(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013295
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】積層体払い出し装置及び積層体の払い出し方法
(51)【国際特許分類】
B21D 28/02 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B21D28/02 F
B21D28/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115262
(22)【出願日】2022-07-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】390023032
【氏名又は名称】田中精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 英一
(57)【要約】
【課題】払い出し中であっても固定スクイズ内の薄鋼板を徐々に下げ続けることができ、且つパイリング中の薄鋼板が横移動する心配がない積層体払い出し技術を提供する。
【解決手段】固定スクイズ42内の薄鋼板17は下がり続ける。薄鋼板17(n)が第1可動スクイズ54の下端を通過したら、第1可動スクイズ54を閉じる。
図7(b)で、薄鋼板17(n)が第2可動スクイズ55の下端を通過したら、第2可動スクイズ55を閉じる。
図7(c)で、バックアップ43から積層体50を払い出す。この間、固定スクイズ42及び可動スクイズ45内の薄鋼板17は、徐々に下がり続ける。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄鋼板を段積み状態で収納し且つ低速で徐々に下降する前記薄鋼板を案内する案内穴を有する固定スクイズと、前記段積み状態の薄鋼板を受けるバックアップと、このバックアップを低速/高速に切り換えて昇降するバックアップ昇降機構と、所定枚数の前記薄鋼板を積層したものを積層体というときに前記バックアップ上の前記積層体を払い出す押出し機構と、前記バックアップ昇降機構及び前記押出し機構を制御する制御部とを備える積層体払い出し装置であって、
前記薄鋼板同士は硬化処理前の接着剤又は本かしめ前の仮かしめにより弱く接合され、
前記固定スクイズの下に、可動スクイズ及びこの可動スクイズを開閉するスクイズ開閉機構をさらに備え、この可動スクイズは閉じたときに前記案内穴と同径の下方案内穴を有し、
前記可動スクイズの軸長さは、前記積層体を払い出す間に前記固定スクイズから下降する前記薄鋼板の下降距離より大きく設定されており、
前記制御部は、前記バックアップ上の前記薄鋼板が所定枚数だけ前記固定スクイズを通過したら前記バックアップの高速下降を開始し、前記バックアップ上の前記積層体が前記可動スクイズを通過したら前記可動スクイズを閉じ、前記積層体を払い出し、この後に前記バックアップの高速上昇を開始し、前記バックアップが前記可動スクイズ内の前記薄鋼板に当たったら前記可動スクイズを開く制御をなすことを特徴とする積層体払い出し装置。
【請求項2】
硬化処理前の接着剤又は本かしめ前の仮かしめにより弱く接合される複数の薄鋼板と、これらの薄鋼板を段積み状態で収納し且つ低速で徐々に下降する前記薄鋼板を案内する案内穴を有する固定スクイズと、前記段積み状態の薄鋼板を受けるバックアップと、このバックアップを低速/高速に切り換えて昇降するバックアップ昇降機構と、所定枚数の前記薄鋼板を積層したものを積層体というときに前記バックアップ上の前記積層体を払い出す押出し機構と、前記固定スクイズの下に設けられる可動スクイズと、この可動スクイズを開閉するスクイズ開閉機構とを準備し、
前記バックアップ上の前記薄鋼板が所定枚数だけ前記固定スクイズを通過したら前記バックアップの高速下降を開始し、前記バックアップ上の前記積層体が前記可動スクイズを通過したら前記可動スクイズを閉じ、前記積層体を払い出し、この後に前記バックアップの高速上昇を開始し、前記バックアップが前記可動スクイズ内の前記薄鋼板に当たったら前記可動スクイズを開くことで、前記固定スクイズ内の前記薄鋼板の下降を継続しつつ、前記積層体の払い出しを行うことを特徴とする積層体の払い出し方法。
【請求項3】
硬化処理前の接着剤又は本かしめ前の仮かしめにより弱く接合される複数の薄鋼板と、これらの薄鋼板を段積み状態で収納し且つ低速で徐々に下降する前記薄鋼板を案内する案内穴を有する固定スクイズと、前記段積み状態の薄鋼板を受けるバックアップと、このバックアップを昇降するバックアップ昇降機構と、所定枚数の前記薄鋼板を積層したものを積層体というときに前記バックアップ上の前記積層体を払い出す押出し機構と、前記固定スクイズの下に設けられる可動スクイズと、この可動スクイズを開閉するスクイズ開閉機構と、前記バックアップ昇降機構及び前記押出し機構を制御する制御部を準備し、
前記制御部は、前記固定スクイズから下へ突出する前記薄鋼板が、前記固定スクイズ内の前記薄鋼板に接合作用で吊られている間に前記可動スクイズを閉じ、この可動スクイズが閉じている間に前記積層体を払い出す制御をなすことを特徴とする積層体の払い出し方法。
【請求項4】
薄鋼板を段積み状態で収納し且つ低速で徐々に下降する前記薄鋼板を案内する案内穴を有する固定スクイズと、前記段積み状態の薄鋼板を受けるバックアップと、このバックアップを低速/高速に切り換えて昇降するバックアップ昇降機構と、所定枚数の前記薄鋼板を積層したものを積層体というときに前記バックアップ上の前記積層体を払い出す押出し機構と、前記バックアップ昇降機構及び前記押出し機構を制御する制御部とを備える積層体払い出し装置であって、
前記薄鋼板同士は硬化処理前の接着剤又は本かしめ前の仮かしめにより弱く接合され、
前記固定スクイズの下に、第1可動スクイズ及びこの第1可動スクイズを開閉する第1スクイズ開閉機構をさらに備え、この第1可動スクイズは閉じたときに前記案内穴と同径の第1案内穴を有し、
前記第1可動スクイズの下に、第2可動スクイズ及びこの第2可動スクイズを開閉する第2スクイズ開閉機構をさらに備え、この第2可動スクイズは閉じたときに前記第1案内穴と同径の第2案内穴を有し、
前記第1可動スクイズの軸長さと前記第2可動スクイズの軸長さの和は、前記積層体を払い出す間に前記固定スクイズから下降する前記薄鋼板の下降距離より大きく設定されており、
前記制御部は、前記バックアップ上の前記薄鋼板が所定枚数だけ前記固定スクイズを通過したら前記バックアップの高速下降を開始し、前記バックアップ上の前記積層体が前記第1可動スクイズを通過したら前記第1可動スクイズを閉じ、前記バックアップ上の前記積層体が前記第2可動スクイズを通過したら前記第2可動スクイズを閉じ、前記積層体を払い出し、この後に前記バックアップの高速上昇を開始し、前記バックアップが前記第2可動スクイズ内の前記薄鋼板に当たったら前記第1可動スクイズ及び前記第2可動スクイズを開く制御をなすことを特徴とする積層体払い出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄鋼板が所定枚数積層されてなる積層体を払い出す積層体払い出し技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から薄いワークを段積み状態に積層する機構と、積層されたものの最も下から所定枚数のワークを払い出す機構とが、知られている。段積み行為はパイリングとも呼ばれ、払い出される所定枚数のワークは、1個の積層体と呼ばれる。
【0003】
このような技術を、打ち抜き薄鋼板に適用した積層体払い出し装置が知られている(例えば、特許文献1(
図3、
図4)参照)。
【0004】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図8(a)、(b)は従来の技術の基本原理を説明する図である。
図8(a)に示すように、電磁鋼板101は、昇降するパンチ102で打ち抜かれる。
打ち抜かれた薄鋼板103は、支持台104上に段積み状態で溜められる。
打ち抜きに同期してねじ軸105が回され、支持台104が徐々に下げられる。
結果、支持台104に段積み状態で多数枚の薄鋼板103がパイリングされる。
【0005】
特許文献1には薄鋼板103の下降を停止することが明記されてはいないが、パンチ102が再下降するまでの極めて短い時間の間に、積層体109を払い出すとすると運転が煩雑になる可能性がある。対して、支持台104の上面がボルスター106の上面に合致したら、薄鋼板103の下降を停止することは運転が容易になる。
この後に、クランパー107を前進させる。
【0006】
図8(b)に示すように、クランパー107で所定高さ位置にある薄鋼板103A(Aは場所を特定するための添字である。)をクランプする。
この状態で、プッシャ108により、積層体109を払い出す。
以上により、パイリングされた多数枚の薄鋼板103の最も下から積層体109が払い出される。
【0007】
プッシャ108が戻される。次に、ねじ軸105が回され支持台104が薄鋼板103Aに当てられる。次に、クランパー107が開放される。
次に、薄鋼板103の下降が再開され、
図8(a)に戻る。
【0008】
しかし、特許文献1の技術には、改善が求められる事項が存在する。改善が求められる事項を次に列記する。
先ず、プッシャ108で積層体109を払い出す間には、薄鋼板103の下降を停止させるため、生産性が低下する。
【0009】
また、
図8(b)に示すように、薄鋼板103Aはクランパー107で拘束されているため横方向の移動は心配がない。しかし、薄鋼板103Aより上に存在する薄鋼板103は横移動する恐れがある。
ただし、特許文献1では薄鋼板103同士はカシメにより接合さられており、横移動の程度は軽微である。
【0010】
近年、カシメに代わる手法として接着剤で薄鋼板103同士を接合することが行われている。
接着剤の場合は、払い出し後に実施される加熱(又は加圧)により所定の接着強度が得られるため、払い出し時点では、薄鋼板103Aより上に存在する薄鋼板103は横移動する恐れが十分にある。
対策として、払い出し後で且つ加熱(又は加圧)前に、積層体を整列する工程を追加する。
しかし、整列工程を追加するとそのための装置が追加され、装置コストが嵩む。
【0011】
近年、生産性の向上が求められ中、払い出し中であっても固定スクイズ内の薄鋼板を徐々に下げ続けることができ、且つパイリング中の薄鋼板が横移動する心配がない積層体払い出し技術が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、払い出し中であっても固定スクイズ内の薄鋼板を徐々に下げ続けることができ、且つパイリング中の薄鋼板が横移動する心配がない積層体払い出し技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、薄鋼板を下げ続ける技術を研究する中で、硬化処理前の接着剤に表面張力による弱い接合力があることに着目し、この着目により連続化が図れるのではないかと考えた。この考えを検証するために、実験を行うことにした。実験の内容を
図1に基づいて説明する。
【0015】
なお、以下の説明において、段積み状態の薄鋼板17につき、高さ位置を区別するときには、薄鋼板17(1)、17(n)のように、薄鋼板17に(1)~(n)を添える。 当然、薄鋼板17(1)~薄鋼板17(n)は薄鋼板17と同一物である。
【0016】
図1(a)に示すように、薄鋼板17を段積みし、下から2枚目の薄鋼板17(2)をクランパー18でクランプした。実験によれば、薄鋼板17(1)は落下しなかった。
薄鋼板17に熱硬化性接着剤が塗布されている。接着剤は(硬化処理前であるが)表面張力を有する。薄鋼板17(1)と薄鋼板17(2)の間の表面張力が、薄鋼板17(1)の自重より大きいためと思われる。
【0017】
図1(b)に示すように、下から4枚目の薄鋼板17(4)をクランプした。下から3枚目の薄鋼板17(3)と下から4枚目の薄鋼板17(4)との間に、薄鋼板17(1)~17(3)の荷重(自重の合計)が掛かる。しかし、薄鋼板17(1)~17(3)は落下しなかった。
【0018】
図1(c)に示すように、下から6枚目の薄鋼板17(6)をクランプした。すると、薄鋼板17(1)~17(5)が落下した。
薄鋼板17(5)と薄鋼板17(6)の間の表面張力より、薄鋼板17(1)~17(5)の荷重(自重の合計)が大きくなったためと思われる。
【0019】
ところで、薄鋼板17同士はカシメにより機械的に接合することも、よく行われる。
この場合、段積み中は仮カシメを行い、後工程で本カシメを行う。仮カシメでは薄鋼板17同士は弱い力で接合される。
図1(b)、(c)において、クランパー18より下の薄鋼板17の枚数が1~2枚変化するものの、仮カシメでも、
図1(a)~(c)と同様の結果が得られた。
【0020】
以上から、本発明者らは、
図1(c)に到る前、すなわち、
図1(a)から
図1(b)までの間に、払い出しが完了すれば、薄鋼板17を下げ続けることができることを知見し、この知見に基づいて、以下の発明を完成させるに到った。
【0021】
すなわち、請求項1に係る発明は、薄鋼板を段積み状態で収納し且つ低速で徐々に下降する前記薄鋼板を案内する案内穴を有する固定スクイズと、前記段積み状態の薄鋼板を受けるバックアップと、このバックアップを低速/高速に切り換えて昇降するバックアップ昇降機構と、所定枚数の前記薄鋼板を積層したものを積層体というときに前記バックアップ上の前記積層体を払い出す押出し機構と、前記バックアップ昇降機構及び前記押出し機構を制御する制御部とを備える積層体払い出し装置であって、
前記薄鋼板同士は硬化処理前の接着剤又は本かしめ前の仮かしめにより弱く接合され、
前記固定スクイズの下に、可動スクイズ及びこの可動スクイズを開閉するスクイズ開閉機構をさらに備え、この可動スクイズは閉じたときに前記案内穴と同径の下方案内穴を有し、
前記可動スクイズの軸長さは、前記積層体を払い出す間に前記固定スクイズから下降する薄鋼板の下降距離より大きく設定されており、
前記制御部は、前記バックアップ上の前記薄鋼板が所定枚数だけ前記固定スクイズを通過したら前記バックアップの高速下降を開始し、前記バックアップ上の前記積層体が前記可動スクイズを通過したら前記可動スクイズを閉じ、前記積層体を払い出し、この後に前記バックアップの高速上昇を開始し、前記バックアップが前記可動スクイズ内の前記薄鋼板に当たったら前記可動スクイズを開く制御をなすことを特徴とする。
【0022】
請求項2に係る発明は、硬化処理前の接着剤又は本かしめ前の仮かしめにより弱く接合される複数の薄鋼板と、これらの薄鋼板を段積み状態で収納し且つ低速で徐々に下降する前記薄鋼板を案内する案内穴を有する固定スクイズと、前記段積み状態の薄鋼板を受けるバックアップと、このバックアップを低速/高速に切り換えて昇降するバックアップ昇降機構と、所定枚数の前記薄鋼板を積層したものを積層体というときに前記バックアップ上の前記積層体を払い出す押出し機構と、前記固定スクイズの下に設けられる可動スクイズと、この可動スクイズを開閉するスクイズ開閉機構とを準備し、
前記バックアップ上の前記薄鋼板が所定枚数だけ前記固定スクイズを通過したら前記バックアップの高速下降を開始し、前記バックアップ上の前記積層体が前記可動スクイズを通過したら前記可動スクイズを閉じ、前記積層体を払い出し、この後に前記バックアップの高速上昇を開始し、前記バックアップが前記可動スクイズ内の前記薄鋼板に当たったら前記可動スクイズを開くことで、前記固定スクイズ内の前記薄鋼板の下降を継続しつつ、前記積層体の払い出しを行うことを特徴とする積層体の払い出し方法を提供する。
【0023】
請求項3に係る発明は、硬化処理前の接着剤又は本かしめ前の仮かしめにより弱く接合される複数の薄鋼板と、これらの薄鋼板を段積み状態で収納し且つ低速で徐々に下降する前記薄鋼板を案内する案内穴を有する固定スクイズと、前記段積み状態の薄鋼板を受けるバックアップと、このバックアップを昇降するバックアップ昇降機構と、所定枚数の前記薄鋼板を積層したものを積層体というときに前記バックアップ上の前記積層体を払い出す押出し機構と、前記固定スクイズの下に設けられる可動スクイズと、この可動スクイズを開閉するスクイズ開閉機構と、前記バックアップ昇降機構及び前記押出し機構を制御する制御部を準備し、
前記制御部は、前記固定スクイズから下へ突出する前記薄鋼板が、前記固定スクイズ内の前記薄鋼板に接合作用で吊られている間に前記可動スクイズを閉じ、この可動スクイズが閉じている間に前記積層体を払い出す制御をなすことを特徴とする積層体の払い出し方法を提供する。
【0024】
請求項4に係る発明は、薄鋼板を段積み状態で収納し且つ低速で徐々に下降する前記薄鋼板を案内する案内穴を有する固定スクイズと、前記段積み状態の薄鋼板を受けるバックアップと、このバックアップを低速/高速に切り換えて昇降するバックアップ昇降機構と、所定枚数の前記薄鋼板を積層したものを積層体というときに前記バックアップ上の前記積層体を払い出す押出し機構と、前記バックアップ昇降機構及び前記押出し機構を制御する制御部とを備える積層体払い出し装置であって、
前記薄鋼板同士は硬化処理前の接着剤又は本かしめ前の仮かしめにより弱く接合され、
前記固定スクイズの下に、第1可動スクイズ及びこの第1可動スクイズを開閉する第1スクイズ開閉機構をさらに備え、この第1可動スクイズは閉じたときに前記案内穴と同径の第1案内穴を有し、
前記第1可動スクイズの下に、第2可動スクイズ及びこの第2可動スクイズを開閉する第2スクイズ開閉機構をさらに備え、この第2可動スクイズは閉じたときに前記第1案内穴と同径の第2案内穴を有し、
前記第1可動スクイズの軸長さと前記第2可動スクイズの軸長さの和は、前記積層体を払い出す間に前記固定スクイズから下降する前記薄鋼板の下降距離より大きく設定されており、
前記制御部は、前記バックアップ上の前記薄鋼板が所定枚数だけ前記固定スクイズを通過したら前記バックアップの高速下降を開始し、前記バックアップ上の前記積層体が前記第1可動スクイズを通過したら前記第1可動スクイズを閉じ、前記バックアップ上の前記積層体が前記第2可動スクイズを通過したら前記第2可動スクイズを閉じ、前記積層体を払い出し、この後に前記バックアップの高速上昇を開始し、前記バックアップが前記第2可動スクイズ内の前記薄鋼板に当たったら前記第1可動スクイズ及び前記第2可動スクイズを開く制御をなすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に係る発明では、可動スクイズを備え、この可動スクイズをスクイズ開閉機構で開閉することで、固定スクイズ内の薄鋼板を徐々に下げる動作を継続させることができた。加えて、段積み状態の薄鋼板、すなわちパイリング中の薄鋼板は固定スクイズの案内穴で横移動が抑制される。
よって、請求項1により、払い出し中であっても固定スクイズ内の薄鋼板を徐々に下げ続けることができ、且つパイリング中の薄鋼板が横移動する心配がない積層体払い出し装置が提供される。
【0026】
請求項2に係る方法発明により、固定スクイズ内の薄鋼板を徐々に下げる動作を継続させることができる。加えて、段積み状態の薄鋼板、すなわちパイリング中の薄鋼板は固定スクイズの案内穴で横移動が抑制される。
よって、請求項2により、払い出し中であっても固定スクイズ内の薄鋼板を徐々に下げ続けることができ、且つパイリング中の薄鋼板が横移動する心配がない積層体の払い出し方法が提供される。
【0027】
請求項3に係る方法発明により、制御部は、固定スクイズから下へ突出する薄鋼板が、固定スクイズ内の薄鋼板に接合作用で吊られている間に可動スクイズを閉じ、この可動スクイズが閉じている間に積層体を払い出す。この方法により、固定スクイズ内の薄鋼板は下げ動作を継続させることができる。加えて、段積み状態の薄鋼板、すなわちパイリング中の薄鋼板は固定スクイズの案内穴で横移動が抑制される。
よって、請求項3により、払い出し中であっても固定スクイズ内の薄鋼板を徐々に下げ続けることができ、且つパイリング中の薄鋼板が横移動する心配がない積層体の払い出し方法が提供される。
【0028】
請求項4に係る発明では、第1可動スクイズ及び第2可動スクイズを備え、第1可動スクイズ及び第2可動スクイズを第1・第2スクイズ開閉機構で開閉することで、固定スクイズ内の薄鋼板を徐々に下げる動作を継続させることができた。加えて、段積み状態の薄鋼板、すなわちパイリング中の薄鋼板は固定スクイズの案内穴で横移動が抑制される。
よって、請求項4により、払い出し中であっても固定スクイズ内の薄鋼板を徐々に下げ続けることができ、且つパイリング中の薄鋼板が横移動する心配がない積層体払い出し装置が提供される。
【0029】
請求項4は積層体を構成する薄鋼板の枚数が多いときに好適である。すなわち、請求項1では可動スクイズは積層体の全てが抜けるまで可動スクイズを閉じることができなく、この間に固定スクイズから突出する薄鋼板の枚数が増し、突出した薄鋼板の落下リスクが増す。
この点、請求項4では、請求項1の可動スクイズより高さ寸法が小さい第1可動スクイズを積層体が抜けたら第1可動スクイズを閉じることができ、突出した薄鋼板が落下することはない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】(a)~(c)は本発明に係る実験を説明する図である。
【
図2】本発明に係る積層体払い出し装置を含むモータコア製造装置の原理図である。
【
図3】本発明に係る積層体払い出し装置の要部の断面図である。
【
図4】(a)~(d)は払い出し方法を説明する図である。
【
図5】(a)~(c)は払い出し方法を説明する図である。
【
図6】積層体払い出し装置の変更例を説明する図である。
【
図7】(a)~(c)は変更例における払い出し方法を説明する図である。
【
図8】(a)、(b)は従来の技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例0032】
本発明に係る積層体払い出し装置40は、例えば、モータコア製造装置10に付設される。
図2に示すように、モータコア製造装置10は、接着剤塗布機構11と、打ち抜き装置20と、積層体払い出し装置40と、制御部60とからなる。以下、これらの機構又は装置の構成や作用を詳しく説明する。
【0033】
接着剤塗布機構11は、例えば円柱状の塗布ガン12と、この塗布ガン12を昇降するガン昇降シリンダ13とからなり、帯状薄鋼板15の所定箇所に熱硬化性接着剤(又は加圧硬化性接着剤)を適量塗布する。
【0034】
なお、本実施例では、バックアップ43に薄鋼板17が付着しないように、次の処置を講じる。
薄鋼板(
図1、符号17(1))に対しては、塗布ガン12を想像線で示す位置まで下げて、塗布を行わない。その以外の薄鋼板(
図1、符号17(2)~)に対して、塗布ガン12を戻して、下面に塗布を行う。
【0035】
打ち抜き装置20は、ベース21と、このベース21に載せられている下金型22と、この下金型22の上方に配置される上金型23と、この上金型23を支えるプレス板24と、このプレス板24を昇降すると共に下金型22に載った帯状薄鋼板15に上金型23を押圧するプレスシリンダ25とを基本要素とする。
【0036】
帯状薄鋼板15の厚さは、例えば0.25mmである。
なお、理解を容易にするために、図示を省略したが、帯状薄鋼板15は、材料を移動させる際には下金型22の上面に接触しない様に点状の接着剤を避けて配置されたピンで支持して押し上げる。更に確実に押し上げるためにプレート状の部材で支持してもよい。この場合は、プレート状の部材の上面に、点状の接着剤との接触を避けるために筋状の凹溝を設ける。
【0037】
上金型23には、下面に、内周パンチ26と、この内周パンチ26を囲う複数のマグネット穴パンチ27と、外周パンチ28とが設置されている。
【0038】
下金型22には、内周パンチ26の下と、マグネット穴パンチ27の下にスクラップ排出穴31、32が設けられている。
スクラップ排出穴31、32の下に、スクラップコンベア33が配置され、打ち抜き工程で発生するスクラップ34、35は、スクラップ排出穴31、32を通って落下し、スクラップコンベア33で装置外へ排出される。
【0039】
外周パンチ28で、1枚の薄鋼板17が打ち抜き形成される。この薄鋼板17は、その前に打ち抜かれた薄鋼板17に載った状態で下がる。
このとき、外周パンチ28は、下降→下死点での停止→上昇→上死点での停止→下降・・・を繰り返えす。外周パンチ28の1サイクルは、0.25秒程度である。
下降の途中(外周パンチ28が帯状薄鋼板15に当たったとき)から下死点での停止までの間に薄鋼板17は下がり、上昇→上死点での停止→下降の途中の間は薄鋼板17は止まっている。
そのため、薄鋼板17は段積み状態で徐々に下がっていく。
【0040】
なお、薄鋼板17は、外周パンチ28の動作に同期して徐々に下がるようにしたが、その他のフィーダー(供給手段)により、薄鋼板17を供給し、押下げ手段で下向きに間欠的又は連続的に押すことにより、薄鋼板を下げるようにしてもよい。
したがって、徐々に下げるとは、間欠運動を連続して下げることと、完全に連続して下げることの双方を含む。
【0041】
図3に示すように、積層体払い出し装置40は、薄鋼板17を段積み状態で収納し且つ低速で徐々に下降する薄鋼板17を案内する案内穴41を有する筒状の固定スクイズ42と、段積み状態の薄鋼板17を受ける受け皿状のバックアップ43と、このバックアップ43を低速/高速に切り換えて昇降するバックアップ昇降機構44と、固定スクイズ42の下に固定スクイズ42に連続して配置される可動スクイズ45と、この可動スクイズ45を水平移動可能に支持する支持金具46と、可動スクイズ45を開閉するスクイズ開閉機構47とを備える。
【0042】
なお、可動スクイズ45は、固定スクイズ42に僅かな隙間を置いて配置することはより好ましい。隙間を設けないときは、可動スクイズ45を開閉させると、可動スクイズ45が固定スクイズ42に摺動し、摩耗が発生したり、可動スクイズ45の動きが悪くなることがある。
隙間を設けることで、摺動及び摩耗の発生を防止することができると共に可動スクイズ45の動きを良好に保つことができる。
【0043】
また、可動スクイズ45は、それの軸長さ(高さ)が積層体50を払い出す間に固定スクイズ42から下降する薄鋼板17の下降距離(
図5(b)、符号H)より大きく設定されている。
そして、可動スクイズ45は閉じたときに、想像線で示す位置まで移動し、案内穴41と同径の下方案内穴48ができる。
【0044】
スクイズ開閉機構47はエアシリンダが好適である。エアシリンダは構造的にピストンが前進限位置と後進限位置で停止する。前進限位置を
図3に示す想像線の位置に合わせることができる。ピストンを後進させると可動スクイズ45は開き、支持金具46に当たって止まる。すなわち、後進時は前進限と後進限との間で止まる。よって、エアシリンダであれば格別な位置制御を行うことなく、可動スクイズ45を開閉制御することができる。油圧シリンダも同様である。
【0045】
このように、スクイズ開閉機構47はエアシリンダ、油圧シリンダが採用でき、その他、電動シリンダも採用できる。ただし、スクイズ開閉機構47は可動スクイズ45を移動する機構であればよく、電動機を駆動源とするリンクやラックアンドピニオンでもよく、種類や構造は任意である。
【0046】
図2に示すように、バックアップ昇降機構44は、概ね、薄鋼板17を固定スクイズ42内でパイリング(段積み)するときの低速下降と、払い出し直前の高速下降と、払い出し中の停止と、払い出し直後の高速上昇を行う。すなわち、バックアップ43を低速/高速に切り換えて昇降する。
【0047】
バックアップ43の上昇制御は、後述する近接センサによるか、または、次に述べる手法が推奨される。
例えば、カウンター61で帯状薄鋼板15の移動量をモニターする。
制御部60は、カウンター61からの移動量情報に基づいて、パイリング(段積み)中の薄鋼板17の枚数を把握する。この把握に基づいて、固定スクイズ42内を下降する薄鋼板17の高さ位置を算出する。
この算出情報に基づいて、バックアップ43の上昇位置を決定し、決定した上昇位置までバックアップ43を上昇させる。
【0048】
バックアップ43の正確な位置制御が必要であるため、バックアップ昇降機構44は、サーボ制御される油圧サーボシリンダが好適である。エアサーボシリンダも適している。また、ボールねじを内蔵し電動サーボモータを駆動源とする電動サーボシリンダも採用できる。
ただし、バックアップ昇降機構44は、サーボシリンダの他、電動サーボモータを駆動源とするリンクやピニオンラックでもよく、種類や構造は任意である。
【0049】
加えて、積層体払い出し装置40は、
図2に示すように、所定枚数の薄鋼板17を積層したものを積層体50というときにこの積層体50を水平に押出して払い出す押出し機構51と、払い出された積層体50を排出する排出コンベア52とを備える。
制御部60は、バックアップ昇降機構44及び押出し機構51をも制御する。
【0050】
押出し機構51は、前進限位置を排出コンベア52の位置に基づいて決定し、後進限位置をバックアップ43の位置に基づいて機械的に決定できるため、エアシリンダや油圧シリンダが好適である。
押出し機構51はエアシリンダ、油圧シリンダの他、電動シリンダも採用できる。ただし、押出し機構51は積層体50を水平移動する機構であればよく、電動機を駆動源とするプッシュロッドやリンクやラックアンドピニオンでもよく、種類や構造は任意である。
【0051】
次に、
図4及び
図5に基づいて、積層体払い出し装置40の詳しい作動方法を説明する。
【0052】
図4(a)では可動スクイズ45は開いている。可動スクイズ45内にバックアップ43がある。固定スクイズ42内を薄鋼板17が段積み状態で徐々に下降している。
薄鋼板17は所定の枚数nで、1個の積層体50となる。所定の枚数nは、例えば50~200である。
【0053】
図4(b)では可動スクイズ45は開いている。薄鋼板17(n)が固定スクイズ42の下端を通過した。この通過情報に基づいて、バックアップ43の下降速度を低速から高速に切り換えて、高速下降を開始する。
薄鋼板17(n)の上面は接着剤が未塗布であり、その上の薄鋼板17(1)の下面は接着剤が未塗布であるため、薄鋼板17(n)は薄鋼板17(1)から離れる。
【0054】
図4(c)では可動スクイズ45は開いている。薄鋼板17(n)はまだ可動スクイズ45内を移動中である。この間に、固定スクイズ42内の薄鋼板17は下がり続ける。そのため、固定スクイズ42内の薄鋼板17の最も下の薄鋼板17(1)が固定スクイズ42から下へ突出し、次にその上の薄鋼板17(2)が固定スクイズ42から下へ突出する。
【0055】
図1(a)、(b)と同様に、薄鋼板17(1)とその上の薄鋼板17(2)との間には、接着剤が介在する。この接着剤の表面張力により、薄鋼板17(1)は、薄鋼板17(2)に貼りついて落下しない。
【0056】
図4(d)で、薄鋼板17(n)が可動スクイズ45の下端を通過したら、この通過情報に基づいて、可動スクイズ45を閉じる。
固定スクイズ42及び可動スクイズ45内の薄鋼板17は、摩擦により固定スクイズ42及び可動スクイズ45に軽く止まっているため、落下することはない。この状態で薄鋼板17は徐々に下がり続ける。
バックアップ43は最下位置(払い出し可能位置)まで下がる。
【0057】
図5(a)で、バックアップ43から積層体50を払いだす。可動スクイズ45は閉じている。この間に固定スクイズ42及び可動スクイズ45内の薄鋼板17は下がり続ける。
押出し機構(
図2、符号51)を縮動し、次に、バックアップ昇降機構(
図2、符号44)を高速で伸動する。すなわち、押出し機構の縮動情報に基づいて、バックアップ43の高速上昇を開始する。この間も、固定スクイズ42及び可動スクイズ45内の薄鋼板17は、徐々に下がり続ける。
【0058】
図5(b)では可動スクイズ45は閉じている。バックアップ43が可動スクイズ45内の薄鋼板17(1)に当たった時点で、バックアップ昇降機構(
図2、符号44)を停止する。
具体的には、バックアップ43を2枚重ね構造にしておき、間に近接センサを介在させる。薄鋼板17(1)にバックアップ43が当たると2枚重ねの板が付き(又は接近し)、そのことを近接センサで検知する。近接センサはロードセルでもよい。
近接センサ又はロードセルの検知情報に基づいて、制御部(
図2、符号60)は、バックアップ昇降機構(
図2、符号44)を停止する。
【0059】
または、制御部(
図2、符号60)は、カウンター(
図2、符号61)の情報から固定スクイズ42及び可動スクイズ45内の薄鋼板17の枚数を計算し、最も下の薄鋼板17(1)の高さを計算し、バックアップ43が接触する高さを計算することで、バックアップ昇降機構(
図2、符号44)を制御してバックアップ43の位置制御を行う。
【0060】
バックアップ43が薄鋼板17(1)が当たる時点では、数十枚の薄鋼板17が固定スクイズ42から突出しているが、可動スクイズ45の存在により、それらが落下することはない。すなわち、閉じた可動スクイズ45は固定スクイズ42から突出した数十枚の薄鋼板17の落下を防止する役割を果たす。
そのために、可動スクイズ43の軸長さ(高さ)は、
図4(c)→
図4(d)→
図5(a)→
図5(b)までの薄鋼板17の下降距離Hより大きく設定する。
【0061】
バックアップ43が薄鋼板17(1)に当たったという情報に基づいて、可動スクイズ45を開く。並行して、バックアップ43の低速下降を開始(再開)する。
図5(c)では、可動スクイズ45は開いており、段積み状態の薄鋼板17に同期してバックアップ43の低速下降を継続する。
この
図5(c)は、
図4(a)と
図4(b)との中間の作動を示す。
以降、
図4(b)→
図4(c)→
図4(d)→
図5(a)→
図5(b)→
図5(c)→
図4(b)・・・を繰り返す。
【0062】
図4、
図5で述べた作動方法は、次のようにまとめることができる。
制御部60は、可動スクイズ45を開いておき、バックアップ43上の薄鋼板17が所定枚数だけ固定スクイズ42を通過したら(
図4(b))、バックアップ43の高速下降を開始する(
図4(c))。バックアップ43上の積層体50が可動スクイズ45を通過したら可動スクイズ45を閉じる(
図4(d))。
積層体50を払い出し(
図5(a))、この後にバックアップ43の高速上昇を開始し、バックアップ43を可動スクイズ45内の薄鋼板17(1)に当てる(
図5(b))。
バックアップ43が薄鋼板17(1)に当たったら可動スクイズ45を開く(
図5(c))。
【0063】
これら一連の動作を制御部60で制御する。結果、
図4及び
図5に示すように、固定スクイズ42の中を徐々に下降する薄鋼板17を止めることなく、積層体50の払い出しが行え、払い出し量を増すことができ、生産性を高めることができる。
【0064】
または、本発明に係る方法は、次のようにまとめることができる。
制御部60は、固定スクイズ42から下へ突出する薄鋼板17が、固定スクイズ42内の薄鋼板17に接合作用で吊られている間に可動スクイズ45を閉じ(
図4(c)、(d))、この可動スクイズ45が閉じている間に積層体50を払い出す(
図5(a))。
【0065】
結果、
図4及び
図5に示すように、固定スクイズ42の中を徐々に下降する薄鋼板17を止めることなく、積層体50の払い出しが行え、払い出し量を増すことができ、生産性を高めることができる。
【0066】
なお、
図4(d)に示すように、積層体50相当分の薄鋼板17が全て可動スクイズ45を抜けた後に、可動スクイズ45を閉じる。
nが50であるときに比べ、nが200のときは、
図4(c)において、固定スクイズ42から突出する薄鋼板17の枚数が4倍になる。
【0067】
プレススピード(SPM)が速く、バックアップ43の下降速度が遅いために、突出する薄鋼板17の枚数が増加するほど、突出した薄鋼板17の自重が増加し、増加した自重が接着剤の表面張力を超えるリスクが高まる。
また、接着剤の種類や仮カシメの構造によっては、予定よりも接合力が弱くて、増加した自重が接合力を超えるリスクが高まる。
これらのリクスを解消し得る変更例を、
図6に基づいて説明する。
【0068】
変更例では、
図3の可動スクイズ45を水平線で上下に分割した。すなわち、
図6に示すように、固定スクイズ42の下に僅かな隙間を置いて配置する第1可動スクイズ54と、この第1可動スクイズ54の下に僅かな隙間を置いて配置する第2可動スクイズ55とに分割した。
第1可動スクイズ54の高さは、可動スクイズ45の高さの0.2~0.5倍とし、第2可動スクイズ55の高さは、可動スクイズ45の高さの0.5~0.8倍とする。
【0069】
第1可動スクイズ54と第2可動スクイズ55を、互いに独立して開閉させるために、第1可動スクイズ54に第1スクイズ開閉機構56を連結し、第2可動スクイズ55に第2スクイズ開閉機構57を連結する。
【0070】
第1可動スクイズ54は閉じたときに、案内穴41と同径の第1案内穴58ができる。
同様に、第2可動スクイズ55は閉じたときに第1案内穴58と同径の第2案内穴59ができる。
図6に示すその他の構成は、
図3と同じであるため、
図3の符号を流用して詳細な構造説明は省略する。
【0071】
次に変更例の作用を説明する。
可動スクイズ45が第1可動スクイズ54と第2可動スクイズ55に分割された点に相違はあるものの、
図4(a)、
図4(b)、
図5(b)及び
図5(c)においては、第1可動スクイズ54と第2可動スクイズ55が、一緒に開位置又は閉位置にあるため、作用は同じである。
図4(c)、
図4(d)及び
図5(a)は作用が相違するため、相違する作用を
図7(a)~(c)に基づいて説明する。
【0072】
図7(a)では第1可動スクイズ54及び第2可動スクイズ55は開いている。固定スクイズ42内の薄鋼板17は下がり続ける。
薄鋼板17(n)が第1可動スクイズ54の下端を通過したら、この通過情報に基づいて、第1可動スクイズ54を閉じる。
【0073】
図7(b)では第1可動スクイズ54は閉じており、第2可動スクイズ55は開いている。
固定スクイズ42から突出した薄鋼板17(1)、17(2)は第1可動スクイズ54で案内されつつ下降し続ける。
薄鋼板17(n)が第2可動スクイズ55の下端を通過したら、この通過情報に基づいて、第2可動スクイズ55を閉じる。
バックアップ43は最下位置(払い出し可能位置)まで下がる。
【0074】
図7(c)で、バックアップ43から積層体50を払いだす。第1可動スクイズ54及び第2可動スクイズ55は閉じている。この間に固定スクイズ42、第1可動スクイズ54及び第2可動スクイズ55内の薄鋼板17は下がり続ける。
押出し機構(
図2、符号51)を縮動し、次に、バックアップ昇降機構(
図2、符号44)を高速で伸動する。すなわち、押出し機構の縮動情報に基づいて、バックアップ43の高速上昇を開始する。この間、固定スクイズ42、第1可動スクイズ54及び第2可動スクイズ55内の薄鋼板17は、徐々に下がり続ける。以下、
図5(b)に続く。
【0075】
【0076】
変更例では、薄鋼板17(n)が第1可動スクイズ54を通過した直後に第1可動スクイズ54を閉じることができる。
よって、自重による落下が心配される薄鋼板17の突出枚数を、変更例では少なくすることができるという利点がある。
この変更例では、可動スクイズ45を上下に2分割したが、必要があれば3分割以上に分割することは差し支えない。
【0077】
尚、本発明の積層体払い出し技術は、モータコア製造技術に好適であるが、その他のワークを積層する機構/ワークを払い出す機構に適用することもでき、用途は格別に限定するものではない。
【0078】
また、薄鋼板とその上の薄鋼板は、熱硬化性接着剤、加圧硬化性接着剤又は仮カシメにより弱く接合したが、この接合は、防錆用樹脂、防錆油、化粧用塗料、その他であってもよく、要は積層体払い出し中に弱い接合作用を発揮するものであればよい。
【0079】
カシメは、板厚が0.20mm以下と極めて薄い場合を含む。
接着剤は、嫌気性接着剤であってもよい。嫌気性接着剤であっても、積層中に完全硬化することはないからである。また、接着剤は、積層中に完全硬化しないような遅延性の硬化促進剤を含むものであってもよい。
17…薄鋼板、40…積層体払い出し装置、41…案内穴、42…固定スクイズ、43…バックアップ、44…バックアップ昇降機構、45…可動スクイズ、47…スクイズ開閉機構、48…下方案内穴、50…積層体、51…押出し機構、54…第1可動スクイズ、55…第2可動スクイズ、56…第1スクイズ開閉機構、57…第2スクイズ開閉機構、58…第1案内穴、59…第2案内穴、60…制御部、H…薄鋼板の下降距離。