(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132911
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】工作機械、特に旋盤、および工作機械を用いたワーク加工方法
(51)【国際特許分類】
B23B 3/30 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B23B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024024821
(22)【出願日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】23162634
(32)【優先日】2023-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】524067912
【氏名又は名称】デーエムゲー モリ ベルガモ エス. アール. エル.
【氏名又は名称原語表記】DMG MORI Bergamo S.r.l.
【住所又は居所原語表記】Via Gaetano Donizetti 138, 24030 Brembate di Sopra (BG), Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パセリーニ ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ミレシ, ルカ
(72)【発明者】
【氏名】キアッパ, クラウディオ
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045BA05
3C045BA24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】工作機械の加工者またはオペレータが可能な限り良好な方法でアクセスすることができる加工領域を有する、コンパクトで費用対効果が高く、効率的で柔軟な工作機械、特に旋盤または回転フライス機械を提供する。
【解決手段】ワークを受け取るように設けられている少なくとも1つのワークスピンドルと、少なくとも1つのワークスピンドルによって受け取られたワークを共同で加工するように構成されている第1および第2のフライスユニットと、を有する、工作機械、特に旋盤または回転フライス機械に関する。上部および下部工具キャリア支持部に収容される2つ以上のまたは好ましくはそれぞれの工具キャリアアセンブリであって、好ましくはそれぞれがフライスユニットを有する工具キャリアアセンブリは、それに保持された工具を1つ以上の直線方向に独立して移動させるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械、特に旋盤であって、
上部工具キャリア支持部(113)と下部工具キャリア支持部(114)とを有する機械フレーム(110)であって、前記上部工具キャリア支持部(113)および前記下部工具キャリア支持部(114)の各々が、フライスユニットを保持するように構成されている、少なくとも1つの直線状の可動工具キャリアアセンブリを収容する機械フレーム(110)と、
前記上部工具キャリア支持部の工具キャリアアセンブリに配置された第1のフライスユニット(201a)と、
前記下部工具キャリア支持部の工具キャリアアセンブリに配置された第2のフライスユニット(201b)と、
ワーク(203a、203b)を受け取るように設けられている少なくとも1つのワークスピンドル(200a、200b)であって、前記第1のフライスユニットおよび前記第2のフライスユニット(201a、201b)は、前記少なくとも1つのワークスピンドル(200a、200b)によって受け取られた前記ワーク(203a、203b)を共同で加工するように構成されている少なくとも1つのワークスピンドル(200a、200b)と、
を備える、工作機械。
【請求項2】
前記上部工具キャリア支持部および下部工具キャリア支持部によって収容される2つ以上のまたは好ましくはそれぞれの工具キャリアアセンブリであって、好ましくはそれぞれがフライスユニットを有する工具キャリアアセンブリが、それに保持された工具を、前記機械フレームの主延在方向に平行な方向に水平に延在するZ軸方向、前記機械フレームの前記主延在方向に垂直な方向に鉛直に延在するX軸方向、および前記機械フレームの前記主延在方向に対して横方向に水平に延在するY軸方向、の少なくとも1つを含む1つ以上の直線方向に、独立して移動させるように構成されている、
請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記上部工具キャリア支持部および前記下部工具キャリア支持部によって収容される前記工具キャリアアセンブリの1つ以上または各々は、それに保持された工具を、前記機械フレームの前記主延在方向に対して横方向に延在するB軸を中心に回転させるように構成されている、
請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記少なくとも1つのワークスピンドルは、前記工具キャリアアセンブリと共に移動可能であるように、前記上部工具キャリア支持部または前記下部工具キャリア支持部の前記少なくとも2つの工具キャリアアセンブリの少なくとも1つに直接配置されている、
請求項1~3の少なくとも1項に記載の工作機械。
【請求項5】
第1のワークスピンドルは、好ましくは主軸スピンドルであり、前記上部工具キャリア支持部によって収容される第1の工具キャリアアセンブリに配置され、第2のワークスピンドルは、好ましくは対向スピンドルであり、前記下部工具キャリア支持部によって収容される第2の工具キャリアアセンブリに配置されている、
請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記機械フレームは、前記上部工具キャリア支持部と前記下部工具キャリア支持部との間に配置されたスピンドル支持部を有し、前記スピンドル支持部は、前記少なくとも1つのワークスピンドルが配置されている少なくとも1つのスピンドルキャリアを収容する、
先行する請求項の少なくとも1項に記載の工作機械。
【請求項7】
前記第1のフライスユニットが配置されている前記工具キャリアアセンブリは、前記機械フレームの前記主延在方向に対して横方向に延在する第1のB軸を中心に、前記第1のフライスユニットを回転させるように構成され、前記第2のフライスユニットが配置されている前記工具キャリアアセンブリは、前記機械フレームの前記主延在方向に対して横方向に延在する第2のB軸を中心に、前記第2のフライスユニットを回転させるように構成され、前記第1のB軸および前記第2のB軸は、それぞれのフライスユニットの回転軸と交差しないように配置されている、
請求項6に記載の工作機械。
【請求項8】
前記第1のB軸は、前記第1のフライスユニットの前記回転軸から第1の所定の距離に配置され、前記第2のB軸は、前記第2のフライスユニットの前記回転軸から第2の所定の距離に配置されている、
請求項7に記載の工作機械。
【請求項9】
少なくとも1つのタレットおよび/または少なくとも1つのさらなるフライスユニットは、前記上部工具キャリア支持部または前記下部工具キャリア支持部の前記少なくとも2つの工具キャリアアセンブリの少なくとも1つに配置されている、
請求項6~8の少なくとも1項に記載の工作機械。
【請求項10】
前記少なくとも1つのワークスピンドルは、水平に配置されたスピンドル軸を有する、
請求項6~9の少なくとも1項に記載の工作機械。
【請求項11】
前記少なくとも1つのスピンドルキャリアは、前記機械フレームの前記主延在方向に平行な方向に水平に延在するZ軸方向に、前記少なくとも1つのワークスピンドルを移動させるように構成されている、
請求項6~10の少なくとも1項に記載の工作機械。
【請求項12】
主軸スピンドルおよび対向スピンドルは、前記スピンドル支持部が収容するスピンドルキャリアにそれぞれ配置され、前記主軸スピンドルおよび前記対向スピンドルは互いに対向している、
請求項6~11の少なくとも1項に記載の工作機械。
【請求項13】
前記主軸スピンドルおよび前記対向スピンドルは水平に配置されたスピンドル軸をそれぞれ有し、前記対向スピンドルの前記軸は前記主軸スピンドルの前記スピンドル軸と同軸に配置されている、
請求項12に記載の工作機械。
【請求項14】
先行する請求項のいずれかに記載の第1のフライスユニットおよび第2のフライスユニットを備えた工作機械を用いたワーク加工方法であって、
少なくとも1つのスピンドルによって受け取られた前記ワークを共同で加工するステップ、および/または
少なくとも1つの工具キャリアを、B軸を中心に枢動させてB軸移動を達成するステップ、
を含む、ワーク加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、工作機械、特に旋盤または回転フライス機械であって、ワークを受け取るように設けられている少なくとも1つのワークスピンドルと、少なくとも1つのワークスピンドルによって受け取られたワークを共同で加工するように構成されている第1および第2のフライスユニットと、を有する旋盤または回転フライス機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば旋盤またはタレット旋盤等の一般的なタイプの工作機械は、典型的には、互いに向き合って平行または同軸のスピンドル軸を有する、少なくとも2つの回転可能に装着されたワークスピンドルを設けることのできる機械フレームを備え、スピンドルは、工作機械上で加工されるワークを受け取ることができる。加工のための工具(加工ユニット)を提供するために工具キャリアが供給され、工具キャリアは通常、可動工具キャリアスライド上で利用できるようにされ、可動工具キャリアスライドは機械フレームに配置され、1つ以上の線形軸によってワークスピンドルに対して移動することができる。
【0003】
このような工作機械は、例えば欧州特許出願公開第3616832号から知られている。この出願の主題は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
一般に、このタイプの工作機械は、同時に使用可能な工具をできる限り多くして、ワークの効率的な加工が可能になるように工作機械を提供することが必要となる。そこで、上述の工作機械の構造を、効率性および柔軟性の観点からさらに改善させる必要がある。特に、旋盤または回転フライス機械は通常、ワークスピンドルに対して複数の軸に移動可能な1つのフライスユニットを含む。しかしながら、このタイプの工作機械に第2のフライスユニットを組み込むことは、工作機械の高さと、加工者またはオペレータによる加工領域のアクセス性に関する課題につながる。特に、作業場床から、例えば主軸スピンドルのスピンドル軸まで測定される、機械軸までの高さは、アクセス性のために考慮されなければならない。通常、フライスヘッドのベースユニットは、大きなxストロークを提供するために円柱状のキャリア部を有するため、一定の設置スペースが必要となる。これは、機械軸までの高さの増加につながり、アクセス性の低下につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、同時に使用可能な工具をできる限り多くして、可能な場合、工具とワークスピンドルに受け取られた工具との間の相対移動の制御に関して可能な限り高い柔軟性で、ワークのより効率的な加工が可能になるように一般的なタイプの工作機械を改善することである。本発明の特定の目的は、工作機械の加工者またはオペレータが可能な限り良好な方法でアクセスすることができる加工領域を有する、コンパクトで費用対効果が高く、しかも強固な設計を有する、効率的で柔軟な工作機械、特に旋盤または回転フライス機械を提供することである。
【0006】
上記の目的は、独立請求項1の主題によって解決される。さらなる好ましい実施形態は、従属請求項によって説明される。
【0007】
工作機械、特に旋盤または回転フライス機械であって、上部工具キャリア支持部および下部工具キャリア支持部を有する機械フレームであって、上部工具キャリア支持部(場合によっては、「上部」は主軸スピンドルおよび/または補助スピンドルの機械軸(スピンドル軸)の鉛直上方と定義されてもよい)および下部工具キャリア支持部(場合によっては、「下部」は主軸スピンドルおよび/または補助スピンドルの機械軸の鉛直下方として定義されてもよい)の一方または各々が、フライスユニット(フライスヘッド)を保持するようにさらに構成されている、少なくとも1つの直線状の可動工具キャリアアセンブリを収容する機械フレームを備える、工作機械を提供する。直線状の可動工具キャリアアセンブリはまた、タレット、研削砥石、ホブ盤等の他のタイプの加工ユニット(加工ヘッド)を保持するように構成されてもよい。さらなる例において、上部工具キャリア支持部上のフライスヘッドは、下部工具キャリア支持部上のフライスヘッドと、間に主軸スピンドルおよび/または作業スピンドルの機械軸を挟んで対向するように配置されてもよい。
【0008】
工作機械の第1のフライスユニットは、上部工具キャリア支持部の工具キャリアアセンブリに(特に、直接)配置され、第2のフライスユニットは、下部工具キャリア支持部の工具キャリアアセンブリに(特に、直接)配置されている。これは、工作機械がその上部工具キャリア支持部とその下部工具キャリア支持部の両方にフライスユニットを有し、各フライスユニットが工具キャリアアセンブリに装着されることを意味する。
【0009】
さらに、工作機械は、ワークを受け取るように設けられている少なくとも1つのワークスピンドルを備える。第1および第2のフライスユニットは、好ましくは共同で、少なくとも1つのワークスピンドルによって受け取られたワークを加工するように構成されている。1つの有利な例において、主軸スピンドルおよび/または補助スピンドルのワークは、第1のフライスユニットに装着された工具および第2のフライスユニットに装着された工具によって連続して、またはより好ましくは並行して、すなわち同時に加工されてもよい。これに関連して、少なくとも1つのワークスピンドルは、それによって受け取られた単一のワークが、加工のために第1および第2のフライスユニットによって到達され得るように配置されてもよい。例えば、少なくとも1つのスピンドルは、第1および第2のフライスユニットに隣接して配置されてもよく、例えば、それらのフライス刃が、スピンドルによって受け取られたワークを異なる側、例えば反対側で、好ましくは同時に加工できるように配置されてもよい。さらに、複数のワークスピンドルが工作機械に設けられてもよく、それらの各々はワークを受け取るように構成され、ワークは第1および第2のフライスユニットによって共同で加工することができる。
【0010】
「ワークを共同で加工する」という表現は、第1および第2のフライスユニットの両方が、1つの加工段階中に、特に同時に、スピンドルに装着されたワークを加工できることを意味するものとする。これにより、チップ体積が増加し、動作に要する時間を短縮することができる。フライス加工は回転フライス機械の製造工程の大部分を占めるため、2つのフライスユニットを使用することで、製造時間を著しく短縮することができ、したがって工作機械の効率を向上させることができる。
【0011】
一実施形態によれば、上部および下部工具キャリア支持部によって収容される2つ以上のまたは好ましくはそれぞれの工具キャリアアセンブリは、それに保持された工具を、1つ以上の直線方向に独立して移動させてもよい。好ましくは、工具キャリアの各々は、フライスユニットを有し/保持してもよく、最も好ましくは、上部工具キャリア支持部によって収容される工具キャリアの少なくとも1つ、および下部工具キャリア支持部によって収容される工具キャリアの少なくとも1つは、フライスユニットを有し/保持してもよい。さらなる工具キャリアは、タレット、研削砥石、ホブ盤等の他のタイプの工具/加工ユニットを備えてもよく、それらはフライスユニットを有さない各工具キャリアに装着することができる。
【0012】
さらなる非限定的な例において、工作機械は、上部工具キャリア支持部に少なくとも2つの(例えば、第1および第2の(上部)工具キャリアアセンブリ)工具キャリアアセンブリと、下部工具キャリア支持部に少なくとも2つの(例えば、第1および第2の(下部)工具キャリアアセンブリ)工具キャリアアセンブリとを、上部および下部工具キャリア支持部との間に主軸スピンドルおよび/または作業スピンドルの機械軸(スピンドル軸)を挟んだ状態で、含んでいる。これにより、第1の上部工具キャリアアセンブリは、第1の下部工具キャリアアセンブリに直接対向するように配置され、これにより、第2の上部工具キャリアアセンブリは、第2の下部工具キャリアアセンブリに直接対向するように配置されている。効率的な加工、フライスヘッドの格納の削減、およびチップ除去の最適化のために、フライスヘッドが互いに直接対向しない(フライスヘッドおよび/またはその切削工具がしたがって互いに対して水平に変位するように設置される)ように、一例において、好ましくは、第1のフライスヘッドは第1の上部工具キャリアアセンブリに設置され、第2のフライスヘッドは第2の下部工具キャリアアセンブリに配置されている。
【0013】
1つ以上の直線方向は、機械フレームの主延在方向に平行な方向に水平に延在するZ軸方向、機械フレームの主延在方向に垂直な方向に鉛直に延在するX軸方向、および機械フレームの主延在方向に対して横方向に水平に延在するY軸方向の少なくとも1つを含んでもよい。これは、上部工具キャリア支持部に配置された第1のフライスユニットと、下部工具キャリア支持部に配置された第2のフライスユニットの両方が、工作機械の加工領域全体にわたって直線的に移動することができることを意味する。
【0014】
さらに、工作機械は、特に旋盤であってもよく、上部工具キャリア支持部および下部工具キャリア支持部を有する機械フレームであって、上部工具キャリア支持部および下部工具キャリア支持部の各々が、フライスユニットを保持するように構成されている、少なくとも1つの(好ましくは2つ以上の)直線状の可動工具キャリアアセンブリを収容する機械フレームと、上部工具キャリア支持部の工具キャリアアセンブリに配置された第1のフライスユニットと、下部工具キャリア支持部の工具キャリアアセンブリに配置された第2のフライスユニットと、を備え、少なくとも1つのワークスピンドルは、ワークを受け取るように設けられ、第1および第2のフライスユニットは、少なくとも1つのワークスピンドルによって受け取られたワークを、並行してまたは連続して加工するように構成されている。好ましくは、主軸スピンドルは上部工具キャリア支持部に装着され、補助スピンドルは下部工具キャリア支持部に装着される。このような特定の構成により、非常に効率的な加工結果を達成すると同時に、機械の縦寸法(工作機械の高さ)を小さく抑えることができ、それによって工作機械の作業場への設置が容易になる。
【0015】
工作機械、特に旋盤は、上部工具キャリア支持部と、下部工具キャリア支持部と、上部および下部工具キャリア支持部との間に配置されたスピンドルキャリア部と、を有する機械フレームと、機械フレームのスピンドルキャリア部上またはその高さに配置され、ワークを受け取るように構成されている主軸スピンドルを支持するスピンドルキャリアと、水平に配置されたスピンドル軸を有する主軸スピンドルと、1つ以上の工具キャリアであって、各工具キャリアが、機械フレームの上部工具キャリア支持部または下部工具キャリア支持部のいずれかのに配置されている工具キャリアアセンブリに支持されている1つ以上の工具キャリアと、をさらに備え、下部工具キャリア支持部の下部側面は、1つ以上の工具キャリアが装着可能であり、張り出している傾斜を有するように配置されている。各キャリア支持部およびキャリア部は、好ましくはタレットユニットを受け取るように構成されている。
【0016】
さらに、下部工具キャリア支持部の下部側面は、300~330度の間の範囲、特に実質的に315度の張り出し傾斜角で傾斜してもよい。
【0017】
工作機械は、1つ以上または各工具キャリアアセンブリが、主軸スピンドルのスピンドル軸に平行な方向に工具キャリアを水平に移動させるためのZ軸移動方向、主軸スピンドルのスピンドル軸に対して径方向に工具キャリアを移動させるためのX軸移動方向、および主軸スピンドルのスピンドル軸に垂直かつ主軸スピンドルのX軸移動に垂直な方向に工具キャリアを移動させるためのY軸移動方向の少なくとも1つを含む1つ以上の直線方向に、それぞれの工具キャリアを独立して移動させるように構成されてもよい。
【0018】
さらに、説明した態様のいずれかの第1および第2のフライスユニットを備えた工作機械を用いたワーク加工方法であって、少なくとも1つのスピンドルによって受け取られたワークを共同で加工するステップ、および/または少なくとも1つの工具キャリアを、B軸を中心に枢動させてb軸移動を達成するステップを含む、ワーク加工方法が提案される。
【0019】
加工方法は、好ましくは、加工対象のワークを主軸スピンドルに固定して固定したワークを第1および第2のフライスユニットによって加工するステップをさらに含む。
【0020】
前述の態様のいずれかによる方法であって、加工方法は、補助スピンドルに収容される少なくとも1つのワークと主軸スピンドルに好ましくは収容される1つのワークの、少なくとも2つのワークを同時に加工するように構成されている。
【0021】
さらなる発展形態によれば、上部および下部工具キャリア支持部によって収容される工具キャリアアセンブリの1つ以上または各々は、それに保持された工具を、機械フレームの主延在方向に対して横方向に延在するB軸を中心に、Y軸に沿ってまたはY軸と平行に回転させてもよい。言い換えれば、上部工具キャリア支持部に配置された第1のフライスユニットと下部工具キャリア支持部に配置された第2のフライスユニットの両方を、その工具キャリアアセンブリのB軸を中心に回転させることができ、工作機械の柔軟性を高めるさらなる自由度を提供することができる。上述したことは、上部および下部工具キャリア支持部の工具キャリアアセンブリに装着された任意の他の工具にも、同様に適用されることは明らかである。
【0022】
さらなる発展形態によれば、少なくとも1つのワークスピンドルは、上部工具キャリア支持部または下部工具キャリア支持部の少なくとも2つの工具キャリアアセンブリの少なくとも1つに、工具キャリアアセンブリと共に移動可能であるように直接配置されてもよい。これは、少なくとも1つのワークスピンドルが、このタイプの工作機械から知られているように、Z軸方向に移動可能であるだけでなく、工作機械の加工領域全体にわたって直線的に移動することができることを意味する。
【0023】
さらに、少なくとも1つのワークスピンドルは、それが装着され/配置される工具キャリアアセンブリのB軸の周りを回転することができる。したがって、それは第1および第2のフライスユニットに対して柔軟に配置することができ、後者が、受け取られたワークを共同で、特に同時に加工することを可能にする。さらに、少なくとも1つのワークスピンドルを工具キャリアアセンブリに配置することにより、工作機械上のワークスピンドルを収容するための特別な支持部を省略することもできる。したがって、工具キャリアアセンブリの横断経路、特にX軸方向の横断経路を低減することができ、加工領域のアクセス性が高いコンパクトな機械フレームを提供することができる。
【0024】
特に、第1のワークスピンドルは、上部工具キャリア支持部によって収容される第1の工具キャリアアセンブリに配置されてもよく、第2のワークスピンドルは、下部工具キャリア支持部によって収容される第2の工具キャリアアセンブリに配置されてもよい。好ましくは、第1のワークスピンドルは主軸スピンドルとして使用されてもよく、第2のワークスピンドルは対向スピンドルとして使用されてもよい。この場合、第1および第2のワークスピンドルが配置されている工具キャリアアセンブリは、直線的に移動し、必要に応じて、第1および第2のワークスピンドルが互いに対向して配置されるように回転してもよい。
【0025】
特に、第1および第2のワークスピンドルの工具キャリアアセンブリは、第2のワークスピンドルのスピンドル軸が第1のワークスピンドルのスピンドル軸と同軸に配置されるように配置されてもよい。工具キャリアアセンブリの高い可動性により、2つのワークスピンドルを、主軸および対向スピンドルとして容易に配置できる。
【0026】
しかしながら、第1および第2のワークスピンドルを互いに独立して使用することも可能である。例えば、第1のワークは、第1のワークスピンドルによって引き取られ、第2のワークは、第2のワークスピンドルによって引き取られ、第1および第2のフライスユニットは、両方のワークに対して共同で加工ステップを実行してもよい。
【0027】
代替的な実施形態によれば、機械フレームは、上部および下部工具キャリア支持部の間に配置されたスピンドル支持部を有してもよい。スピンドル支持部は、少なくとも1つのワークスピンドルが配置されてもよい少なくとも1つのスピンドルキャリアを収容してもよい。したがって、この実施形態において、少なくとも1つのワークスピンドルは、上述のように上部および/または下部工具キャリア支持部の工具キャリアアセンブリに配置されなくてもよく、少なくとも1つのワークスピンドルは、そのために設けられたスピンドル支持部のスピンドルキャリアに配置されてもよい。これは、上部および下部工具キャリア部の工具キャリアアセンブリが、第1および第2のフライスユニットと、後者を支持する追加の工具/加工ユニットとのために確保されるという利点を有する。
【0028】
さらなる発展形態によれば、第1のフライスユニットが配置されてもよい工具キャリアアセンブリは、機械フレームの主延在方向に対して横方向に延在する第1のB軸を中心に、第1のフライスユニットを回転させてもよく、第2のフライスユニットが配置されてもよい工具キャリアアセンブリは、機械フレームの主延在方向に対して横方向に延在する第2のB軸を中心に、第2のフライスユニットを回転させてもよい。これに関連して、第1および第2のB軸は、それぞれのフライスユニットの回転軸と交差しないように配置されてもよい。言い換えれば、第1および第2のフライスユニットの各々は、対応するB軸を中心に、後者から半径離れて回転してもよい。例えば、フライスユニットは、軸を中心に枢動するように設置されてもよく、軸はY方向の軸(例えば、B軸)であってもよく、フライスユニットは、フライスユニットが偏心して設置されるように、上記軸に対して所定の距離で装着される。このようにして、工具キャリアアセンブリのそのB軸を中心とする回転は、後者(特にフライスユニットの中心)をX軸の方向に同時に移動させる。したがって、第1および第2のフライスユニットが配置される工具キャリアアセンブリのX軸方向の横断経路を削減することができる。したがって、それに装着されたフライスユニットの回転軸と交差しないB軸を有する工具キャリアアセンブリを設けることはまた、加工領域のアクセス性が高い、コンパクトな機械フレームの実現を可能にする。
【0029】
特に有利な例において、上部工具キャリアアセンブリに配置されたフライスユニットは、(上記フライスユニットが設置されている上部工具キャリアアセンブリの)B軸に対して中心に配置され、下部工具キャリアアセンブリに配置されたフライスユニットは、(上記フライスユニットが設置されている下部工具キャリアアセンブリの)B軸に対して偏心して配置されている。したがって、高効率の加工が可能になると同時に、機械軸の高さを最小限に抑えることができ、その結果アクセスの改善が保証される。
【0030】
特に、第1のB軸は、第1のフライスユニットの回転軸から第1の所定の距離に配置されてもよく、第2のB軸は、第2のフライスユニットの回転軸から第2の所定の距離に配置されてもよい。言い換えれば、第1のフライスユニットは、第1のB軸に対して第1の所定の距離を有する第1の半径で第1のB軸を中心に回転してもよく、第2のフライスユニットは、第2のB軸に対して第2の所定の距離を有する第2の半径で第2のB軸を中心に回転してもよい。好ましくは、第1および第2の所定の距離は等しくてもよい。しかしながら、第1の所定の距離が第2の所定の距離よりも小さいことも可能であり、またその逆も可能である。
【0031】
さらなる発展形態によれば、少なくとも1つのタレットおよび/または少なくとも1つのさらなるフライスユニットが、上部工具キャリア支持部または下部工具キャリア支持部の少なくとも2つの工具キャリアアセンブリのうちの少なくとも1つに配置されてもよい。上述のように、少なくとも1つのワークスピンドルを、それ自体のスピンドルキャリアを備えたスピンドル支持部に設けることは、上部および下部工具キャリア支持部の工具キャリアアセンブリが加工ユニットのために確保されるという利点を有する。したがって、タレットおよび追加のフライス工具によって第1および第2のフライス工具を支持することが可能である。
【0032】
さらなる発展形態によれば、少なくとも1つのワークスピンドルは、水平に配置されたスピンドル軸を有してもよい。これは、ワークスピンドルが、スピンドル支持部によって収容されるスピンドルキャリアに配置されている場合に当てはまり得る。少なくとも1つのスピンドルキャリアは、機械フレームの主延在方向に平行な方向に水平に延在するZ軸方向に、少なくとも1つのワークスピンドルを移動させてもよい。好ましくは、少なくとも1つのスピンドルは、第1および第2のフライスユニットだけでなく、上部および下部工具キャリア支持部の工具キャリアアセンブリに配置された追加のタレットおよび/またはフライス工具とも組み合わせてもよい。上記工具キャリアアセンブリの高い可動性により、少なくとも1つのスピンドルをZ軸方向にのみ移動させれば十分である。
【0033】
さらなる発展形態によれば、主軸スピンドルおよび対向スピンドルはそれぞれ、スピンドル支持部によって収容されるスピンドルキャリアに配置されてもよく、主軸スピンドルおよび対向スピンドルは互いに向き合ってもよい。主軸スピンドルおよび対向スピンドルは両方とも、ワークを受け取るように構成されてもよい。特に、ワークは、まずその外面/外輪郭を加工するために、主軸スピンドルによって受け取られてもよく、次いで、ワークを引き継ぐために、例えば、その後端を加工するために、対向スピンドルを、主軸スピンドルに向かって移動させてもよい。
【0034】
さらなる発展形態によれば、主軸スピンドルおよび対向スピンドルは、水平に配置されたスピンドル軸をそれぞれ有してもよく、対向スピンドルの軸は主軸スピンドルのスピンドル軸と同軸に配置されてもよい。これにより、ワークを引き継いだ後に、対向スピンドルを、例えばX軸方向に調整することなく、主軸および対向スピンドル上のワークの精密な加工が可能となる。
【0035】
さらなる有利な例において、第1の工具ホルダマガジンは、上部工具キャリアアセンブリに設置されたフライスユニットと平行に、好ましくは作業場床に対して同じ鉛直距離で(すなわち、同じ高さに)配置され、同時に、第2のツールホルダマガジンは、下部工具キャリアアセンブリに設置されたフライスユニットと平行に、好ましくは同じ高さに配置されている。したがって、別個の工具ホルダマガジンを備えた別個のフライスユニットを用いた、高効率で独立した加工が可能となり、同時に、機械軸の高さを最小限に抑えることができるので、アクセスの改善が保証される。さらなる発展形態において、アクセスおよび独立性をさらに改善するために、第1の工具ホルダマガジンは主軸スピンドルに近接して(例えば鉛直上方)配置され、第2の工具ホルダマガジンは補助スピンドルに近接して(例えば鉛直下方)配置されている(例えば、第1および第2の工具ホルダマガジンは、互いに向き合わないように配置されてもよい)。
【0036】
要約すると、本発明に係る工作機械は、プロセッサまたはオペレータにとって加工領域の良好なアクセス性を備えた、特に鉛直方向においてコンパクトな設計を提供し、各々が上部および下部工具キャリア部の工具キャリアアセンブリに配置された2つのフライスユニットを同時に使用することによって、ワークのより効率的な加工を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の例示的な一実施形態に係るワークスピンドルおよびフライスユニットの配置を例示的に示す。
【
図2】
図1に示されるスピンドルおよびフライスユニットの配置を有する工作機械の概略斜視図を例示的に示す。
【
図3】
図2の工作機械の機械フレームの概略斜視図を例示的に示す。
【
図4】本発明の他の例示的な一実施形態に係るワークスピンドルおよびフライスユニットの配置を例示的に示す。
【
図5】
図4に示されるスピンドルおよびフライスの配置が適用可能な工作機械を例示的に示す。
【
図6】
図5の工作機械の機械フレームの概略斜視図を例示的に示す。
【
図7a】従来のフライスユニットおよび
図4に示されるフライスユニット間の、X軸方向における所要の横断経路の比較を示す。
【
図7b】従来のフライスユニットおよび
図4に示されるフライスユニット間の、X軸方向における所要の横断経路の比較を示す。
【
図8】本発明のさらに他の例示的な一実施形態に係るワークスピンドルおよびフライスユニットの配置を例示的に示す。
【0038】
〔好ましい実施例の詳細な説明〕
以下、本発明の実施例について、例示の図面を参照して詳細に説明する。実施例の特徴は、全体的または部分的に組み合わせてもよく、本発明は、説明される実施例に限定されない。図中、同一の要素には同一の符号を付しているため、必要な場合を除き、重複する説明は省略する。
【0039】
図1は、本発明の例示的な一実施形態に係るワークスピンドルおよびフライスユニットの配置を例示的に示す。具体的には、図示の配置は、互いに対向して配置されている第1のワークスピンドル200aと第2のワークスピンドル200b、ならびに第1のフライスユニット201aと第2のフライスユニット201bを含む。
図1の左側に示される第1のワークスピンドル200aは、主軸スピンドルとして機能してもよく、
図1の右側に示される第2のワークスピンドル200bは、対向スピンドルとして機能してもよい。しかしながら、2つのワークスピンドル200a、200bは、それぞれが第1および第2のフライスユニット201a、201bによって加工されるワークを受け取るように設けられた、2つの独立したワークスピンドルを構成することも可能である。図示のワークスピンドル200a、200bおよびフライスユニット201a、201bに付され、3つの空間方向を指す太い矢印は、上記要素の各々が加工領域全体にわたって直線的に移動することができることを示す。関連する座標系を
図1の上部に示す。さらに、各ワークスピンドル200a、200bおよび各フライスユニット201a、201bは、そのB軸(詳細には図示せず)を中心に回転させることができる。
【0040】
図示の例において、第1のフライス工具201aは第2のスピンドル200bの上方に配置され、第2のフライス工具は第1スピンドル200aの下方に配置されている。また、第1の工具ホルダマガジン202aが第1のスピンドル200aの上方に配置され、第2の工具ホルダマガジン202bが第2のスピンドル200bの下方に配置されている。
【0041】
さらに、
図1において、第1のフライスユニット201aは、第2のワークスピンドル200bによって受け取られた第2のワーク203bを加工する一方、第2のフライスユニット201bは、第1のワークスピンドル200aによって受け取られた第1のワーク203aを加工する途中であることが示されている。しかしながら、第1および第2のフライスユニット201a、201bをZ軸方向に動かすことによって、第1のフライスユニット201aが第1のワークスピンドル200aによって受け取られた第1のワーク203aを加工し、第2のフライスユニット201bが第2のワークスピンドル200bによって受け取られた第2のワーク203bを加工することも可能である。また、
図1から、両方のフライスユニット201a、201bが、第1のワーク203aおよび第2のワーク203bの両方を共同で加工することが可能であることも推測することができる。
【0042】
図2は、
図1に示されるスピンドルおよびフライスユニットの配置を有する工作機械100の概略斜視図を例示的に示す。図示の工作機械100は、例示的には回転フライス機械として実現され、4つの工具キャリアアセンブリ150a~150dを支持する機械フレーム110を備える。各工具キャリアアセンブリ150a~150dがX、Y、およびZ軸方向に直線的に移動できるそれぞれの軸は、二重矢印で示されている。さらに、工具キャリア150a~150dのうちの1つの上に/工具キャリア150a~150dのうちの1つに装着された工具/加工ユニットは、そのB軸(詳細には図示せず)を中心に回転させることができる。これは、それぞれの工作機械が、Y軸を中心に回転させることができることを意味する。関連する座標系を
図2の上部に示す。
【0043】
図2に示される例において、第1のワークスピンドル200aは、第1の工具キャリアアセンブリ150aに割り当てられ、第1のフライスユニット201aは、第2の工具キャリアアセンブリ150b(それぞれの矢印によって示される)に割り当てられ、第1および第2の工具キャリアアセンブリ150a、150bは、機械フレーム110の上部工具キャリア支持部113に配置されている。したがって、第2のフライスユニット201bは、第3の工具キャリアアセンブリ150cに割り当てられ、第2のワークスピンドル200bは、第4の第3の工具キャリアアセンブリ150d(それぞれの矢印によっても示される)に割り当てられ、第3および第4の工具キャリアアセンブリ150c、150dは、機械フレーム110の下部工具キャリア支持部114に配置されている。
【0044】
図3は、
図2の工作機械100の機械フレーム110の概略斜視図を例示的に示す。同図に示される機械フレーム110は、2つの機械スタンド部111a、111bで立ち、機械フレーム110のキャリア支持部は、機械スタンド部111a、111bの間に形成され、これらによって保持されている。図示の機械フレーム110は、上部工具キャリア支持部113および下部工具キャリア支持部114を含み、これらは両方とも、2つの機械スタンド部111aおよび111bの間に水平に延在する。機械フレーム110の上部工具キャリア支持部113の上側表面は傾斜した斜面に配置され、機械フレーム110の下部工具キャリア支持部114の下側表面は、張り出している傾斜した斜面に配置されている。
【0045】
工作機械100の加工領域において、機械フレーム110の上側にある工具キャリアアセンブリ150a、150bをスライド可能に支持するため、機械フレーム110の上部工具キャリア支持部113は、水平に延在するガイド113aを有する。したがって、工作機械100の加工領域において、機械フレーム110の下側にある工具キャリアアセンブリ150c、150dをスライド可能に支持するため、機械フレーム110の下部工具キャリア支持部114は、水平に延在するガイド114aを有する。
【0046】
図2に示すように、各工具キャリアアセンブリ150a~150dは、機械フレーム110の上部および下部工具キャリア支持部113または114のガイド113aまたは114aにスライド可能に装着されるように構成されている、キャリア支持スライド151を含む。したがって、上部工具キャリア支持部113の頂部でガイド113aに装着されたとき、キャリア支持スライド151は、Z軸方向にガイド113a上でこれに沿って水平に移動するように構成されている。他方、張り出している下部工具キャリア支持部114でガイド114aに吊り下げ状態で装着されたとき、キャリア支持スライド151は、Z軸方向にガイド113aに沿って水平に移動するように構成されている。
【0047】
工具キャリアアセンブリ150a~150dのキャリア支持スライド151の前側で、工作機械100の加工領域に面して、工具支持スライド152がキャリア支持スライド151にスライド可能に装着されている。工具支持スライド152は、キャリア支持スライド151の前面にX軸方向に配置された鉛直ガイド上で、これに沿って鉛直に移動するように構成されている。
【0048】
さらに、工具キャリアアセンブリ150a~150dの工具支持スライド152の前側で、工作機械100の加工領域に面して、工具支持スライド152の前側から工作機械100の加工領域内にY軸方向に延在する水平配置工具キャリアクイル(図示せず)が、工具キャリアクイルの前側端部で工具/加工ユニットを装着するように設けられてもよい。工具キャリアクイルは、工作機械100の前部に向かってY軸に水平に制御可能に移動するように、工具支持スライド152に装着することができる。さらに、工具キャリアクイルは、工具キャリアアセンブリ150a~150dに装着された工具の、工具キャリアクイルの水平配置長手軸の周り、すなわち、Y軸方向に延在する回転軸を中心とする回転運動を制御するように、回転可能に駆動されるB軸をさらに含むように構成されてもよい。
【0049】
上記の説明から明らかなように、
図1に示すワークスピンドル200a、200bおよびフライスユニット201a、201bの配置を工作機械100の工具キャリアアセンブリ150a~150dに割り当てることによって、
図1に関連して説明したワークスピンドル200a、200bおよびフライスユニット201a、201bの直線および回転運動に関する自由度を実現することができる。例えば、第1のワークスピンドル200aを主軸スピンドルとして実施するために、第1の工具キャリアアセンブリ150aの工具支持スライド152は、キャリア支持スライド151の鉛直ガイド上でX軸方向下方に、例えばその最下位置に到達するまで、移動することができる。他方で、主軸スピンドルと同軸に配置される対向スピンドルとして第2のワークスピンドル200bを実施するため、第4の工具キャリアアセンブリ150dの工具支持スライド152は、キャリア支持スライド151の鉛直ガイド上でX軸方向上方に、例えばその最高位置に到達するまで、移動することができる。このように、主軸スピンドルと対向スピンドルとを同軸で互いに対向して配置することができる。キャリア支持スライド151上の鉛直ガイドの長さに応じて、主軸および対向スピンドルは、必要な位置を達成するため、第1および第4の工具キャリアアセンブリ150a、150dのそれぞれのB軸を中心にさらに回転させてもよい。
【0050】
図4は、本発明の他の例示的な一実施形態に係るワークスピンドルおよびフライスユニットの配置を例示的に示す。図示の配置は、Z軸方向にのみ移動可能な第1および第2のワークスピンドル200a、200bを備えるところで、
図1に示される配置とは異なる。
図4の左側に示される第1のワークスピンドル200aは主軸スピンドルとして機能し、
図4の右側に示される第2のワークスピンドル200bは対向ピンドルとして機能してもよい。
【0051】
さらに、第1および第2のフライスユニット201a、201bのB軸201aa、201baは、それぞれのフライスユニット201a、201bの回転軸と交差しないように配置される(すなわち、アクセス性の改善と、スピンドルの機械軸またはマシニング軸を作業場床の近くに維持するための、フライスユニットの偏心配置、好ましくは、下部に設置されたフライスユニットのみが偏心して配置される)。したがって、第1および第2のフライスユニット201a、201bの各々は、対応するB軸201aa、201baを中心に、後者から半径rだけ離れて回転してもよい。このようにして、各フライスユニット201a、201bのそのB軸201aa、201baを中心とした回転は、
図7aおよび
図7bに関連して以下で説明するように、同時に後者をX軸の方向に移動させる。
【0052】
図5は、
図4に示されるスピンドルおよびフライスの配置が適用可能な工作機械100を例示的に示し、
図6は、その機械フレーム110の概略斜視図を例示的に示す。
【0053】
図示の工作機械100は、機械フレーム110が、その前方において、上部支持部113と下部支持部114との間に形成され2つの機械スタンド部111aと111bとの間に水平に延在するスピンドル支持部112を含む点を除き、
図2に示す工作機械100と同一である。スピンドル支持部112上/スピンドル支持部112には、主軸スピンドル200aを保持する主軸スピンドルキャリア120と、対向スピンドル200bを保持する対向スピンドルキャリア140と、補助スピンドル131を保持する補助スピンドルキャリア130とが配置されている。スピンドル支持部112は、鉛直に配置された前部表面を有し、それには、補助スピンドルキャリア130および対向スピンドルキャリア140をZ軸方向に摺動可能に支持するために、水平に延在するガイド112aが適用される。
【0054】
主軸スピンドルキャリア120が支持するワーク保持主軸スピンドル200aは、バー等の細長いワークを受け取り、受け取ったワークの、主軸スピンドル200aのスピンドル軸周りの回転を駆動するように構成されている。図示の例において、主軸スピンドル200aは、そのスピンドル軸が水平方向(Z軸方向)に延在する状態で配置されている。
【0055】
対向スピンドルキャリア140は、ガイド112a上でスピンドル支持部112にスライド可能に装着されてもよい。機械フレーム110は、ワーク保持対向スピンドル200bを含む対向スピンドルキャリア140を保持しており、ワーク保持対向スピンドル200bは、バーなどの細長いワークを受け取り、対向スピンドル200bのスピンドル軸周りの受け取ったワークの回転を駆動するように構成されている。例示的に、対向スピンドル200bは、そのスピンドル軸が水平方向(Z軸方向)に延在する状態で配置されている。
【0056】
図示の例において、対向スピンドル200bは、水平方向に延在するそのスピンドル軸が主軸スピンドル200aのスピンドル軸に対して同軸に配置された状態で、主軸スピンドル200aに対向して配置されている。したがって、対向スピンドル200bは、例えばワークの後端部を加工できるように、主軸スピンドル200aに向かって水平に移動し、主軸スピンドル200aに受け取られたワークを受け取り、主軸スピンドル200aからワークを引き継ぐことができる。
【0057】
さらに例示的に、任意の補助スピンドルキャリア130は、主軸スピンドルキャリア120と対向スピンドルキャリア140との間でスピンドル支持部112にスライド可能に装着され、スピンドル支持部112でガイド112aにおいて、すなわち対向スピンドルキャリア130を支持する同じガイド112aにおいて、水平に案内される。
【0058】
機械フレーム110は、補助スピンドル131を含む(または少なくとも支持する)任意の補助スピンドルキャリア130を保持し、補助スピンドル131は、バー等の細長いワークを受け取り、補助スピンドル131のガイド回転軸周りの受け取ったワークの回転を支持および/または案内するように構成されている。例示的に、補助スピンドル131は、そのガイド回転軸(補助スピンドル軸)が水平方向(Z軸方向)に延在する状態で配置されている。補助スピンドル131は、ワークを固定/保持し、ワークの回転を駆動するスピンドルとして作用することができ、また、主軸および対向スピンドルの一方または両方に固定したワークの回転を案内する、回転ガイドブッシュとして作用することもできる。
【0059】
また、補助スピンドル131は、例えば、工具によって加えられる力によるワークの曲がりを防止するために、または対向スピンドル200bに受け取られたワークを受け取り、それを案内および/または支持するために、例えば、工具によって加えられる力によるワークの曲がりを防止するために、主軸スピンドル200aと対向スピンドル200bとの間の範囲で水平に移動し、主軸スピンドル200aに受け取られたワークを引き継いで、それを案内および/または支持することができる。
【0060】
上述の主軸、対向および補助スピンドルの機能は、それぞれのワークスピンドル200a、131、200bが、特定のスピンドルキャリア120、130、140に装着される代わりに、
図2に関連して説明したように工具キャリアアセンブリ150a~150dに装着される場合にも付与されることは明らかである。
【0061】
図7aおよび
図7bは、従来のフライスユニットおよび
図4に示すフライスユニットにおける、X軸方向における所要の横断経路の比較を例示的に示す。これに関連して、
図7aは、スピンドル軸2000がZ軸方向に延在するワーク203を備えた、水平に配置されたワークスピンドル200を示す。フライス工具201は、ワークスピンドル200a、200bに対して第1および第2の位置に配置され、第1の位置は、フライスユニット201を実線で示すことで示され、第2の位置は、フライスユニット201を点線で示すことで示される。
【0062】
図7aに示されるフライスユニット200は、フライスユニット201の回転軸2010と交差するB軸201aaを有する。第1の位置において、フライスユニット201は、ワークスピンドル200に対して鉛直に配置され、これは、その回転軸2010がX軸方向に延在することを意味する。第1の位置は、フライスユニット201によってワークの外表面を加工するために使用されてもよい。
【0063】
第2の位置において、フライスユニット201は、ワークスピンドル200と同軸に配置され、これは、その回転軸2010がワークスピンドル200の軸と同じ軸に沿ってZ軸方向に延在することを意味する。第2の位置は、フライスユニット201によってワークの先端部を加工するために使用されてもよい。フライスユニット201の位置を第1の位置から第2の位置に変化させるためには、後者を90度回転させ、距離Δx1だけX軸方向に直線的に移動させなければならない。
【0064】
対照的に、
図7bは、フライスユニット201の回転軸2010と交差しないB軸201aaを有するフライスユニット201を示す。この場合、B軸は、フライスユニット201の回転軸2010から所定の距離だけ離れて配置され、これは、フライスユニット201が、フライスユニット201の回転軸2010に対して所定の距離を有する半径rでB軸201aaを中心に回転することを意味する。フライスユニット201の位置を第1の位置から第2の位置に変更するとき、フライスユニット201は、まず、B軸201aaを中心に90度回転してもよい。この際、フライスユニット201は既にX軸方向に一定距離だけ移動している。したがって、フライスユニット201が第2の位置に到達するためにX軸方向に移動しなければならない追加の距離Δx2は、距離Δx1よりも短い。したがって、コンパクトな工作機械100を提供するため、フライス工具201のX軸方向の横断経路、例えば、
図5に示す工具支持スライド152の横断経路を短くすることができる。
【0065】
図8は、本発明のさらに他の例示的な一実施形態に係るワークスピンドルおよびフライスユニットの配置を例示的に示す。図示の配置は、2つの追加のタレット204a、204bを備えるところで、
図4に示す配置とは異なる。第1のタレット204aは、
図8の右側に示される第2のワークスピンドル200bの上方に配置され、第2のワークスピンドル200bは対向スピンドルとして機能してもよい。第2のタレット204bは、
図8の左側に示される第1のワークスピンドル200bの下方に配置され、第1のワークスピンドル200bは主軸スピンドルとして機能してもよい。第1および第2のタレット204a、204bは、ドリル、フライス刃、チゼル等の複数の異なる工具を備えていてもよい。追加のタレット204a、204bは、1つの加工段階において追加の加工工程を実行することを可能にし、その結果、工作機械100の効率をさらに向上させることができる。
【0066】
図8に示すワークスピンドル、フライス工具およびタレットの配置は、ワークスピンドル200a、200b、131を収容するための特定のスピンドルキャリア120、130、140を備えたスピンドル支持部112を提供する、
図5の機械ユニット100に適用することができる。この場合、上部および下部工具キャリア部113、114の工具キャリアアセンブリ150a~150dは、第1および第2のフライスユニット201a、201b、ならびに後者を支持する追加のタレット204a、204bのために確保される。
【0067】
いくつかの例示的な態様が上記で説明されたが、このような態様は、広範な発明の単なる例示であり、これに対する限定ではないこと、そして上記段落に明記されたものに加えて、様々な他の変更、組み合せ、省略、修正、および置換が可能であるため、例示的な態様は、上記で示され説明された特定の構造および配置に限定されないことが理解されるべきである。
【0068】
説明した態様の様々な適合、修正、および/または組合せを構成することができるということを当業者は理解するであろう。したがって、本明細書で具体的に説明した以外のようなさらなる態様を実施することができるということが理解されるべきである。本開示の観点から、本明細書で説明した異なる態様を組み合わせて、本開示の他の態様を形成することができるということも当業者は理解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部工具キャリア支持部(113)と下部工具キャリア支持部(114)とを有する機械フレーム(110)であって、前記上部工具キャリア支持部(113)および前記下部工具キャリア支持部(114)の各々が、フライスユニットを保持するように構成されている、少なくとも1つの直線状の可動工具キャリアアセンブリを収容する機械フレーム(110)と、
前記上部工具キャリア支持部の工具キャリアアセンブリに配置された第1のフライスユニット(201a)と、
前記下部工具キャリア支持部の工具キャリアアセンブリに配置された第2のフライスユニット(201b)と、
ワーク(203a、203b)を受け取るように設けられている少なくとも1つのワークスピンドル(200a、200b)であって、前記第1のフライスユニットおよび前記第2のフライスユニット(201a、201b)は、前記少なくとも1つのワークスピンドル(200a、200b)によって受け取られた前記ワーク(203a、203b)を共同で加工するように構成されている少なくとも1つのワークスピンドル(200a、200b)と、
を備える、工作機械。
【請求項2】
前記上部工具キャリア支持部および下部工具キャリア支持部によって収容される2つ以上の工具キャリアアセンブリであって、それぞれがフライスユニットを有する工具キャリアアセンブリが、それに保持された工具を、前記機械フレームの主延在方向に平行な方向に水平に延在するZ軸方向、前記機械フレームの前記主延在方向に垂直な方向に鉛直に延在するX軸方向、および前記機械フレームの前記主延在方向に対して横方向に水平に延在するY軸方向、の少なくとも1つを含む1つ以上の直線方向に、独立して移動させるように構成されている、
請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記上部工具キャリア支持部および前記下部工具キャリア支持部によって収容される前記工具キャリアアセンブリの1つ以上または各々は、それに保持された工具を、前記機械フレームの主延在方向に対して横方向に延在するB軸を中心に回転させるように構成されている、
請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記少なくとも1つのワークスピンドルは、前記工具キャリアアセンブリと共に移動可能であるように、前記上部工具キャリア支持部または前記下部工具キャリア支持部の前記少なくとも2つの工具キャリアアセンブリの少なくとも1つに直接配置されている、
請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項5】
第1のワークスピンドルは、主軸スピンドルであり、前記上部工具キャリア支持部によって収容される第1の工具キャリアアセンブリに配置され、第2のワークスピンドルは、対向スピンドルであり、前記下部工具キャリア支持部によって収容される第2の工具キャリアアセンブリに配置されている、
請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記機械フレームは、前記上部工具キャリア支持部と前記下部工具キャリア支持部との間に配置されたスピンドル支持部を有し、前記スピンドル支持部は、前記少なくとも1つのワークスピンドルが配置されている少なくとも1つのスピンドルキャリアを収容する、
請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項7】
前記第1のフライスユニットが配置されている前記工具キャリアアセンブリは、前記機械フレームの主延在方向に対して横方向に延在する第1のB軸を中心に、前記第1のフライスユニットを回転させるように構成され、前記第2のフライスユニットが配置されている前記工具キャリアアセンブリは、前記機械フレームの主延在方向に対して横方向に延在する第2のB軸を中心に、前記第2のフライスユニットを回転させるように構成され、前記第1のB軸および前記第2のB軸は、それぞれのフライスユニットの回転軸と交差しないように配置されている、
請求項6に記載の工作機械。
【請求項8】
前記第1のB軸は、前記第1のフライスユニットの前記回転軸から第1の所定の距離に配置され、前記第2のB軸は、前記第2のフライスユニットの前記回転軸から第2の所定の距離に配置されている、
請求項7に記載の工作機械。
【請求項9】
少なくとも1つのタレットおよび/または少なくとも1つのさらなるフライスユニットは、前記上部工具キャリア支持部または前記下部工具キャリア支持部の前記少なくとも2つの工具キャリアアセンブリの少なくとも1つに配置されている、
請求項6に記載の工作機械。
【請求項10】
前記少なくとも1つのワークスピンドルは、水平に配置されたスピンドル軸を有する、
請求項6に記載の工作機械。
【請求項11】
前記少なくとも1つのスピンドルキャリアは、前記機械フレームの主延在方向に平行な方向に水平に延在するZ軸方向に、前記少なくとも1つのワークスピンドルを移動させるように構成されている、
請求項6に記載の工作機械。
【請求項12】
主軸スピンドルおよび対向スピンドルは、前記スピンドル支持部が収容するスピンドルキャリアにそれぞれ配置され、前記主軸スピンドルおよび前記対向スピンドルは互いに対向している、
請求項6に記載の工作機械。
【請求項13】
前記主軸スピンドルおよび前記対向スピンドルは水平に配置されたスピンドル軸をそれぞれ有し、前記対向スピンドルの前記スピンドル軸は前記主軸スピンドルの前記スピンドル軸と同軸に配置されている、
請求項12に記載の工作機械。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の第1のフライスユニットおよび第2のフライスユニットを備えた工作機械を用いたワーク加工方法であって、
少なくとも1つのスピンドルによって受け取られた前記ワークを共同で加工するステップ、および/または
少なくとも1つの工具キャリアを、B軸を中心に枢動させてB軸移動を達成するステップ、
を含む、ワーク加工方法。
【外国語明細書】