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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133038
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】全固体電池セルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20240920BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240920BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20240920BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240920BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20240920BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M50/403 D
H01M50/411
H01M50/403 A
H01M10/052
H01M10/054
H01M10/0585
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024041497
(22)【出願日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】10 2023 202 370.9
(32)【優先日】2023-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フォルクスヴァーゲン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Berliner Ring 2, 38440 Wolfsburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン レオンハルト コッホ
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム クンツェ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ヤンセン
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
【Fターム(参考)】
5H021BB01
5H021BB02
5H021BB12
5H021BB13
5H021CC04
5H021EE01
5H029AJ14
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ12
5H029CJ22
5H029CJ28
5H029EJ07
5H029EJ11
5H029HJ14
5H029HJ15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】全固体電池セルの製造をより低いコストで可能にする方法を提供する。
【解決手段】a)セパレータ材料(2)用の原材料を層(3)の形態で準備するステップと、b)昇華可能な被覆材料(4)により層(3)を少なくとも部分的に被覆して、被覆(5)により被覆されたセパレータ材料(2)を形成するステップとを含む、全固体電池セル(1)を製造する方法とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体電池セル(1)を製造する方法であって、当該方法は少なくとも以下のステップ、すなわち:
a)セパレータ材料(2)用の原材料を層(3)の形態で準備するステップと、
b)昇華可能な被覆材料(4)により前記層(3)を少なくとも部分的に被覆して、被覆(5)により被覆されたセパレータ材料(2)を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記層(3)は面状の物体であり、該物体の2つの互いに向かい合う最大の側面(6)を、前記ステップb)(11)において完全に被覆する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ステップb)(11)において形成した被覆(5)は、少なくともHOまたはCOに対して不透過性である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記被覆材料(4)は、カンファー(C1016O)を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
続くステップc)(12)において、前記被覆材料(4)を、最高120℃の温度でかつ250ミリバール未満の圧力で昇華させ、前記セパレータ材料(2)から少なくとも部分的に除去する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ステップc)(12)において、前記被覆材料(4)を前記層(3)から完全に除去する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ステップc)(12)の後に、昇華した前記被覆材料(4)を捕集してリサイクルする、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
被覆された前記セパレータ材料(2)を、前記ステップb)(11)と前記ステップc)(12)との間に少なくとも、2つの電極材料(7)の間に配置する、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
1つのスタック(8)を形成するように配置された前記電極材料(7)と、被覆された前記セパレータ材料(2)とを、前記ステップb)(11)と前記ステップc)(12)との間に前記電池セル(1)のケーシング(9)内に配置する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ステップc)(12)の後に、前記ケーシング(9)を閉鎖する、請求項9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池セルを製造する方法に関する。この方法は特に、この場合は全固体電池セルに使用されるセパレータ材料の製造に関する。
【0002】
自動車の駆動装置用に、電池、特にリチウムイオン電池を使用することが増えている。特に、例えば自動車は、自動車を駆動する電気機械を有しており、この場合、電気機械は、電池セルに蓄積された電気エネルギにより駆動可能である。電池は、一般に複数の電池セルから構成され、この場合、各電池セルは、陽極板、陰極板およびセパレータ板のスタックを有している。陽極板および陰極板の少なくとも一部は、セルから供給される電流をセルの外側に配置された消費器へ導出するための導電体として形成されている。液体電解質を備えた電池セルまたは固体電解質を備えた電池セル(全固体電池)が周知である。
【0003】
全固体電池セルは、特に気密に形成されたケーシングと、その中に配置された、重なり合って配置された電極もしくは層の少なくとも1つのスタックとを含む。ケーシングは、形状不変のケーシング(角型セル)として、または少なくとも部分的に弾性変形可能なフィルム材料(パウチセル)から形成されていてよい。両方のケーシング形式を組み合わせることも可能である。
【0004】
セパレータ材料は、ass電池セル(all-solid-state電池セルもしくは全固体電池セル)に使用される。つまりこのass電池セルは、専ら固体のコンポーネント(半固体電解質、例えばポリマーを含む)のみを含み、つまり固体電解質も含む。これらの固体電解質は、イオン伝導性のセパレータ材料として、電極(陽極、陰極)間に配置されている。これらのセパレータ材料は、通常、セラミック材料から成るか、またはポリマー、ガラスもしくはハイブリッド材料から成る。
【0005】
イオン伝導性の固体電解質から成るセパレータは、特に空気湿分と空気酸素とに対して著しい不安定性を有している。さらに、焼結プロセスもしくは例えばイオン伝導性の固体電解質の製造の枠内で、イオンもしくはリチウムの大部分が材料から蒸発してしまう。リチウムの蒸発および空気成分との反応は両方共、イオン伝導性もしくはリチウム伝導性ひいては全固体電池セル用のセパレータ材料もしくはセパレータ膜の性能を低下させる。
【0006】
さらに、通常、電池セルの最初の充電サイクル中に(つまり成形中に)、全固体電池セル内でリチウム陽極が所定の位置に形成されることが意図されている。このためには特に、このために必要とされる析出が機能するように、セパレータ材料の表面に特定の特徴が設けられていることが必要である。
【0007】
セパレータ材料と空気湿分もしくは空気酸素との接触は、従来、保護ガス雰囲気の使用により阻止される。しかしながら、このような保護ガス雰囲気の提供および維持には、極めて手間がかかる。
【0008】
英国特許出願公開第1189222号明細書から、電池セル用の電極を製造する方法が公知である。この場合、電解質固体を製造し、電極材料により被覆する。
【0009】
国際公開第2004/067259号からは、燃料電池用の製造方法が公知である。
【0010】
本発明の課題は、従来技術に関して挙げた問題を少なくとも部分的に解決することにある。特に、全固体電池セルの製造をより低いコストで可能にする方法を提案したい。
【0011】
この課題の解決には、請求項1記載の特徴を有する方法が寄与する。有利な改良は、従属特許請求項の対象である。特許請求項に個別に記載された特徴は、技術的に有意な形式で互いに組合せ可能であり、説明で述べられた状況および/または図面に基づく細部により補足することができ、この場合は本発明の別の変化実施例を示す。
【0012】
全固体電池セルを製造する方法を提案する。本方法は、少なくとも以下のステップ、すなわち:
a)セパレータ材料用の原材料を層の形態で準備するステップと、
b)昇華可能な被覆材料により層を少なくとも部分的に被覆して、被覆により被覆されたセパレータ材料を形成するステップと
を含む。
【0013】
上述の方法ステップのa)およびb)への(非最終的な)区分けは、区別するために優先的に用いるだけに過ぎず、順序および/または依存関係を強要するものではない。また、方法ステップの頻度も可変であってよい。同様に、各方法ステップが互いに少なくとも部分的に時間的に重畳することも可能である。好適には、ステップa)およびb)は、記載の順序で実施される。
【0014】
ステップa)およびb)で製造された、被覆されたセパレータ材料は、特にリチウムイオン電池セルまたはリチウム金属電池セルにおいて、場合によりナトリウムまたはアルミニウム電池セルにおいても使用することを想定されている。
【0015】
セパレータ材料は、ass電池セル(all-solid-state電池セルもしくは全固体電池セル)に使用される。つまりこのass電池セルは、専ら固体のコンポーネント(半固体電解質、例えばポリマーを含む)のみを含み、つまり固体電解質も含む。これらの固体電解質は、イオン伝導性のセパレータ材料として、電極間に配置されておりかつ/または電解質として既に活性材料中に含まれているか、もしくは活性材料と混合されている。これらのセパレータ材料は、通常、セラミック材料から成るか、またはポリマー、ガラスもしくはハイブリッド材料から成る。
【0016】
特に、ステップa)とb)との間に、別のステップa1)が設けられており、ステップa1)では、ステップa)の後に層を焼結する。このプロセスステップは、特にセラミックのセパレータ材料の場合に設けられている。ステップa1)の後に、次いで特にステップb)が続く。
【0017】
特に、セパレータ材料として(あるいは陰極層または陽極層中の電解質として)使用するためのリチウムイオン伝導性の原材料は、以下の、硫化物、酸化物、窒化物、ハロゲン化物、水素化物またはポリマーの材料クラスの材料のうちの少なくとも1つを含む。これについては、例えば以下のものが挙げられる。すなわち:Thio-LiSICon系材料(LiS-P、LiS-SiS、LiS-GeS)、硫銀ゲルマニウム鉱(LiPSX(X=Cl、BrまたはI)、LiPS、LiPSe)、ガーネット(LiLaZr12(LLZO))、ペロブスカイト(Li3xLa2/3-3xTiO(LLTO))、NaSICon系材料(Li1+xAlTi2-x(PO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO)、ハロゲン化物(Li2CdCl4)、窒化物(Li3N,Li2PN4)、水素化物(LiNH、LiBH)、ポリマー、(PEO-LiTFSI、ホスファゼン-LiTFSI、PEO-LiFSI)。特に、言及した材料の組合せも可能である。
【0018】
電極は、特に、支持体材料、例えば銅箔またはアルミニウム箔を含む。使用される支持体材料は、特に陽極用は3~15μmの厚さの銅から成り、陰極用は3~15μm(マイクロメートル)の厚さのアルミニウムから成る。支持体材料は、少なくとも1つの最大の側面において、また場合により、互いに向かい合う最大の側面においても、少なくとも部分的に活性材料により被覆されている。支持体材料は、エンドレス材料として形成されている。
【0019】
ステップa)の枠内では、特にセパレータ材料用の原材料を層の形態で準備する。層は、特に直方体形であるが薄い材料厚さを備えて形成された、例えばフィルム状または面状の物体である。この場合、この物体は、層の、互いに向かい合って配置された2つの最大の側面と、大幅に小さな別の側面もしくは縁部とを有している。
【0020】
ステップb)の枠内では、特に昇華可能な被覆材料により層を少なくとも部分的に(または完全に)被覆して、被覆により被覆されたセパレータ材料を形成する。昇華可能とは特に、被覆材料がセパレータ材料に被着された後に、固体の状態から直接気体の状態に移行することを意味する。
【0021】
この移行は特に、電池セルの別のコンポーネントにとって有害ではない周囲条件において行われることが望ましい。
【0022】
被覆は、様々な形式の被覆法、例えば噴霧、浸漬、積層等により被着され得る。
【0023】
特に、層は面状の物体であり、その2つの互いに向かい合う最大の側面は、ステップb)において完全に被覆される。特に全ての側面が、つまり物体全体が完全に被覆される。
【0024】
特に、被覆は少なくともHOおよび/またはCOに対して不透過性である。不透過性とは、セパレータ材料と前記分子との間の接触が被覆により阻止されること、もしくは被覆材料を通過することができないことを意味する。
【0025】
特に、被覆材料は少なくとも部分的に、ボルナン-2-オンまたは1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オンとも呼ばれるカンファー(C1016O)を含むか、または好適には完全にカンファーから形成されている。
【0026】
カンファーは、既に室温で昇華し、被覆として少なくともHOおよび/またはCOに対して不透過性である。
【0027】
しかしまた、比較可能な特性を有する他の被覆材料も使用可能である。
【0028】
特に被覆材料は、特にステップb)に続くステップc)において、最高120℃、好適には最高100℃の温度で、かつ250ミリバール未満の圧力で、特に150ミリバール未満の圧力で、好適には最大100ミリバールの圧力で昇華させられ、かつ少なくとも部分的に(または完全に)セパレータ材料から除去される。
【0029】
特に被覆材料はステップc)において、好適には前記プロセスパラメータでもってセパレータ材料から完全に除去される。
【0030】
特に、昇華した被覆材料は、ステップc)の後に捕集され、リサイクルされる。特に、被覆材料はほぼ無制限に、好適には説明した方法のためにも再利用され得る。
【0031】
特に、被覆されたセパレータ材料は、ステップb)とステップc)との間に少なくとも、2つの電極材料の間に配置される。被覆材料の可能な昇華に基づき、被覆材料の除去は、電池セルのコンポーネントの積層後に行われてもよい。この場合、被覆材料は、例えば互いに重なり合うコンポーネントの表面に沿ってスタックから抜き出されて導出され得る。セパレータ材料とHOおよび/またはCOとの接触は、この時点では、特に予め被覆された表面と、スタックの別のコンポーネント(例えば電極)との接触により阻止されている。
【0032】
特に、1つのスタックを形成するように配置された電極材料と被覆されたセパレータ材料とは、ステップb)とステップc)との間に電池セルのケーシング内に配置され得る。昇華した被覆材料は、次いで特にケーシングの開口を介して除去され得る。
【0033】
特に、ケーシングはステップc)の後に閉鎖される。
【0034】
提案する方法により、特に、電池セルを製造するためのコストを低減することができる。なぜならば、別個の不活性ガス雰囲気が必要ないからである。さらに、セパレータ材料の保管性が改善されるか、もしくはその劣化が遅くなる。
【0035】
さらに、少なくとも、電池セルのケーシングと、その中に配置された少なくとも2つの電極(陽極および陰極)と、上述の方法により製造されたセパレータ材料の少なくとも1つの層とを含む、全固体電池セルを提案する。
【0036】
全固体電池セルは、特に(パウチフィルムから成る変形可能な電池セルケーシングを備えた)パウチセルまたは(形状不変の電池セルケーシングを備えた)角型セルである。パウチフィルムは、いわゆるパウチセル用の電池セルケーシングとして使用される周知の変形可能なケーシング部材である。この場合は、例えばプラスチックとアルミニウムとを含む複合材料である。
【0037】
全固体電池セルは、特にリチウムイオン電池セルまたはリチウム金属電池セルである。
【0038】
全固体電池セルは、例えば自動車において電気エネルギの蓄積に使用される蓄電体である。特に、例えば自動車は、自動車を駆動する電気機械(トラクション駆動装置)を有しており、この場合、電気機械は、全固体電池セルに蓄積された電気エネルギにより駆動可能である。
【0039】
さらに、少なくとも、トラクション駆動装置と、上述の全固体電池セルのうちの少なくとも1つを備えた電池とを含み、トラクション駆動装置に、少なくとも1つの全固体電池セルを介してエネルギを供給可能である、自動車を提案する。
【0040】
特に、データ処理用の少なくとも1つのシステムが設けられており、このシステムは、本方法を実施するため、もしくは本方法を実施する装置を制御するために適切に装備、構成、またはプログラミングされているか、もしくは本方法を実施する手段を有している。
【0041】
これらの手段は、例えばプロセッサと、プロセッサにより実行されるべき命令が記憶されたメモリと、上述の要素の間で命令、測定値、データ等の伝送を可能にするデータ線路または伝送装置とを含む。
【0042】
さらに、コンピュータによりプログラムが実行される際に、コンピュータに上述の方法もしくは上述の方法のステップを実行させる命令を含む、コンピュータプログラムを提案する。
【0043】
さらに、コンピュータによる実行に際して、コンピュータに上述の方法もしくは上述の方法のステップを実行させる命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体を提案する。
【0044】
方法に関する説明は、全固体電池セル、自動車、データ処理用のシステム、および/またはコンピュータ実装方法(つまりコンピュータプログラムおよびコンピュータ可読記憶媒体)に転用可能であり、その逆も可能である。
【0045】
特に特許請求項および特許請求項を反映する説明における不定冠詞(″ein″、″eine″、″einer″および″eines″)の使用自体は、数詞を意味するものではない。したがって、これに相応して導入された概念もしくは構成要素は、これらの概念もしくは構成要素が少なくとも1つ設けられており、特に複数設けられていてもよい、ということを意味する。構成部材が複数(「少なくとも1つ」)設けられていてよい場合、これらの構成部材のうちの1つに関する説明は、これらの複数の構成部材の全てまたは一部に同様に当てはまる場合があるが、これは必ずしもそうではない。
【0046】
以下に、本発明ならびに技術的環境を、添付の図面に基づきより詳細に説明する。指摘しておくと、本発明は、記載した実施例により限定されるものではない。特に別記しない限り、図で説明した状況の一部を抜き出して、本明細書に記載の別の構成部材および知見と組み合わせることも可能である。特に指摘しておくと、図面、および特に図示の縮尺は、概略的なものでしかない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本方法の流れを示す図である。
図2】セパレータ材料の層を示す斜視図である。
図3】電池セルのケーシング内の電極およびセパレータ材料のスタックを示す側方断面図である。
図4】電池セルを示す図である。
【0048】
図1には、本方法の流れが示されている。ステップa)10の枠内では、セパレータ材料2用の原材料を層3の形態で準備する。層3は、直方体形であるが薄い材料厚さを備えて形成されたフィルム状または面状の物体である(図2参照)。この場合、この物体は、層3の、互いに向かい合って配置された2つの最大の側面6と、大幅に小さな別の側面もしくは縁部とを有している。
【0049】
ステップa1)13では、層3の焼結を行う。ステップa1)13の後に、ステップb)11が続く。ステップb)11の枠内では、昇華可能な被覆材料4による層3の完全な被覆と、被覆5により被覆されたセパレータ材料2の形成とを行う。
【0050】
被覆されたセパレータ材料2を、ステップb)11の後かつステップc)12の前に2つの電極材料7(陽極および陰極)の間に配置する。1つのスタック8を形成するように配置された電極材料7と、被覆されたセパレータ材料2とを、電池セル1のケーシング9内に配置する。
【0051】
被覆材料4の可能な昇華に基づき、被覆材料4の除去を、電池セル1のコンポーネント4,7の積層後に行うこともできる。この場合、被覆材料4は、例えば互いに重なり合うコンポーネント4,7の表面に沿ってスタック8から抜き出されて導出され得る。セパレータ材料2とHOおよび/またはCOとの接触は、この時点では、予め被覆されたセパレータ材料2の表面と、スタック8の別のコンポーネント(例えば電極7)との接触により阻止されている。
【0052】
ステップb)11に続くステップc)12において、被覆材料4を、最高120℃の温度でかつ250ミリバール未満の圧力で昇華させ、セパレータ材料2から完全に除去する。昇華した被覆材料4は、ケーシング9の開口を介して除去され得る。ケーシング9は、ステップc)12の後に閉じられてよく、これにより、使用準備の整ったバッテリセル1が形成されている。
【0053】
図2には、セパレータ材料2の層が斜視図で示されている。層3は、直方体形であるが薄い材料厚さを備えて形成されたフィルム状または面状の物体である。この場合、この物体は、層3の、互いに向かい合って配置された2つの最大の側面6と、大幅に小さな別の側面もしくは縁部とを有している。少なくとも最大の側面6は、被覆5を有している。
【0054】
図3には、電池セル1のケーシング9内の電極(材料7)およびセパレータ材料2のスタック8が側方断面図で示されている。被覆されたセパレータ材料2を、ステップb)11の後かつステップc)12の前に2つの電極材料7(陽極および陰極)の間に配置する。1つのスタック8を形成するように配置された電極材料7と、被覆されたセパレータ材料2とを、電池セル1のケーシング9内に配置する。ステップb)11に続くステップc)12において、被覆材料4を、最高120℃の温度でかつ250ミリバール未満の圧力で昇華させ、セパレータ材料2から完全に除去する。昇華した被覆材料4は、ケーシング9の開口を介して除去され得る(矢印参照)。
【0055】
図4には、閉じられたケーシング9と、その中に配置されたスタック8とを備えた電池セル1が示されている。
【符号の説明】
【0056】
1 電池セル
2 セパレータ材料
3 層
4 被覆材料
5 被覆
6 側面
7 電極材料
8 スタック
9 ケーシング
10 方法のステップa)
11 方法のステップb)
12 方法のステップc)
13 方法のステップa1)
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体電池セル(1)を製造する方法であって、当該方法は少なくとも以下のステップ、すなわち:
a)セパレータ材料(2)用の原材料を層(3)の形態で準備するステップと、
b)昇華可能な被覆材料(4)により前記層(3)を少なくとも部分的に被覆して、被覆(5)により被覆されたセパレータ材料(2)を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記層(3)は面状の物体であり、該物体の2つの互いに向かい合う最大の側面(6)を、前記ステップb)(11)において完全に被覆する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ステップb)(11)において形成した被覆(5)は、少なくともH2OまたはCO2に対して不透過性である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記被覆材料(4)は、カンファー(C10H16O)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
続くステップc)(12)において、前記被覆材料(4)を、最高120℃の温度でかつ250ミリバール未満の圧力で昇華させ、前記セパレータ材料(2)から少なくとも部分的に除去する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ステップc)(12)において、前記被覆材料(4)を前記層(3)から完全に除去する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ステップc)(12)の後に、昇華した前記被覆材料(4)を捕集してリサイクルする、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
被覆された前記セパレータ材料(2)を、前記ステップb)(11)と前記ステップc)(12)との間に少なくとも、2つの電極材料(7)の間に配置する、請求項5または6記載の方法。
【請求項9】
1つのスタック(8)を形成するように配置された前記電極材料(7)と、被覆された前記セパレータ材料(2)とを、前記ステップb)(11)と前記ステップc)(12)との間に前記電池セル(1)のケーシング(9)内に配置する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ステップc)(12)の後に、前記ケーシング(9)を閉鎖する、請求項9記載の方法。
【外国語明細書】