(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133064
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】電池モジュール、エネルギー貯蔵装置、およびヒューズ設定方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/583 20210101AFI20240920BHJP
H01M 50/231 20210101ALI20240920BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240920BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M50/583
H01M50/231
H02J7/00 S
H02H7/18
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024095929
(22)【出願日】2024-06-13
(62)【分割の表示】P 2022541270の分割
【原出願日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0047727
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ボグ・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン・イル・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ジン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・キュ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソル・ジ・ユ
(57)【要約】
【課題】安全でありながらも価格競争力を有する電池モジュール、エネルギー貯蔵装置、およびヒューズ設定方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態は、電池モジュール、エネルギー貯蔵装置、およびヒューズ設定方法に関し、電池ラックに複数の電池モジュールを含んで用いられ、過電流の発生時に回路を遮断するラックヒューズを含むエネルギー貯蔵装置における前記電池モジュールであって、電池セルと、過電流の発生時に回路を遮断するモジュールヒューズと、を備え、モジュールヒューズは、ラックヒューズの溶断完了時点よりも遅く溶断開始することを特徴とする、電池モジュールを提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ラックに複数の電池モジュールを含んで用いられ、過電流の発生時に回路を遮断するラックヒューズを含むエネルギー貯蔵装置における電池モジュールであって、
電池セルと、
過電流の発生時に回路を遮断するモジュールヒューズと、
を備え、
前記モジュールヒューズは、前記ラックヒューズの溶断完了時点よりも遅く溶断開始することを特徴とする、電池モジュール。
【請求項2】
前記モジュールヒューズが溶断開始するまでのI2t値が、前記ラックヒューズの溶断完了時までのI2t値よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記モジュールヒューズは、溶断開始するまでのI2t値が、前記ラックヒューズの溶断完了時までのI2t値に所定の割合を乗じた値よりも大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記モジュールヒューズは、前記ラックヒューズの溶断完了後の抵抗変化率が基準値未満であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記モジュールヒューズは、前記電池モジュールの出力電圧に対応可能な電圧仕様を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記モジュールヒューズの前記電圧仕様は、前記ラックヒューズの電圧仕様よりも低いことを特徴とする、請求項5に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記モジュールヒューズの短絡仕様は、前記ラックヒューズの短絡仕様よりも低いことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項8】
複数の電池モジュールを含む電池ラックと、
前記電池ラックにおける過電流の発生時に回路を遮断するラックヒューズと、
を含み、
前記複数の電池モジュールそれぞれは、電池セルと、前記電池モジュールにおける過電流の発生時に回路を遮断するモジュールヒューズと、を備え、
前記モジュールヒューズは、前記ラックヒューズの溶断完了時点よりも遅く溶断開始することを特徴とする、エネルギー貯蔵装置。
【請求項9】
前記モジュールヒューズが溶断開始するまでのI2t値が、前記ラックヒューズの溶断完了時までのI2t値よりも大きいことを特徴とする、請求項8に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項10】
前記モジュールヒューズは、前記ラックヒューズの溶断完了後の抵抗変化率が基準値未満であることを特徴とする、請求項8又は9に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項11】
それぞれがモジュールヒューズを備える複数の電池モジュールを含んで用いられ、過電流の発生時に回路を遮断するラックヒューズを含むエネルギー貯蔵装置における前記モジュールヒューズおよびラックヒューズを設定するヒューズ設定方法であって、
前記モジュールヒューズが前記ラックヒューズの溶断完了時点よりも遅く溶断開始するように設定されることを特徴とする、ヒューズ設定方法。
【請求項12】
前記モジュールヒューズが溶断開始するまでのI2t値が、前記ラックヒューズの溶断完了時までのI2t値よりも大きくなるように設定する、請求項11に記載のヒューズ設定方法。
【請求項13】
前記モジュールヒューズは、前記ラックヒューズの溶断完了後の抵抗変化率が基準値未満になるように設定する、請求項11又は12に記載のヒューズ設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2020年04月20日付けの韓国特許出願第10-2020-0047727号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明の実施形態は、電池モジュール、エネルギー貯蔵装置、およびヒューズ設定方法に関し、特に過電流を遮断するためのヒューズが設けられた電池モジュール、エネルギー貯蔵装置、およびそのヒューズの設定方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、スマートフォンなどの電子機器および電気自動車の普及、そしてエネルギー貯蔵装置(ESS、Energy Storage System)のインフラの拡散に伴い、電力供給源としての二次電池に対する研究が活発に行われている。
【0004】
エネルギー貯蔵装置の場合、大容量の電気エネルギーを貯蔵しなければならないだけでなく、高い出力が求められる。したがって、エネルギー貯蔵装置において、二次電池は、複数の電池モジュールと、複数の電池モジュールを管理するラック制御器とからなる電池ラックの形態で提供される。複数の電池モジュールそれぞれは、再び複数の電池セルが直列および/または並列に連結された電池パックと、電池パックの動作を管理するモジュール制御器とを含む。
【0005】
エネルギー貯蔵装置において、短絡が発生する場合には火災などの大きい事故につながり得るため、安全のために、このような短絡を遮断するための多様な構成が備えられる。現在は、エネルギー貯蔵装置などの電池システム内に、受動素子としてのヒューズを連結している。短絡の発生時、ヒューズを介して短い瞬間に過電流を遮断することで、短絡事故に備えている。
【0006】
このような電池ラック内のヒューズは、モジュールレベルの短絡には対応できない構造である。したがって、電池システム内には、UN Transportation Testing(UN/DOT38.3)規格を満たすためにモジュールヒューズも備えている。UN/DOT38.3は、リチウムイオン電池の運送時に安全を保障するための試験規定である。UN/DOT38.3は、電池をモジュール状態で運送する際にモジュールの短絡に対する保護が必要であるという内容を含んでおり、それを満たすためにモジュールヒューズを備える。モジュールヒューズは、設けられた電池モジュールの短絡試験において問題がないように、モジュール電圧を満たす電圧仕様を有するヒューズが選定される。
【0007】
しかしながら、電池モジュールが最終的に電池ラックに取り付けられた以後に電池ラックに短絡が発生する場合、モジュールヒューズがラックヒューズよりも先に動作して溶断すると、システム電圧、すなわち、電池ラックの出力電圧がモジュールヒューズにかかる可能性がある。この場合、モジュールヒューズは、システム電圧を耐えることができずに破損し、他の部品にも損傷を加え得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、安全でありながらも価格競争力を有する電池モジュール、エネルギー貯蔵装置、およびヒューズ設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような技術的課題を解決するために、本発明の実施形態の一態様によると、電池ラックに複数の電池モジュールを含んで用いられ、過電流の発生時に回路を遮断するラックヒューズを含むエネルギー貯蔵装置における電池モジュールであって、電池セルと、過電流の発生時に回路を遮断するモジュールヒューズと、を備え、モジュールヒューズは、ラックヒューズの溶断完了時点よりも遅く溶断開始することを特徴とする、電池モジュールを提供する。
【0010】
このような本実施形態の他の特徴によると、モジュールヒューズが溶断開始するまでのI2t値が、ラックヒューズの溶断完了時までのI2t値よりも大きくてもよい。
【0011】
本実施形態のまた他の特徴によると、モジュールヒューズは、溶断開始するまでのI2t値が、ラックヒューズの溶断完了時までのI2t値に所定の割合を乗じた値よりも大きくてもよい。
【0012】
本実施形態のさらに他の特徴によると、モジュールヒューズは、ラックヒューズの溶断完了後の抵抗変化率が基準値未満であってもよい。
本実施形態のさらに他の特徴によると、モジュールヒューズは、電池モジュールの出力電圧に対応可能な電圧仕様を有することができる。
【0013】
本実施形態のさらに他の特徴によると、モジュールヒューズの電圧仕様は、ラックヒューズの電圧仕様よりも低くてもよい。
本実施形態のさらに他の特徴によると、モジュールヒューズの短絡仕様は、ラックヒューズの短絡仕様よりも低くてもよい。
【0014】
上記のような技術的課題を解決するために、本発明の実施形態の他の態様によると、複数の電池モジュールを含む電池ラックと、電池ラックにおける過電流の発生時に回路を遮断するラックヒューズと、を含み、複数の電池モジュールそれぞれは、電池セルと、電池モジュールにおける過電流の発生時に回路を遮断するモジュールヒューズと、を備え、モジュールヒューズは、ラックヒューズの溶断完了時点よりも遅く溶断開始することを特徴とする、エネルギー貯蔵装置を提供する。
【0015】
このような本実施形態の他の特徴によると、モジュールヒューズが溶断開始するまでのI2t値が、ラックヒューズの溶断完了時までのI2t値よりも大きくてもよい。
【0016】
本実施形態のまた他の特徴によると、モジュールヒューズは、ラックヒューズの溶断完了後の抵抗変化率が基準値未満であってもよい。
【0017】
上記のような技術的課題を解決するために、本発明の実施形態のまた他の態様によると、それぞれがモジュールヒューズを備える複数の電池モジュールを含んで用いられ、過電流の発生時に回路を遮断するラックヒューズを含むエネルギー貯蔵装置におけるモジュールヒューズおよびラックヒューズを設定するヒューズ設定方法であって、モジュールヒューズがラックヒューズの溶断完了時点よりも遅く溶断開始するように設定されることを特徴とする、ヒューズ設定方法を提供する。
【0018】
このような本実施形態の他の特徴によると、モジュールヒューズが溶断開始するまでのI2t値が、ラックヒューズの溶断完了時までのI2t値よりも大きくなるように設定することができる。
【0019】
本実施形態のまた他の特徴によると、モジュールヒューズは、ラックヒューズの溶断完了後の抵抗変化率が基準値未満になるように設定することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のような構成により、安全でありながらも価格競争力を有する電池モジュール、エネルギー貯蔵装置、およびヒューズ設定方法を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエネルギー貯蔵装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る電池モジュールの構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るエネルギー貯蔵装置の概略的な回路図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るモジュールヒューズおよびラックヒューズの選定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の多様な実施形態について詳細に説明する。本文書において、図面上の同一の構成要素に対しては同一の参照符号を付し、同一の構成要素に対して重複した説明は省略する。
【0023】
本文書に開示されている本発明の多様な実施形態に対して、特定の構造的ないし機能的説明は、単に本発明の実施形態を説明するための目的で例示されたものであり、本発明の多様な実施形態は、種々の形態で実施されてもよく、本文書に説明された実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。
【0024】
多様な実施形態で用いられた「第1」、「第2」、「1番目」、または「2番目」などの表現は、多様な構成要素を、順序および/または重要度に関係なく修飾してもよく、当該構成要素を限定しない。例えば、本発明の権利範囲から逸脱せずに、第1構成要素は第2構成要素と命名してもよく、それと同様に、第2構成要素も第1構成要素に変更して命名してもよい。
【0025】
本文書で用いられた用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられたものであって、他の実施形態の範囲を限定しようとするものではない。単数の表現は、文脈上、明らかに他を意味しない限り、複数の表現を含んでもよい。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るエネルギー貯蔵装置の構成を示す図である。
図1を参照すると、エネルギー貯蔵装置1は、エネルギー貯蔵システムにおいてエネルギーを貯蔵する1つの単位である。エネルギー貯蔵システムには、複数のエネルギー貯蔵装置1が含まれて構成されることができる。エネルギー貯蔵装置1は、電池ラックの形態で提供される。電池ラックは、シャシーに複数の電池モジュール10および電池ラック全体を制御するラック制御器などが取り付けられる。以下では、エネルギー貯蔵装置と電池ラックを混用して用いたりもする。
【0027】
エネルギー貯蔵装置1は、充放電可能な二次電池からなる電池モジュールを含んで構成されることができる。エネルギー貯蔵装置1は、貯蔵している電力を負荷に供給するか、または系統に供給することができる。また、エネルギー貯蔵装置1は、系統から電力の供給を受けて充電されることができる。
【0028】
エネルギー貯蔵装置1は、
図1に示されたように、複数の電池モジュール10-1~10-N、ラック制御器(RBMS、Rack Battery Management System)、およびラック保護ユニット(RBPU、Rack Battery Protection Unit)などを含むことができる。
【0029】
複数の電池モジュール10-1~10-Nは、エネルギー貯蔵装置1に取り付けできる単位構成要素であり、それぞれが電力を充放電できるように構成されている(以下では、複数の電池モジュールを区分して説明する必要がない場合には、図面符号を「電池モジュール10」のように記載することにする。)。電池モジュール10は、エネルギー貯蔵装置1としての電池ラックに組み立てられる以前には、それ自体で運搬できる構成である。複数の電池モジュール10は、求められるエネルギー貯蔵装置1の仕様に応じて、エネルギー貯蔵装置1内で互いに直列および/または並列に連結されることができる。すなわち、複数の電池モジュール10は、直列および/または並列連結の構成に応じて求められる出力を提供することができる。
【0030】
電池モジュール10それぞれは、電池パック11、モジュール制御器12、スイッチング部13、およびモジュール保護ユニット14(Module BPU)などを含むことができる。
図2は、本発明の一実施形態に係る電池モジュールの構成を示す図である。
【0031】
図2を参照すると、電池パック11は、電力を貯蔵する単位構成要素である電池セルCを1つ以上含むことができる。求められる電池パック11の仕様に応じて、複数の電池セルが互いに直列および/または並列に連結されることができる。すなわち、電池セルCの個数および連結形態は、求められる電池モジュール10の出力(電圧、電流など)に応じて決められることができる。電池セルCは、リチウムイオン(Li-ion)電池、リチウムイオンポリマー(Li-ion polymer)電池、ニッケルカドミウム(Ni-Cd)電池、ニッケル水素(Ni-MH)電池などであってもよく、充電可能な電池であれば、これに限定されない。
【0032】
モジュール制御器12(または「モジュールBMS」ともいう)は、電池モジュール10の全般的な動作を制御および管理する。モジュール制御器12は、電池モジュール10の温度、電池モジュール10から出力される電圧および電流などを検出することができる。電池モジュール10は、直接測定するかまたは外部から受信することで検出した温度、電圧、電流などの値から、充電状態であるSOCや劣化度を示すSOHなどのパラメータを算出することができる。モジュール制御器12は、電圧、電流、温度などを検出するために、センサなどの測定手段を電池モジュール10またはエネルギー貯蔵装置1内の適切な位置に備えることができる。
【0033】
モジュール制御器12は、温度、電圧、電流などの値や、算出したSOC、SOHなどの値を外部装置に伝送することができる。外部装置は、上位制御器であってもよく、本実施形態においては、エネルギー貯蔵装置1を管理するラック制御器20に、検出した温度、電圧、電流などの値や、算出したSOC、SOHなどの値を伝送することができる。
【0034】
モジュール制御器12は、電池モジュール10の全般的な動作を制御および管理するためにコンピュータプログラムを実行させ、モジュール制御器12の全体動作を制御するコントローラとしてのマイコン、モジュール制御器12の動作に必要なコンピュータプログラムを格納するメモリ、センサや測定手段などの入出力装置、外部装置と通信するための通信装置、その他の周辺回路などの多様な構成を含むことができる。
【0035】
スイッチング部13は、電池モジュール10の充電または放電時に系統または負荷に電力が供給されるか、または系統から電力が入ってくるようにする装置であってもよい。スイッチング部13は、リレーや接触器などであってもよい。スイッチング部13は、モジュール制御器12によりその動作が制御されることができる。
【0036】
モジュール保護ユニット14は、電池モジュール10の安定した動作のための構成を含むことができる。モジュール保護ユニット14は、電池モジュール10内の温度を制御するための冷却ファンなどの冷却手段を含むことができる。また、モジュール保護ユニット14は、短絡の発生などの理由で過電流の発生時に電流経路を遮断するためのモジュールヒューズMFを含むことができる。すなわち、電池モジュール10は、過電流の発生時に回路を遮断するモジュールヒューズMFを備えることができる。
【0037】
モジュールヒューズMFは、電池モジュール10に過電流が流れると、電気エネルギーにより発生した熱で溶断する。モジュールヒューズMFは、溶断して電流の流れを遮断すると、その間に所定の電圧がかかることになる。そして、モジュールヒューズMFは、溶断後、両端にかかる所定の電圧に耐えなければならない。モジュールヒューズMFの具体的な仕様および特徴については後述することにする。
【0038】
ラック制御器20は、電池ラックへの充電または電池ラックから系統や負荷への放電などのためにリレーを制御することができる。ラック制御器20は、電池ラック内の各種パラメータ(例えば、電圧、電流、温度など)をモニターし、その結果に基づいてラック保護ユニット30内の各保護手段を制御することができる。
【0039】
ラック制御器20は、電池ラック内に含まれた複数の電池モジュール10それぞれに含まれたモジュール制御器12と通信を行うことができる。ラック制御器20は、モジュール制御器12から電池パック11の状態に関するデータを受信し、それに基づいてラック保護ユニット30内の保護手段を制御することができる。また、ラック制御器20は、モジュール制御器12からのデータに基づいて、電池モジュール10の動作を制御するための制御信号をモジュール制御器12に伝送することができる。ラック制御器20は、複数のモジュール制御器12と有線および/または無線で通信することができる。
【0040】
ラック保護ユニット30は、モジュール保護ユニット30と同様に、電池ラックの安定した動作のための構成を含むことができる。ラック保護ユニット30は、電池ラック内の温度を制御するための冷却ファンなどの冷却手段を含むことができる。また、ラック保護ユニット30は、短絡の発生などの理由で過電流の発生時に電流経路を遮断するためのラックヒューズRFを含むことができる。すなわち、エネルギー貯蔵装置1は、電池ラックにおける過電流の発生時に回路を遮断するラックヒューズRFを備えることができる。ラックヒューズRFの具体的な仕様および特徴については後述することにする。
【0041】
以上のように構成されたエネルギー貯蔵装置1において、複数の電池モジュール10の少なくとも一部とラックヒューズRFとは、互いに直列に連結される。
図3は、本発明の一実施形態に係るエネルギー貯蔵装置1の概略的な回路図である。
【0042】
図3を参照すると、複数の電池モジュール10のうち少なくとも一部の電池モジュール10-1~10-Nが互いに直列に連結され、直列連結された電池モジュール10-1~10-NにラックヒューズRFが直列に連結される。RACK(+)およびRACK(-)は、電池ラックの出力端子を示す。
図3には、説明の便宜上、電池パック11として1つの電池セルだけを示し、電池パック11およびモジュールヒューズMFだけを示した。
【0043】
図3のように構成されたエネルギー貯蔵装置1において、電池ラックに短絡が発生する場合、または電池モジュール10に短絡が発生する場合を想定することができる。
【0044】
従来は、これに対してUN/DOT3.83規定を満たすために、電池モジュールの出力電圧に耐えられる仕様を有するヒューズをモジュールヒューズとして用いた。例えば、約50~100VDCの電圧を出力する電池モジュールの場合、約120~150VDCの電圧に耐えられるヒューズを用いた。しかし、かかるモジュールヒューズとしては商用品が用いられており、用いられるヒューズは約20kAの電流を流せる短絡仕様を有している。
【0045】
しかしながら、従来用いられるモジュールヒューズの場合、電池モジュールが個別的に使用または運搬される場合に発生するモジュールの短絡に対しては電池モジュールの保護が可能であったが、複数の電池モジュールが電池ラックに取り付けられた状態で発生したラックの短絡などに対しては、電池モジュールを保護できないという問題があった。特に電池ラックに短絡が発生する際に、モジュールヒューズがラックヒューズよりも先に溶断すると、システム電圧が電池モジュールに印加され、モジュールヒューズの仕様を超過する電圧が印加されるため、部品破損などが発生する恐れがある。
【0046】
したがって、電池モジュールが個別的に用いられるときだけでなく、電池ラックに取り付けられた状態においても、電池モジュールを保護できる方案が必要であった。また、ヒューズの仕様が高くなるほど、体積および価格が増加することになる。したがって、電池モジュールに対する価格競争力を低下させず、且つ、体積によるエネルギー密度の減少を発生させないことも考慮しなければならない。
【0047】
上記のような問題を解決するために、本発明の一実施形態によると、モジュールヒューズMFがラックヒューズRFよりも遅く溶断するように構成する。より具体的には、I2tエネルギーを測定し、モジュールヒューズMFがラックヒューズRFの溶断完了時点よりも遅く溶断開始するように、モジュールヒューズMFおよびラックヒューズRFを設定する。I2tは、ヒューズ(導線)に電流が流れることで発生する熱エネルギーの大きさを示し、流れる電流の大きさおよび時間に応じて決められる値である。ラックヒューズRFの溶断完了時までのI2t値よりもモジュールヒューズMFの溶断開始時までのI2t値がさらに大きくなるようにすることで、前記条件を満たすことができる。換言すると、ラックヒューズRFの溶断完了時までのI2t値がモジュールヒューズMFが溶断開始するまでのI2t値よりも小さくなるようにすることで、前記条件を満たすことができる。
【0048】
好ましくは、モジュールヒューズMFが溶断を開始する前にラックヒューズRFが確実に溶断することを保障するために、ラックヒューズRFの溶断完了時までのI2t値に所定の割合を乗じた値よりもモジュールヒューズMFの溶断開始時までのI2t値がさらに大きくなるように設定することができる。ここで、所定の割合は、例えば、20%程度の余裕をおく場合、1.2になる。
【0049】
モジュールヒューズMFが先に選定された場合には、それに合わせてラックヒューズRFを選定する。その逆に、ラックヒューズRFが先に選定された場合には、それに合わせてモジュールヒューズMFを選定する。したがって、モジュールヒューズMFおよびラックヒューズRFは、上記の条件を満たす多様な組み合わせを含むことができる。
【0050】
図4は、本発明の一実施形態に係るモジュールヒューズMFおよびラックヒューズRFの選定方法を説明するための図である。
図4においては、多様なモジュールヒューズMFおよびラックヒューズRFの組み合わせを用いて試験を行い、適用したエネルギー貯蔵装置1の仕様は、1,000VDCおよび230A、1,000VDCおよび2320Aの2種類である。ラックヒューズRFとしては、電圧仕様および短絡仕様がそれぞれ1,000VDC、230Aである部品A、1,000VDC、315Aである部品B、および1,000VDC、350Aである部品Cが用いられた。また、モジュールヒューズMFとしては、電圧仕様および短絡仕様がそれぞれ120VDC、400Aである部品D、120VDC、450Aである部品E、120VDC、500Aである部品F、および120VDC、600Aである部品Gが用いられた。
【0051】
図4に示されたように、ラックヒューズRF-モジュールヒューズMFの組み合わせが部品A-部品E、部品B-部品F、部品C-部品Gである場合に、ラックヒューズRFのI2t*1.2値がモジュールヒューズMFのI2t値よりも小さいものとして測定された。ここで、ラックヒューズRFにおけるI2t値において、tはラックヒューズRFが完全に溶断(Total Clearing)するまでの時間である。モジュールヒューズMFにおけるI2t値において、tはモジュールヒューズMFが溶断開始(Melt Starting)するまでの時間である。したがって、上記の3つの組み合わせの場合は、ラックヒューズRFおよびモジュールヒューズMFとして使用するのに適した組み合わせであると判定された。
【0052】
図4の残りの部品の組み合わせの場合は、ラックヒューズRFのI2t*1.2値がモジュールヒューズMFのI2t値よりも大きいものとして測定されており、使用するのに適していない組み合わせであると判定された。部品A-部品Eの組み合わせの場合、ラックヒューズRFのI2t値がモジュールヒューズMFのI2t値よりも小さいものとして測定されたものの、その差が小さいため、場合によっては、モジュールヒューズMFが先に溶断する可能性もある。したがって、上述したように所定の割合である1.2を乗じた値と比較することで適しているか否かを判定した。
【0053】
以上のようにモジュールヒューズMFおよびラックヒューズRFを設定することで、電池ラックに短絡発生時にラックヒューズRFが常に先に溶断して回路を遮断する。したがって、モジュールヒューズMFは、電池ラックの短絡に備えて、システム電圧に耐えられる仕様を有する必要がない。すなわち、モジュールヒューズMFは、電池モジュール10の出力電圧に対応可能な電圧仕様を有することで充分である。モジュールヒューズMFは、ラックヒューズRFの電圧仕様よりも低い電圧仕様を有することができる。また、モジュールヒューズMFは、短絡仕様に対しても同様に、ラックヒューズRFの短絡仕様よりも低い仕様を有することができる。モジュールヒューズMFは、システム電圧よりも遥かに低い電池モジュール10の出力電圧にだけ対応可能であればよく、また、低い短絡仕様を有することができるため、不要な費用および体積の増加を抑制することができる。
【0054】
一方、上記のような問題を解決するために、本発明の他の実施形態によると、ラックヒューズRFの溶断前後のモジュールヒューズMFの抵抗変化率が基準値未満になるようにする。ラックの短絡による過電流でラックヒューズRFが溶断しても、モジュールヒューズMFにおいて抵抗が変化しない場合には、モジュールヒューズMFが過電流の影響を受けていないものと判断することができる。この場合、モジュールヒューズMFの抵抗が基準値未満に変化したため、ラックの短絡による修理時、部品を取り替える必要がなくなり、不要な費用の発生を抑制することができる。
【0055】
モジュールヒューズMFが先に選定された場合には、それに合わせてラックヒューズRFを選定する。その逆に、ラックヒューズRFが先に選定された場合には、それに合わせてモジュールヒューズMFを選定する。したがって、モジュールヒューズMFおよびラックヒューズRFは、上記の条件を満たす多様な組み合わせを含むことができる。
【0056】
図4の試験で用いられたラックヒューズRFおよびモジュールヒューズMFの組み合わせで、ラックヒューズRFが先に溶断するようにラックの短絡をシミュレーションした際、部品A-部品E、部品D-部品E、部品B-部品F、部品C-部品Gの組み合わせである場合に、ラックヒューズRFの溶断前後に測定したモジュールヒューズMFの抵抗変化率が所定の値未満であるものとして測定された。したがって、上記の4つの組み合わせの場合は、ラックヒューズRFおよびモジュールヒューズMFとして使用するのに適した組み合わせであると判定された。ここで、抵抗変化率の基準値は2%に設定した。しかし、抵抗変化率の基準値は変更可能な値であり、3%、5%、または10%など、必要に応じて適宜選択することができる。
【0057】
図4の残りの部品の組み合わせ、すなわち、部品A-部品D、部品C-部品Fの組み合わせの場合は、ラックヒューズRFの溶断前後のモジュールヒューズMFの抵抗変化率が基準値以上となった。これは、ラックヒューズRFの溶断完了以前にモジュールヒューズMFが溶断を開始したと見ることができ、よって、場合によっては、ラックの短絡時、モジュールヒューズMFが先に溶断する問題をそのまま有することになる。
【0058】
以上のようにモジュールヒューズMFおよびラックヒューズRFを設定することで、
図4と同様の効果を達成することができる。また、モジュールヒューズMFは、ラックヒューズRFが溶断し取り替える場合にも、抵抗がほぼ変わらないため、部品を取り替える必要がなくなり、不要な費用の発生を抑制できるようになる。
【0059】
さらに、本発明の他の実施形態として、
図4で用いられたモジュールヒューズMFおよびラックヒューズRFの設定方法に関する条件と、ラックヒューズRFの溶断前後のモジュールヒューズMFの抵抗変化率が基準値未満になるようにするモジュールヒューズMFおよびラックヒューズRFの設定方法に関する条件を全て満たすように、モジュールヒューズMFおよびラックヒューズRFを選定することもできる。この場合、エネルギー貯蔵装置1の仕様に合わせてさらに適したモジュールヒューズMFおよびラックヒューズRFを選定して設けて安全性をさらに高めることができる。
【0060】
以上に記載された「含む」、「構成する」、または「有する」などの用語は、特に反対の記載がない限り、当該構成要素が内在できることを意味するため、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいものと解釈されなければならない。技術的または科学的な用語を含む全ての用語は、別に定義しない限り、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同一の意味を有するものと希釈されてもよい。辞書に定義された用語のように一般的に用いられる用語は、関連技術の文脈上の意味と一致するものと解釈されなければならず、本発明で明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されない。
【0061】
以上の説明は本発明の技術思想を例示的に説明したものにすぎず、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲内で多様な修正および変形が可能であろう。したがって、本発明に開示された実施形態は本発明の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであって、このような実施形態により本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は後述の請求範囲により解釈されなければならず、それと同等な範囲内にある全ての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0062】
1 エネルギー貯蔵装置
10-1~10-N 電池モジュール
11 電池パック
12 モジュール制御器
13 スイッチング部
14 モジュール保護ユニット
20 ラック制御器
30 ラック保護ユニット
30 モジュール保護ユニット
【手続補正書】
【提出日】2024-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池ラックに複数の電池モジュールを含んで用いられ、過電流の発生時に回路を遮断するラックヒューズを含むエネルギー貯蔵装置における電池モジュールであって、
電池セルと、
過電流の発生時に回路を遮断するモジュールヒューズと、
を備え、
前記モジュールヒューズは、前記ラックヒューズの溶断完了時点よりも遅く溶断開始することを特徴とする、電池モジュール。
【外国語明細書】