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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133036
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】気化器バーナ用の燃焼室構成群
(51)【国際特許分類】
   F23D 3/40 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
F23D3/40 G
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024041429
(22)【出願日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】10 2023 106 734.6
(32)【優先日】2023-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】513287336
【氏名又は名称】エーバーシュペッヒャー クライメット コントロール システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Eberspaecher Climate Control Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Eberspaecher Strasse 24, D-73730 Esslingen am Neckar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス コルマー
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー シュミット
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特に燃料運転式の車両加熱装置のための気化器バーナ用の燃焼室構成群に関する。
【解決手段】気化器バーナ用の燃焼室構成群であって、ハウジング長手方向軸線(L)の方向に延在し、燃焼室(18)を半径方向外側において画定する周壁(12)と、燃焼室(18)を軸線方向において画定する燃焼室底部(16)とを備えた燃焼室ハウジング(14)を含み、燃焼室底部(16)の、燃焼室(18)に面した側(26)に、多孔質の気化器媒体(30)が設けられている、燃焼室構成群において、多孔質の気化器媒体(30)は、その燃焼室(18)に面した側(32)において、燃焼室(18)に対して凹状に湾曲していることを特徴とする、燃焼室構成群。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に燃料運転式の車両加熱装置のための気化器バーナ用の燃焼室構成群であって、ハウジング長手方向軸線(L)の方向に延在し、燃焼室(18)を半径方向外側において画定する周壁(12)と、前記燃焼室(18)を軸線方向において画定する燃焼室底部(16)とを備えた燃焼室ハウジング(14)を含み、前記燃焼室底部(16)の、前記燃焼室(18)に面した側(26)に、多孔質の気化器媒体(30)が設けられている、燃焼室構成群において、
前記多孔質の気化器媒体(30)は、その前記燃焼室(18)に面した側(32)において、前記燃焼室(18)に対して凹状に湾曲していることを特徴とする、燃焼室構成群。
【請求項2】
前記多孔質の気化器媒体(30)は、前記燃焼室(18)に対して凹状に湾曲しているか、または/かつ前記多孔質の気化器媒体(30)は、実質的に一定の厚さ(d)を有している、請求項1記載の燃焼室構成群。
【請求項3】
半径方向において中心の領域(22)では、燃料供給導管(24)が前記燃焼室底部(16)に開口しており、前記多孔質の気化器媒体(30)は、前記半径方向において中心の領域(22)に湾曲頂点(38)を有している、請求項1または2記載の燃焼室構成群。
【請求項4】
前記燃焼室底部(16)は、その前記燃焼室(18)に面した側(26)において、前記燃焼室(18)に対して凹状に湾曲した気化器媒体当接面(28)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の燃焼室構成群。
【請求項5】
前記気化器媒体当接面(28)の湾曲幾何学形状が、前記多孔質の気化器媒体(30)の、前記燃焼室(18)に面した側(32)における湾曲幾何学形状に実質的に相応する、請求項4記載の燃焼室構成群。
【請求項6】
前記燃焼室底部(16)は、前記気化器媒体当接面(28)の少なくとも一部を提供する底壁(20)を含む、請求項4または5記載の燃焼室構成群。
【請求項7】
前記底壁(20)は、実質的に前記気化器媒体当接面(28)全体を提供している、請求項6記載の燃焼室構成群。
【請求項8】
前記底壁(20)は、該底壁の、前記燃焼室(18)に面した側(47)に向かって開いた凹部(32)を、多孔質の分散器媒体(44)を収容するために有しており、前記気化器媒体当接面(28)の第1の部分(46)が前記底壁(20)に設けられており、前記気化器媒体当接面(28)の第2の部分(48)が前記多孔質の分散器媒体(44)に設けられている、請求項6記載の燃焼室構成群。
【請求項9】
前記気化器媒体当接面(28)の前記第1の部分(46)は、前記気化器媒体当接面(28)の前記第2の部分(48)を環状に包囲しているか、または/かつ前記多孔質の分散器媒体(44)は、前記ハウジング長手方向軸線(L)に対して実質的にセンタリングされて配置されているか、または/かつ前記多孔質の分散器媒体(44)は、前記多孔質の気化器媒体(30)よりも高い多孔度を有している、請求項8記載の燃焼室構成群。
【請求項10】
前記多孔質の分散器媒体(44)は、その前記気化器媒体当接面(28)とは反対の側(50)において湾曲しており、前記多孔質の分散器媒体(44)の、前記気化器媒体当接面(28)とは反対の側(50)における湾曲幾何学形状は、前記気化器媒体当接面(28)の前記第2の部分(48)における前記多孔質の分散器媒体(44)の湾曲幾何学形状に実質的に相応するか、または/かつ前記多孔質の分散器媒体(44)は、実質的に一定の厚さ(D)を有している、請求項8または9記載の燃焼室構成群。
【請求項11】
前記多孔質の分散器媒体(44)は、その前記気化器媒体当接面(28)とは反対の側(50)において、前記ハウジング長手方向軸線(L)に対して実質的に直交して延在しているか、または/かつ前記多孔質の分散器媒体(44)は、半径方向内側から半径方向外側に向かって増大する厚さ(D)を有している、請求項8または9記載の燃焼室構成群。
【請求項12】
前記底壁(20)の、前記気化器媒体当接面(28)とは反対の側(52)に、絶縁材料(56)が配置されている、請求項6から11までのいずれか1項記載の燃焼室構成群。
【請求項13】
前記多孔質の気化器媒体(30)は、その外周面において、前記燃焼室底部(16)に対して固定されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の燃焼室構成群。
【請求項14】
前記燃焼室底部(16)は、前記底壁(20)を環状に包囲する保持部材(34)を有しており、該保持部材(34)は、前記多孔質の気化器媒体(30)を、その前記燃焼室(18)に面した側(32)において前記底壁(20)に対して保持する少なくとも1つの保持突起(36)を有している、請求項6および13記載の燃焼室構成群。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の燃焼室構成群(10)を備えたバーナ領域を有する、燃料運転式の車両加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に燃料運転式の車両加熱装置において使用することができる、気化器バーナ用の燃焼室構成群に関する。
【0002】
燃料運転式の車両加熱装置の気化器バーナ用のこのような燃焼室構成群は、独国特許出願公開第102013220654号明細書から公知である。この燃焼室構成群は、ハウジング長手方向軸線の方向に延在する周壁と、燃焼室を軸線方向において画定する燃焼室底部とを備えた燃焼室ハウジングを含む。燃焼室底部の底壁は、その燃焼室に面した側において、ハウジング長手方向軸線に対して実質的に直交して延在する気化器媒体当接面を提供しており、気化器媒体当接面には、実質的に平面状に形成されており、その燃焼室に面した側でもってハウジング長手方向軸線に対して実質的に直交するように向けられた多孔質の気化器媒体が配置されている。半径方向において中心の領域内で、底壁に燃料供給導管が開口しており、燃料供給導管を介して液体燃料が多孔質の気化器媒体に供給される。
【0003】
独国特許発明第102012111289号明細書から公知の、燃料運転式の車両加熱装置の気化器バーナ用の燃焼室構成群の場合には、特に複数の層から構成された多孔質の気化器媒体の、燃焼室底部の底壁に対する当接の改良を達成するために、底壁が、燃焼室底部によりハウジング長手方向軸線の方向で軸線方向において画定された燃焼室に対して凸状に湾曲されている。その基本状態において基本的にディスク状もしくは平面状に形成された多孔質の気化器媒体は、その半径方向外側の領域において、燃焼室に対して凸状に湾曲した底壁の半径方向外側の領域に対して保持され、これにより、多孔質の気化器媒体も同様に、燃焼室に対して凸状に湾曲した形態をとり、ひいては特にその半径方向において中心の領域内でも、底壁の凸状に湾曲した気化器媒体当接面に対して、より強く押し付けられている。
【0004】
本発明の課題は、改良された燃焼特性を達成する、特に燃料運転式の車両加熱装置のための気化器バーナ用の燃焼室構成群を設けることにある。
【0005】
この課題は本発明に基づき、特に燃料運転式の車両加熱装置のための気化器バーナ用の燃焼室構成群であって、ハウジング長手方向軸線の方向に延在し、燃焼室を半径方向外側において画定する周壁と、燃焼室を軸線方向において画定する燃焼室底部とを備えた燃焼室ハウジングを含み、燃焼室底部の、燃焼室に面した側に、多孔質の気化器媒体が設けられている、燃焼室構成群において、多孔質の気化器媒体は、その燃焼室に面した側において、燃焼室に対して凹状に湾曲していることを特徴とする、燃焼室構成群により解決される。
【0006】
多孔質の気化器媒体の、その燃焼室に面した側における凹状に湾曲した構造は、燃焼特性にポジティブな影響を及ぼす様々な観点を統合したものである。一方では、半径方向外側の領域において、燃焼室底部から周壁への移行部に、燃焼運転中に燃焼を阻害し、堆積物の発生を助長する過度に高い燃料濃度が生じるデッドスペースを形成する、強く型押しされた角隅領域もしくは体積領域が生じることが全くもしくはあまりない。他方では、このような燃焼室構成群は、特にこのように装備された車両加熱装置を、多孔質の気化器媒体の、燃焼室に面した凹状に湾曲した側が鉛直方向下向きに向けられるように車両に取り付けるために適している。凹状に湾曲した構造により、多孔質の気化器媒体の半径方向においてさらに外側に位置する領域が、鉛直方向においてさらに下方に位置することになるか、もしくは多孔質の気化器媒体の最下位に位置する領域を提供することになり、これにより、多孔質の気化器媒体に供給される液体燃料の、重力により支援された均一な分散が、気化器媒体の半径方向外側領域へも達成される。
【0007】
半径方向外側への均一な燃料分散の作用を特に効率的に提供することができるようにするために、多孔質の気化器媒体は、燃焼室に対して凹状に湾曲しているか、または/かつ多孔質の気化器媒体は、実質的に一定の厚さを有していることを提案する。
【0008】
半径方向において中心の領域では、燃料供給導管が燃焼室底部に開口していてよく、この場合、多孔質の気化器媒体は、半径方向において中心の領域に湾曲頂点を有していてよい。この場合、多孔質の気化器媒体の内部における液体燃料の分散を、気化器媒体の湾曲頂点から出発して半径方向外側に向かって実質的に均一に行うことができる。
【0009】
多孔質の気化器媒体と燃焼室底部との間に、均一な燃料分散を損なう中間スペースが生じることを回避するために、燃焼室底部は、その燃焼室に面した側に、燃焼室に対して凹状に湾曲した気化器媒体当接面を有していることを提案する。
【0010】
この場合に特に有利なのは、気化器媒体当接面の湾曲幾何学形状が、多孔質の気化器媒体の、その燃焼室に面した側における湾曲幾何学形状に実質的に相応する場合である。
【0011】
多孔質の気化器媒体を支持するために、燃焼室底部は、気化器媒体当接面の少なくとも一部を提供する底壁を有していてよい。
【0012】
構造的に特に簡単に実現され得る構成では、底壁は、実質的に気化器媒体当接面全体を提供していてよい。
【0013】
多孔質の気化器媒体の半径方向外側領域へも液体燃料の迅速で均一な分散を達成するために、底壁は、底壁の、燃焼室に面した側に向かって開いた凹部を、多孔質の分散器媒体を収容するために有しており、この場合、気化器媒体当接面の第1の部分が底壁に設けられており、気化器媒体当接面の第2の部分が多孔質の分散器媒体に設けられていることを提案する。
【0014】
特に液体燃料が半径方向において中心の領域内で多孔質の気化器媒体に供給される場合には、気化器媒体当接面の第1の部分が気化器媒体当接面の第2の部分を環状に包囲しているか、または/かつ多孔質の分散器媒体が、ハウジング長手方向軸線に対して実質的にセンタリングされて配置されていると、均一な燃料分散にとって特に有利である。多孔質の分散器媒体を介して液体燃料を可能な限り迅速に半径方向外側に向かって分散させるために、多孔質の分散器媒体は、多孔質の気化器媒体よりも高い多孔度を有していることを提案する。
【0015】
多孔質の分散器媒体は、その気化器媒体当接面とは反対の側において湾曲していてよく、この場合、多孔質の分散器媒体の、その気化器媒体当接面とは反対の側における湾曲幾何学形状は、気化器媒体当接面の第2の部分における多孔質の分散器媒体の湾曲幾何学形状に実質的に相応するか、または/かつ多孔質の分散器媒体は、実質的に一定の厚さを有している。
【0016】
液体燃料の半径方向外側への効率的な搬送をさらにより強力に支援する構成では、多孔質の分散器媒体は、その気化器媒体当接面とは反対の側において、ハウジング長手方向軸線に対して実質的に直交して延在しているか、または/かつ多孔質の分散器媒体は、半径方向内側から半径方向外側に向かって増大する厚さを有していることを提案する。このことは、液体燃料が半径方向に通流する多孔質の分散器媒体の面積が、半径方向内側から半径方向外側に向かう、ハウジング軸線に対する距離の増大によってのみ増大するのではなく、多孔質の気化器媒体の厚さの増大によっても増大することを意味する。
【0017】
熱損失を回避するために、底壁の、気化器媒体当接面とは反対の側に、絶縁材料が配置されていてよい。
【0018】
多孔質の気化器媒体を規定通りに位置決めするために、気化器媒体は、その外周面において、燃焼室底部に対して固定されていることを提案する。
【0019】
このために燃焼室底部は、底壁を環状に包囲する保持部材を有していてよく、この場合、保持部材は、多孔質の気化器媒体を、その燃焼室に面した側において底壁に対して保持する少なくとも1つの保持突起を有している。
【0020】
本発明はさらに、燃料運転式の車両加熱装置であって、本発明により構成された燃焼室構成群を備えたバーナ領域を有する、燃料運転式の車両加熱装置に関する。
【0021】
以下に、本発明を添付の図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】燃料運転式の車両加熱装置のための気化器バーナ用の燃焼室構成群を示す縦断面図である。
図2】燃焼室構成群の1つの択一的な構成形式を示す、図1に対応する図である。
図3】燃焼室構成群の1つの択一的な構成形式を示す、図1に対応する図である。
図4】燃焼室構成群の1つの択一的な構成形式を示す、図1に対応する図である。
【0023】
図1に縦断面図で示した燃焼室構成群10は、燃焼室ハウジング14の、ハウジング長手方向軸線Lの方向に延在する、例えば実質的に円筒形に形成された周壁12を含む。図1には示さない軸線方向領域において、周壁12の内面には火炎絞りが設けられていてよい。このような火炎絞りに続き、周壁12は火炎管に移行していてよいか、または別個の構成部材として形成された火炎管に接続されていてよい。
【0024】
図1に示す周壁12の軸線方向端部領域には、全体的に符号16を付した燃焼室底部が設けられている。燃焼室底部16は、周壁12により半径方向外側を画定された燃焼室18を、ハウジング長手方向軸線Lの方向において画定している。
【0025】
燃焼室底部16は底壁20を有しており、底壁20の、ハウジング長手方向軸線Lに対して半径方向の中心領域22には、液体燃料を供給するための燃料供給導管24が開口している。燃焼室18に面した側26において、燃焼室底部16の底壁20は、燃焼室18に対して凹状に湾曲した気化器媒体当接面28を提供している。
【0026】
底壁20の、燃焼室18に対して凹状に湾曲した気化器媒体当接面28には、多孔質の気化器媒体30が、ハウジング長手方向軸線Lの方向において支持されている。多孔質の気化器媒体30は、例えばワイヤ材料、特にワイヤネット、ワイヤ編物、ワイヤ織物等により形成されていてよく、中心領域20において燃料供給導管24から多孔質の気化器媒体30内に流入する液体燃料が、毛管搬送作用によっても、多孔質の気化器媒体30の内部容積内に分散させられ、多孔質の気化器媒体30の、燃焼室18に面した側32において、多孔質の気化器媒体30から蒸気の形態で流出するような多孔度を有していてよい。
【0027】
図1に示す多孔質の気化器媒体30は、例えば全ての周方向領域および全ての半径方向領域において、実質的に同じ厚さdを有している。これにより、多孔質の気化器媒体は、それ自体と、特にその燃焼室18に面した側32においても同様に凹状に湾曲しており、この場合、実質的に一定の厚さdに基づき、多孔質の気化器媒体30の、その燃焼室18に面した側32における湾曲幾何学形状は、実質的に燃焼室底部20の、燃焼室18に面した側26における気化器媒体当接面28の湾曲幾何学形状に相応している。
【0028】
多孔質の気化器媒体30を、気化器媒体当接面28に規定通りに当接した状態に保つために、燃焼室底部16の半径方向外側の領域に、底壁20を環状に包囲する保持部材34が設けられている。この保持部材34は、例えば底壁20の外周領域と、周壁12の軸線方向端部領域との間に位置決めされていてよく、周壁12もしくは底壁20に材料結合により、例えば溶接またはろう接により、安定的に結合されていてよい。周方向に互いに離間されて位置する複数の領域において、保持部材34は、半径方向内側に向かって、かつ多孔質の気化器媒体30の、燃焼室18に面した側32に向かって曲げられた保持突起36を有しており、これらの保持突起36は、多孔質の気化器媒体30の、燃焼室18に面した側32において、気化器媒体30の半径方向外側の領域に当接しており、ひいてはこの気化器媒体30を、凹状に湾曲した気化器媒体当接面28に対して安定的に保持している。
【0029】
この構成において、底壁20の気化器媒体当接面28に対する多孔質の気化器媒体30の所定の当接を達成するためには、例えば、多孔質の気化器媒体30が底壁20に対して保持突起36により保持されていない基本状態において、多孔質の気化器媒体30は、気化器媒体当接面28の湾曲よりも強い湾曲を有する湾曲幾何学形状を有している、ということが想定されていてよい。次いで組立て時に、多孔質の気化器媒体30はまず、その中心領域でもって底壁20に当接し、次いで保持部材34の保持作用により、気化器媒体30の半径方向外側領域においても底壁20に押し付けられる。これにより特に、半径方向内側領域において、つまり燃焼室底部16の中心領域22において、液体燃料が供給される場所に、多孔質の気化器媒体30が、気化器媒体30と底壁20との間に中間スペースが生じる危険なしに、気化器媒体当接面28に安定的に当接した状態に保たれている、ということが保証される。
【0030】
多孔質の気化器媒体30の凹状の湾曲により、多孔質の気化器媒体30の、燃焼室底部16の中心領域22に位置する湾曲頂点38が、ハウジング長手方向軸線Lの方向において燃焼室18に対して最も遠くに後退させられた、燃焼室底部16もしくは多孔質の気化器媒体30の領域を形成する、ということが達成される。この場合、多孔質の気化器媒体30の、半径方向においてさらに外側に位置する領域は、排気流れ方向においてさらに前方に位置しており、特に燃焼空気を周壁12内に導入するために設けられた燃焼空気流入開口40のより近くに位置している。その結果、特に半径方向外側の領域において、燃焼室底部16から周壁12への移行部には、過剰に高い燃料濃度が生じる恐れがあり、堆積物の発生の危険が特に顕著になるデッドスペースが存在していない。さらに、多孔質の気化器媒体30の凹状の湾曲幾何学形状は、燃焼室構成群10を有する車両加熱装置のこのような取付けにおいて、多孔質の気化器媒体30の、燃焼室18に面した側32は、鉛直方向において下側または斜め下側に向けられており、多孔質の気化器媒体30の半径方向外側領域は、鉛直方向において、やはり液体燃料が多孔質の気化器媒体30内に供給される湾曲頂点38の領域よりもさらに下側に位置している、という結果をもたらす。つまり、湾曲頂点38の領域において多孔質の気化器媒体30内へ導入される液体燃料の、重力により支援される均一な分散が、半径方向外側に向かって行われる。このことは、多孔質の気化器媒体の平面状の非湾曲構造に比べて拡大された、凹状に湾曲した多孔質の気化器媒体30の、気化に使用することができる表面積に関連して、燃焼室18内への蒸気状の燃料の、多孔質の気化器媒体30全体にわたり均一な、特に効率的な放出につながる。
【0031】
図2には、燃焼室構成群10の1つの変化実施形態が示されている。この構成では、燃焼室底部16の底壁20に凹部42が形成されており、凹部42は、底壁20の燃焼室18に面した側47において、燃焼室18に向かって開かれており、凹部42内には多孔質の分散器媒体44が収容されている。この構成では、気化器媒体当接面28の第1の部分46が底壁20に形成されており、気化器媒体当接面28の第2の部分48が、気化器媒体当接面28の第1の部分46により包囲されて、多孔質の分散器媒体44に形成されている。2つの部分46,48により提供されたこの気化器媒体当接面28の場合も、気化器媒体当接面28は、その燃焼室18に面した側26において、燃焼室18に対して凹状に湾曲した構造を有している。
【0032】
多孔質の分散器媒体44は、燃焼室底部16の中心領域22に位置決めされており、これにより、燃料供給導管24を介して供給された液体燃料は、まず多孔質の分散器媒体44内に流入し、その容積内で半径方向外側にも分散させられる。この場合、液体燃料は既に半径方向において均一に分散させられて、もしくはより大きな表面領域にわたり分散させられて、気化器媒体当接面28の第2の部分48に支持された多孔質の気化器媒体30に流入し、次いでその容積内でさらに半径方向外側に向かって毛管搬送作用により、かつ上述したように重力によっても支援されて分散させられる。
多孔質の分散器媒体44により、液体燃料の迅速で効率的な半径方向予備分散を達成するために、分散器媒体44は、好適には多孔質の気化器媒体30よりも高い多孔度を有している。このことは、多孔質の分散器媒体44においてまず、極めて迅速で比較的やや粗い予備分散が行われるのに対し、次いでより微細な孔構造を備えて形成された多孔質の気化器媒体30では、液体燃料の極めて均一な分散が提供され、ひいては燃焼室18の方向への燃料の極めて均一な放出も提供されることを意味する。
【0033】
図2に示す実施形態では、多孔質の分散器媒体44は、その全体が湾曲させられて形成されており、ひいては実質的に全ての周方向領域と、全ての半径方向領域とにおいて同一の厚さDを有している。このことは、このような構造では、多孔質の分散器媒体44中で半径方向外側に分散させられた液体燃料が、ハウジング長手方向軸線Lに対して増大する距離に基づき半径方向内側から半径方向外側に向かって、多孔質の分散器媒体44の、より大きな面積範囲を通流する、ということを意味する。
【0034】
多孔質の分散器媒体の半径方向外側に向かう分散作用をさらに効率的にするために、図3に示す実施形態に示されているように、多孔質の分散器媒体44の厚さDを、半径方向内側から半径方向外側に向かって増大させることができ、これにより、多孔質の分散器媒体44の増大する厚さD、すなわち増大する軸線方向延在長さも、多孔質の分散器媒体44の、燃料分散用に提供される燃料通流面積の、半径方向外側への増大に寄与する。このために、図3に示すように、多孔質の分散器媒体44は、例えばその燃焼室18もしくは気化器媒体当接面28とは反対の側50において、ハウジング長手方向軸線Lに対して実質的に直交するように向けられていてよく、ひいては実質的に平面状に形成されていてよい。
【0035】
図4に示す構成では、燃焼室底部16の底壁20の、燃焼室18とは反対の側52に凹部54が形成されており、凹部54内には絶縁材料56が収容されている。絶縁材料56は、例えば空気よりも低い熱伝導率と、特に底壁20の構成材料よりも低い熱伝導率をも有する発泡材料であってよい。凹部54は、カバー58により閉鎖されていてよく、これにより、絶縁材料56は凹部54内に安定的に保持されている。よって底壁20の、燃焼室18とは反対の側52における熱損失は、一般に燃焼空気ファンにより供給される比較的低温の燃焼空気が流れる体積範囲に最小化される。
【0036】
特にその燃焼室に面した側に多孔質の気化器媒体の凹状に湾曲した構造を備えた燃焼室構成群の図示の構成により、燃料の半径方向外側への効率的な分散と、デッドスペースの回避とに関して上で既に述べた態様が達成されるだけでなく、多孔質の気化器媒体の、燃焼室に面した側から、一般に燃焼室底部に対して極小さな軸線方向間隔のみをあけて周壁から半径方向内側に向かって延在する点火機構、例えばグロープラグまでの、半径方向外側から半径方向内側に向かう距離が増大する、ということも達成される。よって、多孔質の気化器媒体の湾曲した構造において、多孔質の気化器媒体が局所的に過熱される領域が発生する、という危険が回避される。このことは、多孔質の気化器媒体の熱破壊の危険も、運転寿命にわたり低下させる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に燃料運転式の車両加熱装置のための気化器バーナ用の燃焼室構成群であって、ハウジング長手方向軸線(L)の方向に延在し、燃焼室(18)を半径方向外側において画定する周壁(12)と、前記燃焼室(18)を軸線方向において画定する燃焼室底部(16)とを備えた燃焼室ハウジング(14)を含み、前記燃焼室底部(16)の、前記燃焼室(18)に面した側(26)に、多孔質の気化器媒体(30)が設けられている、燃焼室構成群において、
前記多孔質の気化器媒体(30)は、その前記燃焼室(18)に面した側(32)において、前記燃焼室(18)に対して凹状に湾曲していることを特徴とする、燃焼室構成群。
【請求項2】
前記多孔質の気化器媒体(30)は、前記燃焼室(18)に対して凹状に湾曲しているか、または/かつ前記多孔質の気化器媒体(30)は、実質的に一定の厚さ(d)を有している、請求項1記載の燃焼室構成群。
【請求項3】
半径方向において中心の領域(22)では、燃料供給導管(24)が前記燃焼室底部(16)に開口しており、前記多孔質の気化器媒体(30)は、前記半径方向において中心の領域(22)に湾曲頂点(38)を有している、請求項記載の燃焼室構成群。
【請求項4】
前記燃焼室底部(16)は、その前記燃焼室(18)に面した側(26)において、前記燃焼室(18)に対して凹状に湾曲した気化器媒体当接面(28)を有している、請求項記載の燃焼室構成群。
【請求項5】
前記気化器媒体当接面(28)の湾曲幾何学形状が、前記多孔質の気化器媒体(30)の、前記燃焼室(18)に面した側(32)における湾曲幾何学形状に実質的に相応する、請求項4記載の燃焼室構成群。
【請求項6】
前記燃焼室底部(16)は、前記気化器媒体当接面(28)の少なくとも一部を提供する底壁(20)を含む、請求項記載の燃焼室構成群。
【請求項7】
前記底壁(20)は、実質的に前記気化器媒体当接面(28)全体を提供している、請求項6記載の燃焼室構成群。
【請求項8】
前記底壁(20)は、該底壁の、前記燃焼室(18)に面した側(47)に向かって開いた凹部(32)を、多孔質の分散器媒体(44)を収容するために有しており、前記気化器媒体当接面(28)の第1の部分(46)が前記底壁(20)に設けられており、前記気化器媒体当接面(28)の第2の部分(48)が前記多孔質の分散器媒体(44)に設けられている、請求項6記載の燃焼室構成群。
【請求項9】
前記気化器媒体当接面(28)の前記第1の部分(46)は、前記気化器媒体当接面(28)の前記第2の部分(48)を環状に包囲しているか、または/かつ前記多孔質の分散器媒体(44)は、前記ハウジング長手方向軸線(L)に対して実質的にセンタリングされて配置されているか、または/かつ前記多孔質の分散器媒体(44)は、前記多孔質の気化器媒体(30)よりも高い多孔度を有している、請求項8記載の燃焼室構成群。
【請求項10】
前記多孔質の分散器媒体(44)は、その前記気化器媒体当接面(28)とは反対の側(50)において湾曲しており、前記多孔質の分散器媒体(44)の、前記気化器媒体当接面(28)とは反対の側(50)における湾曲幾何学形状は、前記気化器媒体当接面(28)の前記第2の部分(48)における前記多孔質の分散器媒体(44)の湾曲幾何学形状に実質的に相応するか、または/かつ前記多孔質の分散器媒体(44)は、実質的に一定の厚さ(D)を有している、請求項記載の燃焼室構成群。
【請求項11】
前記多孔質の分散器媒体(44)は、その前記気化器媒体当接面(28)とは反対の側(50)において、前記ハウジング長手方向軸線(L)に対して実質的に直交して延在しているか、または/かつ前記多孔質の分散器媒体(44)は、半径方向内側から半径方向外側に向かって増大する厚さ(D)を有している、請求項記載の燃焼室構成群。
【請求項12】
前記底壁(20)の、前記気化器媒体当接面(28)とは反対の側(52)に、絶縁材料(56)が配置されている、請求項記載の燃焼室構成群。
【請求項13】
前記多孔質の気化器媒体(30)は、その外周面において、前記燃焼室底部(16)に対して固定されている、請求項記載の燃焼室構成群。
【請求項14】
前記燃焼室底部(16)は、前記底壁(20)を環状に包囲する保持部材(34)を有しており、該保持部材(34)は、前記多孔質の気化器媒体(30)を、その前記燃焼室(18)に面した側(32)において前記底壁(20)に対して保持する少なくとも1つの保持突起(36)を有している、請求項6および13記載の燃焼室構成群。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の燃焼室構成群(10)を備えたバーナ領域を有する、燃料運転式の車両加熱装置。
【外国語明細書】