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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132922
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】PRDX4発現促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240920BHJP
   A61K 36/61 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/61
A61P43/00 111
A61P17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024030255
(22)【出願日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2023039742
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】堀場 聡
(72)【発明者】
【氏名】飛田 亮三
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083EE11
4C088AB57
4C088AC05
4C088BA08
4C088CA06
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】PRDX4発現促進剤を提供する。
【解決手段】本発明は、ユーカリ抽出物を有効成分として含むPRDX4発現促進剤を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーカリ抽出物を有効成分として含む、PRDX4発現促進剤。
【請求項2】
ユーカリ抽出物を有効成分として含む、カルボニル化抑制剤。
【請求項3】
ユーカリ抽出物を有効成分として含み、PRDX4発現を促進することによりカルボニル化を抑制する、カルボニル化抑制剤。
【請求項4】
ユーカリ抽出物を有効成分として含む、コラーゲン成熟又は輸送促進剤。
【請求項5】
ユーカリ抽出物を有効成分として含み、PRDX4発現を促進することによりコラーゲンの成熟又は輸送を促進する、コラーゲン成熟又は輸送促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PRDX4発現促進剤、特に、ユーカリ抽出物を有効成分として含むPRDX4発現促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
PRDX4(Peroxiredoxin 4、ペルオキシレドキシン4)は、抗酸化酵素のペルオキシレドキシンファミリーのメンバーであり、癌、動脈硬化、糖尿病などに対する抑制効果、創傷治療促進効果、炎症抑制効果等が報告されている(非特許文献1)。また、PRDX4はカルボニル化抑制を介して皮膚のくすみを改善することも報告されている(非特許文献2)。更に、PRDX4がコラーゲンの成熟及び輸送を促進することにより皮膚のハリに寄与する可能性も報告されている(非特許文献3)。これらの効果を奏するべくPRDX4を促進することができる物質の探索が望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Journal of University of Occupational and Environmental Health, 34(1);27-39(2012)
【非特許文献2】第40回日本美容皮膚科学会総会・学術大会要旨集 一般演題2「皮膚老化」O-7より(2022年8月6日発表)
【非特許文献3】Molecular Cell. 2012 Oct 12;48(1):39-51.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、PRDX4発現促進剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らによる鋭意研究の結果、ユーカリ抽出物にPRDX4抑制効果があることが発見された。
【0006】
本願は以下の発明を提供する。
(1)ユーカリ抽出物を有効成分として含む、PRDX4発現促進剤。
(2)ユーカリ抽出物を有効成分として含む、カルボニル化抑制剤。
(3)ユーカリ抽出物を有効成分として含み、PRDX4発現を促進することによりカルボニル化を抑制する、カルボニル化抑制剤。
(4)ユーカリ抽出物を有効成分として含む、コラーゲン成熟又は輸送促進剤。
(5)ユーカリ抽出物を有効成分として含み、PRDX4発現を促進することによりコラーゲンの成熟又は輸送を促進する、コラーゲン成熟又は輸送促進剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明のPRDX4発現促進剤の投与により、PRDX4発現を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例実験3の結果であり、ユーカリ抽出物を添加した場合の線維芽細胞におけるPRDX4発現量(PRDX4/GAPDH)について、対照(control)を1.0とした相対値として示す(**P=0.0023(対応のないt検定))。
図2図2は、実施例実験4の結果であり、若齢者(20代~30代)及び高齢者の真皮1mmにおけるPRDX4陽性かつVimentin陽性の細胞数を示す(P=0.05(Mann-Whitney検定))。
図3図3は、実施例実験4の結果であり、若齢者(20代~30代)及び高齢者の皮膚におけるI型コラーゲンシグナルの輝度値の相対値を示す(**P=0.01(Mann-Whitney検定))。
図4図4は、実施例実験4の結果であり、PRDX4陽性Vimentin陽性細胞とI型コラーゲンシグナルの輝度値との相関解析の結果を示す(スピアマンの順位相関係数)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ユーカリ抽出物にPRDX4発現促進効果があるという本発明者らの発見に基づく。また、PRDX4発現はカルボニル化抑制効果やコラーゲン成熟及び輸送促進効果を示すことが知られている(非特許文献2、3)。したがって、本発明はユーカリ抽出物を有効成分として含む、PRDX4発現促進剤、カルボニル化抑制剤、コラーゲン成熟促進剤、及びコラーゲン輸送促進剤を提供する(以下、本発明のPRDX4発現促進剤、カルボニル化抑制剤、コラーゲン成熟促進剤、及びコラーゲン輸送促進剤をまとめて本発明の剤と総称することがある)。本発明のカルボニル化抑制剤は、PRDX4発現を促進することによりカルボニル化を抑制する。本発明のコラーゲン成熟促進剤は、PRDX4発現を促進することによりコラーゲンの成熟を促進する。本発明のコラーゲン輸送促進剤は、PRDX4発現を促進することによりコラーゲンの輸送を促進する。
【0010】
PRDX4発現促進は、例えば、本発明の剤を添加する前または本発明の剤を添加しない対照に比べて、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、200%以上、300%以上、400%以上、又は500%以上高いPRDX4遺伝子発現量を示すことを指す。
【0011】
PRDX4が欠損するとプロコラーゲンの三重らせん構造の形成が妨げられ、その結果コラーゲン成熟異常が起こることが報告されている(非特許文献3)。また、プロコラーゲンの三重らせん構造の形成が妨げられると輸送も障害されるため、PRDX4発現を促進することによりコラーゲンの成熟及び輸送を促進することが予想される。
【0012】
本明細書において、コラーゲンの成熟促進とは、PRDX4の発現を介しコラーゲンの成熟を促すこと指す。例えば、PRDX4の発現を上昇させることにより、プロコラーゲンの三重らせん構造の形成を促すことを指す。コラーゲンの輸送促進とは、PRDX4の発現を上昇させることにより、三重らせん構造の形成を促すことにより三重らせん構造のプロコラーゲンがゴルジ体を介し細胞外への輸送されることに寄与することを指す。
【0013】
本発明で用いられるユーカリ抽出物は、フトモモ科ユーカリ属(Eucalyptus)の植物体の抽出物である。植物体は、好ましくは葉であり、樹皮、花、果実、種子、根等の各種部位であってもよい。
【0014】
ユーカリ抽出物は公知の物質であり、公知の方法により植物体に搾汁、乾燥、精製、抽出等の処理をすることにより得ることができ、また市販品を容易に入手可能である。ユーカリ抽出物に用いる植物体原料は生のままでも乾燥したものでも使用することができるが、使用性、製剤化等の観点から、乾燥物、乾燥粉末、原料の粉末物、搾汁液等として用いることもできる。原料により、いずれの形態を用いるかは適宜選択することができ、必要に応じて殺菌等の処理を施してもよい。
【0015】
例えばユーカリ抽出物の抽出方法は溶媒抽出により行うことができる。溶媒抽出の場合には、好ましくはユーカリの葉、あるいは他の各種部位(樹皮、花、果実、種子、根等)を必要に応じて乾燥させ、更に必要に応じて細断又は粉砕した後、水性抽出剤、水、例えば冷水、温水、又は沸点若しくはそれより低温の熱水、あるいは含水有機溶媒、有機溶媒、例えばエタノール、メタノール、エーテル、1、3-ブチレングリコール等を原料の性質や組成物の用途等により好ましい溶媒を適宜選択して常温で又は加熱して用いることにより抽出される。しかしながら、抽出方法は溶媒抽出に限定されず、当業界で知られている常用の手法によってもよく、本発明で用いる抽出物の抽出方法や抽出物の形態は、本発明の効果を損なわない限り任意である。上記抽出物の形態は、抽出液自体だけでなく、常用の手法により適宜希釈又は濃縮したものであってもよく、更に、抽出液を乾燥することによって得られる粉状あるいは塊状の固体であってもよいし、搾汁液を常用の手法により適宜希釈又は濃縮したものであってもよい。抽出物に発酵又はプロテアーゼやペクチナーゼ等の酵素処理を施してもよいし、デキストリンやアラビアガム等を添加し粉末化してもよい。
【0016】
含水有機溶媒の例として、含水エタノール、含水メタノール、含水エーテル、含水1、3-ブチレングリコール等の含水低級アルコール(例えば、C1~C4)を用いてもよく、その場合の含水率は、例えば0~10v/v%、10~40v/v%、20~30v/v%、30~40v/v%、30~50v/v%、60~70v/v%、50~80v/v%、80~99.5v/v%等であってもよい。
【0017】
乾燥粉末を得る方法としては、ユーカリの葉あるいは各種部位(樹皮、花、果実、種子、根等)を細断又は粉砕しその後に乾燥する方法や、植物を乾燥した後に細断又は粉砕して乾燥粉末を得る方法がある。また、植物を細断又は粉砕し、発酵又はプロテアーゼやペクチナーゼ等の酵素処理を施した後、乾燥し、更に必要に応じて所定の粒径にすべく粉砕する方法等を適宜採ることができる。乾燥物にデキストリンやアラビアガム等を添加し粉末化してもよい。
【0018】
上述のように、PRDX4の発現は、癌、動脈硬化、糖尿病などに対する抑制効果、創傷治療促進効果、炎症抑制効果、カルボニル化抑制効果、コラーゲン成熟及び輸送促進効果等などに有用であることが報告されている(非特許文献1~3)。したがって、本発明の剤の適用により、PRDX4発現促進を介して、上記効果を奏することが期待される。例えば、PRDX4はカルボニル化抑制を介して皮膚のくすみを改善すること(非特許文献2)や、コラーゲンの成熟や輸送を促進することにより皮膚のハリに寄与する可能性(非特許文献3)が報告されている。また、実施例にて示されるように、PRDX4陽性かつVimentin陽性の細胞数とI型コラーゲンは正に相関する。よって、PRDX4は、コラーゲンの成熟や輸送促進によりコラーゲンの増加又はコラーゲンの減少抑制を介して皮膚のハリに寄与する可能性も考えられる。したがって、皮膚のPRDX4促進により、皮膚コラーゲンのカルボニル化抑制を介して皮膚のくすみ抑制に寄与することや、皮膚コラーゲン成熟や輸送促進又はコラーゲンの増加や減少抑制を介して皮膚のハリ改善に寄与することが期待される。
【0019】
本願は、本発明の剤を含む組成物も提供する。本発明の組成物は、化粧品組成物又は食品組成物であってもよい。本発明の組成物は、例えば、PRDX4発現促進のための組成物、あるいはPRDX4発現促進を介した皮膚のくすみ抑制あるいはハリ改善のための組成物であってもよい。
【0020】
化粧品組成物の場合、乳液、クリーム、美容液、ローション、パック、洗顔料、石鹸、ボディソープ、シャンプー等の各種化粧品であってもよく、液状、乳液状、クリーム状、固形状、シート状、スプレー状、ゲル状、泡状、パウダー状等の様々な形態であり得る。食品組成物の場合、粉末、飲料、または錠剤であってもよく、粉末状、液状、固形状、顆粒状、粒状、ペースト状、ゲル状等の様々な形態であり得る。
【0021】
また、本願は、本発明の剤又は組成物を対象に投与することにより、PRDX4発現促進を介した皮膚のくすみ抑制又はハリ改善のための美容方法も提供する。本発明の方法は、美容を目的とする方法であり、医師や医療従事者による治療ではないことがある。また、本願にかかる方法は、対象の美容行為を支援する方法であってもよい。本発明の剤又は組成物は、経皮、経口等各種投与経路で投与でき、皮膚のPRDX4発現を増強させたい場合、経皮投与が好ましい。
【0022】
さらに、本発明は、皮膚のくすみ抑制又はハリ改善のための経皮剤といった医薬の製造におけるユーカリ抽出物の使用も提供する。本発明は、皮膚におけるPRDX4発現促進による、例えばカルボニル化抑制又はコラーゲン成熟又は輸送促進又はコラーゲンの増加又は減少抑制を介した、皮膚のくすみ抑制又はハリ改善における使用のためのユーカリ抽出物も提供する。
【0023】
本発明の剤又は組成物は、ユーカリ抽出物を本発明の効果が十分発揮されるような量で含むことが好ましく、その配合量は、それらの種類、目的、形態、利用方法などに応じて、適宜決めることができる。例えば、有効成分としてユーカリ抽出物を、総重量当たり0.0001~100重量%、0.0001~90重量%、0.001~50重量%、0.01~5重量%、0.01~1重量%、0.01~0.5重量%、0.05~0.2重量%、0.1重量%等とすることができるが、本発明の効果が発揮されれば限定されない。ある実施形態では、本発明の剤は、ユーカリ抽出物からなる。
【0024】
また、投与頻度は、4週間に1回、2週間に1回、1週間に1回、3日に1回、2日に1回、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、都度投与等任意に選択できるがこれらに限定されない。
【0025】
本発明の剤及び組成物は、その剤形に応じ、賦形剤、担体及び/又は希釈剤等及び他の成分と適宜組み合わせた処方で、常法を用いて製造することができる。必要に応じて添加剤を任意に選択し併用することができる。添加剤としては賦形剤、着色剤、保存剤、増粘剤、結合剤、崩壊剤、分散剤、安定化剤、ゲル化剤、酸化防止剤、界面活性剤、保存剤、pH調整剤等については、公知のものを適宜選択して使用できる。
【実施例0026】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0027】
実験1:ユーカリ抽出物の調製
ユーカリ抽出物は、含水エタノールを抽出溶媒としてユーカリの葉を抽出し、溶媒を留去後、抽出物を乾燥して得た。
【0028】
実験2:ヒト新生児由来線維芽細胞の培養
ヒト新生児由来線維芽細胞を24 well plate(Corning社製)に1x10 cells /wellとなるように1 ml/wellの培養液(10%FBS添加DMEM、Gibco社製)に播種した。37℃で24時間培養後、培養液を除き、ユーカリ抽出物を0.1重量%となるように添加した培養液(10%FBS添加DMEM、Gibco社製)を1ml/wellで添加し37℃で更に24時間培養した。対照(control)として10%FBS添加DMEMを使用した。
【0029】
実験3:PRDX4の発現解析
実験2で培養した線維芽細胞からRNeasy Mini Kit (Qiagen社製)を用いてmRNAを回収した。回収したmRNAに対し以下PRDX4とGAPDHのプライマーを使用し、TaqMan RNA-to CtTM 1-Step Kit(Applied Biosystems社製)を用いてreal time PCRを実施した。得られた結果よりPRDX4/GAPDHの相対値を算出し、student’t-testで対照との有意差検定を実施した(n=4)。
PRDX4プライマー:Hs01056076_m1(Thermo Fisher社製)
GAPDHプライマー:Hs02786624_g1(Thermo Fisher社製)
【0030】
結果を図1に示す。ユーカリ抽出物を使用すると対照と比較してPRDX4の発現が有意に増加した。これらの実験により、ユーカリ抽出物により皮膚線維芽細胞等の試料におけるPRDX4の発現が促進されることがわかる。したがって、ユーカリ抽出物によりPRDX4発現が促進されれば、カルボニル化抑制、コラーゲン成熟又は輸送促進等の効果が期待される。例えば、皮膚線維芽細胞等の皮膚細胞におけるPRDX4発現が促進されれば、カルボニル化抑制、コラーゲン成熟又は輸送促進により、皮膚のくすみ抑制又はハリ改善が期待できる。
【0031】
実験4:皮膚におけるPRDX4とコラーゲンの関連性
若齢者(20代~30代)及び高齢者(50代~70代)の白人由来の目尻の皮膚を凍結切片にし、薄切後PRDX4(ウサギ由来の抗PRDX4抗体(Proteintech))、線維芽細胞のマーカーとしてVimentin(ニワトリ由来の抗ヒトビメンチン抗体(abcam))、I型コラーゲン(マウス由来の抗I型コラーゲン抗体(abcam))を染色した。また、細胞核はHoechst33342で染色した。染色後、これらの標識について蛍光撮像を行った。撮像した画像をもとにPRDX4陽性かつVimentin陽性の細胞をカウントし、Mann-Whitney検定で有意差検定を実施した(若齢者、高齢者各n=6)。また、撮像した画像をもとに画像解析ソフトImageJを用いてI型コラーゲンシグナルの輝度値を定量した。全サンプル中で最も強い輝度値をもつサンプルを1とした際の各サンプルの輝度値の相対値を算出しMann-Whitney検定で有意差検定を実施した(若齢者、高齢者各n=10)。更に、これらのPRDX4陽性Vimentin陽性細胞数とI型コラーゲンシグナルの輝度値をもとに、スピアマンの順位相関係数を用いて相関解析を実施した。
【0032】
結果を図2~4に示す。図2により老化に伴いPRDX4陽性かつVimentin陽性の細胞数が減少することが示される。図3により老化に伴いI型コラーゲンが減少することが示される。図4によりPRDX4陽性かつVimentin陽性の細胞数とI型コラーゲンが正に相関することが示される。したがって、老化に伴う線維芽細胞によるI型コラーゲンの減少にはPRDX4が関与することが示唆される。
【0033】
PRDX4は、コラーゲン成熟又は輸送促進効果があることが報告されているが、上記結果により線維芽細胞によるI型コラーゲン量に寄与することが示唆される。以上により、ユーカリ抽出物により線維芽細胞のPRDX4発現が促進されれば、老化に伴う線維芽細胞数によるコラーゲンの減少が抑制され、ひいては皮膚のハリ改善が期待できる。
図1
図2
図3
図4