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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133047
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】オレフィン系樹脂製包材
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20240920BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 3/16 20060101ALI20240920BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240920BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240920BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20240920BHJP
   B65D 30/16 20060101ALI20240920BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240920BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20240920BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08L23/10
C08K3/08
C08K3/16
C08K3/22
C08L101/00
B65D30/02 BRH
B65D30/16 A
B65D65/40 D
B65D65/02 E
B32B27/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042380
(22)【出願日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2023042194
(32)【優先日】2023-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩介
(72)【発明者】
【氏名】浜辺 尊
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E064AB23
3E064BA26
3E064BA30
3E064BA36
3E064BB03
3E064BC18
3E064EA01
3E064FA04
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086AD04
3E086AD06
3E086AD24
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA35
3E086BB05
3E086BB63
3E086BB90
4F100AA05A
4F100AB02A
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK69A
4F100AT00A
4F100CA13A
4F100JD02A
4J002BB121
4J002BB141
4J002BE032
4J002DA086
4J002DD057
4J002DE087
4J002FD016
4J002FD098
4J002FD207
4J002GF00
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】オレフィン系樹脂を多く含み、オレフィン系樹脂のリサイクル性に適していると同時に、オレフィン系樹脂には見られない優れた特性を有するオレフィン系樹脂製包材を提供する。
【解決手段】オレフィン系樹脂製包材において、該包材100質量部当り、オレフィン系樹脂を80質量部以上含み、オレフィン系樹脂以外の樹脂が15質量部未満に抑制されており、かつ鉄粉を5質量部未満の量で含んでいることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂製包材において、該包材100質量部当り、オレフィン系樹脂を80質量部以上含み、オレフィン系樹脂以外の樹脂が15質量部未満に抑制されており、かつ鉄粉を5質量部未満の量で含んでいることを特徴とするオレフィン系樹脂製包材。
【請求項2】
フィルム若しくはシートの形態を有する請求項1に記載のオレフィン系樹脂製包材。
【請求項3】
袋の形態を有する請求項1に記載のオレフィン系樹脂製包材。
【請求項4】
ハロゲン化金属及びアルカリ性化合物を含む請求項1に記載のオレフィン系樹脂製包材。
【請求項5】
白色顔料を含む請求項1に記載のオレフィン系樹脂製包材。
【請求項6】
ガスバリア性樹脂を含む請求項1に記載のオレフィン系樹脂製包材。
【請求項7】
多層構造を有している請求項1記載のオレフィン系樹脂製包材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系樹脂により形成された袋(パウチ)などの包材に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系樹脂は安価であり、ヒートシール性を示し、製袋などの成形が容易であるため、パウチなどの包材の成形に広く使用されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
ところで、オレフィン系樹脂は、酸素に対するバリア性が低いため、内容物を包装する最終形態となっている包材では、酸素に対するバリア性を付与する必要があり、このため、上記の特許文献にも記載されているように、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)や芳香族ポリアミドなどに代表されるガスバリア性樹脂が併用される場合が多い。しかしながら、近年における環境保護の観点から、各種材料についてのリサイクル性が要求され、包装材料の分野でも、できるだけ異種材料の使用を少なくするモノマテリアル化が求められており、例えば、オレフィン系樹脂の含有率が80質量%以上であるパウチが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-214352号公報
【特許文献2】特開2020-97421号公報
【特許文献3】WO2022/054891
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したオレフィン系樹脂のモノマテリアル化にあたって、大きな障害となるのが、酸素バリア性である。即ち、モノマテリアル化に際しては、異種材料の使用が大きく制限されるため、酸素バリア性などの特性を、どのようにして付与するかである。
【0006】
従って、本発明の課題は、オレフィン系樹脂を多く含み、オレフィン系樹脂のリサイクル性に適していると同時に、オレフィン系樹脂には見られない優れた特性を有するオレフィン系樹脂製包材を提供することにある。
【0007】
本発明によれば、オレフィン系樹脂製包材において、該包材100質量部当り、オレフィン系樹脂を80質量部以上含み、オレフィン系樹脂以外の樹脂が15質量部未満に抑制されており、かつ鉄粉を5質量部未満の量で含んでいることを特徴とするオレフィン系樹脂製包材が提供される。
【0008】
本発明のオレフィン系樹脂包材としては、以下の態様が好適に採用される。
(1)フィルム若しくはシートの形態を有すること。
(2)袋の形態を有すること。
(3)ハロゲン化金属及びアルカリ性化合物を含むこと。
(4)白色顔料を含むこと。
(5)ガスバリア性樹脂を含むこと。
(6)多層構造を有していること。
【発明の効果】
【0009】
本発明のオレフィン系樹脂製包材は、包材100質量部当り、オレフィン系樹脂を80質量部の量で含んでいることが前提であり、オレフィン系樹脂以外の樹脂成分含有量が15質量部未満に抑制されている。このため、オレフィン系樹脂の回収が容易となり、仮に異種成分が混入していた場合にも、異種成分の混入によるオレフィン系樹脂の著しい特性低下を回避することができ、オレフィン系樹脂の再利用を効果的に行うことができる。
【0010】
さらに、本発明では、5質量部未満という少量の鉄粉を含んでいる。即ち、鉄粉の配合により、オレフィン系樹脂のモノマテリアル性を得るためこのような少量の鉄粉の配合により、鉄粉が示す脱酸素性(酸素吸収性)を発揮させ、酸素バリア性を発現させることができる。即ち、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの酸素バリア性樹脂では、包材に要求される酸素バリア性を付与するためにはかなり多量の配合量を必要とするばかりか、使用後の包材からオレフィン系樹脂と分離することも容易ではない。しかしながら、鉄粉は、天然の無機物であり、環境に対して悪影響を与えることがないばかりか、オレフィン系樹脂との分離も容易であり、モノマテリアル化を維持させるほどの少量で酸素バリア性を発揮させることができ、オレフィン系樹脂のリサイクル性と酸素バリア性との両方を満足することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の包材は、種々の形態を有することができ、例えば、フィルム或いはシートの形態で各種物質を収容する包材であってもよいし、カップ容器の口部にヒートシールにより貼り付けて使用される蓋材であってもよいし、フィルムをヒートシールにより製袋して得られる袋(パウチ)であってよく、シートを真空成形、プラグアシスト成形することにより得られるカップ容器であってもよい。さらには、押出成形或いは射出成形により形成されたプリフォームをブロー成形して得られるブローボトルであってもよい。しかし、包材100質量部に対して、オレフィン系樹脂以外の樹脂成分含有量が15質量部未満かつ鉄粉が5質量部未満であり、さらに、配合される鉄粉の特性を最大限に発揮させるという観点からは、袋であることが最も好適である。
【0012】
さらに、この包材は、鉄粉を含むオレフィン系樹脂からなる単層構造であってもよいし、鉄粉を含むオレフィン系樹脂層を少なくとも一層含む多層構造を有していてもよい。
【0013】
オレフィン系樹脂;
本発明の包材を形成する主材として使用されるオレフィン系樹脂は、それ自体公知のオレフィン系樹脂を使用することができる。
このようなオレフィン系樹脂としては、包材の材料として従来から使用されている公知のもの、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレンなどのエチレン系樹脂;ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)などのプロピレン系樹脂が代表的であり、さらには、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体、特開2007-284066号等に開示されている環状オレフィン共重合体などのオレフィン系共重合体を使用することもできる。
【0014】
本発明においては、従来から種々の用途に広く使用されており、特にリサイクル性が求められ且つヒートシール性に優れたエチレン系樹脂及びプロピレン系樹脂が最も好適である。
【0015】
上記のオレフィン系樹脂が、包材に要求される特性に応じて適したものが使用される。
例えば、レトルト殺菌などの加熱殺菌が適用される用途では、特にプロピレン系樹脂が好適であり、特に耐熱性や耐衝撃性に優れたブロックPPが最適である。
また、袋のように、製袋のためにヒートシールが行われる場合には、未延伸フィルムの形で使用される。この場合、未延伸のオレフィン系樹脂フィルムに、延伸されたプロピレンフィルムを積層して、強度を向上させることもできる。この場合、ドライラミネート接着剤などが使用されるが、当然、包材100質量部に対して、オレフィン系樹脂含量を80質量部以上に維持しておくことが必要であり、好適には85質量部以上、より好適には、90~99質量部に維持しておくことが望ましい。
【0016】
鉄粉;
本発明において使用される鉄粉は、脱酸素性(酸素吸収性)を示す無機材料として知られている。即ち、鉄が水分と反応して二価の水酸化鉄を生成し、この水酸化鉄が酸素と反応して三二酸化鉄(Fe)を生成することにより、酸素を吸収するというものであり、この特性を脱酸素に利用し、包材に酸素バリア性を付与し、包装される物質の酸化劣化を防止するわけである。この鉄粉の量は、包材100質量部に対して5質量部未満、好適には0.1~4.0質量部、より好適には0.2~1.1質量部の範囲であり、オレフィン系樹脂含量が80質量部以上含有するという条件が損なわれない範囲の量で使用される。
【0017】
このような鉄粉は、例えば特許第5378639号にも開示されているように、通常、BET比表面積が0.5m/g以上の粉末として使用される。このような鉄粉としては、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉、電解鉄粉、カルボニル鉄粉など、公知の鉄粉を使用することができるが、酸素吸収能が高いという点で還元鉄粉が好適に使用される。即ち、還元鉄粉は、鉄鉱石を還元することによりえられ、比表面積が大きいからである。さらに、還元鉄粉の中でも、高純度であることから、ロータリー還元鉄粉が特に好適である。特に上記特許にも記載されているように、適度な熱処理により、粉末X線回折法(Co-Kα)で測定した鉄の(110)面のピークの半値幅が0.20°/2θ以下に調整された鉄粉が酸素吸収反応により副生する水素発生が抑制されるという点で好適である。
【0018】
上記の鉄粉は、オレフィン系樹脂と混合してオレフィン系樹脂層を形成するが、基本的には、未延伸の層に配合される。このような鉄粉の配合は、延伸性を損なうからである。
【0019】
また、上記のような鉄粉が配合されているオレフィン系樹脂欧(未延伸の層)には、鉄粉の酸素吸収反応を促進するための助剤として、ハロゲン化金属及びアルカリ性物質を配合することが好適である。
【0020】
ハロゲン化金属は、酸素吸収反応を促進する助剤として機能するものであり、各種金属(例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、銅、亜鉛、鉄など)のハロゲン化物であり、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム等を挙げることができる。特に、助剤としての性能やコストなどの点で塩化ナトリウムが最適である。
【0021】
このようなハロゲン化金属は、鉄粉に比して少量でよく、例えば、鉄粉100質量部当り、0.1~10質量部、特に1~5質量部の量で使用される。
【0022】
また、アルカリ性物質は、水を吸収して鉄粉による酸素吸収反応を進行させるものであり、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等を使用することができる。特に、発泡を回避するという点で非炭酸系の化合物が好ましく、消石灰(水酸化カルシウム)や生石灰(酸化カルシウム)が好適に使用される。
【0023】
このようなアルカリ性物質も鉄粉に比して少量でよく、例えば、鉄粉100質量部当り、0.5~2質量部、特に1~2質量部の量で使用される。
【0024】
尚、上記の様な鉄粉と共に使用される助剤は、当然のことながら、包材100質量部に対して、オレフィン系樹脂含量が80質量部以上含有するという条件が損なわれない範囲の量で使用されるが、上述したように、鉄粉に比して非常に少量であるため、この条件を損なうことはない。
【0025】
その他の材料;
本発明においては、包材100質量部に対して、オレフィン系樹脂含量が80質量部以上含有するという条件が損なわれない範囲で、鉄粉以外の材料が含まれていてもよい。
【0026】
例えば、強度補強のために、未延伸のオレフィン系樹脂フィルム(鉄粉含有フィルム)に、延伸フィルムを積層することができるが、このような延伸フィルムとしては、ポリプロピレンの延伸フィルム以外にも、ナイロンなどのポリアミドのフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルのフィルムが代表的である。即ち、オレフィン系樹脂フィルム以外の樹脂フィルムを使用する場合には、上記の条件を満足するように、積層されたフィルムの全厚みに比して、著しく薄いものである。
【0027】
さらに、未延伸のオレフィン系樹脂フィルム(鉄粉含有フィルム)に延伸フィルムを積層するためには、ドライラミネート接着剤などが使用されるが、このような接着剤としては、エポキシ系接着剤やウレタン系接着剤が代表的である。勿論、このような接着剤によって形成される層も、前述したオレフィン系樹脂含量を満足させるために、非常に薄い層となる。
【0028】
さらに、従来公知のガスバリア性樹脂、例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)や芳香族ポリアミドも、前述したオレフィン系樹脂含量を満足させることを条件に使用可能である。しかしながら、このようなガスバリア性樹脂の層を独立して設ける場合には、かなりの厚みの層とすると同時に、酸変性オレフィン系樹脂などの接着剤の使用も必要となってしまう。従って、ガスバリア性樹脂を使用する場合は、オレフィン系樹脂を混合した層とし、接着剤層を省略した態様とすることが好適である。さらには、EVOHや芳香族アミド以外のバリア材として、アルミナやシリカ等の無機蒸着した延伸オレフィン系樹脂フィルムを使用することがモノマテリアル化の点で望ましい。
【0029】
また、EVOHは、鉄粉との共存下での加熱により劣化する傾向がある。従って、EVOHを含むオレフィン系樹脂の層と鉄粉が配合された層とは別の層とすることが好適であるが、後述する実施例のように、EVOHと鉄粉を含む混合物層とする場合には、鉄粉の含有量にもよるが、EVOHは混合物100質量部中に、15.0質量部未満。好適には10質量部未満、より好適には3.0質量部未満の量で含有されることが望ましい。
【0030】
また、鉄粉が配合されたオレフィン系樹脂層は、黒色に近い色となり、包材の外観特性を低下させ、商品価値を損なうことがある。このため、鉄粉が配合されているオレフィン系樹脂の層を有する本発明の包材においては、白色顔料が分散されたオレフィン系樹脂の層を設けることが好ましい。
即ち、鉄粉配合のオレフィン系樹脂層の外面側に白色顔料分散オレフィン系樹脂層を設けることにより、鉄粉の使用による外観特性の低下を回避するわけである。
【0031】
このような白色顔料としては、酸化チタンや酸化亜鉛を挙げることができる。勿論、このような白色顔料の使用量も、包材100質量部に対して、オレフィン系樹脂含量が80質量部以上となるように設定される。
【0032】
尚、上述した本発明の包材においては、工場内での同一製品の生産工程で発生する廃材(スクラップ)を用いて形成されるリグラインド層を設けることもできる。このようなリグラインド層は、廃材をバージンのオレフィン系樹脂と混合した樹脂組成物を、前述した鉄粉含有オレフィン系樹脂層などの層と共押出(或いは共射出)することにより形成される。このようなリグラインド層を含む包材においても、オレフィン系樹脂の含有量は、包材100質量部に対して、80質量部以上に維持される。
鉄粉含有オレフィン系樹脂層とEVOH層を有するスクラップをリグラインド層として使用する場合、前述したEVOHの劣化により、発泡を生じたり或いは成形性が損なわれる懸念がある。劣化抑制としては、EVOH及び鉄粉の共存する層内のEVOH濃度が重要である。共存する層100質量部に対して、EVOHが10質量部未満であることが好適である。
【0033】
本発明の包材は、特に袋(パウチ)として最も好適であり、パウチを形成するフィルムの層構造は、以下に一例を示すがこの限りではない。必要に応じて、接着剤層の有無や各層構成を変更できる。また、酸化チタン等の白色顔料を鉄粉含有オレフィン層に添加することや多層化することで鉄粉由来の黒色外観を回避できる。
以下の記載においては、次の略号を使用している。
CPO:未延伸オレフィン系樹脂(鉄粉無し)
FeCPO:鉄粉含有オレフィン系樹脂
OPO:延伸オレフィン系樹脂
VOPO:蒸着延伸オレフィン系樹脂
AD:接着剤層
EV:EVOH
EV+Fe+OL:EVOHと鉄粉とオレフィン系樹脂の混合物層
【0034】
FeCPO(単層)
(内) CPO/FeCPO (外)
(内) CPO/FeCPO/CPO (外)
(内) CPO/FeCPO/OPO (外)
(内) CPO/FeCPO/VOPO (外)
(内) CPO/EV+Fe+OL/VOPO (外)
(内) CPO/FeCPO/AD/VOPO (外)
(内) CPO/EV+Fe+OL/AD/VOPO (外)
(内) CPO/FeCPO/VOPO/AD/OPO (外)
(内) CPO/EV+Fe+OL/VOPO/AD/OPO (外)
(内) CPO/FeCPO/AD/EV/AD/CPO (外)
(内) CPO/FeCPO/AD/EV/AD/EV+Fe+OL/CPO (外)
(内) CPO/FeCPO/EV+Fe+OL/AD/EV/AD/EV+Fe+OL
/CPO (外)
(内) CPO/EV+Fe+OL/AD/EV/AD/CPO (外)

尚、「内」は、包装される物質と接触する内面側であり、「外」は、内容物と接触しない外面側である。
【0035】
オレフィン系樹脂のリサイクル;
本発明のオレフィン系樹脂製包材は、包材100質量部に対して、オレフィン系樹脂含量が80質量部以上含有するとモノマテリアル性が非常に高いため、オレフィン系樹脂のリサイクル性に優れている。
【0036】
例えば、この包材の廃棄物を回収し、適宜、他の成形品(例えばポリエステル成形品)と分別し、粉砕、洗浄、比重による分離などを経て、できるだけ異物を排除する。この後、適当な溶剤を用いて溶解させ、これにより、鉄粉及び白色顔料などの無機物とオレフィン系樹脂を分離する。
【0037】
このように分離されたオレフィン系樹脂は、異種の樹脂をほとんど含んでいないので、再び、オレフィン系樹脂として再利用される。通常は、バージンのオレフィン系樹脂と混合し、種々のプラスチック成形品の製造に利用される。
尚、異物を排除した粉砕品から溶剤を用いて鉄粉等の無機物を分離する代わりに、加熱してオレフィン系樹脂を分解させ(ガス化させ)、熱源として使用することもできる。
【0038】
また、上記のオレフィン系樹脂から分離された無機物は、マグネットにより鉄を回収し、適宜、アルカリ洗浄などを行い、脱酸素用の鉄粉として使用することができる。
【0039】
このように、本発明の包材は、包材100質量部に対して、80質量部以上のオレフィン系樹脂を含み、オレフィン系樹脂の再利用を効果的に行うことができるばかりか、少量の鉄粉で酸素バリア性を付与することができ、特にパウチとしての用途に最適である。
【実施例0040】
本発明を実施例により更に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
4種6層の多層シート成形機を使用し、各樹脂を単軸押出機にて溶融混練し、Tダイ温度230℃でTダイからシート状に押出し、冷却ロールに接触させて固化させて巻き取ることにより、厚み500μmの多層シートを成形した。
層構成は、外側より最外PP層85μm/接着層10μm/EVOH層15μm/接着層10μm/混合物層130μm/内PP層250μmである。使用した樹脂は後述する。
また。得られた多層シートを145℃に加熱して、プラグアシストして真空圧空成形することによりフランジ付き多層トレイを成形した。
尚、容器寸法は以下のとおりである。
フランジ外径;
長軸:155mm×短軸:120mm
口径;
長軸:135mm×短軸:100mm
底部外径;
長軸:115mm×短軸:90mm、高さ35mm
【0041】
得られた容器を用いて、混合物層の樹脂配合量による酸素バリアへの影響を評価した。
評価方法は、以下のとおりである。
グローブボックス内で窒素置換後、シリカ蒸着フィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミしたバリアフィルムを蓋材として、容器内に蒸留水5ml滴下しヒートシールした。次いで、30℃ 80%RHで経時保管し、ガスクロマトグラフィーにて酸素濃度を測定した。
1か月後の容器内酸素濃度の増加量が0%であるものを◎、0.5%未満であるものを〇、0.5%以上のものを×とした。
【0042】
容器の成形に用いた樹脂材料は以下のとおりである。
最外PP層、内PP層;
エチレン-プロピレンブロック共重合体
MFR:0.5g/10分 230℃
密度:0.90g/cm
接着層;
無水マレイン酸変性ポリプロピレン
MFR:5.7g/10分 230℃
密度:0.89g/cm
EVOH層;
エチレン・ビニルアルコール重合体
エチレン含量:32mol%
MFR:2.0g/10分 190℃
密度:1.17g/cm
混合物層;
最外層または内層で使用したPP樹脂、EVOH及び鉄粉含有オレフィン系樹脂をドライブレンドしたもの。
尚、鉄粉含有オレフィン系樹脂としては、酸素吸収剤29重量部とランダムポリプロピレン71重量部を二軸押出機で溶融混練した樹脂組成物を用いた。
上記の酸素吸収剤は、見掛密度1.86g/cmの還元鉄100重量部、塩化ナトリウム2重量部及び水酸化カルシウム1重量部から成る。
また、上記のランダムポリプロピレンとしては、MFRが1.2g/10分(230℃)、密度が0.91g/cmのものを用いた。
【0043】
<実施例1~実施例4、比較例1,2>
混合物層中の各成分の使用割合を表1に示すように種々変更して容器を成形し、酸素バリア性を評価した。評価結果を、併せて表1に示した。
【0044】
【表1】