(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132912
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】織物および被服
(51)【国際特許分類】
D03D 15/41 20210101AFI20240920BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20240920BHJP
D03D 15/47 20210101ALI20240920BHJP
D03D 15/44 20210101ALI20240920BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20240920BHJP
D01F 8/14 20060101ALI20240920BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20240920BHJP
A41D 31/04 20190101ALI20240920BHJP
【FI】
D03D15/41
D03D15/283
D03D15/47
D03D15/44
D02G3/36
D01F8/14 B
A41D31/00 503G
A41D31/00 502B
A41D31/04 C
A41D31/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026217
(22)【出願日】2024-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2023039387
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】亀本 千草
(72)【発明者】
【氏名】主森 敬一
【テーマコード(参考)】
4L036
4L041
4L048
【Fターム(参考)】
4L036MA05
4L036MA15
4L036MA16
4L036MA17
4L036MA33
4L036MA39
4L036MA40
4L036UA23
4L041AA07
4L041BA03
4L041BA06
4L041BA09
4L041BA16
4L041BC20
4L041BD12
4L041CA05
4L041CA11
4L041CA16
4L041DD10
4L041DD11
4L041EE15
4L048AA20
4L048AA34
4L048AA37
4L048AA56
4L048AB07
4L048AB11
4L048AB12
4L048AB18
4L048AB19
4L048AC00
4L048BA01
4L048CA00
4L048CA15
4L048DA01
4L048EA00
4L048EB05
(57)【要約】
【課題】長期間の着用により発生するテカリを抑制する織物を提供する。
【解決手段】芯糸および鞘糸を備える芯鞘構造のポリエステルマルチフィラメントを有し、芯糸は鞘糸より糸長が短く、鞘糸は芯糸より細繊度であり、芯糸と鞘糸の本数比率(芯糸の本数:鞘糸の本数)が1:6~1:24であり、ポリエステルマルチフィラメントの撚糸数Tとマルチフィラメントの繊度Dから式1で求められる撚係数Kが0~100であることを特徴とする、織物。
K=T/(10000/D)1/2 (式1)
(K:撚係数、T:撚糸数(T/m)、D:繊度(dtex))
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯糸および鞘糸を備える芯鞘構造のポリエステルマルチフィラメントを有し、
前記芯糸は、前記鞘糸より糸長が短く、
前記鞘糸は、前記芯糸より細繊度であり、
前記芯糸と前記鞘糸の本数比率(芯糸の本数:鞘糸の本数)が1:6~1:24であり、
前記ポリエステルマルチフィラメントの撚糸数Tとマルチフィラメントの繊度Dから下記式1で求められる撚係数Kが0~100であることを特徴とする、織物。
K=T/(10000/D)1/2 (式1)
(K:撚係数、T:撚糸数(T/m)、D:繊度(dtex))
【請求項2】
前記鞘糸が2種類のポリエステルで形成されている、請求項1に記載の織物。
【請求項3】
前記鞘糸の単糸繊度が0.1dtex以上2.0dtex以下である、請求項1または2に記載の織物。
【請求項4】
経糸または緯糸が浮き糸となる織組織であり、かつ前記芯鞘構造のポリエステルマルチフィラメントが浮き糸として配置される、請求項1または2に記載の織物。
【請求項5】
初期撥水性が3級以上である、請求項1または2に記載の織物。
【請求項6】
下記式2によって求められる低圧域圧縮率Crが5%以上30%以下である、請求項1または2に記載の織物。
Cr=(T0-T1)/T0×100 (式2)
(Cr:低圧域圧縮率(%)、T0:下限圧力0.2kPa印加時の織物厚さ(mm)、T1:一定圧力4.9kPa印加時の織物厚さ(mm))
【請求項7】
紫外線カーボンアーク灯光による耐光堅ろう度が4級以上である、請求項1または2に記載の織物。
【請求項8】
アゾ系分散染料とキノン系分散染料とを含有し、前記アゾ系分散染料と前記キノン系分散染料との合計含有量に対する前記キノン系分散染料の含有量が30質量%以上70質量%以下である、請求項1または2に記載の織物。
【請求項9】
請求項1または2に記載の織物を含む、被服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
長期間の被服着用により発生するテカリを抑制する織物およびそれを含む被服に関する。
【背景技術】
【0002】
スーツおよび学生服等の被服を長期にわたって着用すると、しばしば被服の局部(肘、臀部、ひざ等)に特有の光沢、いわゆるテカリが発生することがある。テカリは、被服が椅子や他の繊維製品等と接触する際に発生する摩擦や押圧によって繊維表面が摩耗して平滑化し、それに起因して可視光が鏡面反射により発生すると言われている。テカリが発生すると、被服に使用感が出てしまうこと、また局所的な光沢が目立つことによって見た目の品位が著しく損なわれることから、テカリを抑制することが望まれている。
【0003】
被服のテカリを抑制する方法として、繊維製品用のテカリ発生抑制剤を用いる方法が提案されている。しかしながら、テカリ発生抑制剤は、繊維の並びをほぐすもの、また表面の滑りをよくするものであるため、繊維を根本から改質するものではないことに加えて、テカリ発生抑制効果の耐久性に乏しい。さらに、その効果も一時的なものであるため、繰り返し処理をする必要がある。
【0004】
一方、被服のテカリ発生抑制効果を持続させるアプローチとして、織物自体にテカリ抑制機能を持たせることが提案されている。
【0005】
特許文献1には、凹面率を規定した5~12葉の異形断面のポリエステルフィラメント糸の高配向未延伸糸を延伸仮撚加工し、伸長特性を規定したテカリ防止織物が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、自己伸長性のポリエステル中間配向糸を鞘糸とし、該中間配向糸の沸水収縮率よりも少なくとも3%高い沸水収縮率を有するポリエステル系の高収縮糸を芯糸として配した空気交絡糸から得られた仮撚加工糸であって、その全捲縮率が5%以下の低水準にあることを特徴とする嵩高複合仮撚加工糸が提案されており、当該仮撚加工糸を用いることでテカリ発生を抑制する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1-156542号公報
【特許文献2】特開2000-314038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、織物の最表面に太繊度の糸が露出する構成であるため、被服の着用期間が長くなった場合には、繊維表面が摩耗して平滑化する。そのため、異形断面糸が有していたテカリ抑制機能が十分に発揮されず、織物のテカリ抑制機能が不十分な課題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の織物については、テカリ抑制機能を向上させるために鞘糸を芯糸より細繊度化しているが、2デニールから4デニールという太さであるため、テカリを抑制するには不十分である。
【0010】
上記の課題に鑑み、本発明は、長期間の着用により発生するテカリを抑制する織物およびそれを含む被服を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するために次の構成を有する。
(1)芯糸および鞘糸を備える芯鞘構造のポリエステルマルチフィラメントを有し、前記芯糸は、前記鞘糸より糸長が短く、前記鞘糸は、前記芯糸より細繊度であり、前記芯糸と前記鞘糸の本数比率(芯糸の本数:鞘糸の本数)が1:6~1:24であり、前記ポリエステルマルチフィラメントの撚糸数Tとマルチフィラメントの繊度Dから下記式1で求められる撚係数Kが0~100であることを特徴とする、織物。
K=T/(10000/D)1/2 (式1)
(K:撚係数、T:撚糸数(T/m)、D:繊度(dtex))
(2)前記鞘糸が2種類のポリエステルで形成されている、(1)に記載の織物。
(3)前記鞘糸の単糸繊度が0.1~2.0dtexである、(1)または(2)に記載の織物。
(4)経糸または緯糸が浮き糸となる織組織であり、かつ前記芯鞘構造のポリエステルマルチフィラメントが浮き糸として配置される、(1)~(3)のいずれかに記載の織物。
(5)初期撥水性が3級以上である、(1)~(4)のいずれかに記載の織物。
(6)下記式2によって求められる低圧域圧縮率Crが5%~30%である、(1)~(5)のいずれかに記載の織物。
Cr=(T0-T1)/T0×100 (式2)
(Cr:低圧域圧縮率(%)、T0:下限圧力0.2kPa印加時の織物厚さ(mm)、T1:一定圧力4.9kPa印加時の織物厚さ(mm))
(7)紫外線カーボンアーク灯光による耐光堅ろう度が4級以上である、(1)~(6)のいずれかに記載の織物。
(8)アゾ系分散染料とキノン系分散染料とを含有し、前記アゾ系分散染料と前記キノン系分散染料との合計含有量に対するキノン系分散染料の含有量が30~70質量%である、(1)~(7)のいずれかに記載の織物。
(9)(1)~(8)のいずれかに記載の織物を含む、被服。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長期間の被服着用により発生するテカリを抑制する織物およびそれを含む被服を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、好ましい実施形態とともに詳述する。
【0014】
本発明の織物は、芯糸および鞘糸を備える芯鞘構造のポリエステルマルチフィラメントを有し、芯糸は鞘糸より糸長が短く、鞘糸は芯糸より細繊度であり、芯糸と鞘糸の本数比率(芯糸の本数:鞘糸の本数)が1:6~1:24である。さらに、ポリエステルマルチフィラメントの撚糸数Tとマルチフィラメントの繊度Dから下記式1で求められる撚係数Kが、0~100である特徴を有する。
K=T/(10000/D)1/2 (式1)
(K:撚係数、T:撚糸数(T/m)、D:繊度(dtex)) 。
【0015】
<織物の構成>
本発明の織物は、芯糸および鞘糸で構成されるマルチフィラメントからなる。ここで、鞘糸は芯糸の周囲に巻き付けられており、また、芯糸1本に対して、鞘糸が複数本、巻きつけられている。そして、本発明の織物は、当該マルチフィラメントを原糸として織られたものである。
【0016】
<芯糸および鞘糸のポリマー組成>
本発明に係るマルチフィラメントが備える芯糸および鞘糸を構成するポリマーは、共にポリエステルからなり、それぞれ単一成分のポリエステルで形成されていてもよく、また、複数のポリエステルで形成されていてもよい。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、およびそれらにジカルボン酸成分、ジオール成分あるいはオキシカルボン酸成分が共重合されたもの、あるいはそれらのポリエステルをブレンドしたものが好ましく挙げられる。なお、本発明において、融点の異なるポリエステルは別種のポリエステルとする。
【0017】
芯糸および鞘糸のポリエステル組成は、本発明の構成を満たせば特に制限されず、後述するように、芯糸と鞘糸に収縮差を生じさせる組み合わせであればよい。例えば、芯糸と鞘糸がそれぞれ単一成分のポリエステルの場合は異なるポリエステルであることが好ましい。また、芯糸が単一成分、かつ鞘糸が複数のポリエステルで形成されている場合は、それぞれが異なるポリエステルを選択することも好ましく、また、鞘糸の複数のポリエステルのうちの1種類と、芯糸のポリエステルの組成が同一であってもよい。
【0018】
鞘糸が複数のポリエステルで形成されることによって、後述するように、熱処理時に鞘糸に捲縮が発現し、それによってマルチフィラメントやそれを用いた織物に立体凹凸が生じる構造となる。織物に立体凹凸が生じると、摩擦物と織物が接触する面積が小さくなることによって繊維表面が平滑化する面積が減少する。そのため、本発明の織物は、よりテカリの抑制に効果的な構造となる。2種類のポリエステルを融点の異なる組合せとする場合、熱処理を施した際に、低融点側のポリエステルが先に収縮することや、各ポリエステルの収縮特性が異なることによって、ポリマー間の収縮差を発現して鞘糸に捲縮を付与することができる。鞘糸を構成する融点の異なる2種類のポリエステルとしては、各ポリエステルの融点の差が大きい、ポリエチレンテレフタレート(PET)と、イソフタル酸(IPA)共重合ポリエチレンテレフタレートとの組み合わせが好適に用いられる。
【0019】
なお、これらのポリマーにおいては、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化チタンなどの艶消し剤、難燃剤、滑剤、抗酸化剤、着色顔料等として無機微粒子や有機化合物、カーボンブラックを必要に応じて含有させることができる。
【0020】
<芯糸と鞘糸との糸長>
本発明にかかる芯糸は、鞘糸より糸長が短い。芯糸の糸長が鞘糸の糸長より短いことによって織物の鞘糸に膨らみが生じ、それにより摩擦物と織物との接触時に応力が低減され、テカリ抑制にさらなる効果を発現することができる。ここで糸長の測定方法は、後述する実施例のF.糸長および糸長差率に記載の方法で行う。芯糸の糸長を鞘糸の糸長よりも短くする手段としては、芯糸の収縮率を鞘糸の収縮率よりも大きくすることが挙げられる。すなわち、芯糸が鞘糸よりも高収縮であることで、芯糸は鞘糸より糸長となる。
【0021】
芯糸は、収縮差を際立たせる観点から、鞘糸より低融点のポリマーを使用することが好ましい。一方、鞘糸は、芯糸より高融点のポリマーを使用することが好ましく、また、鞘糸を2成分として低融点ポリマーと高融点ポリマーを組み合わせることもより好ましい。鞘糸を2成分とすることによって、鞘糸が1成分のときでは発現しない、高低差の異なる捲縮を発現することができる。すなわち、芯糸の収縮率が鞘糸の収縮率よりも大きくなり、芯糸を鞘糸より糸長が短くなり、芯糸が鞘糸に覆われる構成となる。また、本発明のマルチフィラメントは、後述するように芯糸より鞘糸の方が、繊度が細い、すなわち繊維径が細い。そのため、本発明の織物は、摩擦を受けても、織物の最表面に位置する細繊度の鞘糸のみが摩耗して平滑化されることになる。したがって、通常の太繊度のみからなる織物に対して平滑化される面積がより小さくなり、テカリの発生をより抑制することができる。
【0022】
鞘糸のポリマー組成を2種類組み合わせる場合は、サイドバイサイド型(バイメタル型)でも偏心芯鞘型でもよい。鞘糸がサイドバイサイド型の複合繊維または偏心芯鞘型の複合繊維であることによって、鞘糸の微細なスパイラル構造にて複雑な捲縮を発現することができ、テカリ抑制がさらに向上する。
【0023】
<芯糸および鞘糸の繊度>
本発明にかかる鞘糸の単糸繊度は0.1~2.0dtexであることが好ましく、より好ましくは0.4~1.9dtexである。鞘糸の単糸繊度が0.1dtex以上だと、織物の発色性が向上するため好ましい。一方、鞘糸の単糸繊度が2.0dtex以下だと、織物が摩擦を受けて繊維表面が平滑化したとしても、平滑面積がより小さくなるため、テカリの発生をより抑制することができる。
【0024】
また、芯糸の単糸繊度は1.0~10.0dtexであることが好ましく、より好ましくは2.0~5.0dtexである。芯糸の単糸繊度が1.0dtex以上だと、織物の発色性が向上する。一方で、芯糸の単糸繊度が10.0dtex以下だと、風合いが柔らかくなり、織物の風合いをより優れたものとすることができる。
【0025】
本発明にかかる鞘糸は、芯糸より細繊度であることが重要である。ここで本発明において、鞘糸は芯糸より細繊度であるとは、鞘糸の単糸繊度が芯糸の単糸繊度よりも低い、すなわち細いことを意味する。内部に配置する芯糸に対して外部に配置する鞘糸の繊度が細い方が摩擦によって平滑化する面積が減少するため、テカリ抑制にさらなる効果を発現することができることと、また内部の芯糸を細繊度にしないことで、発色性が低下しないことから、芯糸の繊度に対する鞘糸の繊度の差(芯糸の繊度-鞘糸の繊度)は1dtex以上が好ましく、2dtex以上がより好ましい。
【0026】
<芯糸と鞘糸の本数比率>
芯糸と鞘糸の本数比率(芯糸の本数:鞘糸の本数)は、1:6~1:24である。本数比率を上記の範囲とすることで、ポリエステルマルチフィラメントにおいて、鞘糸より繊度の太い芯糸が露出することが抑制され、織物のテカリを抑制することができる。ここで、芯糸と鞘糸の本数比率が1:6よりも鞘糸の比率が低い、すなわち鞘糸の本数比率が低いと、鞘糸が繊度の太い芯糸を完全に覆うことができず、鞘糸よりも繊度の太い芯糸がポリエステルマルチフィラメントの表面において露出し、摩擦により平滑化した際、平滑面が大きくなり、テカリが発生する。一方、芯糸と鞘糸の本数比率が1:24よりも高い、すなわち鞘糸の本数比率が高いと、芯糸よりも繊度の細い鞘糸が過多となり、織物の発色性が低下する。より好ましくは、芯糸と鞘糸の本数比率は1:6~1:12である。
【0027】
<芯鞘構造のマルチフィラメントの構成>
本発明の織物に含まれる芯鞘構造のマルチフィラメントは、複数糸を合わせた加工糸により得られた糸であってもよく、また、海島複合繊維を脱海処理して得られた糸であってもよい。加工糸の場合は、太繊度の高収縮糸と、細繊度の低収縮糸を交絡させて得たマルチフィラメントで織物を作製する。
【0028】
<撚係数>
後述する方法で取得したマルチフィラメントの繊度Dとマルチフィラメントの撚糸数Tを用いて下記式1から算出したとき、マルチフィラメントの撚係数Kは0~100であることが重要であり、より好ましくは0~80である。撚係数が0であることは無撚りであることを意味し、また、撚係数が80以下にあることは、マルチフィラメントに撚りがあまりかかっていないことを意味する。撚係数が上記の範囲にあれば、織物を構成するマルチフィラメントに膨らみを持たせることができる。撚係数が100より大きい、すなわち撚りが強くなると、マルチフィラメントが強く拘束されるため、摩擦が生じる時に芯鞘構造による応力分散効果が減少することによって、鞘糸がより平滑化されてテカリを生じやすくなる。
K=T/(10000/D)1/2 (式1)
(K:撚係数、T:撚糸数(T/m)、D:繊度(dtex)) 。
【0029】
<低圧域圧縮率>
織物の低圧域圧縮率(以下、Crと称することがある)は、下記式2および後述する実施例H.低圧域圧縮率のとおり求められ、5%~30%であることが好ましい。織物のつぶれやすさを評価する通常の圧縮率評価と異なり、低圧域圧縮率は摩擦力に対する織物の応力の分散しやすさを評価することができる。
Cr=(T0-T1)/T0×100 (式2)
(Cr:低圧域圧縮率(%)、T0:下限圧力0.2kPa印加時の織物厚さ(mm)、T1:一定圧力4.9kPa印加時の織物厚さ(mm)) 。
【0030】
ここで式2における下限圧力とは、圧縮率試験における初荷重のことであり、また、一定圧力とは、織物に印加する上限の圧力のことである。本発明の織物に圧力を印加し始めてから0.2kPaの圧力までは、主に織物に存在する毛羽が圧縮され、その影響によって摩擦力に対する織物の応力の分散性を評価することができない。そのため、下限圧力として0.2kPaとしている。また、本発明の織物を被服としたときに、被服着用時にかかる荷重が4.9kPa相当の圧力になることから、当該圧力を一定圧力として規定した低圧域圧縮率にて評価する。
【0031】
低圧域圧縮率が5%以上であると、摩擦力に対する織物の応力の分散性が十分となり、テカリの発生をより抑制することができる。一方、低圧域圧縮率が30%以下であると、浮き糸が少なくなり、ホックやファスナーなどの引掛りやピリングの発生を抑制することができる。より好ましくは10%~25%である。
【0032】
<織組織>
本発明の織物における組織は特に限定されないが、例えば、平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織などが挙げられる。
【0033】
テカリ抑制効果のある芯鞘構造のポリエステルマルチフィラメントを被服の生地表面に配置するために、経糸および緯糸ともにポリエステルマルチフィラメントを使用することも可能である。また、経糸または緯糸のいずれかに芯鞘構造のマルチフィラメントを用い、他方の糸にストレッチ性や制電性など別の機能を付与する糸を配置することで、テカリ抑制と別の機能を付与することができる。その際には、織組織を経糸または緯糸いずれかが浮き糸となる織組織とし、かつ芯鞘構造のポリエステルマルチフィラメントが浮き糸として配置されることが好ましい。また経糸または緯糸にポリエステルマルチフィラメントを複数本引き揃えで打ち込むことで嵩高さを持たせることでも、浮き糸とすることができる。すなわち、上記の事情により、本発明の織物は経糸または緯糸が浮き糸となる織組織であることが好ましく、1/3ツイル(1/3綾織)や3/1ツイル(3/1綾織)などであることがより好ましい。
【0034】
<染料>
本発明の織物に使用する分散染料は特に限定されないが、ベンゼンアゾ系、複素環アゾ系、に分類されるアゾ系染料、縮合系アントラキノン骨格を含むキノン系分散染料が挙げられる。アゾ系分散染料は発色性に優れ、安価である。一方、色素骨格が安定なキノン系分散染料は加水分解や還元分解されにくく耐光堅ろう度も良好である。
【0035】
本発明の糸は細繊度であることから、通常繊度の糸に対し発色性が得られにくく、太陽光の影響で褪色しやすい。その特徴から、アゾ系分散染料とキノン系分散染料とを併用することが望ましい。分散染料を併用する際の比率としては、アゾ系分散染料とキノン系分散染料との合計含有量に対するキノン系分散染料の含有量が30~70質量%であることが好ましい。キノン系分散染料の含有量が30質量%より少ないと、耐光性が低下してしまい、一方で、70質量%より多いと、所望の発色性が得られない。
【0036】
本発明の織物における紫外線カーボンアーク灯光による耐光堅ろう度は4級以上であることが好ましい。さらに好ましくは5級以上である。アウターとして屋外で着用するような衣服では、耐光堅ろう度が4級未満であると経時で全体的または部分的に褪色が起こり、見た目の品位の悪いものになってしまうため好ましくない。
【0037】
<織物の撥水性>
本発明の織物は、撥水加工が施されていることが好ましい。初期撥水性が、後述する方法にて測定したものであるとき、本発明の織物の初期撥水性は3級以上であることが好ましい。初期撥水性が3級以上であることで、雨天時や水場で織物が水で濡れた場合でも、湿潤が軽度となる。この観点から、初期撥水性が4級以上であると、湿潤のより軽度の織物となるため好ましい。なお、初期撥水性とは、洗濯処理を行う前の織物の撥水性である。
【0038】
また、本発明の織物は、洗濯後撥水性は、後述する方法にて測定したものであるとき、2級以上であることが好ましい。洗濯後撥水性が2級以上であることで、洗濯後の織物も、湿潤を半分程度に抑える程度の撥水性を維持している。この観点から、より好ましくは3級以上である。
【0039】
<織物の後処理>
本発明の織物は、撥水剤の選定により所望の撥水性を得ることができる。また、撥水加工時に架橋剤を併用することにより、さらに洗濯後撥水性を向上することができる。また、撥水加工時に帯電防止剤を併用することで、帯電防止性を織物に付与することができる。撥水剤としては一般的な繊維用の撥水加工剤を用いることができ、例えば、パーフルオロアルキル基を有するポリマーからなるフッ素系撥水剤や、シリコーン系、アクリル系、パラフィン系の非フッ素系撥水剤が好適に用いられる。
【0040】
また、架橋剤としては一般的な繊維用の架橋剤を用いることができ、例えば、メチロールメラミンを有するメラミン系架橋剤、イソシアネート基又はブロックドイソシアネート基を1個以上有する化合物に代表されるイソシアネート系架橋剤などが挙げられる。柔軟性の観点からは、イソシアネート系架橋剤が好ましく、とくに、ブロックドイソシアネート基を有するものが好ましい。ブロックドイソシアネート基を1個以上有する化合物としては、上記イソシアネート基を有する化合物をブロック化剤でイソシアネート基を保護した化合物が挙げられる。このとき用いられるブロック化剤としては、2級又は3級アルコール類、活性メチレン化合物、フェノール類、オキシム類、ラクタム類などの有機系ブロック化剤や、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウムなどの重亜硫酸塩が挙げられる。上述の架橋剤は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせてもよい。
【0041】
<織物の用途および被服>
本発明の織物はテカリを抑制する機能を有するため、織物が摩擦を受けてテカリが発生する各種用途に用いることができる。用途としては、後述する被服、雑貨、靴鞄、乗物用内装材、イスやソファーなどの座席における座面やヘッドレスト、そしてフロアマットなどを挙げることができる。とりわけ、本発明に係る被服は、前記の織物を含むことが好ましい。
【0042】
本発明における被服としては、ブレザー・ジャケット・スラックスなどのユニフォーム衣料、祭服・礼服・スラックスなどのフォーマル衣料、背広・コート・スラックスなどのビジネス衣料、ウインドブレーカー・クローク・ケープ・エプロン・マント・スラックス・ジーンズ・ズボンなどのカジュアル衣料、Tシャツ・ポロシャツ・ワイシャツ・ブラウス・カシュクール・カットソー・ベスト・パーカー・スウェットシャツ・タンクトップ・チューブトップなどのトップス、スカート・カクテルドレス・ワンピース・ガウンなどのドレス類、下着などに好適に用いることができる。これらの中でも、特にユニフォーム衣料、カジュアル衣料、フォーマル衣料、ビジネス衣料および学生衣料に代表されるアウター衣料などの被服の生地として好適に用いることができる。本発明の織物は、被服全体に用いることも好ましく、一方で着用時に摩擦を受けてテカリが発生しやすい箇所である肘、臀部、ひざ等の局部の一部のみに用いることも好ましい。
【0043】
また、本発明における雑貨および靴鞄用途としては、靴のアッパー・トリム・帽子・鞄・ベルト・スカーフ・ネクタイ・財布などの装身具などに好適に用いることができる。
【0044】
<織物の製造方法>
次に、本発明の織物の好ましい製造方法の一例について述べるが、これに限定されない。
【0045】
まず、以下の方法により、芯鞘構造のポリエステルマルチフィラメントを準備する。ここでポリエステルマルチフィラメントの製造方法としては、上述したように、海島複合繊維を脱海処理して得られたもの糸であってもよく、また、複数糸を合わせた加工糸により得られた糸であってもよい。
【0046】
例えば、易溶出ポリマーを海成分、高収縮ポリマーを中心の島成分、通常ポリマーを遠心部の島成分に配置した海島複合繊維を染色加工時のアルカリ減量処理等で海成分を溶出して形成する場合は、鞘糸が複数のポリマーから形成してもよく、その場合は遠心部の島成分に複数のポリマーを使用することで形成できる。また、ポリマー組成については熱処理で収縮差を生じる組合せであれば特に限定されず、粘度の異なるポリマーや融点の異なるポリマーの組合せが考えられ、捲縮発現を制御しやすいという観点からすると、融点の異なるポリマーの組合せとすることが好ましい。融点の異なる組合せとすることで、熱処理を施した際には、低融点側のポリマーが先に収縮することから、容易にポリマー間の収縮差を発現することができる。なお、本発明において鞘糸が2成分のポリマーから形成される場合、2成分のうち収縮率が高い成分を高収縮ポリマー、収縮率が低い成分を通常ポリマーと定義する。
【0047】
また、加工糸によってマルチフィラメントを製造する場合は、鞘糸よりも繊度が太く、かつ、鞘糸よりも収縮率の高い芯糸と、芯糸よりも繊度が細く、かつ、芯糸よりも収縮率の低い鞘糸とを引き揃えて、空気加工(インターレース加工やタスラン加工)や仮撚加工により形成してもよい。より好ましくは、ホックやファスナーなどの引掛りやピリング悪化につながる糸の飛び出しを減少できる海島複合繊維を用いた方法であり、糸加工を必要としないため生産性の観点からも良好である。
【0048】
本発明の織物の製織方法は特に限定されず、通常の方法で製織できる。例えば、ウォータージェットルーム、エアージェットルーム、レピアルーム、ジャガードルームなどの織機を使った製織方法が挙げられる。
【0049】
上記の製織方法で得た織物は次いで、通常の方法で精練、熱水処理、染色加工することができる。これら加工に伴う熱処理によって、鞘糸よりも繊度が太く、かつ鞘糸よりも収縮率の高い芯糸が収縮することで、芯糸よりも繊度が細く、かつ芯糸よりも収縮率の低い鞘糸が捲縮し、織物表面に膨らみが形成される。上記の織物を構成するポリエステルマルチフィラメントが海島複合繊維を含む場合、精練処理後に海成分を溶出するアルカリ減量処理等をする必要がある。
【0050】
本発明の織物は、必要に応じて、制電性、難燃性、吸湿性、制電性、抗菌性、柔軟性、などを向上させるための仕上げ加工、その他公知の後加工(樹脂コーティング、フィルムラミネート、その他機能を付与する各加工等を含む)を併用することができ、架橋剤の併用により機能加工剤の洗濯耐久性を向上させることもできる。撥水加工工程は、浴中加工、パディング法、スプレー法、プリント法、コーティング法、グラビア法など特に限定されるものではないが、加工剤を織物内部まで浸透させる上でパディング法が好ましい。
【実施例0051】
以下実施例を挙げて、本発明の織物について具体的に説明する。なお、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0052】
実施例および比較例については下記の測定、評価を行った。
【0053】
A.繊度
繊度は、JIS L 1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)の「8.3.1正量繊度(A法)」に基づき測定した。
【0054】
B.フィラメント数
マルチフィラメントにおけるフィラメント数は、JIS L 1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)の「8.4 フィラメント数」に基づき測定した。
【0055】
C.撚糸数
マルチフィラメントの撚糸数は、JIS L 1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)の「8.13 より数」に基づき測定した。
【0056】
D.撚係数
撚係数Kは、繊度と撚糸数を式1に当てはめて算出した。
K=T/(10000/D)1/2 (式1)
(K:撚係数、T:撚糸数(T/m)、D:繊度(dtex)) 。
【0057】
E.マルチフィラメントにおける芯糸と鞘糸の本数比率(芯糸の本数:鞘糸の本数)
織物の芯鞘構造のマルチフィラメントについて、上記Bに示す方法で各フィラメント数を測定した。鞘糸のフィラメント数を芯糸のフィラメント数で割って、芯糸を1としたときの本数比率を算出した。
【0058】
F.糸長および糸長差率
織物の芯鞘構造のマルチフィラメントについて、以下の方法で糸長および糸長差率を算出した。織物からのマルチフィラメントを長さ5cm切り出し、芯糸および鞘糸をそれぞれ抜き出し、JIS L 1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)の「5.1 初荷重」を印加し、芯糸および鞘糸の糸長を測定した。続いて下記式3から、芯糸と鞘糸の糸長差率(%)を算出した。
糸長差率(%)=(鞘糸の糸長(mm)-芯糸の糸長(mm))/芯糸の糸長(mm)×100(式3) 。
【0059】
G.ポリマーの融点
マルチフィラメントの鞘糸について、以下の方法でポリマーの融点を算出した。マルチフィラメントの鞘糸を約5mg秤量し、TAインスツルメント製示差走査熱量計(DSC)Q2000型を用いて、0℃から300℃まで昇温速度16℃/分で昇温後、300℃で5分間保持してDSC測定を行った。昇温過程中に観測された融解ピークの頂点を融点とした。融解ピークが複数観測された場合には、複数のポリマーが存在すると判断して、それぞれのピークの頂点を融点とした。測定は1試料につき3回行い、その平均値を融点とした。
【0060】
H.低圧域圧縮率
JIS L 1096:2010(織物及び編物の生地試験方法)の「8.20 圧縮率及び圧縮弾性率」の試験方法を準用し、下限圧力を0.2kPa、一定圧力を4.9kPaとして織物の厚さを測定し、下記式2を用いて、低圧域圧縮率を算出した。
Cr=(T0-T1)/T0×100 (式2)
(Cr:低圧域圧縮率(%)、T0:下限圧力0.2kPa印加時の織物厚さ(mm)、T1:一定圧力4.9kPa印加時の織物厚さ(mm)) 。
【0061】
I.初期撥水性
初期撥水性は、次項に記載する洗濯処理を行う前の織物の撥水性を意味する。この初期撥水性は、JIS L 1092(2009)(繊維製品の防水性試験方法)の「7.2 はっ水度試験(スプレー試験)」に基づき測定した。
【0062】
J.洗濯後撥水性
洗濯後撥水性は、JIS L 1930:2014(繊維製品の家庭洗濯試験方法)の「附属書F C4M法」に基づき20回洗濯した後、JIS L 1092:2009(繊維製品の防水性試験方法)の「7.2 はっ水度試験(スプレー試験)」に基づき測定した。
【0063】
K.テカリ性評価
Fabric Development Tests社製フロースティングテスターを用い、装置上部中心にある試料ホルダーにサンプルを取り付け、装置下部の摩擦面と0.33N/cm2の圧力下で一定時間擦り合せた。経糸および緯糸にポリエステル100%の168dtex-48フィラメント丸型断面糸を双糸にて撚糸数を300T/mとした糸を使用した平織生地について、黒色に染色後、パーフルオロヘキシル基(C6)を有する有機フッ素化合物を用いて撥水加工し、仕上後の糸密度が経糸および緯糸とも60本/25.4mmとした生地を使用した学生服スラックスについて、標準体重の男子中学生が木製机イスに着座を繰り返す学生生活での3年間実着用したときの臀部にてテカリが発生した生地を見本サンプルとして、上記の実着用の生地と同等のテカリ様の光沢がでるまで摩擦を付与したときの回数を規定回数とし、そのときの摩擦後サンプルを1級の見本とした。また規定回数の半分の回数で見本サンプルに摩擦を付与したときの摩擦後サンプルを3級、摩擦前サンプルを5級の見本とした。評価サンプルを摩擦し、摩擦後サンプルの光沢度合をD65光源下にて目視にて確認し、見本との比較で等級を付けた。3級の見本より光沢がなく5級の見本より光沢がある場合は4級とし、1級の見本より光沢がなく3級より光沢がある場合は2級とした。
【0064】
L.ピリング
JIS L 1076:2012(織物及び編物のピリング試験方法)の「8.1.3 C法」に基づき、実施した。
【0065】
M.明度L*
JIS Z8781-4:2013(測色-第4部:CIE 1976 L*a*b*色空間)の「3.3 CIE1976 明度指数」で規定されるL*値のことを指す。コニカミノルタ(株)製多光源分光測色計(CM-3700d)を用い、全反射法で測定した。
【0066】
N.耐光堅ろう度
JIS L 0842:2004(紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅ろう度試験方法)に基づき、実施した。
【0067】
[実施例1]
セミダルポリマーとして0.3重量%酸化チタンを含有した通常PET(以下、P1)、高収縮ポリマーとしてイソフタル酸(IPA)共重合PET(以下、P2)および易溶解性ポリマーとして5-ナトリウムスルホイソフタル酸とポリエチレングリコールを共重合した化合物(SSIA-PEG)共重合PET(以下、P3)を準備した。
【0068】
これらのポリマーを290℃で別々に溶融後、P1/P2/P3を重量比で60/30/10となるように計量し、複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させ、吐出孔から流入ポリマーを吐出した。吐出された複合ポリマー流に冷却固化後油剤を付与し、紡糸機で巻取り、延伸を行い、84dtex-12フィラメントの海島複合繊維を製造した。得られた海島複合繊維は、繊維横断面において、高収縮ポリマーであるP2で形成された八葉形状のセグメントの外周に、P1およびP2各ポリマー(P1/P2)のサイドバイサイド型複合構造を有した扁平形状のセグメントが8個配置され、その周囲を易溶解性ポリマーであるP3が取り囲む形状であった。
【0069】
経糸として無撚、糊付有の56dtex-24フィラメント(56T-24F、以下同様に記載する)のP3使いの丸断面糸を、緯糸として前記海島複合繊維を無撚、2本引き揃えで使用し、レピア織機を用いて1/3綾織物を得た。得られた織物を、界面活性剤を含む水溶液で、織物との浴比が1:20、温度80℃×20分間浴中処理し、精練した。次いで、1重量%の水酸化ナトリウムを含む水溶液で、織物との浴比が1:20、温度80℃×30分間浴中処理し、易溶解性ポリマーであるP3を99質量%以上除去した。次いでバッチ式染色機を用いて、水中で、織物との浴比が1:20、温度130℃×60分間浴中処理した後、ピンテンターを用いて、180℃×1分間、幅出し率5%の条件で乾熱し、セットした。
【0070】
その後、Dianix Tuxedo Black F conc. Liquid(ダイスター(株)、アゾ系分散染料)を13%owf、“イオネット”(登録商標)RAP-250(三洋化成工業(株)、均染剤)を0.5g/L、pH調整剤として酢酸および酢酸ナトリウムを添加してpHを5.0に調整した水溶液で、織物との浴比が1:20、温度130℃×60分間で浴中処理を行った後、水洗した。次いで、還元洗浄剤としてハイドロサルファイトを2.0g/L、苛性ソーダを2.0g/Lとした水溶液で、織物との浴比が1:20、温度80℃×20分間で浴中処理し還元洗浄を行った後、水洗、風乾を行った。
【0071】
その後、“ネオシード”(登録商標)NR-158(日華化学(株)、撥水剤)(以後、撥水剤A)を50g/L、SU-268A(明成化学工業(株)、イソシアネート系架橋剤)(以後、架橋剤a)を10g/L、BG-290(日華化学(株)、浸透剤)を含む水溶液に織物を浸漬し、処理液の付着量が80%になるようマングルでニップした。次いで、ピンテンターを用いて、乾熱で140℃×2分間処理し、乾燥した。さらにピンテンターを用いて、乾熱で180℃×1分間処理し、セットした。
【0072】
得られた織物の緯糸のマルチフィラメントにおける芯糸の単糸繊度は2.8dtex、鞘糸の単糸繊度は0.4dtexであり、鞘糸が芯糸より細繊度となった。また芯糸のフィラメント数は24、鞘糸のフィラメント数は192であり、芯鞘の本数比率は1:8の芯鞘構造を有するマルチフィラメントを形成していた。そのときの糸密度は経糸が176本/25.4mm、緯糸が128本/25.4mmであった。
【0073】
結果を表1に示すとおり、芯鞘構造有するマルチフィラメントで構成された織物は、緯糸の芯糸と鞘糸の糸長差率は10%であり、芯糸は収縮することで、鞘糸より短くなっており、芯糸が鞘糸で覆われることで露出しない構造となっていた。芯鞘構造有するマルチフィラメントの鞘糸のポリマー融点はピークが2点確認され、それぞれ254℃と232℃であった。撚係数は0、低圧域圧縮率が21%であり、摩擦力を分散させるのに十分高い値を有していた。また初期撥水性は4級、洗濯後撥水性は3級であり、良好な撥水性、洗濯耐久性を有していた。テカリ性は4級であり、長期着用時のテカリ発生に対して高い抑制性能を有していた。ピリングはL号であり、着用によるスレやひっかかりに対して高い抑制性能を有していた。明度L*は17であり、色あせ感のない発色性を有していた。
【0074】
[実施例2]
緯糸の撚糸数を200T/mとした以外は、実施例1と同様の処理を実施した。
【0075】
結果を表1に示すとおり、芯鞘構造を有するマルチフィラメントで構成された織物は、撚係数は25、低圧域圧縮率は17%であり、摩擦力を分散させるのに十分高い値を有していた。テカリ性は4級であり、長期着用時のテカリ発生に対して高い抑制性能を有していた。
【0076】
[実施例3]
緯糸の撚糸数を500T/mとした以外は、実施例1と同様の処理を実施した。
【0077】
結果を表1に示すとおり、芯鞘構造を有するマルチフィラメントで構成された織物は、撚係数は62、低圧域圧縮率は15%であり、摩擦力を分散させるのに中程度の値を有していた。テカリ性は3級であり、長期着用時のテカリ発生に対して中程度の抑制性能を有していた。
【0078】
[実施例4]
緯糸の撚糸数を800T/mとした以外は、実施例1と同様の処理を実施した。
【0079】
結果を表1に示すとおり、芯鞘構造を有するマルチフィラメントで構成された織物は、撚糸数は99、低圧域圧縮率は13%であり、摩擦力の分散性を示す値の低下が見られた。テカリ性は2級であり、長期着用時のテカリ発生に対して抑制性能の低下が見られた。
【0080】
[比較例1]
緯糸の撚糸数を1000T/mとした以外は、実施例1と同様の処理を実施した。
【0081】
結果を表1に示すとおり、芯鞘構造を有するマルチフィラメントで構成された織物は、撚糸数は123、低圧域圧縮率は9%であり、摩擦力の分散性を示す値の低下が見られた。テカリ性は1級であり、長期着用時のテカリ発生に対して抑制性能を示さなかった。
【0082】
[比較例2]
紡糸時、P1/P2/P3を重量比で45/45/10とし、得られた複合繊維は、P1・P2のサイドバイサイド型複合構造の八葉形状のセグメントの外周に、P1・P2のサイドバイサイド型複合構造を有した扁平形状のセグメントが8個を配置し、その周囲をP3が取り囲む形状とした以外は、実施例1と同様の処理を実施した。
【0083】
結果を表1に示すとおり、芯鞘構造を有するマルチフィラメントで構成された織物は、緯糸の芯糸と鞘糸の糸長差率は0%であり、芯糸が鞘糸で覆われず露出する構造となっていた。低圧域圧縮率は9%であり、摩擦力の分散性を示す値の低下が見られた。テカリ性は1級であり、長期着用時のテカリ発生に対して抑制性能を示さなかった。
【0084】
[実施例5]
紡糸時、P1/P2/P3を重量比で45/45/10とし、得られた複合繊維は、P2の八葉形状のセグメントの外周に、P1の扁平形状のセグメントが8個配置され、その周囲をP3が取り囲む形状とした以外は、実施例1と同様の処理を実施した。芯糸と鞘糸の糸長差は0であった。
【0085】
結果を表1に示すとおり、芯鞘構造を有するマルチフィラメントで構成された織物は、緯糸の芯糸と鞘糸の糸長差率は22%であり、芯糸は収縮することで、鞘糸より短くなっており、芯糸が鞘糸で覆われることで露出しない構造となっていた。芯鞘構造有するマルチフィラメントの鞘糸のポリマー融点はピークが1点あり、254℃であった。撚係数は0、低圧域圧縮率は31%であり、摩擦力を分散させるのに十分高い値を有していた。テカリ性は4級であり、長期着用時のテカリ発生に対して高い抑制性能を有していた。ピリングはH号であり、着用によるスレやひっかかりに対する抑制性能の低下が見られた。
【0086】
[比較例3]
P2の代わりにP1を用い、P1/P1/P3を重量比で45/45/10となるように計量し、84dtex-24フィラメントの海島複合繊維を製造し、得られた複合繊維は、繊維横断面において、P1で形成された八葉形状のセグメントの外周に、P1で形成された扁平形状のセグメントが8個を配置し、その周囲をP3が取り囲む形状とし、得られた織物の緯糸は、芯糸の単糸繊度は1.4dtex、鞘糸の単糸繊度は0.2dtexと鞘糸が芯糸より細繊度となった以外は、実施例1と同様の処理を実施した。
【0087】
結果を表1に示すとおり、芯鞘構造を有するマルチフィラメントで構成された織物は、緯糸の芯糸と鞘糸の糸長差率は0%であり、芯糸が鞘糸で覆われず露出する構造となっていた。芯鞘構造有するマルチフィラメントの鞘糸のポリマー融点はピークが1点あり、254℃であった。低圧域圧縮率は9%であり、摩擦力の分散性を示す値の低下が見られた。テカリ性は1級であり、長期着用時のテカリ発生に対して抑制性能を示さなかった。明度L*は21であり、細繊度の影響で、初期から色あせ感のある発色性となった。
【0088】
[比較例4]
84dtex-12フィラメントの海島複合繊維の代わりに、P1のみで形成された84dtex-24フィラメントの糸を使用し、1重量%の水酸化ナトリウムを含む水溶液での浴中処理と、バッチ式染色機での温度130℃×60分間浴中処理を実施しなかった以外は、実施例1と同様の処理を実施した。芯糸のフィラメント数は24、鞘糸のフィラメント数は24、単糸繊度は芯糸鞘糸とも3.5dtexと繊度差はなく、芯鞘の本数比率は1:1のマルチフィラメントを形成した。
【0089】
結果を表1に示すとおり、低圧域圧縮率は7%であり、摩擦力の分散性を示す値の低下が見られた。テカリ性は1級であり、長期着用時のテカリ発生に対して抑制性能を示さなかった。
【0090】
[実施例6]
33dtex-12フィラメントのP2使い糸に、仮撚りした56dtex-144フィラメントのP1使い糸をエア交絡させた加工糸を得た。
【0091】
経糸として無撚、糊付有の56dtex-24フィラメントのP1使いの丸断面糸を、緯糸として前記加工糸を無撚、2本引き揃えで使用し、レピア織機を用いて1/3綾織物を得た。得られた織物を、界面活性剤を含む水溶液で、織物との浴比が1:20、温度80℃×20分間浴中処理し、精練した。次いでバッチ式染色機を用いて、水中で、織物との浴比が1:20、温度130℃×60分間浴中処理した後、ピンテンターを用いて、180℃×1分間、幅出し率5%の条件で乾熱し、セットした。
【0092】
その後、Dianix Tuxedo Black F conc. Liquid (ダイスター(株)、アゾ系分散染料)を13%owf、“イオネット”(登録商標)RAP-250(三洋化成工業(株)、均染剤)を0.5g/L、pH調整剤として酢酸および酢酸ナトリウムを添加してpHを5.0に調整した水溶液で、織物との浴比が1:20、温度130℃×60分間で浴中処理を行った後、水洗した。次いで、還元洗浄剤としてハイドロサルファイトを2.0g/L、苛性ソーダを2.0g/Lとした水溶液で、織物との浴比が1:20、温度80℃×20分間で浴中処理し還元洗浄を行った後、水洗、風乾を行った。
【0093】
その後、“ネオシード”(登録商標)NR-158(日華化学(株)、撥水剤)を50g/L、SU-268A(明成化学工業(株)、架橋剤)を10g/L、BG-290(日華化学(株)、浸透剤)を含む水溶液に織物を浸漬し、処理液の付着量が80%になるようマングルでニップした。次いで、ピンテンターを用いて、乾熱で140℃×2分間処理し、乾燥した。さらにピンテンターを用いて、乾熱で180℃×1分間処理し、セットした。
【0094】
得られた織物の緯糸は、芯糸の単糸繊度は2.8dtex、鞘糸の単糸繊度は0.4dtexと鞘糸が芯糸より細繊度となった。また芯糸のフィラメント数は24、鞘糸のフィラメント数は288であり、芯鞘の本数比率は1:12の芯鞘構造を有するマルチフィラメントを形成していた。
【0095】
結果を表2に示すとおり、芯鞘構造有するマルチフィラメントで構成された織物は、緯糸の芯糸と鞘糸の糸長差率は15%であり、芯糸は収縮することで、鞘糸より短くなっており、芯糸が鞘糸で覆われることで露出しない構造となっていた。芯鞘構造有するマルチフィラメントの鞘糸のポリマー融点はピークが1点あり、254℃であった。撚係数は0、低圧域圧縮率は24%であり、摩擦力を分散させるのに十分高い値を有していた。また初期撥水性は4級、洗濯後撥水性は3級であり、良好な撥水性、洗濯耐久性を有していた。テカリ性は4級であり、長期着用時のテカリ発生に対して高い抑制性能を有していた。ピリングはM号であり、着用によるスレやひっかかりに対して中程度の抑制性能を有していた。明度L*は19であり、色あせ感のない発色性を有していた。
【0096】
[比較例5]
緯糸の撚糸数を1000T/mとした以外は、実施例6と同様の処理を実施した。
【0097】
結果を表2に示すとおり、芯鞘構造雄するマルチフィラメントで構成された織物は、撚糸数は133、低圧域圧縮率は9%であり、摩擦力の分散性を示す値の低下が見られた。テカリ性は1級であり、長期着用時のテカリ発生に対して抑制性能を示さなかった。
【0098】
[実施例7]
33dtex-12フィラメントの高収縮ポリマーであるP2使い糸1本に、仮撚りした56dtex-144フィラメントのセミダルポリマー使い糸を2本引き揃えでエア交絡させた加工糸を得た以外は、実施例6と同様の処理を実施した。得られた織物の緯糸は、芯糸のフィラメント数が12、鞘糸のフィラメント数は288であり、芯鞘の本数比率は1:24の芯鞘構造を有するマルチフィラメントを形成していた。
【0099】
結果を表2に示すとおり、テカリ性は4級であり、長期着用時のテカリ発生に対して高い抑制性能を有していた。明度L*は21であり、細繊度糸が太繊度糸を覆い隠す影響で、初期から色あせ感のある発色性となった。
【0100】
[比較例6]
33dtex-12フィラメントの高収縮ポリマーであるP2使い糸1本に、仮撚りした56dtex-144フィラメントのセミダルポリマー使い糸を3本引き揃えでエア交絡させた加工糸を得た以外は、実施例6と同様の処理を実施した。得られた織物の緯糸は、芯糸のフィラメント数が12、鞘糸のフィラメント数は432であり、芯鞘の本数比率は1:36の芯鞘構造を有するマルチフィラメントを形成していた。
【0101】
結果を表2に示すとおり、テカリ性は4級であり、長期着用時のテカリ発生に対して高い抑制性能を有していた。明度L*は25であり、細繊度糸が太繊度糸を完全に覆い隠す影響で、初期から白濁したような発色性となった。
【0102】
[実施例8]
撥水剤Aの代わりに、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤“ユニダイン”(登録商標)TG-5546(ダイキン(株)、撥水剤)(以後、撥水剤B)を50g/L使用、架橋剤aの代わりに、トリメチロールメラミンを有するメラミン系架橋剤の“アミディア”(登録商標)M-3(DIC(株)、架橋剤)(以後、架橋剤b)を3g/L使用した以外は、実施例1と同様の処理を実施した。
【0103】
結果を表2に示すとおり、芯鞘構造有するマルチフィラメントで構成された織物は、低圧域圧縮率は12%であり、摩擦力の分散性を示す値の低下が見られた。テカリ性は3級であり、長期着用時のテカリ発生に対して中程度の抑制性能を有していた。また初期撥水性は4級、洗濯後撥水性は2級であり、洗濯耐久性の低下が見られた。
【0104】
[実施例9]
架橋剤を使用しない以外は、実施例2と同様の処理を実施した。
【0105】
結果を表2に示すとおり、初期撥水性は4級、洗濯後撥水性は1級であり、洗濯耐久性を示さなかった。テカリ性は4級であり、長期着用時のテカリ発生に対して高い抑制性能を有していた。
【0106】
[実施例10]
架橋剤aを15g/Lに増量使用した以外は、実施例2と同様の処理を実施した。
【0107】
結果を表2に示すとおり、初期撥水性は4級、洗濯後撥水性は4級であり、良好な撥水性、洗濯耐久性を有していた。テカリ性は2級であり、長期着用時のテカリ発生に対して抑制性能の低下が見られた。
【0108】
[実施例11]
架橋剤aの代わりに架橋剤bを3g/L使用した以外は、実施例1と同様の処理を実施した。
【0109】
結果を表2に示すとおり、初期撥水性は4級、洗濯後撥水性は3級であり、良好な撥水性、洗濯耐久性を有していた。テカリ性は2級であり、長期着用時のテカリ発生に対して抑制性能の低下が見られた。
【0110】
[実施例12]
経糸として前記海島複合繊維を撚糸数200T/m、2本引き揃えで、緯糸として無撚、糊付無の56dtex-24フィラメントのP3使いの丸断面糸を使用し、エアージェット織機を用いて3/1綾織物を得た以外は、実施例2と同様の処理を実施した。
【0111】
結果を表3に示すとおり、芯鞘構造を有するマルチフィラメントで構成された織物は、緯糸の芯糸と鞘糸の糸長差率は10%であり、芯糸は収縮することで、鞘糸より短くなっており、芯糸が鞘糸で覆われることで露出しない構造となっていた。撚係数は25、低圧域圧縮率は17%であり、摩擦力を分散させるのに十分高い値を有していた。テカリ性は4級であり、長期着用時のテカリ発生に対して高い抑制性能を有していた。
【0112】
[実施例13]
経糸の撚糸数を500T/mとした以外は、実施例12と同様の処理を実施した。
【0113】
結果を表3に示すとおり、芯鞘構造を有するマルチフィラメントで構成された織物は、低圧域圧縮率は15%であり、摩擦力を分散させるのに中程度の値を有していた。テカリ性は3級であり、長期着用時のテカリ発生に対して中程度の抑制性能を有していた。
【0114】
[実施例14]
織組織を2/2綾織とした以外は、実施例12と同様の処理を実施した
結果を表3に示すとおり、低圧域圧縮率は14%であり、摩擦力を分散させるのに中程度の値を有していた。テカリ性は3級であり、長期着用時のテカリ発生に対して中程度の抑制性能を有していた。
[実施例15]
染料として、Dianix Tuxedo Black F conc. Liquid (ダイスター(株)、アゾ系分散染料)を13%owfの代わりに、Dianix Navy S-2G(ダイスター(株)、アゾ系分散染料)を4%owf、Dianix Navy AM-G(ダイスター(株)、キノン系分散染料)を6%owf、併用して使用した以外は、実施例1と同様の処理を実施した。
【0115】
結果を表3に示すとおり、明度L*は18、耐光堅ろう度は5級であり、高い発色性と高い耐光性とを示した。
[実施例16]
Dianix Navy S-2G(ダイスター(株)、アゾ系分散染料)を6%owf、Dianix Navy AM-G(ダイスター(株)、キノン系分散染料)を4%owf、併用して使用した以外は、実施例1と同様の処理を実施した。
【0116】
結果を表3に示すとおり、明度L*は18、耐光堅ろう度は5級であり、高い発色性と高い耐光性とを示した。
[実施例17]
Dianix Navy S-2G(ダイスター(株)、アゾ系分散染料)を8%owf、Dianix Navy AM-G(ダイスター(株)、キノン系分散染料)を2%owf、併用して使用した以外は、実施例1と同様の処理を実施した。
【0117】
結果を表3に示すとおり、明度L*は17、耐光堅ろう度は4級であり、高い発色性を示したものの、実施例1と比較して耐光性の低下を示した。
[実施例18]
Dianix Navy AM-G(ダイスター(株)、キノン系分散染料)を10%owf、単独で使用した以外は、実施例1と同様の処理を実施した。
【0118】
結果を表3に示すとおり、明度L*は20となり、実施例1と比較して発色性の低下を示した。また、耐光堅ろう度は5級であり、高い耐光性を示した。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
上記に示すように本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の趣旨を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2023年3月14日出願の日本特許出願に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明の織物は、長期間着用してもテカリ発生を抑制することができる。かかる織物は、衣料や繊維製品に使用することができ、例えば、長期間着用されるユニフォーム衣料、カジュアル衣料、フォーマル衣料、ビジネス衣料、学生衣料、に代表されるアウター衣料などの被服に好適に使用することができる。