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特開2024-133015液浸冷却用アルミ電解コンデンサ、封口体、及び電子機器の冷却方法
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  • 特開-液浸冷却用アルミ電解コンデンサ、封口体、及び電子機器の冷却方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133015
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】液浸冷却用アルミ電解コンデンサ、封口体、及び電子機器の冷却方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/10 20060101AFI20240920BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20240920BHJP
   H01G 2/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01G9/10 E
H01G9/00 290L
H01G2/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040110
(22)【出願日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2023039716
(32)【優先日】2023-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 博昭
(72)【発明者】
【氏名】前田 哲生
(57)【要約】
【課題】炭化水素系冷媒を冷却液として使用した液浸冷却システムに適用し得るアルミ電解コンデンサを提供する。
【解決手段】冷却液中での冷却に供される液浸冷却用アルミ電解コンデンサであって、前記冷却液が、炭化水素系冷媒であり、前記アルミ電解コンデンサの封口体が、液浸冷却の際に前記冷却液と接触する領域にゴム部材を有し、前記ゴム部材が、前記冷却液とのハンセン溶解度パラメータ距離が8.0以上であるゴム成分を含むゴム組成物又はその加硫物からなる、液浸冷却用アルミ電解コンデンサ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液中での冷却に供される液浸冷却用アルミ電解コンデンサであって、
前記冷却液が、炭化水素系冷媒であり、
前記アルミ電解コンデンサの封口体が、液浸冷却の際に前記冷却液と接触する領域にゴム部材を有し、
前記ゴム部材が、前記冷却液とのハンセン溶解度パラメータ距離が8.0以上であるゴム成分を含むゴム組成物又はその加硫物からなる、液浸冷却用アルミ電解コンデンサ。
【請求項2】
前記ゴム成分が、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、アクリルゴム、及びフッ素ゴムからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の液浸冷却用アルミ電解コンデンサ。
【請求項3】
前記ゴム成分が、前記冷却液とのハンセン溶解度パラメータ距離が8.0未満のゴムを、前記ゴム成分全量に対して0重量%超65重量%以下含む、請求項1に記載の液浸冷却用アルミ電解コンデンサ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の液浸冷却用アルミ電解コンデンサに用いられる、前記封口体。
【請求項5】
アルミ電解コンデンサの冷却方法であって、
前記アルミ電解コンデンサを冷却液中に浸漬して冷却する液浸冷却工程を含み、
前記冷却液が、炭化水素系冷媒であり、
前記アルミ電解コンデンサの封口体が、液浸冷却の際に前記冷却液と接触する領域にゴム部材を有し、
前記ゴム部材が、前記冷却液とのハンセン溶解度パラメータ距離が8.0以上であるゴム成分を含むゴム組成物又はその加硫物からなる、アルミ電解コンデンサの冷却方法。
【請求項6】
前記アルミ電解コンデンサが、電子機器に搭載されており、
前記液浸冷却工程が、前記電子機器の一部又は全部を前記冷却液中に浸漬することにより行われる、請求項5に記載のアルミ電解コンデンサの冷却方法。
【請求項7】
アルミ電解コンデンサを有する電子機器の冷却方法であって、
前記電子機器の一部又は全部を冷却液中に浸漬して冷却する液浸冷却工程を含み、
前記液浸冷却工程が、少なくとも前記アルミ電解コンデンサが前記冷却液に浸漬するように行われ、
前記冷却液が、炭化水素系冷媒であり、
前記アルミ電解コンデンサの封口体が、液浸冷却の際に前記冷却液と接触する領域にゴム部材を有し、
前記ゴム部材が、前記冷却液とのハンセン溶解度パラメータ距離が8.0以上であるゴム成分を含むゴム組成物又はその加硫物からなる、電子機器の冷却方法。
【請求項8】
炭化水素系冷媒中での液浸冷却に供され、ゴム部材を備える封口体を有する液浸冷却用アルミ電解コンデンサを製造する方法であって、
前記封口体によりコンデンサ素子を封止する封止工程を含み、
前記封止工程では、前記液浸冷却の際に前記炭化水素系冷媒と接触する領域に前記ゴム部材が位置するよう前記封口体を配置し、
前記ゴム部材が、前記炭化水素系冷媒とのハンセン溶解度パラメータ距離が8.0以上であるゴム成分を含むゴム組成物又はその加硫物からなる、液浸冷却用アルミ電解コンデンサの製造方法。
【請求項9】
前記ゴム成分が、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、アクリルゴム、及びフッ素ゴムからなる群より選択される1種以上である、請求項8に記載の液浸冷却用アルミ電解コンデンサの製造方法。
【請求項10】
前記ゴム成分が、前記炭化水素系冷媒とのハンセン溶解度パラメータ距離が8.0未満のゴムを、前記ゴム成分全量に対して0重量%超65重量%以下含む、請求項8又は9に記載の液浸冷却用アルミ電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液浸冷却に供されるアルミ電解コンデンサ、当該アルミ電解コンデンサ用の封口体、及び当該アルミ電解コンデンサを有する電子機器の冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動作に伴い発熱するスーパーコンピュータ及びサーバー機器等の電子機器を冷却する技術には、空気により電子機器を冷却する空冷式システムと、冷却液に電子機器を浸漬して冷却する液浸冷却システムとがある。液浸冷却システムは、空気よりも熱伝達性の高い液体を冷媒として用いるため、一般的には空冷式システムよりも冷却効率が高く、消費電力の削減に寄与する技術として近年注目を集めている。
【0003】
液浸冷却システムに用いられる冷却液としては、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル及び1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテルといったフッ素系絶縁性冷媒が知られている(特許文献1)。フッ素系絶縁性冷媒を用いた液浸冷却システムは、電子機器の点検及び修理を始めとするメンテナンスに優れるというメリットを有する。そのため、フッ素系絶縁性冷媒は、今日最も広く採用されている液浸冷却システム用冷媒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-169554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フッ素系絶縁性冷媒は、上述したように利便性は高いものの、高価であるため、より安価なフッ素系絶縁性冷媒以外の冷却液への置換が検討されている。フッ素系絶縁性冷媒に代わる有望な冷却液としては、例えば、炭化水素系冷媒が挙げられる。
【0006】
ここで、電子機器には、静電容量が大きく、安価なアルミ電解コンデンサが汎用されている。アルミ電解コンデンサは、コンデンサ素子を金属ケース内に挿入し、当該金属ケースの開口部を封口体で封止してなるものである。アルミ電解コンデンサに用いられる封口体には、エチレンプロピレンゴム及びブチルゴム等のゴムで形成されているか、エチレンプロピレンゴム及びブチルゴム等のゴムで形成されたゴム部材を有するものが多い。しかしながら、これらのゴムは有機系冷媒の影響を受けやすいため、このような封口体を有するアルミ電解コンデンサを液浸冷却に供すると、封口体が膨張するなどしてアルミ電解コンデンサの劣化等の不具合を招く虞がある。そのため、アルミ電解コンデンサは、液浸冷却システムへの適用が難しいコンデンサとされており、特に炭化水素系冷媒を使用した液浸冷却に耐えうるアルミ電解コンデンサは、これまでに知られていない。
【0007】
そこで、本開示は、炭化水素系冷媒を冷却液として使用した液浸冷却システムに適用し得るアルミ電解コンデンサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、冷却液とのハンセン溶解度パラメータ距離が特定値以上のゴム成分を封口体のゴム部材に適用することにより、冷却液に対する安定性の高いアルミ電解コンデンサを提供できることを見出した。すなわち、本開示は、以下を要旨とする。
【0009】
〔1〕
冷却液中での冷却に供される液浸冷却用アルミ電解コンデンサであって、
前記冷却液が、炭化水素系冷媒であり、
前記アルミ電解コンデンサの封口体が、液浸冷却の際に前記冷却液と接触する領域にゴム部材を有し、
前記ゴム部材が、前記冷却液とのハンセン溶解度パラメータ距離が8.0以上であるゴム成分を含むゴム組成物又はその加硫物からなる、液浸冷却用アルミ電解コンデンサ。
〔2〕
前記ゴム成分が、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、アクリルゴム、及びフッ素ゴムからなる群より選択される1種以上である、〔1〕に記載の液浸冷却用アルミ電解コンデンサ。
〔3〕
前記ゴム成分が、前記冷却液とのハンセン溶解度パラメータ距離が8.0未満のゴムを、前記ゴム成分全量に対して0重量%超65重量%以下含む、〔1〕又は〔2〕に記載の液浸冷却用アルミ電解コンデンサ。
〔4〕
〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の液浸冷却用アルミ電解コンデンサに用いられる、前記封口体。
〔5〕
アルミ電解コンデンサの冷却方法であって、
前記アルミ電解コンデンサを冷却液中に浸漬して冷却する液浸冷却工程を含み、
前記冷却液が、炭化水素系冷媒であり、
前記アルミ電解コンデンサの封口体が、液浸冷却の際に前記冷却液と接触する領域にゴム部材を有し、
前記ゴム部材が、前記冷却液とのハンセン溶解度パラメータ距離が8.0以上であるゴム成分を含むゴム組成物又はその加硫物からなる、アルミ電解コンデンサの冷却方法。
〔6〕
前記アルミ電解コンデンサが、電子機器に搭載されており、
前記液浸冷却工程が、前記電子機器の一部又は全部を前記冷却液中に浸漬することにより行われる、〔5〕に記載のアルミ電解コンデンサの冷却方法。
〔7〕
アルミ電解コンデンサを有する電子機器の冷却方法であって、
前記電子機器の一部又は全部を冷却液中に浸漬して冷却する液浸冷却工程を含み、
前記液浸冷却工程が、少なくとも前記アルミ電解コンデンサが前記冷却液に浸漬するように行われ、
前記冷却液が、炭化水素系冷媒であり、
前記アルミ電解コンデンサの封口体が、液浸冷却の際に前記冷却液と接触する領域にゴム部材を有し、
前記ゴム部材が、前記冷却液とのハンセン溶解度パラメータ距離が8.0以上であるゴム成分を含むゴム組成物又はその加硫物からなる、電子機器の冷却方法。
〔8〕
炭化水素系冷媒中での液浸冷却に供され、ゴム部材を備える封口体を有する液浸冷却用アルミ電解コンデンサを製造する方法であって、
前記封口体によりコンデンサ素子を封止する封止工程を含み、
前記封止工程では、前記液浸冷却の際に前記炭化水素系冷媒と接触する領域に前記ゴム部材が位置するよう前記封口体を配置し、
前記ゴム部材が、前記炭化水素系冷媒とのハンセン溶解度パラメータ距離が8.0以上であるゴム成分を含むゴム組成物又はその加硫物からなる、液浸冷却用アルミ電解コンデンサの製造方法。
〔9〕
前記ゴム成分が、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、アクリルゴム、及びフッ素ゴムからなる群より選択される1種以上である、〔8〕に記載の液浸冷却用アルミ電解コンデンサの製造方法。
〔10〕
前記ゴム成分が、前記炭化水素系冷媒とのハンセン溶解度パラメータ距離が8.0未満のゴムを、前記ゴム成分全量に対して0重量%超65重量%以下含む、〔8〕又は〔9〕に記載の液浸冷却用アルミ電解コンデンサの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、炭化水素系冷媒を冷却液として使用した液浸冷却システムに適用し得るアルミ電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る液浸冷却用アルミ電解コンデンサの概略断面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る液浸冷却用アルミ電解コンデンサの概略断面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る液浸冷却用アルミ電解コンデンサの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本開示の実施の形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の実施形態の一例(代表例)であり、本開示はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
【0013】
1.液浸冷却用アルミ電解コンデンサ
本開示の第1の実施形態は、冷却液中での冷却に供される液浸冷却用アルミ電解コンデンサ(以下、単に「アルミ電解コンデンサ」と称することがある。)である。前記アルミ電解コンデンサの封口体は、液浸冷却の際に前記冷却液と接触する領域にゴム部材を有し、前記ゴム部材は、前記冷却液とのハンセン溶解度パラメータ距離が8.0以上であるゴム成分を含むゴム組成物又はその加硫物からなる。また、本実施形態に係るアルミ電解コンデンサを液浸冷却する際には、冷却液として、炭化水素系冷媒が使用される。或いは、冷却液として、炭化水素系冷媒に代え、又は炭化水素系冷媒とともに、シリコーンオイル系冷媒を使用してもよい。なお、本開示において、「ゴム部材」は、特段の断りがない限り、上記ゴム組成物又はその加硫物からなるゴム部材を指すものとする。
【0014】
1-1.冷却液
本実施形態に係るアルミ電解コンデンサは、上記冷却液を用いた液浸冷却に供される電子機器に搭載するコンデンサとして好適である。上記冷却液を用いた液浸冷却に適応できるアルミ電解コンデンサが提供されることにより、冷却液選択の自由度が高まり、これまで利用されてきた高価なフッ素系絶縁性冷媒を炭化水素系冷媒のような安価な冷却液に置き換えることが可能となる。
【0015】
炭化水素系冷媒としては、パラフィン系鉱物油及びナフテン系鉱物油等の石油系炭化水素;ポリ-α-オレフィン(PAOs)及びフィッシャートロプシュ合成により得られる人造石油等の合成油;並びにバイオオイル;等が挙げられる。これらのうち、炭化水素系冷媒は、合成油から選択される1種以上であることが好ましく、人造石油から選択される1種以上であることがより好ましく、ポリ-α-オレフィン(PAOs)又はフィッシャートロプシュ合成により得られる人造石油であることがさらに好ましい。
なお、本開示において、「ポリ-α-オレフィン(PAOs)」とは、α-オレフィン重合体の末端二重結合を水素添加したものである。
【0016】
石油系炭化水素及び人造石油は、炭素数15以上50以下の炭化水素の混合物であることが好ましく、炭素数18以上50以下の炭化水素の混合物であることがより好ましい。なお、各炭化水素は、直鎖状炭化水素、分岐状炭化水素、及び環状炭化水素のいずれであってもよいが、直鎖状炭化水素又は分岐状炭化水素であることが好ましい。
【0017】
ポリ-α-オレフィンは、炭素数2以上32以下のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体であることが好ましく、炭素数6以上16以下のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体であることがより好ましく、α-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、及び1-テトラデセンからなる群より選択される1種以上のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体であることがさらに好ましく、1-デセンの単独重合体であることが特に好ましい。
【0018】
ポリ-α-オレフィンの重合度は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。すなわち、ポリ-α-オレフィンの重合度の好ましい範囲としては、例えば、2以上10以下、2以上8以下、及び3以上5以下の範囲が挙げられる。
【0019】
ポリ-α-オレフィンの炭素数は、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上であり、また、好ましくは80以下、より好ましくは70以下、さらに好ましくは60以下である。すなわち、ポリ-α-オレフィンの炭素数の好ましい範囲としては、例えば、10以上80以下、20以上70以下、及び30以上60以下の範囲が挙げられる。
【0020】
炭化水素系冷媒は、フッ素非含有炭化水素であることが好ましく、石油系炭化水素であることがより好ましい。なお、本開示において、「フッ素非含有炭化水素」は、フッ素を一切含まない炭化水素の他、フッ素を不純物として不可避的に含有する炭化水素であってもよい。
【0021】
シリコーンオイルとしては、ポリジメチルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサン等のポリシロキサンが挙げられる。
【0022】
冷却液は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0023】
冷却液は、絶縁性のものであることが好ましい。また、ギガヘルツ帯の無線通信を阻害しない点で、冷却液の比誘電率は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下である。
【0024】
1-2.アルミ電解コンデンサ
本実施形態に係る液浸冷却用アルミ電解コンデンサは、後述する封口体を有するものである限り、その構造、形状、及び構成材料等のその他の構成は特に限定されず、公知のアルミ電解コンデンサと同じ又は公知のアルミ電解コンデンサに準じたものとすることができる。
【0025】
例えば、アルミ電解コンデンサは、チップ形、リード形、基板自立形、及びネジ端子形のいずれであってもよい。
また、アルミ電解コンデンサ中のコンデンサ素子は、陽極箔と陰極箔とが電解液を保持
したセパレータを介して巻回されたものであってもよく、当該電解液を導電性ポリマーに置き換えたもの(すなわち、固体電解コンデンサ素子)であってもよく、当該電解液を電解液と導電性ポリマーのハイブリッド電解質に置き換えたものであってもよい。電解液としては、特に限定されず、例えば、主溶媒がエチレングリコール及びジエチレングリコール等のグリコールであるグリコール系電解液;スルホラン系電解液;ラクトン系電解液;並びに水系電解液;等が挙げられる。
【0026】
本実施形態において好適なアルミ電解コンデンサとしては、図1に示されるような、コンデンサ素子2、コンデンサ素子2を収納する金属ケース4、及び金属ケース4の開口部を封止する封口体6を有し、金属ケース4に横加締め部4a及び縦加締め部4bを有するアルミ電解コンデンサ10が挙げられる。かかるアルミ電解コンデンサは、開口部を有する有底円筒状の金属ケース内にコンデンサ素子及び封口体を順次挿入し、金属ケースの側面から横加締め(絞り加工)及び金属ケースの開口部端部の縦加締め(カーリング加工)により製造される。このようなアルミ電解コンデンサ及びその製造方法は、例えば、特開2004-119907及び特開2002-25870等に開示されている。
【0027】
ただし、本実施形態に係る液浸冷却用アルミ電解コンデンサの製造においては、封口体を金属ケースに挿入するにあたり、液浸冷却の際に冷却液と接触する領域に封口体のゴム部材が位置するよう封口体を配置する。換言すると、本実施形態に係る液浸冷却用アルミ電解コンデンサを製造する方法は、封口体によりコンデンサ素子を封止する封止工程を含み、かかる封止工程では、液浸冷却の際に冷却液と接触する領域にゴム部材が位置するよう封口体を配置する。そして、その後、上述したように金属ケースの加締め加工を行う。
【0028】
なお、本実施形態に係る液浸冷却用アルミ電解コンデンサを製造する方法は、ゴム部材を作製するゴム部材作製工程を含んでいてもよい。ゴム部材作製工程は、後に詳述するゴム組成物を成形する工程であってもよく、後に詳述するゴム組成物を成形した後に加硫する工程であってもよい。
【0029】
1-3.封口体
本実施形態におけるアルミ電解コンデンサの封口体は、液浸冷却の際に前記冷却液と接触する領域にゴム部材を有する。このゴム部材は、冷却液とのハンセン溶解度パラメータ距離が8.0以上であるゴム成分を含むゴム組成物又はその加硫物からなる。
【0030】
従来、アルミ電解コンデンサが液浸冷却に供される際に、上述の冷却液を用いることができないとされてきた要因の一つは、アルミ電解コンデンサの封口体の材料として、エチレンプロピレンゴム(EPDM)及びブチルゴム等のゴムが用いられていることにある。これらのゴムは、有機系冷媒との相溶性が高いため、封口体が冷却液に浸漬されると、封口体を形成するゴムが冷却液を取り込んで膨潤する。そして、ゴムが膨潤すると、ゴムの体積が膨張してコンデンサ素子が収容されている金属ケースが変形したり、金属ケース内に冷却液が浸入し、冷却液が金属ケース内に収容されているコンデンサ素子、導電性高分子及び電解液等に悪影響を及ぼしたりする虞がある。すなわち、従来のアルミ電解コンデンサは、液浸冷却されると、冷却液の種類によっては金属ケースが変形したり、気密性を担保できずに性能低下及び短寿命化を引き起こしたりする虞がある。
【0031】
そのため、本発明者らは、アルミ電解コンデンサを炭化水素等の冷却液を用いた液浸冷却に適用できるようにするためには、封口体を冷却液による膨潤が起こりにくいものにする必要があると考えた。そして、封口体の材料を選択するための指標として、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)に着目し、封口体のうち冷却液と接触する領域に配されるゴム部材を、冷却液とのHSP距離が8.0以上であるゴム成分を含むゴム組成物又はその加硫物からなるゴム部材とすることで、封口体の膨潤を十分抑制できることを見出した。
【0032】
HSPは、ある物質Aの他の物質Bへの溶解性を、多次元ベクトルを用いて数値化した値である。両物質間のHSP距離が短いほど、物質Aは、物質Bへの溶解性が高く、物質Bとの相溶性が高いと推定される。
【0033】
HSPは、例えばHSPiP(Hansen Solubility Parameters in Practice, Ver.5.4.05)のようなHSP解析ソフトウェアを使用し、その化学構造式から計算される。HSPは、δD(分散項)、δP(分極項)及びδH(水素結合項)の3成分で表現される。δD、δP、δH及びRaの単位は、MPa1/2である。2つの化合物のHSP距離は、それぞれのδD、δP及びδHの値を3次元直交座標系にプロットしたときの2点間距離であり、下記式に従って求めることができる。なお、本開示において、HSPは、25℃における値である。また、本実施形態においては、ゴム成分が物質Bに相当し、冷却液が物質Aに相当する。
【0034】
HSP距離(Ra)={4×(δD-δD+(δP-δP+(δH-δH1/2
式中、δD、δP及びδHは、それぞれ、物質AのδD、δP及びδHである。
式中、δD、δP及びδHは、それぞれ、物質BのδD、δP及びδHである。
【0035】
本実施形態において、ゴム成分と冷却液とのHSP距離は、8.0以上であり、封口体の膨潤をより抑制できる点で、好ましくは10.0以上、より好ましくは12.0以上、さらに好ましくは15.0以上、特に好ましくは20.0以上である。ゴム成分と冷却液とのHSP距離の上限は、特に限定されないが、好ましくは50.0以下又は40.0以下である。すなわち、ゴム成分と冷却液とのHSP距離の好ましい範囲としては、例えば、8.0以上50.0以下、10.0以上40.0以下、12.0以上40.0以下、15.0以上40.0以下、及び20.0以上40.0以下の範囲が挙げられる。
【0036】
ゴム成分と冷却液とのHSP距離が上記範囲であれば、液浸冷却中にゴム部材が冷却液により膨潤することを抑制でき、アルミ電解コンデンサの性能低下及び短寿命化、並びに金属ケースの変形といった不具合を回避し得る。
【0037】
なお、「ゴム成分と冷却液とのHSP距離」とは、ゴム成分が2種以上のゴムの混合物である場合には、この混合物と冷却液とのHSP距離を意味し、冷却液が2種以上の冷媒の混合液である場合には、この混合液とゴム成分とのHSP距離を意味し、ゴム成分が上記混合物かつ冷却液が上記混合液である場合には、この混合物と混合液とのHSP距離を意味する。したがって、ゴム成分は、全体として冷却液とのHSP距離が上記下限以上である限り、冷却液とのHSP距離が上記下限未満のゴムを含んでいてもよい。
【0038】
ゴム成分は、冷却液とのHSP距離が上記範囲となるものを適宜選択すればよく、その種類は特に限定されないが、主鎖又は側鎖に窒素原子、酸素原子、塩素原子、硫黄原子、及びフッ素原子等のヘテロ原子が含まれるゴムは、炭化水素系冷媒とのHSP距離が大きくなるため、好ましい。
【0039】
より具体的には、ゴム成分は、冷却液とのHSP距離が大きい点で、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、及びエピクロロヒドリンゴムからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、アクリルゴム、及びフッ素ゴムからなる群より選択される1種以上を含むことがより好ましく、ニトリルゴム及びアクリルゴムからなる群より選択される1種以上又はニトリルゴム及びフッ素ゴムからなる群より選択される1種以上を含むことがさらに好ましい。
【0040】
ニトリルゴムは、アクリロニトリルとブタジエンとの共重合体であって、一般的には、アクリロニトリル単位を15重量%以上60重量%含む。また、ニトリルゴムは、エチレン、共役ジエン、及びビニル化合物等のその他のモノマーを共重合させたものであってもよい。
【0041】
水素化ニトリルゴムは、ニトリルゴムを水素化したものである。水素化ニトリルの水素化率は、特に限定されないが、一般的には70%以上100%以下の範囲である。
【0042】
アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とするゴムである。「アクリル酸エステルを主成分とする」とは、アクリルゴムにおけるアクリル酸エステル単位の含有量が50重量%以上であることを意味する。また、本開示において、「アクリル酸エステル」は、「メタクリル酸エステル」であってもよいものとする。アクリルゴムは、エチレン、酢酸ビニル、及び架橋性モノマー等のその他のモノマーを共重合させたものであってもよい。架橋性モノマーとしては、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、及び水酸基等を有するモノマー、並びにジエン系モノマーが挙げられる。
【0043】
フッ素ゴムは、主鎖又は側鎖にフッ素原子を含有する単独重合体又は共重合体であって、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデン等の含フッ素モノマーを重合して得られるものである。フッ素ゴムは、エチレン及びプロピレン等のフッ素非含有モノマーが共重合されたものであってもよい。
【0044】
クロロプレンゴムは、クロロプレンを重合して得られるジエン系ゴムである。
【0045】
クロロスルホン化ポリエチレンゴムは、ポリエチレンの主鎖に塩素原子及びクロロスルホニル基(-SOCl)が結合したゴムである。
【0046】
ウレタンゴムは、分子構造中にウレタン結合を有するゴムであれば、特に限定されないが、エステル系ウレタンゴムであることが好ましい。
【0047】
多硫化ゴムは、主鎖にジスルフィド結合(-S-S-)を有し、わずかに分岐構造を有し、末端がチオール基である液状ポリマーである。多硫化ゴムは、金属酸化物及び有機過酸化物等により硬化し得る。
【0048】
エピクロロヒドリンゴムは、エピクロロヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロロヒドリンとエチレンオキシドとの共重合体(ECO)、エピクロロヒドリンとアリルグリシジルエーテルとの共重合体(GCO)、及びエピクロロヒドリンとエチレンオキシドとアリルグリシジルエーテルとの共重合体(GECO)の総称である。
【0049】
ゴム成分は、1種単独のゴムであってもよく、2種以上のゴムを任意の組み合わせ及び比率で混合したものであってもよい。ゴム成分が1種単独のゴムからなる場合、当該1種単独のゴムは、冷却液とのHSP距離が上記下限以上のゴムである。ゴム成分が2種以上のゴムの混合物である場合、当該混合物は、冷却液とのHSP距離が上記下限以上のゴムを2種以上含むものであってもよいが、当該混合物と冷却液とのHSP距離が上記下限以上となる限りにおいて、冷却液とのHSP距離が上記下限未満のゴムを任意の含有量で含んでいてもよい。冷却液とのHSP距離が上記下限未満のゴムとしては、ブチルゴム及びエチレンプロピレンゴム(EPDM)等が挙げられる。
【0050】
ゴム成分は、冷却液とのHSP距離が上記下限以上のゴムと、冷却液とのHSP距離が上記下限未満のゴムとの混合物であることが好ましい。ブチルゴム及びエチレンプロピレ
ンゴム(EPDM)といった、冷却液とのHSP距離が上記下限未満のゴムは、電解液を透過しにくい傾向がある。そのため、電解液を含むアルミ電解コンデンサにおいては、冷却液とのHSP距離が上記下限以上のゴムと、冷却液とのHSP距離が上記下限未満のゴムとを組み合わせることにより、封口体の膨潤の抑制と封口体を通した電解液の蒸散の抑制とを両立でき、その結果、アルミ電解コンデンサを長寿命化することが可能となる。
【0051】
冷却液とのHSP距離が上記下限未満のゴムを含み、かつ、冷却液とのHSP距離が上記下限以上となるゴム成分としては、冷却液とのHSP距離が上記下限以上のゴムAと、冷却液とのHSP距離が上記下限未満のゴムBとの混合物であって、混合物全量(すなわち、ゴム成分全量)に対するゴムAの含有量が、好ましくは35重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上のものが挙げられる。換言すると、かかる混合物全量に対するゴムBの含有量は、好ましくは65重量%以下、より好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。なお、混合物全量に対するゴムA及びゴムBの含有量は、それぞれ、通常0重量%超であり、また、通常100重量%未満である。
【0052】
より具体的には、冷却液とのHSP距離が上記下限未満のゴムを含み、かつ、冷却液とのHSP距離が上記下限以上となるゴム成分としては、例えば、後述する実施例に示すように、ニトリルゴムとブチルゴムとの混合物であって、混合物全量(すなわち、ゴム成分全量)に対するニトリルゴムの含有量が、好ましくは35重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上のものが挙げられる。このとき、混合物全量に対するブチルゴムの含有量は、好ましくは65重量%以下、より好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。なお、混合物全量に対するニトリルゴム及びブチルゴムの含有量は、それぞれ、通常0重量%超であり、また、通常100重量%未満である。
【0053】
或いは、冷却液とのHSP距離が上記下限未満のゴムを含み、かつ、冷却液とのHSP距離が上記下限以上となるゴム成分としては、例えば、後述する実施例に示すように、ニトリルゴムとエチレンプロピレンゴム(EPDM)との混合物であって、混合物全量(すなわち、ゴム成分全量)に対するニトリルゴムの含有量が、好ましくは35重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上のものが挙げられる。このとき、混合物全量に対するエチレンプロピレンゴム(EPDM)の含有量は、好ましくは65重量%以下、より好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。なお、混合物全量に対するニトリルゴム及びエチレンプロピレンゴム(EPDM)の含有量は、それぞれ、通常0重量%超であり、また、通常100重量%未満である。
【0054】
ゴム部材を形成するためのゴム組成物は、上述したゴム成分に加えて、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、加硫剤、充填剤、及び加工助剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
加硫剤としては、硫黄;4,4’-ジチオジモルホリン及びテトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄供与剤;ジクミルパーオキサイド及びベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;酸化亜鉛等の金属酸化物;ヘキサメチレンジアミンカーバメート及び4,4’-ジアミノジフエニルエーテル等の多官能アミン化合物;並びにアルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂及びハロゲン化アルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂等のアルキルフェノール系重合体;等が挙げられる。
【0056】
ゴム組成物が加硫剤を含む場合、ゴム組成物における加硫剤の含有量は、特に限定されないが、ゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは
0.5重量部以上、さらに好ましくは1重量部以上であり、また、好ましくは25重量部以下、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは15重量部以下である。すなわち、ゴム組成物が加硫剤を含む場合、ゴム成分100重量部に対する加硫剤の含有量の好ましい範囲としては、例えば、0.1重量部以上25重量部以下、0.5重量部以上20重量部以下、及び1重量部以上15重量部以下の範囲が挙げられる。
【0057】
充填剤としては、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、及びシリカ等の無機充填剤が好ましく挙げられる。シリカは、シランカップリング剤により表面処理されたものであってもよい。ゴム組成物は、これらのうち、ゴム部材の強度を高めることができる点で、カーボンブラックを含むことが好ましい。
【0058】
ゴム組成物が充填剤を含む場合、ゴム組成物における充填剤の含有量は、特に限定されないが、ゴム成分100重量部に対して、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、さらに好ましくは30重量部以上であり、また、好ましくは250重量部以下、より好ましくは200重量部以下、さらに好ましくは150重量部以下である。すなわち、ゴム組成物が充填剤を含む場合、ゴム成分100重量部に対する充填剤の含有量の好ましい範囲としては、例えば、10重量部以上250重量部以下、20重量部以上200重量部以下、及び30重量部以上150重量部以下の範囲が挙げられる。
【0059】
加工助剤としては、公知のゴム用加工助剤を採用することができる。公知のゴム用加工助剤としては、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、及びラウリン酸等の炭素数12以上30以下の脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、及びステアリン酸亜鉛等の炭素数12以上30以下の脂肪酸の塩;並びにリシノール酸エステル、ステアリン酸エステル、パルミチン酸エステル、及びラウリン酸エステル等の炭素数12以上30以下の脂肪酸のエステル;等が挙げられる。ゴム組成物は、これらの中でも、組成物中の各成分の分散性及びゴム成分の流動性を高めて成形加工性を向上できる点で、ステアリン酸を含むことが好ましい。
【0060】
ゴム組成物が加工助剤を含む場合、ゴム組成物における加工助剤の含有量は、特に限定されないが、ゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.3重量部以上、さらに好ましくは0.5重量部以上であり、また、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下である。すなわち、ゴム組成物が加工助剤を含む場合、ゴム成分100重量部に対する加工助剤の含有量の好ましい範囲としては、例えば、0.1重量部以上20重量部以下、0.3重量部以上10重量部以下、及び0.5重量部以上5重量部以下の範囲が挙げられる。
【0061】
封口体の少なくとも一部にはゴム部材が配されている。このゴム部材は、金属ケース等の外装体やリード端子の気密性を担う部分であり、アルミ電解コンデンサの外部に曝される領域であって、かつ、液浸冷却の際に冷却液と接触する領域に配置される。この液浸冷却の際に冷却液と接触する領域に配されたゴム部材が上記ゴム組成物又はその加硫物により形成されていれば、冷却液による悪影響を低減し得るため、それ以外の部分の構成材料は特に限定されない。また、ゴム部材は、封口体のうち、液浸冷却の際に前記冷却液と接触する領域に配されたものであれば、具体的な態様は特に限定されず、封口体そのものであってもよく、封口体を構成する層又は部分構造であってもよい。以下に、封口体の好適な態様について、いくつかの例を挙げながら説明するが、本実施形態における封口体は、以下の例に限定されるものではない。
【0062】
図1は、本実施形態におけるアルミ電解コンデンサ10の概略断面図を示す。図1において、封口体6は、金属ケース4の縦加締め部4bからコンデンサ素子2の間に配されている。このアルミ電解コンデンサ10では、金属ケース4の横加締め部4a及び金属ケー
ス4の縦加締め部4bによりアルミ電解コンデンサ10の気密性を確保している。
【0063】
図1においては、封口体6は、液浸冷却の際に前記冷却液と接触する領域全体がゴム部材6aで形成されているだけでなく、封口体全体がゴム部材6aで形成されている。これにより、封口体6の膨潤が抑制され、その結果、金属ケース4の変形を抑制でき、アルミ電解コンデンサ10の気密性も担保できる。
【0064】
図2は、本実施形態における他のアルミ電解コンデンサ10の概略断面図を示す。図2において、封口体6は、図1と同様の位置に配されている。
【0065】
図2において、封口体6は、封口体本体6bのコンデンサ素子2に対向する面の反対側の面に上記ゴム組成物又はその加硫物からなる層がコーティング又は積層されたものである。このゴム組成物又はその加硫物からなる層がゴム部材6aに該当する。封口体本体6bは、上記ゴム成分以外のゴム又はその加硫物で形成されており、封口体本体6bがゴム部材6aで覆われていることにより、液浸冷却の際に冷却液との接触を回避できる。これにより、封口体6の膨潤が抑制され、アルミ電解コンデンサ10の気密性を担保できる。そのため、封口体本体6bは、エチレンプロピレンゴム(EPDM)及びブチルゴム又はその加硫物で形成されていてもよい。また、アルミ電解コンデンサ10が電解液を含む場合には、封口体本体6bは、電解液に対する耐性の高いゴム又はその加硫物で形成されたものであることも好ましい。
【0066】
図2では、上記ゴム組成物又はその加硫物からなる層(ゴム部材6a)は、封口体本体6bのコンデンサ素子2に対向する面の反対側の面の全体にわたって形成されているが、液浸冷却の際に封口体本体6bが冷却液と接触をしないようにすることができる限り、この面全体を覆う必要はない。換言すると、ゴム組成物又はその加硫物からなる層は、封口体本体6bのコンデンサ素子2に対向する面の反対側の面のうち、少なくとも金属ケース縁部4cで囲われた領域上に形成されている限り、封口体6の膨潤を抑制でき、その結果、金属ケース4の変形やアルミ電解コンデンサ10の気密性の低下を抑制し得る。
【0067】
図3は、本実施形態における他のアルミ電解コンデンサ10の概略断面図を示す。図3において、封口体6は、金属ケース4の縦加締め部4bと横加締め部4aとの間に配されている。
【0068】
図3において、封口体6は、ゴム部材6aと基板6cとを有するゴム張積層板である。封口体6は、ゴム層がゴム部材6aであること以外は、公知の封口用ゴム張積層板と同様であってよい。したがって、基板6cとしては、硬質樹脂板及びベークライト板等の樹脂系基板が挙げられる。アルミ電解コンデンサ10が電解液を含む場合には、基板6cは、電解液に対する耐性の高い材料で形成されたものであることが好ましい。
【0069】
図3においても、基板6cは、液浸冷却の際に冷却液と接触しない。これにより、封口体6の膨潤が抑制され、その結果、金属ケース4の変形を抑制でき、アルミ電解コンデンサ10の気密性も担保できる。
【0070】
また、これらの他、封口体は、金属及び樹脂等の冷却液で膨潤しにくい材料で形成された封口体本体と、この封口体本体のうち、金属ケース縁部からの押圧を受ける部分にゴム部材が形成されたものであってもよい。或いは、封口体は、冷却液で膨潤しにくい材料で形成された封口体本体と、この封口体本体とリード線との境界にゴム部材が配置されたものであってもよい。このような態様においても、ゴム部材が冷却液により膨潤しにくいため、金属ケース4の変形やアルミ電解コンデンサ10の気密性の低下を抑制し得る。
【0071】
上述した封口体の構造は、本開示の効果を阻害しない範囲において、適宜組み合わせることができる。例えば、図1又は図2における封口体6の配置位置を図3に示す封口体6の配置位置とすることができる。
【0072】
図1図3に示した封口体の中でも、図1に示される封口体6は、単一のゴム組成物から封口体を製造できるため、製造効率が高く及び製造コストを低減できる点でより好ましい。また、図1及び図2に示した封口体6は、アルミ電解コンデンサの封口体としてゴム製封口体を採用できるようになる点でより好ましい。
【0073】
さらに、アルミ電解コンデンサの封口体は、コンデンサ素子と対向する面に、保護材が取り付けられた保護材付き封口体であってもよい。保護材は、電解液から封口体を保護するための部材である。保護材は、封口体と電解液との接触を防ぐことができる限り、その形状は特に限定されず、例えば、膜状、箔状、フィルム状、シート状、及び板状等の部材とすることができる。保護材を形成する材料としては、電解液に対する耐性の高い材料である限り特に限定されず、例えば、フェノール樹脂等の公知の絶縁性材料を使用することができる。
【0074】
1-4.評価
アルミ電解コンデンサが、上記冷却液を用いた液浸冷却に適用し得るか否かは、上述したゴム部材と同材料で形成された試験片を冷却液に浸漬することにより生じる試験片の硬度変化を観測することにより評価することができる。これは、ゴム部材の膨潤の度合いと硬度変化との間には相関性があるためである。より詳細には、ゴム部材が膨潤して体積膨張及び構造変化(例えば、架橋切断)等が生じるにつれて、ゴム部材の硬度が低下することに基づけば、ゴム部材の硬度変化が小さいほど、ゴム部材の膨張に起因する不具合が抑制されると判断できるためである。
【0075】
冷却液への浸漬前後でのゴム部材の硬度変化は、ゴム部材と同材料で形成されたダンベル状試験片(3号形)の硬度変化率を算出することにより評価する。ダンベル状試験片の硬度変化率は、以下の手順(1)~(4)により算出される。
(1)3本のダンベル状試験片の硬度を測定し、各測定値の中央値を浸漬前の硬度として求める。
(2)(1)のダンベル状試験片3本を冷却液に浸漬し、85℃で168時間加熱する。(3)冷却液から取り出した3本のダンベル状試験片の硬度を測定し、各測定値の中央値を浸漬後の硬度として求める。
(4)浸漬前の硬度及び浸漬後の硬度を下記式(I)に当てはめることで、硬度変化率を算出する。
【0076】
【数1】
【0077】
なお、ダンベル状試験片の硬度は、タイプAデュロメータを用い、JIS K 6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」(2012年3月21日制定)に準拠して測定される。
【0078】
上記のようにして求めた硬度変化率が負の方向に大きくなるほど、冷却液への浸漬によりゴム部材の硬度が低下すると評価される。
【0079】
硬度変化率は、好ましくは-20%以上、より好ましくは-15%以上、さらに好ましくは-10%以上、特に好ましくは-5%以上である。硬度変化率の上限は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。すなわち、硬度変化率の好ましい範囲としては、例えば、-20%以上10%以下、-15%以上10%以下、-10%以上5%以下、及び-5%以上5%以下の範囲が挙げられる。
【0080】
硬度変化率が上記範囲であれば、ゴム部材が冷却液により膨潤しにくく、アルミ電解コンデンサの液浸冷却への適性が高いと言える。
【0081】
2.アルミ電解コンデンサの冷却方法
本開示の第2の実施形態は、本開示の第1の実施形態に係るアルミ電解コンデンサの冷却方法であって、前記アルミ電解コンデンサを冷却液中に浸漬して冷却する液浸冷却工程を含む。また、前記冷却液は、炭化水素系冷媒であり、本開示の第1の実施形態の説明において述べた冷却液と同義である。
【0082】
本実施形態において、アルミ電解コンデンサは、電子機器に搭載されていてもよい。アルミ電解コンデンサが電子機器に搭載されている場合、液浸冷却工程は、電子機器ごとアルミ電解コンデンサを冷却液中に浸漬することにより行われる。この場合、液浸冷却では、電子機器のうち、少なくともアルミ電解コンデンサが取り付けられた部品を冷却液に浸漬してアルミ電解コンデンサを冷却できればよい。したがって、液浸冷却工程は、電子機器全体を冷却液に浸漬して冷却する工程であってもよく、アルミ電解コンデンサが取り付けられた部品を冷却液に浸漬して冷却する工程であってもよい。アルミ電解コンデンサが取り付けられた部品としては、例えば、プリント回路板等の基板が挙げられる。アルミ電解コンデンサが電子機器に搭載されている場合には、液浸冷却工程により、アルミ電解コンデンサだけでなく、電子機器全体又はアルミ電解コンデンサが取り付けられ部品全体を冷却することができる。
【0083】
液浸冷却工程で冷却する電子機器は、本開示の第1の実施形態に係るアルミ電解コンデンサを有するものであれば特に限定されず、例えば、アルミ電解コンデンサが取り付けられたプリント回路板を有するスーパーコンピュータ、サーバー、及び通信機器等が挙げられる。
【0084】
液浸冷却工程では、アルミ電解コンデンサ又は電子機器を冷却液中に浸漬し、これらの動作に伴って発生する熱を冷却液に伝えることで、冷却(放熱)を行う。液浸冷却工程を実行するための具体的な方法は、上述した冷却液を使用する限り、特に限定されず、公知の液浸冷却システムにより行うことができる。公知の液浸冷却システムとしては、冷却液を液体の状態のまま利用する単相式液浸冷却システム、及び冷却液の相変化を利用する二相式液浸冷却システムが挙げられる。
【0085】
本実施形態に係る冷却方法によれば、液浸冷却中に、封口体の膨潤によりアルミ電解コンデンサの気密性が低下したり、金属ケースが変形したりすることを抑制できる。これにより、炭化水素系冷媒を冷却液として用いてアルミ電解コンデンサ及びアルミ電解コンデンサが搭載された電子機器を液浸冷却することが可能となる。
【0086】
3.電子機器の冷却方法
本開示の第3の実施形態は、本開示の第1の実施形態に係るアルミ電解コンデンサを有する電子機器の冷却方法であって、前記電子機器の一部又は全部を冷却液中に浸漬して冷却する液浸冷却工程を含む。また、前記冷却液は、炭化水素系冷媒であり、本開示の第1の実施形態の説明において述べた冷却液と同義である。また、前記電子機器は、本開示の
第2の実施形態の説明において述べた電子機器と同義である。
【0087】
液浸冷却工程において、電子機器の冷却液への浸漬は、少なくともアルミ電解コンデンサが冷却液に浸漬するよう行われる。換言すると、液浸冷却工程は、電子機器全体を冷却液に浸漬して冷却する工程であってもよく、アルミ電解コンデンサが取り付けられた部品を冷却液に浸漬して冷却する工程であってもよい。アルミ電解コンデンサが取り付けられた部品としては、例えば、プリント回路板等の基板が挙げられる。液浸冷却工程により、電子機器全体又はアルミ電解コンデンサが取り付けられ部品全体を冷却することができる。
【0088】
液浸冷却工程では、電子機器を冷却液中に浸漬し、動作に伴って発生する熱を冷却液に伝えることで、冷却(放熱)を行う。液浸冷却工程を実行するための具体的な方法は、上述した冷却液を使用する限り、特に限定されず、公知の液浸冷却システムにより行うことができる。公知の液浸冷却システムとしては、冷却液を液体の状態のまま利用する単相式液浸冷却システム、及び冷却液の相変化を利用する二相式液浸冷却システムが挙げられる。
【0089】
本実施形態に係る冷却方法によれば、液浸冷却中に、封口体の膨潤によりアルミ電解コンデンサの気密性が低下したり、金属ケースが変形したりすることを抑制できる。これにより、炭化水素系冷媒を冷却液として用いてアルミ電解コンデンサが搭載された電子機器を液浸冷却することが可能となる。
【実施例0090】
以下に、本開示を実施例によって更に具体的に説明するが、本開示はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
なお、本開示において、「室温」とは、15℃以上35℃以下の範囲の温度を意味する。
【0091】
〔実施例1〕
アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部、カーボンブラック50重量部、ステアリン酸1重量部、及びジクミルパーオキサイド5重量部を混練し、得られた組成物を170℃で10分間加硫し、厚さ2mmのシートを得た。このシートをダンベル状に打ち抜くことにより、ダンベル状試験片(3号形)を作製した。
【0092】
アクリロニトリルブタジエンゴム及び炭化水素系冷媒であるFischer-Tropsch蒸留重質油(炭素数18以上50以下の分岐状及び直鎖状炭化水素の混合物)のHSPを、HSP解析ソフトウェア「HSPiP(Ver.5.4.05)」を用いて計算した。アクリロニトリルブタジエンゴム及び炭化水素系冷媒のHSP計算値、並びにこれらの計算値から求めたアクリロニトリルブタジエンゴムと炭化水素系冷媒とのHSP距離を表1に示す。
【0093】
また、以下に示す方法に従い、炭化水素系冷媒への浸漬により生じるダンベル状試験片の硬度変化を評価した。結果を表1に示す。
【0094】
〔浸漬による硬度変化の評価〕
(浸漬試験)
試験管に入った試験冷媒にダンベル状試験片を3本浸漬した。この試験管を温度85℃に設定したオーブン内で168時間加熱した。オーブンから取り出した試験管を室温で30分放置することで冷却した。冷却後、試験冷媒からダンベル状試験片を取り出し、ダンベル状試験片に付着した試験冷媒を拭き取った。
【0095】
(硬度変化率の算出)
デュロメータ(株式会社テロック製「GX-01A」;タイプA)を用い、JIS K
6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」(2012年3月21日制定)に準拠して、浸漬試験前の3本のダンベル状試験片の硬度測定を行い、各測定値の中央値を浸漬試験前のダンベル状試験片の硬度として求めた。同様にして浸漬試験後のダンベル状試験片の硬度を算出した。これらの算出結果を上記式(I)に当てはめることで、ダンベル状試験片の硬度変化率を算出した。結果を表1に示す。
【0096】
〔実施例2〕
アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部をエチレン-酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体100重量部に変更したこと、及びジクミルパーオキサイド5重量部をヘキサメチレンジアミンカーバメート1重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてダンベル状試験片(3号形)を作製した。
【0097】
実施例1と同様にして、HSP及びHSP距離の計算、並びに硬度変化の評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
〔実施例3〕
アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部をフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体100重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてダンベル状試験片(3号形)を作製した。
【0099】
実施例1と同様にして、HSP及びHSP距離の計算、並びに硬度変化の評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
〔実施例4〕
アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部を水素化アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に変更したこと、及びジクミルパーオキサイドの量を10重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてダンベル状試験片(3号形)を作製した。
【0101】
実施例1と同様にして、HSP及びHSP距離の計算、並びに硬度変化の評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
〔比較例1〕
アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部をエチレンプロピレンゴム(EPDM)100重量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてダンベル状試験片(3号形)を作製した。
【0103】
実施例1と同様にして、HSP及びHSP距離の計算、並びに硬度変化の評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
〔比較例2〕
アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部をブチルゴム100重量部に変更したこと、ジクミルパーオキサイド5重量部をアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂10重量部に変更したこと、及び加硫条件を170℃40分間の条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてダンベル状試験片(3号形)を作製した。
【0105】
実施例1と同様にして、HSP及びHSP距離の計算、並びに硬度変化の評価を行った
。結果を表1に示す。
【0106】
〔実施例5〕
ブチルゴム20重量部、ニトリルゴム80重量部、カーボンブラック50重量部、ステアリン酸1重量部、及びアルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂12重量部を混練し、得られた組成物を170℃で40分間加硫し、厚さ2mmのシートを得た。このシートをダンベル状に打ち抜くことにより、ダンベル状試験片(3号形)を作製した。
【0107】
実施例1と同様にして、HSP及びHSP距離の計算、並びに硬度変化の評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
〔実施例6〕
ブチルゴム20重量部とニトリルゴム80重量部との混合物からなるゴム成分を、ブチルゴム40重量部とニトリルゴム60重量部との混合物からなるゴム成分に変更したこと以外は、実施例5と同様にしてダンベル状試験片(3号形)を作製した。
【0109】
実施例1と同様にして、HSP及びHSP距離の計算、並びに硬度変化の評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
〔実施例7〕
ブチルゴム20重量部とニトリルゴム80重量部との混合物からなるゴム成分を、ブチルゴム50重量部とニトリルゴム50重量部との混合物からなるゴム成分に変更したこと以外は、実施例5と同様にしてダンベル状試験片(3号形)を作製した。
【0111】
実施例1と同様にして、HSP及びHSP距離の計算、並びに硬度変化の評価を行った。結果を表1に示す。
【0112】
〔実施例8〕
ブチルゴム20重量部とニトリルゴム80重量部との混合物からなるゴム成分を、ブチルゴム60重量部とニトリルゴム40重量部との混合物からなるゴム成分に変更したこと以外は、実施例5と同様にしてダンベル状試験片(3号形)を作製した。
【0113】
〔実施例9〕
ブチルゴム20重量部とニトリルゴム80重量部との混合物からなるゴム成分を、ブチルゴム65重量部とニトリルゴム35重量部との混合物からなるゴム成分に変更したこと以外は、実施例5と同様にしてダンベル状試験片(3号形)を作製した。
【0114】
実施例1と同様にして、HSP及びHSP距離の計算、並びに硬度変化の評価を行った。結果を表1に示す。
【0115】
〔実施例10〕
エチレンプロピレンゴム(EPDM)65重量部、ニトリルゴム35重量部、カーボンブラック50重量部、ステアリン酸1重量部、及びジクミルパーオキサイド5重量部を混練し、得られた組成物を170℃で10分間加硫し、厚さ2mmのシートを得た。このシートをダンベル状に打ち抜くことにより、ダンベル状試験片(3号形)を作製した。
【0116】
実施例1と同様にして、HSP及びHSP距離の計算、並びに硬度変化の評価を行った。結果を表1に示す。
【0117】
〔実施例11〕
エチレンプロピレンゴム(EPDM)65重量部、アクリルゴム35重量部、カーボンブラック50重量部、ステアリン酸1重量部、及びジクミルパーオキサイド5重量部を混練し、得られた組成物を170℃で10分間加硫し、厚さ2mmのシートを得た。このシートをダンベル状に打ち抜くことにより、ダンベル状試験片(3号形)を作製した。
【0118】
実施例1と同様にして、HSP及びHSP距離の計算、並びに硬度変化の評価を行った。結果を表1に示す。
【0119】
〔実施例12~15〕
実施例1~4のそれぞれで作製したダンベル状試験片(3号形)について、試験冷媒と炭化水素系冷媒であるポリ-α-オレフィン(ポリ(1-デセン))を使用したこと以外は、実施例1と同様にして浸漬試験を行った。
【0120】
また、実施例1と同様にして、HSP及びHSP距離の計算、並びに硬度変化の評価を行った。結果を表1に示す。
【0121】
〔比較例3,4〕
比較例1,2のそれぞれで作製したダンベル状試験片(3号形)について、試験冷媒として炭化水素系冷媒であるポリ-α-オレフィン(ポリ(1-デセン))を使用したこと以外は、実施例1と同様にして浸漬試験を行った。
【0122】
また、実施例1と同様にして、HSP及びHSP距離の計算、並びに硬度変化の評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
表1より、ゴム成分と冷却液とのHSP距離が8.0未満である場合には(比較例1~4)、ダンベル状試験片の硬度変化率が-24%以下であることが確認された。このことから、かかるゴム成分を含むゴム組成物の加硫物で形成されたゴム部材は、冷却液により膨潤して硬度が大きく低下することがわかる。
一方、ゴム成分と冷却液とのHSP距離が8.0以上である場合(実施例1~15)、ゴム成分の種類及び冷却液の種類にかかわらず、ダンベル状試験片の硬度変化が小さいことが確認された。このことから、冷却液とのHSP距離が8.0以上であるゴム成分を含むゴム組成物の加硫物で形成されたゴム部材は、冷却液で膨潤しにくく、冷却液への浸漬後も硬度を維持できることがわかる。
【0125】
以上から、液浸冷却の際に冷却液と接触する領域にゴム部材を有するアルミ電解コンデンサであっても、ゴム部材を形成する材料を、冷却液とのHSP距離が8.0以上であるゴム成分を含むゴム組成物又はその加硫物とすることにより、ゴム部材の膨潤が生じにくくなるため、炭化水素系冷媒を冷却液として用いた液浸冷却システムに適用できる。
【符号の説明】
【0126】
2 コンデンサ素子
4 金属ケース
4a 横加締め部
4b 縦加締め部
4c 金属ケース縁部
6 封口体
6a ゴム部材
6b 封口体本体
6c 基板
10 アルミ電解コンデンサ
図1
図2
図3