填し、内容液と接液する可能性のある壁面の一部がポリエチレンテレフタレート製のノズルを装着したものを製剤例37~54とした。なお、製剤例1、3、9、19、21、27、37、39、及び45はそれぞれ包囲体に密封し、それぞれの包囲体には鉄系の脱酸素剤を同封した。
なお、表中の単位は特に明記しないかぎりw/v%である。
【0123】
【表8】
【0124】
【表9】