(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133035
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】認証を行うID発信器、ID発信器を組み立てるためのセット、およびシステム
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20240920BHJP
E05B 19/00 20060101ALI20240920BHJP
H04M 1/72412 20210101ALI20240920BHJP
【FI】
E05B49/00 K
E05B19/00 J
H04M1/72412
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024041428
(22)【出願日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】10 2023 106 810.5
(32)【優先日】2023-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フォルクスヴァーゲン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Berliner Ring 2, 38440 Wolfsburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ボリス ツィラー
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ディーカース
(72)【発明者】
【氏名】ベルント エッテ
【テーマコード(参考)】
2E250
5K127
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250BB04
2E250CC02
2E250CC16
2E250FF23
2E250FF27
2E250FF36
2E250HH01
2E250JJ03
5K127BB22
5K127BB33
5K127DA15
5K127GA14
5K127GD16
5K127GD18
5K127GE03
5K127GE04
5K127JA04
5K127JA06
5K127JA25
5K127MA17
5K127MA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コスト効率は、妥当な安全基準およびシステムの適時の快適性レベルを妨げないこと
【解決手段】ID発信器(1)は、-アンテナ(2’)を備えたID発信器BLEインタフェース(2)と、-マイクロコントローラ(3)と、-スイッチング手段(4)と、-バッテリ(5)を収容するバッテリ収容室(6)とを備える。
マイクロコントローラ(3)は、スイッチング信号の受け取りに応答して、認証情報(8)を含みかつBLEビーコンデータパケットとして構成された認証信号(7)の送信をトリガするように構成されている。
さらに、ID発信器(1)を組み立てるためのセット、およびID発信器(1)と物理ユニットとから成るシステムも記載する。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ID発信器(1)から送信された認証情報(8)に基づいて物理ユニットのアクセス制御ユニットにおいて認証を行うID発信器(1)であって、
前記ID発信器(1)は、少なくとも、
-アンテナを備えたID発信器BLEインタフェース(2)と、
-前記ID発信器BLEインタフェース(2)に結合されたマイクロコントローラと、
-前記マイクロコントローラ(3)に結合されており、トリガに応答してスイッチング信号を前記マイクロコントローラ(3)に出力するスイッチング手段(4)と、
-電流供給源としてのバッテリ(5)を収容するバッテリ収容室(6)と
を備え、
前記マイクロコントローラ(3)は、前記マイクロコントローラ(3)での前記スイッチング信号の受け取りに応答して、前記スイッチング手段がトリガされた後、前記ID発信器BLEインタフェース(2)を用いて認証信号の送信をトリガするように構成されており、
前記認証信号(7)は認証情報(8)を含み、
前記認証信号(7)は、BLEビーコンデータパケットとして構成されている、
ID発信器(1)。
【請求項2】
前記スイッチング手段(4)は、押圧によって前記スイッチング手段(4)をトリガするための手動操作可能なプッシュボタンである、請求項1記載のID発信器(1)。
【請求項3】
前記マイクロコントローラ(3)は、
前記スイッチング手段(4)がトリガされた後、前記押圧の持続時間が第1の持続時間閾値を上回らなかった場合に、前記認証信号(7)を出力するように構成されており、または
前記スイッチング手段(4)がトリガされた後、前記押圧の持続時間が第1の持続時間閾値を上回らなかった場合に、前記認証信号(7)を出力し、ただし、前記押圧の持続時間が前記第1の持続時間閾値を上回った場合には、好ましくはBLEビーコンデータパケットとして構成された代替信号を出力するように構成されており、または
前記スイッチング手段(4)がトリガされた後、好ましくは前記押圧の持続時間が第1の持続時間閾値を上回る前に前記認証信号を出力し、さらに付加的に、前記認証信号が送信された後、前記押圧の持続時間が前記第1の持続時間閾値を上回った場合に、好ましくはBLEビーコンデータパケットとして構成された代替信号を出力するように構成されている、
請求項2記載のID発信器(1)。
【請求項4】
前記マイクロコントローラ(3)は、
前記スイッチング手段(4)がトリガされた後、前記押圧の持続時間が前記第1の持続時間閾値よりも長い第2の持続時間閾値を上回らないとの付加的な条件のもとでのみ代替信号を出力し、好ましくはそれ以外の場合には当該トリガを失敗したものとして破棄する
ように構成されている、請求項3記載のID発信器(1)。
【請求項5】
前記マイクロコントローラ(3)に結合された第2のスイッチング手段が、前記ID発信器(1)の内部もしくは表面に配置されており、前記第2のスイッチング手段は、好ましくはセンサとして、特に運動センサまたは加速度センサまたはジャイロセンサとして、前記ID発信器の運動に応答して前記マイクロコントローラ(3)にスイッチング信号を出力するように構成されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載のID発信器(1)。
【請求項6】
前記スイッチング手段は、前記ID発信器の運動に応答して前記マイクロコントローラ(3)にスイッチング信号を出力する運動センサまたは加速度センサまたはジャイロセンサとして構成されている、請求項1記載のID発信器(1)。
【請求項7】
前記認証信号(7)は、
例えば、前記アクセス制御ユニットに対応付けられた、非対称の暗号化法の公開鍵を含む暗号化された認証情報(8)、または
例えば、前記アクセス制御ユニットに対応付けられた、対称の暗号化法の秘密鍵を含む暗号化された認証情報(8)
を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載のID発信器(1)。
【請求項8】
前記ID発信器(1)は、例えばLEDとして構成された出力手段(9)を有しており、前記出力手段(9)は、好ましくはスキャン要求としてまたは送信要求として構成されたBLEメッセージが受け取られた後に信号出力を行うように構成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のID発信器(1)。
【請求項9】
前記ID発信器BLEインタフェース(2)および前記マイクロコントローラ(3)は、システムオンチップとして構成されているかまたはシステムオンチップの一部である、請求項1から8までのいずれか1項記載のID発信器(1)。
【請求項10】
前記ID発信器(1)内に、前記認証情報を格納した別個の記憶要素が配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のID発信器(1)。
【請求項11】
前記記憶要素は、前記マイクロコントローラ(3)に有線接続によって結合されている、請求項10記載のID発信器(1)。
【請求項12】
前記記憶要素は、RFIDトランスポンダとして、好ましくは受動RFIDトランスポンダとして、またはNFCタグとして形成されている、請求項10または11記載のID発信器(1)。
【請求項13】
前記記憶要素は、NFCタグとして構成されており、前記マイクロコントローラ(3)は、前記NFCタグを読み出すように構成されたNFCチップに結合されている、請求項12記載のID発信器(1)。
【請求項14】
前記マイクロコントローラ(3)は、前記記憶要素(20)から提供された認証情報を暗号化し、該認証情報が設けられてBLEビーコンパケットとして構成された認証信号を形成するように構成されている、請求項10から13までのいずれか1項記載のID発信器(1)。
【請求項15】
前記ID発信器(1)は、複数の部分から形成されており、少なくとも、相互に取り外し可能または取り外し不能に接続された第1のID発信器部分(10)および第2のID発信器部分(11)を有しており、
前記第1のID発信器部分(10)は、前記アンテナ(2)を備えたID発信器BLEインタフェース(2)と、前記マイクロコントローラ(3)と、好ましくは前記スイッチング手段(4)および前記バッテリ収容室(5)とを含み、
前記第2のID発信器部分(11)は前記別個の記憶要素(20)を含む、
請求項10から14までのいずれか1項記載のID発信器(1)。
【請求項16】
請求項15記載の特徴を有するID発信器(1)を組み立てるためのセット(12)であって、
前記セットは第1のID発信器部分(10)と第2のID発信器部分(11)とを別個に含み、前記第1のID発信器部分(10)と前記第2のID発信器部分(11)とを接続することによってID発信器(1)が製造される、
セット(12)。
【請求項17】
前記第1のID発信器部分(10)および前記第2のID発信器部分(11)は、相互に相補的な接続手段、例えばバヨネットジョイントを有する、請求項16記載のセット。
【請求項18】
請求項1から15までのいずれか1項記載の特徴を有するID発信器(1)とアクセス制御ユニット(15)を備えた物理ユニット(14)とから成るシステム(13)であって、
前記アクセス制御ユニット(15)が、
-アンテナ(16’,17’)を備えたアクセス制御ユニットBLEインタフェース(16,17)と、
-前記アクセス制御ユニットBLEインタフェースに結合された制御記憶手段(18)であって、前記アクセス制御ユニットBLEインタフェース(16,17)で受信された認証信号につき該認証信号の真正性を検査するように構成されている、制御記憶手段(18)と
を含み、
前記ID発信器(1)上に存在する認証情報と前記制御記憶手段(18)上に存在する認証検査情報とが、相互に対応付けられた、好ましくは相補的な暗号鍵であるかまたは該暗号鍵を含む、
システム(13)。
【請求項19】
前記物理ユニットは、相互に離間された2個以上のn個のアクセス制御ユニットBLEインタフェース(16,17)を有しており、
前記制御記憶手段は、前記アクセス制御ユニットBLEインタフェース(16,17)において前記認証信号の受信時に検出されたRSSI値を、前記ID発信器の位置特定のためのnラテレーションおよび/またはnアンギュレーションに対して評価するように構成されている、請求項18記載のシステム。
【請求項20】
前記制御記憶手段(18)に結合されたNFCリーダ(19)が前記物理ユニット(14)に配置されており、前記制御記憶手段は、前記NFCリーダによって検出された認証情報につき該認証情報の真正性を検査するように構成されている、請求項18または19記載のシステム。
【請求項21】
前記システムがさらに、前記認証信号をBLEビーコンデータパケットとして送信するように構成されたスマートフォンを有する、請求項18から20までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項22】
前記物理ユニット(14)は、車両、好ましくは陸上車両、特に好ましくは乗用車である、請求項18から21までのいずれか1項記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証のためにID発信器から認証情報が送信される、物理ユニットのアクセス制御ユニットにおいて認証を行うID発信器に関する。本発明はさらに、相応するID発信器を組み立てるためのセットに関する。本発明はさらに、システムに関する。
【0002】
実用上公知であるのは、ポータブルID発信器による認証を物理ユニットのアクセス制御ユニットにおいて行うことである。認証が成功した後、アクセス制御ユニットは、物理ユニットまたは物理ユニットの1つもしくは複数の機能部へのアクセスを容認する。物理ユニットは例えば車両として構成可能である。車両として構成された物理ユニットにおいては、既に数年前から、実用上、これらの物理ユニットが電子ロックシステムとして構成されたアクセス制御ユニットを有していることが公知である。実用上公知の電子ロックシステムは、例えば、ポータブル無線キーとして構成されて無線を用いて車両と通信するID発信器の使用を基礎としている。
【0003】
無線キーとして構成されたID発信器と通信する車両のロックシステムは、実用においては、例えばパッシブエントリ/パッシブスタート(PEPS)なる名称で知られている。このようなシステムは、例えば、ID発信器と車両の中央制御ユニットとの間で双方向に実行される低周波無線通信と高周波無線通信との組み合わせを基礎としている。
【0004】
このようなシステムは、車両の別の装置、例えば接近センサと組み合わされて、一方での高い操作快適性と他方での良好な安全性との組み合わせを提供する。
【0005】
前述した手法に相応に、言及した形式のシステムは比較的複雑となり、このことはとりわけ相応のコスト負担を伴う。したがって、こうしたシステムは、プレミアム製品での使用またはプレミアム製品における使用に特に良好に適している。製品パレットを補足することのほか、物理ユニットのアクセス制御ユニットにおいてID発信器の認証を行うための、それほどコストがかからないシステムを提供することも所望されている。ただし、この場合に目標とされるコスト効率は、妥当な安全基準およびシステムの適時の快適性レベルを妨げないことが望ましい。
【0006】
上述した背景から、本明細書において提示する発明は、ここに記載した要求を満たす解決手段を提供するという課題を基礎とする。
【0007】
上記の課題は、請求項1記載の特徴を有する、物理ユニットのアクセス制御ユニットにおいて認証を行うID発信器により解決される。上記の課題はさらに、請求項16記載の特徴を有する、ID発信器を組み立てるためのセットによって解決される。上記の課題はさらに、請求項18記載の特徴を有する、ID発信器と物理ユニットとから成るシステムによって解決される。
【0008】
物理ユニットのアクセス制御ユニットにおいて認証を行うID発信器が設けられる。認証は、ID発信器が送信する認証情報を用いて行われる。アクセス制御ユニットは、物理ユニットへのアクセスをブロックするかつ/または解除するために使用され、この場合、許可は認証が成功した後に行われ、上述したID発信器の構成要素ではない。物理ユニットの一例は車両であってよい。車両のアクセス制御ユニットは、例えば車両の電子ロックシステムとして構成することができる。
【0009】
ID発信器は、ポータブルであり、少なくとも1つのID発信器BLEインタフェースを有する。BLEインタフェースなる概念は、Bluetooth規格に従ったBLE通信に適したコンポーネントの全体に関連する。すなわち、これは、BLE通信の規格に準拠した動作に必要とされる全てのハードウェアおよびソフトウェアの要件を満たす。特に、BLEインタフェースは上述したようにアンテナを備えている。BLEインタフェースは、例えばBLE通信に必要な全ての要件を満たす1つのモジュールであってよいが、相互に結合された個別コンポーネントの全体を設けることもできる。ID発信器BLEインタフェースは、例えば市販入手可能なBluetoothモジュールとして構成することができる。
【0010】
BLEとは、Bluetooth-Low-Energyを表す略称である。Bluetooth-Low-Energyは、バージョン4.0以降の最近のBluetooth規格において、例えばhttps://www.Bluetooth.com/specifications/specs/core-specification-5-0/から詳細な情報を呼び出すことのできる、例えば本出願の優先日の時点でBluetooth Core規格5.0として規定されている通信プロトコルである。
【0011】
ID発信器BLEインタフェースにはマイクロコントローラが結合されている。同様に、マイクロコントローラには、スイッチング手段がトリガされたことに応答してスイッチング信号をマイクロコントローラに出力するスイッチング手段も結合されている。つまり、ID発信器は、トリガされたときに相応のスイッチング信号をマイクロコントローラに出力する手段または素子を含み、当該手段または素子が、スイッチング手段の操作が行われたという情報をマイクロコントローラに伝送する。
【0012】
さらに、ID発信器は、電流供給用のバッテリを収容することのできるバッテリ収容室を含む。一発展形態においてはさらに、バッテリ収容室内に既にバッテリが収容されているように構成可能である。
【0013】
マイクロコントローラは、マイクロコントローラでのスイッチング信号の受け取りに応答して、すなわちスイッチング手段がトリガされた後、ID発信器BLEインタフェースを用いて認証信号の送信をトリガするように構成されている。すなわち、マイクロコントローラは、受け取られたスイッチング信号に応答して、ID発信器BLEインタフェースを用いて認証信号の送信をトリガする。つまり、ID発信器には、相互に結合されて、スイッチング手段のトリガにより認証信号の送信が行われるように構成されたコンポーネントが設けられている。
【0014】
本開示の中心的な思想は、認証信号の形成に関する。一方では、認証信号が認証情報を含むように定められている。これは、ID発信器BLEインタフェースによって送信される認証信号が、物理ユニットのアクセス制御ユニットに認証情報を供給し、これにより、認証情報とアクセス制御ユニットとが適切にかつ相互に適応的に形成される場合に、アクセス制御ユニットがID発信器の認証を行うことができることを意味する。
【0015】
認証信号に関する別の中心的な態様は、認証信号がBLEビーコンデータパケットとして構成されていることにある。
【0016】
BLEビーコンデータパケットなる概念およびこれと類似した意味を有するビーコンデータパケットなる概念は、本明細書で論じる形式では、Bluetooth-Low-Energyビーコンデータパケットの略称として理解されるべきである。バージョン4.0以降のBluetooth規格の範囲におけるBluetooth-Low-Energyの使用において、ビーコンなる概念が確立されている。ハードウェア送信器が周辺受信装置での受信用の識別子を送信する適用分野においては、ビーコンデータパケットを送信するハードウェア送信器の名称としてのビーコンは、当業者に公知の固定の概念である。
【0017】
ビーコンデータパケットは、小さいサイズ、典型的には数十バイトから数百バイトのデータパケットである。ビーコンの使用は、通常、それぞれのビーコンデータパケットの可能な組成を定義した所定のプロトコル、例えば、Apple社のプロプライエタリのiBeacon(登録商標)プロトコルもしくはGoogle社の自由に実装可能なEddystone(登録商標)プロトコル、またはオープンかつ自由に利用可能なAltBeacon規格に基づいている。こうした発展形態を実現するために、これら双方またはそれぞれ他の利用可能なビーコンプロトコルを利用することができる。
【0018】
ビーコンが利用される適用分野は、多くの場合に位置特定に関連している。
【0019】
すなわち、本発明によるID発信器は、特に、マイクロコントローラとマイクロコントローラに結合されたID発信器BLEインタフェースとの協働により、BLEビーコンデータパケット、すなわち、構造の点で典型的にはビーコンから送信されたデータパケットに等しいかまたは類似したデータパケットを送信することができる。つまり、ID発信器のスイッチング手段が操作された瞬間に、当該ID発信器は、好ましくは利用可能なビーコンプロトコルに準拠して構成されたビーコンデータパケットを送信する。
【0020】
BLEビーコンデータパケットは、利用可能なビーコンプロトコルにおいて特に2つの特徴を有しており、すなわち、一方ではこれらのデータパケットが比較的小さいことであり(例えばiBeacon(登録商標)データフィールドの場合には31バイトであり、Eddystone(登録商標)ビーコンの場合には256バイトである)、他方では、これらが制限されたデータ量の範囲内で比較的自由にコンフィグレーションできるように構成可能であることである。これにより、多くの適用シナリオにおいて十分な安全性要件を満たすための十分に複雑な認証情報を含む認証信号を、BLEビーコンデータパケットとして形成し送信することが達成可能となる。例えば、BLEビーコンデータパケットは、256バイトまでの大きさのEddystoneフレーム内で、例えば暗号化されて格納される認証情報のために128バイトを使用する、Eddystoneビーコンとして構成可能である。BLEデータパケットは、例えばAltBeaconデータパケットとして構成することもできる。
【0021】
多く使用されているビーコン送信器との相違点は、ビーコン送信器のアプリケーションが典型的にはミリ秒間隔のビーコンデータパケットのインターバルで反復送信されることにあり、このことに関して、本発明によるID発信器では、BLEビーコンデータパケットとして構成された認証信号がスイッチング手段のトリガに応答して送信される。
【0022】
本発明によるID発信器は、上述した実施形態に基づいて、複数の観点において有利な特性の組み合わせを提供する。
【0023】
ビーコン通信を利用することの利点、すなわち特にBLEビーコンデータパケットの送信に基づくプロトコルを利用することの利点は、とりわけ個々のビーコンデータパケットの設定された比較的小さなサイズ(これはデータ量を意味する)に基づき、比較的低いエネルギ消費もしくは電力需要を伴うことにある。このことから、例えばバッテリ交換または代替的にID発信器の交換が必要とされるまでに、当該ID発信器の比較的長い寿命が得られる。
【0024】
本発明によるID発信器の別の利点は、BLEビーコンデータパケットの送信に基づくBLE通信の特性から得られる。BLE無線通信は、内因的にきわめて制限された無線通信の到達距離を有している。このため、認証信号の受信についても、物理ユニットのアクセス制御ユニットには、ID発信器がアクセス制御ユニットBLEインタフェースを中心とした、ビーコン通信の典型的な到達距離に対応する所定の距離内に位置するとの情報が暗黙的に与えられ、この到達距離は、数十メートルのオーダーであるが(所望される場合)状況によっては所望の要求シナリオに応じて発展形態の実現が委ねられた開発者によってさらに小さな値へと変更されることもある。したがって、本発明によるID発信器を提供することにより、受信側の物理ユニットが操作者の位置特定についての最初の粗推定を行うことができる。ビーコン通信の制限された到達距離に付随するさらなる利点は、不所望の受信器、例えばいわゆるリレーステーション攻撃を実行する意図を持った悪意あるデータユーザによりID発信器BLEインタフェースを介して送信された認証信号の受信の確率が低減されることにある。上述した2つの効果により、物理ユニットの動作安全性が高められる。
【0025】
有利な一発展形態では、スイッチング手段は手動で操作可能なプッシュボタンとして構成されており、このプッシュボタンは押圧によって操作可能であり、これによりプッシュボタンとして構成されたスイッチング手段がトリガされる。プッシュボタンは例えばばねを用いて復帰させることができ、押圧時に電気的なコンタクト接続を閉成して、これによりマイクロコントローラへのスイッチング信号の出力を生じさせることができる。
【0026】
有利な一発展形態では、マイクロコントローラは、スイッチング手段がトリガされた後、押圧の持続時間、すなわち押圧開始から押圧終了までの時間が第1の持続時間閾値を上回らなかった場合に、認証信号を出力するように構成可能である。例えば、マイクロコントローラは、プッシュボタンが押圧されている時間を検出するように構成可能であり、これは、例えば、押圧の持続時間が過度に長くなく、すなわち例えば0.5秒~5秒に設定可能な第1の持続時間閾値を上回らなかった場合に認証信号を出力するために使用可能である。付加的に、任意選択手段として、持続時間閾値が上方超過されるケースにおいて、押圧の持続時間が第1の持続時間閾値を上回った場合には、認証信号に代えて代替信号を出力することができる。代替信号は、例えば同様にBLEビーコンデータパケットとして構成可能である。こうした実施形態によれば、唯一のプッシュボタンしか設けられていなくても2つの異なる信号を出力することができ、ここでは、押圧の持続時間に依存して、認証信号による認証、例えば車両での認証が可能となるかまたは比較的長い時間の押圧によって他の機能を応答させることができる。このような別の機能は、物理ユニットのメーカによって、例えばさらなる快適性機能を応答させるために利用することができる。例えば、車両として構成された物理ユニットでは、代替信号を用いてトリガされる快適性機能としてウィンドウの開閉を行うことができる。
【0027】
こうした有利な実施形態の別の変形形態では、スイッチング手段がトリガされた後、認証信号が出力され、殊に好ましくは押圧の持続時間が第1の持続時間閾値を上回らない前に、付加的に認証信号が送信された後と同様に、押圧の持続時間が第1の持続時間閾値を上回った場合に、好ましくはBLEビーコンデータパケットとして構成された代替信号が出力される。この場合、まず認証信号を物理ユニットに提供することおよび後で代替信号を用いて別の機能の要求を許可することの双方が可能となる。
【0028】
上述した考察の有利な発展形態では、マイクロコントローラは、スイッチング手段がトリガされた後、押圧の持続時間が第1の持続時間閾値よりも長い第2の持続時間閾値を上回らないとの付加的な条件のもとでのみ代替信号を出力し、好ましくはそれ以外の場合には当該トリガを失敗したものとして破棄するように構成されている。当該実施形態により、操作者は、代替信号の形成の過程において代替信号の送信をさらに中断することができる。例えば、第2の持続時間閾値は3秒~10秒の間の値を有することができる。代替的にもしくは付加的に、特に好ましくは第1の持続時間閾値は0.5秒~5秒であり、第2の持続時間閾値は第1の持続時間閾値よりも0.5秒~5秒長い値である。
【0029】
代替的にもしくは付加的に、第2のスイッチング手段はID発信器の内部もしくは表面に配置されるように構成可能であり、この場合、第2のスイッチング手段は、好ましくはセンサとして、特に運動センサまたは加速度センサまたはジャイロセンサとして構成される。第2のセンサは、ID発信器の運動に応答してマイクロコントローラにスイッチング信号を出力するために用いられる。このようにすれば、操作者に対して、プッシュボタンの操作なしでも認証信号の送信を可能にさせることができる。この場合、マイクロコントローラは、加速度センサまたはジャイロセンサまたは運動センサから出力された特定の信号を認証信号の送信のための前提条件として予め設定できるように構成可能であり、これにより、例えば、操作者が事前にプログラミングした運動パターンに一致するセンサ出力信号が受け取られた場合にのみ認証信号がマイクロコントローラから出力されるように、マイクロコントローラの問い合わせを構成することができる。例えば、センサが加速度センサとして設けられている場合、加速度センサがマイクロコントローラに加速度閾値を上回る加速度値を出力するように構成可能である。これにより、有利には、操作者による運動が頻繁にもしくは繰り返し発生した場合にも、意図された状況以外では認証信号の出力が発生しないかまたは稀にしか発生せず、このことから電流消費の割合が低減されるという有利な結果がもたらされる。
【0030】
ID発信器の代替発展形態では、スイッチング手段は、運動センサまたは加速度センサまたはジャイロセンサとして、ID発信器の運動に応答してマイクロコントローラにスイッチング信号を出力するように構成される。この場合、認証信号の出力はセンサ出力に依存して例えば上述した方式と同様に機能するが、上記の変形形態とは異なり、センサは、ID発信器に配置された唯一のスイッチング手段となるように構成される。
【0031】
好ましくは、認証信号は、認証情報が暗号化されて含まれるように構成される。例えば、認証情報は、アクセス制御ユニットに対応付けられた、非対称の暗号化法の公開鍵によって暗号化可能である。代替的に、認証情報は、アクセス制御ユニットに対応付けられた、対称の暗号化法の秘密鍵によって暗号化可能であってもよい。認証情報の暗号化により、認証信号が傍受されても認証情報の妨害が直接に生じないという利点が得られる。この手法の利点は、認証信号が傍受された後、元の認証情報による認証が依然として許容可能であって、このため、元の安全性を回復するには暗号化方式をソフトウェアによって適応化すれば十分であるということである。
【0032】
一発展形態では、ID発信器は、例えばLEDとして構成された出力手段を有しており、好ましくはスキャン要求としてもしくは送信要求として構成されたBLEメッセージが受け取られた後に信号出力を行うように構成されている。このように構成されたID発信器は、例えば、アクセス制御ユニットから送信されたBLEメッセージを用いて、場合によっては成功した認証のシグナリングに加えて、例えば認証信号の適正な受け取りまたは代替的に認証情報の適正な受け取りを介して、操作者に情報を出力するために使用することができる。
【0033】
特に好ましくは、一発展形態では、ID発信器BLEインタフェースおよびマイクロコントローラがシステムオンチップとして構成されているか、またはシステムオンチップの一部である。このことは、相応のシステムオンチップコンポーネントが提供された後、例えば外部の製造工場におけるID発信器の組み立てが僅かな時間コストで可能になるという利点を有する。
【0034】
有利な一発展形態では、ID発信器内に、認証情報を格納した別個の記憶要素が配置されている。当該記憶要素は例えばマイクロコントローラに有線接続によって結合可能であるが、代替的にもしくは付加的に、RFIDトランスポンダとして、好ましくは受動RFIDトランスポンダまたはNFCタグとして形成されていてもよい。
【0035】
認証情報を含む記憶要素をRFIDトランスポンダまたはNFCタグとして形成することの利点は、相応にRFIDリーダまたはNFCリーダを備えた物理ユニットのアクセス制御ユニットへ近づけることによって認証情報を直接に認識させるためにID発信器自体を利用できることであり、ここで、所定の安全性レベルは、RFIDトランスポンダまたはNFCタグの送信到達距離が制限されていることによって保証される。ここで、相応に構成されたID発信器は、2つの機能、すなわち、一方の、スイッチング手段のトリガによって、好ましくは認証情報を暗号化された状態で含む認証信号の出力を生じさせる能力と、他方の、代替的な適用において、相応に構成されたRFIDリーダまたはNFC情報を読み出すように構成されたNFCチップへとID発信器を直接に近づけることによって認証情報を伝送する能力とを有する。なお、後者の場合、認証情報が暗号化されていることも必ずしも要求されない。なぜなら、送信到達距離が制限されていることにより、伝送された情報の傍受の可能性が十分に低いと評価できるからである。ID発信器のこの上述した実施形態は、例えば電流供給がもはや保証されない状況において、例えばバッテリが空になった後、それでもなお物理ユニットへのアクセスが保証され続け、これにより緊急時アクセス機能が設けられるという利点を有する。
【0036】
ID発信器の好ましい一発展形態では、マイクロコントローラは、有線接続による伝送によってまたはマイクロコントローラに接続されてNFCタグを読み出すように構成されたNFCチップに基づいて、記憶要素上に存在する認証情報を受信し、次いでこの認証情報を暗号化し、続いて、場合により別の必要なもしくは所望の情報、例えばUUIDと共にBLEビーコンパケットを形成して認証信号として送信するように構成されている。当該手法は、BLEビーコンデータパケットの利用に基づいて特にエレガントに実行可能である。なぜなら、例えば、幾つかのビーコンプロトコルで公知のAES暗号化法が用意されているからである。
【0037】
特に好ましい発展形態として、ここでは、ID発信器が複数の部分から形成される。ここでの変形形態において、ID発信器は、少なくとも第1のID発信器部分および第2のID発信器部分を有しており、第1のID発信器部分と第2のID発信器部分とは、相互に取り外し可能または取り外し不能に接続されている。第1のID発信器部分は、少なくとも、アンテナを備えたID発信器BLEインタフェースとマイクロコントローラとを有する。好ましくは、第1のID発信器部分は、付加的に、スイッチング手段およびバッテリ収容室を有する。第2のID発信器部分は、少なくとも別個の記憶要素を有する。第1のID発信器部分がスイッチング手段およびバッテリ収容室を含まない場合、これらは第2のID発信器部分の構成要素であってもよい。
【0038】
本発明のさらなる思想は、複数部分から構成されている上述した変形形態におけるID発信器を組み立てるためのセットに関する。当該セットは、第1のID発信器部分と第2のID発信器部分とを別個に含み、第1のID発信器部分と第2のID発信器部分とは相互に別個に存在しており、ここで、本発明によるID発信器またはその発展形態のうちの1つは、第1のID発信器部分と第2のID発信器部分とを接続することによって製造可能である。このようなセットを設けることは、組み立てられていない状態においても別個の記憶要素を含む第2のID発信器部分が存在し、これにより特に別個の記憶要素がRFIDトランスポンダまたはNFCタグの形態で存在する場合、第1のID発信器部分がまだ存在していなくても物理ユニットへのアクセスを可能にするための手段が得られる、という利点を有する。このため、スイッチング手段のトリガの結果としてBLEビーコンデータパケットとしての認証信号が提供されることについての拡張機能を、一方では任意選択手段として設けられる手段として提供することができる。このために、2つの部分を別個に提供することで、例えば存在している電子部品に欠陥が生じた場合に第1のID発信器部分を代替部品と置換することができ、ひいてはID発信器をコスト効率よくかつリソースフレンドリに提供することができる。
【0039】
特に好ましくは、第1のID発信器部分と第2のID発信器部分とが相互に相補的な接続手段を有する。適切な相補的な接続手段の一例は、バヨネットジョイントである。相補的な接続手段、例えばバヨネットジョイントの利点は、第1のID発信器部分と第2のID発信器部分とが部材どうしの接着なしに組み立て可能となることにあり、これにより特に、例えば欠陥が発生した場合に第1のID発信器部分をより簡単に交換することができる。
【0040】
本発明のさらなる着想は、冒頭に記載した本発明もしくはその発展形態によるID発信器とアクセス制御ユニットを備えた物理ユニットとから成るシステムであって、ここで、アクセス制御ユニットが、
-アンテナを備えたアクセス制御ユニットBLEインタフェースと、
-アクセス制御ユニットBLEインタフェースに結合された制御記憶手段であって、アクセス制御ユニットBLEインタフェースで受信された認証信号につき当該認証信号の真正性を検査するように構成されている、制御記憶手段と
を含む、システムに関する。
【0041】
このことは、例えば、制御記憶手段が計算能力および対応する情報を含んでいることを意味し、例えば、非対称の暗号化法が使用されるケースにおいて、BLEビーコンデータパケットとして構成されて受信された認証信号から認証情報を抽出し、次いでこの認証情報と対応する比較値とを比較し、認証情報につき真正性を検査して、この検査に基づきID発信器が物理ユニットの機能へのアクセスのために認証されたID発信器であるかどうかを確認するために、アクセス制御ユニットの秘密鍵が設けられていることを意味する。
【0042】
この場合、ID発信器上に存在する認証情報と制御記憶手段上に存在する認証検査情報とが、相互に対応付けられた、好ましくは相補的な暗号鍵であるかまたはこの暗号鍵を含み、ここで、相補的な暗号鍵なる概念は、暗号鍵が相互に帰属していることを意味すると理解されるべきであり、相互に相補的な暗号鍵の一例としては非対称の暗号化法の秘密鍵および公開鍵が挙げられ、別の例としては対称の暗号化法の2つの同一の暗号鍵が挙げられる。
【0043】
一実施形態によれば、物理ユニットは、相互に離間されて物理ユニットに配置されている、n個の、ただし2個以上の、アクセス制御ユニットBLEインタフェースを有する。この場合、制御記憶手段は、アクセス制御ユニットBLEインタフェースにおいて認証信号の受信時に検出されるRSSI値を使用して、ID発信器の位置特定のためのnラテレーションおよび/またはnアンギュレーションを評価するように構成されており、すなわち、例えば3つのアクセス制御ユニットBLEインタフェースが設けられているケースでは、三辺測量および/または三角測量を実行して、検出されたRSSI値の評価によってID発信器の位置特定を達成するように構成されている。
【0044】
システムの有利な一発展形態では、制御記憶手段に結合されたNFCリーダが物理ユニットに配置されており、ここで、制御記憶手段は、NFCリーダによって検出された認証情報につきこの認証情報の真正性を検査するように構成されている。したがって、このようなシステムでは、物理ユニットは、NFCタグを有するID発信器の上述した発展形態により、データ伝送を実行して、ID発信器から受信された認証情報につき真正性を検査するためにこの認証情報を利用するように構成されている。
【0045】
特に好ましくは、システムはさらに、認証信号をBLEビーコンデータパケットとして送信するように構成されたスマートフォンを有する。現在市販入手可能なスマートフォンは、通常、最初からBLEメッセージを送信できるように準備されている。当該発展形態では、スマートフォンはさらに、例えば提供されているアプリケーションを用いて、物理ユニットへのエントリまたは物理ユニットの機能へのアクセスを許可するための認証信号を送信するように準備されている。すなわち、スマートフォンおよびID発信器は、物理ユニットの機能にアクセスするために選択的に選択可能な認証手段として冗長的に存在し、操作者の利用プリファレンスに応じて利用時に選択可能であるように構成することができる。
【0046】
特に好ましくは、物理ユニットは、車両、例えば陸上車両、特に好ましくは乗用車である。
【0047】
本発明の発展形態のさらなる詳細、特徴および利点は、記載の発展形態の例示的な実施例を図示した図に関連した以下の説明から得られる。
【0048】
上述した特徴ならびに以下で挙げられる特徴は、それぞれ提示する組み合わせだけでなく他の組み合わせにおいてもまたは単独でも使用可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1a】本発明によるID発信器の第1の実施例を示す図である。
【
図1b】本発明によるID発信器の第2の実施例を示す図である。
【
図2】本発明によるID発信器の第3の実施例を示す図である。
【
図3】本発明による、ID発信器を組み立てるためのセットの一実施例を示す図である。
【
図4】本発明による、ID発信器と物理ユニットとから成るシステムの一実施例を示す図である。
【0050】
図1aには、物理ユニットのアクセス制御ユニットにおいて認証を行うID発信器1の第1の実施例が示されている。所望の機能を達成するために、ID発信器1は、一方では、アンテナ2’を備えたID発信器BLEインタフェース2を有しており、ここで、アンテナ2’はID発信器BLEインタフェース2の構成要素である。さらに、ID発信器1には、ID発信器BLEインタフェース2に結合されたマイクロコントローラ3が配置されている。ID発信器BLEインタフェース2およびマイクロコントローラ3は、システムオンチップとして構成されている。ID発信器1はさらに、手動操作可能なプッシュボタン4として構成されたスイッチング手段4を有している。当該ID発信器1においてはさらに、電流供給源としてID発信器1の機能性を保証するバッテリ5がバッテリ収容室6内に収容されている。プッシュボタン4が押圧されると、電気コンタクトが閉成され、このことに応答してスイッチング信号がマイクロコントローラ3へ出力される。マイクロコントローラ3は、特に適切なプログラミングにより、スイッチング信号の受け取りを識別し、設定された方式で当該スイッチング信号に応答するように構成されている。マイクロコントローラ3は、スイッチング信号の受け取りに応答して、ID発信器BLEインタフェース2を用いて認証信号7の送信をトリガする。認証信号7は、BLEビーコンデータパケットとして構成されており、このため、数十バイトから数百バイトまでの大きさ、大抵の場合1000バイト未満の大きさを有しており、例えばEddystone(登録商標)ビーコンデータパケットまたはAltBeaconとして構成可能である。BLEビーコンデータパケットとして構成された認証信号は、少なくとも1つの認証情報8を含み、この認証情報8を用いて、これに対応するように準備された、物理ユニットのアクセス制御ユニットにおける認証を行うことができる。
【0051】
図1bには、ID発信器1の別の実施形態が示されている。
図1bに示されている実施形態は、スイッチング手段4が、ID発信器1の運動に応答してスイッチング信号をマイクロコントローラ3に出力するジャイロセンサとして構成されている点で、
図1aに示された実施形態と異なっている。
【0052】
なお、ID発信器1は、LEDとして構成されてマイクロコントローラ3に結合されている出力手段9を有している。好ましくはスキャン要求または送信要求として構成された設定されたBLEメッセージがID発信器BLEインタフェース2で受け取られた後、マイクロコントローラ3により、LED9が光信号を出力するように駆動制御される。これにより、設定されたBLEメッセージのソースを相応にプログラミングする際に、例えば認証信号7が適正に受け取られたことについて、または認証情報に基づく認証の成功について、操作者に返信メッセージを通知することができる。
【0053】
図2からは、本発明によるID発信器1の第3の実施例が殊に側面図において見て取れる。図示の実施形態におけるID発信器1は、
図1aに示されている実施形態におけるID発信器1と全て同じ要素を有する。
図2に示されている実施形態はさらに、ID発信器1が複数の部分から形成されているという特徴、すなわち、第1のID発信器部分10と第2のID発信器部分11とを有しており、これら2つの部分10,11が相互に取り外し可能に結合されているという特徴を有する。第1のID発信器部分10は、アンテナ2’を備えたID発信器BLEインタフェース2と、マイクロコントローラ3と、プッシュボタン4と、バッテリ収容室5とを有する。第2のID発信器部分11内には、NFCタグ20として構成された別個の記憶要素が設けられており、この記憶要素上に認証情報が格納されている。第1のID発信器部分10内に配置されたマイクロコントローラ3は、NFCタグを読み出すように構成されたNFCチップに結合されており、これにより、伝送された認証情報8を受け取ることができ、次いで、この認証情報8を暗号化して、BLEビーコンパッケージ7として構成された認証信号の構成要素として送信することができる。
【0054】
図3からは、例えば
図2に示されている形式の実施形態におけるID発信器1を組み立てるためのセット12が見て取れる。当該セットは、第1のID発信器部分10と第2のID発信器部分11とを別個に含んでいる。第1のID発信器部分10と第2のID発信器部分11とを接続することによって、ID発信器が形成される。
【0055】
図4には、ID発信器1と乗用車として構成された物理ユニット14とから成るシステム13が示されている。車両は、車両制御システムとして構成されたアクセス制御ユニット15を有しており、このアクセス制御ユニット15は、
-アンテナ16’を備えたアクセス制御ユニットBLEインタフェース16と、
-第2のアンテナ17’を備えた第2のアクセス制御ユニットBLEインタフェース17と、
-アクセス制御ユニットBLEインタフェースに結合された制御記憶手段18と
を備え、
制御記憶手段が、アクセス制御ユニットBLEインタフェースで受信された認証信号につきこの認証信号の真正性について検査するように構成されている。
【0056】
車両には、制御記憶手段18に結合されたNFCリーダ19が配置されており、このNFCリーダ19により、ID発信器のNFCタグ、例えば
図3に示されているID発信器のNFCタグ20に格納されている認証情報を読み出すことができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ID発信器(1)から送信された認証情報(8)に基づいて物理ユニットのアクセス制御ユニットにおいて認証を行うID発信器(1)であって、
前記ID発信器(1)は、少なくとも、
-アンテナを備えたID発信器BLEインタフェース(2)と、
-前記ID発信器BLEインタフェース(2)に結合されたマイクロコントローラと、
-前記マイクロコントローラ(3)に結合されており、トリガに応答してスイッチング信号を前記マイクロコントローラ(3)に出力するスイッチング手段(4)と、
-電流供給源としてのバッテリ(5)を収容するバッテリ収容室(6)と
を備え、
前記マイクロコントローラ(3)は、前記マイクロコントローラ(3)での前記スイッチング信号の受け取りに応答して、前記スイッチング手段がトリガされた後、前記ID発信器BLEインタフェース(2)を用いて認証信号の送信をトリガするように構成されており、
前記認証信号(7)は認証情報(8)を含み、
前記認証信号(7)は、BLEビーコンデータパケットとして構成されている、
ID発信器(1)。
【請求項2】
前記スイッチング手段(4)は、押圧によって前記スイッチング手段(4)をトリガするための手動操作可能なプッシュボタンである、請求項1記載のID発信器(1)。
【請求項3】
前記マイクロコントローラ(3)は、
前記スイッチング手段(4)がトリガされた後、前記押圧の持続時間が第1の持続時間閾値を上回らなかった場合に、前記認証信号(7)を出力するように構成されており、または
前記スイッチング手段(4)がトリガされた後、前記押圧の持続時間が第1の持続時間閾値を上回らなかった場合に、前記認証信号(7)を出力し、ただし、前記押圧の持続時間が前記第1の持続時間閾値を上回った場合には、好ましくはBLEビーコンデータパケットとして構成された代替信号を出力するように構成されており、または
前記スイッチング手段(4)がトリガされた後、好ましくは前記押圧の持続時間が第1の持続時間閾値を上回る前に前記認証信号を出力し、さらに付加的に、前記認証信号が送信された後、前記押圧の持続時間が前記第1の持続時間閾値を上回った場合に、好ましくはBLEビーコンデータパケットとして構成された代替信号を出力するように構成されている、
請求項2記載のID発信器(1)。
【請求項4】
前記マイクロコントローラ(3)は、
前記スイッチング手段(4)がトリガされた後、前記押圧の持続時間が前記第1の持続時間閾値よりも長い第2の持続時間閾値を上回らないとの付加的な条件のもとでのみ代替信号を出力し、好ましくはそれ以外の場合には当該トリガを失敗したものとして破棄する
ように構成されている、請求項3記載のID発信器(1)。
【請求項5】
前記マイクロコントローラ(3)に結合された第2のスイッチング手段が、前記ID発信器(1)の内部もしくは表面に配置されており、前記第2のスイッチング手段は、好ましくはセンサとして、特に運動センサまたは加速度センサまたはジャイロセンサとして、前記ID発信器の運動に応答して前記マイクロコントローラ(3)にスイッチング信号を出力するように構成されている、
請求項1記載のID発信器(1)。
【請求項6】
前記スイッチング手段は、前記ID発信器の運動に応答して前記マイクロコントローラ(3)にスイッチング信号を出力する運動センサまたは加速度センサまたはジャイロセンサとして構成されている、請求項1記載のID発信器(1)。
【請求項7】
前記認証信号(7)は、
例えば、前記アクセス制御ユニットに対応付けられた、非対称の暗号化法の公開鍵を含む暗号化された認証情報(8)、または
例えば、前記アクセス制御ユニットに対応付けられた、対称の暗号化法の秘密鍵を含む暗号化された認証情報(8)
を含む、請求項1記載のID発信器(1)。
【請求項8】
前記ID発信器(1)は、例えばLEDとして構成された出力手段(9)を有しており、前記出力手段(9)は、好ましくはスキャン要求としてまたは送信要求として構成されたBLEメッセージが受け取られた後に信号出力を行うように構成されている、請求項1記載のID発信器(1)。
【請求項9】
前記ID発信器BLEインタフェース(2)および前記マイクロコントローラ(3)は、システムオンチップとして構成されているかまたはシステムオンチップの一部である、請求項1記載のID発信器(1)。
【請求項10】
前記ID発信器(1)内に、前記認証情報を格納した別個の記憶要素が配置されている、請求項1記載のID発信器(1)。
【請求項11】
前記記憶要素は、前記マイクロコントローラ(3)に有線接続によって結合されている、請求項10記載のID発信器(1)。
【請求項12】
前記記憶要素は、RFIDトランスポンダとして、好ましくは受動RFIDトランスポンダとして、またはNFCタグとして形成されている、請求項10記載のID発信器(1)。
【請求項13】
前記記憶要素は、NFCタグとして構成されており、前記マイクロコントローラ(3)は、前記NFCタグを読み出すように構成されたNFCチップに結合されている、請求項12記載のID発信器(1)。
【請求項14】
前記マイクロコントローラ(3)は、前記記憶要素(20)から提供された認証情報を暗号化し、該認証情報が設けられてBLEビーコンパケットとして構成された認証信号を形成するように構成されている、請求項10記載のID発信器(1)。
【請求項15】
前記ID発信器(1)は、複数の部分から形成されており、少なくとも、相互に取り外し可能または取り外し不能に接続された第1のID発信器部分(10)および第2のID発信器部分(11)を有しており、
前記第1のID発信器部分(10)は、前記アンテナ(2)を備えたID発信器BLEインタフェース(2)と、前記マイクロコントローラ(3)と、好ましくは前記スイッチング手段(4)および前記バッテリ収容室(5)とを含み、
前記第2のID発信器部分(11)は前記別個の記憶要素(20)を含む、
請求項10記載のID発信器(1)。
【請求項16】
請求項15記載の特徴を有するID発信器(1)を組み立てるためのセット(12)であって、
前記セットは第1のID発信器部分(10)と第2のID発信器部分(11)とを別個に含み、前記第1のID発信器部分(10)と前記第2のID発信器部分(11)とを接続することによってID発信器(1)が製造される、
セット(12)。
【請求項17】
前記第1のID発信器部分(10)および前記第2のID発信器部分(11)は、相互に相補的な接続手段、例えばバヨネットジョイントを有する、請求項16記載のセット。
【請求項18】
請求項1から15までのいずれか1項記載の特徴を有するID発信器(1)とアクセス制御ユニット(15)を備えた物理ユニット(14)とから成るシステム(13)であって、
前記アクセス制御ユニット(15)が、
-アンテナ(16’,17’)を備えたアクセス制御ユニットBLEインタフェース(16,17)と、
-前記アクセス制御ユニットBLEインタフェースに結合された制御記憶手段(18)であって、前記アクセス制御ユニットBLEインタフェース(16,17)で受信された認証信号につき該認証信号の真正性を検査するように構成されている、制御記憶手段(18)と
を含み、
前記ID発信器(1)上に存在する認証情報と前記制御記憶手段(18)上に存在する認証検査情報とが、相互に対応付けられた、好ましくは相補的な暗号鍵であるかまたは該暗号鍵を含む、
システム(13)。
【請求項19】
前記物理ユニットは、相互に離間された2個以上のn個のアクセス制御ユニットBLEインタフェース(16,17)を有しており、
前記制御記憶手段は、前記アクセス制御ユニットBLEインタフェース(16,17)において前記認証信号の受信時に検出されたRSSI値を、前記ID発信器の位置特定のためのnラテレーションおよび/またはnアンギュレーションに対して評価するように構成されている、請求項18記載のシステム。
【請求項20】
前記制御記憶手段(18)に結合されたNFCリーダ(19)が前記物理ユニット(14)に配置されており、前記制御記憶手段は、前記NFCリーダによって検出された認証情報につき該認証情報の真正性を検査するように構成されている、請求項18記載のシステム。
【請求項21】
前記システムがさらに、前記認証信号をBLEビーコンデータパケットとして送信するように構成されたスマートフォンを有する、請求項18記載のシステム。
【請求項22】
前記物理ユニット(14)は、車両、好ましくは陸上車両、特に好ましくは乗用車である、請求項18記載のシステム。
【外国語明細書】