IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特開2024-132884人工毛髪用繊維束及び人工毛髪用繊維束の製造方法
<>
  • 特開-人工毛髪用繊維束及び人工毛髪用繊維束の製造方法 図1
  • 特開-人工毛髪用繊維束及び人工毛髪用繊維束の製造方法 図2
  • 特開-人工毛髪用繊維束及び人工毛髪用繊維束の製造方法 図3
  • 特開-人工毛髪用繊維束及び人工毛髪用繊維束の製造方法 図4
  • 特開-人工毛髪用繊維束及び人工毛髪用繊維束の製造方法 図5
  • 特開-人工毛髪用繊維束及び人工毛髪用繊維束の製造方法 図6
  • 特開-人工毛髪用繊維束及び人工毛髪用繊維束の製造方法 図7
  • 特開-人工毛髪用繊維束及び人工毛髪用繊維束の製造方法 図8
  • 特開-人工毛髪用繊維束及び人工毛髪用繊維束の製造方法 図9
  • 特開-人工毛髪用繊維束及び人工毛髪用繊維束の製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132884
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】人工毛髪用繊維束及び人工毛髪用繊維束の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41G 3/00 20060101AFI20240920BHJP
   A41G 5/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A41G3/00 C
A41G5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011057
(22)【出願日】2024-01-29
(31)【優先権主張番号】P 2023043548
(32)【優先日】2023-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100201455
【弁理士】
【氏名又は名称】横尾 宏治
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 亜貴
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来に比べてハックリング回数が少なくても毛先がまとまった人工毛髪用繊維束を製造できる人工毛髪用繊維束の製造方法、及び従来に比べて2種類の繊維の外観上の切り替わり部分が小さく毛先がまとまった人工毛髪用繊維束を提供する。
【解決手段】第1繊維を帯状に並べた第1繊維帯の長手方向の中間部を、切断部分が長手方向に対して0度超過60度以下の角度で直線状に延びた第1直線部と第1直線部に対して120度以下の角度で直線状に延びた第2直線部を含むように切断し、第1切断繊維帯を形成する第1切断工程と、第2繊維を帯状に並べた第2繊維帯の長手方向の中間部を切断し、第2切断繊維帯を形成する第2切断工程と、第1切断繊維帯と第2切断繊維帯を束ねてハックリングするハックリング工程を含み、第2切断工程では、第2切断繊維帯の全長が第1切断繊維帯の最短の第1繊維の長さよりも短くなるように切断する方法とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1繊維を帯状に並べた第1繊維帯の長手方向の中間部を、切断部分が長手方向に対して0度超過60度以下の角度で直線状に延びた第1直線部と前記第1直線部に対して120度以下の角度で直線状に延びた第2直線部を含むように切断し、第1切断繊維帯を形成する第1切断工程と、
第2繊維を帯状に並べた第2繊維帯の長手方向の中間部を切断し、第2切断繊維帯を形成する第2切断工程と、
前記第1切断繊維帯と前記第2切断繊維帯を束ねてハックリングするハックリング工程を含み、
前記第2切断工程では、前記第2切断繊維帯の全長が前記第1切断繊維帯の最短の第1繊維の長さよりも短くなるように切断する、人工毛髪用繊維束の製造方法。
【請求項2】
前記第2切断工程では、前記第2切断繊維帯の長手方向の端部が、長手方向に対して85度以上95度以下の角度で直線状に延びた第3直線部を大部分で含むように切断する、請求項1に記載の人工毛髪用繊維束の製造方法。
【請求項3】
前記第1切断工程では、前記第1切断繊維帯の長手方向の両端部が前記第1直線部と前記第2直線部をそれぞれ含むように少なくとも二回切断し、
前記第2切断工程では、前記第2切断繊維帯の長手方向の両端部が前記第3直線部をそれぞれ含むように少なくとも二回切断する、請求項2に記載の人工毛髪用繊維束の製造方法。
【請求項4】
前記第1切断繊維帯は、長手方向の両端部が第1端部と第2端部であり、
前記第1端部の第1直線部は、前記第2端部の第2直線部と長手方向に重なる、請求項3に記載の人工毛髪用繊維束の製造方法。
【請求項5】
前記第1切断繊維帯は、前記第1直線部と前記第2直線部によって凹部が形成されており、
前記第1端部の凹部の底部は、前記第2端部の凹部の底部と長手方向に重なる、請求項4に記載の人工毛髪用繊維束の製造方法。
【請求項6】
前記第1端部の凹部の深さは、5cm以上40cm以下である、請求項5に記載の人工毛髪用繊維束の製造方法。
【請求項7】
前記第1切断繊維帯は、前記第1直線部と前記第2直線部によって凹部が形成されており、
前記凹部の深さは、5cm以上40cm以下である、請求項1に記載の人工毛髪用繊維束の製造方法。
【請求項8】
前記ハックリング工程では、長手方向において前記第1切断繊維帯の両端部よりも前記第2切断繊維帯が内側に位置するように束ねる、請求項1に記載の人工毛髪用繊維束の製造方法。
【請求項9】
前記ハックリング工程では、前記第1切断繊維帯と前記第2切断繊維帯を長手方向の中央部分に重畳領域が形成されるように重ねて仕掛繊維帯を形成した後に前記仕掛繊維帯を束ねる、請求項8に記載の人工毛髪用繊維束の製造方法。
【請求項10】
前記第1切断繊維帯は、前記第1直線部と前記第2直線部によって凹部が形成されており、
前記ハックリング工程では、前記第2切断繊維帯は、長手方向において前記第1切断繊維帯の前記凹部の底部よりも内側に位置するように束ねる、請求項1に記載の人工毛髪用繊維束の製造方法。
【請求項11】
前記ハックリング工程では、前記第1切断繊維帯と前記第2切断繊維帯を長手方向の中央部分に重畳領域が形成されるように重ねて仕掛繊維帯を形成した後に前記仕掛繊維帯を束ねる、請求項10に記載の人工毛髪用繊維束の製造方法。
【請求項12】
前記仕掛繊維帯は、前記重畳領域の長手方向の端部から前記第1切断繊維帯の前記凹部の底部までの距離が5cm以上である、請求項11に記載の人工毛髪用繊維束の製造方法。
【請求項13】
前記ハックリング工程におけるハックリングの回数は3回以上20回以下である、請求項1に記載の人工毛髪用繊維束の製造方法。
【請求項14】
少なくとも2種類の繊維群が束状に束ねられた人工毛髪用繊維束であって、
前記2種類の繊維群には、第1繊維群と第2繊維群があり、
前記第1繊維群は、複数の第1繊維で構成され、300本の第1繊維を無作為に抽出したときの最も長い第1繊維と、最も短い第1繊維の差が3cm以上であって、かつ算術平均長さが10cm以上180cm以下であり、
前記第2繊維群は、複数の第2繊維で構成され、300本の第1繊維を無作為に抽出し、短い方から順に並べたときの10番目の長さよりも短いものであり、
前記第1繊維群と前記第2繊維群が混在する混在領域と、前記第1繊維群が露出する露出領域を有し、
前記露出領域の長さは、前記第1繊維群の算術平均長さと、300本の第2繊維を無作為に抽出したときの前記第2繊維群の算術平均長さとの差の0.8倍以上1.5倍以下である、人工毛髪用繊維束。
【請求項15】
前記第1繊維は、前記第2繊維とは色、材質、及び断面形状の少なくとも一つが異なる、請求項14に記載の人工毛髪用繊維束。
【請求項16】
前記第1繊維は、前記第2繊維とは色が異なる、請求項15に記載の人工毛髪用繊維束。
【請求項17】
前記混在領域の長さは、前記露出領域の長さの1/3以下である、請求項14に記載の人工毛髪用繊維束。
【請求項18】
前記第1繊維群を構成する第1繊維の本数は、前記第2繊維群を構成する第2繊維の本数よりも少ない、請求項14の記載の人工毛髪用繊維束。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工毛髪用繊維束及び人工毛髪用繊維束の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、かつらやウィッグ、エクステンション、ブレード、ヘアバンドなどの頭飾製品の素材として人の毛髪に模した人工毛髪用繊維束が使用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-47846号公報
【特許文献2】特開2002-275719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来から、長さと色が異なる複数種類の毛髪を根元側の一端に揃え、無作為に混ぜ合わせてハックリングし、各毛髪の先端を不揃いにした状態にしたかつら用毛髪が知られている(例えば、特許文献2)。
この特許文献2によれば、根元から先端にかけて色が変化していくようにみせることができ、この技術は、近年、根元側と毛先側で異なる色に明確に変化するツートーンカラーのヘアスタイルに応用できると考えられる。
【0005】
そこで、本発明者は、特許文献2に倣って色及び長さが異なる2種類の人工毛髪繊維を用いてハックリングすることで、根元側と毛先側で異なる色に変化する人工毛髪用繊維束の試作を行った。
【0006】
しかしながら、試作した人工毛髪用繊維束では、幅が広く、毛先側が広がった状態となり、毛先がまとまらない問題があった。また、毛先側をまとめるために、ハックリング回数を増やすと、毛先がまとまるものの、手間がかかるだけではなく、2色の繊維が入り混じった色の切り替わり部分が広くなってぼやけてしまい、ツートーンカラーにならない問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、従来に比べてハックリング回数が少なくても毛先がまとまった人工毛髪用繊維束を製造できる人工毛髪用繊維束の製造方法、及び従来に比べて2種類の繊維の外観上の切り替わり部分が小さく毛先がまとまった人工毛髪用繊維束を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、第1繊維を帯状に並べた第1繊維帯の長手方向の中間部を、切断部分が長手方向に対して0度超過60度以下の角度で直線状に延びた第1直線部と前記第1直線部に対して120度以下の角度で直線状に延びた第2直線部を含むように切断し、第1切断繊維帯を形成する第1切断工程と、第2繊維を帯状に並べた第2繊維帯の長手方向の中間部を切断し、第2切断繊維帯を形成する第2切断工程と、前記第1切断繊維帯と前記第2切断繊維帯を束ねてハックリングするハックリング工程を含み、前記第2切断工程では、前記第2切断繊維帯の全長が前記第1切断繊維帯の最短の第1繊維の長さよりも短くなるように切断する、人工毛髪用繊維束の製造方法である。
【0009】
本様相によれば、従来に比べてハックリング回数が少なくても、毛先がまとまった人工毛髪用繊維束を製造できる。
【0010】
好ましい様相は、前記第2切断工程では、前記第2切断繊維帯の長手方向の端部が、長手方向に対して85度以上95度以下の角度で直線状に延びた第3直線部を大部分で含むように切断する。
【0011】
ここでいう「大部分」とは、全体の50%超過の部分をいう。
【0012】
好ましい様相は、前記第1切断工程では、前記第1切断繊維帯の長手方向の両端部が前記第1直線部と前記第2直線部をそれぞれ含むように少なくとも二回切断し、前記第2切断工程では、前記第2切断繊維帯の長手方向の両端部が前記第3直線部をそれぞれ含むように少なくとも二回切断する。
【0013】
好ましい様相は、前記第1切断繊維帯は、長手方向の両端部が第1端部と第2端部であり、前記第1端部の第1直線部は、前記第2端部の第2直線部と長手方向に重なる。
【0014】
好ましい様相は、前記第1切断繊維帯は、前記第1直線部と前記第2直線部によって凹部が形成されており、前記第1端部の凹部の底部は、前記第2端部の凹部の底部と長手方向に重なる。
【0015】
好ましい様相は、前記第1端部の凹部の深さは、5cm以上40cm以下である。
【0016】
好ましい様相は、前記第1切断繊維帯は、前記第1直線部と前記第2直線部によって凹部が形成されており、前記凹部の深さは、5cm以上40cm以下である。
【0017】
好ましい様相は、前記ハックリング工程では、長手方向において前記第1切断繊維帯の両端部よりも前記第2切断繊維帯が内側に位置するように束ねる。
【0018】
好ましい様相は、前記ハックリング工程では、前記第1切断繊維帯と前記第2切断繊維帯を長手方向の中央部分に重畳領域が形成されるように重ねて仕掛繊維帯を形成した後に前記仕掛繊維帯を束ねる。
【0019】
好ましい様相は、前記第1切断繊維帯は、前記第1直線部と前記第2直線部によって凹部が形成されており、前記ハックリング工程では、前記第2切断繊維帯は、長手方向において前記第1切断繊維帯の前記凹部の底部よりも内側に位置するように束ねる。
【0020】
好ましい様相は、前記ハックリング工程では、前記第1切断繊維帯と前記第2切断繊維帯を長手方向の中央部分に重畳領域が形成されるように重ねて仕掛繊維帯を形成した後に前記仕掛繊維帯を束ねる。
【0021】
好ましい様相は、前記仕掛繊維帯は、前記重畳領域の長手方向の端部から前記第1切断繊維帯の前記凹部の底部までの距離が5cm以上である。
【0022】
好ましい様相は、前記ハックリング工程におけるハックリングの回数は3回以上20回以下である。
【0023】
本発明の一つの様相は、少なくとも2種類の繊維群が束状に束ねられた人工毛髪用繊維束であって、前記2種類の繊維群には、第1繊維群と第2繊維群があり、前記第1繊維群は、複数の第1繊維で構成され、300本の第1繊維を無作為に抽出したときの最も長い第1繊維と、最も短い第1繊維の差が3cm以上であって、かつ算術平均長さが10cm以上180cm以下であり、前記第2繊維群は、複数の第2繊維で構成され、300本の第1繊維を無作為に抽出し、短い方から順に並べたときの10番目の長さよりも短いものであり、前記第1繊維群と前記第2繊維群が混在する混在領域と、前記第1繊維群が露出する露出領域を有し、前記露出領域の長さは、前記第1繊維群の算術平均長さと、300本の第2繊維を無作為に抽出したときの前記第2繊維群の算術平均長さとの差の0.8倍以上1.5倍以下である、人工毛髪用繊維束である。
【0024】
本様相によれば、従来に比べて2種類の繊維の外観上の切り替わり部分が小さく毛先がまとまる。
【0025】
好ましい様相は、前記第1繊維は、前記第2繊維とは色、材質、及び断面形状の少なくとも一つが異なる。
【0026】
好ましい様相は、前記第1繊維は、前記第2繊維とは色が異なる。
【0027】
好ましい様相は、前記混在領域の長さは、前記露出領域の長さの1/3以下である。
【0028】
好ましい様相は、前記第1繊維群を構成する第1繊維の本数は、前記第2繊維群を構成する第2繊維の本数よりも少ない。
【0029】
上記した様相は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各様相間で、相互に従属させたり、一部の構成を引用したり、一部の構成を置換することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の人工毛髪用繊維束の製造方法によれば、従来に比べてハックリング回数が少なくても毛先がまとまった人工毛髪用繊維束を製造できる。
本発明の人工毛髪用繊維束によれば、従来に比べて2種類の繊維の外観上の切り替わり部分が小さく毛先がまとまる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1実施形態の人工毛髪用繊維束を模式的に示した斜視図である。
図2図1の人工毛髪用繊維束を展開した平面図である。
図3図1の人工毛髪用繊維束を構成する仕掛繊維帯の平面図である。
図4図3の第1繊維帯の説明図であり、(a)は第1繊維帯の平面図であり、(b)は(a)の要部の外郭(輪郭)を示す平面図である。
図5図1の人工毛髪用繊維束の製造方法の説明図であり、(a)は第1繊維帯を形成する際の平面図であり、(b)は第2繊維帯を形成する際の平面図である。
図6】本発明の第2実施形態の仕掛繊維帯の平面図である。
図7図6の第1繊維帯の説明図であり、(a)は第1繊維帯の平面図であり、(b)は(a)の要部の外郭(輪郭)を示す平面図である。
図8】本発明の第3実施形態の仕掛繊維帯の平面図である。
図9】本発明の比較例1~3の説明図であり、(a)は比較例1の仕掛繊維帯の平面図であり、(b)は比較例2の仕掛繊維帯の平面図であり、(c)は比較例3の仕掛繊維帯の平面図である。
図10】本発明の実施例及び比較例の人工毛髪用繊維束の撮影画像であり、(a)は実施例1の撮影画像を表し、(b)は実施例2の撮影画像を表し、(c)は比較例1の撮影画像を表し、(d)は比較例2の撮影画像を表し、(e)は比較例3の撮影画像を表す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0033】
本発明の第1実施形態の人工毛髪用繊維束1は、ヘアーウィッグ、かつら、ウィービング、ヘアーエクステンション、ブレードヘアー、ヘアーアクセサリー、及びドールヘアーからなる群から選ばれる一種の頭装飾品を構成するものである。
人工毛髪用繊維束1は、図1のように複数種類の人工毛髪繊維2(2a,2b)(以下、単に繊維2(2a,2b)ともいう)が固定部3で束ねられた繊維束であり、固定部3付近で折り返されて使用されるものであり、折り返した状態において全体として所定の方向に延びている。
【0034】
人工毛髪用繊維束1は、図3のように、第1繊維帯10(第1切断繊維帯,第1繊維群)と第2繊維帯11(第2切断繊維帯,第2繊維群)を重ねた仕掛繊維帯5を束状にまとめてハックリングして形成されるものである。
【0035】
人工毛髪用繊維束1は、図2のように、直線状に延ばした状態において、長手方向の両端部が揃っておらず、繊維2の端部が概ね異なる位置にあり、筆状のまとまりのある毛先となっている。
本実施形態の人工毛髪用繊維束1は、第1繊維2aと第2繊維2bが異なる色をしており、図2のように、固定部3を解いて直線状に延ばした状態において、長手方向において端部部分と中央部分とで2種類の色に分かれて色が相違するツートーンカラーの繊維束である。
以下の説明においては、特に断りのない限り、人工毛髪用繊維束1を直線状に伸ばした状態を基準とし、その延び方向を長さ方向(長手方向)として説明する。
【0036】
人工毛髪用繊維束1は、300本の第1繊維2aを無作為に抽出したときの最も長い第1繊維2aと、最も短い第1繊維2aの差が3cm以上であることが好ましく、5cm以上であることがより好ましい。
人工毛髪用繊維束1は、300本の第1繊維2aを無作為に抽出したときの算術平均長さが10cm以上180cm以下であることが好ましく、100cm以上であることがより好ましい。
人工毛髪用繊維束1は、300本の第2繊維2bを無作為に抽出したときの算術平均長さが300本の第1繊維2aを無作為に抽出したときの算術平均長さよりも短く、60cm以上110cm以下であることが好ましい。
人工毛髪用繊維束1は、第2繊維2bの長さが、300本の第1繊維2aを無作為に抽出し、短い方から順に並べたときの10番目の長さよりも短いことが好ましい。
【0037】
人工毛髪用繊維束1は、図2のように、露出領域70a,70bと、混在領域71a,71bと、中間領域72を備えている。
露出領域70a,70bは、実質的に第1繊維2aのみで構成される第1繊維群のみが露出する領域であり、第1繊維2aの色となる領域である。
露出領域70a,70bの長さは、人工毛髪用繊維束1において、300本の第1繊維2aを無作為に抽出したときの算術平均長さと、300本の第2繊維2bを無作為に抽出したときの算術平均長さの差の0.8倍以上1.5倍以下であることが好ましく、1.2倍以下であることがより好ましい。
「ここで実質的に第1繊維2aのみ」とは、全体の98%以上が第1繊維2aで構成されることをいう。
【0038】
混在領域71a,71bは、第1繊維2aと第2繊維2bが混在する領域であり、第1繊維2aの色と第2繊維2bの色が入り混じった領域である。
具体的には、混在領域71a,71bは、第2繊維2bの中に複数本の第1繊維2aが筋状に混じった領域であり、第1繊維2aの色と第2繊維2bの色とのどちらに属するか明確に区別できない領域である。
混在領域71a,71bの長さは、露出領域70a,70bの長さよりも短く、露出領域70a,70bの長さの1/3以下であることが好ましく、1/4以下であることが好ましい。
【0039】
中間領域72は、長手方向において、混在領域71a,71bの間にあって主に第1繊維2aに比べて第2繊維2bが支配的に露出する領域であり、実質的に第2繊維2bの色となる領域である。
【0040】
(人工毛髪繊維2)
人工毛髪繊維2(2a,2b)は、モダクリル繊維(MODA繊維)等のアクリル繊維(AC繊維)、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)、ポリ塩化ビニル繊維(PVC繊維)、ナイロン繊維(Ny繊維)、及びポリプロピレン繊維(PP繊維)からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維で構成されていることが好ましい。
繊維2の断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば、H字状、C字状、円形状、Y字状、U字状、X字形、扁平状、及び馬蹄状などの形状にできる。
繊維2は、中空であってもよいし、中実であってもよい。
繊維2は、クリンプ等によって捲縮が付与されていてもよいし、捲縮が付与されていなくてもよい。
【0041】
第1繊維2aの本数は、第2繊維2bの本数よりも少なく、第2繊維2bの本数の0.1倍以上0.5倍以下であることが好ましく、0.3倍以下であることが好ましい。
第1繊維2aの本数は、人工毛髪用繊維束1を構成する全繊維2a,2bの数の5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましい。
第1繊維2aの本数は、人工毛髪用繊維束1を構成する全繊維2a,2bの数の50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることがさらに好ましい。
第2繊維2bの本数は、人工毛髪用繊維束1を構成する全繊維2a,2bの数の50%超過であることが好ましく、60%超過であることがより好ましく、70%超過であることがさらに好ましい。
第2繊維2bの本数は、人工毛髪用繊維束1を構成する全繊維2a,2bの数の95%未満であることが好ましく、90%未満であることがより好ましく、85%未満であることがさらに好ましい。
【0042】
(仕掛繊維帯5)
仕掛繊維帯5は、人工毛髪用繊維束1の仕掛品であり、図3のように第1繊維2aが帯状に並べられた第1繊維帯10と第2繊維2bが帯状に並べられた第2繊維帯11が厚み方向に重ねられて構成されている。
【0043】
(第1繊維帯10)
第1繊維帯10は、複数の第1繊維2aのみで構成された繊維群であり、図4のように長手方向の端部31,32がジグザグ状の帯状体である。
第1繊維帯10は、図4のように、長手方向の一方の端部31(以下、第1端部31ともいう)側から他方の端部32(以下、第2端部32ともいう)側に向かって順に第1端部領域20と、中央領域21と、第2端部領域22を備えている。
【0044】
第1端部領域20は、長手方向において、第1端部31から中間部側に向かって延びる領域であり、三角波状の凹凸が形成された領域である。
第1端部領域20は、図4(a)のように、幅方向の中間部に2つの凹部30a,30bを備えている。
凹部30a,30bは、図4(b)のように、長手方向において中央領域21に向かって窪んでおり、第1傾斜部35(第1直線部)と、第2傾斜部36(第2直線部)で構成されている。
第1傾斜部35と第2傾斜部36は、ともに直線状に延びた直線部であり、中央領域21との境界部分で交わっている。
図4(b)に示される隣接する第1傾斜部35と第2傾斜部36でなす角度θ1(凹部30a,30bの底部の角度)は、鋭角となっていることが好ましく、10度以上70度以下であることがより好ましく、20度以上40度以下であることがさらに好ましい。
凹部30aの第1傾斜部35aと凹部30bの第1傾斜部35bは、互いに平行となっており、凹部30aの第2傾斜部36aと凹部30bの第2傾斜部36bも、互いに平行となっている。
凹部30a,30bの深さは、5cm以上40cm以下であることが好ましく、7cm以上20cm以下であることがより好ましい。
凹部30a,30bの長さは、同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。
【0045】
中央領域21は、長手方向の中央部に設けられた四角形状の領域であり、95%以上の第1繊維2aが属する領域である。
中央領域21の長手方向の長さは、全長の45%以上であることが好ましい。
【0046】
第2端部領域22は、図4(a)のように、長手方向の中間部から第2端部32に延びる領域であり、三角波状の凹凸が形成された領域である。
第2端部領域22は、第1端部領域20と線対称の関係となっている。そこで、第2端部領域22の各部材において第1端部領域20と同様の構成については、同様の付番を振って説明を省略する。
【0047】
第2端部領域22は、幅方向の中間部に2つの凹部30a,30bを備えている。
第2端部領域22の凹部30a,30bは、深さ方向が第1端部領域20の凹部30a,30bに対して近接する方向となっている。
第2端部領域22の凹部30a,30bの底部の位置(中心線の位置)は、幅方向において、第1端部領域20の凹部30a,30bの底部の位置(中心線の位置)と同一位置となっている。
【0048】
(第2繊維帯11)
第2繊維帯11は、複数の繊維2bで構成された繊維群であり、図3のように、平面視したときに四角形状であって長手方向の両端部51,52が略直線状に揃った帯状体である。すなわち、第2繊維帯11は、長手方向の端部51,52の大部分が長手方向に対して略直交する直線部55,56(第3直線部)で形成されている。
直線部55,56は、長手方向に対して85度以上95度以上の角度で直線状に延びる部位である。
本実施形態の直線部55,56は、いずれも長手方向に対して直交している。
【0049】
ここで、仕掛繊維帯5の各部位の位置関係について説明する。
【0050】
仕掛繊維帯5は、図3のように、長手方向において第1繊維帯10の中央部分が第2繊維帯11の中央部分に一致するように配されている。
第1繊維帯10は、長手方向において、第2繊維帯11よりも長く、最短の第1繊維2aが第2繊維帯11の最長の第2繊維2bよりも長い。すなわち、第1繊維帯10の長手方向の両端部31,32は、第2繊維帯11の長手方向の両端部51,52よりも外側に位置しており、第2繊維帯11の長手方向の両端部51,52と並んでいない。
仕掛繊維帯5は、第2繊維帯11の直線部55,56が第1繊維帯10の凹部30a,30bの底部の内側に位置している。すなわち、第2繊維帯11の直線部55,56が第1繊維帯10の凹部30a,30bの縁と交差していない。
【0051】
仕掛繊維帯5は、図3のように、第1繊維帯10と第2繊維帯11が重なった重畳領域60と、第1繊維帯10が第2繊維帯11から張り出した張出領域61が形成されている。
重畳領域60は、長手方向において第2繊維帯11の直線部55,56間に位置する領域である。
張出領域61a,61bは、長手方向において第2繊維帯11の直線部55,56の外側の領域であり、第1繊維帯10の端部領域20,22と中央領域21の一部が位置している。
【0052】
仕掛繊維帯5は、重畳領域60の長手方向の端部51,52から第1繊維帯10の凹部30a,30bの底部までの距離が5cm以上であることが好ましく、10cm以上であることがより好ましく、12cm以上であることがさらに好ましい。
仕掛繊維帯5は、重畳領域60の長手方向の端部51,52から第1繊維帯10の凹部30a,30bの底部までの距離が50cm以下であることが好ましく、30cm以下であることがより好ましく、20cm以下であることがさらに好ましい。
【0053】
続いて、本発明の第1実施形態の人工毛髪用繊維束1の製造方法について説明する。
【0054】
本実施形態の人工毛髪用繊維束1の製造方法は、主に、第1切断工程及び第2切断工程と、ハックリング工程をこの順に実施するものである。
【0055】
具体的には、まず、図5(a)のように、第1繊維2aを帯状に並べて第1帯状体80を形成し、ジグザグ状に刃90が延びた刃部材を第1帯状体80に押し付けて長手方向において所定の間隔ごとに第1帯状体80を切断し刃部材による切断形状によって端部31,32が形成される第1繊維帯10を形成する(第1切断工程)。
また、別途工程において、図5(b)のように、第1繊維2aとは異なる第2繊維2bを帯状に並べて第2帯状体81を形成し、直線状に刃91が延びた刃部材を第2帯状体81に押し付けて長手方向において所定の間隔ごとに第2帯状体81を切断し刃部材による切断形状によって端部51,52が形成される第2繊維帯11を形成する(第2切断工程)。
【0056】
このとき、第1切断工程では、図5(a)のように切断部分が第1傾斜部35と第2傾斜部36をそれぞれ含むようにジグザグ状に切断され、第1繊維帯10の幅方向に行くにつれて長さが徐々に異なっている。
また、第2切断工程では、図5(b)のように切断部分が長手方向に対して85度以上95度以下の角度で直線状に延びた直線部55,56を大部分で含むように切断され、第2繊維帯11の幅方向のいずれの位置でも長さが概ね等しい。
【0057】
続いて、図3のように、第1繊維帯10の長手方向の中央部分が第2繊維帯11の長手方向の中央部分と重なるように重ねて仕掛繊維帯5を形成した後、仕掛繊維帯5を束状に束ねて、仕掛繊維帯5を剣山のような棒状部が複数設けられたハックリング台に落下させた後、仕掛繊維帯5をハックリング台の棒状部の隙間から引き抜いてハックリングを行い(ハックリング工程)、固定部3を仕掛繊維帯5の中間部に取り付けて固定し、固定部3付近で折り曲げることで、人工毛髪用繊維束1が完成する。
【0058】
このとき、仕掛繊維帯5は、ハックリングによって繊維2間の位置関係が長手方向をずれながら繊維2の流れが整ってまとまっていく。
ハックリングの回数は、特に限定されるものではないが、より繊維2の流れを整える観点から3回以上20回以下であることが好ましく、4回以上10回以下であることがより好ましい。
【0059】
本実施形態の人工毛髪用繊維束1の製造方法によれば、第2切断工程において、第2繊維帯11の全長が第1繊維帯10の最短の第1繊維2aの長さよりも短くなるように切断する。そのため、張出領域61a,61bにおける繊維2a,2bの量が重畳領域60に比べて少なくなり、ハックリング回数が少なくても毛先がまとまった人工毛髪用繊維束1を製造できる。また、本実施形態の人工毛髪用繊維束1の製造方法によれば、従来に比べてハックリング回数を少なくできるので、混在領域71a,71bの幅(長手方向の長さ)を小さくでき、長手方向において第2繊維2bの色と第1繊維2aの色が明確に切り替わったツートーンの人工毛髪用繊維束1を形成できる。さらに、本実施形態の人工毛髪用繊維束1の製造方法によれば、ハックリング回数を少なくできるので、製造時間を短くでき、コストを低減できる。
【0060】
本実施形態の人工毛髪用繊維束1の製造方法によれば、第2切断工程において、第2繊維帯11の長手方向の端部51,52が、長手方向に対して85度以上95度以下の角度で直線状に延びた直線部55,56を大部分で含むように切断するので、混在領域71a,71bの幅(長手方向の長さ)をより小さくできる。
【0061】
本実施形態の人工毛髪用繊維束1の製造方法によれば、第1切断工程では、長手方向の両端部31,32が第1傾斜部35と第2傾斜部36をそれぞれ含むように少なくとも二回切断して第1繊維帯10が形成され、第2切断工程では、長手方向の両端部51,52が直線部55,56をそれぞれ含むように少なくとも二回切断して第2繊維帯11が形成される。すなわち、第1繊維帯10の両端部31,32を切断する刃90を有する刃部材を共用でき、第2繊維帯11の両端部51,32を切断する刃91を有する刃部材を共用できる。そのため、容易に仕掛繊維帯5を形成できる。
【0062】
本実施形態の人工毛髪用繊維束1の製造方法によれば、第1繊維帯10は、長手方向の両端部が第1端部31と第2端部32であり、第1端部31の第1傾斜部35は、第2端部32の第2傾斜部36と長手方向に重なる。すなわち、第1端部領域20の凹部30a,30bの幅方向の位置と、第2端部領域22の凹部30a,30bの幅方向の位置が重なっているので、幅方向において第1繊維2aの長さを相違させることができる。そのため、ハックリングにより筆状に毛先がまとまった人工毛髪用繊維束1を容易に製造できる。
【0063】
本実施形態の人工毛髪用繊維束1の製造方法によれば、第1繊維帯10は、第1傾斜部35と第2傾斜部36によって凹部30a,30bが形成されており、凹部30a,30bの深さは、5cm以上40cm以下である。そのため、張出領域61a,61bにおいても繊維量が少なくなりすぎず、自然な毛先を再現できる。
【0064】
本実施形態の人工毛髪用繊維束1の製造方法によれば、ハックリング工程において、長手方向において第1繊維帯10の両端部31,32よりも第2繊維帯11が内側に位置するように束ねて仕掛繊維帯5を形成するので、両端部に自然な毛先が再現された人工毛髪用繊維束1を形成できる。
【0065】
本実施形態の人工毛髪用繊維束1によれば、300本の第1繊維2aを無作為に抽出したときの最も長い第1繊維2aと、最も短い第1繊維2aの差が3cm以上であって、かつ算術平均長さが10cm以上180cm以下であり、第2繊維2bは、300本の第1繊維2aを無作為に抽出し、短い方から順に並べたときの10番目の長さよりも短いものであり、第1繊維2aと第2繊維2bが混在する混在領域71a,71bと、第1繊維2aが露出する露出領域70a,70bを有し、露出領域70a,70bの長手方向の長さは、第1繊維2aの算術平均長さと、300本の第2繊維2bを無作為に抽出したときの第2繊維2bの算術平均長さとの差の0.8倍以上1.5倍以下である。そのため、従来に比べて2種類の繊維2a,2bの切り替わり部分が小さく毛先がまとまった形状となる。
【0066】
本実施形態の人工毛髪用繊維束1によれば、第1繊維2aは、第2繊維2bとは色が異なるので、ツートーンの外観を形成できる。
【0067】
続いて、本発明の第2実施形態の人工毛髪用繊維束について説明する。なお、第1実施形態の人工毛髪用繊維束1と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。以下、同様にする。
【0068】
第2実施形態の人工毛髪用繊維束は、仕掛繊維帯105の形状が第1実施形態の人工毛髪用繊維束1の仕掛繊維帯5と異なる。
【0069】
(仕掛繊維帯105)
仕掛繊維帯105は、図6のように第1繊維帯110(第1切断繊維帯,第1繊維群)
と第2繊維帯11が厚み方向に重ねられて構成されている。
【0070】
(第1繊維帯110)
第1繊維帯110は、図7のように、長手方向の一方の端部(第1端部131)側から他方の端部(第2端部132)側に向かって順に第3端部領域140と、中央領域141と、第4端部領域142を備えている。
【0071】
第3端部領域140は、図7のように、幅方向の中間部に2つの凸部151a,151bを備えている。
凸部151a,151bは、図7(b)のように、長手方向において中央領域141から外側に向かって突出しており、第1傾斜部155(第1直線部)と、第2傾斜部156(第2直線部)で構成されている。
第1傾斜部155と第2傾斜部156は、ともに直線状に延びており、隣接する第1傾斜部155と第2傾斜部156は、端部同士が交わっている。
図7(b)に示される隣接する第1傾斜部155と第2傾斜部156でなす角度θ2(凸部151の頂点の角度)は、鋭角であることが好ましく、10度以上70度以下であることがより好ましく、20度以上40度以下であることがさらに好ましい。
凸部151aの第1傾斜部155aと凸部151bの第1傾斜部155bは、互いに平行となっており、凸部151aの第2傾斜部156aと凸部151bの第2傾斜部156bも、互いに平行となっている。
凸部151a,151bの長さ(中央領域141からの突出長さ)は、5cm以上40cm以下であることが好ましく、22cm以上26cm以下であることがより好ましい。
凸部151a,151bの長さは、同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。
【0072】
また、別の観点から視ると、第3端部領域140は、隣接する凸部151aの第1傾斜部155aと,凸部151bの第2傾斜部156bによって第1実施形態と同様の凹部30が形成されている。
【0073】
中央領域141は、図7(a)のように、長手方向の中央部に設けられた四角形状の領域であり、95%以上の第1繊維2aが属する領域である。
中央領域141の長手方向の長さは、全長の45%以上であることが好ましい。
【0074】
第4端部領域142は、長手方向において中央領域141から第1端部131とは反対側の外側に向かってに延びる領域であり、三角波状の凹凸が形成された領域である。
第4端部領域142は、第3端部領域140と線対称の関係となっている。そこで、第4端部領域142の各部材において第3端部領域140と同様の構成については、同様の付番を振って説明を省略する。
第4端部領域142は、図7(a)のように、幅方向の中間部に2つの凸部151a,151bを備えている。
第4端部領域142の凸部151a,151bは、突出方向が第3端部領域140の凸部151a,151bに対して離反する方向となっている。
第4端部領域142の凸部151a,151bの頂部の位置は、幅方向において、第3端部領域140の凸部151a,151bの頂部の位置と同一位置となっている。
【0075】
続いて、本発明の第3実施形態の人工毛髪用繊維束について説明する。
【0076】
第3実施形態の人工毛髪用繊維束は、図8のように、仕掛繊維帯205の形状が第1実施形態の人工毛髪用繊維束1の仕掛繊維帯5と異なる。
【0077】
(仕掛繊維帯205)
仕掛繊維帯205は、図8のように第1繊維帯10と第2繊維帯211(第2切断繊維帯,第2繊維群)が厚み方向に重ねられて構成されている。
【0078】
(第2繊維帯211)
第2繊維帯211は、第1繊維帯10の第1端部31と同様の第1端部231を備えており、第1繊維帯10の第2端部32と同様の第2端部232を備えている。
すなわち、第2繊維帯211は、第1繊維帯10の凹部30a,30bに相当する凹部230a,230bを両端部231,232に備えており、中央領域221の長さが第1繊維帯10の中央領域21の長さよりも短い。
第2繊維帯211は、幅方向において凹部230a,230bの位置が第1繊維帯10の凹部30a,30bの位置と同じ位置にあり、全長が第1繊維帯10の凹部30a,30bの底部間の距離よりも短い。すなわち、第2繊維帯211のうち最も長い第2繊維2bは、第1繊維帯10のうち最も短い第1繊維2aよりも短い。
【0079】
上記した実施形態では、繊維帯10,110,211に凹部又は凸部を形成していたが、本発明はこれに限定されるものではない。各繊維2a,2bの長さがそれぞれ漸次変化するものであればよく、例えば、繊維帯10,110,211の各端部領域が直角三角形状となっていてもよい。
【0080】
上記した実施形態では、繊維帯10,211は、各端部領域にそれぞれ2つの凹部を有していたが、本発明はこれに限定されるものではない。各端部領域の凹部の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
同様に、上記した実施形態では、繊維帯110は、各端部領域140,142にそれぞれ2つの凸部を有していたが、本発明はこれに限定されるものではない。各端部領域140,142の凸部の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0081】
上記した実施形態では、第2端部領域22の凹部30a,30bは、幅方向において、第1端部領域20の凹部30a,30bと同一位置となっていたが、本発明はこれに限定されるものではない。第2端部領域22の凹部30a,30bは、幅方向において、第1端部領域20の凹部30a,30bとずれていてもよい。
同様に、上記した実施形態では、第4端部領域142の凸部151a,151bの位置は、幅方向において、第3端部領域140の凸部151a,151bの位置と同一位置となっていたが、本発明はこれに限定されるものではない。第4端部領域142の凸部151a,151bの位置は、幅方向において、第3端部領域140の凸部151a,151bの位置とずれていてもよい。
【0082】
上記した実施形態では、端部領域20,22,140,142は、三角波状の凹凸が形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。端部領域20,22,140,142は、鋸歯状の凹凸が形成されていてもよいし、正弦波状の凹凸が形成されていてもよい。
【0083】
上記した実施形態では、人工毛髪繊維2として色が異なる2種類の繊維2a,2bを使用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。繊維2a,2bは、色の代わりに、又は色に加えて、材質又は断面形状が異なっていてもよい。
【0084】
上記した実施形態では、人工毛髪繊維2として色が異なる2種類の繊維2a,2bを使用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。色、材質、及び断面形状の少なくとも一つが異なる3種類以上の繊維2を使用してもよい。
【0085】
上記した第1実施形態及び第2実施形態では、第2繊維帯11の長手方向の端部51,52の全体に亘って長手方向に直交した直線部55,56が形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。第2繊維帯11の長手方向の端部51,52の大部分に亘って長手方向に直交した直線部55,56が形成されていてもよい。この場合、第2繊維帯11の長手方向の端部51,52の80%以上の部分に亘って長手方向に直交した直線部55,56が形成されていることが好ましい。
【0086】
上記した第3実施形態では、長手方向において第1繊維帯10の凹部30a,30bの深さと第2繊維帯211の凹部230a,230bの深さは等しかったが、本発明はこれに限定されるものではない。第1繊維帯10の凹部30a,30bの深さと第2繊維帯211の凹部230a,230bの深さは異なっていてもよい。
【0087】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【実施例0088】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0089】
(実施例1)
第1繊維としてモダクリル(MODA)繊維を幅36cm、56gになるように帯状に並べ、最長繊維の長さが107cm、最短繊維の長さが99cmになるように三角波状に切断して、図5(a)のような各端部領域に2つの凹部をもつ第1繊維帯を形成した。
また、第2繊維としてモダクリル(MODA)繊維を幅36cm、14gになるように帯状に並べ、第2繊維の長さが71cmになるように直線状に切断して、図5(b)のような直線状の端部をもつ第2繊維帯を形成した。
そして、図3のように、形成した第1繊維帯と第2繊維帯を厚み方向に重ねた後に、束ねて束状体を形成し、束状体に対してハックリングを4セット行い、その後、固定紐で束ねて人工毛髪用繊維束を形成した。このようにして得られた実施例1とした。
なお、ハックリングは、束状体にまとめ、9回ハックリング台を通し、10回目に束状体を束ねる作業を1セットとした。
【0090】
(実施例2)
実施例1において、第2繊維としてモダクリル(MODA)繊維を幅36cm、14gになるように帯状に並べ、最長繊維の長さが71cm、最短繊維の長さが63cmになるように三角波状に切断して図8のような各端部領域に2つの凹部をもつ第2繊維帯を形成したこと以外は同様にして、これを実施例2とした。
【0091】
(比較例1)
実施例1において、第1繊維としてモダクリル(MODA)繊維を幅36cm、56gになるように帯状に並べ、第1繊維の長さが102cmになるように直線状に切断して、図5(b)のような直線状の端部をもつ第1繊維帯を形成した。
また、第2繊維としてモダクリル(MODA)繊維を幅36cm、14gになるように帯状に並べ、第2繊維の長さが66cmになるように直線状に切断して、図5(b)のような直線状の端部をもつ第2繊維帯を形成した。これら以外は同様にして、これを比較例1とした。
すなわち、比較例1では、図9(a)のように第1繊維帯と第2繊維帯の両端部がともに直線状である点が実施例1と異なっていた。
【0092】
(比較例2)
実施例2において、第1繊維としてモダクリル(MODA)繊維を幅36cm、56gになるように帯状に並べ、第1繊維の長さが66cmになるように直線状に切断して、図5(b)のような直線状の端部をもつ第1繊維帯を形成した。
また、第2繊維としてモダクリル(MODA)繊維を幅36cm、14gになるように帯状に並べ、最長繊維の長さが71cm、最短繊維の長さが63cmになるように三角波状に切断して図5(a)のような各端部領域に2つの凹部をもつ仕掛繊維帯を形成したこと以外は同様にして、これを比較例2とした。
すなわち、比較例2では、図9(b)のように、第1繊維帯の両端部が直線状であり、第2繊維帯の両端部が三角波状である点が実施例1と異なっていた。
【0093】
(比較例3)
実施例2において、第1繊維としてモダクリル(MODA)繊維を幅36cm、56gになるように帯状に並べ、最長繊維の長さが99cm、最短繊維の長さが56cmになるように三角波状に切断して図5(a)のような各端部領域に2つの凹部をもつ第1繊維帯を形成した。
また、第2繊維としてモダクリル(MODA)繊維を幅36cm、14gになるように帯状に並べ、最長繊維の長さが71cm、最短繊維の長さが23cmになるように三角波状に切断して図5(a)のような各端部領域に2つの凹部をもつ第2繊維帯を形成した。これら以外は同様にして、これを比較例3とした。
すなわち、比較例3では、図9(c)のように第1繊維帯の最短繊維の長さが第2繊維帯の最長繊維の長さよりも短く、第1繊維帯の凹部の底部が第2繊維帯の凹部の内部に進入している点で実施例2と異なる。
【0094】
(外観評価)
実施例1,2及び比較例1~3の人工毛髪用繊維束を撮影した撮影画像を図10に示す。
【0095】
比較例1では、図10(c)のように、毛先が外側に広がって膨らんでおり、中間部分において広い範囲で第1繊維と第2繊維とが混在し、第1繊維単独の部分と第1繊維と第2繊維が混在する部分の境界が不鮮明であった。
比較例2,3では、図10(d)及び図10(e)のように、中間部分において広い範囲で第1繊維と第2繊維とが混在し、第1繊維単独の部分と第1繊維と第2繊維が混在する部分の境界が不鮮明であった。
実施例1,2では、中間部分において第1繊維と第2繊維とが混在する範囲が狭く、第1繊維単独の部分と第1繊維と第2繊維が混在する部分の境界が鮮明であった。また、先端が筆状にまとまっており、良好な外観となった。
この結果から、長手方向の第2繊維の外側で第1繊維の端部を山状とすることでハックリング時に第1繊維と第2繊維が互いに干渉せず、色の境界が鮮明でかつ先端が筆状にまとまった外観となることが示唆された。
【符号の説明】
【0096】
1 人工毛髪用繊維束
2 人工毛髪繊維
2a 第1繊維
2b 第2繊維
10,110 第1繊維帯(第1切断繊維帯,第1繊維群)
11,211 第2繊維帯(第2切断繊維帯,第2繊維群)
30,30a,30b,230a,230b 凹部
31,131,231 第1端部
32,132,232 第2端部
35,35a,35b 第1傾斜部(第1直線部)
36,36a,36b 第2傾斜部(第2直線部)
55,56 直線部(第3直線部)
70a,70b 露出領域
71a,71b 混在領域
155,155a,155b 第1傾斜部(第1直線部)
156,156a,156b 第2傾斜部(第2直線部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10