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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132964
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】金属粒子含有組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/08 20060101AFI20240920BHJP
   C09D 11/08 20060101ALI20240920BHJP
   C09D 11/52 20140101ALI20240920BHJP
   C09D 101/08 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240920BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08L1/08
C09D11/08
C09D11/52
C09D101/08
C08K3/08
H01B13/00 503Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024036625
(22)【出願日】2024-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2023040154
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 晴香
(72)【発明者】
【氏名】江山 誉昭
(72)【発明者】
【氏名】稲家 修一
(72)【発明者】
【氏名】吉川 祐樹
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
4J039
5G323
【Fターム(参考)】
4J002AB011
4J002DA086
4J002DA096
4J002DA106
4J002DA116
4J002FA041
4J002FD016
4J002FD116
4J002GH01
4J002GQ02
4J002HA08
4J038BA021
4J038HA066
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA10
4J038KA12
4J038PB05
4J038PB09
4J039AB02
4J039BA06
4J039BE12
4J039BE13
4J039BE23
4J039BE28
4J039EA24
5G323AA03
(57)【要約】
【課題】金属粒子の含有量が高く、且つ高い粘度を有する金属粒子含有組成物、並びに該金属粒子含有組成物を用いる膜の製造方法及び導電性部材の製造方法を提供する。
【解決手段】下記の成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有する金属粒子含有組成物であって、前記金属粒子含有組成物中の固形分100質量部に対する成分(B)の含有量が、70質量部以上である、金属粒子含有組成物、並びに該金属粒子含有組成物を用いる膜の製造方法及び導電性部材の製造方法である。
(A)アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に共有結合を介して修飾基を有する改質セルロース繊維
(B)金属粒子
(C)25℃1気圧で液体の有機化合物
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有する金属粒子含有組成物であって、
前記金属粒子含有組成物中の固形分100質量部に対する成分(B)の含有量が、70質量部以上である、金属粒子含有組成物。
(A)アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に共有結合を介して修飾基を有する改質セルロース繊維
(B)金属粒子
(C)25℃1気圧で液体の有機化合物
【請求項2】
前記成分(B)の平均粒径が0.1μm以上10μm以下である、請求項1に記載の金属粒子含有組成物。
【請求項3】
前記成分(B)の粒度が、目開きが300μmの篩の通過分が95%以上である、請求項1に記載の金属粒子含有組成物。
【請求項4】
前記成分(B)100質量部に対する前記成分(C)の含有量が、1質量部以上20質量部以下である、請求項1に記載の金属粒子含有組成物。
【請求項5】
前記成分(B)100質量部に対する前記成分(A)の含有量が、0.01質量部以上10質量部以下である、請求項1に記載の金属粒子含有組成物。
【請求項6】
前記成分(B)100質量部に対する前記成分(A)に含まれるグルコース単位の含有量が、0.003質量部以上5質量部以下である、請求項1に記載の金属粒子含有組成物。
【請求項7】
前記成分(B)の含有量が、50質量%以上である、請求項1に記載の金属粒子含有組成物。
【請求項8】
印刷用ペーストに用いられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の金属粒子含有組成物。
【請求項9】
インクに用いられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の金属粒子含有組成物。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の金属粒子含有組成物を基材上に塗布する工程を有する、膜の製造方法。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の金属粒子含有組成物を基板上に塗布する工程を有する、導電性部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粒子含有組成物、並びに該金属粒子含有組成物を用いる膜の製造方法及び導電性部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、かかる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維を用いた材料が注目されている。例えば、特許文献1には、高温においても粘度の低下が抑制された、50℃以上で使用するのに適した非水系溶媒の増粘剤組成物の提供を目的として、特定の改質セルロース繊維及び非水系溶媒を含有し、50℃以上で使用される増粘剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-001634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、増粘剤は、その配合量を増やすことで、組成物の粘度を高めることができるが、増粘剤の配合量が増す程、相対的に、組成物中の増粘剤以外の固形分量が低くなるため、粘度以外の組成物としての特性が低下する傾向にある。
このような問題は、金属粒子を多く含む金属粒子含有組成物においてより顕著であり、金属粒子の含有量に影響される特性と、粘度とは、トレードオフの関係にあり、所望の特性を得るために金属粒子の含有量を高める場合には、増粘剤の含有量を増やすことができず、高い粘度を有する組成物を得ることが困難な傾向にある。
これに対し、特許文献1では、高温における粘度低下の抑制に関して検討されているが、金属粒子の含有量を高める場合における粘度の向上に関しては何ら検討されていない。
【0005】
このように、金属粒子の含有量が高い金属粒子含有組成物においては、高い粘度を実現するために、更なる改善が求められている。
本発明は、金属粒子の含有量が高く、且つ高い粘度を有する金属粒子含有組成物、並びに該金属粒子含有組成物を用いる膜の製造方法及び導電性部材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、所定の成分(A)~(C)を含有することにより、成分(B)としての金属粒子の含有量が所定値以上であっても、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]~[3]を提供する。
[1]下記の成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有する金属粒子含有組成物であって、
前記金属粒子含有組成物中の固形分100質量部に対する成分(B)の含有量が、70質量部以上である、金属粒子含有組成物。
(A)アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に共有結合を介して修飾基を有する改質セルロース繊維
(B)金属粒子
(C)25℃1気圧で液体の有機化合物
[2]前記[1]に記載の金属粒子含有組成物を基材上に塗布する工程を有する、膜の製造方法。
[3]前記[1]に記載の金属粒子含有組成物を基板上に塗布する工程を有する、導電性部材の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属粒子の含有量が高く、且つ高い粘度を有する金属粒子含有組成物、並びに該金属粒子含有組成物を用いる膜の製造方法及び導電性部材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[金属粒子含有組成物]
本発明の金属粒子含有組成物は、下記の成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有し、前記金属粒子含有組成物中の固形分100質量部に対する成分(B)の含有量が、70質量部以上である。
(A)アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に共有結合を介して修飾基を有する改質セルロース繊維
(B)金属粒子
(C)25℃1気圧で液体の有機化合物
【0009】
本発明によれば、金属粒子の含有量が高く、且つ高い粘度を有する金属粒子含有組成物を得ることができるという効果を奏する。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明の金属粒子含有組成物は、成分(A)として、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に共有結合を介して修飾基を有する改質セルロース繊維を含有することにより、非共有結合を介して修飾基を有する改質セルロース繊維を用いる場合に比べて、改質セルロース繊維の分散性を更に向上できる。これにより、成分(A)は、少量の含有量でも安定した増粘効果を発揮できるため、成分(B)としての金属粒子の含有量が高くても、高い粘度を有する金属粒子含有組成物を提供することができると考えられる。
【0010】
<成分(A):アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に共有結合を介して修飾基を有する改質セルロース繊維>
本発明の金属粒子含有組成物は、成分(A)として、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に共有結合を介して修飾基を有する改質セルロース繊維(以下、単に「成分(A)」ということがある)を含有する。成分(A)は、金属粒子含有組成物の粘度を高める役割を担う。
【0011】
(アニオン変性セルロース繊維)
本発明において、「アニオン変性セルロース繊維」とは、セルロース繊維のグルコース単位の一部もしくは全てのヒドロキシ基が、アニオン性基に変換されたセルロース繊維を意味する。なお、本明細書におけるグルコース単位は、ヒドロキシメチル基がアニオン性基に変換されたグルコース単位も含む。
アニオン性基の好ましい例としては、例えばカルボキシ基、スルホン酸基及び(亜)リン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
アニオン変性セルロース繊維としては、入手容易性及び効果の観点から、アニオン性基としてカルボキシ基を有するアニオン変性セルロース繊維(以下「カルボキシ変性セルロース繊維」とも称する。)が好ましい。
カルボキシ変性セルロース繊維は、セルロース繊維を構成するグルコースユニットのC6位のヒドロキシメチル基(-CHOH)が選択的にカルボキシ基に変換されたカルボキシ変性セルロース繊維が好ましい。なお、アニオン性基の対となるイオン(カウンターイオン)は、好ましくはプロトンである。
【0012】
アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基含有量としては、安定な修飾基導入の観点及び修飾基の導入により解繊性を高める観点から、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.5mmol/g以上、更に好ましくは1.0mmol/g以上である。また、製造容易性の観点から、好ましくは3mmol/g以下、より好ましくは2mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下である。なお、「アニオン性基含有量」とは、セルロース繊維を構成するグルコース中のアニオン性基の総量を意味し、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0013】
本発明において、「アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に共有結合を介して修飾基を有する」とは、アニオン変性セルロース繊維が有するアニオン性基、好ましくはカルボキシ基に由来する炭素原子が共有結合を構成し、該共有結合を介して修飾基を有していることを意味する。
本発明の成分(A)として用いられる改質セルロース繊維において、修飾基とアニオン性基との結合様式は、共有結合である。共有結合としては、例えば、アミド結合、エステル結合が挙げられ、好ましくはアミド結合である。
このような改質セルロース繊維において、上記共有結合がアミド結合又はエステル結合である場合、成分(A)は、上記アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基のアミド化又はエステル化により修飾基が導入されてなる改質セルロース繊維であることが好ましく、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基のアミド化により修飾基が導入されてなる改質セルロース繊維であることがより好ましい。より具体的には、上記アニオン変性セルロース繊維がセルロース繊維を構成するグルコースユニットのC6位のヒドロキシメチル基(-CHOH)が選択的にカルボキシ基に変換されたカルボキシ変性セルロース繊維である場合、改質セルロース繊維は、グルコースユニットの6位の炭素原子がアミド結合又はエステル結合を構成し、該アミド結合又は該エステル結合を介して修飾基を有するものであることが好ましく、グルコースユニットの6位の炭素原子がアミド結合を構成し、該アミド結合を介して修飾基を有するものであることがより好ましい。
【0014】
(修飾基)
修飾基としては、(a)炭化水素基及び(b)ポリマー基からなる群から選ばれる1種以上が好ましく挙げられる。これらの修飾基は1種又は2種以上が組み合わさって、アニオン変性セルロース繊維に結合してもよい。
(a)炭化水素基
(a)炭化水素基としては、一価の炭化水素基、例えば、直鎖又は分岐鎖の鎖式飽和炭化水素基、直鎖又は分岐鎖の鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、アリール基、アラルキル基及び複素環式芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる1種以上が好ましく挙げられる。
(a)炭化水素基の炭素数は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、前記と同様の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは18以下である。(a)炭化水素基は、後述する置換基を有していてもよく、炭化水素基の一部が窒化水素基に置換されていてもよい。
直鎖又は分岐鎖の鎖式飽和炭化水素基は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは直鎖の鎖式飽和炭化水素基である。直鎖又は分岐鎖の鎖式飽和炭化水素基としては、例えば、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタコサニル基等が挙げられる。
直鎖又は分岐鎖の鎖式不飽和炭化水素基としては、例えば、プロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、イソプレニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
環式飽和炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ターフェニル基、及びこれらの基が後述する置換基で置換された基等が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、及びこれらの基が後述する置換基で置換された基などが挙げられる。
複素環式芳香族炭化水素基としては、例えば、イミダゾール基、メチルイミダゾール基、エチルイミダゾール基、プロピルイミダゾール基、2-フェニルイミダゾール基、ベンゾイミダゾール基及びこれらの基が置換基で置換された基などが挙げられる。
なお、上記のような(a)炭化水素基は、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に共有結合を介して修飾基を導入するための化合物(「修飾用化合物」ともいう)としてアミン化合物を用いて導入することが好ましい。すなわち、本発明の修飾基が(a)炭化水素基である場合は、該修飾基は上記(a)炭化水素基を含有するアミン化合物に由来するものであることが好ましい。このようなアミン化合物としては、1級アミン又は2級アミン等が挙げられる。
【0015】
(b)ポリマー基
本発明において、「ポリマー基」とは、同じ構成単位の2個以上の繰り返し構造を含有する官能基である。なお、本発明において、「ポリマー基」は、上記の(a)炭化水素基を除く。
(b)ポリマー基の式量(分子量)は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは100以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは1,000以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは10,000以下、更に好ましくは7,000以下、更に好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,000以下、更に好ましくは3,500以下、更に好ましくは2,500以下である。
(b)ポリマー基は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは酸素原子を有する構造によって連結される繰り返し構造を有する官能基であり、より好ましくはポリオキシアルキレン構造、ポリシロキサン構造等の、酸素原子によって連結される繰り返し構造を有する官能基であり、更に好ましくはポリオキシアルキレン構造を有し、更に好ましくはアルコキシポリオキシアルキレン基である。
ポリオキシアルキレン構造は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは炭素数が2以上8以下のオキシアルキレンからなる群から選ばれる1種又は2種以上のオキシアルキレンの(共)重合体構造、より好ましくは炭素数が2以上4以下のオキシアルキレンからなる群から選ばれる1種又は2種以上のオキシアルキレンの(共)重合体構造、更に好ましくはエチレンオキシド(EO)及びプロピレンオキシド(PO)からなる群から選ばれる1種又は2種のオキシアルキレンの(共)重合体構造、更に好ましくはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドがランダム又はブロック状に重合した共重合体構造(「EO/PO共重合体構造」ともいう。)である。
成分(A)の修飾基として(b)ポリマー基がEO/PO共重合体構造を有するものである場合、成分(A)の修飾基は、共有結合をZで表した場合の好適な構造としては、下記の式(1)で示される構造を有するものが好ましく挙げられる。
【0016】
【化1】
【0017】
前記式(1)中、Rは水素原子、又は炭素数1以上6以下の炭化水素基を示す。EO由来の単位及びPO由来の単位はランダム又はブロック状に存在し、aはEOの平均付加モル数を示す正の数、bはPOの平均付加モル数を示す正の数である。また、前記式(1)中のZは、EO/PO共重合体の末端に存在するアニオン性基と反応し得る官能基とアニオン変性セルロース繊維に導入されたアニオン性基との結合を示し、共有結合を示す。
【0018】
は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、より好ましくはメチル基である。
aは、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上、更に好ましくは11以上、更に好ましくは15以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは25以上、更に好ましくは30以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下、更に好ましくは50以下、更に好ましくは40以下である。
bは、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上であり、そして、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、更に好ましくは25以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。
前記式(1)におけるa+bはEOとPOの合計の平均付加モル数を示す。a+bは、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上、更に好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは30以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは150以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは70以下、更に好ましくは60以下、より更に好ましくは50以下ある。
【0019】
EO/PO共重合体構造におけるPO由来の単位の含有率(モル%)は、前記aとbに基づいて計算することが可能であり、具体的にはb×100/(a+b)より求めることができる。PO由来の単位の含有率は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは7モル%以上、更に好ましくは10モル%以上、更に好ましくは15モル%以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは100モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは85モル%以下、更に好ましくは75モル%以下、更に好ましくは60モル%以下、更に好ましくは50モル%以下、更に好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下である。
【0020】
Zは、EO/PO共重合体の末端に存在するアニオン性基と反応し得る官能基とアニオン変性セルロース繊維に導入されたアニオン性基との結合を示し、共有結合を示す。
Zは、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくはアミド結合及びエステル結合からなる群から選ばれる1種以上の結合であり、より好ましくはアミド結合である。
【0021】
Zがアミド結合である場合、-NH-OC-で表されるものであることが好ましい。ここで-NH-OC-のうち、-NHはEO/PO共重合体の片方の末端に存在するアミノ基由来の基であることが好ましく、OC-はアニオン変性セルロース繊維のカルボキシ基由来の基であることが好ましい。
【0022】
なお、上記のような(b)ポリマー基は、修飾用化合物としてアミン化合物を用いて導入することが好ましい。すなわち、本発明の修飾基が(b)ポリマー基である場合は、該修飾基は上記(b)ポリマー基を含有するアミン化合物に由来するものであることが好ましい。このようなアミン化合物としては、1級アミン又は2級アミン等が挙げられる。
上記EO/PO共重合体構造の片方の末端に存在する官能基がアミノ基である場合、修飾用化合物の市販品としては、米国ハンツマン(Huntsman)社製、ジェファーミン(Jeffamine)Mシリーズなどが挙げられる。
【0023】
(c)更なる置換基
なお、修飾基は、上記(a)炭化水素基及び/又は(b)ポリマー基に更に置換基を有するものであってもよい。置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素数1以上6以下のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基等のアルコキシ基の炭素数が1以上6以下のアルコキシ-カルボニル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基等の炭素数1以上6以下のアシル基;アラルキル基;アラルキルオキシ基;炭素数1以上6以下のアルキルアミノ基;アルキル基の炭素数1以上6以下のジアルキルアミノ基;ヒドロキシ基が挙げられる。
【0024】
(成分(A)の製造方法)
成分(A)は、例えば、原料のセルロース繊維にアニオン性基を導入してアニオン変性セルロース繊維を製造し(工程1)、次いで、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に修飾基を導入させること(工程2)によって、製造することが好ましい。
【0025】
〔工程1〕
≪原料のセルロース繊維≫
アニオン変性セルロース繊維の原料であるセルロース繊維としては、環境面から天然セルロースが好ましく、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
原料のセルロース繊維の平均繊維径は、取扱い性及びコストの観点から、好ましくは5μm以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは500μm以下である。原料のセルロース繊維の平均繊維径は後述の実施例に記載の方法で求められる。
また、原料のセルロース繊維の平均繊維長は特に限定されないが、入手性及びコストの観点から、好ましくは5μm以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは5,000μm以下である。原料のセルロース繊維の平均繊維長は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0026】
≪アニオン性基の導入方法≫
アニオン性基としてカルボキシ基をセルロース繊維に導入する方法としては、例えばセルロース繊維のヒドロキシ基を酸化してカルボキシ基に変換する方法や、セルロース繊維のヒドロキシ基に、カルボキシ基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させる方法が挙げられる。
セルロース繊維のヒドロキシ基を酸化処理する方法としては、例えば、特開2015-143336号公報又は特開2015-143337号公報に記載の、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル(TEMPO)を触媒として、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤及び臭化ナトリウム等の臭化物を原料のセルロース繊維と反応させる方法が挙げられる。TEMPOを触媒としてセルロース繊維の酸化を行うことにより、セルロース繊維を構成するグルコースユニットのC6位のヒドロキシメチル基(-CHOH)が選択的にカルボキシ基(-COOH)に変換され、前述のカルボキシ変性セルロース繊維を得ることができる。
アニオン性基としてスルホン酸基をセルロース繊維に導入する方法としては、セルロース繊維に硫酸を添加し加熱する方法等が挙げられる。
アニオン性基として(亜)リン酸基をセルロース繊維に導入する方法としては、乾燥状態又は湿潤状態のセルロース繊維に、(亜)リン酸又は(亜)リン酸誘導体の粉末や水溶液を混合する方法や、セルロース繊維の分散液に(亜)リン酸又は(亜)リン酸誘導体の水溶液を添加する方法等が挙げられる。これらの方法を採用した場合、一般的に、(亜)リン酸又は(亜)リン酸誘導体の粉末や水溶液を混合又は添加した後に、脱水処理及び加熱処理等を行う。
【0027】
〔工程2〕
アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基への修飾基の導入は、アニオン性基に修飾基を導入するための化合物(修飾用化合物)とアニオン変性セルロース繊維とを反応させることで達成され、成分(A)の改質セルロース繊維が得られる。修飾基を導入する方法としては、アミド結合を介して修飾基を有するセルロース繊維を得る場合は特開2015-143337号公報を参考にすることができる。
工程2の終了後、未反応の化合物等を除去するために、後処理を適宜行ってもよい。後処理の方法としては、例えば、ろ過、遠心分離、透析等を用いることができる。
【0028】
(微細化工程)
成分(A)の製造方法のいずれかの段階においてセルロース繊維を微細化することにより、マイクロメータースケールのセルロース繊維をナノメータースケールに微細化することができる。微細化工程は、セルロース繊維を効率よく微細化する観点から、上記工程2の前、又は上記工程2の後に行うことが好ましく、上記工程2の後に行うことがより好ましい。また、セルロース繊維の平均繊維径をナノメートルサイズにまで小さくすることによって、金属粒子含有組成物の粘度を高めることができるため、好ましい。
微細化処理は公知の微細化処理方法を採用することができる。例えば、成分(A)の平均繊維径をナノメートルサイズとする場合は、マスコロイダー等の磨砕機を用いた処理方法や、媒体中で高圧ホモジナイザー等を用いた処理方法を実施すればよい。
媒体としては、例えば水、メタノール、エタノール、プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール(PGME)等の炭素数1~6のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の炭素数3~6のケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル等の炭素数4~6のエステル;炭素数5又は6の飽和炭化水素又は不飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;炭素数2~5の低級アルキルエーテル;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒等が例示される。これらは、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。媒体の使用量は、セルロース繊維を分散できる有効量であればよく、セルロース繊維に対して、好ましくは1質量倍以上、好ましくは500質量倍以下である。
【0029】
(短繊維化処理)
成分(A)の製造方法のいずれかの段階において、セルロース繊維を短繊維化処理してもよい。
短繊維化処理は、対象のセルロース繊維を(i)アルカリ処理、(ii)酸処理、(iii)熱処理、紫外線処理、電子線処理、機械処理及び酵素処理からなる群から選ばれる少なくとも1種の処理方法を施すことにより、行うことができる。
【0030】
(成分(A)の性質)
本発明における成分(A)としてアニオン変性セルロース繊維のアニオン性基に共有結合を介して修飾基を有する改質セルロース繊維の主な性質は以下の通りである。
〔結晶構造〕
成分(A)は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、セルロースI型結晶構造を有するものが好ましい。
成分(A)の結晶化度は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、更に好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上であり、そして、原料入手性の観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下である。なお、本明細書において、セルロース繊維の結晶化度は、X線回折法による回折強度値から算出したセルロースI型結晶化度であり、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。なお、「セルロースI型」とは天然セルロースの結晶形のことであり、「セルロースI型結晶化度」とは、セルロース繊維全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。セルロースI型結晶構造の有無は、X線回折測定において、2θ=22.6°にピークがあることで判定することができる。
【0031】
〔平均繊維径〕
成分(A)は、ナノメートルサイズになるように微細化処理を受けたものが好ましい。従って、成分(A)の平均繊維径は、取扱い性、入手性、及びコストの観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、そして、取扱い性、分散性及び金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、更に好ましくは30nm以下、更に好ましくは20nm以下、更に好ましくは15nm以下、更に好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下である。
【0032】
〔平均繊維長〕
成分(A)の平均繊維長は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは30nm以上、更に好ましくは50nm以上、更に好ましくは80nm以上、更に好ましくは100nm以上、更に好ましくは130nm以上、更に好ましくは150nm以上、更に好ましくは180nm以上、更に好ましくは200nm以上であり、そして、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは400nm以下、更に好ましくは350nm以下、更に好ましくは320nm以下である。
【0033】
〔平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)〕
成分(A)の平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは30以上、更に好ましくは50以上、更に好ましくは70以上、更に好ましくは80以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは120以下、更に好ましくは95以下である。
成分(A)の平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比は、後述の実施例に記載の方法によって求められる。
【0034】
〔修飾基の結合量及び導入率〕
成分(A)における修飾基の結合量は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.1mmol/g以上、更に好ましくは0.3mmol/g以上、更に好ましくは0.6mmol/g以上であり、そして、好ましくは3.0mmol/g以下、より好ましくは2.0mmol/g以下、更に好ましくは1.4mmol/g以下、更に好ましくは1.0mmol/g以下である。
成分(A)における修飾基の導入率は、分散性観点から、好ましくは10mol%以上、より好ましくは15mol%以上、更に好ましくは20mol%以上、更に好ましくは30mol%以上、更に好ましくは40mol%以上、更に好ましくは50mol%以上であり、改質セルロースの生産性向上の観点から、好ましくは100mol%以下、より好ましくは90mol%以下、更に好ましくは80mol%以下である。修飾基として任意の2種以上の修飾基が同時に導入されている場合には、導入率の合計が上限の100mol%を超えない範囲において、前記範囲内となることが好ましい。
修飾基の結合量及び導入率は、修飾用化合物の種類や添加量、反応温度、反応時間、溶媒の種類等によって調整することができる。「修飾基の結合量(mmol/g)」及び「導入率(mol%)」とは、改質セルロース繊維において、アニオン性基に修飾基が導入された(結合した)量及び割合のことである。改質セルロース繊維における修飾基の結合量及び導入率は、例えば、アニオン性基がカルボキシ基の場合には、後述の実施例に記載の方法で算出される。
【0035】
〔グルコース単位〕
成分(A)中のグルコース単位の含有量は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、成分(B)としての金属粒子の含有量を高める観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
【0036】
本発明の金属粒子含有組成物中の成分(A)の含有量は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、成分(B)としての金属粒子の含有量を高める観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下、更に好ましくは0.4質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。より具体的には、好ましくは0.01質量%以上1.0質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上0.6質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以上0.4質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以上0.3質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以上0.2質量%以下である。
【0037】
本発明の金属粒子含有組成物において、成分(B)100質量部に対する成分(A)の含有量は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上であり、そして、成分(B)としての金属粒子の含有量を高める観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.2質量部以下である。より具体的には、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.05質量部以上5質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以上1質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以上0.2質量部以下である。
【0038】
本発明の金属粒子含有組成物中の成分(A)に含まれるグルコース単位の含有量は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.03質量%以上であり、そして、成分(B)としての金属粒子の含有量を高める観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。より具体的には、好ましくは0.01質量%以上1質量%以下、より好ましくは0.02質量%以上0.5質量%以下、更に好ましくは0.03質量%以上0.2質量%以下、更に好ましくは0.03質量%以上0.1質量%以下である。
【0039】
本発明の金属粒子含有組成物において、成分(B)100質量部に対する成分(A)に含まれるグルコース単位の含有量は、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは0.003質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.03質量部以上であり、そして、成分(B)としての金属粒子の含有量を高める観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.2質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下である。より具体的には、好ましくは0.003質量部以上5質量部以下、より好ましくは0.005質量部以上5質量部以下、更に好ましくは0.01質量部以上1質量部以下、更に好ましくは0.03質量部以上0.5質量部以下、更に好ましくは0.03質量部以上0.2質量部以下、更に好ましくは0.03質量部以上0.1質量部以下である。
【0040】
<成分(B):金属粒子>
本発明の金属粒子含有組成物は、成分(B)として、金属粒子(以下、単に「成分(B)」ということがある)を含有する。
【0041】
また、成分(B)が金属粒子であることにより、本発明の金属粒子含有組成物は印刷用ペースト又はインクとして用いて、塗膜を焼結し、導電性部材を形成することができる。
金属粒子を構成する金属(金属原子)は、チタン、ジルコニウム等の第4族の遷移金属、バナジウム、ニオブ等の第5族の遷移金属、クロム、モリブデン、タングステン等の第6族の遷移金属、マンガン、テクネチウム、レニウム等の第7族の遷移金属、鉄、ルテニウム等の第8族の遷移金属、コバルト、ロジウム、イリジウム等の第9族の遷移金属、ニッケル、パラジウム、白金等の第10族の遷移金属、銅、銀、金等の第11族の遷移金属、亜鉛、カドミウム等の第12族の遷移金属、アルミニウム、ガリウム、インジウム等の第13族の金属、ゲルマニウム、スズ、鉛等の第14族の金属などが挙げられる。金属粒子を構成する金属は、1種を単独金属として用いてもよく、2種以上を併用して合金として用いてもよい。中でも、得られる金属膜の抵抗率を低減する観点から、金属粒子を構成する金属は、好ましくは第4族~第14族で第4周期~第6周期の金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、より好ましくは第4族~第11族で第4周期~第6周期の遷移金属からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
金属粒子を構成する金属は、得られる金属膜の抵抗率を低減する観点から、より具体的には、更に好ましくは銅、銀、ニッケル及びスズからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、更に好ましくは銅又は銀を含み、更に好ましくは銅を含む。
成分(B)中の第4族~第14族で第4周期~第6周期の金属の合計含有量は、得られる金属膜の抵抗率を低減する観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上である。
成分(B)中の第4族~第11族で第4周期~第6周期の遷移金属の合計含有量は、得られる金属膜の抵抗率を低減する観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上である。
成分(B)中の銅、銀、ニッケル及びスズからなる群から選ばれる少なくとも1種の合計含有量は、得られる金属膜の抵抗率を低減する観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上である。
成分(B)中の銅又は銀の含有量は、得られる金属膜の抵抗率を低減する観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上である。
金属粒子を構成する金属は、得られる金属膜の抵抗率を低減する観点から、好ましくは第4族~第14族で第4周期~第6周期の金属からなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは第4族~第11族で第4周期~第6周期の遷移金属からなる群から選ばれる1種以上である。
金属粒子を構成する金属は、得られる金属膜の抵抗率を低減する観点から、より具体的には、更に好ましくは銅、銀、ニッケル又はスズであり、更に好ましくは銅又は銀であり、更に好ましくは銅である。
金属の種類は、高周波誘導結合プラズマ発光分析法により確認することができる。
【0042】
成分(B)の平均粒径は、金属粒子の分散安定性を向上させ、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.4μm以上、更に好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは0.6μm以上、更に好ましくは0.7μm以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下、更に好ましくは4μm以下であり、更に好ましくは2μm以下である。
なお、成分(B)の平均粒径は、レーザ回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布を測定することで得られる、累積体積50%の粒径(D50)である。また、成分(B)として製品を入手して使用する場合には、成分(B)の平均粒径は製造社のカタログ値を採用してもよい。
成分(B)の粒度は、篩通過分を測定することによって、評価することもできる。成分(B)の粒度は、金属粒子の分散安定性を向上させ、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは目開きが300μmの篩の通過分が95%以上、より好ましくは目開きが150μmの篩の通過分が95%以上、更に好ましくは目開きが75μmの篩の通過分が95%以上である。また、成分(B)として製品を入手して使用する場合には、成分(B)の粒度は製造社のカタログ値又は製品規格書値を採用してもよい。
【0043】
また、成分(B)の比表面積は、得られる導電性部材の導電性等の観点から、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.3m2/g以上、更に好ましくは0.5m2/g以上であり、そして、好ましくは3.0m2/g以下、より好ましくは2.0m2/g以下、更に好ましくは1.5m2/g以下である。成分(B)の比表面積は、BET法により測定することができる。また、成分(B)として製品を入手して使用する場合には、成分(B)の比表面積は製造社のカタログ値を採用してもよい。
【0044】
本発明の金属粒子含有組成物中の固形分100質量部に対する成分(B)の含有量は、成分(B)としての金属粒子の含有量を高める観点から、70質量部以上であり、好ましくは80質量部以上、より好ましくは85質量部以上、更に好ましくは90質量部以上、更に好ましくは95質量部以上、更に好ましくは96質量部以上、更に好ましくは97質量部以上、更に好ましくは98質量部以上であり、そして、金属粒子の分散安定性の観点、及び金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは99.9質量部以下である。
【0045】
また、本発明の金属粒子含有組成物中の成分(B)の含有量は、成分(B)としての金属粒子の含有量を高める観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上であり、そして、金属粒子の分散安定性の観点、及び金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは93質量%以下、更に好ましくは91質量%以下である。
【0046】
<成分(C):25℃1気圧で液体の有機化合物>
本発明の金属粒子含有組成物は、成分(C)として、25℃1気圧で液体の有機化合物(以下、単に「成分(C)」ということがある)を含有する。
成分(C)は、金属粒子と共に用いる等の作業性の観点から、疎水性溶媒であることが好ましい。疎水性溶媒は、水100gの溶解量(20℃、1気圧)が、好ましくは100g以下、より好ましくは50g以下、更に好ましくは30g以下、更に好ましくは10g以下である。
【0047】
成分(C)としては、具体的には、メタノール、ノルマル及びイソプロパノール、t-ブタノール、1-ブタノール、1-ヘキサノール、ヘキサナール、グリセリン等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、メチルヘキシルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、多価カルボン酸エステル(例えば、フタル酸エステル、コハク酸エステル、アジピン酸エステル等)、グリセリン等脂肪族ポリオールの脂肪酸エステル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン等の高極性溶媒;塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、クロルベンゼン等のハロゲン系溶媒;ヘキサン、石油エーテル、流動パラフィン、スクアラン、スクアレン等の非芳香族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;t-ブチルグリコール、メチルジグリコール、エチルジグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチルジグリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、メチルジプロピレングリコール、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、(モノ、ジ、トリ、ポリ)エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、(モノ、ジ、トリ、ポリ)エチレングリコールジメチル(エチル)エーテル、(モノ、ジ、トリ、ポリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンビスフェノールA、ポリオキシプロピレンビスフェノールA等のグリコールエーテル系溶媒(グリコールエーテル系溶媒は、以下のグリコールエーテル(エステル)系溶媒を含む:ブチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メチルメトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジメチルカーボネートのグリコールエーテルエステル系溶媒);重合性化合物、例えば、[エポキシプレポリマー(例えば、ビスフェノール型、ノボラック型、ビフェニル型、ビフェニルアラルキル型、アリールアルキレン型、テトラフェニロールエタン型、ナフタレン型、アントラセン型、フェノキシ型、ジシクロペンタジエン型、ノルボルネン型、アダマンタン型、フルオレン型、グリシジルメタアクリレート共重合系等);イソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系やヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族系等);アクリルプレポリマー(例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタアクリル酸2-エチルヘキシル、ノナンジオールジアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ビスフェノールA-アルキレンオキサイド付加体の(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなど);ポリエステル(メタ)アクリレート(例えば、脂肪族ポリエステル型(メタ)アクリレート、芳香族ポリエステル型(メタ)アクリレートなど);ウレタン(メタ)アクリレート(ポリエステル型ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタン(メタ)アクリレートなど);シリコーン(メタ)アクリレート、シアノアクリレートのモノ(メタ)アクリレート等]およびこれら重合性化合物のオリゴマー等;ロジン等の天然樹脂;オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸;オリーブ油、ホホバ油、ひまし油などの動・植物油;シリコーンオイル、フッ素系不活性液体、プロセスオイル等が挙げられる。
【0048】
本発明の金属粒子含有組成物を、印刷用ペースト又はインクとして用いる場合、成分(C)は、分散媒として機能することが好ましい。分散媒としての成分(C)は、成分(B)である金属粒子の分散安定性の観点、及び金属粒子含有組成物の粘度を高めて印刷寸法性を向上させる観点から、(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、テルペンアルコール、グリセリン(沸点:290℃、分子量:92)及びグリセリン誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
本明細書において「(ポリ)アルキレングリコール」とは、アルキレングリコール及びポリアルキレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を意味する。「(ポリ)アルキレングリコール誘導体」も同義である。また、本明細書において「ポリアルキレングリコール」とはアルキレングリコール構造が2個以上連結されたグリコールを意味する。
【0049】
(ポリ)アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール(沸点:197℃、分子量:62)、プロピレングリコール(沸点:188℃、分子量:76)、ジエチレングリコール(沸点:244℃、分子量:106)、トリエチレングリコール(沸点:287℃、分子量:150)、ジプロピレングリコール(沸点:232℃、分子量:134)、トリプロピレングリコール(沸点:273℃、分子量:192)、テトラプロピレングリコール(沸点:300℃以上、分子量:250)、ポリエチレングリコール(数平均分子量が好ましくは180以上1000以下、より好ましくは180以上600以下、更に好ましくは180以上400以下)、ポリプロピレングリコール(数平均分子量が好ましくは232以上1000以下、より好ましくは232以上600以下、更に好ましくは232以上500以下)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(沸点:244℃、分子量:146)等が好ましく挙げられる。中でも、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びポリエチレングリコール(数平均分子量が好ましくは180以上1000以下、より好ましくは180以上600以下、更に好ましくは180以上400以下)からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、ジエチレングリコール、及びポリエチレングリコール(平均分子量が180以上400以下)からなる群から選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0050】
(ポリ)アルキレングリコール誘導体としては、例えば、前記(ポリ)アルキレングリコールの末端のヒドロキシ基がエーテル化又はエステル化された化合物等が挙げられる。
前記ポリアルキレングリコールの両末端のヒドロキシ基がエーテル化又はエステル化された化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:162℃、分子量:134)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(沸点:254℃、分子量:218)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(沸点:216℃、分子量:178)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点:217℃、分子量:176)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点:247℃、分子量:204)等が挙げられる。
前記ポリアルキレングリコールの片末端のヒドロキシ基がエーテル化又はエステル化された化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点:202℃、分子量:134)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:231℃、分子量:162)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(沸点:258℃、分子量:190)等が挙げられる。中でも、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0051】
テルペンアルコールとしては、例えば、α-テルピネオール(沸点:219℃、分子量:154)、リナロール(沸点:198℃、分子量:154)、ゲラニオール(沸点:229℃、分子量:154)、シトロネロール(沸点:225℃、分子量:156)等のモノテルペンアルコールが挙げられる。中でも、α-テルピネオールが好ましい。
【0052】
グリセリン誘導体としては、例えば、グリセリンに由来する構造を含む溶媒であれば特に制限はなく、例えば、グリセリンのエーテル誘導体、グリセリンのエステル誘導体、ポリグリセリン、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物(例えばエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物)等を挙げることができる。ポリグリセリンとしては、例えば、ジグリセリンやトリグリセリン等が挙げられ、商業的に入手しうるポリグリセリンとして、例えば、阪本薬品工業社製のポリグリセリン#310、ポリグリセリン#500、ポリグリセリン#750等が挙げられる。グリセリンのエーテル誘導体としては、例えば、3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,2-プロパンジオール(沸点:325℃、分子量204)等が挙げられる。グリセリンのエステル誘導体としては、例えば、グリセリルトリブチラート(沸点:305℃、分子量302)等が挙げられる。
【0053】
成分(C)は、金属粒子の分散安定性の観点、及び金属粒子含有組成物の粘度を高めて印刷寸法性を向上させる観点から、好ましくは(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体及びテルペンアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、より好ましくはジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(数平均分子量が好ましくは180以上1000以下、より好ましくは180以上600以下、更に好ましくは180以上400以下)、及びα-テルピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる少なくとも1種を含み、更に好ましくはジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(数平均分子量180以上400以下)、α-テルピネオール、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0054】
更に、成分(B)が、焼結し得る金属粒子である場合、成分(C)の1気圧での沸点は、金属粒子の焼結性を高める観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは210℃以上、更に好ましくは215℃以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは400℃以下、より好ましくは360℃以下、更に好ましくは330℃以下、更に好ましくは300℃以下である。なお、成分(C)として2種以上の液体の有機化合物を併用する場合には、成分(C)の沸点は、各液体の有機化合物の含有量(質量%)で重み付けした加重平均値である。
【0055】
また、成分(C)の分子量は、金属粒子の焼結性を高める観点から、好ましくは60以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは130以上、更に好ましくは150以上であり、そして、前記と同様の観点から、好ましくは450以下、より好ましくは400以下、更に好ましくは350以下、更に好ましくは300以下である。成分(C)として2種以上の液体の有機化合物を併用する場合には、成分(C)の分子量は、各液体の有機化合物の含有量(質量%)で重み付けした加重平均値である。
特に、金属粒子の焼結性を高める観点から、成分(C)の沸点が180℃以上であり、かつ、成分(C)の分子量が450以下であることが好ましい。
【0056】
成分(C)中の(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体、テルペンアルコール、グリセリン及びグリセリン誘導体(以下、「成分C1」ともいう)の合計含有量は、金属粒子の焼結性を高める観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、更に好ましくは99.9質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。ここで「実質的に100質量%」とは、意図せずに含まれる成分を含みうることを意味する。意図せずに含まれる成分としては、例えば、成分C1中に含まれる成分C1以外の成分が挙げられる。
【0057】
成分(C)中の(ポリ)アルキレングリコール、(ポリ)アルキレングリコール誘導体及びテルペンアルコール(以下、「成分C2」ともいう)の合計含有量は、金属粒子の焼結性を高める観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、更に好ましくは99.9質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。ここで「実質的に100質量%」とは、意図せずに含まれる成分を含みうることを意味する。意図せずに含まれる成分としては、例えば、成分C2中に含まれる成分C2以外の成分が挙げられる。
【0058】
成分(C)中のジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(数平均分子量180以上400以下)、α-テルピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(以下、「成分C3」ともいう)の合計含有量は、金属粒子の焼結性を高める観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、更に好ましくは99.9質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。ここで「実質的に100質量%」とは、意図せずに含まれる成分を含みうることを意味する。意図せずに含まれる成分としては、例えば、成分C3中に含まれる成分C3以外の成分が挙げられる。
【0059】
本発明の金属粒子含有組成物中の成分(C)の含有量は、金属粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは4質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは6質量%以上であり、そして、金属粒子含有組成物の取扱い性の観点から、好ましくは40質量%以下である。
特に、本発明の金属粒子含有組成物を、印刷用ペースト又はインクとして用いる場合、金属粒子含有組成物の印刷寸法性を向上させる観点から、成分(C)の含有量は、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、更に好ましくは13質量%以下である。
【0060】
本発明の金属粒子含有組成物において、成分(B)100質量部に対する成分(C)の含有量は、金属粒子含有組成物の分散安定性を向上する観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上であり、そして、金属粒子含有組成物の粘度を高める観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは18質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。より具体的には、好ましくは1質量部以上20質量部以下、より好ましくは5質量部以上18質量部以下、更に好ましくは8質量部以上15質量部以下、更に好ましくは10質量部以上15質量部以下である。
【0061】
<その他の成分>
本発明の金属粒子含有組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、水を含有してもよい。金属粒子含有組成物中の水の含有量は、金属粒子が金属である場合にはその酸化を抑制する観点、並びに金属粒子含有組成物の分散安定性、保存安定性及び粘度を高める観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.01質量%以下である。
【0062】
また、本発明の金属粒子含有組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記成分以外に、各種添加剤を含んでもよい。該添加剤としては、例えば、可塑剤、結晶核剤、充填剤(有機充填剤)、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン系界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、成分(B)とは異なる顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、;香料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等を例示することができる。さらに、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他の高分子材料や他の組成物を添加することも可能である。
本発明の金属粒子含有組成物中の添加剤の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0063】
〔金属粒子含有組成物の製造方法〕
本発明の金属粒子含有組成物は、例えば、成分(A)、(B)、(C)及び必要に応じて前述の添加剤を混合することにより製造することができる。
例えば、前述の各成分を、自転公転型撹拌装置等の公知の撹拌装置を用いて撹拌することにより、或いは、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、ロールミル、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて混練することにより、或いは、溶媒キャスト法により、或いは、高せん断加工機といったせん断装置でせん断することによって実施することができる。
【0064】
〔金属粒子含有組成物の物性〕
本発明の金属粒子含有組成物の25℃の粘度(Pa・s)は、せん断速度1.0s-1を条件として、金属粒子含有組成物の取扱い性の観点、金属粒子含有組成物の印刷寸法性を向上させる観点から、好ましくは30以上、より好ましくは50以上、更に好ましくは90以上、更に好ましくは100以上、更に好ましくは120以上、更に好ましくは140以上であり、一方、金属粒子含有組成物として用いる作業性の観点から、好ましくは500以下、より好ましくは400以下、更に好ましくは300以下である。
本明細書における粘度の測定方法は、レオメーターを用いた後述の実施例記載の方法で行うことができる。
【0065】
〔金属粒子含有組成物の用途〕
本発明の金属粒子含有組成物は、特に制限なく様々な製品に用いることができる。本発明の金属粒子含有組成物が適用できる製品の具体例としては、例えば、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、雑貨、農薬及び化学工業品等が挙げられる。より具体的には、家電部品、電子材料(エレクトロニクス)、包装容器、航空宇宙、土木建築、自動車、車載向け等の分野において、樹脂成形材料、電気絶縁材料、塗料、印刷用ペースト、インク、コーティング剤、接着剤、補修材、粘着剤、潤滑剤、シーリング材、断熱材、吸音材、人工皮革材料、電子材、半導体材料、タイヤ、自動車部品、繊維複合材料等が挙げられる。中でも、印刷用ペースト及びインクとして好適に用いられる。また、電子材料用、光学材料用又は構造材料用としても好適に用いられる。
【0066】
特に本発明の金属粒子含有組成物は、成分(B)が金属粒子であるため、各種電子電気機器の導電性部材の形成に用いることができる。該導電性部材は、はんだ等の接合剤;RFID(radio frequency identifier)タグ等のアンテナ;MLCC(積層セラミックコンデンサ)等のコンデンサ;電子ペーパー;液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の画像表示装置;有機EL素子;有機トランジスタ;プリント配線板、フレキシブル配線板等の配線板;有機太陽電池;フレキシブルセンサー等のセンサー等に用いることが好ましい。これらの中でも、本発明の金属粒子含有組成物は、複数の金属部材の接合に用いることが好ましい。
【0067】
〔膜の製造方法〕
本発明の金属粒子含有組成物を用いた膜の製造方法は、金属粒子含有組成物を基材上に塗布する工程を有し、好ましくは金属粒子含有組成物の塗膜を乾燥する工程を更に含む。
【0068】
具体的には、金属粒子含有組成物を、基材、例えば、ガラス、樹脂、金属、セラミックス、コンクリート、木材、石材等を素材とする硬質表面あるいは繊維、皮膚、髪、紙等に塗布する。好ましくは、屋外に配される様々な表面、例えば、看板、標識、信号機などの道路設備や自動車、飛行機、電車、船舶などの車体やガラス面及びヘッドライト、建造物の屋根、外壁、窓など、及び太陽光パネルなどに対するコーティングなどの分野に利用することもできる。
【0069】
基材上に塗布してなる金属粒子含有組成物の塗膜の厚みとしては、膜の耐久性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上であり、そして、塗布性の観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下である。
【0070】
次いで、金属粒子含有組成物の塗膜を乾燥させて膜を得ることができる。乾燥条件としては、減圧下でも常圧下でもよく、温度範囲としては15℃以上75℃以下が好ましい。また、乾燥のための時間としては、10分間以上24時間以下が好ましい。
【0071】
本発明の製造方法により得られる膜の厚みは特に制限はなく、膜の耐久性の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上であり、経済性の観点から、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1200μm以下、更に好ましくは500μm以下、更に好ましくは200μm以下である。
なお、膜の厚みは、アプリケーター等の塗布用具による塗膜厚の設定や、スプレー等による塗布量や媒体の割合を調整することにより、所望の値とすることができる。
【0072】
〔導電性部材の製造方法〕
本発明の導電性部材の製造方法は、金属粒子含有組成物を基板上に塗布する工程を有する。また、導電性の観点から、金属粒子含有組成物は、成分(B)として金属粒子を含有することが好ましい。
【0073】
導電性部材としては、例えば、はんだ等の接合体や、電子回路等が挙げられる。
基板としては、例えば、ガラス、樹脂、金属、セラミックス等が挙げられる。
【0074】
特に、導電性部材が接合体である場合には、好ましくは、金属粒子含有組成物を複数の金属部材の間に介在させて加熱する工程を更に含む。これにより、金属粒子含有組成物が成分(B)として焼結し得る金属粒子を含有する場合には、該金属粒子が焼結して導電性に優れる接合体を形成することができる。ここで、金属部材の少なくとも一つは、上記基板である。
【0075】
前記加熱する工程における加熱処理の温度は、接合強度及び導電性の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは200℃以上であり、低温焼結性及び接合強度を向上させる観点から、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下、更に好ましくは260℃以下である。
前記加熱する工程における加熱処理は、無加圧下及び加圧下のいずれでも行うことができるが、接合強度及び導電性の観点から、加圧下が好ましい。前記加熱する工程における加熱処理の圧力は、低温焼結性及び接合強度を向上させる観点から、好ましくは5MPa以上、より好ましくは8MPa以上、更に好ましくは10MPa以上、更に好ましくは15MPa以上であり、そして、生産性の観点から、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、更に好ましくは20MPa以下である。
前記加熱する工程における加熱処理の時間は、加熱処理の温度や圧力によって適宜調整することができる。
前記加熱する工程における雰囲気は、空気雰囲気であってもよく、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気であってもよく、水素ガス等の還元性ガス雰囲気でもよいが、金属の酸化の抑制と安全性の観点から、窒素ガス雰囲気がより好ましい。
【0076】
本発明において接合する金属部材としては、例えば金基板、金メッキ基板、銀基板、銀メッキ金属基板、銅基板、パラジウム基板、パラジウムメッキ金属基板、プラチナ基板、プラチナメッキ金属基板、アルミニウム基板、ニッケル基板、ニッケルメッキ金属基板、スズ基板、スズメッキ金属基板等の金属系基板又は金属製基板;電気絶縁性基板の電極等の金属部分等が挙げられる。本発明で用いる複数の金属部材は、同じ種類の金属部材であっても、異なる種類の金属部材であってもよい。
これらの中でも、金属部材は、好ましくは金基板、金メッキ基板、銀基板、銀メッキ金属基板、銅基板、パラジウム基板、パラジウムメッキ金属基板、プラチナ基板、プラチナメッキ金属基板、アルミニウム基板、ニッケル基板、ニッケルメッキ金属基板、スズ基板、スズメッキ金属基板、及び電気絶縁性基板の金属部分から選ばれる少なくとも1種を含む。
本発明における金属部材の接合は、コンデンサ、抵抗等のチップ部品と回路基板との接合;メモリ、ダイオード、トランジスタ、IC、CPU等の半導体チップとリードフレーム又は回路基板との接合;高発熱の半導体チップと冷却板との接合等に用いることができる。
【0077】
金属粒子含有組成物の金属部材への付与方法としては、スロットダイコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ドクターブレーディング、ナイフエッジコーティング、バーコーティング等の各種塗布方法;ステンシル印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、ディスペンサー印刷、インクジェット印刷等の各種パターニング印刷方法が挙げられる。これらの中ではステンシル印刷が好ましい。
金属粒子含有組成物の金属部材への付与量は、接合する金属部材の大きさ、種類に応じて適宜調整することができる。
【実施例0078】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。なお、「常圧」とは101.3kPaを、「常温」とは25℃を示す。
各種物性は、以下の方法により測定又は算出した。
【0079】
[アニオン変性セルロース繊維、短繊維化アニオン変性セルロース繊維及び改質セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)]
測定対象のセルロース繊維のサイズによって、下記(1)及び(2)の測定方法のうちのいずれかを選択して測定した。
(1)改質セルロース繊維の測定
測定対象のセルロース繊維に脱イオン水又はN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を加えて、その含有率が0.0001質量%の分散液を作製した。該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM)(Digital instrument社製、Nanoscope II Tappingmode AFM;プローブはナノセンサーズ社製、Point Probe(NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さ(繊維のあるところとないところの高さの差)を測定した。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、セルロース繊維を100本抽出し、それらの繊維高さから平均繊維径を算出した。繊維方向の距離より、平均繊維長を算出した。また、算出した平均繊維径及び平均繊維長から、平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)を算出した。
(2)アニオン変性セルロース繊維、短繊維化アニオン変性セルロース繊維の測定
測定対象のセルロース繊維に脱イオン水を加えて、その含有率が0.01質量%の分散液を作製した。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、IF-3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定した。そして、セルロース繊維を長方形と近似した際の短軸の長さを繊維径、長軸の長さを繊維長として、それぞれの値をセルロース繊維100本について測定し、平均値を算出した。また、算出した平均繊維径及び平均繊維長から、平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)を算出した。
なお、「平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)」を単に「アスペクト比」とも称する。
【0080】
[アニオン変性セルロース繊維、短繊維化アニオン変性セルロース繊維及び改質セルロース繊維のアニオン性基(カルボキシ基)含有量]
乾燥質量0.5gの測定対象のセルロース繊維をビーカーにとり、脱イオン水又はメタノール/脱イオン水=2/1(体積比)の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、ここに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製した。測定対象のセルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を撹拌した。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5~3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、AUT-701)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を、待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定した。pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得た。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム水溶液滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出した。
アニオン性基含有量(mmol/g)=[水酸化ナトリウム水溶液滴定量(mL)×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)]/[測定対象のセルロース繊維の質量(0.5g)]
【0081】
[改質セルロース繊維の修飾基の結合量及び導入率]
修飾基の結合量を次のIR測定方法により求め、下記式によりその結合量及び導入率を算出した。IR測定は、具体的には、乾燥させた改質セルロース繊維の赤外吸収スペクトルを赤外吸収分光装置(IR)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、Nicolet 6700)を用いATR法にて測定し、式A及び式Bにより、修飾基の結合量及び導入率を算出した。以下はアニオン性基がカルボキシ基の場合、即ち、カルボキシ変性セルロース繊維(アニオン変性セルロース繊維)の場合を示す。以下の「1720cm-1のピーク強度」は、カルボニル基に由来するピーク強度である。なお、カルボキシ基以外のアニオン性基の場合は波数の値を適宜変更し、修飾基の結合量及び導入率を算出すればよい。
<式A>
修飾基の結合量d(mmol/g)=a×(b-c)÷b
a:カルボキシ変性セルロース繊維(アニオン変性セルロース繊維)のカルボキシ基含有量(mmol/g)
b:カルボキシ変性セルロース繊維(アニオン変性セルロース繊維)の1720cm-1のピーク強度
c:改質セルロース繊維の1720cm-1のピーク強度
<式B>
修飾基の導入率e(mol%)=100×d/a
【0082】
[アニオン変性セルロース繊維、短繊維化アニオン変性セルロース繊維及び改質セルロース繊維の結晶化度]
アニオン変性セルロース繊維、短繊維化アニオン変性セルロース繊維及び改質セルロース繊維の結晶化度は、X線回折計(リガク社製、MiniFlexII)を用いて以下の条件で測定することにより求めた。
測定ペレット作製条件:錠剤成形機で10~20MPaの範囲で、対象のセルロース繊維に圧力を印加することで、面積320mm×厚さ1mmの平滑なペレットを作製した。
X線回折分析条件:ステップ角0.01°、スキャンスピード10°/min、測定範囲:回折角2θ=5~40°
X線源:Cu/Kα-radiation、管電圧:15kV、管電流:30mA
ピーク分割条件:バックグラウンドノイズを除去した後、2θ=13-23°の間の誤差が5%以内に収まるようにガウス関数でフィッティングした。
アニオン変性セルロース繊維、短繊維化アニオン変性セルロース繊維及び改質セルロース繊維のセルロースI型結晶構造の結晶化度は、前述のピーク分割により得られたX線回折ピークの面積を用いて以下の式(A)に基づいて算出した。
セルロースI型結晶化度(%)=[Icr/(Icr+Iam)]×100 (A)
〔式中、Icrは、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22-23°)の回折ピークの面積、Iamはアモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折ピークの面積を示す。〕
【0083】
[固形分含有量]
固形分含有量は、ハロゲン水分計(島津製作所社製、MOC-120H)を用いて、以下の条件で測定することにより求めた。
サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少がサンプルの初期量の0.1%以下となった値を固形分量とした。なお、高沸点な有機溶媒を使用したため上記分析法で固形分含有量を分析することが困難な場合は、別途フェノール硫酸法などの既知の代替手法を用いてもよい。
上記測定で得られた固形分量を、加熱前のサンプルの質量で除して得られた値の百分率を、固形分含有量(質量%)とした。
【0084】
[分散液中の成分(A)の濃度]
分散液中の成分(A)の濃度は、分散液中の固形分含有量(質量%)とした。
【0085】
[分散液中の成分(A’)の濃度]
後述する比較例で用いたイオン結合を介して修飾基を有する改質セルロース繊維(以下、成分(A’)と記載する。)の分散液中の濃度は、成分(A’)の分散液作製時の各成分の配合量から、配合したアニオン変性セルロース繊維とアミンの全てがイオン結合したものと仮定して算出した。
【0086】
[分散液中の成分(A)又は成分(A’)に含まれるグルコース単位の濃度]
次式により、分散液中の成分(A)又は成分(A’)に含まれるグルコース単位の濃度を算出した。
分散液中の成分(A)又は成分(A’)に含まれるグルコース単位の濃度(質量%)=1000×分散液中の成分(A)又は成分(A’)の含有量(質量%)/[1000+修飾用化合物の分子量(g/mol)×修飾基の結合量(mmol/g)]
【0087】
[成分(A)又は成分(A’)の分散液の粘度]
成分(A)又は成分(A’)の分散液の粘度は、レオメーター(Anton Paar社製、PHYSICA MCR300)を用いて行った。測定治具は分散液の粘度に応じて、コーン型治具CP25-1又はCP50-1を使用し、測定条件はせん断速度を1回目0.001~1000s-1、2回目1000~0.001s-1、3回目0.001~1000s-1の条件で測定を行い、粘度の安定性の観点から3回目測定時、25℃1気圧でせん断速度1.0s-1の際の粘度を求めた。
【0088】
[成分(A)又は成分(A’)の分散液の透過率]
成分(A)又は成分(A’)の分散液の波長660nmにおける光線透過率を、ダブルビーム分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、U-2910)及び光路長10mmの石英セルを用いて、25℃、1分の条件で透過率を測定した。透過率が高いほど改質セルロース繊維が良好に分散にしていることを示す。
【0089】
[金属粒子含有組成物中の成分(A)又は成分(A’)の含有量]
金属粒子含有組成物中の成分(A)又は成分(A’)の含有量は、前記分散液中の成分(A)又は成分(A’)の濃度、及び金属粒子含有組成物の配合組成から、算出した。
【0090】
[金属粒子含有組成物中の成分(A)又は成分(A’)に含まれるグルコース単位の含有量]
前記分散液中のグルコース単位の濃度、及び金属粒子含有組成物の配合組成から、金属粒子含有組成物中のグルコース単位の含有量を算出した。
【0091】
[金属粒子含有組成物中の各成分の含有量]
金属粒子含有組成物中の各成分の含有量は、金属粒子含有組成物を作製時の各成分の配合量から算出した。
【0092】
・アニオン変性セルロース繊維の調製
メカニカルスターラー及び撹拌翼を備えた2LのPP製ビーカーに、原料の天然セルロース繊維としての針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維10g、脱イオン水990gを投入し、25℃、100rpmで30分撹拌する。次いで、該パルプ繊維10gに対し、TEMPO0.13g、臭化ナトリウム1.3g、10.5質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液35.5gをこの順で添加する。次いで、自動滴定装置を用いてpHスタット滴定を行い、0.5M水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保持する。撹拌速度100rpmにて反応25℃で120分行う。次いで、撹拌しながら、更に0.01Mの塩酸を加えて、懸濁液のpHを2とする。次いで、吸引濾過で固形分を濾別する。その後、濾別固形分を脱イオン水中に分散させ、吸引濾過で固形分を濾別する操作を、ろ液の伝導度が200μS/cm以下になるまで繰り返す。得られた固形分に対して脱水処理を行って、短繊維化アニオン変性セルロース繊維の原料となるアニオン変性セルロース繊維を得ることができる。
得られたアニオン変性セルロース繊維の物性を表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
・短繊維化アニオン変性セルロース繊維の調製
(1)短繊維化アニオン変性セルロース繊維1の調製
上記のアニオン変性セルロース繊維に脱イオン水を添加し、固形分含有量が5.00質量%の混合物を調製した。次いで、この混合物を80℃、常圧で、29時間撹拌することで、固形分含有量が13.1質量%である短繊維化アニオン変性セルロース繊維1の水懸濁液を得た。
得られた短繊維化アニオン変性セルロース繊維1の物性を表2に示す。
(2)短繊維化アニオン変性セルロース繊維2の調製
上記のアニオン変性セルロース繊維に脱イオン水193gを添加し、メカニカルスターラーにて室温下(25℃)30分間撹拌し、固形分含有量が1質量%の分散液を調製した。続いてこれに1M塩酸(富士フイルム和光純薬社製)を24.5g投入し、室温下、1時間撹拌して反応させた。反応終了後、吸引濾過で固形分を濾別した。その後、濾別固形分を脱イオン水中に分散させ、吸引濾過で固形分を濾別する操作を、ろ液の伝導度が200μS/cm以下になるまで繰り返し、塩酸及び生成した塩を除去した。
その後、マグネティックスターラー、撹拌子を備えたバイアル瓶に、得られたアニオン変性セルロース繊維を絶乾質量で1.8g仕込み、処理液の質量が36gとなるまで、イオン交換水を添加した。処理液を95℃で12時間反応させることで、短繊維化アニオン変性セルロース繊維2の水懸濁液を得た。得られた短繊維化アニオン変性セルロース繊維2の水懸濁液を遠心分離(日立工機社製、CR21G III、遠心加速度10000G、1分間)し、固形分含有量が25.7質量%である短繊維化アニオン変性セルロース繊維2を含有する組成物を得た。
得られた短繊維化アニオン変性セルロース繊維2の物性を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
・成分(A)の分散液の調製
(1)改質セルロース繊維A-1の分散液の調製
マグネティックスターラー、撹拌子を備えたビーカーに、上記で得た短繊維化アニオン変性セルロース繊維1の水懸濁液を仕込んだ。続いて、4-メチルモルホリン1.3g、縮合剤である4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(国産化学社製)を8.2g仕込み、メチルエチルケトン(富士フイルム和光純薬社製)371g中に溶解させた。そこへセルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基1molに相当する量のメトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)-2-プロピルアミン(HUNTSMAN社製、ジェファーミン(JEFFAMINE)M2070、PO/EO(モル比)=10/31、分子量2000、以下「EOPOアミン」と略記する。)を52.2g加え、反応液を25℃で14時間反応させた。反応終了後、1M塩酸(富士フイルム和光純薬社製)を25.0g加えて撹拌し、懸濁させた。得られた懸濁液から減圧濾過にて固形物を濾別した。得られた固形物にエタノールを350g加えて、懸濁させて、減圧濾過にて固形分を濾別した。次いで、固形物に1-メトキシ-2-プロパノール(ダイセル社製、以下「PGME」と略記する。)350gを加えて、懸濁させ得られた懸濁液を遠心分離(日立工機社製、CR21G III、遠心加速度10000G、1分間)により分層させ、エタノール層を取り除くことにより、改質セルロース繊維PGME分散液を得た。得られた改質セルロース繊維PGME分散液の固形分含有量は12.2質量%であった。
続いて、マグネティックスターラー、撹拌子を備えたビーカーに、上記改質セルロース繊維PGME分散液を15.0g(固形分含有量12.2質量%)と、脱イオン水43g、PGMEを53g、ポリエチレングリコール200(富士フイルム和光純薬社製、以下「PEG200」と略記する。)を60.0g加え撹拌した。この溶液をマグネティックスターラーで1時間、常温で撹拌した後、高圧ホモジナイザー(吉田機械興業社製、ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで5パス処理させることで、改質セルロース繊維を微細化させた。その分散液を85℃で減圧乾燥することでPEG200以外の溶媒を除去し、アミド結合を介してメトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)-2-プロピル基を有する改質セルロース繊維A-1の分散液を得た。
(2)改質セルロース繊維A-2の分散液の調製
マグネティックスターラー、撹拌子を備えたビーカーに、上記で得た短繊維化アニオン変性セルロース繊維2を含有する組成物30.3gと、縮合剤である4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(国産化学社製)を3.8g仕込み、メチルエチルケトン(富士フイルム和光純薬社製)144g中に溶解させた。そこへセルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基1molに相当する量のEOPOアミンを24.3g加え、反応液を50℃で6時間反応させた。反応終了後、1M塩酸を12.1g加えて撹拌し、減圧濾過にて固形物を濾別した。得られた固形物にエタノールを180g加えて、懸濁させて、減圧濾過にて固形分を濾別した。次いで、固形物にPGME180gを加えて、懸濁させ得られた懸濁液を遠心分離(日立工機社製、CR21G III、遠心加速度10000G、1分間)により分層させ、エタノール層を取り除くことにより、改質セルロース繊維PGME分散液を得た。得られた改質セルロース繊維PGME分散液の固形分含有量は19.4質量%であった。
続いて、マグネティックスターラー、撹拌子を備えたビーカーに、上記改質セルロース繊維PGME分散液を1.9g(固形分含有量19.4質量%)と、脱イオン水57.9g、PGMEを39.7g、PEG200を15.0g加え撹拌した。この溶液をマグネティックスターラーで1時間、常温で撹拌した後、高圧ホモジナイザー(吉田機械興業社製、ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで10パス処理させることで、改質セルロース繊維を微細化させた。その分散液を85℃で減圧乾燥することでPEG200以外の溶媒を除去し、アミド結合を介してメトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)-2-プロピル基を有する改質セルロース繊維A-2の分散液を得た。
(3)改質セルロース繊維A-3の分散液の調製
マグネティックスターラー、撹拌子を備えたビーカーに、改質セルロース繊維PGME分散液を5.9g(固形分含有量19.4質量%)と、脱イオン水56.3g、PGMEを39.7g、PEG200を15.0g加え撹拌したこと以外は、改質セルロース繊維A-2の分散液の調製方法と同様の操作を経て、アミド結合を介してメトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)-2-プロピル基を有する改質セルロース繊維A-3の分散液を得た。
(4)改質セルロース繊維A-4の分散液の調製
マグネティックスターラー、撹拌子を備えたビーカーに、上記で得た短繊維化アニオン変性セルロース繊維2を含有する組成物36.8gと、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(国産化学社製)を13.8g仕込み、PGME102g中に溶解させた。そこへセルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基1molに相当する量のオクチルアミン(富士フイルム和光純薬社製)を1.8g加え、反応液を50℃で6時間反応させた。反応終了後、減圧濾過にて固形物を濾別した。得られた固形物にエタノールを190g加えて、懸濁させて、減圧濾過にて固形分を濾別した。次いで、1M塩酸を12.1g加えて撹拌し、固形物にPGME190gを加えて、懸濁させ得られた懸濁液を遠心分離(日立工機社製、CR21G III、遠心加速度10000G、1分間)により分層させ、エタノール層を取り除くことにより、改質セルロース繊維PGME分散液を得た。得られた改質セルロース繊維PGME分散液の固形分含有量は13.0質量%であった。
続いて、マグネティックスターラー、撹拌子を備えたビーカーに、上記改質セルロース繊維PGME分散液を10.5g(固形分含有量13.0質量%)と、PGMEを200.0g、PEG200を40.0g加え撹拌した。この溶液をマグネティックスターラーで1時間、常温で撹拌した後、高圧ホモジナイザー(吉田機械興業社製、ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで10パス処理させることで、改質セルロース繊維を微細化させた。その分散液を85℃で減圧乾燥することでPEG200以外の溶媒を除去し、アミド結合を介してオクチル基を有する改質セルロース繊維A-4の分散液を得た。
【0097】
・成分(A’)の分散液の調製
(1)改質セルロース繊維A’-1の分散液の調製
マグネティックスターラー、撹拌子を備えたビーカーに、上記で得られた短繊維化アニオン変性セルロース繊維1の水懸濁液7.90gと、脱イオン水86.0g、PGMEを88.0g、PEG200を100g加え撹拌した。そこへセルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基0.5molに相当する量のEOPOアミンを1.7g加え、この溶液をマグネティックスターラーで1時間、常温で撹拌した後、高圧ホモジナイザー(吉田機械興業社製、ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで5パス処理させることで、改質セルロース繊維を微細化させた。その分散液を85℃で減圧乾燥することでPEG200以外の溶媒を除去し、イオン結合を介してメトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)‐2‐プロピル基を有する改質セルロース繊維A’-1の分散液を得た。
【0098】
(2)改質セルロース繊維A’-2の分散液の調製
上記で得られた短繊維化アニオン変性セルロース繊維1の水懸濁液を34.0g、脱イオン水を156g、PGMEを176g、EOPOアミンを7.70gに、それぞれ変更した以外は、比較調製例1と同様の操作で、イオン結合を介してメトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)‐2‐プロピル基を有する改質セルロース繊維A’-2の分散液を得た。
【0099】
改質セルロース繊維A-1~A-4、並びに改質セルロース繊維A’-1及びA’-2の各分散液の各物性、構造、及び組成を表3にまとめて示す。
【0100】
【表3】
【0101】
実施例1~7、比較例1~3、及び参考例1~4
(金属粒子含有組成物の調製)
成分(A)又は成分(A’)の分散液は、表4に記載のグルコース単位の含有量になるように、成分(B)及び成分(C)が表4に記載の配合組成になるように、各成分をメノウ乳鉢に加え、成分(B)の乾燥粉が目視で見えなくなるまで混練し、得られた混合液をポリ瓶に移した。密栓をしたポリ瓶を、自転公転型撹拌装置(シンキー社製、Planetary Vacuum Mixer ARV-310)を用いて、2000min-1(2000回転/分)で5分間撹拌し、実施例1~7、比較例1~3、及び参考例1~4の金属粒子含有組成物をそれぞれ得た。
【0102】
金属粒子含有組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
<成分(B)>
・銅粒子B-1:三井金属鉱業社製、球状銅粉、品種:1050Y(比表面積1.1m/g(カタログ値)、平均粒径(D50径)0.81μm(カタログ値))
・銀粒子B-2:三井金属鉱業社製、球状高充填銀粉、品種:SL01(比表面積0.74m/g(カタログ値)、平均粒径(D50径)1.23μm(カタログ値))
・錫粒子B-3:富士フイルム和光純薬社製、粉末状、粒度:目開きが75μmの篩の通過分95%以上(製品規格書値)
・ニッケル粒子B-4:富士フイルム和光純薬社製、粉末状、粒度:目開きが150μmの篩の通過分95%以上(製品規格書値)
<成分(C)>
・PEG200:同上
・α-テルピネオール:富士フイルム和光純薬社製、特級試薬
【0103】
実施例1~7、比較例1~3、及び参考例1~4によって得られた各金属粒子含有組成物を用いて、以下の評価を行った。結果を表4に示す。
【0104】
<評価>
[金属粒子含有組成物の粘度の評価]
金属粒子含有組成物の粘度の評価は、レオメーター(Anton Paar社製、PHYSICA MCR300)を用いて行った。測定治具はパラレル型治具PP25を使用、測定条件はせん断速度を1回目0.001~1000s-1、2回目1000~0.001s-1、3回目0.001~1000s-1の条件で測定を行い、粘度の安定性の観点から3回目測定時、25℃1気圧でせん断速度1.0s-1の際の粘度を求めた。
【0105】
[印刷寸法性]
以下の手順に従って、実施例、比較例、及び参考例で得られた各金属粒子含有組成物の印刷寸法性を評価した。
まず、30mm×30mmの銅板(総厚:1mm)上に、6mm×6mm正方形の開口を3列有するステンレス製のメタルマスク(厚さ:150μm)を載せ、メタルスキージを用いたステンシル印刷により金属粒子含有組成物を銅板上に塗布した。その後、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX-7000)を用いて、銅板上に転写された金属粒子含有組成物の画像の横幅と縦幅を測定した。その後、以下式(I)にて印刷寸法性(%)を算出した。印刷寸法性の算出は、銅板上の転写された金属粒子含有組成物の3つの画像それぞれについて行い、3つの画像から算出して得た値の平均値を金属粒子含有組成物の印刷寸法性とした。なお、印刷寸法性は、数値が低いほど優れている。結果を表4に示す。
印刷寸法性(%)=〔(縦幅+横幅)/(6mm+6mm)-1〕×100 (I)
【0106】
【表4】
【0107】
実施例1~7の金属粒子含有組成物は、比較例1~3及び参考例1~4の金属粒子含有組成物に比べて、粘度が高く、印刷寸法性が良好であった。
以上から、本発明の金属粒子含有組成物は、金属粒子の含有量が高くても、高い粘度を有する。