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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024132997
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】誘導発電機を用いた発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/30 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H02P9/30 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039183
(22)【出願日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2023040345
(32)【優先日】2023-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】西濱 和雄
(72)【発明者】
【氏名】松尾 興祐
(72)【発明者】
【氏名】金子 悟
(72)【発明者】
【氏名】池上 ▲徳▼磨
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡彦
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠司
(72)【発明者】
【氏名】石田 俊彦
【テーマコード(参考)】
5H590
【Fターム(参考)】
5H590CA09
5H590CA23
5H590CC10
5H590CC24
5H590CD01
5H590CD03
5H590CE05
5H590DD42
5H590EA13
5H590FC12
5H590FC22
5H590FC23
5H590FC26
5H590HA07
(57)【要約】
【課題】2巻線かご形誘導発電機の励磁や漏れ磁束の発生に必要な無効電力を供給するコンバータの容量を小さくすることが可能な発電システムを提供する。
【解決手段】主巻線2131および補助巻線2132を含む一次巻線213と二次導体223とを有する誘導発電機2と、主巻線2131に接続され、主巻線2131に生じた交流電力を直流電力に変換するダイオードブリッジ3と、補助巻線2132に接続され、誘導発電機2を励磁するとともに、補助巻線2132に生じた交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ7とを備えた発電システム508において、誘導発電機2の一次巻線213に接続され、誘導発電機2に無効電力を供給するコンデンサ11を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主巻線および補助巻線を含む一次巻線と二次導体とを有する誘導発電機と、
前記主巻線に接続され、前記主巻線に生じた交流電力を直流電力に変換する整流器と、
前記補助巻線に接続され、前記誘導発電機を励磁するとともに、前記補助巻線に生じた交流電圧を直流電圧に変換するコンバータとを備えた発電システムにおいて、
前記誘導発電機の一次巻線に接続され、前記誘導発電機に無効電力を供給するコンデンサを備える
ことを特徴とする発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の発電システムにおいて、
前記コンデンサは、前記主巻線に前記整流器と並列に接続されている
ことを特徴とする発電システム。
【請求項3】
請求項1に記載の発電システムにおいて、
前記コンデンサは、前記補助巻線に前記コンバータと並列に接続されている
ことを特徴とする発電システム。
【請求項4】
請求項3に記載の発電システムにおいて、
前記補助巻線のうち前記誘導発電機と前記コンデンサとを接続する部分に直列に配置されたリアクトルを備える
ことを特徴とする発電システム。
【請求項5】
請求項3に記載の発電システムにおいて、
前記補助巻線のうち前記コンバータと前記コンデンサとを接続する部分に直列に配置されたリアクトルを備える
ことを特徴とする発電システム。
【請求項6】
請求項1に記載の発電システムと、
走行モータと、
補機モータと、
前記整流器から出力される直流電力を交流電力に変換して前記走行モータに供給する走行インバータと、
前記コンバータから出力される直流電力を交流電力に変換して前記補機モータに供給する補機インバータとを備える
ことを特徴とする電気駆動式ダンプトラック。
【請求項7】
請求項6に記載の電気駆動式ダンプトラックにおいて、
前記主巻線の電圧と出力が定格で周波数が最大となるトラクション定格運転時、前記主巻線の電圧と周波数が最大で無負荷運転となるトラクション無負荷運転時、前記主巻線の電圧と周波数が最小となるアイドリング運転時、および前記走行モータが回生動作を行うリタード運転時のうち、前記トラクション定格運転時の前記補助巻線の電流が最大になるように、前記コンデンサの静電容量が選定されている
ことを特徴とする電気駆動式ダンプトラック。
【請求項8】
請求項7に記載の電気駆動式ダンプトラックにおいて、
前記トラクション定格運転時の前記補助巻線の電流と、前記トラクション無負荷運転時の前記補助巻線の電流とが等しくなるように、前記コンデンサの静電容量が選定されている
ことを特徴とする電気駆動式ダンプトラック。
【請求項9】
請求項6に記載の電気駆動式ダンプトラックにおいて、
前記主巻線の電圧と出力が定格で周波数が最大となるトラクション定格運転時、前記主巻線の電圧と周波数が最大で無負荷運転となるトラクション無負荷運転時、前記主巻線の電圧と周波数が最小となるアイドリング運転時、および前記走行モータが回生動作を行うリタード運転時のうち、前記アイドリング運転時または前記リタード運転時の前記補助巻線の電流が最大になるように、前記コンデンサの静電容量が選定されている
ことを特徴とする電気駆動式ダンプトラック。
【請求項10】
請求項9に記載の電気駆動式ダンプトラックにおいて、
前記アイドリング運転時の前記補助巻線の電流と、前記トラクション無負荷運転時の前記補助巻線の電流とが等しくなるように、前記コンデンサの静電容量が選定されている
ことを特徴とする電気駆動式ダンプトラック。
【請求項11】
請求項2に記載の発電システムにおいて、
前記主巻線のうち前記誘導発電機と前記コンデンサとを接続する部分に直列に配置されたリアクトルを備える
ことを特徴とする発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主巻線および補助巻線を含む一次巻線と二次導体とを有する2巻線かご形誘導発電機を用いた発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
主巻線および補助巻線を含む一次巻線と二次導体とを有する2巻線かご形誘導発電機を用いた発電システムが知られている。当該発電システムは、電気駆動式車両の駆動システム(ドライブシステム)などに適用される。このようなドライブシステムを開示する先行技術文献として、例えば特許文献1がある。
【0003】
特許文献1には、主巻線と補助巻線とを含む一次巻線を有する誘導発電機(2巻線かご形誘導発電機)と、走行用モータに電力を供給する走行用インバータと、補機用モータに電力を供給する補機用インバータと、前記主巻線に交流側端子が接続され、前記走行用インバータに直流側端子が接続された整流器(ダイオードブリッジ)と、前記補助巻線に交流側端子が接続され、前記補機用インバータに直流側端子が接続された発電用コンバータとを備えたドライブシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7082700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2巻線かご形誘導発電機を用いた発電システムでは、主巻線または補助巻線をコンバータで励磁する必要がある。コンバータはダイオードブリッジよりも高価であるため、特許文献1のように、主巻線よりも出力(有効電力)が一桁ほど小さい補助巻線にコンバータが接続され、主巻線にダイオードブリッジが接続される。しかしながら、励磁や漏れ磁束の発生に必要な電力(無効電力)は、2巻線かご形誘導発電機の全体の出力で決まるため、補助巻線側の出力(有効電力)に対して大きな無効電力をコンバータから供給する必要がある。そのため、コンバータの容量が大きくなるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、2巻線かご形誘導発電機の励磁や漏れ磁束の発生に必要な無効電力を供給するコンバータの容量を小さくすることが可能な発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、主巻線および補助巻線を含む一次巻線と二次導体とを有する誘導発電機と、前記主巻線に接続され、前記主巻線に生じた交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記補助巻線に接続され、前記誘導発電機を励磁するとともに、前記補助巻線に生じた交流電圧を直流電圧に変換するコンバータとを備えた発電システムにおいて、前記誘導発電機の一次巻線に接続され、前記誘導発電機に無効電力を供給するコンデンサを備えるものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、2巻線かご形誘導発電機の励磁や漏れ磁束の発生に必要な無効電力をコンデンサから供給することができるため、コンバータの容量を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施例に係る発電システムが搭載された電気駆動式ダンプトラックの外観を模式的に示す側面図
図2】本発明の第1の実施例に係る電気駆動式ダンプトラックに搭載された駆動システムの構成図
図3】2巻線かご形誘導発電機の構造を示す側面図および断面図
図4】電気駆動式ダンプトラックの各運転モードにおける2巻線かご形誘導発電機の補助巻線電圧と発電周波数との関係を示す図
図5】本発明の第1の実施例に係る発電システム内の有効電力と無効電力の流れを示す図
図6】本発明の第1の実施例に係る2巻線かご形誘導発電機に要求される仕様を示す図
図7】本発明の第1の実施例に係る電気駆動式ダンプトラックの各運転モードにおける補助巻線電流とコンデンサ静電容量との関係を示す図
図8】本発明の第1の実施例に係るコンデンサの静電容量とトラクション定格運転時における発電機容量とコンデンサ静電容量との関係を示す図
図9】本発明の第2の実施例に係る2巻線かご形誘導発電機に要求される仕様を示す図
図10】本発明の第2の実施例に係る電気駆動式ダンプトラックの各運転モードにおける補助巻線電流とコンデンサ静電容量との関係を示す図
図11】本発明の第2の実施例の変形例に係る電気駆動式ダンプトラックの各運転モードにおける補助巻線電流とコンデンサ静電容量との関係を示す図
図12】本発明の第3の実施例に係る電気駆動式ダンプトラックに搭載された駆動システムの構成図
図13】本発明の第4の実施例に係る電気駆動式ダンプトラックに搭載された駆動システムの構成図
図14】本発明の第5の実施例に係る電気駆動式ダンプトラックに搭載された駆動システムの構成図
図15】本発明の第6の実施例に係る電気駆動式ダンプトラックに搭載された駆動システムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図中、同等の要素には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例0011】
本発明の第1の実施例に係る発電システムとして、電気駆動式ダンプトラックに搭載された発電システムを例に説明する。なお、本発明に係る発電システムは、他の電気駆動式車両(例えば電気駆動式ホイールローダ)にも適用可能である。
【0012】
図1は、第1の実施例に係る発電システムが搭載された電気駆動式ダンプトラックの外観を模式的に示す側面図である。図1において、電気駆動式ダンプトラック500は、前後方向に延在して支持構造体を形成する車体フレーム501と、車体フレーム501の上部に前後方向に延在するように配置され、その後端下部がピン結合部502を介して車体フレーム501に傾動可能に設けられた荷台(ベッセル)503と、車体フレーム501の下方前側左右に設けられた一対の従動輪504L、504Rと、車体の下方後側左右に設けられた一対の駆動輪505L、505Rと、車体フレーム501の上方前側に設けられた運転席506と、車体フレーム501上に配置された動力源としての原動機1と、原動機1により駆動される2巻線かご形誘導発電機(以下適宜、誘導発電機)2と、誘導発電機2から出力される電力を用いて車輪(駆動輪505L、505R)を駆動する走行モータ5とを備えている。なお、図1においては、左右一対の従動輪504L、504Rおよび左右一対の駆動輪505L、505Rのうちの一方のみを図示し、他方については図中に括弧書きで符号のみを示して図示を省略する。
【0013】
図2は、第1の実施例に係る電気駆動式ダンプトラック500に搭載された駆動システムの構成図である。図2において、駆動システム507は、原動機1と、原動機1によって駆動される誘導発電機2と、誘導発電機2を始動する始動バッテリ10と、走行モータ5に電力を供給する走行インバータ4と、補機モータ9に電力を供給する補機インバータ8と、整流器としてのダイオードブリッジ3と、回生放電抵抗器6と、コンバータ7と、コンデンサ11とを備えている。誘導発電機2は、主巻線2131および補助巻線2132を含む一次巻線と二次導体とを有する。本実施例に係る発電システム508は、原動機1、誘導発電機2、ダイオードブリッジ3、コンバータ7、およびコンデンサ11により構成される。なお、ダイオードブリッジ3に替えて、サイリスタやトランジスタを整流器として用いても良い。
【0014】
ダイオードブリッジ3は、交流側端子が誘導発電機2の主巻線2131およびコンデンサ11に接続され、直流側端子が走行インバータ4および回生放電抵抗器6に接続されている。回生放電抵抗器6は、走行モータ5の回生動作時(リタード運転時)にダイオードブリッジ3の直流側端子と走行インバータ4の直流側端子とに接続され、走行モータ5の回生動作によって発電される電力を放電する。主機側(ダイオードブリッジ3側、大容量側)の電力系統は、ダイオードブリッジ3、走行インバータ4、走行モータ5、回生放電抵抗器6、およびコンデンサ11で構成される。
【0015】
コンバータ7は、交流側端子が誘導発電機2の補助巻線2132に接続され、直流側端子が補機インバータ8および始動バッテリ10に接続されている。始動バッテリ10は、誘導発電機2の起動時にコンバータ7に接続され、コンバータ7に電力を供給する。補機側(コンバータ側、小容量側)の電力系統は、コンバータ7、補機インバータ8、補機モータ9、および始動バッテリ10で構成される。仮に、コンデンサ11をコンバータ側に設けた場合、コンバータ7のスイッチングの毎に大電流が生じるが、本実施例のように、コンデンサ11をダイオードブリッジ3側に設けることで電流が抑制される。
【0016】
誘導発電機2の励磁や漏れ磁束の発生に必要な無効電力は、コンデンサ11から主巻線2131に供給される。したがって、コンバータ7から供給が必要な無効電力が小さくなり、コンバータ7の容量を小さくできる。
【0017】
アイドリング運転時は、電気駆動式ダンプトラック500が停止している状態であり、原動機1の機械出力は、誘導発電機2の補助巻線2132で交流電力に変換され、変換される交流電力の電圧の大きさや周波数は、コンバータ7によって制御される。アイドリング運転時において、走行インバータ4が開放された状態であると、ダイオードブリッジ3に主巻線2131から電力が供給されない状態になる。一方、コンデンサ11からは主巻線2131に無効電力が供給される状態であるため、コンバータ7から供給が必要な無効電力が小さくなり、コンバータ7の容量を小さくできる。
【0018】
トラクション運転時は、電気駆動式ダンプトラック500のアクセルペダルが踏まれている状態であり、原動機1の出力は、アイドリング運転時と同様に誘導発電機2の補助巻線2132で交流電力に変換される他、誘導発電機2の主巻線2131でも交流電力に変換され、変換される交流電力の電圧の大きさや周波数は、コンバータ7によって制御される。トラクション運転時において、走行インバータ4が通電された状態であると、主巻線2131からダイオードブリッジ3に電力が供給されつつ、コンデンサ11から主巻線2131に無効電力が供給される状態になる。したがって、コンバータ7から供給が必要な無効電力が小さくなり、コンバータ7の容量を小さくできる。
【0019】
リタード運転時は、電気駆動式ダンプトラック500のブレーキペダルが踏まれている状態であり、原動機1の機械出力は、アイドリング運転時と同様に誘導発電機2の補助巻線2132で交流電力に変換され、変換される交流電力の電圧の大きさや周波数は、コンバータ7によって制御される。さらに、走行モータ5で回生される交流電力は、走行インバータ4によって直流電力に変換され、変換される直流電力の電圧の大きさは、ダイオードブリッジ3に逆方向の電圧が生じるように、走行インバータ4によって制御されるため、ダイオードブリッジ3に主巻線2131から電力が供給されない状態になる。一方、コンデンサ11からは主巻線2131に無効電力が供給される状態であるため、コンバータ7から供給が必要な無効電力が小さくなり、コンバータ7の容量を小さくできる。
【0020】
図3は、2巻線かご形誘導発電機2の構造を示す側面図および断面図である。誘導発電機2は、固定子21と回転子22を備え、固定子21は、固定子鉄心211で形成された固定子スロット212に一次巻線213が設置され、一次巻線213は、主巻線2131と補助巻線2132を有している。一次巻線213は、楔214によって固定子スロット212に保持されている。回転子22は、回転子鉄心221で形成された回転子スロット222に回転子バー2231が設置され、回転子バー2231はエンドリング2232で端部を短絡されている。二次導体223は、回転子バー2231とエンドリング2232を有する。ギャップ23は、固定子21と回転子22の間の空隙である。
【0021】
補助巻線2132の電圧をコンバータ7で変化させると、固定子鉄心211や回転子鉄心221を通る磁束量が変化し、主巻線2131を鎖交する磁束数が変化し、主巻線2131の電圧を変化させられ、走行インバータ4が要求する電圧になるように制御することができる。
【0022】
補助巻線2132の周波数をコンバータ7で変化させると、すべりが変化し、二次導体223の電流が変化し、主巻線2131と補助巻線2132から出力する電力を変化させられ、走行インバータ4や補機インバータ8が要求する電力になるように制御することができる。
【0023】
図4は、電気駆動式ダンプトラック500の各運転モードにおける2巻線かご形誘導発電機2の補助巻線電圧と発電周波数との関係を示す図である。図4において、縦軸は補助巻線電圧であり、横軸は発電周波数である。補助巻線電圧は、誘導発電機2の補助巻線2132の線間電圧の実効値である。電気駆動式ダンプトラック500の運転モードには、アイドリング運転、リタード運転、およびトラクション運転がある。
【0024】
アイドリング運転時において、原動機1の機械出力は小さいため、回転速度を低くして原動機1の効率を高めている。回転速度が低いため発電周波数が低い。発電周波数が低いときは発電できる電圧が低くなる。アイドリング運転時の補助巻線電圧をVMin、そのときの発電周波数をfMinとしている。
【0025】
トラクション運転時においては、原動機1の機械出力は大きいため、原動機1の効率が良くなる回転速度は高くなる。回転速度が高いため発電周波数が高い。発電周波数が高いときは発電できる電圧が高くなる。トラクション運転時の最大補助巻線電圧をVMax、定格補助巻線電圧をVRatとし、発電周波数をfMaxとしている。
【0026】
リタード運転時においては、アイドリング運転時と同様に原動機1の機械出力は小さいが、素早くトラクション運転に切り替えられるように、アイドリング運転時よりも原動機1の回転速度は高い。アイドリング運転時よりも回転速度が高いため発電周波数が高い。アイドリング運転時よりも発電周波数が高いため、発電できる電圧は高くなる。
【0027】
図5は、発電システム508内の有効電力と無効電力の流れを示す図である。図5において、無効電力の正負の符号は、発電機側およびコンデンサ側から見たとき、電圧よりも電流が遅れる場合を正、電圧よりも電流が進む場合を負とする。
【0028】
無効電力は、誘導発電機2の励磁や漏れ磁束の発生に必要な無効電力をQ、誘導発電機2の主巻線2131に供給される無効電力をQgMain、誘導発電機2の補助巻線2132に供給される無効電力をQgAux、コンデンサ11に供給される無効電力をQ、ダイオードブリッジ3から発生する無効電力をQとしている。これらの無効電力が釣り合うように、誘導発電機2の補助巻線2132に無効電力QgAuxがコンバータ7から供給される。
【0029】
誘導発電機2の補助巻線2132の出力(有効電力)をPgAux、補助巻線電圧をVAuxとすると、補助巻線電流IAuxは、次式で表される。
【0030】
【数1】
【0031】
補助巻線電流IAuxは、誘導発電機2の補助巻線2132の線電流の実効値である。最大補助巻線電流をIMaxとすると、コンバータ7に必要な容量SConvは、次式で表される。
【0032】
【数2】
【0033】
数2式において、トラクション運転時の最大補助巻線電圧VMaxは、発電機に与えられる仕様であり決定されているため、最大補助巻線電流IMaxが分かれば、コンバータ7に必要な容量SConvが決まる。
【0034】
誘導発電機2の励磁や漏れ磁束の発生に必要な無効電力Qは、次式で表される。
【0035】
【数3】
【0036】
ダイオードブリッジ3から発生する無効電力Qは、次式で表される。
【0037】
【数4】
【0038】
数3式から数4式を差し引くと、次式が得られる。
【0039】
【数5】
【0040】
数5式より、誘導発電機2の補助巻線2132に供給される無効電力QgAuxは、次式で表される。
【0041】
【数6】
【0042】
主巻線電圧をVMain、発電角周波数をω、コンデンサ11の静電容量をCとすると、コンデンサ11に供給される無効電力Qは、次式で表される。
【0043】
【数7】
【0044】
主巻線電圧に対する補助巻線電圧の比をKとすると、補助巻線電圧VAuxは、次式で表される。
【0045】
【数8】
【0046】
以下、各運転時において、補助巻線電流IAuxの計算式を導出する。
【0047】
まず、トラクション運転時の定格状態(トラクション定格運転時)の計算式を導出する。誘導発電機2の主巻線2131と補助巻線2132の定格容量を、それぞれSgMainRat、SgAuxRat、定格力率を、それぞれPFgMainRat、PFgAuxRatとすると、トラクション運転時の定格状態において誘導発電機2の励磁や漏れ磁束の発生に必要な無効電力QgTRは、次式で表される。
【0048】
【数9】
【0049】
トラクション運転時の定格状態における誘導発電機2の主巻線2131の出力(有効電力)をPgMainTR、ダイオードブリッジ3の定格力率をPFdRatとするとき、トラクション運転時の定格状態においてダイオードブリッジ3から発生する無効電力QdTRは、次式で表される。
【0050】
【数10】
【0051】
一般に、ダイオードブリッジ3の力率は0.955とされており、トラクション運転時の定格状態におけるダイオードブリッジ3から発生する無効電力QdTRは、次式で表される。
【0052】
【数11】
【0053】
数11式を整理すると、トラクション運転時の定格状態におけるダイオードブリッジ3から発生する無効電力QdTRは、次式で表される。
【0054】
【数12】
【0055】
トラクション運転時の定格状態における主巻線電圧をVMainTR、トラクション運転時の定格状態における発電角周波数をωTRとすると、トラクション運転時の定格状態においてコンデンサ11に供給される無効電力QcTRは、次式で表される。
【0056】
【数13】
【0057】
トラクション運転時の定格状態における補助巻線電圧VAuxTRは、次式で表される。
【0058】
【数14】
【0059】
数6式より、トラクション運転時の定格状態において誘導発電機2の補助巻線2132に供給される無効電力QgAuxTRは、次式で表される。
【0060】
【数15】
【0061】
数15式のQgTRに数9式、QdTRに数12式、QcTRに数13式を代入することで、トラクション運転時の定格状態において誘導発電機2の補助巻線2132に供給される無効電力QgAuxTRが得られる。
【0062】
トラクション運転時の定格状態における誘導発電機2の補助巻線2132の出力(有効電力)をPgAuxTRとすると、数1式より、トラクション運転時の定格状態における補助巻線電流IAuxTRは、次式で表される。
【0063】
【数16】
【0064】
数16式のQgAuxTRに数15式、VAuxTRに数14式を代入することで、トラクション運転時の定格状態における補助巻線電流IAuxTRが得られる。
【0065】
次に、トラクション運転時の無負荷状態(トラクション無負荷運転時)の計算式を導出する。トラクション運転時の無負荷状態における主巻線電圧をVMainTN、トラクション運転時の無負荷状態における発電角周波数をωTN、誘導発電機2の励磁インダクタンスをLとすると、トラクション運転時の無負荷状態において誘導発電機2の励磁に必要な無効電力QgTNは、次式で表される。
【0066】
【数17】
【0067】
トラクション運転時の無負荷状態における補助巻線電圧VAuxTNは、次式で表される。
【0068】
【数18】
【0069】
トラクション運転時の無負荷状態における発電角周波数ωTNは、次式で表される。
【0070】
【数19】
【0071】
主巻線電圧がVMainTNのときの無負荷電流をIMainNLとすると、誘導発電機2の励磁インダクタンスLは、次式で表される。
【0072】
【数20】
【0073】
トラクション運転時の無負荷状態においては、走行インバータ4が開放された状態であるため、ダイオードブリッジ3から無効電力が発生しなくなる。したがって、トラクション運転時の無負荷状態においてダイオードブリッジ3から発生する無効電力QdTNは、次式で表される。
【0074】
【数21】
【0075】
トラクション運転時の無負荷状態においてコンデンサ11に供給される無効電力QcTNは、次式で表される。
【0076】
【数22】
【0077】
数6式より、トラクション運転時の無負荷状態において誘導発電機2の補助巻線2132に供給される無効電力QgAuxTNは、次式で表される。
【0078】
【数23】
【0079】
数23式のQgTNに数17式、QdTNに数21式、QcTNに数22式を代入することで、トラクション運転時の無負荷状態において誘導発電機2の補助巻線2132に供給される無効電力QgAuxTNが得られる。
【0080】
トラクション運転時の無負荷状態における誘導発電機2の補助巻線2132の出力(有効電力)をPgAuxTNとすると、トラクション運転時の無負荷状態における補助巻線電流IAuxTNは、次式で表される。
【0081】
【数24】
【0082】
数24式のQgAuxTNに数23式、VAuxTNに数18式を代入することで、トラクション運転時の無負荷状態における補助巻線電流IAuxTNが得られる。
【0083】
次に、リタード運転時の計算式を導出する。リタード運転時における主巻線電圧をVMainR、リタード運転時における発電角周波数をωとすると、リタード運転時において誘導発電機2の励磁に必要な無効電力QgRは、次式で表される。
【0084】
【数25】
【0085】
リタード運転時における補助巻線電圧VAuxRは、次式で表される。
【0086】
【数26】
【0087】
リタード運転時においては、ダイオードブリッジ3に逆方向の電圧が生じるように、走行インバータ4によって制御されるため、ダイオードブリッジ3から無効電力が発生しなくなる。したがって、リタード運転時においてダイオードブリッジ3から発生する無効電力QdRは、次式で表される。
【0088】
【数27】
【0089】
リタード運転時においてコンデンサ11に供給される無効電力QcRは、次式で表される。
【0090】
【数28】
【0091】
数6式のQに数25式、Qに数27式、Qに数28式を代入すると、リタード運転時において誘導発電機2の補助巻線2132に供給される無効電力QgAuxRは、次式で表される。
【0092】
【数29】
【0093】
リタード運転時における誘導発電機2の補助巻線2132の出力(有効電力)をPgAuxRとし、数1式のVAuxに数26式を代入すると、リタード運転時における補助巻線電流IAuxRは、次式で表される。
【0094】
【数30】
【0095】
リタード運転時において、主巻線電圧VMainRは、補助巻線電流IAuxRが最小になるように決定される。数30式の両辺を2乗すると、次式が得られる。
【0096】
【数31】
【0097】
数31式に、数29式を代入すると、次式が得られる。
【0098】
【数32】
【0099】
数32式に、数25式、数27式、数28式を代入すると、次式が得られる。
【0100】
【数33】
【0101】
数33式のaとbは、次式で表される。
【0102】
【数34】
【0103】
【数35】
【0104】
数33式は、VMainRが0の場合はa/VMainRが無限大で、VMainRが無限大の場合もb×VMainRが無限大になるため、VMainRが0から無限大の間でIAuxR は極小値が存在する。数33式をVMainR で微分すると、次式が得られる。
【0105】
【数36】
【0106】
数36式が0になるときにIAuxR が極小値となり、IAuxR が極小値となるときのVMainR は、次式で表される。
【0107】
【数37】
【0108】
数37式のaに数34式を、bに数35式を代入すると、IAuxR が極小値となるときのVMainR は、次式で表される。
【0109】
【数38】
【0110】
数38式の右辺が正の数のとき、IAuxR が極小値となるときのVMainRは、次式で表される。
【0111】
【数39】
【0112】
数38式の右辺が負の数のとき、IAuxR が極小値となるときのVMainRは、次式で表される。
【0113】
【数40】
【0114】
数33式に数37式を代入すると、IAuxR の極小値は、次式で表される。
【0115】
【数41】
【0116】
数41式のaに数34式を、bに数35式を代入すると、IAuxR の極小値は、次式で表される。
【0117】
【数42】
【0118】
数42式の右辺が正の数のとき、IAuxRの極小値は、次式で表される。
【0119】
【数43】
【0120】
数42式の右辺が負の数のとき、IAuxRの極小値は、次式で表される。
【0121】
【数44】
【0122】
リタード運転時の磁束密度が、トラクション運転時の無負荷状態よりも大きくなると、数43式や数44式で計算されるリタード運転時における補助巻線電流IAuxRは、磁気飽和の影響で過小評価されてしまう。リタード運転時の磁束密度が、トラクション運転時の無負荷状態よりも大きくなるとき、数39式や数40式で計算されるリタード運転時の主巻線電圧VMainRは、次式の関係にある。
【0123】
【数45】
【0124】
数39式や数40式で計算されるリタード運転時の主巻線電圧VMainRが、数45の関係にあるとき、リタード運転時の主巻線電圧VMainRは、次式とする。
【0125】
【数46】
【0126】
数39式や数40式で計算されるリタード運転時の主巻線電圧VMainRが、数45の関係にあるとき、数33式のVMainRに数46式が代入され、次式が得られる。
【0127】
【数47】
【0128】
数47式の右辺が正の数のとき、IAuxRの極小値は、次式で表される。
【0129】
【数48】
【0130】
数47式の右辺が負の数のとき、IAuxRの極小値は、次式で表される。
【0131】
【数49】
【0132】
最後に、アイドリング運転時の計算式を導出する。アイドリング運転時における主巻線電圧をVMainI、アイドリング運転時における発電角周波数をωとすると、アイドリング運転時において誘導発電機2の励磁に必要な無効電力QgIは、次式で表される。
【0133】
【数50】
【0134】
アイドリング運転時における補助巻線電圧VAuxIは、次式で表される。
【0135】
【数51】
【0136】
アイドリング運転時において、走行インバータ4が開放された状態であると、ダイオードブリッジ3から無効電力が発生しなくなる。したがって、リタード運転時においてダイオードブリッジ3から発生する無効電力QdIは、次式で表される。
【0137】
【数52】
【0138】
アイドリング運転時においてコンデンサ11に供給される無効電力QcIは、次式で表される。
【0139】
【数53】
【0140】
数6式より、アイドリング運転時において誘導発電機2の補助巻線2132に供給される無効電力QgAuxIは、次式で表される。
【0141】
【数54】
【0142】
アイドリング運転時における誘導発電機2の補助巻線2132の出力(有効電力)をPgAuxIとし、数1式のVAuxに数51式を代入すると、アイドリング運転時における補助巻線電流IAuxIは、次式で表される。
【0143】
【数55】
【0144】
アイドリング運転時においても、リタード運転時と同様に、主巻線電圧VMainIは、補助巻線電流IAuxIが最小になるように決定される。数55式の両辺を2乗すると、次式が得られる。
【0145】
【数56】
【0146】
数56式に、数54式を代入すると、次式が得られる。
【0147】
【数57】
【0148】
数57式に、数50式、数52式、数53式を代入すると、リタード運転時と同様に、次式が得られる。
【0149】
【数58】
【0150】
数58式のaとbは、次式で表される。
【0151】
【数59】
【0152】
【数60】
【0153】
AuxI が極小値となるときのVMainI は、リタード運転時と同様に、次式で表される。
【0154】
【数61】
【0155】
数61式の右辺が正の数のとき、IAuxI が極小値となるときのVMainIは、次式で表される。
【0156】
【数62】
【0157】
数61式の右辺が負の数のとき、IAuxI が極小値となるときのVMainIは、次式で表される。
【0158】
【数63】
【0159】
AuxI の極小値は、リタード運転時と同様に、次式で表される。
【0160】
【数64】
【0161】
数64式の右辺が正の数のとき、IAuxIの極小値は、次式で表される。
【0162】
【数65】
【0163】
数64式の右辺が負の数のとき、IAuxIの極小値は、次式で表される。
【0164】
【数66】
【0165】
アイドリング運転時の磁束密度が、トラクション運転時の無負荷状態よりも大きくなると、数65式や数66式で計算されるアイドリング運転時における補助巻線電流IAuxIは、磁気飽和の影響で過小評価されてしまう。アイドリング運転時の磁束密度が、トラクション運転時の無負荷状態よりも大きくなるとき、数62式や数63式で計算されるアイドリング運転時の主巻線電圧VMainIは、次式の関係にある。
【0166】
【数67】
【0167】
数62式や数63式で計算されるアイドリング運転時の主巻線電圧VMainIが、数67式の関係にあるとき、アイドリング運転時の主巻線電圧VMainIは、次式とする。
【0168】
【数68】
【0169】
数62式や数63式で計算されるアイドリング運転時の主巻線電圧VMainIが、数67式の関係にあるとき、数58式のVMainIに数68式が代入され、次式が得られる。
【0170】
【数69】
【0171】
数69式の右辺が正の数のとき、IAuxIの極小値は、次式で表される。
【0172】
【数70】
【0173】
数69式の右辺が負の数のとき、IAuxIの極小値は、次式で表される。
【0174】
【数71】
【0175】
以上、補助巻線電流IAuxが最大となる運転状態は、導出した計算式によって把握することができ、そのときの補助巻線電流IAuxを数2式のIMaxに代入することで、コンバータ7に必要な容量SConvが決まる。
【0176】
図6は、第1の実施例に係る2巻線かご形誘導発電機2に要求される仕様を示す図である。トラクション運転時の定格状態と無負荷状態、リタード運転時およびアイドリング運転時において、発電角周波数、発電機に必要な無効電力と励磁電力、主巻線2131と補助巻線2132の電圧と出力が、pu単位系で表されている。トラクション運転時における主巻線2131の定格発電周波数、定格出力、定格電圧をpu単位系のベース(1.0pu)としている。
【0177】
図7は、第1の実施例に係る電気駆動式ダンプトラック500の各運転モードにおける補助巻線電流IAuxとコンデンサ静電容量との関係を示す図である。トラクション運転時の定格状態は数16式、無負荷状態は数24式、リタード運転時は数43式、数48式、数49式、アイドリング運転時は数65式によって、補助巻線電流IAuxが計算されている。補助巻線電流IAuxは、トラクション運転時の定格状態においてコンデンサ静電容量が0の場合での主巻線電流を補助巻線側に換算した値をpu単位系のベース(1.0pu)としている。コンデンサ静電容量は、トラクション運転時の無負荷状態(コンデンサの無効電力が最大となる運転状態)においてコンデンサの無効電力が1.0puとなる静電容量をpu単位系のベース(1.0pu)としている。
【0178】
コンデンサ静電容量が点Aよりも小さいとき、トラクション運転時の定格状態の補助巻線電流IAuxが最大補助巻線電流IMaxとなり、コンデンサ静電容量が点Aから点Bの間は、アイドリング運転時の補助巻線電流IAux、点Bよりも大きいときは、トラクション運転時の無負荷状態の補助巻線電流IAuxが最大補助巻線電流IMaxとなる。
【0179】
最大補助巻線電流IMaxは点Bで最小になるため、数24式で計算されるトラクション運転時の無負荷状態と、数65式で計算されるアイドリング運転時の補助巻線電流IAuxが等しくなる静電容量(点B)のコンデンサを選定することで、最大補助巻線電流IMaxを最小にすることができる。しかしながら、コンデンサ静電容量は数割刻みでラインナップされているのが一般的であるため、点Bと一致する静電容量のコンデンサを入手できるとは限らない。その場合は、ラインナップされているコンデンサ静電容量の中から点Bに最も近い静電容量のコンデンサを選定する。この様に、最大補助巻線電流IMaxが小さくなり、コンバータ7の容量を小さくすることができる。数24式で計算されるトラクション運転時の無負荷状態と、数65式で計算されるアイドリング運転時の補助巻線電流IAuxが等しくなる静電容量(点B)のコンデンサを選定するとき、次式の関係が得られる。
【0180】
【数72】
【0181】
コンデンサ静電容量が0から点A、点Aから点Bに向かって増加するのに連れて、最大補助巻線電流IMaxは減少するが、最大補助巻線電流IMaxの減少率(傾き)は、0から点Aのほうが、点Aから点Bよりも大きい。したがって、数16式で計算されるトラクション運転時の定格状態と、数65式で計算されるアイドリング運転時の補助巻線電流IAuxが等しくなる静電容量(点A)よりも小さなコンデンサ11を選定することで、最大補助巻線電流IMaxを効率良く小さくすることができ、コンバータ7の容量を小さくすることができる。数16式で計算されるトラクション運転時の定格状態と、数65式で計算されるアイドリング運転時の補助巻線電流IAuxが等しくなる静電容量(点A)よりも小さなコンデンサ11を選定するとき、次式の関係が得られる。
【0182】
【数73】
【0183】
点Aから点Bの区間は、アイドリング運転時の補助巻線電流IAuxが最大補助巻線電流IMaxになる。このとき、最大補助巻線電流IMaxは概ね最小になり、コンバータ7の容量を小さくすることができる。数65式で計算されるアイドリング運転時の補助巻線電流IAuxが最大補助巻線電流IMaxになる静電容量のコンデンサ11を選定するとき、次式の関係が得られる。
【0184】
【数74】
【0185】
以上のように、適切な静電容量のコンデンサ11を設置することでコンバータ7の容量を小さくすることができる。一方、トラクション運転時の定格状態において誘導発電機2の主巻線2131に供給される無効電力をQgMainTRとすると、トラクション運転時の定格状態における誘導発電機2の容量SgTRは、次式で表される。
【0186】
【数75】
【0187】
トラクション運転時の定格状態において誘導発電機2の主巻線2131に供給される無効電力QgMainTRは、次式で表される。
【0188】
【数76】
【0189】
図8は、2巻線かご形誘導発電機2のトラクション運転時の定格状態(トラクション定格運転時)における発電機容量とコンデンサ静電容量との関係を示す図である。発電機容量は数75式によって計算されている。発電機容量は、トラクション運転時における主巻線2131の定格出力をpu単位系のベース(1.0pu)としている。図8の線Aと線Bは、図7の点Aと点Bのコンデンサ静電容量である。
【0190】
図7で前述したように、線Bのコンデンサを選定することで、最大補助巻線電流IMaxを最小にすることができる。このとき、図8の発電機容量は、コンデンサ静電容量が0のときよりも小さくなる。発電機容量が小さくなると、発電機が小型・軽量化し、電気駆動式ダンプトラック500の積載量の増加や、他の機器とのレイアウトの自由度の向上が可能となる。
【0191】
図7で前述したように、コンデンサ静電容量が0よりも大きく線Aよりも小さなコンデンサを選定することで、最大補助巻線電流IMaxを効率良く小さくすることができる。このとき、図8の発電機容量は、コンデンサ静電容量が0のときよりも小さくなる。発電機容量が小さくなると、発電機が小型・軽量化し、電気駆動式ダンプトラック500の積載量の増加や、他の機器とのレイアウトの自由度の向上が可能となる。
【0192】
図7で前述したように、線Aから線Bの区間のコンデンサを選定することで、最大補助巻線電流IMaxを概ね最小にすることができる。このとき、図8の発電機容量は、コンデンサ静電容量が0のときよりも小さくなる。発電機容量が小さくなると、発電機が小型・軽量化し、電気駆動式ダンプトラック500の積載量の増加や、他の機器とのレイアウトの自由度の向上が可能となる。
【0193】
仮に、コンデンサ11をコンバータ側に設けても、発電機容量は小さくならないが、本実施例のように、コンデンサ11をダイオードブリッジ3側に設けることで、誘導発電機2の容量を小さくでき、発電機容量が小さくすることで、誘導発電機2が小型・軽量化し、電気駆動式ダンプトラック500の積載量の増加や、他の機器とのレイアウトの自由度が向上する。
【0194】
第1の実施例では、主巻線2131および補助巻線2132を含む一次巻線213と二次導体223とを有する誘導発電機2と、主巻線2131に接続され、主巻線2131に生じた交流電力を直流電力に変換するダイオードブリッジ3と、補助巻線2132に接続され、誘導発電機2を励磁するとともに、補助巻線2132に生じた交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ7とを備えた発電システム508において、誘導発電機2の一次巻線213に接続され、誘導発電機2に無効電力を供給するコンデンサ11を備える。
【0195】
以上のように構成した第1の実施例によれば、2巻線かご形誘導発電機2の励磁や漏れ磁束の発生に必要な無効電力をコンデンサ11から一次巻線213に供給することができるため、コンバータ7の容量を小さくすることが可能となる。
【0196】
また、第1の実施例におけるコンデンサ11は、主巻線2131にダイオードブリッジ3と並列に接続されている。これにより、誘導発電機2の容量を小さくすることが可能となる。
【0197】
また、第1の実施例における電気駆動式ダンプトラック500は、発電システム508と、走行モータ5と、補機モータ9と、ダイオードブリッジ3から出力される直流電力を交流電力に変換して走行モータ5に供給する走行インバータ4と、コンバータ7から出力される直流電力を交流電力に変換して補機モータ9に供給する補機インバータ8とを備える。これにより、電気駆動式ダンプトラック500に搭載された発電システム508において、コンバータ7の容量を小さくすることが可能となる。
【0198】
また、第1の実施例における発電システム508では、主巻線2131の電圧と出力が定格で周波数が最大となるトラクション定格運転時、主巻線2131の電圧と周波数が最大で無負荷運転となるトラクション無負荷運転時、主巻線2131の電圧と周波数が最小となるアイドリング運転時、および走行モータ5が回生動作を行うリタード運転時のうち、トラクション定格運転時の補助巻線2132の電流が最大になるように(図7の点Aよりも小さい範囲)、コンデンサ11の静電容量が選定されている。これにより、コンバータ7の容量を効率良く小さくすることが可能となる。
【0199】
また、第1の実施例における発電システム508では、トラクション定格運転時、トラクション無負荷運転時、アイドリング運転時、およびリタード運転時のうち、アイドリング運転時の補助巻線2132の電流が最大になるように(図7の点Aから点Bの間)、コンデンサ11の静電容量が選定されている。これにより、コンバータ7の容量を概ね最小化することが可能となる。
【0200】
また、第1の実施例における発電システム508では、アイドリング運転時の補助巻線2132の電流と、トラクション無負荷運転時の補助巻線2132の電流とが等しくなるように(図7の点B)、コンデンサ11の静電容量が選定されている。これにより、コンバータ7の容量を最小化することが可能となる。
【実施例0201】
本発明の第2の実施例について、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0202】
図9は、第2の実施例に係る誘導発電機2に要求される仕様を示す図である。第1の実施例では、アイドリング運転時の補助巻線2132の出力が0.1puであるのに対して、本実施例では0.01puである。
【0203】
図10は、第2の実施例に係る電気駆動式ダンプトラック500の各運転モードにおける補助巻線電流IAuxとコンデンサ静電容量との関係を示す図である。第1の実施例との相違点は、アイドリング運転時である。
【0204】
最大補助巻線電流IMaxは、コンデンサ静電容量が点Cよりも小さいとき、トラクション運転時の定格状態の補助巻線電流IAuxとなり、コンデンサ静電容量が点Cよりも大きいときは、トラクション運転時の無負荷状態の補助巻線電流IAuxとなる。
【0205】
最大補助巻線電流IMaxは点Cで最小になるため、数16式で計算されるトラクション運転時の定格状態と、数24式で計算されるトラクション運転時の無負荷状態の補助巻線電流IAuxが等しくなる静電容量(点C)のコンデンサを選定することで、最大補助巻線電流IMaxを最小にすることができる。しかしながら、コンデンサ静電容量は数割刻みでラインナップされているのが一般的であるため、点Bと一致する静電容量のコンデンサを入手できるとは限らない。その場合は、ラインナップされているコンデンサ静電容量の中から点Cに最も近い静電容量のコンデンサを選定する。この様に、最大補助巻線電流IMaxが小さくなり、コンバータ7の容量を小さくすることができる。数16式で計算されるトラクション運転時の定格状態と、数24式で計算されるトラクション運転時の無負荷状態の補助巻線電流IAuxが等しくなる容量(点C)のコンデンサ11を選定するとき、次式の関係が得られる。
【0206】
【数77】
【0207】
なお、図9に対して、リタード運転時の周波数が低い場合や、リタード運転時の補助巻線2132の出力が大きい場合は、図11に示すように、リタード運転時の補助巻線電流IAuxが最大補助巻線電流IMaxになる区間(点Dから点E)が発生するときがある。その場合は、その区間に対応するコンデンサ静電容量を選定することで、最大補助巻線電流IMaxは概ね最小になり、コンバータ7の容量を小さくすることができる。数43式で計算されるリタード運転時の補助巻線電流IAuxが最大補助巻線電流IMaxになる静電容量のコンデンサ11を選定するとき、次式の関係が得られる。
【0208】
【数78】
【0209】
第2の実施例における発電システム508では、トラクション定格運転時の補助巻線2132の電流と、トラクション無負荷運転時の補助巻線2132の電流とが等しくなるように(図10の点C)、コンデンサ11の静電容量が選定されている。
【0210】
以上のように構成した第2の実施例によれば、第1の実施例と同様に、コンバータ7の容量を小さくすることが可能となる。また、トラクション定格運転時とトラクション無負荷運転時とで補助巻線2132の電流が等しくなるようにコンデンサ11の静電容量を選定することにより、コンバータ7の容量を最小化することが可能となる。
【0211】
また、第2の実施例における電気駆動式ダンプトラック500では、トラクション定格運転時、トラクション無負荷運転時、アイドリング運転時、およびリタード運転時のうち、リタード運転時の補助巻線2132の電流が最大になるように(図11の点Dから点Eの間)、コンデンサ11の静電容量が選定されている。これにより、コンバータ7の容量を概ね最小化することが可能となる。
【実施例0212】
本発明の第3の実施例について、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0213】
図12は、第3の実施例に係る電気駆動式ダンプトラック500に搭載された駆動システムの構成図である。本実施例では、コンデンサ11がコンバータ7の交流側端子に接続されており、補助巻線2132のうち誘導発電機2とコンデンサ11とを接続する部分にリアクトル12が直列に配置されている。
【0214】
誘導発電機2の励磁や漏れ磁束の発生に必要な無効電力は、コンデンサ11から補助巻線2132に供給される。したがって、コンバータ7から供給が必要な無効電力が小さくなり、コンバータ7の容量を小さくできる。また、コンバータ7の交流側端子にコンデンサ11が接続されているため、コンデンサ11に電流の跳ね上がりが生じるが、コンデンサ11はリアクトル12を介して誘導発電機2に接続されているため、誘導発電機2に流入する電流の跳ね上がりが抑制される。
【0215】
第3の実施例における発電システム508において、コンデンサ11は、補助巻線2132にコンバータ7と並列に接続されている。
【0216】
以上のように構成した第3の実施例によれば、誘導発電機2の励磁や漏れ磁束の発生に必要な無効電力をコンデンサ11から補助巻線2132に供給することができるため、コンバータ7の容量を小さくすることが可能となる。
【0217】
また、第3の実施例における発電システム508は、補助巻線2132のうち誘導発電機2とコンデンサ11とを接続する部分に直列に配置されたリアクトル12を備える。これにより、コンデンサ11がリアクトル12を介して誘導発電機2に接続されているため、コンデンサ11で生じた電流の跳ね上がりが誘導発電機2に流入することを抑制することが可能となる。
【実施例0218】
本発明の第4の実施例について、第3の実施例との相違点を中心に説明する。
【0219】
図13は、第4の実施例に係る電気駆動式ダンプトラック500に搭載された駆動システムの構成図である。本実施例では、コンバータ7の交流側端子がリアクトル12のみに接続され、コンデンサ11がリアクトル12と誘導発電機2に接続されている点が、第3の実施例と異なる。
【0220】
誘導発電機2の励磁や漏れ磁束の発生に必要な無効電力は、コンデンサ11から補助巻線2132に供給される。したがって、コンバータ7から供給が必要な無効電力が小さくなり、コンバータ7の容量を小さくできる。また、コンバータ7の交流側端子がリアクトル12を介してコンデンサ11に接続されているため、コンデンサ11に生じる電流の跳ね上がりが抑制される。
【0221】
第4の実施例における発電システム508は、補助巻線2132のうちコンバータ7とコンデンサ11とを接続する部分に直列に配置されたリアクトル12を備える。
【0222】
以上のように構成した第4の実施例によれば、第3の実施例と同様に、発電システム508のコンバータ7の容量を小さくすることが可能となる。また、コンデンサ11がリアクトル12を介してコンバータ7に接続されているため、コンデンサ11に生じる電流の跳ね上がりを抑制することが可能となる。
【実施例0223】
本発明の第5の実施例について、第3および第4の実施例との相違点を中心に説明する。
【0224】
図14は、第5の実施例に係る電気駆動式ダンプトラック500に搭載された駆動システムの構成図である。本実施例では、コンデンサ11はリアクトル12のみに接続され、コンバータ7の交流側端子がリアクトル12と誘導発電機2に接続されている点が、第3と第4の実施例と異なる。
【0225】
誘導発電機2の励磁や漏れ磁束の発生に必要な無効電力は、コンデンサ11から補助巻線2132に供給される。したがって、コンバータ7から供給が必要な無効電力が小さくなり、コンバータ7の容量を小さくできる。また、コンバータ7の交流側端子がリアクトル12を介してコンデンサ11に接続されているため、コンデンサ11に生じる電流の跳ね上がりが抑制される。さらに、リアクトル12を介すことなくコンバータ7と誘導発電機2が接続されているため、リアクトル12は無効電流のみの電流の跳ね上がりを抑制できる容量のもので良くなり、リアクトル12の容量を小さくできる。
【0226】
第5の実施例における発電システム508は、補助巻線2132のうち誘導発電機2とコンデンサ11とを接続する部分に、または、補助巻線2132のうちコンバータ7とコンデンサ11とを接続する部分に直列に配置されたリアクトル12を備える。
【実施例0227】
本発明の第6の実施例について、第1および第2の実施例との相違点を中心に説明する。
【0228】
図15は、第6の実施例に係る電気駆動式ダンプトラック500に搭載された駆動システムの構成図である。本実施例では、主巻線2131のうち誘導発電機2とコンデンサ11とを接続する部分にリアクトル12が直列に配置されている。
【0229】
ダイオードブリッジ3の交流側端子にコンデンサ11が接続されているため、コンデンサ11に電流の跳ね上がりが生じるが、コンデンサ11はリアクトル12を介して誘導発電機2に接続されているため、誘導発電機2に流入する電流の跳ね上がりが抑制される。
【0230】
以上のように構成した第6の実施例によれば、第1または第2の実施例と同様に、コンバータ7の容量を小さくすることが可能となる。また、コンデンサ11がリアクトル12を介して誘導発電機2に接続されているため、コンデンサ11で生じた電流の跳ね上がりが誘導発電機2に流入することを抑制することが可能となる。
【0231】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0232】
1…原動機、2…誘導発電機、3…ダイオードブリッジ(整流器)、4…走行インバータ、5…走行モータ、6…回生放電抵抗器、7…コンバータ、8…補機インバータ、9…補機モータ、10…始動バッテリ、11…コンデンサ、12…リアクトル、21…固定子、22…回転子、23…ギャップ、211…固定子鉄心、212…固定子スロット、213…一次巻線、2131…主巻線、2132…補助巻線、214…楔、221…回転子鉄心、222…回転子スロット、223…二次導体、2231…回転子バー、2232…エンドリング、500…電気駆動式ダンプトラック、501…車体フレーム、502…ピン結合部、503…荷台、504L,504R…従動輪、505L,505R…駆動輪、506…運転席、507…駆動システム、508…発電システム。
図1
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