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特開2024-132890画像を分類するためのハイブリッド量子古典分類システムおよび訓練方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132890
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】画像を分類するためのハイブリッド量子古典分類システムおよび訓練方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/20 20220101AFI20240920BHJP
   G06N 3/0464 20230101ALI20240920BHJP
【FI】
G06N10/20
G06N3/0464
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024017066
(22)【出願日】2024-02-07
(31)【優先権主張番号】23162338
(32)【優先日】2023-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521124319
【氏名又は名称】テラ クアンタム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】TERRA QUANTUM AG
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】セノコソフ・アルセニー
(72)【発明者】
【氏名】セディフ・アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】サギンガリエヴァ・アシェル
(72)【発明者】
【氏名】メルニコフ・アレクセイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】入力として提供された特徴のグリッドを分類するハイブリッド量子古典計算システムを提供する。
【解決手段】ハイブリッド量子古典計算システム10は、特徴のグリッドを受信し、畳み込みフィルタの訓練可能な構成に基づいて入力特徴のグリッド26の複数の出力特徴を出力する畳み込みフィルタを備える畳み込みブロック12と、畳み込みブロックから受信した出力特徴のフィルタリングされたグリッド28a~28dを、平坦化特徴ベクトル16に変換する平坦化層14と、平坦化特徴ベクトルを受信し、出力分類を生成する分類ブロック22と、を備える。分類ブロックは、複数の独立した変分量子回路20を備え、複数の独立した変分量子回路は、入力特徴ベクトルとして平坦化特徴ベクトルから特徴の異なるサブセットを受信し、複数の独立した変分量子回路の測定出力32を、出力分類として出力ラベル36を決定するために完全接続分類MLP34が処理する。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力として提供された特徴のグリッド(26、28、28a~d)を分類するためのハイブリッド量子古典計算システム(10)であって、前記システム(10)が、
畳み込みフィルタであって、前記特徴のグリッド(26、28、28a~d)を入力として受信し、前記畳み込みフィルタの訓練可能な構成に基づいて前記特徴のグリッド(26、28、28a~d)の複数の出力特徴(28、28a~d)を出力(32)するように構成された畳み込みフィルタを備える畳み込みブロック(12)と、
前記畳み込みブロック(12)から受信した前記出力特徴のフィルタリングされたグリッド(28、28a~d)を平坦化特徴ベクトル(16)に変換するための平坦化層(14)と、
前記平坦化特徴ベクトル(16、18)を受信し、出力分類を生成するように構成された分類ブロック(22)であって、前記分類ブロック(22)が、それぞれの変分量子回路(20)の量子ビットレジスタの量子ビット(38)に作用する複数の量子ゲート(40、44、46)を各々備える複数の独立変分量子回路(20)を備え、前記複数の量子ゲート(40、44、46)が変分量子ゲート(44)であって、前記量子ビットレジスタの前記量子ビット(38)に対する変分量子ゲート(44)の前記作用が関連する変分パラメータに従ってパラメータ化される、変分量子ゲート(44)と、入力特徴ベクトル(16、18)に従って前記量子ビットレジスタの前記量子ビット(38)の状態を修正するための符号化ゲート(40)とを備える、分類ブロック(22)と、
を備え、
前記複数の独立変分量子回路(20)の前記変分量子回路(20)が、前記平坦化特徴ベクトル(16)から特徴の異なるサブセット(18)を前記入力特徴ベクトルとして受信し、
前記複数の独立変分量子回路(20)の測定出力(32)が、前記出力分類として前記入力特徴のグリッド(26、28、28a~d)のラベル(36)を決定するために結合される、ハイブリッド量子古典計算システム(10)。
【請求項2】
前記複数の独立変分量子回路(20)のうちの1つの前記量子ビットレジスタ内の全ての量子ビット(38)の出力状態が、前記複数の独立変分量子回路(20)のうちの他の1つの量子ゲート(40、44、46)の作用とは無関係である、請求項1に記載のハイブリッド量子古典計算システム(10)。
【請求項3】
前記複数の独立変分量子回路(20)のうちの1つの前記変分パラメータが、前記複数の独立変分量子回路(20)のうちの他の1つの前記変分パラメータとは異なる、請求項1または2に記載のハイブリッド量子古典計算システム(10)。
【請求項4】
前記複数の独立変分量子回路(20)の各々が、量子ゲートの複数の層(42)を備え、前記量子ゲートの複数の層(42)の各層(42)が特に、前記量子ビットレジスタの前記量子ビット(38)の各々について変分量子ゲート(44)を備える、請求項1または2に記載のハイブリッド量子古典計算システム(10)。
【請求項5】
前記複数の独立変分量子回路(20)が量子ハードウェアに実装される、請求項1または2に記載のハイブリッド量子古典計算システム(10)。
【請求項6】
前記畳み込みブロック(12)および/または前記平坦化層(14)が、特に訓練可能な機械学習モデルを使用して、古典的なハードウェアに実装される、請求項1または2に記載のハイブリッド量子古典計算システム(10)。
【請求項7】
前記複数の独立変分量子回路(20)が、それぞれの量子ビットレジスタに少なくとも2つの量子ビット(38)を各々備える、請求項1または2に記載のハイブリッド量子古典計算システム(10)。
【請求項8】
前記複数の独立変分量子回路(20)の各々が、前記それぞれの量子ビットレジスタの前記量子ビット(38)のうちの少なくとも2つの量子状態をもつれさせるためのもつれゲート(46)を備える、請求項1または2に記載のハイブリッド量子古典計算システム(10)。
【請求項9】
前記複数の独立変分量子回路(20)の異なる変分量子回路(20)の量子ビット(38)の前記量子状態が、測定の前にもつれない、請求項1または2に記載のハイブリッド量子古典計算システム(10)。
【請求項10】
前記畳み込みブロック(12)、前記平坦化層(14)、および前記分類ブロック(22)の訓練可能パラメータが、特に古典的なハードウェアに実装された機械学習モデルおよび量子ハードウェアに実装された前記複数の独立変分量子回路(20)の共同訓練プロセスに基づいて取得される、請求項1または2に記載のハイブリッド量子古典計算システム(10)。
【請求項11】
前記複数の独立変分量子回路(20)の前記変分量子回路(20)の各々が、いくつかの入力をその量子ビットレジスタの前記量子ビット(38)の前記量子状態に符号化するように構成され、前記入力特徴ベクトル(16、18)が、前記複数の独立変分量子回路(20)の前記変分量子回路(20)の入力の数の倍数であるいくつかの特徴を含む、請求項1または2に記載のハイブリッド量子古典計算システム(10)。
【請求項12】
前記複数の独立変分量子回路(20)の前記測定出力(32)が、古典的なハードウェアに実装された人工ニューロンの訓練可能な層、特に古典的なハードウェアに実装された人工ニューロンの完全接続層(24)を使用して結合される、請求項1または2に記載のハイブリッド量子古典計算システム(10)。
【請求項13】
ハイブリッド量子古典計算アルゴリズムに基づいて入力特徴のグリッド(26、28、28a~d)のラベル(36)を決定するための方法であって、前記方法が、
前記入力特徴のグリッド(26、28、28a~d)を受信し、前記入力特徴のグリッド(26、28、28a~d)および畳み込みフィルタに基づいて特徴のフィルタリングされたグリッド(26、28、28a~d)を生成することであって、前記畳み込みフィルタが、前記畳み込みフィルタの訓練可能な構成に基づいて前記入力特徴のグリッド(26、28、28a~d)のための複数の出力特徴を出力するように構成される、ことと、
出力特徴の前記フィルタリングされたグリッドを平坦化特徴ベクトル(16)に平坦化することと、
前記平坦化特徴ベクトル(16)を複数の平坦化特徴ベクトルサブセット(16、18)に分離し、前記平坦化特徴ベクトルサブセット(18)の各々を複数の独立変分量子回路(20)の対応する変分量子回路(20)の量子ビット(38)に符号化することであって、前記複数の独立変分量子回路(20)の各々が、前記複数の平坦化特徴ベクトルサブセット(16、18)の前記対応するサブセット(18)の特徴に基づいて量子ビット(38)の前記量子状態に作用するように構成された符号化ゲート(40)と、前記量子ビットレジスタの前記量子ビット(38)に対する変分量子ゲート(44)の前記作用が関連する変分パラメータに従ってパラメータ化される、変分量子ゲート(44)と、前記対応する回路の2つの量子ビット(38)の前記量子状態の重ね合わせを作り出すためのもつれゲート(46)とを備える、ことと、
前記複数の独立変分量子回路(20)の各々の出力状態を測定することに基づいて測定出力(32)を取得し、対応する出力ラベル(36)を決定するために前記複数の独立変分量子回路(20)の前記測定出力(32)を結合することと、
を含む方法。
【請求項14】
特徴の入力グリッド(26、28、28a~d)のラベリング関数を近似するためのハイブリッド量子古典計算システム(10)を訓練するための方法であって、前記システム(10)が、
パラメータ化された伝達関数に従って前記特徴のグリッド(26、28、28a~d)に基づいて平坦化特徴ベクトル(16、18)を生成するように構成された、古典処理システム上に実装された機械学習モデルであって、前記パラメータ化された伝達関数がパラメータ化された機械学習パラメータによってパラメータ化され、前記機械学習モデルが人工ニューロンの畳み込み層(12)を備える、機械学習モデルと、
それぞれの量子ビットレジスタの量子ビット(38)に対して作用する複数の量子ゲート(40、44、46)を各々備える複数の独立変分量子回路(20)であって、前記複数の量子ゲート(40、44、46)が、前記量子ビットレジスタの前記量子ビット(38)に対する変分量子ゲート(44)のパラメータ化された作用が関連する変分パラメータに従ってパラメータ化される、変分量子ゲート(44)と、入力特徴ベクトル(16、18)に従って前記量子ビットレジスタの前記量子ビット(38)の状態を修正するための符号化ゲート(40)とを備え、
前記複数の独立変分量子回路(20)の前記変分量子回路(20)が、前記入力特徴ベクトル(16、18)として前記平坦化特徴ベクトル(16)から特徴の異なるサブセット(18)を受信する、複数の独立変分量子回路(20)と、
古典処理システム上に実装され、前記複数の変分量子回路(20)によって生成された測定出力(32)を受信して、分類結果を決定するために前記複数の独立変分量子回路(20)の測定出力(32)を結合するように構成された結合モジュール(24)であって、前記結合が複数の訓練可能結合パラメータに基づく、結合モジュール(24)と、
を備え、前記方法が、
特徴のサンプルグリッド(26、28、28a~d)を前記機械学習モデルに提供し、前記機械学習モデルから前記出力平坦化特徴ベクトル(16)を受信することと、
前記出力平坦化特徴ベクトル(16)を複数の平坦化特徴ベクトル(16)サブセットに分離し、前記平坦化特徴ベクトル(16)サブセットの各々を前記複数の変分量子回路(20)の対応する変分量子回路(20)に提供することと、
前記複数の独立変分量子回路(20)の前記測定出力(32)に基づいて前記結合モジュール(24)から出力ラベル(36)を受信することと、
前記出力ラベル(36)の損失関数の値に基づいて、前記変分パラメータおよび前記訓練可能結合パラメータのパラメータ更新を決定することと、
を含む方法。
【請求項15】
機械可読命令が処理システムによって実行されると、前記処理システムに、請求項1もしくは2に記載のシステム(10)を実装または制御させ、または請求項13もしくは14に記載の方法を実施させる、前記機械可読命令を記憶する非一時的機械可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子計算の分野に属する。より正確には、本発明は、訓練可能な分類器の一部としてのハイブリッド量子古典計算システムに関する。
【背景技術】
【0002】
量子コンピュータは、計算を実行するためにその状態および相互作用を制御することができる、制御可能な量子力学システムのプラットフォームを提供する。計算は、制御可能な量子力学システムの決定論的発展、例えば古典ビットの量子アナログとしての量子ビットによって実現され、量子力学システムの状態は、計算の結果を決定するために測定することができる。
【0003】
これらの量子ビットに対する制御動作は、量子ゲートと呼ばれる。量子ゲートは、単一量子ビット(いわゆる単一量子ビットゲート)の状態の変化を誘発するために、および複数の量子ビット(いわゆるマルチ量子ビットゲート)に作用するために、例えば複数の量子ビットの状態および量子ビットの状態の任意の結合をもつれさせるために、量子ビットに対してコヒーレントに作用することができる。例えば、単一量子ビットゲートは、選択可能な値、例えばπ/2だけ電子のスピン状態の回転を誘発し得る。マルチ量子ビットゲートは、2つの量子ビットの状態に対するコヒーレントなCNOT演算など、2つ以上の量子ビットに対してコヒーレントに作用し得る。計算を実行するために、量子コンピュータの量子ビットに複数の量子ゲートを並列にまたは順次適用することができる。最後に、量子ビットの状態は、計算の各可能な結果の確率を決定するために、量子ゲートのシーケンスを適用した後に繰り返し測定されてもよい。
【0004】
古典的なコンピュータ上では扱いにくいと考えられる問題の解を計算するために、量子コンピュータは、比較的少ない数の計算ステップで解を見出すために量子力学的状態の特殊な特性、特に異なる量子状態の重ね合わせおよびもつれを活用する。
【0005】
しかしながら、量子力学システムの重ね合わせ/もつれ状態は、本質的に揮発性であり(例えば、デコヒーレンスを被る)、これらのシステムの制御および測定は忠実度マージンの影響を受けるため、最先端の量子コンピュータは現在、制御可能な量子力学システムの数(量子ビット)、ならびに連続して実行される制御作用の数(量子ゲート)の両方において制限されている。
【0006】
これらの欠点にもかかわらず、目先の利用可能な量子プロセッサ、すなわち変分量子アルゴリズムなどのノイズ混じりの中規模量子(NISQ)デバイスのための有望な用途が存在する。変分量子アルゴリズムでは、量子ゲートの作用は、変分パラメータに関してパラメータ化され、変分パラメータは、機械学習と同様の方法で、古典的な計算リソースの助けを借りて体系的に変化させることができる。コストを最適解に対する変分量子回路の出力に帰属させるコスト関数を極端化するために変分パラメータを変化させることによって、見えない問題に最適解を提供するように変分量子回路の出力を「訓練」することができる。異なる量子ビット間のもつれは、「量子超越性」を提供するために、大きな内部状態空間へのアクセスを与えることができる。
【0007】
例えば、Hendersonら(「Quanvolutional Neural Networks:Powering Image Recognition with Quantum Circuits」)は、畳み込み画像符号化の一部として「量子畳み込み層」を含む、画像分類を伴う量子機械学習(QML)方法を研究している。量子畳み込み層は、分類結果を提供する、復号モジュールによる分析のための符号化された特徴を生成するためにランダムに決定されたパラメータ化された作用に従って、入力特徴を処理する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hendersonら、「Quanvolutional Neural Networks:Powering Image Recognition with Quantum Circuits」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、量子デバイスは、依然として広く利用可能ではなく、実際の実装形態では、量子ビット数および回路深さの両方において制限される場合があり、これはまた、変分量子回路の一部としてのNISQデバイスの適用を制限する。
【0010】
この最先端技術の観点から、本発明の目的は、近似タスクのために比較的小さく実現可能な量子デバイスを効率的に利用することができる、量子回路ベースのアーキテクチャを含む、画像のピクセルマップなどの特徴のグリッドのための改良された分類器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、独立請求項による画像を分類するためのシステム、方法、およびコンピュータプログラムによって解決される。従属請求項は、好適な実施形態に関する。
【0012】
第1の態様によれば、本発明は、入力として提供された特徴のグリッドを分類するためのハイブリッド量子古典計算システムに関する。システムは、入力として特徴のグリッドを受信し、畳み込みフィルタの訓練可能な構成に基づいて特徴のグリッドのための複数の出力特徴を出力するように構成された畳み込みフィルタを備える畳み込みブロックを備える。システムは、畳み込みブロックから受信した出力特徴のフィルタリングされたグリッドを平坦化特徴ベクトルに変換するための平坦化層をさらに備える。システムは、平坦化特徴ベクトルを受信し、出力分類を生成するように構成された分類ブロックをさらに備える。分類ブロックは、各々がそれぞれの変分量子回路の量子ビットレジスタの量子ビットに作用する複数の量子ゲートを備える、複数の独立変分量子回路を備える。複数の量子ゲートは、量子ビットレジスタの量子ビットに対する変分量子ゲートの作用が、関連する変分パラメータに従ってパラメータ化される、変分量子ゲートと、入力特徴ベクトルに従って量子ビットレジスタの量子ビットの状態を修正するための符号化ゲートとを備える。複数の独立変分量子回路の変分量子回路は、平坦化特徴ベクトルから特徴の異なるサブセットを入力特徴ベクトルとして受信し、複数の独立変分量子回路の測定出力は、入力特徴のグリッドのラベルを出力分類として決定するために結合される。
【0013】
利用可能な変分量子回路の複雑さが可能な入力特徴の数を制限する従来のアプローチとは対照的に、システムは、畳み込みブロックを介して入力特徴のグリッドから抽出された平坦化特徴のサブセットを独立して処理するために、複数の独立変分量子回路を使用する。その結果、例えば量子ビットごとに符号化された特徴の最大数および利用可能な量子ビットの数によって定義された、処理可能な入力特徴の達成可能な最大数にあまり限定されない。本発明者らは、驚くことに、複数の変分量子回路の全ての量子ビット間のもつれがないにもかかわらず、画像分類のための量子超越性が依然として利用され得ることを実験において見出した。したがって、入力特徴のグリッドを処理および分類するための実行可能なハイブリッド量子古典計算システムを提供することができる。入力特徴のグリッドについて決定されたラベルは、複数の(所定の)出力クラスへの分類に対応してもよく、および/または入力特徴のグリッドにおけるシステムによって検出された物体/パターンの識別子であってもよい。
【0014】
入力特徴のグリッドは、データ内の画像の視覚的符号化を示し得る数値の二次元または多次元アレイに対応し得る。例えば、入力特徴のグリッドは二次元ピクセルグリッドであってもよく、各ピクセルの数値は、黒から白の範囲の輝度値などのグレースケール画像符号化に対応してもよい。ピクセルグリッドは、例えば人の顔、車両のカメラで想像されたシーンなど、文字、数字、または物体などの分類される物体の画像を符号化し得る。次いで、システムの分類は、画像を出力クラス、例えば顔画像データベース内の特定の文字、特定の数字、または対応するエントリに起因すると見なす。
【0015】
当該技術分野における既知の画像分類方法と同様に、入力特徴のグリッドは、畳み込みフィルタを使用して最初に処理することができ、畳み込みフィルタは、出力特徴のフィルタリングされたグリッドを生成するためにグリッドの異なるサブセットに適用されてもよく、畳み込みフィルタは、入力として提供された特徴のグリッド内の隣接する特徴のグループに対して局所演算を実施し得る。例えば、入力特徴のグリッドは、入力特徴のグリッドの隣接する特徴の3x3または5x5のグリッドなど、特徴の複数の正方形グリッドを生成するために使用されてもよい。サブセットの各々は畳み込みフィルタによって処理されてもよく、これは、例えば人工ニューロンの訓練されたネットワークを通じて、特徴のグリッドの入力サブセットのために対応するフィルタリングされた特徴を生成し得る。特徴の正方形グリッドの各々は、例えば特徴の正方形グリッドのエッジまたは線など、特徴の正方形グリッドから異なる画像特徴を抽出するなどのために、異なる畳み込み特徴によって並列に処理されてもよい。
【0016】
畳み込みフィルタを使用して取得されたフィルタリングされた特徴は、特徴のフィルタリングされたグリッドを生成してもよく、これは追加の畳み込みフィルタによってさらに処理され得る。次いで、畳み込みブロックは、特徴の複数のフィルタリングされたグリッドを出力してもよく、例えば、特徴の異なるフィルタリングされたグリッドは、入力特徴のグリッドに適用された異なるフィルタに対応する。
【0017】
特徴のフィルタリングされたグリッドは平坦化特徴ベクトルに平坦化されてもよく、これは、例えば、複数の内部重みおよびバイアスに従って特徴のフィルタリングされたグリッドを複数の特徴にマッピングする人工ニューラルネットワークを使用して畳み込みブロックの出力から導出された特徴のリストであってもよい。
【0018】
好適な実施形態では、畳み込みブロックおよび/または平坦化層は、特に訓練可能な機械学習モデルを使用して、古典的なハードウェアに実装される。
【0019】
訓練可能な機械学習モデルは、訓練された機械学習モデルを取得するように訓練されてもよく、または訓練された機械学習モデルとして提供されてもよく、訓練された機械学習モデルは、人工ニューラルネットワークの重みおよびバイアスなどの複数の機械学習パラメータに従って出力特徴のフィルタリングされたグリッドを処理し得る。訓練された機械学習モデルは、機械学習アーキテクチャを定義することによって、ならびに履歴データおよび対応するクラスに基づいて、例えば確率的勾配降下法または他の最適化方法を使用して、訓練プロセスにおいて対応する機械学習パラメータを訓練することによって、取得され得る。訓練プロセスに続いて、訓練された機械学習モデルは、ハイブリッド量子古典計算システムの後続の分類段階のための最適な出力を生成するように構成され得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、システムは、訓練された機械学習モデルを実装するように構成された古典処理システムおよび/またはAI処理ハードウェアを備え、特にAI処理ハードウェアは、GPU、ニューラル処理ユニット、アナログメモリベースのハードウェア、またはニューロモルフィックハードウェアを備える。
【0021】
処理システムは、単一の処理ユニットを備えてもよく、または機能的に接続され得る複数の処理ユニットを備えてもよい。処理ユニットは、マイクロコントローラ、ASIC、PLA(CPLA)、FPGA、または前述のAI処理ハードウェアなどのソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせに基づいて動作する処理デバイスを含む他の処理デバイスを備えることができる。処理デバイスは、統合メモリを含むか、または外部メモリと通信するか、またはその両方が可能であり、センサ、デバイス、アプリケーション、集積論理回路、他のコントローラなどに接続するためのインターフェースをさらに備えてもよく、インターフェースは、電気信号、光信号、無線信号、音響信号などの信号を受信または送信するように構成され得る。
【0022】
処理システムは、古典的なハードウェアを使用して訓練された機械学習モデルを実装してもよく、平坦化特徴ベクトルを生成するために特徴の入力グリッドを処理してもよく、平坦化特徴ベクトルは複数の独立変分量子回路によって引き続き処理されてもよい。好ましくは、平坦化特徴ベクトルの特徴の数は、複数の変分量子ネットワーク内の量子ビットの数の倍数である。
【0023】
好適な実施形態では、複数の独立変分量子回路の変分量子回路の各々は、いくつかの入力をその量子ビットレジスタの量子ビットの量子状態に符号化するように構成され、入力特徴ベクトルは、複数の独立変分量子回路の変分量子回路の入力の数の倍数であるいくつかの特徴を含む。
【0024】
入力の数は、各変分量子回路の量子ビットの全てまたはサブセットにおいて符号化されてもよく、例えば、複数の入力特徴が、単一量子ビットに、または変分量子回路の複数の量子ビットのサブグループに符号化されてもよい。いくつかの実施形態では、複数の入力特徴が変分量子回路の複数の量子ビットの量子状態に符号化されてもよく、量子ビットの数は、入力の数より小さくても大きくてもよい。いくつかの実施形態では、入力特徴の数は、それぞれの変分量子回路の量子ビットの間で等しく分散され、それぞれの量子ビットの量子状態を操作することによって符号化され得る。
【0025】
例えば、平坦化層はN個の特徴を含む特徴ベクトルを生成することができ、変分量子ネットワークの各々は、N=M*KとするM個の量子ビットを含むことができ、Kは1より大きい自然数であり、すなわちK∈{2;3;4;…}である。平坦化特徴ベクトルは、K個の独立変分量子回路によって独立して処理され得る特徴のK個のサブセットに分離され得る。次いで、特徴のK個のサブセットのうちの1つの各特徴は、対応する変分量子回路のM個の量子ビットのそれぞれにおいて符号化され得る。
【0026】
独立変分量子回路は、特徴のサブセットを並列および/または順次に処理することができる。言い換えると、複数の異なる変分量子回路は、同じまたは異なるハードウェアを使用して実装されてもよく、各変分量子回路の出力は、互いに独立して取得されてもよい。
【0027】
変分量子回路は複数の量子ビットを含むことができ、その量子状態は、単一量子ビットおよび/または複数の量子ビットに順次または並列に適用される量子ゲートの適用によって操作することができる。
【0028】
量子ビットは、量子ビットレジスタを形成してもよく、各量子ビットの基底状態などの初期状態に初期化することができる。いくつかの実施形態では、基底状態への量子ビットの初期化の後、量子ビットレジスタ内の各量子ビットの重ね合わせ状態が、例えばアダマールゲートの適用を介して準備される。
【0029】
続いて、量子ビットの状態を出力状態に変換するために、複数の量子ゲートが量子ビットに適用され得る。変分量子回路では、測定出力が(変分)量子ゲートの可変作用をパラメータ化する変分パラメータの関数となるように、変分量子ネットワーク内の量子ゲートの少なくともいくつかの作用がパラメータ化される。(少なくとも部分的にパラメータ化された)量子ゲートの結合作用は、動作原理がニューラルネットワークの動作と似ているため、変分量子ネットワークと呼ばれてもよい。
【0030】
さらに、変分量子回路では、少なくとも1つの量子ゲートは符号化ゲートとして使用され、符号化ゲートの作用は入力特徴ベクトルに基づく。例えば、入力特徴ベクトルの値は、単一量子ビット回転を通じて入力特徴ベクトルの値に比例する1つの量子ビットの状態を回転させることによって、量子ビットに符号化され得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの符号化ゲートは、入力特徴ベクトルの値に比例する単一量子ビット回転を含む。符号化ゲートは、各変分量子回路の一部としてk回適用されてもよく、kは2より大きい整数値であり、変分量子回路は少なくとも2k個の変分パラメータによってパラメータ化される。符号化ゲートを複数回適用することで、変分量子回路がより高次のフーリエ級数をラベリング関数に適合させ得るように、変分量子回路内への入力特徴ベクトルの再アップロードを実施することができる。
【0032】
2量子ビットゲートまたはマルチ量子ビットゲートは、量子ハードウェアによって提供される「量子超越性」を利用するなどのために、量子ビット間に重ね合わせ状態を作り出すことができ、このようなゲートは、以下ではもつれゲートとも呼ばれ得る。例えば、変分量子回路が捕捉イオンシステムに基づいて量子デバイスに実装されるとき捕捉イオンシステム内の異なるイオンの状態は、共励起を通じて結合されてもよく、例えばMolmer-Sorensen相互作用を介して伝達されてもよい。別の例として、量子ビットレジスタ内の量子ビットの対は、CNOTゲートなどの2量子ビットゲートを実装するために、量子粒子の(調整可能な)最も近い隣接相互作用または交換を介してもつれる場合がある。
【0033】
いくつかの実施形態では、変分量子ネットワークは、量子ビットレジスタ内の量子ビットとリンクするために量子ビットに対して作用し得る、量子ゲートの層に関して定義され得る。量子ゲートの層は、量子ビットレジスタ内の量子ビットの状態に対する複数のコヒーレント動作の蓄積作用を含むことができる。1つの層内のコヒーレント動作の蓄積作用は、一般に、計算に関与する量子ビットレジスタの全ての量子ビットに対して作用すべきであり、言い換えると、量子ゲートの層は、量子ビットレジスタ内の全ての量子ビットの状態に直接影響を及ぼすべきである。各層は、少なくとも1つのマルチ量子ビットゲートおよび少なくとも1つの変分量子ゲート(原則として同じゲートであり得る)を含むべきである。当業者は、層内の量子ビットの状態に対するコヒーレント動作のシーケンスを短縮するために、層内の複数の量子ゲートが並列に量子ビットに適用され得ることを理解するだろう。次いで、量子ゲートの複数の層を量子ビットに引き続き適用することで変分量子ネットワークを形成することができ、変分量子ネットワークは、各層の変分パラメータによってパラメータ化される。
【0034】
層は、同じタイプの量子ゲートを含んでもよく、量子ビットレジスタに順次適用され得る。例えば、各層は、同じアーキテクチャの量子ゲートを特徴とし得るが、変分パラメータの異なる要素が層の変分ゲートに適用されてもよい。言い換えると、層は、同じ量子ゲートアーキテクチャを特徴とし得るが、各層内の量子ビットに対する量子ゲートの作用は、変分パラメータおよび/または入力特徴ベクトルに基づいて異なってもよい。
【0035】
量子ゲートの層が量子ビットに対して作用した後、既知の初期状態に対する変分量子回路の特徴的な結果を得るために、量子ビットを測定することができる。量子力学的計算の結果は、量子ビットの計算基底状態に基づいて測定され得る。計算基底状態は、各量子ビットの基底状態のテンソル積によって張られるヒルベルト空間の直交基底状態であり得る。
【0036】
変分量子ゲートの初期変分パラメータは、最適な分類器の初期(ランダム)推測を符号化することができ、対応するラベルを決定するために、変分パラメータを用いた変分量子回路の評価の結果を(繰り返し)測定することができる。ラベルに基づいて、コストをラベルに帰属させるために、コスト関数を古典的に評価することができ、言い換えると、ラベルの良さの尺度が計算される。
【0037】
システムを訓練することにより、変分量子回路が出力ラベルを近似するように、変分パラメータを反復的に体系的に変化させてもよい。
【0038】
好適な実施形態では、複数の独立変分量子回路のうちの1つの変分パラメータは、複数の独立変分量子回路のうちの他の1つの変分パラメータとは異なる。
【0039】
例えば、変分量子回路の各々は、複数の変分量子回路の他の変分量子回路のいずれかの変分パラメータとは異なる可能性のあるそれぞれの変分パラメータに関連付けられてもよい。
【0040】
好適な実施形態では、複数の独立変分量子回路の各々は、量子ゲートの複数の層を備え、量子ゲートの複数の層の各層は、特に、量子ビットレジスタの量子ビットの各々について変分量子ゲートを備える。
【0041】
本発明者らは、ゲートの追加の層は量子ビットのアクセス可能なフーリエ空間を増加させることができ、これによって分類結果を改善することができることを見出した。各層は、変分量子回路の量子ビットの各層の可変作用が異なり得るように、訓練され得る異なる変分パラメータを含み得る。各層はまた、もつれゲートおよび/または符号化ゲートを備えてもよい。各層の符号化ゲートは、特徴のサブセットからそれぞれの量子ビットに同じ特徴を再符号化してもよく、または量子回路の一部として追加のゲートを犠牲にして、それぞれの変分量子回路によって処理される特徴の数を増加させるなどのために、特徴のサブセットの異なる特徴を符号化してもよい。
【0042】
好適な実施形態では、複数の独立変分量子回路は、それぞれの量子ビットレジスタに少なくとも2つの量子ビットを各々含む。
【0043】
変分量子回路は、原則として、量子処理リソースの利用可能性に従って設計されてもよく、量子ビットの数が増加すると、一般に、アクセス可能なフーリエ空間が増加し、これにより、変分量子回路によって実行される内部計算の複雑さも増加し得る。一般に、変分量子回路の各々は、畳み込みブロックによって抽出された特定数の特徴を分析し、そこから出力ラベル/クラスを示す値、例えば変分量子回路内の量子ビットの数に等しい数値の数を決定するなどのために、量子ビットの数またはその倍数に対応する平坦化特徴ベクトルからの特徴のサブセットを処理し得る。複数の変分量子回路の各々は、少なくとも2つの量子ビットの量子状態をもつれさせるためのもつれゲートを備えてもよい。
【0044】
好適な実施形態では、複数の独立変分量子回路の各々は、それぞれの量子ビットレジスタの量子ビットのうちの少なくとも2つの量子状態をもつれさせるためのもつれゲートを備える。
【0045】
複数の独立変分量子回路の各々における量子ビットのもつれ状態は、出力クラスを決定するために使用され得る対応する出力を決定するために使用され得る。
【0046】
好適な実施形態では、複数の独立変分量子回路のうちの1つの量子ビットレジスタにおける全ての量子ビットの出力状態は、複数の独立変分量子回路のうちの他の1つの量子ゲートの作用とは無関係である。
【0047】
結果として、変分量子回路は、独立して実装されてもよく、例えば別々のハードウェア実装を使用して並列に、または例えば同じハードウェア実装を使用して順次に計算されてもよい。
【0048】
好適な実施形態では、複数の独立変分量子回路の異なる変分量子回路の量子ビットの量子状態は、測定前にもつれない。
【0049】
言い換えると、異なる変分量子回路の量子ビットは、計算全体を通して独立したままであってもよい。
【0050】
好適な実施形態では、複数の独立変分量子回路は、量子ハードウェアに実装される。
【0051】
本発明者らの予備実験では、変分量子回路は一般に、古典的なハードウェア上で動作する量子デバイスのシミュレーションにおいて実装され、実験は、結果的な仮想ハイブリッド量子古典デバイスが、訓練中に最適化されなければならないあまり訓練可能ではないパラメータに依存しながら、機械学習における古典的なアプローチと比較すると同様の結果を達成することができることを示した。したがって、シミュレートされた変分量子回路であってもいくつかの実施形態ではでは有用であり得、すなわち、複数の変分量子回路は、量子シミュレータを使用して古典的なコンピュータ上に実装され得る。しかしながら、システムには、好ましくは、複雑な量子ハードウェアをシミュレートするために必要とされる古典的な処理能力および計算時間を低減するなどのために、量子ハードウェア上で計算された変分量子回路が実装される。
【0052】
変分量子回路の出力が測定され、量子ビットの各々および/または変分量子回路の各々について、例えば0から1の間の出力特徴にマッピングされてもよい。前記出力特徴はその後、入力特徴のグリッドに対応する出力ラベル/クラスを決定するために、システムによって使用され得る。
【0053】
好適な実施形態では、複数の独立変分量子回路の測定出力は、古典的なハードウェアに実装された人工ニューロンの訓練可能な層、特に古典的なハードウェアに実装された人工ニューロンの完全接続層を使用して結合される。
【0054】
人工ニューロンの層は、異なる独立変分量子回路の出力間の結合を実施することができ、完全接続層は、変分量子回路の各々の間の結合を導入することができる。人工ニューロンの訓練可能な層は、ラベルを取得するために測定出力を最適に結合するように訓練されてもよく、または人工ニューロンの訓練された層として取得されてもよい。当業者は、全ての量子ビットが測定される必要はないこと、または変分量子回路のうちの1つの測定出力のいくつかが人工ニューロンの層を使用する分類結果の決定の前に結合または廃棄され得ることを、理解するだろう。
【0055】
好適な実施形態では、畳み込みブロック、平坦化層、および分類ブロックの訓練可能パラメータは、特に古典的なハードウェアに実装された機械学習モデルおよび量子ハードウェアに実装された複数の独立変分量子回路の、共同訓練プロセスに基づいて取得される。
【0056】
共同訓練プロセスは、それぞれの分類タスクに適した特徴を抽出するように古典層を訓練してもよく、畳み込みブロックで抽出された特徴を複数の独立変分量子回路のそれぞれの入力に向かってマッピングするように平坦化層を訓練してもよく、分類タスクを示す測定出力特徴に向かって平坦化特徴ベクトルを有利に変換する出力を生成するように複数の独立変分量子回路を訓練してもよく、複数の独立変分量子回路の測定出力に基づいて分類結果を決定するように人工ニューロンの結合層を訓練してもよい。
【0057】
当業者は、いくつかの実施形態において、畳み込みブロックは変分量子回路と一緒に訓練されなくてもよく、代わりに異なる分類システムからの事前訓練された畳み込みブロックが使用されてもよく、複数の変分量子回路、複数の独立変分量子回路を備える分類ブロック、および結合層に先行する平坦化層の部分のみが共同訓練で訓練されてもよく、これによっていくつかの実施形態では訓練タスクの複雑さを低減し得ることを理解するだろう。その場合、平坦化層および結合層のパラメータのみが、ハイブリッド量子古典計算システムの古典部分の訓練可能な機械学習パラメータの一部であってもよい。平坦化層は、複数の独立変分量子回路への入力として平坦化特徴ベクトルに向かって畳み込みブロックの出力をマッピングするなどのための、人工ニューロンの完全接続層を備えてもよい。
【0058】
システムは、反復的に訓練することができ、以下ではまとめて訓練可能パラメータとも呼ばれる変分パラメータ、(畳み込みブロックおよび/または平坦化層の)機械学習パラメータ、および結合パラメータは、出力ラベルが特徴の同じ入力グリッドのサンプルデータセットのラベルに近付くように、反復プロセスの各ステップにおいて一緒に最適化され得る。
【0059】
反復プロセスは、古典的な機械学習モデルの訓練を模倣することができ、出力ラベルは、コスト関数に基づくコスト値に関連付けられる。例えば、訓練は、ラベルおよび対応するサンプル入力特徴グリッドのサンプルデータセットに基づくことができ、コスト関数は、出力ラベルに基づき、特徴の同じ入力グリッドのサンプルデータセットのサンプルラベルに基づく損失関数であってもよい。コスト関数は、特徴の同じ入力グリッドの出力ラベルとサンプルラベルとの間の平均二乗誤差であってもよい。したがって、訓練のための方法は、ラベルのサンプルデータセットおよび対応する入力特徴グリッドに基づくことができる。当業者は、ハイブリッド量子古典計算システムが訓練される際に、例えば特徴の入力グリッドおよび対応するラベルを含むサンプルデータセットのデータ点を取得し、続いてデータ点に基づいてハイブリッド量子古典計算システムを訓練することによって、サンプルデータセットが構築され得ることを理解するだろう。
【0060】
別の例では、最適なラベルは未知であるが、コストは、問題文に基づく候補解、例えば典型的な例として巡回セールスマン問題の移動時間に帰属する可能性があり、訓練可能パラメータは、コストが極端化(最大化または最小化)されるように変更され得る。
【0061】
訓練可能パラメータは、例えば確率的勾配降下法もしくは適応モーメント推定などの勾配ベースの最適化アルゴリズム、または疑似アニーリングなどの勾配なし最適化など、古典的な機械学習で利用される既知の技術で更新され得る。好ましくは、最適化アルゴリズムは勾配ベースであり、方法は、コスト関数によって出力ラベルに帰属するコストに対する訓練可能パラメータの勾配を決定するステップを含むことができる。
【0062】
システムは、主に入力特徴としての画像の例に関して示されているが、当業者は、システムが、必ずしも視覚情報に関連しない可能性がある特徴のグリッドに関して符号化された追加の情報を処理するのに等しく適し得ることを理解するだろう。
【0063】
第2の態様によれば、本発明は、ハイブリッド量子古典計算アルゴリズムに基づいて入力特徴のグリッドのラベルを決定するための方法に関する。本方法は、入力特徴のグリッドを受信し、入力特徴のグリッドおよび畳み込みフィルタに基づいて特徴のフィルタリングされたグリッドを生成するステップとを含む。畳み込みフィルタは、畳み込みフィルタの訓練可能な構成に基づいて入力特徴のグリッドのための複数の出力特徴を出力するように構成される。方法は、出力特徴のフィルタリングされたグリッドを平坦化特徴ベクトルに平坦化するステップと、平坦化特徴ベクトルを複数の平坦化特徴ベクトルサブセットに分離するステップとをさらに含む。方法は、平坦化特徴ベクトルサブセットの各々を複数の独立変分量子回路の対応する変分量子回路の量子ビットに符号化するステップをさらに含む。複数の独立変分量子回路の各々は、複数の平坦化特徴ベクトルサブセットの対応するサブセットの特徴に基づいて量子ビットの量子状態に作用するように構成された符号化ゲートと、変分量子ゲートであって、量子ビットレジスタの量子ビットに対する変分量子ゲートの作用が関連する変分パラメータに従ってパラメータ化される、変分量子ゲートと、対応する回路の2つの量子ビットの量子状態の重ね合わせを作り出すためのもつれゲートとを備える。方法は、複数の独立変分量子回路の各々の出力状態を測定することに基づいて測定出力を取得するステップと、対応する出力ラベルを決定するために複数の独立変分量子回路の測定出力を結合するステップとをさらに含む。
【0064】
好ましくは、ラベルは、訓練された機械学習モデル、好ましくは人工ニューロンの完全接続層を含む多層パーセプトロンを使用して測定出力を結合することによって決定される。しかしながら、いくつかの実施形態では、量子層の後に古典層がない場合があるが、量子層の後の出力は、例えば、測定出力を単純に連結することによって、または所定の結合関数に従って測定出力を結合することによって、問題に対する出力ラベルの予測とすることができる。ラベルを決定することで、入力特徴のグリッドを出力クラスの所定のセットに分類することができる。
【0065】
方法は、第1の態様またはその実施形態の任意の組み合わせに従ってシステムの要素および構成要素を使用してもよく、または前記構成要素の任意の機能を実装してもよい。
【0066】
第3の態様によれば、本発明は、入力特徴のグリッドのラベリング関数を近似するためのハイブリッド量子古典計算システムを訓練するための方法に関する。システムは、パラメータ化された伝達関数に従って入力特徴のグリッドに基づいて平坦化特徴ベクトルを生成するように構成された、古典処理システム上に実装された機械学習モデルであって、パラメータ化された伝達関数は機械学習パラメータによってパラメータ化され、機械学習モデルは人工ニューロンの畳み込み層を備える、機械学習モデルを備える。システムは、それぞれの量子ビットレジスタの量子ビットに対して作用する複数の量子ゲートを各々備える複数の独立変分量子回路であって、複数の量子ゲートは、量子ビットレジスタの量子ビットに対する変分量子ゲートのパラメータ化された作用が関連する変分パラメータに従ってパラメータ化される、変分量子ゲートと、入力特徴ベクトルに従って量子ビットレジスタの量子ビットの状態を修正するための符号化ゲートとを備える、複数の独立変分量子回路をさらに備える。複数の独立変分量子回路の変分量子回路は、平坦化特徴ベクトルから特徴の異なるサブセットを入力特徴ベクトルとして受信する。システムは、古典処理システム上に実装され、複数の独立変分量子回路によって生成された測定出力を受信して、分類結果を決定するために複数の独立変分量子回路の測定出力を結合するように構成された結合モジュールをさらに備え、結合は、複数の訓練可能結合パラメータに基づく。本方法は、特徴のサンプルグリッドを機械学習モデルに提供するステップと、機械学習モデルから出力平坦化特徴ベクトルを受信するステップとを含む。方法は、出力平坦化特徴ベクトルを複数の平坦化特徴ベクトルサブセットに分離するステップと、平坦化特徴ベクトルサブセットの各々を複数の変分量子回路の対応する変分量子回路に提供するステップと、複数の独立変分量子回路の測定出力に基づいて結合モジュールから出力ラベルを受信するステップとをさらに含む。方法は、出力ラベルの損失関数の値に基づいて、変分パラメータおよび訓練可能結合パラメータのパラメータ更新を決定するステップをさらに含む。
【0067】
原則として、機械学習モデルは既に(部分的に)訓練されていてもよく、例えば平坦化層の一部としての機械学習モデルの部分のみが複数の独立変分量子回路と一緒に訓練されてもよい。例えば、畳み込み層に基づく従来の機械学習モデルの一部がエンコーダ部分として使用されてもよく、従来の機械学習モデルのエンコーダ部分の出力は、複数の独立変分量子回路による処理のために抽出された特徴を準備するなどのために、機械学習モデルの第2の部分によって平坦化特徴ベクトルにマッピングされてもよい。したがって、機械学習パラメータの第2の部分のみが、変分パラメータおよび結合パラメータと一緒に訓練されてもよい。他の例では、機械学習パラメータの全てが変分パラメータおよび結合パラメータと一緒に訓練されてもよい。言い換えると、ハイブリッド量子古典計算システムの量子層および古典層は同時に訓練されてもよく、パラメータ更新は機械学習モデルのパラメータおよび変分パラメータの両方を更新してもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、パラメータ更新を決定するステップは、パラメータ更新勾配の一部として変分パラメータの導関数のベクトルを決定するステップを含む。
【0069】
訓練可能パラメータは、パラメータ更新勾配に基づいて更新することができ、訓練可能パラメータのサブセットまたは全ては、勾配の値、および更新ステップのサイズを定量化する学習率の値に基づいて修正することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、パラメータ更新を決定するステップは、好ましくはコスト関数の以前に決定された勾配に基づくモーメント係数を含む、確率的勾配降下法に基づく。
【0071】
変分パラメータのコスト関数の勾配は、シフトされた変分パラメータに対するコスト関数の偏導関数を決定するために、シフトされた変分パラメータを用いて変分量子回路が評価される、パラメータシフトルールを通じてアクセス可能であってもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、方法は、変分パラメータの導関数のベクトルを決定するステップを含み、導関数のベクトルを決定するステップは、反復プロセスの各反復において前記変分ゲートのサブセットまたは全てにパラメータシフトルールを適用するステップを含み得る。
【0073】
具体的には、固有値±1/2を有する量子ゲート、例えば1/2{σ,σ,σ}における1量子ビット回転発生器では、変分パラメータθに対する関数fの偏導関数は、
に従って決定され得る。
【0074】
機械学習パラメータに対するコスト関数の偏導関数は、既知の方法で決定することができる。したがって、ハイブリッド量子古典計算システムの異なる部分は、変分量子回路および機械学習モデルの両方の訓練可能パラメータに対するコスト関数の偏導関数で構成された勾配に基づいて、一緒に最適化することができる。例えば、量子力学ネットワークは、変分パラメータに対する量子ゲートの層の偏導関数を決定するために繰り返し評価することができ、勾配は、測定された偏導関数、ならびに機械学習パラメータの古典的に計算された導関数から、古典的に計算されてもよい。
【0075】
しかしながら、当業者は、線形近似による制約付き最適化(COBYLA)アルゴリズムまたは同様のアルゴリズムなどにおいてコスト関数を(ランダムに)サンプリングすることなどによって、導関数にアクセスすることなく最適化アルゴリズムにおいて変分パラメータを等しく最適化することができ、勾配は、コスト関数のエネルギー地形の推定に基づいて推定された勾配であってもよいことを理解するだろう。
【0076】
次いで、コスト関数は、例えば適応モーメントベースの更新関数を用いて、訓練可能パラメータに対するコスト関数の決定/推定された勾配に従って、訓練可能パラメータを反復的に更新することによって最小化/最大化することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、パラメータ更新を決定するステップは、コスト関数の勾配にわたる移動平均およびコスト関数の二乗勾配にわたる移動平均の更新関数に基づく。
【0078】
適応モーメントベースの更新関数は、コスト関数の勾配にわたる移動平均およびコスト関数の勾配にわたる移動平均の(要素)二乗に依存するため、変分パラメータの更新は、勾配の一次モーメントおよび二次モーメントによって平滑化することができ、「ノイズ混じりの」量子システムについても最適化された解に向かう降下を有効にする。
【0079】
いくつかの実施形態では、変分パラメータおよび機械学習パラメータを更新するための学習率は異なる。
【0080】
変分量子回路および機械学習モデルの両方が出力ラベルに最適に寄与する訓練可能パラメータのセットに向かって訓練が収束するように、ハイブリッド量子古典計算システムの最適な性能が、訓練中に変分パラメータおよび機械学習パラメータが更新される相対速度の調整を必要とし得る。例えば、変分量子回路および機械学習モデルは、異なる速度で個々の最適解に向かって収束することができる。学習率が正しく調整されない場合、訓練中に、システムは、変分量子回路および機械学習モデルの一方が最適に構成されたハイブリッド量子古典計算システムよりも出力ラベルにあまり寄与しない極小値に陥る可能性がある。
【0081】
いくつかの実施形態では、変分パラメータの学習率は、機械学習パラメータの学習率よりも高い。
【0082】
異なる学習率は、機械学習モデルおよび変分パラメータの収束の個々の速度に基づいて推定されてもよく、過去の最適化結果に基づいてもよく、またはハイブリッド量子古典計算システムについて、例えば特徴の入力グリッドおよび対応するラベルのサンプルデータセットについて経験的に決定されてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、ハイブリッド量子古典計算システムは、ラベリング関数に対する変分パラメータおよび機械学習パラメータを更新するための学習率の最適比を決定するために、変分パラメータと機械学習パラメータまたは結合パラメータとを更新するための学習率の異なる比で訓練されてもよい。
【0084】
例えば、ハイブリッド量子古典計算システムは、毎回訓練可能パラメータの同じ、例えばランダムに決定された開始値を含む、固定初期化点で初期化されてもよく、訓練は、訓練中に使用されない特徴の入力グリッド(訓練データセットの一部ではない)のためにコスト関数の最終結果を記録している間、機械学習モデルおよび変分量子回路の学習率の異なる値で固定初期化点から繰り返されてもよい。実際には、1つの学習率、例えば変分パラメータに関連付けられた学習率は固定されてもよく、他の(1つまたは複数の)学習率、例えば、機械学習パラメータおよび結合パラメータの学習率は変更されてもよく、これらはいくつかの実施形態では、同じ学習率であっても異なる学習率であってもよい。当業者は、(1つまたは複数の)学習率が既に減衰しているかまたは階段状になっていてもよく、異なる学習率がそれぞれ機械学習パラメータおよび変分パラメータのベース学習率に関連し得ることを理解するだろう。
【0085】
コスト関数の結果的な値に基づいて、最適な学習率を選択することができ、ハイブリッド量子古典計算システムは、以前に決定された最適な学習率またはそれらの比に基づいて引き続き実施されるかまたはさらに訓練されてもよい。
【0086】
第3の態様による方法を使用してシステムを訓練することにより、第1の態様のハイブリッド量子古典計算システムを得ることができる。
【0087】
第4の態様によれば、本発明は、コンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムが処理システムによって実行されると、処理システムに、第2または第3の態様の任意の実施形態による方法を実施させ、および/または第1の態様の任意の実施形態によるシステムを実装させる、機械可読命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0088】
コンピュータプログラムは、コンピュータプログラムが処理システムによって実行されると、処理システムに、第2または第3の態様の任意の実施形態による方法を実施させ、および/または第1の態様の任意の実施形態によるシステムを実装させる、機械可読命令として非一時的媒体に記憶されてもよい。
【0089】
コンピュータプログラムは、ハイブリッド量子古典計算システムの訓練を調整することができ、およびまたは以前に取得された訓練可能パラメータに基づいて所与のラベリング関数を近似するためのハイブリッド量子古典計算システムを実装することができる。
【0090】
コンピュータプログラムは、例えば、変分量子回路のアーキテクチャおよび/または変分パラメータを決定することによって、複数の変分量子回路を構成することができる。システムおよび/または方法の実装中、コンピュータプログラムは、平坦化特徴ベクトルサブセットを複数の独立変分量子回路に提供してもよく、変分量子回路の測定出力を受信してもよい。
【0091】
コンピュータプログラムは、畳み込みブロックおよび平坦化層を実装し得る機械学習モデルをさらに実装および制御することができ、入力特徴のグリッドの出力ラベルを決定するために複数の独立変分量子回路の測定出力を結合するための機械学習モデルを実装することもできる。
【0092】
いくつかの実施形態では、コンピュータプログラムは、ハイブリッド量子古典計算システムの訓練を制御することができ、機械学習パラメータ、結合パラメータ、および変分パラメータのパラメータ更新を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
本発明による方法およびシステムの特徴および多くの利点は、添付の図面を参照して、好適な実施形態の詳細な説明から最もよく理解されるだろう。
図1】ハイブリッド量子古典計算システムの一例を概略的に示す図である。
図2】一例による入力特徴のグリッドのラベルを決定するための方法のフローチャートである。
図3A】他の例によるハイブリッド量子古典計算システムを概略的に示す図である。
図3B】他の例によるハイブリッド量子古典計算システムを概略的に示す図である。
図4A】修正アメリカ国立標準技術研究所(MNIST:Modified National Institute of Standards and Technology)データベースから取得した異なる手書き記号の例を示す図である。
図4B】MNISTデータベースから取得した異なる手書き記号の例を示す図である。
図5】一例による、入力特徴のグリッドのラベリング関数を近似するためのハイブリッド量子古典計算システムを訓練するための方法を示す図である。
図6A】典型的な実装形態による、図3A図3Bに示されるようなハイブリッド量子古典計算システムを訓練した結果を示す図である。
図6B】典型的な実装形態による、図3A図3Bに示されるようなハイブリッド量子古典計算システムを訓練した結果を示す図である。
図7】量子畳み込み層を備える畳み込みブロックの一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0094】
図1は、入力特徴のグリッドを出力クラスの所定のセットに分類するためのハイブリッド量子古典計算システム10の一例を概略的に示す。入力特徴のグリッドは画像データであってもよく、ハイブリッド量子古典計算システム10は、特定の物体、特定の文字、または特定の顔特徴など、出力クラスの所定のセットに従って画像データに描写された物体を識別することができる。システム10は、システム10の入力において入力特徴のグリッドを受信することができ、これは適切なフォーマットで符号化された数値のアレイの形態をとることができる。例えば、入力のグリッドはピクセルアレイであってもよく、カラー/グレースケール値は、ピクセルアレイの各ピクセルのビットシーケンスとして符号化することができる。
【0095】
入力特徴のグリッドは、前処理、例えば正規化されてもよく、畳み込みブロック12で受信されてもよく、畳み込みブロック12は、画像情報に存在する検出可能な特徴を抽出するために、畳み込みフィルタに従って入力特徴のグリッドを処理し得る。畳み込みブロック12の出力は、平坦化層14によって平坦化され得る特徴の複数のフィルタリングされたグリッドであってもよい。平坦化層14は、例えば、特徴のフィルタリングされたグリッドの特徴をプールされた特徴マップ内にプールすることによって、および/またはプールされた特徴マップを平坦化特徴ベクトル16上に平坦化することによって、平坦化特徴ベクトル16のエントリを取得するために特徴のフィルタリングされたグリッドの特徴を処理し得る。
【0096】
畳み込みブロック12および/または平坦化層14は、古典処理システムに実装することができる機械学習モデルによって実行され得る。古典処理システムは、GPUおよび/またはAI処理デバイスを備えてもよく、各人工ニューロンについて訓練可能な重みおよび/またはバイアスによってパラメータ化することができる活性化関数に基づいて入力を処理する人工ニューロンの層を有する内部多層パーセプトロン(MLP)に従って入力特徴のグリッドを処理することができる。次いで、機械学習モデルの出力は、多層パーセプトロンの出力層における人工ニューロンの活性化に基づいて生成され得る。畳み込みブロック12の出力は、プールされてもよく、人工ニューロンの平坦化層14によって平坦化特徴ベクトル16に平坦化されてもよい。
【0097】
平坦化特徴ベクトル16は、(図1において平坦化特徴ベクトル16を分離する破線で示される)複数の平坦化特徴ベクトルサブセット18に分離されてもよく、サブセット18の各々は、システム10の分類ブロック22内の複数の変分量子回路20の独立変分量子回路20によって受信されてもよい。複数の独立変分量子回路20は、それぞれの平坦化特徴ベクトルサブセット18を各々処理することができ、測定出力を各々生成してもよく、これは入力特徴のグリッドを所定の出力クラスに分類するために結合層24内で結合されてもよい。
【0098】
変分量子回路20は、少なくとも部分的に量子デバイス上に実装されてもよく、平坦化特徴ベクトル16またはそこから派生した特徴ベクトルは、量子デバイスの量子状態で符号化される。例えば、平坦化特徴ベクトル16の各サブセット18は、Q個の値を含むことができ、これはM=Q/J個の量子ビットの量子状態に符号化されてもよく、ここでJおよびMは自然数、すなわち独立変分量子回路20の実行の一部としての単一量子ビットへの複数の特徴の符号化に関して、J、
、およびQ mod J=0である。
【0099】
量子デバイスの量子状態は、変分量子ゲートの構成に基づいて操作することができ、その作用は変分パラメータによってパラメータ化することができる。量子デバイスの出力状態は(繰り返し)測定することができ、繰り返し測定出力状態に基づいて測定出力を生成することができる。
【0100】
結合層24は、例えば訓練可能な重み付き線形加算に基づいて、および好ましくは人工ニューロンの完全接続層、例えばMLPに基づいて測定出力を結合することができ、これにより、内部結合パラメータに従って測定出力に基づいて出力ラベルを生成することができる。
【0101】
結合パラメータ、機械学習パラメータ、および変分パラメータは、結合層24によって生成された出力が、入力特徴のグリッドを出力クラスにマッピングし得る一般に未知のラベリング関数を近似するラベルとして使用され得るように、例えば確率的勾配降下法またはその変形に基づいて、一緒に訓練することができる。
【0102】
図2は、例えば入力特徴のグリッドを出力クラスの所定のセットに分類するための、入力特徴のグリッドのラベルを決定するための方法を概略的に示し、これは図1に示されるシステム10を使用して実施され得る。本方法は、入力特徴のグリッドを受信し、入力特徴のグリッドをおよび畳み込みフィルタに基づいて特徴のフィルタリングされたグリッドを生成するステップ(S10)と、特徴のフィルタリングされたグリッドを平坦化特徴ベクトル16に平坦化するステップ(S12)とを含む。方法は、平坦化特徴ベクトル16を複数の平坦化特徴ベクトルサブセット18に分離するステップ(S14)と、平坦化特徴ベクトルサブセット18の各々を複数の独立変分量子回路20の対応する変分量子回路20の量子ビットに符号化するステップ(S16)とをさらに含む。方法は、複数の独立変分量子回路20の各々の出力状態を測定することに基づいて測定出力を取得するステップ(S18)と、対応する出力ラベルを決定するために複数の独立変分量子回路20の出力状態を結合するステップ(S20)とをさらに含む。
【0103】
畳み込みフィルタは、畳み込みフィルタの訓練可能な構成に基づいて入力特徴のグリッドのための複数の出力特徴を出力するように構成され、畳み込みフィルタは、例えば畳み込みブロック12の一部として、特徴のフィルタリングされたグリッドを生成するために入力特徴のグリッドの異なるサブグループに適用され得る。異なるサブグループは、隣接する特徴の小さいグリッド、例えば3×3または5×5のサブグリッドであってもよく、特徴のフィルタリングされたグリッドのフィルタリングされた値を生成するために畳み込みフィルタに従って処理され得る。畳み込みフィルタは、例えば入力特徴のグリッドの特定のサイズの全ての可能なサブグリッドを処理するために、並列に複数回適用されてもよく、異なる畳み込みフィルタは、畳み込みニューラルネットワークの技術分野で知られるように、データから異なる特性を抽出するなどのために、入力特徴のグリッドに適用されてもよい。畳み込みフィルタの出力は、複数の畳み込み層を連結するなどのために、追加の畳み込みフィルタによってさらに処理されてもよい。
【0104】
特徴のフィルタリングされたグリッドは、プーリングおよび平坦化層14によって平坦化されてもよく、これはその後、複数の独立変分量子回路20によって処理され得る。複数の独立変分量子回路20の各々は、複数の平坦化特徴ベクトルサブセット18の対応するサブセットの特徴に基づいて関係する量子回路20の量子ビットの量子状態に対して作用するように構成された符号化ゲートを備え、一般に、変分量子回路20の量子ビットごとに少なくとも1つの符号化ゲートを備えることになる。変分量子回路20内で符号化された情報は、複数の変分量子ゲートに従って処理されてもよく、量子ビットレジスタの量子ビットに対する変分量子ゲートの作用は、関連する変分パラメータと、対応する変分量子回路20の少なくとも2つの量子ビットの量子状態の重ね合わせを作り出すための複数のもつれゲートとに基づいてパラメータ化される。
【0105】
例えば、変分量子回路20は、状態
の複数のM個の量子ビットを初期化し、例えば単一量子ビット回転の一部として、量子ビットの状態に対するユニタリ変換を使用して、入力特徴、例えば{x,…,x}を符号化する。変分量子ゲートは、量子ビットの量子状態に適用することができる演算子として変分量子回路モデルパラメータをカプセル化するユニタリによって等しく記述され得る。演算子は、変分パラメータw0,…,Lによってパラメータ化され得る。最後に、変分量子回路20の量子ビットの量子状態は、例えば量子情報がM個の古典出力に分解され、回路20の期待値
f(x,θ)=〈Ψ(x,θ)|M|Ψ(x,θ)〉,(1)
を取ることによって測定出力にマッピングすることができるように、検出器によって測定することができ、ここで|Ψ(x,θ)〉は測定前の量子回路の状態を示し、xは入力特徴ベクトルであり、θは変分パラメータである。
【0106】
しかしながら、当業者は、変分量子回路20の古典出力の数、M、および量子ビットの数が、出力ラベルを決定するために量子ビットのいくつかを測定すれば十分であり得るので、同じである必要はないことを理解するだろう。
【0107】
測定出力は、入力特徴として全ての変分量子回路20の測定出力に取り込むことができ、入力特徴のグリッドに対応する出力ラベルを出力することができる完全接続MLPなどの機械学習モデル(MLP)を使用して結合することができる。
【0108】
図3Aは、例えば図2に示される方法による、入力特徴のグリッド26として画像を分類するためのシステム10の詳細な例を示す。システム10は、複数の連結された畳み込みフィルタに従って入力特徴のグリッド26を特徴のフィルタリングされたグリッド28a~dに処理する、畳み込みブロック12を備える。入力特徴のグリッド26の処理は、図中の実線に沿って(サンプル画像内の白色の矩形として描かれている)特徴のフィルタリングされたグリッド28aの特徴にマッピングされている特徴の典型的なサブグループを用いて示されている。
【0109】
図示される例では、サンプル画像は、手書きの数字(アラビア数字)の28x28の特徴グレースケール画像であり、これは、複数の畳み込みフィルタによって特徴の第1のフィルタリングされたグリッド28aとしてテンソルに、例えば16x28x28のテンソルにマッピングされてもよく、異なるフィルタ関数に従って特徴のそれぞれのサブセットからフィルタリングされた特徴を抽出する。一例として、畳み込みフィルタは、5x5のサイズを有する正方形カーネルを備えてもよく、これは1ピクセルストライドで動作してもよく、サンプル画像の全てのピクセルを処理するために2ピクセルパディングを適用してもよい。結果的なフィルタは、バッチ正規化、続いて特徴の第1のフィルタリングされたグリッド28aを取得するためのReLUなどの活性化関数を受けることができる。特徴の第1のフィルタリングされたグリッド28aは、例えば16x14x14のテンソルに向かって特徴の第2のフィルタリングされたグリッド28bとして(例えば特徴の最大プーリングに従って)プールされてもよく、これはさらなる畳み込みフィルタ配置によって特徴の32x14x14の第3のフィルタリングされたグリッド28cに向かって処理されてもよい。特徴の第3のフィルタリングされたグリッド28cは、例えば特徴の32x7x7のグリッド28dに向かってプールされてもよく、1568個の特徴を有する中間平坦化特徴ベクトル30に平坦化されてもよい。中間平坦化特徴ベクトル30はその後、平坦化層14の一部として完全接続MLPを通じて平坦化特徴ベクトル16にマッピングされてもよく、これにより、N個の特徴に向かって平坦化特徴ベクトル16のサイズを縮小することができる。
【0110】
平坦化特徴ベクトル16の特徴は、いくつかの平坦化特徴ベクトルサブセット18に分割されてもよく、これは各々、複数の独立変分量子回路20のそれぞれに渡され、訓練可能な変分パラメータに従って処理されてもよい。変分量子回路20の測定出力32はその後、出力ラベル36を取得するために、完全接続分類MLP34によって処理され得る。変分量子回路20の各々は、N個の特徴がK=N/M個の平坦化特徴ベクトルサブセット18に分割され得るようにM個の量子ビットを含むことができ、ここでKは1より大きい自然数、すなわちK∈{2;3;4;…}であり、変分量子回路20の各量子ビットにおいて1つの特徴が符号化されると仮定する。
【0111】
図3Bは、図3Aに示されるシステム10で使用され得る、変分量子回路20の一例を示す。
【0112】
図3Bに示されるように、複数の変分量子回路20の各変分量子回路20は複数の量子ビット38を備え、これは計算の開始時に初期量子状態に初期化されてもよく、例えば量子ビットは、図示されるように、計算基底状態|0〉または|1〉の一方で初期化され得る。続いて、いくつかの符号化ゲート40が、入力特徴{x,…,x}を量子ビット38の量子状態に符号化するために量子ビット38の状態に適用されてもよく、これはこの例では、回転角度をそれぞれの入力特徴に比例させて、単一量子ビット(X)回転を通じて達成することができる。
【0113】
量子ビット38の計算空間内の異なる軸を中心とする回転は、回転演算子によって記述され得る。
【0114】
X(θ)=exp(-iσθ/2),(2)および
Y(θ)=exp(-iσθ/2),(3)
それぞれの角度θを中心とするそれぞれの回転を定義する。図中、一端に黒丸を有し、他端に十字が埋め込まれた白丸を有する水平線間の垂直接続は、「CNOT」ゲートを表し、以下によって数学的に記述され得る。
【0115】
、あるいは、
【0116】
CNOTゲートは、それぞれの2つの量子ビット38の状態をもつれさせ、したがって量子回路の量子超越性を利用するための重ね合わせ状態をもたらすことができる。
【0117】
量子状態が符号化ゲート40によって量子ビット38において符号化された後、量子ビット38の量子状態は、量子ゲートの複数のi個の層42に従って変換されてもよく、各層42は、複数の変分量子ゲート44および複数のもつれゲート46を備えてもよい。変分量子ゲート44は、変分量子ゲート44としての単一量子ビット回転ゲートのそれぞれの回転角度に対応し得る変分パラメータ{w,w,…,w15}に従って量子ビット38の状態を変換し、各層42は、それぞれの異なる変分パラメータを有することができる。もつれゲート46は、図3Bに示されるようなCNOTゲートの適用などを通じて、複数の量子ビット38の状態をもつれさせることができる。
【0118】
図3Bには示されないが、当業者は、例えば入力特徴のデータ再アップロードを実施するため、および/または複数の入力特徴を変分量子回路20の各量子ビット38に符号化するために、符号化ゲート40が量子ゲートの層42の一部であってもよいことを理解するだろう。
【0119】
量子ゲートのi個の層42が量子ビット38の量子状態に順次適用された後、量子ビット38の状態は、複数の単一量子ビット検出器などの検出器48によって測定され得る。各変分量子回路20は、量子ビット38の最終的に測定された量子状態の期待値として測定出力32を決定するために、繰り返し実行されてもよい。
【0120】
図3Aに示されるように、独立変分量子回路20の各々は、それぞれの平坦化特徴ベクトルサブセット18を受信し、それぞれの測定出力を決定するために、そのそれぞれの入力特徴を独立して処理してもよい。独立変分量子回路20の各々は、異なる平坦化特徴ベクトルサブセット18の各々が異なる変分量子回路20によって効果的に処理され得るように、異なる変分パラメータ{w,w,…,w15}を特徴とし得る。
【0121】
測定出力32は、複数の変分量子回路20の測定出力32から取得された情報を結合し、出力ラベル36を取得するなどのために、機械学習モデル、特に人工ニューロン34の完全接続層に渡すことができる。
【0122】
ハイブリッド量子古典計算システム10は、入力特徴の複数のサンプルグリッド26、および手書き記号に対応するアラビア数字などの対応するサンプル出力ラベルを含み得る、サンプルデータの訓練データセットに基づいて訓練することができる。
【0123】
図4Aおよび図4Bは、分類システム10によって(記号の上に示されるように)適合する十進数0~9に分類され得る、修正アメリカ国立標準技術研究所(MNIST:Modified National Institute of Standards and Technology)データベースから取得した異なる手書き記号の例を示す。写真の各々は、28x28ピクセルの解像度を有し、入力特徴のグリッド26と見なされてもよく、各ピクセルは、その関連するグレースケール色値に応じた入力特徴であってもよい。図4Aの手書き記号は全体的に対応する数字に明確にマッピングされ得るが、図4Bの例は、人間の分類器によって誤って解釈され得る。
【0124】
手書き数字データセットは、様々なニューラルネットワーク(NN)モデルの性能を試験するために広く使用されている。このようなモデルでは、主な目的は、通常はどのアラビア数字が画像内にあるかを認識することを伴う、機械ベースの分類器を使用して、各画像を適合するクラスラベルでラベル付けすることによって各画像を分類することである。
【0125】
MNISTデータベースには合計70000枚の画像があり、これらは以下で2つのグループに分割される:60000枚の画像は訓練画像として指定され、残りの10000枚の画像は、機械ベースの分類器の性能を評価するための試験画像として指定される。
【0126】
図5は、入力特徴のグリッド26のラベリング関数を近似するためのハイブリッド量子古典計算システム10を訓練するための方法を示す。本方法は、サンプルデータセットの特徴のサンプルグリッド26を機械学習モデルに提供するステップ(S20)と、機械学習モデルから出力平坦化特徴ベクトル16を受信するステップ(S22)とを含む。方法は、出力平坦化特徴ベクトル16を複数の平坦化特徴ベクトルサブセット18に分離し、平坦化特徴ベクトルサブセット18の各々を複数の変分量子回路20の対応する変分量子回路20に提供するステップ(S24)と、複数の独立変分量子回路20の測定出力32に基づいて結合モジュール24から出力ラベルを受信するステップ(S26)とをさらに含む。方法は、出力ラベル36の損失関数の値およびラベルに基づいて、変分パラメータおよび訓練可能結合パラメータのパラメータ更新を決定するステップ(S28)をさらに含む。
【0127】
機械学習モデルは多層パーセプトロンとして実装されてもよく、方法は、複数の変分量子回路20(変分パラメータ)、機械学習モデル、および複数の独立変分量子回路20の出力を結合するための結合パラメータを形成する訓練可能な重み係数の訓練可能パラメータを初期化するステップで開始することができる。後続のステップは、ハイブリッド量子古典計算システム10によって生成された出力ラベル36を、平均二乗誤差(MSE)などの訓練データセットのサンプルラベルと比較するための、損失(コスト)関数の選択を含み得る。
【0128】
次いで、訓練アルゴリズムは、訓練データセットの、入力特徴のグリッド26および対応するサンプルラベルを含むデータ点を反復的に選択し、これを機械学習モデル、続いて複数の独立変分量子回路20を用いて処理し得る。変分量子回路20は、選択された符号化ルーチン(例えば、図3Bに示されるような角度埋め込み)を使用して機械学習モデルによって生成された平坦化特徴ベクトル18のそれぞれのサブセット18を符号化する。選択された測定演算子の期待値は、複数の独立変分量子回路20を実行した後に並列または順次に測定されてもよく、例えば、量子ビット38の期待値は、Z軸投影に基づいて「0」または「1」状態にある。
【0129】
予測は、結合層24の訓練可能な重みに従って変分量子回路20の出力を結合することによって出力ラベル36として取得され、予測された出力ラベル36は、訓練データセットのサンプルラベルと比較される。
【0130】
さらに、比較値(コスト)の勾配は、一部または全ての訓練可能パラメータに対して決定され得る。その後、例えば訓練データセットの全てのデータ点が渡されるまで、次のデータ点が処理され得る。勾配は、システム10内の全てのパラメータに関して決定されてもよく、全てのデータ点の平均勾配は、例えば適応モーメント推定アルゴリズム(Adam)などの最適化アルゴリズムに基づいて、訓練可能パラメータを更新するために使用されてもよい。反復訓練プロセスは、例えばコスト関数が特定の値に到達するか、プラトーに到達するか、またはパラメータ空間内の点の周りのループに陥った場合、訓練中の任意の時点で終了することができる。当業者は、各反復ステップでコスト関数を評価する必要はないが、訓練中に勾配を計算すれば十分であり得ることを理解するだろう。
【0131】
計算された勾配に基づいて、処理されたデータ点の平均勾配を決定することができ、選択された最適化アルゴリズムおよび選択された学習率に基づいて訓練可能パラメータを更新するために使用することができ、これにより、訓練の1つのエポックを終了することができる。
【0132】
その後、訓練は、例えばパラメータ更新がもはや比較値を改善しないと判定されるまで、所定の数のエポックまで、または所定の比較値に到達するまで、最初のデータ点から再開することができる。
【0133】
ハイブリッド量子古典計算システム10の構成および訓練のハイパーパラメータは、ラベリング関数に基づいて選択することができる。例えば、修正アメリカ国立標準技術研究所(MNIST:Modified National Institute of Standards and Technology)データベースに手書き数字について記録された例など、一連の手書き文字にラベル付けするタスクでは、入力層は、データベース画像のサイズに適合されてもよく、出力層は、例えば0~9の範囲の実際のアラビア数字に従ったラベル付けと一致するように適合されてもよい。
【0134】
変分量子回路20を実装することの一部として、初期回路定義が量子回路実装デバイスに渡されてもよく、これは、量子ハードウェアのために変分量子回路20を最適化するなどのために、量子デバイスのアーキテクチャに基づいて変分量子回路20を適応させることができる。例えば、初期変分量子回路20がCNOT演算を指定するとき、ハードウェア実装は、単一量子ビット状態回転とマルチ量子ビット状態回転との結合を含み得る。さらに、ハードウェア効率の良い量子ゲートを有する変分量子回路20を実装するなどのために、複数のゲートを結合して量子ゲートの異なる配置にしてもよい。
【0135】
当業者は、平坦化特徴ベクトル16内の特徴の数が、処理リソースの浪費を回避するために、好ましくは複数の変分量子回路20内の量子ビット38の数の倍数であることを理解するだろう。しかしながら、当業者は、変分量子回路20のうちの1つへのいくつかの入力が固定値のままであってもよいこと、または複数の変分量子回路20のうちの1つが、複数の独立変分量子回路20内の量子ビット38の総数の倍数ではない平坦化特徴ベクトル16内の特徴の数を有する事前定義された畳み込みフィルタリングアーキテクチャにシステム10または方法を適合させるなどのために、異なる回路アーキテクチャ、例えばより少ない量子ビット38を有してもよいことを、理解するだろう。
【0136】
前述の訓練方法によって取得可能なハイブリッド量子古典計算システム10を試験するために、5つの量子ビット38に対して作用する量子ゲートの3つの層42を各々有する4つの異なる独立変分量子回路20を含む、図3Bに示される回路構成に基づく古典シミュレータに、複数の独立変分量子回路20を実装した。主に分類ブロック22が複数の変分量子回路20の代わりに古典的なハードウェア上に実装された完全接続MLPデバイスを備えるという点でハイブリッド量子古典計算システム10とは異なる純粋に古典的な機械学習分類器とシステム10を比較した。
【0137】
図6Aは、純粋に古典的な畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の性能と比較したときの、図3A図3B(HQNN)に示されたようなハイブリッド量子古典計算システム10を訓練した結果を示し、変分量子回路20は多層パーセプトロン、MLPに置き換えられ、両方のシステムは、正しいアラビア数字を予測するためにMNISTデータセットに基づいて訓練されている。左の図は、それぞれのシステムを訓練するエポックにわたって訓練損失を追跡し、右の図は、MNISTデータセットの試験画像の手書きサンプルの正しいラベルを予測するそれぞれのシステムの精度を追跡する。図の凡例に示されているように、ハイブリッド量子古典計算システム10は、試験されるCNNよりも少ない訓練可能な重み(パラメータ)を含む。
【0138】
図6Bは、左はCNN、右はハイブリッド量子古典計算システム10の相対性能、すなわち検証データセット内の見えない手書き記号の正しいラベルを予測する精度の棒グラフを示す。CNNと比較して、ハイブリッド量子古典計算システム10を構築するために使用されたパラメータの数は約8倍少ないにもかかわらず、ハイブリッド量子古典計算システム10の方がCNNよりも正しいラベルを予測するのに優れており、誤ったラベルを帰属させる確率は38%低下し、最終精度は約99.21%である。
【0139】
したがって、複数の変分量子回路20を使用するシステム10は、あまり訓練可能ではないパラメータを用いる対応する古典的な分類器と同等以上の精度を達成することができる。これは、分類器を訓練するためのサンプルデータセット内のサンプルの数が少ないか、または複雑なタスクで比較的少ない状況において有利であり得、古典的な分類器は、タスクの複雑さに応じて複雑さを増減し得る。本発明者らは、複数の変分量子回路20が平坦化特徴ベクトル16のそれぞれのサブセットのみを処理するにもかかわらず、また正しいラベルが一般的に特徴のグリッド26内の特徴の複雑な配置に依存するにもかかわらず、システム10はそれでもなお、一致するラベルを画像に正確に帰属させ、システム10が短期量子計算デバイス内の特徴グリッド26の分類タスクに有利に適用され得ることを示すことを見出した。
【0140】
前述の説明では、畳み込みブロック12は、一般に、古典的な特徴に実装された古典的な畳み込みフィルタに基づいて、古典的な畳み込みブロック12として実装された。しかしながら、当業者は、システム10および方法が、一般にそのような実施形態に限定されず、畳み込みブロック12はまた、量子回路を使用して、例えば量子畳み込み層を使用して実装され得ることを理解するだろう。
【0141】
図7は、量子畳み込み層50を備える畳み込みブロック12の一例を示す。図示される例では、量子畳み込み層50は、入力特徴のグリッド26などの特徴のグリッド、または中間の特徴のフィルタリングされたグリッド28a~dのサブセットを受信し、特徴を量子畳み込み層50の量子ビット52に符号化するように構成される。図示された量子畳み込み層50は、4つの量子ビット52を含み、古典的な畳み込みフィルタの作用と同様に、入力特徴のグリッド26の2×2サブセットなどの4つの特徴を含む、入力特徴のグリッド26のサブセットを受信するように構成されてもよい。
【0142】
量子畳み込み層50は、符号化ゲート54を介して、例えば角度埋め込みを介して、入力特徴を量子ビット52の量子状態に符号化してもよく、量子ゲート56の層の作用を通じて量子ビット52の状態を変換してもよい。量子ゲート56の層は、CNOTゲートなどのマルチ量子ビットゲートを備えてもよく、変分量子ゲートを備えてもよく、量子ビット52の量子状態に対する変分量子ゲートの作用は、それぞれの訓練可能な変分パラメータによって決定され得る。図示される例では、量子ゲート56の層は一回適用されるが、当業者は、量子ビット52の初期状態を変換するために量子ゲート56の層が複数回適用され得ることを理解するだろう。
【0143】
量子ゲート56の層が量子ビット52の量子状態に作用した後、量子状態は、全ての量子ビット52の量子状態のZ投影を測定することができる、検出アセンブリ58、例えば複数の単一量子ビット検出器によって測定することができる。
【0144】
量子畳み込み層50は、入力として提供された特徴のグリッド26、28a~dの全ての可能な一致するサブグループ、例えば入力内の隣接する特徴の2×2の正方形の全てのサブグループと並列に適用されてもよく、測定された量子ビットごとに出力を、すなわち4つの測定出力を提供してもよい。量子畳み込み層50は、特徴のグリッド26、28a~dの全てのサブグループについて同じ変分パラメータを特徴としてもよく、言い換えると、入力として提供された特徴のグリッド26、28a~dの異なるサブグループに同じ量子畳み込み層50が適用されてもよい。測定出力の各々は、入力として量子畳み込み層50を特徴のグリッド26、28a~dに適用した結果が特徴の4つの異なるフィルタリングされたグリッド60となり、追加の量子畳み込み層50または古典的な畳み込みフィルタ(図7には示されていない)によってさらに処理され得るように、異なるフィルタの出力と見なされてもよい。
【0145】
量子畳み込み層50は、例えばパラメータシフトルールに基づいて、例えば適応モーメント推定および変分パラメータの勾配計さんを含む最適化アルゴリズムに基づいて変分パラメータを最適化することによって、独立変分量子回路20について上述したような古典的な畳み込み層と同様に訓練され得る。
【0146】
特徴のフィルタリングされたグリッド60は、平坦化特徴ベクトル16を取得するために平坦化層14によって平坦化されてもよく、平坦化特徴ベクトルは、入力特徴のグリッド26の出力ラベル36を取得するために分類ブロック22によって処理されてもよく、分類ブロック22は、上述のように、変分量子回路20を使用して少なくとも部分的に実装され得る。
【0147】
好適な実施形態の説明および図は、本発明およびこれに関連付けられた有益な効果を説明するのに役立つに過ぎず、いかなる限定も暗示するように理解されるべきではない。本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ決定されるべきである。
【符号の説明】
【0148】
10 ハイブリッド量子古典計算システム
12 畳み込みブロック
14 平坦化層
16 平坦化特徴ベクトル
18 平坦化特徴ベクトルサブセット
20 変分量子回路
22 分類ブロック
24 結合層
26 入力特徴のグリッド
28a~d 入力特徴のフィルタリングされたグリッド
30 中間平坦化特徴ベクトル
32 測定出力
34 完全接続MLP
36 出力ラベル
38 量子ビット
40 符号化ゲート
42 量子ゲートの層
44 変分量子ゲート
46 もつれゲート
48 検出器
50 量子畳み込み層
52 量子ビット
54 符号化ゲート
56 量子ゲートの層
58 検出アセンブリ
60 特徴のフィルタリングされたグリッド
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
【外国語明細書】
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7