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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132930
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】被圧延材の蛇行制御方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 37/72 20060101AFI20240920BHJP
   B21B 37/68 20060101ALI20240920BHJP
   B21B 1/26 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B21B37/72
B21B37/68 Z
B21B1/26 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024032332
(22)【出願日】2024-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2023041985
(32)【優先日】2023-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】山口 和馬
(72)【発明者】
【氏名】石井 篤
(72)【発明者】
【氏名】内藤 龍
(72)【発明者】
【氏名】前田 遼太郎
【テーマコード(参考)】
4E002
4E124
【Fターム(参考)】
4E002AD04
4E002BA01
4E002BC05
4E002CA06
4E002CA08
4E124AA06
4E124AA18
4E124BB01
4E124BB18
4E124CC01
4E124EE01
4E124EE13
4E124EE15
4E124EE17
4E124FF02
4E124GG08
(57)【要約】
【課題】圧延中の左右非対称な外乱条件の変化を考慮して、被圧延材の尾端部の蛇行量を低減し、絞りの発生を抑止する。
【解決手段】被圧延材の蛇行制御方法は、圧下位置、ベンディング力、ロール速度、潤滑剤供給量、ロールクロス角、ロールシフト量及びロールクラウンのうち少なくともいずれか1つを制御パラメータとして、第一種平行剛性実績計算値Eを算出し、左右非対称な外乱因子の値に応じて被圧延材の蛇行量が許容値未満となる第一種平行剛性の閾値ETHを設定し、第一種平行剛性実績計算値Eが閾値ETH以下の場合は蛇行制御を行わず、第一種平行剛性実績計算値Eが閾値ETHより大きい場合は、第一種平行剛性実績計算値Eに基づいて第一種平行剛性を閾値ETH以下とするための制御パラメータの変更量を算出し、被圧延材の尾端部が当該圧延スタンドを通過する間、算出された制御パラメータの変更量に基づいて制御パラメータを制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個(Nは自然数)の圧延スタンドによる被圧延材の圧延において、第Mスタンド(1≦M≦N)における前記被圧延材の蛇行を制御する、被圧延材の蛇行制御方法であって、
圧下位置S、ベンディング力F、ロール速度V、潤滑剤供給量Q、ロールクロス角θ、ロールシフト量L、及び、ロールクラウンCのうち、少なくともいずれか1つを制御パラメータとして、
前記第Mスタンドでの第一種平行剛性実績計算値Eを算出する第一種平行剛性算出ステップと、
前記第Mスタンドで測定された入側オフセンタ量、圧延方向力左右差、入側ウェッジ、入側温度左右差、レベリング量、圧延荷重左右差、及び、作業ロールスラスト反力のうち、少なくともいずれか1つに基づいて、前記第Mスタンドにおける前記被圧延材の蛇行量が許容蛇行量未満となる第一種平行剛性の閾値ETHを設定する閾値設定ステップと、
前記第一種平行剛性実績計算値Eが前記閾値ETH以下である場合は、蛇行制御を行わず、
前記第一種平行剛性実績計算値Eが前記閾値ETHより大きい場合は、
前記第一種平行剛性実績計算値Eに基づいて、第一種平行剛性を前記閾値ETH以下とするための、前記第Mスタンドの前記制御パラメータの変更量を算出し、
前記被圧延材の尾端部が前記第Mスタンドを通過する間、算出された前記制御パラメータの変更量に基づいて、前記変更量に対応する前記第Mスタンドの制御パラメータを制御する、制御ステップと、
を含む、被圧延材の蛇行制御方法。
【請求項2】
被圧延材の尾端蛇行量を第一種平行剛性で割った値の最大値により、前記被圧延材の尾端部の許容蛇行量を割った値を、前記第一種平行剛性の閾値ETHとして、
予め、過去の操業において取得された被圧延材の尾端蛇行量と第一種平行剛性とに基づいて、前記入側オフセンタ量、圧延方向力左右差、入側ウェッジ、入側温度左右差、レベリング量、圧延荷重左右差、及び、作業ロールスラスト反力のうち、少なくともいずれか1つと前記第一種平行剛性の閾値ETHとの関係を求めておき、
前記閾値設定ステップでは、前記入側オフセンタ量と前記第一種平行剛性の閾値ETHとの関係に基づいて、前記第Mスタンドで測定された入側オフセンタ量に対応する前記第一種平行剛性の閾値ETHを設定する、請求項1に記載の被圧延材の蛇行制御方法。
【請求項3】
前記第一種平行剛性算出ステップでは、前記被圧延材の先端が前記第Mスタンドに噛み込んでから前記被圧延材の尾端部が前記第Mスタンドで圧延される前までの間において同時に取得した、前記第Mスタンドにおける圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fと、前記制御パラメータの実績値とに基づいて、前記第Mスタンドでの第一種平行剛性実績計算値Eを算出する、請求項1または2に記載の被圧延材の蛇行制御方法。
【請求項4】
前記第一種平行剛性算出ステップでは、
セットアップ計算により、前記第Mスタンドにおける圧延荷重設定値P及びベンディング力設定値Fと、前記制御パラメータの設定値とを算出し、
前記第Mスタンドでの第一種平行剛性設定計算値Eに対する、圧延荷重の影響係数∂E/∂P、ベンディング力の影響係数∂E/∂Fと、前記制御パラメータの影響係数とを算出し、
前記被圧延材の先端が前記第Mスタンドに噛み込んでから前記被圧延材の尾端部が前記第Mスタンドで圧延される前までの間において同時に取得した、前記第Mスタンドにおける圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fと、前記制御パラメータの実績値とに基づいて、前記設定値と前記実績値との差分値をそれぞれ算出し、
前記差分値と前記影響係数とに基づいて、前記第Mスタンドでの前記第一種平行剛性実績計算値Eを算出する、請求項1または2に記載の被圧延材の蛇行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被圧延材の尾端部の蛇行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄鋼等の被圧延材を圧延スタンドにより圧延する際、被圧延材の幅方向の中心が、ミルセンター(圧延機の幅方向の中心位置、すなわち、ワークロールの回転軸方向の中心位置)からずれてしまい、被圧延材がワークロールの端部の方向に移動してしまう、いわゆる蛇行と呼ばれる現象が生じることがある。蛇行が生じると、被圧延材の平坦度が低下し、製品品質の低下につながる可能性がある。また、蛇行量が大きい場合には、被圧延材の尾端部がサイドガイドに接触して屈曲してしまい、被圧延材が二重に折れ込まれた状態で圧延機に咬み込まれる、絞りと呼ばれる不良が生じ得る。絞りが生じると、屈曲した圧延材によってワークロールの表面が傷付けられるため、生産ラインを停止して、ワークロールの点検、手入れ又は交換等の保守作業を行う必要があり、生産ラインの稼働率を低下させてしまう恐れがある。
【0003】
被圧延材の蛇行を抑制するための制御手法は、従来から検討されている。例えば、特許文献1には、ストリップの連続仕上圧延機のうちの最終仕上圧延機をのぞく任意の圧延スタンド(N-1)のロードセルもしくは該圧延スタンドの前面に設けた圧延材検出器で、前段圧延スタンドの圧延材の尻抜けを検出し、前段圧延スタンドに隣接する次段の制御対象圧延スタンドNのロールギャップを広げて被圧延材尾部を厚くすることで、尻絞りを防止する手法が開示されている。また、特許文献2には、圧延材後端部の通過時に、ロールベンディング装置によりワークロールの胴長方向端部を狭めて、圧延材の板端方向移動を抑制することで、サイドガイドとの干渉による被圧延材の絞り込みを防止する手法が開示されている。また、特許文献3には、第一種平行剛性を閾値以下とするために圧下位置またはベンディング力のうち少なくともいずれか一方を制御することで、被圧延材の蛇行を制御する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55-161505号公報
【特許文献2】特開昭58-145303号公報
【特許文献3】特開2021-137825号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】中島浩衛、外5名、“ホットストリップ圧延における蛇行制御法の研究(第1報)”、昭和55年度塑性加工春季講演会、1980年、p.61-64
【非特許文献2】日本鉄鋼協会編、「板圧延の理論と実際(改訂版)」、2010年、p.89-95
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1、2に記載の手法のように、被圧延材の尾端部が圧延機を通過する際にロールギャップを開放もしくはベンディング力を負荷することにより蛇行を制御する方法では、操作量が過小で絞りに至る場合や、操作量が過大で被圧延材の尾端部が所望の板厚もしくは形状に圧延されず、生産歩留を低下させてしまう恐れがある。
【0007】
これに対して、上記特許文献3では、絞りの発生抑止と被圧延材の生産歩留向上とを両立するため、第一種平行剛性を指標として、適切な量だけロールギャップまたはベンディング力を操作している。上記特許文献3に記載の方法では、圧延前に予め第一種平行剛性の閾値を設定する必要がある。しかし、例えば被圧延材のウェッジや、圧延機のレベリング不良等、作業側と駆動側とにおける各種の非対称性(以下、「圧延状態の左右非対称性」ともいう。)の大きさに応じて、同一の第一種平行剛性であっても発生する蛇行量は変化し、蛇行量を許容蛇行量未満に抑える適切な閾値も変化する。上記特許文献3に記載の方法では、予め設定した第一種平行剛性の閾値を圧延中に変更することはないため、圧延中の左右非対称な外乱条件の変化を考慮できず、結果的に操作量が過大もしくは過小になり、絞りの発生抑止及び生産歩留向上の効果を十分に得ることができない。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、圧延中の左右非対称な外乱条件の変化を考慮して、被圧延材の尾端部における蛇行量を低減させ、絞りの発生を抑止するとともに、被圧延材の尾端部における厚み不良及び形状不良に起因する歩留落ちを低減させることが可能な、被圧延材の蛇行制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、N個(Nは自然数)の圧延スタンドによる被圧延材の圧延において、第Mスタンド(1≦M≦N)における被圧延材の蛇行を制御する、被圧延材の蛇行制御方法であって、圧下位置S、ベンディング力F、ロール速度V、潤滑剤供給量Q、ロールクロス角θ、ロールシフト量L、及び、ロールクラウンCのうち、少なくともいずれか1つを制御パラメータとして、第Mスタンドでの第一種平行剛性実績計算値Eを算出する第一種平行剛性算出ステップと、第Mスタンドで測定された入側オフセンタ量、圧延方向力左右差、入側ウェッジ、入側温度左右差、レベリング量、圧延荷重左右差、及び、作業ロールスラスト反力のうち、少なくともいずれか1つに基づいて、第Mスタンドにおける被圧延材の蛇行量が許容蛇行量未満となる第一種平行剛性の閾値ETHを設定する閾値設定ステップと、第一種平行剛性実績計算値Eが閾値ETH以下である場合は、蛇行制御を行わず、第一種平行剛性実績計算値Eが閾値ETHより大きい場合は、第一種平行剛性実績計算値Eに基づいて、第一種平行剛性を閾値ETH以下とするための、第Mスタンドの制御パラメータの変更量を算出し、被圧延材の尾端部が第Mスタンドを通過する間、算出された制御パラメータの変更量に基づいて、変更量に対応する第Mスタンドの制御パラメータを制御する、制御ステップと、を含む、被圧延材の蛇行制御方法が提供される。
【0010】
被圧延材の尾端蛇行量を第一種平行剛性で割った値の最大値により、被圧延材の尾端部の許容蛇行量を割った値を、第一種平行剛性の閾値ETHとして、予め、過去の操業において取得された被圧延材の尾端蛇行量と第一種平行剛性とに基づいて、入側オフセンタ量、圧延方向力左右差、入側ウェッジ、入側温度左右差、レベリング量、圧延荷重左右差、及び、作業ロールスラスト反力のうち、少なくともいずれか1つと第一種平行剛性の閾値ETHとの関係を求めておき、閾値設定ステップでは、入側オフセンタ量と第一種平行剛性の閾値ETHとの関係に基づいて、第Mスタンドで測定された入側オフセンタ量に対応する第一種平行剛性の閾値ETHを設定してもよい。
【0011】
第一種平行剛性算出ステップでは、被圧延材の先端が第Mスタンドに噛み込んでから被圧延材の尾端部が第Mスタンドで圧延される前までの間において同時に取得した、第Mスタンドにおける圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fと、制御パラメータの実績値とに基づいて、第Mスタンドでの第一種平行剛性実績計算値Eを算出してもよい。
【0012】
あるいは、第一種平行剛性算出ステップでは、セットアップ計算により、第Mスタンドにおける圧延荷重設定値P及びベンディング力設定値Fと、制御パラメータの設定値とを算出し、第Mスタンドでの第一種平行剛性設定計算値Eに対する、圧延荷重の影響係数∂E/∂P、ベンディング力の影響係数∂E/∂Fと、制御パラメータの影響係数とを算出し、被圧延材の先端が第Mスタンドに噛み込んでから被圧延材の尾端部が第Mスタンドで圧延される前までの間において同時に取得した、第Mスタンドにおける圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fと、制御パラメータの実績値とに基づいて、設定値と実績値との差分値をそれぞれ算出し、差分値と影響係数とに基づいて、第Mスタンドでの第一種平行剛性実績計算値Eを算出してもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、圧延中の左右非対称な外乱条件の変化を考慮して、被圧延材の尾端部における蛇行量を低減させ、絞りの発生を抑止することができるとともに、被圧延材の尾端部における厚み不良及び形状不良に起因する歩留落ちを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本発明の一実施形態に係る圧延スタンドの一構成例を示す模式図であって、ロール胴長方向の作業側から見た状態を示す。
図1B】同実施形態に係る圧延スタンドの一構成例を示す模式図であって、圧延方向出側から見た状態を示す。
図2】被圧延材の尾端部直前での第一種平行剛性と尾端部の蛇行との相関の一例を示すグラフである。
図3】蛇行制御例1の処理を示すフローチャートである。
図4】蛇行制御例1における第一種平行剛性実績計算値Eの算出処理の概要を示す模式図である。
図5】被圧延材の圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fから一次近似により第一種平行剛性実績計算値Eを算出するイメージを示す模式図である。
図6】第一種平行剛性の圧延荷重に対する影響係数の算出方法を説明する説明図である。
図7】第一種平行剛性のベンディング力に対する影響係数の算出方法を説明する説明図である。
図8】第一種平行剛性の制御パラメータに対する影響係数の算出方法を説明する説明図である。
図9】第一種平行剛性実績計算値(モデル利用)と第一種平行剛性実績計算値(影響係数利用)との相関の一例を示すグラフである。
図10】本実施形態に係る被圧延材の蛇行制御方法の制御対象となる圧延スタンドと、そのときの圧延荷重及びベンディング力の測定タイミングを示す説明図である。
図11】オフセンタ量yと、式(9)を用いて算出した第一種平行剛性の閾値ETHとの一関係例を示すグラフである。
図12】蛇行制御例2における第一種平行剛性実績計算値Ebの算出処理の概要を示す模式図である。
図13】蛇行制御例2の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
[1.圧延スタンドの構成]
まず、図1A及び図1Bに基づいて、本発明の一実施形態に係る圧延スタンド10の概略構成について説明する。図1A及び図1Bは、本実施形態に係る圧延スタンド10の一構成例を示す模式図である。図1Aでは、圧延スタンド10をロール胴長方向の作業側から見た状態を示しており、被圧延材Sの通板方向(圧延方向)は紙面右から左に向かっているとする。図1Bは、図1Aに示す圧延スタンド10を圧延方向出側から見た状態を示す。
【0017】
なお、図1Aでは、1基の圧延スタンド10のみを図示しているが、かかる圧延スタンド10は、例えば、熱間圧延における仕上タンデム圧延機を構成する一圧延機であり得る。仕上タンデム圧延機は、複数(N個;Nは自然数)の圧延スタンド10を一方向に配列して構成されている。被圧延材は、各圧延スタンドを連続的に通過しながら段階的に薄く延ばされることにより、最終的に所望の板厚とされる。なお、本技術は、1基の圧延スタンド10を備える単スタンドの圧延機にも適用可能である。
【0018】
本実施形態に係る圧延スタンド10は、図1A及び図1Bに示すように、一対の作業ロール1、2と、これを支持する一対の補強ロール3、4とを有する4段の圧延機を有する。図1Bに示すように、上作業ロール1は上作業ロールチョック5a、5bにより支持されており、下作業ロール2は下作業ロールチョック6a、6bにより支持されている。なお、作業側の上作業ロールチョック5a及び駆動側の上作業ロールチョック5bをまとめて「上作業ロールチョック5」ともいう。同様に、作業側の下作業ロールチョック6a及び駆動側の下作業ロールチョック6bをまとめて「下作業ロールチョック6」ともいう。
【0019】
上補強ロール3は上補強ロールチョック7a、7bにより支持されており、下補強ロール4は下補強ロールチョック8a、8bにより支持されている。なお、作業側の上補強ロールチョック7a及び駆動側の上補強ロールチョック7bをまとめて「上補強ロールチョック7」ともいう。同様に、作業側の下補強ロールチョック8a及び駆動側の下補強ロールチョック8bをまとめて「下補強ロールチョック8」ともいう。上作業ロールチョック5、下作業ロールチョック6、上補強ロールチョック7、及び下補強ロールチョック8は、図1Aに示すように、ハウジング9により保持されている。
【0020】
ハウジング9は、当該ハウジング9から各ロールチョック5~8が配置される内側に突出した入側プロジェクトブロック9a及び出側プロジェクトブロック9bを有する。入側プロジェクトブロック9a及び出側プロジェクトブロック9bは、インクリースベンディング装置11a~11dを介して、作業ロールチョック5、6を支持している。また、作業ロールチョック5、6と補強ロールチョック7、8との間には、ディクリースベンディング装置12a~12dが設けられてもよい。
【0021】
インクリースベンディング装置11a~11dは、ロール開度を大きくする方向の力を作業ロールチョック5、6に与える装置である。インクリースベンディング装置11a~11dは、例えば油圧シリンダー等の駆動装置によって構成される。ディクリースベンディング装置12a~12dは、ロール開度を小さくする方向の力を作業ロールチョック5、6に与える装置である。ディクリースベンディング装置12a~12dは、例えば油圧シリンダー等の駆動装置によって構成される。
【0022】
圧下装置13は、最上部のロールである上補強ロール3の上方に設置され、上補強ロール3及び上作業ロール1の圧下方向における位置(以下、「圧下位置」ともいう。)を調整することで、上作業ロール1と下作業ロール2との間隙を調整する。図1Bに示す作業側の圧下装置13a及び駆動側の圧下装置13bをまとめて「圧下装置13」ともいう。圧下装置13は、例えば油圧シリンダー等の駆動装置により構成される。
【0023】
圧下装置13と上補強ロールチョック7との間には、圧下方向の荷重(すなわち、圧延荷重)を検出する圧下方向荷重検出装置14が設けられている。図1Bに示す作業側の圧下方向荷重検出装置14a及び駆動側の圧下方向荷重検出装置14bをまとめて「圧下方向荷重検出装置14」ともいう。圧下方向荷重検出装置14は、例えばロードセルであってもよい。図1A及び図1Bにおいて、圧下方向荷重検出装置14は圧延スタンド10の上側に設けられているが、本発明は係る例に限定されない。圧下方向荷重検出装置14は、圧延スタンド10の下側に設けられていてもよく、上側及び下側にそれぞれ設けられてもよい。
【0024】
上作業ロール1及び下作業ロール2は、図1Bに示すように、ロール軸方向におけるロール位置を移動させる作業ロールシフト装置15a、15bを備える。作業ロールシフト装置15a、15bは、例えば油圧シリンダーにより構成してもよい。また、上作業ロール1及び下作業ロール2には、当該ロールにかかるスラスト反力を測定するスラスト反力測定装置16a、16bがそれぞれ設けられている。スラスト反力とは、各ロール胴部の接触面において、主としてロール間の微小なクロス角の存在によって発生するスラスト力の各ロールに関する合力に抗して、当該ロールを定位置に保持するための反力である。スラスト反力測定装置16a、16bは、例えばロードセルにより構成してもよい。
【0025】
また、図1Aに示すように、上作業ロールチョック5には、上作業ロールチョック入側荷重検出装置17aと、上作業ロールチョック出側荷重検出装置17bとが設けられている。上作業ロールチョック入側荷重検出装置17aの測定値と上作業ロールチョック出側荷重検出装置17bの測定値との差から、上作業ロールチョック5に作用する圧延方向力を演算することができる。同様に、下作業ロールチョック6には、下作業ロールチョック入側荷重検出装置18aと、下作業ロールチョック出側荷重検出装置18bとが設けられている。下作業ロールチョック入側荷重検出装置18aの測定値と下作業ロールチョック出側荷重検出装置18bの測定値との差から、下作業ロールチョック6に作用する圧延方向力を演算することができる。
【0026】
作業ロール1、2は、所定のロール速度で回転するとともに上下から所定の圧力で被圧延材Sを圧下することにより、被圧延材Sを一方向に通板しながら所定の板厚とする。作業ロール1、2の圧下位置(すなわち、ロールギャップ)は、圧延後の被圧延材Sの板厚の目標値や圧下率等の圧延条件に応じて、圧下装置13によって適宜調整される。作業ロール1、2のロール速度は、モータ等の駆動装置(図示せず。)によって変更可能である。
【0027】
圧延スタンド10の入側には、圧延時に被圧延材Sに対して潤滑剤を供給する潤滑剤供給装置(図示せず。)が設置されていてもよい。また、本実施形態に係る圧延スタンド10の入側には、被圧延材Sのオフセンタ量を測定する蛇行計20が設置されている。蛇行計20は、圧延スタンド10の入側における被圧延材Sのパスラインから左右方向へのオフセンタ量を測定する。なお、蛇行量は、被圧延材Sのオフセンタ量の変化量であり、オフセンタ量から取得可能である。例えば、被圧延材Sの尾端の蛇行量(尾端蛇行量)は、N個の圧延スタンド10(第Mスタンド(1≦M≦N))からなるタンデム圧延機の第2スタンド以降の場合には、「被圧延材の尾端が、当該圧延スタンドである第Mスタンドの1つ上流側の第(M-1)スタンドを通過した時点でのオフセンタ量を、第Mスタンドを通過した時点でのオフセンタ量から引いた値」と表してもよい。
【0028】
さらに、圧延スタンド10の入側には、ウェッジ計30及び温度計40が設置されている。ウェッジ計30は、圧延スタンド10入側における被圧延材Sの板幅方向の板厚を測定する。温度計40は、圧延スタンド10入側における被圧延材Sの板幅方向の温度を測定する。
【0029】
圧延スタンド10は、例えばペアクロス圧延機のように、ロールチョック5~8を移動させてロールクロス角を変更可能であってもよい。または、圧延スタンド10は、例えばCVC(continuous variable crown)圧延機、6段圧延機のように、作業ロール1、2、もしくは、中間ロールを軸方向にシフト可能であってもよい。さらに、圧延スタンド10は、例えばVC(variable crown)圧延機のように、作業ロール1、2のロールクラウンを変更可能であってもよい。ロールクラウンは、例えばロールの胴長中央の内部に膨張用の油圧室を有する可変クラウンロールを作業ロール1、2として用いることにより、変更することが可能となる。
【0030】
圧延スタンド10では、蛇行制御装置100により、被圧延材Sの尾端部が圧延スタンド10を通過するときの蛇行制御が実施される。蛇行制御装置100は、被圧延材Sの尾端部での蛇行しやすさの指標である第一種平行剛性に応じて、圧下位置、ベンディング力、ロール速度、潤滑剤供給量、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうち、少なくともいずれか1つの制御パラメータを変更する。なお、ロールシフト量は、作業ロールシフト量だけでなく、6段圧延機のように中間ロールがある場合には中間ロールシフト量も含む。
【0031】
蛇行制御装置100は、これらの制御パラメータに加え、さらにインクリースベンディング装置11a~11dあるいは圧下装置13を駆動させ、必要な量だけベンディング力を負荷したり圧下位置を変更したりしてもよい。これにより、被圧延材Sの尾端部における蛇行量を低減させ、絞りの発生を抑制する。なお、ベンディング力は、インクリースベンディング装置11a~11dだけでなく、ディクリースベンディング装置12a~12dも駆動させて負荷してもよい。
【0032】
蛇行制御装置100は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等の各種のプロセッサによって構成され、蛇行制御装置100の機能は、当該プロセッサが所定のプログラムにしたがって動作されることにより実現され得る。
【0033】
また、蛇行制御装置100により蛇行制御を実施するか否かは、上述したように、第一種平行剛性実績計算値に基づき決定される。第一種平行剛性実績計算値の算出、及び、蛇行制御を実施するか否かを判定する際に用いる第一種平行剛性の閾値(ETH)の算出は、演算処理装置(後述する演算処理装置200)により行われる。演算処理装置も、例えばCPUやDSP等の各種のプロセッサによって構成される。演算処理装置の機能は、当該プロセッサが所定のプログラムにしたがって動作されることにより実現され得る。
【0034】
なお、蛇行制御装置100は、圧延スタンド10の動作を制御する機能を有すればよく、その具体的な構成は限定されない。演算処理装置も同様に、第一種平行剛性実績計算値の算出機能を有すればよく、その具体的な構成は限定されない。例えば、蛇行制御装置100及び演算処理装置は、上述したような各種のプロセッサであってもよいし、プロセッサとメモリ等の記憶装置とが一体的に構成されたいわゆるマイコンであってもよい。あるいは、蛇行制御装置100及び演算処理装置は、PC(Personal Computer)やサーバ等の各種の情報処理装置であってもよい。
【0035】
[2.尾端部の蛇行制御]
本実施形態に係る蛇行制御装置100による被圧延材の尾端部の蛇行制御は、第一種平行剛性実績計算値を算出し、算出した第一種平行剛性実績計算値に応じて、必要な場合に必要な量だけ圧下位置、ベンディング力、ロール速度、潤滑剤供給量、ロールクロス角、ロールシフト量、及び、ロールクラウンのうち、少なくともいずれか1つの制御パラメータを変更することにより行われる。
【0036】
第一種平行剛性は、被圧延材の先端から尾端までの圧延荷重やベンディング力の変化に応じて、変化する。被圧延材の先端部での第一種平行剛性は、圧延前の設定計算により得られる第一種平行剛性に対応するものであり、被圧延材の尾端部の蛇行とは比較的相関が弱い。これに対して、図2に示す被圧延材の尾端部直前(図10の(測定タイミング2))での第一種平行剛性は、先端部に比べて被圧延材の尾端部の蛇行と比較的高い相関がある。
【0037】
図2は、被圧延材Sの尾端部直前での第一種平行剛性と尾端部の蛇行量(尾端蛇行量)との相関の一例を示すグラフである。図2では、当該圧延スタンドの2つ前の圧延スタンドを尾端が通過した時点でのオフセンタ量yに応じて、2種類のプロットで第一種平行剛性と尾端蛇行量との関係を示している。ケース1は、オフセンタ量yが5mm未満の場合であり、ケース2は、オフセンタ量yが5mm以上の場合である。すなわち、ケース1とケース2とは、圧延中の左右非対称な外乱条件が異なるものである。
【0038】
図2を見ると、全体として第一種平行剛性と尾端蛇行量とには一定の相関があるが、ケース1とケース2とではプロットの分布の傾向が若干異なり、ケース2はケース1に比べて第一種平行剛性に対する尾端蛇行量が大きい傾向にある。このため、許容蛇行量における第一種平行剛性は、ケース1の第一種平行剛性と尾端蛇行量との関係に基づいた場合(ETH )の方が、ケース2の第一種平行剛性と尾端蛇行量との関係に基づいた場合(ETH )よりも大きくなる(すなわち、ETH >ETH )。
【0039】
このように、圧延中の左右非対称な外乱条件が異なると、第一種平行剛性と尾端蛇行量との相関関係が異なる。そこで、本実施形態では、被圧延材の尾端部直前での第一種平行剛性を算出し、圧延中の左右非対称な外乱条件の変化を考慮して第一種平行剛性を評価した結果に基づき蛇行制御を行うことで、適切に被圧延材の尾端部の蛇行を抑制する。
【0040】
ここで、被圧延材の蛇行は、圧延スタンド出側での被圧延材の左右(幅方向)の板厚差(すなわち、出側ウェッジ量)hdfに起因する。出側ウェッジ量hdfは、下記式(1)により表される(例えば、非特許文献1参照)。
【0041】
【数1】
【0042】
上記式(1)において、Sdfは左右のロール開度差、Pdfは左右の圧延荷重差、aはロール支点間距離、bは板幅である。また、Eは第一種平行剛性、Dは第二種平行剛性であり、これらは蛇行現象に関する圧延機の基本定数である。
【0043】
被圧延材の蛇行量の方程式は、最終的に下記式(2)の微分方程式に帰着する(例えば、非特許文献1参照)。
【0044】
【数2】
【0045】
なお、vは圧延材入側速度、yは蛇行量、ξは先進定数、hは出側板厚、mは塑性係数、Perturbationは左右非対称な外乱項(例えば、入側ウェッジ、左右変形抵抗差、レベリング等の影響項)である。
【0046】
ここで、上記式(2)の各項の係数を、以下のようにM、kとする。
【0047】
【数3】
【0048】
Mを質量、kをばね定数とみなすと、上記式(2)はマスバネ系の運動方程式と同じ形式をしていることがわかる。ばね定数であるkは、ほとんど負の値をとるため、蛇行は本質的に不安定な現象(発散系)である。蛇行を抑止するには、大きく以下の3通りのアプローチがある。
【0049】
(a)各種左右非対称な外乱を小さくする(すなわち、Perturbationを最小化する)
(b)操作可能な左右非対称な外乱(レベリング)を用いて他の外乱を相殺する
(すなわち、Perturbationを最小化する)
(c)外乱発生時の蛇行の発散速度をできるだけ小さくする
(すなわち、kの絶対値を最小化する)
【0050】
本実施形態に係る蛇行制御方法は、上記(c)のアプローチによるものである。ただし、(a)や(b)のアプローチとの併用も可能である。また、蛇行の程度を評価するにあたっては、上記式(1)より、第一種平行剛性Eだけでなく、第二種平行剛性Dも含めて行うのが物理的には妥当である。しかし、第二種平行剛性Dは、圧延荷重やベンディング力によって圧延中に変動する第一種平行剛性Eと比較して、圧延中に大きく変化することがない。換言すれば、第二種平行剛性Dは変化させることができない。このため、本実施形態に係る蛇行制御方法においては、実用的に簡単のために第一種平行剛性Eのみに基づき、蛇行の程度を評価している。
【0051】
具体的には、N個(Nは自然数)の圧延スタンドによる被圧延材の圧延において、第Mスタンド(1≦M≦N)における被圧延材の蛇行を制御する際、被圧延材の蛇行を制御するための制御パラメータを用いて、圧延前に、第Mスタンドでの第一種平行剛性実績計算値Ebを算出する(第一種平行剛性算出ステップ)。また、第Mスタンドで測定された入側オフセンタ量に基づいて、第Mスタンドにおける被圧延材の蛇行量が許容蛇行量未満となる第一種平行剛性の閾値ETHを設定する(閾値設定ステップ)。そして、第一種平行剛性の閾値ETHと第一種平行剛性実績計算値Eとを比較する。
【0052】
第一種平行剛性実績計算値Eが閾値ETH以下である場合は、蛇行制御を行わない。一方、第一種平行剛性実績計算値Eが閾値ETHより大きい場合は、第一種平行剛性実績計算値Eに基づいて、第一種平行剛性を閾値ETH以下とするための、第Mスタンドの制御パラメータの変更量を算出する。そして、被圧延材の尾端部が第Mスタンドを通過する間、制御パラメータの変更量に基づいて、第Mスタンドにおける制御パラメータを制御する(制御ステップ)。
【0053】
ここで、第Mスタンドでの第一種平行剛性実績計算値Eの算出は、例えば、セットアップ計算により算出された被圧延材の第一種平行剛性設定計算値Eに対する影響係数を算出し、当該影響係数を用いて第一種平行剛性実績計算値Eを算出する方法や、モデルを用いて圧延条件に基づき第一種平行剛性実績計算値Eを算出する方法が考えられる。以下、本実施形態に係る被圧延材の尾端部の蛇行制御について、詳細に説明する。
【0054】
なお、本実施形態において、被圧延材の尾端部とは、尾端から所定の長さまでの範囲を指す。ここで、所定の長さとは、被圧延材の尾端部として設定されたその範囲に本発明に係る被圧延材の蛇行制御方法を適用した場合に、蛇行低減の効果が発揮できる長さとする。この長さは、圧延機の仕様並びに被圧延材の寸法及び被圧延材の材質によっても異なるので、例えば、所定の長さの初期値として被圧延材の板幅を設定し、実操業で、調整の上、求めればよい。
【0055】
タンデム圧延の第2スタンド以降の場合には、被圧延材の尾端部は、例えば「被圧延材の尾端が制御対象である第Mスタンドの1つ上流側の圧延スタンド(すなわち、第(M-1)スタンド)を抜けた時点での、尾端から制御対象である第Mスタンドにて噛み込まれた位置までの範囲」としてもよい。あるいは、「第(M-1)スタンドと第Mスタンドとのスタンド間距離」を、タンデム圧延の第2スタンド以降の場合における被圧延材の尾端部としてもよい。
【0056】
[2-1.蛇行制御例1(セットアップ計算における第一種平行剛性設定計算値及び影響係数を用いた第一種平行剛性実績計算値の算出)]
まず、図3図11に基づき、蛇行制御例1として、セットアップ計算における第一種平行剛性設定計算値及び影響係数を用いて第一種平行剛性実績計算値を算出し、被圧延材の尾端部の蛇行制御を行う場合について説明する。図3は、蛇行制御例1の処理を示すフローチャートである。図4は、蛇行制御例1における第一種平行剛性実績計算値Eの算出処理の概要を示す模式図である。図5は、被圧延材の圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fから一次近似により第一種平行剛性実績計算値Eを算出するイメージを示す模式図である。図6は、第一種平行剛性の圧延荷重に対する影響係数の算出方法を説明する説明図である。図7は、第一種平行剛性のベンディング力に対する影響係数の算出方法を説明する説明図である。図8は、第一種平行剛性実績計算値(モデル利用)と第一種平行剛性実績計算値(影響係数利用)との相関の一例を示すグラフである。図10は、本実施形態に係る被圧延材の蛇行制御方法の制御対象となる圧延スタンドと、そのときの圧延荷重及びベンディング力の測定タイミングを示す説明図である。図11は、オフセンタ量yと、後述する式(9)を用いて算出した第一種平行剛性の閾値ETHとの一関係例を示すグラフである。
【0057】
(S100:制御パラメータの選定)
蛇行制御例1では、図3に示すように、まず、制御パラメータとして、圧下位置S、ベンディング力F、ロール速度V、潤滑剤供給量Q、ロールクロス角θ、ロールシフト量L及びロールクラウンCのうち少なくとも1つを用いることとする(S100)。制御パラメータは、被圧延材の尾端部における蛇行制御において蛇行量の低減(絞りの発生防止)とともに重視する目的や、圧延スタンド10の設備構成上の制約等に基づいて選定し得る。蛇行量の低減とともに重視する目的としては、例えば、被圧延材の尾端部における板厚不良による歩留落ちの低減、形状不良による歩留落ちの低減等がある。
【0058】
制御パラメータの選定は、例えばオペレータが行い、入力装置等を用いて後述する演算処理装置へ入力することにより行ってもよい。あるいは、圧延スタンド10の設備構成に基づき、演算処理装置が制御パラメータを自動的に選定してもよい。この際、圧延スタンド10それぞれについて、予め、蛇行量の低減とともに重視する目的の優先度を決めておき、それに応じて選定する制御パラメータの組合せを演算処理装置の記憶部に記憶しておいてもよい。これにより、オペレータが蛇行量の低減とともに重視する目的の優先度を演算処理装置に入力すれば、演算処理装置は制御パラメータを自動的に選定することができる。
【0059】
例えば、圧下位置Sを制御パラメータとした場合、形状制御と干渉しないため、形状不良による歩留落ちの低減に有効である。また、ベンディング力Fを制御パラメータとした場合は、形状制御と干渉するため、形状不良による歩留落ちが生じやすいが、板厚不良による歩留落ちの低減に有効である。圧下位置Sまたはベンディング力Fの制御は、ほとんどの圧延スタンドにおいて一般的に制御装置が備わっており、簡便に実施することもできる。
【0060】
また、ロール速度Vまたは潤滑剤供給量Qを制御パラメータとした場合、形状制御と干渉しないため、形状不良による歩留落ちの低減に有効である。ロール速度Vまたは潤滑剤供給量Qの制御は圧延スタンドの形式によらずに実施することができるというメリットもある。また、ロールクロス角θ、ロールシフト量LまたはロールクラウンCを制御パラメータとした場合は、形状制御と干渉するため、形状不良による歩留落ちが生じやすいが、板厚不良による歩留落ちの低減に有効である。また、ロール速度Vまたは潤滑剤供給量Qを制御する場合、圧延条件によっては十分な絞りの発生防止効果が出にくいケースが存在するが、ロールクロス角θ、ロールシフト量LまたはロールクラウンCを制御する場合は、安定した絞りの発生防止効果が得られるというメリットがある。ロールクロス角θ、ロールシフト量L及びロールクラウンCは、圧延スタンドの形式によって制御可能なパラメータが限られる。
【0061】
条件によって優先度が変わる場合は、複数の制御パラメータを組み合わせて利用し、圧延条件に応じて制御パラメータの制御量のバランスを調整することも可能である。また、制御パラメータを多く利用することで制御可能範囲が拡大(絞り抑止効果増大)する。したがって、例えば、形状不良による歩留落ちの低減は優先する前提で絞りの発生をできるだけ抑制したい場合は、ロール速度V及び潤滑剤供給量Qをともに制御パラメータとして選定するのが望ましい。また、例えば、板厚不良による歩留落ちの低減を優先する前提で絞りの発生をできるだけ防止したい場合は、圧下位置S、ベンディング力F、ロールクロス角θ、ロールシフト量L及びロールクラウンCのうち制御可能な制御パラメータをすべて用いるのが望ましい。
【0062】
(S110~S120:第一種平行剛性算出ステップ)
ステップS100にて制御パラメータが選定されると、第一種平行剛性実績計算値Eが算出される。蛇行制御例1では、第一種平行剛性設定計算値Et及び影響係数を用いて第一種平行剛性実績計算値Eを算出する。図4に示す第一種平行剛性算出ステップの概要とともに説明すると、まず、制御対象である第Mスタンドについてモデルを用いたセットアップ計算が行われ、第一種平行剛性設定計算値E及び影響係数が算出される(S110)。かかる演算は、圧延直前に実施される。
【0063】
第一種平行剛性設定計算値E及び影響係数を算出するためのモデルとしては、例えばミルストレッチモデルを用いることができる(例えば、非特許文献2参照)。演算処理装置200には、圧延条件として、セットアップ計算で求めた被圧延材の圧延荷重設定値P及びベンディング力設定値Fと、ロールクロス角設定値θt、ロールシフト量設定値Lt、及び、ロールクラウン設定値Ctのうち、ステップS100にて選定された制御パラメータの設定値と、その他の各種圧延条件とが入力される。ロール速度設定値V、潤滑剤供給量設定値Qについては、圧延荷重を介して第一種平行剛性へ影響するので、圧延荷重設定値Pにその影響が含まれるため入力する値からは省いている。ここで、圧延荷重設定値P及びベンディング力設定値Fとした圧延荷重及びベンディング力は、オンラインでの変動が大きく、第一種平行剛性に影響するパラメータである。
【0064】
そして、演算処理装置200は、ミルストレッチモデルを用いてセットアップ計算を行い、第一種平行剛性設定計算値Eと、第一種平行剛性設定計算値Eに対する圧延荷重Pの影響係数∂E/∂P及びベンディング力Fの影響係数∂E/∂Fを算出する。さらに、演算処理装置200は、ステップS100にて選定された制御パラメータの影響係数、すなわち、第一種平行剛性設定計算値Eに対するロール速度Vの影響係数∂E/∂V、潤滑剤供給量Qの影響係数∂E/∂Q、ロールクロス角θの影響係数∂E/∂θ、ロールシフト量Lの影響係数∂E/∂L、及び、ロールクラウンCの影響係数∂E/∂Cのうち少なくともいずれか1つを算出する。各影響係数は下記式(4-1)~(4-7)により表される。
【0065】
【数4】
【0066】
なお、ステップS110の演算は、ミルストレッチモデル以外のモデルを用いて行ってもよい。
【0067】
セットアップ計算により第一種平行剛性設定計算値E及び影響係数が算出されると、次に、被圧延材の圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fと、ロールクロス角実績値θ、ロールシフト量実績値L、及び、ロールクラウン実績値Cのうち、ステップS100にて選定された制御パラメータの実績値に基づき、下記一次近似式(5)を用いて、第一種平行剛性実績計算値Eが算出される(S120)。一次近似式(5)において、Xは、ロールクロス角実績値θ、ロールシフト量実績値L、及び、ロールクラウン実績値Cのうち、ステップS100にて選定された制御パラメータを表す。ここで、ロール速度実績値V、潤滑剤供給量実績値Qについては、圧延荷重を介して第一種平行剛性へ影響するので、Xからは省いている。
【0068】
圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fは実測値を用いればよい。圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fは、被圧延材の先端が第Mスタンドに噛み込んでから被圧延材の尾端部が第Mスタンドで圧延される前までの間において同時に取得される。ロールクロス角実績値θ、ロールシフト量実績値L、及び、ロールクラウン実績値Cは、現在設定されている値を用いればよい。例えば、制御開始時は、初期設定値が用いられ、後述するステップS150にて値が変更された場合には、変更後の値が用いられる。
【0069】
【数5】
【0070】
上記一次近似式(5)は、第一種平行剛性E、圧延荷重P、ベンディング力F、及び、選定された制御パラメータの関係を表す多次元曲面において、第一種平行剛性設定計算値Eから第一種平行剛性実績計算値Eへの変化を一次近似により表したものとみなすことができる。例えば、説明を簡単にするため、図5に示す、第一種平行剛性E、圧延荷重P及びベンディング力Fの関係を表す曲面Cを考えると、当該曲面Cにおいては、一次近似式(5)は、第一種平行剛性設定計算値E(点A)から第一種平行剛性実績計算値E(点B)への変化を一次近似により表したものとみなすことができる。これは以下のことからいえる。
【0071】
まず、第一種平行剛性Eと圧延荷重Pとの関係は、例えば図6のように示される。このとき、被圧延材の圧延荷重設定値Pが、任意の値hだけ増加したと考えると、そのときの第一種平行剛性Eの増加量をhで割ることで、第一種平行剛性Eに対する圧延荷重Pの一次近似の影響係数∂E/∂Pは下記式(6)で表すことができる。第一種平行剛性Eと圧延荷重Pとの相関に線形性が強ければ、このような一次近似で十分であるが、非線形性が強い場合は、二次近似等により厳密に影響係数を求めればよい。
【0072】
【数6】
【0073】
また、第一種平行剛性Eとベンディング力Fとの関係は、例えば図7のように示される。このとき、被圧延材のベンディング力設定値Fが、任意の値hだけ増加したと考えると、そのときの第一種平行剛性Eの増加量をhで割ることで、第一種平行剛性Eに対するベンディング力Fの一次近似の影響係数∂E/∂Fは下記式(7)で表すことができる。これを影響係数∂E/∂Fとする。第一種平行剛性Eとベンディング力Fとの相関に線形性が強ければ、このような一次近似で十分であるが、非線形性が強い場合は、二次近似等により影響係数を求めればよい。
【0074】
【数7】
【0075】
ロール速度V、潤滑剤供給量Q、ロールクロス角θ、ロールシフト量L及びロールクラウンCの制御パラメータXについても同様であり、第一種平行剛性Eと各制御パラメータXとの関係は、図8のように表すことができる。制御パラメータの設定値Xが、任意の値hだけ増加したと考えると、そのときの第一種平行剛性Eの増加量をhで割ることで、第一種平行剛性Eに対する制御パラメータXの一次近似の影響係数∂E/∂Xは下記式(8)で表すことができる。これを影響係数∂E/∂Xとする。第一種平行剛性Eと各制御パラメータXとの相関に線形性が強ければ、このような一次近似で十分であるが、非線形性が強い場合は、二次近似等により影響係数を求めればよい。
【0076】
【数8】
【0077】
すなわち、上記式(6)で表される第一種平行剛性Eに対する圧延荷重Pの影響係数∂E/∂P、上記式(7)で表される第一種平行剛性Eに対するベンディング力Fの影響係数∂E/∂F、及び、上記式(8)で表される第一種平行剛性Eに対する制御パラメータXの影響係数∂E/∂Xは、圧延荷重P、ベンディング力F及び制御パラメータXの変化による第一種平行剛性Eへの影響を表している。これらを用いることで、第一種平行剛性実績計算値Eは上記一次近似式(5)で表すことができる。
【0078】
図9に、圧延条件の実績値を基にミルストレッチモデルを用いて算出される第一種平行剛性実績計算値(モデル利用)と、上記一次近似式(5)を用いて算出された第一種平行剛性実績計算値(影響係数利用)との相関の一例を示す。ここで、圧延条件の実績値は、図10の(測定タイミング2)に示すように、被圧延材Sの尾端部Sが当該スタンドで圧延される直前に測定した値を用いた。図9に示すように、第一種平行剛性実績計算値(モデル利用)と第一種平行剛性実績計算値(影響係数利用)との相関係数はおよそ1.00であり、第一種平行剛性実績計算値(モデル利用)と第一種平行剛性実績計算値(影響係数利用)とは一致する。これより、蛇行制御例1のように、圧延荷重P、ベンディング力F及び制御パラメータXに対する一次近似の影響係数を用いて第一種平行剛性実績計算値Eを算出することで、モデル演算により計算した厳密解と同等の精度で第一種平行剛性を算出できることがわかる。
【0079】
このように、蛇行制御例1では、高負荷演算であるモデル演算を圧延前に予め実施して蛇行への影響を表す第一種平行剛性設定計算値E、第一種平行剛性設定計算値Eに対する圧延荷重Pの影響係数∂E/∂P、ベンディング力Fの影響係数∂E/∂F、及び、ステップS100にて選定された制御パラメータの影響係数∂E/∂Xを求めておき、圧延中の圧延荷重P、ベンディング力Fの変化実績から、簡易演算により第一種平行剛性実績計算値Eを求めるようにする。これにより、圧延時の計算負荷を低減することができ、実機への適用を容易に実現することができる。
【0080】
ここで、ステップS120における圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値F、その他の制御パラメータの実績値の取得は、上述したように、被圧延材の先端が制御対象とする第Mスタンドに噛み込んでから被圧延材の尾端部が第Mスタンドで圧延される前までの間において同時に取得される。具体的には、圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fの測定タイミングは、図10に示すようになる。
【0081】
まず、N個(N≧2)の圧延スタンドを備えるタンデム圧延機であるとき、第Mスタンドが第2スタンド~第Nスタンドのいずれかである場合には、図10上部に示すように、圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fは、被圧延材Aの先端Tが第Mスタンド(#M)に噛み込んだタイミング(測定タイミング1)から、被圧延材Sの尾端部Sが第Mスタンド(#M)で圧延される前まで(測定タイミング2)の間に測定される。尾端部Sは、上述したように、尾端Tから所定の長さまでの範囲である。また、タンデム圧延機の第1スタンド(#1)が制御対象である場合には、図10中央に示すように、圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fは、被圧延材Aの先端Tが第1スタンド(#1)に噛み込んだタイミング(測定タイミング1)から、被圧延材Sの尾端部Sが第1スタンド(#1)で圧延される前まで(測定タイミング2)の間に測定される。
【0082】
また、単スタンドの圧延機の場合には、図10下部に示すように、圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fは、被圧延材Aの先端Tが第1スタンド(#1)に噛み込んだタイミング(測定タイミング1)から、被圧延材Sの尾端部Sが第1スタンド(#1)で圧延される前まで(測定タイミング2)の間に測定される。
【0083】
なお、圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fは、計算時間に余裕があればなるべく尾端部Sに近い部分が制御対象である第Mスタンドによって圧延されるときに測定することが好ましい。
【0084】
(S130:閾値設定ステップ)
次いで、被圧延材の蛇行量が許容値未満となる第一種平行剛性の閾値ETHが設定される(S130)。第一種平行剛性の閾値ETHは、入側オフセンタ量、圧延方向力左右差、入側ウェッジ、入側温度左右差、レベリング量、圧延荷重左右差、及び、作業ロールスラスト反力のうち、少なくともいずれか1つに応じて設定される。圧延状態に左右非対称性がある場合、被圧延材はパスラインから左右方向へオフセンタする挙動をとり、蛇行する。このとき、図2に示したように、圧延中の左右非対称な外乱条件の相違によって、同一の第一種平行剛性でも発生する尾端蛇行量が変化する。そこで、本実施形態では、圧延中の各種左右非対称な外乱条件の変化を考慮して蛇行制御の要否を判定するため、左右非対称な外乱因子である、当該圧延スタンドの入側オフセンタ量、圧延方向力左右差、入側ウェッジ、入側温度左右差、レベリング量、圧延荷重左右差、及び、作業ロールスラスト反力のうち、少なくともいずれか1つに基づいて、第一種平行剛性の閾値ETHを設定する。
【0085】
具体的には、左右非対称な外乱因子(すなわち、入側オフセンタ量、圧延方向力左右差、入側ウェッジ、入側温度左右差、レベリング量、圧延荷重左右差、及び、作業ロールスラスト反力のうち、少なくともいずれか1つ)に基づき第一種平行剛性の閾値ETHを設定するにあたり、まず、予め、過去の操業において取得された被圧延材の尾端蛇行量と第一種平行剛性とに基づいて、左右非対称な外乱因子と第一種平行剛性の閾値ETHとの関係を求めておく。ここで、第一種平行剛性の閾値ETHは、蛇行量が許容値未満となる第一種平行剛性の値である。第一種平行剛性の閾値ETHは、被圧延材の尾端蛇行量を第一種平行剛性で割った値の最大値により、被圧延材の尾端部の許容蛇行量を割った値として表すことができる。すなわち、第一種平行剛性の閾値ETHは、下記式(9)で表される。
【0086】
【数9】
【0087】
図11に、左右非対称な外乱因子を入側オフセンタ量としたときの例として、当該圧延スタンドの2つ前の圧延スタンドを尾端が通過した時点でのオフセンタ量yと、上記式(9)を用いて算出した第一種平行剛性の閾値ETHとの一関係例を示す。図11では、過去の操業において取得された被圧延材の尾端蛇行量と第一種平行剛性とからなるデータを、オフセンタ量yの大きさ(y<5mm、5mm≦y<10mm、10mm≦y<15mm、15mm≦y<20mm、20mm≦y<25mm)に基づき5つに分類し、それぞれのデータ群について上記式(9)を用いて第一種平行剛性の閾値ETHを算出した。
【0088】
図11に示すオフセンタ量yと上記式(9)に基づく第一種平行剛性の閾値ETHとの関係は、下記式(10)のように直線近似することができる。
【0089】
【数10】
【0090】
上記式(10)に示すような入側オフセンタ量と第一種平行剛性の閾値ETHとの関係を予め求めておくことで、入側オフセンタ量から対応する第一種平行剛性の閾値ETHを得ることができる。なお、図11では、当該圧延スタンドの2つ前の圧延スタンドを尾端が通過した時点でのオフセンタ量yを入側オフセンタ量として、入側オフセンタ量と第一種平行剛性の閾値ETHとの関係を求めたが、本発明はかかる例に限定されない。入側オフセンタ量は、当該圧延スタンドの上流側で取得され、尾端蛇行量との相関が得られる所定のタイミングで測定されたものであればよい。例えば、タンデム圧延機において最上流に設置されている第1スタンドの場合には、第1スタンドの入側の蛇行計により、第1スタンドから上流側に向かって、第1スタンドと第2スタンドの間の距離の2倍に相当する距離ほど離れた位置を尾端が通過した時点で測定された入側オフセンタ量に基づき、尾端蛇行量との相関を求めてもよい。
【0091】
入側オフセンタ量以外の左右非対称な外乱因子(すなわち、圧延方向力左右差、入側ウェッジ、入側温度左右差、レベリング量、圧延荷重左右差、及び、作業ロールスラスト反力)についても、同様に、第一種平行剛性の閾値ETHとの関係をETH=ay+bの形で表すことができる。圧延方向力左右差、入側ウェッジ、入側温度左右差、レベリング量、圧延荷重左右差、及び、作業ロールスラスト反力について、第一種平行剛性の閾値ETHとの関係式を求めたときの係数a、bの一例は下記表1のようになる。
【0092】
圧延方向力左右差は、上作業ロールチョック入側荷重検出装置17a、上作業ロールチョック出側荷重検出装置17b、下作業ロールチョック入側荷重検出装置18a、下作業ロールチョック出側荷重検出装置18bの測定値から求めることができる。なお、圧延方向力左右差として、ロールクロス用のシリンダー圧力から荷重換算した値を用いてもよい。入側ウェッジは、ウェッジ計30により測定し得る。入側温度左右差は、温度計40により測定し得る。レベリング量は、圧下装置13により測定し得る。圧延荷重左右差は、圧下方向荷重検出装置14により測定し得る。作業ロールスラスト反力は、スラスト反力測定装置16a、16bにより測定し得る。作業ロールスラスト反力については、上作業ロール1及び下作業ロール2のそれぞれについてスラスト反力を測定することができる。下記表1では、これらの平均値を作業ロールスラスト反力として用いたが、本発明は係る例に限定されず、例えば、上作業ロールスラスト反力または下作業ロールスラスト反力のうちいずれか一方を用いてもよい。
【0093】
【表1】
【0094】
上記表1に基づき、圧延方向力左右差、入側ウェッジ、入側温度左右差、レベリング量、圧延荷重左右差、または、作業ロールスラスト反力と第一種平行剛性の閾値ETHとの関係を上記式(10)と同様に表すと、下記式(10-1)~式(10-7)のようになる。
【0095】
【数11】
【0096】
複数の左右非対称な外乱因子を考慮する場合は、複数の左右非対称な外乱因子について重回帰分析を行い、第一種平行剛性の閾値ETHとの関係を求めればよい。例えば、入側オフセンタ量及び圧延方向力左右差と、第一種平行剛性の閾値ETHとの関係は、下記式(10-8)のように表すことができる。
【0097】
【数12】
【0098】
このように、ステップS130では、予め取得した左右非対称な外乱因子と第一種平行剛性の閾値ETHとの関係に基づき、左右非対称な外乱因子の値に対応する第一種平行剛性の閾値ETHを設定する。入側オフセンタ量、圧延方向力左右差、入側ウェッジ、入側温度左右差、レベリング量、圧延荷重左右差、及び、作業ロールスラスト反力のうち、いずれの左右非対称な外乱因子を考慮して第一種平行剛性の閾値ETHを設定するかは、圧延設備において測定可能な値の中から実操業に基づき適宜選択すればよい。この際、複数の因子を組み合わせて、蛇行抑制効果の高いものを選択してもよい。
【0099】
(S140~S160:制御ステップ)
ステップS120にて第一種平行剛性実績計算値Eが算出され、ステップS130にて第一種平行剛性の閾値ETHが設定されると、蛇行制御装置100は、第Mスタンドで被圧延材の尾端部の蛇行制御を実施するか否かを第一種平行剛性実績計算値Eと閾値ETHとを比較することにより判定する(S140)。
【0100】
第一種平行剛性実績計算値Eが閾値ETH以下である場合(すなわち、E≦ETHの場合)は、被圧延材の尾端部が蛇行する程度は小さいため、蛇行制御は行わず、後述するステップS170の処理へ進む。
【0101】
一方、第一種平行剛性実績計算値Eが閾値ETHより大きい場合(すなわち、E>ETHの場合)は、被圧延材の尾端部が蛇行する程度が大きいため、蛇行制御が行われる。このため、まず、蛇行制御装置100は、第一種平行剛性実績計算値Eを閾値ETH以下とするための、第Mスタンドにおける、ステップS100にて選定された制御パラメータの変更量ΔXを算出する(S150)。
【0102】
具体的には、蛇行制御装置100は、蛇行制御の制御パラメータに応じてその制御量(変更量)を算出する。どのように蛇行制御を行うかは、設備上の制約や形状制御上の制約を満たす範囲内で任意に設定すればよい。
【0103】
圧下装置13によって圧下位置のみを変更して蛇行制御を行う場合には、下記式(11)を満たす圧下位置変更量ΔSが算出される。
【0104】
【数13】
【0105】
インクリースベンディング装置11a~11d(さらにはディクリースベンディング装置12a~12d)によってベンディング力のみを変更して蛇行制御を行う場合には、下記式(12)を満たすベンディング力変更量ΔFが算出される。
【0106】
【数14】
【0107】
モータ等の駆動装置によって作業ロール1、2のロール速度を変更して蛇行制御を行う場合には、下記式(13)を満たすロール速度変更量ΔVが算出される。
【0108】
【数15】
【0109】
潤滑剤供給装置により潤滑剤供給量Qのみを変更して蛇行制御を行う場合には、下記式(14)を満たす潤滑剤供給量変更量ΔQが算出される。
【0110】
【数16】
【0111】
ロールチョックを移動させてロールクロス角θのみを変更して蛇行制御を行う場合には、下記式(15)を満たすロールクロス角変更量Δθが算出される。
【0112】
【数17】
【0113】
作業ロールを軸方向にシフトさせてロールシフト量Lのみを変更して蛇行制御を行う場合には、下記式(16)を満たすロールシフト量変更量ΔLが算出される。
【0114】
【数18】
【0115】
作業ロールのロールクラウンCのみを変更して蛇行制御を行う場合には、下記式(17)を満たすロールクラウン変更量ΔCが算出される。
【0116】
【数19】
【0117】
制御パラメータとして、圧下位置S、ベンディング力F、ロール速度V、潤滑剤供給量Q、ロールクロス角θ、ロールシフト量L及びロールクラウンCのうち、複数の制御パラメータが選定されている場合には、下記式(18)に示すように、選定された制御パラメータXの変更量ΔXと影響係数∂E/∂Xとの積の総和が、第一種平行剛性実績計算値Eと閾値ETHとの差分以下となるように、各制御パラメータXの変更量ΔXが制御量として算出される。
【0118】
【数20】
【0119】
ステップS150にて変更量が算出されると、蛇行制御装置100は、算出された制御パラメータXの変更量ΔXに基づき、制御パラメータXを制御する(S160)。これにより、第Mスタンドでの被圧延材の尾端部の蛇行制御が実施される。
【0120】
(S170:制御量の変更確認)
その後、尾端部の蛇行制御における制御量(変更量)の変更の有無が確認される(S170)。例えば、制御対象である第Mスタンドにて被圧延材の尾端部を圧延する間に鋼板温度が変動すると、圧延荷重が変化し、第一種平行剛性実績計算値の値も変わる。このような場合には、再度、第一種平行剛性実績計算値Eを計算し直し、制御量を修正することが望ましい。
【0121】
そこで、ステップS170において、蛇行制御装置100は、制御量の変更の有無を確認し、制御量の変更がない場合にはこのまま図3の処理を終了する。一方、制御量の変更がある場合は、蛇行制御装置100は演算処理装置200に対して、ステップS130からの処理を再度実行するよう指示する。再度のステップS130からの処理は、例えば、被圧延材の先端が制御対象とする第Mスタンドに噛み込んでから被圧延材の尾端部が第Mスタンドで圧延される前までの間の任意のタイミングで、随時実行すればよい。
【0122】
例えば、まず、被圧延材の尾端が第1スタンドを抜けたときにステップS130~S160の処理を実施し、次に、第2スタンドを抜けたときにステップS130~S160の処理を実施し、さらに、第3スタンドを抜けたときにステップS130~S160の処理を実施する、といったように、被圧延材の先端が制御対象とする第Mスタンドに噛み込んでから被圧延材の尾端部が第Mスタンドで圧延される前までの間に複数回、第Mスタンドでの蛇行制御の要否を確認し、蛇行の程度が大きい場合には蛇行制御を実施することを行う。これにより、より確実に蛇行の発生を抑制することができる。
【0123】
[2-2.蛇行制御例2(モデルを用いた第一種平行剛性実績計算値の算出)]
次に、図12及び図13に基づき、蛇行制御例2として、モデルを用いて第一種平行剛性実績計算値を算出し、被圧延材の尾端部の蛇行制御を行う場合について説明する。図12は、蛇行制御例2における第一種平行剛性実績計算値Eの算出処理の概要を示す模式図である。図13は、蛇行制御例2の処理を示すフローチャートである。
【0124】
蛇行制御例2は、図12に示すように、尾端部の圧延条件からモデルを用いてダイレクトに第一種平行剛性実績計算値Eを算出する。すなわち、蛇行制御例2は、蛇行制御例1のように第一種平行剛性設定計算値E及び第一種平行剛性への影響係数の算出することは行わず、尾端部の圧延条件から第一種平行剛性実績計算値Eを算出する。モデルを用いた演算は高負荷演算であるため、蛇行制御例1よりも演算処理時間は長くなる可能性はあるが、1回の演算処理で第一種平行剛性実績計算値Eを算出することができる。以下、蛇行制御例2について説明するが、蛇行制御例1と同様の処理については詳細な説明を省略する。
【0125】
(S200:制御パラメータの選定)
図13に示すように、まず、制御パラメータとして、圧下位置S、ベンディング力F、ロール速度V、潤滑剤供給量Q、ロールクロス角θ、ロールシフト量L及びロールクラウンCのうち少なくとも1つを用いることとする(S200)。制御パラメータは、上述したように、被圧延材の尾端部における蛇行制御において蛇行量の低減とともに重視する目的や、圧延スタンド10の設備構成上の制約等に基づいて選定し得る。また、制御パラメータの選定は、オペレータが行ってもよく、演算処理装置が制御パラメータを自動的に選定してもよい。ステップS200は、図3のステップS100と同様に実施すればよい。
【0126】
(S210:第一種平行剛性算出ステップ)
次いで、第一種平行剛性実績計算値Eが算出される。蛇行制御例2では、演算処理装置200は、制御対象である第Mスタンドでの被圧延材の尾端部の圧延条件から、モデルを用いて第一種平行剛性実績計算値Eを算出する(S210)。かかる演算は、圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fと、ロールクロス角実績値θ、ロールシフト量実績値L、及び、ロールクラウン実績値Cのうち、ステップS200にて選定された制御パラメータの実績値とに基づき実施される。
【0127】
圧延荷重実績値P及びベンディング力実績値Fは、被圧延材の先端が第Mスタンドに噛み込んでから被圧延材の尾端部が第Mスタンドで圧延される前までの間において同時に取得される。ロール速度実績値V、潤滑剤供給量実績値Q、ロールクロス角実績値θ、ロールシフト量実績値L、及び、ロールクラウン実績値Cは、現在設定されている値を用いればよい。例えば、制御開始時は、初期設定値が用いられ、後述するステップS350にて値が変更された場合には、変更後の値が用いられる。
【0128】
第一種平行剛性実績計算値Eを算出するためのモデルとしては、例えばミルストレッチモデルを用いることができる(例えば、非特許文献2参照)。なお、かかる演算は、ミルストレッチモデル以外のモデルを用いて行ってもよい。
【0129】
(S220:閾値設定ステップ)
また、被圧延材の蛇行量が許容値未満となる第一種平行剛性の閾値ETHが設定される(S220)。閾値ETHの設定は、図3のステップS130と同様に行えばよい。すなわち、入側オフセンタ量、圧延方向力左右差、入側ウェッジ、入側温度左右差、レベリング量、圧延荷重左右差、及び、作業ロールスラスト反力のうち、少なくともいずれか1つの左右非対称な外乱因子の値に応じて、予め取得した左右非対称な外乱因子と第一種平行剛性の閾値ETHとの関係に基づき、対応する第一種平行剛性の閾値ETHを設定する。
【0130】
(S230~S250:制御ステップ)
ステップS210にて第一種平行剛性実績計算値Eが算出され、ステップS220にて第一種平行剛性の閾値ETHが設定されると、蛇行制御装置100は、第Mスタンドで被圧延材の尾端部の蛇行制御を実施するか否かを第一種平行剛性実績計算値Eと閾値ETHとを比較することにより判定する(S230)。
【0131】
第一種平行剛性実績計算値Eが閾値ETH以下である場合(すなわち、E≦ETHの場合)は、被圧延材の尾端部が蛇行する程度は小さいため、蛇行制御は行わず、後述するステップS260の処理へ進む。
【0132】
一方、第一種平行剛性実績計算値Eが閾値ETHより大きい場合(すなわち、E>ETHの場合)は、被圧延材の尾端部が蛇行する程度が大きいため、蛇行制御が行われる。蛇行制御は、図3のステップS150及びS160と同様に行えばよい。まず、蛇行制御装置100は、制御量として、第一種平行剛性実績計算値Eを閾値ETH以下とするための、第Mスタンドにおける、ステップS200にて選定された制御パラメータの変更量ΔXを算出する(S240)。そして、変更量が算出されると、蛇行制御装置100は、算出された制御パラメータXの変更量ΔXに基づき、制御パラメータXを制御する(S250)。これにより、第Mスタンドでの被圧延材の尾端部の蛇行制御が実施される。
【0133】
(S260:制御量の変更確認)
その後、尾端部の蛇行制御における制御量の変更の有無が確認される(S260)。ステップS260は、図3のステップS170と同様に行えばよい。すなわち、蛇行制御装置100は、制御量の変更の有無を確認し、変更がない場合にはこのまま図13の処理を終了する。一方、制御量の変更がある場合は、蛇行制御装置100は演算処理装置200に対して、ステップS210からの処理を再度実行するよう指示する。ステップS210~S260の処理の繰り返しは、例えば、目標値の更新がなくなるまで行ってもよく、所定の回数だけ繰り返し処理が行われるまで行ってもよい。これにより、より確実に蛇行の発生を抑制することができる。
【実施例0134】
本実施形態に係る被圧延材の尾端部の蛇行制御について有効性を確認するため、以下の検証を行った。検証では、複数の圧延スタンドからなる仕上タンデム圧延機において鋼板を圧延したときの、絞り込み発生率及び尾端部歩留落ち率について調べた。絞り込み発生率は、尾端部圧延時の蛇行に起因する絞りの発生割合を表している。また、尾端部歩留落ち率は、圧延後の鋼板の板厚が目標板厚から外れた割合を表している。
【0135】
検証は、比較例1~3及び実施例1~8について行った。比較例1は、鋼板の尾端部について蛇行制御を行わなかった場合であり、比較例2、3は、特許文献3の手法により鋼板の尾端部の蛇行制御を実施した場合とした。比較例2、3の第一種平行剛性の閾値Ethは圧延前に予め設定した値であり、圧延中には変更しないものとした。比較例2では、後述する実施例1にて設定された第一種平行剛性の閾値Ethの範囲のうち、最小の値を設定した。比較例3では、後述する実施例1にて設定された第一種平行剛性の閾値Ethの範囲のうち、最大の値を設定した。
【0136】
実施例1~8は、本発明の一実施形態に係る蛇行制御方法の蛇行制御例1に基づき、鋼板の尾段部の蛇行制御を行った。実施例1では、入側オフセンタ量に基づき第一種平行剛性の閾値Ethを設定した。実施例2では、圧延方向力左右差に基づき第一種平行剛性の閾値Ethを設定した。実施例3では、入側ウェッジに基づき第一種平行剛性の閾値Ethを設定した。実施例4では、入側温度左右差に基づき第一種平行剛性の閾値Ethを設定した。実施例5では、レベリング量に基づき第一種平行剛性の閾値Ethを設定した。実施例6では、圧延荷重左右差に基づき第一種平行剛性の閾値Ethを設定した。実施例7では、上作業ロールスラスト反力と下作業ロールスラスト反力との平均値に基づき第一種平行剛性の閾値Ethを設定した。実施例8では、入側オフセンタ量及び圧延方向力左右差に基づき第一種平行剛性の閾値Ethを設定した。なお、実施例1~8は、制御パラメータとして、圧下位置S、ベンディング力F、ロール速度V、潤滑剤供給量Q、ロールクロス角θ、ロールシフト量L、及び、ロールクラウンCをそれぞれ単独で用いた場合と、圧下位置S、ベンディング力F、及び、ロール速度Vの3つを用いた場合とについて、実施した。
【0137】
下記表2に、検証結果を示す。
【0138】
【表2】
【0139】
上記表2より、比較例1では、鋼板の尾端部の蛇行制御を行わなかったため、蛇行が発生し、絞り込みが0.101%発生した。比較例2、3では、鋼板の尾端部の蛇行制御が実施された結果、比較例1と比較して蛇行の発生割合が減少しため絞り込み発生率は低下した。しかし、比較例2では、第一種平行剛性の閾値Ethが小さく設定されたことにより鋼板の尾端部の蛇行制御が必要以上に行われた。その結果、尾端部の歩留落ち率は、比較例1と比較して高くなった。比較例3では、第一種平行剛性の閾値Ethが大きく設定されたことにより、過剰な鋼板の尾端部の蛇行制御が行われることがなくなった。その結果、尾端部の歩留落ち率は、比較例1と比較して低下したが、絞り込み発生率は比較例2よりも増加した。
【0140】
一方、蛇行制御例1に基づき鋼板の尾端部の蛇行制御を行った実施例1~8では、考慮する左右非対称な外乱因子の値を測定し、当該値に応じて第一種平行剛性の閾値Ethを設定して、蛇行制御の実施の要否を判定した。例えば、実施例1では、入側オフセンタ量yを測定して、測定された入側オフセンタ量yに応じて第一種平行剛性の閾値Ethを設定して、蛇行制御の実施の要否を判定した。入側オフセンタ量yの測定値は0~25mmの範囲にあり、第一種平行剛性の閾値Ethは0.00062~0.00172の範囲の値が設定された。その結果、実施例1では、比較例1~3と比較して、絞り込み発生率及び尾端部の歩留落ち率がともに低下した。実施例2~8についても同様に、比較例1~3と比較して、絞り込み発生率及び尾端部の歩留落ち率がともに低下した。特に実施例8では、2つの左右非対称な外乱因子を考慮したことで、絞り込み発生率及び尾端部の歩留落ち率がともに最もよい結果となった。
【0141】
このように、実施例1~8では、圧延中の左右非対称な外乱条件の変化を考慮して第一種平行剛性の閾値Ethを設定したことで、蛇行の発生割合を減少できるとともに、尾端部の板厚精度も向上させることができた。
【0142】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0143】
1 上作業ロール
2 下作業ロール
3 上補強ロール
4 下補強ロール
5(5a、5b) 上作業ロールチョック
6(6a、6b) 下作業ロールチョック
7(7a、7b) 上補強ロールチョック
8(8a、8b) 下補強ロールチョック
9 ハウジング
9a 入側プロジェクトブロック
9b 出側プロジェクトブロック
10 圧延スタンド
11a~11d インクリースベンディング装置
12a~12d ディクリースベンディング装置
13(13a、13b) 圧下装置
14(14a、14b) 圧下方向荷重検出装置
15a、15b 作業ロールシフト装置
16a、16b スラスト反力測定装置
17a 上作業ロールチョック入側荷重検出装置
17b 上作業ロールチョック出側荷重検出装置
18a 下作業ロールチョック入側荷重検出装置
18b 下作業ロールチョック出側荷重検出装置
20 蛇行計
30 ウェッジ計
40 温度計
100 蛇行制御装置
200 演算処理装置
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13