(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132959
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】印刷プロセス中の滴形状を制御する方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20240920BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240920BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/165 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024036367
(22)【出願日】2024-03-08
(31)【優先権主張番号】23161781.2
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ビター,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト,ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】ニードリヒ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】レンナー,ヨハネス
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB07
2C056EB15
2C056EB29
2C056EB39
2C056EB44
2C056EC07
2C056EC42
2C056FA04
2C056JA01
2C057AF09
2C057AF23
2C057AL13
2C057AM16
2C057AM40
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】印刷プロセスを精密かつ効率的に実行し得るように、印刷プロセス中の印刷液の滴形状を制御する。
【解決手段】第1の電圧プロフィールに従って印刷ノズルの圧電素子を制御するステップ(S101)と;前記第1の電圧プロフィールの間にわたって平均化された電流値または前記第1の電圧プロフィールの間にわたって平均化された音波振幅を検出するステップ(S102)と;第2の電圧プロフィールに従って印刷ノズルの圧電素子を制御するステップ(S103)と;前記第2の電圧プロフィールの間にわたって平均化された電流値または前記第2の電圧プロフィールの間にわたって平均化された音波振幅を検出するステップ(S104)と;検出された最も少ない電流値または検出された最も少ない音波振幅を有する電圧プロフィールを選択するステップ(S105)とを有する制御方法とする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電圧プロフィール(107)に従って印刷ノズル(105)の圧電素子(103)を制御するステップ(S101)と;
前記第1の電圧プロフィール(107)の間にわたって平均化された電流値または前記第1の電圧プロフィール(107)の間にわたって平均化された音波振幅を検出するステップ(S102)と;
第2の電圧プロフィール(107)に従って印刷ノズル(105)の圧電素子(103)を制御するステップ(S103)と;
前記第2の電圧プロフィール(107)の間にわたって平均化された電流値または前記第2の電圧プロフィール(107)の間にわたって平均化された音波振幅を検出するステップ(S104)と;
検出された最も少ない電流値または検出された最も少ない音波振幅を有する電圧プロフィール(107,107)を選択するステップ(S105)を有してなる
印刷プロセス中の滴形状を制御する方法。
【請求項2】
第1の電圧プロフィール(107)に基づいて第2の電圧プロフィール(107)が設定される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の電圧プロフィール(107)の立ち上がり時間を短縮あるいは延長することによって第2の電圧プロフィール(107)が作成される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の電圧プロフィール(107)の立ち下がり時間を短縮あるいは延長することによって第2の電圧プロフィール(107)が作成される請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第1の電圧プロフィール(107)のホールド時間を短縮あるいは延長することによって第2の電圧プロフィール(107)が作成される請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
第1の電圧プロフィール(107)のホールド電圧を縮小あるいは拡大することによって第2の電圧プロフィール(107)が作成される請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第1の電圧プロフィール(107)のホールド電圧をそのまま保持することによって第2の電圧プロフィール(107)が作成される請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第1の電圧プロフィール(107)のホールド時間をそのまま保持することによって第2の電圧プロフィール(107)が作成される請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第1の電圧プロフィール(107)を予め定義された電圧プロフィールとする請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
複数の予め設定された電圧プロフィール(107)が記憶される請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
第1および/または第2の電圧プロフィールが複数の予め設定された電圧プロフィールの中から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
印刷ヘッド(109)あるいは印刷システム内の印刷液が交換された場合、または所与の時間が経過した場合に方法が実行される請求項1ないし11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
立体的な対象物(113)を構築するための三次元印刷方法とされる請求項1ないし12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
閉鎖プレート(111)によって印刷ヘッド(109)が遮蔽される請求項1ないし13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかに記載の方法を実行するように構成された印刷装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷プロセス中の滴形状を制御する方法とその方法を実行するための印刷装置に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の目的は、印刷プロセスを精密かつ効率的に実行し得るように、印刷プロセス中の印刷液の滴形状を制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
前記の課題は、独立請求項の対象によって解決される。技術的に好適な実施形態が、従属請求項、発明の詳細な説明、および添付図面の対象である。
【0004】
第1の態様によれば、第1の電圧プロフィールに従って印刷ノズルの圧電素子を制御するステップと;前記第1の電圧プロフィールの間にわたって平均化された電流値または前記第1の電圧プロフィールの間にわたって平均化された音波振幅を検出するステップと;第2の電圧プロフィールに従って印刷ノズルの圧電素子を制御するステップと;前記第2の電圧プロフィールの間にわたって平均化された電流値または前記第2の電圧プロフィールの間にわたって平均化された音波振幅を検出するステップと;検出された最も少ない電流値または検出された最も少ない音波振幅を有する電圧プロフィールを選択するステップを有してなる、印刷プロセス中の滴形状を制御する方法によって技術的な課題が解決される。この方法によって、最適な滴形状のための電圧プロフィールの自動的な調節を達成することができる。印刷ヘッドの自律的な自動調整が可能になる。射出される印刷液の滴形状を判定するための高価な機器を省略することができる。加えて、滴形状を調節するための時間消費が削減される。
【0005】
この方法の技術的に好適な実施形態によれば、第1の電圧プロフィールに基づいて第2の電圧プロフィールが設定される。それによって例えば、簡便な方式で第2の電圧プロフィールを作成し得るという技術的な利点が達成される。
【0006】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、第1の電圧プロフィールの立ち上がり時間を短縮あるいは延長することによって第2の電圧プロフィールが作成される。それによって例えば、適宜な立ち上がり時間を定義する電流値あるいは音波振幅に対応する極小値を検出し得るという技術的な利点が達成される。
【0007】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、第1の電圧プロフィールの立ち下がり時間を短縮あるいは延長することによって第2の電圧プロフィールが作成される。それによって例えば、適宜な立ち下がり時間を定義する電流値あるいは音波振幅に対応する極小値を検出し得るという技術的な利点が達成される。
【0008】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、第1の電圧プロフィールのホールド時間を短縮あるいは延長することによって第2の電圧プロフィールが作成される。それによって例えば、適宜なホールド時間を定義する電流値あるいは音波振幅に対応する極小値を検出し得るという技術的な利点が達成される。
【0009】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、第1の電圧プロフィールのホールド電圧を縮小あるいは拡大することによって第2の電圧プロフィールが作成される。それによって例えば、適宜なホールド電圧を定義する電流値あるいは音波振幅に対応する極小値を検出し得るという技術的な利点が達成される。
【0010】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、第1の電圧プロフィールのホールド電圧をそのまま保持することによって第2の電圧プロフィールが作成される。それによって例えば、電圧プロフィールのパラメータ範囲を縮小し、そのパラメータ範囲を最小の手間で検出し得るという技術的な利点が達成される。
【0011】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、第1の電圧プロフィールのホールド時間をそのまま保持することによって第2の電圧プロフィールが作成される。それによっても例えば、電圧プロフィールのパラメータ範囲を縮小し、そのパラメータ範囲を最小の手間で検出し得るという技術的な利点が達成される。
【0012】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、第1の電圧プロフィールを予め定義された電圧プロフィールとする。それによって例えば、予め設定された、かつ極めて好適な電圧プロフィールからこの方法を開始し得るという技術的な利点が達成される。
【0013】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、複数の予め設定された電圧プロフィールが記憶される。それによって例えば、多様な印刷液に対応して多様な電圧プロフィールを使用し得るという技術的な利点が達成される。
【0014】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、第1および/または第2の電圧プロフィールが複数の予め設定された電圧プロフィールの中から選択される。それによって例えば、印刷液に応じて電圧プロフィールの選択を実行し得るという技術的な利点が達成される。印刷液に応じて適宜な電圧プロフィールを使用することによって、この方法をより高速に収束させて実行することができる。
【0015】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、印刷ヘッドあるいは印刷システム内の印刷液が交換された場合、または所与の時間が経過した場合に前記方法が実行される。それによって例えば、印刷液の交換に際して液滴を制御するための適宜な電圧プロフィールが自動的に取得されるか、または印刷ヘッドおよびそれの組成物の劣化を補償し得るという技術的な利点が達成される。加えて、例えば環境温度の変動あるいは稼働中の装置の過熱等に際しての印刷液の流体工学的な変化に電圧プロフィールを適合させることができる。
【0016】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、その方法が立体的な対象物を構築するための三次元印刷方法とされる。それによって例えば、立体的な対象物の層ごとの構築に使用される、極めて好適な電圧プロフィールが印刷液に対して取得されるという技術的な利点が達成される。
【0017】
この方法の技術的に好適な別の実施形態によれば、閉鎖プレートによって印刷ヘッドが遮蔽される。それによって例えば、方法実行中に印刷液が無駄にされないという技術的な利点が達成される。
【0018】
第2の態様によれば、第1の態様に係る方法を実行するように構成された印刷装置によって技術的な課題が解決される。この印刷装置によれば、第1の態様に係る方法と同様の技術的な利点が達成される。
【0019】
本発明の実施例が添付図面に示されており、以下詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】印刷液の多様な滴を示した概略説明図である。
【
図3】圧電素子を制御するための電圧プロフィールを示した概略説明図である。
【
図4】立ち下がり時間を変化させた際の検出された電流値の平均を示した説明図である。
【
図5】待ち時間を変化させた際の検出された電流値の平均を示した説明図である。
【
図6】立ち上がり時間を変化させた際の検出された電流値の平均を示した説明図である。
【
図7】印刷ヘッドの閉鎖プレートを示した概略説明図である。
【
図8】滴形状を制御する方法のブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、印刷装置100の制御可能な印刷ヘッド109の概略断面図が示されている。印刷装置100は、印刷プロセス(インクジェット方式)のために液滴115の噴流を使用する。その印刷プロセスは、インクを塗付することによって画像を作成する二次元の印刷プロセスとするか、または構築プラットフォーム119上に層ごとに蓄積される印刷液101によって作成される立体的な対象物113を製造する三次元の印刷プロセスとすることができる。
【0022】
印刷液101を射出するために、印刷装置100の印刷ヘッド109内に少なくとも1個の圧電素子103が取り付けられ、その圧電素子が電圧パルスを動作に変換してインクチャンバ117内の印刷液101に伝達する。圧電素子103の動作は逆方向の圧電作用によって達成され、その場合に圧電素子103が負の電圧によって下方動作(下降)を形成し、正の電圧によって上方動作(上昇)を形成するように作用する。
【0023】
圧電素子103を制御するために、異なった区分を有してなる電圧プロフィールが使用される。電圧プロフィールおよび使用される印刷液101に応じて、異なって形成された液滴115が発生する。
【0024】
図2には、印刷液101の多様な液滴115の状態が概略的に示されている。使用される電圧プロフィール107によって、長形の滴、噴霧作用、あるいは衛星型の滴を生じさせることなく、均一の液滴115を形成すべきである。衛生型の滴は、主の滴に近接した小さな液滴115であり(二重の滴)、それが乱雑に沈着して印刷画像を劣化させる。印刷画像あるいはその他の構築材料への印刷液の混入を防止する必要がある。
【0025】
理想的には、使用される電圧プロフィール107によって、例えば4ないし9m/sの予め設定された速度で動作する唯1個の球形の液滴115が形成される。そのことを実現するために、電圧プロフィール107が適宜に調整される(波形調整)。
【0026】
図3には、圧電素子103を制御するための台形状の電圧プロフィール107が概略的に示されている。この電圧プロフィール107は、電気回路を備えた電子制御ユニットによって形成され、所与の電圧プロフィール107として予め印刷装置100内に記憶することができる。そのため、電圧プロフィール107のデータを制御ユニット内にデジタルで記憶することができる。制御ユニットが予め設定された複数の電圧プロフィール107を記憶することもでき、使用される印刷液に応じてそのうち1個がこの方法の開始点として選択される。
【0027】
電圧プロフィール107は3個の区分を有し、すなわち立ち下がり時間を有する1番目の開始区分121を有し、その区分中において電圧が上昇し、また待ち時間を有する2番目のホールド区分123を有し、その区分中は電圧が一定であり、さらに立ち上がり時間を有する3番目の最終区分125を有し、その区分中は電圧が下降する。適宜な滴形状を形成するために、各区分121、123および125を変化させる。
【0028】
その場合に各区分121、123および125の立ち下がり時間、待ち時間、および立ち上がり時間が変更および調節される。各印刷液101が流体力学的に異なるため、各印刷液101に対してそれぞれ適宜に適合させた電圧プロフィール107を印刷プロセスのために使用する必要がある。
【0029】
立ち下がり時間が圧電素子103の引張動作(プル)を生成する。開始区分121は、立ち下がり時間と立ち下がり電圧を組み合わせたものである。立ち下がり電圧は、例えば形成される滴サイズに対する影響を有する。立ち下がり電圧の大きな変化に際して、印刷液101の音波速度を超過すべきではない。
【0030】
待ち時間はホールド区分123中の定電圧の時間であり、その間は印刷液101が緩和される。その緩和は、印刷液101中の音波速度に相関する。待ち時間の終了は印刷ヘッド109のインクチャンバ117内の印刷液101の緩和と可能な限り正確に一致すべきであり、それによってその時点で緩和動作と同期して立ち上がり時間が開始する。
【0031】
最終区分125中の立ち上がり時間が、圧電素子103の押し動作(プッシュ)を生成する。立ち下がり時間によって生成された印刷液101の動作と待ち時間中に発生する印刷液101の緩和が立ち上がり時間中に追加的に加速され、従ってインクチャンバ117から印刷ノズル105を介して液滴115が放出される。
【0032】
振幅の高さは待ち時間中の電圧の高さであり、押し出される液滴115の大きさと相関する。電圧プロフィール107を調整する際に、予め設定された一定の電圧を振幅の高さとして使用することができる。
【0033】
電圧プロフィール107の調整(波形調整)に際して、異なった立ち下がり時間、待ち時間、立ち上がり時間、および振幅の高さを有する異なった電圧プロフィール107が形成される。その後、個々の電圧プロフィール107に対して圧電素子103を通ずる電流がアンペア計あるいは適宜な電気回路を使用して判定されて電圧プロフィール107の継続時間にわたって平均化され、例えば個々の電流値の時間積分によって平均化される。その電圧プロフィール107を所定の繰り返し周波数をもって繰り返し圧電素子103に適用することができ、それによってそれの継続時間中に圧電素子103を通ずる電流を平均化する。
【0034】
圧電素子103を通ずる電流の代わりにその圧電素子103によって生成される音波振幅を使用することもできる。そのようにして検出された電流値あるいは音波振幅の数値が、その後生成された電圧プロフィール107のうちの1個を選択するために使用される。
【0035】
図4には、電圧プロフィール107の立ち下がり時間を変化させた際の検出された電流値の平均が示されている。この場合、電圧プロフィール107が一定の待ち時間2.3μsと一定の立ち上がり時間1μsを有する。繰り返し周波数が15kHzで、印刷液の流量は14ml/分である。
【0036】
他方、電圧プロフィール107の立ち下がり時間は1μsないし20μsの間で変更される(X軸)。その場合に、立ち下がり時間が最小値から小さなステップで最大値まで高められるような所与の電圧プロフィールが使用される。各立ち下がり時間について、それぞれ該当する、圧電素子103を介して通流する電流の平均電流値が検出される(Y軸)。それに代えて、マイクロフォンを使用して音波振幅を検出することもできる。
【0037】
その後、平均電流値が極小値127を有するものである立ち下がり時間を有する電圧プロフィール107が選択される。そのことは、2.9μsの立ち下がり時間において発生する。それによって滴形状が改善される。その数値以降、効率的な電圧プロフィール107が可能になる。その立ち下がり時間未満では、印刷液の音波速度を超過するため、電圧プロフィール107の理想的な作用は不可能になる。適用される電圧が例えば24Vで均等かつ一定であるため、電流測定を出力測定と呼称することもできる。
【0038】
図5には、電圧プロフィール107の待ち時間を変化させた際の検出された平均電流値が示されている。この電圧プロフィール107は、2.3μsである一定の立ち下がり時間と1μsである一定の立ち上がり時間を有する。繰り返し周波数は20kHzである。
【0039】
他方、この電圧プロフィール107の待ち時間は、0μsないし20μsの間で変更される(X軸)。その場合に、待ち時間が最小値から小さなステップで最大値まで高められるような所与の電圧プロフィール107が使用される。各待ち時間について、それぞれ該当する、圧電素子を介して通流する電流の平均電流値が検出される(Y軸)。それに代えて、マイクロフォンを使用して音波振幅を検出することもできる。
【0040】
曲線は、1.3μsの待ち時間において平均電流値の極小値127を有する。その点は、印刷液101内部の緩和速度に相関する。極小値127において液滴115を形成するために消費されるエネルギーが最も少なくなるため、その極小値127が待ち時間に関して最適な時間を定義する。そのことは、印刷液の緩和が立ち上がり時間と同期して進行することを意味する。
【0041】
図6には、電圧プロフィール107の立ち上がり時間を変化させた際の検出された平均電流値が示されている。この電圧プロフィール107は、1μsである一定の立ち下がり時間と2.3μsである一定の待ち時間を有する。繰り返し周波数は15kHzである。
【0042】
他方、この電圧プロフィール107の立ち上がり時間は、1μsないし20μsの間で変更される(X軸)。その場合に、立ち上がり時間が最小値から小さなステップで最大値まで高められるような所与の電圧プロフィール107が使用される。各立ち上がり時間について、それぞれ該当する、圧電素子を介して通流する電流の平均電流値が検出される(Y軸)。それに代えて、マイクロフォンを使用して音波振幅を検出することもできる。
【0043】
曲線は、3.3μsの立ち上がり時間において平均電流値の極小値127を有する。極小値127において液滴115を形成するために消費されるエネルギーが最も少なくなるため、その極小値127が立ち上がり時間に関して最適な時間を定義する。その数値以降、効率的な電圧プロフィール107が可能になる。その立ち上がり時間未満では、印刷液101の音波速度を超過するため、電圧プロフィールの理想的な作用は不可能になる。
【0044】
図7には、印刷ヘッド109の閉鎖プレートの概要が示されている。この方法は、印刷ノズル105を開放あるいは閉鎖して実行することができる。印刷ノズル105を閉鎖するために、印刷ヘッド109上に設置された閉鎖プレート111を使用することができる。
【0045】
閉鎖プレートが閉鎖されている場合の測定に際しても、緩和時間、ならびに最大の立ち下がりおよび立ち上がり時間を検出することができる。開放されたおよび閉鎖された閉鎖プレートの間の変化が既知であれば、補正値を使用して補正することができる。
【0046】
図8には、印刷液の滴形状を制御する方法のブロック線図が示されている。この方法は、第1の電圧プロフィール107に従って印刷ノズル105の圧電素子103を制御するステップS101と、前記第1の電圧プロフィール107の間にわたって平均化された電流値または前記第1の電圧プロフィール107の間にわたって平均化された音波振幅を検出するステップS102を含む。
【0047】
その後、ステップS103において印刷ノズル105の圧電素子103を第2の電圧プロフィール107に従って制御し、ステップS104において前記第2の電圧プロフィール107の間にわたって平均化された電流値または前記第2の電圧プロフィール107の間にわたって平均化された音波振幅を検出する。
【0048】
ステップS105において、検出された最も少ない電流値(極小値127)または検出された最も少ない音波振幅を有する電圧プロフィール107が選択される。従ってこの方法は、印刷液を射出するために適した電圧プロフィールを簡便な方式で判定する可能性を提供する。
【0049】
その後、より小さな検出された電流値あるいは音波振幅を有する別の電圧プロフィールを検出するために、前記の各ステップを反復することができる。そのことは、多様な電圧プロフィール107を作成して、その際に記録された最適な数値をシステムによって自動的に採用し得ることを意味する。
【0050】
この方法によって、新規の印刷液を使用する場合でも、滴形状の最適化と時間の節約が低コストに実現可能になる。印刷装置のメンテナンスが容易化される。滴形状を測定するための高価な装置を省略することができ、従って印刷装置の製造に際してコスト削減が達成される。
【0051】
スキャンと評価によって、最適な電圧プロフィール107の検出が単純化される。従って、例えばプリンタ制御ユニットが、滴の写真撮影(滴監視)を用いずに、自動的に最適な電圧プロフィール107を検出することができる(自動調整)。新しい印刷液101が使用される場合、または印刷ヘッド109あるいは印刷液に劣化が生じた場合に、電圧プロフィール107の調整が必要であり得る。前記の自動調整によって、そのような場合にプリンタ制御ユニットが自律的に再調整を行うことを可能にする。
【0052】
この方法によって、滴形状の制御の単純化が達成される。加えて、必要に応じて自動的に対応策を実施するために、印刷装置100から多様なパラメータを引き出すことが可能になる。印刷装置100によって自動的に検出された数値を、人工知能による自動的な自己最適化あるいは自動調整のために、プリンタ制御ユニットが取得することができる。
【0053】
本発明の個々の実施形態に関連して説明および図示した全ての特徴を、多様な組み合わせで本発明の対象とすることができ、それによって同時に有効な利点が達成される。
【0054】
全ての方法ステップは、各方法ステップを実行するために適した装置を使用して実行することができる。対象である特徴によって実行される全ての機能は、この方法における方法ステップとすることができる。
【0055】
本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって定義され、説明中に記述されたあるいは図示された特徴によって限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
100 印刷装置
101 印刷液
103 圧電素子
105 印刷ノズル
107 電圧プロフィール
109 印刷ヘッド
111 閉鎖プレート
113 立体的な対象物
115 液滴
117 インクチャンバ
119 構築プラットフォーム
121 開始区分
123 ホールド区分
125 最終区分
127 極小値