(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132983
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】二液硬化型エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20240920BHJP
C09J 163/02 20060101ALI20240920BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240920BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08G59/40
C09J163/02
C09J11/06
C09J11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024038216
(22)【出願日】2024-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2023041036
(32)【優先日】2023-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】武内 芳樹
【テーマコード(参考)】
4J036
4J040
【Fターム(参考)】
4J036AB01
4J036AB02
4J036AB03
4J036AB07
4J036AB10
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4J040KA16
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4J040LA05
4J040LA08
4J040NA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、低温下でも十分な可使時間と良好な施工性とを有し、かつ保管安定性に優れ、耐熱性に優れる硬化物を与えることができる二液硬化型エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】5℃において液状である多価エポキシ化合物(A)、無機充填剤(D)及び疎水化度が55以上75以下であるヒュームドシリカ(E1)を含有する主剤と、ポリアルキレンポリアミン1モルとビスフェノールAジグリシジルエーテル0.05~0.35モルとの反応物(B)、無機充填剤(D)及び疎水化度が0以上55未満であるヒュームドシリカ(E2)を含有する硬化剤とからなる二液硬化型エポキシ樹脂組成物であり、前記硬化剤中の前記(B)の含有量が前記主剤中の前記(A)100重量部に対して10~40重量部である二液硬化型エポキシ樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5℃において液状である多価エポキシ化合物(A)、無機充填剤(D)及び疎水化度が55以上75以下であるヒュームドシリカ(E1)を含有する主剤と、ポリアルキレンポリアミン1モルとビスフェノールAジグリシジルエーテル0.05~0.35モルとの反応物(B)、無機充填剤(D)及び疎水化度が0以上55未満であるヒュームドシリカ(E2)を含有する硬化剤とからなる二液硬化型エポキシ樹脂組成物であり、前記硬化剤中の前記(B)の含有量が前記主剤中の前記(A)100重量部に対して10~40重量部である二液硬化型エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)の25℃における粘度が500~400000mPa・sである請求項1に記載の二液硬化型エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)がペンタエチレンヘキサミンとビスフェノールAジグリシジルエーテルとの反応物を含有する請求項1に記載の二液硬化型エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化剤が更に脂肪族ポリアミン(C)を含有し、前記(C)の数平均分子量が100~1500であり、かつ前記(C)の活性水素当量が30~200g/eqである請求項1に記載の二液硬化型エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
土木建築用接着剤である請求項1に記載の二液硬化型エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の二液硬化型エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二液硬化型エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、その優れた化学的、物理的特性により土木、注型材料、接着剤等の広範な用途に使用されている。土木建築分野では、加熱の必要のない常温硬化性の二液硬化型エポキシ樹脂組成物が多く用いられており、例えば、木造建築の接合工法の1つであるGIR(グルードインロッド)工法においては、木材に開けた穴に鋼棒等の接合具を挿入し、空隙部に樹脂接着剤を注入ガン等を用いて注入・充填後、硬化させることにより木材同士を接合する。
GIR工法は屋外で施工されるため、用いられる樹脂接着剤は、冬期あるいは寒冷地等の低温下においても十分な可使時間及び施工性(注入性及び充填性等)を確保できることが求められる。
また近年、環境保全等の観点から木造高層建築が注目されている。木造高層建築に使用される部材には、建築基準に応じて従来の低層建築に比べ高い耐熱性及び耐火性が必要であり、GIR工法用接着剤用途等の木造建築用に使用されるエポキシ樹脂組成物においては、硬化物の耐熱性及び耐火性の向上が望まれている。
【0003】
土木建築分野に使用されるエポキシ樹脂組成物として、特許文献1では、スチレン化フェノールを含むことを特徴とする2液型エポキシ樹脂組成物が提案されている。特許文献1に記載の組成物は0℃以下でも硬化し実用強度に到達し、可使時間を有し、低温でも注入可能な粘度であるが、硬化物の耐熱性は不足していた。
特許文献2では、オキシラン環を分子内に少なくとも2つ以上有するエポキシ樹脂と、アミン系化合物、及びその変性物よりなる群から選ばれた1種以上の化合物と、ハロゲン化ホウ素又はその錯体からなる化合物の少なくとも一方から選ばれた1種以上の化合物と、フェノール系化合物とを必須成分として含有してなる常温硬化性エポキシ樹脂組成物が提案されている。特許文献2に記載の組成物では、硬化物の力学的性質と、低温下における硬化性及び十分な可使時間を両立可能だが、硬化物の耐熱性については考慮されておらず、また組成物の保管安定性が不足していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-88348号公報
【特許文献2】特開2017-105995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低温下でも十分な可使時間と良好な施工性とを有し、かつ保管安定性に優れ、耐熱性に優れる硬化物を与えることができる二液硬化型エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
なお、本発明において「良好な施工性」とは、使用時の注入性及び充填性に優れることを意味する。「硬化物の耐熱性に優れる」とは、硬化物の高温下での強度保持率が高く、かつエポキシ樹脂組成物で接合した部材間の接着強度が高温下でも維持されることを意味する。
上記「高温」とは、例えば、後述する耐熱性試験の温度(Th)であり、木造建築用途に使用する場合は100℃前後である。「低温」とは、冬季又は寒冷地の外気温を想定しており、5~10℃程度である。
また、本発明におけるTgとは、動的粘弾性の温度依存性測定を後述の条件で行った際の損失正接(tanδ=損失弾性率/貯蔵弾性率)が最大になる温度を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、5℃において液状である多価エポキシ化合物(A)、無機充填剤(D)及び疎水化度が55以上75以下であるヒュームドシリカ(E1)を含有する主剤と、ポリアルキレンポリアミン1モルとビスフェノールAジグリシジルエーテル0.05~0.35モルとの反応物(B)、無機充填剤(D)及び疎水化度が0以上55未満であるヒュームドシリカ(E2)を含有する硬化剤とからなる二液硬化型エポキシ樹脂組成物であり、前記硬化剤中の前記(B)の含有量が前記主剤中の前記(A)100重量部に対して10~40重量部である二液硬化型エポキシ樹脂組成物;該エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の二液硬化型エポキシ樹脂組成物は、低温下でも十分な可使時間と良好な施工性(注入性及び充填性等)とを有し、かつ保管安定性に優れ、硬化物の耐熱性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の二液硬化型エポキシ樹脂組成物は、5℃において液状である多価エポキシ化合物(A)、無機充填剤(D)及び疎水化度が55以上75以下であるヒュームドシリカ(E1)を含有する主剤と、ポリアルキレンポリアミン1モルとビスフェノールAジグリシジルエーテル0.05~0.35モルとの反応物(B)、無機充填剤(D)及び疎水化度が0以上55未満であるヒュームドシリカ(E2)を含有する硬化剤とからなる。
【0009】
<5℃において液状である多価エポキシ化合物(A)>
本発明における5℃において液状である多価エポキシ化合物(A)は、分子中に2個以上のエポキシ基を有する5℃において液状の化合物、または分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を混合してなる5℃において液状の混合物であり、多価エポキシ化合物(A)としては、下記ポリグリシジルエーテル(A1)、ポリグリシジルエステル(A2)、ポリアミンのポリグリシジルアミン(A3)、その他の多価エポキシ化合物(A4)、及びこれらの2種又はそれ以上の混合物等が挙げられる。
多価エポキシ化合物(A)が2種以上の混合物である場合、混合物として5℃において液状であれば、単独では5℃において固状のものを含んでいてもよい。
なお、5℃において液状であるかの判定は、試験温度を20℃から5℃に変更する以外は、危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)の別紙第2の「液状の確認方法」に準じて行うことができる。
【0010】
(A1)ポリグリシジルエーテル
ポリグリシジルエーテル(A1)は、ポリオール化合物が有する2個以上の水酸基から水素原子を除いた残基とグリシジル基とからなるエーテル化合物であり、以下の(A11)~(A16)のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
(A11)2価フェノール[炭素数(以下Cと略記することがある)6~30]のジグリシジルエーテル
ビスフェノール(ビスフェノールF、-A、-B、-AD及び-S等)ジグリシジルエーテル、ハロゲン化ビスフェノールA(テトラクロロビスフェノールA等)ジグリシジルエーテル、単環2価フェノール(カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等)ジグリシジルエーテル、縮合多環2価フェノール[1,5-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシビフェニル、オクタクロロ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等]のジグリシジルエーテル、ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルの反応から得られるジグリシジルエーテル等;
【0011】
(A12)多価(3価~6価又はそれ以上)フェノールのポリグリシジルエーテル
多価フェノール(C6以上かつMn5,000以下)のポリグリシジルエーテル、例えば3価フェノール[ピロガロール、ジヒドロキシナフチルクレゾール、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、ジナフチルトリオール、p-グリシジルフェニルジメチルトリールビスフェノールA等]のトリグリシジルエーテル、4価フェノール[テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’-オキシビス(1,4-フェニルエチル)テトラクレゾール、ビス(ジヒドロキシナフタレン)等]のテトラグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂(Mn400~5,000)のポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂(Mn400~5,000)のポリグリシジルエーテル、リモネンフェノールノボラック樹脂(Mn400~5,000)のポリグリシジルエーテル、フェノールとグリオキザール、グルタルアルデヒド、又はホルムアルデヒドとの縮合反応によって得られるポリフェノール(Mn400~5,000)のポリグリシジルエーテル、及びレゾルシンとアセトンとの縮合反応によって得られるポリフェノール(Mn400~5,000)のポリグリシジルエーテル;
【0012】
(A13)脂肪族ジオール(C2以上かつMn5,000以下)のジグリシジルエーテル
脂肪族ジオール〔2価アルコール[例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール(以下それぞれEG、PG、TMG、NPG、1,6-HDと略記)]、ポリアルキレングリコール[例えばポリエチレングリコール(以下PEGと略記。分子量106以上かつMn4,000以下。)、ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記。分子量134以上かつMn5,000以下。)、ポリテトラメチレングリコール(以下PTMGと略記。分子量162以上かつMn5,000以下。)]等〕のジグリシジルエーテル;
【0013】
(A14)脂肪族ポリ(3価~6価又はそれ以上)オール(C6以上かつMn10,000以下)のポリグリシジルエーテル
脂肪族ポリオール〔多価(3~6価)アルコール[トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール(以下それぞれTMP、GR、PE、SOと略記)等]、多価アルコールの分子内もしくは分子間脱水物[ポリ(n=2~5)GR]、及びこれら多価アルコールのアルキレンオキシド[以下AOと略記。C2~6、例えばエチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド(以下それぞれEO、POと略記)]付加物等〕のポリグリシジルエーテル等;
【0014】
(A15)脂環含有ポリ(2価~4価又はそれ以上)オールのポリグリシジルエーテル
C3以上かつMn5,000以下のもの、例えば1,2-シクロプロパンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、1,2,3-シクロプロパントリオール、1,3,5-シクロヘキサントリオール、スクロース及びこれらのAO(1~20モル)付加物等のポリグリシジルエーテル;
【0015】
(A16)芳香環含有多価(2価~4価又はそれ以上)アルコールのポリグリシジルエーテル
C8以上かつMn5,000以下のもの、ビスフェノールAのAO(1~20モル)付加物、m-及びp-キシリレングリコール、ベンゼンジエタノール、1,2-ジフェニルエタン-1,2-ジオール、1,1,2,2,-テトラフェニルエタン-1,2-ジオール及びこれらのAO(1~20モル)付加物等のポリグリシジルエーテル;
【0016】
(A2)ポリグリシジルエステル
ポリグリシジルエーテル(A2)は、ポリカルボン酸化合物が有する2個以上のカルボキシル基に含まれる水酸基から水素原子を除いた残基とグリシジル基とからなるエステル化合物であり、以下の(A21)~(A22)のポリグリシジルエステル等が挙げられる。
(A21)芳香族多価(2価~6価又はそれ以上)カルボン酸のポリグリシジルエステル
芳香族多価カルボン酸(C6~C20又はそれ以上)のポリグリシジルエステル、例えば芳香族ジカルボン酸(オルト-、イソ-及びテレフタル酸等)ジグリシジルエステル、芳香族トリカルボン酸(トリメリット酸等)トリグリシジルエステル;
(A22)脂肪族もしくは脂環含有多価カルボン酸(C6~C20又はそれ以上)のポリグリシジルエステル
例えば脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸等)ジグリシジルエステル、脂肪族トリカルボン酸(トリカルバリル酸等)トリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体(重合度は2~10)、脂環含有多価カルボン酸(ダイマー酸等)のポリグリシジルエステル、前記(A21)の核水添物;
【0017】
(A3)ポリアミンのポリグリシジルアミン
ポリアミンのポリグリシジルアミン(A3)は、ポリアミンに含まれる窒素原子に結合した水素原子をグリシジル基で置換した構造を有するポリグリシジル化合物であり、ポリアミンのポリグリシジルアミン(A3)を構成するポリアミンは、C6~C20又はそれ以上で、かつ窒素原子に直結する活性水素を2個~10個又はそれ以上有するアミンであることが好ましく、ポリアミンのポリグリシジルアミン(A3)としては、以下の(A31)~(A33)のポリグリシジルアミン等が挙げられる。
(A31)芳香族アミンのポリグリシジルアミン
例えばN,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルジアミノジフェニルスルホン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルジアミノエチルフェニルメタン、N,N,O-トリグリシジルアミノフェノール;
(A32)脂肪族アミンのポリグリシジルアミン
例えばN,N,N’,N’-テトラグリシジルキシリレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン;
(A33)脂環含有もしくは複素環含有アミン(C6~C20又はそれ以上で、かつ窒素原子に直結する活性水素を2個~10個又はそれ以上有するもの)のポリグリシジルアミン
脂環含有アミンのポリグリシジルアミン(例えばN,N,N’,N’-テトラグリシジルキシリレンジアミンの水添物)、複素環含有アミンのポリグリシジルアミン(例えばトリスグリシジルメラミン);
【0018】
(A4)その他の多価エポキシ化合物
その他の多価エポキシ化合物は、前記(A1)~(A3)以外の多価エポキシ化合物であり、下記(A41)~(A42)の多価エポキシ化合物等が挙げられる。
(A41)脂肪族ポリ(2価~6価又はそれ以上)エポキシド
C6以上かつMn2,500以下のもの、例えばエポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油;
(A42)脂環式ポリ(2価~4価又はそれ以上)エポキシド
C6以上かつMn2,500以下のもの、例えばビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテル、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミン。
【0019】
これらの多価エポキシ化合物(A)のうち、エポキシ樹脂組成物の施工性(注入性及び充填性)の観点からは、脂肪族ジオールのジグリシジルエーテル(A13)及び脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(A14)のうち分子中のエポキシ基の個数が2~4個であるものを含有することが好ましく、(A13)及び(A14)のうち分子中のエポキシ基の個数が2~4個であるものの合計重量が、多価エポキシ化合物(A)の重量に基づいて5~20重量%であることが更に好ましい。
エポキシ樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐熱性等の観点からは、分子中にビスフェノールA型構造又はビスフェノールF型構造を有する多価エポキシ化合物を含有することが好ましく、(A11)及び(A12)のうちビスフェノールA型構造又はビスフェノールF型構造を有する多価エポキシ化合物を含有することが更に好ましく、ビスフェノールA型構造又はビスフェノールF型構造を有する多価エポキシ化合物の合計重量が多価エポキシ化合物(A)の重量に基づいて70~100重量%であることが特に好ましい。
多価エポキシ化合物(A)としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。多価エポキシ化合物(A)が2種以上の混合物である場合、上述のとおり、多価エポキシ化合物(A)が全体として5℃において液状であれば、単独では5℃において固状の化合物を含んでいてもよい。
【0020】
多価エポキシ化合物(A)のエポキシ当量(エポキシ基1個当たりの分子量)(g/eq)は、エポキシ樹脂組成物の施工性(注入性等)と、硬化性及び硬化物の機械的強度等の観点から、好ましくは120~200g/eqであり、更に好ましくは130~180g/eqであり、特に好ましくは140~180g/eqである。
なお、多価エポキシ化合物(A)のエポキシ当量(g/eq)は、JIS K 7236に準拠して測定される値とする。
【0021】
多価エポキシ化合物(A)の25℃における粘度(mPa・s)は、エポキシ樹脂組成物の施工性(注入性等)及び保管安定性等の観点から、好ましくは500~10,000mPa・sであり、更に好ましくは1,000~7,000mPa・sである。
なお、多価エポキシ化合物(A)の25℃における粘度(mPa・s)は、B型粘度計を使用して測定することができる。
【0022】
多価エポキシ化合物(A)の5℃における粘度(Pa・s)は、エポキシ樹脂組成物の施工性(注入性等)及び保管安定性等の観点から、好ましくは10~150Pa・s、更に好ましくは20~80Pa・sである。
なお、多価エポキシ化合物(A)の5℃における粘度(Pa・s)は、B型粘度計を使用して測定することができる。
【0023】
<ポリアルキレンポリアミン1モルとビスフェノールAジグリシジルエーテル0.05~0.35モルとの反応物(B)>
本発明における(B)は、ポリアルキレンポリアミン(b1)1モルとビスフェノールAジグリシジルエーテル0.05~0.35モルとの反応物である。
ポリアルキレンポリアミン(b1)1モルとビスフェノールAジグリシジルエーテル0.05~0.35モルとを反応させることで、ビスフェノールAジクリシジルエーテルの両末端に存在するエポキシ基がポリアルキレンポリアミン(b1)に含まれるアミノ基に開環付加した化合物を必須成分として含み、さらに未反応のポリアルキレンポリアミンを含む反応混合物が得られる。
すなわち、ポリアルキレンポリアミン(b1)1モルとビスフェノールAジグリシジルエーテル0.05~0.35モルとの反応物(B)は、ビスフェノールAジクリシジルエーテル1モルの両末端にポリアルキレンポリアミン(b1)が付加した化合物を必須成分として含み、さらに未反応のポリアルキレンポリアミンを含む組成物である。
反応物(B)を構成するポリアルキレンポリアミン(b1)としては、C2以上かつMn500以下のものが含まれ、具体例としてはC2~12のアルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)、及び、ポリアルキレン(C2~10)ポリ(3価~6価又はそれ以上)アミン[ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びヘキサエチレンヘプタミン等]が挙げられる。
硬化物の耐熱性の観点からは、ポリアルキレンポリアミン(b1)の活性水素当量は50g/eq以下であることが好ましく、40g/eq以下であることが更に好ましい。
なお、本発明における(b1)の活性水素当量は、(b1)が有する活性水素(N原子に直結する水素原子)1個当たりの分子量を意味する。
【0024】
上記の(b1)のうち、可使時間と硬化物の耐熱性の観点から好ましいのは、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びヘキサエチレンヘプタミンであり、特に好ましいのはペンタエチレンヘキサミンである。
すなわち、(B)がペンタエチレンヘキサミンとビスフェノールAジグリシジルエーテルとの反応物を含有することが特に好ましい。
【0025】
上記(B)におけるポリアルキレンポリアミン1モルに対してビスフェノールAジグリシジルエーテルの反応させるモル数は0.05~0.35である。0.05未満であると可使時間が短くなったり、保管安定性が悪化したりする傾向があり、0.35を超えると低温時の施工性(注入性等)が悪化する傾向がある。ポリアルキレンポリアミン1モルに対してビスフェノールAジグリシジルエーテルの反応させるモル数は、可使時間、施工性及び保管安定性を両立させる観点から、好ましくは0.05~0.30であり、更に好ましくは0.07~0.20である。
【0026】
本発明における(B)は、エポキシ樹脂組成物の常温硬化反応(以下、一段階目の硬化と呼ぶことがある)時の硬化剤としての機能に加え、高温(例えば100℃前後)に加熱された場合に、さらに硬化反応が進行して架橋密度を向上させる機能(以下、二段階目の硬化反応と呼ぶことがある)を果たすものと推定される。
従来の常温硬化性エポキシ樹脂組成物においても、常温下では完全に硬化反応が進行せず、加熱された場合に二段階目の硬化反応が起こりうるが、本願のエポキシ樹脂組成物は(B)を含有するため、二段階目の硬化反応で架橋密度が特に向上しやすく、従来の常温硬化性エポキシ樹脂組成物に比べTg(ガラス転移温度)の高い硬化物が得られるものと推定される。
このため、例えば本発明の組成物を木造建築等の土木用接着剤として使用した場合、火災等で高温加熱された際に、上記二段階目の硬化反応で効果的に架橋密度がアップすることにより、本発明の効果の1つである耐熱性(高温下でも樹脂強度及び接着強度が保持される)が得られるものと推定される。
さらに、上記(B)はポリアルキレンポリアミンとビスフェノールAグリシジルエーテルとが特定のモル比率で反応した化合物であるため、エポキシ樹脂組成物の硬化速度及び可使時間を適切な範囲とすることが可能である。
【0027】
(B)の25℃における粘度は、施工性及び保管安定性の観点から500~400000mPa・sであることが好ましく、500~200000mPa・s であることが更に好ましく、1000~40000mPa・sであることが特に好ましく、1000~10000mPa・sであることが最も好ましい。
なお、(B)の25℃における粘度(mPa・s)は、B型粘度計を使用して測定することができる。
【0028】
本発明における(B)は、ポリアルキレンポリアミン(b1)とビスフェノールAジグリシジルエーテルとを混合し、必要により加熱して反応させることにより得ることができる。加熱温度は(b1)の種類や(b1)1モルに対してビスフェノールAジグリシジルエーテルの反応させるモル数等により適宜調整すればよいが、例えば20~100℃である。
(B)を製造する際の反応の終点は、アミン価を測定することにより確認可能である。 (B)は製造後にそのまますぐ使用(他の成分と混合)してもよいし、製造後に保管したものを使用してもよい。
【0029】
<無機充填剤(D)>
本発明の二液硬化型エポキシ樹脂組成物は、ハンドリング性及び貯蔵安定性等の観点から、主剤及び硬化剤のそれぞれが前記無機充填剤(D)を含有する。
本発明における無機充填剤(D)としては、下記の(D1)~(D7)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
無機充填剤(D)を含有させることで、エポキシ樹脂組成物の硬化物の機械的強度及び耐熱性を向上させることができる。
(D1)ケイ酸塩(例えばタルク、クレー、マイカ、ガラス、石英);
(D2)酸化物[例えば酸化チタン、アルミナ、シリカ(ただし、後述の(E1)又は(E2)に該当するものを除く)];
(D3)炭酸塩(例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト);
(D4)水酸化物(例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム);
(D5)(亜)硫酸塩(例えば硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム);
(D6)ホウ酸塩(例えばホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム);
(D7)窒化物(例えば窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素)。
【0030】
これらの(D)のうち、ハンドリング性、硬化物の機械的強度と耐熱性、及び工業上の観点から、好ましいのは(D1)、(D2)、(D3)及び(D4)、更に好ましいのは(D1)、(D2)及び(D3)、特に好ましいのはシリカ及び炭酸カルシウムである。
【0031】
(D)の形状は、エポキシ樹脂組成物のハンドリング性の観点から、粉体であることが好ましい。また、(D)の体積平均粒子径はエポキシ樹脂組成物の粘度及びハンドリング性の観点から好ましくは0.1~800μm、更に好ましくは0.5~250μm、特に好ましくは0.8~100μmである。
【0032】
<ヒュームドシリカ(E1)及び(E2)>
本発明におけるヒュームドシリカとは、シラン化合物の燃焼反応もしくは火炎加水分解反応で得られる粉末状の合成非晶質シリカを意味し、乾式シリカとも呼ばれる。さらに、燃焼反応又は火炎加水分解反応で得られたシリカ粒子表面を疎水化処理したものも含む。
本発明の二液硬化型エポキシ樹脂組成物において、主剤は疎水化度が55以上75以下であるヒュームドシリカ(E1)を含有し、硬化剤は疎水化度が0以上55未満であるヒュームドシリカ(E2)を含有する。なお、本明細書中で「ヒュームドシリカ(E)」と記載した場合、「ヒュームドシリカ(E1)及びヒュームドシリカ(E2)」を意味する。
本発明におけるヒュームドシリカ(E)の疎水化度は、メタノールウェッタビリティ法(メタノール滴定法)による疎水化度を意味し、下記の方法で測定される値である。メタノールウェッタビリティ法とは、メタノールに対する濡れ性を評価するもので、疎水化度が大きいほど疎水性が高い。
【0033】
[ヒュームドシリカ(E)の疎水化度の測定方法]
内容量200mLのビーカー中に入れた蒸留水50mLに、測定対象のシリカ粒子(ヒュームドシリカ)を0.2g秤量し添加する。これをマグネティックスターラーで150rpmの速度で撹拌しながら、メタノールを先端が液体中に浸漬されているビュレットからシリカ粒子の全体が濡れるまでゆっくり滴下する。このシリカ粒子の全体を濡らすために必要なメタノールの量をVm(mL)として、下記式により疎水化度を算出する。
なお、上記「シリカ粒子の全体が濡れる」とは、シリカ粒子の全量が沈降することを意味する。
疎水化度={Vm/(Vm+50)}×100
例えば、シリカ粒子の全量が沈降した時のメタノール滴下量Vmが50mLであれば、該シリカ粒子の疎水化度は50であり、メタノールを滴下することなくシリカ粒子の全体が濡れた場合の疎水化度は0であり、シリカ粒子の疎水化度の数字が大きいほど、シリカ粒子の疎水性が高いことを意味する。
【0034】
ヒュームドシリカ(E)の疎水化度は、たとえばシリカ粒子表面の疎水化処理の有無、疎水化処理に用いる表面処理剤(後述の有機ケイ素化合物等)の種類及び表面処理剤の使用量より調整することができる。疎水化度を大きくする方法としては、疎水性の高い表面修飾基(長鎖アルキルシリル基やジメチルポリシロキサン基等)を導入できる表面処理剤を用いる、表面処理剤の使用量を増やす等の方法が挙げられる。疎水化度を小さくする方法としては、疎水性の低い表面修飾基(メタクリル基、アミノ基等の親水性官能基を含有するもの)を導入できる表面処理剤を用いる、表面処理剤の使用量を減らす等の方法が挙げられるが、疎水化処理を行わない場合に、最も疎水化度が小さくなる。
上記表面処理剤としては、有機ケイ素化合物を好適に用いることができ、代表的な有機ケイ素化合物としては、おおむね疎水化度が低い方から順に、メタクリルシラン{表面修飾基:メタクリル基}、ジメチルジクロロジラン{表面修飾基:ジメチルシリル基}、ヘキサメチルジシラザン{表面修飾基:トリメチルシリル基}、モノアルキルシラン{表面修飾基:アルキルシリル基(オクチルシリル基等)}、シリコーンオイル{表面修飾基:ジメチルポリシロキサン基}等が挙げられる。
【0035】
ヒュームドシリカ(E1)及びヒュームドシリカ(E2)は、公知の方法で製造することができ、たとえばシラン化合物を、水素ガス等の可燃性ガスと空気等の酸素含有ガスとで形成する火炎中で燃焼もしくは加水分解させて得られたシリカ(二酸化ケイ素)粒子の表面を必要により表面処理剤(有機ケイ素化合物等)で疎水化処理することにより得られる。
表面処理剤の疎水化処理の方法としては、表面改質剤を蒸発させてシリカ粒子と接触させる方法、シリカ粒子を流動させながら表面改質剤をシリカ粒子の表面にスプレー等で噴霧する方法(乾式接触法)、表面改質剤を所定の溶媒に溶解させ、シリカ粒子を、表面改質剤を溶解させた溶媒中に分散させる方法等が挙げられる。
【0036】
ヒュームドシリカ(E1)及びヒュームドシリカ(E2)としては、市販品も用いることができ、たとえば日本アエロジル株式会社製の「アエロジル(AEROSIL)(登録商標)」シリーズ、株式会社トクヤマ製の「レオロシール(登録商標)」シリーズ及び旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の「フュームドシリカ HDK(登録商標)」シリーズを好適に用いることができる。
疎水化度が55以上75以下であるヒュームドシリカ(E1)に該当する市販品としては、アルキルシランで粒子表面を疎水化処理したもの[例えばアエロジル R805(表面処理剤:アルキルシラン、疎水化度:55)]、シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン)で粒子表面を疎水化処理したもの[例えばアエロジル R202(疎水化度:70)、アエロジル RY200(疎水化度:75)、アエロジル RY200S(疎水化度:75)及びアエロジル RY300(疎水化度:75)]、及び粒子表面に表面処理剤(トリメチルシラン又はヘキサメチルジシラザン)由来のトリメチルシリル基を有するもの[例えばアエロジル R812(疎水化度:60)]等が挙げられる。
疎水化度が0以上55未満であるヒュームドシリカ(E2)に該当する市販品としては、疎水化処理していないもの[例えばアエロジル 130、アエロジル 150、アエロジル 200、アエロジル 300(以上いずれも疎水化度:0)]、ジメチルジクロロシランで粒子表面を疎水化処理したもの[例えばアエロジル R972(疎水化度:50)]、メタクリルシランで粒子表面を疎水化処理したもの[例えばアエロジル R711(疎水化度:10)及びアエロジル R7200(疎水化度:10)]等が挙げられる。
【0037】
本発明の二液硬化型エポキシ樹脂組成物の主剤が含有するヒュームドシリカ(E1)の疎水化度は55以上75以下である。疎水化度が55未満であるとチクソインデックスの調整が難しく保管安定性が悪くなる傾向があり、75を超えると工業的な観点から好ましくない。主剤が含有する(E1)の疎水化度は、好ましくは55以上70以下であり、更に好ましくは60以上70以下である。
本発明の二液硬化型エポキシ樹脂組成物の硬化剤が含有するヒュームドシリカ(E2)の疎水化度は0以上55未満である。疎水化度が55以上であると保管安定性が悪くなる傾向がある。硬化剤が含有する(E2)の疎水化度は、好ましくは0以上50以下である。
【0038】
ヒュームドシリカ(E)の比表面積(m2/g)は、エポキシ樹脂組成物への分散性の観点から好ましくは50~400m2/g、更に好ましくは100~300m2/gである。
なお、ヒュームドシリカ(E)の比表面積は、BET法により測定した値である。
【0039】
<二液硬化型エポキシ樹脂組成物>
本発明の二液硬化型エポキシ樹脂組成物は、上記多価エポキシ化合物(A)、無機充填剤(D)及び上記疎水化度が55以上75以下であるヒュームドシリカ(E1)を含有する主剤と、上記(B)、無機充填剤(D)及び疎水化度が0以上55未満であるヒュームドシリカ(E2)を含有する硬化剤とからなる二液硬化型エポキシ樹脂組成物であり、前記硬化剤中の前記(B)の含有量が前記主剤中の前記(A)100重量部に対して10~40重量部である。
(B)の含有量が(A)100重量部に対して10重量部未満であると硬化物の耐熱性が不足し、40重量部を超えると施工性が悪化する傾向がある。(A)100重量部に対する(B)の含有量は、硬化物の耐熱性及び施工性の観点から、好ましくは12~35重量部であり、更に好ましくは15~30重量部である。
【0040】
主剤における前記(D)と前記(A)との重量比率[D/A]は、貯蔵安定性等の観点から、0.1~3.0であることが好ましく、0.1~1.0が更に好ましい。
硬化剤における前記(D)の重量と前記(B)及び後述の(C)の合計重量との重量比率[D/(B+C)]は、貯蔵安定性等の観点から、0.1~3.0であることが好ましく、0.1~1.0が更に好ましい。
二液硬化型エポキシ樹脂組成物中の(D)の含有量は、ハンドリング性及び硬化物の機械的強度等の観点から、エポキシ樹脂組成物の重量に基づいて10~50重量%であることが好ましい。
【0041】
主剤における前記(E1)と前記(A)との重量比率[E1/A]は、ハンドリング性及び保管安定性等の観点から、0.01~0.05であることが好ましい。
硬化剤における前記(E2)の重量と前記(B)及び後述の(C)の合計重量との重量比率[E2/(B+C)]は、ハンドリング性及び貯蔵安定性等の観点から、0.05~0.5であることが好ましい。
二液硬化型エポキシ樹脂組成物中の(E)の含有量[(E1)と(E2)の合計重量]は、ハンドリング性及び保管安定性等の観点から、エポキシ樹脂組成物の重量に基づいて0.5~10重量%であることが好ましく、2~8重量%が更に好ましい。
【0042】
<脂肪族ポリアミン(C)>
本発明の二液硬化型エポキシ樹脂組成物における硬化剤には、更に脂肪族ポリアミン(C)を含有させることができる。脂肪族アミン(C)を含有させることで、エポキシ樹脂組成物の施工性及び可使時間を、低温下においても好ましい範囲に調整しやすくなる。
本発明における脂肪族ポリアミン(C)は、N原子に直結する活性水素を2~50個有するものであり、下記(C1)~(C11)、及びこれらの2種又はそれ以上の混合物が挙げられる。ただし、下記ポリアルキレンポリアミン(C1)は、上記(B)を構成するポリアルキレンポリアミン(b1)以外のポリアルキレンポリアミンである。
【0043】
(C1):ポリアルキレンポリアミン
炭素数2以上かつ数平均分子量(以下、Mnと記載することがある)500以下のものであって、前記の反応物(B)を構成するポリアルキレンポリアミン(b1)以外のポリアルキレンポリアミンであり、例えば炭素数2~12のアルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)、及び、ポリアルキレン(アルキレン基の炭素数2~10)ポリ(3価~6価又はそれ以上)アミン[ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びヘキサエチレンヘプタミン等];
【0044】
(C2):(C1)以外の脂肪族ポリアミン
上記(C1)のアルキル(アルキル基の炭素数1~4)又はヒドロキシアルキル(アルキル基の炭素数2~4)置換体、例えばジアルキル(アルキル基の炭素数1~3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサメチレンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミン及びN,N’-ジ-n-ブチル-1,6-ヘキサンジアミン;
【0045】
(C3)脂環含有ポリ(2~3価)アミン
炭素数4~15のもの、例えば1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン及び4,4’-メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン);
【0046】
(C4)複素環含有ポリ(2~3価)アミン
炭素数4~15のもの、例えばピペラジン、N-アミノエチルピペラジン、1,4-ジアミノエチルピペラジン及び1,4-ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジン;
【0047】
(C5)芳香環含有ポリアミン
炭素数8~15のもの、例えばキシリレンジアミン、テトラクロル-p-キシリレンジアミン及びキシリレンジアミンのスチレン付加物;
【0048】
(C6)イミダゾリン環を有するポリアミドポリアミン
分子量200以上かつMn1,000以下であり、分子内にイミダゾリン環構造を1つ以上有するもの、例えば、商品名「ポリマイド L4051(三洋化成工業(株)製)」等として市場から入手できる;
【0049】
(C7):(C6)以外のポリアミドポリアミン
分子量200以上かつMn1,000以下のもの、例えばジカルボン酸(ダイマー酸等)と過剰の[カルボキシル基1当量当り2当量以上の上記(C1)等]との縮合により得られるポリアミドポリアミン、ただし上記(C6)に該当するものを除く;
【0050】
(C8)ポリエーテルポリアミン
分子量100以上かつMn1,000以下のもの、例えばポリエーテルポリオール[上記ポリアルキレングリコール等]のシアノエチル化物の水添物;
【0051】
(C9)エポキシ付加ポリアミン
分子量100以上かつMn1,000以下のもの、例えばエポキシ化合物1モルと上記(C1)1~30モルの反応物〔エポキシ化合物[前記多価エポキシ化合物(A)及びモノエポキシド(ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等)等]1モルと上記(C1)1~30モルの反応物(分子量100以上かつMn1,000以下)等〕であって、ポリアルキレンポリアミン1モルとビスフェノールAジグリシジルエーテル0.05~0.35モルとの反応物(B)に含まれるエポキシ付加ポリアミン以外のエポキシ付加ポリアミンである。
【0052】
(C10)シアノエチル化ポリアミン
分子量100以上かつMn500以下のもの、例えばアクリロニトリルと上記(C1)の反応物(ビスシアノエチルジエチレントリアミン等);
【0053】
(C11)その他のポリアミン
ヒドラジン化合物(分子量32以上かつMn500以下のもの、例えばヒドラジン、モノアルキルヒドラジン)、ジヒドラジッド化合物[分子量74以上かつMn1,000以下のもの、例えば酸(コハク酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等)ジヒドラジッド]及びグアニジン化合物(分子量59以上かつMn500以下のもの、例えばブチルグアニジン、1-シアノグアニジン)等。
【0054】
脂肪族ポリアミン(C)は、接着性(常温及び高温条件下での接着性)及び硬化物の耐熱性の観点からは、更にイミダゾリン環を有するポリアミドポリアミン(C6)を含有することが好ましく、(C6)の含有量が脂肪族ポリアミン(C)の重量に基づいて5~75重量%であることが特に好ましい。
【0055】
脂肪族ポリアミン(C)の数平均分子量は、ハンドリング性の観点からは100~1500であることが好ましく、100~800であることが更に好ましく、100~500であることが特に好ましい。
なお、本発明における脂肪族ポリアミン(C)の数平均分子量は、(C)が単一の化合物である場合は、化学式から計算した分子量である。(C)が2種以上の混合物である場合は、各化合物の化学式から計算した分子量と各化合物の分子数の比(モル比)との積を足し合わせて求めた値である。
【0056】
脂肪族ポリアミン(C)の活性水素当量は、可使時間及び硬化物の耐熱性の観点から30~200g/eqであることが好ましく、40~180g/eqであることが更に好ましい。
なお、本発明における(C)の活性水素当量は、(C)が有する活性水素(N原子に直結する水素原子)1個当たりの分子量を意味する。
また、硬化剤中に含まれるアミンの活性水素当量は、硬化物の耐熱性の観点から60g/eq以下であることが好ましく、50g/eq以下であることが更に好ましい。
なお、硬化剤中に含まれるアミンの活性水素当量とは、硬化剤中に含まれる(B)及び(C)の活性水素当量を、各成分の含有量(重量部)で加重平均した値である。
【0057】
本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化剤が脂肪族ポリアミン(C)を含有する場合、硬化剤における(B)及び(C)の含有量は、硬化剤の重量に基づいて、それぞれ下記であることが好ましい。
(B)の含有量は、耐熱性の観点から、好ましくは20~80重量%、更に好ましくは20~70重量%、特に好ましくは30~60重量%である。
(C)の含有量は、低温時の施工性及び可使時間の観点から、好ましくは5~30重量%、更に好ましくは5~20重量%である。
【0058】
本発明のエポキシ樹脂組成物中の(A)、(B)及び(C)の含有量は、(A)、(B)及び(C)の合計重量に基づいて、それぞれ下記であることが好ましい。
(A)の含有量は、エポキシ樹脂組成物の施工性及び硬化物の耐熱性等の観点から、好ましくは40~70重量%、更に好ましくは45~68重量%、特に好ましくは50~65重量%である。
(B)は、エポキシ樹脂組成物の耐熱性及び施工性等の観点から、好ましくは5~40重量%、更に好ましくは7~35重量%、特に好ましくは11~30重量%である。
(C)は、エポキシ樹脂組成物の施工性及び硬化物の耐熱性等の観点から、好ましくは1~10重量%、更に好ましくは2~10重量%、特に好ましくは3~10重量%である。
【0059】
主剤中の(A)のエポキシ基と、硬化剤中の(B)及び(C)の活性水素((B)及び(C)が有するN原子に直結する活性水素)とのモル比[活性水素/エポキシ基]は、硬化物の物性(機械的強度)等の観点から、好ましくは0.5~2.0、更に好ましくは0.8~1.5、特に好ましくは1.0~1.2である。
【0060】
<単官能エポキシド(F)>
本発明のエポキシ樹脂組成物には、更に分子中に1個のエポキシ基を有する単官能エポキシド(F)を含有させることができる。(F)を含有させることで、エポキシ樹脂組成物の粘度及び可使時間の調整がしやすくなることがある。(F)としては、分子中に1個のエポキシ基を有する化合物である限り特に限定されないが、アルキルモノグリシジルエーテル(ブチルグリシジルエーテル及び2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等)、アリルグリシジルエーテル、グリセロールモノグリシジルエーテル、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル及びグリシジルメタクリレート、及びこれらの2種又はそれ以上の混合物が挙げられる。
【0061】
単官能エポキシド(F)の使用量は、エポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性の観点から、前記(A)、(B)及び(C)の合計重量に基づいて3重量%以下であることが好ましい。
【0062】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、更に必要に応じて(1)硬化促進剤(3級アミノ化合物、前記(B)及び(C)以外のアルカリ化合物、ルイス塩基化合物及びフェノール基含有化合物等)、(2)接着性付与剤(チタンカップリング剤等)、(3)酸化防止剤(ヒンダードアミン類、ハイドロキノン類、ヒンダードフェノール類、硫黄含有化合物等)、(4)紫外線吸収剤(ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、サリチル酸エステル類、金属錯塩類等)、(5)可塑剤(フタル酸エステル、リン酸エステル、脂肪酸エステル、エポキシ化大豆油、ひまし油、流動パラフィンアルキル多環芳香族炭化水素等)、(6)ワックス類(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、重合ワックス、蜜ロウ、鯨ロウ、低分子量ポリオレフィン等)、(7)非反応性希釈剤(ベンジルアルコール、タール、ピチューメン等)、(8)反応性希釈剤(低分子脂肪族グリシジルエーテル、芳香族モノグリシジルエーテル等)、(9)有機充填剤[アラミド繊維粉、ナイロン繊維粉、アクリル繊維粉、アクリル樹脂粉、フェノール樹脂粉等]、(10)脱臭剤[活性炭、ゼオライト等]、(11)顔料又は染料[カーボンブラック、鉛丹、パラレッド、紺青等]、(12)チクソ化剤[ベントナイト、水添ヒマシ油ワックス、ステアリン酸カルシウム等]、(13)溶剤(酢酸エチル、トルエン、アルコール、エーテル、ケトン等)、(14)発泡剤、(15)消泡剤、(16)帯電防止剤、(17)抗菌剤、(18)防かび剤、(19)粘度調整剤、(20)香料、(21)難燃剤等の添加剤(G)を含有させることができる。
【0063】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、下記の方法で製造及び使用される。
2液[(A)、(D)及び(E1)を含有してなる主剤と、(B)、(D)及び(E2)を含有してなる硬化剤]の形態で別々に製造しておき、使用時に混合してエポキシ樹脂組成物とする。必要により含有させる(C)は、あらかじめ硬化剤に混合することが好ましい。必要により含有させる(F)及び(G)は、組成物の硬化性及び施工性等の観点から、あらかじめ主剤及び/又は硬化剤に混合することが好ましい。
本発明における(A)、(B)、(D)、(E)、及び必要により含有させる(C)、(F)、(G)の混合方法としては、特に限定されないが、例えば万能混合機等の混合機を使用する方法及びミキサーを使用する方法が挙げられる。
【0064】
本発明のエポキシ樹脂組成物の25℃における初期粘度(Pa・s)は、施工性(注入性及び充填性等)の観点から、好ましくは100Pa・s以下であり、更に好ましくは20~70Pa・sである。
また、5℃における初期粘度(Pa・s)は、好ましくは200Pa・s以下であり、更に好ましくは70~180Pa・sである。
なお、エポキシ樹脂組成物の初期粘度とは、主剤と硬化剤とを所定温度に温調後、主剤と硬化剤を所定の配合比で配合して2分間混合後、B型粘度計にセットして数分後(例えば混合開始から6分後)に恒温槽で所定温度に温調しながら測定した粘度を意味するものとする。
【0065】
上記初期粘度の測定は、例えば下記の条件で行うことができる。
装置:BH型粘度計[型番「TVB-22H」、東機産業(株)製]回転数:20rpmスピンドルNo:7号
【0066】
本発明のエポキシ樹脂組成物の主剤のチクソインデックスは、保管安定性等の観点から5~8であることが好ましい。また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化剤のチクソインデックスは、保管安定性等の観点から4~8であることが好ましい。
本発明におけるチクソインデックスは、25℃においてB型粘度計を用いて回転数2rpmで測定した粘度(mPa・s)を、25℃においてB型粘度計を用いて回転数20rpmで測定した粘度(mPa・s)で除した値[回転数2rpmで測定した粘度(mPa・s)/回転数20rpmで測定した粘度(mPa・s)]である。
主剤のチクソインデックスは、ヒュームドシリカ(E1)の疎水化度を大きくする方法、及びヒュームドシリカ(E1)の添加量を増やす方法等で大きくなる傾向にある。
なお、エポキシ樹脂組成物のチクソインデックスは、上記ヒュームドシリカ(E)の疎水化度及び添加量の調整や、必要により用いる脂肪族ポリアミン(C)の種類の選定により上記範囲に調整することができるが、ヒュームドシリカ(E)のシラノール基と相互作用しうる官能基を有する脂肪族ポリアミン(C)を用いた場合などでは、逆の傾向がみられることがある。
【0067】
<二液硬化型エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物>
本発明の硬化物は、上記エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。上記(A)、(D)及び(E1)を含有してなる主剤と、上記(B)、(D)及び(E2)を含有してなる硬化剤を、上記のように混合、必要により養生して硬化反応を進行させることにより得られる。土木建築用接着剤として使用する場合、現場で温調なしで施工されるため、硬化温度は特に限定されないが、好ましくは5~40℃であり、更に好ましくは15~30℃である。
5~40℃におけるエポキシ樹脂組成物の硬化時間は、好ましくは100~340時間、更に好ましくは120~240時間である。
なお、硬化時間とは、所定温度下で養生した際に、樹脂強度(25℃における圧縮強度)が実使用上必要な強度(例えば土木建築用接着剤として用いる場合、60MPa以上)に到達する時間を意味するものとする。25℃における圧縮強度は、JIS K 7181に準じて測定できる。
【0068】
本発明のエポキシ樹脂組成物を25℃で5日間硬化させてなる硬化物(上記一段階目の硬化反応の硬化物)のTg(ガラス転移温度)であるTg1は、機械的強度等の観点から、40~80℃であることが好ましく、更に好ましくは70~80℃である。
また、上記硬化物を更に高温加熱(100℃で180分間)することにより硬化させてなる硬化物(上記二段階目の硬化反応の硬化物;以下、完全硬化物と呼ぶことがある)のTgであるTg2と、上記Tg1との比(Tg2/Tg1)は、耐熱性の観点から、1.2~4.0であることが好ましく、1.5~4.0であることが更に好ましく、2.0~4.0であることが特に好ましい。
(Tg2/Tg1)比は、主にTg2を調整することにより上記範囲に調整することができ、具体的には多価エポキシ化合物(A)のエポキシ当量を小さくする、(C)の活性水素当量を小さくする、多価エポキシ化合物(A)及び(C)中の芳香環構造や水素結合を形成する構造の含有量を増やす、等の方法により、Tg2を大きくすることができる。
なお、本発明におけるTgとは、動的粘弾性の温度依存性測定を後述の条件で行った際に、損失正接(tanδ=損失弾性率/貯蔵弾性率)が最大になる温度を意味する。
【0069】
本発明のエポキシ樹脂組成物を上記の硬化温度(25℃)で5日硬化させてなる硬化物(上記一段階目の硬化反応の硬化物)の25℃における圧縮強度であるP1は、機械的強度等の観点から、60~120MPaであることが好ましく、更に好ましくは70~120MPaである。
また、用途に応じて設定される耐熱性試験の温度(Th)における硬化物の圧縮強度であるP2と、上記P1とから下記式で求められる硬化物の高温下での強度保持率(%)は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることが更に好ましい。
硬化物の高温下での強度保持率(%)=(P2/P1)×100
なお、上記耐熱性試験の温度(Th)は、土木建築用途に使用される場合、建造物の構造や使用される箇所に応じて定められた耐熱性あるいは耐火性の基準により設定される。例えば木造建築に使用される場合、木材は含水しているため、火災時の温度上昇は比較的穏やかで木材内部の到達温度は100℃前後であるため、Thはたとえば100℃である。
硬化物の高温下での強度保持率は、Tg2とTg1の比(Tg2/Tg1)が上記好ましい範囲になり、かつ上記Tg2を耐熱性試験の温度(Th)以上になるよう設計すること等により高めることができる。Tg2及び(Tg2/Tg1)比は、上記の方法により調整することができる。
なお、本発明における硬化物の圧縮強度は、JIS K 7181に準じ後述の方法で測定することができる。
【0070】
本発明の二液硬化型エポキシ樹脂組成物は、低温下でも十分な可使時間と良好な施工性(注入性及び充填性等)とを有し、かつ保管安定性や硬化物の耐熱性にも優れることから、接着剤、樹脂充填剤、成形品等の種々の用途に用いることができ、特に土木建築用接着剤及び土木建築用樹脂充填剤として好適に使用できる。更に、硬化物の耐熱性が高い(高温下での強度保持率が高く、かつエポキシ樹脂組成物で接合した部材間の接着強度が高温下でも維持される)ことから、耐熱性及び耐火性のニーズのある木造建築におけるGIR工法用接着剤として特に有用である。GIR(グルードインロッド)工法とは、木材に穴を開け、開けた穴に鋼棒等の接合具を挿入し、空隙部に樹脂接着剤を注入・充填後、硬化させることにより木材同士を接合する工法である。
【0071】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、GIR工法以外の土木建築用の接着剤及び樹脂充填剤(コンクリート構造物や鋼構造物等の構造物の補修・補強工事や、ひび割れ注入、あと施工アンカー用接着剤等)としても使用することができ特にあと施工アンカー用接着剤として有用である。
「あと施工アンカー」とは、土木、建築、機械分野等で、既に製造されたコンクリート製の構造物(以下、母材という)に対し、後から、アンカーボルトや差筋等のアンカー部材を埋設する施工方法であり、本発明のエポキシ樹脂組成物は、金属製のアンカー部材を母材に埋設する際に、母材とアンカー部材との接着剤として使用することができる。具体的には、アンカー部材を母材に穿った孔の内部に装入し、更に孔の内部に本発明のエポキシ樹脂組成物を流し込むことにより、孔壁部とアンカー部材を強固に接着することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、上述のように耐熱性及び耐火性に優れた硬化物を与えるので、火災等で高温となった場合にも樹脂強度及び接合した部材間の接着強度を維持できる。
【0072】
本明細書には以下の事項が開示されている。
【0073】
本開示(1)は、5℃において液状である多価エポキシ化合物(A)、無機充填剤(D)及び疎水化度が55以上75以下であるヒュームドシリカ(E1)を含有する主剤と、ポリアルキレンポリアミン1モルとビスフェノールAジグリシジルエーテル0.05~0.35モルとの反応物(B)、無機充填剤(D)及び疎水化度が0以上55未満であるヒュームドシリカ(E2)を含有する硬化剤とからなる二液硬化型エポキシ樹脂組成物であり、前記硬化剤中の前記(B)の含有量が前記主剤中の前記(A)100重量部に対して10~40重量部である二液硬化型エポキシ樹脂組成物である。
【0074】
本開示(2)は、前記(B)の25℃における粘度が500~400000mPa・sである、本開示(1)に記載の二液硬化型エポキシ樹脂組成物である。
【0075】
本開示(3)は、前記(B)がペンタエチレンヘキサミンとビスフェノールAジグリシジルエーテルとの反応物を含有する、本開示(1)又は本開示(2)に記載の二液硬化型エポキシ樹脂組成物である。
【0076】
本開示(4)は、前記硬化剤が更に脂肪族ポリアミン(C)を含有し、前記(C)の数平均分子量が100~1500であり、かつ前記(C)の活性水素当量が30~200g/eqである、本開示(1)~(3)のいずれかとの任意の組み合わせの二液硬化型エポキシ樹脂組成物である。
【0077】
本開示(5)は、土木建築用接着剤である、本開示(1)~(4)のいずれかとの任意の組み合わせの二液硬化型エポキシ樹脂組成物である。
【0078】
本開示(6)は、本開示(1)~(5)のいずれかに記載の二液硬化型エポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物である。
【実施例0079】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
<製造例1:(B-1)の製造>
室温条件でペンタエチレンヘキサミン(b1-1)454g(1.96mmol)に対して、ビスフェノールAグリシジルエーテル37.8g(0.10mmol)を加えた後、撹拌機を用いて5分撹拌した。その後、反応温度を40℃に昇温し1時間反応させることにより、ペンタエチレンヘキサミンとビスフェノールAジグリシジルエーテルとの反応物(ペンタエチレンヘキサミン1モルに対してビスフェノールAジグリシジルエーテルの反応させるモル数0.05)である(B-1)を得た。BH型粘度計[型番「TVB-22H」、東機産業(株)製]を用いて、回転数50rpm、スピンドルNo:5号の条件で測定した25℃における(B-1)の粘度は500mPa・sであった。
【0081】
<製造例2~7:(B-2)~(B-7)の製造>
表1に記載の原料(g:グラム)を用いる以外は製造例1と同様にして、(B-2)~(B-7)を得た。得られた各(B)におけるポリアルキレンポリアミン(b1)1モルに対してビスフェノールAジグリシジルエーテルの反応させるモル数と、25℃における粘度(mPa・s)を表1に示す。なお、各(B)の粘度は、製造例1と同じ粘度計を用い、必要により粘度に合わせてスピンドルNo及び回転数を変更して測定した。
【0082】
<比較製造例1:(比B-1)の製造>
ペンタエチレンヘキサミン(b1-1)の重量を60.0g(0.26mmol)に変更し、ビスフェノールAグリシジルエーテルの重量を37.8g(0.1mmol)に変更する以外は製造例1と同様にして、ペンタエチレンヘキサミンとビスフェノールAジグリシジルエーテルとの反応物(ペンタエチレンヘキサミン1モルに対してビスフェノールAジグリシジルエーテルの反応させるモル数0.39モル)である比較の化合物(比B-1)を得た。BH型粘度計[型番「TVB-22H」、東機産業(株)製]を用いて、回転数2rpm、スピンドルNo:7号の条件で測定した25℃における(比B-1)の粘度は840000mPa・sであった。
【0083】
【0084】
表1中の各略号は以下の通りである。
<ポリアルキレンポリアミン(b1)>
b1-1:ペンタエチレンヘキサミン
[商品名「ペンタエチレンヘキサミン」、東ソー(株)製、活性水素当量29g/eq、N原子に直結する活性水素数8個]
b1-2:ジエチレントリアミン
[商品名「ジエチレントリアミン」、東ソー(株)製、活性水素当量21g/eq、N原子に直結する活性水素数5個]
b1-3:エチレンジアミン
[商品名「エチレンジアミン」、東ソー(株)製、活性水素当量15g/eq、N原子に直結する活性水素数4個]
【0085】
<実施例1:二液硬化型エポキシ樹脂組成物(X-1)の製造>
万能混合機[商品名「万能混合機 5DMV-01-r」、ダルトン(株)製]を用いて、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(A-2)72.0重量部、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(A-3)3.0重量部、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(A-4)3.0重量部、炭酸カルシウム(D-1)20.0重量部及びアエロジル RY200S(E1-2)2.0重量部を減圧下で脱泡しながら混合(温度25℃、撹拌時間60分間、圧力4kPa)し、主剤を得た。また、(B-1)15.6重量部、炭酸カルシウム(D-1)15.8重量部及びアエロジル 972(E2-2)4.0重量部を減圧下で脱泡しながら混合(温度25℃、撹拌時間60分間、圧力4kPa)し、硬化剤を得た。得られた各主剤と各硬化剤を、遠心脱泡機[商品名「あわとり練太郎 ARV930TWIN」、シンキー(株)製]を用いて混合(温度25℃、撹拌時間3分間、回転数1400rpm)し、エポキシ樹脂組成物(X-1)を得た。
【0086】
<実施例2~19:二液硬化型エポキシ樹脂組成物(X-2)~(X-19)の製造>
それぞれの実施例について表2に記載の原料(重量部)を用いる以外は実施例1と同様にして、各主剤と各硬化剤を得た。次に、得られた各主剤と各硬化剤を、遠心脱泡機[商品名「あわとり練太郎 ARV930TWIN」、シンキー(株)製]を用いて混合(温度25℃、撹拌時間3分間、回転数1400rpm)し、エポキシ樹脂組成物(X-2)~(X-19)を得た。
【0087】
【0088】
<比較例1~8:比較のエポキシ樹脂組成物(比X-1)~(比X-8)の製造>
それぞれの比較例について表3に記載の原料(重量部)を用いる以外は実施例1と同様にして、各主剤と各硬化剤を得た。次に、得られた各主剤と各硬化剤を、遠心脱泡機[商品名「あわとり練太郎 ARV930TWIN」、シンキー(株)製]を用いて混合(温度25℃、撹拌時間3分間、回転数1400rpm)し、エポキシ樹脂組成物(比X-1)~(比X-8)を得た。
【0089】
【0090】
表2及び表3中の各略号は以下の通りである。
<多価エポキシ化合物(A)>
A-1:ビスフェノールAジグリシジルエーテル
[商品名「エポミックR140」、三井化学ファイン(株)製、エポキシ当量190g/eq]
A-2:ビスフェノールFジグリシジルエーテル
[商品名「jER807」、三菱ケミカル(株)製、エポキシ当量175g/eq]
A-3:ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル
[商品名:「デナコール Ex-211」、ナガセケムテックス(株)製、エポキシ当量138g/eq]
A-4:トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル
[商品名:「デナコール Ex-321」、ナガセケムテックス(株)製、エポキシ当量140g/eq、分子中のエポキシ基の個数2であるものと3であるものの混合物]
【0091】
<(B)及び比(B)>
B-1:製造例1で得たもの
B-2:製造例2で得たもの
B-3:製造例3で得たもの
B-4:製造例4で得たもの
B-5:製造例5で得たもの
B-6:製造例6で得たもの
B-7:製造例7で得たもの
比B-1:比較製造例1で得たもの
比B-2:ペンタエチレンヘキサミン[商品名「ペンタエチレンヘキサミン」、東ソー(株)製、粘度(25℃)143mPa・s、活性水素当量29g/eq]
【0092】
<脂肪族ポリアミン(C)>
C-1:イミダゾリン環を有するポリアミドポリアミン
[商品名「ポリマイドL4051」、三洋化成工業(株)製、活性水素当量103g/eq、N原子に直結する活性水素数6個、数平均分子量470]
C-2:キシリレンジアミンのスチレン付加物
[商品名「ガスカミンST 240」、三菱ガス化学(株)製、活性水素当量103g/eq、N原子に直結する活性水素数2~3個、数平均分子量258]
C-3:キシリレンジアミン
[商品名「アンカミン2422」、エアープロダクツジャパン(株)製、活性水素当量34g/eq、N原子に直結する活性水素数4個、数平均分子量136]
C-4:1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン
[商品名「1,3-BAC」、三菱ガス化学(株)製、活性水素当量36g/eq、N原子に直結する活性水素数4個、数平均分子量142]
C-5:イミダゾリン環を有さないポリアミドポリアミン
[商品名「ポリマイドL-15-3」、三洋化成工業(株)製、活性水素当量170g/eq、N原子に直結する活性水素数8~14個、数平均分子量1412]
【0093】
<無機充填剤(D)>
D-1:炭酸カルシウム
[商品名「ソフトン1200」、白石カルシウム(株)製、体積平均粒子径1.8μm]
<疎水化度が50~70であるヒュームドシリカ(E1)>
E1-1:アエロジル 805
[商品名「AEROSIL 805」、日本アエロジル(株)製、疎水化度55、比表面積200m2/g]
E1-2:アエロジル RY200S
[商品名「AEROSIL RY200S」、日本アエロジル(株)製、疎水化度70、比表面積130m2/g]
<疎水化度が0~50であるヒュームドシリカ(E2)>
E2-1:アエロジル 200
[商品名「AEROSIL 200」、日本アエロジル(株)製、疎水化度0、比表面積200m2/g]
E2-2:アエロジル R972
[商品名「AEROSIL R972」、日本アエロジル(株)製、疎水化度50、比表面積130m2/g]
【0094】
実施例及び比較例で得た各樹脂組成物について下記の試験方法で性能評価を行った。なお、(1)、(2)の初期粘度及び(3)可使時間については、上記で得られた各主剤と各硬化剤とを、下記の方法で混合して測定した。(4)チクソインデックス及び(5)保管安定性(耐分離性)については、上記で得られた各主剤と各硬化剤とを混合する前に、それぞれ下記方法で測定した。測定及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0095】
<試験方法>
(1)初期粘度(5℃)[単位:Pa・s]
主剤と硬化剤とを5℃に温調後、それぞれの実施例及び比較例について表2又は表3に示した配合比率で合計120gとなるように配合し、2分間混合した。得られた混合物(エポキシ樹脂組成物)の粘度を5℃の恒温槽で温調しながらBH型粘度計[型番「TVB-22H」、東機産業(株)製]を用いて下記条件で測定開始し、主剤と硬化剤の混合開始から6分後の粘度(Pa・s)を測定した。
<測定条件>
温度:5℃
回転数:20rpm
スピンドルNo:7号
なお、木造建築におけるGIR工法用接着剤として使用する場合、5℃における初期粘度(Pa・s)は、200Pa・s以下である必要があり、70~180Pa・sであることが好ましい。
【0096】
・ 初期粘度(25℃)[単位:Pa・s]
温調温度を25℃に変更する以外は上記(1)と同様にして、25℃における初期粘度(Pa・s)を測定した。なお、木造建築におけるGIR工法用接着剤として使用する場合、25℃における初期粘度(Pa・s)は、100Pa・s以下である必要があり、20~70Pa・sであることが好ましい。
【0097】
・ 可使時間(ポットライフ)[単位:分]
上記(2)の初期粘度(25℃)の測定後、引き続き25℃の恒温槽で温調しながらBH型粘度計[型番「TVB-22H」、東機産業(株)製]で粘度を測定し、初期粘度測定開始時(主剤と硬化剤の混合開始から6分後)から粘度が200(Pa・s)に到達するまでの時間を可使時間(分)とした。なお、木造建築におけるGIR工法用接着剤として使用する場合、可使時間は施工性の観点から15分以上である必要があり、15~190分であることが好ましく、20~80分であることが更に好ましい。
【0098】
・ チクソインデックス(25℃)
混合前の各主剤及び各硬化剤について、25℃の恒温槽で温調しながらBH型粘度計[型番「TVB-22H」、東機産業(株)製]を用いて下記条件Aで粘度を測定し、「回転数2rpmで測定した粘度(mPa・s)」とした。次に、下記条件Bで粘度を測定し、「「回転数20rpmで測定した粘度(mPa・s)」とした。
下記式により、各主剤及び各硬化剤のチクソインデックス(25℃)を求めた。
チクソインデックス(25℃)=[回転数2rpmで測定した粘度(mPa・s)/回転数20rpmで測定した粘度(mPa・s)]
<測定条件A>温度:25℃ 回転数:2rpmスピンドルNo:7号
<測定条件B>温度:25℃ 回転数:20rpmスピンドルNo:7号
本発明のエポキシ樹脂組成物の主剤のチクソインデックスは、保管安定性等の観点から5~8であることが好ましい。また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化剤のチクソインデックスは、保管安定性等の観点から4~8であることが好ましい。
【0099】
(5)保管安定性(耐分離性)
混合前の各主剤及び各硬化剤について、25℃に温調後、各50gを遠沈管に入れ、遠心分離機[卓上遠心機「H-36」、株式会社コクサン製]を使用し、回転数2000rpm、時間30分の条件で遠心分離を行った。外観を30分ごとに目視観察し、各主剤及び各硬化剤における無機充填剤(D)の沈降の有無を確認した。(D)の沈降が生じるまでの時間(分)を、下記評価基準に基づき判定した結果を表2及び表3に示す。
なお、回転数2000rpm、時間30分の条件で遠心分離を行う本試験は、通常保管条件(25℃、静置)で2か月間保管した場合の分離性を再現した促進試験である。
<評価基準>
◎:180分以上
〇:120分以上、180分未満
△:60分以上、120分未満
×:60分未満
【0100】
(6)Tg1:25℃で5日間硬化させてなる硬化物(一段階目の硬化反応の硬化物)のTg[単位:℃]
混練したエポキシ樹脂組成物を厚さ約10mmの板状に成形し、25℃で5日間養生する。養生後、厚さ約10mm×幅約10mm×長さ約3mmの直方体の試験片を切り出し、動的粘弾性装置(Rheogel-E4000、株式会社ユービーエム製)を使用し、基本周波数1Hz、昇温速度:5℃/分の条件で、貯蔵弾性率E’及び損失弾性率E”を測定し、E”/E’(tanδ)が最大値を示す温度をTg1とした。
【0101】
(7)Tg2:高温(100℃)加熱後の硬化物(完全硬化物)のTg[単位:℃]
混錬したエポキシ樹脂組成物を厚さ約10mmの板状に成形し25℃で5日間養生した後、更に100℃の恒温槽中で60分間加熱した。25℃で3時間放冷した後、厚さ約10mm×幅約10mm×長さ約3mmの直方体の試験片を切り出し、動的粘弾性装置(Rheogel-E4000、株式会社ユービーエム製)を使用し、基本周波数1Hz、昇温速度:5℃/分の条件で、貯蔵弾性率E’及び損失弾性率E”を測定し、E”/E’(tanδ)が最大値を示す温度をTg2とした。
【0102】
(8)P1:25℃で5日間硬化させてなる硬化物(一段階目の硬化反応の硬化物)の25℃における圧縮強度(圧縮降伏強さ)、[単位:MPa]
混練したエポキシ樹脂組成物を厚さ約10mmの板状に成形し、25℃で5日間養生して硬化させた。厚さ約10mm×幅約10mm×長さ約30mmの直方体の試験片を切り出し、試験速度を2mm/minに変更する以外はJIS K7181に準じ、万能材料試験機[AG-50kNXplus、株式会社島津製作所製]を用いて25℃の恒温槽内で温調しながら測定した。
【0103】
(9)P2:耐熱性試験温度(試験温度100℃)における硬化物の圧縮強度(圧縮降伏強さ)、[単位:MPa]
混練したエポキシ樹脂組成物を厚さ約10mmの板状に成形し、25℃で5日間養生して硬化させた。厚さ約10mm×幅約10mm×長さ約15mmの直方体の試験片を切り出し、温度100℃に設定した恒温槽内で1時間静置した後、恒温槽内で100℃に温調しながら、試験速度を2mm/minに変更する以外はJIS K7181に準じ、万能材料試験機[AG-50kNXplus、株式会社島津製作所製]を用いて測定した。
【0104】
(10)硬化物の高温下での強度保持率
各実施例について、上記で測定したP1及びP2から下記式により硬化物の高温下での強度保持率(%)を算出した。
硬化物の高温下での強度保持率(%)=(P2/P1)×100
【0105】
(11)鋼板どうしの接着強度(重ね合せせん断接着強さ)(25℃)[単位:MPa] JIS G3141に規定された厚さ約1.6mm×幅約25mm×長さ約100mmの冷間圧延鋼板をアセトンで洗浄し、重ね長さが12.5mm、接着層の厚さが0.2mmとなるように、2枚の冷間圧延鋼板を混練した各エポキシ樹脂組成物で接着することにより試験片を得た(硬化条件:25℃で5日間養生)。養生後、10mm/minの試験速度でJIS K6850に準じて25℃における接着強度(重ね合せせん断接着強さ)を万能材料試験機[AG-50kNXplus、株式会社島津製作所製]を用いて測定した。5回試験した結果の平均値を、下記評価基準に基づき判定した結果を表2及び表3に示す。
<評価基準>
◎:10MPa以上
〇:5MPa以上、10MPa未満
×:5MPa未満
【0106】
(12)鋼板どうしの接着強度(重ね合せせん断接着強さ)(100℃)[単位:MPa]
JIS G3141に規定された厚さ約1.6mm×幅約25mm×長さ約100mmの冷間圧延鋼板をアセトンで洗浄し、重ね長さが12.5mm、接着層の厚さが0.2mmとなるように、2枚の冷間圧延鋼板を混練した各エポキシ樹脂組成物で接着することにより試験片を得た(硬化条件:25℃で5日間養生)。試験片を温度Th(100℃)に設定した恒温槽内で1時間静置した後、恒温槽内で温度Th(100℃)に温調しながら、10mm/minの試験速度でJIS K6850に準じて25℃における接着強度(重ね合せせん断接着強さ)を万能材料試験機[AG-50kNXplus、株式会社島津製作所製]を用いて測定した。5回試験した結果の平均値を、下記評価基準に基づき判定した結果を表2及び表3に示す。
<評価基準>
◎:15MPa以上
〇:10MPa以上、15MPa未満
△:5MPa以上、10MPa未満
×:5MPa未満
【0107】
表2の結果から、実施例1~19のエポキシ樹脂組成物は、低温下でも必要な可使時間を満たすことから施工性が良好であり、さらに保管安定性及び硬化物の耐熱性にも優れることがわかる。
一方、表3の結果から、(B)を含有しない比較例1及び3のエポキシ樹脂組成物は可使時間が短く施工性が悪く、硬化剤の保管安定性も悪かった。比較例3のエポキシ樹脂組成物は更に硬化物の耐熱性(高温下での強度保持率及び接着強度)も不足していた。(B)の代わりに、ポリアルキレンポリアミン1モルに対してビスフェノールAジグリシジルエーテルの反応させるモル数が請求項1に規定の範囲の上限外である比較の化合物(比B-1)を含有する比較例2のエポキシ樹脂組成物は、初期粘度が高すぎて施工性が悪かった。主剤中の(A)に対する硬化剤中の(B)の重量比[(B)/(A)]が請求項1に規定の範囲の下限外である比較例4と、上限外である比較5のエポキシ樹脂組成物は、硬化物の耐熱性(高温下での強度保持率及び接着強度)が不足していた。ヒュームドシリカ(E1)及び/又は(E2)の疎水化度が請求項1に規定の範囲外である比較例6~8は、主剤及び/又は硬化剤の保管安定性が悪かった。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、低温下でも十分な可使時間と良好な施工性(注入性及び充填性等)とを有し、かつ保管安定性に優れ、耐熱性に優れる硬化物を与えることができるので、接着剤、樹脂充填剤、成形品等の種々の用途に用いることができ、特に土木建築用接着剤及び土木建築用樹脂充填剤として好適に使用できる。とりわけ、GIR工法用接着剤及びあと施工アンカー用接着剤として有用である。