(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133004
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】有機半導体素子
(51)【国際特許分類】
H10K 85/60 20230101AFI20240920BHJP
C07D 333/18 20060101ALI20240920BHJP
C07D 487/22 20060101ALI20240920BHJP
C07C 15/28 20060101ALI20240920BHJP
C07C 15/20 20060101ALI20240920BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20240920BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20240920BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20240920BHJP
H10K 30/50 20230101ALI20240920BHJP
H10K 30/15 20230101ALI20240920BHJP
H10K 30/88 20230101ALI20240920BHJP
H10K 30/60 20230101ALI20240920BHJP
H10K 50/11 20230101ALI20240920BHJP
H01L 31/08 20060101ALI20240920BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240920BHJP
H10K 71/15 20230101ALI20240920BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H10K85/60
C07D333/18
C07D487/22
C07C15/28
C07C15/20
C09K11/06
C09K11/06 635
B82Y40/00
B82Y20/00
H10K30/50
H10K30/15
H10K30/88
H10K30/60
H10K50/11
H01L31/08 Z
G02B5/20
H10K71/15
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024039477
(22)【出願日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2023040121
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(71)【出願人】
【識別番号】591229440
【氏名又は名称】住化カラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(72)【発明者】
【氏名】水野 斎
(72)【発明者】
【氏名】甚上 知美
(72)【発明者】
【氏名】眞田 隆
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】吉村 大祐
(72)【発明者】
【氏名】高口 卓也
(72)【発明者】
【氏名】西村 元志
(72)【発明者】
【氏名】近藤 克己
【テーマコード(参考)】
2H148
2H149
3K107
4H006
5F149
5F251
【Fターム(参考)】
2H148AA05
2H149AA21
2H149BA02
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2H149DA12
2H149EA03
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3K107CC02
3K107CC07
3K107DD57
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3K107GG28
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4H006AB91
5F149AB11
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5F149DA33
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5F251JA04
5F251JA05
5F251XA01
5F251XA32
5F251XA61
(57)【要約】
【課題】有機半導体として高い特性を有する有機ナノ結晶を提供する。
【解決手段】以下の(i)~(iii)の1つ以上を示すことを特徴とする、π電子共役系を有する有機化合物の平均粒子径1nm~1μmである少なくとも1種の有機ナノ結晶を含む有機半導体素子。
(i)制限視野電子回折パターンにおける回折スポット
(ii)60%以上の結晶化度
(iii)1.5以上の屈折率。
有機ナノ結晶が、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー(TPCO)、ペリレン、アントラセン、フタロシアニン、ポルフィリンまたはフラーレンであることが好ましい。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)~(iii)の1つ以上を示すことを特徴とする、π電子共役系を有する有機化合物の平均粒子径1nm~1μmである少なくとも1種の有機ナノ結晶を含む有機半導体素子。
(i)制限視野電子回折パターンにおける回折スポット
(ii)60%以上の結晶化度
(iii)1.5以上の屈折率
【請求項2】
有機ナノ結晶が、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー(TPCO)、ペリレン、アントラセン、フタロシアニン、ポルフィリン、フラーレン、ナフタレン、フェナントレン、シクロペンタジエン、ピレン、テトラセン、ピセン、クリセン、クマリン、フルオレン、フルオランテン、チオフェン、フェニレン、キナクリドン、サブフタロシアニン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、アクリジン、キノリン、キノキサリン、イソキノリン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズオキサゾール、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、スチリル化合物、ブタジエン、およびそれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の有機半導体素子。
【請求項3】
有機ナノ結晶が、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー(TPCO)、ペリレン、アントラセン、フタロシアニン、ポルフィリンおよびフラーレンからなる群から選択された少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の有機半導体素子。
【請求項4】
有機ナノ結晶が、5,5’-ビス(4-ビフェニリル)-2,2’-ビチオフェン(BP2T)、5,5’-ビス(4’-シアノビフェニル-4-イル)-2,2’-ビチオフェン(BP2T-CN)、2,5-ビス(4’-メトキシビフェニル-4-イル)チオフェン(BP1T-OMe)、2,5-ビス(4-ビフェニリル)ターチオフェン(BP3T)および2,5-ビス(4-ビフェニリル)テトラチオフェン(BP4T)からなる群から選択された少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の有機半導体素子。
【請求項5】
有機ナノ結晶の平均粒子径が1nm~100nmである請求項1に記載の有機半導体素子。
【請求項6】
有機ナノ結晶の屈折率が2.5以上である請求項1に記載の有機半導体素子。
【請求項7】
有機ナノ結晶が活性層を形成する請求項1に記載の有機半導体素子。
【請求項8】
光電変換素子である請求項1に記載の有機半導体素子。
【請求項9】
下記(a)~(g)から選択されたいずれか1つである請求項1に記載の有機半導体素子:
(a)表示素子、(b)太陽光発電素子、(c)円偏光発振素子、(d)有機レーザー素子、(e)波長変換素子(量子ドット素子)、(f)バイオイメージ素子、(g)抗原検査素子。
【請求項10】
請求項1~6のいずれかに記載の有機半導体素子を含む構造物であって、
構造物が部品、装置、またはシステムである構造物。
【請求項11】
以下の(i)~(iii)の1つ以上を示すことを特徴とする、π電子共役系を有する有機化合物の平均粒子径1nm~1μmである少なくとも1種の有機ナノ結晶。
(i)制限視野電子回折パターンにおける回折スポット
(ii)60%以上の結晶化度
(iii)1.5以上の屈折率
【請求項12】
有機ナノ結晶が、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー(TPCO)、ペリレン、アントラセン、フタロシアニン、ポルフィリンおよびフラーレンからなる群から選択された少なくとも1種の化合物である請求項11に記載の有機ナノ結晶。
【請求項13】
以下の(a)、(b)の工程を含んでなる、請求項11に記載の有機ナノ単結晶の製造方法。
(a)貧溶媒と相溶性を有する良溶媒にπ電子共役系を有する少なくとも1種の有機化合物を溶解させた有機化合物溶液を調製する工程
(b)直径3mm以下の孔を1以上有する吐出器具から、有機化合物溶液を貧溶媒中に吐出して撹拌し、分散液を得る工程
【請求項14】
有機化合物が、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー、ペリレン、アントラセン、フタロシアニン、ポルフィリン、フラーレン、およびそれらの誘導体から選択された少なくとも1種である、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
良溶媒が、エーテル、エステル、ケトン、アルコール、アミドおよび炭化水素から選択された少なくとも1種の溶媒であり、
貧溶媒が、水を含んでなる溶媒であり、
良溶媒と貧溶媒との体積比率は、(良溶媒:貧溶媒)1:2~1:100である、請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
吐出器具が、シリンジ、ディスペンサー、インクジェットノズル、エアノズル、エアブローノズル、スリットノズル、ミストノズル、噴射ノズル、スプレーノズル、紡糸用ノズル、多孔膜、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜から選択された少なくとも1種の器具であり、
吐出器具の孔の直径が、0.1~800μmであり、
吐出速度が、1つの孔に対して、0.01~100mL/分である、請求項13に記載の製造方法。
【請求項17】
吐出して撹拌して、有機化合物が分散した分散液を得る、請求項13に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項11に記載の有機ナノ結晶、および
貧溶媒を含む溶媒、
を含む、分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体素子、蛍光燐光物質、色素に関する。
【背景技術】
【0002】
国際出願公開2012/034627(特許文献1)は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)に使用するための材料を開示している。
特開2014-78729号公報(特許文献2)は、有機薄膜トランジスタに使用する有機化合物を開示している。
特開2011-187924号公報(特許文献3)は、有機半導体材料として(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーを使用する発光トランジスタを開示している。
特開2016-149500号公報(特許文献4)は、有機半導体材料として(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーを使用する有機太陽電池を開示している。
【0003】
Adv. Photonics Res. 3, 2022, 2100323(T. Jinjyo, H. Mizunoら)(非特許文献1)は、ミニエマルション法で作製した有機ナノ結晶を説明している。
しかし、これらに開示されている有機EL素子などの素子は、十分な特性を有していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際出願公開2012/034627
【特許文献2】特開2014-78729号公報
【特許文献3】特開2011-187924号公報
【特許文献4】特開2016-149500号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Adv. Photonics Res. 3, 2022, 2100323
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機ナノ結晶を使用し、高い特性を有する有機半導体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、有機ナノ結晶を含んでなる有機半導体素子を提供する。
有機ナノ結晶は、蛍光材料、燐光材料、色素(顔料または染料)としても使用できる。例えば、発光植物(蓄光を利用した発光植物)および道路での発光などにおいて、使用できる。
有機ナノ結晶は、黄色から青色まで(例えば、緑色や青色で)発光できる。
【0008】
有機半導体素子(有機半導体デバイス)としては、例えば、ディスクリート(個別半導体)、光半導体、センサが挙げられる。
【0009】
ディスクリート(個別半導体)としては、ダイオード(例えば、一般整流用ダイオード、高速整流用ダイオード、スイッチングダイオード、ツェナーダイオード、ESD保護用ダイオード、可変容量ダイオード)、トランジスタ(例えば、MOSFET、接合型FET、バイポーラトランジスタ、IGBT)、サイリスタ、モジュールが挙げられる。
光半導体としては、発光デバイス(例えば、LED、レーザーダイオード)、受光デバイス(例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトサイリスタ、フォトトライアック)、光複合デバイス(例えば、フォトカプラ、フォトリレー、フォトインタラプタ)、光通信用デバイスが挙げられる。
センサとしては、温度センサ、圧力センサ、加速度センサ、磁気センサ、照度センサ、近接センサが挙げられる。
【0010】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]
以下の(i)~(iii)の1つ以上を示すことを特徴とする、π電子共役系を有する有機化合物の平均粒子径1nm~1μmである少なくとも1種の有機ナノ結晶を含む有機半導体素子。
(i)制限視野電子回折パターンにおける回折スポット
(ii)60%以上の結晶化度
(iii)1.5以上の屈折率
[2]
有機ナノ結晶が、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー(TPCO)、ペリレン、アントラセン、フタロシアニン、ポルフィリン、フラーレン、ナフタレン、フェナントレン、シクロペンタジエン、ピレン、テトラセン、ピセン、クリセン、クマリン、フルオレン、フルオランテン、チオフェン、フェニレン、キナクリドン、サブフタロシアニン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、アクリジン、キノリン、キノキサリン、イソキノリン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズオキサゾール、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、スチリル化合物、ブタジエン、およびそれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の化合物である[1]に記載の有機半導体素子。
[3]
有機ナノ結晶が、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー(TPCO)、ペリレン、アントラセン、フタロシアニン、ポルフィリンおよびフラーレンからなる群から選択された少なくとも1種の化合物である[1]に記載の有機半導体素子。
[4]
有機ナノ結晶が、5,5’-ビス(4-ビフェニリル)-2,2’-ビチオフェン(BP2T)、5,5’-ビス(4’-シアノビフェニル-4-イル)-2,2’-ビチオフェン(BP2T-CN)、2,5-ビス(4’-メトキシビフェニル-4-イル)チオフェン(BP1T-OMe)、2,5-ビス(4-ビフェニリル)ターチオフェン(BP3T)および2,5-ビス(4-ビフェニリル)テトラチオフェン(BP4T)からなる群から選択された少なくとも1種の化合物である[1]に記載の有機半導体素子。
[5]
有機ナノ結晶の平均粒子径が1nm~100nmである[1]に記載の有機半導体素子。
[6]
有機ナノ結晶の屈折率が2.5以上である[1]に記載の有機半導体素子。
[7]
有機ナノ結晶が活性層を形成する[1]に記載の有機半導体素子。
[8]
光電変換素子である[1]に記載の有機半導体素子。
[9]
下記(a)~(g)から選択されたいずれか1つである[1]に記載の有機半導体素子:
(a)表示素子、(b)太陽光発電素子、(c)円偏光発振素子、(d)有機レーザー素子、(e)波長変換素子(量子ドット素子)、(f)バイオイメージ素子、(g)抗原検査素子。
[10]
[1]~[6]のいずれかに記載の有機半導体素子を含む構造物であって、
構造物が部品、装置、またはシステムである構造物。
[11]
以下の(i)~(iii)の1つ以上を示すことを特徴とする、π電子共役系を有する有機化合物の平均粒子径1nm~1μmである少なくとも1種の有機ナノ結晶。
(i)制限視野電子回折パターンにおける回折スポット
(ii)60%以上の結晶化度
(iii)1.5以上の屈折率
[12]
有機ナノ結晶が、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー(TPCO)、ペリレン、アントラセン、フタロシアニン、ポルフィリンおよびフラーレンからなる群から選択された少なくとも1種の化合物である[11]に記載の有機ナノ結晶。
[13]
以下の(a)、(b)の工程を含んでなる、[11]に記載の有機ナノ単結晶の製造方法。
(a)貧溶媒と相溶性を有する良溶媒にπ電子共役系を有する少なくとも1種の有機化合物を溶解させた有機化合物溶液を調製する工程
(b)直径3mm以下の孔を1以上有する吐出器具から、有機化合物溶液を貧溶媒中に吐出して撹拌し、分散液を得る工程
[14]
有機化合物が、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー、ペリレン、アントラセン、フタロシアニン、ポルフィリン、フラーレン、およびそれらの誘導体から選択された少なくとも1種である、[13]に記載の製造方法。
[15]
良溶媒が、エーテル、エステル、ケトン、アルコール、アミドおよび炭化水素から選択された少なくとも1種の溶媒であり、
貧溶媒が、水を含んでなる溶媒であり、
良溶媒と貧溶媒との体積比率は、(良溶媒:貧溶媒)1:2~1:100である、[13]に記載の製造方法。
[16]
吐出器具が、シリンジ、ディスペンサー、インクジェットノズル、エアノズル、エアブローノズル、スリットノズル、ミストノズル、噴射ノズル、スプレーノズル、紡糸用ノズル、多孔膜、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜から選択された少なくとも1種の器具であり、
吐出器具の孔の直径が、0.1~800μmであり、
吐出速度が、1つの孔に対して、0.01~100mL/分である、[13]に記載の製造方法。
[17]
吐出して撹拌して、有機化合物が分散した分散液を得る、[13]に記載の製造方法。
[18]
[11]に記載の有機ナノ結晶、および
貧溶媒を含む溶媒、
を含む、分散液。
【0011】
有機ナノ結晶は、
(i)制限視野電子回折パターンにおける回折スポット、
(ii)60%以上の結晶化度、および
(iii)1.5以上の屈折率
の少なくとも1つの要件を満たす。有機ナノ結晶は、要件(i)および(ii)の組み合わせ、要件(i)および(iii)の組み合わせ、または要件(ii)および(iii)の組み合わせを満たすことが好ましい。有機ナノ結晶は要件(i)、(ii)および(iii)のすべてを満たすことがさらに好ましい。
【0012】
本発明は、有機ナノ結晶(特に、有機半導体素子)を使用した構造物、例えば、装置、部品またはシステムを提供する。
【0013】
「部品」とは、単一の素子を有する構成に限定されず、複数の素子を有する構成も含む。「装置」とは、単一の部品を含むものであってよく、複数の素子または部品を有する構成も含む。「システム」とは、単一の装置を有するシステムに限定されず、複数の装置を有するシステムも含む。「装置」および「システム」には、ソフトウェアおよびハードウェアを組み合わせた実施形態が含まれる。
【0014】
本発明は、有機ナノ結晶の製造方法にも関する。
従来の再沈法は、簡便かつ汎用的な手法である一方、表面に保護膜が無い有機化合物粒子では凝集が生じ、孤立分散させるために界面活性剤および分散剤などの添加剤を加えると、ナノ結晶の物性に影響を及ぼす問題があった。本発明の有機ナノ結晶の製造方法は、この問題を解決する。
【0015】
本発明は、孤立分散した結晶性の高い有機ナノ結晶が簡便に得られる、有機ナノ結晶の製造方法(再沈法)をも提供する。
本発明の一態様に係る有機ナノ結晶の製造方法は、貧溶媒と相溶性を有する良溶媒にπ電子共役系を有する有機化合物を溶解させた溶液を、貧溶媒中で攪拌する工程を含む。
【発明の効果】
【0016】
ナノ結晶には、界面活性剤などの余計なものがなく、かつ結晶性が高いため,特性が高い。結晶成長過程で界面活性剤が存在しないので、結晶形態も四角形や六角形と整った形状もナノ結晶が得られる。本発明のナノ結晶は、粒子径の変動幅が小さい。粒子径の整ったナノ粒子によって、バルクヘテロ接合型構造などの構造を制御できる。
ナノサイズの単結晶を生成可能であり、経時による結晶成長が起こらない。ナノ結晶は、安定性に優れており、高温(例えば、105℃)耐久性を有しており、量子効果を発現する。ナノ結晶は、許容電流量が大きく、発光の量子効率が優れ、レーザー発振が可能である。ナノ結晶は、高輝度で発光でき、波長選択性(例えば、400~800nm)を有する。単結晶の場合に特に、発光効率(光電変換効率)が高い。さらに、キラル中心を持つ化合物のナノ結晶により、円偏光の発光が可能である。ナノ結晶は、例えば結晶粒子径によって、発光波長が可変である。例えばナノ結晶粒子径によって、PN接合を形成する際のドメインサイズの制御が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1E】有機ナノ結晶をラベル剤において使用する模式図である。
【
図2】有機ELディスプレイの構造の一例を示す模式的部分断面図である。
【
図3】液晶ディスプレイの構造の一例を示す模式断面図である。
【
図4】太陽電池の要部の層構成の一例を示す模式断面図である。
【
図5】有機薄膜太陽電池における光電変換素子の一例を示す模式断面図である。
【
図6A】3D表示用有機ELディスプレイの一例の概略断面を示す。
【
図6B】3D表示光学層と直線偏光層の構成の一例を示す模式図である。
【
図6C】3D表示用有機ELディスプレイの3D表示の一例の分解模式図である。
【
図7】有機半導体レーザー素子の構造の一例の断面模式図を示す。
【
図8A】量子ドット素子を使用した赤外線検出器の一例の概略図である。
【
図8B】
図8Aに示す線II-II間における赤外線検出器の概略断面図である。
【
図9】バイオイメージ素子として機能するシングルゲートFETの一例の概略断面図である。
【
図10】表示装置の駆動方法の一つの例を説明する模式図である。
【
図11】太陽光発電システムの構成の例を示す模式図である。
【
図12A】ナノ結晶を用いた有機EL素子の模式図である。
【
図12B】ナノ結晶を用いた有機EL素子の電流密度-電圧(J-V)曲線である。
【
図12C】ナノ結晶を用いた有機EL素子からのELスペクトルである。
【
図13】実施例B3で得られた有機ナノ結晶の発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
有機ナノ結晶は、蛍光材料、燐光材料、色素(顔料または染料)としても使用できるが、有機素子として使用することが好ましい。
有機素子は、一般に、半導体素子、すなわち、有機半導体素子である。
本発明において、光電変換素子が好ましい。熱電変換素子も挙げられる。
本発明においては、素子として、(a)表示素子、(b)太陽光発電素子、(c)円偏光発振素子、(d)有機レーザー素子、(e)波長変換素子(量子ドット素子)、(f)バイオイメージ素子、(g)抗原検査素子が好ましい。
【0019】
以下、本発明の実施の形態の例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0020】
<光電変換素子>
「光電変換素子」とは、光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子(受光素子)、または電気エネルギーを光エネルギーに変換する素子(発光素子)を意味する。
光を電気に変換する素子の例としては、太陽光発電素子などの光電池素子、フォトダイオード素子、フォトトランジスタ素子、光電管素子、光電子増倍管素子が挙げられる。
電気を光に変換する素子の例としては、有機EL(エレクトロルミネセンス)素子および発光ダイオードなどの表示素子、半導体レーザー素子(有機レーザー素子、例えば、有機半導体レーザーダイオード素子)、円偏光発振素子が挙げられる。
太陽光発電素子は、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、およびペロブスカイト太陽電池において使用できる。
共振器モードが観測されるので、有機ナノ結晶は、レーザーダイオードの活性媒質として使用できる。
円偏光発振素子は、3Dディスプレイとして使用できる。
有機ナノ結晶は、液晶ディスプレイなどのディスプレイにおける白色光源において使用できる。
例えば、有機ナノ結晶は、量子効果発現による発光色変化を利用した有機EL素子において、使用できる。無毒な材料を用いて有機EL素子を作製できることは、産業応用上の意義が大きい。
【0021】
<熱電変換素子>
「熱電変換素子」とは、ゼーベック効果、熱磁気効果、スピンゼーベック効果などを利用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換する素子である。熱電変換素子は、例えば、p型熱電変換素子、n型熱電変換素子、高温側電極および低温側電極を有する。
【0022】
<他の有機素子>
光電変換素子および熱電変換素子以外の有機素子の例としては、波長変換素子(例えば、量子ドット素子)、バイオイメージ素子(例えば、蛍光バイオイメージ素子)、抗原検査素子が挙げられる。
【0023】
有機ナノ結晶の用途を、特に有機素子の基本的な構造の模式図を、
図1A~1Eに示す。
図1A~1Cにおいて、有機素子の順構造型および逆構造型を示す。
図1D~1Eは、有機ナノ結晶をラベル剤において使用する模式図である。
透明電極は、ITO(「酸化インジウム(III)(In
2O
3)」と「酸化スズ(IV)(SnO
2)」の無機混合物)であってよい。
【0024】
以下に、本発明の有機素子を用いた例(例えば、有機素子の構造)について、説明する。
【0025】
<有機EL素子>
有機EL素子の構造としては、基板上に順次に、陽極、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、陰極からなる構造、また、陽極と正孔輸送層の間に正孔注入層を有するもの、電子輸送層と陰極の間に電子注入層を有する構造、発光層と正孔輸送層の間に電子阻止層を有する構造があげられる。これらの多層構造においては有機層を何層か省略することが可能であり、例えば基板上に順次に、陽極、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極を有する構成とすることもできる。発光層、正孔輸送層、電子輸送層のそれぞれにおいては、2層以上積層された構造であっても良い。有機EL素子の陽極としては、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。
【0026】
<有機ELディスプレイ>
図2は、有機ELディスプレイの構造の一例を示す模式的部分断面図である。ガラス上にTFTを形成したTFT基板102に対し、白色有機発光層104を形成し、さらに透明な上部電極層を形成することで、有機EL発光素子構造を形成する。その後、水分吸収能を有する封止剤を介して、電極付きカラーフィルタ基板106を貼り合わせる。こうして静電容量式タッチセンサとカラーフィルタ、封止ガラスを兼ねた層を形成することで有機ELディスプレイ100が得られる。カバーガラス108が最も外側にある。白色有機発光層104は、正孔輸送層、正孔注入層、発光層、電子注入層、電子輸送層等からなっていてよい。
【0027】
有機ELディスプレイにおいて、有機ナノ結晶が白色有機発光層、特に発光層を形成する。
【0028】
本発明によれば、高輝度ハイコントラストディスプレイが得られる。有機ELではハイコントラストが得られるが、バックプレーンの総電流量からの制約で、画面全体の高輝度が得られない現状がある。本発明によれば、素子の耐久性が高く、電流あたりの発光効率が向上して、高輝度が得られる。単結晶の堅牢な構造によって、高エネルギー領域および高出力下での素子の寿命が長い。ナノ結晶サイズ制御などによりHOMO/LUMOエネルギーレベルを調整することで電荷生成効率や電荷移動特性を向上させ、光電変換効率が向上する。
有機ELディスプレイは、一般に、基板上に有機トランジスタからなる画素回路を作製した後、その上に有機EL素子を連続的に作製することによって得られる。従来では、真空蒸着法により有機ELを作製していたが、本発明によれば、塗布により有機EL素子を容易に作製することができる。従来、蒸着型素子に用いていた置換基を持たない分子の有機化合物が塗布法により成膜でき、素子の特性を向上させる。
【0029】
<液晶ディスプレイ>
図3は、液晶ディスプレイの構造の一例を示す模式断面図である。この構造において、白色光源が直下型となっている。色材シート210は、光学フィルム208よりも上方(すなわち、光学フィルム208の、白色光源(または励起光源)202側との反対側)に設けることが好ましい。なお、色材シート210は、光学フィルム208と蛍光体シート206との間でもよいし、蛍光体シート206と拡散板204との間でもよいし、拡散板204の下方(すなわち、拡散板204の白色光源202側)であってもよい。なお、白色光源がエッジライト式の場合、拡散板に代わって導光板を用いる構成となる。
白色光源(または励起光源)において、有機ナノ結晶を使用できる。
【0030】
高演色性のテレビ(8K等)用蛍光体として、従来はQD(量子ドット)蛍光体が使用されているが、従来の蛍光体はCd(カドミウム)を使用しており、Cdを使用しないことが望まれている。ごく微量のCdの含有量によって蛍光体を実用化していたが、Cdの含有量と演色性とはトレードオフ関係がある。すなわち、Cdの含有量を少なくすると、演色性が低くなる。演色性と寿命にもトレードオフ関係がある。すなわち、演色性が高くなると、寿命が短くなる。本発明の有機ナノ結晶は、高演色性、有害物質フリー、高寿命を達成する。
【0031】
<太陽電池>
図4は、太陽電池の要部の層構成の一例を示す模式断面図である。この太陽電池300は、多孔性絶縁層308上に第二導電層310が形成されたタイプである。具体的には、基板302上に第一導電層304が形成されてなる導電性基板305と、第一導電層304上に順次形成された触媒層306、(多孔性)絶縁層308、第二導電層310、増感色素が吸着された半導体層312および透光性カバー部材316、スクライブライン320とを備え、多孔性絶縁層308および多孔性半導体層312は電解質314を含有している。また、導電性基板305と透光性カバー部材316との間の外周部に封止部318が設けられている。
増感色素として有機ナノ結晶を使用できる。
【0032】
本発明において、有機ナノ結晶を使用しているので、太陽電池の耐久性が向上する。
有機太陽電池において、PN接合のドメインサイズの設計を可能とすることで、光電変換効率が向上する。ナノ結晶サイズ制御によりHOMO/LUMOエネルギーレベルを調整することで電荷生成効率や電荷移動特性を向上させ、光電変換効率が向上する。従来の蒸着型素子に用いていた置換基を持たない分子も溶液塗布法により成膜できるので、特性を落とすことなく、素子とすることが可能である。結晶サイズを変更することで吸収波長を制御できる。タンデム化で広い波長領域で発電可能になる。単結晶の堅牢な構造により、素子の長寿命化が可能になる。高エネルギー領域および高出力下において、素子の寿命が長い。
【0033】
<有機薄膜太陽電池の光電変換素子>
図5は、有機薄膜太陽電池における光電変換素子の一例を示す模式断面図である。光電変換素子400は、光電変換可能な領域である光電変換領域402、光電変換領域402を取り囲む封止領域403、および端子等のその他部材が設けられたその他領域404を有する。
光電変換素子400は、光電変換領域402において、積層方向zに沿って、光の入射面側から順に、UVカット層411、基材(素子基材)412、第一の電極413、第一の電子輸送層414、第二の電子輸送層(中間層)415、光電変換層416、正孔輸送層417、第二の電極418、表面保護部(パッシベーション層)419、および封止部材420を積層した構造を有する。また、光電変換素子400は、封止領域403において、積層方向zに沿って、光の入射面側から順に、UVカット層411、基材(素子基材)412、第一の電極413、および封止部材420を積層した構造を有する。このとき、封止部材420は、接着部材(絶縁層)421およびガスバリア部材422を有し、ガスバリア部材422は、金属層423および基材(封止基材)424を有する。また、封止部材420は、第一の電子輸送層414、第二の電子輸送層(中間層)415、光電変換層416、正孔輸送層417、第二の電極418、および表面保護部(パッシベーション層)419を内包し、且つ表面保護部419(パッシベーション層)および第一の電極413における封止領域403と接着している。光電変換素子400は、別の光電変換素子と直列または並列に電気的に接続されるための接続部などを有していてもよい。また、積層方向zは、光電変換素子における各層の面(xy面)に対して垂直な方向を表す。
光電変換層において、有機ナノ結晶を使用できる。
【0034】
<色素増感太陽電池の光電変換素子>
太陽電池の例としては、色素増感太陽電池が挙げられる。
色素増感太陽電池の光電変換素子は、少なくとも、第一の電極、光電変換層、および第二の電極を順次有する。また、光電変換層は、電子輸送部、光増感化合物(有機ナノ結晶)、および正孔輸送部を有する。光電変換素子は、表面保護部を有してもよい。表面保護部は、第一の電極および第二の電極から選ばれる一方の電極の光電変換層と対向していない面と隣接して設けられている。光電変換素子は、封止部材を有する。封止部材は、表面保護部と隣接して設けられることが好ましく、表面保護部、一方の電極、および光電変換層を内包する。
光電変換素子は、必要に応じて、基材(素子基材)などを有する。基材(素子基材)は、他方の電極の光電変換層と対向していない面側において、他方の電極と隣接して設けられていることが好ましい。
すなわち、光電変換素子は、一例として、基材(素子基材)、第一の電極、光電変換層、第二の電極、表面保護部、および封止部材が順次積層された構成を有する。
【0035】
<ペロブスカイト太陽電池の光電変換素子>
太陽電池の例としては、ペロブスカイト太陽電池が挙げられる。有機ナノ結晶は、ペロブスカイト材料と組合せて使用することができる。
ペロブスカイト太陽電池の光電変換素子は、少なくとも、第一の電極、光電変換層、および第二の電極を順次有する。電極と層との間に他の層などが挿入されて場合としては、例えば、第一の電極、電子輸送層、光電変換層、正孔輸送層、および第二の電極を順次有する光電変換素子が挙げられる。光電変換素子は、表面保護部を有してもよい。表面保護部は、第一の電極および第二の電極から選ばれる一方の電極の光電変換層と対向していない面と隣接して設けられている。
光電変換素子は、封止部材を有する。封止部材は、表面保護部と隣接して設けられていることが好ましく、表面保護部、一方の電極、および光電変換層を内包する。
光電変換素子は、必要に応じて、基材(素子基材)などを有する。基材(素子基材)は、他方の電極の光電変換層と対向していない面側において、他方の電極と隣接して設けられていることが好ましい。
すなわち、光電変換素子は、一例として、基材(素子基材)、第一の電極、電子輸送層、光電変換層、正孔輸送層、第二の電極、表面保護部、および封止部材が順次積層された構成を有する。
【0036】
<円偏光発振素子>
図6Aは、3D表示用有機ELディスプレイの一例の概略断面を示す。3D表示用有機ELディスプレイ500は、その上に白色光を発する画素に相当する有機EL素子502が形成された有機EL素子基板522と、有機EL素子基板522に対向する位置に配置された透明基板524の表面に有機EL素子502に対応した画素状のカラーフィルタ504を有している。透明基板524上には、カラーフィルタ層504と、隣接した画素の位相が1/2λ異なる円偏光層からなる3D表示光学層520と、直線偏光層513と、1/4λ偏光層530とが、この順に一体として形成され積層体を形成している。3D表示光学層520は、左目画像生成領域と右目画像生成領域を形成することにより、立体視(3D表示)を可能とするためのものである。1/4λ偏光層530は、外部入射光が3D表示用有機ELディスプレイ500の内部で反射されるのを防止するためのものである。また、3D表示光学層520は、カラーフィルタ504の上に光配向層522と、第一液晶ポリマー層524が、この順に積層されたものである。光514が矢印の方向に進む。
【0037】
図6Bは、3D表示光学層560と直線偏光層563の構成の一例を示す模式図である。3D表示光学層560は、3D表示用有機ELディスプレイの観察者側に設けられ、光配向層561と第一液晶ポリマー層562とを備え、隣接した、有機EL素子が形成する画素に対応した領域の円偏光層の位相を1/2λ違えて形成することで、直線偏光層563を通り直線偏光に変換した画像光564を左目用偏光画像および右目用偏光画像に変換して出力することが可能となる。
【0038】
光配向層561は光配向性樹脂であってよい。光配向層561は、光分解型、光二量型、または光異性型等の光配向性樹脂の分子が、直線偏光の紫外線を露光(偏光露光)することにより所定の方向に配向され、硬化したものである。
【0039】
図6Cは、3D表示光学層590を備える3D表示用有機ELディスプレイ570の3D表示の一例の分解模式図(斜視図)を示す。3D表示用有機ELディスプレイ570は、有機EL素子基板585と、1/4λ偏光層575と、直線偏光層574と、3D表示光学層573と、カラーフィルタ572と透明基板571、をこの順に備えている。観察者が、この3D表示用有機ELディスプレイ570が表示する立体画像を観察する場合、3D表示光学層573よりも右側から観察する。
【0040】
有機EL素子基板585は、交互に形成された右目画像生成領域586および左目画像生成領域587を有する。これら右目画像生成領域586および左目画像生成領域587は、有機EL素子基板585の画像生成部を、鉛直方向に区画した領域であり、複数の右目画像生成領域586および左目画像生成領域587が鉛直方向に交互に配されている。
【0041】
一般に、3D表示ディスプレイの使用状態において、画像生成部の右目画像生成領域586および左目画像生成領域587には、それぞれ右目用画像および左目用画像が生成される。このとき、右目画像生成領域586の発光は右目用画像の画像光となる。同様に、左目画像生成領域587の発光は左目用画像の画像光となる。
【0042】
直線偏光層574は、上記の右目画像生成領域586からの右目用画像光、および、上記左目画像生成領域587からの左目用画像光が入射すると、これらのうち偏光方向が透過軸と平行な直線偏光を透過すると共に、偏光方向が吸収軸と平行な直線偏光を遮断する。ここで、直線偏光層574における透過軸の方向は、直線偏光層574に矢印で示すように、観察者が3D表示用有機ELディスプレイ570を見たときの水平方向である。
【0043】
結晶にキラル中心を導入することで円偏光を発振でき、3Dディスプレイに使用できる。
【0044】
本発明によれば、有機EL素子を円偏光発光体にして、
図6CにおいてR、Lと記載された領域に右円偏光発光体と左円偏光発光体を塗り分けることによって、3D表示光学層520および1/4λ偏光層530を省略することが可能になる。
【0045】
<有機レーザー素子>
有機レーザー素子において、有機ナノ結晶を含む膜を利得媒質として使用できる。
【0046】
有機ナノ結晶は、高い量子収率と低いASE閾値を示すとともに、安定性が高い。有機ナノ結晶を有機レーザー素子の材料に用いることにより、優れたレーザー特性を実現することができる。
【0047】
有機レーザー素子は、発光層に励起光が照射されることでレーザー光を放射する光励起型の有機レーザー素子であってもよいし、発光層に正孔と電子が注入され、それらが再結合して生じたエネルギーによりレーザー光を放射する電流励起型の有機レーザー素子(有機半導体レーザー素子)であってもよい。光励起型の有機レーザー素子は、基板上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機半導体レーザー素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を有するものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。
【0048】
図7は、具体的な有機半導体レーザー素子の構造の一例の断面模式図を示す。有機半導体レーザー素子600は、基板601、陽極602、正孔注入層603、正孔輸送層604、発光層605、電子輸送層606、陰極607を有する。電流励起型の有機半導体レーザー素子において、発光層で生じたレーザー光は、陽極を透過して外部に取り出されても、陰極を透過して外部に取り出されてもよく、陽極および陰極を透過して外部に取り出されてもよい。また、発光層で生じたレーザー光は、有機層の端面から外部に取り出されてもよい。
【0049】
<波長変換素子>
ある波長の光を短波長の光に変換する技術(アップコンバージョン技術)において、エネルギー供与体(Donor,以下D体という)と2つのエネルギー受容体(Accepter,以下A体という)からなるものが知られている。D体が或る波長の励起光を吸収し、励起状態になる。次に、D体からA体にそれぞれ励起エネルギーが移動し、A体が励起状態になる。さらに、1つのA体(A1体)から他のA体(A2体)に励起エネルギーが移動し、A1体が基底状態に戻ると共に、A2体がよりエネルギーの高い励起状態になる。そして、A2体が基底状態に戻る際に、励起光よりも短波長の光を発する。
【0050】
上記のようなアップコンバージョンを生じる構成として、有機化合物のD体およびA体と、D体およびA体が分散したマトリックスと、を有する波長変換材料が用いられている。このような波長変換材料では、D体からA体への励起エネルギー移動、および一方のA体から他方のA体への励起エネルギーの移動が生じるためには、D体とA体とがマトリクス中に拡散し、且つ衝突する必要がある。このため、D体とA体のマトリクス中での拡散がボトルネックとなって、波長変換効率が低下する懸念があった。
本発明の有機ナノ結晶を用いると、高い波長変換効率が得られる。
【0051】
<量子ドット素子>
量子ドット素子(例えば、量子ドットシート)は、多くの用途において使用される。本発明の有機ナノ結晶はサイズが均一であり、発光効率が高くなる。
【0052】
LCDのバックライトの省電力化に伴って、光利用効率を高め、また、色再現性を向上するために、入射光の波長を変換して出射する量子ドット(QD)を発光材料(蛍光体)として含んだ波長変換層を利用できる。
【0053】
量子ドットとは、三次元全方向において移動方向が制限された電子の状態のことであり、半導体のナノ粒子が、高いポテンシャル障壁で三次元的に囲まれている場合に、このナノ粒子は量子ドットとなる。量子ドットは種々の量子効果を発現する。量子効果としては、例えば、電子の状態密度(エネルギー準位)が離散化される「量子サイズ効果」が発現する。この量子サイズ効果によれば、量子ドットの大きさを変化させることで、光の吸収波長および発光波長を制御できる。
【0054】
一般に、このような量子ドットは、樹脂等の中に分散されて、例えば、波長変換を行う量子ドットフィルムとして、バックライトと液晶パネルとの間に配置されて用いられる。
バックライトから量子ドットを含むフィルムに励起光が入射すると、量子ドットが励起されて蛍光を発光する。ここで異なる発光特性を有する量子ドットを用い、各量子ドットに赤色光、緑色光もしくは青色光の半値幅の狭い光を発光させることにより白色光を具現化することができる。量子ドットによる蛍光は半値幅が狭いため、波長を適切に選択することで、得られる白色光を高輝度にすること、および、色再現性に優れる設計にすることが可能である。
【0055】
図8Aは、量子ドット素子を使用した赤外線検出器の一例の概略図である。
図8Bは、
図8Aに示す線VIIIB-VIIIB間における赤外線検出器の断面図である。
赤外線検出器700は、支持基板720と、電極701と、複数の量子ドット素子702と、金属ワイヤ703とを備える。
量子ドット素子702は、コンタクト層721,723と、光電変換層722と、電極724とを含む 。
電極701は、支持基板720上に配置されている。複数の量子ドット素子702は、光電変換層722を構成する量子ドット層722に含まれる中間層730と、コンタクト層723とを共通に有し、電極1上に周期的に配置される。光電変換層722は、単層であってもよく、あるいは多層(例えば、3~100層)であってもよい。
コンタクト層723は、電極701の一方の面に接して電極701上に配置される。光電変換層722は、コンタクト層723に接してコンタクト層723上に配置される。コンタクト層721は、光電変換層722に接して光電変換層722上に配置される。電極724は、金属ワイヤ703を覆うようにコンタクト層721に接してコンタクト層721上に配置される。
【0056】
金属ワイヤ703は、量子ドット素子702の領域においては、y軸方向に沿ってコンタクト層721上にコンタクト層721および電極724に接して配置される。この場合、金属ワイヤ703は、電極724をy軸方向に貫通する。また、金属ワイヤ703は、量子ドット素子702のコンタクト層721および光電変換層722の側面に接するとともに、隣接する量子ドット素子702間においては、光電変換層722の一部の層(中間層730)に接して配置される。金属ワイヤ703は、例えば、Ti,Auからなり、150nmの幅を有する。金属ワイヤ703がTi,Auからなる結果、金属ワイヤ703は、光電変換層722の一部の層(中間層730)との間でショットキーバリアを形成するので、垂直方向の電流が抑制される。
【0057】
無機系量子ドットは、有害な金属化合物を含有するので、作業面および環境面で懸念がある。有機系量子ドットは、耐熱安定性や長期使用時の安定性に課題があった。本発明の有機ナノ結晶の長期安定性および耐熱性を生かして、樹脂への容易な混合、例えば、樹脂への練りこみが可能になる。有機ナノ単結晶は大気安定性および耐熱性も高い。
本発明の有機ナノ結晶はサイズが均一であり、発光効率が高くなる。
【0058】
<バイオイメージ素子>
バイオイメージングは、生体内分子や細胞、生体組織の動態および機能を可視化する技術であり、生体内分子・細胞機能の解明や創薬の研究等、生物学、医学の研究領域で幅広く活用されている。中でも蛍光バイオイメージングは、現象の動的な観察、多色観察、高感度観察が可能な手法である。
【0059】
蛍光バイオイメージングは、標的物質と特異的に結合する、あるいは、標的部位に集積する蛍光色素を用い、その蛍光色素に光を照射した際に色素が発する蛍光を検出することにより、標的を可視化する手法である。
【0060】
蛍光色素の細胞集積性を高める手段として、例えば、蛍光分子にリン脂質構造を導入した蛍光色素が開発されている。これにより、蛍光色素が細胞膜上に良好に固定化され、高い蛍光標識能を示すが、優れた特性を有する傾向色素は開発されていない。
本発明の有機ナノ結晶は、蛍光色素の成分として使用することができる。したがって、バイオイメージ素子は、レーザー発振できる。
【0061】
バイオイメージ素子は、バイオイメージセンサにおいて使用される。
図9は、バイオイメージ素子として機能するシングルゲートFETの一例の概略断面図である。シングルゲートFETは、1つのゲート電極811を有する。シングルゲートFETは、基板801と、絶縁膜802と、チャネル803と、ソース・ドレイン電極805,806と、絶縁膜807と、ゲート電極811と、を備える。シングルゲートFETは、ゲート電極811に電圧を印加することでチャネル803とチャネル803上に配置された試料808との界面に電気二重層を形成し、ソース・ドレイン電極805,806間に流れるドレイン電流を制御し、電界効果トランジスタ(FET)として動作する。
チャネルにおいて、有機ナノ結晶を使用できる。
【0062】
発光量子収率が向上した有機ナノ結晶を用いることで、イメージング感度が向上する。レーザー発振を利用すれば、更に感度が向上する。レーザー発振による発光により色純度が向上する。
【0063】
<抗原抗体検査素子>
生体中のタンパク質や、微量成分の生理活性物質等を検出する被検物質検知センサは、分子認識素子に加えて、トランスデューサーである信号変換素子を有する。分子認識素子は化学反応や物理反応を検出し、検出された信号を信号変換素子が電気信号に変換することで、被検物質が検出される。
【0064】
このようなセンサの一つとして、電界効果型トランジスタ(以下、FETと呼ぶ)を信号変換素子とするセンサがあり、イオン選択性膜を有するイオン感応性電界効果型トランジスタを用いるpHセンサ、グルコースセンサ等が実用化されている。FETを信号変換素子とすることで、既存の半導体製造技術を用いてセンサの小型化や集積化を実現することができる。
【0065】
従来の抗体検査試薬および装置やウイルス等の抗原検査試薬検査および装置に比べて迅速且つ簡便に、かつ感度良く動作するセンサを実現するために、例えば、FETを信号変換素子とするバイオセンサがいくつか提案され、さらには、二端子素子を信号変換素子とするセンサも提案されている。
【0066】
しかし、現在実用化されているセンサは、pHセンサやグルコースセンサ等の少数の例があるのみである。言い換えれば、生体中のタンパク質や微量成分の生理活性物質等を検出する被検物質検知センサであって、分子認識素子と、信号変換素子とを備えるセンサは、未だ実用化されるに至っていない。
本発明の有機ナノ結晶は、抗原検査素子(および抗体検査素子)において使用できる。
有機ナノ結晶に固定化された抗体が抗原を捕捉することで診断する。コロナウイルス、インフルエンザウイルス、ガン等の検査に利用可能である。
【0067】
以下、本発明の別の実施態様について、説明する。
【0068】
<太陽電池モジュール>
太陽電池としては、例えば、有機薄膜太陽電池、色素増感太陽電池、およびペロブスカイト太陽電池等が挙げられる。
有機薄膜太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板の上にセルが構成されており、セルの上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池などで用いられる基板一体型モジュール構造等が知られている。本発明の有機ナノ結晶を用いて製造される有機薄膜太陽電池も使用目的、使用場所および環境を考慮して、適宜これらのモジュール構造を選択できる。
【0069】
代表的なスーパーストレートタイプあるいはサブストレートタイプのモジュールは、片側または両側が透明で反射防止処理が施された対向する2枚の支持基板の間に一定間隔にセルが配置され、隣り合うセル同士が金属リードまたはフレキシブル配線等によって接続され、外縁部に集電電極が配置されており、この集電電極を用いて発生した電力を外部に取り出す構造となっている。基板とセルとの間には、セルの保護、集電効率向上のため、目的に応じエチレンビニルアセテート(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフィルムまたは充填樹脂の形で用いてもよい。また、外部からの衝撃が少ないところなど表面を硬い素材で覆う必要のない場所において使用する場合には、表面保護層を透明プラスチックフィルムで構成し、または上記充填樹脂を硬化させることによって保護機能を付与し、片側の支持基板をなくすことが可能である。
【0070】
支持基板の周囲は、内部の密封性およびモジュールの剛性を確保するため金属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板とフレームとの間は封止材料で密封シールする。
また、セル自体、支持基板、充填材料および封止材料に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太陽電池を構成することもできる。
【0071】
ポリマーフィルム等のフレキシブル支持体を用いた太陽電池の場合、ロール状に巻き取られた支持体を送り出しながら順次セルを形成し、所望のサイズに切断した後、周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールすることにより電池本体を作製できる。また、Solar Energy Materials and Solar Cells, 48,p383-391記載の「SCAF」とよばれるモジュール構造とすることもできる。更に、フレキシブル支持体を用いた太陽電池は曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
【0072】
<有機薄膜トランジスタ>
本発明の有機ナノ結晶は、有機トランジスタの製造にも用いることができる。有機薄膜トランジスタとしては、ソース電極およびドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となる活性層と、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを備えた構成を有するものが挙げられ、活性層が本発明の有機半導体層が上述した活性層によって構成されるものである。このような有機トランジスタとしては、例えば、有機電界効果型、有機静電誘導型等が挙げられる。
【0073】
有機電界効果型トランジスタは、ソース電極およびドレイン電極、これらの間の電流経路となる活性層、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、有機半導体層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。
特に、ソース電極およびドレイン電極が、活性層に接して設けられており、さらに活性層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。有機電界効果型トランジスタにおいては、活性層が、本発明の有機ナノ結晶を含む有機薄膜によって構成される。
【0074】
有機静電誘導型トランジスタは、ソース電極およびドレイン電極、これらの間の電流経路となる活性層、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、このゲート電極が活性層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極および活性層中に設けられたゲート電極が、活性層に接して設けられていることが好ましい。ここで、ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、且つゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。有機静電誘導型トランジスタにおいても、活性層が、本発明の有機ナノ結晶を含む有機薄膜によって構成される。
【0075】
<有機エレクトロルミネッセンス素子>
本発明の有機ナノ結晶は、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の製造に用いることもできる。有機EL素子は、少なくとも一方が透明または半透明である一対の電極間に発光層を有する。有機EL素子は、発光層の他にも、正孔輸送層、電子輸送層を含んでいてもよい。本発明の有機ナノ結晶は、該発光層、正孔輸送層、電子輸送層のいずれかの層中に含まれる。発光層中には、本発明の有機ナノ結晶の他にも、電荷輸送材料(電子輸送材料と正孔輸送材料の総称を意味する。)を含んでいてもよい。有機EL素子としては例えば、陽極と発光層と陰極とを有する素子、さらに陰極と発光層の間に、該発光層に隣接して電子輸送材料を含有する電子輸送層を有する陽極と発光層と電子輸送層と陰極とを有する素子、さらに陽極と発光層の間に、該発光層に隣接して正孔輸送材料を含む正孔輸送層を有する陽極と正孔輸送層と発光層と陰極とを有する素子、陽極と正孔輸送層と発光層と電子輸送層と陰極とを有する素子等が挙げられる。
【0076】
<センサ>
本発明の有機ナノ結晶は有機電界効果型トランジスタ(OFET)センサの製造に用いることもできる。本発明のOFETセンサは入力信号を電気信号として出力する際の信号変換素子として有機電界効果型トランジスタを用いたものであり、金属-絶縁膜-半導体構造中のいずれかに感応性あるいは選択性を付与したものである。本発明のOFETセンサとしてはバイオセンサ、ガスセンサ、イオンセンサ、湿度センサなどが上げられる。
【0077】
バイオセンサは、基板と該基板上に設けられた有機トランジスタとを備え、前記有機トランジスタは、 有機半導体層と、 前記有機半導体に接触して設けられたソース領域およびドレイン領域と、前記有機半導体層内に設けられ、かつ前記ソース領域と前記ドレイン領域との間のチャネルとなるチャネル領域と、 前記チャネル領域に電界を印加可能なゲート電極と、 前記チャネル領域と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁膜と、を有してなり、前記チャネル領域および/または前記ゲート絶縁膜に標的物質と特異的に相互作用するプローブとしての感応性領域を設け、感応性領域で標的物質濃度変化した際に特性変化を生じることでバイオセンサ素子として機能する。
【0078】
被検試料中の標的物質を検出する手法として、核酸、タンパク質等の生体分子や人工的に合成した官能基をプローブとして固相担体表面に固定したバイオセンサを用いる方法が広く用いられている。
【0079】
この方法では、相補核酸鎖の相互作用、抗原- 抗体反応、酵素- 基質反応、受容体- リガンド相互作用など、生体分子の特異的な親和性を利用して標的物質を固相担体表面に捕捉するので、標的物質に特異的な親和性を有する物質がプローブとして選択される。
【0080】
プローブは、プローブや固相担体の種類に適した方法によって固相担体表面に固定される。あるいは、固相担体表面でプローブを合成( 例えば、核酸伸長反応など) することもでき、いずれの場合もプローブが固定された固相担体表面を被検試料と接触させ、適当な条件下で培養することにより、固相担体表面でプローブ- 標的物質複合体が形成される。また、前記チャネル領域および/または前記ゲート絶縁膜自体がプローブとして機能してもよい。
【0081】
ガスセンサは、基板と該基板上に設けられた有機トランジスタとを備え、前記有機トランジスタは、有機半導体層と、 前記有機半導体に接触して設けられたソース領域およびドレイン領域と、 前記有機半導体層内に設けられ、かつ前記ソース領域と前記ドレイン領域との間のチャネルとなるチャネル領域と、 前記チャネル領域に電界を印加可能なゲート電極と、 前記チャネル領域と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁膜と、を有してなり、前記チャネル領域および/または前記ゲート絶縁膜をガス感応部とし、ガスがチャネル領域および/または前記ゲート絶縁膜に吸着脱離した際に導電率や誘電率等の特性変化を生じることでガスセンサ素子として機能する。
【0082】
検知するガスには電子受容性ガスのF2、Cl2などのハロゲン、窒素酸化物、硫黄酸化物、酢酸などの有機酸や電子供与性ガスのアンモニア、アニリン等のアミン類、一酸化炭素、水素等を検知することも可能である。
【0083】
本発明の有機ナノ結晶は、圧力センサの製造に用いることもできる。圧力センサは、基板と該基板上に設けられた有機トランジスタとを備え、前記有機トランジスタは、有機半導体層と、 前記有機半導体に接触して設けられたソース領域およびドレイン領域と、 前記有機半導体層内に設けられ、かつ前記ソース領域と前記ドレイン領域との間のチャネルとなるチャネル領域と、 前記チャネル領域に電界を印加可能なゲート電極と、 前記チャネル領域と前記ゲート電極との間に設けられたゲート絶縁膜と、を有してなり、前記チャネル領域および/または前記ゲート絶縁膜を感圧部とし、感圧部で感圧した際に特性変化を生じることで感圧素子として機能する。
【0084】
ゲート絶縁膜を感圧部とする場合、一般的に有機材料は無機材料よりも柔軟で伸縮性が高いため、圧力センサの感圧部としては有機材料が好ましい。前記チャネル領域を感圧部とする場合、有機半導体の結晶性を高めるため、配向層を有していてもよい。配向層としてはゲート絶縁膜上にヘキサメチルジシラザン等のシランカップリング剤で作成した単分子膜等が挙げられる。
【0085】
また本発明の有機ナノ結晶は、電導度変調型センサの製造に用いることもできる。本発明の電導度変調型センサは入力信号を電気信号として出力する際の信号変換素子として、電導度計測素子を用いたものであり、前記高分子化合物もしくは、前記高分子化合物の少なくとも一部に被覆された被覆膜のいずれかにセンサ対象入力に対する感応性あるいは選択性を付与したものであり、センサ対象の入力を、前記高分子化合物の電導度の変化として検出するものであり、センサとしてはバイオセンサ、ガスセンサ、イオンセンサ、湿度センサなどが上げられる。
【0086】
また本発明の有機ナノ結晶は、別個に形成されたバイオセンサ、ガスセンサ、イオンセンサ、湿度センサ、圧力センサ、など各種センサからの出力信号を増幅するための有機電界効果型トランジスタ(OFET)を含む増幅回路の製造に用いることも出来る。
【0087】
また本発明の有機ナノ結晶は、前期バイオセンサ、ガスセンサ、イオンセンサ、湿度センサ、圧力センサなど各種センサを複数含むセンサアレイとして用いることが出来る。
【0088】
また本発明の有機ナノ結晶は、別個に形成されたバイオセンサ、ガスセンサ、イオンセンサ、湿度センサ、圧力センサなど各種センサを複数含み、各センサからの出力信号を個別に増幅するための有機電界効果型トランジスタ(OFET)を増幅回路として含む、増幅回路付きセンサアレイの製造に用いることも出来る。
【0089】
以下、半導体素子を含む装置、部品(例えば、回路)およびシステムの例を具体的に説明する。
【0090】
<ディスプレイの回路>
ディスプレイの回路の例としては、
図10のようなものが挙げられる。
図10は、表示装置の駆動方法の一つの例を説明する模式図である。ディスプレイ1000は、有機ELパネル1006を有する。有機ELパネル1006には、その走査信号線を選択するための走査信号を供給する走査線駆動回路1001と選択されたデータ信号線に接続する画素に表示データを供給するデータ信号線駆動回路1002および表示データが供給される画素の有機EL素子に電流を供給するための電流供給回路1005が接続されている。走査線駆動回路1001とデータ信号線駆動回路1002は、外部信号源1003から供給される表示信号に基づいて有機ELパネルの表示用のデータとタイミング信号等の各種信号を生成する表示制御装置1004に接続している。走査線駆動回路1001は有機ELパネル1006に走査信号を供給する。
有機ELパネル1006は、円偏光板を貼り付けた高品位表示領域と円偏光板を有しない鏡機能付加表示領域を有していてもよい。
【0091】
<太陽光発電システムの構成>
図11は、太陽光発電システムの構成の例を示す模式図(ブロック図)である。太陽光発電システム2000は、太陽光発電装置2010、モニタリングサーバ2020(サーバ)、インターネット2040、ルータ2050、およびカメラ2070(撮像装置)を備えている。
【0092】
太陽光発電装置2010は、例えば、電力モニタ2011(制御装置)、パワーコンディショナ2012、およびソーラパネル2013(太陽電池モジュール)を備えている。なお、本実施形態では、太陽光発電装置2010は、一般家庭に設置されていてもよいし、産業用施設に設置されていてもよい。電力モニタ2011は、太陽光発電装置2010の動作を統括的に制御するコントローラの機能と、ユーザインタフェースの機能とを有している。ユーザインタフェースの機能としては、例えば、発電した電力量(以下、「発電電力量」と記す場合がある)、売電量、買電量、消費電力などの現在の状態、および消費電力の目標値に対する使用状況などを表示する表示部としての機能、消費電力の目標値をユーザが設定するための操作入力部としての機能、あるいは、太陽光発電装置2010に発生した異常を、表示したり音声を出力したりランプを点灯したりすることにより、ユーザに通知する機能などを含んでいる。
【0093】
ソーラパネル2013は、複数の太陽電池セルを備えており、受光面に入射した太陽光などの光エネルギーを電気エネルギー(直流電力)へと変換する。
【0094】
パワーコンディショナ2012は、ソーラパネル2013の発電電力が常に最大となるようにソーラパネル2013の動作電圧を制御し、ソーラパネル2013が発電した直流電力を交流電力に変換して、家庭負荷2014および蓄電装置(図示せず)などに供給する。また、パワーコンディショナ2012は、発電電力から、家庭負荷2014および蓄電装置などに供給する負荷電力を差し引いて残る余剰電力を、電力系統2060に逆潮流させる。例えば、パワーコンディショナ2012に故障が発生すると、太陽光発電装置2010に期待される本来の発電電力量よりも低い発電電力量となる可能性がある。
【0095】
なお、太陽光発電装置2010のユーザが、専用の携帯端末(図示せず)または汎用の携帯端末(図示せず)を用いて、電力モニタ2011の上記ユーザインタフェースの機能を利用できるように、後述のルータ2050を介して上記携帯端末を太陽光発電システム1000に無線接続することもできる。
【0096】
上記は、本発明の実施態様である素子、装置、部品、システムの例を示すものである。
【0097】
以下、有機ナノ結晶およびその製法について、説明する。
【0098】
〔1.有機ナノ結晶の製造方法〕
本発明に係る有機ナノ結晶の製造方法(以下では、「本発明の製造方法」とも称する)は、貧溶媒と相溶性を有する良溶媒にπ電子共役系を有する有機化合物を溶解させた溶液を、貧溶媒中で攪拌する撹拌工程を含んでいる。
【0099】
有機ナノ結晶は、従来のように、レーザー加工などのトップダウンで作製されることにより、結晶の形状の制御が難しく、歪な形状になりやすかった。また、結晶表面および結晶端面が粗くなるために、ナノデバイスとして機能させるのは困難であった。これに対し、本発明の製造方法によると、ボトムアップで作製するため、有機ナノ結晶の結晶面および結晶端面が滑らかになる。また、貧溶媒(例えば、非中性水溶液または中性水)を使用して作製することにより、形状の整ったナノ結晶が得られる。
【0100】
<π電子共役系を有する有機化合物>
π電子共役系を有する有機化合物(以下では、単に「有機化合物」とも称する)とは、交互に繋がった単結合と、多重結合とから構成され、非局在化した電子(π電子)を有する有機化合物である。本発明において、使用される有機化合物としては、色素分子、光導電材料、光記録材料、光学材料、非線形光学材料、導電材料、磁性材料として公知の分子を用いることができる。
【0101】
有機化合物は、特に分子内に芳香環を有することが好ましい。分子内に含まれる芳香環の数は、特に限定されないが、溶解性、およびπ-π電子相互作用によるパッキング構造形成の観点から、3~32個であることが好ましい。
【0102】
また、分子内に2個以上の芳香環を有する場合、芳香環同士は、単結合、二重結合、三重結合などの共有結合を介して結合されていてもよく、2個以上の芳香環が縮合した縮合環であってもよい。
【0103】
芳香環の種類は、特に限定されないが、例えば、芳香族炭化水素環、芳香族複素環であってもよい。芳香族炭化水素環の例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ペリレンなどが挙げられる。また、芳香族複素環の例としては、チオフェン、フラン、オキサゾール、チアゾール、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、ピリミジン、ピラジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フェナンスロリンなどが挙げられる。
【0104】
各芳香環は、無置換であってもよく、置換基によって置換されていてもよい。置換基を導入することにより、例えば、良溶媒への溶解性を高めたり、結晶性を高めたり、有機ナノ結晶内のパッキングにおける分子間距離を調節したり、ナノ結晶のバンドギャップを調節することができる。置換基としては、特に限定されず、電子吸引基であってもよく、電子供与基であってもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。分子内の置換基の数は特に限定されない。
【0105】
また、有機化合物は、繰り返し単位を数個(2個または3個)~100個程度有するオリゴマーであってもよく、繰り返し単位を数100個以上有するポリマーであってもよい。
【0106】
有機化合物の例としては、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー(TPCO)、ペリレン、アントラセン、フタロシアニン、ポルフィリン、フラーレン、ナフタレン、フェナントレン、シクロペンタジエン、ピレン、テトラセン、ピセン、クリセン、クマリン、フルオレン、フルオランテン、チオフェン、フェニレン、キナクリドン、サブフタロシアニン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、アクリジン、キノリン、キノキサリン、イソキノリン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンズオキサゾール、カルバゾール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、スチリル化合物、ブタジエン、およびそれらの誘導体などが挙げられる。また、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーの具体例としては、5,5’-ビス(4-ビフェニリル)-2,2’-ビチオフェン(BP2T)、5,5’-ビス(4’-シアノビフェニル-4-イル)-2,2’-ビチオフェン(BP2T-CN)、2,5-ビス(4’-メトキシビフェニル-4-イル)チオフェン(BP1T-OMe)、2,5-ビス(4-ビフェニリル)ターチオフェン(BP3T)、2,5-ビス(4-ビフェニリル)テトラチオフェン(BP4T)などが挙げられる。
【0107】
有機化合物について、他の例は次のとおりである。
以下の有機化合物は、半導体、例えばp型半導体として使用できる。
1,3,5-トリス(4-ビフェニリル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4'-フルオロビフェニル-4-イル)ベンゼン、トリス(4-ビフェニリル)アミン、トリス[4-(2-チエニル)フェニル]アミン、トリス[4'-(2-チエニル)-4-ビフェニリル]アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アニリン、4,4'-ビス[ジ(3,5-キシリル)アミノ]-4''-フェニルトリフェニルアミン、N-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン、4,4',4''-トリス(ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン、4,4',4''-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン、4,4',4''-トリス[2-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン、4,4',4''-トリス[9,9-ジメチルフルオレン-2-イル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン、N,N,N',N'-テトラフェニル-1,4-フェニレンジアミン、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(m-トリル)-1,4-フェニレンジアミン、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス(p-トリル)-1,4-フェニレンジアミン、N,N'-ジ(2-ナフチル)-N,N'-ジフェニル-1,4-フェニレンジアミン、N,N,N',N'-テトラフェニルベンジジン、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(m-トリル)ベンジジン、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(p-トリル)ベンジジン、N,N,N',N'-テトラキス(p-トリル)ベンジジン、N,N,N',N'-テトラキス(4-メトキシフェニル)ベンジジン、N,N'-ビス(4-メトキシ-2-メチルフェニル)-N,N'-ジフェニルベンジジン、N,N'-ジ(4-ビフェニリル)-N,N'-ジフェニルベンジジン、N,N'-ジ-2-ナフチル-N,N'-ジフェニルベンジジン、N,N'-ジ-1-ナフチル-N,N'-ジフェニルベンジジン、N,N'-ジ-1-ナフチル-N,N'-ジ-2-ナフチルベンジジン、N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)ベンジジン、N,N,N',N'-テトラキス(4-ビフェニリル)ベンジジン、N,N'-ジ(9-フェナントレニル)-N,N'-ジフェニルベンジジン、4,4'-ビス(3,6-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-1,1'-ビフェニル、N,N'-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-N,N'-ジフェニルベンジジン、3,3'-ビス[ジ(p-トリル)アミノ]ビフェニル、N,N'-ビス[4-(ジフェニルアミノ)フェニル]-N,N'-ジ(1-ナフチル)ベンジジン、N,N'-ビス[4-ジ(m-トリル)アミノフェニル]-N,N'-ジフェニルベンジジン、N,N'-ビス[4-(ジフェニルアミノ)フェニル]-N,N'-ジフェニルベンジジン、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[4'-(ジフェニルアミノ)ビフェニル-4-イル]ベンジジン、N,N,N',N'-テトラ([1,1'-ビフェニル]-4-イル)[1,1':4',1''-テルフェニル]-4,4''-ジアミン、N,N,N',N'-テトラフェニル[1,1':4',1'':4'',1'''-クアテルフェニル]-4,4'''-ジアミン、9,9-ジメチル-2,7-ビス[N-(m-トリル)アニリノ]フルオレン、2,7-ビス[N-(1-ナフチル)アニリノ]-9,9-ジメチルフルオレン、N,N'-ジ(1-ナフチル)-N,N',9,9-テトラフェニル-9H-フルオレン-2,7-ジアミン、2,7-ビス[N-(m-トリル)アニリノ]-9,9'-スピロビ[9H-フルオレン]、2,7-ビス[N,N-ビス(4-メトキシフェニル)アミノ]-9,9-スピロビ[9H-フルオレン]、2,7-ビス[N-(1-ナフチル)アニリノ]-9,9'-スピロビ[9H-フルオレン]、9,9-ビス[4-[N-(1-ナフチル)アニリノ]フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-[ジ(2-ナフチル)アミノ]フェニル]フルオレン、2,2',7,7'-テトラキス(ジフェニルアミノ)-9,9'-スピロビ[9H-フルオレン]、2,2',7,7'-テトラキス(ジ-p-トリルアミノ)-9,9'-スピロビ[フルオレン]、1,1-ビス[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン、1,3,5-トリス[4-(ジフェニルアミノ)フェニル]ベンゼン、1,3,5-トリス[4-[ビス(4-メトキシフェニル)アミノ]フェニル]ベンゼン、(E,E)-1,4-ビス[4-[ビス(4-メトキシフェニル)アミノ]スチリル]ベンゼン、7,7'-ビ[1,4]ベンゾオキサジノ[2,3,4-kl]フェノキサジン、3,3'-ビ[1,4]ベンゾオキサジノ[2,3,4-kl]フェノキサジン、9-エチルカルバゾール-3-カルボキシアルデヒド N-メチル-N-フェニルヒドラゾン、9-エチルカルバゾール-3-カルボキシアルデヒド N-ベンジル-N-フェニルヒドラゾン、9-エチルカルバゾール-3-カルボキシアルデヒドジフェニルヒドラゾン、2,6-ジフェニルベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジフラン、10,15-ジヒドロ-5,5,10,10,15,15-ヘキサメチル-5H-トリベンゾ[a,f,k]トリンデン、フタロシアニン銅(II)、フタロシアニンコバルト(II)、フタロシアニンすず(IV)ジクロリド、チタニルフタロシアニン、フタロシアニンクロロアルミニウム、[2-(9H-カルバゾール-9-イル)エチル]ホスホン酸、[2-(3,6-ジメトキシ-9H-カルバゾール-9-イル)エチル]ホスホン酸、[2-(3,6-ジメチル-9H-カルバゾール-9-イル)エチル]ホスホン酸、[2-(3,6-ジクロロ-9H-カルバゾール-9-イル)エチル]ホスホン酸、[2-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)エチル]ホスホン酸、[4-(9H-カルバゾール-9-イル)ブチル]ホスホン酸、[4-(3,6-ジメチル-9H-カルバゾール-9-イル)ブチル]ホスホン酸、[4-(3,6-ジメトキシ-9H-カルバゾール-9-イル)ブチル]ホスホン酸、[4-(3,6-ジブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)ブチル]ホスホン酸、4,4'-(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-5,7-ジイル)ビス[N,N-ビス(4-メトキシフェニル)アニリン]、2,2',7,7'-テトラキス(ジフェニルアミノ)-9,9'-スピロビ[9H-フルオレン]、2,2',7,7'-テトラキス(ジ-p-トリルアミノ)-9,9'-スピロビ[フルオレン]、2,2',7,7'-テトラキス-(N,N-ジ-4-メトキシフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン、(E,E)-1,4-ビス[4-[ビス(4-メトキシフェニル)アミノ]スチリル]ベンゼン、(E,E,E,E)-1,2,4,5-テトラキス[4-[ビス(4-メトキシフェニル)アミノ]スチリル]ベンゼン、フラーレンC60、[6,6]-フェニル-C61-酪酸ブチル、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチル、[6,6]-フェニル-C61-酪酸 n-オクチル、[6,6]-フェニル-C61-酪酸ドデシル、C60縮合 N-メチルピロリジン-m-C12-フェニル、ICBA、フラーレンC70、ビス-PCBM、[6,6]-フェニル-C71-酪酸メチル、N-フェニル-2-ヘキシル[60]フレロピロリジン、N,2-ジフェニル[60]フレロピロリジン、フタロシアニン亜鉛、バトフェナントロリン、バソクプロイン、6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)、テトラセン、ペンタセン、α-クアテルチオフェン、α-キンキチオフェン、α-セキシチオフェン 、α-セプチチオフェン、α-オクチチオフェン、キナクリドン、トリス[4-(5-フェニルチオフェン-2-イル)フェニル]アミン、2,4-ビス[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシフェニル]スクアライン、2,4-ビス[8-ヒドロキシ-1,1,7,7-テトラメチルジュロリジン-9-イル]スクアライン、フタロシアニン亜鉛、フタロシアニン鉛(II)、チタニルフタロシアニン、[5,15-ビス(フェニルエチニル)-10,20-ビス(トリイソプロピルシリル)エチニル]ポルフィリナト]マグネシウム(II)、ポリ[[5-(2-エチルヘキシル)-5,6-ジヒドロ-4,6-ジオキソ-4H-チエノ[3,4-c]ピロール-1,3-ジイル](4,4'-ジドデシル[2,2'-ビチオフェン]-5,5'-ジイル)]、2-デシル-7-フェニル[1]ベンゾチエノ[3,2-b][1]ベンゾチオフェン、6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン、2,6-ジフェニルアントラセン、フェナントロ[1,2-b:8,7-b']ジチオフェン、ピセン、2,8-ジメチルアントラ[2,3-b:6,7-b']ジチオフェン、2,8-ジメチルアントラ[2,3-b:7,6-b']ジチオフェン、チエノ[3,2-f]チエノ[3',2':5,6][1]ベンゾチエノ[3,2-b][1]ベンゾチオフェン、p-セキシフェニル、5,5'''-ジヘキシル-2,2':5',2'':5'',2'''-クアテルチオフェン、5,5'''-ジ-n-オクチル-2,2':5',2'':5'',2'''-クアテルチオフェン、5,5'''-ジデシル-2,2':5',2'':5'',2'''-クアテルチオフェン、5,5'''-ジドデシル-2,2':5',2'':5'',2'''-クアテルチオフェン、2,5-ビス(4-ビフェニルイル)チオフェン、1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25-ヘキサデカフルオロフタロシアニン銅(II) 、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン。
【0108】
以下の有機化合物は、半導体、例えばn型半導体として使用できる。
1,2,3,4-テトラフェニル-1,3-シクロペンタジエン、1,2,3,4,5-ペンタフェニル-1,3-シクロペンタジエン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2,9-ジ(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2,4,6-トリフェニル-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリ([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリ([1,1'-ビフェニル]-3-イル)-1,3,5-トリアジン、4,4'-ビス(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)ビフェニル、2,4,6-トリ(9H-カルバゾール-9-イル)-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン、3,5-ジ(1-ピレニル)ピリジン、2,5-ジ(1-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-(4-tert-ブチルフェニル)-5-(4-ビフェニルイル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)チオフェン、1,3-ビス[5-(4-tert-ブチルフェニル)-2-[1,3,4]オキサジアゾリル]ベンゼン、2,5-ビス(2,2'-ビピリジン-6-イル)-1,1-ジメチル-3,4-ジフェニルシロール、1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニルシロール、(8-キノリノラト)リチウム、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、N,N'-ジメチル-3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、N,N'-ジ-n-オクチル-3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、N,N'-ビス(4-メトキシフェニル)-3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、N,N'-ビス(3,5-ジメチルフェニル)-3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、N,N'-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25-ヘキサデカフルオロフタロシアニン銅(II)。
【0109】
以下の有機化合物は、半導体、例えば発光材料として使用できる。
ペリレン、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン、1,3,6,8-テトラフェニルピレン、1,1,4,4-テトラフェニル-1,3-ブタジエン、1,2,3,4,5-ペンタフェニル-1,3-シクロペンタジエン、1,2,3,4-テトラフェニル-1,3-シクロペンタジエン、4-スチリルトリフェニルアミン、3-(ジフェニルアミノ)ジベンゾ[g,p]クリセン、N,N,N',N'-テトラフェニル[1,1':4',1'':4'',1'''-クアテルフェニル]-4,4'''-ジアミン、1,4-ビス[4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]ベンゼン、4,4'-ビス[4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]ビフェニル、1,4-ビス[2-(9-エチルカルバゾール-3-イル)ビニル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(N,N-ジフェニルアミノ)スチリル]ベンゼン、9,9'-ジエチル-9H,9'H-3,3'-ビカルバゾール、10-[4-[4,6-ジ(アダマンタン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]フェニル]-9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン、10-[4-[4,6-ジ(アダマンタン-1-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]フェニル]-9,9-ジフェニル-9,10-ジヒドロアクリジン 、10-[4-[4,6-ジ(1-アダマンチル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]フェニル]-10H-スピロ[アクリジン-9,9'-フルオレン] 、1,1,2,3,4,5-ヘキサフェニルシロール、ビス[2-(2-ピリジニル)フェノラト]ベリリウム(II)、3-ジメシチルボリル-2,2'-ビチオフェン
【0110】
さらに、以下の有機化合物は、半導体、例えば発光材料として使用できる。
7-(ジメチルアミノ)-4-(トリフルオロメチル)クマリン、2,3,6,7-テトラヒドロ-9-(トリフルオロメチル)-1H,5H,11H-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オン、10-(2-ベンゾチアゾリル)-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H,11H-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オン、7-(ジエチルアミノ)-4-(トリフルオロメチル)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンズイミダゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、7-(ジエチルアミノ)-3-(1-メチル-2-ベンズイミダゾリル)クマリン、10-(2-ベンゾチアゾリル)-2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H-[1]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-オン、キナクリドン、N,N'-ジメチルキナクリドン、N,N'-ジブチルキナクリドン、5,12-ジブチル-1,3,8,10-テトラメチルキナクリドン、9,10-ビス[N-(p-トリル)アニリノ]アントラセン、9,10-ビス[N-(m-トリル)アニリノ]アントラセン、9,10-ビス[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]アントラセン、9,10-ビス[N-(2-ナフチル)アニリノ]アントラセン、2,6-ビス(ジフェニルアミノ)アントラキノン、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)水和物、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)、トリス(2-フェニルピリジナト)イリジウム(III)、(4,4'-ジ-tert-ブチル-2,2'-ビピリジン)ビス[(2-ピリジニル)フェニル]イリジウム(III)ヘキサフルオロホスファート、(2,2'-ビピリジン)ビス[2-(2,4-ジフルオロフェニル)ピリジン]イリジウム(III)ヘキサフルオロホスファート、(2,2'-ビピリジン)ビス(2-フェニルピリジナト)イリジウム(III)ヘキサフルオロホスファート、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム、5,5'-ジブロモ-3-ジメシチルボリル-2,2'-ビチオフェン
【0111】
加えて、以下の有機化合物は、半導体、例えば発光材料として使用できる。
5,6,11,12-テトラフェニルナフタセン、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(4-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(4-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン、2-tert-ブチル-4-(ジシアノメチレン)-6-[2-(1,1,7,7テトラメチルジュロリジン-9-イル)ビニル]-4H-ピラン、トリス[1-フェニルイソキノリン-C2,N]イリジウム(III)、(アセチルアセトナト)ビス(2-フェニルキノリン-C2,N')イリジウム(III)、トリス(アセチルアセトナト)(1,10-フェナントロリン)ユウロピウム(III)、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(1,10-フェナントロリン)ユウロピウム(III)、(1,10-フェナントロリン)トリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)、トリス(1,10-フェナントロリン)ルテニウム(II)ビス(ヘキサフルオロホスファート)、5,5'''-ビス(N,N-ジフェニルアミノ)-4'-ジメシチルボリル-2,2':5',2'':5'',2'''-クアテルチオフェン、
【0112】
有機化合物は、単独または少なくとも2種の組み合わせであってもよい。
【0113】
<良溶媒>
良溶媒は、有機化合物を十分に溶解することができる溶媒である。良溶媒は、有機化合物の溶解度が、25℃において良溶媒100gに対して、0.01g以上、0.05g以上、0.1g以上、0.5g以上、1g以上、5g以上または10g以上であることが好ましい。
良溶媒の例は、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトンなどのケトン;メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール;N-メチルピロリドン、アセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素である。
アルコールなどの幾つかの溶媒は、有機化合物の種類に応じて、良溶媒になったり、あるいは貧溶媒になったりする。
良溶媒は、単独または少なくとも2種の組み合わせであってよい。
良溶媒の量は、有機化合物1重量部に対して、1~10000重量部、2~2000重量部、5~1000重量部、10~500重量部、または20~200重量部であってよい。
【0114】
<貧溶媒>
貧溶媒は、有機化合物の溶解度が低い溶媒であり、良溶媒と相溶する溶媒である。貧溶媒は、有機化合物の溶解度が、25℃において貧溶媒100gに対して、0.3g以下、0.1g以下、0.01g以下、0.005g以下、0.001g以下または0.0005g以下であることが好ましい。
貧溶媒の例は、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素である。
【0115】
本発明の貧溶媒としては、有機化合物を溶解しない溶媒であれば問題なく、特に限定されないが、前述の良溶媒との混合性がよいことが望ましい。例えば、水または水溶液が好ましく、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系溶媒、ベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒、またはこれら2種以上の混合溶媒を使用することができるが、これらには限定されない。分散液の濃縮、塗布の工程における溶媒の蒸発を容易にするためには、沸点が低い(例えば、1気圧での沸点が60℃以下、80℃以下、100℃以下または120℃以下)溶媒が好ましい。
また、前述の良溶媒及び貧溶媒には、必要に応じて無機化合物や分散剤などを溶解させてもよい。
【0116】
本発明において、貧溶媒は水または水溶液であることが好ましい。水または水溶液は、中性(例えば、pH 6.5~7.5または6.8~7.2または約7)、酸性またはアルカリ性であってよい。貧溶媒は、水のみからなってよい。貧溶媒は、例えば、超純水であってよい。
【0117】
本発明では、貧溶媒として、中性(pH 6.5超~7.5未満)ではない非中性水溶液を使用することができる。非中性水溶液のpHは6.5以下(pHが1~6.5の酸性水溶液)または7.5以上(pHが7.5~14のアルカリ性水溶液)であってよい。
酸性水溶液のpHは、2以上、2.5以上、3以上、3.5以上、4以上、4.5以上、5以上、5.5以上、6以上であってよく、6以下、5.5以下、5以下、4.5以下、4以下、3.5以下、3以下、2.5以下、または2以下であってよい。
【0118】
アルカリ性水溶液のpHは、8以上、8.5以上、9以上、9.5以上、10以上、10.5以上、11以上、11.5以上、12以上、12.5以上、13以上、13.5以上であってよく、14以下、13.5以下、13以下、12.5以下、12以下、11.5以下、11以下、10.5以下、10以下、9.5以下、9以下、8.5以下であってよい。水溶液のpHの一例は、12~14である。
本発明では、アルカリ性水溶液を貧溶媒として使用することが好ましい。アルカリ性水溶液を貧溶媒として用いることにより、作製中の有機ナノ結晶の表面電位を制御し、ナノ結晶同士の凝集を抑制することができる。本発明で貧溶媒として使用するアルカリ性水溶液は、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの電解質(特に、塩基)を水に溶解させてpH7以上に調製した物でもよく、塩化ナトリウムや炭酸カリウムなどの電解質を溶解した水を電気分解することで得られるpH7以上を示すもの(アルカリ電解水)であってもよい。
【0119】
アルカリ性水溶液は、塩基と水の混合物である。塩基は、無機塩基または有機塩基である。
無機塩基の例は、アンモニア;水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化バリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;リチウムハイドライド、ナトリウムハイドライド等のアルカリ金属水素化物である。
有機塩基の例は、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドである。
塩基は、単独または2種以上の組み合わせであってよい。
【0120】
本発明の製造方法は、貧溶媒(例えば、アルカリ性水溶液または中性水)を用いることにより、界面活性剤、分散剤などの特別な添加剤を必要とせず、有機ナノ結晶の結晶化を阻害するファクターが少なく、形状の整った有機ナノ結晶を得やすくなる。また、添加剤を用いないことから、有機ナノ結晶の作製時および使用時において、人体に及ぼす健康被害、環境負荷が少ない。
【0121】
本発明におけるアルカリ性水溶液は、pHが10.0~14.0であることが好ましい。アルカリ性水溶液のpHが10.0~14.0であれば、アルカリ性水溶液と、作製中の有機ナノ結晶との静電相互作用により、作製中の有機ナノ結晶、および作製後の有機ナノ結晶の表面電位を好適に制御することができる。ここで、作製中の有機ナノ結晶とは、良溶媒に溶解された状態の有機ナノ結晶を含む。作製中の有機ナノ結晶の表面電位が制御されることにより、有機ナノ結晶同士が凝集せず、孤立分散した分散液を得ることができる。また、作製後の有機ナノ結晶の表面電位が制御されることにより、有機ナノ結晶同士が凝集せず、作製後長期間に渡り、分散状態を維持できる分散液を得ることができる。アルカリ性水溶液のpHが10.0~14.0に維持されている間は、有機ナノ結晶同士が孤立分散した状態が維持される。例えば、作製後1年程度、有機ナノ結晶同士が孤立分散した状態が維持される。さらに、分散液中にて有機ナノ結晶同士が凝集せず、分散することにより、結晶性の高い有機ナノ結晶を得ることができる。ここで、「結晶性の高い」とは、結晶が規則的な分子の配列を実質的に有していることをいう。
【0122】
貧溶媒は、酸性水溶液であってもよい。酸性水溶液は、酸と水との混合物である。酸は、無機酸または有機酸であってよい。
無機酸の例は、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸などである。
有機酸の例は、ギ酸、酢酸である。
酸は、単独または2種以上の組み合わせであってよい。
【0123】
貧溶媒として、中性(例えば、pH6.5~7.5、pH6.7~7.3、pH6.8~7.2またはpH約7)である中性水(または中性水溶液)を使用することもできる。
【0124】
貧溶媒のイオン濃度は、0~500mmol/L、0.001~200mmol/L、0.1~100mmol/Lまたは1~50mmol/Lであってよい。
貧溶媒のイオン濃度は低くてもよい。したがって、貧溶媒のイオン濃度は、0~0.1mmol/L、0.0001~0.01mmol/L、0.001~0.005mmol/Lまたは0.002~0.003mmol/Lであってよい。
【0125】
「イオン濃度」とは電解質の陽イオンまたは陰イオンの濃度(溶液1リットル中に含まれる陽イオンまたは陰イオンのモル数)をいう。陽イオンまたは陰イオンは、1~4価、例えば、1価または2価であってよい。陽イオンの例としては、水素を除くアルカリ金属、及びアルカリ土類金属のイオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。陰イオンの例としては、水酸化物イオンを除く塩素イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、有機酸等のイオンが挙げられる。
【0126】
貧溶媒において、水以外の物質(例えば、酸やアルカリ)が含まれている場合、この物質は除去が容易であることが好ましい。除去が容易である物質の例は、アンモニア、塩酸、酢酸などである。加熱(例えば、50℃~150℃または60℃~100℃)、成膜などの操作によって、物質を容易に除去できる。
【0127】
貧溶媒は、単独または少なくとも2種の組み合わせであってよい。
貧溶媒の量は、有機化合物1重量部に対して、1~1000重量部または10~100重量部であってよい。
【0128】
本発明の製造方法において、良溶媒と、貧溶媒との体積比率は、特に限定されないが、良溶媒:貧溶媒=1:2~1:100または1:30~1:10であることが好ましく、1:30~1:15であることがより好ましく、1:25~1:20であることが最も好ましい。良溶媒と、貧溶媒との体積比率が前記の範囲であることにより、有機ナノ結晶が孤立分散した分散液を得ることができる。
【0129】
<撹拌工程>
撹拌工程は、貧溶媒と相溶性を有する良溶媒にπ電子共役系を有する有機化合物を溶解させた溶液を、貧溶媒で攪拌する工程である。
【0130】
撹拌工程において、攪拌装置としては、一般的に用いられるマグネチックスターラやプロペラ翼、パドル翼、タービン翼、アンカー翼、リボン翼、ディスパー翼等の攪拌翼を有する回転式攪拌機、ロータ・ステータ構造を有する回転剪断型撹拌装置などを使用してもよい。具体例としては、ホモディスパー、フィルミックス、ホモミクサー等の高速撹拌混合装置を好ましく用いることができる。
【0131】
撹拌速度は、特に限定されないが、100~8000rpmまたは500~3000rpmであることが好ましく、800~1500rpmであることがさらに好ましく、800~1000rpmであることが最も好ましい。撹拌速度が前記の範囲であれば、有機ナノ結晶が孤立分散した分散液を得ることができ、孤立分散した有機ナノ結晶を得ることができる。
攪拌の剪断速度は、50~500000sec-1または100~20000sec-1であってよい。
【0132】
撹拌工程において、貧溶媒の温度は、特に限定されないが、例えば、5℃~120℃または25℃~100℃が好ましく、30℃~90℃がより好ましく、40℃~80℃が最も好ましい。貧溶媒の温度が前記の範囲であれば、有機化合物を溶解させた良溶媒を好適な速度にて揮発させることができ、結晶性の高い有機ナノ結晶を得ることができる。
【0133】
また、貧溶媒の温度と、良溶媒の温度とは、ほぼ同じ(温度差10℃以下、3℃以下または1℃以下)であることが好ましい。これによれば、有機ナノ結晶を作製中である分散液の温度を一定に維持することができ、結晶性の高い有機ナノ結晶を得ることができる。
【0134】
また、撹拌工程における撹拌時間は、良溶媒の揮発が完了するまでの時間であってよく、貧溶媒の温度に依存するが、例えば、0.1~24時間または6~12時間であることが好ましく、8~12時間であることがより好ましく、10~12時間であることがより好ましい。ここで、撹拌時間は、注入工程が完了してからの撹拌時間のことを指す。
【0135】
また、本発明の製造方法は、撹拌工程の前に、有機化合物を良溶媒に溶解した溶液を調製する調製工程と、調製工程にて調製された溶液を貧溶媒に注入する注入工程とをさらに含んでもよい。
【0136】
<調製工程>
調製工程は、有機化合物を良溶媒に溶解した溶液を調製する工程である。調製工程において、使用される良溶媒は、有機化合物を溶解し、かつ、水と相溶性を有する溶媒であることが好ましい。良溶媒の種類としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトンなどが挙げられる。
【0137】
調製工程において、調製される溶液の濃度は、所望の有機ナノ結晶の平均粒子径によって適宜設定可能であるが、一例として、0.0001~1mg/mLまたは0.001~0.5mg/mLであることが好ましく、0.001~0.1mg/mLであることがより好ましく、0.01~0.1mg/mLであることが最も好ましい。
【0138】
調製工程において、良溶媒の温度は、有機化合物を溶解することができる温度であればよい。また、良溶媒の温度は、溶媒の種類によって適宜設定可能であるが、例えば、5℃~120℃または25℃~100℃が好ましく、30℃~90℃がより好ましく、40℃~80℃が最も好ましい。良溶媒の温度が前記の範囲であれば、有機化合物を好適に溶解させることができ、良溶媒の揮発後において結晶性の高い有機ナノ結晶を得ることができる。
【0139】
良溶媒の温度と、貧溶媒の温度とは、ほぼ同じ(温度差10℃以下、3℃以下または1℃以下)であることが好ましい。これによれば、有機ナノ結晶を作製中である分散液の温度を一定に維持することができ、結晶性の高い有機ナノ結晶を得ることができる。
【0140】
<注入工程(吐出工程)>
注入工程は、調製工程にて調製された溶液を貧溶媒に注入する工程である。注入工程において、注射器を手動で操作して、良溶媒に対称の有機化合物を溶解させた溶液を貧溶媒に注入してもよいし、該溶液をシリンジポンプを用いて自動で注入してもよい。溶液を一定速度にて注入する観点からはシリンジポンプを用いることが好ましい。溶液を注入する注入速度(吐出速度)は、特に限定されないが、1つの孔に対して、0.01~100mL/分または0.1~20mL/分であってよい。注入速度は、1つの注入器具に対して、1~500mL/分または2~100mL/分であってよい。注入速度は、1つの注入器具に対して、例えば、3~6mL/分であることが好ましい。
【0141】
直径3mm以下の孔を1つ以上有する吐出器具を用いる。吐出器具は、例えば、平面板上に空いている孔から溶液に圧力をかけて吐出する平面板ノズル吐出器具、不定形な形状に空いている孔から溶液に圧力をかけて吐出させる吐出器具、溶液に振動を付与して、液滴として孔から吐出する吐出器具であってよい。吐出器具の具体例は、シリンジ、ディスペンサー、インクジェットノズル、エアノズル、エアブローノズル、スリットノズル、ミストノズル、噴射ノズル、スプレーノズル、紡糸用ノズル、多孔膜(微細多孔膜)[多孔質ガラス膜(例えば、SPG膜(シラス多孔質ガラス膜)製ノズル)、多孔質セラミック膜]、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜などである。吐出器具先端の吐出孔に膜を使用する場合、膜が親水処理や疎水処理されたものが使用できる。水を貧溶媒として使用する本発明においては、水が吐出孔から良溶媒側に侵入しないために、疎水処理を施した膜が好ましい。
良溶媒の除去などによって貧溶媒中のナノ結晶粒子を濃縮しながら、連続的な注入を行ってもよく、さらに大量のナノ結晶粒子の生産が可能となる。
【0142】
吐出器具において、孔の数は、1つ以上である。孔の数は、2以上、10以上、100以上、1000以上、10000以上であってよい。
孔の直径は、0.1μm以上、0.2μm以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、5μm以上、10μm以上、20μm以上、50μm以上、100μm以上、200μm以上、または500μm以上であってよく、2500μm以下、2000μm以下、1000μm以下、800μm以下、600μm以下、500μm以下、200μm以下、100μm以下、50μm以下、20μm以下、10μm以下、5μm以下、2μm以下、1μm以下、0.5μm以下、または0.2μm以下であってよい。孔の直径の一例は、0.1~800μmである。
【0143】
〔2.分散液〕
本発明に係る分散液(以下、「本発明の分散液」とも称する)は、π電子共役系を有する有機化合物の平均粒子径1nm~1μmの有機ナノ結晶と、貧溶媒とを含む。なお、〔1.有機ナノ結晶の製造方法〕の項で既に説明した事項については、説明を省略する。
【0144】
本発明の分散液は、前記の成分を含むことにより、分散液中の有機ナノ結晶が孤立分散する。「孤立分散」とは、分散質である有機ナノ結晶同士が凝集および合一していない状態をいう。
2種以上のナノ結晶凝集体の孤立分散液を得るために、2種以上の有機化合物の良溶媒による混合溶液を使用することができる。たとえばp型半導体の性質を示す化合物とn型半導体の性質を示す化合物の2種などである。
【0145】
分散液中の有機ナノ結晶の濃度は、分散性の観点より、0.01mmol/mL以下であることが好ましく、0.001mmol/mL以下であることがより好ましく、0.0005mmol/mL以下であることが最も好ましい。分散液中の有機ナノ結晶の濃度は、仕込み濃度より決定してもよい。あるいは、分散液の溶媒を揮発させて粉末を得て、その重量より濃度を測定してもよい。
分散液において、有機ナノ結晶(有機化合物)の平均粒子径は、10~2000nmまたは50~500nmであってよい。分散液における有機化合物の平均粒子径は、動的光散乱法(DLS)によって測定できる。
【0146】
分散液の分散性および有機ナノ結晶の平均粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影されたTEM像から評価することができる。
【0147】
また、〔1.有機ナノ結晶の製造方法〕の項でも記載した通り、貧溶媒において、有機ナノ結晶同士が孤立分散した状態が維持される。
【0148】
本発明の分散液は、π電子共役系を有する有機化合物の平均粒子径1nm~1μmの有機ナノ結晶および貧溶媒以外の物質が含まれていてもよく、前記以外の物質の種類は限定されない。
分散液は、有機ナノ結晶を含んでおり、溶媒(貧溶媒と良溶媒)を(例えば、乾燥などによって)除去することによって、有機ナノ結晶が得られる。
分散液をえるために、攪拌工程(a)で述べたのと同様の攪拌装置および条件を使用することができる。
【0149】
〔3.有機ナノ結晶〕
本発明の製造方法によって製造される有機ナノ結晶は、平均粒子径1nm~1μmの有機ナノ結晶である。
【0150】
有機ナノ結晶の平均粒子径は、〔1.有機ナノ結晶の製造方法〕の項で説明した、良溶媒にπ電子共役系を有する有機化合物を溶解させた溶液の濃度に依存する。溶液の濃度が高ければ、生成される有機ナノ結晶の平均粒子径は大きくなり、溶液の濃度が低ければ、生成される有機ナノ結晶の平均粒子径は小さくなる。
【0151】
有機ナノ結晶の平均粒子径は、1nm~1μmであることが好ましい。平均粒子径が前記の範囲であることにより、有機ナノ結晶をナノデバイスとして好適に利用することができる。有機ナノ結晶の平均粒子径は、2nm以上、5nm以上、10nm以上、20nm以上、50nm以上、または100nm以上であってよく、500nm以下、200nm以下、100nm以下、80nm以下、50nm以下、20nm以下、または10nm以下であってよい。
【0152】
有機ナノ結晶の平均粒子径の求め方は、特に限定されない。例えば、TEM像を用いて任意の数(例えば、100個または200個)の有機ナノ結晶の粒子径から粒度分布を作成して求められるメジアン径(D50)を平均粒子径としてもよい。粒子径は最大長さの平均値である。他には、例えば、動的光散乱法(DLS)、遠心沈降法などを使用して平均粒子径を求めることができる。
【0153】
有機ナノ結晶の平均粒子径のばらつきは小さいことが好ましい。具体的には、平均粒子径のばらつきを示す粒度分布指数が2以下であることが好ましい。粒度分布指数とは、分散液に含まれる有機ナノ結晶の平均粒度分布の累積10%、累積50%、累積90%の平均粒子径をそれぞれD10、D50、D90としたとき、(D90-D10)/D50で求められる値である。有機ナノ結晶の粒度分布指数が2以下であることにより、有機ナノ結晶をナノデバイスにおいて好適に利用することができる。
【0154】
有機ナノ結晶は、高い結晶性を有する単結晶であることが好ましい。結晶性は、例えば、TEMによって取得されるTEM像、制限視野電子回折パターンの他、結晶化度、屈折率などを用いて評価されてもよい。TEM像では、明確な格子縞が観察できる場合に結晶性が高いと言える。制限視野電子回折パターンでは、明確な回折スポットがみられる場合に結晶性が高いと言える。結晶化度は一般的に、結晶化度(%)=((結晶質含有量) / (結晶質含有量+非晶質含有量))×100のようにして求められる。
【0155】
結晶化度(%)が高い場合に結晶性が高く、結晶化度60%以上が好ましく、結晶化度80%以上または85%以上がより好ましい。結晶化度は、65%以上、66%以上、67%以上、68%以上、69%以上、70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、または92%以上であってよく、100%以下、98%以下、96%以下、95%以下、93%以下、または90%以下であってよい。
【0156】
結晶化度を求めるための測定手法は、特に限定されないが、例えばX線回折測定(θ―2θ法)が好ましい。X線回折測定(θ―2θ法)で得られたデータに対して、結晶化度(%)=((結晶質のピーク面積) / (結晶質のピーク面積+非晶質のピーク面積))として結晶化度を求めることができる。屈折率は高い場合に結晶性が高いと言える。有機ナノ結晶の屈折率を求める測定手法は、特に限定されないが、例えば発光スペクトル測定に現れるモード構造のモード間隔から求めることが好ましい。
【0157】
有機ナノ結晶の形状は、特に限定されないが、多面体の結晶であってよい。有機ナノ結晶の形状は、例えば、向かい合う辺が平行である、または円状に閉じた形状を有することが好ましい。有機ナノ結晶の面の形状は、具体的には、平行四辺形、六角形、ニードル状、球体、円盤状、円柱形状、三角形などであることが好ましい。また、有機ナノ結晶の表面および端面は滑らかであることが好ましい。
【0158】
有機ナノ結晶の形状は、有機ナノ結晶の光学的性質に影響を与えうる。光学的性質とは、例えば、吸収波長、発光波長、発光スペクトルの形状、発光寿命、発光量子収率などである。例えば、上述のような形状の有機ナノ結晶では、発光スペクトルにモード構造が現れる。モード構造とは、ナノ結晶が光共振器として機能するときに現れる共振器モードのことである。例えば、平行平面鏡共振器の場合では、2枚の平面ミラーを共振する波長の1/2の整数倍の間隔で平行配置したときに共振器モードが観測される。
【0159】
また、特異な光学的性質を有する有機ナノ結晶は、ナノデバイスとして利用することが可能である。例えば、発光スペクトルにモード構造が見られる有機ナノ結晶は、有機ナノ結晶内に光を閉じ込めることが可能であるため、光共振器として利用することができる。有機ナノ結晶内に光を閉じ込めるとは、共鳴する波長の光を境界となる結晶の端面で反射させ、再び別の端面で反射させることで、結晶内において光を定在波として閉じ込めることをいう。光共振器は、例えば、光源から出射された光を取り入れ、結晶内部で共振させることによって、光の強度を強める機能を有する。
【0160】
有機ナノ結晶は、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上、2.5以上、2.6以上、2.7以上、2.8以上、2.9以上、3以上、3.1以上、3.2以上、3.3以上、3.4以上、3.5以上、3.6以上、3.7以上、3.8以上、3.9以上、4以上または4.5以上の屈折率を有することが好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、15以下、12以下、10以下、7以下または5以下であり得る。有機ナノ結晶の屈折率が前記の範囲であれば、強い光閉じ込め効果を示すことができる。一例として、(チオフェン/フェニレン)コオリゴマーのナノ結晶は屈折率が3~5であり、強い光閉じ込め効果を示す。
【0161】
また、有機ナノ結晶が光共振器として利用できることにより、高効率照明および光源の開発、デバイスの小型化が可能になる。これによれば、省エネ、CO2削減を実現し、例えば、目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0162】
<有機ナノ結晶の塗布>
有機ナノ結晶の層を形成する方法の一例は、分散液を基板または層(例えば、電極層)に塗布し、溶媒(貧溶媒および良溶媒)を除去(例えば、揮発)して、有機ナノ結晶の活性層(例えば、発光層)を形成することを含む。
【0163】
塗布する方法としては、例えば、スリットコート法、ナイフコート法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットコート法、ディスペンサー印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法等の塗布法を用いることができる。スリットコート法、キャピラリーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ノズルコート法、インクジェットコート法、スピンコート法が好ましい。
【0164】
活性層の厚さは、50nm以上、100nm以上、150nm以上、または200nm以上であり、100μm以下、50μm以下、10μm以下、5μm以下、1μm以下であってよい。
【0165】
<再沈法とミニエマルション法による有機ナノ結晶の相違点>
再沈法による有機ナノ結晶とミニエマルション法による有機ナノ結晶の相違点は次のとおりである。
再沈法(再沈殿法)で作製したナノ結晶は、結晶性(結晶化度)が高いので、四角形・平行四辺形・六角形等の多角形をとりやすい。一方、ミニエマルション法では、結晶性が低く、ナノ結晶の表面に近い部分は分子配向の乱れ等があるので、円形もしくは円柱状や不定形の形態をとる。
再沈法で得られたナノ結晶とミニエマルション法で得られたナノ結晶は、共振器モードが異なる。再沈法の場合は、多角形における対面での共振モード(ファブリペローモード)、または周回モードに起因する。ミニエマルション法における共振器モードは,形状がきれいな円形ナノ結晶での周回モード、または対向する面が平行なナノ結晶でのファブリペローモードになる。従って、多角形をとりやすい再沈法で作製したナノ結晶のほうが共振器モードの観測が容易であるので、屈折率の算出がしやくなる。ミニエマルション法で得られたナノ結晶は、屈折率の算出が困難である、すなわち、ミニエマルション法において実質的に屈折率が得られない。
【0166】
<共振器モードの観察方法>
ナノ結晶に紫外線照射を行った場合,ナノ結晶が有する導波路構造およびナノ結晶の形態に由来する共振器構造により、発光スペクトルに共振器モードが観測される。共振器モードの観測方法は,紫外線照射が可能な光源と分光器を用いた発光分光法でもよく、顕微発光分光法でもよい。
【0167】
本発明の有機ナノ結晶は、多くの種類の素子(デバイス)、特に半導体素子において使用できる。有機ナノ結晶は、ディスプレイ(特に、高輝度ハイコントラストの有機ELディスプレイ)、太陽光発電素子、円偏光発振素子、量子ドット素子、バイオイメージセンサ、抗原検査素子、波長変換素子、光センサ、ナノ結晶複合体の作製において、使用できる。
有機ナノ結晶は、有機半導体素子に加えて、蛍光材料、燐光材料、色素(顔料または染料)としても使用できる。
【0168】
ナノ結晶複合体は、一般に、2種以上(特に、2種)の有機ナノ結晶によって形成される。ナノ結晶複合体は、良溶媒と2種の有機化合物を混合する工程を含む製法によって、または1種の有機化合物と良溶媒の溶液と、他の少なくとも1種の有機化合物と良溶媒の溶液を混合することを含む製法によって、製造できる。
【0169】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0170】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、実施例は本発明を限定するものではない。
【0171】
(分散液、および有機ナノ結晶の作製)
使用したπ電子共役系を有する有機化合物は、以下の通りである。
・5,5’-bis(4-biphenylyl)-2,2’-bithiophene(BP2T)(住友精化株式社製)
・5,5’-bis(4’-cyanobiphenyl-4-yl)-2,2’-bithiophene(BP2T-CN)(住友精化株式社製)
・ペリレン(Pe)(東京化成工業株式会社製)
・アントラセン(ANT)(ナカライテスク株式会社製)
・フタロシアニン誘導体Vanadyl 3,10,17,24-tetra-tert-butyl-1,8,15,22-tetrakis(dimethylamino)-29H,31H-phthalocyanine(Pc-TB)(アルドリッチ社製)
・ポルフィリン誘導体Tetrakis(4-carboxyphenyl)porphyrin(TCPP)(東京化成工業株式会社製)
・フラーレン(C60)(アルドリッチ社製)
・フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)(アルドリッチ社製)
また、以下の装置を用いて生成物の評価を行った。
・透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子株式会社製、製品名:JEM-3100FEF)
実施例A1
5,5’-ビス(4-ビフェニリル)-2,2’-ビチオフェン(BP2T)0.001mg/mLをテトラヒドロフラン(THF)1mLに加え、60℃で加熱攪拌し溶液を調製した。60℃で攪拌機(マグネチックスターラ、アズワン株式会社製)を用いて800rpmで攪拌したアルカリ電解水20mL(pH:13.4)(K+イオン濃度250mmol/L)に、注射器を用いて溶液を3~6mL/minの速度で注入した。その後、溶液を60℃で12時間攪拌し、THFを揮発させてBP2Tナノ結晶(A1)を含む分散液(A1)を得た。分散液の濃度は、4.2×10-6mmol/mLであった。得られたBP2Tナノ結晶(A1)について、TEMを用いてTEM像、および制限視野電子回折パターンを得た。
【0172】
実施例A2
BP2TをTHFに溶解させた溶液の濃度を0.005mg/mLとした以外は、実施例A1と同様の操作を行い、分散液(A2)およびBP2Tナノ結晶(A2)を得た。得られたBP2Tナノ結晶(A2)をTEMを用いて観察した。
【0173】
実施例A3
BP2TをTHFに溶解させた溶液の濃度を0.01mg/mLとした以外は、実施例A1と同様の操作を行い、分散液(A3)およびBP2Tナノ結晶(A3)を得た。得られたBP2Tナノ結晶(A3)をTEMを用いて観察した。
【0174】
実施例A4
BP2TをTHFに溶解させた溶液の濃度を0.01mg/mLとし、pH10.0(K+イオン濃度0.1mmol/L)のアルカリ電解水を用いた以外は、実施例A1と同様の操作を行い、分散液(A4)およびBP2Tナノ結晶(A4)を得た。得られたBP2Tナノ結晶(A4)をTEMを用いて観察した。
【0175】
実施例A5
BP2TをTHFに溶解させた溶液の濃度を0.01mg/mLとし、THFおよびアルカリ電解水の温度を25℃にし、12時間撹拌した以外は、実施例A1と同様の操作を行い、分散液(A5)およびBP2Tナノ結晶(A5)を得た。得られたBP2Tナノ結晶(A5)をTEMを用いて観察した。
【0176】
実施例A6
有機化合物をBP2T分子の両末端にシアノ基を導入した5,5’-ビス(4’-シアノビフェニル-4-イル)-2,2’-ビチオフェン(BP2T-CN)とした以外は、実施例A1と同様の操作を行い、分散液(A6)およびBP2T-CNナノ結晶(A1)を得た。
【0177】
実施例A7
BP2T-CNをTHFに溶解させた溶液の濃度を0.01mg/mLとした以外は、実施例A6と同様の操作を行い、分散液(A7)およびBP2T-CNナノ結晶(A2)を得た。
【0178】
実施例A8
有機化合物をペリレン(Pe)とし、PeをTHFに溶解させた溶液の濃度を0.1mg/mLとした以外は、実施例A1と同様の操作を行い、分散液(A8)およびPeナノ結晶を得た。
【0179】
実施例A9
有機化合物をアントラセン(ANT)とし、ANTをTHFに溶解させた溶液の濃度を0.1mg/mLとした以外は、実施例A1と同様の操作を行い、分散液(A9)およびANTナノ結晶を得た。得られたANTナノ結晶をTEMを用いて観察した。
【0180】
実施例A10
有機化合物をフタロシアニン誘導体Vanadyl 3,10,17,24-tetra-tert-butyl-1,8,15,22-tetrakis(dimethylamino)-29H,31H-phthalocyanine(Pc-TB)とし、Pc-TBをTHFに溶解させた溶液の濃度を0.1mg/mLとした以外は、実施例A1と同様の操作を行い、分散液(A10)およびPc-TBナノ結晶を得た。得られたPc-TBナノ結晶をTEMを用いて観察した。
【0181】
実施例A11
有機化合物をポルフィリン誘導体Tetrakis(4-carboxyphenyl)porphyrin(TCPP)とし、TCPPをTHFに溶解させた溶液の濃度を0.1mg/mLとした以外は、実施例A1と同様の操作を行い、分散液(A11)およびTCPPナノ結晶を得た。得られたTCPPナノ結晶をTEMを用いて観察した。
【0182】
実施例A12
有機化合物をフラーレン(C60)とし、C60をTHFに溶解させた溶液の濃度を<0.1mg/mLとした以外は、実施例A1と同様の操作を行い、分散液(A12)およびC60ナノ結晶を得た。得られたC60ナノ結晶をTEMを用いて観察した。
【0183】
実施例A13
有機化合物をフェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)とし、PCBMをTHFに溶解させた溶液の濃度を0.1mg/mLとした以外は、実施例A1と同様の操作を行い、分散液(A13)およびPCBMナノ結晶を得た。得られたPCBMナノ結晶をTEMを用いて観察した。
【0184】
〔分散液、および有機ナノ結晶の評価〕
実施例A1~A13の分散液および有機ナノ結晶の作製条件、ならびに各分散液の分散性、結晶性の評価、平均粒子径、粒度分布指数、を表1に示した。
【0185】
〔結晶性の評価〕
結晶性の評価は、以下の(a)~(c)のいずれかを満たす場合を結晶性が高と評価した。
(a)TEM像に格子縞が現れている、または制限視野電子回折パターンに明確な回折スポットが現れている。
(b)X線回折測定(θ―2θ法)で得られXRDパターンに対して、結晶化度(%)=((結晶質のピーク面積) / (結晶質のピーク面積+非晶質のピーク面積))として求めた結晶化度(%)が60%以上である。
(c)発光スペクトル測定に現れるモード構造のモード間隔から求める屈折率が1.5以上または2.5以上である。
【0186】
〔分散性の評価基準〕
分散液の分散性は、それぞれの分散液のTEM像を目視観察し、以下の基準で評価した。
良:有機ナノ結晶(生成物)同士が凝集または合一していない。
不良:有機ナノ結晶(生成物)同士が凝集または合一している。
【0187】
〔平均粒子径〕
TEM像より任意の数の有機ナノ結晶の粒子径から粒度分布を作成して求められるメジアン径(D50)を平均粒子径とした。
【0188】
〔粒度分布指数〕
粒度分布指数は、分散液に含まれる有機ナノ結晶の平均粒度分布の累積10%、累積50%、累積90%の平均粒子径をそれぞれD10、D50、D90とし、式(D90-D10)/D50を用いて求めた。
【表1】
【0189】
実施例A1で得られた分散液(A1)は、TEM像より、BP2Tナノ結晶(A1)同士が凝集せずに、孤立分散した液であることがわかった。TEM像のうち、黒い部分が各有機ナノ結晶に相当する。有機ナノ結晶の1つを拡大した拡大図によると、格子縞が観察され、結晶性の高い有機ナノ結晶であることがわかった。また、この有機ナノ結晶の粒子径は、2.7nmであった。
【0190】
制限視野電子回折パターンによると、(200)および(220)面からの回折パターンが検出され、BP2Tナノ結晶(A1)は単結晶であり、高い結晶性を有することが示された。結晶性の評価指標としては、結晶化度を用いてもよく、実施例A1のBP2Tナノ結晶のX線回折測定(θ―2θ法)で得られたデータ(黒線)に対して、結晶化度(%)=((結晶質のピーク面積) / (結晶質のピーク面積+非晶質のピーク面積))として、ガウス関数を用いてフィッティングを行うことにより結晶化度を求めると、90%の値となった。典型的なBP2Tナノ結晶の結晶化度は、80-90%である。ここでフィッティング関数は、ガウス関数ではなく、ローレンツ関数や擬フォークト関数を用いても良い。
【0191】
実施例A1の分散液と同様に、実施例A2~13で得られた分散液(A2)~(A13)も、いずれも有機ナノ結晶同士が凝集せずに孤立分散した液であった。また、各実施例で作製された有機ナノ結晶は、いずれも制限視野電子回折パターンに明確な回折スポットが現れており、結晶性の高い有機ナノ結晶であることがわかった。
【0192】
実施例A1~3の比較より、良溶媒に溶解させた溶液が高濃度であるほど、生成した有機ナノ結晶の平均粒子径が大きくなることがわかった。
【0193】
また、実施例A3と実施例A4との比較より、アルカリ電解水のpHを10にしても孤立分散した分散液が得られ、結晶性の高い有機ナノ結晶が得られることがわかった。
【0194】
以上より、アルカリ電解水を使用することによって、有機ナノ結晶同士が凝集せず、孤立分散した分散液が得られることがわかった。
【0195】
また、実施例A3と実施例A5との比較より、撹拌時の温度が室温(25℃)であっても孤立分散した分散液が得られ、結晶性の高い有機ナノ結晶が得られることがわかった。
【0196】
(有機ナノ結晶の光学的性質)
有機ナノ結晶の光学的性質について分析するため、有機ナノ結晶の顕微発光スペクトルの測定を行った。
【0197】
実施例A3で作製したBP2T(A3)の発光スペクトルによれば、励起波長は、405nmであった。BP2T(A3)の発光スペクトルには、モード構造が観測された。数100nmの平均粒子径の有機ナノ結晶において、モード構造を観測したのは、本発明が初めてである。
【0198】
BP2T(A3)は、発光スペクトルにモード構造を有することから、光共振器として使用することが可能である。BP2T(A3)の発光スペクトルが示すモード構造は、BP2T(A3)の結晶の形状に由来する。BP2T(A3)は、六角形をしており、向かい合う辺が平行である端面を有し、結晶性の高いナノ結晶であった。添加剤を用いないことで、分子間パッキングの阻害、結晶中への添加剤の混入を防ぐことができるため、結晶性の高い有機ナノ結晶が生成したと考えられる。このような有機ナノ結晶は、有機ナノ結晶レーザーの利得媒質として有用であることを示している。
【0199】
実施例A7で作製したBP2T-CN(A2)においても、BP2T(A3)と同様に発光スペクトルにモード構造が観測され、光共振器として機能することが示された。
【0200】
以下、実施例B1~B11を示す。
【0201】
(分散液、および有機ナノ結晶の作製)
使用したπ電子共役系を有する有機化合物は、以下の通りである。
・アントラセン(ANT)(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・5,5’-bis(4-biphenylyl)-2,2’-bithiophene(BP2T)(有限会社高橋合成研究所製)
・5,5’-bis(4’-cyanobiphenyl-4-yl)-2,2’-bithiophene(BP2T-CN)(有限会社高橋合成研究所製)
また、以下の装置を用いて生成物の評価を行った。
・透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子株式会社製、製品名:JEM-3100FEF)
・走査透過電子顕微鏡(STEM、日立ハイテク、製品名:SU-9000)
・動的光散乱式粒度分布計(DLS、マイクロトラック・ベル株式会社製、製品名:EX-150)
【0202】
〔結晶性の評価〕
結晶性の評価は、以下の(a)~(c)のいずれかを満たす場合を結晶性が高と評価した。
(a)TEM像に格子縞が現れている、または制限視野電子回折パターンに明確な回折スポットが現れている。
(b)X線回折測定(θ―2θ法)で得られXRDパターンに対して、結晶化度(%)=((結晶質のピーク面積) / (結晶質のピーク面積+非晶質のピーク面積))として求めた結晶化度(%)が60%以上である。
(c)発光スペクトル測定に現れるモード構造のモード間隔から求める屈折率が1.5以上である。
【0203】
〔分散性の評価基準〕
分散液の分散性は、それぞれの分散液のTEM像、またはSTEM像を目視観察し、以下の基準で評価した。
良:有機ナノ結晶(生成物)同士が凝集または合一していない。
不良:有機ナノ結晶(生成物)同士が凝集または合一している。
【0204】
〔平均粒子径〕
DLSにて求められるメジアン径(D50)を平均粒子径とした。
【0205】
〔粒度分布指数〕
粒度分布指数は、分散液に含まれる有機ナノ結晶の平均粒度分布の累積10%、累積50%、累積90%の平均粒子径をそれぞれD10、D50、D90とし、式(D90-D10)/D50を用いて求めた。
【0206】
実施例B1
アントラセン(ANT)0.01mgをテトラヒドロフラン(THF)1mLに加え、25℃で攪拌し溶液を調製した。アルカリ電解水20mL(pH13.2)(K+イオン濃度160mmol/L)を25℃で攪拌機(マグネチックスターラ)を用いて800rpmで攪拌しながら、注射器(孔径260μm)を用いて溶液を3~6mL/分の速度で注入した。その後、混合物を60℃で12時間攪拌し、THFを揮発させてANTナノ結晶(B1)を含む分散液(B1)を得た。得られたANTナノ結晶(B1)について、TEMを用いてTEM像、および制限視野電子回折パターンを得た。また、DLSを用いて平均粒子径を測定した。平均粒子径は160nmであった。
【0207】
実施例B2
アントラセン(ANT)0.01mgをテトラヒドロフラン(THF)1mLに加え、25℃で攪拌し溶液を調製した。アルカリ電解水20mL(pH13.2)(K+イオン濃度160mmol/L)を25℃で攪拌機(ホモディスパー)を用いて400rpmで攪拌しながら、孔径130μmの注射針(1本)を取り付けたジェットディスペンサー(CYBERJET2 MJET-C-2、武蔵エンジニアリング社製)により、ストローク100μm、バルブ圧30kPa、バルブオンタイム50ms、バルブオフタイム450msの条件で注入した。その後、溶液を60℃で12時間攪拌し、THFを揮発させてANTナノ結晶(B2)を含む分散液(B2)を得た。得られたANTナノ結晶(B2)について、STEMを用いてSTEM像を得た。また、DLSを用いて平均粒子径を測定した。平均粒子径は180nmであった。
【0208】
実施例B3
5,5’-bis(4-biphenylyl)-2,2’-bithiophene(BP2T)0.01mgをテトラヒドロフラン(THF)1mLに加え、25℃で攪拌し溶液を調製した。アルカリ電解水20mL(pH13.2)(K+イオン濃度160mmol/L)を25℃で攪拌機(マグネチックスターラ)を用いて800rpmで攪拌しながら、注射器(孔径500μm)を用いて溶液を3~6mL/分の速度で注入した。その後、混合物を60℃で12時間攪拌し、THFを揮発させてBP2Tナノ結晶(3)を含む分散液(3)を得た。得られたBP2Tナノ結晶(3)について、STEMを用いてSTEM像を得た。また、DLSを用いて平均粒子径を測定した。平均粒子径は490nmであった。
【0209】
実施例B4
5,5’-bis(4-biphenylyl)-2,2’-bithiophene(BP2T)0.01mgをテトラヒドロフラン(THF)1mLに加え、25℃で攪拌し溶液を調製した。アルカリ電解水20mL(pH13.2)(K+イオン濃度160mmol/L)を25℃で攪拌機(マグネチックスターラ)を用いて800rpmで攪拌しながら、溶液を細孔孔径10μmのSPG膜(直径8mm)を通過させて3~6mL/分の速度で注入した。その後、溶液を60℃で12時間攪拌し、THFを揮発させてBP2Tナノ結晶(B4)を含む分散液(B4)を得た。得られたBP2Tナノ結晶(B4)について、STEMを用いてSTEM像を得た。また、DLSを用いて平均粒子径を測定した。平均粒子径は490nmであった。
【0210】
実施例B5
有機化合物を5,5’-bis(4’-cyanobiphenyl-4-yl)-2,2’-bithiophene(BP2T-CN)とした以外は、実施例B4と同様の操作を行い、分散液(B5)およびBP2T-CNナノ結晶(B5)を得た。得られたBP2T-CNナノ結晶(B5)について、STEMを用いてSTEM像を得た。また、DLSを用いて平均粒子径を測定した。平均粒子径は140nmであった。
【0211】
実施例B6
5,5’-bis(4’-cyanobiphenyl-4-yl)-2,2’-bithiophene(BP2T-CN)0.001mgをテトラヒドロフラン(THF)1mLに加え、25℃で攪拌し溶液を調製した。アルカリ電解水20mL(pH:13.2)(K+イオン濃度160mmol/L)を25℃で攪拌機(ホモディスパー)を用いて400rpm(周速4m/s)で攪拌しながら、孔径300μmの注射針(1本)を取り付けたジェットディスペンサー(CYBERJET2 MJET-C-2、武蔵エンジニアリング社製)により、ストローク100μm、バルブ圧30kPa、バルブオンタイム10ms、バルブオフタイム90msの条件で注入した。その後、溶液を60℃で12時間攪拌し、THFを揮発させてBP2T-CNナノ結晶(B6)を含む分散液(B6)を得た。得られたBP2T-CNナノ結晶(B6)について、STEMを用いてSTEM像を得た。また、DLSを用いて平均粒子径を測定した。平均粒子径は140nmであった。
【0212】
実施例B1~B6の結果を表2に示す。
【0213】
【0214】
実施例B1で得られた分散液(B1)は、TEM像より、ANTナノ結晶(B1)同士が凝集せずに、孤立分散した液であることがわかった。TEM像のうち、黒い部分が各有機ナノ結晶に相当する。
【0215】
制限視野電子回折パターンによると、回折パターンが検出され、ANTナノ結晶(B1)は単結晶であり、高い結晶性を有することが示された。結晶性の評価指標としては、結晶化度を用いてもよい。実施例B1の有機ナノ結晶のXRDパターンより、ANTナノ結晶(B1)のX線回折測定(θ-2θ法)で得られたデータ(黒線)に対して、結晶化度(%)=((結晶質のピーク面積)/(結晶質のピーク面積+非晶質のピーク面積))として、ガウス関数を用いてフィッティングを行うことにより結晶化度を求めると、86%の値となった。ここでフィッティング関数は、ガウス関数ではなく、ローレンツ関数または擬フォークト関数を用いても良い。
【0216】
実施例B1の分散液と同様に、実施例B2~B6で得られた分散液(B2)~(B6)も、いずれも有機ナノ結晶同士が凝集せずに孤立分散した液であった。
【0217】
実施例B7
有機化合物を5,5’-bis(4’-cyanobiphenyl-4-yl)-2,2’-bithiophene(BP2T-CN)0.01mgをテトラヒドロフラン(THF)1mLに加え、25℃で攪拌し溶液を調製した。アルカリ電解水20mL(pH13.2)(イオン濃度160mmol/L)を25℃で攪拌機(ディスパー)を用いて800rpmで攪拌しながら、注射器(孔径260μm)を用いて溶液を3~6mL/分の速度で注入した。その後、混合物を60℃で12時間攪拌し、THFを揮発させてBP2T-CNナノ結晶(B7)を含む分散液(B7)を得た。得られたBP2T-CNナノ結晶(B7)について、DLSを用いて平均粒子径を測定した。平均粒子径は220nmであった。
【0218】
実施例B8
アルカリ電解水を水酸化リチウム水溶液(pH12.7)とした以外は、実施例B6と同様の操作を行い、分散液(B8)およびBP2T-CNナノ結晶(B8)を得た。得られたBP2T-CNナノ結晶(B8)について、DLSを用いて平均粒子径を測定した。平均粒子径は310nmであった。
【0219】
実施例B9
アルカリ電解水を水酸化ナトリウム水溶液(pH13.2)(K+イオン濃度160mmol/L)とした以外は、実施例B6と同様の操作を行い、分散液(B9)およびBP2T-CNナノ結晶(B9)を得た。得られたBP2T-CNナノ結晶(B9)について、DLSを用いて平均粒子径を測定した。平均粒子径は300nmであった。
【0220】
実施例B10
アルカリ電解水を水酸化カリウム水溶液(pH13.4)(K+イオン濃度250mmol/L)とした以外は、実施例B6と同様の操作を行い、分散液(B10)およびBP2T-CNナノ結晶(B10)を得た。得られたBP2T-CNナノ結晶(B10)について、DLSを用いて平均粒子径を測定した。平均粒子径は240nmであった。
【0221】
実施例B11
アルカリ電解水をアンモニア水(pH11.4)(NH4
+イオン濃度2.5mmol/L)とした以外は、実施例B6と同様の操作を行い、分散液(B11)およびBP2T-CNナノ結晶(B11)を得た。得られたBP2T-CNナノ結晶(B11)について、DLSを用いて平均粒子径を測定した。平均粒子径は420nmであった。
【0222】
実施例B12
5,5’-bis(4’-cyanobiphenyl-4-yl)-2,2’-bithiophene(BP2T-CN)0.075mgをテトラヒドロフラン(THF)7.5mLに加え、25℃で攪拌し溶液を調製した。超純水150mL(pH6.8)を25℃で攪拌機(マグネチックスターラ)を用いて1000rpmで攪拌しながら、溶液を細孔孔径5μmのSPG膜(直径8mm)を通過させて3~6mL/分の速度で注入した。その後、混合物を60℃で12時間攪拌し、THFを揮発させてBP2T-CNナノ結晶(B12)を含む分散液(B12)を得た。得られたBP2T-CNナノ結晶(B12)について、DLSを用いて平均粒子径を測定した。平均粒子径は390nmであった。
【0223】
実施例B13
対象の化合物を5,5’-bis(4-biphenylyl)-2,2’-bithiophene(BP2T)とした以外は、実施例B12と同様の操作を行いBP2Tナノ結晶(B13)を含む分散液(B13)を得た。得られたBP2Tナノ結晶(B13)について、DLSを用いて平均粒子径を測定した。平均粒子径は340nmであった。
【0224】
実施例B14
有機化合物をアントラセン(ANT)とした以外は、実施例B12と同様の操作を行いANTナノ結晶(B14)を含む分散液(B14)を得た。得られたANTナノ結晶(B14)について、DLSを用いて平均粒子径を測定した。平均粒子径は240nmであった。
【0225】
実施例B15
5,5’-bis(4’-cyanobiphenyl-4-yl)-2,2’-bithiophene(BP2T-CN)0.05mgをテトラヒドロフラン(THF)5mLに加え、25℃で攪拌し溶液を調製した。酢酸水溶液100mL(pH2.6)(酢酸イオン濃度2.5mmol/L)を25℃で攪拌機(マグネチックスターラ)を用いて1000rpmで攪拌しながら、溶液を細孔孔径5μmのSPG膜(直径8mm)を通過させて3~6mL/分の速度で注入した。その後、混合物を60℃で12時間攪拌し、THFを揮発させてBP2T-CNナノ結晶(B15)を含む分散液(B15)を得た。得られたBP2T-CNナノ結晶(B15)について、DLSを用いて平均粒子径を測定した。平均粒子径は620nmであった。
【0226】
実施例B7~B15の結果を表3に示す。
【0227】
【0228】
実施例B7~B15より、何れの貧溶媒(酸性~中性~アルカリ性)を用いても有機ナノ結晶の分散液(B7)~(B15)が得られた。
【0229】
以下、有機ナノ結晶を有機EL素子において使用した実験を含む実施例を示す。
【0230】
実施例C1
BP2Tナノ結晶は、結晶サイズを変化させると、黄色から青色まで発光色が変化する。有機ナノ結晶は、量子効果発現による発光色変化を利用した有機EL素子において、使用できる。無毒な材料である有機ナノ結晶を用いて有機EL素子を作製できることは、産業応用上意義が大きい。
図12Aは、再沈法で得られたBP2Tナノ結晶を発光層に用いた有機EL素子の模式図である。電子輸送層とホール輸送層は真空蒸着法により成膜し、発光層はスピンコート法により成膜した。陰極として用いたITOから電子輸送層を介して発光層に電子が、Au電極からホール輸送層を通って発光層にホールが注入され、発光層中で再結合することで発光が得られる。電子輸送層、発光層およびホール輸送層を含めた膜厚は、約300nmである。
図12Bは、BP2Tナノ結晶を発光層に用いた有機EL素子の電流密度-電圧(J-V)曲線を示している。約3Vより高電圧を印加すると急激に電流密度が増大する整流性を示した。7V印加したときの素子の発光像を
図12Bの挿入図に示しており,緑色に発光していることがわかる。
図12Cは、有機EL素子からのELスペクトルを示している.2.48eV,2.33eVおよび2.18eV付近にBP2Tナノ結晶における0-0,0-1および0-2発光帯が観測されている。この素子の輝度値は250-750cd/m
2であった。黄色発光および水色発光を示すナノ結晶を用いた有機EL素子でも同様の特性が得られている。電子輸送層およびホール輸送の材料選択、電子輸送層・発光層およびホール輸送層の膜厚を最適化することで輝度値や外部量子収率が更に向上できる。
【0231】
実施例C2
上記の実施例B3で得られたBP2Tナノ結晶について、発光スペクトルを測定した。発光スペクトルを
図13に示す。発光スペクトルに表れているピーク構造(モード構造)の間隔を基に屈折率を求めたところ、屈折率は2.76であった。