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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133026
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ノイズフィルタおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/12 20060101AFI20240920BHJP
   H01C 13/00 20060101ALI20240920BHJP
   H01C 1/084 20060101ALI20240920BHJP
   H01G 4/40 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H03H7/12
H01C13/00 C
H01C1/084
H01G4/40 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024041001
(22)【出願日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2023042824
(32)【優先日】2023-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391039896
【氏名又は名称】NGKエレクトロデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】鵜原 貴俊
【テーマコード(参考)】
5E028
5E082
5J024
【Fターム(参考)】
5E028BB01
5E028DA08
5E028GA01
5E082AB03
5E082BC25
5E082DD01
5E082JJ03
5E082LL15
5J024AA01
5J024BA15
5J024CA17
5J024DA04
5J024EA09
(57)【要約】
【課題】抵抗素子での電力消費にともなう温度上昇に起因してのパワーアンプの動作の不安定性を抑制することができるノイズフィルタを提供する。
【解決手段】セラミック部材10は、互いに反対の第1の面SF1および第2の面SF2を有する。第1の内部電極層22はグランド内部電極層20に対向する。第1の電極端子31はセラミック部材10の第1の面SF1上に配置される。グランド電極端子30は、セラミック部材10の第2の面SF2上に配置されグランド内部電極層20に電気的に接続される。抵抗素子80は、セラミック部材10の第2の面SF2上に配置され、第1の電極端子31に電気的に接続された第1の端部81と第1の内部電極層22に電気的に接続された第2の端部82とを有する。絶縁体90は抵抗素子80を被覆する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーアンプ用のノイズフィルタであって、
厚み方向において互いに反対の第1の面および第2の面を有し、電気的絶縁性を有するセラミック部材と、
前記セラミック部材中に配置された少なくとも1つのグランド内部電極層と、
前記セラミック部材中に配置され、第1の静電容量が形成されるように前記少なくとも1つのグランド内部電極層に対向する少なくとも1つの第1の内部電極層と、
前記セラミック部材の前記第1の面上に配置された第1の電極端子と、
前記セラミック部材の前記第2の面上に配置され、前記少なくとも1つのグランド内部電極層に電気的に接続された少なくとも1つのグランド電極端子と、
前記セラミック部材の前記第2の面上に配置され、前記第1の電極端子に電気的に接続された第1の端部と前記少なくとも1つの第1の内部電極層に電気的に接続された第2の端部とを有し、前記第1の端部と前記第2の端部との間に電気抵抗を有する抵抗素子と、
前記抵抗素子を被覆する絶縁体と、
を備える、ノイズフィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載のノイズフィルタであって、前記少なくとも1つのグランド電極端子は前記第2の面上に直接的に配置されている、ノイズフィルタ。
【請求項3】
請求項2に記載のノイズフィルタであって、前記絶縁体はガラス膜である、ノイズフィルタ。
【請求項4】
請求項1に記載のノイズフィルタであって、前記少なくとも1つのグランド電極端子は前記第2の面上に前記絶縁体を介して間接的に配置されている、ノイズフィルタ。
【請求項5】
請求項4に記載のノイズフィルタであって、前記絶縁体はセラミック膜である、ノイズフィルタ。
【請求項6】
パワーアンプ用のノイズフィルタであって、
厚み方向において互いに反対の第1の面および第2の面を有し、電気的絶縁性を有するセラミック部材と、
前記セラミック部材中に配置された少なくとも1つのグランド内部電極層と、
前記セラミック部材中に配置され、第1の静電容量が形成されるように前記少なくとも1つのグランド内部電極層に対向する少なくとも1つの第1の内部電極層と、
前記セラミック部材の前記第1の面上に配置された第1の電極端子と、
前記セラミック部材の前記第2の面上に配置され、前記少なくとも1つのグランド内部電極層に電気的に接続された少なくとも1つのグランド電極端子と、
前記厚み方向において前記少なくとも1つの第1の内部電極層および前記少なくとも1つのグランド内部電極層を含むすべての内部電極層と前記セラミック部材の前記第2の面との間に配置され、前記第1の電極端子に電気的に接続された第1の端部と前記少なくとも1つの第1の内部電極層に電気的に接続された第2の端部とを有し、前記第1の端部と前記第2の端部との間に電気抵抗を有する抵抗素子と、
を備え、
前記抵抗素子は前記セラミック部材中に少なくとも部分的に埋設されている、ノイズフィルタ。
【請求項7】
請求項6に記載のノイズフィルタであって、前記抵抗素子は前記セラミック部材中に完全に埋設されている、ノイズフィルタ。
【請求項8】
請求項6に記載のノイズフィルタであって、
前記抵抗素子は前記セラミック部材中に部分的に埋設されており、
前記ノイズフィルタは、前記セラミック部材と共に前記抵抗素子を完全に埋設する絶縁体をさらに備える、
ノイズフィルタ。
【請求項9】
請求項1から5および請求項8のいずれか1項に記載のノイズフィルタであって、前記絶縁体上に金属含有層をさらに備える、ノイズフィルタ。
【請求項10】
請求項7に記載のノイズフィルタであって、前記セラミック部材上に金属含有層をさらに備える、ノイズフィルタ。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか1項に記載のノイズフィルタであって、前記セラミック部材の前記第1の面上、または前記第1の面と前記第2の面とをつなぐ側面上に配置され、前記少なくとも1つの第1の内部電極層に電気的に接続された第2の電極端子をさらに備える、ノイズフィルタ。
【請求項12】
請求項11に記載のノイズフィルタであって、前記第2の電極端子の形状は前記第1の電極端子の形状と合同な形状ではない、ノイズフィルタ。
【請求項13】
請求項1から8のいずれか1項に記載のノイズフィルタであって、前記少なくとも1つのグランド電極端子は第1のグランド電極端子および第2のグランド電極端子を含み、前記抵抗素子は、前記厚み方向に垂直な平面レイアウトにおいて前記第1のグランド電極端子と前記第2のグランド電極端子との間に配置されている、ノイズフィルタ。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか1項に記載のノイズフィルタであって、
前記少なくとも1つのグランド電極端子と前記少なくとも1つのグランド内部電極層との間を互いに電気的に接続し、互いに並列に設けられた複数のビア電極を含むグランドビア電極群をさらに備える、ノイズフィルタ。
【請求項15】
請求項1から8のいずれか1項に記載のノイズフィルタであって、前記セラミック部材中に配置され、第2の静電容量が形成されるように前記少なくとも1つのグランド内部電極層に対向し、前記第1の電極端子に電気的に接続された少なくとも1つの第2の内部電極層をさらに備える、ノイズフィルタ。
【請求項16】
請求項15に記載のノイズフィルタであって、
前記第1の電極端子と前記少なくとも1つの第2の内部電極層との間を互いに電気的に接続し、互いに並列に設けられた複数のビア電極を含むビア電極群をさらに備える、ノイズフィルタ。
【請求項17】
請求項1から8のいずれか1項に記載のノイズフィルタであって、
前記少なくとも1つの内部電極層は複数の第1の内部電極層であり、
前記複数の第1の内部電極層同士を互いに電気的に接続し、互いに並列に設けられた複数のビア電極を含むビア電極群をさらに備える、ノイズフィルタ。
【請求項18】
請求項1から8のいずれか1項に記載のノイズフィルタと、
前記ノイズフィルタの前記セラミック部材の前記第2の面に対向する放熱部材と、
前記ノイズフィルタの前記少なくとも1つのグランド電極端子と前記放熱部材とを互いに接着する導電性接着材と、
を備える、電子機器。
【請求項19】
請求項18に記載の電子機器であって、前記導電性接着材は、前記厚み方向において前記放熱部材と前記抵抗素子との間に配置された部分を有する、電子機器。
【請求項20】
請求項18に記載の電子機器であって、
前記放熱部材上に実装され、前記放熱部材に電気的に接続された第1の主端子、前記第1の主端子から離れた第2の主端子、および前記第1の主端子と前記第2の主端子との間のスイッチングを制御する信号を受けるための制御端子を有する半導体スイッチング素子と、
前記半導体スイッチング素子の前記制御端子に電気的に接続された制御リードと、
前記半導体スイッチング素子の前記第2の主端子と前記ノイズフィルタの前記第1の電極端子とに電気的に接続された主リードと、
をさらに備える、電子機器。
【請求項21】
請求項20に記載の電子機器であって、
前記放熱部材上に設けられ、前記放熱部材上において前記ノイズフィルタおよび前記半導体スイッチング素子を囲み、前記制御リードおよび前記主リードを支持する枠体と、
前記放熱部材上において前記枠体に囲まれた空間を封止するように前記枠体に取り付けられた蓋体と、
をさらに備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズフィルタおよび電子機器に関し、特に、パワーアンプ用のノイズフィルタと、それを有する電子機器とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
RF(Radio Frequency)パワーアンプのような電子機器は、MOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)またはIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)のような半導体スイッチング素子と、半導体スイッチング素子からの放熱を促進するための放熱部材とに加えて、アンプの広帯域化に対応したノイズフィルタ回路を必要とすることがある。近年では、例えば、数GHzオーダーの周波数向けのRFパワーアンプにおいて、数百MHz程度の広帯域が求められている。
【0003】
特表2022-518866号公報(特許文献1)は、放熱板と、前記放熱板の上に溶着されたパワーデバイスと、を有するRFパワーアンプを開示している。前記パワーデバイスはキャリアフランジを有している。前記キャリアフランジに、トランジスタおよびデカップリング回路モジュールが貼設されている。前記デカップリング回路モジュールは、第1コンデンサと、第2コンデンサと、ダンピング抵抗器と、を有している。前記ダンピング抵抗器は前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサに接続されている。前記第1コンデンサ、前記第2コンデンサおよび前記ダンピング抵抗器は多層共焼成セラミック材料スタックによって作製されている。
【0004】
特開2002-246864号公報(特許文献2)は、中心周波数帯域可変型バンドパスフィルタを開示している。当該フィルタにおいては、直流カット用の第1および第2の抵抗体が、複数のセラミック層を有する積層体の上面上に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2022-518866号公報
【特許文献2】特開2002-246864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の検討によれば、ノイズフィルタの抵抗素子での電力消費にともなう温度上昇に起因して、パワーアンプの動作が不安定となることがある。この不安定性は、上記温度上昇に起因して、例えば、当該抵抗素子の抵抗値が許容範囲を超えて変動したり、あるいは、ノイズフィルタの他の素子の特性、例えばコンデンサの静電容量または絶縁抵抗値、が許容範囲を超えて変動したりすることによって引き起こされ得る。
【0007】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その一の目的は、ノイズフィルタの抵抗素子での電力消費にともなう温度上昇に起因してのパワーアンプの動作の不安定性を抑制することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
態様1は、パワーアンプ用のノイズフィルタであって、厚み方向において互いに反対の第1の面および第2の面を有し、電気的絶縁性を有するセラミック部材と、前記セラミック部材中に配置された少なくとも1つのグランド内部電極層と、前記セラミック部材中に配置され、第1の静電容量が形成されるように前記少なくとも1つのグランド内部電極層に対向する少なくとも1つの第1の内部電極層と、前記セラミック部材の前記第1の面上に配置された第1の電極端子と、前記セラミック部材の前記第2の面上に配置され、前記少なくとも1つのグランド内部電極層に電気的に接続された少なくとも1つのグランド電極端子と、前記セラミック部材の前記第2の面上に配置され、前記第1の電極端子に電気的に接続された第1の端部と前記少なくとも1つの第1の内部電極層に電気的に接続された第2の端部とを有し、前記第1の端部と前記第2の端部との間に電気抵抗を有する抵抗素子と、前記抵抗素子を被覆する絶縁体と、を備える。
【0009】
態様2は、態様1に記載のノイズフィルタであって、前記少なくとも1つのグランド電極端子は前記第2の面上に直接的に配置されている。
【0010】
態様3は、態様2に記載のノイズフィルタであって、前記絶縁体はガラス膜である。
【0011】
態様4は、態様1に記載のノイズフィルタであって、前記少なくとも1つのグランド電極端子は前記第2の面上に前記絶縁体を介して間接的に配置されている。
【0012】
態様5は、態様4に記載のノイズフィルタであって、前記絶縁体はセラミック膜である。
【0013】
態様6は、パワーアンプ用のノイズフィルタであって、厚み方向において互いに反対の第1の面および第2の面を有し、電気的絶縁性を有するセラミック部材と、前記セラミック部材中に配置された少なくとも1つのグランド内部電極層と、前記セラミック部材中に配置され、第1の静電容量が形成されるように前記少なくとも1つのグランド内部電極層に対向する少なくとも1つの第1の内部電極層と、前記セラミック部材の前記第1の面上に配置された第1の電極端子と、前記セラミック部材の前記第2の面上に配置され、前記少なくとも1つのグランド内部電極層に電気的に接続された少なくとも1つのグランド電極端子と、前記厚み方向において前記少なくとも1つの第1の内部電極層および前記少なくとも1つのグランド内部電極層を含むすべての内部電極層と前記セラミック部材の前記第2の面との間に配置され、前記第1の電極端子に電気的に接続された第1の端部と前記少なくとも1つの第1の内部電極層に電気的に接続された第2の端部とを有し、前記第1の端部と前記第2の端部との間に電気抵抗を有する抵抗素子と、を備え、前記抵抗素子は前記セラミック部材中に少なくとも部分的に埋設されている。
【0014】
態様7は、態様6に記載のノイズフィルタであって、前記抵抗素子は前記セラミック部材中に完全に埋設されている。
【0015】
態様8は、態様6に記載のノイズフィルタであって、前記抵抗素子は前記セラミック部材中に部分的に埋設されており、前記ノイズフィルタは、前記セラミック部材と共に前記抵抗素子を完全に埋設する絶縁体をさらに備える。
【0016】
態様9は、態様1から5および態様8のいずれか1項に記載のノイズフィルタであって、前記絶縁体上に金属含有層をさらに備える。
【0017】
態様10は、態様7に記載のノイズフィルタであって、前記セラミック部材上に金属含有層をさらに備える。
【0018】
態様11は、態様1から10のいずれか1項に記載のノイズフィルタであって、前記セラミック部材の前記第1の面上、または前記第1の面と前記第2の面とをつなぐ側面上に配置され、前記少なくとも1つの第1の内部電極層に電気的に接続された第2の電極端子をさらに備える。
【0019】
態様12は、態様11に記載のノイズフィルタであって、前記第2の電極端子の形状は前記第1の電極端子の形状と合同な形状ではない。
【0020】
態様13は、態様1から12のいずれか1項に記載のノイズフィルタであって、前記少なくとも1つのグランド電極端子は第1のグランド電極端子および第2のグランド電極端子を含み、前記抵抗素子は、前記厚み方向に垂直な平面レイアウトにおいて前記第1のグランド電極端子と前記第2のグランド電極端子との間に配置されている。
【0021】
態様14は、態様1から13のいずれか1項に記載のノイズフィルタであって、前記少なくとも1つのグランド電極端子と前記少なくとも1つのグランド内部電極層との間を互いに電気的に接続し、互いに並列に設けられた複数のビア電極を含むグランドビア電極群をさらに備える。
【0022】
態様15は、態様1から14のいずれか1項に記載のノイズフィルタであって、前記セラミック部材中に配置され、第2の静電容量が形成されるように前記少なくとも1つのグランド内部電極層に対向し、前記第1の電極端子に電気的に接続された少なくとも1つの第2の内部電極層をさらに備える。
【0023】
態様16は、態様15に記載のノイズフィルタであって、前記第1の電極端子と前記少なくとも1つの第2の内部電極層との間を互いに電気的に接続し、互いに並列に設けられた複数のビア電極を含むビア電極群をさらに備える。
【0024】
態様17は、態様1から16のいずれか1項に記載のノイズフィルタであって、前記少なくとも1つの内部電極層は複数の第1の内部電極層であり、前記複数の第1の内部電極層同士を互いに電気的に接続し、互いに並列に設けられた複数のビア電極を含むビア電極群をさらに備える。
【0025】
態様18は、電子機器であって、態様1から17のいずれか1項に記載のノイズフィルタと、前記ノイズフィルタの前記セラミック部材の前記第2の面に対向する放熱部材と、前記ノイズフィルタの前記少なくとも1つのグランド電極端子と前記放熱部材とを互いに接着する導電性接着材と、を備える。
【0026】
態様19は、態様18に記載の電子機器であって、前記導電性接着材は、前記厚み方向において前記放熱部材と前記抵抗素子との間に配置された部分を有する。
【0027】
態様20は、態様18または19に記載の電子機器であって、前記放熱部材上に実装され、前記放熱部材に電気的に接続された第1の主端子、前記第1の主端子から離れた第2の主端子、および前記第1の主端子と前記第2の主端子との間のスイッチングを制御する信号を受けるための制御端子を有する半導体スイッチング素子と、前記半導体スイッチング素子の前記制御端子に電気的に接続された制御リードと、前記半導体スイッチング素子の第2の主端子と前記ノイズフィルタの前記第1の電極端子とに電気的に接続された主リードと、をさらに備える。
【0028】
態様21は、態様20に記載の電子機器であって、前記放熱部材上に設けられ、前記放熱部材上において前記ノイズフィルタおよび前記半導体スイッチング素子を囲み、前記制御リードおよび前記主リードを支持する枠体と、前記放熱部材上において前記枠体に囲まれた空間を封止するように前記枠体に取り付けられた蓋体と、をさらに備える。
【発明の効果】
【0029】
上記態様によれば、少なくとも1つのグランド電極端子および抵抗素子は共にセラミック部材の第2の面上に配置される。これにより、ノイズフィルタのグランド電極端子が放熱部材へ接合された電子機器において、抵抗素子が放熱部材に面する。よって、抵抗素子を放熱部材の近くに配置することができる。よって、抵抗素子からの放熱の効率が高められる。よって、ノイズフィルタの抵抗素子での電力消費にともなう温度上昇に起因してのパワーアンプの動作の不安定性を抑制することができる。
【0030】
この発明の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施の形態1における電子機器の等価回路を概略的に示す図である。
図2】実施の形態1における電子機器の構成を、蓋体の図示を省略しつつ概略的に示す平面図である。
図3図1の線III-IIIに沿う概略的な断面図である。
図4図3の領域IIIに対応する概略的な部分断面図である。
図5】実施の形態1におけるノイズフィルタの構成を概略的に示す断面図である。
図6】実施の形態1におけるノイズフィルタの構成を概略的に示す上面図である。
図7】実施の形態1におけるノイズフィルタの構成を概略的に示す下面図である。
図8】比較例の電子機器の構成を図4の視野と同様の視野で示す部分断面図である。
図9】比較例の電子機器における、抵抗素子の消費電力と、放熱部材およびノイズフィルタの各々の表面温度との関係を示すグラフ図である。
図10】実施例の電子機器における、抵抗素子の消費電力と、放熱部材およびノイズフィルタの各々の表面温度との関係を示すグラフ図である。
図11】実施の形態2におけるノイズフィルタの構成を概略的に示す断面図である。
図12】実施の形態3におけるノイズフィルタの構成を概略的に示す断面図である。
図13】実施の形態4におけるノイズフィルタの構成を概略的に示す断面図である。
図14】実施の形態5におけるノイズフィルタの等価回路を概略的に示す図である。
図15】実施の形態5におけるノイズフィルタの構成を概略的に示す断面図である。
図16】実施の形態6におけるノイズフィルタの構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1における電子機器200の等価回路を概略的に示す図である。図2は、電子機器200の構成を、蓋体295(図3)の図示を省略しつつ概略的に示す平面図である。図3は、図2の線III-IIIに沿う概略的な断面図である。図4は、図3の領域IVに対応する概略的な部分断面図である。
【0033】
電子機器200は、本実施の形態においてはRFパワーアンプであり、パワーアンプ用のノイズフィルタ101を有している。例えば、RFは1GHz以上10GHz以下であってよく、帯域幅は100MHz以上1GHz以下であってよい。ノイズフィルタ101は、RFパワーアンプに求められる帯域幅に対応した周波数以下のノイズを除去するためのものであり、その目的で、抵抗R、静電容量C1(第2の静電容量)および静電容量C2(第1の静電容量)を、図1に示された等価回路を構成するように有している。抵抗Rは、例えば、0.5Ω以上10Ω以下である。静電容量C1は、静電容量C2より小さくてよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0034】
電子機器200は、ノイズフィルタ101に加えて、半導体スイッチング素子271を含む少なくとも1つの電気的素子270と、半導体スイッチング素子271に電気的に接続される制御リード292および主リード291と、放熱部材251と、放熱部材251上にノイズフィルタ101を実装するための導電性接着材252とを含む。
【0035】
半導体スイッチング素子271は放熱部材251上に実装されている。半導体スイッチング素子271は、高い周波数での動作に適したワイドバンドギャップ半導体(特に、窒化ガリウム(GaN))を用いた素子であってよく、例えばMOSFETまたはIGBTである。半導体スイッチング素子271は、放熱部材251に電気的に接続された第1の主端子と、第1の主端子から離れた第2の主端子と、第1の主端子と第2の主端子との間のスイッチングを制御する信号を受けるための制御端子とを有する。半導体スイッチング素子271がMOSFETの場合、制御端子はゲート端子G(図1)であり、第1の主端子および第2の主端子のそれぞれはソース端子S(図1)およびドレイン端子D(図1)であってよく、以下における具体的説明はこの場合について行うものとする。少なくとも1つの電気的素子270は、本実施の形態においては他の電気的素子272(図1の等価回路においては図示を省略)を含み、電気的素子272は、例えば、キャパシタを含んでいてよい。
【0036】
主リード291(図2)は、半導体スイッチング素子271のドレイン端子D(図1)と、ノイズフィルタ101(図4)の外部電極端子31(第1の電極端子)とに電気的に接続されている。主リード291とノイズフィルタ101の外部電極端子31との電気的接続は、図2に示されているようにボンディングワイヤ261とメタライズ層281とによって行われてよく、あるいは、主リード291と外部電極端子31とがボンディングワイヤによって互いに直接的に接続されてもよい。ノイズフィルタ101のボンディングワイヤ261は、外部電極端子31(図4)と、主リード291に接するメタライズ層281とを互いに接続している。主リード291と半導体スイッチング素子271との電気的接続のための配線262は、図2に示された例においては、ボンディングワイヤ262aとボンディングワイヤ262bとの直列接続によって構成されている。ボンディングワイヤ262aは、主リード291と電気的素子272とを互いに接続している。ボンディングワイヤ262bは、電気的素子272と半導体スイッチング素子271とを互いに接続している。ボンディングワイヤ262aとボンディングワイヤ262bとは、電気的素子272によって互いに直列に接続されており、この直列接続は、典型的には、ボンディングワイヤ262aおよびボンディングワイヤ262bが電気的素子272の電極に共通して接続されることによって得られている。
【0037】
制御リード292は半導体スイッチング素子271のゲート端子Gに電気的に接続されている。この電気的接続は、例えばボンディングワイヤ265(図2)によってなされてよい。
【0038】
放熱部材251は、その上に配置された部材から熱を除去する機能を有している。言い換えれば、放熱部材251はヒートシンクである。よって放熱部材251は、高い熱伝導性を有することが好ましく、この観点で典型的には金属から形成される。当該金属は、例えば、銅(Cu)、銅合金、またはこれらの積層材料である。銅合金は、例えば、銅モリブデン合金(Cu-Mo)である。積層材料としては、例えば、銅(Cu)と銅モリブデン合金(Cu-Mo)と銅(Cu)との3層構造(Cu/Cu-Mo/Cu)を有する積層材料が、高い熱伝導性と、典型的なセラミック材料と整合させやすい面内方向における線膨張係数と、を有する材料として本技術分野においてよく知られている。なお、ここでの合金とは、複数の金属成分からなる固溶体の他に、固溶化していない混合体、金属間化合物、をも含めたものを指す。放熱部材251は板状の形状を有していてよい。言い換えれば、放熱部材251は放熱板であってよい。
【0039】
放熱部材251は、半導体スイッチング素子271のソース端子S(図1)と、ノイズフィルタ101のセラミック部材10の下面SF2(第2の面)(図4)との各々に対向している。導電性接着材(図示せず)が放熱部材251と半導体スイッチング素子271のソース端子Sとを互いに接着している。また、導電性接着材252が、放熱部材251と、ノイズフィルタ101の少なくとも1つのグランド電極端子30a,30b(図4)とを互いに接着している。導電性接着材252は、厚み方向(図4における縦方向)において、放熱部材251と、ノイズフィルタ101の絶縁膜90(絶縁体)(図4)とを互いにつないでいる。導電性接着材252は、金属を含有しており、例えば銀(Ag)を含有している。また、導電性接着材252は、例えば、はんだであってもよい。したがって、導電性接着材252は通電機能のみならず熱伝導機能も有している。なお、半導体スイッチング素子271用の導電性接着材の材料と、ノイズフィルタ101用の導電性接着材252の材料とは、同じであっても異なってもよい。
【0040】
電子機器200はさらに、枠体280(図2および図3)と、蓋体295(図3)とを含んでよい。枠体280は、放熱部材251上に設けられており、放熱部材251上においてノイズフィルタ101および半導体スイッチング素子271を囲んでいる。枠体280は主リード291および制御リード292を支持している。枠体280上には、主リード291および制御リード292のそれぞれが接合されるメタライズ層281およびメタライズ層282が設けられていてよい。蓋体295は、放熱部材251上において枠体280に囲まれた空間CV(図3)を封止するように枠体280に取り付けられている。
【0041】
図5図7のそれぞれは、本実施の形態におけるノイズフィルタ101の構成を概略的に示す断面図、上面図および下面図である。なお本明細書における「上面」および「下面」の文言は、互いに反対の面を区別する意図で用いられているものであり、重力方向に関連した何らかの限定を示唆するものではない。
【0042】
ノイズフィルタ101は、セラミック部材10と、少なくとも1つのグランド内部電極層20と、少なくとも1つの第2の内部電極層21と、少なくとも1つの第1の内部電極層22とを有している。複数のグランド内部電極層20が用いられる場合、これらは互いに電気的に接続される。言い換えれば、複数のグランド内部電極層20同士は互いに電気的に接続される。また複数の第2の内部電極層21が用いられる場合、これらは互いに電気的に接続される。言い換えれば、複数の第2の内部電極層21同士は互いに電気的に接続される。また複数の第1の内部電極層22が用いられる場合、これらは互いに電気的に接続される。言い換えれば、複数の第1の内部電極層22同士は互いに電気的に接続される。これらの電気的接続は、後述するように、セラミック部材10中に配置されたビア電極を用いてなされてよい。以下においては、複数のグランド内部電極層20と、1つの第2の内部電極層21と、複数の第1の内部電極層22とが用いられる場合について詳述する。
【0043】
セラミック部材10は、厚み方向において互いに反対の上面SF1(第1の面)および下面SF2(第2の面)を有している。上面SF1は平坦な面であってよい。また下面SF2は平坦な面であってよい。セラミック部材10は、電気的絶縁性を有している。セラミック部材10は、グランド内部電極層20、第2の内部電極層21および第1の内部電極層22との同時焼成を可能とするために、低温同時焼成セラミック(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)から作られていてよい。セラミック部材10の比誘電率は、静電容量C1および静電容量C2を容易に形成するために、20以上であってよい。なお、セラミック部材10の比誘電率は、例えば誘電率特性以外の他の特性を適正化する関係上、300以下であってよい。
【0044】
グランド内部電極層20、第2の内部電極層21および第1の内部電極層22は、セラミック部材10中に配置されている。グランド内部電極層20と、第2の内部電極層21および第1の内部電極層22を含む非グランド内部電極層とは、セラミック部材10中で厚み方向において交互に配置されていてよい。第2の内部電極層21は、静電容量C1が形成されるように少なくとも1つのグランド内部電極層20に対向しており、図5においては厚み方向において上方のグランド内部電極層20と下方のグランド内部電極層とに対向している。第1の内部電極層22は、静電容量C2が形成されるように少なくとも1つのグランド内部電極層20に対向しており、図5においては厚み方向において上方のグランド内部電極層20と下方のグランド内部電極層とに対向している。
【0045】
なお、図5において、第1の内部電極層22は、厚み方向に垂直な方向(図中、横方向)においてグランドビア電極40aおよびグランドビア電極40bの内側に形成されているが、第1の内部電極層22の少なくとも一部がグランドビア電極40aおよびグランドビア電極40bの外側に形成されていてもよい。第2の内部電極層21についても同様である。
【0046】
図5に示されているように、厚み方向において第2の内部電極層21が第1の内部電極層22とセラミック部材10の上面SF1との間に配置されてよい。本発明者のシミュレーションによれば、これにより、ノイズフィルタ101に起因した電気的損失を抑制しやすくなる。
【0047】
なお上面SF1に最も近い電極層は、図5においてはグランド内部電極層20であるが、変形例として、第2の内部電極層21または第1の内部電極層22であってもよい。同様に、下面SF2に最も近い電極層は、図5においてはグランド内部電極層20であるが、変形例として、第2の内部電極層21または第1の内部電極層22であってもよい。
【0048】
ノイズフィルタ101は、第2の内部電極層21に接続された少なくとも1つのビア電極41と、第1の内部電極層22に接続された少なくとも1つのビア電極42とを有している。図6および図7においては、互いに並列に設けられた複数のビア電極41と、互いに並列に設けられた複数のビア電極42とが設けられた例が示されている。言い換えれば、セラミック部材10の、厚み方向に隣り合う第1の内部電極層間に位置する少なくとも1つのセラミック層内で、複数のビア電極42が設けられている。また、セラミック部材10の、厚み方向に隣り合う第2の内部電極層間に位置する少なくとも1つのセラミック層内で、複数のビア電極41が設けられている。
【0049】
複数の第1の内部電極層22が設けられている場合において、各ビア電極42は、当該複数の第1の内部電極層22のすべてに接するように厚み方向(図5における縦方向)に沿って延在していてよく、あるいは、当該複数の第1の内部電極層22のうちの一部の第1の内部電極層22にのみ接するように厚み方向に延在していてよい。同様に、複数の第2の内部電極層21が設けられている場合において、各ビア電極41は、当該複数の第2の内部電極層21のすべてに接するように厚み方向(図5における縦方向)に沿って延在していてよく、あるいは、当該複数の第2の内部電極層21のうちの一部の第2の内部電極層21にのみ接するように厚み方向に延在していてよい。
【0050】
複数のビア電極42の数および配置は、上記セラミック層毎に共通であっても異なってもよい。同様に、複数のビア電極41の数および配置は、上記セラミック層毎に共通であっても異なってもよい。
【0051】
複数のビア電極41は第1のビア電極群41Pとも称し、また複数のビア電極42は第2のビア電極群42Pとも称する。
【0052】
ノイズフィルタ101はさらに、セラミック部材10の下面SF2上に少なくとも1つのグランド電極端子を有している。本実施の形態においては、この少なくとも1つのグランド電極端子は、下面SF2上に直接的に配置されている。以下においては、複数のグランド電極端子、具体的にはグランド電極端子30a(第1のグランド電極端子)およびグランド電極端子30b(第2のグランド電極端子)が用いられる場合について詳述する。なお、グランド電極端子30aおよびグランド電極端子30bを総称してグランド電極端子30と称することがある。グランド電極端子30はグランド内部電極層20に電気的に接続されている。
【0053】
上述したように少なくとも1つのグランド電極端子としてグランド電極端子30aおよびグランド電極端子30bが設けられる場合、これに対応して、ノイズフィルタ101は、グランド電極端子30aに接続される少なくとも1つのグランドビア電極40aと、グランド電極端子30bに接続される少なくとも1つのグランドビア電極40bとを有している。図7においては、互いに並列に設けられた複数のグランドビア電極40aと、互いに並列に設けられた複数のグランドビア電極40bとが設けられた例が示されている。言い換えれば、セラミック部材10の、厚み方向に隣り合うグランド内部電極層20間に位置する少なくとも1つのセラミック層内で、複数のグランドビア電極40aと、複数のグランドビア電極40bとが設けられている。各グランドビア電極は、複数のグランド内部電極層20のすべてに接するように厚み方向(図5における縦方向)に沿って延在していてよく、あるいは、複数のグランド内部電極層20のうちの一部のグランド内部電極層20にのみ接するように厚み方向に沿って延在していてよい。また、これらグランドビア電極の数および配置は、上記セラミック層毎に共通であっても異なってもよい。複数のグランドビア電極40aはグランドビア電極群40aPとも称し、また複数のグランドビア電極40bはグランドビア電極群40bPとも称する。グランドビア電極40aは、複数のグランド内部電極層20を互いに電気的に接続している。グランドビア電極40bも、複数のグランド内部電極層20を互いに電気的に接続している。
【0054】
ノイズフィルタ101はさらに、セラミック部材10の上面SF1上に外部電極端子31を有している。外部電極端子31は、ビア電極41に接続されることによって第2の内部電極層21に電気的に接続されている。
【0055】
ノイズフィルタ101はさらに、セラミック部材10の上面SF1上にテスト電極端子32(第2の電極端子)を有していてよい。テスト電極端子32は、ビア電極42に接続されることによって第1の内部電極層22に電気的に接続されている。厚み方向に垂直な平面レイアウトにおいて、テスト電極端子32の形状は外部電極端子31の形状と合同な形状でなくてよい。具体的には、テスト電極端子32の面積は外部電極端子31の面積よりも小さくてよく、これに代わって、あるいはこれとともに、テスト電極端子32の形状は外部電極端子31の形状と異なっていてよい。なおテスト電極端子32は、セラミック部材10の上面SF1上に代わって、上面SF1と下面SF2とをつなぐ側面上に配置されてもよい。その場合、少なくとも1つの第1の内部電極層22がセラミック部材10の側面に達する端部を有するように延在してよく、当該端部に接するようにテスト電極端子32がセラミック部材10の側面上に配置されてよい。また、テスト電極端子32は、不要な場合、省略されてよい。
【0056】
ノイズフィルタ101はさらに、セラミック部材10の下面SF2上に抵抗素子80を有している。抵抗素子80は、厚み方向に垂直な平面レイアウトにおいて、グランド電極端子30aとグランド電極端子30bとの間に配置されていてよい。具体的には、本実施の形態においては、抵抗素子80は下面SF2上においてグランド電極端子30aとグランド電極端子30bとの間に配置されていてよい。抵抗素子80は、第2の内部電極層21に電気的に接続された第1の端部81と、第1の内部電極層22に電気的に接続された第2の端部82とを有している。ここで、第2の内部電極層21は外部電極端子31に電気的に接続されているので、抵抗素子80の第1の端部81も外部電極端子31に電気的に接続されている。また、第1の内部電極層22はテスト電極端子32に電気的に接続されているので、抵抗素子80の第2の端部82もテスト電極端子32に電気的に接続されている。抵抗素子80は第1の端部81と第2の端部82との間で、抵抗R(図1)に対応した電気抵抗を有している。抵抗素子80は、電極材料に比して低い導電率を有する抵抗体材料からなっていてよい。抵抗素子80としては、公知の厚膜抵抗体が適用されてよい。例えば、PdおよびAgを含有する厚膜抵抗体(Pd-Ag厚膜抵抗体)が、よく知られている。
【0057】
ノイズフィルタ101はさらに、抵抗素子80への電気的接続を確実かつ安定的に得るために、セラミック部材10の下面SF2上に第1の抵抗電極端子71および第2の抵抗電極端子72を有していてよい。第1の抵抗電極端子71および第2の抵抗電極端子72のそれぞれは、抵抗素子80の第1の端部81および第2の端部82のそれぞれに接している。また第1の抵抗電極端子71および第2の抵抗電極端子72のそれぞれは、ビア電極41およびビア電極42に接している。よって、抵抗素子80の第1の端部81は、第1の抵抗電極端子71およびビア電極41を介して外部電極端子31に電気的に接続されている。また抵抗素子80の第2の端部82は、第2の抵抗電極端子72およびビア電極42を介してテスト電極端子32に電気的に接続されている。変形例として、ビア電極41およびビア電極42のそれぞれが抵抗素子80の第1の端部81および第2の端部82に直接的に接することによって第1の抵抗電極端子71および第2の抵抗電極端子72が省略されてもよいが、以下においては、第1の抵抗電極端子71および第2の抵抗電極端子72が用いられる場合について説明する。
【0058】
ノイズフィルタ101はさらに絶縁膜90(絶縁体)を有している。絶縁膜90は抵抗素子80を被覆している。これにより絶縁膜90が導電性接着材252と抵抗素子80との間を電気的に絶縁している。また絶縁膜90は第1の抵抗電極端子71および第2の抵抗電極端子72を被覆している。これにより絶縁膜90が、導電性接着材252と、第1の抵抗電極端子71および第2の抵抗電極端子72の各々との間を電気的に絶縁している。絶縁膜90は、高い電気的絶縁性を有していることが好ましい。また、電子機器200は、図示されていない他の部材(典型的には基板(図示せず))に実装されることが想定され得るものであり、この実装は、はんだリフロー工程のような高温加熱を伴う工程によって行われることが多い。よって絶縁膜90は、典型的なリフロー温度(例えば250℃程度)以上の高い耐熱性を有していることが好ましい。この観点で、絶縁膜90は、無機絶縁膜であることが好ましく、例えばガラス膜である。ただし、絶縁膜90は、十分な耐熱性を有しているならば樹脂膜であってもよい。絶縁膜90の厚みは、電気的絶縁性の観点で、例えば20μm以上である。また絶縁膜90の厚みは、抵抗素子80からの放熱を過度に阻害しない観点で、例えば40μm以下である。
【0059】
次に、ノイズフィルタ101の製造方法について、以下に、簡単に説明する。
【0060】
まず、セラミック部材10と、グランド内部電極層20と、第2の内部電極層21と、第1の内部電極層22と、グランドビア電極40aと、グランドビア電極40bと、ビア電極41と、ビア電極42とを有する焼成体が形成される。この焼成体の形成は、周知の積層セラミック技術を用いて行われてよい。例えば、セラミックグリーンシートの形成と、ビア電極設計に対応してのビア孔の形成と、ビア孔への電極ペースト(例えばAgPdペースト)の充填と、電極層の設計に対応しての電極ペースト(例えばAgPdペースト)の印刷と、セラミックグリーンシートを積層することによる積層体の形成と、積層体の焼成による焼成体の形成とが、順に行われる。なお積層体を構成する複数のセラミックグリーンシートの厚みは、互いに同じであっても異なってもよい。
【0061】
次に、上記の工程によって得られた焼成体の上面SF1に、外部電極端子31およびテスト電極端子32となる電極ペースト(例えばAuペースト)の印刷が行われる。また、焼結体の下面SF2上に、抵抗素子80となる抵抗体ペースト(例えば、Pd-Ag厚膜抵抗体用のペースト)の印刷と、第1の抵抗電極端子71、第2の抵抗電極端子72、グランド電極端子30aおよびグランド電極端子30bとなる電極ペースト(例えばAgPtペースト)の印刷と、絶縁膜90となるガラスペーストの印刷とが行われる。そして、上面SF1上および下面SF2上の上述したペースト体が焼成される。なお、これらペースト体の焼成は、必ずしも焼成体の上面SF1上および下面SF2上の上記すべてのペースト体が付加された後に行われる必要はなく、一部のペースト体の付加および焼成が行われた後に他のペースト体の付加および焼成が行われてよい。例えば、上述した本実施の形態における製造方法の変形例として、後述する第1~第3の変形例の製造方法が行われてよい。
【0062】
以上のように、本実施の形態においては、第1の抵抗電極端子71、第2の抵抗電極端子72、抵抗素子80、および絶縁膜90は、セラミック部材10の焼成の後に形成されてよい。よって、第1の抵抗電極端子71、第2の抵抗電極端子72、抵抗素子80、および絶縁膜90の各々の材料を、セラミック部材10との同時焼成が可能となるように選択する必要がない。
【0063】
第1の変形例においては、まず上記焼成体が形成される。次に、上記焼成体の上面SF1に、外部電極端子31およびテスト電極端子32となる電極ペースト(例えばAuペースト)の印刷が行われ、また、焼結体の下面SF2上に、第1の抵抗電極端子71、第2の抵抗電極端子72、グランド電極端子30aおよびグランド電極端子30bとなる電極ペースト(例えばAgPtペースト)の印刷が行われる。そして、上面SF1上および下面SF2上の上述したペースト体が焼成される。次に、焼結体の下面SF2上に、抵抗素子80となる抵抗体ペースト(例えば、Pd-Ag厚膜抵抗体用のペースト)の印刷が行われ、そしてこのペースト体が焼成される。次に、焼結体の下面SF2上に、絶縁膜90となるガラスペーストの印刷が行われ、そしてこのペースト体が焼成される。
【0064】
第2の変形例においては、上記積層体の上面SF1に、外部電極端子31およびテスト電極端子32となる電極ペースト(例えばAuペースト)の印刷が行われ、また、積層体の下面SF2上に、第1の抵抗電極端子71、第2の抵抗電極端子72、グランド電極端子30aおよびグランド電極端子30bとなる電極ペースト(例えばAgPtペースト)の印刷が行われる。そして、当該積層体と、その上面SF1上および下面SF2上の上述したペースト体とが、同時に焼成される。次に、上記焼成によって得られた焼結体の下面SF2上に、抵抗素子80となる抵抗体ペースト(例えば、Pd-Ag厚膜抵抗体用のペースト)の印刷が行われ、そしてこのペースト体が焼成される。次に、焼結体の下面SF2上に、絶縁膜90となるガラスペーストの印刷が行われ、そしてこのペースト体が焼成される。
【0065】
第3の変形例においては、上記積層体の上面SF1に、外部電極端子31およびテスト電極端子32となる電極ペースト(例えばAuペースト)の印刷が行われ、また、積層体の下面SF2上に、第1の抵抗電極端子71、第2の抵抗電極端子72、グランド電極端子30aおよびグランド電極端子30bとなる電極ペースト(例えばAgPtペースト)の印刷と、抵抗素子80となる抵抗体ペースト(例えば、Pd-Ag厚膜抵抗体用のペースト)の印刷とが行われる。そして、当該積層体と、その上面SF1上および下面SF2上の上述したペースト体とが、同時に焼成される。次に、焼結体の下面SF2上に、絶縁膜90となるガラスペーストの印刷が行われ、そしてこのペースト体が焼成される。
【0066】
本実施の形態における製造方法およびその第1~第3の変形例のいずれにおいても、上記積層体を焼成することによって焼成体が形成された後に、ガラスペーストを焼成することによって絶縁膜90が形成される。したがって、積層体が焼成される際には、積層体にガラスペーストが塗布されていない。よって、積層体の焼成中に、積層体中の導電成分がガラス中に拡散することが避けられる。よって、絶縁膜90中への導電成分の拡散量を抑制することができる。
【0067】
なお、大量生産のための慣用技術として、複数のノイズフィルタ101となる部分を含む半製品としての1つのブロックが上記製造方法によって形成された後に、当該半製品をダイシングすることによって、複数のノイズフィルタ101が切り出されてよい。
【0068】
図8は、比較例の電子機器200Cの構成を図4の視野と同様の視野で示す部分断面図である。電子機器200Cは比較例のノイズフィルタ101Cを有している。ノイズフィルタ101Cにおいては抵抗素子80が、下面SF2上ではなく上面SF1上に配置されている。
【0069】
図9は、比較例の電子機器200Cにおける、抵抗素子80の消費電力と、放熱部材251およびノイズフィルタ101Cの各々の表面温度との関係を示すグラフ図である。図10は、本実施の形態に対応する実施例の電子機器200における、抵抗素子80の消費電力と、放熱部材251およびノイズフィルタ101の各々の表面温度との関係を示すグラフ図である。なお両者に共通して、放熱部材251としては、3層構造(Cu/Cu-Mo/Cu)を有するヒートシンクが用いられた。またノイズフィルタの寸法は、長さ3mm×幅1mm×厚さ0.5mmとされた。また、静電容量C1は0.15nFとされ、静電容量C2は1.1nFとされ、抵抗Rは2Ωとされた。各グラフにおけるプロットは測定点を示している。これら測定点に対する直線近似から求めた、消費電力の代表値に対する表面温度の数値を、以下の表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
消費電力3Wにおいて比較すると、比較例のノイズフィルタ101Cの表面温度が約160℃であったのに対して、実施例のノイズフィルタ101の表面温度は90℃であった。セラミック部材10をなすセラミック材料の特性が保証される温度範囲は、例えば、-55℃~+125℃であり、また抵抗素子80をなす抵抗体材料の特性が保証される温度範囲は、例えば、25℃~150℃である。よって、比較例においては、ノイズフィルタ101Cの表面温度が過度に高いことによってセラミック部材10および抵抗素子80の特性の過度な変動が懸念される。この過度な変動は、抵抗R,静電容量C1および静電容量C2の少なくともいずれかの過大な変動につながる可能性があり、その結果、パワーアンプとしての電子機器200Cの動作が不安定となることがある。これに対して、実施例においては、ノイズフィルタ101の表面温度が十分に低く、よって、セラミック部材10および抵抗素子80の所望の特性が十分に維持されると考えられる。なお実施例においては、消費電力をさらに4Wまで増大させても、表面温度が十分に抑制されていた。
【0072】
上記のように比較例のノイズフィルタ101Cの表面温度が高かった理由は、比較例の電子機器200Cにおいて、抵抗素子80からの放熱の効率が低いからと考えられる。具体的には、電子機器200Cにおいては、抵抗素子80から発生した熱は、上面SF1の上方の大気中への放出と、セラミック部材10を経由しての放熱部材251への放出とによって除去されるところ、前者の大気冷却の作用は、放熱部材を用いての冷却作用に比して一般に効率が低く、また後者の放熱作用も、セラミック部材10をなすセラミック材料の熱伝導率が一般に低いことから、効率が低いと考えられる。
【0073】
本実施の形態によれば、図4に示されているように、グランド電極端子30および抵抗素子80は共にセラミック部材10の下面SF2に配置される。これにより、ノイズフィルタ101のグランド電極端子30が放熱部材251へ接合された電子機器200において、抵抗素子80が放熱部材251に面する。よって、抵抗素子80を放熱部材251の近くに配置することができる。よって、抵抗素子80からの放熱の効率が高められる。よって、ノイズフィルタ101の抵抗素子80での電力消費にともなう温度上昇に起因してのパワーアンプの動作の不安定性を抑制することができる。
【0074】
ノイズフィルタ101はテスト電極端子32を有してよい。これにより、抵抗素子80の第1の端部81および第2の端部82のそれぞれが、外部電極端子31およびテスト電極端子32に電気的に接続される。よって、外部電極端子31およびテスト電極端子32の間の抵抗値を測定することによって、抵抗素子80の抵抗値を検査することができる。なお、この検査のための測定装置の接続は、例えば、外部電極端子31およびテスト電極端子32にプローブ電極を接触させることによって行うことができる。この検査後、外部電極端子31には電気的配線としてボンディングワイヤ261(図2)が接続されるが、テスト電極端子32に電気的配線が接続されるか否かは任意であり、通常は接続される必要はない。
【0075】
図6に示されているように、テスト電極端子32の形状は外部電極端子31の形状と合同な形状ではなくてよい。これにより、テスト電極端子32と外部電極端子31とを、これらの外観に基づいて区別することが、容易となる。特に、図6に示されるように、テスト電極端子32の面積が外部電極端子31の面積よりも小さい場合には、テスト電極端子32の面積が外部電極端子31の面積以上である場合に比して、テスト電極端子32の材料コストを低減することができる。この効果は、テスト電極端子32が、高い材料コストを要する貴金属を含有する場合に大きく、特に、金(Au)を含有する場合に大きい。なお、外部電極端子31が半導体スイッチング素子271の主電流を扱う一方で、テスト電極端子32は、抵抗素子80の抵抗値の検査のための小電流を扱うことが想定されている。よって、テスト電極端子32は上記主電流に対応可能なほどの大きさを必要としないので、外部電極端子31の面積よりも小さな面積を有していても、その機能を十分に確保することができる。この観点では、テスト電極端子32の面積は、外部電極端子31の80%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。なお、テスト電極端子32の面積が過度に小さいと検査目的での電気的接続が困難となる。この観点では、テスト電極端子32の面積は、例えば、外部電極端子31の10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。
【0076】
なお、テスト電極端子32と外部電極端子31との区別を目的として、外部電極端子31の面積よりもテスト電極端子32の面積を大きくする場合は、目視で大きさを容易に区別できるようにするために、テスト電極端子32の面積は、例えば、外部電極端子31の110%以上であることが好ましく、120%以上であることがより好ましい。ただし、コストを抑える面から、テスト電極端子32の面積は、外部電極端子31の面積の180%以下であることが好ましく、160%以下であることがより好ましい。また、テスト電極端子32の形状と外部電極端子31の形状とは互いに異なっていてもよい。この場合も、前述同様、テスト電極端子32と外部電極端子31との区別が容易になるという利点がある。
【0077】
図4に示されているように、グランド電極端子30はグランド電極端子30aおよびグランド電極端子30bを含んでよい。抵抗素子80は、厚み方向に垂直な平面レイアウトにおいて第1のグランド電極端子30aと第2のグランド電極端子30bとの間に配置されている。この配置によって、平面レイアウトにおいて、グランド電極端子30aおよびグランド電極端子30bのそれぞれを、長さ方向(図4における横方向)において、抵抗素子80の一方側および他方側にバランスよく配置することができる。これにより、例えば、放熱部材251上へ実装される際のノイズフィルタ101の傾きを抑制することができる。
【0078】
ノイズフィルタ101は、単数のグランドビア電極40aを有していてよいが、図7に示されているように複数のグランドビア電極40a(グランドビア電極群40aP)を有していてもよい。後者の場合、1つのグランドビア電極40aが何らかの理由によって断線していてもグランドビア電極群40aPの配線機能をおおよそ維持することができる。ノイズフィルタ101は、単数のグランドビア電極40bを有していてよいが、図7に示されているように複数のグランドビア電極40b(グランドビア電極群40bP)を有していてもよい。後者の場合、1つのグランドビア電極40bが何らかの理由によって断線していてもグランドビア電極群40bPの配線機能をおおよそ維持することができる。
【0079】
ノイズフィルタ101は、単数のビア電極41を有してよいが、図6および図7に示されているように複数のビア電極41(第1のビア電極群41P)を有してもよい。後者の場合、1つのビア電極41が何らかの理由によって断線していても第1のビア電極群41Pの配線機能をおおよそ維持することができる。ノイズフィルタ101は、単数のビア電極42を有してよいが、図6および図7に示されているように複数のビア電極42(第2のビア電極群42P)を有してもよい。後者の場合、第2のビア電極群42Pの一部が何らかの理由によって断線していても第2のビア電極群42Pの配線機能をおおよそ維持することができる。ただし、セラミック部材10の、厚み方向に隣り合う1対の第2の内部電極層の間に位置するビア電極41および、厚み方向に隣り合う1対の第1の内部電極層の間に位置するビア電極42の、平面レイアウトにおける総面積が大きくなるほど、静電容量が小さくなる。したがって、1対の内部電極層の間において(好ましくは各対の間において)ビア電極が総面積CSを有しているとすると、総面積CSは、平面レイアウトにおいて当該1対の内部電極層が互いに重複する面積の10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。なお各ビア電極42は、複数の第1の内部電極層22のすべてに接するように厚み方向(図5における縦方向)に沿って延在していてよく、あるいは、複数の第1の内部電極層22のうちの一部の第1の内部電極層22にのみ接するように厚み方向に沿って延在していてよい。また、これらビア電極42の数および配置は、層毎に共通であっても異なってもよい。ビア電極41の数および配置も、層毎に共通であっても異なってもよい。
【0080】
なお図5においては、第2の内部電極層21および第1の内部電極層22は、厚み方向に垂直な方向(図中、横方向)においてグランドビア電極40aおよびグランドビア電極40bの内側に形成されているが、第2の内部電極層21および第1の内部電極層22の少なくとも一部がグランドビア電極40aおよびグランドビア電極40bの外側に形成されている場合においては、グランドビア電極40a,40bの、平面レイアウトにおける総面積が大きくなるほど、静電容量を大きく確保しにくくなる。したがって、厚み方向に隣り合う1対のグランド内部電極層20の間において(好ましくは各対の間において)グランドビア電極40a,40bが総面積CGを有しているとすると、総面積CGは、平面レイアウトにおいて当該1対のグランド内部電極層20が互いに重複する面積の10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
【0081】
図4に示されているように、導電性接着材252は、厚み方向において放熱部材251と抵抗素子80との間に配置された部分を有していてよい。具体的には、導電性接着材252は厚み方向において放熱部材251と絶縁膜90とを互いにつないでいてよい。導電性接着材252は熱伝導性にも優れているので、これにより放熱部材251と絶縁膜90との間の熱伝導性が高められる。よって、絶縁膜90に被覆された抵抗素子80からの放熱の効率を高めることができる。
【0082】
第2の内部電極層21を有することによって、後述するノイズフィルタ105(図14および図15)と異なり、セラミック部材10内に静電容量C1を形成することができる。特に、図5に示された構成においては、第1の内部電極層22と第2の内部電極層21との間のグランド内部電極層20を、静電容量C1および静電容量C2の両方のために利用することができる。
【0083】
<実施の形態2>
図11は、本実施の形態におけるノイズフィルタ102の構成を概略的に示す断面図である。本実施の形態におけるノイズフィルタ102は、ノイズフィルタ101(図5:実施の形態1)における絶縁膜90に代わって、電気的絶縁性を有するセラミック膜91(本実施の形態2における絶縁膜)を有している。また、グランド電極端子30aおよびグランド電極端子30bは、ノイズフィルタ101(図5:前述の実施の形態1)においては下面SF2上に直接的に配置されているが、ノイズフィルタ102(図11:本実施の形態2)においては、下面SF2上にセラミック膜91を介して間接的に配置されている。セラミック膜91は抵抗素子80の下面を覆う部分を有しており、当該部分のうち最も薄い箇所の厚みは、電気的絶縁性を確保する観点で10μm以上であることが望ましく、また熱抵抗を十分に抑制する観点で40μm以下であることが望ましい。
【0084】
ノイズフィルタ102の製造方法においては、前述した実施の形態1の製造方法と異なり、セラミック膜91、抵抗素子80、第1の抵抗電極端子71および第2の抵抗電極端子72の焼成が、セラミック部材10の焼成と同時に行われる。これにより工程数が削減されることによって、製造コストを低減することができる。なお、この焼成の結果、セラミック部材10とセラミック膜91とは互いに焼結されており、これらは1つのセラミック体RCを構成している。セラミック膜91の材料は、セラミック部材10の材料と同一であってもよいし、異なってもよい。前者の場合、焼成時のセラミック部材10の焼結収縮とセラミック膜91の焼結収縮とが同じとなるので、焼成時におけるこれらの間での層間剥離の発生が抑制される。
【0085】
なお本実施の形態においては、セラミック体RC中に、抵抗素子80、第1の抵抗電極端子71および第2の抵抗電極端子72が配置されている。セラミック体RCは、セラミック部材10と上面SF1を共有しており、またこれと反対の下面SF3を有している。グランド電極端子30aおよびグランド電極端子30bは下面SF3上に配置されている。グランド電極端子30aおよびグランド電極端子30bは、セラミック膜91を貫通してグランド内部電極層20に接続されていてよい。
【0086】
ノイズフィルタ102(図11:本実施の形態)は、電子機器200(図4)において、ノイズフィルタ101(図5:前述の実施の形態1)に代わって用いることができる。いずれの形態においても、グランド電極端子30aおよびグランド電極端子30bが放熱部材251に導電性接着材252によって接着される。本実施の形態のようにノイズフィルタ102の被接着面としての下面がセラミック膜91の下面SF3によって構成されていることによって、ノイズフィルタ102の被接着面の平坦性を、より確保しやすくなる。これにより、放熱部材251(図4)への接着の際にノイズフィルタ102のバランスがより取りやすく、よって、より安定した接着を行うことが可能となる。
【0087】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0088】
<実施の形態3>
図12は、本実施の形態におけるノイズフィルタ103の構成を概略的に示す断面図である。本実施の形態におけるノイズフィルタ103においては、ノイズフィルタ101(図5:実施の形態1)と異なり、抵抗素子80はセラミック部材10中に完全に埋設されている。言い換えれば、抵抗素子80は、厚み方向においてセラミック部材10の上面SF1と下面SF2との間に配置されている。具体的には、抵抗素子80は、厚み方向において第1の内部電極層22およびグランド内部電極層20を含む全内部電極層と前記セラミック部材の前記第2の面SF2上との間に配置されている。図12に示された例においては、全内部電極層は第2の内部電極層21も含む。また、第1の抵抗電極端子71および第2の抵抗電極端子72もセラミック部材10中に完全に埋設されていてよい。
【0089】
ノイズフィルタ103の製造方法においては、前述した実施の形態1の製造方法と異なり、抵抗素子80、第1の抵抗電極端子71および第2の抵抗電極端子72の焼成が、セラミック部材10の焼成と同時に行われる。これにより工程数が削減されることによって、製造コストを低減することができる。
【0090】
ノイズフィルタ103(図12:本実施の形態)は、電子機器200(図4)において、ノイズフィルタ101(図5:前述の実施の形態1)に代わって用いることができる。いずれの形態においても、グランド電極端子30aおよびグランド電極端子30bが放熱部材251に導電性接着材252によって接着される。本実施の形態のように抵抗素子80がセラミック部材10中に完全に埋設されていることによって、絶縁膜90(図5:実施の形態1)なしに抵抗素子80を導電性接着材252(図4参照)から電気的に絶縁することができる。
【0091】
また、ノイズフィルタ103(図12:本実施の形態)によれば、ノイズフィルタ101(図5)の下面のうち絶縁膜90によって構成されていた部分を、セラミック部材10で構成することができる。これによって、ノイズフィルタ103の被接着面としての下面の平坦性を、より確保しやすくなる。これにより、導電性接着材252を用いての放熱部材251(図4)への接着の際にノイズフィルタ103のバランスがより取りやすく、よって、より安定した接着を行うことが可能となる。
【0092】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0093】
<実施の形態4>
図13は、本実施の形態におけるノイズフィルタ104の構成を概略的に示す断面図である。
【0094】
抵抗素子80はセラミック部材10中に部分的にのみ埋設されている。具体的には、セラミック部材10の下面SF2は、本実施の形態においては、平坦な面ではなく、窪み部分(図13における中央部分)を有する面である。この窪み部分に抵抗素子80が配置されている。よってノイズフィルタ104においては、ノイズフィルタ103(図12:実施の形態3)と異なり、抵抗素子80は、厚み方向においてセラミック部材10の上面SF1と下面SF2との間には配置されていない。また図13に示されているように、抵抗素子80は、上記窪み部分から突出した部分を有していてよい。
【0095】
ノイズフィルタ104は、セラミック部材10と共に抵抗素子80を完全に埋設する絶縁膜90(絶縁体)を有している。これによって、ノイズフィルタ101に代わってノイズフィルタ104が放熱部材251へ接着された構成を有する電子機器200(図4参照)において、抵抗素子80を導電性接着材252(図4参照)から電気的に絶縁することができる。
【0096】
ノイズフィルタ104の製造方法において、第1の抵抗電極端子71および第2の抵抗電極端子72の焼成が、セラミック部材10の焼成と同時に行われてよい。グランド電極端子30aおよびグランド電極端子30bを形成するための焼成も同時に行われてよい。抵抗素子80の焼成は、この焼成と同時に行われてよいし、あるいは、この焼成の後に行われてよい。一方、絶縁膜90を形成するためのガラスペーストの印刷および焼成は、セラミック部材10の焼成の後に行われる。これにより、セラミック部材10中の導電成分がガラス中に拡散することが抑制される。よって、絶縁膜90中への導電成分の拡散量を抑制することができる。セラミック部材10の焼成後に抵抗素子80の焼成が行われる場合は、絶縁膜90を形成するためのガラスペーストの印刷および焼成が抵抗素子80の焼成の後に行われてよく、これにより、抵抗素子80中の導電成分がガラス中に拡散することも抑制される。
【0097】
本実施の形態によれば、抵抗素子80はセラミック部材10中に部分的に埋設されている。これにより本実施の形態(図13)においては、前述した実施の形態1(図5)に比して、絶縁膜90の厚みが薄くても抵抗素子80を導電性接着材252(図5)から電気的に十分に絶縁しやすい。なお、前述した実施の形態1におけるノイズフィルタ101(図5)および本実施の形態4におけるノイズフィルタ104(図13)については、グランド電極端子30aの下面、絶縁膜90の下面およびグランド電極端子30bの下面が同一平面上にあることがより望ましい。これにより、ノイズフィルタ101(またはノイズフィルタ104)を放熱部材251(図4)へ接着する際に、ノイズフィルタ101(またはノイズフィルタ104)のバランスがより取りやすく、よって安定した接着を行うことが可能となる。特に本実施の形態4におけるノイズフィルタ104(図13)は、抵抗素子80および絶縁膜90がグランド電極端子30a,30bに比して厚い場合でも、グランド電極端子30aの下面、絶縁膜90の下面およびグランド電極端子30bの下面を同一平面上に配置しやすいという利点を有する。
【0098】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0099】
<実施の形態5>
図14および図15のそれぞれは、本実施の形態5におけるノイズフィルタ105の等価回路および構成を概略的に示す断面図である。ノイズフィルタ105(図14)は、ノイズフィルタ101(図1:実施の形態1)と異なり、静電容量C1を有していない。これに対応して、ノイズフィルタ105(図15)は、静電容量C1を形成するための第2の内部電極層21(図5:実施の形態1)を有していない。本実施の形態5によっても、静電容量C1に関連した効果を除けば、実施の形態1において説明された効果とほぼ同様の効果が得られる。
【0100】
<実施の形態6>
図16は、本実施の形態6におけるノイズフィルタ106の構成を概略的に示す断面図である。ノイズフィルタ106は、ノイズフィルタ101(図5:実施の形態1)の構成に加えて、絶縁膜90(絶縁体)上、具体的には絶縁膜90の図16における下面上に、金属含有層95を有している。金属含有層95は、金属を含有する層である。具体的には、金属含有層95は、少なくともその表面(図16における下面)において、金属からなる部分を含む。具体的には、金属含有層95は、実質的に金属からなっていてよく、あるいは、金属と、当該金属中に分散されたセラミックとからなっていてよい。例えば、絶縁膜90がガラス膜の印刷とその焼成とによって形成される場合、金属含有層95は、当該焼成の後に、銀ペースト等の印刷とその焼成とを行うことによって形成されてよい。
【0101】
ノイズフィルタ106が絶縁膜90上に金属含有層95を有することによって、ノイズフィルタ106と導電性接着材252(図4参照)との間の密着力を向上させることができる。また熱抵抗を低減させることができる。
【0102】
変形例として、金属含有層95が、実施の形態1に代わって、実施の形態1の変形例、または、実施の形態1以外の他の実施の形態に適用されてよい。例えば、実施の形態2におけるノイズフィルタ102のセラミック膜91(絶縁体)上に金属含有層95が形成されてよい。この場合、金属含有層95は、セラミック膜91との同時焼成によって形成されてよい。また、実施の形態3におけるノイズフィルタ103のセラミック部材10の下面SF2上(言い換えれば、図12におけるセラミック部材10の下側)に金属含有層95が形成されてよい。この場合、金属含有層95は、セラミック部材10との同時焼成によって形成されてよい。
【0103】
上述した実施の形態1~6、およびそれらの変形例は、互いに自由に組み合わされてよい。この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての態様において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0104】
10 :セラミック部材
20 :グランド内部電極層
21 :第2の内部電極層
22 :第1の内部電極層
30 :グランド電極端子
30a :第1のグランド電極端子
30b :第2のグランド電極端子
31 :外部電極端子(第1の電極端子)
32 :テスト電極端子(第2の電極端子)
40a,40b :グランドビア電極
40aP,40bP:グランドビア電極群
41,42 :ビア電極
41P :第1のビア電極群
42P :第2のビア電極群
80 :抵抗素子
81 :第1の端部
82 :第2の端部
90 :絶縁膜(絶縁体)
91 :セラミック膜(絶縁膜)
95 :金属含有層
101~106 :ノイズフィルタ
200 :電子機器
251 :放熱部材
252 :導電性接着材
271 :半導体スイッチング素子
280 :枠体
291 :主リード
292 :制御リード
295 :蓋体
SF1 :上面(第1の面)
SF2 :下面(第2の面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16