(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132888
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】水添共重合体、粘着組成物、粘着性フィルム、及び水添共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 53/02 20060101AFI20240920BHJP
C08F 297/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08L53/02
C08F297/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016424
(22)【出願日】2024-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2023039899
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024003186
(32)【優先日】2024-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】草ノ瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】服部 剛樹
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BP01W
4J002BP01X
4J002GC00
4J002GG00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
4J026HA06
4J026HA15
4J026HA20
4J026HA26
4J026HA33
4J026HA39
4J026HA43
4J026HA49
4J026HB06
4J026HB15
4J026HB20
4J026HB26
4J026HB33
4J026HB39
4J026HB48
4J026HB49
4J026HE01
(57)【要約】
【課題】粘着性、糊残り性に優れ、フィルム成膜性に優れた水添共重合体、前記水添共重合体を含有する粘着組成物、及び粘着性フィルムを提供する。
【解決手段】ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを有する共重合体の水添物である水添共重合体(A)と、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを有する共重合体の水添物である水添共重合体(B)を含み、前記(A)及び(B)が、それぞれ所定の条件を満たす、水添共重合体(X)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを有する共重合体の水添物である水添共重合体(A)と、
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを有する共重合体の水添物である水添共重合体(B)とを含み、
下記<条件(1)~(9)>を満たす、水添共重合体(X)。
<条件(1)>:
前記水添共重合体(A)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS1)と、
共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック、又は共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロックとを有しており、
前記水添共重合体(A)中の全ビニル芳香族単量体単位(TS1)の含有量が10~40質量%であり、
前記水添共重合体(A)中の前記重合体ブロック(BS1)の含有量が10~30質量%である。
<条件(2)>:
前記水添共重合体(A)の数平均分子量(Mn1)が3,000~35,000である。
<条件(3)>:
前記水添共重合体(B)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS2)を少なくとも一つと、
共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロックを少なくとも一つ有しており、
前記水添共重合体(B)中の全ビニル芳香族単量体単位(TS2)の含有量が15~40質量%であり、
前記水添共重合体(B)中の前記重合体ブロック(BS2)の含有量が10~30質量%である。
<条件(4)>:
前記水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn2)が130,000~300,000である。
<条件(5)>:
前記水添共重合体(A)中の共役ジエン化合物に由来する水添前のビニル結合量(Va)、及び前記水添共重合体(B)中の共役ジエン化合物に由来する水添前のビニル結合量(Vb)が50~90質量%である。
<条件(6)>:
前記水添共重合体(A)の前記ビニル結合量(Va)と、前記水添共重合体(B)の前記ビニル結合量(Vb)との差が、±20(絶対値が20)質量%以下である。
<条件(7)>:
前記水添共重合体(A)の数平均分子量(Mn1)に対する、前記水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn2)の比(Mn2/Mn1)が10以上である。
<条件(8)>:
前記水添共重合体(A)の共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水添率(Ha)、及び前記水添共重合体(B)の共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水添率(Hb)が70%以上である。
<条件(9)>:
前記水添共重合体(A)の含有量と、前記水添共重合体(B)の含有量の質量比(A)/(B)が10/90~50/50である。
【請求項2】
前記水添共重合体(A)の数平均分子量(Mn1)が5,000~15,000である、
請求項1に記載の水添共重合体(X)。
【請求項3】
前記ビニル結合量(Va)及び前記ビニル結合量(Vb)が60~85質量%であり、
前記水添共重合体(A)、及び前記水添共重合体(B)の共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水添率が85%以上である、
請求項1に記載の水添共重合体(X)。
【請求項4】
前記水添共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS1)の分子量(MnS1)と、前記水添共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS2)の分子量(MnS2)との比(MnS1/MnS2)が、0.05~0.5である、
請求項1に記載の水添共重合体(X)。
(MnS1及びMnS2は下記の方法で算出する。
MnS1=Mn1×BS1
MnS2=Mn2×BS2÷f
BS1:プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)によって求めた前記水添共重合体(A)のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの含有量
BS2:プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)によって求めた前記水添共重合体(B)のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの含有量
f:粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法によって求めた水添共重合体(B)の分岐度)
【請求項5】
前記水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn2)が150,000~250,000である、
請求項1に記載の水添共重合体(X)。
【請求項6】
前記水添共重合体(A)の数平均分子量(Mn1)に対する前記水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn2)の比(Mn2/Mn1)が15以上である、
請求項1に記載の水添共重合体(X)。
【請求項7】
前記水添共重合体(A)の含有量と、
前記水添共重合体(B)の含有量との質量比(A)/(B)が、
25/75~50/50である、
請求項1に記載の水添共重合体(X)。
【請求項8】
前記水添共重合体(A)と、前記水添共重合体(B)が、
下記<条件(10)~(11)>を全て満たす、
請求項1に記載の水添共重合体(X)。
<条件(10)>:
前記水添共重合体(A)が、一般構造式:a-b又は、a-cで表されるブロック共重合体である。
<条件(11)>:
前記水添共重合体(B)が、一般構造式:d-e-d-a-b又は、d-e-d-a-cで表されるブロック共重合体である。
(前記一般構造式中、a及びdはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、b及びeはビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム共重合体ブロックであり、cが共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである。)
【請求項9】
前記水添共重合体(A)と、前記水添共重合体(B)の一般構造式が、
下記(ア)又は(イ)である、
請求項1に記載の水添共重合体(X)。
(ア):前記水添共重合体(A)が、一般構造式:a-bで表され、かつ、前記水添共重合体(B)が、一般構造式:d-e-d-a-bで表されるブロック共重合体である。
(イ):前記水添共重合体(A)が、一般構造式:a-cで表され、かつ、前記水添共重合体(B)が、一般構造式:d-e-d-a-cで表されるブロック共重合体である。
(前記一般構造式中、a及びdはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、b及びeはビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム共重合体ブロックであり、cが共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである。)
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の水添共重合体(X)を含有する、粘着組成物。
【請求項11】
TG-DTA(熱重量示差熱分析)による200℃×30分後の重量減少が0.4%以下である、
請求項10に記載の粘着組成物。
【請求項12】
TG-DTA(熱重量示差熱分析)による200℃×30分後の重量減少が0.4%以下である、
請求項1に記載の水添共重合体(X)。
【請求項13】
樹脂基材層と、
請求項10に記載の前記粘着組成物の層と、
を、有する粘着性フィルム。
【請求項14】
請求項1乃至9、12のいずれか一項に記載の水添共重合体(X)の製造方法であって、
前記水添共重合体(A)と、前記水添共重合体(B)を1つの反応器内で同時に製造する工程を有し、
前記工程において、
下記(ウ)又は下記(エ)の順で、各重合体ブロックの原料モノマーと、重合開始剤を添加し、その後、水添する、
水添共重合体(X)の製造方法。
(ウ)第一重合開始剤、d、e、d、第二重合開始剤、a、b
(エ)第一重合開始剤、d、e、d、第二重合開始剤、a、c
(前記(ウ)、(エ)中、a及びdはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、b及びeはビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム共重合体ブロックであり、cが共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、各重合体ブロックの原料モノマーを添加する。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水添共重合体及、粘着組成物、粘着性フィルム、及び水添共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体は、加硫をしなくても加硫された天然ゴムや合成ゴムと同様の弾性を常温下にて有し、しかも高温下では熱可塑性樹脂と同様の加工性を有していることから、従来から、履物、プラスチック改質、アスファルト改質、粘接着剤等の分野、家庭用製品、家電・工業部品等の包装材料、玩具等の分野において広く利用されている。
また、前記ブロック共重合体の水添物は、耐候性、耐熱性に優れていることから、上述した用途分野以外に、自動車用部品や医療器具等の分野においても幅広く利用されている。
【0003】
近年、スマートフォン、タブレット、薄型テレビの普及が進んでおり、これらを構成する光学フィルムや光学用樹脂板の加工・運搬時における汚れの付着や傷つきを防止するために表面保護フィルムが多用されている。
表面保護フィルムは、従来から、建材用の合成樹脂板やステンレス板、アルミ板、化粧合板、鋼板、ガラス板、家具、什器、家電製品、精密機械、自動車、及び光学部材として用いられているプリズムシート等の表面を、傷や埃、汚れから保護する目的で用いられている。
表面保護フィルムは、所定の支持体上に粘着層が形成された構成を有しており、粘着層を構成する粘着剤に関し、従来から各種の提案がなされている。
【0004】
表面保護フィルムの粘着層に用いられる粘着剤としては、従来から、アクリル系粘着剤や、天然ゴム及びポリイソブチレン等のゴムを主体とするゴム系粘着剤が主として使用されている。
前記粘着剤を所定の支持体上に塗布する方法としては、粘着剤を溶剤に溶かした粘着剤溶液を、ロール、スプレー等を用いて塗布する方法が用いられている。前記塗布方法は、支持体上に粘着剤層を均一に、かつ薄く塗工できるというメリットを有しているが、溶剤を使用するため、大気汚染、製造時の労働安全衛生性、経済性等の観点からは好ましくないという問題点を有している。
【0005】
上述したような問題点に鑑み、最近では、表面保護フィルムとして、ポリオレフィン系樹脂製の基材層と水添スチレン系エラストマーやオレフィン系エラストマーを含有する粘着層とが一体となった、共押し出しフィルムが好適に用いられている。
【0006】
また、表面保護フィルムの被着体は近年多様化が進んでおり、前記被着体の表面が平滑なものだけでなく、表面に複雑な凹凸を有するものも存在している。表面に凹凸を有する被着体としては、例えば光学部材として用いられるプリズムシートや建材用のエンボス加工された鋼板等が挙げられる。このような表面に凹凸を有する被着体に対して、良好な粘着力を発現させるためには、接触面積が小さくても十分な粘着力が得られるように表面保護フィルムを構成する粘着層の粘着力を高くする必要があり、かかる観点から、従来から粘着層を構成する各種の材料が提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1には、粘着剤を構成する材料として、ビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロックA又は共役ジエン単量体単位からなり特定のビニル結合量の水添重合体ブロックCを少なくとも一つ含有し、かつビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなり特定ビニル結合量の水添ランダム共重合ブロックBを少なくとも一つ含有する構成の水添共重合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されている水添共重合体は、平滑なアクリル板に対する粘着力に優れ、粘着強さの経時の変化が少なく、糊残りによる汚染も少ない、という利点を有している。一方において、建材用のエンボス加工された鋼板等の粘着しにくい被着体に対しては、粘着力が不足しやすい、という問題点を有している。
かかる問題点に鑑み、使用上十分な粘着力を得るために、水添共重合体に粘着付与剤を混和して粘着剤を製造する方法が知られているが、粘着付与剤の配合の影響により、ロール巻き付き、厚み斑、機器汚染、機器故障等が生じており、成膜性、耐熱性、及び糊残り性に関して未だ改善の余地がある、という問題点を有している。
【0010】
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題に鑑み、粘着付与剤を低減し、又は使用しなくても、十分な粘着性と糊残り性という、相反する特性に優れ、フィルム成膜性にも優れた水添共重合体、前記水添共重合体を含有する粘着組成物、及び粘着性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記従来技術の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる共重合体の水添物である水添共重合体(A)と、水添共重合体(B)を含む水添共重合体(X)において、前記水添共重合体(A)及び前記水添共重合体(B)が特定の構成を有し、かつ、前記水添共重合体(A)及び前記水添共重合体(B)の含有量を所定の数値範囲内とすることにより、上述した目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0012】
〔1〕
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを有する共重合体の水添物である水添共重合体(A)と、
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを有する共重合体の水添物である水添共重合体(B)とを含み、
下記<条件(1)~(9)>を満たす、水添共重合体(X)。
<条件(1)>:
前記水添共重合体(A)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS1)と、
共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック、又は共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロックとを有しており、
前記水添共重合体(A)中の全ビニル芳香族単量体単位(TS1)の含有量が10~40質量%であり、
前記水添共重合体(A)中の前記重合体ブロック(BS1)の含有量が10~30質量%である。
<条件(2)>:
前記水添共重合体(A)の数平均分子量(Mn1)が3,000~35,000である。
<条件(3)>:
前記水添共重合体(B)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS2)を少なくとも一つと、
共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロックを少なくとも一つ有しており、
前記水添共重合体(B)中の全ビニル芳香族単量体単位(TS2)の含有量が15~40質量%であり、
前記水添共重合体(B)中の前記重合体ブロック(BS2)の含有量が10~30質量%である。
<条件(4)>:
前記水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn2)が130,000~300,000である。
<条件(5)>:
前記水添共重合体(A)中の共役ジエン化合物に由来する水添前のビニル結合量(Va)、及び前記水添共重合体(B)中の共役ジエン化合物に由来する水添前のビニル結合量(Vb)が50~90質量%である。
<条件(6)>:
前記水添共重合体(A)の前記ビニル結合量(Va)と、前記水添共重合体(B)の前記ビニル結合量(Vb)との差が、±20(絶対値が20)質量%以下である。
<条件(7)>:
前記水添共重合体(A)の数平均分子量(Mn1)に対する、前記水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn2)の比(Mn2/Mn1)が10以上である。
<条件(8)>:
前記水添共重合体(A)の共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水添率(Ha)、及び前記水添共重合体(B)の共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水添率(Hb)が70%以上である。
<条件(9)>:
前記水添共重合体(A)の含有量と、前記水添共重合体(B)の含有量の質量比(A)/(B)が10/90~50/50である。
〔2〕
前記水添共重合体(A)の数平均分子量(Mn1)が5,000~15,000である、前記〔1〕に記載の水添共重合体(X)。
〔3〕
前記ビニル結合量(Va)及び前記ビニル結合量(Vb)が60~85質量%であり、
前記水添共重合体(A)、及び前記水添共重合体(B)の共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水添率が85%以上である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の水添共重合体(X)。
〔4〕
前記水添共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS1)の分子量(MnS1)と、前記水添共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS2)の分子量(MnS2)との比(MnS1/MnS2)が、0.05~0.5である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の水添共重合体(X)。
(MnS1及びMnS2は下記の方法で算出する。
MnS1=Mn1×BS1
MnS2=Mn2×BS2÷f
BS1:プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)によって求めた前記水添共重合体(A)のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの含有量
BS2:プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)によって求めた前記水添共重合体(B)のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの含有量
f:粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法によって求めた水添共重合体(B)の分岐度)
〔5〕
前記水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn2)が150,000~250,000である、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の水添共重合体(X)。
〔6〕
前記水添共重合体(A)の数平均分子量(Mn1)に対する前記水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn2)の比(Mn2/Mn1)が15以上である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の水添共重合体(X)。
〔7〕
前記水添共重合体(A)の含有量と、前記水添共重合体(B)の含有量との質量比(A)/(B)が、25/75~50/50である、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の水添共重合体(X)。
〔8〕
前記水添共重合体(A)と、前記水添共重合体(B)が、下記<条件(10)~(11)>を全て満たす、前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の水添共重合体(X)。
<条件(10)>:
前記水添共重合体(A)が、一般構造式:a-b、又はa-cで表されるブロック共重合体である。
<条件(11)>:
前記水添共重合体(B)が、一般構造式:d-e-d-a-b、又はd-e-d-a-cで表されるブロック共重合体である。
(前記一般構造式中、a及びdはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、b及びeはビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム共重合体ブロックであり、cが共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである。)
〔9〕
前記水添共重合体(A)と、前記水添共重合体(B)の一般構造式が、下記(ア)又は(イ)である、前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の水添共重合体(X)。
(ア):前記水添共重合体(A)が、一般構造式:a-bで表され、かつ、前記水添共重合体(B)が、一般構造式:d-e-d-a-bで表されるブロック共重合体である。
(イ):前記水添共重合体(A)が、一般構造式:a-cで表され、かつ、前記水添共重合体(B)が、一般構造式:d-e-d-a-cで表されるブロック共重合体である。
(前記一般構造式中、a及びdはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、b及びeはビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム共重合体ブロックであり、cが共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである。)
〔10〕
前記〔1〕乃至〔9〕のいずれか一に記載の水添共重合体(X)を含有する、粘着組成物。
〔11〕
TG-DTA(熱重量示差熱分析)による200℃×30分後の重量減少が0.4%以下である、前記〔10〕に記載の粘着組成物。
〔12〕
TG-DTA(熱重量示差熱分析)による200℃×30分後の重量減少が0.4%以下である、前記〔1〕乃至〔9〕のいずれか一に記載の水添共重合体(X)。
〔13〕
樹脂基材層と、前記〔10〕又は〔11〕に記載の前記粘着組成物の層と、
を、有する粘着性フィルム。
〔14〕
前記〔1〕乃至〔9〕、〔12〕のいずれか一に記載の水添共重合体(X)の製造方法であって、
前記水添共重合体(A)と、前記水添共重合体(B)を1つの反応器内で同時に製造する工程を有し、
前記工程において、
下記(ウ)又は下記(エ)の順で、各重合体ブロックの原料モノマーと、重合開始剤を添加し、その後、水添する、
水添共重合体(X)の製造方法。
(ウ)第一重合開始剤、d、e、d、第二重合開始剤、a、b
(エ)第一重合開始剤、d、e、d、第二重合開始剤、a、c
(前記(ウ)、(エ)中、a及びdはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、b及びeはビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム共重合体ブロックであり、cが共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、各重合体ブロックの原料モノマーを添加する。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、粘着性、糊残り性に優れ、フィルム成膜性に優れた水添共重合体、前記水添共重合体を含有する粘着組成物、及び粘着性フィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではなく、本発明はその要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0015】
〔水添共重合体(X)〕
本実施形態の水添共重合体(X)は、
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを有する共重合体の水添物である水添共重合体(A)と、
ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを有する共重合体の水添物である水添共重合体(B)とを、含む。
本実施形態の水添共重合体(X)は、下記の<条件(1)~(9)>を全て満たす。
<条件(1)>:
前記水添共重合体(A)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS1)(以下、重合体ブロック(BS1)と記載する場合がある)と、
共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック、又は共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロック(以下、ランダム共重合体ブロックと記載する場合がある)とを有しており、
前記水添共重合体(A)中の全ビニル芳香族単量体単位(TS1)の含有量が10~40質量%であり、
前記水添共重合体(A)中の前記重合体ブロック(BS1)の含有量が10~30質量%である。
<条件(2)>:
前記水添共重合体(A)の数平均分子量(Mn1)が3,000~35,000である。
<条件(3)>:
前記水添共重合体(B)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS2)(以下、重合体ブロック(BS2)と記載する場合がある)を少なくとも一つと、
共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロック(以下、ランダム共重合体ブロックと記載する場合がある)を少なくとも一つ有しており、
前記水添共重合体(B)中の全ビニル芳香族単量体単位(TS2)の含有量が15~40質量%であり、
前記水添共重合体(B)中の前記重合体ブロック(BS2)の含有量が10~30質量%である。
<条件(4)>:
前記水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn2)が130,000~300,000である。
<条件(5)>:
前記水添共重合体(A)中の共役ジエン化合物に由来する水添前のビニル結合量(Va)、及び前記水添共重合体(B)中の共役ジエン化合物に由来する水添前のビニル結合量(Vb)が50~90質量%である。
<条件(6)>:
前記水添共重合体(A)の前記ビニル結合量(Va)と、前記水添共重合体(B)の前記ビニル結合量(Vb)との差が、±20(絶対値が20)質量%以下である。
<条件(7)>:
前記水添共重合体(A)の数平均分子量(Mn1)に対する、前記水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn2)の比(Mn2/Mn1)が10以上である。
<条件(8)>:
前記水添共重合体(A)の共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水添率(Ha)、及び前記水添共重合体(B)の共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水添率(Hb)が70%以上である。
<条件(9)>:
前記水添共重合体(A)の含有量と、前記水添共重合体(B)の含有量の質量比(A)/(B)が10/90~50/50である。
【0016】
本実施形態の水添共重合体(X)は、実質的に前記水添共重合体(A)と、前記水添共重合体(B)の混合体である。なお、混合体とは、複数種類の共重合体を混合する態様のみではなく、一つの反応器で複数種類の共重合体を製造することにより、複数種類の共重合体が混合した態様も含まれる意味である。すなわち、一反応で複数種類の共重合体を製造する形態も含まれる。
【0017】
本実施形態の水添共重合体(X)は、水添共重合体(A)と、水添共重合体(B)が各々別個の構成要件を有する混合体である。本実施形態の水添共重合体(X)が、構造や物性値において水添共重合体(A)と、水添共重合体(B)の平均値を満たしていたとしても、水添共重合体(A)と、水添共重合体(B)の各成分の何れかが、前記条件(1)~(9)を外れた場合、本実施形態の水添共重合体(X)を用いた粘着組成物において、粘着性、糊残り性、及び成膜性で所望の効果を達成できないことを本発明者は見出した。そのために、粘着性、糊残り性、及び成膜性を兼ね備える水添共重合体を供給するという課題を解決する観点では、水添共重合体(X)そのものではなく、水添共重合体(X)を構成する水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)のそれぞれの構造を特定すべきことを見出し、本発明を完成した。
【0018】
すなわち、水添共重合体(A)又は水添共重合体(B)のいずれかのビニル芳香族単量体単位の含有量が過剰になり、上記条件を満たさないと水添共重合体(X)は硬く脆くなり、また、いずれかのビニル結合量が過少になり、上記条件を満たさないとタック性が低下し、水添共重合体(X)の粘着性が低下する。
また、糊残り性の特性の観点からは、水添共重合体(A)又は水添共重合体(B)のいずれかのビニル芳香族単量体単位の含有量が過少になり、上記条件を満たさないと、ビニル芳香族単量体ブロックの凝集力が弱まり、さらには、水添共重合体(A)又は水添共重合体(B)のいずれかの水添率が過少になり、上記条件を満たさないと、水添共重合体(X)は熱劣化しやすくなり、経時での安定性が劣ることとなる。
さらにまた、水添共重合体(A)又は水添共重合体(B)のいずれかが、特に上述した条件(1)、(3)、(5)、(6)、(8)を満たさないと、水添共重合体(A)と、水添共重合体(B)の相溶性も低下することから、水添共重合体(X)の糊残り性が悪化する傾向にある。
またさらに、成膜性の観点からは、水添共重合体(A)又は水添共重合体(B)のいずれかの水添率が過少になり、上記条件を満たさないと、水添共重合体(X)は熱劣化しやすくなり、成形加工時のゲル発生が起こり、水添共重合体(X)の成膜性が悪化する傾向にある。
【0019】
上述した構成を備えることにより、粘着性、糊残り性に優れ、フィルム成膜性に優れた水添共重合体(X)、前記水添共重合体(X)を含有する粘着組成物が得られ、粘着性フィルム用の材料として利用できる。
【0020】
(水添共重合体(A))
本実施形態の水添共重合体(X)は、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを有する共重合体の水添物である水添共重合体(A)を含有する。
水添共重合体(A)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS1)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック、又は共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロックを有する(条件(1))。
【0021】
なお、本実施形態の水添共重合体(X)、水添共重合体(A)、水添共重合体(B)において、各々の共重合体中にビニル芳香族化合物が組み込まれている場合、各々の共重合体を構成する単量体単位の形態となるため、本明細書においては、「ビニル芳香族単量体単位」と表記する。
同様に、共重合体中に共役ジエン化合物が組み込まれている場合、共重合体を構成する単量体単位の形態となるため、本明細書中、「共役ジエン単量体単位」と表記する。
【0022】
また、本明細書において、「主体とする」とは、対象の単量体単位を対象の重合体ブロック中に、95質量%以上100質量%以下含むことを言う。
【0023】
<ビニル芳香族化合物>
水添共重合体(A)を構成するビニル芳香族単量体単位を形成するために用いるビニル芳香族化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等のビニル芳香族化合物が挙げられる。
これらの中でも、入手性及び生産性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレンが好ましい。
これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
<共役ジエン化合物>
水添共重合体(A)を構成する共役ジエン単量体単位を形成するために用いる共役ジエン化合物としては、共役二重結合を有するジオレフィンであればよく、以下限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、ファルネセン等が挙げられる。
これらの中でも、入手性及び生産性の観点から、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
水添共重合体(A)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS1)を有している。
水添共重合体(A)中の前記重合体ブロック(BS1)の含有量は、10~30質量%であり(条件(1))、12~28質量%が好ましく、14~26質量%がより好ましく、16~24質量%がさらに好ましい。
水添共重合体(A)中の重合体ブロック(BS1)の含有量が10質量%以上であることにより、後述する水添共重合体(B)との相溶性を高め、本実施形態の水添共重合体(X)を用いた粘着性フィルムの糊残り性と、フィルム成膜性が良好となる傾向にある。前記重合体ブロック(BS1)の含有量が30質量%以下であることにより、本実施形態の水添共重合体(X)が低硬度で、水添共重合体(X)からなる粘着性フィルムの粘着性が良好となる傾向にある。
【0026】
水添共重合体(A)は、全ビニル芳香族単量体単位(TS1)の含有量が10~40質量%であり(条件(1))、18~40質量%が好ましく、22~40質量%がより好ましく、25~37質量%がさらに好ましい。
水添共重合体(A)中の全ビニル芳香族単量体単位(TS1)の含有量が前記範囲であることにより、水添共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS1)の含有量を設定した上で、ランダム共重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS1)を調整でき、それにより水添共重合体(X)の動的粘弾性測定により得られるtanδピーク分布を好適なものに制御でき、水添共重合体(X)からなる粘着性フィルムの糊残り性と、粘着性が良好となる傾向にある。
さらに詳細に説明すると、本実施形態の水添共重合体(X)のtanδピーク分布は、主に、後述する水添共重合体(B)からなる低温側(-30℃~0℃)の狭いピーク(tanδピーク値1以上)と、主に水添共重合体(A)からなる高温側(-10℃~20℃)の広いピーク(tanδピーク値1以下)とが重なり合った分布となっており、さらに、水添共重合体(A)の広いtanδピークは分子量の小さい重合体ブロック(BS1)とランダム共重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の部分的な相溶によるもので、水添共重合体(A)の高温側(-10℃~20℃)の広いピークによって水添共重合体(X)からなる粘着性フィルムの粘着性が良好なものとなる傾向にある。
【0027】
水添共重合体(A)は、前記水添共重合体(A)が「共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロック」を含む場合、前記ランダム共重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS1)(以下、スチレンを用いる場合、ランダム共重合体ブロック中のスチレン含有量、ランダムスチレン量と記載する場合がある。)は、0~33質量%の範囲であることが好ましく、8~30質量%の範囲であることがより好ましく、10~25質量%の範囲であることがさらに好ましい。
前記(RS1)が前記範囲であることで、水添共重合体(X)の動的粘弾性測定により得られるtanδピーク温度を好ましい範囲に制御され、水添共重合体(X)からなる粘着性フィルムの繰出し性が良好となる傾向にある。
なお、水添共重合体(X)のtanδピーク温度の好ましい範囲は-30℃~20℃であり、前記tanδピークが20℃以下であれば、密着性に優れる傾向にある。一方において、-30℃以上であれば、粘着面の易剥離性が良好になる傾向にある。
【0028】
水添共重合体(A)の全ビニル芳香族単量体単位(TS1)、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS1)の含有量、及び前記ランダム共重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS1)は、核磁気共鳴(NMR)により測定できる。具体的には後述する実施例に記載する方法により測定でき、重合工程におけるビニル芳香族化合物の添加量、添加するタイミングを調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0029】
水添共重合体(A)は、数平均分子量(Mn1)が、3,000~35,000である(条件(2))。前記(Mn1)は、4,000~20,000が好ましく、5,000~15,000がより好ましい。
前記(Mn1)が3,000以上であると、本実施形態の水添共重合体(X)からなる粘着性フィルムの糊残り性と、フィルム成膜性が良好となる傾向にあり、35,000以下であると、水添共重合体(X)を用いた粘着性フィルムの粘着性が良好となる傾向にある。
水添共重合体(A)の数平均分子量(Mn1)は、標準ポリスチレンを検量線としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと記載)で測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定できる。
水添共重合体(A)の数平均分子量(Mn1)は、重合工程における単量体添加量、重合開始剤添加量等の条件を調整することにより上記数値範囲に制御することができる。
【0030】
水添共重合体(A)中の共役ジエン化合物に由来する水添前のビニル結合量(Va)は50~90質量%であり(条件(5))、55~85質量%がより好ましく、60~85質量%がさらに好ましい。
前記ビニル結合量(Va)が前記範囲であることで、本実施形態の水添共重合体(X)からなる粘着性フィルムの粘着性が良好となる傾向にある。
【0031】
本実施形態の水添共重合体(X)において、前記水添共重合体(A)中の共役ジエン化合物に由来する水添前のビニル結合量(Va)と、後述する水添共重合体(B)中の共役ジエン化合物に由来する水添前のビニル結合量(Vb)の差は、±20(絶対値が20)質量%以内であり(条件(6))、±15質量%以内がより好ましく、±10質量%以内がさらに好ましい。
前記ビニル結合量(Va)と、前記ビニル結合量(Vb)の差が前記範囲であることで、水添共重合体(A)と、後述する水添共重合体(B)との相溶性を高め、本実施形態の水添共重合体(X)を用いた粘着性フィルムの糊残り性と、フィルム成膜性が良好となる傾向にある。
【0032】
なお、本実施形態において、ビニル結合量とは、全共役ジエンに対する、1,2-ビニル結合量(1,2-結合で重合体に組み込まれている共役ジエン)と3,4-ビニル結合量(3,4-結合で重合体に組み込まれている共役ジエン)の合計含有量(ここで、共役ジエンとして1,3-ブタジエンを使用した場合には、1,2-ビニル結合量、共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合には、3,4-ビニル結合量)をいう。
【0033】
ビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定することができ、水添共重合体(A)、及び後述する水添共重合体(B)中の共役ジエン化合物に由来するミクロ構造(シス、トランスの比率、ビニル結合量)は、後述する極性化合物等の使用により任意に制御できる。
【0034】
水添共重合体(A)中の共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水素添加率(Ha)(水添率ともいう)は、70%以上であり(条件(8))、85%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。
前記水素添加率(Ha)が70%以上であることで、本実施形態の水添共重合体(X)の成膜時のゲル化を抑制し、粘着性フィルムの耐熱性も向上することから、フィルム成膜性と、糊残り性が良好となる傾向にある。
【0035】
また、前記水添共重合体(A)の水添前のビニル結合量(Va)が60~85質量%であり、前記水添共重合体(A)水添率が85%以上であり、前記水添共重合体(A)のビニル結合(1,2-ビニル結合)がビニル結合以外の不飽和二重結合(1,4-結合)に優先して選択的に水添されていることが好ましい。「選択的に水添」とは、水添前のビニル結合の85%以上が水添されていることを言い、好ましくは水添前のビニル結合の90%以上が水添されていることを言う。共役共重合体を水添する時、1,2-ビニル結合は、1,4-付加で形成した二重結合よりも水添反応が速く進行する。したがって、共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水添率が、共役ジエン化合物由来の水添前のビニル結合量より大きな値を示す場合、すなわち、(Ha)>(Va)を満たす場合は、ビニル結合はほぼ水添され、単結合のブチル基になることになる。
水添共重合体(A)のビニル結合が選択的に水添されることで、熱的安定性やベタツキ性を悪化させる原因となっているビニル結合が無くなるため、水添共重合体(X)のベタツキ性と熱劣化(酸化劣化)を抑制することができ、水添共重合体(X)のペレットブロッキング性が良好となり、粘着性フィルムのフィッシュアイを低減し、フィルムの膜厚安定性、各種粘着性能の安定性が良好となる傾向にある。
【0036】
水添共重合体(A)の共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水添率は、例えば、水素添加時の触媒量を調整することによって制御することができ、水素添加速度は、例えば、水素添加時の触媒量、水素フィード量、圧力及び温度等を調整することによって制御できる。
水添共重合体(A)の共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水添率は核磁気共鳴装置(NMR)により測定できる。
【0037】
水添共重合体(A)の構造は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS1)と、共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック又は共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロックを有している構造であれば限定されないが、例えば、下記一般式で表されるような構造を有することが好ましい。
【0038】
a-b
a-c
a-b-c
a-c-b
b-a-c
c-a-b
b-a-b
c-a-c
a-b-a
a-c-a
前記式において、a、b、cはそれぞれ、重合体ブロック(a)、(b)、(c)を示す。
上述した水添共重合体(A)を表す各一般式において、(a)はビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、(b)はビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなるランダム共重合ブロックであり、(c)は共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである。
【0039】
なお、水添共重合体(A)は、逐次重合構造が生産性の観点から好ましく、前記一般式中、a-b又はa-cがより好ましい(条件(10))。
水添共重合体(A)は、後述する水添共重合体(B)の一般式で表される構造の末端と同一のブロック構造を有するものであることが最も好ましい。すなわち、後述する水添共重合体(B)が末端にa-bブロックを有する構造である場合、前記水添共重合体(A)も、a-bブロックを有し、前記水添共重合体(B)が末端にa-cブロックを有する場合、前記水添共重合体(A)もa-cブロックを有するものであることが好ましい。
具体的には、水添共重合体(A)は、前記一般式中、a-b又はa-cの構造を有することが好ましく(条件(10))、かつ後述する水添共重合体(B)は、一般構造式:d-e-d-a-b又はd-e-d-a-cで表されるブロック共重合体であることが好ましい(条件(11))。ここで、a及びdはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、b及びeはビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム共重合体ブロックであり、cは共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである。
前記の同一ブロックを有することにより、水添共重合体(A)と、水添共重合体(B)の相溶性が高まる傾向にあり、本実施形態の水添共重合体(X)のペレットブロッキング性が良好となり、本実施形態の水添共重合体(X)からなる粘着性フィルムの繰出し性と、粘着亢進性が良好となる傾向にある。
【0040】
水添共重合体(A)は、逐次重合によって重合されたものであることが、生産性観点で好ましい。「逐次重合によって重合された」とは、最終的に目標とするポリマー構造の片側の末端から、反対側の末端まで逐次重合していくことを意味し、カップリング反応を用いずに重合することをいう。
【0041】
水添共重合体(A)は、前記水添共重合体(A)の数平均分子量(Mn1)に対する重量平均分子量(Mw1)の比(Mw1/Mn1)が1.20未満であることが好ましく、1.15以下がより好ましく、1.13以下がさらに好ましい。
前記(Mw1/Mn1)が1.20未満であることで、水添共重合体(X)の機械強度が向上する傾向にある。水添共重合体(A)は、分岐構造を有さず、逐次重合により容易に製造できる傾向にある。
【0042】
(水添共重合体(B))
本実施形態の水添共重合体(X)は、水添共重合体(B)を含有する。
水添共重合体(B)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS2)を少なくとも一つと、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロックを少なくとも一つ有している(条件(3))。
【0043】
<ビニル芳香族化合物>
水添共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位を形成するビニル芳香族化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等のビニル芳香族化合物が挙げられる。
これらの中でも、入手性及び生産性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレンが好ましい。
これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
<共役ジエン化合物>
水添共重合体(B)の共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン化合物としては、共役二重結合を有するジオレフィンであればよく、以下限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、ファルネセン等が挙げられる。
これらの中でも、入手性及び生産性の観点から、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
水添共重合体(B)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS2)を有しており、前記重合体ブロック(BS2)の含有量は水添共重合体(B)の10~30質量%であり(条件(3))、12~28質量%が好ましく、14~26質量%がより好ましく、16~24質量%がさらに好ましい。
前記重合体ブロック(BS2)の含有量が前記範囲であることで、本実施形態の水添共重合体(X)が低硬度で、機械強度が高く、粘着性フィルムの粘着性が良好となる傾向にある。
【0046】
水添共重合体(B)は、全ビニル芳香族単量体単位(TS2)の含有量が15~40質量%であり(条件(3))、18~40質量%が好ましく、22~40質量%がより好ましく、25~37質量%がさらに好ましい。
前記(TS2)が前記範囲であることで、水添共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS2)の含有量を設定した上で、前記ランダム共重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位(RS2)の含有量が調整され、それにより、本実施形態の水添共重合体(X)の高強度化が図られ、動的粘弾性測定により得られるtanδピーク分布を制御でき、本実施形態の水添共重合体(X)からなる粘着性フィルムの糊残り性と、粘着性が良好となる傾向にある。
さらに詳細に説明すると、本実施形態の水添共重合体(X)のtanδピーク分布は、主に水添共重合体(B)からなる低温側(-30℃~0℃)の狭いピーク(tanδピーク値1以上)と、主に水添共重合体(A)からなる高温側(-10℃~20℃)の広いピーク(tanδピーク値1以下)とが重なり合った分布となっており、水添共重合体(B)の低温側(-30℃~0℃)の狭いピークによって本実施形態の水添共重合体(X)からなる粘着性フィルムの糊残り性が良好となる傾向にある。
【0047】
水添共重合体(B)は、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロックを有しており、前記ランダム共重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS2)(以下、スチレンを用いる場合、ランダム構造中のスチレン含有量、ランダムスチレン量と記載する場合がある。)は、6~33質量%であることが好ましく、8~30質量%であることがより好ましく、10~25質量%であることがさらに好ましい。
前記ランダム共重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS2)が前記範囲であることで、本実施形態の水添共重合体(X)の動的粘弾性測定により得られるtanδピーク温度を好ましい範囲に制御でき、本実施形態の水添共重合体(X)からなる粘着性フィルムの繰出し性と粘着亢進性が良好となる傾向にある。
なお、本実施形態の水添共重合体(X)のtanδピーク温度の好ましい範囲は-30℃~20℃で、tanδピークが20℃以下の範囲にあれば、密着性に優れる傾向にある。一方において、-30℃以上であれば、粘着面の易剥離性が良好になる傾向にある。
【0048】
水添共重合体(B)の全ビニル芳香族単量体単位(TS2)の含有量、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS2)の含有量、前記ランダム共重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS2)は、核磁気共鳴(NMR)により測定できる。具体的には後述する実施例に記載する方法により測定できる。
水添共重合体(B)における前記(TS2)、(BS2)の含有量、及び(RS2)は、重合工程におけるビニル芳香族化合物の添加量、添加するタイミングを調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0049】
水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn2)は、130,000~300,000であり(条件(4))、140,000~275,000が好ましく、150,000~250,000がより好ましい。
前記(Mn2)が130,000以上であることで、本実施形態の水添共重合体(X)からなる粘着性フィルムの糊残り性が良好となり、前記(Mn2)が300,000以下であることで、水添共重合体(X)からなる粘着性フィルムの成膜性が良好となる傾向にある。
水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn2)は、標準ポリスチレンを検量線としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと記載)で測定することができる。具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定できる。
水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn2)は、重合工程における単量体添加量、重合開始剤添加量等の条件を調整することにより上記数値範囲に制御することができる。
【0050】
水添共重合体(B)中の共役ジエン化合物に由来する水添前のビニル結合量(Vb)は50~90質量%であり(条件(5))、55~85質量%がより好ましく、60~85質量%がさらに好ましい。
前記ビニル結合量(Vb)が前記範囲であることで、本実施形態の水添共重合体(X)からなる粘着性フィルムの粘着性が良好となる傾向にある。
【0051】
上述した水添共重合体(A)中の共役ジエン化合物に由来する水添前のビニル結合量(Va)と、水添共重合体(B)中の共役ジエン化合物に由来する水添前のビニル結合量(Vb)の差は、±20(絶対値が20)質量%以内であり(条件(6))、±15質量%以内がより好ましく、±10質量%以内がさらに好ましい。
前記ビニル結合量(Va)と、前記ビニル結合量(Vb)の差が前記範囲であることで、水添共重合体(A)と、水添共重合体(B)との相溶性が高められ、本実施形態の水添共重合体(X)を用いた粘着性フィルムの糊残り性と、フィルム成膜性が良好となる傾向にある。
【0052】
なお、本実施形態において、ビニル結合量とは、全共役ジエンに対する、1,2-ビニル結合量(1,2-結合で重合体に組み込まれている共役ジエン)と3,4-ビニル結合量(3,4-結合で重合体に組み込まれている共役ジエン)の合計含有量(ここで、共役ジエンとして1,3-ブタジエンを使用した場合には、1,2-ビニル結合含有量、共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合には、3,4-ビニル結合含有量)をいう。
【0053】
ビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定することができる。水添共重合体(B)中の共役ジエン化合物に由来するミクロ構造(シス、トランスの比率、ビニル結合量)は、後述する極性化合物等の使用により任意に制御できる。
【0054】
水添共重合体(B)中の共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水素添加率(Hb)(水添率ともいう)は、70%以上であり(条件(8))、85%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。
前記(Hb)が70%以上であることで、本実施形態の水添共重合体(X)の成膜時のゲル化が抑制され、粘着性フィルムの耐熱性も向上することから、フィルム成膜性と、糊残り性が良好となる傾向にある。
【0055】
また、前記水添共重合体(B)の水添前のビニル結合量(Vb)が60~85質量%であり、前記水添共重合体(B)水添率が85%以上であり、前記水添共重合体(B)中のビニル結合が優先して選択的に水添されていることが好ましい。「選択的に水添」の定義は、(Va)と同様である。
(Hb)>(Vb)を満足する時、水添共重合体(B)中のビニル結合はほぼ水添された状態になる。
水添共重合体(B)のビニル結合が選択的に水添されることで、熱的安定性、ベタツキ性を特に悪化させる原因となっているビニル結合が無くなり、本実施形態の水添共重合体(X)のベタツキ性と熱劣化(酸化劣化)を抑制することができるため、本実施形態の水添共重合体(X)のペレットブロッキング性が良好となり、粘着性フィルムのフィッシュアイを低減し、フィルムの膜厚安定性、各種粘着性能の安定性が良好となる傾向にある。
【0056】
水添共重合体(B)中の共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水添率は、例えば、水素添加時の触媒量を調整することによって制御することができ、水素添加速度は、例えば、水素添加時の触媒量、水素フィード量、圧力及び温度等を調整することによって制御することができる。
水添共重合体(B)の共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水添率は核磁気共鳴装置(NMR)により測定できる。
【0057】
水添共重合体(B)は、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックと、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロックを有する構造であれば限定されないが、例えば、下記一般式で表されるような構造を有することが好ましい。
【0058】
d-e-d-a-b
d-e-d-a-c
d-e-a-b
d-e-a-c
d-e-d-b
d-e-d-c
d-e-d
(d-e)n
(d-e-a-b)n
(d-e-a-c)n
(d-e)m-Z
(d-e-a-b)m-Z
(d-e-a-c)m-Z
上式において、a、b、c、d、eは、それぞれ重合体ブロック(a)、(b)、(c)、(d)(e)を示す。
【0059】
上述した水添共重合体(B)を表す各一般式において、(a)及び(d)はビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックであり、(d)は(a)の2倍以上の分子量、好ましくは5倍上の分子量であり、(b)及び(e)はビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム共重合ブロックであり、(e)は(b)の2倍以上の分子量、好ましくは5倍上の分子量であり、(c)は共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである。
nは1以上の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは1~5の整数である。
mは2以上の整数、好ましくは2~11の整数、より好ましくは2~8の整数である。
Zはカップリング剤残基を表す。ここで、カップリング剤残基とは、重合体ブロック(e)間、重合体ブロック(b)間、及び重合体ブロック(c)間において結合させるために用いられるカップリング剤の結合後の残基を意味する。
カップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、後述するポリハロゲン化合物や酸エステル類等が挙げられる。
【0060】
なお、逐次重合構造が生産性と、強度の観点から、水添共重合体(B)の構造は、d-e-d-a-b又はd-e-d-a-cがより好ましく、水添共重合体(B)は、前記水添共重合体(A)の一般式で表される構造のブロック構造と同一の構造を末端に有するものが最も好ましい。すなわち、水添共重合体(B)が末端にa-bブロックを有する場合、前記水添共重合体(A)もa-bブロックを有し、前記水添共重合体(B)が末端にa-cブロックを有する場合、前記水添共重合体(A)もa-cブロックを有することが好ましい。前記の同一ブロックを有することにより、水添共重合体(A)と、水添共重合体(B)の相溶性が高まる傾向にあり、本実施形態の水添共重合体(X)のペレットブロッキング性が良好となり、本実施形態の水添共重合体(X)からなる粘着性フィルムの繰出し性と、粘着亢進性が良好となる傾向にある。
【0061】
また、本実施形態の水添共重合体(X)は、糊残り性と粘着性のバランスの観点から、前記水添共重合体(A)と、前記水添共重合体(B)の一般構造式が、下記(ア)又は下記(イ)であることが好ましい。
(ア):前記水添共重合体(A)が、一般構造式:a-bで表され、かつ、前記水添共重合体(B)が、一般構造式:d-e-d-a-bで表される。
(イ):前記水添共重合体(A)が、一般構造式:a-cで表され、かつ、前記水添共重合体(B)が、一般構造式:d-e-d-a-cで表される。
(前記一般構造式中、a及びdはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、b及びeはビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム共重合体ブロックであり、cが共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである。)
【0062】
水添共重合体(B)は、逐次重合によって重合されたものであることが、伸度と機械強度が高く、及び生産性の観点で好ましい。「逐次重合によって重合された」とは、最終的に目標とするポリマー構造の片側の末端から、反対側の末端まで逐次重合していくことを意味し、カップリング反応を用いずに重合することをいう。
【0063】
水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn2)に対する重量平均分子量(Mw2)の比(Mw2/Mn2)は1.20未満が好ましく、1.15以下がより好ましく、1.13以下がさらに好ましい。
(Mw2/Mn2)が1.20未満であることで、機械強度が向上する傾向にあり、前記重合体は、分岐構造を有さず、逐次重合により容易に製造できる傾向にある。
【0064】
(水添共重合体(A)と水添共重合体(B)の区分)
本実施形態の水添共重合体(X)は、前記水添共重合体(A)と前記水添共重合体(B)を含むため、GPCチャートは二つ以上のピークを有する。このうち、水添共重合体(A)とは数平均分子量が35,000以下の全ての成分で、水添共重合体(B)とは数平均分子量が130,000以上の全ての成分のことを指す(条件(2)、条件(4))。
本実施形態の水添共重合体(X)の構成成分である水添共重合体(A)と、水添共重合体(B)は、GPCで分取できる。具体的には、後述する実施例に記載する方法により測定できる。
【0065】
(水添共重合体(A)及び(B)の数平均分子量の関係)
本実施形態の水添共重合体(X)において、前記水添共重合体(A)の数平均分子量(Mn1)に対する前記水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn2)の比(Mn2/Mn1)が10以上であり(条件(7))、15以上が好ましく、20以上がより好ましく、25以上がさらに好ましい。
(Mn1/Mn2)が10以上であることで、本実施形態の水添共重合体(X)を用いた粘着性フィルムの粘着性と、糊残り性が良好となる傾向にある。
(Mn1/Mn2)は、水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)の重合工程におけるモノマー添加量、重合開始剤の添加量、重合時間等の重合条件を調整することにより上述した数値範囲に制御できる。
【0066】
(水添共重合体(A)と、水添共重合体(B)との質量比)
本実施形態の水添共重合体(X)において、水添共重合体(A)と、水添共重合体(B)の、含有量の質量比(A)/(B)は、10/90~50/50であり(条件(9))、20/80~50/50が好ましく、25/75~50/50がより好ましく、30/70~50/50がさらに好ましい。
水添共重合体(A)と、水添共重合体(B)の、含有量の質量比(A)/(B)が前記範囲であることで、本実施形態の水添共重合体(X)からなる粘着性フィルムのフィルム成膜性と、粘着性と、糊残り性が良好となる傾向にある。
【0067】
(水添共重合体(A)及び(B)のビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの分子量の関係)
本実施形態の水添共重合体(X)において、水添共重合体(A)と、水添共重合体(B)はいずれもビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS1)、(BS2)を、それぞれ有している。
水添共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの分子量(MnS1)と、水添共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの分子量(MnS2)の比:(MnS1/MnS2)は、0.05~0.50であることが好ましく、0.05~0.20であることがより好ましく、0.07~0.15であることがさらに好ましい。
(MnS1/MnS2)が前記範囲であることで、水添共重合体(A)と、水添共重合体(B)の相溶性と、本実施形態の水添共重合体(X)の耐熱性を良好なものに維持し、本実施形態の水添共重合体(X)のペレットブロッキング性と、粘着性フィルムの繰出し性と、粘着亢進性が良好となる傾向にある。
【0068】
なお、(MnS1)及び(MnS2)は重合時の単量体の添加量を調整することによって制御することができる。
MnS1及びMnS2は下記の方法で算出する。
MnS1=Mn1×BS1
MnS2=Mn2×BS2÷f
・BS1:プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)によって求めた前記水添共重合体(A)のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの含有量
・BS2:プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)によって求めた前記水添共重合体(B)のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックの含有量
・f:粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法によって求めた水添共重合体(B)の分岐度
・Mn1:水添共重合体(A)の数平均分子量
・Mn2:水添共重合体(B)の数平均分子量
(Mn1)及び(Mn2)はGPCにより標準ポリスチレンを検量線として測定することができる。
(BS1)及び(BS2)はNMRにより測定することができる。
(f)は粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法により測定することができる。
なお、具体的な測定法については後述する。
【0069】
水添共重合体(A)、(B)の、それぞれのランダム共重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の質量分率(RS1)及び(RS2)、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(BS1)及び(BS2)の含有量を測定する方法を、NMR法を適用し、ビニル芳香族化合物をスチレン、共役ジエン化合物を1,3-ブタジエンとした場合を例に挙げて具体的に説明する。
水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)30mgをそれぞれ重水素化クロロホルム1gに溶解した試料を用いて1H-NMRを測定し、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(この場合、ポリスチレンブロックとなる)の含有量(BS)を全積算値に対する化学シフト6.9ppm~6.3ppmの積算値の比率から求めた。
ブロックスチレン強度(b-St強度)
=(6.9ppm~6.3ppmの積算値)/2
ランダムスチレン強度(r-St強度)
=(7.5ppm~6.9ppmの積算値)-3×(b-St)
エチレン・ブチレン強度(EB強度)
=全積算値-3×{(b-St強度)+(r-St強度)}/8
ポリスチレンブロック含有量(BS)
=104×(b-St強度)
/[104×{(b-St強度)+(r-St強度)}+56×(EB強度)]
ランダム共重合体ブロック中のスチレン含有量(RS)
=104×(r-St強度)/{104×(r-St強度)+56×(EB強度)}
【0070】
(水添共重合体(B)の分岐度(f))
水添共重合体(B)の分岐度(f)は、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法によって測定できる。
水添共重合体(B)を試料として、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定を実施し、標準ポリスチレンに基づいて、光散乱検出器とRI検出器結果から絶対分子量(M)を、RI検出器と粘度検出器の結果から固有粘度([η])を求める。
続いて、基準とする固有粘度([η]0)を、下記式にて算出する。
[η]0=a×Mb
a=-0.788+0.421×(水添共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量)
-0.342×(RS2)-0.197×(BS2)
b=1.601-0.081×(水添共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量)
+0.064×(RS2)+0.039×(BS2)
RS2:水添共重合体(B)のランダム共重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の含有量
BS2:プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)によって求めた前記水添共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量
M:水添共重合体(B)の絶対分子量
続いて、水添共重合体(B)の固有粘度([η])と基準とする固有粘度([η]0)の比として収縮因子gを算出する。
収縮因子(g)=[η]/[η]0
その後、得られた収縮因子(g)を用いて、g=f/[(f+1)(f+2)](f≧2)と定義される分岐度(f)を算出する。
【0071】
(水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)の製造方法)
水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)の製造方法としては、以下に限定されないが、例えば、特公昭36-19286号公報、特公昭43-17979号公報、特公昭46-32415号公報、特公昭49-36957号公報、特公昭48-2423号公報、特公昭48-4106号公報、特公昭51-49567号公報、特開昭59-166518号公報、等に記載された方法が挙げられる。
【0072】
水素添加前の共重合体は、以下に限定されないが、例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の重合開始剤を用いて、所定の単量体を用い、リビングアニオン重合を行う方法等により得られる。
炭化水素溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
【0073】
重合開始剤としては、一般的に、共役ジエン化合物及びビニル芳香族化合物に対しアニオン重合活性があることが知られている有機アルカリ金属化合物を用いることができる。
例えば、炭素数1~20の脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、炭素数1~20の芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、炭素数1~20の有機アミノアルカリ金属化合物等が挙げられる。
重合開始剤に含まれるアルカリ金属としては、以下に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
なお、アルカリ金属は、有機アルカリ金属化合物の1分子中に1種、又は2種以上含まれていてもよい。
重合開始剤としては、以下に限定されないが、例えば、n-プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ペンチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec-ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec-ブチルリチウムと少量の1,3-ブタジエンの反応生成物等が挙げられる。
さらにまた、米国特許5,708,092号明細書に開示されている1-(t-ブトキシ)プロピルリチウム及びその溶解性改善のために1~数分子のイソプレンモノマーを挿入したリチウム化合物、英国特許2,241,239号明細書に開示されている1-(t-ブチルジメチルシロキシ)ヘキシルリチウム等のシロキシ基含有アルキルリチウム、米国特許5,527,753号明細書に開示されているアミノ基含有アルキルリチウム、ジイソプロピルアミドリチウム及びヘキサメチルジシラジドリチウム等のアミノリチウム類も使用することができる。
【0074】
重合開始剤としてのリチウム化合物の使用量は、目的とする共重合体の分子量によるが、0.005~6.4phm(単量体100質量部当たりに対する質量部)が好ましく、0.005~1.3phmがより好ましい。
【0075】
有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物を共重合する際に、共重合体に組み込まれる共役ジエン化合物に起因するビニル結合(1,2-結合又は3,4-結合)の含有量の調整や、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合性を調整するために、第3級アミン化合物やエーテル化合物を添加することができる。
【0076】
前記第3級アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式で示される化合物が挙げられる。
R1R2R3N
(式中、R1、R2、及びR3は、炭素数1~20の炭化水素基又は第3級アミノ基を有する炭化水素基である。)
このような第3級アミン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N-エチルピペリジン、N-メチルピロリジン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'-テトラエチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N',N'',N''-ペンタメチルエチレントリアミン、N,N'-ジオクチル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。これらの中でもN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンが好ましい。
【0077】
また、前記エーテル化合物としては、直鎖状エーテル化合物や環状エーテル化合物等を用いることができる。
直鎖状エーテル化合物としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物等が挙げられる。
また、環状エーテル化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2,5-ジメチルオキソラン、2,2,5,5-テトラメチルオキソラン、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン、フルフリルアルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。
【0078】
第3級アミン化合物又はエーテル化合物の使用量は、前記有機アルカリ金属化合物の重合開始剤に対し、好ましくは0.1~4(モル/アルカリ金属1モル)、より好ましくは0.2~3(モル/アルカリ金属1モル)である。
【0079】
水添共重合体(A)、(B)の製造工程において、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物の共重合を行う際に、ナトリウムアルコキシドを共存させてもよい。
ナトリウムアルコキシドは、以下に限定されないが、例えば、下記式で示される化合物である。特に、炭素原子数3~6のアルキル基を有するナトリウムアルコキシドが好ましく、ナトリウムt-ブトキシド、ナトリウムt-ペントキシドがより好ましい。
NaOR
(式中、Rは炭素原子数2~12のアルキル基である。)
水添共重合体(A)、(B)の重合工程におけるナトリウムアルコキシドの使用量は、ビニル結合量調整剤(第3級アミン化合物又はエーテル化合物)に対し、好ましくは0.01以上0.1未満(モル比)であり、より好ましくは0.01以上0.08未満(モル比)、さらに好ましくは0.03以上0.08未満(モル比)、さらにより好ましくは0.04以上0.06未満(モル比)である。
ナトリウムアルコキシドの量がこの範囲にあると、ビニル結合量が高い共役ジエン単量体単位を含む共重合体ブロックと、分子量分布が狭いビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックを有し、かつ分子量分布が狭い共重合体を高生産率で製造できる傾向にある。
【0080】
有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物を共重合する方法は、特に限定されず、バッチ重合であっても連続重合であっても、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。
重合温度は、特に限定されないが、通常は0~180℃であり、好ましくは30~150℃である。
重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、好ましくは0.1~10時間である。
また、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で重合することが好ましい。
重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するために充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。
【0081】
さらに、重合終了時に2官能基以上のカップリング剤を必要量添加してカップリング反応を行ってもよい。
2官能基以上のカップリング剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。
2官能基カップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。
3官能基以上の多官能カップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、1,1,1,2,2-ペンタクロロエタン、パークロロエタン、ペンタクロロベンゼン、パークロロベンゼン、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物、2~6官能のエポキシ基含有化合物、カルボン酸エステル、ジビニルベンゼンなどのポリビニル化合物、式R1(4-n)SiXn(ここで、R1は炭素数1~20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3又は4の整数を表す)で表されるハロゲン化珪素化合物、及びハロゲン化錫化合物、が挙げられる。
ハロゲン化珪素化合物としては、以下に限定されないが、例えば、メチルシリルトリクロリド、t-ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素、及びこれらの臭素化物等が挙げられる。
ハロゲン化錫化合物としては、以下に限定されないが、例えば、メチル錫トリクロリド、t-ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物等が挙げられる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等も使用可能である。
【0082】
水添共重合体(A)、(B)は、上述のような方法で得たブロック共重合体のリビング末端に、官能基含有原子団を生成する変性剤を付加反応させたものであってもよい。
官能基含有原子団としては、以下に限定されないが、例えば、水酸基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボキシル基、チオカルボキシル酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、アルコキシスズ基及びフェニルスズ基からなる群より選ばれる官能基を少なくとも1種含有する原子団等が挙げられる。
【0083】
上述した各種の官能基含有原子団を有する変性剤としては、以下に限定されないが、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、4-メトキシベンゾフェノン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、N,N'-ジメチルプロピレンウレア、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
変性剤の付加量は、変性前の共重合体100質量部に対し、0.01~20質量部が好ましく、より好ましくは0.1~15質量部、さらに好ましくは0.3~10質量部である。
変性剤の付加反応温度は、好ましくは0~150℃、より好ましくは20~120℃である。
変性反応に要する時間は、変性反応条件によって異なるが、好ましくは24時間以内であり、より好ましくは0.1~10時間である。
【0084】
本実施形態の水添共重合体(X)を構成する水添共重合体(A)、(B)は、上述した重合工程後、又は上述した変性工程後に、水添工程を実施して製造される。
水添共重合体(A)、(B)を製造するために用いられる水添触媒としては、特に限定されず、例えば、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特公昭63-4841号公報、特公平1-37970号公報、特公平1-53851号公報、特公平2-9041号公報等に記載された水添触媒を使用することができる。
好ましい水添触媒としては、チタノセン化合物及び/又は還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。
また、共役ジエン化合物由来の水添前のビニル結合のみを先に優先して選択的に水添する場合においては、チタノセン化合物は特に好ましく、共役ジエン化合物由来の不飽和二重結合の水添率が、共役ジエン化合物由来の水添前のビニル結合量より大きな値を示す場合、水添前のビニル結合の90%以上を選択的に水添することができる。
チタノセン化合物としては、特に限定されないが、例えば、特開平8-109219号公報に記載された化合物等が挙げられ、具体的には、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル構造、インデニル構造、及びフルオレニル構造を有する配位子を少なくとも1つ以上持つ化合物等が挙げられる。
還元性有機金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、有機亜鉛化合物等が挙げられる。
水添反応の反応温度は、通常0~200℃、好ましくは30~150℃である。
水添反応に使用される水素の圧力は、好ましくは0.1~15MPa、より好ましくは0.2~10MPa、さらに好ましくは0.3~5MPaである。
水添反応の反応時間は、通常3分~10時間、好ましくは10分~5時間である。
なお、水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、あるいはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
【0085】
水添工程後、反応溶液から、必要に応じて触媒残査を除去してもよい。
水添共重合体と溶媒を分離する方法としては、以下に限定されないが、例えば、水添共重合体の溶液に、アセトン又はアルコール等の水添共重合体に対して貧溶媒となる極性溶媒を加えて、水添共重合体を沈澱させて回収する方法、あるいは、水添共重合体の溶液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、水添共重合体の溶液を直接加熱することによって溶媒を留去する方法等が挙げられる。
【0086】
本実施形態の水添共重合体(X)には、例えば、製造中に下記の酸化防止剤を添加するなどして、その表面及び/又は内部に酸化防止剤を含ませてもよい。
なお、後述する本実施形態の粘着組成物にも下記の酸化防止剤を添加してもよい。
【0087】
酸化防止剤としては、以下に限定されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。
具体的には、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチル-フェニル)プロピオネート、テトラキス-〔メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン]、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4'-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス-〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウムとポリエチレンワックス(50%)の混合物、オクチル化ジフェニルアミン、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ブチル酸,3,3-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)エチレンエステル、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、2-t-ブチル-6-(3'-t-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニル-アクリレート、及び2-〔1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)-エチル〕-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0088】
(水添共重合体(X)の製造方法)
水添共重合体(X)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、(1)水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)をそれぞれ重合し、製造溶媒から回収する前に混合する方法、(2)水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)をそれぞれ脱溶剤・脱触媒したのちに混合する方法、(3)重合反応時、重合開始剤を2段階に分けて添加する方法、(4)重合反応中に前記リビング末端に対する変性剤、又は、重合停止剤としてアルコール等のプロトン性試薬を添加し、一部のリビング末端の反応を停止する方法、(5)重合反応後に前記リビング末端に対する変性剤、又は、重合停止剤としてアルコール等のプロトン性試薬を添加し、全てのリビング末端の反応を停止した後、その溶液に新たに、重合開始剤、及びモノマーを添加し、重合を行う方法、(6)液状の水添共重合体(A)を水添共重合体(B)に対して押出混錬時に添加する方法等が挙げられる。
前記(1)の方法では、水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)の水添反応前の重合溶液を混合した後に水添反応を実施する方法、水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)を、それぞれ水添反応を行った後にそれぞれの溶液を混合する方法のいずれの方法を実施してもよい。また、水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)の混合比率は、それぞれの重合溶液の濃度と溶液の混合量を調整することにより制御できる。
前記(3)の方法では、水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)の混合比率は、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物のフィード速度、2段階添加する重合開始剤の量、重合開始剤の二段目の添加のタイミング等を調整することにより任意に制御することができる。
前記(4)の方法では、水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)の混合比率は、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物のフィード速度、途中添加する変性剤又は重合停止剤の量及び添加のタイミング等を調整することにより任意に制御することができる。
水添共重合体(A)は低分子量体であり、分子の絡み合いが小さい。そのため、前記(1)、(3)、(4)及び(5)の方法のように脱溶剤前に混合したほうが、脱溶剤・仕上げ工程を高レートで行うことが可能となる。
前記(3)、(4)及び(5)の方法は、水添共重合体(A)と水添共重合体(B)を同時に生産することができ、水添共重合体(A)と水添共重合体(B)を別々に生産した場合と比べ、生産工程を減らすことができるため、生産効率を向上させることができる。
生産効率と、性能の安定性の観点から前記(3)の方法が好ましい。
【0089】
重合停止剤としては、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2-エチルヘキサノール、ヘプタノール、それらの混合物等のアルコール等が挙げられる。
【0090】
前記本実施形態の水添共重合体(X)の製造方法における、前記(3)に方法においては、前記水添共重合体(A)と、前記水添共重合体(B)を1つの反応器内で同時に製造してもよい。
かかる製造工程においては、下記(ウ)又は下記(エ)の順で、各重合体ブロックの原料モノマーと、重合開始剤を添加し、その後、水添することが好ましい。
(ウ)第一重合開始剤、d、e、d、第二重合開始剤、a、b
(エ)第一重合開始剤、d、e、d、第二重合開始剤、a、c
なお、前記(ウ)、(エ)中、a及びdはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、b及びeはビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム共重合体ブロックであり、cが共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、製造工程においては、各重合体ブロックの原料モノマーを添加するものとする。
前記(ウ)及び(エ)中の、第一重合開始剤→d→e→dの各モノマーの添加により、水添共重合体(B)のうちのd-e-dの重合が行われ、その後、第二重合開始剤→a→b又はcの各モノマーの添加により水添共重合体(B)はd-e-dの後にa-b又はa
-b又はa-cが重合される。また、水添共重合体(A)は、a-b又はa-cとなる。
【0091】
本実施形態の水添共重合体(X)は、ペレット化してもよい。
ペレット化の方法としては、例えば、一軸又は二軸押出機から水添共重合体(X)をストランド状に押出して、ダイ部前面に設置された回転刃により、水中で切断する方法;一軸又は二軸押出機から水添共重合体をストランド状に押出して、水冷又は空冷した後、ストランドカッターにより切断する方法;オープンロール、バンバリーミキサーにより溶融混合した後、ロールによりシート状に成形し、さらに当該シートを短冊状にカットした後に、ペレタイザーにより立方状ペレットに切断する方法等が挙げられる。
なお、水添共重合体(X)のペレットの大きさ、形状は特に限定されない。
水添共重合体(X)は、必要に応じて前記ペレットに、ペレットブロッキングの防止を目的としてペレットブロッキング防止剤を配合してもよい。
ペレットブロッキング防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビスステアリルアミド、タルク、アモルファスシリカ等が挙げられる。
ペレットブロッキング防止剤の好ましい配合量としては、水添共重合体(X)に対して500~6000ppmであり、より好ましい量としては、1000~5000ppmである。ペレットブロッキング防止剤は、ペレット表面に付着した状態で配合されていることが好ましいが、ペレット内部にある程度含むこともできる。
【0092】
〔粘着組成物〕
本実施形態の粘着組成物は、上述した本実施形態の水添共重合体(X)を含有する。
粘着組成物の構成材料としては、本実施形態の水添共重合体(X)のほか、水添共重合体(X)以外の水添共重合体、その他エラストマー、後述する各種の添加剤、粘着付与剤等が挙げられる。
本実施形態の粘着組成物は、後述する方法により製造できる。
【0093】
本実施形態の水添共重合体(X)及び粘着組成物には、必要に応じて任意の添加剤を配合してもよい。
添加剤は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体に一般的に配合されるものであれば特に限定はなく、「ゴム・プラスチック配合薬品」(日本国ラバーダイジェスト社編)等に記載されたものが挙げられる。
具体的には、補強性充填剤や硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機充填剤;カーボンブラック、酸化鉄等の顔料;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリルアルコール、石油系ワックス(例えば、マイクロクリスタリンワックス)及び低分子量ビニル芳香族系樹脂等のブロッキング防止剤;離型剤;有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の可塑剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;難燃剤;帯電防止剤;有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤;着色剤;及びこれらの混合物等を用いることができる。
【0094】
〔粘着性フィルム〕
本実施形態の粘着性フィルムは、基材層と、前記基材層上に設けられ、本実施形態の粘着組成物よりなる粘着層とを備える。
【0095】
本実施形態の粘着性フィルムの粘着層には、必要により粘着付与剤が含有されていてもよい。
粘着付与剤としては、粘着層に粘性を付与しうる樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、水添テルペン樹脂、ロジン系テルペン系樹脂、水添ロジンテルペン系樹脂、芳香族変性水添テルペン樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、水添テルペンフェノール樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂等の公知の粘着付与樹脂が挙げられる。
特に、水添テルペン樹脂、芳香族変性水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂、及びテルペンフェノール樹脂が好ましい。
粘着付与剤は1種のみを単独で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
粘着付与剤の具体例としては、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)に記載されたものが使用できる。粘着付与剤を用いることにより、粘着力の改良が図られる。
粘着層中における粘着付与剤の含有量は、粘着層中に0~50質量%含有することが好ましく、粘着亢進を効果的に防止し、剥離の際の糊残り量をより低減する場合には0~20質量%がより好ましく、0~10質量%がさらに好ましい。
特に粘着組成物の成形体を生産する際の成形機器本体、及び周辺機器の汚染防止の観点から粘着付与剤を含まないことが最も好ましい。また、適度な低粘着亢進性と、適度な低糊残り性と、より強力な粘着力を得る場合には5~50質量%がより好ましく、10~30質量%がさらに好ましい。
【0096】
前記粘着付与剤の成分や、本実施形態の粘着組成物及び粘着フィルムの粘着層中の含有量はNMRやGPCによって一般的に求められるが、粘着付与剤を全く含まない粘着組成物は、粘着付与剤が熱によって揮発しやすい成分であるため、かかる成分が含有されていないことから、TG-DTA(熱重量示差熱分析)による200℃×30分後の重量減少が0.4%(重量%)以下である。前記重量減少は、0.35%以下が好ましく、0.3%以下がより好ましい。
また、かかる特性は、本実施形態の水添共重合体(X)についても同様であり、本実施形態の水添共重合体(X)が粘着付与剤を含有しない場合、TG-DTA(熱重量示差熱分析)による200℃×30分後の重量減少が0.4%以下である。前記重量減少は、0.35%以下が好ましく、0.3%以下がより好ましい。
【0097】
(基材層)
基材層の材料としては、特に限定されず、非極性樹脂及び極性樹脂のいずれでも使用できる。
性能や価格面等から、非極性樹脂としては、ポリエチレン、ホモ又はブロックのポリプロピレンが好ましいものとして例示できる。極性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びその加水分解物等が好ましいものとして例示できる。
【0098】
基材層の厚みは、1mm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、10~200μmがさらに好ましい。
基材層の厚みが10μm以上であると、被着体の保護を十分に行うことができ、基材層の厚みが1mm以下であると、実用上良好な弾性率が得られ、良好な凹凸追随性が得られ、浮きや剥がれを効果的に防止できる。
【0099】
(粘着層)
粘着層は、本実施形態の水添共重合体(X)を含む。当該粘着層は、本実施形態の水添共重合体(X)以外のその他の水添共重合体を含有してもよい。
粘着層の厚みは、1~100μmが好ましく、2~50μmがより好ましく、5~25μmがさらに好ましい。
粘着層の厚みが1μm以上であると、被着体への粘着を十分に行うことができ、粘着層の厚みが100μmm以下であると、厚み斑の少ないフィルムが得られ、粘着亢進を効果的に防止し、剥離の際の糊残りの少ない良好なフィルムが得られる。
【0100】
(粘着性フィルムの粘着層を構成する樹脂材料の製造方法)
本実施形態の粘着性フィルムの粘着層を構成する粘着組成物は、例えば、水添共重合体(X)、及び必要に応じて加えられる他の成分を、ドライブレンドする方法、通常の高分子物質の混合に供される装置によって調整する方法等によって製造することができる。
混合装置としては、特に限定されないが、例えば、バンバリーミキサー、ラボプラストミル、単軸押出機、2軸押出機等の混練装置が挙げられ、押出機を用いた溶融混合法により製造することが生産性、良混練性の観点から好ましい。
また、特に、粘着層を構成する材料に粘着付与剤を配合する場合には、上記のドライブレンド法を用いてもよいが、粘着付与剤はベトツキ性が強く、フレーク状であるため、ハンドリング性が悪いため、上記の水添共重合体(X)に粘着付与剤を予め練り込んだマスターバッチを作製してもよい。
粘着層を構成する材料の混練時の溶融温度は、適宜設定することができるが、通常130~300℃の範囲であり、150~250℃の範囲であることが好ましい。
本実施形態の水添共重合体(X)を含む、粘着層には、低分子である水添共重合体(A)が含まれており、粘着付与剤を含まない、又は粘着付与剤が少ない場合でも高い粘着性を効果的に達成可能であることから、特に粘着付与剤を含まない場合は、前記粘着付与剤を含有させる場合における全ての工程を必要としない。また、粘着付与剤が少ない場合は粘着性フィルム生産時にドライブレンドするだけで粘着性フィルムが生産可能であり、製造工程が簡易化し、かつコスト低減化を図ることができるメリットがある。
【0101】
本実施形態の粘着性フィルムを構成する粘着層を構成する樹脂材料には、軽量化、柔軟化、及び密着性の向上効果を図るため、発泡処理を施してもよい。
発泡処理方法としては、以下に限定されないが、例えば、化学的方法、物理的方法、熱膨張型のマイクロバルーンの利用等がある。各々、無機系発泡剤、有機系発泡剤等の化学的発泡剤、物理的発泡剤等の添加、熱熱膨張型のマイクロバルーンの添加等により材料内部に気泡を分布させることができる。また、中空フィラー(既膨張バルーン)を添加することにより、軽量化、柔軟化、密着性の向上を図ってもよい。
【0102】
(粘着性フィルムの製造方法)
本実施形態の粘着性フィルムは、基材層上に水添共重合体(X)を含む粘着層を具備する。
本実施形態の粘着性フィルムの製造方法は、特に限定されないが、例えば、粘着層を構成する粘着組成物の溶液又は溶融物を、基材層を構成する所定のフィルム上に塗工する方法、フィルム押出機を用いて、基材層と粘着層とを積層させる方法等が挙げられる。
ここで、粘着層を構成する粘着組成物の溶液や溶融物を用いる場合は、粘着組成物とした後に溶液や溶融物としてもよいし、水添共重合体(X)の溶液や溶融物に対して所定の材料を混合して粘着組成物を得てもよい。
【0103】
粘着層を構成する粘着組成物の溶液を塗工する方法としては、以下に限定されないが、例えば、樹脂材料を溶解可能な溶剤に溶かし、コーター等を用い、基材層を構成するフィルム上に塗工し、溶剤を加熱乾燥する方法が挙げられる。
【0104】
粘着層を構成する粘着組成物を溶融させ、塗工する方法としては、以下に限定されないが、例えば、ホットメルトコーター等を用い、基材層を構成するフィルム上に溶融した粘着組成物を塗工する方法が挙げられる。この場合、塗工温度より高いガラス転移温度、融点又は軟化点を有する各種のフィルムを基材層として用いることが好ましい。
【0105】
フィルム押出機により、粘着性フィルムを得る方法としては、以下に限定されないが、例えば、粘着組成物よりなる粘着層の成分と、基材層を構成しうる熱可塑性樹脂等の成分とを、溶融共押出機にて、二つの流れにして、すなわち、粘着層形成用流体と、基材層形成用流体とを、ダイス口内で合流させて単一流体を形成して押し出し、粘着層と基材層とを複合することによって製造する方法が挙げられる。
【0106】
フィルム押出機により、粘着性フィルムを得る方法の場合、粘着層を形成する樹脂材料は、予め粘着層用の各成分をドライブレンドすることによっても製造できるため、生産性に優れた方法である。また、フィルム押出機により粘着性フィルムを押出成形した場合、作製した粘着性フィルムの密着性、接着強度が特に優れる傾向にある。
【0107】
本実施形態の粘着性フィルムは、導光板やプリズムシート等の光学系成形体、合成樹脂板、金属板、化粧合板、被覆塗装鋼板、各種銘板等の表面に仮着し、これら被着体の加工時や搬送、保管時の傷防止や汚れ防止用の保護フィルムとして利用できる。
【0108】
〔水添共重合体(X)、粘着組成物、成形体の用途〕
本実施形態の水添共重合体(X)又は粘着組成物は、必要に応じて各種添加剤を配合して様々な用途に用いることができる。
本実施形態の水添共重合体(X)、粘着組成物、及びその成形体の用途としては、例えば、建築材料、制振・防音材料、電線被覆材料、高周波融着性組成物、スラッシュ成形材料、粘接着性組成物、アスファルト組成物、自動車内装材料、自動車外装材料、医療用具材料、食品包装容器等の各種容器、家電用品、工業部品、玩具等が挙げられる。
【実施例0109】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
先ず、実施例及び比較例に適用した、評価方法及び物性の測定方法について下記に示す。
【0110】
〔水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)の構造の特定方法、物性の測定方法〕
((1)水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)の数平均分子量(Mn))
水添共重合体の数平均分子量を、GPC〔装置:東ソーHLC8220、カラムTSKgel SuperH-RC×2本〕を用いて測定した。溶媒にはテトラヒドロフランを用いた。
測定条件は、温度35℃で行った。
数平均分子量が既知の市販の標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を使用し、ポリスチレン換算した数平均分子量を求めた。
ここで、水添共重合体(A)の数平均分子量を(Mn1)とし、水添共重合体(B)の数平均分子量を(Mn2)とする。
【0111】
((2)水添共重合体(X)中の水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)の含有量)
水添共重合体(X)中の水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)の含有量を、GPC〔装置:東ソーHLC8220、カラムTSKgel SuperH-RC×2本〕を用いて測定した。
溶媒にはテトラヒドロフランを用いた。
測定条件は、温度35℃で行った。
水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)に由来するピークの面積比より、水添共重合体(X)に含まれる水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)の含有量を算出した。
なお、水添共重合体(B)の含有量は、100-水添共重合体(A)の含有量とした。
【0112】
((3)水添共重合体(A)と水添共重合体(B)の分取)
GPC〔装置:Waters社ACQUITY UPLC H-Class、カラム:Waters社ACQUITY APC XT900(2.5μm,4.6×150mm)、Waters社ACQUITY APC XT200(2.5μm,4.6×75mm)、Waters社ACQUITY APC XT125(2.5mm,4.6×75mm)直列〕を用いて、低分子成分である水添共重合体(A)と、高分子成分である水添共重合体(B)を分取した。
溶媒はクロロホルムを使用した。
なお、水添共重合体(A)とは数平均分子量が35,000以下の全ての成分で、水添共重合体(B)とは数平均分子量が130,000以上の全ての成分とし、分取した。
【0113】
((4)水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)中の、全ビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)、ランダム共重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位含有量(RS)、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量(BS))
なお、以下のように定義する。
BS1:水添共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量
BS2:水添共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量
RS1:水添共重合体(A)のランダム共重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の含有量
RS2:水添共重合体(B)のランダム共重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の含有量
TS1:水添共重合体(A)のビニル芳香族単量体単位の含有量
TS2:水添共重合体(B)のビニル芳香族単量体単位の含有量
【0114】
水添共重合体(A)、水添共重合体(B)を測定サンプルとし、プロトン核磁気共鳴法(1H-NMR、JOEL RESONABCE社製ECS400)により、それぞれに含まれるビニル芳香族単量体単位を、「ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック」に由来するものと、「ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム共重合体ブロック」に由来するものに区別した。
溶媒に重水素化クロロホルムを用い、サンプル濃度は50mg/mL、観測周波数は400MHz、化学シフト基準にテトラメチルシランを用い、パルスディレイ2.904秒、スキャン回数256回及び測定温度23℃で行った。
芳香族に帰属されるシグナルの積分強度、各結合様式の1Hあたりの積分値からランダム性とブロック性それぞれのスチレン含有量を算出した後、全スチレン含有量(TS1)(TS2)を算出し、ランダム共重合体ブロック中のスチレン含有量(以下、ランダムスチレン量と記載する場合がある)(RS1)(RS2)と、水添共重合体中のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(以下、スチレンブロックと記載する場合がある)の含有量(BS1)(BS2)を算出した。
計算法は以下の通りである。
スチレンブロック強度(b-St強度)
=(6.9ppm~6.3ppmの積算値)/2
ランダムスチレン強度(r-St強度)
=(7.5ppm~6.9ppmの積算値)-3×(b-St)
エチレン・ブチレン強度(EB強度)
=全積算値-3×{(b-St強度)+(r-St強度)}/8
スチレンブロック含有量(BS)
=104×(b-St強度)
/[104×{(b-St強度)+(r-St強度)}+56×(EB強度)]
ランダム共重合体ブロック中のスチレン含有量(RS)
=104×(r-St強度)/{104×(r-St強度)+56×(EB強度)}
【0115】
((5)水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)の二重結合水添率(H))
核磁気共鳴装置(BRUKER社製、DPX-400)により水添共重合体の水素添加率を測定した。
水素添加後の共重合体である水添共重合体を用いて、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)により測定した。
具体的には、4.5~5.5ppmの残存二重結合に由来するシグナル及び水素添加された共役ジエンに由来するシグナルの積分値を算出し、その比率を算出した。
【0116】
((6)水添共重合体(B)の分岐度(f))
水添共重合体(B)の分岐度(f)を、粘度検出器付きGPC-光散乱法測定法によって測定した。
水添共重合体(B)を試料として、GPC(Malvern、GPCmax VE-2001、カラム:東ソー、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G5000HXL」、「TSKgel G6000HXL」)を使用して、光散乱検出器、RI検出器、粘度検出器(Malvern社製の商品名「TDA305」)の順番に接続されている3つの検出器を用いて測定し、標準ポリスチレンに基づいて、光散乱検出器とRI検出器結果から絶対分子量(M)を、RI検出器と粘度検出器の結果から固有粘度([η])を、それぞれ求めた。
続いて、基準とする固有粘度([η]0)を、下記式にて算出した。
[η]0=a×Mb
a=-0.788+0.421×(水添共重合体(B)のビニル芳香族化合物含有量)
-0.342×(RS2)-0.197×(BS2)
b=1.601-0.081×(水添共重合体(B)のビニル芳香族化合物含有量)
+0.064×(RS2)+0.039×(BS2)
RS2:水添共重合体(B)のランダム共重合体ブロック中のビニル芳香族単量体単位の含有量
BS2:プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)によって求めた前記水添共重合体(B)中のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの含有量
M:水添共重合体(B)の絶対分子量
続いて、水添共重合体(B)の固有粘度([η])と基準とする固有粘度([η]0)の比として収縮因子gを算出した。
収縮因子(g)=[η]/[η]0
その後、得られた収縮因子(g)を用いてg=f/[(f+1)(f+2)](f≧2)と定義される分岐度(f)を算出した。
溶媒は5mmol/Lのトリエチルアミン入りテトラヒドロフラン(以下「THF」とも記す。)を使用した。
測定溶液100μLをGPC測定装置に注入して、オーブン温度40℃、THF流量1mL/分の条件で測定した。
【0117】
((7)水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)のスチレンブロックの分子量(MnS)の算出)
前記(1)、前記(2)、及び前記(5)で測定した(Mn1)、(Mn2)、(BS1)、(BS2)、(f)を用いて、水添共重合体(A)及び水添共重合体(B)のスチレンブロック分子量(MnS1)及び(MnS2)を下記計算式に則って算出した。
なお、計算結果は十の位を四捨五入し、500以下に関しては0とした。
MnS1=Mn1×BS1
MnS2=Mn2×BS2÷f
【0118】
(水添共重合体(A)、水添共重合体(B)のビニル結合量(Va)、(Vb))
水添共重合体(A)、水添共重合体(B)を測定サンプルとし、プロトン核磁気共鳴法(1H-NMR、JOEL RESONABCE社製ECS400)により、それぞれに含まれるビニル結合量(1,2-結合量)を測定した。溶媒に重水素化クロロホルムを用い、サンプル濃度は50mg/mL、観測周波数は400MHz、化学シフト基準にテトラメチルシランを用い、パルスディレイ2.904秒、スキャン回数256回及び測定温度23℃で行った。ビニル結合量は、1,4-結合及び1,2-結合に帰属されるシグナルの積分値から各結合様式の1Hあたりの積分値を算出した後、1,4-結合と1,2-結合の合計に対する1,2-結合の比率から算出した。
【0119】
〔水添共重合体の製造〕
(水添触媒の調製)
共重合体の水添反応に用いた水添触媒を下記の方法で調製した。
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビスシロロペンタジエニルチタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させ、水添触媒を得た。
【0120】
(水添共重合体)
<製造例1:水添共重合体(X1)>
水添共重合体(X1)においては、まず、共重合体(A1)と、共重合体(B1)を1つの反応器を使用してバッチ重合を行い、その後、水添反応を行うことにより、水添共重合体(A1)、水添共重合体(B1)を得た。
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積30L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン4.8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のn-ブチルリチウム(以下「NBL1」ともいう。)を全モノマー100質量部に対して0.036質量部と、1段目のN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(以下、「TMEDA1」ともいう。)をNBL1の1モルに対して1.50モルと、ナトリウムt-ペントキシド(以下、NaOAmとする)を1段目のNBL1の1モルに対して0.04モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン9.8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン39.3質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン3.8質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のn-ブチルリチウム(以下「NBL2」ともいう。を全モノマー100質量部に対して0.439質量部と、2段目のN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(以下、「TMEDA2」ともいう。)をNBL2の1モルに対して0.80モル添加し、その後、スチレ8.5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン3.4質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)と、ブタジエン30.5質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、エタノールを添加し、重合反応を停止した。
さらに、得られた共重合体に、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A1))と高分子成分(水添共重合体(B1))をGPCにより分取し、それぞれ分析した。
水添共重合体(A1)の全スチレン含有量(TS1)は28.0質量%で、スチレンブロック含有量(BS1)は20.0質量%で、ランダムスチレン量(RS1)は10.0質量%で、数平均分子量(Mn1)は0.9万で、スチレンブロックの分子量(MnS1)は0.18万で、ビニル結合量(Va)は66質量%で、水添率(Ha)は100%であった。
また、水添共重合体(B1)の全スチレン含有量(TS2)は31.7質量%で、スチレンブロックの含有量(BS2)は15.0質量%で、ランダムスチレン量(RS2)は19.6質量%で、数平均分子量(Mn2)は22.4万で、スチレンブロックの分子量(MnS2)は1.68万で、ビニル結合量(Vb)は67質量%で、水添率(Hb)は100%であった。
また、水添共重合体(A1)と水添共重合体(B1)の含有量の比は、(A1)/(B1)=40/60であった。
得られた水添共重合体(A)のブロック構造は、a-bで、水添共重合体(B)のブロック構造はd-e-d-a-bであった。
次に、安定剤として、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、水添共重合体100質量部に対して0.2質量部添加し、水添共重合体(X1)を得た。
得られた水添共重合体(X1)の解析結果を表1に示す。
なお、a及びdはビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、b及びeはビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位からなるランダム共重合体ブロックであり、cが共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックである。以下においても同様とする。
【0121】
<製造例2:水添共重合体(X2)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン4.8質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.036質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.30モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.04モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン9.9質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン39.6質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン3.8質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.539質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.60モル添加し、その後、スチレン8.4質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン6.7質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン26.8質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A2))と高分子成分(水添共重合体(B2))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X2)の解析結果を表1に示す。
また、水添共重合体(A2)の(RS1)は20.0質量%で、水添共重合体(B2)の(RS2)は20.0質量%であった。
【0122】
<製造例3:水添共重合体(X3)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン4.8質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.036質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.50モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.04モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン9.9質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン39.6質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン3.8質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.539質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.70モル添加し、その後、スチレン8.4質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン6.7質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン26.8質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A3))と高分子成分(水添共重合体(B3))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X3)の解析結果を表1に示す。
また、水添共重合体(A3)の(RS1)は20.0質量%で、水添共重合体(B3)の(RS2)は20.0質量%であった。
【0123】
<製造例4:水添共重合体(X4)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン4.8質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.036質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.50モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.08モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン9.9質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン39.6質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン3.8質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.539質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して1.00モル添加し、その後、スチレン8.4質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン6.7質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン26.8質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A4))と高分子成分(水添共重合体(B4))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X4)の解析結果を表1に示す。
また、水添共重合体(A4)の(RS1)は20.0質量%で、水添共重合体(B4)の(RS2)は20.0質量%であった。
【0124】
<製造例5:水添共重合体(X5)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン5.6質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.0345質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.40モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.05モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン5.8質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン52.0質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン4.5質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.498質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.60モル添加し、その後、スチレン6.4質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン2.6質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン23.1質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A5))と高分子成分(水添共重合体(5))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X5)の解析結果を表1に示す。
また、水添共重合体(A5)の(RS1)は10.0質量%で、水添共重合体(B5)の(RS2)は10.0質量%であった。
【0125】
<製造例6:水添共重合体(X6)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン4.8質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.034質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.80モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.06モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン9.8質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン39.1質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン3.7質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.371質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して1.10モル添加し、その後、スチレン8.5質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、ブタジエン34.1質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A6))と高分子成分(水添共重合体(B6))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X6)の解析結果を表1に示す。
また、水添共重合体(A6)の(RS1)は0質量%で、水添共重合体(B6)の(RS2)は19.2質量%であった。
【0126】
<製造例7:水添共重合体(X7)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン7.4質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.036質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して0.80モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン11.0質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン44.1質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン6.3質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.691質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.30モル添加し、その後、スチレン8.4質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン3.4質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン19.3質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A7))と高分子成分(水添共重合体(B7))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X7)の解析結果を表1に示す。
また、水添共重合体(A7)の(RS1)は15.0質量%で、水添共重合体(B7)の(RS2)は19.9質量%であった。
【0127】
<製造例8:水添共重合体(X8)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン4.8質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.038質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.40モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.04モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン9.6質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン38.2質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン3.4質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.287質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.90モル添加し、その後、スチレン8.8質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン3.5質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン31.7質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A8))と高分子成分(水添共重合体(B8))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X8)の解析結果を表1に示す。
また、水添共重合体(A8)の(RS1)は10.0質量%で、水添共重合体(B8)の(RS2)は19.4質量%であった。
【0128】
<製造例9:水添共重合体(X9)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン4.1質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.029質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.70モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.06モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン8.0質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン32.0質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン2.9質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.191質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して1.20モル添加し、その後、スチレン7.9質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン4.5質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン40.5質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A9))と高分子成分(水添共重合体(B9))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X9)の解析結果を表1に示す。
また、水添共重合体(A9)の(RS1)は10.0質量%で、水添共重合体(B9)の(RS2)は19.1質量%であった。
【0129】
<製造例10:水添共重合体(X10)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン8.5質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.060質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.30モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.04モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン12.4質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン49.5質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン7.0質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.371質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.60モル添加し、その後、スチレン4.5質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン3.6質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン14.5質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A10))と高分子成分(水添共重合体(B10))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X10)の解析結果を表1に示す。
また、水添共重合体(A10)の(RS1)は20.0質量%で、水添共重合体(B10)の(RS2)は20.0質量%であった。
【0130】
<製造例11:水添共重合体(X11)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン6.3質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.040質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して2.00モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.08モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン5.3質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン48.0質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン4.9質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.172質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して2.00モル添加し、その後、スチレン4.6質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、ブタジエン30.8質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A11))と高分子成分(水添共重合体(B11))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X11)の解析結果を表1に示す。
また、水添共重合体(A11)の(RS1)は0質量%で、水添共重合体(B11)の(RS2)は9.2質量%であった。
【0131】
<製造例12:水添共重合体(X12)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン4.4質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.042質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.40モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.04モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン5.9質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン67.3質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン3.5質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.284質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.90モル添加し、その後、スチレン3.8質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン1.5質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン13.6質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A12))と高分子成分(水添共重合体(B12))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X12)の解析結果を表1に示す。
また、水添共重合体(A12)の(RS1)は10.0質量%で、水添共重合体(B12)の(RS2)は8.0質量%であった。
【0132】
<製造例13:水添共重合体(X13)>
製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン8.6質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.038質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して0.80モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.04モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン6.0質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン33.7質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン6.6質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.219質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.50モル添加し、その後、スチレン9.0質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン5.4質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン230.7質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水素量を調整して水添反応を途中まで行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A13))と高分子成分(水添共重合体(B13))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X13)の解析結果を表1に示す。
また、水添共重合体(A13)の(RS1)は15.0質量%で、水添共重合体(B13)の(RS2)は15.0質量%であった。
【0133】
<製造例14:水添共重合体(X14)>
水添共重合体(X14)においては、共重合体(A14)と、共重合体(B14)を別々の反応器を使用して、其々バッチ重合を行い、その後、其々重合反応を停止し、共重合体(A14)と、共重合体(B14)の溶液ブレンド後に水添反応を行った。
[共重合体(A14)の重合]
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積30L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20.0質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、NBLを全モノマー100質量部に対して1.339質量部と、TMEDAをNBLの1モルに対して0.80モルと、NaOAmをNBLの1モルに対して0.005モル添加し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン16.0質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン64.0質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、共重合体(A14)を得た。
[共重合体(B14)の重合]
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積30L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン8.0質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、NBLを全モノマー100質量部に対して0.050質量部と、TMEDAをNBLの1モルに対して1.50モルと、NaOAmをNBLの1モルに対して0.042モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン16.5質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン66.1質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で50分間重合した。
次に、スチレン7.0質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、ブタジエン2.4質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で20分間重合した。
その後、重合反応を停止し、共重合体(B14)を得た。
さらに、得られた前記共重合体(A14)40.0質量部(濃度20質量%)と、前記共重合体(B14)60.0質量部(濃度20質量%)とを溶液でブレンドし、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A14))と高分子成分(水添共重合体(B14))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X14)の解析結果を表1に示す。
また、水添共重合体(A14)の(RS1)は20.0質量%で、水添共重合体(B14)の(RS2)は19.4質量%であった。
【0134】
<製造例15:水添共重合体(X15)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン4.8質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.039質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.00モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.02モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン8.2質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン32.8質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン1.7質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.097質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.60モル添加し、その後、スチレン10.5質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレ8.4質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン33.6質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A15))と高分子成分(水添共重合体(B15))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X15)の解析結果を表2に示す。
また、水添共重合体(A15)の(RS1)は20.0質量%で、水添共重合体(B15)の(RS2)は20.0質量%であった。
【0135】
<製造例16:水添共重合体(X16)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン5.6質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.044質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して0.30モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン10.7質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン42.9質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン3.5質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.142質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.10モル添加し、その後、スチレン7.5質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン6.0質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン23.9質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A16))と高分子成分(水添共重合体(B16))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X16)の解析結果を表2に示す。
また、水添共重合体(A16)の(RS1)は20.0質量%で、水添共重合体(B16)の(RS2)は20.0質量%であった。
【0136】
<製造例17:水添共重合体(X17)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン5.6質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.044質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.30モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.04モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン11.3質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン45.3質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン4.9質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.348質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.60モル添加し、その後、スチレン6.6質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン26.3質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A17))と高分子成分(水添共重合体(B17))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X17)の解析結果を表2に示す。
また、水添共重合体(A17)の(RS1)は20.0質量%で、水添共重合体(B17)の(RS2)は20.0質量%であった。
【0137】
<製造例18:水添共重合体(X18)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン5.6質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.050質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して0.30モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン21.7質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン31.2質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン2.1質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.129質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.20モル添加し、その後、スチレン11.9質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン11.9質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン15.8質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A18))と高分子成分(水添共重合体(B18))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X18)の解析結果を表2に示す。
また、水添共重合体(A18)の(RS1)は42.9質量%で、水添共重合体(B18)の(RS2)は41.2質量%であった。
【0138】
<製造例19:水添共重合体(X19)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン4.8質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.034質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.50モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.04モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン9.9質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン39.6質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン3.4質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.405質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.70モル添加し、その後、スチレン14.8質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン2.8質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン24.8質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A19))と高分子成分(水添共重合体(B19))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X19)の解析結果を表2に示す。
また、水添共重合体(A19)の(RS1)は10.0質量%で、水添共重合体(B19)の(RS2)は19.7質量%であった。
【0139】
<製造例20:水添共重合体(X20)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン7.4質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.075質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.00モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.02モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン10.2質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン40.8質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン5.3質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.315質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.70モル添加し、その後、スチレン7.3質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン5.8質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン23.2質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A20))と高分子成分(水添共重合体(B20))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X20)の解析結果を表2に示す。
また、水添共重合体(A20)の(RS1)は20.0質量%で、水添共重合体(B20)の(RS2)は20.0質量%であった。
【0140】
<製造例21:水添共重合体(X21)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン1.5質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.026質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して2.00モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.04モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン10.2質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン40.9質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン1.0質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.494質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.70モル添加し、その後、スチレン9.3質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン3.7質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン33.4質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A21))と高分子成分(水添共重合体(B21))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X21)の解析結果を表2に示す。
また、水添共重合体(A21)の(RS1)は10.0質量%で、水添共重合体(B21)の(RS2)は19.8質量%であった。
【0141】
<製造例22:水添共重合体(X22)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン11.1質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.033質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.60モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.04モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン3.7質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン33.6質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン9.4質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.439質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.80モル添加し、その後、スチレン8.4質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン3.4質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン30.3質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A22))と高分子成分(水添共重合体(B22))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X22)の解析結果を表2に示す。
また、水添共重合体(A22)の(RS1)は10.0質量%で、水添共重合体(B22)の(RS2)は10.0質量%であった。
【0142】
<製造例23:水添共重合体(X23)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン4.8質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.036質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.40モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.04モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン9.9質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン39.6質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン3.8質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.539質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して1.00モル添加し、その後、スチレン8.4質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン6.7質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン26.8質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A23))と高分子成分(水添共重合体(B23))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X23)の解析結果を表2に示す。
また、水添共重合体(A23)の(RS1)は20.0質量%で、水添共重合体(B23)の(RS2)は20.0質量%であった。
【0143】
<製造例24:水添共重合体(X24)>
水添共重合体(X24)においては、共重合体(A24)と、共重合体(B24)を別々の反応器を使用して、其々バッチ重合を行いその後、其々重合反応を停止し、共重合体(A24)と、共重合体(B24)の溶液ブレンド後に水添反応を行った。
[共重合体(A24)の重合]
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積30L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン20.0質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、NBLを全モノマー100質量部に対して1.339質量部と、TMEDAをNBLの1モルに対して0.80モルと、NaOAmをNBLの1モルに対して0.005モル添加し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン16.0質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン64.0質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、共重合体(A24)を得た。
[共重合体(B24)の重合]
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積30L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン8.0質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、NBLを全モノマー100質量部に対して0.052質量部と、TMEDAをNBLの1モルに対して2.00モルと、NaOAmをNBLの1モルに対して0.100モル添加し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン16.5質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン66.0質量部(濃度20質量%)を投入し、40℃で60分間重合した。
次に、スチレン7.0質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、ブタジエン2.4質量部(濃度20質量%)を投入し、40℃で20分間重合した。
その後、重合反応を停止し、共重合体(B24)を得た。
さらに、得られた前記共重合体(A24)40.0質量部(濃度20質量%)と、前記共重合体(B24)60.0質量部(濃度20質量%)とを溶液でブレンドし、上記のようにして調製した水添触媒を、共重合体100質量部当たり、Ti基準で100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度80℃で、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A24))と高分子成分(水添共重合体(B24))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X24)の解析結果を表2に示す。
また、水添共重合体(A24)の(RS1)は20.0質量%で、水添共重合体(B24)の(RS2)は19.4質量%であった。
【0144】
<製造例25:水添共重合体(X25)>
前記製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン2.4質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.022質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.60モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.04モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン4.9質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン19.7質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン1.9質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.820質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.70モル添加し、その後、スチレン14.2質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン11.4質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン45.5質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A25))と高分子成分(水添共重合体(B25))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X25)の解析結果を表2に示す。
また、水添共重合体(A25)の(RS1)は20.0質量%で、水添共重合体(B25)の(RS2)は20.0質量%であった。
【0145】
<製造例26:水添共重合体(X26)>
製造例1において得られた水添共重合体(X1)と同様の方法で、重合工程における、モノマー、各添加剤の添加量、添加するタイミングを下記の様に調整してバッチ重合を行った。
スチレン4.8質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、1段目のNBL1を全モノマー100質量部に対して0.036質量部と、1段目のTMEDA1をNBL1の1モルに対して1.50モルと、NaOAmをNBL1の1モルに対して0.04モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン9.9質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン39.6質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で40分間重合した。
次に、スチレン3.8質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、2段目のNBL2を全モノマー100質量部に対して0.539質量部と、2段目のTMEDA2をNBL2の1モルに対して0.80モル添加し、その後、スチレン8.4質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で15分間重合した。
次に、スチレン6.7質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン26.8質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水素量を調整して水添反応を途中まで行った。
上記のようにして得られた水添共重合体を低分子成分(水添共重合体(A26))と高分子成分(水添共重合体(B26))をGPCにより分取し、それぞれ分析し、得られた水添共重合体(X26)の解析結果を表2に示す。
また、水添共重合体(A26)の(RS1)は20.0質量%で、水添共重合体(B26)の(RS2)は20.0質量%であった。
【0146】
<製造例27:水添共重合体(B27)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積30L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン8.0質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、NBLを全モノマー100質量部に対して0.073質量部と、TMEDAをNBLの1モルに対して1.50モルと、NaOAmをNBLの1モルに対して0.042モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン16.2質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン64.8質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で50分間重合した。
次に、スチレン7.0質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン0.8質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン3.2質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
得られた水添共重合体(B27)の解析結果を表2に示す。
また、水添共重合体(B27)の(RS2)は20.0質量%であった。
【0147】
<製造例28:水添共重合体(B28)>
撹拌装置とジャケットを具備する槽型反応器(内容積30L)を使用して、バッチ重合を行った。
スチレン8.0質量部(濃度20質量%)を投入した。
次に、NBLを全モノマー100質量部に対して0.052質量部と、TMEDAをNBLの1モルに対して1.50モルと、NaOAmをNBLの1モルに対して0.042モル添加し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン16.2質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン64.8質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で50分間重合した。
次に、スチレン7.0質量部(濃度20質量%)を投入し、60℃で15分間重合した。
次に、スチレン0.8質量部(濃度20質量%)と、ブタジエン3.2質量部(濃度20質量%)を投入し、50℃で30分間重合した。
その後、重合反応を停止し、水添反応を行った。
得られた水添共重合体(B28)の解析結果を表2に示す。
また、水添共重合体(B28)の(RS2)は20.0質量%であった。
【0148】
表1及び表2に記載の水添共重合体(X1)~(X26)、及び水添共重合体(B27)、(B28)を脱溶剤したうえで、ペレット状に仕上げ、各ペレットには、3000ppm相当のステアリン酸カルシウムを添加した。
【0149】
〔実施例1~14〕、〔比較例1~13〕、〔実施例15、比較例14~15〕
上述のようにして作製した水添共重合体(X1)~(X14)をそれぞれ〔実施例1~14〕とし、水添共重合体(X15)~(X26)、(B27)を、それぞれ〔比較例1~13〕とした。
また、水添共重合体(X3)、水添共重合体(B28)に、下記表5に示す量で粘着付与剤(ヤスハラケミカル(株)社製YSポリスターHU(水添テルペンフェノール樹脂))をドライブレンドしたものを、それぞれ、〔実施例15〕、〔比較例14〕、〔比較例15〕とした。
【0150】
(水添共重合体のペレットの耐ブロッキング性の評価方法)
実施例1~14の水添共重合体(X1)~(X14)、比較例1~13の水添共重合体(X15)~(X26)、(B27)の耐ブロッキング性を、以下の方法で評価した。
直径6cmの金属円筒容器に、水添共重合体(X1)~(X26)、及び水添共重合体(B27)からなる、同じ形状(直径約3mm×3mmの円筒状)のサンプルペレット60gを入れ、その上から1160gの重りをのせた。
この状態で、40℃に加温したギヤオーブン中で22時間静置させ、その後に金属円筒製容器からペレットを取り出し、振とう後、3連球以上のペレットからなる塊の質量を測定し、ペレットの総重量(60g)に対するペレットの塊の重さの比(%)を求めた。
なお、各サンプルペレットには、3000ppm相当のステアリン酸カルシウムを添加した上で評価を行った。
<評価方法>
3連球以上の塊が5%未満のものを◎とした。
3連球以上の塊が5%以上15%未満のものを〇とした。
3連球以上の塊が15%以上40%未満のものを△とした。
3連球以上の塊が40%以上のものを×とした。
これらの評価結果を、下記表3~4に示す。
【0151】
(粘着性フィルムの製造、及び評価)
基材層を構成するポリエチレン(HDPE、旭化成ケミカルズ社製、商品名「クレオレックス T5070L」、MFR(190℃、2.16kg荷重)=7.0g/10分)と、粘着層を構成する前記水添共重合体(X1)~(X26)、及び水添共重合体(B27)、(B28)を、最終的に得られる粘着性フィルムの厚みが下記表3~5に示す値になるよう割合で各々押出機に供給した。
多層Tダイ押出機((株)プラスチック工学研究所製、PLABOR)を用いて押出温度200℃、ダイ温度220℃の条件で共押出成形によって両層を一体化して共押出し、実施例1~15、比較例1~15の、基材層厚さ42μm、粘着層厚さ8μmの粘着性フィルムを製造した。
前記粘着付与剤としては、YSポリスターHU(水添テルペンフェノール樹脂/ヤスハラケミカル(株)製)を使用した。
【0152】
(成膜性の評価)
前記粘着性フィルムの製造において作製実施例1~15及び比較例1~15の成膜過程において、下記基準により成膜性を評価した。
<評価基準>
成膜トラブル、ゲル、異物、厚み斑のないものを◎とした。
成膜トラブル、ゲル、異物はなく、厚み斑が両端に少しあるものを〇とした。
成膜トラブルはなく、ゲル、異物が少しあり、厚み斑が全体的に少しあるものを△とした。
ゲル、異物が多い、又は、厚み斑が多い、又は成膜トラブルで成形不可のものを×とした。
なお、成膜トラブルとは、ロール巻き付き、機器汚染、フィルム切れを示す。
【0153】
実施例1~15及び比較例1~15で得られた粘着性フィルムの粘着特性を評価するため、初期粘着性、粘着亢進性、糊残り性、及び繰出し性を測定し、評価した。
【0154】
〔粘着性フィルムの粘着特性〕
測定装置としては、万能引張圧縮試験機「テクノグラフTGE-500N:(株)ミネベア製」を用いた。
(初期粘着性の評価)
実施例1~15及び比較例1~15において作製した粘着性フィルムを25mm幅にしたものを、PMMA板(表面の算術平均粗さ:0.1μm)と、SUS304(2B)板の、各々に貼り付け、重さ2kgのゴムロール(直径10cm)を転がして貼り付け、温度23℃×50%相対湿度中で、30分間放置し、その後、引き剥がし速度300mm/分として、角度180度で引き剥がし、試験JIS K6854-2に準じて初期粘着力を測定し、下記の基準で初期粘着性の評価を行った。
<評価基準>
「PMMA板」
500(g/25mm)以上のものを◎とした。
350(g/25mm)以上、500(g/25mm)未満のものを〇とした。
250(g/25mm)以上、350(g/25mm)未満のものを△とした。
250(g/25mm)未満のものを×とした。
「SUS304(2B)板」
350(g/25mm)以上のものを◎とした。
250(g/25mm)以上、350(g/25mm)未満のものを〇とした。
150(g/25mm)以上、250(g/25mm)未満のものを△とした。
150(g/25mm)未満のものを×とした。
【0155】
(粘着亢進性の評価)
実施例1~15及び比較例1~15において、作製した粘着性フィルムを25mm幅にしたものを、SUS304(2B)板に貼り付け、さらに重さ2kgのゴムロール(直径10cm)転がして貼り付けた。
その後、温度80℃のオーブンに2時間保管し、さらにその後、23℃×50%相対湿度中で30分間放置し、その後、引き剥がし速度300mm/分として180度の角度で引き剥がし、試験JIS K6854-2に準じて粘着力を測定した。
下記の式から粘着亢進性を評価した。
粘着亢進性=(80℃2時間加熱後の粘着力)/(初期粘着力)
粘着亢進性は、小さい値ほど良いと判断し、下記基準により評価した。
<評価基準>
1.5以下を◎とした。
1.5を超え2以下を〇とした。
2を超え3以下を△とした。
3を超えるものを×とした。
【0156】
(糊残り性の評価)
実施例1~15及び比較例1~15において、作製した粘着性フィルムを25mm幅にしたものをSUS(2B)板に貼り付け、さらに重さ2kgのゴムロール(直径10cm)転がして貼り付けた。
その後、温度80℃のオーブンに2時間保管し、さらにその後、23℃×50%相対湿度中で30分間放置し、その後、引き剥がし速度300mm/分として180度の角度で引き剥がし、下記基準により評価した。
<評価基準>
全く糊残りのないものを◎とした。
うっすら跡が残るものを〇とした。
1mm2以下の1点で糊が剥がれるものを△とした。
1mm2以下の2点以上、1mm2を超える糊が剥がれるものを×とした。
【0157】
(繰出し性の評価)
実施例1~15及び比較例1~15において、作製した粘着性フィルムを25mm幅にしたものをHDPE板に貼り付け、重さ2kgのゴムロール(直径10cm)転がして貼り付け、温度23℃×50%相対湿度中で、6時間放置し、その後、引き剥がし速度300mm/分として180度引き剥がし、試験JIS K6854-2に準じて初期粘着力を測定し、下記の基準で評価を行った。
繰出し性は、初期粘着力が小さい値ほど良いと判断し、下記基準により評価した。
<評価基準>
50(g/25mm)未満のものを◎とした。
50(g/25mm)以上75(g/25mm)未満のものを〇とした。
75(g/25mm)以上100(g/25mm)未満のものを△とした。
100(g/25mm)以上のものを×とした。
【0158】
(機器汚染性の評価)
実施例3、15及び比較例14、15において、用いた粘着性フィルムの粘着層(水添共重合体(X)、又は水添共重合体+粘着付与剤の粘着組成物)の熱重量示差熱分析による重量減少を測定し、下記の基準で評価を行った。
機器汚染性は、下記条件による加熱後の重量減少率が小さい値を示すほど良いと判断し、下記基準により評価した。
<評価基準>
水添共重合体、又は水添共重合体+粘着付与剤の粘着組成物20mgを定量して、TG-DTA(熱重量示差熱分析)を用いて、空気下で10℃/minで200℃まで昇温して、200℃で保持し、30分後の重量減少率を測定した。
重量減少率:0.4重量%以下を◎とした。
重量減少率:0.4重量%を超えるものを×とした。
【0159】
前記TG-DTA(熱重量示差熱分析)測定結果:重量減少率の評価を以下に示し、併せて表3、表5に示す。
実施例3の粘着組成物(水添共重合体X3)
:0.07重量%(判定◎)
実施例15の粘着組成物(水添共重合体X3+粘着付与剤10質量%)
:0.52重量%(判定×)
比較例14の粘着組成物(水添共重合体B28+粘着付与剤10質量%)
:0.43重量%(判定×)
比較例15の粘着組成物(水添共重合体B28+粘着付与剤45質量%)
:2.15重量%(判定×)
【0160】
〔水添共重合体、粘着組成物の評価結果〕
製造例1~28の水添共重合体の物性を下記表1~2に示し、実施例1~15、比較例1~15の評価結果を、下記表3~5に示した。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
実施例1~15は本発明の構成要件を満たす水添共重合体(X)の評価結果であり、比較例1~15は本発明の構成要件を満たしていない水添共重合体の評価結果である。
実施例には7つの評価項目の中に×が1つもない。一方で、比較例には×が1つ以上ある。このことから、実施例に比べ、比較例が劣ることが分かった。
また、実施例15は、粘着付与剤を添加した例であるが、実施例3よりも、成膜性、繰出し性、及び糊残り性の評価が劣ることが分かった。
さらに、比較例13と、比較例14、15を比較すると、粘着付与剤の添加量に相関して、初期粘着性は良くなるものの、成膜性、繰出し性、及び糊残り性は悪くなることが分かった。また、TG-DTA(熱重量示差熱分析)測定結果からも粘着付与剤の添加は重量減少が大きく揮発分が大きいことが分かり、機器汚染性が悪くなることが分かった。
本発明の水添共重合体及び粘着組成物は、補強性充填剤配合物、架橋物、発泡体、多層フィルム及び多層シート等の成形品、建築材料、制振・防音材料、電線被覆材料、高周波融着性組成物、スラッシュ成形材料、粘接着性組成物、アスファルト組成物、自動車内装材料、自動車外装材料、医療用具材料、食品包装容器等の各種容器、家電用品、工業部品、玩具等の分野において産業上の利用可能性がある。