(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132875
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】蓄エネルギー装置および作業機械
(51)【国際特許分類】
F16H 33/02 20060101AFI20240920BHJP
F03G 3/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F16H33/02 A
F03G3/08 A
F03G3/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024004667
(22)【出願日】2024-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2023041509
(32)【優先日】2023-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大内田 剛史
(57)【要約】
【課題】フライホイールを利用して回転エネルギーを溜めたり放出したりするエネルギーシステムに好適な技術を提供する。
【解決手段】例示的な蓄エネルギー装置は、エネルギーを蓄積可能に設けられる蓄エネルギー装置であって、原動機により駆動され、回転エネルギーの蓄積および放出を行うフライホイールと、前記原動機と前記フライホイールとの間に配置され、前記フライホイールの回転速度を変更する油圧要素と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーを蓄積可能に設けられる蓄エネルギー装置であって、
原動機により駆動され、回転エネルギーの蓄積および放出を行うフライホイールと、
前記原動機と前記フライホイールとの間に配置され、前記フライホイールの回転速度を変更する油圧要素と、
を備える、蓄エネルギー装置。
【請求項2】
前記油圧要素は、油圧機械式無段変速機である、請求項1に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項3】
前記油圧要素と前記フライホイールとの間に配置される減速機を備える、請求項1に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項4】
前記減速機は、前記油圧要素および前記フライホイールと同軸に配列される、請求項3に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項5】
前記油圧要素および前記減速機を収容するハウジングを備える、請求項4に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項6】
前記原動機と前記油圧要素との間に動力の伝達と遮断とを切り替えるクラッチを備える、請求項1に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項7】
前記油圧要素に含まれるプランジャ部材は、当該油圧要素の軸方向と直交するラジアル方向に運動する、請求項2に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項8】
前記プランジャ部材は、球体である、請求項7に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項9】
前記油圧要素は、油圧ポンプと油圧モータとを有し、
前記油圧ポンプは、可変容量油圧ポンプである、請求項1に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項10】
前記油圧モータは、可変容量油圧モータである、請求項9に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項11】
前記可変容量油圧ポンプの容量を制御する油圧サーボ機構を備える、請求項9に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項12】
前記可変容量油圧ポンプは、
前記油圧サーボ機構により位置変動可能に設けられるリングと、
前記リングの外周を囲むケースと、
前記リングと前記ケースとの間に設けられると共に互いに区画された第1油室および第2油室と、
を有する、請求項11に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項13】
前記リングは、前記ケースの一部と接して前記第1油室および前記第2油室をシールするシール面を有する、請求項12に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項14】
前記シール面は、
前記リングの外周面と、
前記リングの厚み方向の端面と、
に設けられる、請求項13に記載の蓄エネルギー装置。
【請求項15】
前記原動機と、
請求項1から14のいずれか1項に記載の蓄エネルギー装置と、
を備える、作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライホイールを利用してエネルギーを蓄積したり放出したりする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エネルギー効率を高める技術として、フライホイール式回生システムが知られる(例えば特許文献1参照)。当該システムにおいては、車両の制動時に駆動軸の回転エネルギーをフライホイールの回転エネルギーに変換して貯留し、貯留したエネルギーを駆動軸の回転エネルギー、すなわち車両走行のための運動エネルギーとして再利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、回転エネルギーの貯留および放出を行うフライホイールは、減速機とクラッチとを介して原動機駆動軸に接続される。このような構成の場合、クラッチを利用して2つの回転体を接続する際に、クラッチに対して衝撃が生じたり、摩擦動力損失が生じたりすることが懸念される。特に、2つの回転体間の回転速度の差が大きくなった場合に、衝撃や摩擦動力損失の発生が懸念される。
【0005】
本発明は、フライホイールを利用して回転エネルギーを溜めたり放出したりするエネルギーシステムに好適な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的な蓄エネルギー装置は、エネルギーを蓄積可能に設けられる蓄エネルギー装置であって、原動機により駆動され、回転エネルギーの蓄積および放出を行うフライホイールと、前記原動機と前記フライホイールとの間に配置され、前記フライホイールの回転速度を変更する油圧要素と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
例示的な本発明によれば、フライホイールを利用して回転エネルギーを溜めたり放出したりするエネルギーシステムに好適な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】蓄エネルギーシステムの適用例について説明するための図
【
図3A】作業機械における蓄エネルギーシステムの動作について説明するための図
【
図3B】作業機械における蓄エネルギーシステムの動作について説明するための図
【
図5】
図4のV-V位置で切った断面を示す断面斜視図
【
図7】油圧サーボ機構を備える蓄エネルギー装置の概略の構成を示す斜視図
【
図8】
図7のVIII-VIII位置で切った場合に現れる内部構造を示す図
【
図10】前ケースとリングとの関係を示す概略斜視図
【
図11】
図10に示す前ケースとリングとを分解して示す概略分解斜視図
【
図12】前ケース、中間ケース、および、リングの関係を示す概略断面斜視図
【
図13】第1変形例に係る蓄エネルギー装置の構成を模式的に示す図
【
図14】第2変形例に係る蓄エネルギー装置の構成を模式的に示す図
【
図15】第2変形例の蓄エネルギー装置における、ポンプおよびモータの容量と変速比との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は同一相当部分については同一の参照符号を付し、特に必要がない場合には説明を繰り返さない。
【0010】
<1.蓄エネルギーシステムの概要>
図1は、本発明の実施形態に係る蓄エネルギーシステム100の概要を示す模式図である。
図1において、白抜きの矢印は、エネルギーの流れを示す。
図1に示すように、蓄エネルギーシステム100は、原動機1と、蓄エネルギー装置2とを備える。
【0011】
本実施形態において、原動機1は内燃機関である。ただし、原動機1は、内燃機関以外であってもよい。原動機1は、例えば、電動機や、蒸気タービンのような外燃機関等であってもよい。
【0012】
蓄エネルギー装置2は、エネルギーを蓄積可能に設けられる。詳細には、蓄エネルギー装置2は、原動機1が出力するエネルギーの一部を回転エネルギーとして蓄積可能に設けられる。また、蓄エネルギー装置2は、蓄積したエネルギーを放出可能に設けられる。詳細には、蓄エネルギー装置2は、蓄積した回転エネルギーを原動機1に対して放出可能に設けられる。放出したエネルギーは、原動機1の出力を補助するエネルギーとして利用される。詳細は後述するように、蓄エネルギー装置2は、原動機1の負荷を平準化して、原動機1を高効率で運転することを可能とする。
【0013】
蓄エネルギー装置2は、フライホイール21と油圧要素22とを備える。
【0014】
フライホイール21は、原動機1により駆動される。フライホイール21は、回転エネルギーの蓄積および放出を行う。フライホイール21は、エネルギーの蓄積時には、原動機1が出力するエネルギーを利用して回転数を高めて、回転エネルギーを蓄積する。また、フライホイール21は、エネルギーの放出時には、回転数を下げることにより回転エネルギーを放出する。なお、フライホイール21は、油圧要素22の動作に応じて、エネルギーの蓄積と放出とを切り替える。フライホイール21は、例えばスチール等の金属で構成される。
【0015】
油圧要素22は、原動機1とフライホイール21との間に配置され、フライホイール21の回転速度を変更する。詳細には、エネルギーの蓄積時には、油圧要素22は、フライホイール21の速度を増速させる。エネルギーの放出時には、油圧要素22は、フライホイール21の速度を減速させる。油圧要素22は、油圧動力伝達装置である。油圧要素22は、より詳細には、油圧を利用した無段変速機である。原動機1とフライホイール21との間に油圧要素22が配置されることにより、2つの回転体(原動機1の出力軸とフライホイール21)を、衝撃や摩擦動力損失の発生を抑制して接続することができる。
【0016】
本実施形態では、蓄エネルギー装置2は、油圧要素22とフライホイール21との間に配置される減速機23を備える。減速機23は、フライホイール21の回転速度を減速して油圧要素22に伝達する。言い換えると、減速機23は、油圧要素22の出力側の回転速度を増速してフライホイール21に伝達する。減速機23によって油圧要素22の出力側の回転速度を増速してフライホイール21に伝達することができるために、フライホイール21において蓄積するエネルギーを大きくすることができる。
【0017】
なお、減速機23は、必須の構成要素ではなく、設けられなくてもよい。本実施形態では、エネルギーを蓄積するフライホイール21の回転速度を目標速度にするために減速機23を備える構成としている。目標速度は、蓄エネルギー装置2の利用目的等に応じて適宜設定することができる。
【0018】
図2は、本発明の実施形態に係る蓄エネルギーシステム100の適用例について説明するための図である。詳細には、
図2は、蓄エネルギーシステム100が作業機械200に適用された例を示す。
図2において、作業機械200はバックホーである。作業機械200は、蓄エネルギーシステム100を備える。すなわち、作業機械200は、原動機1と、蓄エネルギー装置2とを備える。
【0019】
なお、蓄エネルギーシステム100は、バックホー以外の作業機械に適用されてもよい。例えば、蓄エネルギーシステム100は、バックホー以外の建設機械や、農作業機械等に適用されてよい。また、蓄エネルギーシステム100は、例えば自動車、鉄道車両、船舶等、原動機を備える装置に広く適用されてよい。
【0020】
作業機械200は、クローラ式の走行体201と、走行体201の上側に回転可能に配置される旋回体202と、旋回体202に取り付けられる作業装置203とを備える。蓄エネルギーシステム100は、例えば、旋回体202の内部に配置される。蓄エネルギーシステム100を構成する原動機1は、フライホイール21だけでなく、旋回体202の内部に配置されるポンプ(不図示)を駆動する。当該ポンプは、作業機械200に搭載された油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプである。油圧アクチュエータには、走行体201を走行させる走行用油圧モータ、旋回体202を回転させる旋回用油圧モータ、および、作業装置203を作動させる油圧シリンダが含まれる。
【0021】
図3Aおよび
図3Bは、作業機械200における蓄エネルギーシステム100の動作について説明するための図である。
【0022】
図3Aは、作業機械200が或る作業を行う場合における、原動機1の出力の時間変化を示す図である。
図3Aでは、蓄エネルギー装置2は使用されない(原動機1に接続されない)ことを想定している。また、或る作業として、次の3つの作業を含む作業が想定されている。3つの作業のうち、最初に行われる第1作業は、作業装置203を用いて土砂を持ち上げる作業を含む。次に行われる第2作業は、持ち上げた土砂を、旋回体202を旋回させて別の場所に降ろす作業を含む。最後に行われる第3作業は、作業装置203を土砂がある場所に戻す作業を含む。
【0023】
第1作業時においては、作業装置203を用いて土砂を持ち上げる動作が行われるために原動機1の出力が大きくなる。
図3Aにおける出力が最大となる上に凸のピークP1は、第1作業時に生じる。第2作業時においては、土砂を上から下に降ろす動作が含まれるために原動機1の出力を小さくすることができる。
図3Aにおける出力が最小となる下に凸のピークP2は、第2作業時に生じる。第3作業時は、作業装置203を荷物なしの状態で持ち上げたり、旋回したりする動作を行うために、原動機1の出力が特別に大きくなったり、小さくなったりすることはない。
【0024】
図3Bは、
図3Aの場合と同様の作業を、蓄エネルギー装置2を利用して行う場合における、原動機1の出力の時間変化を示す図である。
図3Bにおいて、実線のグラフは蓄エネルギー装置2を使用する場合のグラフであり、破線のグラフは蓄エネルギー装置2を使用しない場合のグラフである。破線のグラフは、比較のためのグラフであり、
図3Aに示すグラフと同じものである。
【0025】
蓄エネルギー装置2を利用する構成では、原動機1に要求される出力が大きい場合に、フライホイール21から回転エネルギーを放出することで、原動機1の出力の上昇を抑制することができる。また、原動機1に要求される出力が小さい場合に、原動機1の出力を特段大きくしなくても、原動機1からフライホイール21に回転エネルギーを与えて回転エネルギーを蓄積することができる。このために、蓄エネルギー装置2を利用する場合には、
図3Bに示すように、作業時における原動機1の出力を一定の大きさにすることができる。換言すると、原動機1の負荷を平準化して高効率の運転を実現することができる。蓄エネルギー装置2を利用する場合には、作業機械200を低燃費で動作させることができる。
【0026】
なお、
図3Bに示す例では、第1作業における土砂の持ち上げ時に、蓄エネルギー装置2(フライホイール21)からエネルギーが放出され、当該放出されたエネルギーが原動機1の出力を補助するエネルギーとして利用される。また、第2作業における土砂を降ろす作業の際に、原動機1における、作業に要求される出力を差し引いた余剰の出力が、蓄エネルギー装置2(フライホイール21)にエネルギーを蓄積するために利用される。
【0027】
<2.蓄エネルギー装置の構成例>
次に、蓄エネルギーシステム100に備えられる蓄エネルギー装置2の詳細例について説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る蓄エネルギー装置2の概略の構成を示す側面図である。
図5は、
図4のV-V位置で切った断面を示す断面斜視図である。
【0028】
以下、
図5に示す中心軸Cが延びる方向を軸方向と定義する。また、中心軸C(軸方向)と直交する方向をラジアル方向と定義する。また、軸方向において、フライホイール21に対して油圧要素22がある側を前方とし、軸方向における前後方向を定義する。なお、これらの方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。
【0029】
図4および
図5に示すように、蓄エネルギー装置2は、中心軸Cに沿って延びる柱状の軸部2aを備える。軸部2aには、原動機1の回転動力が入力される。また、蓄エネルギー装置2は、軸部2aに対してラジアル方向外方に配置される油圧要素22を備える。また、蓄エネルギー装置2は、軸部2aに対してラジアル方向外方に配置され、且つ、油圧要素22の軸方向後方に配置される減速機23を備える。また、蓄エネルギー装置2は、軸部2aに対してラジアル方向外方に配置され、且つ、減速機23の軸方向後方に配置される環状のフライホイール21を備える。
【0030】
フライホイール21、油圧要素22、および、減速機23は、いずれも、中心軸Cを中心として配置される。すなわち、減速機23は、油圧要素22およびフライホイール21と同軸に配列される。本実施形態の蓄エネルギー装置2は、装置を構成する複数の要素がそれぞれ別の軸に沿って配置される場合に比べて小型化することができる。別の言い方をすると、本実施形態の蓄エネルギー装置2は、占有体積を減少させることができる。
【0031】
また、蓄エネルギー装置2はハウジング20を備える。ハウジング20は、中心軸Cを中心とし、軸方向に延びる筒状である。ハウジング20の軸方向両端部には蓋体が配置される。ハウジング20は、油圧要素22および減速機23を収容する。詳細には、ハウジング20は、油圧要素22および減速機23を一体的に収容する。本実施形態の蓄エネルギー装置2は、装置を構成する要素を収容する筐体が複数存在する場合に比べて小型化することができる。別の言い方をすると、本実施形態の蓄エネルギー装置2は、占有体積を減少させることができる。なお、フライホイール21は、ハウジング20の軸方向後方に配置される。
【0032】
図6は、本発明の実施形態に係る蓄エネルギー装置2の構成を模式的に示す図である。
図6においては、説明のために便宜的に必要な要素であって蓄エネルギー装置2を構成しない要素について、一点鎖線で示している。
【0033】
図6に示すように、蓄エネルギー装置2が備える軸部2aは、原動機1に接続される。すなわち、軸部2aには、原動機1の回転動力が入力される。軸部2aに回転動力が入力されることにより、油圧要素22が駆動される。なお、軸部2aは、例えば、原動機1の出力軸1aに直接接続されたり、原動機1の出力軸1a自体であったりしてよい。また、軸部2aは、原動機1の出力軸1aに動力伝達機構を介して接続される構成であってもよい。動力伝達機構は、ギアや、プーリおよびベルトを含んで構成されてよい。
【0034】
本実施形態では、油圧要素22は油圧機械式無段変速機である。油圧機械式無段変速機として構成される油圧要素22は、油圧ポンプ221と油圧モータ222とを含んで構成される。油圧機械式無段変速機22においては、油圧ポンプ221と油圧モータ222とがオイルラインで繋がれるとともに、油圧ポンプ221の駆動力が当該変速機の出力側で回収される。本実施形態では、油圧ポンプ221と油圧モータ222とが一体で構成されており、油圧ポンプ221を駆動するトルクが油圧モータ222を駆動するトルクに加算される。油圧要素22が油圧機械式無段変速機とされることにより、油圧要素22が入力された動力の全てを一旦油圧に変換する静油圧式無段変速機とされる場合に比べて、蓄エネルギー装置2を高効率で運転することができる。
【0035】
なお、油圧要素22は、油圧機械式無段変速機に替えて、油圧ポンプ221と油圧モータ222とがオイルラインのみで繋がれる静油圧式無段変速機とされてもよい。油圧要素22を静油圧式無段変速機とする場合、油圧機械式無段変速機とする場合に比べて、設計の自由度を増すことができる。
【0036】
詳細には、油圧ポンプ221は可変容量油圧ポンプであり、油圧モータ222は固定容量油圧モータである。可変容量油圧ポンプとして構成される油圧ポンプ221の容量を変動させることにより、フライホイール21の速度を増速させたり、減速させたりすることができる。なお、本実施形態の構成とは異なり、油圧ポンプが固定容量油圧ポンプであり、油圧モータが可変容量油圧モータである構成としてもよい。
【0037】
可変容量油圧ポンプとして構成される油圧ポンプ221の容量は、例えば、不図示の制御装置からの指令に応じて変動される。例えば、原動機1の出力を一定に制御する構成の場合、上述の制御装置は、原動機1の出力を監視する。原動機1の出力は、原動機1のトルクと回転数の積により得ることができる。原動機1の出力が狙いの値以上になった場合、制御装置が油圧ポンプ221の容量を制御してフライホイール21を減速させる。これにより、フライホイール21からエネルギーが放出され、原動機1の出力を狙いの値に維持しつつ要求される出力を確保することができる。また、原動機1の出力が狙いの値より小さくなった場合、制御装置が油圧ポンプ221の容量を制御してフライホイール21を増速させる。これにより、原動機1の出力を狙いの値に維持しつつ、余剰のエネルギーをフライホイール21に蓄積させることができる。
【0038】
図5に示すように、可変容量油圧ポンプとして構成される油圧ポンプ221は、環状の可動部材257を有する。環状の可動部材257は、自身の中心位置を中心軸Cに対してラジアル方向に移動可能に設けられる。より詳細には、環状の可動部材257は、
図5における断面に沿うラジアル方向に移動可能に設けられる。油圧ポンプ221の容量は、環状の可動部材257を動かすことによって変更できる構成となっている。
【0039】
また、油圧ポンプ221は、ラジアル方向に延びるシリンダCY1と、シリンダCY1内に収容されるプランジャ部材PL1とを有する。プランジャ部材PL1は、可動部材257と組になって油圧ポンプ221における油圧の発生に寄与する。プランジャ部材PL1は、シリンダCY1に沿って移動可能である。すなわち、油圧要素22に含まれるプランジャ部材PL1は、当該油圧要素の軸方向と直交するラジアル方向に運動する。このように構成すると、プランジャ部材を軸方向に運動させる構成に比べて、蓄エネルギー装置2の軸方向の長さを減少することができる。
【0040】
詳細には、プランジャ部材PL1は球体である。プランジャ部材PL1を球体で構成することにより、プランジャ部材を構成するための部品の点数を削減することができる。プランジャ部材PL1は、例えば鋼球である。
【0041】
なお、本実施形態では、固定容量油圧モータとして構成される油圧モータ222も、同様に、ラジアル方向に延びるシリンダCY2と、シリンダCY2内に収容されるプランジャ部材PL2とを有する。プランジャ部材PL2も、ラジアル方向に運動する。プランジャ部材PL2も、球体であり、例えば鋼球である。
【0042】
本実施形態では、減速機23は遊星歯車減速機である。
図6に示すように、遊星歯車減速機23は、太陽歯車231と、遊星歯車232と、内歯車233とを含む。遊星歯車232を回転可能に支持する遊星キャリアは固定されている。太陽歯車231は、フライホイール21と連結される。太陽歯車231は、フライホイール21と一体化されてよい。内歯車233は油圧モータ222の回転要素と連結される。別の言い方をすると、内歯車233は、油圧機械式無段変速機22における、原動機1の回転を入力される側と反対である出力側を構成する要素と連結される。減速機23が遊星歯車減速機とされることにより、減速機23と油圧要素22とを同軸に配列することができる。
【0043】
上述のように、本実施形態の油圧ポンプ221は、可変容量油圧ポンプである。このために、本実施形態の蓄エネルギー装置2は、詳細には、油圧ポンプ221を容量可変要素とするための油圧サーボ機構を備える。別の言い方をすると、蓄エネルギー装置2は、可変容量油圧ポンプ221の容量を制御する油圧サーボ機構を備える。当該油圧サーボ機構について、以下説明する。
【0044】
なお、本実施形態の油圧要素22は、上述のように、プランジャ部材PL1、PL2(
図5参照)がラジアル方向に運動するラジアルピストン型の油圧要素である。以下に説明する本実施形態の油圧サーボ機構は、ラジアルピストン型の油圧要素に適した構成となっている。
【0045】
図7は、油圧サーボ機構25を備える蓄エネルギー装置2の概略の構成を示す斜視図である。なお、
図7に示す蓄エネルギー装置2は、
図4および
図5に示す蓄エネルギー装置2と基本的に同じ構成である。
図7においては、
図4および
図5において記載が省略された油圧サーボ機構25に関わる構成が示されている。
【0046】
図7に示すように、蓄エネルギー装置2は、油圧サーボ機構25が設けられた前ケース20aを備える。なお、前ケース20aは、上述のハウジング20を構成する部材である。詳細には、ハウジング20は、前ケース20aと、前ケース20aの後方に配置される中間ケース20bと、中間ケース20bの後方に配置される後ケース20cとの3つの部材により構成される。前ケース20aは、ハウジング20の前側の蓋体を含む。後ケース20cは、ハウジング20の後側の蓋体を含む。
【0047】
図8は、
図7のVIII-VIII位置で切った場合に現れる内部構造を示す図である。
図7および
図8に示されるように、油圧サーボ機構25は、ソレノイド251、ソレノイドバルブ252、サーボバルブ253、サーボバネ254、ピン255、フィードバックスプール256、および、リング257を備える。なお、リング257は、上述した、油圧ポンプ221が備える環状の可動部材257と同じである。すなわち、可変容量油圧ポンプ221は、油圧サーボ機構25に含まれるリング257を備える。その他、油圧サーボ機構25は、サプライポート258およびドレンポート259を含む油路を備え、これらの油路は前ケース20aの内部に設けられている。
【0048】
図9は、油圧サーボ機構25の油圧回路を示す図である。ソレノイド251が通電状態である場合、ソレノイドバルブ252が開いた状態となり、サプライポート258からの作動油の流入により、サーボバルブ253にパイロット圧が作用する。パイロット圧の作用により、サーボバルブ253は、サプライポート258から流入する作動油を、詳細は後述する第1油室250aへ流入させる状態になる。第1油室250aに作動油が流入することにより、リング257は、第1油室250aから、詳細は後述する第2油室250bへ向かう方向(
図9において上向き)の力を受けて、当該力を受けた方向へ移動する。
【0049】
一方、ソレノイド251が非通電状態である場合、ソレノイドバルブ252が閉じた状態となり、サーボバルブ253に作用するパイロット圧がゼロとなる。この場合、サーボバネ254の付勢力によって、サーボバルブ253は、サプライポート258から流入する作動油を第2油室250bへ流入させる状態になる。第2油室250bに作動油が流入することにより、リング257は、第2油室250bから第1油室250aへ向かう方向(
図9において下向き)の力を受けて、当該力を受けた方向へ移動する。
【0050】
以上からわかるように、可変容量油圧ポンプ221は、油圧サーボ機構25により位置変動可能に設けられるリング257を備える。ピン255は、リング257の外周面に取り付けられ、リング257の位置(
図9において上下方向位置)をフィードバックスプール256の位置(
図9において上下方向位置)に変換する。油圧サーボ機構25は、リング257の位置をフィードバックスプール256によりフィードバックさせながら、不図示の制御装置からの指令に応じた位置に調整する。可変容量油圧ポンプ221は、油圧サーボ機構25により調整されたリング257の位置に応じて決まる吐出量で油圧モータ222へ向けて作動油を吐出する。
【0051】
なお、油圧機械式無段変速機とされる油圧要素22は、軸部2aの回転速度(入力軸回転速度)に可変容量油圧ポンプ221の吐出量に応じたモータ回転速度を加えた回転速度を出力する。リング257の位置に応じて変わる可変容量油圧ポンプ221の容量に応じて、出力回転速度は、入力回転速度よりも大きい増速状態、入力速度と同じ等速状態、或いは、入力速度よりも小さい減速状態になる。
【0052】
図10は、前ケース20aとリング257との関係を示す概略斜視図である。
図11は、
図10に示す前ケース20aとリング257とを分解して示す概略分解斜視図である。
図12は、前ケース20a、中間ケース20b、および、リング257の関係を示す概略断面斜視図である。なお、
図12は、
図7のXII-XII位置で切った断面図である。
【0053】
図10から
図12に示すように、可変容量油圧ポンプ221は、リング257の外周を囲むケース20a、20bを有する。詳細には、リング257は、厚み方向が軸方向(前後方向)と平行となる姿勢で、後方に向けて開口する有底カップ状の前ケース20a内に収容される。前ケース20aのリング257を収容する収容凹部20a1は、軸方向からの平面視においてオーバル形状(角丸長方形状)である。すなわち、収容凹部20a1の内面は、曲面部分CPと平面部分PPとを有する。
【0054】
リング257は、基本的には円筒状である。ただし、リング257の外周面には、収容凹部20a1の形状に合わせて、中心軸Cを基準として対称配置される一対の平面部257aが設けられる。リング257は、一対の平面部257aのそれぞれが収容凹部20a1の平面部分PPと当接した状態で、収容凹部20a1に収容される。
【0055】
可変容量油圧ポンプ221は、リング257とケース20a、20bとの間に設けられると共に互いに区画された第1油室250aおよび第2油室250bを有する。第1油室250aおよび第2油室250bは、いずれも、リング257の外周面と収容凹部20a1の内周面との径方向間に設けられる。詳細には、第1油室250aは、リング257の一対の平面部257a間を接続する2つの外周面のうちの一方側と、収容凹部20a1を構成する内面のうち一対の平面部分PP間を接続する2つの曲面部分CPのうちの一方側と、の径方向間に設けられる。また、第2油室250bは、リング257の一対の平面部257a間を接続する2つの外周面のうちの他方側と、収容凹部20a1を構成する内面のうち一対の平面部分PP間を接続する2つの曲面部分CPの他方側と、の径方向間に設けられる。第1油室250aと第2油室250bとは、リング257を径方向間に挟んで設けられる。
【0056】
第1油室250aおよび第2油室250bには、上述のように、油圧サーボ機構25の動作状態に応じて作動油が適宜流入する。そして、第1油室250aおよび第2油室250bにおける作動油の流入状態に応じて、リング257の位置が変動する。すなわち、本実施形態では、可変容量油圧ポンプ221における容量可変要素であるリング257自体を用いて第1油室250aおよび第2油室250bが構成されている。このような構成とすることで、ラジアルピストン型の油圧要素に適した油圧サーボ機構を部品点数の増加を抑制して構成することができる。なお、
図10および
図12に示す例では、第1油室250aには作動油が流入しておらず、第2油室250bに作動油が流入している。
【0057】
リング257は、ケース20a、20bの一部と接して第1油室250aおよび第2油室250bをシールするシール面を有する。これにより、作動油の漏れによる動力損失を抑制することができる。本実施形態では、シール面は、リング257の外周面と、リング257の厚み方向(軸方向)の端面とに設けられる。
【0058】
詳細には、リング257の外周面に設けられるシール面は、上述した一対の平面部257aである。一対の平面部257aが、前ケース20aの収容凹部20a1における一対の平面部分PPと接することで、リング257の外面と収容凹部20a1の内面とを広い範囲で接触させることができる。この結果、第1油室250aと第2油室250bとの間のシール性を向上して、両油室間で油漏れが生じることを抑制できる。なお、本実施形態では、リング257の外周面に設けられるシール面は、平面であるが、これに限らず、曲面としてもよい。
【0059】
また、リング257の軸方向端面に設けられるシール面は、詳細には、リング257の軸方向前面の前ケース20aの内面と当接する前面当接部257b、および、リング257の軸方向後面の中間ケース20bの前面と当接する後面当接部257cである。前面当接部257bが設けられることにより、第1油室250aおよび第2油室250bから前方に作動油が漏れることを抑制することができる。後面当接部257cが設けられることにより、第1油室250aおよび第2油室250bから後方に作動油が漏れることを抑制することができる。なお、リング257が径方向に動くために、前面当接部257bおよび後面当接部257cの位置は変動する。また、第1油室250aおよび第2油室250bは、いずれも、リング257の外周面、収容凹部20a1の内側面、収容凹部20a1の底面、および、中間ケース20bの環状の前面に囲まれた空間である。
【0060】
<3.変形例>
[3-1.第1変形例]
図13は、第1変形例に係る蓄エネルギー装置2Aの構成を模式的に示す図である。蓄エネルギー装置2Aは、原動機1と油圧要素22との間に、動力の伝達と遮断とを切り替えるクラッチ24を備える。クラッチ24は、公知の様々なタイプのクラッチを用いて構成できる。クラッチ24は、例えば、機械的に噛み合う構造や摩擦力を利用した構造のクラッチであってよい。
【0061】
クラッチ24が動力の伝達を行う状態である場合、フライホイール21は、原動機1の出力を利用してエネルギーを蓄積したり、エネルギーを放出して原動機1の出力をアシストしたりすることができる。クラッチ24が動力を遮断する状態である場合、フライホイール21は原動機1と非接続となるために、エネルギーを蓄積したり、原動機1に向けてエネルギーを放出したりすることはできない。
【0062】
なお、本変形例では、クラッチ24とフライホイール21との間にフライホイール21の回転速度を変更する油圧要素22(油圧無段変速要素)が配置される。このために、クラッチ24を動力遮断状態から動力伝達状態へと変更する場合でも、衝撃や摩擦動力損失の発生を抑制することができる。
【0063】
ここで、原動機1の負荷平準化のために蓄エネルギー装置2Aが利用されている例を考える。この場合、上述のように、原動機1に対する要求出力が低い場合でも原動機1の出力が一定で維持され、原動機1の出力がフライホイール21を用いたエネルギーの蓄積に使用される。原動機1に要求される出力が低い状態が或る程度の期間続くと、フライホイール21の回転が最大回転速度となり、フライホイール21における蓄エネルギー量が最大となる。このような状態で、更に、原動機1に要求される出力が小さい状態が続いた場合、これ以上エネルギーの蓄積が不能であるにも関わらず、原動機1の出力が油圧要素22における動力損失分に消費され、エネルギー効率が却って悪くなる可能性がある。この点、本変形例のように蓄エネルギー装置2Aにクラッチ24が設けられると、蓄エネルギー装置2Aが原動機1と接続されていることにより却ってエネルギー効率が悪くなる可能性がある場合に、原動機1から蓄エネルギー装置2Aを切り離すことができる。これにより、無駄な動力損失を抑制してエネルギー効率を向上させることができる。
【0064】
[3-2.第2変形例]
図14は、第2変形例に係る蓄エネルギー装置2Bの構成を模式的に示す図である。本変形例の蓄エネルギー装置2Bも、上述の実施形態と同様に油圧要素22Bを有する。そして、油圧要素22Bは、油圧ポンプ221Bと油圧モータ222Bとを有する。油圧ポンプ221Bは、可変容量油圧ポンプであり、上述の実施形態と同様の構成である。ただし、本変形例では、上述の実施形態と異なり、油圧モータ222Bは、可変容量油圧モータである。
【0065】
なお、蓄エネルギー装置2Bは、油圧ポンプ221Bを容量可変要素とするための油圧サーボ機構(不図示)と、油圧モータ222Bを容量可変要素とするための油圧サーボ機構(不図示)と、をそれぞれ備える。各油圧サーボ機構の構成は、上述した油圧ポンプ221用の油圧サーボ機構25の構成と同様であってよい。
【0066】
図15は、第2変形例の蓄エネルギー装置2Bにおける、ポンプおよびモータの容量と変速比との関係を示すグラフである。
図15は、計算結果を3次元で示したグラフである。
図15において、X軸は可変容量油圧ポンプ221Bの容量、Y軸は可変容量油圧モータ222Bの容量、Z軸は軸部2aの回転速度に関する変速比を示す。なお、X軸およびY軸は、正規化された値を示す。また、
図15においては、グラフ中の各軸の値を理解し易いように、破線で示す補助線が適宜追加されている。また、
図15においては、変速比が「1」の場合を基準として、変速比の変化の大きさ(絶対値)が1を超えるごとにハッチングの種類を変えて、容量変化に対する変速比の変化の傾向を見易くしている。
【0067】
可変容量油圧ポンプ221Bの容量ゼロは、可変容量油圧ポンプ221Bが作動油を吐出しない状態となる場合の容量に該当する。可変容量油圧ポンプ221Bの容量の「正」と「負」とは、このように決められた容量ゼロを基準として容量が大きくなる場合と小さくなる場合とを示す。なお、可変容量油圧ポンプ221Bの容量がゼロとなる場合には、可変容量油圧モータ222Bの容量変化に関わらず、変速比は「1」となる。
【0068】
可変容量油圧モータ222Bの容量が固定されている状態で、可変容量油圧ポンプ221Bの容量をゼロより大きくすると、容量がゼロの場合に比べて増速される。可変容量油圧モータ222Bの容量が固定されている状態で、可変容量油圧ポンプ221Bの容量をゼロより小さくすると、容量がゼロの場合に比べて減速される。
【0069】
例えば、可変容量油圧モータ222Bの容量が「1(100%)」である場合、可変容量油圧ポンプ221Bの容量を「-1(-100%)」から「+1(+100%)」まで変化させると、変速比が「0」から「+2」まで変化する。また、例えば、可変容量油圧モータ222Bの容量が「0.5(50%)」である場合、可変容量油圧ポンプ221Bの容量を「-1(-100%)」から「+1(+100%)」まで変化させると、変速比が「-1」から「+3」まで変化する。また、例えば、可変容量油圧モータ222Bの容量が「0.1(10%)」である場合、可変容量油圧ポンプ221Bの容量を「-1(-100%)」から「+1(+100%)」まで変化させると、変速比が「-5」から「+5」まで変化する。
【0070】
すなわち、油圧要素22Bが有する油圧ポンプだけでなく、油圧要素22Bが有する油圧モータも容量可変要素とすることで、正逆回転域を含めた広い変速範囲を実現することができる。なお、
図15に示されるように、油圧要素が有する油圧ポンプのみを容量可変要素とし、油圧モータを容量固定要素とした場合には、変速範囲が狭くなる傾向がある。ただし、油圧モータを容量固定要素とした場合には、油圧モータを容量可変要素とするための機構(油圧サーボ機構)が不要となるために、蓄エネルギー装置のコンパクト化を図れたり、部品点数を削減したりすることができるといった利点がある。
【0071】
<4.留意事項等>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0072】
<5.付記>
例示的な本発明の蓄エネルギー装置は、エネルギーを蓄積可能に設けられる蓄エネルギー装置であって、原動機により駆動され、回転エネルギーの蓄積および放出を行うフライホイールと、前記原動機と前記フライホイールとの間に配置され、前記フライホイールの回転速度を変更する油圧要素と、を備える構成(第1の構成)であってよい。
【0073】
上記第1の構成の蓄エネルギー装置において、前記油圧要素は、油圧機械式無段変速機である構成(第2の構成)であってよい。
【0074】
上記第1又は第2の構成の蓄エネルギー装置は、前記油圧要素と前記フライホイールとの間に配置される減速機を備える構成(第3の構成)であってよい。
【0075】
上記第3の構成の蓄エネルギー装置において、前記減速機は、前記油圧要素および前記フライホイールと同軸に配列される構成(第4の構成)であってよい。
【0076】
上記第3又は第4の構成の蓄エネルギー装置は、前記油圧要素および前記減速機を収容するハウジングを備える構成(第5の構成)であってよい。
【0077】
上記第1から第5のいずれかの構成の蓄エネルギー装置は、前記原動機と前記油圧要素との間に動力の伝達と遮断とを切り替えるクラッチを備える構成(第6の構成)であってよい。
【0078】
上記第2から第6のいずれかの構成の蓄エネルギー装置において、前記油圧要素に含まれるプランジャ部材は、当該油圧要素の軸方向と直交するラジアル方向に運動する構成(第7の構成)であってよい。
【0079】
上記第7の構成の蓄エネルギー装置において、前記プランジャ部材は、球体である構成(第8の構成)であってよい。
【0080】
上記第1から第8のいずれかの構成の蓄エネルギー装置において、前記油圧要素は、油圧ポンプと油圧モータとを有し、前記油圧ポンプは、可変容量油圧ポンプである構成(第9の構成)であってよい。
【0081】
上記第9の構成の蓄エネルギー装置において、前記油圧モータは、可変容量油圧モータである構成(第10の構成)であってよい。
【0082】
上記第8又は第9の構成の蓄エネルギー装置は、前記可変容量油圧ポンプの容量を制御する油圧サーボ機構を備える構成(第11の構成)であってよい。
【0083】
上記第11の構成の蓄エネルギー装置において、前記可変容量油圧ポンプは、前記油圧サーボ機構により位置変動可能に設けられるリングと、前記リングの外周を囲むケースと、前記リングと前記ケースとの間に設けられると共に互いに区画された第1油室および第2油室と、を有する構成(第12の構成)であってよい。
【0084】
上記第12の構成の蓄エネルギー装置において、前記リングは、前記ケースの一部と接して前記第1油室および前記第2油室をシールするシール面を有する構成(第13の構成)であってよい。
【0085】
上記第13の構成の蓄エネルギー装置において、前記シール面は、前記リングの外周面と、前記リングの厚み方向の端面と、に設けられる構成(第14の構成)であってよい。
【0086】
例示的な本発明の作業機械は、前記原動機と、上記第1から第14のいずれかの構成の蓄エネルギー装置と、を備える構成(第15の構成)であってよい。
【符号の説明】
【0087】
1・・・原動機
2、2A、2B・・・蓄エネルギー装置
20・・・ハウジング
20a・・・前ケース
20b・・・中間ケース
20c・・・後ケース
21・・・フライホイール
22、22B・・・油圧要素、油圧機械式無段変速機
23・・・減速機、遊星歯車減速機
24・・・クラッチ
25・・・油圧サーボ機構
200・・・作業機械
221、221B・・・油圧ポンプ、可変容量油圧ポンプ
222・・・油圧モータ
222B・・・油圧モータ、可変容量油圧モータ
250a・・・第1油室
250b・・・第2油室
257・・・可動部材、リング
257a・・・平面部(シール面)
257b・・・前面当接部(シール面)
257c・・・後面当接部(シール面)
C・・・中心軸
PL1、PL2・・・プランジャ部材