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  • 特開-実験誤差を定量化して提示する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133009
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】実験誤差を定量化して提示する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20240920BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N35/00 A
G01N35/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024039640
(22)【出願日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】23397501.0
(32)【優先日】2023-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】512265652
【氏名又は名称】サートリウス・ビオヒット・リキッド・ハンドリング・オイ
【氏名又は名称原語表記】SARTORIUS BIOHIT LIQUID HANDLING OY
【住所又は居所原語表記】LAIPPATIE 1, FI‐00880 HELSINKI, FINLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ヤントゥネン・ハンネス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーヒモ・エミリア
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058GD07
(57)【要約】
【課題】サンプル取り扱いにおけるランダムで系統的な実験誤差を低減させること。
【解決手段】本発明の例示的な態様によれば、少なくとも2つのステップを含むマルチステップのサンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスの総実験誤差を定量化するステップであって、前記少なくとも2つのステップのそれぞれの個々の実験誤差を定量化するステップを含む、定量化するステップと、前記総実験誤差および/または前記総実験誤差から導出される出力値を、出力装置によって提示するステップと、を含む方法が、提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのステップを含むマルチステップのサンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスの総実験誤差を定量化するステップであって、前記少なくとも2つのステップのそれぞれの個々の実験誤差を定量化するステップを含む、定量化するステップと、
前記総実験誤差、および/または前記総実験誤差から導出される出力値を、出力装置によって提示するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記定量化するステップが、前記実験誤差を推定すること、前記実験誤差を測定すること、もしくは前記実験誤差についての所定値を取り出すこと、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定量化するステップが、
経験的にトレーニングされたアルゴリズムによって定量化すること、又は、
個々の実験誤差の合計、例えば加重合計を算出すること、又は、
前記個々の実験誤差を数量化すること、を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスが、液体取り扱いおよび/または分析シーケンスを含むか、あるいは液体取り扱いおよび/または分析シーケンスから成る、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスの過程における、以下の装置:手持ち式ピペット、液体取り扱いロボット、スケール、気圧センサー、温度センサー、湿度センサー、分光計、サンプル分析装置、のうちの1つまたは複数の装置の使用における実験誤差が、定量化されるべき前記総実験誤差の要因となり、かつ考慮される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記出力値が、前記実験誤差およびそれらの組み合わせうちのいずれかから導出される、パラメータ、指示、および推奨、のうちの1つまたは複数、を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記出力装置が、前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスにおいて使用される実験装置のディスプレイを含み、好ましくは、前記出力装置が、手持ち式実験装置のディスプレイを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記出力装置が、携帯電話またはタブレットのディスプレイなどのモバイルデバイスのディスプレイを含み、当該モバイルデバイスが、前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスにおいて使用される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記出力値が、前記総実験誤差の蓄積を低減するために、個々の実験誤差の要因を調整するための推奨、例えば、前記要因に関連するパラメータを調整するための推奨、を含むか、あるいは、
前記出力値が、前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスの現在のステップまたは後続のステップの実行中における、特定の液体取り扱い装置、および/または液体取り扱い装置内の特定のチップ、を使用するための推奨を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記提示するステップが、ディスプレイなどの前記出力装置によって、チャート、図示記号、英数字記号、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたは複数を提示することを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記提示するステップが、ディスプレイなどの前記出力装置によって、数値で表される不確実係数を提示することを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
定量化された前記実験誤差に基づいて、実験装置であってその装置の使用が前記誤差の要因となる実験装置、の機能を自動的にロックまたは調整することを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
定量化された前記実験誤差または前記出力値が、実験装置であってその使用が前記誤差の要因となる実験装置、に報告され、かつ、
前記出力値が、前記実験誤差を低減するための前記実験装置に対する制御コマンドまたは補正係数であるパラメータ、を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
サンプルを取り扱うおよび/または分析するための手段、
前記総実験誤差を定量化するように構成されている演算装置、および、
前記総実験誤差および/または前記出力値を提示するように構成されている出力装置、を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法を実行するための手段を有する、装置。
【請求項15】
前記サンプルを取り扱うおよび/または分析するための手段が、液体取り扱い装置を含み、かつ、前記出力装置が、ディスプレイ、オーディオ手段、またはオーディオビジュアル手段を含む、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、サンプル取り扱いシーケンスにおける誤差を定量化することに関し、特に、実験室におけるマルチステップのサンプル取り扱いシーケンスの過程において蓄積される誤差を定量化し、低減することに関する。
【背景技術】
【0002】
実験室におけるサンプル調製とその分析には、通常、複数の実験装置が必要とされるマルチステッププロトコルが含まれる。このようなプロトコルでは、例えばサンプル重量、サンプル量、およびサンプル組成などを正確に測定する必要がある場合がある。
【0003】
液体取り扱い用途では、通常、所望の用途またはワークフローを完了するために、異なる液体量および複数の分注ステップ用の複数の液体取り扱い装置が使用される。このような液体取り扱い用途の例としては、一連の希釈やマルチステップキットの調製が挙げられる。液体取り扱いステップに加えて、秤量などの他の取り扱い方法および測定方法が同じワークフローにおいて用いられることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなマルチステップおよびマルチデバイスワークフローは、実験誤差の蓄積の影響を受けやすく、ワークフローの最終結果の精度に深刻な影響を及ぼす可能性がある。例えば、5ステップの液体分注シーケンスにおいて、各分注ステップが10%の実験誤差を有する場合、5ステップ後に分注される液体の総量は、目標量100%の59%から161%の範囲となる。
【0005】
使用される装置を較正し、サンプル取り扱い手順におけるランダムな変動を減らすように努めることにより、サンプル取り扱いにおけるランダムで系統的な実験誤差を低減させることが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本発明は、独立請求項の特徴によって定義される。いくつかの特定の実施形態は、従属請求項において定義される。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、
少なくとも2つのステップを含むマルチステップのサンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスの総実験誤差を定量化するステップであって、前記少なくとも2つのステップのそれぞれの個々の実験誤差を定量化するステップを含む、定量化するステップと、
前記総実験誤差、および/または前記総実験誤差から導出される出力値を、出力装置によって提示するステップと、を含む方法が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、
第1の態様に係る方法を実行するための手段を備えたサンプル取り扱い装置であって、
前記総実験誤差を定量化するように構成されている演算装置と、
前記総実験誤差および/または前記出力値を提示するように構成されている出力装置と、を備えるサンプル取り扱い装置、が提供される。
【0009】
前記第1の態様または前記第2の態様の様々な実施形態は、以下の箇条書きされたリストのうちの1つまたは複数の特徴を有し得る:
・本方法は、前記定量化するステップの前に、または前記定量化するステップの際に、1つまたは複数の前記実験誤差を取得することを含む。
・前記取得することは、前記実験誤差を推定すること、前記実験誤差を測定すること、もしくは前記実験誤差についての所定値を取り出すこと、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む。
・前記定量化するステップは、経験的にトレーニングされたアルゴリズムによって定量化することを含む。
・前記定量化するステップは、個々の実験誤差の合計、例えば加重合計を算出することを含む。
・前記定量化するステップは、個々の実験誤差を数量化する(quantizing)ことを含む。
・前記総実験誤差は、2つを超えるステップを含むマルチステップのサンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスのうちの少なくとも2つのステップを、考慮する。
・前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスは、液体取り扱いおよび/または分析シーケンスを含むか、あるいは液体取り扱いおよび/または分析シーケンスから成る。
・前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスは、以下:液体吸引、液体分注および/または液体ピペッティングなどの液体取り扱い、サンプル秤量、サンプル分析、好ましくは少なくとも液体取り扱い、のうちの1つまたは複数のステップを含み、好ましくは前記ステップのそれぞれの実験誤差が、定量化される。
・前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスには、実験装置の使用が含まれる。
・前記実験装置は、手持ち式ピペット、液体取り扱いロボット、スケール、気圧センサー、温度センサー、湿度センサー、分光計、またはサンプル分析装置を含む。
・前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスの過程における、以下の装置:手持ち式ピペット、液体取り扱いロボット、スケール、気圧センサー、温度センサー、湿度センサー、分光計、サンプル分析装置、のうちの1つ以上の使用における実験誤差は、定量化されるべき前記総実験誤差の要因となり、かつ考慮される。
・前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスの過程における、以下の装置:手持ち式ピペット、液体取り扱いロボット、スケール、気圧センサー、温度センサー、湿度センサー、分光計、およびサンプル分析装置、のうちの少なくとも2つの使用における実験誤差は、定量化されるべき前記総実験誤差の要因となり、かつ考慮される。
・前記定量化するステップは、前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンス中の以下の実験誤差:ピペッティング誤差、秤量誤差、サンプル分析誤差、および化学的化合物または生物学的化合物の濃度における誤差、のうちの1つまたは複数を考慮する。
・前記出力値は、前記実験誤差およびそれらの組み合わせうちのいずれかから導出される、パラメータ、指示、および推奨、のうちの1つまたは複数を含む。
・前記出力装置は、前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスにおいて使用される実験装置のディスプレイを含む。
・前記出力装置は、手持ち式実験装置のディスプレイを含む。
・前記出力装置は、携帯電話またはタブレットのディスプレイなどのモバイルデバイスのディスプレイを含み、当該モバイルデバイスは、サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスにおいて使用される。
・前記提示するステップは、モバイルアプリケーションまたはタブレットソフトウェア、ウェブベースのサービスを介して、または実験装置に統合されたソフトウェアとして、もたらされる。
・前記出力値は、総実験誤差の蓄積を低減するために、個々の実験誤差の要因を調整するための推奨(前記要因に関連するパラメータを調整するための推奨など)を含む。
・前記出力値は、前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスの現在のステップまたは後続のステップの実行中における、特定の液体取り扱い装置、および/または液体取り扱い装置内の特定のチップ(tip)、の使用に対する推奨を含む。
・前記提示するステップは、前記ディスプレイ上に1つまたは複数のチャート、図示記号および/または英数字記号を提示することを含む。
・前記提示するステップは、前記ディスプレイ上に矢印または円などの可変サイズの図示記号を提示することを含む。
・前記提示するステップは、前記ディスプレイ上に数値で表される不確実係数を提示することを含む。
・前記方法は、定量化された前記実験誤差に基づいて、実験装置であってその使用が前記誤差の要因となる実験装置、の機能を自動的にロックすることを含む。
・定量化された前記実験誤差または前記出力値は、実験装置であってその使用が前記誤差の要因となる実験装置、に報告される。
・前記出力値は、前記総実験誤差を低減するための実験装置に対する制御コマンドまたは補正係数であるパラメータ、を含む。
・前記報告は、以前のステップおよび/または後続のステップへの報告を含む。
・前記報告は、以前のステップまたは後続のステップで使用される実験装置に制御コマンドまたは補正係数を送信することを、含む。
・前記補正係数は、傾きを含む。
・サンプルを取り扱うおよび/または分析するための手段は、液体取り扱い装置を含む。
・前記出力装置は、ディスプレイ、オーディオ手段またはオーディオビジュアル手段である。
・前記装置は、手持ち式(hand-held)電子ピペットなどの手持ち式装置である。
【0010】
本発明の実施形態は、サンプル取り扱いプロセスにおける実験誤差を低減する既知の方法を改善することを、目的とする。
【0011】
少なくともいくつかの実施形態では、特に、複数の実験装置および/または複数のユーザが関与するマルチステップのサンプル取り扱いプロセスおよび分析プロセスの場合に、実験誤差およびその蓄積をより効果的に取り扱うことが可能となる。
【0012】
1つの実施形態の利点は、ユーザが誤差の蓄積に即座に反応して、進行中の前記サンプル取り扱いプロセスを調整または中断できることである。
【0013】
1つの実施形態の利点は、サンプル取り扱いにおいて確認されたまたは予測された誤差の要因を、前記サンプルの取り扱い中にユーザに示すのが可能なことである。
【0014】
1つの実施形態の利点は、サンプル取り扱いの際のまたはサンプル取り扱いに続くステップでの誤差または誤差の蓄積について、ユーザが通知されることである。これにより、前記ユーザは、サンプル取り扱いプロトコルにおける実験誤差を低減するために、および/または総実験誤差が許容できないほど大きくなるようなプロトコルの実行を回避するために、特定の動作またはプロトコルの修正、更にはプロトコルの中断を実行することが、可能になる。
【0015】
1つの実施形態の利点は、ユーザが、サンプル取り扱いプロトコルの初期のステップ中に蓄積されたこれまでの誤差、ならびに/または現在のステップおよび後続するステップにおける誤差、の情報を受け取るのが可能なことである。
【0016】
1つの実施形態の利点は、前記シーケンスの過程で、および例えばその特定のステップを開始する前に、前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスにおける前記不確実性レベルが、ユーザに通知され得るので、不必要なプロセスステップを回避できることである。
【0017】
1つの実施形態の利点は、特にマルチステップおよび/またはマルチデバイスのサンプル取り扱いプロトコルにおける、正確性および再現性が、改善され得ることである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の1つの実施形態による、3ステップ液体分注シーケンスの際の実験誤差の蓄積の例示的な視覚的提示を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
【0020】
本文脈において、「実験誤差」という用語は、ランダムなおよび/または系統的な実験誤差または観察誤差を指す。
【0021】
本文脈において、「サンプル取り扱い装置」という用語は、サンプルを取り扱うことを目的とした任意の装置、典型的には実験用装置、例えばサンプル分析装置、液体取り扱い装置、またはサンプル秤量装置を指し得る。
【0022】
「実験用装置」という用語は通常、サンプル取り扱い装置を指す。
【0023】
「サンプル取り扱い」という用語は通常、サンプル取り扱いおよび/または分析を含む。
【0024】
本文脈において、「ディスプレイ」という用語は、サンプル取り扱いタスクまたはシーケンスの過程における、サンプル取り扱い装置などの実験用装置の一部であるか、あるいは実験用装置に接続または統合され得る任意のディスプレイを、指し得る。
【0025】
サンプル取り扱いのプロトコル中の実験誤差の蓄積が、定量化され、前記プロトコルの実行の過程においてまたはすでに初期においてさえもユーザに提示される本方法によって、実験室におけるサンプル取り扱いの正確さおよび/または再現性を著しく改善できることが、驚くべきことに観察された。
【0026】
定量化される実験誤差には、さまざまな要因からの誤差が含まれ得る。実験誤差の前記要因には、機器的、環境的、手順的、および人的な要因が含まれ得る。実験誤差には、ランダムなおよび/または系統的な誤差が含まれ得る。通常、実験誤差には、サンプルの取り扱いおよび/またはサンプル分析における実験誤差が含まれる。
【0027】
1つの実施形態において、本発明は、
サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスの総実験誤差を定量化するステップであって、このシーケンスが、少なくとも2つのステップおよびそれぞれの個別の実験誤差を含む、ステップ;
前記総実験誤差を提示するステップ、ならびに/または前記総実験誤差から導出されるパラメータおよび/もしくは指示および/もしくは推奨を、前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスのステップを実行しているユーザに提示するステップ、を含む方法を、提供する。
【0028】
サンプル取り扱いシーケンス
【0029】
前記サンプル取り扱いシーケンスは、通常、少なくとも2つのサンプル取り扱いステップまたはタスクを含む。
【0030】
サンプル取り扱いステップまたはタスクは、液体ピペッティングタスクまたはサンプル秤量タスクであり得る。
【0031】
1つの実施形態において、前記サンプル取り扱いシーケンスは、少なくとも1つの液体取り扱いタスクまたは液体取り扱いシーケンスを含む。
【0032】
前記サンプル取り扱いシーケンスは、複数の液体吸引ステップおよび分注ステップを含むピペッティングシーケンスを、含み得る。
【0033】
1つの実施形態において、前記サンプル取り扱いシーケンスは、以下のタスク:液体吸引、液体分注、または液体ピペッティングなどの液体取り扱い;またはサンプル秤量もしくはサンプル分析などのサンプル取り扱い、のうちの1つまたは複数、好ましくは少なくとも液体ピペッティング、を含む。
【0034】
1つの実施形態において、前記サンプル取り扱いシーケンスは、以下の装置:手持ち式ピペット、液体取り扱いロボット、スケール、気圧センサー、温度センサー、湿度センサー、分光計、サンプル分析装置、のうちの1つまたは複数を使用して実行され得る。
【0035】
誤差の定量化
【0036】
これらのサンプル取り扱い装置の使用における個々の実験誤差は、定量化され得る。総実験誤差は、個々の実験誤差から算出され、ユーザに提示され得る。
【0037】
実験誤差は、定量化され、絶対誤差もしくは相対誤差またはその両方として、提示され得る。
【0038】
例えば、前記総誤差は、前記ユーザによって実行される現在のサンプル取り扱いおよび/または分析ステップにおける実験誤差、および/または同じサンプルの以前および/または後続のサンプル取り扱いおよび分析ステップにおける実験誤差を、考慮し得る。
【0039】
提示されるべき総実験誤差を定量化するときに、以前のサンプル取り扱いステップを考慮することで、既に蓄積された誤差が許容できないほど大きい場合にユーザが次のステップを全く実行しないことを決定できるという利点が、得られる。
【0040】
提示されるべき総実験誤差を定量化するときに、現在のおよび後続のサンプル取り扱いステップを考慮することにより、大きすぎる総実験誤差の蓄積を回避するようにユーザが実行を調整できるという利点が、得られる。このようにして、許容可能な実験誤差でマルチステップサンプル取り扱いプロトコル全体を完了させることができる。
【0041】
サンプル取り扱いシーケンスの過程における1つまたは複数の装置(これらの装置は、サンプル取り扱い装置と呼ばれ得る)の使用における実験誤差は、定量化される総実験誤差の要因となる可能性がある。1つまたは複数の前記サンプル取り扱い装置は、手持ち式ピペット、液体取り扱いロボット、スケール、気圧センサー、温度センサー、湿度センサー、分光計、またはサンプル分析装置のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0042】
例えば、手持ち式ピペットは、その設定、制御、使用、プロセスフェーズなどに基づいて誤差を生み出す可能性がある。液体取り扱いロボットは、その設定、制御、プログラム、プロセスフェーズなどに基づいて誤差を生み出す可能性がある。気圧センサー、温度センサー、および/または湿度センサーは、その設定、較正、使用状況などに基づいて誤差を生み出す可能性がある。前記センサーは、他の装置、読み取り値、結果、または取り扱うサンプルに対する誤差を生み出す可能性がある。分光計および/またはサンプル分析装置は、その設定、制御、使用、使用プロセスまたはプロセスフェーズ、較正などに基づいて誤差を生み出す可能性がある。前述したいずれかのスケールおよび/またはスケールの較正が誤差を生み出す可能性がある。いずれかの誤差は、ソース、その使用、使用されるソースの選択、そのスケール、設定、制御などにより直接生じる場合がある。
【0043】
前記実験誤差は、前記サンプル取り扱い装置の精度、サンプル取り扱いの動作、および/または取り扱い対象(サンプル自体)に関連し得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、誤差の定量化は、サンプル取り扱いシーケンス中の1つまたは複数の実験誤差を考慮する。前記1つまたは複数の実験誤差は、ピペッティング誤差、秤量誤差、サンプル分析誤差、および化学化合物または生物学的化合物の濃度における誤差、のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、定量化された誤差は、サンプル取り扱いまたは分析装置(その使用がサンプル取り扱いタスクまたはシーケンスの一部を形成する)に、報告またはフィードバックされ、よって、総実験誤差の蓄積に寄与する。
【0046】
例えば、前記定量化された誤差に基づき、傾きなどの補正係数を算出し、以前のステップまたは後続のステップで使用される実験装置の使用のために、それを送信することが可能である。ステップ間の温度変化は、このように考慮されて補正され得る系統的誤差の要因となり得る。
【0047】
前記総誤差は、経験的にトレーニングされたアルゴリズムによって定量化され得る。
【0048】
前記アルゴリズムは、パラメータ化されたアルゴリズムまたは学習アルゴリズムであってもよい。
【0049】
経験的データは、測定結果および/または特定の値および/または範囲に基づき得る。値および/または範囲は、所定の設定、規則、タイミング、制御などのように、使用される装置またはプロセスに関連し得る。経験的データは、実行可能なプログラムをトレーニングするために使用され得る。例えば、機械学習やニューラルネットワークでは、経験的データは入力(input)として使用され得る。入力された経験的データは、入力された経験的データまたはそれらの組み合わせのいずれかに由来する出力を、導き得る。出力は、所定の範囲または値からの偏差を示し得るパラメータであってもよい。出力は、例えば、装置または前記装置の設定を調整または変更することによって、あるいは、以前のまたは後続の取り扱いプロセスのフェーズを修正することによって誤差を修正するための、指示であってもよい。指示の受信に応答して、前記装置は、受信した指示に基づいて自動的に調整され得る。出力は、装置、設定、プロセスおよび/またはそのフェーズを調整、変更および/または制御するための推奨であってもよい。
【0050】
前記総誤差は、マルチステップサンプル取り扱いシーケンスにおける個々のステップに関連する個々の誤差から算出することによって、定量化され得る。
【0051】
前記定量化するステップは、例えば、個々の誤差の合計を算出すること、場合によっては、一緒に加算される誤差に個々の重みまたは確率を付与した後に、または場合によっては、一緒に加算される個々の誤差を数量化した後に、個々の誤差の合計を算出することを含み得る。
【0052】
誤差を定量化するための手段は、手持ち式サンプル取り扱い装置などのサンプル取り扱い装置に通常統合されている演算装置を、含み得る。前記演算装置は、好ましくは、サンプル取り扱いシーケンスのステップまたはステージにおける個々の実験誤差から累積誤差を定量化するように構成され、このサンプル取り扱いシーケンスは、液体取り扱い装置によって実行される液体取り扱いタスクを、含み得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記演算装置は、手持ち式液体取り扱い装置または自動液体取り扱いステーションなどの液体取り扱い装置に、好ましくは手持ち式液体取り扱い装置に、統合されている。
【0054】
前記総実験誤差を定量化して提示することにより、前記実施形態は、前記サンプル取り扱いの現在の状態および/または更なるステップに対する可能な推定に関する情報、を提供する。このようにしてユーザは、実験誤差の蓄積の影響をフォローアップして理解することができるようになり、結果の信頼性が向上する。
【0055】
出力値
【0056】
本方法は、定量化された誤差を提示することを含む。本方法は、代替的にまたは追加的に、前記誤差から導出される1つまたは複数の出力値を提示することを、含み得る。
【0057】
出力値のタイプは、例えば、ユーザに基づいて、および/または誤差蓄積速度に基づいて、調整され得る。
【0058】
訓練を受けたユーザにとっては誤差情報を直接受け取ることが有益であり得るが、訓練を受けていないユーザは具体的なまたは実用的な指示を含む出力値を受け取ることを好む可能性がある。
【0059】
一例として、総誤差がゆっくりと蓄積している場合、前記出力値は、総誤差の急激な増加が認められる場合よりも、より一般的な指示を含む可能性がある。
【0060】
本方法は、好ましくは、個々の実験誤差および総実験誤差の評価に基づいてディスプレイなどの出力装置によって出力値を示すこと、を含む。
【0061】
好ましくは、本方法は、例えばディスプレイなどの出力装置によって指示および/または推奨をユーザに示すこと、を含む。前記ディスプレイは、サンプル取り扱いタスクまたはサンプル取り扱いシーケンスの過程において、サンプル取り扱い装置などの実験装置の一部であってもよく、または実験装置に接続もしくは統合されていてもよい。前記指示および/または前記推奨は、好ましくは、サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスの現在のステップまたは後続のステップにおけるサンプル取り扱いタスクの実行において、前記定量化された誤差を低減するように、ユーザを導く。
【0062】
前記推奨は、調整が総誤差を減少させる最大の可能性を有するステップまたは装置、に関するものであってもよい。
【0063】
前記推奨は、調整が他のステップまたは他の装置における誤差を増大させる可能性がないステップまたは装置、に関するものであってもよい。
【0064】
前記推奨は、前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスの現在のステップまたは後続のステップの実行中に、液体取り扱いタスクにおける特定の液体取り扱い装置、および/または液体取り扱い装置における特定のチップの使用を推奨することを含み得る。
【0065】
例えば、チップの容積の選択は、特に自動液体取り扱いロボット用のチップでは、系統的な誤差の要因となり得る。
【0066】
さらに、同じチップを長期間使用すると、系統的誤差が蓄積し始める可能性がある。
【0067】
空気置換ピペットでは、例えば、ユーザがチップを事前に濡らしていない場合、または温度平衡で作業していない場合などに、その使用に対する典型的なまたは特有の誤差を検出することが可能な場合がある。このような誤差は、ユーザに示され得る。また、補正係数を適用することにより、これらの誤差を考慮することも可能である。
【0068】
前記推奨は、液体取り扱いタスクにおいて、分注される液体量などの特定の液体取り扱いパラメータの使用を推奨することを、含み得る。
【0069】
好ましくは、前記推奨は、サンプル取り扱い手順の現在のステップおよび/または後続のステップのいずれかにおいて、実験誤差を低減するように適合された行動に、ユーザを導く。前記推奨は、サンプル取り扱い手順全体の総実験誤差を低減するように適合された行動に、ユーザを導き得る。前記行動は、調整されたパラメータまたは調整された装置で現在の手順を継続することを含み得る。前記行動は、現在のサンプル取り扱いステップの中断および再開、またはサンプル取り扱いおよび/もしくは分析シーケンス全体の中断および再開を含み得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、補正係数などのパラメータを出力値として後続のステップに報告することによって、そのような中断または再開を回避することができる。
【0071】
1つの実施形態において、出力値は、現在のステップの実験誤差に基づく。
【0072】
1つの実施形態において、出力値は、累積誤差、すなわち現在のステップの実験誤差および少なくとも1つ以前のステップ、好ましくは以前のすべてのステップの実験誤差に基づく。
【0073】
1つの実施形態において、出力値は、累積誤差および推定された後続の誤差、すなわち現在のステップの、以前のすべてのステップの、および後続のすべてのステップの実験誤差、に基づく。
【0074】
1つの実施形態において、誤差の閾値に近づくかあるいは超える場合、出力値が生成される。
【0075】
前記閾値は、所定の閾値であってもよいし、学習アルゴリズムによって決定される閾値などの学習閾値であってもよい。
【0076】
前記閾値は、個々のステップの誤差に対する閾値であってもよいし、複数のステップの間に蓄積された誤差に対する閾値であってもよい。
【0077】
1つの実施形態では、前記推奨は、総実験誤差を最小限に抑えるために、液体取り扱い装置などの実験装置の特定の組み合わせの使用を推奨することを、含む。
【0078】
前記組み合わせは、同じであっても異なっていてもよい少なくとも2つのサンプル取り扱い装置の組み合わせ、を含み得る。
【0079】
前記組み合わせは、少なくとも4つのサンプル取り扱い装置などの、少なくとも3つのサンプル取り扱い装置の組み合わせを、含み得る。
【0080】
前記組み合わせは、少なくとも自動液体取り扱いステーションまたは手持ち式ピペットを含み得る。例えば、前記組み合わせは、手持ち式ピペットおよび自動液体取り扱いステーションを含み得る。別の例として、前記組み合わせは、自動液体取り扱いステーションおよびスケールを含み得る。別の例として、前記組み合わせは、手持ち式ピペットおよび自動液体取り扱いステーションを含み得る。
【0081】
1つの実施形態において、前記推奨は、電子ピペット、自動液体取り扱いステーション、機械的に作動するピペット、またはそれらの任意の組み合わせの使用を推奨することを、含む。
【0082】
1つの実施形態において、前記推奨は、一連の希釈の調製において最適な分注量(例えば、最初に1:3に希釈し、その後1:3に希釈することによって、あるいは約1:5.47に2回希釈することによって、1:30希釈液を調製するかどうか)を推奨することを、含む。
【0083】
1つの実施形態において、前記推奨は、特定のチップ製造業者によるチップの使用を推奨することを、含む。
【0084】
1つの実施形態において、前記推奨は、チップの交換を推奨することを、含む。
【0085】
1つの実施形態において、前記推奨は、液体取り扱い装置またはサンプル秤量装置の変更を推奨することを、含む。
【0086】
1つの実施形態において、前記推奨は、例えば、異なる液体取り扱い装置、または異なるスケール、または異なるピペッティングパラメータを使用することにより、前記サンプル取り扱いシーケンスの中断および再実行を推奨することを、含む。
【0087】
誤差の提示
【0088】
前記誤差は、電子出力装置などの出力装置によって提示される。通常、前記出力装置はディスプレイである。
【0089】
1つの実施形態において、前記提示するステップは、ユーザによって操作可能な、ならびに/またはサンプル取り扱いおよび/もしくはシーケンス分析に使用される、実験装置の出力装置によって、実行される。
【0090】
好ましくは、前記誤差は、手持ち式装置において提示される。前記手持ち式装置は、ユーザがサンプル取り扱いシーケンスを実行するために操作することができる手持ち式実験装置であってもよい。
【0091】
最も好ましくは、前記誤差は、手持ち式実験装置のディスプレイ上に提示される。
【0092】
1つの実施形態において、前記提示するステップは、電子ピペットまたは自動液体取り扱いステーションなどの液体取り扱い装置に統合されたディスプレイによって、行われる。
【0093】
1つの実施形態において、前記提示するステップは、サンプル取り扱いシーケンスにおいて使用されるサンプル取り扱い装置のディスプレイによって、行われる。
【0094】
いくつかの実施形態において、前記提示するステップは、視覚的手段、視聴覚的手段、または音声的手段など、任意の適切な手段または出力装置によって、行われ得る。視覚的手段の使用により、より多くの情報、特に英数字情報を、誤差の大きさおよび性質についてユーザに提示することが、可能になる。音声手段の利点は、ユーザがどんなディスプレイも観察する必要がないことである。
【0095】
1つの実施形態において、前記提示するステップは、前記手持ち式実験装置を振動させることを含む。
【0096】
好ましくは、前記提示するステップは、提示された実験誤差が関連するサンプル取り扱いおよび/または分析タスクを実行中のユーザが保持または着用するまたはユーザの視界内に位置する装置、を介して実行される。提示するための前記装置は、前記サンプル取り扱い装置またはその制御装置に接続または統合され得る。
【0097】
1つの実施形態において、前記提示するステップは、サンプル取り扱いシーケンスの実行中にユーザが利用可能なモバイルデバイスの出力装置、によって行われる。前記モバイルデバイスは、携帯電話、ラップトップまたはタブレットであり得る。前記モバイルデバイスは、無線接続または有線接続を介して提示(出力)される情報を、受信することができる。
【0098】
前記提示するステップは、モバイルアプリケーションもしくはタブレットソフトウェアもしくはウェブベースのサービスを介した無線もしくは有線接続を介して、またはサンプル取り扱い装置に統合されたソフトウェアを介して、もたらされ得る。
【0099】
前記提示するステップは、サンプル取り扱い装置のディスプレイ上に、1つまたは複数のチャート、図示記号および/または英数字記号を表示することを、含み得る。
【0100】
前記提示するステップは、サンプル取り扱い装置のディスプレイ上に、矢印または円などの可変サイズの図示記号を提示することを、含み得る。
【0101】
好ましくは、前記提示するステップは、例えば、手持ち式装置であり得るサンプル取り扱い装置のディスプレイ上に、数値で表される不確実係数をユーザに提示することを含む。
【0102】
1つの実施形態において、前記不確実係数は、サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンス全体の総実験誤差から導出され得る。
【0103】
1つの実施形態において、前記不確実係数は、個々のサンプル取り扱いステップの実験誤差から導出され得る。
【0104】
1つの実施形態において、前記不確実係数は、累積された実験誤差から導出され得る。
【0105】
1つの実施形態において、前記不確実係数は、現在のステップおよび/または後続のステップの推定実験誤差から導出され得る。
【0106】
本方法は、サンプル取り扱い装置の1つまたは複数の機能を、例えば一時的に、自動ロックすることを含み得る。その利点は、提示される情報に対するユーザの反応に依存することなく、プロトコルの実行および誤差の蓄積が自動的に停止されることである。
【0107】
本発明はまた、本方法を実行するように構成されているシステムも、提供する。
【0108】
前記システムは、以下の装置:手持ち式ピペット、液体取り扱いロボット、スケール、気圧センサー、温度センサー、湿度センサー、分光計、サンプル分析装置、好ましくは少なくともピペットなどの手持ち式装置、のうちの1つまたは複数を含み得る。さらに、前記システムは、前記システムを制御または操作するための装置、またはサンプル取り扱いおよび/もしくはシーケンス分析を含み得る液体取り扱い実行用の装置を、含んでもよい。前記制御するための装置は、コントローラと呼ばれ得る。前記コントローラは、コンピュータまたはモバイルデバイスであり得る。
【0109】
前記装置は、Bluetooth接続などの無線接続によって、互いに接続され得る。このようにして、例えば、誤差をユーザに示す装置とは異なる装置によって総誤差が定量化される場合に、誤差データなど(定量化された総誤差など)のデータを装置間で送信することが、可能になる。
【0110】
1つの実施形態において、前記総実験誤差は、手持ち式液体取り扱い装置によって算出され、前記誤差は、前記手持ち式液体取り扱い装置によって提示される。
【0111】
1つの実施形態において、前記総実験誤差は、自動液体取り扱いステーションによって算出され、前記誤差は、手持ち式液体取り扱い装置によって提示される。
【0112】
1つの実施形態において、前記総実験誤差は、自動サンプル分析装置または自動サンプル分析ステーションによって算出され、前記誤差は、手持ち式液体取り扱い装置によって、提示される。
【0113】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の実験装置から取り出されたデータが、手持ち式ピペットのディスプレイ上に、提示され得る。このようなデータには、実験誤差、および/またはその誤差から導出される出力値が、含まれ得る。したがって、前記ピペットのディスプレイは、誤差および/または出力値の組み合わせを、提示し得る。このようにして、例えば、総誤差がゆっくりと蓄積し、設定された閾値に近づくような状況において、以前のステップにおける誤差の蓄積および要因を、詳細かつ適時にユーザに示すことが可能になる。
【0114】
本発明はまた、本方法を実行するための手段を含むサンプル取り扱い装置を、提供し得る。1つの実施形態において、前記サンプル取り扱い装置は、前記総実験誤差を定量化するように構成されている演算装置と、前記総実験誤差を提示するように構成されているディスプレイなどの出力装置と、を備える。
【0115】
図1は、本発明の1つの実施形態による3ステップの液体分注シーケンス中の実験誤差の蓄積の例示的な視覚的提示を示す。3つのステップ(ステップ1、ステップ2およびステップ3)の各々における個々の実験誤差と、3つのステップの後の総実験誤差とが、グラフで示されている。
【0116】
ステップ1、ステップ2、およびステップ3が異なる場合、例えば、異なるタイプの装置によって実行されるか、または異なるタイプのサンプル取り扱い動作を伴う場合、それらを合計する前に誤差の数量化を実行することが好ましい場合がある。
【0117】
実施例
【0118】
1つの例では、前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスは、プログラムされたピペッティングシーケンスを含む。前記ピペットは、実験誤差の蓄積を追跡し、プログラムされたシーケンス全体の総実験誤差を推定するように構成されている。したがって、ピペットは過去のステップの実験誤差を定量化または判定し、累積誤差を算出し、任意でそれぞれの閾値と比較し、後続の誤差を推定し、シーケンス全体の総誤差を算出(推定)する。シーケンスの進行に伴って推定値は変化するか、または更新され得る。前記ピペットは、蓄積された実験誤差および/または推定された総実験誤差を、ユーザに示す。前記ユーザは、許容可能な不確実性レベルでプログラムされたシーケンスを完了できるかどうかを、評価することができる。あるいは、前記ピペットがそのような評価を自動的に生成し、前記ユーザに提示し得る。
【0119】
1つの例では、液体取り扱いシーケンスにおける前記総実験誤差を定量化する際に、チップ、分注される液体、分注される投与数、ユーザ、空気湿度、周囲温度のうちの1つまたは複数が、考慮される。閾値または許容値は、個々の誤差の要因に関連付けられ得る。
【0120】
他のサンプル取り扱いおよび/または分析手順が実施される同じ空間で溶媒を取り扱うと、当該手順における実験誤差が増大する。1つの例では、実験室の空気中の揮発性有機化合物の濃度を検出するために、揮発性有機化合物(VOC)センサーが使用される。検出された濃度は、前記サンプル取り扱いおよび/または分析手順における総実験誤差を定量化する際に、考慮される。
【0121】
1つの実施例では、前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスには、液体取り扱いタスク、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析タスク、およびタンパク質分離タスクが含まれる。実験誤差の蓄積は、例えば不確実係数として、前記ステップの実行中に、ユーザに提示される。このようにして、前記不確実係数の大きさに基づいて、前記タスクの実行を継続し例えば1つのタスクから次のタスクに進むことが妥当であるかどうかを、ユーザが評価することができる。追加的または代替的に、推奨事項が、提示される。前記推奨事項は、決定された不確定要素に基づく表示を含み得る。この表示は、誤差要因に言及し、オプションとして、誤差要因の不確実係数を許容可能なレベルにするために行うべき調整に言及し得る。許容レベルとは、タスクの実行を継続する上で不利益にならないと考えられる誤差レベルを指す。
【0122】
開示されている本発明の該実施形態は、本願明細書に開示されている特定の構造、プロセスステップまたは材料に限定されないが、関連分野の当業者に認識されるように、それらの均等物にまで及ぶことを理解すべきである。また、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明する目的でのみ使用されるものであって、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0123】
「1つの(one)実施形態」または「1つの(an)実施形態」への本明細書を通しての言及は、該実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所で「1つの(one)実施形態において」または「1つの(an)実施形態において」という句を用いているが、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らない。
【0124】
本明細書では、便宜上、複数の項目、構造要素、構成要素、および/または材料を一緒に列挙して提示することがある。しかし、これらの列挙は、その各部材が個別で固有の要素として独立して識別されるように解釈されるべきである。従って、そのようなリストの個々の部材はいずれも、特に明記されない限り、単に同じグループにおいて提示していることのみに基づいて同じ列挙中の他の部材との事実上の均等物として解釈されるべきではない。さらに、本発明の様々な実施形態および実施例は、その様々な構成要素の代替物とともに本明細書で参照され得る。そのような実施形態、実施例、および代替物は、互いに事実上の均等なものとして解釈されるべきではなく、本発明の別々の自立した表現として見なされるべきであると理解される。
【0125】
さらに、記載した特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わされ得る。本説明では、本発明の実施形態の完全な理解をもたらすために、長さ、幅、形状などの例など、多数の具体的な詳細が記載されている。しかし、当業者は、本発明が1つ以上の具体的な詳細なしで、または他の方法、構成要素、材料などとともに、実施され得ることを認識するであろう。本発明の態様を不明瞭にするのを避けるため、他の例では、周知の構造、材料または動作は、詳細に図示されず、または記載されていない。
【0126】
前述の例は1つまたは複数の特定の用途における本発明の原理の例示であるが、実施の形態、使用および詳細における多くの変更は、発明的能力を行使することなく、かつ、本発明の原理と概念から逸脱することなく、行うことが可能であることが当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、以下に記載されている特許請求の範囲による以外は、限定されることを意図するものではない。
【0127】
本明細書では、「含む(to comprise)」および「含む(to include)」という動詞は、記載されていない特徴の存在をも排除も要求もしないオープンな限定として使用されている。従属請求項に記載されている特徴は、特に明記しない限り互いに自由に組み合わせることができる。さらに、本明細書全体を通して「1つ(a)」または「1つ(an)」の使用、すなわち単数形は、複数を除外するものではないことと理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、少なくとも、実験室環境におけるサンプルの調製、ピペッティング、および/または分析などの、サンプルの取り扱いおよび/または分析方法において、産業上適用可能である。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのステップを含むマルチステップのサンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスの総実験誤差を定量化するステップであって、前記少なくとも2つのステップのそれぞれの個々の実験誤差を定量化するステップを含む、定量化するステップと、
前記総実験誤差、および/または前記総実験誤差から導出される出力値を、出力装置によって提示するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記定量化するステップが、前記実験誤差を推定すること、前記実験誤差を測定すること、もしくは前記実験誤差についての所定値を取り出すこと、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定量化するステップが、
経験的にトレーニングされたアルゴリズムによって定量化すること、又は、
個々の実験誤差の合計、例えば加重合計を算出すること、又は、
前記個々の実験誤差を数量化すること、を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスが、液体取り扱いおよび/または分析シーケンスを含むか、あるいは液体取り扱いおよび/または分析シーケンスから成る、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスの過程における、以下の装置:手持ち式ピペット、液体取り扱いロボット、スケール、気圧センサー、温度センサー、湿度センサー、分光計、サンプル分析装置、のうちの1つまたは複数の装置の使用における実験誤差が、定量化されるべき前記総実験誤差の要因となり、かつ考慮される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記出力値が、前記実験誤差およびそれらの組み合わせうちのいずれかから導出される、パラメータ、指示、および推奨、のうちの1つまたは複数、を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記出力装置が、前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスにおいて使用される実験装置のディスプレイを含み、好ましくは、前記出力装置が、手持ち式実験装置のディスプレイを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記出力装置が、携帯電話またはタブレットのディスプレイなどのモバイルデバイスのディスプレイを含み、当該モバイルデバイスが、前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスにおいて使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記出力値が、前記総実験誤差の蓄積を低減するために、個々の実験誤差の要因を調整するための推奨、例えば、前記要因に関連するパラメータを調整するための推奨、を含むか、あるいは、
前記出力値が、前記サンプル取り扱いおよび/または分析シーケンスの現在のステップまたは後続のステップの実行中における、特定の液体取り扱い装置、および/または液体取り扱い装置内の特定のチップ、を使用するための推奨を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記提示するステップが、ディスプレイなどの前記出力装置によって、チャート、図示記号、英数字記号、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたは複数を提示することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記提示するステップが、ディスプレイなどの前記出力装置によって、数値で表される不確実係数を提示することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
定量化された前記実験誤差に基づいて、実験装置であってその装置の使用が前記誤差の要因となる実験装置、の機能を自動的にロックまたは調整することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
定量化された前記実験誤差または前記出力値が、実験装置であってその使用が前記誤差の要因となる実験装置、に報告され、かつ、
前記出力値が、前記実験誤差を低減するための前記実験装置に対する制御コマンドまたは補正係数であるパラメータ、を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
サンプルを取り扱うおよび/または分析するための手段、
前記総実験誤差を定量化するように構成されている演算装置、および、
前記総実験誤差および/または前記出力値を提示するように構成されている出力装置、を含む、請求項1または2に記載の方法を実行するための手段を有する、装置。
【請求項15】
前記サンプルを取り扱うおよび/または分析するための手段が、液体取り扱い装置を含み、かつ、前記出力装置が、ディスプレイ、オーディオ手段、またはオーディオビジュアル手段を含む、請求項14に記載の装置。
【外国語明細書】