(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133017
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】半導体装置、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20240920BHJP
C08G 73/14 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L23/12 501P
H01L23/12 501B
C08G73/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】46
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040327
(22)【出願日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2023041202
(32)【優先日】2023-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100190137
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 仁郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 建樹
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PC145
4J043PC146
4J043QB15
4J043QB26
4J043RA06
4J043RA35
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB01
4J043TB03
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA151
4J043UA152
4J043UB121
4J043UB401
4J043UB402
4J043VA021
4J043VA022
4J043XA19
4J043ZB50
(57)【要約】
【課題】絶縁層において微細なビアホールを形成できること、絶縁不良を生じないこと、及び絶縁層と配線の信頼性試験後の密着性を確保できること、の全てを達成可能な半導体装置、及び絶縁層の耐薬品性の向上と、絶縁層と配線の熱履歴後の密着性の確保と、を図ることができる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体チップ2と、半導体チップ2を、その少なくとも一部が露出するように覆う封止材3と、半導体チップ2における、封止材3によって覆われていない面側に配され、かつ、平面視で半導体チップ2よりも面積が大きい再配線層4と、を備え、
再配線層4が、半導体チップ2に電気的に接続される配線5と、酸素透過度が150~7000cm
3/m
2・日・atmである絶縁層6と、を含む、半導体装置1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップを、その少なくとも一部が露出するように覆う封止材と、
前記半導体チップにおける、前記封止材によって覆われていない面側に配され、かつ、平面視で前記半導体チップよりも面積が大きい再配線層と、を備え、
前記再配線層が、前記半導体チップに電気的に接続される配線と、酸素透過度が150~7000cm3/m2・日・atmである絶縁層と、を含む、半導体装置。
【請求項2】
前記絶縁層が、3層以上の層構造を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体チップが、複数のチップを含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記封止材は、前記絶縁層に接している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記封止材は、エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記酸素透過度が、250~5000cm3/m2・日・atmである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記酸素透過度が、150~400cm3/m2・日・atmである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記酸素透過度が、150~350cm3/m2・日・atmである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記酸素透過度が、150~300cm3/m2・日・atmである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記酸素透過度が、400~7000cm3/m2・日・atmである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記酸素透過度が、450~7000cm3/m2・日・atmである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記酸素透過度が、500~7000cm3/m2・日・atmである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記絶縁層は、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)、ケイ素(Si)、
及びチタン(Ti)から成る群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の
半導体装置。
【請求項14】
前記絶縁層は、ハロゲンを含まない、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記絶縁層は、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から成る群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記絶縁層が、ポリイミドを含み、かつ、全反射測定法(ATR法)にてIRスペクトル測定を行った場合の、1380cm-1付近のピーク高さと、1500cm-1付近のピーク高さと、のピーク比(1380cm-1付近ピーク高さ/1500cm-1付近ピーク高さ)が0.2~2.5である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記半導体装置は、前記半導体チップを保護する保護層を任意に備え、
前記半導体装置が前記保護層を備える場合、前記保護層は、前記半導体チップと、
前記絶縁層と、の間に配される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記保護層は、前記半導体チップと、前記絶縁層と、の少なくとも一方に接する、請求項17に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記保護層には、孔が形成されており、
前記孔を通じて、前記半導体チップと、前記半導体チップに電気的に接続される配線と、が電気的に接続されている、請求項17に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記保護層における、前記半導体チップ側の面のうち、前記孔に由来する開口面積の割合が半分未満である、請求項19に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記保護層は、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から成る群から選択される少なくとも1種を含む、請求項17に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記保護層が、ポリイミドを含み、かつ、全反射測定法(ATR法)にてIRスペクトル測定を行った場合の、1380cm-1付近のピーク高さと、1500cm-1付近のピーク高さと、のピーク比(1380cm-1付近ピーク高さ/1500cm-1付近ピーク高さ)が1.2~2.5である、請求項17に記載の半導体装置。
【請求項23】
前記保護層及び前記絶縁層の少なくとも一方は、以下の一般式(1):
【化1】
(式中、X
1は、テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基であり、Y
1は、ジア
ミンに由来する2価の有機基であり、そしてmは、1以上の整数である。)
の構造を含むポリイミドを含む、請求項17に記載の半導体装置。
【請求項24】
前記一般式(1)中のX1が、芳香族環を含む4価の有機基であり、
前記一般式(1)中のY1が、芳香族環を含む2価の有機基である、請求項23に記載の半導体装置。
【請求項25】
前記一般式(1)中のX
1は、下記一般式(2)~一般式(5):
【化2】
【化3】
【化4】
(式中、R
9は
、酸素原子、硫黄原子又は2価の有機基である。)
【化5】
で表される少なくとも1つの構造を含む、請求項23に記載の半導体装置。
【請求項26】
前記一般式(1)中のX
1は、下記一般式(6):
【化6】
で表される構造を含む、請求項25に記載の半導体装置。
【請求項27】
前記一般式(1)中のY
1は、下記一般式(7)~一般式(9):
【化7】
(式中、R
10、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基又は水酸基であり、互いに同一でも異なってもよい。)
【化8】
(式中、R
14~R
21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の有機基又は水酸基であり、互いに同一でも異なってもよい。)
【化9】
(式中、R
22は、2価の基又は酸素原子であり、R
23~R
30は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基又は水酸基であり、互いに同一でも異なってもよく、kは、1~3の整数であり、kが2又は3のときのR
22、R
23、R
24,R
27、R
28は、互いに同一でも異なってもよい。)
で表される少なくとも1つの構造を含む、請求項23に記載の半導体装置。
【請求項28】
前記式(1)中のY
1は、下記一般式(10):
【化10】
で表される構造を含む、請求項23に記載の半導体装置。
【請求項29】
前記絶縁層が、以下の一般式(11):
【化11】
(式中、U及びVは、それぞれ独立して、2価の有機基である。)
の構造を含む前記ポリベンゾオキサゾールを含む、請求項15に記載の半導体装置。
【請求項30】
前記一般式(11)のUは、炭素数1~30の2価の有機基である、請求項29に記載の半導体装置。
【請求項31】
前記一般式(11)のUは、炭素数1~8、かつ水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された鎖状アルキレン基である、請求項29に記載の半導体装置。
【請求項32】
前記一般式(11)のVは、炭素数1~40の2価の有機基である、請求項29に記載の半導体装置。
【請求項33】
前記一般式(11)のVは、炭素数1~20の2価の鎖状脂肪族基である、請求項29に記載の半導体装置。
【請求項34】
前記一般式(11)のVは、芳香族基を含む2価の有機基である、請求項29に記載の半導体装置。
【請求項35】
前記一般式(11)のVは、下記一般式(7)~一般式(9):
【化12】
(式中、R
10、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数が1~5の
1価の脂肪族基であり、互いに同一でも異なってもよい。)
【化13】
(式中、R
14~R
21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の
1価の有機基であり、互いに同一でも異なってもよい。)
【化14】
(式中、R
22は、2価の基又は酸素原子であり、R
23~R
30は、それぞれ独立して、水素
原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基であり、互いに同一でも異なって
もよく、kは、1~3の整数であり、kが2又は3のときのR
22、R
23、R
24,R
27、R
28は、互いに同一でも異なってもよい。)
で表される少なくとも1つの構造を含む、請求項29に記載の半導体装置。
【請求項36】
前記一般式(11)のVは、下記一般式(10):
【化15】
で表される構造を含む、請求項29に記載の半導体装置。
【請求項37】
前記フェノール性水酸基を有するポリマーが、ノボラック型フェノール樹脂を含む、請求項15に記載の半導体装置。
【請求項38】
前記フェノール性水酸基を有するポリマーが、不飽和炭化水素基を有しないフェノール樹脂と、不飽和炭化水素基を有する変性フェノール樹脂と、を含む、請求項15に記載の半導体装置。
【請求項39】
前記絶縁層は、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層とは異なる組成を有する第2の絶縁層と、を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項40】
前記半導体装置が、ファンアウト型の、ウェハレベルチップサイズパッケージ型の半導体装置である、請求項1~39のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項41】
半導体チップを用意する第1工程と、
用意した前記半導体チップを、該半導体チップの少なくとも一部が露出するように封止材で覆う第2工程と、
平面視で前記半導体チップよりも面積が大きい再配線層を、前記半導体チップの前記露出する面側に形成する第3工程と、を含む、
半導体装置の製造方法であって、
前記再配線層が、酸素透過度が150~7000cm3/m2・日・atmである絶縁層を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項42】
前記絶縁層を、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から成る群から選択される少なくとも1種を形成可能な感光性樹脂組成物で形成する、請求項41に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項43】
前記第2工程は、
前記半導体チップに保護層を形成する工程と、
前記保護層を形成した前記半導体チップを、該保護層の少なくとも一部が露出するように封止材で覆う工程と、を含み、
前記第3工程は、
前記再配線層を、前記保護層側に形成する工程を含む、請求項41又は42に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項44】
前記保護層を、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から成る群から選択される少なくとも1種を形成可能な感光性樹脂組成物で形成する、請求項43に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項45】
半導体チップと、
前記半導体チップを、その少なくとも一部が露出するように覆う封止材と、
前記半導体チップにおける、前記封止材によって覆われていない面側に配され、かつ、平面視で前記半導体チップよりも面積が大きい再配線層と、を備える半導体装置における、前記再配線層の形成に使用するための絶縁層であって、
酸素透過度が150~7000cm3/m2・日・atmである、絶縁層。
【請求項46】
半導体チップと、
半導体チップを、その少なくとも一部が露出するように覆う封止材と、
を備える半導体チップにおける、前記封止材によって覆われていない面側に配され、かつ、平面視で前記半導体チップよりも面積が大きい再配線層において、
前記半導体チップに電気的に接続される配線と、
前記配線に接し、かつ、酸素透過度が150~7000cm3/m2・日・atmである絶縁層と、を含む、再配線層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置における半導体パッケージ手法には、様々な方法がある。半導体パッケージ手法としては、例えば、半導体チップの一部を封止材で覆い、そしてその半導体チップにおける封止材で覆われていない面側に、該半導体チップに電気的に接続する再配線層を形成するというパッケージング手法がある。半導体パッケージ手法の中でも、近年、ファンナウト(Fan-Out)という半導体パッケージ手法が主流となっている。
【0003】
ファンナウト型の半導体パッケージでは、半導体チップの所定の面側に保護層を形成するとともに、その半導体チップの他の面側に封止材を配し、そのようにして、半導体チップのチップサイズよりも大きいチップ封止体を形成する。そして、保護層及び封止材の領域に亘って再配線層を形成する。この再配線層は、薄い膜厚で形成される。再配線層は、封止材の領域に亘って形成できるため、半導体パッケージに外部接続端子を多く保持させることができる。ファンナウト型の半導体装置としては、例えば、特許文献1に記載の装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ファンナウト型の半導体装置における再配線層は絶縁層を含んで構成され、この場合、半導体チップに電気的に接続される配線が、該絶縁層により覆われることが多い。また、近年の微細配線化に伴い、絶縁層において、より微細なビアホールの形成を行う必要があった。
【0006】
加えて、本発明者らは、配線形成後の絶縁層に、信頼性試験等の過酷な条件下でも、絶縁不良を起こすことなく、かつ、絶縁層と配線の高い密着性を確保することが求められる観点に着目した。しかし、特許文献1に記載の装置をはじめ、従来の半導体装置(ファンナウト型の半導体装置)では、信頼性試験後の、再配線層中の絶縁層と配線の間の密着性が十分ではなかった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、絶縁層において微細なビアホールを形成できること、絶縁不良を生じないこと、及び絶縁層と配線の信頼性試験後の密着性を確保できること、の全てを達成可能な半導体装置、及びその製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、以下のとおりである。
[1]
半導体チップと、
前記半導体チップを、その少なくとも一部が露出するように覆う封止材と、
前記半導体チップにおける、前記封止材によって覆われていない面側に配され、かつ、平面視で前記半導体チップよりも面積が大きい再配線層と、を備え、
前記再配線層が、前記半導体チップに電気的に接続される配線と、酸素透過度が150~7000cm
3/m
2・日・atmである絶縁層と、を含む、半導体装置。
[2]
前記絶縁層が、3層以上の層構造を有する、項目1に記載の半導体装置。
[3]
前記半導体チップが、複数のチップを含む、項目1に記載の半導体装置。
[4]
前記封止材は、前記絶縁層に接している、項目1に記載の半導体装置。
[5]
前記封止材は、エポキシ樹脂を含む、項目1に記載の半導体装置。
[6]
前記酸素透過度が、250~5000cm
3/m
2・日・atmである、項目1に記載の半導体装置。
[7]
前記酸素透過度が、150~400cm
3/m
2・日・atmである、項目1に記載の半導体装置。
[8]
前記酸素透過度が、150~350cm
3/m
2・日・atmである、項目1に記載の半導体装置。
[9]
前記酸素透過度が、150~300cm
3/m
2・日・atmである、項目1に記載の半導体装置。
[10]
前記酸素透過度が、400~7000cm
3/m
2・日・atmである、項目1に記載の半導体装置。
[11]
前記酸素透過度が、450~7000cm
3/m
2・日・atmである、項目1に記載の半導体装置。
[12]
前記酸素透過度が、500~7000cm
3/m
2・日・atmである、項目1に記載の半導体装置。
[13]
前記絶縁層は、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)、ケイ素(Si)、
及びチタン(Ti)から成る群から選択される少なくとも1種を含む、項目1に記載の
半導体装置。
[14]
前記絶縁層は、ハロゲンを含まない、項目1に記載の半導体装置。
[15]
前記絶縁層は、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から成る群から選択される少なくとも1種を含む、項目1に記載の半導体装置。
[16]
前記絶縁層が、ポリイミドを含み、かつ、全反射測定法(ATR法)にてIRスペクトル測定を行った場合の、1380cm
-1付近のピーク高さと、1500cm
-1付近のピーク高さと、のピーク比(1380cm
-1付近ピーク高さ/1500cm
-1付近ピーク高さ)が0.2~2.5である、項目1に記載の半導体装置。
[17]
前記半導体装置は、前記半導体チップを保護する保護層を任意に備え、
前記半導体装置が前記保護層を備える場合、前記保護層は、前記半導体チップと、
前記絶縁層と、の間に配される、項目1に記載の半導体装置。
[18]
前記保護層は、前記半導体チップと、前記絶縁層と、の少なくとも一方に接する、項目17に記載の半導体装置。
[19]
前記保護層には、孔が形成されており、
前記孔を通じて、前記半導体チップと、前記半導体チップに電気的に接続される配線と、が電気的に接続されている、項目17に記載の半導体装置。
[20]
前記保護層における、前記半導体チップ側の面のうち、前記孔に由来する開口面積の割合が半分未満である、項目19に記載の半導体装置。
[21]
前記保護層は、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から成る群から選択される少なくとも1種を含む、項目17に記載の半導体装置。
[22]
前記保護層が、ポリイミドを含み、かつ、全反射測定法(ATR法)にてIRスペクトル測定を行った場合の、1380cm
-1付近のピーク高さと、1500cm
-1付近のピーク高さと、のピーク比(1380cm
-1付近ピーク高さ/1500cm
-1付近ピーク高さ)が1.2~2.5である、項目17に記載の半導体装置。
[23]
前記保護層及び前記絶縁層の少なくとも一方は、以下の一般式(1):
【化1】
(式中、X
1は、テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基であり、Y
1は、ジア
ミンに由来する2価の有機基であり、そしてmは、1以上の整数である。)
の構造を含むポリイミドを含む、項目17に記載の半導体装置。
[24]
前記一般式(1)中のX
1が、芳香族環を含む4価の有機基であり、
前記一般式(1)中のY
1が、芳香族環を含む2価の有機基である、項目23に記載の半導体装置。
[25]
前記一般式(1)中のX
1は、下記一般式(2)~一般式(5):
【化2】
【化3】
【化4】
(式中、R
9は
、酸素原子、硫黄原子又は2価の有機基である。)
【化5】
で表される少なくとも1つの構造を含む、項目23に記載の半導体装置。
[26]
前記一般式(1)中のX
1は、下記一般式(6):
【化6】
で表される構造を含む、項目25に記載の半導体装置。
[27]
前記一般式(1)中のY
1は、下記一般式(7)~一般式(9):
【化7】
(式中、R
10、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基又は水酸基であり、互いに同一でも異なってもよい。)
【化8】
(式中、R
14~R
21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の有機基又は水酸基であり、互いに同一でも異なってもよい。)
【化9】
(式中、R
22は、2価の基又は酸素原子であり、R
23~R
30は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基又は水酸基であり、互いに同一でも異なってもよく、kは、1~3の整数であり、kが2又は3のときのR
22、R
23、R
24,R
27、R
28は、互いに同一でも異なってもよい。)
で表される少なくとも1つの構造を含む、項目23に記載の半導体装置。
[28]
前記式(1)中のY
1は、下記一般式(10):
【化10】
で表される構造を含む、項目23に記載の半導体装置。
[29]
前記絶縁層が、以下の一般式(11):
【化11】
(式中、U及びVは、それぞれ独立して、2価の有機基である。)
の構造を含む前記ポリベンゾオキサゾールを含む、項目15に記載の半導体装置。
[30]
前記一般式(11)のUは、炭素数1~30の2価の有機基である、項目29に記載の半導体装置。
[31]
前記一般式(11)のUは、炭素数1~8、かつ水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された鎖状アルキレン基である、項目29に記載の半導体装置。
[32]
前記一般式(11)のVは、炭素数1~40の2価の有機基である、項目29に記載の半導体装置。
[33]
前記一般式(11)のVは、炭素数1~20の2価の鎖状脂肪族基である、項目29に記載の半導体装置。
[34]
前記一般式(11)のVは、芳香族基を含む2価の有機基である、項目29に記載の半導体装置。
[35]
前記一般式(11)のVは、下記一般式(7)~一般式(9):
【化12】
(式中、R
10、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数が1~5の
1価の脂肪族基であり、互いに同一でも異なってもよい。)
【化13】
(式中、R
14~R
21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の
1価の有機基であり、互いに同一でも異なってもよい。)
【化14】
(式中、R
22は、2価の基又は酸素原子であり、R
23~R
30は、それぞれ独立して、水素
原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基であり、互いに同一でも異なって
もよく、kは、1~3の整数であり、kが2又は3のときのR
22、R
23、R
24,R
27、R
28は、互いに同一でも異なってもよい。)
で表される少なくとも1つの構造を含む、項目29に記載の半導体装置。
[36]
前記一般式(11)のVは、下記一般式(10):
【化15】
で表される構造を含む、項目29に記載の半導体装置。
[37]
前記フェノール性水酸基を有するポリマーが、ノボラック型フェノール樹脂を含む、項目15に記載の半導体装置。
[38]
前記フェノール性水酸基を有するポリマーが、不飽和炭化水素基を有しないフェノール樹脂と、不飽和炭化水素基を有する変性フェノール樹脂と、を含む、項目15に記載の半導体装置。
[39]
前記絶縁層は、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層とは異なる組成を有する第2の絶縁層と、を含む、項目1に記載の半導体装置。
[40]
前記半導体装置が、ファンアウト型の、ウェハレベルチップサイズパッケージ型の半導体装置である、項目1~39のいずれか1項に記載の半導体装置。
[41]
半導体チップを用意する第1工程と、
用意した前記半導体チップを、該半導体チップの少なくとも一部が露出するように封止材で覆う第2工程と、
平面視で前記半導体チップよりも面積が大きい再配線層を、前記半導体チップの前記露出する面側に形成する第3工程と、を含む、
半導体装置の製造方法であって、
前記再配線層が、酸素透過度が150~7000cm
3/m
2・日・atmである絶縁層を含む、半導体装置の製造方法。
[42]
前記絶縁層を、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から成る群から選択される少なくとも1種を形成可能な感光性樹脂組成物で形成する、項目41に記載の半導体装置の製造方法。
[43]
前記第2工程は、
前記半導体チップに保護層を形成する工程と、
前記保護層を形成した前記半導体チップを、該保護層の少なくとも一部が露出するように封止材で覆う工程と、を含み、
前記第3工程は、
前記再配線層を、前記保護層側に形成する工程を含む、項目41又は42に記載の半導体装置の製造方法。
[44]
前記保護層を、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から成る群から選択される少なくとも1種を形成可能な感光性樹脂組成物で形成する、項目43に記載の半導体装置の製造方法。
[45]
半導体チップと、
前記半導体チップを、その少なくとも一部が露出するように覆う封止材と、
前記半導体チップにおける、前記封止材によって覆われていない面側に配され、かつ、平面視で前記半導体チップよりも面積が大きい再配線層と、を備える半導体装置における、前記再配線層の形成に使用するための絶縁層であって、
酸素透過度が150~7000cm
3/m
2・日・atmである、絶縁層。
[46]
半導体チップと、
半導体チップを、その少なくとも一部が露出するように覆う封止材と、
を備える半導体チップにおける、前記封止材によって覆われていない面側に配され、かつ、平面視で前記半導体チップよりも面積が大きい再配線層において、
前記半導体チップに電気的に接続される配線と、
前記配線に接し、かつ、酸素透過度が150~7000cm
3/m
2・日・atmである絶縁層と、を含む、再配線層。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絶縁層において微細なビアホールを形成できること、絶縁不良を生じ
ないこと、及び絶縁層と配線の信頼性試験後の密着性を確保できること、の全てを達成可
能な半導体装置、及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、上記半導体装置を実現可能な、絶縁層及び再配線層を提供する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の半導体装置の構成例を示す、断面模式図である。
【
図2】本実施形態の半導体装置の構成例を示す、平面模式図である。
【
図3】本実施形態の半導体装置の、製造工程の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する。)について、図面を参照して説明する。本発明は、以下の実施形態のみに限定されず、その要旨の範囲内で種々変形して実施可能である。本明細書中、段階的に記載されている数値範囲では、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換わってよく、また、実施例における対応する値に置き換わってよい。 図面に示される縮尺、形状及び長さ等は、明確性を更に図るため、誇張して示されている場合がある。
【0012】
[実施形態1]
≪半導体装置≫
図1は、半導体装置1の構成例を示す、断面模式図であり、
図2は、半導体装置1の構成例を示す、平面模式図である。る。図示するように、半導体装置(半導体IC)1は、
半導体チップ2と、
半導体チップ2を、その少なくとも一部が露出するように覆う封止材と、
半導体チップ2における、封止材によって覆われていない面側に配され、かつ、平面視で半導体チップ2よりも面積が大きい再配線層4と、を備え、
再配線層4が、半導体チップ2に電気的に接続される配線5と、酸素透過度が150~7000cm
3/m
2・日・atmである絶縁層(以下、「層間絶縁膜」と称する場合がある。)6と、を含む。
【0013】
半導体チップ2は、複数の半導体チップ(チップ2a)を含んで構成されてよい。
図1では、面方向(
図1中、A方向に対して垂直な方向)に沿って複数のチップ2aが並列して配置されている。半導体チップ2は、シリコン等の半導体から構成されており、内部に回路が形成されている。半導体チップ2が複数のチップ2aを含む場合、各チップ2aの構成は、同一でも異なってもよい。
【0014】
再配線層4は、平面視(
図1中、A矢視)にて半導体チップ2よりも大きく形成されている。すなわち、本実施形態の半導体装置1は、ファンナウト(Fan-Out)型の、ウェハレベルチップサイズパッケージ(WLCSP)型の半導体装置である。
【0015】
〔再配線層〕
再配線層4は、配線5と、絶縁層6と、を有して構成されている。具体的に、再配線層4は、半導体チップ2に設けられた複数の端子2aに電気的に接続される複数の配線5と、配線5の間を埋める絶縁層6と、を有して構成されている。端子2aと配線5は電気的に接続されている。配線5の一端が端子2aに接続され、他端が外部接続端子7に接続されている。端子2aと外部接続端子7の間の配線5が、絶縁層6に覆われている。
【0016】
再配線層4における絶縁層6は、3層以上の層構造を有している。これによれば、各絶縁層、ひいては、最終的に得られる再配線層4の平坦性を確保し易くなる。再配線層4における絶縁層6は、9層以下でよい。
ここで、本実施形態における「再配線層」は、プリント配線板を含まない。
【0017】
再配線層4の膜厚は、3~30μm程度である。再配線層4の膜厚は1μm以上でよく、5μm以上でよく、10μm以上でよい。また、再配線層4の膜厚は40μm以下でよく、30μm以下でよく、20μm以下でよい。
【0018】
ここで、
図2には、半導体装置1を平面視(
図1中、A矢視)したときの態様が図示されている。ただ、封止材3の図示は省略されている。
半導体装置1は、平面視で、再配線層4の面積S1が半導体チップ2の面積S2よりも大きくなるように構成されている。再配線層4の面積S1は、外部接続端子の数を多くする観点から、半導体チップ2の面積S2の1.05倍以上が好ましく、1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、1.3倍以上が特に好ましい。また、再配線層4の面積S1は、半導体チップ2の面積S2の50倍以下でよく、25倍以下でよく、10倍以下でよく、5倍以下でよい。なお、平面視で、半導体チップ2に重なる再配線層4の部分の面積も、再配線層4の面積S1に含まれる。
【0019】
半導体チップ2、及び再配線層4の外形は、同じでもよく異なってもよい。
図2では、半導体チップ2及び再配線層4の外形が共に矩形の相似形状であるが、形状は、それぞれ矩形以外であってよい。
【0020】
(絶縁層、及び配線)
絶縁層6は、配線5との意図しない導通を防止する観点から、絶縁性が高い部材であることが好ましい。配線5は、導電性が高い部材であればよく、一般に銅が使用される。
【0021】
絶縁層6は、酸素透過度が150~7000cm3/m2・日・atmである。酸素透過度は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
本実施形態において、酸素透過度が上記範囲であれば、絶縁層において微細なビアホールを形成できること、絶縁不良を生じないこと、及び絶縁層と配線の信頼性試験後の密着性を確保できること、の全てを達成可能である。この理由は明らかではないが、本発明者らは以下のように考えている。
信頼性試験は、例えば、130℃、85%相対湿度(RH)といった、高温高湿下で実施される。その際、水分、及び酸素原子が絶縁層を浸透すると、これが原因となり配線の酸化が進み、その結果、配線が腐食する傾向にある。そのため、電圧印加とともにマイグレーションが起こることにより、デンドライト等が発生し、そして、短絡(絶縁不良)に至る。また、配線として銅配線が用いられる場合、信頼性試験時に銅イオンが絶縁層に拡散することにより、銅配線と絶縁層に空隙ができ、その結果、密着性が低下する。
そして、この場合、微細なビアホールを形成すること(良好な現像性を得ること)が難しい。
従って、酸素透過度(cm3/m2・日・atm)を7000cm3/m2・日・atm以下に制御することにより、水分、及び酸素の透過を抑えることができ、これにより、上記の現象を抑制することができる。酸素透過度は、6500以下が好ましく、6000以下がより好ましく、5500以下が特に好ましい。
【0022】
他方、酸素透過度が過度に低い場合、感光性樹脂組成物に対する露光光の透過率が低い。このため、ビアホールを形成するとき、すなわち、該組成物の塗膜に露光光を照射するとき、該塗膜の底部まで光が十分に到達しない傾向にある。そのため、酸素透過度(cm3/m2・日・atm)を150以上とすることにより、良好な現像性が得られ、ひいては、良好な解像度が得られる。酸素透過度(cm3/m2・日・atm)は、200以上が好ましく、250以上がより好ましく、300以上が特に好ましく、350以上が一層好ましい。
本実施形態に係る酸素透過度は、適用する半導体装置の構成によって適宜選択可能である。例えば、信頼性の要求が厳しい半導体装置の場合、酸素透過度の低い絶縁層を用いることが好ましい。その場合、絶縁層の酸素透過度(cm3/m2・日・atm)は、150~450が好ましく、150~400がより好ましく、150~350が特に好ましく、150~300が一層好ましい。
また、解像度の要求が厳しい半導体装置の場合、酸素透過度の高い絶縁層を用いることが好ましい。その場合、絶縁層の酸素透過度(cm3/m2・日・atm)は、350~7000が好ましく、400~7000がより好ましく、450~7000が特に好ましく、500~7000が一層好ましい。
【0023】
酸素透過度は、絶縁層に含まれるポリマー構造、及び/又は絶縁層に添加する添加剤の量と種類、等を選択することにより、上記範囲内に設計することができる。例えば、酸素透過度を大きくする方法として、自由体積の大きな化合物をポリマー構造中に導入すること、また、そのような化合物を添加剤として絶縁層中に導入すること等が挙げられる。例えば、ポリイミドの場合であれば、原料モノマーとして、フッ素系モノマー(フッ素原子を含む、酸二無水物、及び/又はジアミン)を選択することができる。また、原料モノマーとして、フルオレン骨格を有する、酸二無水物、及び/又はジアミンを用いることもできる。
酸素透過度を小さくする方法として、組成物の塗膜をキュアする中で揮発し、かつ、絶縁層におけるポリマー同士のパッキングを促進し得る可塑剤(例えば、フタル酸ジシクロヘキシル、ジフェニルフタル酸、ジ-2-エチルヘキシルトリメリット酸ジシクロヘキシル、ピロメリット酸ジシクロヘキシル、アジピン酸ジシクロヘキシル)を使用して絶縁層を作製すること等が挙げられる。
【0024】
絶縁層6のヤング率は、現像性の観点から、5.0GPa以下が好ましく、4.5GPa以下がより好ましく、4.1GPa以下、又は4.0GPa以下が特に好ましい。また、配線を保護する観点から、2.0GPa以上が好ましく、2.5GPa以上がより好ましく、3.0GPa以上、又は3.2GPa以上が特に好ましい。
【0025】
再配線層4中の絶縁層6は、上記のとおり多層であってよい。例えば、再配線層4は、再配線層4を断面視したとき、第1の絶縁層と、第2の絶縁層と、第1の絶縁層及び第2の絶縁層とは異なり、かつ、第1の絶縁層と第2の絶縁層の間に設けられる中間層を含んでよい。中間層は、例えば、配線5である。
【0026】
第1の絶縁層と第2の絶縁層の組成、ヤング率、及び膜厚は、それぞれ、同じでも異なってもよい。第1の絶縁層と第2の絶縁層とが異なる構成を有すると、各絶縁層に異なる性質を持たせることが可能となる。一態様において、絶縁層6は、第1の絶縁層と、第1の絶縁層とは異なる組成を有する第2の絶縁層と、を含む。
【0027】
絶縁層6は、例えば、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から成る群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これによれば、本実施形態による効果を奏し易くなる。
【0028】
絶縁層6の形成に用いる樹脂組成物は、感光性の樹脂組成物であればよく、例えば、ポリイミド前駆体と、ポリベンゾオキサゾール前駆体と、フェノール性水酸基を有するポリマーと、からから成る選択される少なくとも1種を含む、感光性樹脂組成物であることが好ましい。かかる感光性樹脂組成物は、ネガ型でもポジ型でもよい。また、絶縁層6の形成に用いる樹脂組成物は、液体状でもフィルム状でもよい。
【0029】
本実施形態では、感光性樹脂組成物を露光、及び現像した後のパターンを「レリーフパターン」と言い、レリーフパターンを加熱硬化(キュア)したものを「硬化レリーフパターン」と言う。この硬化レリーフパターンが、保護層8、及び絶縁層6を構成する。
本実施形態において、絶縁層は、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)、ケイ素(Si)、及びチタン(Ti)から成る群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これによれば、本実施形態の効果を奏し易い。
ここで、本実施形態の絶縁層6は、ハロゲンを含まない。ハロゲン等の、自由体積の大きな官能基が導入されないことで、絶縁層6の耐薬品性の低下を抑制し易い。
【0030】
(封止材)
封止材3は、半導体チップ2の表面(側面及び上面)を覆うとともに、平面視(
図1中、A矢視)にて、半導体チップ2の領域よりも大きい面積にて形成されている。
【0031】
封止材3は、耐熱性、及び絶縁層6との密着性の観点から、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、封止材3は、半導体チップ2、及び再配線層4に接していることが好ましい。特に、封止材3は、再配線層4における絶縁層6に接していることが好ましい。これにより、半導体チップ2から再配線層4に至る封止性を効果的に向上させ易い。
【0032】
封止材3は、単層でも複数層でもよい。封止材3が複数層の場合、かかる複数層の各材料は、互いに同種の材料でも異なる材料でもよい。
【0033】
(保護層)
保護層8は、半導体チップ2を保護する。物理的な衝撃に対して半導体チップ2を保護する観点から、保護層8のヤング率は、4.0GPa以上が好ましく、4.5GPa以上がより好ましく、5GPa以上が特に好ましい。保護層を感光性樹脂組成物から構成する場合、現像性の観点から、保護層8のヤング率は、9.0GPa以下が好ましく、8.5GPa以下がより好ましく、8.0GPa以下が特に好ましい。ヤング率は、引張試験又はナノインデンテーション試験等により算出することができる。
【0034】
保護層8は、半導体チップ2における、封止材3により覆われていない面に設けられている。封止材3により覆われた側から半導体チップ2を平面視(
図1中、A矢視)したと仮定した場合、半導体チップ2の陰になり、ゆえに、保護層8は観察されない。
【0035】
保護層8は、半導体チップ2と、絶縁層6と、の少なくとも一方に接している。これによれば、半導体チップ2を好適に保護し易くなる。また、このような構成は、保護層8側及び絶縁層6側の密着性の向上が望まれ易い態様であり、そして、半導体装置1は、そのような態様を有する場合においても、保護層8側及び絶縁層6側の密着性の向上を図ることができる。特に、半導体装置1では、保護層8は、半導体チップ2と絶縁層6の両方に接しており、上記の観点からより好ましい態様である。
半導体装置1では省略されているが、本実施形態の効果が得られる限り、半導体チップ2と絶縁層6の間に他の部材が介在してよい。
【0036】
保護層8には、孔8aが形成されており、孔8aを通じて、半導体チップ2側と、配線5側と、が電気的に接続されている。これによれば、半導体チップ2側と、配線5側と、の電気的接続を確保しつつ、かつ、半導体チップ2を更に保護し易くなる。保護層8の孔8aは、半導体チップ2の端子2aに対応して複数設けられており、複数の孔8aにそれぞれ端子2aが挿設されている。
【0037】
半導体装置1では、保護層8における、半導体チップ2側の面のうち、孔8aに由来する開口面積の割合が半分未満である。これによれば、半導体チップ2を保護するための保護面積を確保でき、半導体チップ2を更に保護し易くなる。ここで「開口面積」は、半導体チップ2側の面の、開口入口の面積の合計を言う。
【0038】
保護層は、例えば、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から成る群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0039】
保護層8の形成に用いる樹脂組成物は、感光性の樹脂組成物であればよく、例えば、ポリイミド前駆体と、ポリマー構造中にポリイミド部位及びポリイミド前駆体部位を有するポリマーと、溶剤可溶性ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾール前駆体と、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から成る群から選択される少なくとも1種を含む、感光性樹脂組成物であることが好ましい。かかる感光性樹脂組成物は、ネガ型でもポジ型でもよい。また、保護層8の形成に用いる樹脂組成物は、液体状でもフィルム状でもよい。
【0040】
<ポリイミド前駆体>
(A)感光性樹脂
ポリイミド前駆体の作製に用いる感光性樹脂(A)としては、ポリアミド、ポリアミド酸エステル等を挙げることができる。ポリアミド酸エステルとしては、下記一般式(12):
【化16】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~30の飽和脂肪族基、芳香族基、炭素炭素不飽和二重結合を有する一価の有機基、及び炭素炭素不飽和二重結合を有する一価のイオンであり、X
1は、テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基であり、Y
1は、ジアミンに由来する2価の有機基であり、そして、mは1以上の整数である。)
で表される繰り返し単位を含む、ポリアミド酸エステルを用いることができる。式中、mは、2以上が好ましく、5以上がより好ましい。
【0041】
上記式(12)中、R
1及びR
2が一価の陽イオンとして存在するとき、Oは、負の電荷を帯びている、すなわち、-O-として存在する。X
1とY
1は、水酸基を含んでよい。
R
1及びR
2は、下記一般式(13):
【化17】
(式中、R
3、R
4及びR
5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5の有機基であり、そしてm1は、1~20の整数である。)
で表される1価の有機基であることがより好ましく、また、下記一般式(14):
【化18】
(式中、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5の有機基であり、そしてm2は、1~20の整数である。)
で表される、1価の有機基の末端にアンモニウムイオンを有する構造であることもより好
ましい。
【0042】
一般式(12)で表されるポリアミド酸エステルは、複数混合されてよい。また、一般式(12)で表されるポリアミド酸エステル同士を共重合させたポリアミド酸エステルが用いられてよい。
【0043】
X
1は、ヤング率、及び耐薬品性の観点から、芳香族基を含む4価の有機基であることが好ましい。具体的には、X
1は、下記一般式(2)~一般式(5):
【化19】
【化20】
【化21】
(式中、R
9は
、酸素原子、硫黄原子又は2価の有機基である。)
【化22】
で表される少なくとも1つの構造を含む、4価の有機基であることが好ましい。
【0044】
一般式(4)中のR9は、例えば、炭素数1~40の2価の有機基、及びハロゲン原子であってもよい。また、R9は、水酸基を含んでよい。
【0045】
一般式(1)中のX
1は、現像性の観点から、下記一般式(6):
【化23】
で表される構造を含む、4価の有機基が特に好ましい。
【0046】
Y
1は、ヤング率、及び耐薬品性の観点から、芳香族基を含む2価の有機基であることが好ましい。具体的に、Y
1は、下記一般式(7)~一般式(9):
【化24】
(式中、R
10、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基又は水酸基であり、互いに同一でも異なってもよい。)
【化25】
(式中、R
14~R
21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の有機基又は水酸基であり、互いに同一でも異なってもよい。)
【化26】
(式中、R
22は、2価の有機基又は酸素原子であり、R
23~R
30は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基又は水酸基であり、互いに同一でも異なってもよく、kは、1~3の整数であり、kが2又は3のときのR
22、R
23、R
24,R
27、R
28は、互いに同一でも異なってもよい。)
で表される少なくとも1つの構造を含む、2価の有機基であることが好ましい。
【0047】
一般式(9)中のR22は、例えば、炭素数1~40の2価の有機基やハロゲン原子である。
【0048】
現像性の観点から、Y
1は、下記一般式(10):
【化27】
で表される構造を含む、2価の有機基が特に好ましい。
【0049】
上記ポリアミド酸エステルにおいて、繰り返し単位中のX1は、原料として用いるテトラカルボン酸二無水物に由来し、また、Y1は原料として用いるジアミンに由来する。
【0050】
原料として用いるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸(PMDA)、ジフェニルエーテル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(4,4’-オキシジフタル酸二無水物:ODPA)、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ジフェニルスルホン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルメタン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-無水フタル酸)プロパン、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物(BPADA)等を挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を用いてもよい。
【0051】
原料として用いるジアミンとしては、例えば、p-フェニレンジアミン(PPD)、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル(m-TB)4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス〔4-(4-
アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、オルト-トリジンスルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2、2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン(MBAPP)等が挙げられる。これらのベンゼン環上の水素原子の一部は、置換されたものであってよい。これらは、単独でも2種以上を用いてもよい。
【0052】
酸無水物として、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、フルオレン酸二無水物等を用いることで、絶縁層における酸素透過度を大きくすることができる傾向がある。
ジアミンとして、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等を用いることで、絶縁層における酸素透過度を大きくすることができる傾向がある。
【0053】
ポリアミド酸エステル(A)の合成においては、通常、後述するテトラカルボン酸二無水物のエステル化反応を行って得られたテトラカルボン酸ジエステルを、そのままジアミンとの縮合反応に付す方法が好ましく使用できる。
【0054】
上記のテトラカルボン酸二無水物のエステル化反応に用いるアルコール類は、オレフィン性二重結合を有するアルコールである。具体的には、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルアルコール、グリセリンジアクリレート、グリセリンジメタクリレート等が挙げられる。これらのアルコール類は、単独でも2種以上を用いてもよい。
【0055】
ポリアミド酸エステル(A)の具体的な合成方法に関しては、従来公知の方法を採用することができる。合成方法については、例えば、国際公開第00/43439号パンフレットに示されている方法を挙げることができる。すなわち、テトラカルボン酸ジエステルを、一度テトラカルボン酸ジエステルジ酸塩化物に変換し、そして、該テトラカルボン酸ジエステルジ酸塩化物とジアミンを塩基性化合物の存在下で縮合反応に付し、更に、ポリアミド酸エステルを製造する方法を挙げることができる。また、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを有機脱水剤の存在下で縮合反応に付す方法によってポリアミド酸エステルを製造する方法を挙げることができる。
【0056】
有機脱水剤の例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジエチルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、エチルシクロヘキシルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1-シクロヘキシル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等が挙げられる。
【0057】
ポリアミド酸エステル(A)の重量平均分子量は、6,000~150,000であることが好ましく、7000~50000がより好ましく、7,000~20,000がより好ましい。
【0058】
<ポリマー構造中にポリイミド部位とポリイミド前駆体部位を有するポリマー>
ポリマー構造中にポリイミド部位とポリイミド前駆体部位を有するポリマーとしては、部分的にポリイミド部位を有するポリイミド前駆体を用いることができる。かかる前駆体は、例えば、下記一般式(15):
【化28】
(式中、X
1、X
2及びX
3は、それぞれ独立して、炭素数6~40の4価の有機基であり、Y
1及びY
2は、それぞれ独立して、炭素数6~40の2価の有機基であり、n
1は、2~30の整数であり、n
2及びn
3は、それぞれ独立して、2~150の整数であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~40の1価の有機基であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4の内、少なくとも一つは、前述の一般式(13)又は(14)を含む構造である。)
で表される構造を含む。
【0059】
上記一般式(15)中、n2/(n2+n3)は、0.05≦n2/(n2+n3)≦0.95の範囲内であることが好ましい。平坦性の観点から、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.45以上が特に好ましい。解像度の観点から、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下が特に好ましい
式(15)中のX1、X2及びX3の好ましい範囲は、式(12)におけるX1の好ましい範囲と同様であり、式(15)中のY1及びY2の好ましい範囲は、式(12)におけるY1の好ましい範囲と同様である。
【0060】
<溶剤可溶性ポリイミド>
本実施形態の溶剤可溶性ポリイミドは、溶媒に可溶であればよい。溶剤可溶性ポリイミドは、下記式(1):
【化29】
(式中、X
1は、テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基であり、Y
1は、ジアミンに由来する2価の有機基であり、そしてmは、1以上の整数である。)
の構造を含むポリイミドを含むことが好ましい。
【0061】
式(1)中、X1は、上記に加え、炭素数6~40の4価の有機基でよく、Y1は、上記に加え、炭素数6~40の2価の有機基でよく、そしてmは、2以上が好ましく、5以上がより好ましい。例えば、式(1)中のX1は、芳香族環を含む4価の有機基であることが好ましく、Y1は、芳香族環を含む2価の有機基であることが好ましい。
【0062】
式(1)中のX1の好ましい範囲は、式(12)中のX1の好ましい範囲と同様であり、また、式(1)中のY1の好ましい範囲は、式(12)におけるY1の好ましい範囲と同様である。
本実施形態の溶剤可溶性ポリイミドは、解像度の観点から、その末端に、ラジカル反応性官能基を含むことが好ましい。
【0063】
(B1)光開始剤
保護層、及び絶縁層の形成に用いる樹脂組成物がネガ型の感光性樹脂組成物の場合、該組成物は光開始剤を有してよい。光開始剤(B1)としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、及びフルオレノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン等のアセトフェノン誘導体、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、及びジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、ベンジル、ベンジルジメチルケタール及び、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン誘導体、2,6-ジ(4’-ジアジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、及び2,6’-ジ(4’-ジアジドベンザル)シクロヘキサノン等のアジド類、1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(O-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニルプロパンジオン-2-(O-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニルプロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニルプロパンジオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム等のオキシム類、N-フェニルグリシン等のN-アリールグリシン類、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物類、芳香族ビイミダゾール類、並びにチタノセン類等が用いられる。これらのうち、光感度の観点から、上記オキシム類が好ましい。光開始剤(B1)は、単独でも2種以上が用いられてもよい。
【0064】
これらの光開始剤(B1)の添加量は、ポリアミド酸エステル(A)100質量部に対し、1~40質量部が好ましく、2~20質量部がより好ましい。光開始剤(B1)をポリアミド酸エステル(A)100質量部に対し1質量部以上添加することで、光感度に優れる傾向がある。また、40質量部以下添加することで、厚膜硬化性に優れる傾向がある。
【0065】
(B2)光酸発生剤
光酸発生剤(B2)は、光照射部のアルカリ水溶液可溶性を増大させる機能を有する。
保護層、及び絶縁層の形成に用いる樹脂組成物がポジ型の感光性樹脂の場合、該組成物は光酸発生剤を有してよい。光酸発生剤を有することにより、紫外線露光部に酸が発生し、このため、露光部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する。これにより、ポジ型感光性樹脂組成物として用いることができる。
【0066】
光酸発生剤(B2)としては、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。この中でも優れた溶解抑止効果を発現し、高感度のポジ型感光性樹脂組成物を得られる観点から、キノンジアジド化合物が好ましく用いられる。
【0067】
(C)添加剤
絶縁層の酸素透過度は、上記のとおり、絶縁層におけるポリマー構造によって調節することができ、また、添加剤の種類又は量でも調節することができる。添加剤として、フッ素原子等のハロゲンを含む(メタ)アクリレート化合物を用いることで、酸素透過度を大きくすることができる傾向がある。このような化合物としては、例えば、メチル2-フルオロアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、1H、1H、3H-テトラフルオロプロピルアクリレート、1H、1H、5H-オクタフルオロペンチルアクリレート、1H、1H、7H-ドデカフルオロヘプチルアクリレート、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルアクリレート、1H、1H、3H-ヘキサフルオロブチルアクリレート等が挙げられる。
また、上記の他、酸素透過度を高めることができ得る化合物として、自由体積の大きい、フルオレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
添加剤として、可塑剤等の、加熱硬化時にポリマー同士のパッキングを向上させ得る化合物を用いることで、酸素透過度を小さくすることができる傾向がある。このような可塑剤として、フタル酸ジシクロヘキシルフタル酸、ジフェニルフタル酸、ジ-2-エチルヘキシルトリメリット酸ジシクロヘキシル、ピロメリット酸ジシクロヘキシル、アジピン酸ジシクロヘキシル等を挙げることができる。
【0069】
(D)溶媒
溶媒としては、各成分を溶解可能又は分散可能なものであればよい。例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。これらの溶媒は、塗布膜厚、粘度に応じて、(A)感光性樹脂100質量部に対し、30~1500質量部の範囲で用いることができる。
【0070】
(E)その他
感光性樹脂(A)は、架橋剤を有してよい。架橋剤としては、ポリイミド前駆体組成物を露光、現像した後、加熱硬化する際に、感光性樹脂(A)を架橋し得るか、又は架橋剤自身が架橋ネットワークを形成し得る架橋剤を用いることができる。架橋剤を用いることで、硬化膜(絶縁層)の耐熱性及び耐薬品性を更に強化することができる。
【0071】
その他、感光性樹脂(A)は、光感度を向上させるための増感剤、基材との接着性向上のための接着助剤等を含んでよい。
【0072】
(露光、及び現像)
ポリイミド前駆体を露光した後、不要部分を現像液で洗い流す。使用する現像液は、溶媒で現像を行うポリイミド前駆体の場合には、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン(GBL)、酢酸エステル類等の良溶媒、これら良溶媒と低級アルコール、水、芳香族炭化水素等の貧溶媒との混合溶媒等が用いられる。現像後は、必要に応じて貧溶媒等でリンス洗浄を行う。
【0073】
アルカリ性水溶液で現像を行うポリイミド前駆体の場合には、水酸化テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。
【0074】
(熱硬化)
現像後、露光後のポリイミド前駆体を加熱することにより、ポリイミド前駆体を閉環でき、これにより、ポリイミドを形成することができる。このポリイミドが、硬化レリーフパターン、すなわち、絶縁層となる。
【0075】
ポリイミド前駆体の熱硬化のための加熱温度について、一般的に加熱硬化温度が高いほど、ヤング率が大きくなる傾向にある。本実施形態の絶縁層のヤング率を所望の値にする観点から、当該加熱温度は、160℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましく、200℃以上が特に好ましい。他部材への影響の観点から、400℃以下が好ましい。
【0076】
<ポリイミド>
上記ポリイミド前駆体から形成される硬化レリーフパターンの構造、例えば、保護層及び絶縁層の少なくとも一方は、以下の一般式(1):
【化30】
(式中、X
1は、テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基であり、Y
1は、ジアミンに由来する2価の有機基であり、そしてmは、1以上の整数である。)
の構造を含むポリイミドを含む。一般式(12)中の好ましいX
1、Y
1、mは、同じ理由により、一般式(1)で表されるポリイミドにおいても好ましい。
【0077】
アルカリ可溶性ポリイミドの場合は、ポリイミドの末端を水酸基にしてもよい。
本実施形態の保護層がポリイミドを含む場合、全反射測定法(Attenuated Total Reflection;ATR法)にてIRスペクトル測定を行った場合の、1380cm-1付近のピーク高さと、1500cm-1付近のピーク高さと、のピーク比(1380cm-1付近ピーク高さ/1500cm-1付近ピーク高さ)が1.2~2.5であることが好ましい。耐薬品性の観点で1.3以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、1.5以上が特に好ましい。現像性の観点で、2.4以下が好ましく、2.3以下がより好ましく、2.2以下が特に好ましい。
ここで言う「1380cm-1付近のピーク高さ」は、例えば、1330~1430cm-1の範囲内での最大ピーク高さであり、ここで言う「1500cm-1付近のピーク高さ」は、例えば、1450~1550cm-1の範囲内での最大ピーク高さである。
【0078】
本実施形態の絶縁層がポリイミドを含む場合、全反射測定法(Attenuated Total Reflection;ATR法)にてIRスペクトル測定を行った場合の、1380cm-1付近のピーク高さと、1500cm-1付近のピーク高さと、のピーク比(1380cm-1付近ピーク高さ/1500cm-1付近ピーク高さ)が0.2~2.5であることが好ましい。耐薬品性の観点で0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上が特に好ましい。現像性の観点で、1.0以下が好ましく、0.7以下がより好ましく、0.6以下が特に好ましい。
ここで言う「1380cm-1付近のピーク高さ」は、例えば、1330~1430cm-1の範囲内での最大ピーク高さであり、ここで言う「1500cm-1付近のピーク高さ」は、例えば、1450~1550cm-1の範囲内での最大ピーク高さである。
【0079】
<ポリベンゾオキサゾール前駆体>
(A)感光性樹脂
ポリベンゾオキサゾール前駆体に用いる感光性樹脂としては、下記一般式(11A):
【化31】
(式中、Y
2とY
3は、2価の有機基である。)
で表される繰り返し単位を含む、ポリ(o-ヒドロキシアミド)を用いることができる。
【0080】
絶縁層と封止材の密着性の観点から、Y2は、炭素数1~30の2価の有機基であることが好ましく、炭素数1~15の鎖状アルキレン基(但し、鎖状アルキレンの水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい)がより好ましく、炭素数1~8、かつ水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された鎖状アルキレン基が特に好ましい。
【0081】
また、絶縁層と封止材の密着性の観点から、Y3は、芳香族基を含む2価の有機基であることが好ましく、より好ましくは下記一般式(7)~一般式(9):
【0082】
【化32】
(式中、R
10、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基であり、互いに同一でも異なってもよい。)
【0083】
【化33】
(式中、R
14~R
21は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の有機基であり、互いに同一でも異なってもよい。)
【0084】
【化34】
(式中、R
22は、2価の有機基又は酸素原子であり、R
23~R
30は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1~5の1価の脂肪族基であり、互いに同一でも異なってもよく、kは、1~3の整数であり、kが2又は3のときのR
22、R
23、R
24,R
27、R
28は、互いに同一でも異なってもよい。)
で表される少なくとも1つの構造を含む、2価の有機基であることが好ましい。
【0085】
一般式(9)中のR22は、例えば、炭素数1~40の2価の有機基、及びハロゲン原子でもよい。
【0086】
絶縁層と封止材との密着性の観点から、Y
3は、下記一般式(10):
【化35】
で表される構造を含む、2価の有機基が特に好ましい。
【0087】
また、絶縁層と封止材の密着性の観点から、Y3は、炭素数1~40の2価の有機基が好ましく、炭素数1~40の2価の鎖状脂肪族基がより好ましく、炭素数1~20の2価の鎖状脂肪族基が特に好ましい。
【0088】
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、一般的にジカルボン酸誘導体とヒドロキシ基含有ジアミン類とから合成できる。具体的には、ジカルボン酸誘導体をジハライド誘導体に変換後、ジアミン類との反応を行うことにより合成できる。ジハライド誘導体としては、ジクロリド誘導体が好ましい。
【0089】
ジクロリド誘導体は、ジカルボン酸誘導体にハロゲン化剤を作用させて合成することができる。ハロゲン化剤としては、通常のカルボン酸の酸クロリド化反応に使用される、塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リン等が使用できる。
【0090】
ジクロリド誘導体を合成する方法としては、ジカルボン酸誘導体と上記ハロゲン化剤を溶媒中で反応させる方法、過剰のハロゲン化剤中で反応を行った後、過剰分を留去する方法等で合成できる。
【0091】
ジカルボン酸誘導体に使用するジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル(4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸)、4,4’-ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(p-カルボキシフェニル)プロパン、5-tert-ブチルイソフタル酸、5-ブロモイソフタル酸、5-フルオロイソフタル酸、5-クロロイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ジ-n-ブチルマロン酸、スクシン酸、テトラフルオロスクシン酸、メチルスクシン酸、2,2-ジメチルスクシン酸、2,3-ジメチルスクシン酸、ジメチルメチルスクシン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、2-メチルグルタル酸、3-メチルグルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、3,3-ジメチルグルタル酸、3-エチル-3-メチルグルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、3-メチルアジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6-テトラメチルピメリン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9-ノナン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、ヘンエイコサン二酸、ドコサン二酸、トリコサン二酸、テトラコサン二酸、ペンタコサン二酸、ヘキサコサン二酸、ヘプタコサン二酸、オクタコサン二酸、ノナコサン二酸、トリアコンタン二酸、ヘントリアコンタン二酸、ドトリアコンタン二酸、ジグリコール酸、ジシクロペンタジエンカルボン酸等が挙げられる。これらを混合して使用してもよい。
【0092】
ヒドロキシ基含有ジアミンとしては、例えば、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらを混合して使用してもよい。
【0093】
(B2)光酸発生剤
光酸発生剤(B2)としては、ジアゾナフトキノン化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。このうち、ジアゾナフトキノン化合物は、感度が高く好ましい。
【0094】
(C)添加剤
添加剤(C)の好ましい種類、及び量は、<ポリイミド>に関連して記載した内容と同じである。
【0095】
(D)溶媒
溶媒(D)としては、各成分を溶解可能又は分散可能なものであればよい。
【0096】
(E)その他
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、架橋剤、増感剤、接着助剤、熱酸発生剤等を含むことができる。ポリベンゾオキサゾール前駆体は、上記の他、必要な添加剤を含んでよい。
【0097】
(露光、及び現像)
ポリベンゾオキサゾール前駆体を露光した後、不要部分を現像液で洗い流す。使用する現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられる。
【0098】
上記では、ポジ型のポリベンゾオキサゾール前駆体を中心に説明したが、ネガ型のポリベンゾオキサゾール前駆体であってもよい。
【0099】
(熱硬化)
現像後、ポリベンゾオキサゾール前駆体を加熱することにより、ポリベンゾオキサゾール前駆体を閉環でき、これにより、ポリベンゾオキサゾールを形成することができる。このポリベンゾオキサゾールが硬化レリーフパターン、すなわち、絶縁層6となる。
【0100】
ポリベンゾオキサゾール前駆体の熱硬化のための加熱温度は、他部材への影響の観点から、低い温度であることが好ましい。当該加熱温度は、250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましく、200℃以下がより好ましく、180℃以下が特に好ましい。
【0101】
<ポリベンゾオキサゾール>
上記ポリベンゾオキサゾール前駆体から形成される硬化レリーフパターンの構造は、下記一般式(11):
【化36】
(式中、U及びVは、それぞれ独立して、2価の有機基である。)
の構造を含む前記ポリベンゾオキサゾールを含む。
【0102】
一般式(11)中のUは、一般式(11A)中のY2と同じでよく、一般式(11)中のVは、一般式(11A)中のY3と同じでよい。一般式(11A)中の好ましいY2、Y3は、同じ理由により、一般式(11)中のU、及びVにおいても好ましい。
【0103】
<フェノール性水酸基を有するポリマー>
(A)感光性樹脂
本実施形態のフェノール性水酸基を有するポリマーは、分子中にフェノール性水酸基を有する樹脂であり、そして、アルカリに対して可溶である。具体例としては、ポリ(ヒドロキシスチレン)等のフェノール性水酸基を有するモノマー単位を含むビニル重合体、フェノール樹脂、ポリ(ヒドロキシアミド)、ポリ(ヒドロキシフェニレン)エーテル、ポリナフトールが挙げられる。
これらの中で、コストが安いことや硬化時の体積収縮が小さいことから、フェノール樹脂が好ましく、ノボラック型フェノール樹脂が特に好ましい。
【0104】
フェノール樹脂は、フェノール又はその誘導体とアルデヒド類との重縮合生成物である。重縮合は、酸又は塩基等の触媒存在下で行われる。酸触媒を用いた場合に得られるフェノール樹脂を特にノボラック型フェノール樹脂という。
【0105】
フェノール誘導体としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、ベンジルフェノール、アダマンタンフェノール、ベンジルオキシフェノール、キシレノール、カテコール、レゾルシノール、エチルレゾルシノール、ヘキシルレゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、パラロゾール酸、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシベンゼン)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニルイル)プロパン、ジヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。
【0106】
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ピバルアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、トリオキサン、グリオキザール、シクロヘキシルアルデヒド、ジフェニルアセトアルデヒド、エチルブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、グリオキシル酸、5-ノルボルネン-2-カルボキシアルデヒド、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルアルデヒド、サリチルアルデヒド、ナフトアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。
【0107】
(A)感光性樹脂は、(a)成分;不飽和炭化水素基を有しないフェノール樹脂と、(b)成分;不飽和炭化水素基を有する変性フェノール樹脂とを、含むものであることが好ましい。前記(b)成分は、フェノール性水酸基と多塩基酸無水物との反応によって更に変性されているものであることがより好ましい。
【0108】
また、(b)成分としては、機械特性(破断伸び、弾性率及び残留応力)をより向上できる観点から、炭素数4~100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0109】
(b)不飽和炭化水素基を有する変性フェノール樹脂は、一般に、フェノール又はその誘導体と不飽和炭化水素基を有する化合物(好ましくは炭素数が4~100のもの)(以下、単に「不飽和炭化水素基含有化合物」と称する場合がある。)との反応生成物(以下、「不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体」という。)と、アルデヒド類との縮重合生成物、又は、フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物との反応生成物である。
【0110】
ここでいうフェノール誘導体は、(A)感光性樹脂としてのフェノール樹脂の原料として上述したフェノール誘導体と同様のものを用いることができる。
【0111】
不飽和炭化水素基含有化合物の不飽和炭化水素基は、レジストパターンの密着性及び耐熱衝撃性の観点から、2以上の不飽和基を含むことが好ましい。また、樹脂組成物としたときの相溶性及び硬化膜の可とう性の観点からは、不飽和炭化水素基含有化合物は炭素数8~80のものが好ましく、炭素数10~60のものがより好ましい。
【0112】
不飽和炭化水素基含有化合物としては、例えば、炭素数4~100の不飽和炭化水素、カルボキシル基を有するポリブタジエン、エポキシ化ポリブタジエン、リノリルアルコール、オレイルアルコール、不飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸エステルである。好適な不飽和脂肪酸としては、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、α-リノレン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、イワシ酸及びドコサヘキサエン酸が挙げられる。これらの中でも特に、炭素数8~30の不飽和脂肪酸と、炭素数1~10の1価から3価のアルコールとのエステルがより好ましく、炭素数8~30の不飽和脂肪酸と3価のアルコールであるグリセリンとのエステルが特に好ましい。
【0113】
炭素数8~30の不飽和脂肪酸とグリセリンとのエステルは、植物油として商業的に入手可能である。植物油は、ヨウ素価が100以下の不乾性油、100を超えて130未満の半乾性油又は130以上の乾性油がある。不乾性油として、例えば、オリーブ油、あさがお種子油、カシュウ実油、さざんか油、つばき油、ひまし油及び落花生油が挙げられる。半乾性油として、例えば、コーン油、綿実油及びごま油が挙げられる。乾性油としては、例えば、桐油、亜麻仁油、大豆油、胡桃油、サフラワー油、ひまわり油、荏の油及び芥子油が挙げられる。また、これらの植物油を加工して得られる加工植物油を用いてもよい。
【0114】
上記植物油の中で、フェノール若しくはその誘導体又はフェノール樹脂と植物油との反応において、過度の反応の進行に伴うゲル化を防ぎ、歩留まりが向上する観点から、不乾性油を用いることが好ましい。一方、レジストパターンの密着性、機械特性及び耐熱衝撃性が向上する観点では乾性油を用いることが好ましい。乾性油の中でも、本発明による効果をより有効かつ確実に発揮できることから、桐油、亜麻仁油、大豆油、胡桃油及びサフラワー油が好ましく、桐油及び亜麻仁油がより好ましい。
【0115】
これらの不飽和炭化水素基含有化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0116】
(b)成分を調製するにあたり、まず、上記フェノール誘導体と上記不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させ、不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体を作製する。前記反応は、50~130℃で行うことが好ましい。フェノール誘導体と不飽和炭化水素基含有化合物との反応割合は、硬化膜(レジストパターン)の可とう性を向上させる観点から、フェノール誘導体100質量部に対し、不飽和炭化水素基含有化合物1~100質量部であることが好ましく、5~50質量部であることがより好ましい。不飽和炭化水素基含有化合物が1質量部未満では、硬化膜の可とう性が低下する傾向があり、100質量部を超えると、硬化膜の耐熱性が低下する傾向がある。上記反応においては、必要に応じて、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等を触媒として用いてもよい。
【0117】
上記反応により生成する不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体と、アルデヒド類とを重縮合させることにより、不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂が生成する。アルデヒド類は、フェノール樹脂を得るために用いられるアルデヒド類として上述したものと同様のものを用いることができる。
【0118】
上記アルデヒド類と上記不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体との反応は、重縮合反応であり、従来公知のフェノール樹脂の合成条件を用いることができる。反応は、酸又は塩基等の触媒の存在下で行うことが好ましく、酸触媒を用いることがより好ましい。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、ぎ酸、酢酸、p-トルエンスルホン酸及びシュウ酸が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0119】
上記反応は、通常反応温度100~120℃で行うことが好ましい。また、反応時間は使用する触媒の種類や量により異なるが、通常1~50時間である。反応終了後、反応生成物を200℃以下の温度で減圧脱水することで不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂が得られる。なお、反応には、トルエン、キシレン、メタノール等の溶媒を用いることができる。
【0120】
不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂は、上述の不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体を、m-キシレンのようなフェノール以外の化合物とともにアルデヒド類と重縮合することにより得ることもできる。この場合、フェノール誘導体と不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得られる化合物に対するフェノール以外の化合物のモル比は、0.5未満であると好ましい。
【0121】
(b)成分は、前記(a)成分のフェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得ることもできる。フェノール樹脂と反応させる不飽和炭化水素基含有化合物は、上述した不飽和炭化水素基含有化合物と同様のものを使用することができる。
【0122】
フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物との反応は、通常、50~130℃で行うことが好ましい。また、フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物との反応割合は、硬化膜(レジストパターン)の可とう性を向上させる観点から、フェノール樹脂100質量部に対し、不飽和炭化水素基含有化合物1~100質量部であることが好ましく、2~70質量部であることがより好ましく、5~50質量部であることが更に好ましい。不飽和炭化水素基含有化合物が1質量部未満では、硬化膜の可とう性が低下する傾向にあり、100質量部を超えると、反応中にゲル化する可能性が高くなる傾向、及び、硬化膜の耐熱性が低下する傾向がある。このとき、必要に応じて、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等を触媒として用いてもよい。なお、反応にはトルエン、キシレン、メタノール、テトラヒドロフラン等の溶媒を用いることができる。
【0123】
以上のような方法により生成する不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂中に残ったフェノール性水酸基に、更に多塩基酸無水物を反応させる。これにより、酸変性したフェノール樹脂を(b)成分として用いることもできる。多塩基酸無水物で酸変性することにより、カルボキシ基が導入され、(b)成分のアルカリ水溶液(現像液)に対する溶解性がより一層向上する。
【0124】
多塩基酸無水物は、複数のカルボキシ基を有する多塩基酸のカルボキシ基が脱水縮合して形成された酸無水物基を有していればよい。多塩基酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6-エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸及び無水トリメリット酸等の二塩基酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族四塩基酸二無水物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、多塩基酸無水物は、二塩基酸無水物であることが好ましく、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。この場合、更に良好な形状を有するレジストパターンを形成できるという利点がある。
【0125】
また、(A)感光性樹脂は、更に多塩基酸無水物を反応させて酸変性したフェノール樹脂を含有することができる。(A)感光性樹脂が多塩基酸無水物で酸変性したフェノール樹脂を含有することにより、(A)感光性樹脂のアルカリ水溶液(現像液)に対する溶解性がより一層向上する。
【0126】
前記多塩基酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6-エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸等の二塩基酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族、芳香族四塩基酸二無水物等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、多塩基酸無水物は、二塩基酸無水物であることが好ましく、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。
【0127】
(B2)光酸発生剤
光酸発生剤としては、ジアゾナフトキノン化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。このうち、ジアゾナフトキノン化合物は、感度が高く好ましい。
【0128】
(C)添加剤
添加剤(C)の好ましい種類、及び量は、<ポリイミド>に関連して記載した内容と同じである。
【0129】
(D)溶媒
溶媒(D)としては、各成分を溶解可能又は分散可能なものであればよい。
【0130】
(E)その他
熱架橋剤、増感剤、接着助剤、染料、界面活性剤、溶解促進剤、架橋促進剤等を含むことができる。このうち、熱架橋剤を含有することにより、パターン形成後の感光性樹脂膜を加熱して硬化する際に、熱架橋剤成分が(A)感光性樹脂と反応して橋架け構造が形成される。これにより、低温での硬化が可能となり、膜の脆さや膜の溶融を防ぐことができる。熱架橋剤成分として、具体的には、フェノール性水酸基を有する化合物、ヒドロキシメチルアミノ基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物を好ましいものとして用いることができる。
【0131】
(露光、及び現像)
フェノール性水酸基を有するポリマーを露光した後、不要部分を現像液で洗い流す。使用する現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ水溶液が好適に用いられる。
【0132】
(熱硬化)
現像後、フェノール性水酸基を有するポリマーを加熱することにより、フェノール性水酸基を有するポリマーどうしを熱架橋する。この架橋後のポリマーが硬化レリーフパターン、すなわち、絶縁層6となる。
【0133】
フェノール性水酸基を有するポリマーの熱硬化のための加熱温度は、他部材への影響の観点から、加熱温度は低い温度であることが好ましい。当該加熱温度は、250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましく、200℃以下がより好ましく、180℃以下が特に好ましい。
【0134】
≪半導体装置の製造方法≫
本実施形態の半導体装置1の製造方法は、
半導体チップ2を用意する第1工程と、
用意した半導体チップ2を、該半導体チップ2の少なくとも一部が露出するように封止材で覆う第2工程と、
平面視で半導体チップ2よりも面積が大きい再配線層4を、半導体チップ2の上記露出する面側に形成する第3工程と、を含み、
再配線層4が、酸素透過度が150~7000cm3/m2・日・atmである絶縁層6を含む。
【0135】
ここで、第2工程は、
半導体チップに保護層を形成する工程(保護層形成工程)と、
保護層を形成した半導体チップを、該保護層の少なくとも一部が露出するように封止材で覆う工程(封止材形成工程)と、を含むことが好ましい。
また、第3工程は、再配線層を、保護層側に形成する工程を含むことが好ましい。
【0136】
半導体装置1の製造方法について、
図3を用いて説明する。
図3は、半導体装置1の製造工程の一例である。
図3Aでは、前工程済みウェハ10を用意する。その後、感光性樹脂組成物(保護層形成用の感光性組成物)を塗布し、露光現像してレリーフパターンを形成する(保護層形成工程)。そして、
図3Bにて、上記ウェハをダイシングして複数の半導体チップ2を形成する。このようにして準備された半導体チップ2を、
図3Cに示すように、支持体11上に所定間隔にて貼り付ける。
【0137】
続いて、半導体チップ2上から支持体11上にかけてモールド樹脂12を塗布し、
図3Dに示すようにモールド封止する(封止材形成工程)。続いて、支持体11を剥離し、モールド樹脂12を反転させる(
図3E参照)。
図3Eに示すように、半導体チップ2とモールド樹脂12とは、略同一平面で現れる。続いて、
図3Fに示す工程では、感光性樹脂組成物13を、半導体チップ2上及びモールド樹脂12上に塗布する。そして、塗布された感光性樹脂組成物13を露光現像して、レリーフパターンを形成する(レリーフパターン形成工程)。なお、感光性樹脂組成物13は、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよい。更に、レリーフパターンを加熱して硬化レリーフパターンを形成する(絶縁層形成工程)。更に、硬化レリーフパターンを形成しない箇所に配線を形成する(配線形成工程)。
【0138】
なお、本実施形態では、上記のレリーフパターン形成工程と絶縁層形成工程と配線形成工程を合わせて、半導体チップ2に接続する再配線層を形成する再配線層形成工程とする。
【0139】
再配線層中の絶縁層は多層であってもよい。従って、再配線層形成工程は複数回のレリーフパターン形成工程と複数回の絶縁層形成工程と複数回の配線形成工程を含んでいてもよい。
【0140】
そして、
図3Gでは、各半導体チップ2に対応する複数の外部接続端子7を形成し(バンプ形成)、各半導体チップ2間をダイシングする。これにより、
図3Hに示すように、半導体装置(半導体IC)1を得ることができる。本実施形態では、
図3に示す製造方法により、ファンナウト型の半導体装置1を複数得ることができる。
【0141】
本実施形態では、上記した絶縁層形成工程では、絶縁層を、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から成る群から選択される少なくとも1種を形成可能な感光性樹脂組成物で形成することが好ましい。
【0142】
また、保護層を形成する場合には、かかる保護層を、ポリイミドと、ポリベンゾオキサゾールと、フェノール性水酸基を有するポリマーと、から成る群から選択される少なくとも1種を形成可能な感光性樹脂組成物で形成することが好ましい。
【0143】
[他の実施形態]
以上、本実施形態について説明したが、本発明の態様は上記に限定されない。
【0144】
例えば、封止材は、半導体チップの側面を囲む封止用部材と、半導体チップの上面(絶縁層が配される面とは反対側の面)に重なるテープと、を含んで構成されてよい。封止用部材は、絶縁層と接することができ、また、エポキシ樹脂を含むことができる。
【0145】
また、
図1には、2つのチップを並列に含む半導体チップ2が図示されているが、半導体チップは、3つ以上のチップを並列に含むこともできる。更に、保護層8は省略可能である。この場合、半導体チップと封止材とが略同一面を形成し、かかる面上に再配線層が配される。
【0146】
本発明の更なる一態様は、
半導体チップ2と、
半導体チップ2を、その少なくとも一部が露出するように覆う封止材3と、
半導体チップ2における、封止材3によって覆われていない面側に配され、かつ、平面視で半導体チップ2よりも面積が大きい再配線層4と、を備える半導体装置1における、再配線層4の形成に使用するための絶縁層6であって、
酸素透過度が150~7000cm3/m2・日・atmである、絶縁層6である。
【0147】
また、本発明の更なる一態様は、
半導体チップ2と、
半導体チップ2を、その少なくとも一部が露出するように覆う封止材と、
を備える半導体チップ2における、前記封止材によって覆われていない面側に配され、かつ、平面視で半導体チップ2よりも面積が大きい再配線層4において、
半導体チップ2に電気的に接続される配線5と、
配線5に接し、かつ、酸素透過度が150~7000cm3/m2・日・atmである絶縁層6と、を含む、再配線層4である。
【0148】
本発明の一態様である半導体装置において採用可能な要件、また、好ましい要件は、半導体装置以外の態様(例えば、絶縁層、及び再配線層であり、また、半導体装置の製造方法である。)においても同様に、採用可能であり、また、好ましい。例えば、半導体装置において好ましい酸素透過度(cm3/m2・日・atm)は、絶縁層、及び再配線層においても、また、半導体装置の製造方法においても好ましい。
【実施例0149】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明について説明する。実施例及び比較例においては、以下の材料及び測定方法を用いた。
【0150】
実施例及び比較例において用いる略語は、以下のとおりである。
ODPA:4,4’-オキシジフタル酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BPADA:4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物
6FDA:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
DADPE:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
m-TB:4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル
MBAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル
BAFL:9,9‘-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン
DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
GBL:γ-ブチロラクトン
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
【0151】
(ポリマーA-1:ポリイミド前駆体の合成)
テトラカルボン酸二無水物として、ODPA88.3g、及びBPDA55.8gを、2リットル容量のセパラブルフラスコに入れた。そして、HEMA128.4g、及びGBLを入れて室温下で攪拌しながら、更にピリジン(80g)を加え、これにより反応混合物を得た。反応による発熱の終了後に室温まで放冷し、その後、16時間放置した。
【0152】
次に、DCC192.7gをGBLに溶解した溶液を、氷冷下において攪拌しながら40分かけて反応混合物に加えた。続いて、ジアミンとしてDADPE92.9gをGBLに懸濁したものを、攪拌しながら60分かけて反応混合物に加えた。室温で2時間攪拌し続けた後、エチルアルコールを更に加えて1時間攪拌し、そしてGBLを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、これにより、反応液を得た。
【0153】
得られた反応液にエチルアルコールを加え、これにより、粗ポリマーからなる沈殿物を生成した。生成した粗ポリマーを濾別し、そしてテトラヒドロフランに溶解して粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を水に滴下することでポリマーを沈殿させ、これにより得られた沈殿物を濾別した。その後、真空乾燥して粉末状のポリマー(ポリイミド前駆体(ポリマーA-1))を得た。その重量平均分子量(Mw)は22,000であった。
【0154】
(ポリマーA-2:ポリイミド前駆体の合成)
テトラカルボン酸二無水物としてBPADA246.8g、ジアミンとしてDADPE92.9gを用いた以外は、ポリマーA-1の例と同様の方法に基づき、ポリマーA-2を得た。その重量平均分子量(Mw)は21,000であった。
【0155】
(ポリマーA-3:ポリイミド前駆体の合成)
テトラカルボン酸二無水物としてODPA147.11g、ジアミンとしてBAPP190.5gを用いた以外は、ポリマーA-1の例と同様の方法に基づき、ポリマーA-3を得た。その重量平均分子量(Mw)は23,000であった。
【0156】
(ポリマーA-4:ポリイミド前駆体の合成)
テトラカルボン酸二無水物としてナフタレン酸二無水物(127.2g)、ジアミンとしてm-TB98.5gを用いた以外は、ポリマーA-1の例と同様の方法に基づき、ポリマーA-4を得た。その重量平均分子量(Mw)は20,000であった。
【0157】
(ジアミンオリゴマーW-1:ポリイミドの合成)
ディーンスターク管と冷却管とを備えた0.5リットル容量のセパラブルフラスコに、酸成分としてBPADA41.6g、ジアミン成分としてm-TB34.0g、溶媒としてNMP176.4gを加え、これらを撹拌した。更にトルエン42.3gを加え撹拌した後、窒素気流下で185℃まで昇温した。185℃で2.5時間撹拌したのち、系中のトルエンと、イミド化によって生成した水と、を1.5時間かけて除去した。その後、室温まで冷却し、ポリイミド構造の繰り返しユニットを持つジアミンオリゴマーW-1の溶液を得た。このジアミンオリゴマーW-1の重量平均分子量(Mw)は3,000であった。
ジアミンオリゴマーW-1の1H-NMR測定を行い、そしてポリイミドの芳香族環由来のピークに対するアミド結合由来のピークを比較することで、イミド閉環率を確認した。イミド閉環率は99%以上であった。
【0158】
(ジアミンオリゴマーW-2:ポリイミドの合成)
上記ジアミンオリゴマーW-1の合成方法にて、m-TB34.0gに代えて、MBAPP52.6g、溶媒としてNMP220g、及びトルエン52.8gを用いた以外は、ジアミンオリゴマーW-1の例と同様の方法に基づき、ジアミンオリゴマーW-2の溶液を得た。このジアミンオリゴマーW-2の重量平均分子量(Mw)は5,000であった。
ジアミンオリゴマーW-1と同様に、1H-NMR測定を行ってイミド閉環率を確認した。イミド閉環率は99%以上であった。
【0159】
(ポリマーB-1:ポリイミド部位を有するポリイミド前駆体の合成)
酸成分として、BPADA20.9gを1リットル容量のセパラブルフラスコに入れ、HEMA10.9g及びGBL42gを加えた。室温下で攪拌しながらピリジン6.4gを加え、そして50℃で4時間加熱した。反応による発熱の終了後、室温まで放冷した。更に16時間静置することで、反応混合物を得た。
【0160】
次に、氷冷下において、反応混合物に、DCC16.3gをGBL16.3gに溶解した溶液を、攪拌しながら40分かけて加えた。その後、GBL91.0g加えた。続いて、ジアミン成分として、上記で調製したジアミンオリゴマーW-2のNMP溶液101.7gをGBL66.5gと混合させた溶液を、攪拌しながら20分かけて加えた。次いで、m-TB2.4gをGBL7gに溶解させた溶解液を、攪拌しながら5分かけて加えた。更に、室温で4時間攪拌した後、エチルアルコール6.4gを加えて30分間攪拌した後、GBL49.0gを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。
【0161】
得られた反応液を、1000gのエチルアルコールに加えることで、粗ポリマーからなる沈殿物を生成した。生成した粗ポリマーを濾取し、GBL270gに溶解して粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を、陰イオン交換樹脂(オルガノ株式会社製「アンバーリストTM15JWET」)を用いて精製し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を3800gの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾取した。その後、真空乾燥することにより、粉末状のポリマーB-1を得た。このポリマーB-1の重量平均分子量(Mw)は30,000、イミド基導入率は0.43であった。
また、ポリマーB-1から得られるポリイミドの、繰り返し単位当たりのイミド基濃度Uは16.0wt%であった。なお、「イミド基濃度U」は、350℃で加熱及び硬化して得られるポリイミド硬化膜のポリイミドに換算し、算出したものである(以下、同様である。)。
【0162】
(ポリマーB-2:ポリイミド部位を有するポリイミド前駆体の合成)
酸成分として、BPADA15.2gを1リットル容量のセパラブルフラスコに入れ、HEMA7.9g及びGBL30.8gを加えた。室温下で攪拌しながらピリジン4.6gを加えて、50℃で4時間加熱した。反応による発熱の終了後、室温まで放冷した。更に16時間静置し、反応混合物を得た。
【0163】
次に、氷冷下において、反応混合物に、DCC11.9gをGBL11.9gに溶解した溶液を、攪拌しながら40分かけて加えた。その後、GBLを91.0g加えた。続いて、ジアミン成分として、上記で調製したジアミンオリゴマーW-1のNMP溶液111.5gをGBL72.9gと混合させた溶液を、攪拌しながら20分かけて加えた。更に、室温で4時間攪拌した後、GBL49.0gを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。
【0164】
以降の精製工程は、ポリマーB-1の例と同様の方法に基づくことにより、ポリマーB-2を得た。このポリマーB-2の重量平均分子量(Mw)は24,000、イミド基導入率は0.58であった。また、ポリマーB-2から得られるポリイミドの、繰り返し単位当たりのイミド基濃度Uは20.1wt%であった。
【0165】
(ポリマーC-1:溶剤可溶性ポリイミドの合成)
ディーンスターク抽出装置を取り付け、窒素置換した三口フラスコにNMP100.0gとBAFL34.9g(0.1モル)を加え溶解させ、これに対して、ODPA15.6g(0.05mol)、及びトルエン25.0gを加えて180℃に加熱した。
【0166】
ディーンスターク抽出装置に、理論量の水(1.80g)、及び添加したトルエン(25.0g)が抽出されたことを確認した後、加熱を止め、そして室温まで冷却した。
【0167】
得られた反応液に対してカレンズ(登録商標)MОI(商品名;昭和電工株式会社製)15.5g(0.1mol)を添加し攪拌することでポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を、3kgの水に滴下してポリマーを沈殿させ、濾別した。その後、真空乾燥することにより、末端が修飾されたポリイミドC-1を粉末で得た。このポリイミドC-1の重量平均分子量(Mw)は4,400、数平均分子量(Mn)は3,400、多分散度(Mw/Mn)は1.29であった。
また、プロトンNMRの積分比率に基づき、ポリイミド主鎖末端の変性率が95%であることを確認した。
【0168】
(ポリマーC-2:溶剤可溶性ポリイミドの合成)
製造例1のBAFLを26.2gに変え、カレンズMОIの量を7.8gに変えた以外は、製造例1の例と同様の方法に基づき、ポリイミドC-2を得た。ポリイミドC-2の重量平均分子量(Mw)は6,900、数平均分子量(Mn)は5,200、多分散度(Mw/Mn)は1.33であった。
また、プロトンNMRの積分比率から、上記末端の変性率が94%であることを確認した。
【0169】
(ポリマーC-3:溶剤可溶性ポリイミドの合成)
TFMB64.1gを1リットル容量のセパラブルフラスコに入れ、窒素雰囲気下でGBL400mlを加えた。室温下で攪拌しながら、6FDA97.7gを加えて、室温で6時間撹拌することにより、ポリアミック酸溶液を得た。次いで、ピリジン15g及び無水酢酸80gを加え、トルエン40gを加えた。その後、185℃で4時間撹拌し、そして、水が理論量除かれたことを確認した。トルエンを除去した後、室温まで冷却することで、ポリイミド(ポリマーC-3)を含む溶液を得た。得られた溶液に対して、ポリマーC-1の例と同様の方法に基づく後処理(ポリマーの沈殿、濾別、及び真空乾燥)を行うことにより、ポリマーC-3を得た。このポリマーC-3の重量平均分子量(Mw)は22,000であった。
【0170】
[配合例1~12]
下表のとおりに各成分を配合することにより、感光性樹脂組成物の溶液を得た。なお、表1における各成分の配合量の単位は質量部である。
表に記載の酸素透過度、BHAST(Biased Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test))試験後の短絡時間、現像性、及び密着性については、下記の方法にて測定を行った。
【0171】
【0172】
表1に記載の記号は、それぞれ以下の化合物を意味する。
光重合開始剤
D-1:1、2-プロパンジオン-3-シクロペンチル-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(Oベンゾイルオキシム)(商品名:PBG-305、常州強力電子社製)
D-2:1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-3-プロパン-1,2-ジオン―2-(O-アセチルオキシム)(商品名:PBG-3057、常州強力電子社製)
シランカップリング剤
E-1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製)
ラジカル重合性化合物
F-1:ポリエチレングリコール#200ジメタクリレート(新中村化学社製)
フッ素系モノマー
G-1:2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート
溶媒
H-1:γ-ブチロラクトン(GML)
H-2:ジメチルスルホキシド(DMSO)
【0173】
(酸素透過度)
上記で配合した感光性樹脂組成物を、表面にアルミ蒸着層を設けた6インチシリコンウェハ基板に、硬化後の膜厚が10μmになるようにスピンコートし、そして110℃にて4分間プリベークした。その後、縦型キュア炉(光洋リンドバーグ社製、型式名VF-2000B)を用いて、230℃で2時間の加熱硬化処理を施し、これにより、樹脂膜(絶縁層)が形成されたウェハを作製した。希塩酸水溶液に一晩浸して樹脂膜片を剥離し、乾燥させた。これを、長さ50mm×50mmにカットし、サンプルとして扱った。
上記で得られたサンプルを対象に、JIS K-7126-2に従って、酸素透過度(cm3/m2・日・atm)の測定を行った。すなわち、測定装置GTR-10XFを用い、測定環境:23℃、相対湿度(RH):65%、ガス種:酸素、セル径:35mmΦで測定を行った。
【0174】
(BHAST試験後の短絡時間)
ライン/スペース(L/S)=5μm/5μmを有するTEG(Test Element Group)を準備し、低圧プラズマ(神港精機社製、EXAM)により40mL/分、133W、50Pa、2分間に亘り、酸素プラズマ処理を行った。その後、樹脂組成物をコーターデベロッパー(D-Spin60A型、SOKUDO社製)を用いて回転塗布し、110℃で240秒間、ホットプレートにてプリベークを行い、そして、最終膜厚が7μmとなるように塗膜を形成した。塗膜形成後、速やかに(ここでは、塗膜を形成してから5分未満のタイミングで)、露光量300~600mJ/cm2にて露光を行った。現像後、昇温プログラム式キュア炉(VF-2000型、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気下、230℃、2時間加熱することにより、サンプルを作製した。
【0175】
このサンプルを、BHAST試験用の装置(高度加速寿命試験装置、エスペック社製:EMS-222M、エレクトロケミカルマイグレーション評価システム、エスペック社製:AMI-025-U-5)にて、1Vの印加電圧で130℃、85%RHで試験を実施した。30分間隔で、絶縁層内に配されている銅配線間の絶縁抵抗値を測定し、1×104Ω以下になったタイミングを、絶縁破壊のタイミングとした。試験開始から絶縁破壊までの時間を算出し、以下の基準で評価した。
「優」:500時間以上
「良」:200時間以上500時間未満
「可」:24時間以上200時間未満
「不可」:24時間未満
【0176】
[実施例1]
(絶縁層、再配線層及び半導体装置の作製)
半導体チップとしての6インチシリコンウェハ(フジミ電子工業株式会社製、厚み625±25μm)の上面及び側面を、モールド樹脂としてのエポキシ樹脂によって覆うことにより、封止材を形成した。
【0177】
(現像性)
ウェハの下面(ウェハにおける、封止材により覆われていない面)上に、スパッタ装置(L-440S-FHL型、キヤノンアネルバ社製)を用いて、200nm厚のTi、400nm厚のCuをこの順にスパッタした。続いて、このウェハ上に、配合例1の樹脂組成物を、コーターデベロッパー(D-Spin60A型、SOKUDO社製)を用いて回転塗布し、次いで、110℃で180秒間ホットプレートにてプリベークを行い、このようにして、最終膜厚が5μmとなるように塗膜を形成した。
【0178】
塗膜形成後、速やかに(ここでは、塗膜を形成してから5分未満のタイミングで)、この塗膜に、テストパターン付マスクを用いて、プリズマGHI(ウルトラテック社製)により400mJ/cm2のエネルギーを照射した。次いで、この塗膜を、現像液としてシクロペンタノンを用いて、未露光部が完全に溶解消失するまでの時間に1.4を乗じた時間、コーターデベロッパー(D-Spin60A型、SOKUDO社製)でスプレー現像した。その後、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートで10秒間回転スプレーリンスすることにより、Cu上のレリーフパターン(実施例1A)を得た(レリーフパターン形成工程)。そして、以下の基準で評価した。
「良」:本工程で、7μmのビアホールを形成できたもの
「可」:本工程で、10μmのビアホールを形成できたもの
「不可」:本工程では、10μm以下のビアホールを形成できなかったもの
なお、上記評価において、「ビアホールを形成できた」とは、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)S-4800(日立ハイテク社製)でレリーフパターンの断面を観察したとき、ビアホール底部に残渣、ブリッジング、及びスソ引きが確認されない該ビアホールが観察されたことを言う。
【0179】
Cu上に該レリーフパターンを形成したウェハを、昇温プログラム式キュア炉(VF-2000型、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気下、230℃、2時間加熱処理することにより、Cu上に約5μm厚の樹脂から成る硬化レリーフパターンを得た(絶縁層形成工程;一層目の絶縁層)。得られたレリーフパターン上に、前述のスパッタ装置にて200nm厚のTi、400nm厚のCuをこの順にスパッタした(配線形成工程;配線)。
【0180】
スパッタ後のレリーフパターンに、配合例1で得られた感光性樹脂組成物を同様にコーターデベロッパー(D-Spin60A型、SOKUDO社製)を用いて回転塗布し、次いで、110℃で180秒間ホットプレートにてプリベークを行い、このようにして、塗膜を形成した。得られた塗膜を、昇温プログラム式キュア炉(VF-2000型、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気下、230℃において2時間加熱処理することにより、配合例1の硬化物のレリーフパターン上に、約5μm厚の樹脂から成る硬化膜を得た(二層目の絶縁層)。これにより、一層目の絶縁層、配線、及び二層目の絶縁層を含む、再配線層を形成した。
【0181】
そして、再配線層の封止材とは反対側に、各半導体チップに対応する複数の外部接続端子を形成し(バンプ形成)、各半導体チップ間をダイシングすることで、実施例1の半導体装置を作製した。この半導体装置は、ファンアウト型のウェハレベルチップサイズパッケージ型の半導体装置である。
【0182】
(密着性)
上記で作製した実施例1の半導体装置について、その上記再配線層における、硬化物のレリーフパターン(一層目の絶縁層)上に形成した約5μm厚の硬化膜(二層目の絶縁層)を、130℃、85%RHで168時間処理した後に、JIS K 5600-5-6規格のクロスカット法に準じて、銅基板/絶縁層(硬化樹脂塗膜)間の接着特性を以下の基準に基づき評価した。
「優」:基板に接着している絶縁層の格子数が80以上~100
「良」:基板に接着している絶縁層の格子数が60以上~80未満
「可」:基板に接着している絶縁層の格子数が40以上~60未満
「不可」:基板に接着している絶縁層の格子数が40未満
【0183】
[実施例2~10、比較例1、2]
配合例2~12を用いて、実施例1と同様の方法にて試験を実施した。結果を表に示す。なお、それぞれの配合例について、作製前に最適となる露光量、現像時間を算出し、その上で各試験を実施した。
【0184】
【0185】
表から明らかなように、実施例によれば、「酸素透過度」、「BHAST試験後の短絡時間」、「現像性」、及び「密着性」のいずれの評価においても、良好な結果が得られることができた。
また、表から明らかなように、配合例1を用いた実施例1から、ポリマー、フッ素系モノマー、光重合開始剤、シランカップリング剤、及びラジカル重合開始剤について、それらの種類、及び含有量を適宜変更することで、酸素透過度(cm3/m2・日・atm)を適宜制御できることが確かめられた。
本発明は、半導体チップと、半導体チップに接続される再配線層とを有する半導体装置、特に、ファンナウト(Fan-Out)型のウェハレベルチップサイズパッケージ型の半導体装置に好ましく適用される。