IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 保土谷化学工業株式会社の特許一覧

特開2024-132917アンモニウムカチオンとキサンテン色素からなる酸性色素、該酸性色素を含有する着色組成物、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルター
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132917
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】アンモニウムカチオンとキサンテン色素からなる酸性色素、該酸性色素を含有する着色組成物、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルター
(51)【国際特許分類】
   C09B 11/28 20060101AFI20240920BHJP
   C09B 69/04 20060101ALI20240920BHJP
   C09B 67/44 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C09B11/28 C
C09B69/04 CSP
C09B67/44 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024028171
(22)【出願日】2024-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2023041257
(32)【優先日】2023-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】山縣 直哉
(72)【発明者】
【氏名】望月 太貴
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐熱性、耐水性および耐アルカリ性に優れるキサンテン色素を提供すること。該色素を含有する着色組成物を用いることにより、良好な色特性(色域、輝度、コントラスト比など)を有するカラーフィルター用着色剤を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンと、キサンテン色素のアニオンからなる酸性色素。

[式(1)中、Rは―Nまたはカチオン性芳香族複素環基を表し、R~Rはそれぞれ独立にアルキル基または芳香族炭化水素基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。R、Rはそれぞれ独立にアミノ基または芳香族炭化水素基を表し、Xは―O―、―S―、―NR―を表し、Rは―H、アルキル基、芳香族炭化水素基を表す。Lは連結基を表し、アルカンジイル基、2価の芳香族炭化水素基の少なくとも一方からなる2価基を表す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンと、
キサンテン色素のアニオンからなる酸性色素。
【化1】

[式(1)中、Rは、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~30の―N、または、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のカチオン性芳香族複素環基を表し、
~Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。
およびRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアミノ基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基を表し、
Xは―O―、―S―または―NR―を表し、Rは―H、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基を表す。
Lは炭素原子数1~30の連結基を表し、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルカンジイル基、および、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の2価の芳香族炭化水素基、の少なくとも一方からなる2価基を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、R~Rが炭素原子数1~5の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基である、請求項1に記載の酸性色素。
【請求項3】
前記一般式(1)において、Rがピリジニウム基、キノリニウム基またはイソキノリニウム基である、請求項1に記載の酸性色素。
【請求項4】
前記一般式(1)において、Lが炭素原子数1~4の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルカンジイル基、および、炭素原子数6~10の2価の芳香族炭化水素基、の少なくとも一方からなる2価基である、請求項1に記載の酸性色素。
【請求項5】
前記一般式(1)において、R~Rが置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のフェニルアミノ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の1,3-ジヒドロキシ-4-フェニル基である、請求項1に記載の酸性色素。
【請求項6】
前記キサンテン色素のアニオンが下記一般式(2)で表される、請求項1に記載の酸性色素。
【化2】

[式(2)中、R~R11は、それぞれ独立に、―H、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基を表し、
とR、R10とR11は互いに結合して環を形成していてもよい。
12~R16は、それぞれ独立に、
―H、ハロゲン原子、―OH、―CN、―NO、―OR17
―SO 、―SOM、置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のスルホニル基、
―COO、―COOM、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のカルボニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基、または、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基を表す。
17は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基を表す。
Mは無機カチオンを表し、複数存在する場合、同一でも異なっていてもよい。
ただし、R~R16全体で、少なくとも2つのアニオン性基を有する。]
【請求項7】
前記一般式(2)において、R~R11が、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~10の芳香族炭化水素基である、請求項6に記載の酸性色素。
【請求項8】
前記一般式(2)において、R12~R16が、―H、―SO 、置換基を有していてもよい炭素原子数0~10のスルホニル基、―COO、または、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のカルボニル基である、請求項6に記載の酸性色素。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の酸性色素を含有する着色組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤。
【請求項11】
請求項10に記載のカラーフィルター用着色剤を用いるカラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニウムカチオンとキサンテン色素からなる酸性色素、該酸性色素を含有する着色組成物、該酸性色素または該着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤および該着色剤を用いるカラーフィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機電界発光(有機EL)表示装置およびCCDやCMOSの撮像素子に、カラーフィルターが用いられる。カラーフィルターは、ガラスや透明樹脂などの透光性基板上に、染色法、顔料分散法、印刷法、電着法などにより、色素薄膜や色素-樹脂複合体膜などの着色層を積層することによって製造される。
【0003】
カラーフィルターに用いられる着色剤としては顔料や染料などがあるが、カラーフィルター製造時において、200℃以上の高温や紫外線照射などの条件下にさらされることから、耐熱性や耐光性などに優れる顔料が一般に使用されてきた。
【0004】
近年の傾向として、画像表示装置の省電力化が求められており、また、バックライトの利用効率を向上させるためにカラーフィルターの高輝度化が求められている。
【0005】
顔料は一般的に溶剤に不溶なため、樹脂などを含むカラーフィルター中では微粒子状で存在している。そのため、顔料を用いたカラーフィルターは、顔料粒子表面で透過光が反射・散乱することにより、輝度の低下や色純度に影響し、また、反射による消偏作用のためにカラー表示装置のコントラスト比が低下することが知られている。
【0006】
輝度やコントラスト比の低下の問題を改善するため、着色剤として染料のみを用いる方法または染料と顔料を併用する方法などが提案されている。染料は溶剤に可溶であるため、染料を使用したカラーフィルターは、顔料のみを着色剤として使用した場合に比べ消偏作用が抑えられ、分光特性に優れており、輝度やコントラストなどの向上が期待されている。
【0007】
下記式(B-1)~(B-3)などで表されるキサンテン色素(または染料)はその鮮明性からカラーフィルターなどの着色剤として利用されている化合物である(特許文献1~3など)。例えば、C.I.アシッドレッド289(式(B-1))やC.I.アシッドレッド52(式(B-2))などのキサンテン色素(C.I.はカラーインデックスの略称)をアゾピリドン色素と併用することにより、優れた赤色色調が得られる(特許文献1)。
【0008】
【化1】
【0009】
[式(B-1)中、nは1または2であり、Hのうち、いずれか1つまたは2つが「―SO 」で置換されている。式(B-1)はこれらの化合物の混合物であることを表す。]
【0010】
しかしながら、従来のキサンテン色素は、カラーフィルターの着色剤として用いるには耐熱性が不十分だった。これに対し、たとえば特許文献2では、カチオン部分の分子量が190~900の範囲であり、炭素原子数が5~20であるアルキル基またはベンジル基を少なくとも2つ以上有する四級アンモニウム塩化合物と、アシッドレッド289やアシッドレッド52とを造塩化合物とすることが開示されている(特許文献2、段落[0040]~[0049])。
【0011】
また、現在カラーフィルターの製造方法としては、フォトリソグラフィー法が主流となっている。フォトリソグラフィー法では、ブラックマトリクスを形成したガラス基板上に、カラーレジストを塗布し、プリベークを行って溶剤を除去した後、フォトマスクを介して露光を行う。次に、アルカリ現像液を用いて未露光部を洗浄・除去し(現像工程)、ポストベークを行って硬化させる(非特許文献1)。
【0012】
現像工程において、アルカリ現像液に染料が溶出すると、廃水処理において廃水の着色が問題となることがある。アシッドレッド289やアシッドレッド52に代表される酸性染料は、アルカリ水溶液への溶解性が高いため、染料の溶出が起こりやすく、これを防ぐため水やアルカリ水溶液への溶解性の低下が求められている。
【0013】
一般に、酸性染料の水溶性を低下させる方法として、長鎖アルキル基を有するアンモニウムカチオンとの造塩を行うことが知られている。例えば特許文献2では、アシッドレッド289やアシッドレッド52のアルカリ水溶液に、ジアルキル(アルキルがC14~C18)ジメチルアンモニウムクロライドや、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドを加えることで、造塩化合物が析出物として得られることが開示されている(特許文献2、段落[0154]~[0159])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002-265834号公報
【特許文献2】特開2013-41145号公報
【特許文献3】特開2017-83852号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】渡辺順次 監修、「カラーフィルターの成膜技術とケミカルス」、株式会社シーエムシー、1998年2月1日、p.8-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献2のように高性能のカラーフィルターの製造に対する検討は行われているが、本発明者の検討によれば、特許文献2の当該四級アンモニウム塩化合物との造塩化合物は、依然として耐熱性が不十分である。また、長鎖アルキル基を有するアンモニウムカチオンと酸性染料との造塩物は、水中での粘性物化が起こりやすく、工業スケールで安定して生産するには不向きである。そこで本発明は、耐熱性、耐水性および耐アルカリ性に優れるキサンテン色素を提供することを課題とし、該色素を含有する着色組成物を用いることにより、良好な色特性(色域、輝度、コントラスト比など)を有するカラーフィルター用着色剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果得られたものであり、以下を要旨とする。
【0018】
1.下記一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンと、
キサンテン色素のアニオンからなる酸性色素。
【0019】
【化2】
【0020】
[式(1)中、Rは、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~30の―N、または、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のカチオン性芳香族複素環基を表し、
~Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。
およびRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアミノ基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基を表し、
Xは―O―、―S―または―NR―を表し、Rは―H、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基を表す。
Lは炭素原子数1~30の連結基を表し、置換基を有してもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルカンジイル基、および、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の2価の芳香族炭化水素基、の少なくとも一方からなる2価基を表す。]
【0021】
2.前記一般式(1)において、R~Rが炭素原子数1~5の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基である酸性色素。
【0022】
3.前記一般式(1)において、Rがピリジニウム基、キノリニウム基またはイソキノリニウム基である酸性色素。
【0023】
4.前記一般式(1)において、Lが炭素原子数1~4の直鎖状もしくは分岐状のアルカンジイル基、および、炭素原子数6~10の2価の芳香族炭化水素基、の少なくとも一方からなる2価基である酸性色素。
【0024】
5.前記一般式(1)において、R~Rが置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のフェニルアミノ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の1,3-ジヒドロキシ-4-フェニル基である酸性色素。
【0025】
6.前記キサンテン色素のアニオンが下記一般式(2)で表される、酸性色素。
【0026】
【化3】
【0027】
[式(2)中、R~R11は、それぞれ独立に、―H、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基を表し、
とR、R10とR11は互いに結合して環を形成していてもよい。
12~R16は、それぞれ独立に、
―H、ハロゲン原子、―OH、―CN、―NO、―OR17
―SO 、―SOM、置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のスルホニル基、
―COO、―COOM、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のカルボニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基、または、
置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基を表す。
17は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基を表す。
Mは無機カチオンを表し、複数存在する場合、同一でも異なっていてもよい。
ただし、R~R16全体で、少なくとも2つのアニオン性基を有する。]
【0028】
7.前記一般式(2)において、R~R11が、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~10の芳香族炭化水素基である酸性色素。
【0029】
8.前記一般式(2)において、R12~R16が、―H、―SO 、置換基を有していてもよい炭素原子数0~10のスルホニル基、―COO、または、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のカルボニル基である酸性色素。
【0030】
9.前記(1.~8.のいずれかに記載の)酸性色素を含有する着色組成物。
【0031】
10.前記着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤。
【0032】
11.前記カラーフィルター用着色剤を用いるカラーフィルター。
【発明の効果】
【0033】
本発明の酸性色素は、耐熱性、耐水性および耐アルカリ性に優れており、該色素を含有する着色組成物はカラーフィルター用着色剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施の形態について以下に詳細に説明する。なお本発明は、以下の実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。まず、一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンについて説明する。
【0035】
一般式(1)において、Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数3~30の―N」における「―N」は、下記一般式(1-AM)で表されるアンモニウム基を意味する。
【0036】
【化4】
【0037】
式(1-AM)中、R~Rは、それぞれ独立に、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、
または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、
互いに結合して環を形成していてもよい。*は式(1)中のLとの結合部を意味する。Rが前記―Nで表されるとき、炭素数はR、R、Rの炭素数の合計であり3~30となるが、このときの炭素数は3~10であることが好ましい。また、炭素数の合計がこの範囲であれば、R、R、Rは各々異なる炭素数の基であってもよい。したがって、R、R、Rの炭素数の好ましい値は1~8であり、より好ましくは1~5である。
【0038】
一般式(1)において、Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のカチオン性芳香族複素環基」における「炭素原子数1~30のカチオン性芳香族複素環基」としては、具体的に、ピリジニウム基、キノリニウム基、イソキノリニウム基、イミダゾリウム基、オキサゾリウム基、チアゾリウム基などの芳香族複素環基があげられる。本発明において、一般式(1)において、Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のカチオン性芳香族複素環基」における「置換基」を「R」と表すことにする。Rは、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~10の芳香族炭化水素基を表す。Rはカチオン性芳香族複素環基中の任意のHの位置で置換されて結合していてもよく、Rが複数ある場合、同一でも異なっていてもよい。一般式(1)において、Rで表される「カチオン性芳香族複素環基」がピリジニウム基の場合、Rは下記一般式(1-PY)のように表される。
【0039】
【化5】
【0040】
式(1-PY)中、*は式(1)中のLとの結合部を意味する。
【0041】
一般式(1)において、R~R、Xで表される「―NR―」におけるR、および、Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30(または10)の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基」における「炭素原子数1~30(または10)の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基」としては、具体的に、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖状のアルキル基;
イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基などの分岐状のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘプチル基、シクロヘキシル基などの環状のアルキル基があげられる。
【0042】
一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」における「炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」、およびR~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」としては、具体的に、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基、アントリル基などがあげられる。
【0043】
一般式(1)においてRおよびRで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアミノ基」における「炭素原子数1~30のアミノ基」としては、具体的に、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジ-t-ブチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、などの、炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を有する一置換もしくは二置換アミノ基があげられる。これらの「炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基」または「炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」は、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」および「置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」と同じものが具体的にあげられる。
【0044】
一般式(1)において、Lは「炭素原子数1~30の連結基」を表し、Lに含まれる炭素原子の数が1以上であり30以下である2価基を意味する。Lで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルカンジイル基」における「炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルカンジイル基」としては、具体的に、
メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基などの直鎖状のアルカンジイル基;
プロパン-1,1-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-2,3-ジイル基、ヘキサン-2,5-ジイル基、オクタン-2,7-ジイル基などの、分岐状のアルカンジイル基;シクロペンタン-1,2-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、などの2価の環状のシクロアルカンジイル基、があげられる。
【0045】
一般式(1)において、Lで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の2価の芳香族炭化水素基」における「炭素原子数6~30の2価の芳香族炭化水素基」としては、具体的に、
1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、1,5-ナフチレン基、1,8-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基などがあげられる。
【0046】
一般式(1)において、Lは、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルカンジイル基」、または、「置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基」であってよく、
「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルカンジイル基」および「置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基」がそれぞれ1個または複数結合した基であってもよい。
したがって、Lで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルカンジイル基、および、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の2価の芳香族炭化水素基、の少なくとも一方からなる2価基」とは、例えば、2価の芳香族炭化水素基(アリーレン基)に1または2のアルカンジイル基が結合した基であってもよく、具体的に、フェネチル-4,β-ジイル基、1,4-フェニレンビス(メチレン)基(p-キシレン-α,α-ジイル基)、1,4-フェニレンビス(エチレン)基などがあげられる。
【0047】
一般式(1)において、R~R、RおよびLのいずれかで表される
「置換基を有していてもよい炭素原子数3~30の―N」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のカチオン性芳香族複素環基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアミノ基」、
「置換基を有してもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルカンジイル基」、または、
「置換基を有してもよい炭素原子数6~30の2価の芳香族炭化水素基」、における「置換基」としては、具体的に
重水素原子、水酸基(―OH)、チオール基(―SH)、シアノ基(―CN)、ニトロ基(―NO);
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;
炭素原子数0~20のアミノ基;
炭素原子数0~20のスルホニル基;
炭素原子数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基;
炭素原子数2~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルケニル基;
炭素原子数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基;
炭素原子数1~20のアシル基;
炭素原子数1~20のエーテル基;
炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;
炭素原子数1~20の芳香族複素環基;などがあげられる。なお「置換基」が炭素原子を含む場合、その炭素原子は上記の「炭素原子数3~30」、「炭素原子数1~30」、「炭素原子数1~10」、「炭素原子数6~20」、「炭素原子数6~30」に算入される。これらの「置換基」は1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに、前記例示した置換基を有していてもよい。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子(―O―)または硫黄原子(―S―)を介して互いに結合して環を形成していてもよい。ただし、上記のR~R、R、およびLで表される各基における「置換基」の数は最大10個とする。
【0048】
なお、一般式(1)において、R~RおよびRのいずれかで表される「置換基」を有する上記の各基において、「置換基」としてあげられている、
「炭素原子数0~20のアミノ基」、
「炭素原子数0~20のスルホニル基」、
「炭素原子数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基」、
「炭素原子数2~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルケニル基」、
「炭素原子数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基」、
「炭素原子数1~20のアシル基」、
「炭素原子数1~20のエーテル基」、
「炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基」、または
「炭素原子数1~20の芳香族複素環基」としては、具体的に、
アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジ-t-ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの、炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を有する一置換もしくは二置換アミノ基;
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20の―N(R~Rは前記R~Rと同じものを意味し、R~Rの炭素原子数の合計が3~20であることを意味する);
スルホンアミド基(―SO―NH)、トリフルオロメタンスルホニルイミドアニオン基(―SO―SOCF)などのスルホニルイミドアニオン基、メシル基、トシル基などの炭素原子数0~20のスルホニル基(―S(=O)―)を有する基;―SO 、―SOH、―SOM(Mは一般式(3)におけるMと同様のものが適用される);
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などの炭素原子数3~20の環状のアルキル基(シクロアルキル基);1-アダマンチル基、2-アダマンチル基;
ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基などの炭素原子数2~20の環状のアルケニル基(シクロアルケニル基);
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基などの炭素原子数3~20の環状のアルコキシ基(シクロアルコキシ基);1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基;
ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリリル基、ベンゾイル基などの炭素原子数1~20のアシル基;
エーテル基(―O―)、アミノオキシ基、「―O―(C=O)―R」で表されるエステル基(Rは任意のアルキル基または芳香族炭化水素基など)、リン酸基、リン酸エステル基などの炭素原子数0~20のエーテル基(―O―)を含有する基;
フェニル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;
ピリジル基、ピリミジリニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、オキサゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの炭素原子数2~20の芳香族複素環基;
フェニルオキシ基、トリルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基などの炭素原子数6~19のアリールオキシ基;などがあげられる。
【0049】
一般式(1)において、Rが「置換基を有していてもよい炭素原子数3~30の―N」である場合、R~Rは、炭素原子数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基であることが好ましく、R~Rの少なくとも2つが炭素原子数1~5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であることがより好ましい。また、R~Rは、炭素原子数2~4の直鎖状のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0050】
一般式(1)において、Rが「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のカチオン性芳香族複素環基」である場合、「カチオン性芳香族複素環基」はピリジニウム基、キノリニウム基またはイソキノリニウム基であることが好ましい。
【0051】
一般式(1)において、R~RおよびRで表される各基が置換基を有する場合、「置換基」の数は3以下であることが好ましく、各置換基の炭素原子数は1~5であることが好ましい。
【0052】
一般式(1)において、RおよびRが「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアミノ基」である場合、RおよびRが置換または無置換のフェニルアミノ基であることが好ましい。
【0053】
一般式(1)において、RおよびRが「置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」である場合、「置換基を有していてもよい炭素原子数6~30のフェニル基」であることが好ましい。「置換基」は、それぞれ独立に、―OH、炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基が好ましい。
【0054】
一般式(1)において、Lは、炭素原子数1~4の直鎖状もしくは分岐状のアルカンジイル基、および、炭素原子数6~10の2価の芳香族炭化水素基、の少なくとも一方からなる2価基が好ましく、炭素原子数2~4の直鎖状のアルカンジイル基がより好ましい。
【0055】
一般式(1)において、Xは、―O―、―S―または―NR―を表し、Rは―H、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基を表すが、耐熱性の観点から、Xは―NH―が好ましく、耐水性の観点からは―O―が好ましい。
【0056】
一般式(1)で表される本発明のアンモニウムカチオン(以下、単に「アンモニウムカチオン」というときには一般式(1)で表されるカチオンと任意のカウンターアニオンを有する化合物を指していうことがある)として好ましい化合物の具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。下記式(A-1)~(A-28)は、本発明の酸性色素中、アンモニウムカチオンの部分を表しており、酸性色素に含まれるキサンテン色素部は省略している。下記構造式では、水素原子を一部省略しており、生じ得るすべての立体異性体、互変異性体を包含しており、平面構造式を記載している。
【0057】
【化6】
【0058】
【化7】
【0059】
【化8】
【0060】
【化9】
【0061】
【化10】
【0062】
【化11】
【0063】
【化12】
【0064】
一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンを含む化合物の製造方法は、公知の方法を応用し、一般式(1)の各種の相当する基を有する試薬やその他の適当な試薬を用いて製造することができる。以下、本発明化合物の製造方法の一態様を記載するが、本発明の製造方法はこれらに限定されない。
【0065】
一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンを含む化合物は、相当する置換基を有するトリアジン化合物と、相当する置換基を有するアンモニウムカチオン化合物を、塩基存在下で縮合することにより得られる。または、相当する置換基を有するトリアジン化合物と、相当する置換基を有するアミンまたは含窒素芳香族複素環化合物との四級化反応により得られる。この製造における化学反応は、有機溶媒の存在下で行ってもよいし、無溶媒で行ってもよい。
【0066】
一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンを含む化合物の製造方法において、縮合反応で使用されるアンモニウムカチオン化合物は、トリアジン化合物1.0molに対して、1.0mol以上、5.0mol以下が好ましく、1.2mol以上、3.0mol以下がより好ましい。一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンである化合物の製造方法において、縮合反応で使用される塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化リチウムなどの無機塩基や、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、2,4,6-コリジンなどの有機塩基をあげることができ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジイソプロピルエチルアミン、または2,4,6-コリジンが好ましい。
【0067】
一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンを含む化合物の製造方法において、四級化反応で使用されるアミンまたは含窒素芳香族複素環化合物は、トリアジン化合物1.0molに対して、2.0mol以上、100mol以下が好ましく、10mol以上、60mol以下がより好ましい。
【0068】
一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンを含む化合物の製造方法における各生成物の単離や精製は、通常の有機合成で用いられる方法、例えば、カラムクロマトグラフィーによる精製;シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製;溶媒による再結晶や晶析法、分散洗浄などの公知の方法を適宜組み合わせて行うことができる。また、これらの化合物の同定、分析、光学特性、熱物性、その他物性の評価には、核磁気共鳴分析(NMR)、分光光度計による吸光度測定や紫外可視吸収スペクトル(UV-Vis)測定、熱重量測定-示差熱分析(TG-DTA)などを行うことができる。これらの分析方法は、得られた化合物の溶解性、色彩評価や耐熱性評価にも用いることができる。
【0069】
本発明の酸性色素は、前記一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンと、キサンテン色素から構成されている。以下、キサンテン色素について説明する。本発明の酸性色素に含まれるキサンテン色素は、アニオン性基を有するキサンテン色素である。以下、単に「キサンテン色素」というときには、カウンターカチオンを除く、キサンテン構造を含むアニオン部分のみを指していうことがある。本発明における酸性色素のアニオン性基としては、―SO 、スルホニルイミドアニオン基、―COOなどのアニオン性基であれば特に限定されないが、―SO であることが好ましい。
【0070】
本発明の酸性色素におけるキサンテン色素としては、種々のキサンテン色素を適用することができる。さらに本発明のアンモニウムカチオンと組み合わせることのできる色素としては、キサンテン色素の他に、例えば、アニオン性基を有するトリアリールメタン系色素、アニオン性基を有するアゾ系色素、アニオン性基を有するシアニン系色素、アニオン性基を有するフタロシアニン系色素などをあげることができる。
【0071】
本発明の酸性色素におけるキサンテン色素としては、前記一般式(2)で表されるキサンテン色素が好ましい。
【0072】
一般式(2)において、R~R17で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基」における「炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基」としては、具体的に、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖状のアルキル基;
イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基などの分岐状のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、2-エチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などの環状のアルキル基(シクロアルキル基)、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基;があげられる。
【0073】
一般式(2)において、R~R17で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」における「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基、ナフチル基、アズレニル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などがあげられる(本発明における「芳香族炭化水素基」とは、アリール基または縮合多環芳香族基も含む)。
【0074】
一般式(2)において、R~R16で表される「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子などがあげられる。「ハロゲン原子」としては、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0075】
一般式(2)において、R12~R16で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のスルホニル基」は、「―SO―R18」(もしくは「―S(=O)―R18」)を表し、例えば、「―S(=O)―NR1920」、「―S(=O)―NR19―S(=O)―R18」で表されるスルホンアミド基、「―S(=O)―N―S(=O)―R18」で表されるスルホニルイミドアニオン基なども含む。この場合、R18~R20は、R~R17における「置換基」と同様のものが適用される。例えば、R18~R20が、「置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のスルホニル基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のカルボニル基」であってもよい。
【0076】
一般式(1)において、R12~R16で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20のカルボニル基」は、「―(C=O)―R18」を表し、例えば「―(C=O)―O―R18」で表されるエステル基、「―(C=O)―NR1920」、「―(C=O)―NR19―S(=O)―R18」で表されるアミド基なども含む。R18~R20は、R~R17における「置換基」と同様のものが適用される。例えば、R18~R20が、「置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のスルホニル基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のカルボニル基」であってもよい。
【0077】
一般式(2)において、R12~R16で表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基」における「炭素原子数0~30のアミノ基」は、置換基を有していても有していなくてもよく、無置換アミノ基(―NH)、一置換アミノ基、二置換アミノ基などがあげられる。一置換アミノ基または二置換アミノ基における炭素原子数は、例えば、1~20であり、1~10であってよい。「置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基」は、―NH―、―N<または―N=CH―を介して、前述の「炭素原子数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基」、「炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」、「炭素原子数1~30の芳香族複素環基」が結合した基であってもよい。一置換アミノ基としては、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、アセチルアミノ基、フェニルアミノ基などがあげられる。二置換アミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジへキシルアミノ基などの炭素原子数2~20のジアルキルアミノ基;ジアリルアミノ基などの炭素原子数4~20のジアルケニルアミノ基;ジフェニルアミノ基、N-アセチル-N-フェニルアミノ基、N-ブチル-N-フェニルアミノ基などがあげられる。
【0078】
一般式(2)において、「―SOM」または「―COOM」における「M」で表される「無機カチオン」としては、水素イオン;リチウムイオン、ナトリウムイオン、セシウムイオンなどのアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン;ニッケルイオン、コバルトイオンなどの遷移金属イオン、があげられる。ここでの無機カチオンは、カウンターアニオンの価数に合わせてアニオン部分あたりの数が変動する。例えば+1価のリチウムイオンの場合、「―SOM」および「―COOM」は各々「―SOLi」および「―COOLi」となり、+2価のカルシウムイオンの場合、「―SOM」および「―COOM」は各々「(―SOCa」および「(―COO)Ca」となる。
【0079】
一般式(2)において、R~R17で表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のスルホニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のカルボニル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数0~30のアミノ基」における「置換基」としては、具体的に、
重水素原子、水酸基(―OH)、チオール基(―SH)、シアノ基(―CN)、ニトロ基(―NO);
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;
炭素原子数0~20のアミノ基;
炭素原子数0~20のスルホニル基;
炭素原子数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基;
炭素原子数2~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルケニル基;
炭素原子数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基;
炭素原子数1~20のアシル基;
炭素原子数1~20のエーテル基;
炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;
環形成原子数5~20の芳香族複素環基;などがあげられる。なお「置換基」が炭素原子を含む場合、その炭素原子は上記の「炭素原子数1~30」、「炭素原子数6~30」、「炭素原子数0~30」に算入される。これらの「置換基」は1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに、前記例示した置換基を有していてもよい。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子(―O―)または硫黄原子(―S―)を介して互いに結合して環を形成していてもよい。ただし、上記のR~R18で表される各基における「置換基」の数は最大10個とする。
【0080】
なお、一般式(1)において、R~R17のいずれかで表される「置換基」を有する前記の各基において、「置換基」としてあげられている、
「炭素原子数0~20のアミノ基」、
「炭素原子数0~20のスルホニル基」、
「炭素原子数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基」、
「炭素原子数2~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルケニル基」、
「炭素原子数1~20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルコキシ基」、
「炭素原子数1~20のアシル基」、
「炭素原子数1~20のエーテル基」、
「炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基」、または
「炭素原子数1~20の芳香族複素環基」として、具体的には、一般式(1)における「置換基」の具体例と同様のものが適用される。
【0081】
一般式(2)において、R~R11は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~10の芳香族炭化水素基が好ましい。なお、R~R11において「置換基」が炭素原子を含む場合、前記「炭素原子数1~8」および「炭素原子数6~10」に算入されず「置換基」の数は最大5個が好ましく、各基における最大の炭素原子数は「20」が好ましく、「12」がより好ましい。また、R~R11のうち少なくとも1つの基が、「置換基」として、―SO 、―COO、またはスルホニルイミドアニオン基のうち少なくとも1つ有することが好ましく、―SO 、またはスルホニルイミドアニオン基を有することがより好ましい。
【0082】
一般式(2)において、R12~R16は、―H、
―SO 、置換基を有していてもよい炭素原子数0~10のスルホニル基、
―COO、または、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10のカルボニル基であることが好ましく、
12~R16の少なくとも1つが―SO 、または―SONR19―SO18であることがより好ましい。なお、R12~R16において「置換基」が炭素原子を含む場合、前記「炭素原子数0~10」および「炭素原子数1~10」に算入されず「置換基」の数は最大5個が好ましく、各基における最大の炭素原子数は「20」が好ましく、「12」がより好ましい。
【0083】
一般式(2)において、R17は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数6~10のフェニル基が好ましい。
【0084】
前記一般式(2)で表されるアニオンとなるキサンテン色素としては、例えば、C.I.Acid Red 52、C.I.Acid Red 289などのアニオン性基を有するキサンテン系色素があげられる。以下、本発明のキサンテン色素として好ましい化合物の具体例を下記式(X-1)~(X-28)の構造式で示すが、本発明は、これらの化合物に限定されない。なお、本発明の酸性色素中、キサンテン色素の部分を示しており、一般式(1)で表されるアンモニウムカチオン部は省略している。下記構造式では、水素原子を一部省略しており、生じ得るすべての立体異性体、互変異性体を包含しており、平面構造式を記載している。
【0085】
【化13】
【0086】
【化14】
【0087】
【化15】
【0088】
【化16】
【0089】
【化17】
【0090】
【化18】
【0091】
【化19】
【0092】
本発明の酸性色素におけるキサンテン色素としては、単一でも異なる2以上の組み合わせでもよく、前記例示したキサンテン色素から選ばれる単一または2~5の組み合わせであることが好ましく、C.I.Acid Red 52、C.I.Acid Red 289、または、(X-1)~(X-5)のいずれかから選ばれる単一または2~5の任意の組み合わせであることが好ましく、(X-1)~(X-5)のいずれかから選ばれる単一または2~5の任意の組み合わせであることがより好ましい。
【0093】
本発明における酸性色素は、公知の方法を応用し、例えば、前記一般式(1)で表されるアンモニウムカチオンと任意の酸性染料との塩交換反応により得ることもできる。以下、本発明化合物の製造方法の一例を記載するが、本発明の製造方法はこれらに限定されない。
【0094】
本発明における酸性色素は、相当する置換基を有するアンモニウムカチオンと、相当する置換基を有する酸性染料とを、造塩することにより得られる。この製造における化学反応は、有機溶媒の存在下で行ってもよいし、水の存在下で行ってもよく、メタノールまたは水の存在下で行うのが好ましい。また、必要に応じて酸または塩基の存在下で行ってもよいし、中性条件下で行ってもよい。
【0095】
本発明の酸性色素の製造方法において、造塩反応で使用されるトリアジン骨格を有するアンモニウムカチオン化合物は、酸性染料1.0molに対して、1.0mol以上、5.0mol以下が好ましく、1.2mol以上、3mol以下がより好ましい。また、本発明の酸性色素の製造方法において、造塩反応で使用される酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸や、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸をあげることができ、塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化リチウムなどの無機塩基や、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、2,4,6-コリジンなどの有機塩基をあげることができる。
【0096】
本発明の製造方法における各生成物の単離や精製は、通常の有機合成で用いられる方法、例えば、カラムクロマトグラフィーによる精製;シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製;溶媒による再結晶や晶析法、分散洗浄などの公知の方法を適宜組み合わせて行うことができる。また、これらの化合物の同定、分析、光学特性、熱物性、その他物性の評価には、核磁気共鳴分析(NMR)、分光光度計による吸光度測定や紫外可視吸収スペクトル(UV-Vis)測定、熱重量測定-示差熱分析(TG-DTA)などを行うことができる。これらの分析方法は、得られた化合物の溶解性、色彩評価や耐熱性評価にも用いることができる。
【0097】
本発明の酸性色素における耐水性または耐アルカリ性の評価は、水系媒体中で染料固体の粘生物化が起こるか否かによって判断することができる。ここで本明細書における「粘性物化」とは、染料固体が軟化することを意味する。析出した粒状または粉状の染料固体が粘性物化すると、ガム状または粘土状の塊を形成し、取り出し作業の負担増加や機器の破損の原因となる。粘性物化の有無の判断方法は、特に限定されないが、染料固体の分散液を24時間静置することにより判断することができる。分散液としては、特に限定されないが、反応工程や晶析工程において染料固体が析出した分散液を用いてもよく、乾燥後の染料固体を分散媒質中に加え、撹拌または超音波処理した分散液を用いてもよい。耐水性または耐アルカリ性の評価としては、乾燥後の染料固体を用いる方法が好ましい。分散媒質としては、特に限定されないが、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、または下記有機溶媒を用いることができ、耐水性または耐アルカリ性の評価としては、水またはアルカリ性水溶液を用いることが好ましい。アルカリ性水溶液としては、特に限定されないが、前記無機カチオンの水酸化物塩、もしくは炭酸塩、または有機塩基の水溶液を用いることができ、0.04質量%水酸化ナトリウム水溶液、0.04質量%水酸化カリウム水溶液を用いることが好ましく、0.04質量%水酸化カリウム水溶液を用いることがより好ましい。
【0098】
本発明の酸性色素は、1種または分子構造の異なる2種以上を組み合わせて使用(例えば混合)してもよい。当該2種以上を使用する際は、酸性色素全体に占める質量濃度比において、最も少ない方の1種の酸性色素の質量濃度比は0.1~50質量%である。酸性色素の種類は1種または2種であるのが好ましい。
【0099】
本発明の酸性色素、該色素を含有する着色組成物、該色素または該着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤は、着色剤およびカラーフィルターの製造工程において、樹脂などを含有する有機溶媒に良好に溶解または分散させる必要があるため、有機溶媒に対する溶解度や分散性が高いことが好ましい。有機溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などのエーテル類;メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノンなどのケトン類;メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類;3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類;ジアセトンアルコール(DAA)など;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO);エーテルルム(トリクロロメタン)、などがあげられ、PGME、PGMEA、シクロヘキサノンまたはDAAが好ましく、樹脂の溶解性とトリアリールメタン色素の溶解性の両立の観点からはPGMEまたはPGMEAが特に好ましい。これらの溶剤は、単独で用いても2種類以上混合して用いてもよい。
【0100】
本発明の酸性色素の有機溶媒への溶解度は、例えば次のように測定することができる。酸性色素と有機溶媒を適当な比率で混合し、超音波処理した後、室温(25℃、または25℃前後±2℃範囲内)下、不溶分の有無を目視で確認することにより、溶解度を評価することができる。溶解度の測定に用いる有機溶媒としては、特に限定されず、前記有機溶媒を用いることができるが、PGME、PGMEA、シクロヘキサノンまたはDAAが好ましく、PGMEまたはPGMEAがより好ましい。
【0101】
本発明の酸性色素は、有機溶媒に溶解して調製した溶液を用いて、室温付近(例えば23~27℃)で測定する紫外可視吸収スペクトルの可視光領域(例えば、350~800nmの波長範囲)において最大の吸光度を示す、極大吸収波長が観測される。本発明においては、PGME溶液における極大吸収波長が、550~650nmの波長範囲にあることが好ましい。なお、色素濃度は、0.005~0.02mmol/Lが好ましい。溶媒は、色素を溶解するものであれば限定されないが、溶解条件により紫外可視吸収スペクトルの吸収波長が大きくシフトしないものが好ましく、PGMEが好ましい。
【0102】
本発明の酸性色素を各種樹脂溶液と混合し、ガラス基板上に塗布することにより塗膜を作製できる。得られた塗膜について、分光測色計を用いて測色し、塗膜の色彩値を得ることで色彩評価を行うことができる。色彩値はCIE L表色系などが一般的に用いられる。具体的には、膜試料の色彩値L*、a、bを測定し、適当な温度での加熱前後の色彩値の色差(ΔEab)や極大吸収波長での透過率の変化量(色素残存率)より、耐熱性を判断することができる。カラーフィルターに応用する場合、230℃前後の温度での色差を耐熱性の指標として用いることができる。ΔEabは、その値が小さいほど、熱分解による色の変色が少なく、耐熱性が高いことを意味し、10以下が好ましく、5以下がより好ましい。色素残存率は、その値が高いほど、熱分解による色の変化が少なく、耐熱性が高いことを意味し、75%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0103】
本発明のカラーフィルター用着色剤は、本発明の酸性色素、または該酸性色素を少なくとも1種含有する着色組成物と、カラーフィルターの製造に一般的に使用される成分とを含む。一般的なカラーフィルターは、例えば、フォトリソグラフィー工程を利用した方法の場合、染料や顔料などの色素を樹脂成分(モノマー、オリゴマーを含む)や溶媒と混合して調製した液体を、ガラスや樹脂などの基板の上に塗布し、フォトマスクを用いて光重合させ、溶媒に可溶/不溶な色素-樹脂複合膜の着色パターンを作製し、洗浄後、加熱することにより得られる。また電着法や印刷法においても、色素を樹脂やその他の成分と混合したものを用いて着色パターンを作製する。よって、本発明のカラーフィルター用着色剤における具体的な成分としては、少なくとも1種の本発明における酸性色素、その他の染料や顔料などの色素、樹脂成分、有機溶媒、および光重合開始剤などその他の添加剤があげられる。また、これらの成分から取捨選択してもよく、必要に応じて他の成分を追加してもよい。
【0104】
本発明の酸性色素または該酸性色素を含有する着色組成物をカラーフィルター用着色剤として用いる場合、各色用カラーフィルターに用いてもよいが、青色または、赤色カラーフィルター用着色剤として用いるのが好ましい。
【0105】
本発明のカラーフィルター用着色剤は、1種または2種以上の本発明における酸性色素を単独で使用してもよく、色調の調整のために、すなわち分光特性を調整するために、さらに下記のような他の染料または顔料などの公知の色素を混合してもよい。
【0106】
赤色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、特に限定されないが、C.I.ピグメントレッド177、209、242、254、255、264、269、C.I.ピグメントオレンジ38、43、71などの本発明に属さない赤色系顔料;その他の本発明に属さない赤色系レーキ顔料;C.I.ピグメントイエロー138、139、150などの本発明に属さない黄色系顔料;C.I.アシッドレッド88、C.I.ベーシックバイオレット10などの本発明に属さない赤色染料、などがあげられる。
青色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、特に限定されないが、C.I.ベーシックブルー3、7、9、54、65、75、77、99、129、C.I.ベーシックバイオレット10などの塩基性染料;C.I.アシッドブルー9、74、C.I.アシッドレッド52、289などの酸性染料;ディスパースブルー3、7、377などの分散染料;スピロン染料;シアニン系、インディゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、メチン系、本発明に属さないトリアリールメタン系、インダンスレン系、オキサジン系、ジオキサジン系、アゾ系、キサンテン系色素;その他の青色系レーキ顔料、などの青色系または紫色系の染料または顔料があげられる。
緑色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、特に限定されないが、C.I.ピグメントグリーン7、10、36、47、58、59,62、63などの緑色顔料;C.I.ピグメントイエロー83、138、139、150、180、185などの黄色顔料;スピロン染料;シアニン系、インディゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、メチン系、本発明に属さないトリアリールメタン系、インダンスレン系、オキサジン系、ジオキサジン系、アゾ系、キサンテン系、イソインドリン系、キノフタロン系色素;その他のレーキ顔料、などの青色系、黄色系または緑色系の染料または顔料があげられる。
【0107】
これらの色素と本発明に属する酸性色素を用いることにより、明度やコントラスト比に優れた赤色、青色または緑色カラーフィルターを得ることができる。
【0108】
本発明のカラーフィルター用着色剤における他の色素の混合比は、本発明における酸性色素(2種以上の場合にはそれらの合計)に対して5~2000質量%であるのが好ましく、10~1000質量%がより好ましい。液状のカラーフィルター用着色剤中における染料などの色素成分の混合比は、着色剤全体に対して0.5~70質量%が好ましく、1~50質量%がより好ましい。
【0109】
本発明のカラーフィルター用着色剤における樹脂成分としては、これらを使用して形成されるカラーフィルター樹脂膜の製造方式や使用時に必要な性質を有するものであれば、公知のもの(例えば特許文献3(特開2017-83852号公報)、段落[0229]合成例23に記載の「バインダー樹脂(B1)」など)を使用することができる。具体的には、例えば、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、フェノール(ノボラック)樹脂、その他の透明樹脂、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂があげられ、これらのモノマーまたはオリゴマー成分とを適宜組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂の共重合体を組み合わせて使用することもできる。これらのカラーフィルター用着色剤における樹脂の含有量は、液状の着色剤の場合、5~95質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。
【0110】
本発明の着色組成物は、カラーフィルター用着色剤としての性能を高めるために、化合物の他の成分として、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、その他のカラーフィルター用着色剤の製造時に混合する添加剤、などの有機化合物などを添加することができる。ただし、着色組成物におけるこれらの添加剤の含有率は適量であることが好ましく、本発明の着色組成物の溶媒中の溶解性を低下させたり、もしくは必要以上に向上させたり、また、カラーフィルター製造時に用いる他の同種の添加剤の効果に影響しない範囲の含有率であることが好ましい。これらの添加物は、着色組成物の調製の任意のタイミングで投入することができる。
【0111】
本発明のカラーフィルター用着色剤におけるその他の添加剤としては、光重合開始剤や架橋剤などの樹脂の重合や硬化に必要な成分があげられ、また、液状のカラーフィルター用着色剤中の成分の性質を安定させるために必要な界面活性剤や分散剤などがあげられる。これらはいずれも、カラーフィルター製造用の公知のものを使用することができ、特に限定されない。カラーフィルター用着色剤の固形分全体におけるこれらの添加剤の総量の混合比は、5~60質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。
【実施例0112】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。合成実施例で記載した試薬は東京化成工業株式会社製、シグマアルドリッチ社製、Alfa Aesar社製等のものを使用した。また、合成実施例における反応はすべて、冷却管、撹拌装置、温度計を備えた反応容器を用いて行った。なお、下記合成実施例における化合物の同定は、H-NMR分析(ブルカー社製核磁気共鳴装置、型式:AscendTM 400MHz)により行った。
【0113】
[合成実施例1]カチオン(C-1)の合成
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた1000mL容4つ口フラスコに塩化シアヌル60.0g(0.319mol)、アセトン300mLを加え、40℃で30分間撹拌した後、氷冷下、5℃に冷却した。反応液にアニリン60.6g(0.638mol)を加え、2時間撹拌した後、1M水酸化ナトリウム水溶液を加えpHを10に調整し、室温で終夜撹拌した。反応液を減圧ろ過した後、残渣をアセトン100mLで2回洗浄した。残渣を室温で終夜減圧乾燥し、中間体(001)(90.8g,収率96%)を白色固体として得た。
【0114】
【化20】
【0115】
続いて、以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた500mL容4つ口フラスコに中間体(001)30.0g(0.100mol)、アセトン300mLを加え、室温で30分間撹拌した後、コリン(47~50%水溶液)28.4g(0.110mol)を加え、室温で19時間撹拌した。反応混合物を減圧ろ過し、残渣をアセトン200mLに加え、室温で30分間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を室温で16時間減圧乾燥し、カチオン(C-1)(24.6g,収率61%)を白色固体として得た。
【0116】
得られた白色固体のNMR測定を行い、以下の25個の水素のシグナルを検出し、下記式(C-1)で表される化合物の構造と同定した。
【0117】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=9.80(2H)、7.73(4H)、7.31(4H)、7.04(2H)、4.77(2H)、3.83(2H)、3.19(9H)。
【0118】
【化21】
【0119】
[合成実施例2]カチオン(C-2)の合成
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた500mL容4つ口フラスコに3-クロロ-1-プロパノール20.0g(0.211mol)、ヨウ化ナトリウム158.6g(1.058mol)、乾燥アセトン200mLを加え、加熱還流下(58℃)、17時間撹拌した。反応液を室温まで放冷し、減圧ろ過した後、残渣をアセトン200mLで洗浄した。ろ液の溶媒を減圧留去した後、ジエチルエーテル/n-ヘプタン(1:1)200mLを加え、スパーテルで固体を砕いた後、減圧ろ過し、残渣をジエチルエーテル/n-ヘプタン(1:1)(200mL)で洗浄した。ろ液を10%Na水溶液100mL、水100mL、飽和食塩水100mLで順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧ろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。残渣を室温で12時間減圧乾燥し、中間体(002)(27.2g,収率69%)を無色オイルとして得た。
【0120】
【化22】
【0121】
続いて、以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに中間体(002)20.0g(0.108mol)、トリエチルアミン21.8g(0.215mol)、トルエン20mLを加え、80℃で4.5時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、減圧ろ過した後、残渣をアセトン50mLに加え、室温で1時間撹拌し、減圧ろ過した。残渣をアセトン50mLで同様に洗浄し、減圧ろ過した後、残渣を室温で2時間減圧乾燥し、中間体(003)(26.8g,87%)を白色固体として得た。
【0122】
【化23】
【0123】
続いて、以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに中間体(003)2.9g(10mmol)、水酸化ナトリウム0.4g(10mmol)、アセトニトリル30mLを加え、室温で30分間撹拌した後、中間体(001)3.0g(10mmol)を加え、40℃室温で49時間撹拌した。反応液を室温まで放冷した後、減圧ろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチル100mLに加え、超音波洗浄しながら固体を掻き取り、室温で30分間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を同様に酢酸エチル100mLで洗浄し、残渣をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶媒:ジクロロメタン/メタノール=1/0~10/1(体積比))で精製した後、80℃で12時間減圧乾燥し、カチオン(C-2)(4.4g,80%)を白色固体として得た。
【0124】
得られた白色固体のNMR測定を行い、以下の33個の水素のシグナルを検出し、下記式(C-2)で表される化合物の構造と同定した。
【0125】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=9.82-9.56(2H)、7.89-7.55(4H)、7.35-7.26(4H)、7.06-6.99(2H)、4.39(2H)、3.34-3.23(8H)、2.10(2H)、1.91(9H)。
【0126】
【化24】
【0127】
[合成実施例3]カチオン(C-3)の合成
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに中間体(002)7.2g(39mol)、トリブチルアミン14.4g(77.8mmol)、トルエン10mLを加え、加熱還流下、108~112℃で22時間撹拌した後、反応液を室温まで冷却した。反応液にトルエン50mLを加え、10分間撹拌した後、デカンテーションして上澄みを除く操作を4回行った。残渣を110℃で終夜減圧乾燥し、中間体(004)(12.4g,86%)を淡黄褐色オイルとして得た。
【0128】
【化25】
【0129】
続いて、以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた300mL容4つ口フラスコに中間体(004)12.4g(33.4mmol)、水酸化ナトリウム1.0g(26mmol)、アセトニトリル130mLを加え、室温で30分間撹拌した後、中間体(001)7.8g(26mmol)を加え、40℃室温で39時間撹拌した。反応液を室温まで放冷した後、減圧ろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶媒:ジクロロメタン/メタノール=1/0~50/1(体積比))で精製した後、溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチル100mLに加え、超音波洗浄しながら固体を掻き取り、室温で30分間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を80℃で終夜減圧乾燥し、カチオン(C-3)(6.8g,41%)を白色固体として得た。
【0130】
得られた白色固体のNMR測定を行い、以下の45個の水素のシグナルを検出し、下記式(C-3)で表される化合物の構造と同定した。
【0131】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=9.73-9.60(2H)、7.83-7.70(4H)、7.35-7.26(4H)、7.07-6.99(2H)、4.39(2H)、3.38-3.28(2H)、3.20(6H)、2.12(2H)、1.58(6H)、1.30(6H)、0.92(9H)。
【0132】
【化26】
【0133】
[合成実施例4]カチオン(C-4)の合成
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに中間体(002)10.2g(54.6mmol)、ピリジン8.8g(0.11mol)、トルエン20mLを加え、加熱還流下、94℃で2時間撹拌した後、反応液を室温まで冷却した。反応液にトルエン50mLを加え、10分間撹拌した後、デカンテーションして上澄みを除く操作を2回行った。残渣を60℃で3時間減圧乾燥し、中間体(005)(14.0g,97%)を淡黄色オイルとして得た。
【0134】
【化27】
【0135】
続いて、以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた500mL容4つ口フラスコに中間体(005)14.1g(53.3mmol)、水酸化ナトリウム2.1g(53mmol)、アセトニトリル260mLを加え、室温で30分間撹拌した後、中間体(001)15.7g(52.7mmol)を加え、40℃室温で42時間撹拌した。反応液を室温まで放冷した後、減圧ろ過し、ろ液の溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶媒:ジクロロメタン/メタノール=1/0~20/1(体積比))で精製した後、溶媒を減圧留去した。残渣を80℃で終夜減圧乾燥し、カチオン(C-4)(8.9g,32%)を暗緑色固体として得た。
【0136】
得られた白色固体のNMR測定を行い、以下の23個の水素のシグナルを検出し、下記式(C-3)で表される化合物の構造と同定した。
【0137】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=9.73-9.57(2H)、9.12-9.18(2H)、8.61(1H)、8.17(2H)、7.84-7.53(4H)、7.38-7.24(4H)、7.09-6.98(2H)、4.79(2H)、4.43(2H)、2.46(2H)。
【0138】
【化28】
【0139】
[合成実施例5]カチオン(C-5)の合成
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた500mL容4つ口フラスコにN-(3-ブロモプロピル)フタルイミド30.0g(110mmol)、アセトニトリル220mLを加え、60℃に昇温した後、トリエチルアミン22.4g(219mmol)を加え、60℃で44時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、溶媒を減圧留去した後、残渣に酢酸エチル80mLを加え、40分間超音波洗浄し、減圧ろ過した。残渣を酢酸エチル80mLに加え、40分間超音波洗浄し、減圧ろ過する操作を更に2回行った。残渣を60℃で終夜減圧乾燥し、中間体(006)(40.0g,99%)を白色固体として得た。
【0140】
【化29】
【0141】
続いて、以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた500mL容4つ口フラスコに中間体(006)40.0g(0.108mol)、エタノール356mLを加え、室温で1時間撹拌した後、ヒドラジン一水和物22.0g(434mmol)を加え、70℃で1時間撹拌した。反応液を室温まで放冷し、減圧ろ過した後、ろ液の溶媒を減圧留去した。残渣をメタノール50mLに溶解させ、活性炭8gを加えた後、室温で30分間撹拌し、減圧ろ過した。ろ液の溶媒を減圧留去した後、残渣を同様にメタノール中活性炭処理し、減圧ろ過した。ろ液の溶媒を減圧留去した後、残渣を80℃で終夜減圧乾燥し、中間体(007)(24.6g,95%)を白色固体として得た。
【0142】
【化30】
【0143】
続いて、以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた250mL容4つ口フラスコに中間体(001)15.0g(49.9mmol)、中間体(007)14.9g(59.9mmol)、乾燥N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMF)100mLを加え、40℃室温で72時間撹拌した。反応液を室温まで放冷し、酢酸エチル1.2Lに滴下しながら加え、室温で30分間撹拌した後、デカンテーションして上澄みを除いた。残渣をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶媒:ジクロロメタン/メタノール=10/1~5/1(体積比))で精製した後、溶媒を減圧留去した。残渣を60℃で終夜減圧乾燥し、カチオン(C-5)(19.8g,87%)を白色固体として得た。
【0144】
得られた白色固体のNMR測定を行い、以下の33個の水素のシグナルを検出し、下記式(C-5)で表される化合物の構造と同定した。
【0145】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=9.12(2H)、7.77(4H)、7.27(4H)、6.97(2H)、3.41(2H)、3.29-3.11(8H)、1.89(2H)、1.14(9H)。
【0146】
【化31】
【0147】
[合成実施例6]カチオン(C-6)の合成
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた250mL容4つ口フラスコに塩化シアヌル10.0g(54.2mmol)、アセトン65mLを加え、氷冷下、10℃以下に冷却した後、3-クロロ-1-プロパノール6.7g(71mmol)、2,4,6-コリジン6.7g(55mmol)を加え、室温で24時間撹拌した。反応液を減圧ろ過し、残渣をアセトン100mLで2回洗浄した後、ろ液を水100mLで希釈し、ジクロロメタン150mLで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧ろ過した後、ろ液の溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(担体:シリカゲル、溶媒:n-ヘプタン/ジクロロメタン=2/1(体積比))で精製した後、溶媒を減圧留去した。残渣を室温で終夜減圧乾燥し、中間体(008)(11.2g,85%)を無色オイルとして得た。
【0148】
【化32】
【0149】
続いて、以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた250mL容4つ口フラスコにレゾルシノール11.0g(0.100mol)、スルホラン30mL、クロロベンゼン30mLを加え、氷冷下、10℃以下に冷却した後、無水塩化アルミニウム13.4g(0.100mol)、中間体(008)6.1g(25mmol)を加え、室温で62時間撹拌した。反応液を氷水200gに注加し、水300mLで希釈した後、濃塩酸20mLで酸性にし、室温で1時間撹拌した。混合物を減圧ろ過した後、残渣をアセトニトリル50mLで洗浄した。残渣を室温で終夜風乾し、中間体(009)(8.6g,88%)を淡黄色固体として得た。
【0150】
【化33】
【0151】
続いて、以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに中間体(009)2.3g(6.0mmol)、ピリジン25.1g(0.317mol)を加え、90℃で21時間撹拌した。反応液を室温まで放冷した後、減圧ろ過し、残渣をアセトニトリル50mLで洗浄した。残渣をメタノール15mLに加え、50℃で30分間撹拌した後、室温まで放冷した。混合物をアセトニトリル50mLで希釈し、室温で30分間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を80℃で終夜減圧乾燥し、カチオン(C-6)(2.7g,94%)を白色固体として得た。
【0152】
得られた白色固体のNMR測定を行い、以下の21個の水素のシグナルを検出し、下記式(C-6)で表される化合物の構造と同定した。
【0153】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=12.65(2H)、10.64(2H)、9.19(2H)、8.62(1H)、8.17(2H)、8.09(2H)、6.50(2H)、6.39(2H)、4.85(2H)、4.65(2H)、2.58-2.45(2H)。
【0154】
【化34】
【0155】
[合成実施例7]染料(D-1)の合成
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた500mL容4つ口フラスコにC.I.Acid Red 289を61.6g(91.0mmol)、1-ヨードプロパン46.4g(273mmol)、炭酸カリウム37.7g(273mmol)、n-BuOH184mLを加え、加熱還流下、100℃で3時間撹拌した。反応液を室温まで放冷した後、水184mL、4M塩酸92mLで洗浄した。有機層の溶媒を減圧留去した後、残渣を110℃で終夜減圧乾燥し、染料(D-1)(53.9g,80%)を赤色固体として得た。
【0156】
得られた赤色色固体のNMR測定を行い、以下の41個の水素のシグナルを検出し、下記式(D-1)で表される化合物の構造と同定した。式(D-1)中、nは1~2を表し、混合物であることを表す。
【0157】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=8.10-6.89(13H)、6.22-5.78(2H)、3.91-3.48(4H)、2.46-1.94(12H)、1.82-1.50(4H)、1.14-0.80(6H)。
【0158】
【化35】
【0159】
[合成実施例8]染料(D-2)の合成
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに染料(D-1)8.0g(11mmol)、カチオン(C-1)6.6g(16mmol)、メタノール80mLを加え、室温で1時間撹拌した。反応液を水200mLに加え、室温で30分間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を水200mLに加え、室温で30分間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を80℃で終夜減圧乾燥し、染料(D-2)(12.3g,94%)を赤色固体として得た。
【0160】
得られた赤色色固体のNMR測定を行い、以下の66個の水素のシグナルを検出し、下記式(D-2)で表される化合物の構造と同定した。式(D-2)中、nは1~2を表し、混合物であることを表す。
【0161】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=9.77(2H)、8.06-6.90(23H)、6.20-5.78(2H)、4.76(2H)、3.92-3.50(6H)、3.17(9H)、2.44-1.93(12H)、1.79-1.53(4H)、1.06-0.81(6H)。
【0162】
【化36】
【0163】
[合成実施例9]染料(D-3)の合成
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに染料(D-1)1.0g(1.4mmol)、カチオン(C-2)0.9g(2mmol)、メタノール10mLを加え、室温で1時間撹拌した。反応液を水50mLに加え、室温で30分間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を水50mLに加え、室温で30分間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を80℃で終夜減圧乾燥し、染料(D-3)(1.6g,99%)を暗赤色固体として得た。
【0164】
得られた赤色色固体のNMR測定を行い、以下の74個の水素のシグナルを検出し、下記式(D-3)で表される化合物の構造と同定した。式(D-3)中、nは1~2を表し、混合物であることを表す。
【0165】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=9.82-9.62(2H)、8.08-7.12(20H)、7.08-6.88(3H)、6.20-5.80(2H)、4.39(2H)、3.83-3.53(4H)、3.34-3.18(8H)、2.43-1.95(14H)、1.76-1.54(4H)、1.18(9H)、1.05-0.86(6H)。
【0166】
【化37】
【0167】
[合成実施例10]染料(D-4)の合成
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに染料(D-1)1.0g(1.4mmol)、カチオン(C-3)1.0g(1.6mmol)、メタノール10mLを加え、室温で1時間撹拌した。反応液を水50mLに加え、室温で30分間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を水50mLに加え、室温で30分間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を80℃で終夜減圧乾燥し、染料(D-4)(1.7g,100%)を紫色固体として得た。
【0168】
得られた赤色色固体のNMR測定を行い、以下の86個の水素のシグナルを検出し、下記式(D-4)で表される化合物の構造と同定した。式(D-4)中、nは1~2を表し、混合物であることを表す。
【0169】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=9.78-9.57(2H)、8.07-7.12(20H)、7.09-6.91(3H)、6.19-5.80(2H)、4.39(2H)、3.82-3.55(4H)、3.39-3.12(8H)、2.43-1.96(14H)、1.75-1.52(10H)、1.30(6H)、1.05-0.87(15H)。
【0170】
【化38】
【0171】
[合成実施例11]染料(D-5)の合成
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに染料(D-1)1.0g(1.4mmol)、カチオン(C-4)0.9g(2mmol)、メタノール10mLを加え、室温で1時間撹拌した。反応液を水50mLに加え、室温で30分間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を水50mLに加え、室温で30分間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を80℃で終夜減圧乾燥し、染料(D-5)(1.5g,100%)を紫色固体として得た。
【0172】
得られた赤色色固体のNMR測定を行い、以下の64個の水素のシグナルを検出し、下記式(D-5)で表される化合物の構造と同定した。式(D-5)中、nは1~2を表し、混合物であることを表す。
【0173】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=9.73-9.55(2H)、9.17-9.10(2H)、8.60(1H)、8.20-8.12(2H)、8.05-7.12(20H)、7.08-6.92(3H)、6.20-5.80(2H)、4.78(2H)、4.42(2H)、3.82-3.52(4H)、2.50-1.95(14H)、1.76-1.54(4H)、1.06-0.87(6H)。
【0174】
【化39】
【0175】
[合成実施例12]染料(D-6)の合成
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに染料(D-1)8.0g(11mmol)、カチオン(C-5)7.4g(16mmol)、メタノール80mLを加え、室温で1時間撹拌した。反応液を水300mLに加え、室温で1時間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を水300mLに加え、室温で1時間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を80℃で終夜減圧乾燥し、染料(D-6)(12.4g,99%)を赤色固体として得た。
【0176】
得られた赤色色固体のNMR測定を行い、以下の75個の水素のシグナルを検出し、下記式(D-6)で表される化合物の構造と同定した。式(D-6)中、nは1~2を表し、混合物であることを表す。
【0177】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=9.74-9.10(2H)、8.10-6.84(23H)、6.19-5.79(2H)、3.90-3.46(4H)、3.41(2H)、3.31-3.05(8H)、2.24-1.95(12H)、1.89(2H)、1.80-1.51(4H)、1.14(9H)、1.05-1.80(6H)。
【0178】
【化40】
【0179】
[合成実施例13]染料(D-7)の合成
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに染料(D-1)1.0g(1.4mmol)、カチオン(C-6)0.8g(2mmol)、DMF3mLを加え、50℃で1時間撹拌した。反応液を水50mLに加え、室温で30分間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣をメタノール6mLに加え、50℃で30分間撹拌し、室温まで放冷した後、水50mLに加え、室温で30分間撹拌し、減圧ろ過した。残渣を80℃で終夜減圧乾燥し、染料(D-7)(1.2g,78%)を暗赤色固体として得た。
【0180】
得られた赤色色固体のNMR測定を行い、以下の62個の水素のシグナルを検出し、下記式(D-7)で表される化合物の構造と同定した。式(D-7)中、nは1~2を表し、混合物であることを表す。
【0181】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=12.65(2H)、10.54(2H)、9.30-9.08(2H)、8.62(1H)、8.22-7.10(15H)、7.07-6.90(1H)、6.56-6.10(5H)、6.20-5.80(2H)、4.84(2H)、4.65(2H)、3.83-3.52(4H)、2.60-1.95(14H)、1.77-1.53(4H)、1.05-0.87(6H)。
【0182】
【化41】
【0183】
[合成実施例14]染料(D-8)の合成
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコにC.I.Acid Red 52を1.0g(1.7mmol)、カチオン(C-2)1.1g(2.1mmol)、メタノール10mLを加え、室温で1時間撹拌した。反応液を水50mLに加え、室温で30分間撹拌した後、デカンテーションして上澄みを除いた。残渣をメタノール10mLに加え、室温で30分間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を80℃で終夜減圧乾燥し、染料(D-8)(1.2g,72%)を赤色固体として得た。
【0184】
得られた赤色色固体のNMR測定を行い、以下の62個の水素のシグナルを検出し、下記式(D-8)で表される化合物の構造と同定した。
【0185】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=9.80-9.64(2H)、8.26(1H)、7.82-7.64(5H)、7.31(4H)、7.14(1H)、7.06-6.99(6H)、6.93-6.89(2H)、4.39(2H)、3.63(8H)、3.34-3.22(8H)、2.09(2H)、1.25-1.12(21H)。
【0186】
【化42】
【0187】
[比較例化合物(D-9)の合成]
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに染料(D-1)20.0g(27.1mmol)、トリエチルアミン4.2g(42mmol)、1M塩酸140mL、メタノール60mLを加え、室温で1時間撹拌した。反応液をジクロロメタン120mLで抽出し、水120mLで洗浄した後、溶媒を減圧留去した。残渣に酢酸エチル95mL加え、60℃で1時間撹拌した後、減圧ろ過した。残渣を110℃で終夜減圧乾燥し、染料(D-9)(12.1g,53%)を紫色固体として得た。
【0188】
得られた赤色色固体のNMR測定を行い、以下の57個の水素のシグナルを検出し、下記式(D-9)で表される化合物の構造と同定した。式(D-9)中、nは1~2を表し、混合物であることを表す。
【0189】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=8.83(1H)、8.10-6.88(13H)、6.21-5.78(2H)、4.18-3.58(4H)、3.10(6H)、2.46-1.94(12H)、1.82-1.50(4H)、1.36-1.05(15H)。
【0190】
【化43】
【0191】
[比較例化合物(D-10)の合成]
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに染料(D-1)5.0g(6.8mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド4.4g(11mmol)、1M塩酸35mL、メタノール15mLを加え、室温で1時間撹拌した。反応液をジクロロメタン40mLで抽出し、水20mLで洗浄、溶媒を減圧留去した。残渣に酢酸エチル60mL加え、60℃で1時間撹拌洗浄する操作を3回繰り返した。残渣を110℃で終夜減圧乾燥し、染料(D-10)(6.9g,92%)を紫色固体として得た。
【0192】
得られた赤色色固体のNMR測定を行い、以下の95個の水素のシグナルを検出し、下記式(D-10)で表される化合物の構造と同定した。式(D-10)中、nは1~2を表し、混合物であることを表す。
【0193】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=8.10-6.88(13H)、6.21-5.78(2H)、4.04-3.68(4H)、3.18(6H)、2.93(3H)、2.46-1.94(12H)、1.82-1.50(10H)、1.50-1.05(36H)、0.86(9H)。
【0194】
【化44】
【0195】
[比較例化合物(D-11)の合成]
以下の化学反応は窒素気流下で行った。冷却管、撹拌装置、温度計を備えた100mL容4つ口フラスコに染料(D-1)5.0g(6.8mmol)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド4.9g(7.7mmol)、1M塩酸35mL、メタノール15mLを加え、室温で1時間撹拌した。反応液をジクロロメタン40mLで抽出し、水20mLで洗浄、溶媒を減圧留去した。残渣にイソプロピルアルコール16mL、水300mLを加え1時間撹拌洗浄後、減圧ろ過した。残渣を80℃で終夜減圧乾燥し、染料(D-10)(8.8g,100%)を紫色固体として得た。
【0196】
得られた赤色色固体のNMR測定を行い、以下の121個の水素のシグナルを検出し、下記式(D-11)で表される化合物の構造と同定した。式(D-11)中、nは1~2を表し、混合物であることを表す。
【0197】
H-NMR(400MHz、DMSO-d):δ(ppm)=8.10-6.88(13H)、6.21-5.78(2H)、4.04-3.68(4H)、3.20(4H)、2.97(6H)、2.46-1.94(12H)、1.82-1.50(8H)、1.50-0.94(66H)、0.85(6H)。
【0198】
【化45】
【0199】
[実施例1]
(バインダー樹脂溶液の調製)
特許文献3(段落[0229]<バインダー樹脂の合成>合成例23)の方法により調製したバインダー樹脂溶液(固形分濃度:33質量%)を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)/ジメチルホルムアミド(DMF)混合溶媒(20/80質量比)で希釈し、バインダー樹脂溶液(固形分濃度:25質量%)を得た。
【0200】
(耐熱性の評価)
サンプル瓶に合成実施例7で得られた染料(D-2)20mg、バインダー樹脂溶液5gを入れ、30分間撹拌して混合した。得られた着色樹脂溶液をシリンジフィルターでろ過し、ろ液1gをガラス基板上に塗布(スピンコート法、1000rpm-6秒)し、100℃で2分間加熱乾燥して薄膜を作製した。得られた膜について、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、CM-5)を用いて色彩値および透過スペクトルを測定した。その後、230℃で20分間加熱を行い、同様に色彩値および透過スペクトルを測定した。透過スペクトルの極小値から下記式(F-1)により230℃での加熱後の色素残存率(SR)を求めた。下記式(F-1)において、SRは色素残存率を表し、Tpreは230℃で加熱前の極大吸収波長における透過率(%)を、Tpostは230℃で加熱後の極大吸収波長における透過率(%)を表す。
【0201】
【数1】
【0202】
色素残存率を耐熱性の指標とし、下記の4段階で色素残存率(%)を評価した。結果を表1に示す。
「A」:SR=90%以上~100%
「B」:SR=80%以上~90%未満
「C」:SR=75%以上~80%未満
「D」:SR=75%未満
【0203】
(耐水性の評価)
10mL容ガラス製サンプル瓶に、合成実施例7で得られた化合物(D-2)20mgと精製水を、色素濃度が0.5質量%、1質量%、3質量%、5質量%となるように秤量して入れ、混合物を調製した。20分間超音波処理した後、室温(25℃)で24時間放置した。各濃度の色素溶液を目視で観察し、不溶分の見られない最高の色素濃度(質量%)を溶解度とした。色素濃度が0.5質量%の混合物について、不溶分(色素残渣)の粘性物化の有無を目視で観察した。溶解度と粘性物化の有無から耐水性を下記の3段階で評価した結果を表1に示す。
「A」:溶解度0.5質量%未満かつ粘性物化なし
「B」:溶解度0.5質量%未満かつ粘性物化あり
「C」:溶解度0.5質量%以上
【0204】
(耐アルカリ性の評価)
耐水性の評価において、精製水に代えて0.04質量%水酸化カリウム水溶液を用いた以外は同様の方法により、溶解度と不溶分の粘性物化の有無を目視で観察した。溶解度と粘性物化の有無から耐アルカリ性を下記の3段階で評価した結果を表1に示す。
「A」:溶解度0.5質量%未満かつ粘性物化なし
「B」:溶解度0.5質量%未満かつ粘性物化あり
「C」:溶解度0.5質量%以上
【0205】
[実施例2~実施例7]
実施例1において、化合物(D-2)に代えて、表1に示す化合物を使用した以外は、実施例1と同様に、耐熱性、耐水性、および、耐アルカリ性を測定し、評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0206】
[比較例1~比較例5]
比較のために、実施例1における化合物(D-2)の代わりに、表1に示す本発明に属さないキサンテン色素化合物を使用した以外は、実施例1と同様に、耐熱性、耐水性、および、耐アルカリ性を測定し、評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0207】
【表1】
【0208】
表1に示すように、本発明の実施例の化合物である、アンモニウムカチオンとキサンテン色素からなる酸性色素は、耐熱性に優れ、アンモニウムカチオンを有さない従来のキサンテン色素、または、本発明に属さないアンモニウムカチオンとキサンテン色素からなる酸性色素と比較して、耐水性および耐アルカリ性に優れている。
また、実施例と比較例の同じキサンテン骨格の色素同士の比較から明らかなように、本発明のアンモニウムカチオンとキサンテン色素を組み合わせることにより、キサンテン色素の耐熱性、耐水性および耐アルカリ性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0209】
本発明に係るキサンテン色素を含有する着色組成物は、耐熱性、耐水性、および、耐アルカリ性に優れており、カラーフィルター用着色剤などの種々の用途の色素材料として利用可能である。また、該着色組成物をカラーフィルター用着色剤として用いることにより、色特性(色域、輝度、コントラスト比など)に優れたカラーフィルターを作製することが可能である。