(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013305
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ブロック用吊り枠及びそれを使用したブロックの移動方法
(51)【国際特許分類】
B66C 1/62 20060101AFI20240125BHJP
B66C 1/42 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B66C1/62 H
B66C1/42 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115290
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】松長 悠太
(72)【発明者】
【氏名】琴浦 毅
(72)【発明者】
【氏名】塚本 高文
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004AG01
3F004AG04
3F004EA11
(57)【要約】
【課題】水中においてもブロックに対し安定して自動で玉掛け・玉外し作業を行うことができるブロック用吊り枠及びそれを使用したブロックの移動方法の提供。
【解決手段】このブロック用吊り枠1は、ブロックの外側面に外接する互いに対向した少なくとも一対のガイド部材7,7を備え、可動フック6,6…及びガイド部材7,7…が吊り枠本体5に移動可能に取り付けられていることにより、多種多様なブロックに対応でき、且つ、ガイド部材7と可動フック6の相対位置関係が不動なので、水中でも安定した状態で玉掛け作業を行うことができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンに吊り持ちされる吊り枠本体と、該吊り枠本体の下面部に支持された複数の可動フックと、該可動フックを動作させるフック動作手段とを備え、
前記可動フックを動作させてブロックの上面部に配置された吊筋に対し前記可動フックが係合又は解除されるようにしたブロック用吊り枠において、
前記ブロックの外側面に外接する互いに対向した少なくとも一対のガイド部材を備え、
前記可動フック及び/又は前記ガイド部材が前記吊り枠本体に移動可能に取り付けられていることを特徴とするブロック用吊り枠。
【請求項2】
前記吊り枠体又は前記ガイド部材に支持された高さ調節部材を備え、該高さ調節部材を前記ブロックの上面部に当接させ、前記可動フックの高さを前記吊筋の高さに合わせるようにした請求項1に記載のブロック用吊り枠。
【請求項3】
前記ブロックの位置を検知するためのブロック位置検知手段を備えている請求項1又は2に記載のブロック用吊り枠。
【請求項4】
前記吊り枠本体に互いに推進方向が異なる複数のスラスタ―を備えている請求項3に記載のブロック用吊り枠。
【請求項5】
前記吊り枠本体に1又は複数の浮力調節可能な浮体を備えている請求項4に記載のブロック用吊り枠。
【請求項6】
クレーンに吊り持ちされる吊り枠本体の下面部に支持された複数の可動フックを動作させてブロックの上面部に配置された吊筋に対し前記可動フックが係合又は解除されるようにしたブロック用吊り枠を使用して前記ブロックを移動させるブロックの移動方法において、
前記吊り枠本体に対し、前記可動フックの位置を対応する前記吊筋の位置に調整するとともに、前記ブロックの外側面に外接するように調整した位置に互いに対向する少なくとも一対のガイド部材を取り付けておき、
前記ブロック上に移動させた前記ブロック用吊り枠を下降させ、前記ガイド部材を前記ブロックに外接させ、
その状態で前記ブロック用吊り枠をさらに下降させて各前記可動フックを対応する前記吊筋の位置まで誘導し、各前記可動フックを動作させて前記吊筋に対し前記可動フックを係合させ、
前記ブロック用吊り枠を介して前記ブロックを吊り上げて移動させることを特徴とするブロックの移動方法。
【請求項7】
前記ブロック用吊り枠に前記ブロックの位置を検知するためのブロック位置検知手段を備え、
該ブロック位置検知手段によって前記ブロックと前記ブロック用吊り枠との水平方向における位置ズレ量を算出し、該位置ズレ量に基づいて前記ブロック用吊り枠を前記ブロック上に移動させる請求項6に記載のブロックの移動方法。
【請求項8】
前記ブロック用吊り枠に互いに推進方向が異なる複数のスラスタ―を備え、前記位置ズレ量に基づいて前記複数のスラスタ―を制御し、水中で前記ブロック用吊り枠を前記ブロック上に移動させる請求項7に記載のブロックの移動方法。
【請求項9】
前記ブロック用吊り枠に1又は複数の浮体を備え、水中で前記ブロック用吊り枠を前記ブロック上に移動させる際に前記浮体の浮力を調節する請求項7又は8に記載の水中ブロックの移動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中構造物等を構成するブロックをクレーンで吊り上げる際に使用するブロック用吊り枠及びそれを使用したブロックの移動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中構造物を構成するコンクリートブロックの据え付け又は撤去作業は、主に起重機船等のクレーンを搭載した作業船を使用し、コンクリートブロックをクレーンで吊り上げて移動させることにより行われている。
【0003】
このコンクリートブロックの移動作業は、移動元においてクレーンのジブ先端より繰り出されたワイヤの先端に取り付けられたフックにワイヤやチェーン等からなる複数の吊り具の一端を取り付けて吊るし、各吊り具の他端に取り付けられた玉掛けフックをコンクリートブロックに設けられた逆U字状の吊筋に係合(玉掛け)させ、クレーンでコンクリートブロックを吊り持ちした状態で移動させた後、移動先において玉掛けフックを吊筋より取り外すようになっている(玉外し)。
【0004】
その際、気中から水中にコンクリートブロックを移動させる際には、水中の移動先で玉外し作業を行い、水中から気中にコンクリートブロックを移動させる際には、水中で玉掛け作業を行う必要がある。
【0005】
このような水中での玉掛け・玉外し作業は、従来、潜水士の手によって行うことが一般的であったが、水中での作業は危険が多く、事故も発生しているという問題があった。
【0006】
そこで、水中での玉外し作業については、レッコカン、オートリリースフックなどと呼ばれる機材により自動で玉外し作業を行えるものが開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0007】
一方、玉掛け作業については、クレーンに吊り持ちさせた吊り枠をコンクリートブロック上の所定の位置に誘導し、吊り枠下面に支持された玉掛けフックを遠隔操作によりコンクリートブロックの吊筋に対し着脱させるようにした装置(以下、自動玉掛け装置という)が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の如き従来の自動玉掛け装置では、玉掛けフックの開閉動作を目視で確認するとともに、作業員による位置の微調整が依然として必要であった。
【0010】
また、水中カメラやソナー等を用いて誘導した場合であっても、水中では、水流や風等の影響を受けやすく、クレーンに吊り持ちされた自動玉掛け装置を安定した状態に維持することが難しく、玉掛けフックをコンクリートブロックの吊筋に対し着脱させることが難しいという問題があった。
【0011】
また、この種の構造物の構築に使用されるコンクリートブロックは、形状や寸法、吊筋の位置が多種多様であるため、対象となるコンクリートブロック毎に吊り枠を用意しなければならず、コストが嵩むという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、水中においてもブロックに対し安定して自動で玉掛け・玉外し作業を行うことができるブロック用吊り枠及びそれを使用したブロックの移動方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、クレーンに吊り持ちされる吊り枠本体と、該吊り枠本体の下面部に支持された複数の可動フックと、該可動フックを動作させるフック動作手段とを備え、前記可動フックを動作させてブロックの上面部に配置された吊筋に対し前記可動フックが係合又は解除されるようにしたブロック用吊り枠において、前記ブロックの外側面に外接する互いに対向した少なくとも一対のガイド部材を備え、前記可動フック及び/又は前記ガイド部材が前記吊り枠本体に移動可能に取り付けられていることにある。
【0014】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記吊り枠体又は前記ガイド部材に支持された高さ調節部材を備え、該高さ調節部材を前記ブロックの上面部に当接させ、前記可動フックの高さを前記吊筋の高さに合わせるようにしたことにある。
【0015】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記ブロックの位置を検知するためのブロック位置検知手段を備えていることにある。
【0016】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項3の構成に加え、前記吊り枠本体に互いに推進方向が異なる複数のスラスタ―を備えていることにある。
【0017】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項4の構成に加え、前記吊り枠本体に1又は複数の浮力調節可能な浮体を備えていることにある。
【0018】
請求項6に記載の発明の特徴は、クレーンに吊り持ちされる吊り枠本体の下面部に支持された複数の可動フックを動作させてブロックの上面部に配置された吊筋に対し前記可動フックが係合又は解除されるようにしたブロック用吊り枠を使用して前記ブロックを移動させるブロックの移動方法において、前記吊り枠本体に対し、前記可動フックの位置を対応する前記吊筋の位置に調整するとともに、前記ブロックの外側面に外接するように調整した位置に互いに対向する少なくとも一対のガイド部材を取り付けておき、前記ブロック上に移動させた前記ブロック用吊り枠を下降させ、前記ガイド部材を前記ブロックに外接させ、その状態で前記ブロック用吊り枠をさらに下降させて各前記可動フックを対応する前記吊筋の位置まで誘導し、各前記可動フックを動作させて前記吊筋に対し前記可動フックを係合させ、前記ブロック用吊り枠を介して前記ブロックを吊り上げて移動させることにある。
【0019】
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項6の構成に加え、前記ブロック用吊り枠に前記ブロックの位置を検知するためのブロック位置検知手段を備え、該ブロック位置検知手段によって前記ブロックと前記ブロック用吊り枠との水平方向における位置ズレ量を算出し、該位置ズレ量に基づいて前記ブロック用吊り枠を前記ブロック上に移動させることにある。
【0020】
請求項8に記載の発明の特徴は、請求項7の構成に加え、前記ブロック用吊り枠に互いに推進方向が異なる複数のスラスタ―を備え、前記位置ズレ量に基づいて前記複数のスラスタ―を制御し、水中で前記ブロック用吊り枠を前記ブロック上に移動させる請求項7に記載のブロックの移動方法。
【0021】
請求項9に記載の発明の特徴は、請求項7又は8の構成に加え、前記ブロック用吊り枠に1又は複数の浮体を備え、水中で前記ブロック用吊り枠を前記ブロック上に移動させる際に前記浮体の浮力を調節することにある。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るブロック用吊り枠は、請求項1に記載の構成を具備することによって、ガイド部材と可動フックの位置を任意に設定することで、多種多様な形状のブロックに対応できるとともに、ガイド部材をブロックの外側面に外接させることによって、確実に可動フックの位置を吊筋の位置に誘導できるので水中においても安定した状態で自動又は遠隔操作によって玉掛け作業を行うことができる。
【0023】
また、本発明において、請求項2に記載の構成を具備することによって、可動フックを確実に吊筋に対し着脱させることができる。
【0024】
さらに、本発明において、請求項3に記載の構成を具備することによって、目視による誘導が困難な水中であってもブロックの位置を検知することができ、確実に玉掛け作業を行うことができる。
【0025】
さらに、本発明において、請求項4に記載の構成を具備することによって、吊り枠の位置の微調整をすることができる。
【0026】
さらに、本発明において、請求項5に記載の構成を具備することによって、吊り枠をスラスタ―によって移動させ易くすることができる。また、吊り枠の姿勢の微調整をすることができる。
【0027】
さらに、本発明において、請求項6に記載の構成を具備することによって、目視による視認が困難な水中であっても確実に玉掛け作業を行うことができる。
【0028】
また、本発明において、請求項7乃至9に記載の構成を具備することによって、自動で吊り枠をブロック上に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係るブロック用吊り枠の一例を示す平面図である。
【
図4】同上の可動フック部を示す拡大断面図である。
【
図5】(a)は同上のガイド部材を示す正面図、(b)は同平面図、(c)は同底面図、(d)は同縦断面図である。
【
図6】本発明に係るブロックの移動方法における玉掛け作業の手順を示す正面図であって(a)はブロック用吊り枠の吊り下ろし時の状態を示す図、(b)は同ブロックとの初期接触状態を示す図、(c)は同玉掛け作業時の状態を示す図である。
【
図7】同上のブロック用吊り枠にブロックを保持させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明に係るブロック用吊り枠の実施態様を
図1~
図5に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1はブロック用吊り枠、符号2はブロックである。
【0031】
本実施例では、平面視十字状のコンクリートブロック2を例に説明し、ブロック2には、上面部の所定の位置に玉掛け用凹部3が形成され、玉掛け用凹部3の底部に逆U字状の吊筋4が突出している。
【0032】
ブロック用吊り枠1は、クレーンに吊り持ちされる吊り枠本体5と、吊り枠本体5の下面部に支持された複数の可動フック6,6…と、可動フック6,6…を動作させるフック動作手段(図示せず)とを備え、ブロック2上において可動フック6,6…を動作させてブロック2の上面部に配置された吊筋4に対し可動フック6,6…が係合又は解除されるようにしている。
【0033】
また、このブロック用吊り枠1は、吊り枠本体5に取り付けられた複数のガイド部材7,7…を備え、ガイド部材7,7…をブロック2の外側面に外接させることにより各可動フック6,6…の位置を対応する吊筋4の位置に誘導できるようになっている。尚、ガイド部材7,7…は、少なくともブロック用吊り枠1の中心を基準に点対称に対向した2カ所に設置し、対象とするブロック2の寸法や形状に応じて吊り枠1上の位置を変更することができる。また、外接させるブロック2の形状に応じて異なる形状のガイド部材に変更することができる。
【0034】
吊り枠本体5は、
図1に示すように、鋼製の角材、C形鋼、H形鋼等の梁状部材により平面視格子状に形成されている。尚、本実施例では、便宜上省略しているが、強度を確保するため、各格子部内を斜めに横切るように配置された筋交い材を設けることが好ましい。
【0035】
また、吊り枠本体5には、上面の所定の位置に吊りワイヤ8,8が連結される吊りピース9,9が突設され、クレーンに吊られた吊りワイヤ8,8の他端をクレーンから繰り出されたワイヤ10の先端に取り付けられたフック11に連結することにより、吊り枠本体5がクレーンで吊持ちできるようになっている。
【0036】
また、吊り枠本体5には、外周面に互いに推進方向が異なる複数のスラスタ―12,12…と、1又は複数の浮力調節可能な浮体13,13…とを備え、スラスタ―12,12…の推進力によって移動できるようになっている。
【0037】
また、吊り枠本体5には、特に図示しないが、ブロック2の位置を検知するためのブロック位置検知手段(図示せず)を備え、スラスタ―12,12…及び浮体13,13…は、ブロック位置検知手段から得られる情報に基づいて自動制御できるようになっている。尚、位置検知手段には、水中カメラ等の撮像機器や各種ソナー等を用い、位置検知手段が取得した情報は、陸上の操作者等に有線又は無線で送信される。
【0038】
可動フック6,6…は、
図4に示すように、位置調節手段を介して吊り枠本体5に固定されるベース部6aと、ベース部6aに回動可能に支持されたフック部6bとを備え、遠隔操作によりフック動作手段でフック部6bを吊筋4と係合する位置と解除される位置との間で回動させられるようになっている。
【0039】
また、吊り枠本体5には、下面に板状の高さ調節部材14,14が突設され、高さ調節部材14,14をブロック2の上面部に当接させることにより、可動フック6,6…の高さを吊筋4の高さに合わせられるようになっている。
【0040】
位置調節手段は、互いに間隔をおいて配置された一対の位置調節用長尺梁材15,15と、位置調節用長尺梁材15,15下に互いに間隔をおいて支持された一対の位置調節用短尺梁材16,16とを備え、各梁材15,16下にそれぞれ可動フック6,6…が固定されている。
【0041】
位置調節用長尺梁材15,15は、両端部がそれぞれ吊り枠本体5の外枠部にボルトによって固定されている。外枠部には、所定の間隔でナット部が形成されており、螺合させるナット部を変えることによって、位置調節用長尺梁材15と直交する方向に取り付け位置を変更できるようになっている。
【0042】
位置調節用短尺梁材16,16は、両端部がそれぞれ位置調節用長尺梁材15,15にボルトによって固定されている。位置調節用長尺梁材15,15には、所定の間隔でナット部が形成されており、螺合させるナット部を変えることによって、位置調節短尺梁材16と直交する方向に取り付け位置を変更できるようになっている。
【0043】
ガイド部材7,7…は、
図5に示すように、ブロック2の外側面に外接されるガイド本体17と、ガイド本体17の下端に支持された誘導テーパ部18とを備え、ガイド本体17の上端部が吊り枠本体5に溶接又はボルト締め等によって着脱可能に固定されている。
【0044】
ガイド本体17は、互いに直交するように配置された一対のガイド板17a,17aと、両ガイド板17a,17aの側縁を連結する連結板17bとを備え、平面視く字状を成している。
【0045】
誘導テーパ部18は、連結板17bの下縁より平面視く字状内側に向けて傾斜した下側が狭い台形状の連結テーパ板18aと、ガイド板17aの下縁より平面視く字状内側に向けて傾斜した三角形状の側板18b、18bとを備え、両側板18b,18bの他端が連結テーパ板18aの側縁に支持され、傾いた状態で保持されている。
【0046】
次に、上述のブロック用吊り枠1を使用したブロック2の移動方法について
図6、
図7に基づいて説明する。尚、本実施例では、水中に設置されたブロック2を撤去して水上に移動させる場合を例に説明し、上述の実施例と同様の符号を付して説明を省略する。
【0047】
先ず、事前準備として撤去するブロック2の形状及び吊筋4の位置を事前の実地調査や設計図等で確認する。
【0048】
また、地上の作業ヤード等において、確認したブロック2形状の情報に基づいて、又は対象とするブロック2の現物を用いて吊り枠本体5にガイド部材7,7…をブロック2の外側面に外接するように固定する。
【0049】
さらに、確認したブロック2の吊筋4の位置情報に基づいて、位置調節用長尺梁材15,15及び位置調節用短尺梁材16,16を移動させ、可動フック6,6…の位置を調節する。
【0050】
次に、ガイド部材7,7…及び可動フック6,6…を吊り枠本体5の所定の位置に取り付けたブロック用吊り枠1を起重機船等のクレーンを搭載した作業船に積込み、ブロック2が設置されている水域に移動する。
【0051】
作業水域に到着したら、
図6(a)に示すように、ブロック用吊り枠1をクレーンで吊り上げ、ブロック2の上方まで移動させ、その位置からワイヤ10を繰り出し、ブロック用吊り枠1を水上から水中のブロック2上に下降させる。
【0052】
その際、水中カメラやソナー等からなるブロック位置検知手段によってブロック2とブロック用吊り枠1との水平方向における位置ズレ量を算出し、位置ズレ量に基づいてブロック用吊り枠1をブロック2上に移動させる。
【0053】
水中でのブロック用吊り枠1の移動は、大まかな移動をクレーン操作で行い、その後、ブロック位置検知手段によって算出された位置ズレ量に基づいて複数のスラスタ―12,12…を制御し、スラスタ―12,12…の推進力を利用して位置の微調整を行う。
【0054】
また、水中においてブロック用吊り枠1に対しスラスタ―12,12…の推進力が作用し難い場合には、吊り枠本体5に固定された浮体13,13…に浮力を作用させることが好ましい。
【0055】
そして、ブロック用吊り枠1を下降させると、
図6(b)に示すように、ガイド部材7,7…の誘導テーパ部18がブロック2の上縁部に接触し、ガイド本体17がブロック2の外側面に外接する位置に誘導する。
【0056】
さらにブロック用吊り枠1を下降させると、
図6(c)、
図7に示すように、ガイド本体17がブロック2の外側面に外接し、ブロック用吊り枠1がブロック2上の所定の位置に位置決めされ、高さ調節部材14,14がブロック2の上面部に当接する。
【0057】
よって、ガイド部材7,7…によってブロック2上に位置決めされた吊り枠本体5と、各可動フック6,6…の相対位置関係は不動であり、また、高さ調節部材14,14がブロック2の上面部に当接していることで可動フック6,6…とブロック2上面の吊筋4との相対高さも決まる。尚、高さ調整部材14,14とブロック2の上面との接触確認のために高さ調整部材14の下面に接触センサを設置するようにしてもよい。
【0058】
この状態で可動フック6,6…を遠隔操作により動作させることによりフック部6bが吊筋4と係合し、ブロック2がブロック用吊り枠1に保持された状態となる。尚、可動フック6,6…と吊筋4との係合を確認するための係合確認手段を設けてもよい。係合確認手段としては、例えば、可動フック6と吊筋4との係合部を撮影するカメラを設置してもよく、可動フック6と吊筋4との接触を感知する接触センサを設置してもよい。
【0059】
その後、ブロック用吊り枠1を介してブロック2をクレーンで水上まで吊り上げ、クレーンにより運搬用の台船や地上の置き場まで移動させる。
【0060】
ブロック2を移動先に移動させ、着底させたら、遠隔操作により可動フック6,6…を動作させ、フック部6bを吊筋4より解除し、しかる後、ブロック用吊り枠1を上方へ吊り上げ、ブロック2からブロック用吊り枠1を取り外し作業が完了する。
【0061】
このように構成されたブロック用吊り枠1を使用すれば、ガイド部材7,7…によって吊り枠本体5の位置をブロック2上の所定の位置に誘導することができるので、視界の悪い水中においても、確実に吊り枠本体5をブロック2上の所定の位置に移動させることができる。
【0062】
また、ガイド部材7,7…によって、ブロック2に対し吊り枠本体5を所定の位置に安定した状態で保持できるので、安定した状態で可動フック6,6…と吊筋4との玉掛けを行うことができる。
【0063】
さらに、ガイド部材7,7…及び可動フック6,6…が吊り枠本体5に対し、移動可能に取り付けられているので、対象となるブロック2の外形に合わせてガイド部材7,7…を選択して取り付け、可動フック6,6…の位置を調節することによって、多様な形状のブロック2に対応することができる。
【0064】
尚、上述の実施例では、水中のブロックを撤去する場合について説明したが、同様の手順で気中から水中への移動、気中から気中への移動にも対応することができる。
【0065】
本実施例では、平面視十字状のコンクリートブロック2を例に説明したが、ブロック2は平板状だけでなく、上方に突出部分を有するものであってもよい。
上方に突出部分を有する場合には、その形状に合わせブロック用吊り枠1の中央開口部の寸法を調整して対応することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 ブロック用吊り枠
2 ブロック
3 玉掛け用凹部
4 吊筋
5 吊り枠本体
6 可動フック
7 ガイド部材
8 吊りワイヤ
9 吊りピース
10 ワイヤ
11 フック
12 スラスタ―
13 浮体
14 高さ調整部材
15 位置調節用長尺梁材
16 位置調節用短尺梁材
17 ガイド本体
18 誘導テーパ部