(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132936
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ディジタル保護リレー及びアナログ入力回路基板
(51)【国際特許分類】
H02H 3/02 20060101AFI20240920BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H02H3/02 F
H05K1/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024033902
(22)【出願日】2024-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2023041691
(32)【優先日】2023-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白川 紘之
(72)【発明者】
【氏名】野澤 勝平
(72)【発明者】
【氏名】板垣 大樹
(72)【発明者】
【氏名】前原 宏之
【テーマコード(参考)】
5E344
5G142
【Fターム(参考)】
5E344AA07
5E344BB06
5E344CD18
5E344DD07
5E344EE21
5G142AB05
5G142BB07
(57)【要約】
【課題】より柔軟な対応を可能とするとともに、製品品質が均一で高性能なディジタル保護リレー及びアナログ入力回路基板を提供する。
【解決手段】アナログ信号が入力されるアナログ入力部を有するディジタル保護リレーであって、前記アナログ入力部は、親基板に接続される複数の子基板を具備し、前記子基板は、前記親基板に接続するための接続部品と、アナログ入力量変換回路と、外部からのアナログ信号を取り込むソケットおよびプラグと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号が入力されるアナログ入力部を有するディジタル保護リレーであって、
前記アナログ入力部は、親基板に接続される複数の子基板を具備し、
前記子基板は、前記親基板に接続するための接続部品と、アナログ入力量変換回路と、外部からのアナログ信号を取り込むソケットおよびプラグと、を有する
ことを特徴とするディジタル保護リレー。
【請求項2】
請求項1記載のディジタル保護リレーであって、
前記子基板が、アナログ/ディジタル変換回路を有する
ことを特徴とするディジタル保護リレー。
【請求項3】
アナログ信号が入力されるアナログ入力部を構成するアナログ入力回路基板であって、
親基板に接続される複数の子基板を具備し、
前記子基板は、前記親基板に接続するための接続部品と、アナログ入力量変換回路と、外部からのアナログ信号を取り込むソケットおよびプラグと、を有する
ことを特徴とするアナログ入力回路基板。
【請求項4】
請求項3記載のアナログ入力回路基板であって、
前記子基板が、アナログ/ディジタル変換回路を有する
ことを特徴とするアナログ入力回路基板。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のアナログ入力回路基板であって、
前記親基板に、当該親基板面と基板面が直交する方向に前記子基板を複数並列に配設し、複数の前記子基板同士を結合する
ことを特徴とするアナログ入力回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ディジタル保護リレー及びアナログ入力回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル保護リレーは、電力系統の入力電流、電圧の大きさや位相条件により事故判定演算を行い、保護区間に事故が発生した場合に事故区間を除去するように遮断器に指令を出して健全な電力系統を保護するものである。このディジタル保護リレーにおいては、外部から端子台を介してアナログ入力を取り込み、入力電流、電圧をディジタル保護リレーユニット内部の補助変成器(変流器および計器用変圧器)で所定のアナログ量へ変換し、そのアナログ量をアナログ/ディジタル変換器にてディジタル量に変換して事故判定の演算処理を行っている。
【0003】
このようなディジタル保護リレーにおいて、アナログ入力部を構成する従来のアナログ入力回路基板の例を
図4に示す。アナログ入力回路基板において、変成器201および端子台202のプラグ側は挿入実装部品となっており、アナログ入力変換用のプリント基板(以下、親基板と称する。)200に設けられたスルーホールに、部品のピンを差し込み、親基板200のハンダ面側からスルーホールにハンダを流し込むように取り付けを行うことで部品を親基板200に固定している。その後、親基板200に固定された端子台202と変成器201をツイストケーブル203にて配線することで、アナログ入力部を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したディジタル保護リレー及びアナログ入力回路基板では、以下の課題がある。
端子台と変成器間のツイストケーブル配線を手作業で行うため、作業者による製品品質の差異や誤配線によって製品不良の可能性が懸念される。
端子台と変成器を親基板に取り付けるという性質上、入出力要素の新たな組み合わせを構成する際には、親基板全体を再設計する必要があり、設計工数の増加が見込まれる。
端子台と変成器の配線スペースの確保による保護リレーユニットのサイズの制約や、部品密集によるユニット内温度の上昇が懸念される。
複数の入力に対応するツイストケーブル配線がある程度の距離を並走するため、入力間にクロストークが発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、上述した従来の事情に対処してなされたもので、その目的は、より柔軟な対応を可能とするとともに、製品品質が均一で高性能なディジタル保護リレー及びアナログ入力回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のディジタル保護リレーは、アナログ信号が入力されるアナログ入力部を有するディジタル保護リレーであって、前記アナログ入力部は、親基板に接続される複数の子基板を具備し、前記子基板は、前記親基板に接続するための接続部品と、アナログ入力量変換回路と、外部からのアナログ信号を取り込むソケットおよびプラグと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、より柔軟な対応を可能とするとともに、製品品質が均一で高性能なディジタル保護リレー及びアナログ入力回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るディジタル保護リレーの概略構成を示すブロック図。
【
図2】実施形態に係る子基板の構成を模式的に示す図。
【
図3】実施形態に係る子基板にプラグを接続する構成の例を模式的に示す図。
【
図4】変成器を使用した従来のアナログ入力回路基板の例を模式的に示す図。
【
図5】部品が低背化しても親基板上の部品実装面積が減少しない例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係るディジタル保護リレー及びアナログ入力回路基板について、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係るディジタル保護リレーの全体概略構成を示したブロック図であり、
図2は、実施形態に係るディジタル保護リレーにおけるアナログ入力回路基板を構成する子基板の構成を模式的に示す図である。
【0011】
本実施形態では、従来の変成器によるアナログ入力取り込みに代わり、電流測定にはシャント抵抗、電圧測定には抵抗分圧を用いた基板(以下、シャント基板と称する。)、又は、小型で低背の変成器と電子回路を組み合わせ、変成器の負担が極めて小さくなるように電子回路で制御するような基板を用いたアナログ入力取り込みを使用する。
【0012】
上記したシャント基板では、変成器と比べて比較的低背の部品でアナログ入力回路を構成することができ、変成器を使用したアナログ入力取り込み構成よりも部品による基板占有体積が小さく、省スペース化を図ることができる。従来の変成器構成と同様に親基板にシャント基板用の部品を取り付けることも可能だが、この場合、例えば、
図5に示すように、アナログ入力回路の部品が低背化しても親基板上の部品実装面積は減るとは限らないため、アナログ入力回路の実装可能数が増えないことが想定される。また、回路部品を低背化しても、端子台は外部配線や端子の並びの関係で低背化できないことも多く、アナログ入力基板の占める高さは従来と同じになり、アナログ入力回路の数を増やせないことになる。
【0013】
そこで、本実施形態においては、
図1、
図2に示すように、入力の1要素に対し、小型で低背の子基板(アナログ入力子基板)3を1枚割り当てる。各子基板3には、演算部分である親基板とつなげる接続部品6、アナログ/ディジタル変換回路5、アナログ入力量変換回路4を個別に実装する。本構成では、子基板3を親基板10に差し替えることで、容易に入力要素の変更が可能となる。また、各子基板3、1枚につき1極のプラグ2を実装することで、従来の端子台と変成器間のツイストケーブルによる配線作業を不要とすることができる。
【0014】
シャント基板を構成する部品が低背のため、子基板3は低背にして子基板3を並列に高密度に並べて接続できるようにする。これによりアナログ入力要素の数も従来の変成器構成と同数か、より多くの数を実装することが可能となる。小型かつ低背の変成器と電子回路の組合せによっても、上記と同様に入力の1要素に対し、子基板1枚を割り当てることができるため、同様の効果を得ることができる。
【0015】
本実施形態のディジタル保護リレーは、
図1に示すように、外部から入力されるアナログ量を、ソケット1を外部とのインターフェイスとしてディジタル保護リレーの内部へ取り込む。取り込まれたアナログ入力は、プラグ2を通じて子基板3の回路に入力される。
【0016】
子基板3には、アナログ入力1次側回路4a及びアナログ入力2次側回路4bを備えたアナログ入力量変換回路4が設けられている。プラグ2を通じて入力されたアナログ量は、アナログ入力量変換回路4にて所定のアナログ量へ変換される。(従来のディジタル保護リレーに実装されている変成器はアナログ入力量変換回路の役割を担っている。)所定の量に変換されたアナログ入力信号は、アナログ/ディジタル変換回路5に入力され、ディジタル信号へ変換される。
【0017】
その後、変換されたディジタル信号は、子基板3と親基板側をつなぐ接続部品6を介して、親基板側以降に実装されている演算処理部7でのリレー演算に使用される。リレー演算の結果により、リレー出力回路8から出力接点9を通じて信号を外部へ出力する。
【0018】
図2に示すように、子基板3上に、プラグ2、アナログ入力量変換回路4、アナログ/ディジタル変換回路5および親基板側との接続部品6が設けられている。
図4に示した通り、従来、親基板200側には挿入実装部品である端子台202や変成器201が実装されており、親基板200側には絶縁耐圧を考慮した十分なパターンを引く必要があること、変成器201のように親基板200の占有面積が広い部品を使用することでディジタル保護リレーのサイズの制約が生まれ、親基板200にはアナログ入力変換回路以外の回路を実装することが難しかった。
【0019】
一方、本実施形態のように、従来の変成器よりも比較的低背になるチップ部品や小型変成器を用いたアナログ入力量変換回路4を子基板3上に実装することにより、親基板10側では子基板3との接続部は必要になるものの、従来、変成器などの挿入実装部品で占有されていた親基板10の領域を他の回路に割り当てることも可能となる。結果的に、部品の小型化、親基板10へ実装する大型部品が削減されることにより、従来使用できなかった親基板部分を有効に活用できる。このことがディジタル保護リレーユニット内の省スペース化や、部品間空間距離の確保につながり、温度上昇の抑制、ユニット筐体の小型化を図ることができる。
【0020】
図3は、
図2に示した子基板3を、親基板10に実装した場合の構成例を模式的に示す図である。
図3に示す例では、子基板3を8枚、親基板10へ接続部品6を介して接続する。また、
図3に示す例では、親基板10に、当該親基板面と基板面が直交する方向に子基板3を複数並列に配設し、各子基板3のプラグ2が並ぶようにして複数の子基板3同士を結合している。そして、複数のソケット1を一体化したソケット側プラグ挿入部13にプラグ2が誘い込まれるよう構成することで、電気的な接続をとることができ、従来の端子台202に相当する機能を持たせることができる。
【0021】
本実施形態では、従来、親基板側に実装していた挿入実装部品であるプラグ側の端子台が不要となる。このため、親基板10側の部品占有面積を少なくすることができる。また、
図4に示した従来の構成の場合必要であった、端子台202と変成器201との間のツイストケーブル203による配線が不要になり、誤配線による製品不良の削減や作業者の技量による製品品質の差異が減少する。また、基板組立、製品組立作業の標準化、効率化を見込むことができる。さらに、従来、複数のアナログ入力間で起こりうるクロストークの要因であるツイストケーブル203の並走が無くなることで、クロストークの低減を図ることができる。
【0022】
また、子基板3を親基板10に並列に実装するという構造であるため、アナログ入力要素の変更、入れ替えの際でも子基板3を流用することができ、いままで変成器の配置や端子台とのツイストケーブル接続を再考、再設計しなければならなかった親基板の設計において、設計工数の短縮を見込むことができる。
【0023】
以上のように、本実施形態によれば、各子基板3上に親基板10側との接続部品6、アナログ/ディジタル変換回路5、低背部品によるアナログ入力量変換回路4、外部からのアナログ入力を取り込むソケット1およびプラグ2が設けられていることで、以下の効果を得ることができる。
端子台と変成器間のツイストケーブルによる配線が無くなり、誤配線による製品不良の削減、作業者の技量による製品品質の差異が少なくなる。また、基板組立、製品組立作業の標準化、効率化を見込める。
子基板の組み合わせ変更により、アナログ入力要素の変更、入れ替えが容易となるため、親基板設計工数の短縮を図ることができる。
低背の部品で構成される子基板を並列に高密度に並べて使用することで、省スペース化することでき、ユニットの小型化やユニット内の部品間距離が広くなる事による温度上昇の抑制が図ることができる。
並走するツイストケーブル配線が無くなることで、各アナログ入力間でのクロストークを低減することができる。
【0024】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、入力の1要素に子基板1枚を対応させ、これをソケット1のソケット側プラグ挿入部13へ接続することで、様々な実施形態において本発明に特有の効果を得ることができる。
【0025】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1……ソケット、2……プラグ、3……子基板、4……アナログ入力量変換回路、4a……アナログ入力1次側回路、4b……アナログ入力2次側回路、5……アナログ/ディジタル変換回路、6……接続部品、7……演算処理部、8……リレー出力回路、9……出力接点、10……親基板、13……ソケット側プラグ挿入部。