(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132985
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】外科鉗子用受座
(51)【国際特許分類】
A61B 17/28 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A61B17/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024038621
(22)【出願日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】18/121,863
(32)【優先日】2023-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】524096255
【氏名又は名称】バイタリテック・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】カリー・バーチュ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG03
4C160GG05
4C160GG06
4C160MM32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡略な製造工程により短時間と省力化で従来の受座と同等以上の性能を発揮する外科鉗子用受座の製造方法を提供する。
【解決手段】外科用鉗子の受座は、基底42、支持体46及び接触片48を有する組立受座41を備え、受座の細長い基底は、鉗子の顎に係合する下面を有し、接触片48は、生体組織に接触する梨地部50を有し、支持体46は、基底42の上面と接触片48とを接続して、基底の上面上に接触片を可撓性支持する。組立受座41を包囲するモールド成形部は、モールド成形部から梨地部を露出して支持体46と接触片48の一部を包囲する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基底、支持体及び接触片を有する組立受座を備え、
組立受座の基底は、鉗子の顎が係合する構造を形成する下面を有する細長に形成され、
組立受座の接触片は、生体組織に接触する梨地部を有し、
組立受座の支持体は、基底の上面に接続される接触片を可撓性支持することを特徴とする外科鉗子用受座。
【請求項2】
組立受座の支持体は、基底の上面と接触片の下面とを接続する長さ方向に一連の支柱を備える請求項1に記載の外科鉗子用受座。
【請求項3】
組立受座の接触片は、把持形状を有する接触面を形成する長さ方向に一連の幅広部と、隣接する複数の幅広部間に配置される幅狭連結部とを備える細長構造を有する請求項2に記載の外科鉗子用受座。
【請求項4】
複数の支柱は、組立受座の基底の上面と連結部の下面とを接続し、基底に対して垂直方向可撓性を有する複数の幅広部の各々は、隣接する複数の支柱間に配置される請求項3に記載の外科鉗子用受座。
【請求項5】
少なくとも支持体及び接触片の一部を包囲するモールド成形部を備え、
モールド成形部は、長さ方向に一連の窓を有し、
接触片は、モールド成形部に形成される窓から露出する長さ方向に一連の梨地部を有する請求項1に記載の外科鉗子用受座。
【請求項6】
少なくとも支持体と接触片の一部とを包囲するモールド成形部を備え、
モールド成形部は、接触61片の複数の幅広部に整合する長さ方向に一連の窓を有する請求項4に記載の外科鉗子用受座。
【請求項7】
モールド成形部は、支持体に設けられる横孔を埋設して基底に接続される請求項6に記載の外科鉗子用受座。
【請求項8】
モールド成形部は、ショアAゴム弾性値20~65間の弾性材料を含む請求項6に記載の外科鉗子用受座。
【請求項9】
モールド成形部は、シリコーン材料を含む請求項8に記載の外科鉗子用受座。
【請求項10】
間隙で分離されて基底に長さ方向に形成される一連の係止片は、鉗子の顎に係合する請求項1に記載の外科鉗子用受座。
【請求項11】
基底の下部先端に配置される端掛材は、鉗子の顎に係合する請求項10に記載の外科鉗子用受座。
【請求項12】
端掛材は、係止片よりも長く形成されかつ平坦先端を有し、
平坦先端から顎装着溝に嵌合される端掛材は、顎装着溝の所定位置に移動される請求項11に記載の外科鉗子用受座。
【請求項13】
基底、支持体及び接触片は、単一の一体部品を構成する請求項1に記載の外科鉗子用受座。
【請求項14】
基底、支持体及び接触片は、同一材料を有する請求項1に記載の外科鉗子用受座。
【請求項15】
細長い基底と、
細長い基底に沿って配置される複数の接触片と、
細長い基底と複数の接触片の離間する両縁部との間に配置される支持体とを備え,
支持体は、細長い基底の上方に接触片を可撓性支持することを特徴とする外科鉗子用受座。
【請求項16】
細長い基底は、長手方向の軸を有し、
長手方向軸に沿って配置される複数の接触片は、複数の連結部により互いに連結され、
支持体の長さ方向に設けられる一連の支柱は、細長い基底の上面と複数の連結部とを接続する請求項15に記載の外科鉗子用受座。
【請求項17】
複数の連結部は、接触片よりも幅狭に形成される請求項16に記載の外科鉗子用受座。
【請求項18】
鉗子の顎に係合する下面を有する細長構造の基底と、生体組織に接触する梨地部を有する接触片と、基底の上面と接触片とを接続すると共に基底の上面上に接触片を可撓性支持する支持体とを備える組立受座を形成する工程と、
梨地部を外部に露出して少なくとも支持体及び接触片の一部を包囲するモールド成形部を形成する工程と、
を含むことを特徴とする外科鉗子用受座の製法。
【請求項19】
梨地部を外部に露出する長さ方向に一連の窓を備えるモールド成形部を形成する工程を含む請求項18に記載の外科鉗子用受座の製法。
【請求項20】
接触片の長さ方向に沿う一連の梨地部を形成する工程と、
モールド成形部の長さ方向に沿って配置されかつ一連の梨地部と整合する一連の窓を形成する工程とを含む請求項19に記載の外科鉗子用受座の製法。
【請求項21】
接触片と基底との間に組立受座の空隙を形成する工程と、
空隙を充填するモールド成形部を形成する工程とを含む請求項19に記載の外科鉗子用受座の製法。
【請求項22】
組立受座を射出成形した後、モールド成形部を射出成形する工程を含む請求項19に記載の外科鉗子用受座の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療外科に使用される生体組織を把持する鉗子(クランプ、箝搾子)、特に、外科鉗子用受座及び受座の製法に関連する。
【背景技術】
【0002】
生体組織を把持する異なる把持形状(例えば、湾曲顎、直形顎等)で異なる寸法の多数の外科用鉗子が従来提案されている。また、異なる特有の鉗子機能に適合して、異なる多種類の顎面が鉗子に設けられる。使用者は、異なる鉗子を使用し又は交換可能な受座(インサート、パッド)を顎(挟持部、ジョー)に装着して、異なる鉗子機能を実行することもある。
【0003】
多くの既存の外科用鉗子は、生体組織に接触する硬質の把持面を形成する顎を備える。顎の把持面に柔軟性を付与して顎を覆い又は他の異なる機能を付与する受座が設けられる従来の鉗子の受座は、嵩張り、鉗子と顎の動作平滑性が低減する場合が多い。また、略直形に形成されて直線状の顎部のみに密着して通常設計される受座は、湾曲状又はS字状等他の形状に適合する受座が必要である。
【0004】
他の既存の外科用鉗子は、円滑で湾曲状の交換可能な受座を備えても、円滑な受座自体は、非柔軟性で多くの用途に適合しない難点がある。
【0005】
更に、既存の他の外科用鉗子の柔軟性の有る受座は、交換不能な難点がある。交換不能の受座は、洗浄が困難である。柔軟性の又は精巧な受座を圧力釜で滅菌すると、急速に劣化又は摩耗して、受座表面の柔軟性又は精巧性が棄損することが多い。別法として、受座表面の柔軟性又は精巧性を低減し又は犠牲にすれば、受座を長寿命化できる。
【0006】
交換可能で柔軟性のある受座を備える外科用鉗子(例えば、特許文献1)も提案されているが、他の懸念事項もある。例えば、鉗子に一旦装着した受座は、次の装着時に、滑落し又は脱落する可能性がある。鉗子からの受座の滑落可能性を低減すると、受座の装着に要する作業工程が増大する難点がある。装着部の鉗子取付部を可撓性材料、即ち弾性変形可能な材料で形成できない問題もある。
【0007】
最後に、顎に密着せずに交換可能な受座を備える既存の外科用鉗子も提案されている。既存の鉗子の受座は、血管又は生体組織を把持した後に、不都合にも横に変位することがある。横に変位する受座は、傾斜し又は回転して不安定な保持状態となり、鉗子で把持する血管又は生体組織が切断され又は破断する危険がある。多くの前記問題に対する解決法は、本特許出願人が譲渡を受けたフォーガティら名義の特許文献2及び関連特許に開示される。
【0008】
また、本特許出願人が譲渡を受けた特許文献3も、上記問題の対処に特に有効な交換可能な受座を開示する。特許文献3は、非常に良好に機能する受座を開示する。特許文献3の受座は、過剰な締付力を必要としない面状留具(マイクロフック)を使用して血管を確実に把持するので、血管を閉塞した状態で鉗子を所定の位置に保持できる。この既存の受座は、1回の初期成形工程と2回の埋設工程との計3回工程で成形された後、組み立てられる。初期成形工程では、まず、受座の基底が成形される。次に、強硬度の弾性材が基底上にモールド成形される。基底から容易に剥離しない程度に強固に付着する弾性材をモールド成形する必要がある。次に、血管に密着する軟性弾性材のカバーは、1回目のモールド成形部上に被覆される。最後に、購入した面状留具の型抜き片が受座に接着される。従って、面状留具を適切な寸法と形状に切断し、下塗りし、接着し、モールド成形部の窪み内に正確に配置する必要がある。以下に説明する最終的な受座を
図2に示す。
【特許文献1】米国特許第3,503,398号公報
【特許文献2】米国特許第6,228,104号公報
【特許文献3】米国特許第10,368,887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の受座の製造工程は、残念ながら非常に高価で時間を要するから、受座の構造と製法には、更に改善が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の受座の製法では、減少数部品から簡略な製造工程により短時間と省力化で従来の受座と同等以上の性能を発揮する受座を製造でき、鉗子受座は、簡素化構造を有ししかも所望の機能を発揮する利点がある。
【0011】
非限定的な本発明の一実施の形態では、本発明の外科鉗子の受座は、基底、支持体及び接触片で構成される組立受座であり、受座の基底は、鉗子の顎に係合する下面を構成する細長に形成され、受座の接触片は、生体組織に接触する梨地部を有し、受座の支持体は、基底の上面と接触片とを接続して基底の上面上に接触片を可撓性支持、即ち弾性変形可能に支持する。
【0012】
本発明の非限定的な実施の形態では、受座の支持体は、基底の上面と接触片の下面とを接続する長さ方向に一連の支柱である。
【0013】
本発明の他の非限定的な実施の形態では、受座の接触片は、把持形状を有しかつ長さ方向に一連の幅広部と、隣接する幅広部間に配置される幅狭連結部とを備える細長構造体である。
【0014】
本発明の別の非限定的な実施の形態では、受座の基底の上面と複数の連結部の下面は、複数の支柱により接続され、受座の接触片の各幅広部は、基底に対して垂直方向の可撓性又は弾力性を有するが、隣接する複数の支柱を接続する。また、受座は、少なくとも支持体と接触片の一部とを包囲又は被覆するモールド成形部を備え、接触片の幅広部に整合する長さ方向に一連の窓がモールド成形部に設けられる。モールド成形は、射出成型機の金型内に支持体と接触片とを固定して、金型内に溶融樹脂を充填して、支持体と接触片とを溶融樹脂内に埋設し一体化しながら成形品を成形する方法である。
【0015】
本発明の別の非限定的な実施の形態では、受座は、少なくとも支持体と接触片の一部を包囲するモールド成形部を備え、モールド成形部は、長さ方向に一連の窓を有し、接触片は、長さ方向に一連の窓を通じてモールド成形部から露出する長さ方向に一連の梨地部を有する。
【0016】
本発明の更に別の非限定的な実施の形態では、支持体は、横孔を有し、モールド成形部は、横孔内に溶融樹脂が充填されて基底に係合する。
【0017】
本発明の他の非限定的な実施の形態では、モールド成形部は、ゴム高度(ショア)A形ゴム弾性値20~65の弾性材料により形成される。
【0018】
本発明の更に別の非限定的な実施の形態では、モールド成形部は、シリコーン材料で形成される。
【0019】
本発明の別の非限定的な実施の形態では、間隙で分離される長さ方向に一連の係止片が基底に設けられ、受座は、基底の一連の係止片により鉗子の顎に係合され取り付けられる。
【0020】
本発明の更に別の非限定的実施の形態では、受座の基底の下部に形成される係止片により、鉗子の顎に受座が係合されて、受座が顎に取り付けられる。
【0021】
本発明の他の非限定的な一実施の形態では、受座の基底は、係止片よりも長くかつ平坦先端を有する端掛材を備え、端掛材の平坦先端を顎装着溝に挿入して、端掛材を顎装着溝の所定位置に嵌合する。
【0022】
本発明の更に別の非限定的実施の形態では、基底、支持体及び接触片は、単一の一体部品である。
【0023】
本発明の別の非限定的実施の形態では、基底、支持体及び接触片は、同一材料により形成される。
【0024】
本発明の別の非限定的な実施の形態では、外科鉗子用受座は、細長い基底、細長い基底に沿って配置される複数の接触片及び支持体を備え、支持体は、離間する複数の接触片の縁部と細長い基底とを接続しかつ細長い基底の上方で接触片を可撓性支持、即ち弾性変形可能に支持する。
【0025】
非限定的な一実施の形態では、細長い基底の長手方向軸に沿って基底に配置される複数の接触片は、複数の連結部により互いに連結され、支持体は、細長い基底の上面と複数の連結部とを接続する長さ方向に一連の支柱を備える。
【0026】
本発明の別の非限定的実施の形態では、複数の連結部は、接触片よりも幅狭に形成される。
【0027】
本発明の更なる非限定的な実施の形態では、外科用鉗子の受座の製法は、鉗子の顎に係合する下面を有する細長構造の基底と、生体組織に接触する梨地部を有する接触片と、基底の上面と接触片とを接続して基底の上面上に接触片を可撓性支持する支持体とを有する組立受座を形成する工程と、梨地部を露出して少なくとも支持体と接触片の一部を包囲するモールド成形部を形成する工程とを含む。
【0028】
本発明の非限定的な実施の形態では、モールド成形部を形成する工程は、梨地部を露出する長さ方向に一連の窓を有するモールド成形部を形成する工程を含む。
【0029】
本発明の他の非限定的な実施の形態では、接触片は、接触片の長さ方向に沿って形成される長さ方向に一連の梨地部を備え、モールド成形部の長さ方向に沿って配置される一連の窓は、一連の梨地部に整合する。
【0030】
本発明の更に別の非限定的な実施の形態では、組立受座は、接触片と基底との間に空隙を有し、モールド成形部を形成する工程は、溶融樹脂が空隙内に浸入してモールド成形部が形成される工程を含む。
【0031】
本発明の別の非限定的実施の形態では、組立受座を形成する工程とモールド成形部を形成する工程は、組立受座を射出成形した後、モールド成形部を射出成形する工程を含む。
【0032】
本明細書に特に明示がなくても、非排他的な種々の組合せにより、本発明の前記特徴と構成要素との組み合わせは可能であろう。前記特徴と構成要素のみならず、それらの作用は、下記の説明及び添付図面の表示から明らかとなろう。下記説明と図面は、単なる説明に過ぎず、本発明を限定する意図がない表示である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の非限定的実施の形態を下記添付図面について、以下詳細に説明する。
【0034】
【
図1】受座(インサート又はパッド)を装着した外科用鉗子の斜視図
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【
図4A】鉗子の顎の長手方向に延伸して顎の少なくとも一部に形成される装着溝を示す断面図
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【
図10】受座の接触片を有する把持構造体の別の実施の形態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、受座(装着片、枕)16を装着した顎(挟持部、ジョー)12,14を有する外科用鉗子(クランプ、箝搾子)10の一例を示す。
図1は、血管Vを把持する止血状態の鉗子10を示す。鉗子10を使用して、臓器を含む他の身体組織の把持又は締結も可能である。
【0046】
鉗子10を操作する指環(指ハンドル)20と親指環(親指ハンドル)18が鉗子10に設けられる。鉗子10の指環20 と親指環18の一方に設けられる爪22を、他方に設けられる歯列(ラチェット)24の選択された歯に係止すると、鉗子10が身体組織を把持状態に保持して血管Vの止血が可能である。鉗子10を構成する一対の腕26,28は、ピン30により互いに回転可能に軸着される。各腕26,28に一体に形成される顎12,14が血管Vに加える把持(緊締)力は、柔軟性のある受座16で緩和される。
【0047】
顎12,14の長手方向の少なくとも一部に、複数の装着溝15(
図4Aに詳細を示す)が形成され、装着溝15に取り付けられる柔軟性のある受座16により、顎12,14が発生する把持力が、緩和される。例えば、顎12,14の先端部から約33mm、66mm又は86mmに、複数の装着溝15の間隔を設定できる。受座16は、顎12,14の装着溝(空洞)15に挿入される係止片(係止体)(詳細を後述し図示する)を有し、係止片を装着溝に篏合して、外科施術に使用する所定位置に受座16を確実に保持できると共に、使用済の受座16を顎12,14から取り外して受座16を廃棄し、鉗子10の機能を変更しかつ/又は鉗子10を滅菌できる。
【0048】
図2は、基体又は基底34と、基底34を確実に把持する硬質材の第1のモールド成形部(
図2では不可視)と、受座32で把持される生体組織に合致する形状の柔軟性材料の第2のモールド成形部36と、第2のモールド成形部36に固着される面状留具(マイクロフック)の層又は薄膜38とを備える従来の受座32を示す。複数のモールド成形部を形成する工程に加えて、面状留具素材は、シート状で通常購入された後、所望の形状に型抜きされ又は手作業で切断された後、第2のモールド成形部36に接着される。具体的には、(1)基底成形工程、(2)第1のモールド成形部追加工程、(3)第2のモールド成形部追加工程、(4)面状留具の適切な寸法への切断工程、(5)下塗り剤塗布工程、(6)接着剤塗布工程、(7)第2のモールド成形部への面状留具の接着工程を含む少なくとも6工程が、
図2の構造の製造に必要となる。
【0049】
本発明では、受座40(
図3)は、製造効率と製造費用を大幅に改善する2段階工程で製造される2部品で構成される。射出成型機の金型内に基底(42)を固定して、金型内に溶融樹脂を充填して、基底(42)の支柱(61)を埋設し一体化しながらモールド成形部(52)が成形される。受座40の構成部品を基底(42)と一体化すると、従来の受座32と比較して、使用中の受座40の性能及び信頼性が同等であり又は改善される。
図3及び
図4に示すように、受座40は、2つの部品の一方を形成する組立受座41(
図4)を備え、鉗子10の顎12,14に係合する係合列44を組立受座41の下部に沿って形成される細長い基体又は基底42を有する。また、組立受座41は、支持体46(
図4)と、生体組織に接触する梨地部50を有する接触片48とを備える。支持体(ウェブ)46は、基底42と接触片48とを接続する。
【0050】
図3に示すように、組立受座41の上部と、例えば、支持体46及び接触片48の一部とを包囲する受座40の第2の構成要素は、モールド成形部52であり、モールド成形部52は、使用時に生体組織に接触する梨地部50の周囲に適切な表面を形成する。
【0051】
モールド成形部52は、鉗子10と生体組織との接触に適する異なる種々の材料、例えば、弾性材料により形成される。本発明の一非限定的な実施の形態では、モールド成形部52は、ゴム高度計A形によるゴム弾性値(ショアA)20~65の弾性材料、例えば、シリコーン素材で形成される。
【0052】
モールド成形部52を省略した組立受座41を
図4に示して、組立受座41の特徴を明瞭に説明すると共に、顎12,14の断面を
図4Aに示す。
図4Aは、鉗子10の代表的な顎12,14の断面構造、即ち顎12,14の少なくとも一部を長手方向に貫通する装着溝15を示す。受座40に設けられる複数の係止片54で構成される係合列44は、装着溝15に係合されて、受座40を所定位置に保持する。
図4Aは、係合列44を係合する装着溝15を簡略した断面図であり、係止片54の係合列44を装着する装着溝15に、実際の顎12,14の形状及び構造と相違しかつ/又は別の特徴を追加してもよい。
【0053】
図4に示す実施の形態の複数の係止片54で構成される係合列44は、例えば、基底42の長手方向軸Aに沿って略円筒形に形成され(
図5及び
図6も同様)、基底42から下方に突出する長さ方向に一連の係止片54を備える。図示の実施の形態の係止片54は、複数の間隙56により互いに分離されかつ軸Aに沿って配列される長さ方向に一連の複数の円筒片である。複数の間隙56により、係止片54及び受座40に柔軟性が付与され、複数の係止片54を装着溝15に装着して、鉗子10の顎12,14に受座40が装着される。また、異なる用途に対応する特定の把持面(梨地部50)を形成する横方向及び/又は縦方向に湾曲する顎12,14を一部の鉗子10に設けるとき、非直線的な顎12,14に取り付けられる受座40には、間隙56により柔軟性が付与される。
【0054】
係止片54を装着溝15内に挿入し、装着溝15に沿って係止片54を使用位置に移動する形状の係止片54と装着溝15を選択すると、装着溝15内に係止片54が確実に保持される。この点で、係止片54よりも(軸Aに沿う)長い端掛材57が組立受座41の一方の端部55に設けられる。端掛材57は、組立受座41の一方の端部55に平坦面59を有する。他の係止片54よりも端掛材57を延長して形成できる。取付時に装着溝15に挿入される最終部となる端掛材57の余長部は、装着溝15に挿入するときに顕著な弾力(スナップ作用による篏合)を生じて、鉗子10の顎12,14に受座40を完全に装着するスナップ作用を確認できるので、有用である。更に、平坦面59は、装着溝15の平坦端壁(図示せず)に当接し、装着溝15内の受座40の軸方向滑動を阻止して、装着溝15の所定位置に受座40が保持される。
【0055】
図4~
図6に示す受座40の組立受座41の基底42は、軸Aに沿う細長形状に形成され、軸Aから外側に延伸する基底42の横幅は、鉗子10の顎12,14の横幅全体に延伸する。
図4~
図6に示す基底42の上面に形成される支持体46は、緩衝孔(横孔)58(
図5)を介して互いに離間する長さ方向に一連の支柱61(
図7)を備える。基底42の上面から上方に延伸する複数の支柱61は、生体組織に接触する接触片48を支持する。図示の実施の形態では、軸Aに沿って間隔をあけて配置される複数の接触片48は、幅狭の連結部60で接続される複数の梨地部50を備える。基底42から連結部60に達する支柱61は、軸方向に配置される各梨地部50の各縁部を基底42の垂直上方に支持する。支柱61の支持構造は、緩衝孔58上に各梨地部50を配置し、基底42に対して梨地部50を垂直方向に離間させて、一対の受座16間に把持される生体組織の表面形状に梨地部50を適合させる。基底42に対する梨地部50の垂直離間状態を
図7の矢印Xで示す。緩衝孔58は、モールド成形部52の溶融材料の流動性を改善するため、製造時にも有利に作用する。
【0056】
図5及び
図6に示す組立受座41の基底42は、基底42の側縁に形成される複数の凹凸壁62を備える。複数の凹凸壁62は、軸Aの横方向(側方)に撓む可撓性を基底42に付与すると共に、非直線状の顎12,14への受座40の装着を容易にする機能がある。凹凸壁62を凹凸と指称しても、図示の特定された矩形構造に形成する必要はなく、湾曲形状又は他の形状でもよい。 軸方向に間隔をあけて基底42の一部に複数の幅狭部(切欠部)を形成し、横方向(側方)柔軟性を基底42に付与することが凹凸壁62の主目的である。
【0057】
生体組織に接触する
図4~
図7に示す接触片48の複数の梨地部50間の各連結部60にも幅狭部を形成して、接触片48と共に、組立受座41にも横方向(側方)柔軟性を付与できる。
【0058】
生体組織に接触する接触片48に形成される複数の把持構造体64を有する梨地部50を
図5及び
図6に示す。把持構造体64は、適宜な幅を有する複数の先細(テーパ)突起を備え、例えば、図示の角度90度に形成される複数の先細突起が配置され、一対の接触片48の把持構造体64間に生体組織を良好に把持できる。鉗子10に取り付ける受座40の用途に応じて、複数の把持構造体64の高さと密度を適宜選択できるが、把持構造体64の高さは、通常0.127~1.016mm(0.005~0.040インチ)である。複数の把持構造体64の形状は、図示とは異なる形状でもよく、非限定的な一例では、円柱状で、他例では、機械的強度を向上する十字又は+形状断面の突起である。十字又は+形状の把持構造体64を
図10に示し、以下詳述する。1回の射出成形工程で形成される組立受座41が好ましく、接触片48は、梨地部50で生体組織と接触するので、基底42と支持体46との両方に機械的安定性を与えかつ生体組織との接触に適する材料を組立受座41の製造に選択すべきである。組立受座41の製造に好適な材料は、ポリプロピレン、ポリエステル又は他のポリオレフィン系樹脂材を含むが、これらに限定されない。
【0059】
図5と
図6は、受座40の両端の斜視図を示す。
図5は、面取りされ又は湾曲する四角形の形状を有する受座40の背面部又は最後の挿入部を示す。多くの鉗子10の受座40の背面部は、顎12,14の先端部又は先頭部に対応する。
図6は、顎12,14の装着溝15に受座40を適切に装着する専門家又は外科医に挿入方向を示す矢印又は他の方向表示となる受座40の前面又は初期挿入部を示す。
【0060】
上記の通り、モールド成形部52は、組立受座41の上部を埋設し被覆する。モールド成形部52の射出成形により、モールド成形部52の材料が組立受座41の上部を埋設するので、モールド成形部52は、組立受座41の上部と完全に一体化し、受座40に機械的安定性を与えて、受座40の装着時又は使用時に受座40の分離又は離脱を防止できる。
図8と
図9は、
図3の受座40の夫々8-8線と9-9線に沿う断面図である。緩衝孔58の断面斜視図を示す
図8は、モールド成形部52の溶融材料が緩衝孔58を通じて支持体46と支柱61の周囲に流動して、梨地部50の側縁の周囲を包囲し又は埋設するモールド成形部52を示す。モールド成形部52の溶融材料は、複数の凹凸壁62も埋設する。モールド成形部52と、モールド成形部52の基礎となる支持体46、基底42及び接触片48との一体埋設構造により、組立受座41の所定位置にモールド成形部52を確実に保持できる。
図8に示すモールド成形部52の溶融材料は、緩衝孔58を通り横方向(側方)に流動して硬化する。
図9に示す支柱61は、基底42から接触片48の連結部60までモールド成形部52に埋設される。
【0061】
前記のように、複数の把持構造体64を異なる形状に形成してもよい。例えば、
図5と
図6に示す複数の把持構造体64は、非交差小隙間を形成する角度略90度で立ち上がる複数対の上方平坦突起である。 複数対の上方平坦突起では、互いに対向して配置され、
図5及び
図6では、角度略90度に立ち上がる一対の上方平坦突起と、角度略90度に配置される別の一対の上方平坦突起とが互いに対向して配置される。
図10は、十形又は+形断面の把持構造体65として形成される把持構造体の他の実施の形態を示す。図示の+形断面の把持構造体65は、+形断面を形成する4側方に延伸する腕部72を有する中央構造体である。他数の腕部を所望で形成しても勿論よい。例えば、成形工程で許容できる複雑な形状であれば、所望量の柔軟性及び把持強度に応じて、3腕部又は5以上の腕部を把持構造体に形成してもよい。また、把持構造体64,65で形成される梨地部50の周囲に隆起壁70を形成してもよく、
図10に示す隆起壁70に沿って突出する2腕部72と、梨地部50の内側に突出する1腕部72とを有する3腕部72のみを備える部分的な+形断面の把持構造体65を隆起壁70に沿って形成してもよい。更に、
図10に示す隆起壁70から内側に突出する腕部72を、隆起壁70に沿って突出する2腕部72とは異なる長さに形成してもよい。図示の実施の形態では、隆起壁70の軸方向外壁74上に整列して把持構造体65から延伸する腕部72は、隆起壁70の横方向外壁76から延伸する腕部72よりも短くてもよい。
【0062】
モールド成形部52は、少なくとも基底42の幅と同一の幅、好ましくは基底42の幅より大きい幅を有し、鉗子10の使用時に生体組織に接触する梨地部50を除く受座40の全部分をモールド成形部52で被覆してもよい。前記のように、複数の梨地部50に整合する位置に
図3に示す複数の窓又は開口部66をモールド成形部52に形成し、複数の梨地部50とモールド成形部52の上面68とが受座40の実際の接触片としてもよい。モールド成形部52の複数の窓又は開口部66を一直線上に並置せず、異なる寸法に形成してもよい。更に、モールド成形部52の窓又は開口部66から梨地部50が露出する構造を設けなくてもよい。例えば、モールド成形部52の上面68に複数の網目状突起等の梨地部を形成してもよい。また、窓又は開口部66は、個々に完全に封鎖される開口でなくてもよく、
図2の従来の受座32の構造及び構成と同様に、連結部60の長さ方向に沿って連結する窓又は開口部66を形成してもよい。
【0063】
上記の通り、組立受座41を形成し、その後、組立受座41上にモールド成形部52を形成する2工程により、受座40を製造できる。本発明の製造法は、
図2の従来の受座32の製造法から複数の埋設工程を削減し、面状留具の切断分離工程及び接着工程を完全に排除できる。
【0064】
前記のように、1回の射出成形工程で組立受座41を製造するので、基底42、係合列44、支持体46及び梨地部50を有する接触片48を1回の工程で製造できる。その後、通常は射出成形工程によりモールド成形部52を被覆する第2の工程で、本明細書に開示する受座40を形成できる。
【0065】
前記説明は、特殊な処理工程と工程順を示し、記載しかつ請求項に記載するが、特に表示しない限り、如何なる順序でも、分離しても又は組み合わせても、前記処置工程を実施して、本発明の作用効果を得ることができる。
【0066】
前記説明は、例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。種々の非限定的実施の形態を本明細書に記載するが、本明細書に開示する技術の修正例と変更例は、添付の特許請求の範囲に包含されることは当業者に理解されよう。従って、本明細書に記載がなくても、添付の特許請求の範囲に該当する開示内容を実施できる。従って、特許請求の範囲は、開示する特定の実施例の詳細な事項により限定されず、請求項は、発明の充分かつ合理的な範囲を限定するものである。
【外国語明細書】