(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132901
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ボールジョイント用ボールソケット
(51)【国際特許分類】
F16C 11/06 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F16C11/06 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022983
(22)【出願日】2024-02-19
(31)【優先権主張番号】10 2023 106 653.6
(32)【優先日】2023-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】514062655
【氏名又は名称】スタビラス ゲ―エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ケスラ―
【テーマコード(参考)】
3J105
【Fターム(参考)】
3J105AA23
3J105AB03
3J105AB46
3J105AB50
3J105AC01
3J105AC10
3J105CA03
3J105CA40
3J105CB03
3J105CB25
3J105CC05
(57)【要約】
【課題】単純な構成で使いやすく、耐久性があり、対応するボールヘッドが確実に固定されるボールソケットを提供する。
【解決手段】本発明に係るボールジョイント用ボールソケット(100)は、ベース本体(200)と固定要素(300)を備え、ベース本体は、ボールジョイントのボールヘッドを受け入れるための凹部(210)であって、ボールヘッドを支持するための支持領域(211)と、支持領域にボールヘッドを挿入方向で挿入するための円筒形状の挿入領域(212)とが設けられる凹部を有し、固定要素は、接続領域(310)と、接続領域によって互いに接続された2つの保持脚部(320)とを有する。ベース本体は、挿入領域に対して開口する2つの保持チャネル(220)を有し、保持脚部は、支持領域の中心点を通り挿入方向に対して直交して延びる保持軸に沿って並ぶように、保持チャネルに配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. ボールジョイントのボールヘッドを受け入れるための凹部(210)であって、前記ボールヘッドを支持するための支持領域(211)と、前記支持領域(211)に前記ボールヘッドを挿入方向(ER)で挿入するための円筒形状の挿入領域(212)とが設けられる前記凹部(210)を有するベース本体(200)と、
b. 接続領域(310)と、前記接続領域(310)によって互いに接続された2つの保持脚部(320)とを有する固定要素(300)と、
を備え、
c. 前記ベース本体(200)は、前記挿入領域(212)に対して開口する2つの保持チャネル(220)を有し、
d. 前記保持脚部(320)は、前記支持領域(211)の中心点を通り前記挿入方向(ER)に対して直交して延びる保持軸(HA)に沿って並ぶように、また、前記保持脚部(320)における前記接続領域(310)から遠位側の自由端部(321)が、前記挿入領域(212)内の部分に位置するように、前記保持チャネル(220)に配置される、
ボールジョイント用ボールソケット(100)において、
e. 前記保持チャネル(220)は、前記挿入領域(212)から前記保持軸(HA)に向かって屈曲していて、
f. 前記ボールヘッドが前記支持領域(211)内に押し込まれると、前記保持脚部(320)の前記自由端部(321)は、前記保持軸(HA)に向かって屈曲している経路上で、前記ボールヘッドによって前記挿入領域(212)から外れて前記保持チャネル(320)内に弾性的に屈曲するため、前記ボールヘッドが前記挿入領域(212)内に押し込まれた後、前記自由端部(321)が跳ね返り、前記ボールヘッドが前記支持領域(211)内に固定されること、
を特徴とするボールソケット(100)。
【請求項2】
a. 前記保持チャネル(220)は、前記保持軸(HA)と同軸のシリンダジャケットの部分として形成され、
b. 前記ボールヘッドが前記支持領域(211)内に押し込まれると、前記保持脚部(320)の前記自由端部(321)は、前記保持軸(HA)を中心とする円形路上で、前記ボールヘッドによって前記挿入領域(212)から外れて前記保持チャネル(320)内に弾性的に屈曲すること、
を特徴とする請求項1に記載のボールソケット(100)。
【請求項3】
前記固定要素(300)は、前記ベース本体(200)によって、前記保持軸(HA)に沿って前記ベース本体(200)内に変位可能に導かれること、
を特徴とする請求項1に記載のボールソケット(100)。
【請求項4】
a. 前記固定要素(300)は、前記接続領域(310)によって前記保持脚部(320)に接続される取付脚部(330)を含み、
b. 前記取付脚部(330)は、前記固定要素(300)が前記保持軸(HA)に沿って前記ベース本体(200)からする変位に対抗して、前記固定要素(300)を前記ベース本体(200)に取り付けるための取付要素(331)を有すること、
を特徴とする請求項1に記載のボールソケット(100)。
【請求項5】
前記固定要素(300)は、前記ベース本体(200)から前記取付要素(331)を解放するための解放要素(332)を有すること、
を特徴とする請求項4に記載のボールソケット(100)。
【請求項6】
前記取付脚部(330)は、前記保持脚部(320)と平行に並んで配置されること、
を特徴とする請求項4に記載のボールソケット(100)。
【請求項7】
a. 前記ベース本体(200)は取付チャネル(230)を含み、
b. 前記取付脚部(330)は、前記保持軸(HA)に沿って前記取付チャネル(230)内に導かれること、
を特徴とする請求項4に記載のボールソケット(100)。
【請求項8】
前記ベース本体(200)は、前記ベース本体(200)に対して、前記取付要素(331)を非破壊で解放可能に係止するための係止要素(231)を有すること、
を特徴とする請求項4に記載のボールソケット(100)。
【請求項9】
前記保持脚部(320)の前記自由端部(321)は丸みを帯びていること、
を特徴とする請求項1に記載のボールソケット(100)。
【請求項10】
前記保持チャネル(220)および前記保持脚部(320)、またはそのいずれかい一方の、前記保持軸(HA)に直交する断面は、丸みを帯びていること、
を特徴とする請求項1に記載のボールソケット(100)。
【請求項11】
前記ベース本体(200)は、前記固定要素(300)の前記接続領域(310)を受け入れるための窪み(240)を有すること、
を特徴とする請求項1に記載のボールソケット(100)。
【請求項12】
前記ベース本体(200)は、ポリアミドおよび繊維強化プラスチック、またはそのいずれか一方からなること、
を特徴とする請求項1に記載のボールソケット(100)。
【請求項13】
前記固定要素(300)は、プラスチック材料からなること、
を特徴とする請求項1に記載のボールソケット(100)。
【請求項14】
前記ベース本体(200)は、前記保持軸(HA)に沿って、長さ調節可能なユニットに前記ベース本体(200)を接続するための接続要素(250)を有すること、
を特徴とする請求項1に記載のボールソケット(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールジョイントのボールヘッドを受け入れるための凹部であって、ボールヘッドを支持するための支持領域と、支持領域にボールヘッドを挿入方向で挿入するための円筒形状の挿入領域とが設けられる凹部を有するベース本体と、接続領域と、接続領域によって互いに接続された2つの保持脚部とを有する固定要素と、を備えるボールジョイント用ボールソケットに関する。ベース本体は、挿入領域に対して開口する2つの保持チャネルを有し、保持脚部は、支持領域の中心点を通り挿入方向に対して直交して延びる保持軸に沿って並ぶように、また、保持脚部における接続領域から遠位側の自由端部が、挿入領域内の部分に位置するように、保持チャネルに配置される。
【背景技術】
【0002】
従来、ボールジョイントについて、ボールジョイントのボールソケットからボールヘッドが抜け出さないよう固定要素によって固定する構成が知られている。
【0003】
例えば、独国特許出願公開第19509920号明細書(特許文献1)、独国特許出願公開第102019120132号明細書(特許文献2)、独国特許出願公開第102007007017号明細書(特許文献3)に記載されるように、固定要素は、ボールソケットのベース本体に挿入される弾性金属ロッドまたは金属クリップとして設計される。金属を用いて固定要素を構成すると、特に、金属製であることが多いボールヘッドとの間で摩擦が起こる表面において、腐食が生じる点が課題となる。腐食の発生により、例えば、変色、摩擦の増加、または機械的安定性の低下など、ボールジョイントの外観および機能に悪影響が及ぶ可能性がある。
【0004】
これらの課題を克服するために、独国特許出願公開第102006057557号明細書(特許文献4)では、完全なプラスチック製のボールソケットが提案されている。しかしながら、そのようなボールソケットの固定要素の構造は複雑であり、確実に固定するためには、ボールヘッドの寸法に正確に適合させなければならず、また、解放する際には特別なツールを使用しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第19509920号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102019120132号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102007007017号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102006057557号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、単純な構成で使いやすく、耐久性があり、対応するボールヘッドが確実に固定されるボールソケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した技術的課題を解決することのできる、請求項1に記載のボールソケットを提供する。有利な実施形態は従属項に記載される。
【0008】
本発明にかかるボールジョイント用ボールソケットは、ボールジョイントのボールヘッドを受け入れるための凹部であって、ボールヘッドを支持するための支持領域と、ボールヘッドを挿入方向で支持領域に挿入するための円筒形状の挿入領域が設けられる凹部を有するベース本体を備える。支持領域は、例えば、実質的に半球形状または円筒形状であり、特に、円筒形状の支持領域の円筒基部上の面取り部が挿入領域とは反対側を向いている。挿入領域のシリンダジャケット面は、好ましくは、ボールヘッドが挿入される挿入軸と同軸である。挿入領域は、好ましくは、支持領域およびベース本体の周囲領域に対して開口して、ボールヘッドを周囲領域から挿入領域を通って支持領域内に挿入することができるよう構成される。ボールヘッドとベース本体との間の摩擦を低減させるために、凹部に1つ以上の窪みを設け、潤滑剤を受け入れるように構成してもよい。
【0009】
本発明にかかるボールジョイント用ボールソケットは、接続領域と、接続領域によって互いに接続された2つの保持脚部とを有する固定要素を備える。
【0010】
ベース本体は、挿入領域に対して開口する2つの保持チャネルを有し、保持脚部は、支持領域の中心点を通り挿入方向に対して直交して延びる保持軸に沿って実質的に並ぶように、また、保持脚部における接続領域から遠位側の自由端部が、挿入領域内の部分に位置するように、保持チャネルに配置される。好ましくは、端部は、支持領域に挿入されたボールヘッドに対抗して位置し、ボールヘッドが支持領域から抜け出さないようにする。支持領域の中心点は、好ましくは、支持領域に挿入されたボールヘッドの中心点に対応する。
【0011】
保持脚部は、好ましくは、ベース本体の内部に完全に配置される。このような構成により、保持脚部の損傷を防ぐことができると共に、ボールソケットを特にコンパクトな構成とすることができる。
【0012】
保持チャネルは、挿入領域から保持軸に向かって屈曲している。保持チャネルは、挿入方向に向かって屈曲しているのであり、挿入領域から挿入方向と直交する直線に沿って外側に延びているわけではなく、また、挿入方向に対して屈曲しているわけでもない。
【0013】
ボールヘッドが支持領域内に押し込まれると、保持脚部の自由端部は、保持軸に向かって屈曲している経路上で、ボールヘッドによって挿入領域から外れて保持チャネル内に弾性的に屈曲する。自由端部が、挿入領域から外れ、屈曲して設けられた保持チャネル内へ導かれるため、ボールヘッドは、支持領域に向かって保持脚部の間に挿入される。弾性的に屈曲しているため、ボールヘッドが挿入領域内に押し込まれた後、自由端部が跳ね返り、それにより、ボールヘッドが支持領域内で固定される。保持脚部は、好ましくは、支持領域内に挿入されたボールヘッドに当接して、ボールヘッドが支持領域から抜け出さないようにする。
【発明の効果】
【0014】
保持軸に向かって屈曲する保持チャネルを設ける構成では、ボールヘッドが挿入方向で保持脚部に当接すると、自由端部に力が作用し、それにより、自由端部は、挿入領域から外れて保持チャネル内に屈曲する。これにより、ボールヘッドが支持領域内に進入するための道が開かれるため、ボールヘッドを少ない労力で支持領域内に押し込むことができる。
【0015】
保持軸に向かって屈曲する保持チャネルを設ける構成では、支持領域に挿入されたボールヘッドに挿入方向に対して力が作用した場合、保持軸に向かって屈曲する保持チャネルによって、ボールヘッドが挿入方向に対して保持脚部に当接すると、自由端部に挿入方向に対して力が作用するため、自由端部が挿入領域に留まり、ボールヘッドの支持領域から抜け出る進路を遮る。これにより、ボールヘッドは、支持領域内にしっかりと固定されることになる。
【0016】
直線状の保持チャネルと比較して、屈曲する保持チャネルでは、保持脚部の自由端部が挿入領域をクリアにするために必要となる挿入方向に直交する空間がより少なくてすむという利点がある。保持チャネルをこのように構成することで、ボールソケットを特にコンパクトに構成することができる。さらに、保持脚部は、挿入領域から外れて屈曲する際に、屈曲する保持チャネルによって捩じられるため、挿入領域内において、自由端部の跳ね返りをさらに支持する追加的な復元力が生じる。
【0017】
さらに、固定要素は、最も単純な構成では保持脚部および接続領域のみで構成することができるため、その設計は非常に単純であり、耐腐食性を有する材料、特にプラスチックにより設けることができる。
【0018】
なお、本発明のさらなる利点、目的、および特徴は、本発明の例示的な実施形態が示される以下の説明および添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明にかかるボールソケットの概略図を示す。
【
図2】本発明にかかるボールソケットのさらなる概略図を示す。
【
図3】本発明にかかるボールソケットのベース本体の概略図を示す。
【
図4】本発明にかかるボールソケットのベース本体のさらなる概略図を示す。
【
図5】本発明にかかるボールソケットの固定要素の概略図を示す。
【
図6】本発明にかかるボールソケットの固定要素のさらなる概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明にかかるボールジョイント用ボールソケットにおいて、保持チャネルは、好ましくは、保持軸と同軸のシリンダジャケットの部分として形成される。保持チャネルを、互いに対して、および保持軸に対して対称に設計すると、ボールソケット上にかかる材料負荷が特に均一となるため、高い機械的安定性が保証される。この構成において、ボールヘッドが支持領域内に押し込まれると、保持脚部の自由端部は、保持軸を中心とする円形路上で、ボールヘッドによって挿入領域から外れて保持チャネル内に弾性的に屈曲する。
【0021】
本発明にかかるボールジョイント用ボールソケットにおいて、固定要素は、保持軸に沿ってベース本体によって導かれ、それにより、ベース本体内に滑り込むように構成されている。このように構成することで、固定要素または固定要素を挿入するために使用されるツールが、ボールヘッドの挿入方向に沿ったボールソケットへの押し込みを妨げることがなく、固定要素をベース本体に押し込むことができる。
【0022】
本発明にかかるボールジョイント用ボールソケットにおいて、固定要素は、好ましくは、接続領域によって保持脚部に接続される取付脚部を含み、取付脚部は、固定要素がベース本体から保持軸に沿ってする変位に対抗して固定要素をベース本体に取り付けるための、好ましくは、ラッチ要素などの取付要素を有する。取付要素は、例えば、ベース本体における適切な嵌合要素に固定するためのラッチ要素またはクランプ要素であり、このように構成することで、固定要素がベース本体から意図せず変位して、ボールヘッドがボールソケットから外れてしまうことを防ぐことができる。
【0023】
本発明にかかるボールジョイント用ボールソケットにおいて、固定要素は、好ましくは、ベース本体から取付要素を解放するための解放要素を備える。解放要素は、特に固定脚部に取り付けられた、例えば、ネジ回しと係合するスロットなどの取付具である。取付具と係合するツールを利用して、取付脚部を屈曲させ、例えば、取付要素をベース本体から取り外すようすることができる。
【0024】
本発明にかかるボールジョイント用ボールソケットにおいて、取付脚部は、好ましくは、保持脚部と平行に並んで配置される。このように構成することで、固定要素を保持軸に沿って容易にベース本体内に滑り込ませることができる。
【0025】
本発明にかかるボールジョイント用ボールソケットにおいて、ベース本体は、好ましくは、取付チャネルを有し、取付脚部は、保持軸に沿って取付チャネル内に導かれる。取付チャネルを設けることで、固定要素をベース本体へ容易に挿入することができる。さらに、取付チャネル内において、取付脚部を損傷から保護することができる。取付チャネルを、凹部とは反対側の、ベース本体を囲む領域に開口させることで、例えば、固定要素をベース本体から取り外す際に、固定脚部に容易にアクセスすることができる。
【0026】
取付チャネルは、好ましくは、挿入領域とは反対側の、支持領域の側でベース本体に配置される。このように構成することで、ボールヘッドが支持領域へ挿入される際に、取付チャネル内の取付脚部が妨げとならない。
【0027】
本発明にかかるボールジョイント用ボールソケットにおいて、ベース本体は、好ましくは、ベース本体に対して、取付要素を非破壊で解放可能に係止するための係止要素を有する。係止要素は、例えば、取付要素をベース本体上に保持するバー、特に、取付チャネル上に設けられたバーであり、係止要素を設けることで、固定要素がベース本体から意図せず外れたり、再び挿入されたりすることを防ぐことができる。固定要素が外れると、固定要素、特に取付要素や固定要素の保持脚部の自由端部が損傷する虞がある。よって、安全上の理由から、外れた固定要素をボールソケットに対して再度使用するべきではない。
【0028】
取付要素は、例えば、固定要素が係止要素によって係止されているときに、取付脚部から取付要素を剥がすことによってのみ、ベース本体から固定要素を引き抜くことができるように設計してもよい。
【0029】
本発明にかかるボールジョイント用ボールソケットにおいて、保持脚部の自由端部は、好ましくは、丸みを帯びている。このように構成することで、端部間においてボールヘッドを支持領域へ容易に挿入することができる。
【0030】
本発明にかかるボールジョイント用ボールソケットにおいて、保持チャネルおよび保持脚部、またはそのいずれか一方の、保持軸に直交する断面、特に、保持チャネルおよび保持脚部の、保持軸に直交する断面は丸みを帯びており、好ましくは、その断面は腎臓のような形状である。断面を円状に設けることにより、自由端部が挿入領域から外れて保持チャネル内に屈曲する際に保持脚部が詰まってしまう現象を防ぐことができる。保持脚部が詰まると、自由端部が跳ね返りにくくなるか、または跳ね返ることができなくなる。腎臓のような形状に設けることで、保持脚部の詰まりを防ぎ、機械的安定性が高まる点で特に有利である。
【0031】
本発明にかかるボールジョイント用ボールソケットにおいて、ベース本体は、好ましくは、固定要素の接続領域を受け入れるための窪みを有する。窪みを設けることにより、接続領域を損傷から保護すると共に、ボールソケットを特にコンパクトに構成することができる。
【0032】
本発明にかかるボールジョイント用ボールソケットにおいて、ベース本体は、好ましくは、ポリアミドおよび繊維強化プラスチック、またはそのいずれか一方からなる。このような材料で構成することにより、ベース本体の凹部の支持領域において、ボールヘッドを、安定して、確実に、かつ低摩擦で支持することができる。
【0033】
本発明にかかるボールジョイント用ボールソケットにおいて、固定要素は、好ましくは、プラスチック、特に、ポリオキシメチレンからなる。ポリオキシメチレンの特徴は、回復挙動が良好であり、また、破断伸度が高い点にある。ポリオキシメチレンで構成することにより、固定要素がベース本体に挿入されるときに、取付脚部が弾性的に屈曲する、また、ボールヘッドが支持領域に挿入され初期位置に跳ね返るときに、保持脚部が弾性的に屈曲することから、特に好適であるといえる。
【0034】
本発明にかかるボールジョイント用ボールソケットにおいて、ベース本体は、好ましくは、保持軸に沿って、ベース本体を長さ調節可能なユニットに接続するための接続要素を有する。長さ調節可能なユニットは、好ましくはリニアドライブまたはバネであり、特に好ましくは、スピンドルドライブまたはガス圧力バネである。接続要素は、例えば、保持軸に沿ってユニットに差し込むためのネジ山またはプラグコネクタを含む。
【0035】
ベース本体を、保持軸に沿って長さ調節可能なユニットに接続することで、固定要素を、保持軸に沿って反対側からベース本体に挿入することができる。これにより、ボールヘッドを、ユニット、固定要素、およびボールヘッドまたは使用するツールと互いに干渉することなく、保持軸に直交する挿入方向で支持領域に挿入することができる。
【0036】
(
図1)
図1は、本発明にかかるボールソケット100の概略図を示す。
【0037】
ボールジョイント用ボールソケット100はベース本体200を備え、ベース本体200は、ボールジョイントのボールヘッドを受け入れるための凹部210を有する。凹部210には、ボールヘッドを支持するための支持領域211と、挿入方向ERでボールヘッドを支持領域211内に挿入するための円筒形状の挿入領域212とが設けられる。
【0038】
また、ボールソケット100は固定要素300を備え、固定要素300は、接続領域310と、接続領域310によって相互に接続された2つの保持脚部320とを有する。
図1では、2つの保持脚部320のうち1つのみが示されている。
【0039】
ベース本体200は、挿入領域212に向かって開口する2つの保持チャネル220を有する。保持脚部320は、支持領域211の中心点を通って延在し挿入方向ERに直交する保持軸HAに沿って並ぶように、また、保持脚部320における接続領域310から遠位側の自由端部321が挿入領域212内の部分に位置するように、保持チャネル220内に配置される。
【0040】
保持チャネル220は、挿入領域212から保持軸HAに向かって屈曲しており、ボールヘッドが支持領域211内に挿入されると、保持脚部320の自由端部321は、保持軸HAに向かって屈曲する経路上で、ボールヘッドによって挿入領域212から外れて保持チャネル220内に弾性的に屈曲するため、ボールヘッドが挿入領域212内に挿入された後、自由端部321が跳ね返り、それによりボールヘッドは支持領域211内に固定される。
【0041】
ベース本体200は、保持軸HAに沿って、ベース本体200を長さ調節可能なユニットに接続するための接続要素250を有する。
【0042】
(
図2)
図2は、本発明にかかるボールソケット100の、保持軸HAに沿ったさらなる概略図を示す。
図1に既に示した特徴は上述の通り構成されるため、繰り返しの説明は省略する。
【0043】
図2に示すボールソケット100の保持チャネル220は、保持軸HAと同軸のシリンダジャケットの部分として形成され、保持チャネル220の保持軸HAに直交する断面は丸みを帯びて、特に、腎臓のような形状に設けられる。
【0044】
図2に示す固定要素300は、接続領域310によって保持脚部320に接続される取付脚部330を含み、取付脚部330は、固定要素300が保持軸HAに沿ってベース本体200からする変位に対抗して、固定要素300をベース本体200に取り付けるための取付要素331(
図2では不図示)を有する。
【0045】
また、
図2に示す固定要素300は、ベース本体(200)から取付要素(331)を解放するための解放要素(332)を有し、この解放要素332は、例えばネジ回しを受け入れるスロットである。
【0046】
(
図3)
図3は、本発明にかかるボールソケット100のベース本体200の概略図を示す。
図1~
図2に既に示した特徴は上述の通り構成されるため、繰り返しの説明は省略する。
【0047】
図3に示すベース本体200は、固定要素300の接続領域310を受け入れるための窪み240を有する。
【0048】
(
図4)
図4は、本発明にかかるボールソケット100のベース本体200のさらなる概略図を示す。
図1~
図3に既に示した特徴は上述の通り構成されるため、繰り返しの説明は省略する。
【0049】
図4に示すベース本体200は取付チャネル230を有し、固定要素300の取付脚部330は、保持軸HAに沿って取付チャネル230内に導かれる。取付チャネル230は、例えば、凹部210とは反対側の、ベース本体200を囲む領域に向かって開口している。
【0050】
図4に示すベース本体200は、ベース本体200に対して、固定要素300における取付脚部330の取付要素331を非破壊で解放可能に係止するための係止要素231を有する。この係止要素231は、例えば取付チャネル230上に設けられたバーである。係止要素231を設けることで、例えば、取付要素331がベース本体200から外れるように、取付脚部330が曲がってベース本体200から離れてしまうことを防ぐことができる。
【0051】
(
図5)
図5は、本発明にかかるボールソケット100の固定要素300の概略図を示す。
図1~
図4に既に示した特徴は上述の通り構成されるため、繰り返しの説明は省略する。
【0052】
図5に示す固定要素300の取付脚部330は、固定要素300が保持軸HAに沿ってベース本体200からする変位に対抗して、固定要素300をベース本体200に取り付けるための、例えばラッチ要素などの取付要素331を有する。
【0053】
図5に示す取付脚部330は、保持脚部320と平行に並んで配置される。
【0054】
図5に示す固定要素300における保持脚部320の自由端部321は丸みを帯びている。保持脚部320の保持軸HAに直交する断面は丸みを帯びており、特に、腎臓のような形状である。
【0055】
(
図6)
図6は、本発明にかかるボールソケット100の固定要素300のさらなる概略図を示す。
図1~
図5に既に示した特徴は上述の通り構成されるため、繰り返しの説明は省略する。
【符号の説明】
【0056】
100 ボールソケット
200 ベース本体
210 凹部
211 支持領域
212 挿入領域
220 保持チャネル
230 取付チャネル
231 係止要素
240 窪み
250 接続要素
300 固定要素
310 接続領域
320 保持脚部
321 自由端部
330 取付脚部
331 取付要素
332 解放要素
ER 挿入方向
HA 保持軸