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特開2024-133066改善された結合耐久性を示すアルミニウム合金物品及びその作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133066
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】改善された結合耐久性を示すアルミニウム合金物品及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 26/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
C23C26/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024096540
(22)【出願日】2024-06-14
(62)【分割の表示】P 2022556258の分割
【原出願日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】62/991,317
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506110243
【氏名又は名称】ノベリス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NOVELIS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】ゲラン,マチルド
(72)【発明者】
【氏名】プイグ,アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ベック,エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】デュラッセル,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァロン,グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】サルガド-オルドリカ,マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ジモン,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】フロレイ,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ベルナー,ミシェル エーディト
(72)【発明者】
【氏名】バッシ,コッラード
(72)【発明者】
【氏名】ブザンソン,シリル
(57)【要約】
【課題】金属物品ならびにかかる金属物品を作製及び処理する方法を提供する。より具体的には、優れた結合耐久性を含む、制御可能な表面特性を示すアルミニウム合金物品を提供する。
【解決手段】本明細書に記載のアルミニウム合金物品は、ある濃度の合金元素を有する表面、及び合金元素と相互作用することができるある濃度の元素を有するコーティングを含む。また、優れた結合耐久性を有する金属物品を提供する方法も本明細書に開示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理された金属物品であって、
過剰のSiを含む第1の表面部分;及び
1つまたは複数のSi含有化合物を含む表面前処理層を含み、
前記第1の表面部分または前記1つもしくは複数のSi含有化合物のいずれか1つがOを含み、
Si-O-Si結合相互作用が、前記第1の表面部分に存在する前記過剰のSiと前記表面前処理層に存在する前記1つまたは複数のSi含有化合物との間に存在し、
前記表面前処理層が、前記第1の表面部分に接着している、前記前処理された金属物品。
【請求項2】
前記過剰のSiが、前記第1の表面部分に約1.4重量%を超える量で存在する、請求項1に記載の前処理された金属物品。
【請求項3】
前記前処理された金属物品が、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、鋼、マグネシウムもしくはマグネシウム合金、チタンもしくはチタン合金、銅もしくは銅合金、任意の好適な金属もしくは金属合金、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1または2に記載の前処理された金属物品。
【請求項4】
前記前処理された金属物品が、アルミニウム合金である、請求項1~3のいずれか1項に記載の前処理された金属物品。
【請求項5】
前記アルミニウム合金が、4xxx系アルミニウム合金、5xxx系アルミニウム合金、または6xxx系アルミニウム合金を含む、請求項4に記載の前処理された金属物品。
【請求項6】
前記前処理された金属物品が、自動車構造部品、航空宇宙構造部品、輸送構造部品、自動車本体部品、航空宇宙スキンパネル、輸送本体部品、建築部品、美的部品、電子デバイスハウジング、または飲料もしくは食品の容器である、請求項1~5のいずれか1項に記載の前処理された金属物品。
【請求項7】
第1の金属を第2の金属に接合する方法であって、
過剰のSiを含む第1の表面部分を有する第1の金属を提供すること;
1つまたは複数のSi含有化合物を含む表面前処理層を前記第1の金属の前記第1の表面部分に適用して、前記第1の金属の前処理された表面部分を形成することであって、ここで前記第1の金属の前記第1の表面部分または前記1つもしくは複数のSi含有化合物のいずれか1つがOを含み、前記適用が、前記第1の金属の前記第1の表面部分に存在する前記過剰のSiと前記表面前処理層に存在する前記1つまたは複数のSi含有化合物との間のSi-O-Si結合相互作用を刺激する、前記形成すること;ならびに
前記第1の金属の前記前処理された表面部分を第2の金属の表面に接合することを含む、前記方法。
【請求項8】
条件(a)~(c):
(a)前記第1の金属の前記前処理された表面部分と第2の金属の前記表面との間の結合耐久性が、(i)過剰のSiを含み、1つもしくは複数のSi含有化合物を含有しない表面前処理で前処理された金属の表面部分と(ii)第2の金属との間の結合耐久性よりも大きい;
(b)前記第1の金属の前記前処理された表面部分と第2の金属の前記表面との間の結合耐久性が、(i)過剰のSiを含まず、1つもしくは複数のSi含有化合物を含有する表面前処理で前処理された金属の表面部分と(ii)第2の金属との間の結合耐久性よりも大きい;または
(c)前記第1の金属の前記前処理された表面部分と第2の金属の前記表面との間の結合耐久性が、(i)過剰のSiを含まず、1つもしくは複数のSi含有化合物を含有しない表面前処理で前処理された金属の表面部分と(ii)第2の金属との間の結合耐久性より大きい、のうちの1つまたは複数が達成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の金属が、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、鋼、マグネシウムもしくはマグネシウム合金、チタンもしくはチタン合金、銅もしくは銅合金、任意の好適な金属もしくは金属合金、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の金属が、アルミニウム合金を含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記アルミニウム合金が、4xxx系アルミニウム合金、5xxx系アルミニウム合金、または6xxx系アルミニウム合金を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の金属が、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、鋼、マグネシウムもしくはマグネシウム合金、チタンもしくはチタン合金、銅もしくは銅合金、任意の好適な金属もしくは金属合金、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項7~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記過剰のSiが、少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分に約1.4重量%を超える量で存在する、請求項7~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記適用の前に、少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分をエッチングすることをさらに含む、請求項7~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分のエッチングが、最大約3グラム/平方メートルの表面材料を除去することによって前記第1の表面部分中のSiを露出させる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記適用の前に、少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分をクリーニングすることをさらに含む、請求項7~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分のクリーニングが、少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分から天然の酸化物または水酸化物種を除去する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記表面前処理層を少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分に適用することが、バーコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、またはディップコーティングを含む、請求項7~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記表面前処理層を硬化させることをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項7~19のいずれか1項に記載の方法に従って調製された、接合された金属構造。
【請求項21】
前記接合された金属構造が、中性塩水噴霧試験への20週間の曝露後に、40%未満の結合強度損失を経験する、請求項20に記載の接合された金属構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月18日に出願された米国仮特許出願第62/991,317号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に対する優先権及びその出願利益を主張する。
【0002】
本開示は、アルミニウム合金物品及びその表面特徴に関する。本開示はさらに、アルミニウム合金物品を前処理する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルミニウム合金物品は、アルミニウム合金系物品及び他の金属系物品の製作中に、他のアルミニウム合金を含む、他の金属または合金に結合または接合されることが多い。物品の要件には、例えば、良好な結合耐久性及び過酷な環境条件に対する高い耐性が含まれる。アルミニウム合金物品を、結合耐久性を高めるために前処理することができる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の包含される実施形態は、本概要ではなく、特許請求の範囲によって定義される。この発明の概要は、本発明の様々な態様の高次の概要であり、以下の発明を実施するための形態のセクションでさらに説明される概念の一部を紹介する。この発明の概要は、特許請求される主題の鍵となるまたは本質的な特徴を特定することを意図しておらず、特許請求される主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図していない。主題は、明細書全体、図面の一部またはすべて、及び各請求項の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。
【0005】
過剰のシリコン(Si)を含む第1の表面部分;及び1つまたは複数のSi含有化合物を含む表面前処理層を含む前処理された金属物品を本明細書に提供し、第1の表面部分または1つもしくは複数のSi含有化合物のいずれか1つは酸素(O)を含み、シリコン-酸素-シリコン(Si-O-Si)結合相互作用が、第1の表面部分に存在する過剰のSiと表面前処理層に存在する1つまたは複数のSi含有化合物との間に存在し、表面前処理層が、第1の表面部分に付着している。ある特定の態様では、過剰のSiは、第1の表面部分に約1.4重量%を超える量で存在する。
【0006】
任意選択で、前処理された金属物品は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、鋼、マグネシウムもしくはマグネシウム合金、チタンもしくはチタン合金、銅もしくは銅合金、任意の好適な金属もしくは金属合金、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの場合では、前処理された金属物品は、アルミニウム合金(例えば、4xxx系アルミニウム合金、5xxx系アルミニウム合金、または6xxx系アルミニウム合金)を含む。ある特定の態様では、Si含有化合物は、シリコン酸素(SiO)含有部分を含み、ここで、xは、1~4の範囲の整数(例えば、1、2、3、または4)である。前処理された金属物品は、任意選択で、自動車構造部品、航空宇宙構造部品、輸送構造部品、自動車本体部品、航空宇宙スキンパネル、輸送本体部品、建築部品、美的部品、電子デバイスハウジング、または飲料もしくは食品の容器であることができる。
【0007】
また、第1の金属を第2の金属に接合する方法も本明細書に提供し、本方法は、過剰のSiを含む第1の表面部分を有する第1の金属を提供すること;1つまたは複数のSi含有化合物を含む表面前処理層を第1の金属の第1の表面部分に適用して、第1の金属の前処理された表面部分を形成すること、ここで第1の金属の第1の表面部分または1つもしくは複数のSi含有化合物のいずれか1つはOを含み、適用は、第1の金属の第1の表面部分に存在する過剰のSiと表面前処理層に存在する1つまたは複数のSi含有化合物との間のSi-O-Si結合相互作用を刺激する;ならびに第1の金属の前処理された表面部分を第2の金属の表面に接合することを含む。いくつかの場合では、次の条件(a)~(c)のうちの1つまたは複数が達成される:(a)第1の金属の前処理された表面部分と第2の金属の表面との間の結合耐久性が、(i)過剰のSiを含み、1つもしくは複数のSi含有化合物を含有しない表面前処理で前処理された金属の表面部分と(ii)第2の金属との間の結合耐久性よりも大きい;(b)第1の金属の前処理された表面部分と第2の金属の表面との間の結合耐久性が、(i)過剰のSiを含まず、1つもしくは複数のSi含有化合物を含有する表面前処理で前処理された金属の表面部分と(ii)第2の金属との間の結合耐久性よりも大きい;または(c)第1の金属の前処理された表面部分と第2の金属の表面との間の結合耐久性が、(i)過剰のSiを含まず、1つもしくは複数のSi含有化合物を含有しない表面前処理で前処理された金属の表面部分と(ii)第2の金属との間の結合耐久性より大きい。
【0008】
第1の金属は、任意選択で、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、鋼、マグネシウムもしくはマグネシウム合金、チタンもしくはチタン合金、銅もしくは銅合金、任意の好適な金属もしくは金属合金、またはそれらの任意の組み合わせであることができる。任意選択で、第1の金属は、アルミニウム合金である。ある特定の態様では、アルミニウム合金は、4xxx系アルミニウム合金、5xxx系アルミニウム合金、または6xxx系アルミニウム合金であることができる。任意選択で、第2の金属は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、鋼、マグネシウムもしくはマグネシウム合金、チタンもしくはチタン合金、銅もしくは銅合金、任意の好適な金属もしくは金属合金、またはそれらの任意の組み合わせであることができる。いくつかの例では、第1の金属の第1の表面部分は、約1.4重量%を超える量の過剰のSiを含む。
【0009】
本明細書に記載の方法は、適用ステップの前に、第1の金属の少なくとも第1の表面部分をエッチングすることをさらに含むことができ、金属の少なくとも第1の表面部分のエッチングは、最大約3グラム/平方メートル(g/m)の表面材料を除去することによって第1の表面部分中のSiを露出させることができる。本明細書に記載の方法は、適用の前に、第1の金属の少なくとも第1の表面部分をクリーニングすることをさらに含むことができる。第1の金属の少なくとも第1の表面部分のクリーニングは、第1の金属の第1の表面部分から天然の酸化物または水酸化物種を除去することができる。いくつかの場合では、表面前処理層を第1の金属の第1の表面部分に適用することは、バーコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、またはディップコーティング、及び表面前処理の硬化を含む。
【0010】
本明細書に記載の方法に従って調製された接合された金属構造を本明細書にさらに提供し、接合された金属構造の結合強度は、中性塩水噴霧試験への20週間の曝露後に、40%未満の結合強度損失を経験する。
【0011】
さらなる態様、目的、及び利点は、後に続く発明を実施するための形態及び図面を考慮して明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】接着結合試験で試験したアルミニウム合金サンプルに関する0週時点、2週時点、6週時点、12週時点、及び20週時点でのメガパスカル(MPa)単位の初期結合強度及び結合強度損失を示すグラフである。
図2】A~Eは、過剰のSiを含有し、Si含有化合物で前処理されたアルミニウム合金サンプルに関する0週時点(A)、2週時点(B)、6週時点(C)、12週時点(D)、及び20週時点(E)での接着試験結果のデジタル画像である。
図3】A~Eは、過剰のSiを含有し、Si含有化合物で前処理されたアルミニウム合金サンプルに関する0週時点(A)、2週時点(B)、6週時点(C)、12週時点(D)、及び20週時点(E)での接着試験結果のデジタル画像である。
図4】A~Dは、過剰のSiを含有し、チタンジルコニウム(TiZr)前処理で前処理されたアルミニウム合金サンプルに関する0週時点(A)、6週時点(B)、12週時点(C)、及び20週時点(D)での接着試験結果のデジタル画像である。
図5】A~Dは、過剰のSiを含有し、チタンジルコニウム(TiZr)前処理で前処理されたアルミニウム合金サンプルに関する0週時点(A)、6週時点(B)、12週時点(C)、及び20週時点(D)での接着試験結果のデジタル画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前処理された金属物品及び接合された金属物品を調製する方法を本明細書に記載し、それには望ましい結合耐久特性を有する、アルミニウム合金物品が含まれる。いくつかの非限定的な例では、本明細書に記載の金属物品は、ある濃度の合金元素、例えばSiを有し、これは表面エッチングプロセス、表面クリーニングプロセス、熱処理プロセス、熱間加工プロセス、冷間加工プロセス、温間加工プロセス、金属のバルクから金属の表面へのSiマイグレーションを引き起こすことができる任意の適切な冶金プロセス、またはそれらの任意の組み合わせ後に、金属物品の表面の少なくとも一部分を占める。ある特定の例では、金属のバルクから金属の表面へのSiマイグレーションは、金属の表面でのSi含有量を少なくとも1桁増加させる。金属物品の1つまたは複数の表面は、Si含有化合物(例えば、SiO部分を含有するSi含有化合物)を含む表面前処理層でコーティングすることができる。いくつかの場合では、金属物品の表面の少なくとも一部分にわたるある濃度のSiは、金属物品の表面にSiベースの前処理層を適用した後、望ましい結合耐久性を提供することができる。金属物品の表面と前処理層との間の接触は、金属物品の表面内のSi含有化合物と前処理層中のSi含有化合物との間のSi-O-Si結合相互作用を刺激する。いくつかの場合では、金属物品の表面内のSi(例えば、以下に記載する金属物品中の過剰のSi)は、前処理層中のO原子(例えば、SiO部分)と相互作用して、Si-O-Si相互作用を提供できる。例えば、金属物品の表面内のSi原子は、前処理層中のSiO部分と相互作用することができる。ある特定の場合では、Si-O-Si結合相互作用は、金属表面のSi含有量(例えば、以下に記載する金属物品中の過剰のSi)、金属表面の金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム(Al))、及び前処理層中のSi含有化合物から生じる。いくつかの例では、金属物品の表面内の過剰のSiは、金属物品の表面内のO原子(例えば、Al)及び/または前処理層中のO原子(例えば、SiO部分)と相互作用して、Si-O-Si相互作用を提供することができる。他の態様では、金属物品の表面内の過剰のSiは、金属物品の表面内のO原子(例えば、金属酸化物(例えば、Al)、金属格子中のO原子、少なくとも部分的に酸化されている過剰のSi、合金内のSi含有化合物に存在するO、合金中の他のO含有化合物、その他など)及び前処理層中のSi原子(例えば、Si原子またはSiO部分)と相互作用して、Si-O-Si相互作用を提供することができる。
【0014】
定義及び説明
本明細書で使用される「発明」、「本発明(the invention)」、「この発明」及び「本発明(the present invention)」という用語は、本特許出願の主題のすべて及び以下の特許請求の範囲を広く指すことを意図する。これらの用語を含有する記述は、本明細書に記載の主題を限定しない、または以下の特許請求の範囲の意味もしくは範囲を限定しないことが理解されるべきである。
【0015】
この説明では、「系」または「AA4xxx」などのアルミニウム業界の呼称で識別される合金を参照する。アルミニウム及びその合金の命名及び識別において最も一般的に使用されている番号指定システムの理解に関しては、“International Alloy Designations and Chemical Composition Limits for Wrought Aluminum and Wrought Aluminum Alloys”または“Registration Record of Aluminum Association Alloy Designations and Chemical Compositions Limits for Aluminum Alloys in the Form of Castings and Ingot”(いずれもアルミニウム協会によって発行されている)を参照されたい。
【0016】
本明細書で使用する場合、「a」、「an」、または「the」の意味は、文脈が明確に別途指示しない限り、単数及び複数の指示対象を含む。
【0017】
本明細書で使用する場合、プレートは一般に、約15mmを超える厚さを有する。例えば、プレートは、15mm超、20mm超、25mm超、30mm超、35mm超、40mm超、45mm超、50mm超、または100mm超の厚さを有するアルミニウム物品を指し得る。
【0018】
本明細書で使用する場合、シェート(シートプレートとも称される)は一般に、約4mm~約15mmの厚さを有する。例えば、シェートは、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、または15mmの厚さを有し得る。
【0019】
本明細書で使用する場合、シートは一般に、約4mm未満の厚さを有するアルミニウム物品を指す。例えば、シートは、4mm未満、3mm未満、2mm未満、1mm未満、0.5mm未満、0.3mm未満、または0.1mm未満の厚さを有し得る。
【0020】
この出願では、合金の調質または質別に言及する。最も一般的に使用される合金質別の説明の理解に関しては、“American National Standards(ANSI)H35 on Alloy and Temper Designation Systems”を参照されたい。F調質または質別は、製作されたままのアルミニウム合金を指す。O調質または質別は、焼きなまし後のアルミニウム合金を指す。本明細書でH質別とも称されるHxx調質または質別は、熱処理(例えば、焼きなまし)の有無にかかわらず、冷間圧延後の熱処理可能ではないアルミニウム合金を指す。好適なH質別には、HX1、HX2、HX3、HX4、HX5、HX6、HX7、HX8、またはHX9質別が含まれる。T1調質または質別は、熱間加工から冷却され、(例えば、室温で)自然時効されたアルミニウム合金を指す。T2調質または質別は、熱間加工から冷却され、冷間加工され、自然時効されたアルミニウム合金を指す。T3調質または質別は、溶体化熱処理され、冷間加工され、自然時効されたアルミニウム合金を指す。T4調質または質別は、溶体化熱処理され、自然時効されたアルミニウム合金を指す。T5調質または質別は、熱間加工から冷却され、(高温で)人工時効されたアルミニウム合金を指す。T6調質または質別は、溶体化熱処理され、人工時効されたアルミニウム合金を指す。T7調質または質別は、溶体化熱処理され、人工過剰時効されたアルミニウム合金を指す。T8x調質または質別は、溶体化熱処理され、冷間加工され、人工時効されたアルミニウム合金を指す。T9調質または質別は、溶体化熱処理され、人工時効され、冷間加工されたアルミニウム合金を指す。
【0021】
本明細書で使用する場合、「鋳造金属物品」、「鋳造物品」などの用語は互換可能であり、ダイレクトチル鋳造(ダイレクトチル同時鋳造を含む)もしくは半連続鋳造、連続鋳造(例えば、双ベルト鋳造機、双ロール鋳造機、ブロック鋳造機、または任意の他の連続鋳造機の使用を含む)、電磁鋳造、ホットトップ鋳造、または任意の他の鋳造方法により製造される製造物を指す。
【0022】
本明細書で使用する場合、「結合耐久性」は、結合剤の破壊を開始する環境条件への曝露後の周期的な機械的応力に耐える2つの物品を一緒に結合する結合剤の能力を指す。結合耐久性は、結合が破壊されるまで結合した物品に加えられる機械的応力サイクルの数に関して特徴決定される。
【0023】
本明細書で使用する場合、「室温」は、約15℃~約30℃、例えば、約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、または約30℃の温度を含むことができる。
【0024】
本明細書に開示の範囲はすべて、両端点、及びそこに包含されるありとあらゆる部分範囲を包含すると理解されたい。例えば、記述された範囲「1~10」は、1の最小値及び10の最大値の間の(及び端点を含む)ありとあらゆる部分範囲を含むと考えられるべきである;つまり、すべての部分範囲は、1以上の最小値、例えば、1~6.1から始まり、10以下の最大値、例えば、5.5~10で終わる。
【0025】
金属物品
結合耐久性を含む、望ましい表面特性を有する金属物品を本明細書に記載する。金属物品は、Siを主な合金元素として含むことができ、1つまたは複数のSi含有化合物(例えば、SiO部分を含有するSi含有化合物)を含む表面前処理でコーティングされた少なくとも1つの表面またはその一部分を含むことができる。ある特定の態様では、金属物品は、過剰のSiを含有する(例えば、過剰のSiは、約1.4重量%を超える量で存在する)1つまたは複数の表面を有するアルミニウム合金物品であることができる。いくつかの場合では、アルミニウム合金表面中の過剰のSiは、前処理中の1つまたは複数のSiO部分と相互作用する。いくつかの場合では、アルミニウム合金表面中の過剰のSiが酸化されて二酸化ケイ素が形成され、アルミニウム合金表面に存在する二酸化ケイ素が前処理中の1つまたは複数のSi含有化合物と相互作用する。Si-O-Si結合相互作用は、金属物品が少なくとも第2の金属物品に結合されるときに、結合耐久性を増加させる。
【0026】
理論に拘束されるべきではないが、前処理は、機械的結合、ファンデルワールス力、双極子相互作用、水素結合、共有結合、イオン結合、または前処理と金属物品との間の密接な接触によって開始される任意の好適なメカニズムを使用して金属物品に連結することができる。ある特定の非限定的な例では、アルミニウム合金表面での過剰のSiを含む、アルミニウム合金物品中の過剰のSiは、前処理中のSiO部分に共有結合することができる。金属物品への前処理の接着は、Si-O-Si結合を形成するSiの能力を利用することによって増強される。ゆえに、Si含有化合物(例えば、SiO部分)を含む前処理を、過剰のSiを有する金属物品に適用することは、上記のSi-O-Si結合相互作用を介して前処理の接着を増強する。
【0027】
本明細書で使用する場合、「表面」という用語は、金属物品の外面から金属物品の内部に、最大約5μm(例えば、最大約0.1μm、最大約0.2μm、最大約0.3μm、最大約0.4μm、最大約0.5μm、最大約0.6μm、最大約0.7μm、最大約0.8μm、最大約0.9μm、最大約1μm、最大約2μm、最大約3μm、最大約4μm、または最大約4.5μm)の深さまで延びる金属物品の部分を指す。
【0028】
任意選択で、表面とは、金属物品の内部に、約0.01μm、約0.02μm、約0.03μm、約0.04μm、約0.05μm、約0.06μm、約0.07μm、約0.08μm、約0.09μm、約0.1μm、約0.11μm、約0.12μm、約0.13μm、約0.14μm、約0.15μm、約0.16μm、約0.17μm、約0.18μm、約0.19μm、約0.2μm、約0.21μm、約0.22μm、約0.23μm、約0.24μm、約0.25μm、約0.26μm、約0.27μm、約0.28μm、約0.29μm、約0.3μm、約0.31μm、約0.32μm、約0.33μm、約0.34μm、約0.35μm、約0.36μm、約0.37μm、約0.38μm、約0.39μm、約0.4μm、約0.41μm、約0.42μm、約0.43μm、約0.44μm、約0.45μm、約0.46μm、約0.47μm、約0.48μm、約0.49μm、約0.5μm、約0.51μm、約0.52μm、約0.53μm、約0.54μm、約0.55μm、約0.56μm、約0.57μm、約0.58μm、約0.59μm、約0.6μm、約0.61μm、約0.62μm、約0.63μm、約0.64μm、約0.65μm、約0.66μm、約0.67μm、約0.68μm、約0.69μm、約0.7μm、約0.71μm、約0.72μm、約0.73μm、約0.74μm、約0.75μm、約0.76μm、約0.77μm、約0.78μm、約0.79μm、約0.8μm、約0.81μm、約0.82μm、約0.83μm、約0.84μm、約0.85μm、約0.86μm、約0.87μm、約0.88μm、約0.89μm、約0.9μm、約0.91μm、約0.92μm、約0.93μm、約0.94μm、約0.95μm、約0.96μm、約0.97μm、約0.98μm、約0.99μm、約1μm、約1.01μm、約1.02μm、約1.03μm、約1.04μm、約1.05μm、約1.06μm、約1.07μm、約1.08μm、約1.09μm、約1.1μm、約1.11μm、約1.12μm、約1.13μm、約1.14μm、約1.15μm、約1.16μm、約1.17μm、約1.18μm、約1.19μm、約1.2μm、約1.21μm、約1.22μm、約1.23μm、約1.24μm、約1.25μm、約1.26μm、約1.27μm、約1.28μm、約1.29μm、約1.3μm、約1.31μm、約1.32μm、約1.33μm、約1.34μm、約1.35μm、約1.36μm、約1.37μm、約1.38μm、約1.39μm、約1.4μm、約1.41μm、約1.42μm、約1.43μm、約1.44μm、約1.45μm、約1.46μm、約1.47μm、約1.48μm、約1.49μm、約1.5μm、約1.51μm、約1.52μm、約1.53μm、約1.54μm、約1.55μm、約1.56μm、約1.57μm、約1.58μm、約1.59μm、約1.6μm、約1.61μm、約1.62μm、約1.63μm、約1.64μm、約1.65μm、約1.66μm、約1.67μm、約1.68μm、約1.69μm、約1.7μm、約1.71μm、約1.72μm、約1.73μm、約1.74μm、約1.75μm、約1.76μm、約1.77μm、約1.78μm、約1.79μm、約1.8μm、約1.81μm、約1.82μm、約1.83μm、約1.84μm、約1.85μm、約1.86μm、約1.87μm、約1.88μm、約1.89μm、約1.9μm、約1.91μm、約1.92μm、約1.93μm、約1.94μm、約1.95μm、約1.96μm、約1.97μm、約1.98μm、約1.99μm、約2μm、約2.01μm、約2.02μm、約2.03μm、約2.04μm、約2.05μm、約2.06μm、約2.07μm、約2.08μm、約2.09μm、約2.1μm、約2.11μm、約2.12μm、約2.13μm、約2.14μm、約2.15μm、約2.16μm、約2.17μm、約2.18μm、約2.19μm、約2.2μm、約2.21μm、約2.22μm、約2.23μm、約2.24μm、約2.25μm、約2.26μm、約2.27μm、約2.28μm、約2.29μm、約2.3μm、約2.31μm、約2.32μm、約2.33μm、約2.34μm、約2.35μm、約2.36μm、約2.37μm、約2.38μm、約2.39μm、約2.4μm、約2.41μm、約2.42μm、約2.43μm、約2.44μm、約2.45μm、約2.46μm、約2.47μm、約2.48μm、約2.49μm、約2.5μm、約2.51μm、約2.52μm、約2.53μm、約2.54μm、約2.55μm、約2.56μm、約2.57μm、約2.58μm、約2.59μm、約2.6μm、約2.61μm、約2.62μm、約2.63μm、約2.64μm、約2.65μm、約2.66μm、約2.67μm、約2.68μm、約2.69μm、約2.7μm、約2.71μm、約2.72μm、約2.73μm、約2.74μm、約2.75μm、約2.76μm、約2.77μm、約2.78μm、約2.79μm、約2.8μm、約2.81μm、約2.82μm、約2.83μm、約2.84μm、約2.85μm、約2.86μm、約2.87μm、約2.88μm、約2.89μm、約2.9μm、約2.91μm、約2.92μm、約2.93μm、約2.94μm、約2.95μm、約2.96μm、約2.97μm、約2.98μm、約2.99μm、約3μm、約3.01μm、約3.02μm、約3.03μm、約3.04μm、約3.05μm、約3.06μm、約3.07μm、約3.08μm、約3.09μm、約3.1μm、約3.11μm、約3.12μm、約3.13μm、約3.14μm、約3.15μm、約3.16μm、約3.17μm、約3.18μm、約3.19μm、約3.2μm、約3.21μm、約3.22μm、約3.23μm、約3.24μm、約3.25μm、約3.26μm、約3.27μm、約3.28μm、約3.29μm、約3.3μm、約3.31μm、約3.32μm、約3.33μm、約3.34μm、約3.35μm、約3.36μm、約3.37μm、約3.38μm、約3.39μm、約3.4μm、約3.41μm、約3.42μm、約3.43μm、約3.44μm、約3.45μm、約3.46μm、約3.47μm、約3.48μm、約3.49μm、約3.5μm、約3.51μm、約3.52μm、約3.53μm、約3.54μm、約3.55μm、約3.56μm、約3.57μm、約3.58μm、約3.59μm、約3.6μm、約3.61μm、約3.62μm、約3.63μm、約3.64μm、約3.65μm、約3.66μm、約3.67μm、約3.68μm、約3.69μm、約3.7μm、約3.71μm、約3.72μm、約3.73μm、約3.74μm、約3.75μm、約3.76μm、約3.77μm、約3.78μm、約3.79μm、約3.8μm、約3.81μm、約3.82μm、約3.83μm、約3.84μm、約3.85μm、約3.86μm、約3.87μm、約3.88μm、約3.89μm、約3.9μm、約3.91μm、約3.92μm、約3.93μm、約3.94μm、約3.95μm、約3.96μm、約3.97μm、約3.98μm、約3.99μm、約4μm、約4.01μm、約4.02μm、約4.03μm、約4.04μm、約4.05μm、約4.06μm、約4.07μm、約4.08μm、約4.09μm、約4.1μm、約4.11μm、約4.12μm、約4.13μm、約4.14μm、約4.15μm、約4.16μm、約4.17μm、約4.18μm、約4.19μm、約4.2μm、約4.21μm、約4.22μm、約4.23μm、約4.24μm、約4.25μm、約4.26μm、約4.27μm、約4.28μm、約4.29μm、約4.3μm、約4.31μm、約4.32μm、約4.33μm、約4.34μm、約4.35μm、約4.36μm、約4.37μm、約4.38μm、約4.39μm、約4.4μm、約4.41μm、約4.42μm、約4.43μm、約4.44μm、約4.45μm、約4.46μm、約4.47μm、約4.48μm、約4.49μm、約4.5μm、約4.51μm、約4.52μm、約4.53μm、約4.54μm、約4.55μm、約4.56μm、約4.57μm、約4.58μm、約4.59μm、約4.6μm、約4.61μm、約4.62μm、約4.63μm、約4.64μm、約4.65μm、約4.66μm、約4.67μm、約4.68μm、約4.69μm、約4.7μm、約4.71μm、約4.72μm、約4.73μm、約4.74μm、約4.75μm、約4.76μm、約4.77μm、約4.78μm、約4.79μm、約4.8μm、約4.81μm、約4.82μm、約4.83μm、約4.84μm、約4.85μm、約4.86μm、約4.87μm、約4.88μm、約4.89μm、約4.9μm、約4.91μm、約4.92μm、約4.93μm、約4.94μm、約4.95μm、約4.96μm、約4.97μm、約4.98μm、約4.99μm、もしくは約5μm、またはその間のどこかの深さまで延びる金属物品の部分を指す。
【0029】
いくつかの例では、表面は、金属物品の外面から金属物品の内部内の約2.0μmの深さまで延びる(例えば、金属物品の外面から約0.1μmの深さまで、約0.2μmの深さまで、約0.3μmの深さまで、約0.4μmの深さまで、約0.5μmの深さまで、約0.6μmの深さまで、約0.7μmの深さまで、約0.8μmの深さまで、約0.9μmの深さまで、約1μmの深さまで、約1.1μmの深さまで、約1.2μmの深さまで、約1.3μmの深さまで、約1.4μmの深さまで、約1.5μmの深さまで、約1.6μmの深さまで、約1.7μmの深さまで、約1.8μmの深さまで、約1.9μmの深さまで、または約2.0μmの深さまで)。いくつかの態様では、表面は、金属物品の任意の外面から延びることができる。例えば、表面は、金属物品の第1の側面(例えば、金属シートの上面)、金属物品の第2の側面(例えば、金属シートの底面)、金属物品の第3の側面(例えば、金属シートの第1の縁)、または金属物品の第4の側面(例えば、金属シートの第2の縁)から延びることができる。
【0030】
本明細書で使用する場合、「表面下」という用語は、上記の表面から金属物品の内部に、最大約30μmの深さ(例えば、約5μm~約30μm、約5μm~約25μm、約6μm~約25μm、約7μm~約20μm、約8μm~約15μm、約5μm~約20μm、約10μm~約30μm、約5μm~約15μm、または約5μm~約10μm)まで延びる金属物品の部分を指す。任意選択で、表面下は、表面から(例えば、約5μmの深さから)金属物品の内部に、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、約11μm、約12μm、約13μm、約14μm、約15μm、約16μm、約17μm、約18μm、約19μm、約20μm、約21μm、約22μm、約23μm、約24μm、約25μm、約26μm、約27μm、約28μm、約29μm、または約30μmの深さまで延びる金属物品の部分を指す。
【0031】
本明細書に記載する場合、「バルク」という用語は、第1の表面下から少なくとも第2の表面下まで、または第1の表面から約30μmの深さから少なくとも第2の表面から約30μmの深さまで(例えば、プレート、シェート、またはシートの上部から約30μmの深さから、プレート、シェート、またはシートの底部から約30μmの深さまで)延びる金属物品の内部を指す。任意選択で、「バルク」という用語は、「表面」または「表面下」として他に説明されていない任意の体積の金属物品を指す。
【0032】
他の特性の中でも、本明細書に記載の金属物品は、金属中の主な合金元素に対応するコーティングを含有する。いくつかの非限定的な例では、(i)Siを主な合金元素として含有するアルミニウム合金(すなわち、4xxx系アルミニウム合金)、(ii)Siを複数の主に存在する合金元素のうちの1つとして有するアルミニウム合金(例えば、Si及びマグネシウム(Mg)を主な合金元素として有する6xxx系アルミニウム合金)、(iii)過剰のSiを含有するアルミニウム合金、(iv)Si含有化合物が富化した表面を有する金属(例えば、アルミニウム-シリコン(Al-Si)層でコーティングされた鋼合金)、及び/または(v)不純物レベルよりも多い量のSiを有するアルミニウム合金(例えば、ある特定の5xxx系アルミニウム合金)を本明細書に提供する。
【0033】
ある特定の態様では、(例えば、6xxx系アルミニウム合金中の)Si及び任意選択でMg含有量及び比率は、強度及び成形性を増強するように制御される。いくつかの場合では、本明細書に記載の金属物品は、過剰のSiを含む。任意選択で、Si及びMg含有量は、過剰のSiが本明細書に記載の金属物品に存在するように制御される。過剰のSi含有量は、米国特許第4,614,552号、第4カラム、49~52行目(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている方法に従って計算することができる。簡潔には、Mg及びSiは、MgSiとして組み合わさり、時効硬化後にかなりの強度改善をもたらす。加えて、Al(FeMn)SiなどのSi含有成分を形成することができる。Si含有量が、MgSiの化学量論比を上回り、Al(FeMn)Si成分に含まれる量を上回っている場合、過剰のSiが存在する。過剰のSi含有量は、総Si含有量からMgSi(Mg/1.73)及びFe含有相(Fe/3)に必要なSiを差し引くことで計算できる。過剰のSi含有量は、約1.4重量%~約25重量%(例えば、約1.5重量%~約20重量%、約1.7重量%~約15重量%、約1.9重量%~約10重量%、または約2重量%~約5重量%)であることができる。例えば、過剰のSi含有量は、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、約2.8%、約2.9%、約3%、約3.1%、約3.2%、約3.3%、約3.4%、約3.5%、約3.6%、約3.7%、約3.8%、約3.9%、約4%、約4.1%、約4.2%、約4.3%、約4.4%、約4.5%、約4.6%、約4.7%、約4.8%、約4.9%、約5%、約5.1%、約5.2%、約5.3%、約5.4%、約5.5%、約5.6%、約5.7%、約5.8%、約5.9%、約6%、約6.1%、約6.2%、約6.3%、約6.4%、約6.5%、約6.6%、約6.7%、約6.8%、約6.9%、約7%、約7.1%、約7.2%、約7.3%、約7.4%、約7.5%、約7.6%、約7.7%、約7.8%、約7.9%、約8%、約8.1%、約8.2%、約8.3%、約8.4%、約8.5%、約8.6%、約8.7%、約8.8%、約8.9%、約9%、約9.1%、約9.2%、約9.3%、約9.4%、約9.5%、約9.6%、約9.7%、約9.8%、約9.9%、約10%、約10.1%、約10.2%、約10.3%、約10.4%、約10.5%、約10.6%、約10.7%、約10.8%、約10.9%、約11%、約11.1%、約11.2%、約11.3%、約11.4%、約11.5%、約11.6%、約11.7%、約11.8%、約11.9%、約12%、約12.1%、約12.2%、約12.3%、約12.4%、約12.5%、約12.6%、約12.7%、約12.8%、約12.9%、約13%、約13.1%、約13.2%、約13.3%、約13.4%、約13.5%、約13.6%、約13.7%、約13.8%、約13.9%、約14%、約14.1%、約14.2%、約14.3%、約14.4%、約14.5%、約14.6%、約14.7%、約14.8%、約14.9%、約15%、約15.1%、約15.2%、約15.3%、約15.4%、約15.5%、約15.6%、約15.7%、約15.8%、約15.9%、約16%、約16.1%、約16.2%、約16.3%、約16.4%、約16.5%、約16.6%、約16.7%、約16.8%、約16.9%、約17%、約17.1%、約17.2%、約17.3%、約17.4%、約17.5%、約17.6%、約17.7%、約17.8%、約17.9%、約18%、約18.1%、約18.2%、約18.3%、約18.4%、約18.5%、約18.6%、約18.7%、約18.8%、約18.9%、約19%、約19.1%、約19.2%、約19.3%、約19.4%、約19.5%、約19.6%、約19.7%、約19.8%、約19.9%、約20%、約20.1%、約20.2%、約20.3%、約20.4%、約20.5%、約20.6%、約20.7%、約20.8%、約20.9%、約21%、約21.1%、約21.2%、約21.3%、約21.4%、約21.5%、約21.6%、約21.7%、約21.8%、約21.9%、約22%、約22.1%、約22.2%、約22.3%、約22.4%、約22.5%、約22.6%、約22.7%、約22.8%、約22.9%、約23%、約23.1%、約23.2%、約23.3%、約23.4%、約23.5%、約23.6%、約23.7%、約23.8%、約23.9%、約24%、約24.1%、約24.2%、約24.3%、約24.4%、約24.5%、約24.6%、約24.7%、約24.8%、約24.9%、または約25%であることができる。
【0034】
いくつかの例では、本明細書に記載の合金元素は、合金元素の濃度が金属物品(すなわち、少なくとも第1の表面、表面下内、及びバルク部分内)の全厚(例えば、金属のバルク)全体に分布するように、金属物品全体に拡散することができる。例えば、金属物品は、金属物品全体に分布し、均質化、熱間圧延、冷間圧延、温間圧延、溶体化、焼きなまし、またはそれらの任意の組み合わせを含む様々な処理ステップ中に少なくとも第1の表面に移動できる濃度のSiを含むことができる。いくつかのさらなる例では、少なくとも第1の表面部分に移動した後、当業者に公知の焼入れ技術のいずれかを採用することによって、Siの濃度を少なくとも第1の表面部分内で凍結することができる。かかる金属物品は、例外的な及び予想外の結合耐久特性を示す。
【0035】
いくつかの実施例では、金属物品は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム系材料、チタン、チタン系材料、銅、銅系材料、鋼、鋼系材料、青銅、青銅系材料、真鍮、真鍮系材料、複合物、複合物にて使用されるシート、または任意の他の好適な金属もしくは材料の組合せである。金属物品は、モノリシック材料、ならびに非モノリシック材料、例えばロールボンド材料、クラッド材料、複合材料(例えば限定されないが、炭素繊維含有材料)、または様々な他の材料を含み得る。いくつかの例では、金属物品は、金属コイル、金属ストリップ、金属プレート、金属シート、金属ビレット、金属インゴットなどである。いくつかの場合では、本明細書に記載のシステム及び方法は、非金属物品で使用できる。
【0036】
いくつかの非限定的な例では、金属物品は、アルミニウム合金物品であることができる。アルミニウム合金物品は、任意の好適な組成を有することができる。非限定的な例では、アルミニウム合金物品は、Siを主な合金元素として含むことができる(例えば、4xxx系アルミニウム合金)、またはアルミニウム合金物品は、Siを複数の主な合金元素のうちの1つとして含むことができる(例えば、6xxx系アルミニウム合金)。任意選択で、アルミニウム合金物品は、不純物レベルよりも多い量のSiを含むことができる(例えば、5xxx系アルミニウム合金物品)。4xxx系アルミニウム合金、5xxx系アルミニウム合金、または6xxx系アルミニウム合金は、本明細書に記載のSi含有量(例えば、過剰のSi)を含むように改変することができる。
【0037】
アルミニウム合金物品として使用するための非限定的な例示的4xxx系アルミニウム合金としては、AA4004、AA4104、AA4006、AA4007、AA4008、AA4009、AA4010、AA4013、AA4014、AA4015、AA4015A、AA4115、AA4016、AA4017、AA4018、AA4019、AA4020、AA4021、AA4026、AA4032、AA4043、AA4043A、AA4143、AA4343、AA4643、AA4943、AA4044、AA4045、AA4145、AA4145A、AA4046、AA4047、AA4047A、またはAA4147を挙げることができる。
【0038】
アルミニウム合金物品として使用するための非限定的な例示的5xxx系アルミニウム合金としては、AA5182、AA5183、AA5005、AA5005A、AA5205、AA5305、AA5505、AA5605、AA5006、AA5106、AA5010、AA5110、AA5110A、AA5210、AA5310、AA5016、AA5017、AA5018、AA5018A、AA5019、AA5019A、AA5119、AA5119A、AA5021、AA5022、AA5023、AA5024、AA5026、AA5027、AA5028、AA5040、AA5140、AA5041、AA5042、AA5043、AA5049、AA5149、AA5249、AA5349、AA5449、AA5449A、AA5050、AA5050A、AA5050C、AA5150、AA5051、AA5051A、AA5151、AA5251、AA5251A、AA5351、AA5451、AA5052、AA5252、AA5352、AA5154、AA5154A、AA5154B、AA5154C、AA5254、AA5354、AA5454、AA5554、AA5654、AA5654A、AA5754、AA5854、AA5954、AA5056、AA5356、AA5356A、AA5456、AA5456A、AA5456B、AA5556、AA5556A、AA5556B、AA5556C、AA5257、AA5457、AA5557、AA5657、AA5058、AA5059、AA5070、AA5180、AA5180A、AA5082、AA5182、AA5083、AA5183、AA5183A、AA5283、AA5283A、AA5283B、AA5383、AA5483、AA5086、AA5186、AA5087、AA5187、またはAA5088を挙げることができる。
【0039】
アルミニウム合金物品として使用するための非限定的な例示的6xxx系アルミニウム合金としては、AA6101、AA6101A、AA6101B、AA6201、AA6201A、AA6401、AA6501、AA6002、AA6003、AA6103、AA6005、AA6005A、AA6005B、AA6005C、AA6105、AA6205、AA6305、AA6006、AA6106、AA6206、AA6306、AA6008、AA6009、AA6010、AA6110、AA6110A、AA6011、AA6111、AA6012、AA6012A、AA6013、AA6113、AA6014、AA6015、AA6016、AA6016A、AA6116、AA6018、AA6019、AA6020、AA6021、AA6022、AA6023、AA6024、AA6025、AA6026、AA6027、AA6028、AA6031、AA6032、AA6033、AA6040、AA6041、AA6042、AA6043、AA6151、AA6351、AA6351A、AA6451、AA6951、AA6053、AA6055、AA6056、AA6156、AA6060、AA6160、AA6260、AA6360、AA6460、AA6460B、AA6560、AA6660、AA6061、AA6061A、AA6261、AA6361、AA6162、AA6262、AA6262A、AA6063、AA6063A、AA6463、AA6463A、AA6763、A6963、AA6064、AA6064A、AA6065、AA6066、AA6068、AA6069、AA6070、AA6081、AA6181、AA6181A、AA6082、AA6082A、AA6182、AA6091、またはAA6092を挙げることができる。
【0040】
いくつかの場合では、金属物品は、鋼合金物品であることができる。いくつかの非限定的な例では、鋼合金物品は、鋼合金物品の少なくとも第1の表面部分に組み込まれたAl-Si層を含むことができ、ゆえに、鋼合金物品の少なくとも第1の表面部分上にSi富化を提供する。
【0041】
前処理組成物:
金属物品に増加した結合耐久性を与える前処理組成物を本明細書に記載する。前処理組成物は、少なくとも1つのSi含有化合物、及び任意選択で、1つまたは複数の追加の成分を含む。前処理組成物において使用するのに好適なSi含有化合物(例えば、SiO部分を含有するSi含有化合物)には、例えば、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APS)、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン(BTSE)、グリシジル-オキシプロピル-トリメトキシシラン(GPS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、ビニルトリエトキシシラン(VTES)、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン(MTES)、及びこれらの組み合わせを含むことができる。Si含有化合物は、任意選択で、水性媒体、有機溶媒、またはこれらの組み合わせ中に存在することができる。水性媒体は、例えば、水道水、精製水、蒸留水、脱塩水、及び/または脱イオン水を含むことができる。好適な有機溶媒には、例えば、極性有機溶媒が含まれる。いくつかの例では、有機溶媒、例えばアセトン、エタノール、メタノール、イソプロパノール、及び/または酢酸エチルが存在することができる。任意選択で、少なくとも1つのSi含有化合物を含有する溶液は、水性媒体及び有機溶媒の組み合わせを含む。いくつかの例では、1つまたは複数の水性媒体は、少なくとも約5体積%、少なくとも約10体積%、少なくとも約15体積%、少なくとも約20体積%、少なくとも約25体積%、少なくとも約30体積%、少なくとも約35体積%、少なくとも約40体積%、少なくとも約45体積%、少なくとも約50体積%、少なくとも約55体積%、少なくとも約60体積%、少なくとも約65体積%、少なくとも約70体積%、少なくとも約75体積%、少なくとも約80体積%、少なくとも約85体積%、少なくとも約90体積%、または少なくとも約95体積%の量で溶液中に存在することができる。いくつかの例では、有機溶媒(複数可)は、少なくとも約5体積%、少なくとも約10体積%、少なくとも約15体積%、少なくとも約20体積%、少なくとも約25体積%、少なくとも約30体積%、少なくとも約35体積%、少なくとも約40体積%、少なくとも約45体積%、少なくとも約50体積%、少なくとも約55体積%、少なくとも約60体積%、少なくとも約65体積%、少なくとも約70体積%、少なくとも約75体積%、少なくとも約80体積%、少なくとも約85体積%、少なくとも約90体積%、または少なくとも約95体積%の量で溶液中に存在することができる。
【0042】
任意選択で、Si含有化合物を含有する溶液は、例えば、アセトン、エタノール、メタノール、イソプロパノール及び/または酢酸エチルを、最大約90体積%(例えば、最大約85体積%、最大約80体積%、最大約75体積%、最大約70体積%、最大約65体積%、最大約60体積%、最大約55体積%、最大約50体積%、最大約45体積%、最大約40体積%、最大約35体積%、最大約30体積%、最大約25体積%、最大約20体積%、最大約15体積%、または最大約10体積%)の量で含むことができる水性媒体を含む。
【0043】
金属物品を調製する方法
以下に記載するように、圧延ステップ及び調質、熱処理ステップ及び調質、及び/または表面調製ステップ及び調質(例えば、いくつか例を挙げると、エッチング及び/またはクリーニング)を含む、ある特定の処理ステップ及び調質は、望ましい結合耐久特性を有する上記の金属物品を提供する。いくつかの非限定的な例では、本明細書に記載の金属物品は、アルミニウム合金物品であることができる。本明細書に記載のアルミニウム合金物品を提供する方法は、Siを主な合金元素として有するアルミニウム合金(例えば、4xxx系アルミニウム合金、5xxx系アルミニウム合金、または6xxx系アルミニウム合金)を提供する、アルミニウム合金物品上にSiを主な元素として有するコーティングを形成するためのSi含有前処理を提供する、及びアルミニウム合金物品に存在するSi含有化合物(例えば、過剰のSi)とコーティングに存在するSiO部分との間のSi-O-Si結合相互作用を刺激するためにコーティングされたアルミニウム合金物品を処理するステップを含むことができる。いくつかの場合では、Siを主な合金元素として有するアルミニウム合金を提供することは、以下に簡潔に記載するような、当該技術分野で一般に知られている方法に従って行うことができる。
【0044】
いくつかの非限定的な例では、移動元素の拡散速度を制御することは、移動元素の選択的な拡散を提供することができる。例えば、熱は、第1の移動元素の拡散を促進し、同時に第2の移動元素の拡散を抑制することができる速度で溶融金属から抽出することができる。ゆえに、金属物品表面は、溶融合金の凝固中に選択された移動元素(例えば、Si)によって選択的に富化されて、金属物品を提供することができる。
【0045】
本明細書に記載の任意の好適な金属(すなわち、過剰のSiなどのSiを含有する)は、任意の好適な方法によって鋳造されて、鋳造物品をもたらすことができる。いくつかの例では、金属は、インゴットを形成するためのダイレクトチル(DC)鋳造処理を使用して鋳造することができる。いくつかの例では、金属は、双ベルト鋳造機、双ロール鋳造機、またはブロック鋳造機の使用を含み得るがこれらに限定されない連続鋳造(CC)プロセスを使用して鋳造して、ビレット、スラップ、シェート、ストリップなどの形態の鋳造物品を形成することができる。次に、鋳造物品を、物品を調製するために使用される特定の金属(例えば、特定のアルミニウム合金系)に基づいて、均質化、熱間圧延、冷間圧延、溶体化熱処理、焼入れ、及び/または時効を含むがこれらに限定されない処理ステップにかけることができる。処理に続いて、金属物品は、以下でさらに記載するような表面調製ステップを受けることができる。
【0046】
表面調製
任意選択で、本明細書に記載の、DC鋳造またはCCによって鋳造され、続いて処理されるアルミニウム合金物品は、以下に記載する表面調製プロセスにかけることができる。この記載はアルミニウム合金の文脈で提供されているが、本明細書に記載のアルミニウム合金物品及び方法は、任意の好適な金属物品、及びホイル、シート、プレート、スラブ、ビレット、インゴットなどを含む任意の好適なゲージを有する任意の好適な金属物品、ならびに任意の形状の金属物品に使用することができる。
【0047】
クリーニング
本明細書に記載の前処理プロセスは、アルミニウム合金物品の1つまたは複数の表面にクリーナ(本明細書ではエントリークリーナとも呼ばれる)を適用するステップを含む。エントリークリーナは、コイル表面から、残油、またはゆるく接着している酸化物を除去する。任意選択で、エントリークリーニングは、溶媒(例えば、水性溶媒または有機溶媒)を使用して行うことができる。任意選択で、1つまたは複数の添加剤を、溶媒に添加することができる。
【0048】
プレエッチング
本明細書に記載の方法はまた、アルミニウム合金物品の1つまたは複数の表面をプレエッチングするステップを含む。アルミニウム合金物品の表面は、酸エッチング(すなわち、酸性溶液を含むエッチング手順)を使用してプレエッチングすることができる。酸エッチングは、後続の前処理のために表面を準備する。酸エッチングを行うための例示的な酸としては、硫酸、フッ化水素酸、硝酸、リン酸、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの非限定的な例では、プレエッチングは、最大約3g/mの表面材料を除去し、アルミニウム合金物品に存在するSiを、アルミニウム合金物品の表面またはその近くにて露出させる。いくつかの場合では、露出したSiは、元素Si、Si含有化合物中のSi(例えば、MgSi)などである。
【0049】
前処理
プレエッチングステップの後、金属物品の表面を水または溶剤ですすぐことができる。その後、前処理(例えば、上記のSi含有前処理)を、金属物品の表面に適用することができる。任意選択で、前処理は、接着促進剤、腐食防止剤、カップリング剤、抗菌剤、またはそれらの混合物を含むことができる。いくつかの非限定的な例では、アルミニウム合金物品中の過剰のSiは、前処理に存在するO原子(例えば、SiO部分)と相互作用し、Si-O-Si結合相互作用を介して前処理接着を増強することができる。いくつかの例では、金属物品の表面内の過剰のSiは、金属物品の表面内のO原子(例えば、Al)及び/または前処理層中のSi及び/またはO原子(例えば、SiO部分)と相互作用し、Si-O-Si相互作用を介して前処理接着を増強することができる。他の態様では、金属物品の表面内の過剰のSiは、金属物品の表面内のO原子(例えば、金属酸化物(例えば、Al)、金属格子中のO原子、酸化した過剰のSi、合金内のSi含有化合物に存在するO、合金中の他のO含有化合物など)及び前処理層中のSi原子(例えば、Si原子またはSiO部分)と相互作用し、Si-O-Si相互作用を介して前処理接着を増強することができる。
【0050】
いくつかの場合では、Siベースの前処理におけるシリコン含有化合物は、SiO部分を含むことができ、ここで、xは、1~4の範囲の整数(例えば、1、2、3、または4)である。例えばシロキサン、ポリシロキサン、シラノール、テトラエチルオルトシリケート、テトラアルキルシリケート、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリエトキシシランなどの前処理は、SiO部分を含有することができる。従って、シロキサン、ポリシロキサン、シラノール、テトラエチルオルトシリケート、テトラアルキルシリケート、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリエトキシシランなどを、前処理として個別にまたはそれらの任意の組み合わせで使用することができる。
【0051】
いくつかの場合では、前処理は、バーコーティング、ローラーコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、当該技術分野で公知の任意の好適なコーティング技術、またはそれらの任意の組み合わせによって適用することができる。コーティング後、前処理を硬化させて、アルミニウム合金表面にコーティングを施すことができる。ある特定の場合では、硬化は、約200℃~約300℃(例えば、約210℃~約290℃、約215℃~約285℃、約220℃~約280℃、約220℃~約300℃、約200℃~約275℃、約205℃~約295℃、約225℃~約275℃、約215℃~約300℃、約230℃~約270℃、約235℃~約265℃、または約240℃~約260℃)の温度にて行うことができる。例えば、硬化は、約200℃、約201℃、約202℃、約203℃、約204℃、約205℃、約206℃、約207℃、約208℃、約209℃、約210℃、約211℃、約212℃、約213℃、約214℃、約215℃、約216℃、約217℃、約218℃、約219℃、約220℃、約221℃、約222℃、約223℃、約224℃、約225℃、約226℃、約227℃、約228℃、約229℃、約230℃、約231℃、約232℃、約233℃、約234℃、約235℃、約236℃、約237℃、約238℃、約239℃、約240℃、約241℃、約242℃、約243℃、約244℃、約245℃、約246℃、約247℃、約248℃、約249℃、約250℃、約251℃、約252℃、約253℃、約254℃、約255℃、約256℃、約257℃、約258℃、約259℃、約260℃、約261℃、約262℃、約263℃、約264℃、約265℃、約266℃、約267℃、約268℃、約269℃、約270℃、約271℃、約272℃、約273℃、約274℃、約275℃、約276℃、約277℃、約278℃、約279℃、約280℃、約281℃、約282℃、約283℃、約284℃、約285℃、約286℃、約287℃、約288℃、約289℃、約290℃、約291℃、約292℃、約293℃、約294℃、約295℃、約296℃、約297℃、約298℃、約299℃、または約300℃の温度にて行うことができる。
【0052】
ある特定の例では、前処理を適用した後、硬化は、約5秒~約15秒の期間(例えば、約6秒~約14秒、約6秒~約12秒、約6秒~約10秒、約5秒~約10秒、7秒~約13秒、または約7秒~約8秒)にわたって行うことができる。例えば、硬化は、約5秒、約6秒、約7秒、約8秒、約9秒、約10秒、約11秒、約12秒、約13秒、約14秒、または約15秒にわたって行うことができる。
【0053】
ある特定の態様では、適用される前処理は、約0.5mg/m~約100mg/m(例えば、約1mg/m~約100mg/m、約2mg/m~約90mg/m、約3mg/m~約80mg/m、約4mg/m~約70mg/m、約5mg/m~約60mg/m、約6mg/m~約50mg/m、約7mg/m~約40mg/m、約8mg/m~約30mg/m、または約9mg/m~約20mg/m)のコーティング重量を有することができる。例えば、適用される前処理は、約0.5mg/m、約0.6mg/m、約0.7mg/m、約0.8mg/m、約0.9mg/m、約1mg/m、約1.1mg/m、約1.2mg/m、約1.3mg/m、約1.4mg/m、約1.5mg/m、約1.6mg/m、約1.7mg/m、約1.8mg/m、約1.9mg/m、約2mg/m、約2.1mg/m、約2.2mg/m、約2.3mg/m、約2.4mg/m、約2.5mg/m、約2.6mg/m、約2.7mg/m、約2.8mg/m、約2.9mg/m、約3mg/m、約3.1mg/m、約3.2mg/m、約3.3mg/m、約3.4mg/m、約3.5mg/m、約3.6mg/m、約3.7mg/m、約3.8mg/m、約3.9mg/m、約4mg/m、約4.1mg/m、約4.2mg/m、約4.3mg/m、約4.4mg/m、約4.5mg/m、約4.6mg/m、約4.7mg/m、約4.8mg/m、約4.9mg/m、約5mg/m、約5.1mg/m、約5.2mg/m、約5.3mg/m、約5.4mg/m、約5.5mg/m、約5.6mg/m、約5.7mg/m、約5.8mg/m、約5.9mg/m、約6mg/m、約6.1mg/m、約6.2mg/m、約6.3mg/m、約6.4mg/m、約6.5mg/m、約6.6mg/m、約6.7mg/m、約6.8mg/m、約6.9mg/m、約7mg/m、約7.1mg/m、約7.2mg/m、約7.3mg/m、約7.4mg/m、約7.5mg/m、約7.6mg/m、約7.7mg/m、約7.8mg/m、約7.9mg/m、約8mg/m、約8.1mg/m、約8.2mg/m、約8.3mg/m、約8.4mg/m、約8.5mg/m、約8.6mg/m、約8.7mg/m、約8.8mg/m、約8.9mg/m、約9mg/m、約9.1mg/m、約9.2mg/m、約9.3mg/m、約9.4mg/m、約9.5mg/m、約9.6mg/m、約9.7mg/m、約9.8mg/m、約9.9mg/m、約10mg/m、約11mg/m、約12mg/m、約13mg/m、約14mg/m、約15mg/m、約16mg/m、約17mg/m、約18mg/m、約19mg/m、約20mg/m、約21mg/m、約22mg/m、約23mg/m、約24mg/m、約25mg/m、約26mg/m、約27mg/m、約28mg/m、約29mg/m、約30mg/m、約31mg/m、約32mg/m、約33mg/m、約34mg/m、約35mg/m、約36mg/m、約37mg/m、約38mg/m、約39mg/m、約40mg/m、約41mg/m、約42mg/m、約43mg/m、約44mg/m、約45mg/m、約46mg/m、約47mg/m、約48mg/m、約49mg/m、約50mg/m、約51mg/m、約52mg/m、約53mg/m、約54mg/m、約55mg/m、約56mg/m、約57mg/m、約58mg/m、約59mg/m、約60mg/m、約61mg/m、約62mg/m、約63mg/m、約64mg/m、約65mg/m、約66mg/m、約67mg/m、約68mg/m、約69mg/m、約70mg/m、約71mg/m、約72mg/m、約73mg/m、約74mg/m、約75mg/m、約76mg/m、約77mg/m、約78mg/m、約79mg/m、約80mg/m、約81mg/m、約82mg/m、約83mg/m、約84mg/m、約85mg/m、約86mg/m、約87mg/m、約88mg/m、約89mg/m、約90mg/m、約91mg/m、約92mg/m、約93mg/m、約94mg/m、約95mg/m、約96mg/m、約97mg/m、約98mg/m、約99mg/m、または約100mg/mのコーティング重量を有することができる。
【0054】
ある特定の態様では、適用される前処理は、約0.01nm~約20nm(例えば、約1nm~約20nm、約1nm~約19nm、約2nm~約18nm、約3nm~約17nm、約5nm~約20nm、約4nm~約16nm、約5nm~約15nm、約6nm~約14nm、約7nm~約13nm、約8nm~約12nm、約9nm~約11nm、約2nm~約14nm、約3nm~約20nm、約1nm~約19nm、または4nm~約19nm)の乾燥厚さを有することができる。
【0055】
金属物品を接合する方法
いくつかの非限定的な例では、第1の金属を第2の金属に接合する方法は、(i)過剰のSiを含む第1の表面部分を有する第1の金属を提供すること、(ii)1つまたは複数のSi含有化合物を含む表面前処理層を、第1の金属の第1の表面部分に適用して、第1の金属の前処理された表面部分を形成すること、ここで第1の金属の第1の表面部分または1つもしくは複数のSi含有化合物のいずれか1つがOを含み、適用が、第1の金属の第1の表面部分に存在する過剰のSiと表面前処理層に存在する1つまたは複数のSi含有化合物との間のSi-O-Si結合相互作用を刺激する;ならびに第1の金属の前処理された表面部分を第2の金属の表面に接合することを含む。
【0056】
いくつかの非限定的な例では、第1の金属(例えば、アルミニウム合金)及び第2の金属を接合して、ラップ、エッジ、バット、Tバット、ヘム、Tエッジなどを含む任意の好適な構成の接合部を形成する。いくつかの非限定的な例では、接着剤を採用して接合を行って、2つの金属製品を一緒に結合することができる。
【0057】
いくつかの非限定的な例では、本開示の金属物品(例えば、接合された金属物品)は、ASTM規格B117に従って行われる中性塩水噴霧試験において過酷な環境条件下で持続的な結合強度として実証される改善された結合耐久性を有する。本明細書に記載のように、本明細書に記載の前処理されたアルミニウム合金のSi-O-Si結合相互作用は、(a)過剰のSi含有量を有するがSi含有前処理で前処理されていないアルミニウム合金、(b)Si含有前処理で前処理されているが過剰のSiを有さないアルミニウム合金、及び(c)過剰のSiを有さず、Si含有前処理で前処理されていないアルミニウム合金よりも、結合耐久性を改善する。例えば、本明細書に記載の過剰のSiを有し、本明細書に記載のSi含有前処理で前処理され、第2の金属に結合されたアルミニウム合金は、過剰のSiを有し、非Si含有前処理(例えば、チタン-ジルコニウム(TiZr)前処理)で前処理され、第2に金属に結合されたアルミニウム合金よりも強い結合耐久性を示す。さらに、本明細書に記載の過剰のSiを有し、本明細書に記載のSi含有前処理で前処理され、第2の金属に結合されたアルミニウム合金は、過剰のSiを有さず(例えば、過剰のSi=0)、Si含有前処理で前処理され、第2に金属に結合されたアルミニウム合金よりも強い結合耐久性を示す。なおもさらに、本明細書に記載の過剰のSiを有し、本明細書に記載のSi含有前処理で前処理され、第2の金属に結合されたアルミニウム合金は、過剰のSiを有さず、非Si含有前処理(例えば、TiZr)で前処理され、第2の金属に結合されたアルミニウム合金よりも強い結合耐久性を示す。
【0058】
いくつかの例では、第2の金属は、過剰のSiを含有する1つまたは複数の表面を有する(例えば、過剰のSiは、約1.4重量%を超える量で存在する)。ある特定の態様では、第2の金属は、本明細書に記載のSi含有前処理で前処理される。いくつかの場合では、第2の金属表面中の過剰のSiは、前処理中の1つまたは複数のSi含有化合物と相互作用する。Si-O-Si結合相互作用は、金属物品が第1の金属に結合されるときに結合耐久性を増加させる。
【0059】
いくつかの場合では、本明細書に記載の過剰のSiを有し、本明細書に記載のSi含有前処理で前処理された金属物品は、過剰のSiを有さない金属部品及び/または前処理されていないもしくは非Si含有前処理で前処理された金属物品と比較して、少なくとも約40%の結合耐久性における改善を示す。例えば、本明細書に記載のSi含有前処理で前処理された金属物品に関する結合耐久性における改善は、過剰のSiを有さない金属部品及び/または前処理されていないもしくは非Si含有前処理で前処理された金属物品と比較して、約45%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、または約75%以上であり得る。
【0060】
ある特定の態様では、本明細書に記載の過剰のSiを有し、本明細書に記載のSi含有前処理で前処理された金属物品は、中性塩水噴霧試験に供された場合、結合強度のわずかな損失を示す。例えば、中性塩水噴霧への最大20週間の曝露後、Si含有前処理で前処理された過剰のSiを有する金属物品は、約40%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、または約20%未満の結合強度損失を示す。いくつかの比較例では、本明細書に記載の過剰のSiを有し、TiZr前処理で前処理され、結合耐久性試験に供された金属物品は、中性塩水噴霧への最大20週間の曝露後、少なくとも約40%の結合強度損失を示し得る。例えば、過剰のSiを有し、TiZr前処理で前処理された金属物品は、少なくとも約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、または約75%の結合強度損失を示し得る。
【0061】
使用方法
本明細書に記載のアルミニウム合金物品及び方法は、自動車、電子機器、及び輸送用途、例えば商用車、航空機、または鉄道用途に使用することができる。例えば、アルミニウム合金物品を、シャーシ、クロスメンバー、及びシャーシ内コンポーネント(商用車のシャーシの2つのCチャンネル間のすべてのコンポーネントを包含するが、これらに限定されない)に使用して、高強度鋼の完全置換または部分置換として役立つ強度を得ることができる。
【0062】
ある特定の態様では、アルミニウム合金物品及び方法は、モータービークル本体部品物品を調製するために使用することができる。例えば、本開示のアルミニウム合金物品及び方法は、自動車本体部品、例えばバンパー、サイドビーム、ルーフビーム、クロスビーム、ピラー補強材(例えば、Aピラー、Bピラー、及びCピラー)、インナーパネル、サイドパネル、フロアパネル、トンネル、構造パネル、補強パネル、インナーフード、またはトランクリッドパネルへと調製及び/または形成するために使用することができる。本開示のアルミニウム合金物品及び方法は、例えば、外部及び内部パネルを調製するために、航空機または鉄道車両用途で使用することもできる。
【0063】
本明細書に記載のアルミニウム合金物品及び方法はまた、例えば、外部及び内部エンケースメントへと調製及び/または形成するために、電子機器用途に使用することができる。例えば、本明細書に記載のアルミニウム合金物品及び方法は、携帯電話及びタブレットコンピュータを含む、電子デバイス用のハウジングを調製するためにも使用することができる。いくつかの例では、アルミニウム合金物品は、携帯電話(例えば、スマートフォン)の外側ケーシング及びタブレットのボトムシャーシ用のハウジングを調製するために使用することができる。
【0064】
ある特定の態様では、アルミニウム合金物品及び方法は、航空宇宙ビークル本体部品物品を調製及び/または形成するために使用することができる。例えば、本開示のアルミニウム合金物品及び方法は、航空機の本体部品、例えばスキン合金を調製するために使用することができる。
【0065】
任意選択で、アルミニウム合金物品及び方法は、他の用途の中でもとりわけ、飲料及び食品容器へと調製及び/または形成するために使用することができる。
【0066】
いくつかの例では、アルミニウム合金は、本明細書に記載の任意のコーティングを含むアルミニウム合金物品に製作することができる。いくつかの例では、合金は、本明細書に記載の任意のアルミニウム合金物品から形成され、本明細書に記載の前処理組成物から形成された任意のコーティング層を含む成形物品に製作することができる。いくつかの例では、合金は、本明細書に記載の任意のアルミニウム合金物品から形成され、本明細書に記載のSi含有コーティングを含む成形物品であり、成形物品は、同様の合金、同様の金属、異なる合金または異なる金属(例えば、第2の金属または第2の合金)から形成された別の物品に接合される。いくつかの非限定的な例では、アルミニウム合金ならびに第2の金属及び/または合金を結合して、ラップ、エッジ、バット、Tバット、ヘム、Tエッジなどを含む任意の好適な構成の接合部を形成する。いくつかの非限定的な例では、接着剤を採用して結合を行って、2つの金属物品を一緒に結合することができる。本明細書で使用する場合、結合耐久性は、過酷な条件(例えば、中性塩水噴霧試験)及びその後の(例えば、過酷な条件に曝露された後の結合の強度を評価するための)引張試験に曝露された後の結合強度を指す。
【0067】
実例
実例1は、前処理された金属物品であって、過剰のSiを含む第1の表面部分;及び1つまたは複数のSi含有化合物を含む表面前処理層を含み、前記第1の金属の前記第1の表面部分または前記1つもしくは複数のSi含有化合物のいずれか1つがOを含み、Si-O-Si結合相互作用が、前記第1の表面部分に存在する前記過剰のSiと前記表面前処理層に存在する前記1つまたは複数のSi含有化合物との間に存在し、前記表面前処理層が、前記第1の表面部分に接着している、前記前処理された金属物品である。
【0068】
実例2は、前記過剰のSiが、前記第1の表面部分に約1.4重量%を超える量で存在する、任意の先行または後続の実例に記載の前処理された金属物品である。
【0069】
実例3は、前記前処理された金属物品が、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、鋼、マグネシウムもしくはマグネシウム合金、チタンもしくはチタン合金、銅もしくは銅合金、任意の好適な金属もしくは金属合金、またはそれらの任意の組み合わせを含む、任意の先行または後続の実例に記載の前処理された金属物品である。
【0070】
実例4は、前記前処理された金属物品が、アルミニウム合金である、任意の先行または後続の実例に記載の前処理された金属物品である。
【0071】
実例5は、前記アルミニウム合金が、4xxx系アルミニウム合金、5xxx系アルミニウム合金、または6xxx系アルミニウム合金を含む、任意の先行または後続の実例に記載の前処理された金属物品である。
【0072】
実例6は、前記前処理された金属物品が、自動車構造部品、航空宇宙構造部品、輸送構造部品、自動車本体部品、航空宇宙スキンパネル、輸送本体部品、建築部品、美的部品、電子デバイスハウジング、または飲料もしくは食品の容器である、任意の先行または後続の実例に記載の前処理された金属物品である。
【0073】
実例7は、第1の金属を第2の金属に接合する方法であって、過剰のSiを含む第1の表面部分を有する第1の金属を提供すること;1つまたは複数のSi含有化合物を含む表面前処理層を前記第1の金属の前記第1の表面部分に適用して、前記第1の金属の前処理された表面部分を形成すること、ここで前記第1の金属の前記第1の表面部分または前記1つもしくは複数のSi含有化合物のいずれか1つがOを含み、前記適用が、前記第1の金属の前記第1の表面部分に存在する前記過剰のSiと前記表面前処理層に存在する前記1つまたは複数のSi含有化合物との間のSi-O-Si結合相互作用を刺激する;ならびに前記第1の金属の前記前処理された表面部分を第2の金属の表面に接合することを含む、前記方法である。
【0074】
実例8は、条件(a)~(c):(a)前記第1の金属の前記前処理された表面部分と第2の金属の前記表面との間の結合耐久性が、(i)過剰のSiを含み、1つもしくは複数のSi含有化合物を含有しない表面前処理で前処理された金属の表面部分と(ii)第2の金属との間の結合耐久性よりも大きい;(b)前記第1の金属の前記前処理された表面部分と第2の金属の前記表面との間の結合耐久性が、(i)過剰のSiを含まず、1つもしくは複数のSi含有化合物を含有する表面前処理で前処理された金属の表面部分と(ii)第2の金属との間の結合耐久性よりも大きい;または(c)前記第1の金属の前記前処理された表面部分と第2の金属の前記表面との間の結合耐久性が、(i)過剰のSiを含まず、1つもしくは複数のSi含有化合物を含有しない表面前処理で前処理された金属の表面部分と(ii)第2の金属との間の結合耐久性より大きい、のうちの1つまたは複数が達成される、任意の先行または後続の実例に記載の方法。
【0075】
実例9は、前記第1の金属が、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、鋼、マグネシウムもしくはマグネシウム合金、チタンもしくはチタン合金、銅もしくは銅合金、任意の好適な金属もしくは金属合金、またはそれらの任意の組み合わせを含む、任意の先行または後続の実例に記載の方法である。
【0076】
実例10は、前記第1の金属が、アルミニウム合金を含む、任意の先行または後続の実例に記載の方法である。
【0077】
実例11は、前記アルミニウム合金が、4xxx系アルミニウム合金、5xxx系アルミニウム合金、または6xxx系アルミニウム合金を含む、任意の先行または後続の実例に記載の方法である。
【0078】
実例12は、前記第2の金属が、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、鋼、マグネシウムもしくはマグネシウム合金、チタンもしくはチタン合金、銅もしくは銅合金、任意の好適な金属もしくは金属合金、またはそれらの任意の組み合わせを含む、任意の先行または後続の実例に記載の方法である。
【0079】
実例13は、前記過剰のSiが、少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分に約1.4重量%を超える量で存在する、任意の先行または後続の実例に記載の方法である。
【0080】
実例14は、前記適用の前に、少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分をエッチングすることをさらに含む、任意の先行または後続の実例に記載の方法である。
【0081】
実例15は、少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分のエッチングが、最大約3グラム/平方メートルの表面材料を除去することによって前記第1の表面部分中のSiを露出させる、任意の先行または後続の実例に記載の方法である。
【0082】
実例16は、前記適用の前に、少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分をクリーニングすることをさらに含む、任意の先行または後続の実例に記載の方法である。
【0083】
実例17は、少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分のクリーニングが、少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分から天然の酸化物または水酸化物種を除去する、任意の先行または後続の実例に記載の方法である。
【0084】
実例18は、前記表面前処理層を少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分に適用することが、バーコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、またはディップコーティングを含む、任意の先行または後続の実例に記載の方法である。
【0085】
実例19は、前記表面前処理層を硬化させることをさらに含む、任意の先行または後続の実例に記載の方法である。
【0086】
実例20は、任意の先行または後続の実例に記載の方法に記載の方法に従って調製された、接合された金属構造である。
【0087】
実例21は、前記接合された金属構造が、中性塩水噴霧試験への20週間の曝露後に、40%未満の結合強度損失を経験する、任意の先行または後続の実例に記載の接合された金属構造である。
【0088】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するのに役立つが、しかしながら、そのいかなる限定も構成しない。それとは逆に、その様々な実施形態、改変、及び均等物に頼ることができ、これらは、本明細書の説明を読んだ後に、本発明の趣旨から逸脱することなく当業者にそれら自体を示唆し得ることを明確に理解されたい。以下の実施例に記載される試験中、別段記述されない限り、従来の手順に従った。手順の一部を、例示のために以下で記載する。
【実施例0089】
実施例1:結合耐久性
Siを主な合金元素として有し、高濃度のSiをアルミニウム合金表面に有するアルミニウム合金を、結合耐久性試験のために調製した。各結合耐久性試験サンプルには、6xxx系アルミニウム合金を使用した。アルミニウム合金を、8つの試験クーポンにカットし、前処理でコーティングした。4つのアルミニウム合金クーポンは、Si含有前処理(「Si-PT」と呼ばれる)でコーティングし、4つのアルミニウム合金サンプルは、当該技術分野で一般的に知られている比較としてのチタン-ジルコニウム(「TiZr」と呼ばれる)前処理で前処理した。次に、同様にコーティングされたクーポンを、Sika Corporation(Lyndhurst,NJ)が提供する市販の接着剤で結合させた。Sika 497及びSika 498/3は、耐衝撃構造用接着剤である。Sika 497は低粘度の耐衝撃構造用接着剤であり、Sika 498/3は高粘度の耐衝撃構造用接着剤である。合金参照サンプルAには、Si-PTでコーティングされ、接着剤製剤Sika 498/3で結合された2つの試験クーポンが含まれた。合金参照サンプルBには、Si-PTでコーティングされ、接着剤製剤Sika 497で結合された2つの試験クーポンが含まれた。合金参照サンプルCには、TiZrでコーティングされ、接着剤製剤Sika 498/3で結合された2つの試験クーポンが含まれた。合金参照サンプルDには、TiZrでコーティングされ、接着剤製剤BM4601(Dow Automotive Systems,Wilmington,DEが提供)で結合された2つの試験クーポンが含まれた。合金参照サンプルA、B、C、及びDを繰り返して、各合金参照サンプルの4つの試験サンプルを提供して、試験中の異なる時間間隔の後に各合金参照サンプルを評価した。接着耐久性試験の結果を、以下の表1に提供する。
【表1】
【0090】
結合耐久性試験は、合金参照サンプルA、B、C、及びDに中性塩水噴霧試験を採用することによって行った。各合金参照サンプルの結合強度は、曝露なし(例えば、0週)後、中性塩水噴霧試験への2週間の曝露後、中性塩水噴霧試験への6週間の曝露後、中性塩水噴霧試験への12週間の曝露後、及び中性塩水噴霧試験への20週間の曝露後に試験した。結合耐久性は、各サンプルに関する結合強度の損失として実証された(すなわち、中性塩水噴霧試験に曝露されずに試験された合金参照サンプルA、B、C、及びDは、0%の強度損失のベンチマークとして機能した)。結果を、以下の表2に要約する:
【表2】
【0091】
図1は、上記の結合したアルミニウム合金サンプルの強度損失を示すグラフである。40%の強度損失(ヒストグラムの各セットを横切る破線で示されている)は、許容できないと判断された。グラフ、及び上記の表2にて明らかなように、高濃度のSiをアルミニウム合金表面に有するアルミニウム合金に適用されたSi含有前処理コーティングを採用した合金参照A及びBは、高い結合強度と最小限の結合強度損失を、中性塩水噴霧試験における2週間、6週間、12週間、及び20週間の曝露後に示し、このことは、現在の前処理技術と比較して結合耐久性が増加したことを実証している(例えば、TiZr前処理で前処理されたサンプルは、6週間、12週間、及び20週間の中性塩水噴霧曝露後に、40%を超える結合強度の損失を示した)。
【0092】
図2~5は、中性塩水噴霧試験に曝露された後の試験サンプルのデジタル光学画像である。中性塩水噴霧試験に耐えたサンプル(例えば、試験間隔が完了した後に結合したままのサンプル)は、視覚的評価のために強制的に分離させた。図2A~2Eは、合金参照Aに関する試験後の可視結果を示す。図2Aは、中性塩水噴霧への曝露がなかった後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。図2Bは、中性塩水噴霧への2週間の曝露後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。図2Cは、中性塩水噴霧への6週間の曝露後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。図2Dは、中性塩水噴霧への12週間の曝露後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。図2Eは、中性塩水噴霧への20週間の曝露後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。合金参照Aは、中性塩水噴霧試験からの有意な効果を示さなかった。
【0093】
図3A~3Eは、合金参照Bに関する試験後の可視結果を示す。図3Aは、中性塩水噴霧への曝露がなかった後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。図3Bは、中性塩水噴霧への2週間の曝露後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。図3Cは、中性塩水噴霧への6週間の曝露後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。図3Dは、中性塩水噴霧への12週間の曝露後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。図3Eは、中性塩水噴霧への20週間の曝露後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。合金参照Bは、中性塩水噴霧試験からの有意な効果を示さなかった。
【0094】
図4A~4Dは、合金参照Cに関する試験後の可視結果を示す。図4Aは、中性塩水噴霧への曝露がなかった後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。図4Bは、中性塩水噴霧への6週間の曝露後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。図4Cは、中性塩水噴霧への12週間の曝露後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。図4Dは、中性塩水噴霧への20週間の曝露後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。合金参照Cは、中性塩水噴霧試験からの有意な接着破壊(例えば、接着剤及び金属の界面での破壊)を示した。
【0095】
図5A~5Dは、合金参照Dに関する試験後の可視結果を示す。図5Aは、中性塩水噴霧への曝露がなかった後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。図5Bは、中性塩水噴霧への6週間の曝露後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。図5Cは、中性塩水噴霧への12週間の曝露後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。図5Dは、中性塩水噴霧への20週間の曝露後の、結合し、その後分離した試験クーポンを示す。合金参照Dは、中性塩水噴霧試験からの有意な接着破壊(例えば、接着剤及び金属の界面での破壊)を示した。ゆえに、金属中の主な合金元素に対応するコーティングを採用することは、結合強度を増加させ、結合耐久性を増加させることができる。
【0096】
図2~5に示すように、Si含有前処理を、過剰のSiを有する金属に適用することは(例えば、それぞれ、図2及び3、合金参照A及びB)、金属表面への前処理の優れた結合を提供した。優れた結合は、図2及び3に示す密着破壊によって示される。密着破壊は、接着剤のバルク内での破壊であり、金属への接着剤の結合が接着剤内のどの内部結合よりも強いことを示す。上記のような、接着剤の破壊は、図4B~D及び5B~Dに示され、これは、中性塩水噴霧試験中に金属への接着剤の結合が劣化したことを示している。ゆえに、Si含有前処理を、過剰のSiを有する金属に適用することは、TiZr前処理を、過剰のSiを有する金属に適用することと比較して、優れた結合耐久性を提供した。
【0097】
上記で引用したすべての特許、刊行物、及び抄録は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施形態は、本発明の様々な目的の達成において記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示であることが認識されるべきである。それらの多数の改変及び適応が、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者に容易に明らかとなるだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0097
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0097】
上記で引用したすべての特許、刊行物、及び抄録は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施形態は、本発明の様々な目的の達成において記載されている。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示であることが認識されるべきである。それらの多数の改変及び適応が、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者に容易に明らかとなるだろう。
本開示は、下記の発明の態様を含む:
<態様1>
前処理された金属物品であって、
過剰のSiを含む第1の表面部分;及び
1つまたは複数のSi含有化合物を含む表面前処理層を含み、
前記第1の表面部分または前記1つもしくは複数のSi含有化合物のいずれか1つがOを含み、
Si-O-Si結合相互作用が、前記第1の表面部分に存在する前記過剰のSiと前記表面前処理層に存在する前記1つまたは複数のSi含有化合物との間に存在し、
前記表面前処理層が、前記第1の表面部分に接着している、前記前処理された金属物品。
<態様2>
前記過剰のSiが、前記第1の表面部分に約1.4重量%を超える量で存在する、態様1に記載の前処理された金属物品。
<態様3>
前記前処理された金属物品が、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、鋼、マグネシウムもしくはマグネシウム合金、チタンもしくはチタン合金、銅もしくは銅合金、任意の好適な金属もしくは金属合金、またはそれらの任意の組み合わせを含む、態様1または2に記載の前処理された金属物品。
<態様4>
前記前処理された金属物品が、アルミニウム合金である、態様1~3のいずれか1項に記載の前処理された金属物品。
<態様5>
前記アルミニウム合金が、4xxx系アルミニウム合金、5xxx系アルミニウム合金、または6xxx系アルミニウム合金を含む、態様4に記載の前処理された金属物品。
<態様6>
前記前処理された金属物品が、自動車構造部品、航空宇宙構造部品、輸送構造部品、自動車本体部品、航空宇宙スキンパネル、輸送本体部品、建築部品、美的部品、電子デバイスハウジング、または飲料もしくは食品の容器である、態様1~5のいずれか1項に記載の前処理された金属物品。
<態様7>
第1の金属を第2の金属に接合する方法であって、
過剰のSiを含む第1の表面部分を有する第1の金属を提供すること;
1つまたは複数のSi含有化合物を含む表面前処理層を前記第1の金属の前記第1の表面部分に適用して、前記第1の金属の前処理された表面部分を形成することであって、ここで前記第1の金属の前記第1の表面部分または前記1つもしくは複数のSi含有化合物のいずれか1つがOを含み、前記適用が、前記第1の金属の前記第1の表面部分に存在する前記過剰のSiと前記表面前処理層に存在する前記1つまたは複数のSi含有化合物との間のSi-O-Si結合相互作用を刺激する、前記形成すること;ならびに
前記第1の金属の前記前処理された表面部分を第2の金属の表面に接合することを含む、前記方法。
<態様8>
条件(a)~(c):
(a)前記第1の金属の前記前処理された表面部分と第2の金属の前記表面との間の結合耐久性が、(i)過剰のSiを含み、1つもしくは複数のSi含有化合物を含有しない表面前処理で前処理された金属の表面部分と(ii)第2の金属との間の結合耐久性よりも大きい;
(b)前記第1の金属の前記前処理された表面部分と第2の金属の前記表面との間の結合耐久性が、(i)過剰のSiを含まず、1つもしくは複数のSi含有化合物を含有する表面前処理で前処理された金属の表面部分と(ii)第2の金属との間の結合耐久性よりも大きい;または
(c)前記第1の金属の前記前処理された表面部分と第2の金属の前記表面との間の結合耐久性が、(i)過剰のSiを含まず、1つもしくは複数のSi含有化合物を含有しない表面前処理で前処理された金属の表面部分と(ii)第2の金属との間の結合耐久性より大きい、のうちの1つまたは複数が達成される、態様7に記載の方法。
<態様9>
前記第1の金属が、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、鋼、マグネシウムもしくはマグネシウム合金、チタンもしくはチタン合金、銅もしくは銅合金、任意の好適な金属もしくは金属合金、またはそれらの任意の組み合わせを含む、態様7または8に記載の方法。
<態様10>
前記第1の金属が、アルミニウム合金を含む、態様7~9のいずれか1項に記載の方法。
<態様11>
前記アルミニウム合金が、4xxx系アルミニウム合金、5xxx系アルミニウム合金、または6xxx系アルミニウム合金を含む、態様10に記載の方法。
<態様12>
前記第2の金属が、アルミニウムもしくはアルミニウム合金、鋼、マグネシウムもしくはマグネシウム合金、チタンもしくはチタン合金、銅もしくは銅合金、任意の好適な金属もしくは金属合金、またはそれらの任意の組み合わせを含む、態様7~11のいずれか1項に記載の方法。
<態様13>
前記過剰のSiが、少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分に約1.4重量%を超える量で存在する、態様7~12のいずれか1項に記載の方法。
<態様14>
前記適用の前に、少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分をエッチングすることをさらに含む、態様7~13のいずれか1項に記載の方法。
<態様15>
少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分のエッチングが、最大約3グラム/平方メートルの表面材料を除去することによって前記第1の表面部分中のSiを露出させる、態様14に記載の方法。
<態様16>
前記適用の前に、少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分をクリーニングすることをさらに含む、態様7~15のいずれか1項に記載の方法。
<態様17>
少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分のクリーニングが、少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分から天然の酸化物または水酸化物種を除去する、態様16に記載の方法。
<態様18>
前記表面前処理層を少なくとも前記第1の金属の前記第1の表面部分に適用することが、バーコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、またはディップコーティングを含む、態様7~17のいずれか1項に記載の方法。
<態様19>
前記表面前処理層を硬化させることをさらに含む、態様18に記載の方法。
<態様20>
態様7~19のいずれか1項に記載の方法に従って調製された、接合された金属構造。
<態様21>
前記接合された金属構造が、中性塩水噴霧試験への20週間の曝露後に、40%未満の結合強度損失を経験する、態様20に記載の接合された金属構造。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理された金属物品であって、
過剰のSiを含む第1の表面部分;及び
1つまたは複数のSi含有化合物を含む表面前処理層を含み、
前記第1の表面部分または前記1つもしくは複数のSi含有化合物のいずれか1つがOを含み、
Si-O-Si結合相互作用が、前記第1の表面部分に存在する前記過剰のSiと前記表面前処理層に存在する前記1つまたは複数のSi含有化合物との間に存在し、
前記表面前処理層が、前記第1の表面部分に接着している、前記前処理された金属物品。
【外国語明細書】