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特開2024-13301感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物フィルム、硬化物、電子部品、及び積層部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013301
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物フィルム、硬化物、電子部品、及び積層部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/037 20060101AFI20240125BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20240125BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240125BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20240125BHJP
   C08F 283/04 20060101ALI20240125BHJP
   C08F 283/06 20060101ALI20240125BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240125BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G03F7/037 501
G03F7/027 502
G03F7/004 501
G03F7/004 512
G03F7/031
C08F283/04
C08F283/06
C08F2/44 C
H05K3/34 504B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115281
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 歩実
(72)【発明者】
【氏名】桂田 悠基
(72)【発明者】
【氏名】金森 大典
【テーマコード(参考)】
2H225
4J011
4J026
5E319
【Fターム(参考)】
2H225AC34
2H225AC63
2H225AD06
2H225AE05P
2H225AE15P
2H225AM77P
2H225AM93P
2H225AN33P
2H225AN57P
2H225BA05P
2H225BA22P
2H225CA11
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J011AA05
4J011AC04
4J011CA01
4J011CA02
4J011CA08
4J011PA97
4J011QA12
4J011QA23
4J011SA65
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J026AB34
4J026AC26
4J026BA28
4J026BB03
4J026DB02
4J026DB09
4J026DB15
4J026DB24
4J026DB36
5E319AA03
5E319AC02
5E319AC04
5E319AC06
5E319CD15
5E319CD26
5E319GG20
(57)【要約】
【課題】本発明は、応力緩和性に優れ、現像後も十分な接着性を有する、パターン形成可能な感光性組成物を提供すること。
【解決手段】
(a)カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有するポリイミド、(b)ラジカル重合開始剤、(c)多官能アクリレート化合物、及び(d)液状の熱架橋性化合物を含むことを特徴とする、感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有するポリイミド、(b)ラジカル重合開始剤、(c)多官能アクリレート化合物、及び(d)液状の熱架橋性化合物を含むことを特徴とする、感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(a)ポリイミドが、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される構造を含有するポリイミドを含むことを特徴とする、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
(式中、Xはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる基を少なくとも一つ有する1価の有機基を表し、Yはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる基を少なくとも一つ有する2価の有機基を表す。また、R1は4~14価の有機基を表し、Rは2~12価の有機基を表し、RおよびRは、それぞれ独立にカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表す。また、αおよびβはそれぞれ独立に0~10の整数を表し、nは3~200の整数を表す。)
【請求項3】
前記(a)ポリイミドが、前記一般式(1)または(2)中のRにおいて、下記一般式(3)で表されるジアミンの残基を含有することを特徴とする、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化2】
(式中、aは1~10の整数を表す。)
【請求項4】
前記(b)ラジカル重合開始剤が、オキシムエステル系化合物である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(c)多官能アクリレート化合物が、下記一般式(4)で表される多官能アクリレート化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化3】
(式中、Rは水素またはメチル基より選ばれる1価の有機基であり、Rは炭素数が2~4の炭化水素基である。また、m及びnは二つの和が8~20の整数を表す。)
【請求項6】
前記(d)熱架橋性化合物は、下記一般式(5)で表される熱架橋性化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R~R12はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、塩素原子、又は臭素原子を示す。Aはエチレンオキシエチル基、ジ(エチレンオキシ)エチル基、トリ(エチレンオキシ)エチル基、プロピレンオキシプロピル基、ジ(プロピレンオキシ)プロピル基、トリ(プロピレンオキシ)プロピル基、又は炭素数2~15のアルキレン基を示す。nは自然数であり、その平均は1.0~5.0である。)
【請求項7】
前記(d)熱架橋性化合物の含有量が、前記(a)ポリイミド100質量部に対して30~50質量部である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなることを特徴とする、感光性樹脂組成物フィルム。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を加熱硬化して形成された硬化物。
【請求項10】
前記硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.5GPa以上3.5GPa以下である、請求項9に記載の硬化物。
【請求項11】
第一の部材、硬化物、及び第二の部材を有する積層部材の製造方法であって、
以下の工程1~工程5をこの順に有する、積層部材の製造方法。
工程1:第一の部材上に請求項8に記載の感光性樹脂組成物フィルムを貼り合わせる工程
工程2:貼り合わせた前記感光性樹脂組成物フィルムを露光する工程
工程3:貼り合わせた前記感光性樹脂組成物フィルムを現像することで、パターンを形成する工程
工程4:前記パターンの側の面に、第二の部材を貼り合わせる工程
工程5:加熱により前記パターンを硬化させることで硬化物とする工程
【請求項12】
前記第一の部材が電子部品搭載用基板、前記第二の部材が電子部材、前記積層部材が電子部品であることを特徴とする、請求項11に記載の積層部材の製造方法。
【請求項13】
請求項9または10に記載の硬化物を有する、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、それからなる感光性樹脂組成物フィルム、本発明の感光性樹脂組成物を加熱硬化して形成された硬化物、本発明の感光性樹脂組成物フィルムを加熱硬化して形成された電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
センサー、半導体、LED、MEMSなどのエレクトロニクスデバイス製造の際の、ICチップ、加速度センサー、圧力センサー、イメージセンサー等のセンサーチップ、LEDチップ等のチップボンディング工程では、チップを固定する際に従来から接着剤が使用されている。(例えば特許文献1参照)これらの接着剤には、低応力性、低温接着性、耐湿信頼性、耐はんだリフロー性が求められるほか、近年加速する電子部品の微細化に伴い、より精密な構造設計が要求される傾向にある。このような半導体パッケージの機能、形態及び組立てプロセスの簡略化の手法として、パターン形成可能な感光性の機能を有する材料が求められる場合がある。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2001-329233号公報
【特許文献2】日本国特開2013-160899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や2に記載の材料をチップボンディング用途に用いた場合、部材同士の貼り合わせによる応力を緩和できずに反りが発生し、デバイスの品質に悪影響を及ぼすといった問題が生じる。
【0005】
かかる状況に鑑み、本発明は、応力緩和性に優れ、現像後も十分な接着性を有する、パターン形成可能な感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は次の構成を有する。
(1)
(a)カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有するポリイミド、(b)ラジカル重合開始剤、(c)多官能アクリレート化合物、及び(d)液状の熱架橋性化合物を含むことを特徴とする、感光性樹脂組成物。
(2)
前記(a)ポリイミドが、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される構造を含有するポリイミドを含むことを特徴とする、前記(1)に記載の感光性樹脂組成物。
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、Xはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる基を少なくとも一つ有する1価の有機基を表し、Yはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる基を少なくとも一つ有する2価の有機基を表す。また、R1は4~14価の有機基を表し、Rは2~12価の有機基を表し、RおよびRは、それぞれ独立にカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表す。また、αおよびβはそれぞれ独立に0~10の整数を表し、nは3~200の整数を表す。)
(3)
前記(a)ポリイミドが、前記一般式(1)または(2)中のRにおいて、下記一般式(3)で表されるジアミンの残基を含有することを特徴とする、前記(1)に記載の感光性樹脂組成物。
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、aは1~10の整数を表す。)
(4)
前記(b)ラジカル重合開始剤が、オキシムエステル系化合物である、前記(1)に記載の感光性樹脂組成物。
(5)
前記(c)多官能アクリレート化合物が、下記一般式(4)で表される多官能アクリレート化合物を含むことを特徴とする、前記(1)に記載の感光性樹脂組成物。
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、Rは水素またはメチル基より選ばれる1価の有機基であり、Rは炭素数が2~4の炭化水素基である。また、m及びnは二つの和が8~20の整数を表す。)
(6)
前記(d)熱架橋性化合物は、下記一般式(5)で表される熱架橋性化合物を含むことを特徴とする、前記(1)に記載の感光性樹脂組成物。
【0013】
【化4】
【0014】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R~R12はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、塩素原子、又は臭素原子を示す。Aはエチレンオキシエチル基、ジ(エチレンオキシ)エチル基、トリ(エチレンオキシ)エチル基、プロピレンオキシプロピル基、ジ(プロピレンオキシ)プロピル基、トリ(プロピレンオキシ)プロピル基、又は炭素数2~15のアルキレン基を示す。nは自然数であり、その平均は1.0~5.0である。)
(7)
前記(d)熱架橋性化合物の含有量が、前記(a)ポリイミド100質量部に対して30~50質量部である、前記(1)に記載の感光性樹脂組成物。
(8)
前記(1)~(7)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなることを特徴とする、感光性樹脂組成物フィルム。
(9)
前記(1)~(7)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を加熱硬化して形成された硬化物。
(10)
前記硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.5GPa以上3.5GPa以下である、前記(9)に記載の硬化物。
(11)
第一の部材、硬化物、及び第二の部材を有する積層部材の製造方法であって、以下の工程1~工程5をこの順に有する、積層部材の製造方法。
【0015】
工程1:第一の部材上に前記(8)に記載の感光性樹脂組成物フィルムを貼り合わせる工程
工程2:貼り合わせた前記感光性樹脂組成物フィルムを露光する工程
工程3:貼り合わせた前記感光性樹脂組成物フィルムを現像することで、パターンを形成する工程
工程4:前記パターンの側の面に、第二の部材を貼り合わせる工程
工程5:加熱により前記パターンを硬化させることで硬化物とする工程
(12)
前記第一の部材が電子部品搭載用基板、前記第二の部材が電子部材、前記積層部材が電子部品であることを特徴とする、前記(11)に記載の積層部材の製造方法。
(13)
前記(9)または(10)に記載の硬化物を有する、電子部品。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、応力緩和性に優れ、現像後も十分な接着性を有する、パターン形成可能な感光性樹脂組成物を得ることができる。本発明の感光性樹脂組成物から得られるパターンは、エレクトロニクスデバイス製造の際の、チップボンディング工程用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物フィルム、硬化物、積層部材の製造方法について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0018】
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物は、(a)カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有するポリイミド、(b)ラジカル重合開始剤、(c)多官能アクリレート化合物、及び(d)液状の熱架橋性化合物を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポリイミドを含有している。ポリイミドは、電気特性および機械特性に優れ、かつ、300℃以上の高耐熱性を有することから、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、回路基板の配線保護絶縁膜としての用途に有用であるとされている。また、半導体集積回路や多層プリント配線板の回路形成には、レジスト材料が使用されるため、その工程は、基材への造膜、所定箇所への露光、エッチングなどによる不要箇所の除去、基板表面の洗浄作業など、煩雑で多岐にわたる。そこで近年、工程の削減のために、感光性樹脂組成物をパターン形成後も絶縁材料としてそのまま残して用いる、永久レジストとしての用途が多くなっている。
【0020】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、既に閉環したポリイミドを含有するため、ポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物と比較して、加熱あるいは適当な触媒により、ポリイミド前駆体を閉環反応によりポリイミドに転換する必要がない。それ故、この感光性樹脂組成物は、高温処理が不要であり、かつ、イミド閉環反応による硬化収縮に起因するストレスが小さいので、ポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物よりも容易に厚膜を形成することができる。さらに、本発明に用いられるポリイミドは、末端を封止することによりポリマーの繰り返し単位数が小さいものであり、繰り返し単位数が大きいポリイミドと比べ、微細パターンの加工性が良好となる。また、この感光性樹脂組成物は、露光前はアルカリ現像液に容易に溶解するが、露光後はアルカリ現像液に不溶になるネガ型のパターンを形成することができる。
【0021】

<ポリイミド>
本発明の感光性樹脂組成物は、(a)カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を有するポリイミドを含有する。
【0022】
カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基はアルカリ可溶性基であり、(a)ポリイミドは、これらアルカリ可溶性基が存在するため、アルカリ可溶性を有する。
【0023】
ここで言うアルカリ可溶性とは、質量基準で濃度が2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液への溶解度が、0.1g/100g以上となることである。上記アルカリ可溶性基の中でも、半導体業界で用いられるアルカリ現像液に対する実用性を考慮すると、(a)ポリイミドはフェノール性水酸基を有するものが好ましい。
【0024】
このようなポリイミドとしては、特に限定されるものではないが、下記一般式(1)または(2)のいずれかで表される構造を含有するポリイミドを含むことが好ましい。
【0025】
【化5】
【0026】
(式中、Xはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる基を少なくとも一つ有する1価の有機基を表し、Yはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる基を少なくとも一つ有する2価の有機基を表す。また、R1は4~14価の有機基を表し、Rは2~12価の有機基を表し、RおよびRは、それぞれ独立にカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表す。また、αおよびβはそれぞれ独立に0~10の整数を表し、nは3~200の整数を表す。)
XおよびYは、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる基を少なくとも一つ有する有機基であり、中でも、フェノール性水酸基を有する有機基であることが好ましい。
【0027】
nはポリマーの構造単位の繰り返し数を示している。nは3~200の範囲であり、好ましくは5~100である。nが3~200の範囲であれば、感光性樹脂組成物を厚膜で使用することが可能になり、かつアルカリ現像液に対する十分な溶解性を付与し、パターン加工を行うことができる。
【0028】
上記一般式(1)および(2)において、Rはテトラカルボン酸二無水物由来の構造成分を表しており、4~14価の有機基である。なかでも芳香族基または環状脂肪族基を含有する炭素原子数5~40の有機基であることが好ましい。
【0029】
テトラカルボン酸二無水物としては具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9-ビス{4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物や、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族のテトラカルボン酸二無水物、および下記に示した構造の酸二無水物などを挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。
【0030】
【化6】
【0031】
ここで、R13は酸素原子、C(CF、C(CHおよびSOより選ばれる基を、R14およびR15は、それぞれ、水酸基およびチオール基より選ばれる基を表す。
【0032】
上記一般式(1)および(2)において、Rはジアミン由来の構造成分を表しており、2~12価の有機基である。なかでも芳香族基または環状脂肪族基を含有する炭素原子数5~40の有機基であることが好ましい。なかでも芳香族基または環状脂肪族基を含有する炭素原子数5~40の有機基であることが好ましい。
【0033】
ジアミンの具体的な例としては、ビス-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのヒドロキシル基含有ジアミン、ジメルカプトフェニレンジアミンなどのチオール基含有ジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルヒド、4,4’-ジアミノジフェニルスルヒド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジ(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンあるいはこれらの芳香族環にアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物や、脂肪族のシクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミンおよび下記に示した構造のジアミンなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。
【0034】
【化7】
【0035】
ここで、R16は酸素原子、C(CF3)、C(CHおよびSOより選ばれる基を、R17~R20はそれぞれ、水酸基およびチオール基より選ばれる基を表す。
【0036】
これらのうち、ビス-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのヒドロキシル基含有ジアミン、ジメルカプトフェニレンジアミンなどのチオール基含有ジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルヒド、4,4’-ジアミノジフェニルスルヒド、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンおよび下記に示した構造のジアミンなどが好ましい。
【0037】
【化8】
【0038】
ここで、R16は酸素原子、C(CF、C(CHおよびSOより選ばれる基を、R17~R20はそれぞれ、水酸基およびチオール基より選ばれる基を表す。
【0039】
(a)成分のポリイミドは、上記一般式(1)または(2)中のRにおいて、下記一般式(3)で表されるジアミンの残基を含有することが好ましい。さらに、下記一般式(3)で表されるジアミンの残基は全ジアミンの残基中5モル%以上60モル%以下有していることが好ましく、20モル%以上40モル%以下有していることが好ましい。また、下記一般式(3)で表わされるaとしては、3~8であることが好ましい。
【0040】
【化9】
【0041】
(式中、aは1~10の整数を表す。)
一般式(3)で示されるジアミンは、α-(2-アミノメチルエチル)-ω-(2-アミノメチルエトキシ)ポリ(オキシプロピレン)であり、Baxxodur(製品名)EC301、EC302、EC303(BASF社製)として入手可能である。
【0042】
一般式(1)または(2)において、RおよびRは、それぞれ独立にカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つのアルカリ可溶性基を表している。このRおよびRのアルカリ可溶性基の量を調整することで、ポリイミドのアルカリ水溶液に対する溶解速度が変化するので、適度な溶解速度を有したネガ型感光性樹脂組成物を得ることができる。RおよびRはフェノール性水酸基であることが好ましい。αとβの合計が1以上であることが好ましく、1以上とすることでポリイミドの側鎖にアルカリ可溶性基を有することとなり、ポリイミドのアルカリ可溶性を向上することができる。
【0043】

さらに、基板との接着性を向上させるために、耐熱性を低下させない範囲でRにシロキサン構造を有する脂肪族の基を共重合してもよい。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p-アミノ-フェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどを1~10モル%共重合したものなどがあげられる。
【0044】
一般式(1)において、Xは末端封止剤である1級モノアミンに由来する。末端封止剤として用いられる1級モノアミンとしては、5-アミノ-8-ヒドロキシキノリン、1-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、1-ヒドキシ-5-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-4-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-カルボキシ-7-アミノナフタレン、1-カルボキシ-6-アミノナフタレン、1-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-カルボキシ-7-アミノナフタレン、2-カルボキシ-6-アミノナフタレン、2-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノ-4,6-ジヒドロキシピリミジン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノールなどが好ましい。
【0045】
一般式(2)において、Yは末端封止剤であるジカルボン酸無水物に由来する。末端封止剤として用いられる酸無水物としては、4-カルボキシフタル酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物、シス-アコニット酸無水物などが好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。
【0046】
また末端封止剤は、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる基を少なくとも一つ有することが好ましく、中でも、フェノール性水酸基を有することが好ましい。これらの官能基を有することで、ポリイミドの主鎖末端にアルカリ可溶性基を有することが可能になり、ポリイミドのアルカリ可溶性が向上する。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。
【0047】
本発明に用いられる(a)成分のポリイミドは、一般式(1)または(2)で表される構造のみからなるものであっても良いし、アルカリ可溶性を有する他の構造との混合体であっても良い。その際、一般式(1)または(2)で表される構造のアルカリ可溶性ポリイミドを、(a)成分のポリイミド全体100質量%中に30質量%以上含有していることが好ましい。さらに、好ましくは60質量%以上である。30質量%以上であれば、熱硬化時の収縮を抑えることができ、厚膜作製に好適である。混合されるポリイミドの種類および量は、最終加熱処理によって得られるポリイミドの耐熱性を損なわない範囲で選択することが好ましい。
【0048】
(a)成分のポリイミドは、ジアミンの一部を末端封止剤であるモノアミンに置き換えて、または、テトラカルボン酸二無水物を、末端封止剤であるジカルボン酸無水物に置き換えて、公知の方法を利用して合成することができる。例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とモノアミンを反応させる方法、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジカルボン酸無水物とジアミン化合物を反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミンとモノアミンと縮合剤の存在下で反応させる方法などの方法を利用して、ポリイミド前駆体を得る。その後、得られたポリイミド前駆体を、公知のイミド化反応法を用いて完全イミド化させる方法を利用してポリイミドを合成することができる。
【0049】
また、(a)成分のポリイミドのイミド化率は、例えば、以下の方法で容易に求めることができる。ここで、イミド化率とは、前記のようにポリイミド前駆体を経てポリイミドを合成するにあたって、ポリイミド前駆体のうち、何モル%がポリイミドに転換しているかを意味する。まず、ポリマーの赤外吸収スペクトルを測定し、ポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピーク(1780cm-1付近、1377cm-1付近)の存在を確認する。次に、そのポリマーについて、350℃で1時間熱処理した後、再度、赤外吸収スペクトルを測定し、熱処理前と熱処理後の1377cm-1付近のピーク強度を比較する。熱処理後のポリマーのイミド化率を100%として、熱処理前のポリマーのイミド化率を求める。ポリマーのイミド化率は90%以上であることが好ましい。
【0050】
(a)成分のポリイミドに導入された末端封止剤は、以下の方法で検出できる。例えば、末端封止剤が導入されたポリイミドを、酸性溶液に溶解して、ポリイミドの構成単位であるアミン成分とカルボン酸無水物成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMRにより測定する。これとは別に、末端封止剤が導入されたポリイミドを直接、熱分解ガスクロクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトルおよび13CNMRスペクトルを用いて測定しても、検出可能である。
【0051】

<ラジカル重合開始剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、(b)ラジカル重合開始剤を含有する。(b)ラジカル重合開始剤は、光により直接または間接的にラジカルを発生し、ラジカル重合を生じさせるものである。
【0052】
(b)ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4,-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3,4,4,-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、3,5-ビス(ジエチルアミノベンジリデン)-N-メチル-4-ピペリドン、3,5-ビス(ジエチルアミノベンジリデン)-N-エチル-4-ピペリドンなどのベンジリデン類、7-ジエチルアミノ-3-ノニルクマリン、4,6-ジメチル-3-エチルアミノクマリン、3,3-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、7-ジエチルアミノ-3-(1-メチルメチルベンゾイミダゾリル)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリンなどのクマリン類、2-t-ブチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノンなどのアントラキノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン類、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類、エチレングリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)、2-メルカプトベンズチアゾール、2-メルカプトベンゾキサゾール、2-メルカプトベンズイミダゾールなどのメルカプト類、N-フェニルグリシン、N-メチル-N-フェニルグリシン、N-エチル-N-(p-クロロフェニル)グリシン、N-(4-シアノフェニル)グリシンなどのグリシン類、1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、ビス(α-イソニトロソプロピオフェノンオキシム)イソフタル、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(o-ベンゾイルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(o-アセチルオキシム)などのオキシム類、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィン類、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オンなどのα-アミノアルキルフェノン類、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾールなどのイミダゾール類、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、ビス(α-イソニトロソプロピオフェノンオキシム)イソフタル、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(o-アセチルオキシム)、(株)ADEKA製のアデカ(登録商標)オプトマーN-1818、同N-1919、アデカアークルズ(登録商標)NCI-831、およびBASFジャパン(株)製のIrgacure OXE04などのオキシムエステル系化合物が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、単独でまたは二種類以上を組み合わせて使用される。
【0053】
これらの中で(b)ラジカル重合開始剤は、オキシムエステル系化合物を含有することが好ましい。オキシムエステル系化合物は光に対する感度が高く、反応性の高いラジカル種を発生させることが可能である。そのため、厚膜でも十分に反応が進み、パターン形状が良好になりやすくなる。
【0054】
(b)ラジカル重合開始剤の含有量は、(a)成分のポリイミドの100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また(a)成分のポリイミドの100質量部に対して、(b)ラジカル重合開始剤の質量が40質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。ラジカル重合開始剤を二種類以上組み合わせて用いる場合は、その総量がこの範囲である。(a)成分のポリイミドの質量100質量部に対して、(b)ラジカル重合開始剤の質量が0.1質量部以上であると、露光時の重合性化合物の重合反応が十分進行する。また、(a)成分のポリイミドの質量に対して、(b)ラジカル重合開始剤の質量が40質量部以下であると、厚膜でも十分な光線透過率を保つことができ、パターン形成が可能である。また、この含有量の最も好ましい量は、選択するラジカル重合開始剤の種類によって、適宜選択される。
【0055】
また、(b)ラジカル重合開始剤と(c)多官能アクリレート化合物の総質量の割合がパターン加工性に影響を及ぼすため、(b)ラジカル重合開始剤の含有量は、(c)多官能アクリレート化合物の総質量100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましい。また(b)ラジカル重合開始剤の含有量は、(c)多官能アクリレート化合物の総質量100質量部に対して、70質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。(b)ラジカル重合開始剤の含有量が、(c)多官能アクリレート化合物の総質量100質量部に対して、0.1質量部以上であることにより、重合反応がより十分進行し、よりパターンを形成しやすくなる。一方、70質量部以下であることにより、励起された(b)ラジカル重合開始剤の濃度を適切な範囲とし、励起子同士の失活を抑えるため、パターンをより制御しやすくなる。
【0056】

<多官能アクリレート化合物>
本発明の感光性樹脂組成物は、(c)多官能アクリレート化合物を含有する。
【0057】
(c)多官能アクリレート化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、1,3-ジアクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、1,3-ジメタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジメタクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、プロピレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。これらは単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用される。
【0058】
これらのうち、特に好ましくは、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジメタクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAメタクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、プロピレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。
【0059】
本発明の感光性樹脂組成物の(c)多官能アクリレート化合物は、下記一般式(4)で表される多官能アクリレート化合物を含有することが好ましい。
【0060】
【化10】
【0061】
(式中、Rは水素またはメチル基より選ばれる1価の有機基であり、Rは炭素数が2~4の炭化水素基である。また、m及びnは二つの和が8~20の整数を表す。)
はメチル基であることが好ましい。Rは炭素数が2のエチレン基であることが好ましい。m及びnの二つの和が8~14であることが好ましい。
【0062】
上記一般式(4)に示した構造で表される多官能のアクリレート化合物の好ましい例としては、新中村化学工業(株)製NKエステルシリーズ A-BPE-10、A-BPE-20、BPE-500、BPE-900等が挙げられる。また、日本油脂(株)製“ブレンマー(登録商標)”シリーズ PDBE-450A等が挙げられる。これらの化合物を2種以上含有してもよい。
【0063】
本発明の感光性樹脂組成物中の(c)多官能アクリレート化合物の含有量は、現像後に十分な残膜が得られる点から、(a)成分のポリイミドの100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましい。一方、硬化物の耐熱性が向上する点から、(a)成分のポリイミドの100質量部に対して、(c)多官能アクリレート化合物の含有量は250質量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは200質量部以下である。
【0064】
さらに、上記一般式(4)に記載の多官能アクリレート化合物の含有量は、全ての多官能アクリレート化合物の合計100質量部に対して、50質量部以上100質量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは70質量部以上100質量部以下である

<熱架橋性化合物>
本発明の感光性樹脂組成物は、(d)液状の熱架橋性化合物を含有する。ここで本明細書において使われる液状とは、E型粘度計で測定した場合に25℃、1気圧で150Pa・s以下の粘度を示すものである。
【0065】
(d)液状の熱架橋性化合物は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリメチル(グリシジロキシプロピル)シロキサン等のエポキシ基含有、シリコーン等が挙げられる。具体的には、エピクロン850-S、エピクロンEXA-4850-150、エピクロンEXA-4850-1000、エピクロンEXA-4816、(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、リカレジンBEO-60E(以下商品名、新日本理化株式会社)、EP-4003S、EP-4000S((株)アデカ)、jER828、jER1750、jER152、jERYL980、jER630LSD(以上三菱化学(株)製)、アデカレジンEP-4000S、アデカレジンEP-4003S、アデカレジンEP-4010S(以上(株)ADEKA製)、YD-825GS(以上新日鉄化学(株)製)などが挙げられ、これらを単独または2種以上の組み合わせで用いてもよい。また塩素含有量は低い方が好ましく、1000ppm以下であることが好ましく、600ppm以下であることがより好ましい。
【0066】
本発明の感光性樹脂組成物は、(d)液状の熱架橋性化合物が、下記一般式(5)で表される熱架橋性化合物を含有することが好ましい。
【0067】
【化11】
【0068】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R~R12はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、塩素原子、又は臭素原子を示す。Aはエチレンオキシエチル基、ジ(エチレンオキシ)エチル基、トリ(エチレンオキシ)エチル基、プロピレンオキシプロピル基、ジ(プロピレンオキシ)プロピル基、トリ(プロピレンオキシ)プロピル基、又は炭素数2~15のアルキレン基を示す。nは自然数であり、その平均は1.0~5.0である。)
上記一般式(5)に示した構造で表される液状の熱架橋性化合物の好ましい例としては、下記式で表される樹脂が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
【化12】
【0070】
及びRはメチル基であることが好ましい。R~R12は水素原子であることが好ましい。Aはエチレンオキシエチル基であることが好ましい。nは1.0~1.8であることが好ましい。
【0071】
本発明の感光性樹脂組成物における(d)液状の熱架橋性化合物の含有量は、(a)成分のポリイミド100質量部に対して10質量部以上70質量部以下であることが好ましく、30質量部以上50質量部以下であれば、現像後に十分な接着性が発現する点でより好ましい。
【0072】
さらに、上記一般式(5)に記載の液状の熱架橋性化合物の含有量は、全ての液状の熱架橋性化合物100質量%に対して、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは70質量%以上100質量%以下である。
【0073】

<その他の含有物>
シリコンウェハーなどの下地基板との接着性を高めるために、シランカップリン
グ剤、チタンキレート剤などを本発明の感光性樹脂組成物に添加することもできる。
【0074】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物は必要に応じて、架橋剤、架橋促進剤、増感剤、
溶解調整剤、安定剤、消泡剤などの添加剤を含有することもできる。
【0075】

<感光性樹脂組成物の作成方法>
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、有機溶剤に溶解させ固形分20質量部以上70質量部以下程度の溶液にすることができる。ここで使用される有機溶剤としては、感光性樹脂組成物を溶解するものであればよく、2種類以上の有機溶剤を混合させた混合溶剤でもよい。
【0076】
有機溶剤としては、具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのアセテート類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2-ヘプタノンなどのケトン類、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノ-ル、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、その他、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0077】

<感光性樹脂組成物の形態>
本発明の感光性樹脂組成物フィルムは、本発明の感光性樹脂組成物からなることを特徴とする。本発明の感光性樹脂組成物フィルムを作製する方法について説明する。本発明の感光性樹脂組成物フィルムは、感光性樹脂組成物を支持体上に塗布し、次いでこれを必要により乾燥することにより得られる。
【0078】
本発明の感光性樹脂組成物フィルムは、支持体上に形成されると好ましい。その際に用いられる支持体は特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルムなど、通常市販されている各種のフィルムが使用可能である。支持体と感光性樹脂組成物フィルムとの接合面には、密着性と剥離性を向上させるために、シリコーン、シランカップリング剤、アルミキレート剤、ポリ尿素などの表面処理を施してもよい。また、支持体の厚みは特に限定されないが、作業性の観点から、10~100μmの範囲であることが好ましい。
【0079】
また、本発明の感光性樹脂組成物フィルムは、感光性樹脂組成物フィルムを保護するために、膜上に保護フィルムを有してもよい。これにより、大気中のゴミやチリ等の汚染物質から感光性樹脂組成物フィルム表面を保護することができる。
【0080】
保護フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエステルフィルム、ポリビニルアルコールフィルム等が挙げられる。保護フィルムは、感光性樹脂組成物フィルムと保護フィルムが容易に剥離しない程度となるものが好ましい。
【0081】
感光性樹脂組成物を支持体に塗布する方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマロールコーター、グラビアコーター、スクリーンコーター、スリットダイコーターなどの方法が挙げられる。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が、0.5μm以上150μm以下であることが好ましい。
【0082】
乾燥には、オーブン、ホットプレート、赤外線などを使用することができる。乾燥温度および乾燥時間は、有機溶媒を揮発させることが可能な範囲であればよく、感光性樹脂組成物フィルムが未硬化または半硬化状態となるような範囲を適宜設定することが好ましい。具体的には、40℃から120℃の範囲で1分から数十分行うことが好ましい。また、これらの温度を組み合わせて段階的に昇温してもよく、例えば、50℃、60℃、70℃で各1分ずつ熱処理してもよい。
【0083】

<硬化物>
本発明の硬化物は、本発明の感光性樹脂組成物を加熱硬化して形成された硬化物である。加熱硬化の条件としては、特に限定されないが、120℃から400℃の温度で行うことが好ましい。
【0084】
本発明の硬化物の形態は特に限定されず、膜状、棒状、球状、ペレット状など、用途に合わせて選択することができるが、特に膜状であることが好ましい。ここでいう膜状とは、フィルム、シート、板なども含まれる。もちろん、導通のためのビアホール形成、インピーダンスや静電容量あるいは内部応力の調整、または、放熱機能付与など、用途にあわせたパターン形成を行うこともできる。
【0085】
硬化物の膜厚は、任意に設定することができるが、0.5μm以上150μm以下であることが好ましい。
【0086】
硬化物の25℃における貯蔵弾性率は、1.5GPa以上3.5GPa以下であることが好ましく、2.0GPa以上3.0GPa以下であることがより好ましい。被着体同士の熱膨張率の差を緩和することができることから、3.5GPa以下にすることが好ましく、良好なパターン形状を維持するために、1.5GPa以上にすることが好ましい。硬化物の25℃における貯蔵弾性率を1.5GPa以上3.5GPa以下に制御するためには、例えば、(a)ポリイミドにおいて一般式(3)で表されるジアミンの残基を用いる方法、(c)多官能アクリレート化合物として一般式(4)で表される多官能アクリレート化合物を用いる方法、(d)熱架橋性化合物として一般式(5)で表される熱架橋性化合物を用いる方法を挙げることができる。
【0087】

<感光性樹脂組成物フィルムの加工例>
本発明の感光性樹脂組成物フィルムを用いた加工例の1つである本発明の積層部材の製造方法は、第一の部材、硬化物、及び第二の部材を有する積層部材の製造方法であって、以下の工程1~工程5をこの順に有する、積層部材の製造方法である。
【0088】
工程1:第一の部材上に本発明の感光性樹脂組成物フィルムを貼り合わせる工程
工程2:貼り合わせた前記感光性樹脂組成物フィルムを露光する工程
工程3:貼り合わせた前記感光性樹脂組成物フィルムを現像することで、パターンを形成する工程
工程4:前記パターンの側の面に、第二の部材を貼り合わせる工程
工程5:加熱により前記パターンを硬化させることで硬化物とする工程
そして本発明の積層部材の製造方法は、上述の本発明の積層部材の製造方法において、第一の部材が電子部品搭載用基板、第二の部材が電子部材、積層部材が電子部品とした態様であることがより好ましい。
【0089】
以下、このような本発明の積層部材の製造方法について、下記する。
【0090】

<工程1>
工程1は、第一の部材上に本発明の感光性樹脂組成物フィルムを貼り合わせる工程である。より詳細には、まず、感光性樹脂組成物フィルムが保護フィルムを有する場合にはこれを剥離し、感光性樹脂組成物フィルムと第一の部材とを、互いに対向するように配置して熱圧着により貼り合わせる。この熱圧着方法としては、例えば、熱プレス処理、熱ラミネート処理、熱真空ラミネート処理などが挙げられる。熱圧着温度は、感光性樹脂組成物フィルムの第一の部材への密着性、埋め込み性を向上させるという観点から、40℃以上であることが好ましい。一方、熱圧着時の感光性樹脂組成物フィルムの過度の硬化を抑制するという観点から、熱圧着温度は、150℃ 以下であることが好ましい。
【0091】
第一の部材としては、例えば、シリコンウェハ、セラミックス類、ガリウムヒ素、有機系回路基板、無機系回路基板、これらの基板に回路の構成材料が配置されたものなどが挙げられる。有機系回路基板の例としては、ガラス布・エポキシ銅張積層板などのガラス基材銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板などのコンポジット銅張積層板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板などの耐熱・熱可塑性基板、ポリエステル銅張フィルム基板、ポリイミド銅張フィルム基板などのフレキシブル基板が挙げられる。無機系回路基板の例としては、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板などのセラミック基板、アルミニウムベース基板、鉄ベース基板などの金属系基板が挙げられる。回路の構成材料の例としては、銀、金、銅などの金属を含有する導体、無機系酸化物などを含有する抵抗体、ガラス系材料及び樹脂のうち少なくとも1つの材料などを含有する低誘電体、樹脂や高誘電率無機粒子などを含有する高誘電体、ガラス系材料などを含有する絶縁体などが挙げられる。
【0092】

<工程2>
工程2は、貼り合わせた感光性樹脂組成物フィルムを露光する工程である。より詳細には、上記方法によって第一の部材に形成された感光性樹脂組成物フィルム上に、所望のパターンを有するフォトマスクを形成し、このフォトマスクを通して感光性樹脂組成物フィルムに化学線を照射し、この感光性樹脂組成物フィルムをパターン状に露光する。露光に用いられる化学線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線などが挙げられる。本発明においては、水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。感光性樹脂組成物フィルムにおいて、支持体がこれらの光線に対して透明な材質である場合は、感光性樹脂組成物フィルムから支持体を剥離せずに露光を行ってもよい。
【0093】

<工程3>
工程3は、貼り合わせた感光性樹脂組成物フィルムを現像することで、パターンを形成する工程である。上記第一の部材上の感光性樹脂組成物フィルムを露光後、現像液を用いて上記感光性樹脂組成物フィルムの未露光部を除去し、パターンを形成する。この現像液としては、テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ現像液、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独または2種以上を組み合わせた有機現像液等が挙げられ、本発明の感光性樹脂組成物フィルムに使用される原料の溶解性に応じて選択される。
【0094】
現像は上記の現像液を塗膜面にスプレーする、現像液中に浸漬する、あるいは浸漬しながら超音波をかける、第一の部材を回転させながら現像液をスプレーするなどの方法によって行うことができる。
【0095】
現像後は水にてリンス処理をしてもよい。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0096】
現像時のパターンの解像度の向上、現像条件の許容幅が増大する場合には、現像前にベーク処理をする工程を取り入れても差し支えない。この温度としては50~180℃の範囲が好ましく、特に60~120℃の範囲がより好ましい。時間は5秒~数時間が好ましい。
【0097】

<工程4>
工程4は、パターンの側の面に、第二の部材を貼り合わせる工程である。つまり、第一の部材上に形成されたパターンの側の面と、第二の部材を対向するように配置して、熱圧着によって第一の部材上に形成されたパターンと第二の部材を貼り合わせる。上記熱圧着における加熱温度は、通常、20~250℃であり、荷重は、通常、0.01~20kgfであり、加熱時間は、通常、0.1~300秒間である。
【0098】
第二の部材としては、例えば、SAW、RFIC、センサーチップ、圧電振動子チップ、水晶振動子チップ、MEMSデバイス、FBAR、BAW、チップ多層LFCフィルター、誘電体フィルター、積層セラミックコンデンサ(MLCC)などが挙げられる。
【0099】

<工程5>
工程5は、加熱により前記パターンを硬化させることで硬化物とする工程である。工程4で熱圧着によって第一の部材上に形成されたパターンと第二の部材を貼り合わせた後、100℃から400℃の温度を加えて硬化物にすることで、パターン付部材を得ることができる。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分から5時間実施する。一例としては、130℃、200℃で各30分ずつ熱処理する。あるいは室温より250℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。この際、加熱温度は100℃以上、300℃以下の温度が好ましい。
【0100】
本発明の感光性樹脂組成物の加工例は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更可能である。
【0101】

<電子部品>
本発明の感光性樹脂組成物または感光性樹脂組成物フィルムの硬化物は、多種の電子部品、装置への適用が可能である。用途は特に限定されないが、例えば、CCDやCMOSに代表されるイメージセンサーや、半導体微細加工技術を利用して機械的要素と電子回路要素を集積したMEMS技術を適用したジャイロセンサー、加速度センサー、圧力センサー、デジタルミラーデバイス(DMD)、マイクロフォン、光スイッチ、車載用レーダー、LED、また、携帯機器に用いられるノイズフィルターなどの微細電子部品、装置への適用が可能である。
【実施例0102】
以下に実施例及び比較例を示して具体的に説明するが、本発明がこれら実施例に限定さ
れるものではないことはもとよりである。
【0103】

各実施例および比較例で用いた(a)成分のポリイミド樹脂は以下の方法により合成した。
【0104】
<ポリイミド樹脂>
・ポリイミド1
ポリイミド1は、フェノール性水酸基として3-アミノフェノール、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを残基に有するポリイミドであり、かつ一般式(3)に記載のジアミンの残基として、a=5.6のポリプロピレングリコールジアミンを全ジアミンの残基中33モル%有するポリイミドである。
【0105】
乾燥窒素気流下、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン36.26g(0.099モル)、3-アミノフェノール3.93g(0.036モル)をγ-ブチロラクトン(以下、GBLとする。)163.39gに溶解させ、70℃で60分攪拌した。ここに、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン2.24g(0.009モル)、ポリプロピレングリコールジアミン24.00g(0.054モル)、GBL20.00gを加え15分攪拌した。ここにビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物55.84g(0.180モル)を加え、15分間攪拌後、220℃で5時間攪拌してアルカリ可溶性ポリイミド樹脂溶液(固形分濃度40質量%)を得た。得られた樹脂のイミド化率は95%であった。
【0106】
・ポリイミド2
ポリイミド2は、フェノール性水酸基として3-アミノフェノール、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを残基に有するポリイミドであり、かつ一般式(3)に記載のジアミンの残基を有していないポリイミドである。
【0107】
乾燥窒素気流下、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン32.96g(0.09モル)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.24g(0.005モル)をN-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPとする。)100gに溶解させた。ここにビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物31.02g(0.10モル)をNMP30gとともに加えて、20℃で1時間攪拌し、次いで50℃で4時間攪拌した。ここに、3-アミノフェノール1.09g(0.01モル)を加え、50℃で2時間攪拌後、180℃で5時間攪拌して樹脂溶液を得た。次に、樹脂溶液を水3Lに投入して白色沈殿を集めた。この沈殿をろ過で集めて、水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で5時間乾燥した。得られた樹脂粉体の
イミド化率は94%であった。
【0108】

実施例、比較例で用いた(a)成分のポリイミド樹脂溶液以外の各材料は以下のとおりである。
【0109】
<ラジカル重合開始剤>
・Irgacure OXE04(商品名、BASFジャパン(株)製)
<多官能アクリレート化合物>
・BP-6EM(商品名、共栄社化学(株)製)
・DPE-6A(商品名、共栄社化学(株)製)
・BPE-500(商品名、新中村化学工業(株)製)
・BPE-1300N(商品名、新中村化学工業(株)製)
BPE-500は上記一般式(4)に記載の多官能アクリレート化合物であり、Rはメチル基、Rはエチレン基、m+nの和は10である。BP-6EM、DPE-6A、BPE-1300Nは上記一般式(4)に記載の多官能アクリレート化合物とは異なる。
【0110】
<液状の熱架橋性化合物>
・jERYL980(商品名、三菱化学(株)製)
・EXA-4850-1000(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
EXA-4850-1000は液状であり、上記一般式(5)で表される熱架橋性化合物であり、R及びRはメチル基、R~R12は水素原子、Aはエチレンオキシエチル基、nは1.2ある。jERYL980は液状であり、上記一般式(5)で表される熱架橋性化合物ではない。
【0111】
<固形の熱架橋性化合物>
・HMOM(商品名、本州化学工業(株)製)
<接着改良剤>
・KBM-403(商品名、信越化学工業(株)製)

<実施例1>
(a)成分のポリイミドとして、ポリイミド1:34g(固形分として13g)、(b)ラジカル重合開始剤として、Irgacure OXE04:1.4g、(c)多官能アクリレート化合物として、BP-6EM:4.8g、DPE-6A:3.4g、(d)液状の熱架橋性化合物として、jERYL980:5.4g、接着改良剤として、KBM-403:0.18gを乳酸エチル10gに溶解させ、120分間室温にて攪拌し調合液を調製した。
【0112】
<実施例2~9>、<比較例1~5>
<実施例1>と同様な方法で、表1に示す各材料および混合比で<実施例2~9>、<比較例1~5>の調合液を調製した。
【0113】
<感光性樹脂組成物フィルムの作製>
<実施例1~9>、<比較例1~5>で調製して得られた感光性樹脂組成物を、コンマロールコーターを用いて、厚さ50μmのPETフィルム(支持体)上に塗布し、120℃で7分間乾燥を行った後、保護フィルムとして、厚さ50μmのPETフィルムをラミネートし、厚みが15μmの感光性樹脂組成物フィルムを得た。
【0114】
<感光性樹脂組成物フィルムの評価>
次に、<実施例1~9>および<比較例1~5>で得られたそれぞれの感光性樹脂組成物フィルムを用いて、4インチシリコンウェハー上に、以下の方法でパターンを形成し、残像後の剥離状態、解像度および接着性を評価し、評価結果を表1にまとめた。
【0115】

<解像性の評価>
作製した感光性樹脂組成物フィルム上の保護フィルムを剥離し、該剥離面を、シリコンウェハー上に、ラミネート装置((株)タカトリ製、VTM-200M)を用いて、ステージ温度80℃、ロール温度80℃、真空度150Pa、貼り合わせ速度5mm/秒、貼り合わせ圧力0.1MPaの条件でラミネートした。次に支持体を剥離し、剥離したウェハー上の感光性樹脂組成物フィルムへ露光装置にL/S=500/500、200/200、100/100、75/75/、50/50、45/45、40/40、35/35、30/30、25/25、20/20、15/15μmのパターンを有するマスクをセットし、マスクと感光性樹脂組成物フィルム表面のGapを10μmに設定して、波長405nmの光を500mJ/cm(h線換算)で露光を行った。
【0116】
露光後、120℃のホットプレートで3分間加熱した。次に、水酸化テトラメチルアンモニウムの質量基準の濃度が2.38%の水溶液を用いて、240秒間のシャワー現像により、未露光部を除去し、水にてリンス処理を60秒間行った。その後、スピン乾燥を行い、パターンを得た。
【0117】
得られた各パターン基板を、顕微鏡で観察した。パターンのラインにツマリ等の異常のない場合の最小のサイズを解像度の評価とした。パターンサイズが小さいほど良好な結果となる。また、現像後に剥離していたものは「-」とした。
【0118】

<貯蔵弾性率の評価>
感光性樹脂組成物フィルムを複数枚積層し、15μm厚の試験片を作製し、波長405nmの光を1000mJ/cm(h線換算)照射後、200℃で1h、窒素雰囲気下の条件で加熱して硬化物とした試験片を用いて評価を実施した。
【0119】
評価は、動的粘弾性装置(SII製、DMS6100)を用いて、周波数1Hz、昇温速度10℃/分の条件下で、25℃における貯蔵弾性率を求めた。
【0120】

<反りの評価>
作製した感光性樹脂組成物フィルム上の保護フィルムを剥離し、該剥離面を、シリコンウェハー上に、ラミネート装置((株)タカトリ製、VTM-200M)を用いて、ステージ温度80℃、ロール温度80℃、真空度150Pa、貼り合わせ速度5mm/秒、貼り合わせ圧力0.1MPaの条件でラミネートした。次に支持体を剥離し、剥離したウェハー上の感光性樹脂組成物フィルムに対し、波長405nmの光を1000mJ/cm(h線換算)照射した。露光後、120℃のホットプレートで3分間加熱した。次に、水酸化テトラメチルアンモニウムの質量%濃度が2.38%の水溶液を用いて、240秒間のシャワー現像し、水にてリンス処理を60秒間行い、スピン乾燥をした。これにより、シリコンウェハー上に膜厚15μmの感光性樹脂組成物の硬化物を作製した。
【0121】
得られた感光性樹脂組成物の硬化物が形成されたシリコンウェハーの反り量を、表面粗さ・輪郭形状測定機(東京精密社製、SURFCOM14000)を用いて評価した。シリコンウェハーの硬化物が形成された側において、測定長さ70mm、測定速度6mm/sの条件で測定を行い、測定長さ0mmの高さと測定長さ35mmの高さの差を反り量とした。反り量が10μm以下のものをA、反り量が10μmより大きく15μm以下のものをB、反り量が15μmを超えるものをCと評価し、反りが小さいほど良好な結果を示す。
【0122】

<現像後の接着性の評価>
作製した感光性樹脂組成物フィルム上の保護フィルムを剥離し、該剥離面を、シリコンウェハー上に、ラミネート装置((株)タカトリ製、VTM-200M)を用いて、ステージ温度80℃、ロール温度80℃、真空度150Pa、貼り合わせ速度5mm/秒、貼り合わせ圧力0.1MPaの条件でラミネートした。次に支持体を剥離し、剥離したウェハー上の感光性樹脂組成物フィルムに対し、波長405nmの光を1000mJ/cm2(h線換算)照射した。露光後、120℃のホットプレートで3分間加熱した。次に、水酸化テトラメチルアンモニウムの質量%濃度が2.38%の水溶液を用いて、240秒間のシャワー現像し、水にてリンス処理を60秒間行い、スピン乾燥をした。続いて、現像処理まで行った感光性樹脂組成物フィルム上に、2mm角のシリコンウェハーを1cm間隔で10個並列し、ダイアフラム式ラミネート装置(ニチゴー・モートン(株)製、CVP300T)を用いて、上下温度150℃、真空度400Pa、真空引時間20秒、プレス圧力0.3MPa、プレス時間120秒の条件でラミネートした。サンプルを、200℃で1h、窒素雰囲気下の条件で加熱して硬化した。
【0123】
評価は、ダイシェアテスター(Dage製、シリーズ4000)を用いて、ロードセル100kg、テストスピード200μm/sの条件で測定して得られたシェア強度を求めた。接着力が50N/mmより大きいのものをA、接着力が10N/mm2より大きく50N/mmより小さいものをB、10N/mmより小さいまたは接着しないものをCと評価した。接着強度が大きいほど良好な結果を示す。
【0124】
【表1-1】
【0125】
【表1-2】
【0126】
【表1-3】
【0127】
<比較結果>
表1に示されるように上記<実施例1~9>は、<比較例1~5>に対して接着性が優れており、<比較例5>に対して十分な解像性を有することが分かる。また、<実施例1、3~9>は<比較例1、2および5>に対して貯蔵弾性率が良好であり、<実施例4~9>は<比較例1~3>に対して反りが小さいため、応力緩和性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明によれば、応力緩和性に優れ、現像後も十分な接着性を有する、パターン形成可能な感光性樹脂組成物を得ることができる。本発明の感光性樹脂組成物から得られるパターンは、エレクトロニクスデバイス製造の際の、チップボンディング工程用途に有用である。