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特開2024-133077カーボンナノチューブシートをラップする筋肉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133077
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブシートをラップする筋肉
(51)【国際特許分類】
   F03G 7/06 20060101AFI20240920BHJP
   F15B 15/10 20060101ALI20240920BHJP
   D02G 3/36 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F03G7/06 G
F15B15/10 H
D02G3/36
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024105413
(22)【出願日】2024-06-28
(62)【分割の表示】P 2020523347の分割
【原出願日】2018-10-26
(31)【優先権主張番号】62/577,512
(32)【優先日】2017-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/588,034
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518380665
【氏名又は名称】リンテック・オブ・アメリカ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルシオ・ディアス・リマ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリア・ブイコワ
(72)【発明者】
【氏名】マリル・ゲレーロ
(57)【要約】
【課題】人工筋肉アクチュエータは、非常に単純化されたエンジニアリング及びより低い製品コストにより、小型モータを上回る利点を有し得る。
【解決手段】カーボンナノチューブ(CNT)筋肉デバイスは、第一CNTヤーンを含む。第一CNTヤーンは、チューブの形態にラップされる1つ以上の第一CNTシート、及び1つ以上の第一CNTシートに浸透する第一ゲスト発動材料を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブの形態でラップされる1つ以上の第一カーボンナノチューブ(CNT)シート、及び前記1つ以上の第一CNTシートに浸透する第一ゲスト発動材料、を含む第一CNTヤーン、を備える、CNT筋肉デバイス。
【請求項2】
芯繊維をさらに備え、その中で前記1つ以上の第一CNTシートは前記芯繊維周囲にラップされる、請求項1に記載の前記CNT筋肉デバイス。
【請求項3】
前記第一CNTヤーンは、中空チューブである、請求項1に記載の前記CNT筋肉デバイス。
【請求項4】
前記第一CNTヤーン中のCNTは、前記第一CNTヤーンの中心軸に対して第一バイアス角にアライメントを取る、請求項1~3のいずれかに記載の前記CNT筋肉デバイス。
【請求項5】
前記芯繊維の熱膨張係数は、前記第一ゲスト発動材料の熱膨張係数より低い、請求項2に記載の前記CNT筋肉デバイス。
【請求項6】
前記第一CNTヤーンの前記中心軸からの前記CNTの半径距離が増加するにつれて、前記第一バイアス角は、増加する、請求項1~5のいずれかに記載の前記CNT筋肉デバイス。
【請求項7】
前記第一CNTヤーン周囲にチューブの形態でラップされる1つ以上の第二CNTシート、及び
前記1つ以上の第二CNTシートに浸透する第二ゲスト発動材料、を含む第二CNTヤーンをさらに備え、
前記1つ以上の第二CNTシート中の前記CNTは前記第一CNTヤーンの前記中心軸に対して第二バイアス角にアライメントを取る、請求項1~6のいずれかに記載の前記CNT筋肉デバイス。
【請求項8】
カーボンナノチューブ(CNT)筋肉デバイスを製造する方法であって、
芯繊維周囲に1つ以上の第一CNTシートをラップすること、及び前記1つ以上の第一CNTシートに第一ゲスト発動材料を浸透させて第一CNTヤーンを作製すること、を備える、前記方法。
【請求項9】
1つ以上の第二CNTシートを前記第一CNTヤーン周囲にラップすること、及び前記1つ以上の第二CNTシートに第二ゲスト発動材料を浸透させて第二CNTヤーンを形成すること、をさらに備える、請求項8に記載の前記方法。
【請求項10】
前記第一CNTヤーンまたは前記第二CNTヤーンのうちの少なくとも1つをアニールすることをさらに備える、請求項8または請求項9に記載の前記方法。
【請求項11】
前記芯繊維を前記第一CNTヤーンから除去することをさらに備える、請求項8~10のいずれかに記載の前記方法。
【請求項12】
前記芯繊維は、前記芯繊維を前記第一CNTヤーンから引き出すことによって除去される、請求項11に記載の前記方法。
【請求項13】
前記芯繊維は、前記1つ以上の第一CNTシート、及び前記第一ゲスト発動材料より低い融点を有し、
前記芯繊維は、前記芯繊維の前記融点を上回る温度、ならびに前記1つ以上の第一CNTシート、及び前記第一ゲスト発動材料の前記融点を下回る温度に、前記芯繊維を加熱することを通じて前記第一CNTヤーンから融解除去されることによって除去される、請求項11に記載の前記方法。
【請求項14】
前記第一CNTヤーンの長さにわたり異なる圧力を加えて融解した芯繊維を除去することをさらに備える、請求項13に記載の前記方法。
【請求項15】
前記芯繊維は、化学的にエッチング除去されることによって除去される、請求項11に記載の前記方法。
【請求項16】
前記芯繊維は、前記芯繊維の長さ沿いに弾性であり、前記芯繊維は、前記芯繊維の前記長さ沿いに伸長し、前記芯繊維の直径を減少させ、前記芯繊維を前記第一CNTヤーンの内面から分離させることによって除去される、請求項11に記載の前記方法。
【請求項17】
前記1つ以上の第一CNTシートをラップする前に、第一被覆の層を前記芯繊維上に形成すること、をさらに備え、
前記第一被覆は前記第一CNTヤーンの内面に接着し、前記芯繊維を除去した後に前記第一CNTヤーンの前記内面上に配置されたままである、請求項11~16のいずれかに記載の前記方法。
【請求項18】
第二被覆の層を前記第一CNTヤーンの外面上に形成すること、をさらに備え、
前記第二被覆は前記第一CNTヤーンに接着し、前記芯繊維を除去した後に前記第一CNTヤーン上に留まる、請求項11~17のいずれかに記載の前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年10月26日に出願された米国仮出願第62/577,512号、及び2017年11月17日に出願された米国仮出願第62/588,034号に優先権を主張し、これらの内容は、それらの全体が参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
ねじれた高分子繊維及びヤーン、ならびにカーボンナノチューブ(CNT)繊維及びヤーンに基づく熱駆動トーショナルアクチュエータは、幅広い用途を有する。ねじれた高分子及び/またはコイル状高分子を含む、人工筋肉デバイスとも称される、人工筋肉アクチュエータは、低コスト、高生産量、及び設計単純性という利点を有する。人工筋肉アクチュエータは、非常に単純化されたエンジニアリング及びより低い製品コストにより、小型モータを上回る利点を有し得る。
【発明の概要】
【0003】
1つの態様において、本明細書に開示される実施形態は、第一CNTヤーンを含むカーボンナノチューブ(CNT)筋肉デバイスに関する。第一CNTヤーンは、チューブの形態にラップされる1つ以上の第一CNTシート、及び1つ以上の第一CNTシートに浸透する第一ゲスト発動材料を含む。
【0004】
1つの態様において、本明細書に開示される実施形態は、CNT筋肉デバイスの製造方法に関する。方法は、芯繊維周囲に1つ以上の第一CNTシートをラップすること、及び1つ以上の第一CNTシートに第一ゲスト発動材料を浸透させて第一CNTヤーンを作製することを備える。
【0005】
本明細書に開示される1つ以上の実施形態の他の態様及び利点は、以下の説明、及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の1つ以上の実施形態に従い、カーボンナノチューブ(CNT)人工筋肉デバイスを示す。
図2】本発明の1つ以上の実施形態に従い、CNT人工筋肉デバイスの断面図を示す。
図3】本発明の1つ以上の実施形態に従い、CNT人工筋肉デバイスのCNTシートをラップすることを示す。
図4】本発明の1つ以上の実施形態に従い、CNT人工筋肉デバイスを示す。
図5】本発明の1つ以上の実施形態に従い、グラフを示す。
図6】本発明の1つ以上の実施形態に従い、CNT人工筋肉デバイスの断面図及び側面図を示す。
図7】本発明の1つ以上の実施形態に従い、CNT人工筋肉デバイスの断面図及び側面図を示す。
図8】本発明の1つ以上の実施形態に従い、実装例を示す。
図9】本発明の1つ以上の実施形態に従い、フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の具体的な実施形態は、添付の図面を参照して詳細にここで説明される。様々な図の同様の要素は、一貫性のために同様の参照番号で示される。
【0008】
本発明の実施形態の以下の詳細な説明では、本発明のより完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が述べられている。しかしながら、本発明がこれらの具体的な詳細なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。他の例では、説明を不必要に複雑にすることを避けるために、周知の特徴は詳細には説明されていない。
【0009】
一般に、本発明の実施形態は、カーボンナノチューブ(CNT)人工筋肉デバイス、及びCNT人工筋肉デバイスの製造方法に関する。
【0010】
図1は、芯繊維(104)周囲に配置されるCNTヤーン(102)を含むCNT人工筋肉デバイス(以降、CNT筋肉デバイス(100))を示す。
【0011】
図1に示されるCNTヤーン(102)は、芯繊維(104)周囲にラップされる1つ以上のCNTシートを含む。CNTシートのそれぞれは、隣接して配置される複数のCNTの薄いシートである。1つ以上の実施形態において、CNTシートは、0.2mm以上の幅であってもよい。
【0012】
1つ以上の実施形態において、CNTシートは、CNT筋肉デバイス(100)の中央アクセス「C」に対してバイアス角「θ」を生成するようにラップされてもよい。例えば、0°のバイアス角は、Cに平行に配向されるCNTシートに対応し、90°のバイアス角は、Cに垂直に配向されるCNTシートに対応する。
【0013】
1つ以上の実施形態において、バイアス角は、以下の式(1)にあってもよい:
(1)θ=tanー1(2πrT)。
【0014】
式(1)中、「r」は、CNTシートとCとの間の半径距離であり、「T」は、1メートル当たりのねじり(回転)の数である。
【0015】
1つ以上の実施形態において、芯繊維(104)は、CNT筋肉デバイス(100)の設計または機能性に基づき選択される機械的強度(すなわち、剛性)を有するいずれかの繊維であってもよい。例えば、芯繊維(104)が堅い材料から作製されている場合、CNT筋肉デバイス(100)の機械的強度を増し得るが、CNT筋肉デバイス(100)の可撓性を妨げる場合がある。
【0016】
1つ以上の実施形態において、芯繊維(104)は、さまざまな高分子繊維、金属ワイヤ、炭素繊維、ガラス繊維、バサルトからのものであり得るが、これらに限定され得ない。芯繊維の実施例は、繊維、光ファイバ、天然繊維/糸、別のCNTヤーン、またはそれらのトウ及びプライを含むが、これらに限定されない。CNTヤーンが良好な機械的強度、及び良好な可撓性を有し得るため、CNTヤーン(例えば、本明細書の実施形態に開示されているCNTヤーン)を芯繊維として使用してもよい。
【0017】
1つ以上の実施形態において、芯繊維(104)が金属ワイヤである事例において、芯繊維(104)は、タングステン、銅、または金属編組などの金属ワイヤであり得るが、これらに限定され得ない。金属ワイヤは、機械的強度(すなわち、剛性)をCNT筋肉デバイス(100)に提供し得、高伝導路を提供し得る。この高伝導路を使用して、CNT筋肉デバイス(100)を発動させる、またはアニールしてもよい。
【0018】
1つ以上の実施形態において、芯繊維(104)の直径は、CNT筋肉デバイス(100)の所望の引張強度、及び/または剛性に基づき選択されてもよい。
【0019】
図2は、芯繊維(206)、及びこの芯繊維(206)周囲に配置されるCNTヤーン(202)を含むCNT筋肉デバイス(200)の断面図を示す。CNTヤーン(202)は、芯繊維(206)周囲にラップされる1つ以上のCNTシート(204)、及びCNTシート(204)に浸透するゲスト発動材料(208)を含む。1つ以上の実施形態において、ゲスト発動材料(208)は、CNTシート(204)全体の中に浸透し得る。他の実施形態において、ゲスト発動材料(208)は、CNTシート(204)の一部の中に浸透し得る。
【0020】
簡単にするために、図2は、互いに隣接する別個の層として、CNTシート(204)、及びゲスト発動材料(208)を示す。しかしながら、CNTシート(204)及びゲスト発動材料(208)は、CNTシート(204)間の間隙中に浸透するゲスト発動材料(208)によって非常に多孔性のCNT層を形成するように構築され得るため、別個ではない場合がある。CNT層における、これらの特徴及びいずれかのキャビティは、数ナノメートルから数ミクロン(μm)の範囲の寸法を有してもよい。
【0021】
1つ以上の実施形態において、CNTシート(204)中へのゲスト発動材料(208)のより良好な浸透のために、ラップされたCNTシート(204)が真空下にある間に、ゲスト発動材料(208)をCNTシート(204)に塗布してもよい。ゲスト発動材料(208)を塗布した後に、真空を開放し、ゲスト発動材料(208)をCNTシート(204)中に吸引する。これは、以降、真空アシスト浸透と称される。
【0022】
1つ以上の実施形態において、芯繊維(206)は、コイルばね( すなわち、コイルばね繊維)であってもよい。1つ以上の実施形態において、コイルばね繊維の利点は、CNTシート(204)の内層(すなわち、芯繊維(206)により近い層)中へのゲスト発動材料(208)の吸引をより良好に可能にすることであってもよい。
【0023】
1つ以上の実施形態において、CNT筋肉デバイス(200)に動力を供給する(すなわち、加熱する)と、CNT筋肉デバイス(200)は、発動し、これは、CNT筋肉デバイス(200)がCNT筋肉デバイス(200)に動力を供給することに応答して動く(例えば、回転する、屈曲する、伸長する、または収縮する)ことを意味する。1つ以上の実施形態において、CNT筋肉デバイス(200)の発動は、ゲスト発動材料(208)の体積変化(すなわち、膨張または収縮)によって駆動される。例えば、ゲスト発動材料(208)を加熱すると、ゲスト発動材料(208)は、膨張し得る。このため、CNTシート(204)が可撓性であるが、それらは、伸長することに対して抵抗するため、CNTシート(204)のバイアス角は、回転及び/または引張運動方向をゲスト発動材料(208)の体積変化に提供し、発動を引き起こし得る。
【0024】
1つ以上の実施形態において、CNT筋肉デバイス(200)が5wt%のCNTシート(204)(またはCNT)、及び95wt%のゲスト発動材料(208)を含む場合に、CNT筋肉デバイス(200)が発動するため、CNT筋肉デバイス(200)は、低い引張強度を有する。しかしながら、当業者は、CNTシート(204)及びゲスト発動材料(208)の体積百分率または質量百分率がCNT筋肉デバイス(200)の好ましい設計または機能性に基づき選択されてもよいことを認識するであろう。
【0025】
1つ以上の実施形態において、ゲスト発動材料(208)に動力を供給する有効な方式は、抵抗加熱によりCNTシート(204)を介してゲスト発動材料(208)を加熱することによる方式である。しかしながら、CNT筋肉デバイス(200)は、動力誘導、光吸収、化学反応などのような他の方法によって動力を供給されてもよい。
【0026】
1つ以上の実施形態において、他の伝導性材料(例えば、金属ワイヤ、CNTワイヤ、グラフェン)をCNT筋肉デバイス(200)周囲にラップし、ゲスト発動材料(208)を加熱してもよい。
【0027】
1つ以上の実施形態において、ゲスト発動材料(208)は、ゲスト発動材料(208)の、CNTシート(204)に浸透するその機能、融点、生体適合性、耐薬品性、超高温耐性(すなわち、熱い/冷たい状態における耐久性)、または熱膨張に基づくが、これらに限定されずに選択されてもよい。
【0028】
1つ以上の実施形態において、シリコーンベースのゴムが高温に耐え得て、加熱時にCNTヤーン(202)からスクイーズされ得ないため、シリコーンベースのゴムをゲスト発動材料(208)として使用してもよい。1つ以上の実施形態において、ゲスト発動材料は、シリコーンベースのゴムのSylgard184であってもよい。1つ以上の他の実施形態において、ゲスト発動材料(208)は、パラフィンワックスであってもよい。
【0029】
1つ以上の実施形態において、ゲスト発動材料(208)は、加熱時に均一に膨張し得る。1つ以上の実施形態において、ゲスト発動材料(208)は、半径方向に膨張し得る。ゲスト発動材料(208)の熱膨張係数が増加するにつれて、CNT筋肉デバイス(200)の最大発動量(発動機能)も増加し得る。1つ以上の実施形態において、より柔らかいゲスト発動材料(208)は、より大きな発動を提供し得るが、CNT筋肉デバイス(200)のより低い機械的強度を提供し得る。
【0030】
1つ以上の実施形態において、CNTヤーン(202)は、他の材料をも含んでもよい。例えば、ゲスト発動材料(208)は、エラストマー類(例えば、シリコーン系ゴム、ポリウレタン、スチレン-ブタジエンコポリマー、及び天然ゴム)、フッ素化プラスチック類(例えば、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びフッ素化エチレンプロピレン(FEP))、アラミド類(例えば、ケブラー(登録商標)及びノメックス)、エポキシ類、ポリイミド類、及びパラフィンワックスを含むが、これらに限定されない場合がある。
【0031】
1つ以上の実施形態において、芯繊維(206)は、ゲスト発動材料(208)の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数を有し得る。1つ以上の実施形態において、芯繊維(206)は、著しく膨張しない場合がある。
【0032】
1つ以上の実施形態において、芯繊維(206)の断面積は、CNT筋肉デバイス(200)の全断面積の10%未満であってもよく、CNT筋肉デバイス(200)の全断面積の1%未満であってもよい。
【0033】
図3A及び3Bは、CNTシートが芯繊維周囲にラップされ得る方法を示す。図3A及び図3Bにおいて、3つのCNTシート(302)は、芯繊維(304)上に配置される。CNTシート(302)は、互いから離隔されるため、各CNTシート(302)は、CNT層を形成し得る。芯繊維(304)を回転させ(回転矢印によって示される)、同時に引く(直線矢印によって示される)と、CNTシート(302)を芯繊維(304)周囲にラップし、3つの連続したCNT層を芯繊維(304)の全長に作製する。
【0034】
1つ以上の実施形態において、15-mm幅のCNTシート(302)を、長さが1mである芯繊維(304)周囲に10回ラップしてもよい。
【0035】
1つ以上の実施形態において、各CNTシート(302)は、それ自体の上に複数回ラップされ、CNTシート(302)が分離できなくなる場合があり、ラップを解くことができないCNTシート(302)のスタックを作製する場合がある。
【0036】
1つ以上の実施形態において、CNTシート(302)のそれぞれの中のCNTは、互いとアライメントを取ってもよく、図3A中の「D」によって示されるCNTシート(302)の長さ沿いの一方向内にアライメントを取ってもよい。
【0037】
1つ以上の実施形態において、CNTシート(302)の数は、3つより多くても少なくてもよい。また、1つのCNTシート(302)は、芯繊維(304)周囲に複数回ラップされることができる。例えば、回転する芯繊維(304)をX軸に沿う一方向内の前後に動かすことによって、1つのCNTシート(302)を芯繊維(304)周囲に複数回ラップすることができる。
【0038】
1つ以上の実施形態において、芯繊維(304)に対してCNTシート(302)の角度「θ」は、図1に示され、上記に考察されている、CNTシートのバイアス角「θ」と同一である。
【0039】
1つ以上の実施形態において、CNTシート(302)をラップすると、90°に向かいθにおいて天然のドリフトがあってもよい。1つ以上の実施形態において、より密着したラップのためにCNTシート(302)を引くことによって、θにおけるドリフトを減少させる、または除去することができる。1つ以上の実施形態において、芯繊維(304)の引く速度及び直径は、所望のθに依存する。
【0040】
CNTシート(306)は、ふわふわしていてもよい。そのため、図3Aに示されるように、圧縮ツール(306)を使用して、CNTシート(302)を芯繊維(304)に押し付けてもよい。1つ以上の実施形態において、圧縮ツール(306)は、ブレードまたはテフロン(登録商標)ロッドであってもよい。しかしながら、圧縮ツール(306)は、CNT筋肉デバイスの好ましい製造に基づき、何か他のものであってもよい。
【0041】
図3Bは、CNTシート(302)が芯繊維(304)によってなす角度「θr1、θr2、θr3」のそれぞれを調整してもよいため、CNTシート(302)によって作製されるCNT層が互いに対して異なるバイアス角を有してもよいことを示す。例えば、図3Bにおいて、θr3は、外側CNT層のバイアス角であり、外側CNT層の下のCNT層のバイアス角であるθr1及びθr2よりも90°に近い。この実施例に従い、1つ以上の実施形態において、図3A及び3Bに示されるこの方法の利点は、CNT層のバイアス角を半径の関数として正確に制御してもよいことである。
【0042】
1つ以上の実施形態において、CNT層のそれぞれのバイアス角は、芯繊維(304)の長さにわたり変化してもよい。例えば、θは、芯繊維(304)がX軸沿いに動いている間に変化してもよい。
【0043】
1つ以上の実施形態において、図3A及び3Bに示されるこの方法の利点は、CNTシート(302)を
いずれかの所望の角度にラップしてもよいことである。例えば、CNT筋肉デバイスをコイル状にすることなく、CNTシートに対して80°より大きいバイアス角を提供するように、CNTシート(302)をラップしてもよい。しかしながら、芯繊維(304)なしでCNTシート(302)をラップすることにより、CNT筋肉デバイスがもはや線形ではなく、らせんパターンにねじられるように、CNT筋肉デバイスをコイル状にしてもよい。また、このコイル効果は、当該技術において、ひねり数として知られている。芯繊維(304)なしでCNTシート(302)をラップするためのコイル効果は、より低いバイアス角で発生する可能性がより高い場合がある。
【0044】
他の実施形態において、バイアス角は、芯繊維(304)から半径距離の関数として増加する、または減少してもよい。したがって、1つのCNT層から別のCNT層へのバイアス角がより滑らかに変化することができるように、CNT層の数を増加させることが有利であり得る。
【0045】
1つ以上の実施形態において、1つのCNTシート(302)をラップしながら、芯繊維(304)の引く速度、芯繊維(306)の長さにわたる芯繊維(306)の直径、及びθ定数を保つことによって、芯繊維(306)の長さにわたるCNTシート(302)のバイアス角は、一定であってもよい。代替に、他の実施形態において、これらのパラメータのいずれかを変更することにより、芯繊維(306)の長さにわたりCNTシート(302)のバイアス角を変えてもよい。
【0046】
1つ以上の他の実施形態において、CNTシート(302)は、交互のCNT層が交互のバイアス角を有し得るようにラップされてもよい。
例えば、バイアス角は、+45°と-45°との間で交互にしてもよい。
【0047】
1つ以上の実施形態において、図4A及び4Bに従い、CNT筋肉デバイスは、異なる発動特性を有する複数のCNTヤーンを含んでもよい。例えば、CNT筋肉デバイス(400)は、芯繊維(404)周囲に配置される第一CNTヤーン(402)、及び第一CNTヤーン(402)周囲に配置される第二CNTヤーン(406)を含む。
【0048】
1つ以上の実施形態において、第一及び第二CNTヤーン(402、406)は、第一及び第二CNTヤーン(402、406)の発動力を決定してもよい、異なる種類または量のゲスト発動材料、異なる量のCNTシート、異なる厚さ、異なるバイアス角などを有してもよい。例えば、図4Bに示されるように、第一CNTヤーンのバイアス角「θ」、及び第二CNTヤーンのバイアス角「θ」は、異なってもよい( 例えば、θはθより小さくてもよい)。
【0049】
1つ以上の他の実施形態において、θは、10°であってもよく、θは、70°であってもよい。1つ以上の実施形態において、θは、30°であってもよく、θは、60°であってもよい。1つ以上の実施形態において、θは、60°であってもよく、θは、30°であってもよい。
【0050】
1つ以上の実施形態において、θに対してより小さいθは、第二CNTヤーン(406)に対して第一CNTヤーン(402)についてより大きな発動力を提供してもよい。しかしながら、第一及び第二CNTヤーン(402、406)の相対的な発動力を決定する、第一及び第二CNTヤーン(402、406)のCNTシートの、ゲスト発動材料の量及び種類、厚さ、または量などの他の因子がある場合がある。例えば、1つ以上の実施形態において、第一及び第二CNTヤーン(402、406)の1つは、ゲスト発動材料なしで組み込まれてもよい。ゲスト発動材料を含まないCNTヤーンは、発動力を与えない場合があるが、それは、CNT筋肉デバイス(400)について機械的強度を与え得る。
【0051】
1つ以上の実施形態において、約54.73°のバイアス角でCNTシートをラップすることが有利であり得る。この角度は、2011年に発表された、Science 334.6055、494-497ページにJavad Foroughiらによる「Torsional carbon nanotube artificial muscles」において説明されている単一らせんモデルを用いて決定される。単一らせんは、均一ならせんの形態で均一にねじられる材料である。単一らせんモデルは、
単一らせん(または一層)についてのみ作用し、発動機構の良好な第一近似として機能する基本的なモデルである。
【0052】
1つ以上の実施形態において、CNTヤーンがCNTヤーンの長さにわたり小さい張力下でわずかな長さの増加を可能にし、回転を可能にする場合に、そしてバイアス角が約54.73°を下回る場合に、ゲスト発動材料の膨張時に、CNTヤーンは、ねじれを戻す傾向にある。しかしながら、バイアス角が約54.73°を上回るときに、CNTヤーンのねじれは、増加する。1つ以上の実施形態において、前者の場合(バイアス角は約54.73°を下回る)は、後者の場合(バイアス角は約54.73°を上回る)より高い発動を与える場合があり、特に、さまざまなバイアス角を有するCNTヤーンの多層からなるCNT筋肉デバイスにおいて、より高い発動を与え得る。
【0053】
図5は、ゲスト発動材料の体積が5%増加するときの単一らせんモデルの実施例を示す。小さな張力下で、CNTヤーンの長さ「L」(例えば、図1、2、及び4A~4Bにおいて、X軸沿いのCNTヤーン(100、200、400)の長さ)は、最初の長さ「L」から増加してもよいため、グラフの横軸上の長さの変化「L/L」は、1より大きい。バイアス角が約54.73°未満である50°(短い破線)である場合、相対的なねじれ(n/n)は、54.73°のバイアス角の場合(実線)に対して減少する。バイアス角が54.73°より大きい60°(長い破線)である場合に、相対的なねじれ(n/n)は、54.73°のバイアス角の場合(実線)に対して増加する。ここで、nは、ゲスト発動材料の膨張後(すなわち、発動時)のCNTヤーンのねじれであり、nは、CNTヤーンが製造されたときのねじれであり得る、膨張前のCNTヤーンの最初のねじれである。
【0054】
1つ以上の実施形態において、バイアス角が
54.73°より大きくないままで、芯繊維周囲に1つ以上のCNT層をラップすることが有利である場合がある。他の実施形態において、バイアス角は、芯繊維から半径距離の関数として単調に増加する、または減少してもよい。バイアス角は、54.73°の最大バイアス角に増加する、または減少してもよい。
【0055】
1つ以上の実施形態において、芯繊維が発動力を生成するために必要とされない場合があるため、芯繊維は、ねじれがなくてもよい。
【0056】
1つ以上の実施形態において、CNTヤーンのバイアス角を調整し、CNT筋肉デバイスの発動及び強度の所望の組み合わせを提供してもよい。1つ以上の実施形態において、最適なバイアス角(すなわち、最大発動に対応するバイアス角(例えば、54.73°))を上回り、バイアス角が大きくなるに連れ、CNTヤーンの発動力が弱くなる結果をもたらす。
1つ以上の実施形態において、最適なバイアス角は、54.73°でなくてもよい。
【0057】
1つ以上の実施形態では、CNTシートにおいて、CNTは、CNTシートの長さにわたりアライメントを取ってもよい。これらの実施形態において、CNTがそれらの長さ沿いに最強なので、これらのCNTシートも、それらのバイアス角沿いに強い。したがって、CNT筋肉デバイスの長さ沿い(例えば、図1、2、及び4A~4B中のX軸沿い)の方向におけるCNT筋肉デバイスの相対的な機械的強度(すなわち、長手方向の強度)、及びCNT筋肉デバイスの長さに垂直な方向におけるCNT筋肉デバイスの相対的な機械的強度(すなわち、半径方向の強度)は、CNTヤーンのバイアス角に依存する。例えば、90°に近いバイアス角ほど、高い半径方向の強度、及び低い長手方向の強度を提供し、また0°に近いバイアス角ほど、その逆も提供する。
【0058】
1つ以上の実施形態において、人工筋肉デバイスの強度は、CNTヤーンのバイアス角だけではなく、芯繊維の強度及び直径、CNTシートまたはゲスト発動材料に行われるいずれかの処置、ゲスト発動材料を除く追加のゲスト材料などにも依存してもよい。
【0059】
1つ以上の実施形態において、CNTヤーンを補強し、破裂に対するCNT筋肉デバイスの機械的強度を増してもよい。
しかしながら、CNTヤーンを補強することにより、CNT筋肉デバイスの発動を低下させる可能性がある。
【0060】
図6及び7は、芯繊維(604、704)周囲に配置されるCNTヤーン(602、702)を含むCNT筋肉デバイス(600、700)の断面図(図6~7の上面)、及び側面図(図6~7の底面)を示す。CNTヤーン(602、702)を補強するため、補強ヤーン(606、706)は、CNTヤーン(602、702)周囲に巻かれる。1つ以上の実施形態において、補強ヤーン(606、706)は、高いねじり強度、及び良好な可撓性を有するCNTワイヤ(すなわち、編組CNT)であってもよい。
【0061】
図6に示されるように、補強ヤーン(606)は、補強ヤーン(606)がバイアス角にアライメントを取るようにCNTヤーン(602)周囲に巻かれてもよい。1つ以上の実施形態において、補強ヤーンは、補強ヤーンの正味のバイアス角が90°である(すなわち、バイアス角がない)ように巻かれてもよい。例えば、図7に示されるように、バイアス角を交互にしながら補強ヤーン(706)を編組し、バイアス角がない状態を生じさせてもよい。1つ以上の実施形態において、補強ヤーンをランダム配向によって編組することができ、バイアス角がない状態を生じさせてもよい。
【0062】
図6及び7は、補強ヤーン(606、706)をCNTヤーン(602、702)の外面上に配置することを示す。しかしながら、1つ以上の実施形態において、補強ヤーン(606、706)は、CNTヤーン(602、702)の内側に部分的に、または完全に埋め込まれてもよい。例えば、いくつかのCNTシートを巻いてもよく、次いで、いくつかの補強ヤーン(606、706)をCNTシート上に巻いてもよく、その後、もう少しCNTシートを巻き、CNTヤーン(602、702)中に補強ヤーン(606、706)を部分的に、または完全に埋め込んでもよい。
【0063】
1つ以上の実施形態において、補強ヤーン(606、706)は、金属ワイヤまたはばねを含んでもよいが、これらに限定されない。補強ヤーン(606、706)を埋め込む利点は、補強
ヤーン(606、706)をエッチングし得る腐食剤から補強ヤーン(606、706)を保護することであり得る。
【0064】
1つ以上の実施形態において、補強ヤーン(606、706)は、本明細書に開示される1つ以上の実施形態では、CNTシートをラップすることと同様に巻かれてもよい。例えば、補強ヤーン(606、706)は、図3A~3Bを参照して開示される方法によって巻かれてもよい。
【0065】
1つ以上の実施形態において、上記の実施形態ではCNT筋肉デバイスを作製した後に、芯繊維を除去してもよい。中空であるCNT筋肉デバイスは、中空CNTチューブと称される。
【0066】
CNTは、それらが接触する多くの材料に接着してもよい。しかしながら、1つ以上の実施形態において、芯繊維がCNTヤーンに固着しないように、低い表面エネルギーを有する芯繊維を選択してもよく、この芯繊維を容易にCNTヤーンから除去してもよい。例えば、1つ以上の実施形態において、芯繊維は、低い表面エネルギーのシリコーンの変形であってもよいし、シリコーンによって被覆されてもよい。1つ以上の実施形態において、芯繊維は、テフロン(登録商標)である、またはテフロン(登録商標)被覆を有する。
【0067】
1つ以上の実施形態において、芯繊維は、CNTを破損させる温度より低い融点(例えば、空中で摂氏約480度)、またはゲスト発動材料の融点(例えば、シリコーンについて摂氏約200度)を有する材料からのものであってもよい。これらの実施形態において、芯繊維は、融解して、排出されることによって、除去されてもよい。1つ以上の実施形態において、融解した芯繊維を排出することを補助するために、CNTヤーンの長さにわたる圧力差を適用してもよい。
【0068】
1つ以上の実施形態において、真空中に、または不活性ガス(例えば、アルゴン)中に熱を加えることによって、CNT破損温度は、摂氏2000度を上回るまで上昇させてもよい。
【0069】
1つ以上の実施形態において、芯繊維は、はんだなどの低い融点の金属からのものであってもよい。1つ以上の実施形態において、はんだ芯繊維の直径は、わずか50μmであってもよい。
【0070】
1つ以上の実施形態において、CNTが伝導性であるため、CNTシートは、抵抗ヒーターとして機能してもよく、抵抗熱を使用して芯繊維を融解してもよい。
【0071】
1つ以上の実施形態において、芯繊維をエッチング除去することによって除去する。例えば、芯繊維は、強酸または他の腐食剤を用いてエッチング除去されてもよい。CNTは、ほとんどの腐食剤に耐性であり、エッチングに耐える。例えば、芯繊維は、銅からのものであってもよく、塩化第二鉄(FeCl)などの強酸によってエッチング除去されてもよい。
【0072】
1つ以上の実施形態において、銅芯繊維の直径は、5μm以下であってもよい。
【0073】
1つ以上の実施形態において、芯繊維は、弾性(例えば、コイルばね、ゴム)であってもよく、芯繊維の直径が減少し、芯繊維がCNTヤーンから分離するように伸長してもよい。これらの実施形態において、芯繊維を伸長させた後に、芯繊維をCNTヤーンから引き出してもよい。1つ以上の実施形態において、芯繊維は、CNTシートをコイルのピッチ間で懸架することができるように、互いに十分に近いコイルを含むコイルばねである。
【0074】
1つ以上の実施形態において、芯繊維がコイルばねであるときに、コイル状の繊維がCNTヤーンの内部に残っている場合、CNT筋肉デバイスは、中空CNTチューブとみなされてもよい。1つ以上の実施形態において、コイルばねの利点は、CNT筋肉デバイスの良好な可撓性を提供することである。
【0075】
図8A及び8Bに示されるように、中空CNTチューブ(800)の内面または外面を被覆材料(802)によって被覆してもよい。
【0076】
例えば、1つ以上の実施形態において、被覆材料(802)を芯繊維上に被覆させてもよく、次いでCNTヤーン(804)を被覆された芯繊維周囲にラップしてもよい。図8Aに示されるように、芯繊維を除去した後に、被覆材料(802)がCNTヤーン(804)の内面上に被覆したままであるように、被覆材料(802)は、CNTヤーン(804)に接着しなければならない。
【0077】
1つ以上の実施形態に従い別の実施例では、図8Bに示されるように、被覆材料(802)は、芯繊維が除去されながら、または芯繊維が除去されずに、CNTヤーン(804)の外面を被覆してもよい。
【0078】
1つ以上の実施形態において、CNTヤーン(804)の外面上の被覆材料は、ゲスト発動材料であってもよい。
【0079】
1つ以上の実施形態において、被覆材料(802)は、硬化してもよい(例えば、アニールされることによって)。1つ以上の実施形態において、被覆材料(802)は、被覆材料(802)の融点を下回る温度でアニールされてもよい。
【0080】
1つ以上の実施形態において、CNTシートは、それらが同時に他の材料を含むようにラップされてもよい。例えば、図8Cに示されるように、CNTヤーン(804)が1つ以上のグラフェン層(806)を含むように、CNTシートをラップしてもよい。グラフェン層(806)は、グラフェンシート、グラフェンフレーク、グラフェン酸化物シート、グラフェン酸化物フレーク、またはグラフェンナノプレートレットであってもよいが、これらに限定されない。
【0081】
1つ以上の実施形態において、CNTヤーン(804)は、ゲスト発動材料の代替にグラフェン層(806)を含み、流体が中空CNTチューブ(800)の内側に中空CNTチューブの壁部から漏れるのを防ぎ得る。
【0082】
1つ以上の実施形態において、中空CNTチューブのCNTシート中にゲスト発動材料をより良好に浸透させるために、
中空CNTチューブ内側の圧力は、中空CNTチューブ外側の圧力より低い値であるように調整され得るため、ゲスト発動材料は、中空CNTチューブの外側部分から内側部分中に吸引されてもよい。例えば、中空CNTチューブの内側中空部分(すなわち、芯繊維から抜かれる部分)に真空を適用してもよい。
【0083】
1つ以上の実施形態において、中空CNTチューブの利点は、それが高い機械的強度(例えば、ねじり強度)を有し得るが、中空CNTチューブが非常に小さい内径を有するように設計されてもよいことである。
例えば、1つ以上の実施形態において、中空CNTチューブの内径は、5μm未満であってもよい。
【0084】
1つ以上の実施形態において、CNTヤーンが中空CNTチューブの発動をもたらす正味バイアス角を有するように、CNTシートは、ラップされてもよい。代替に、1つ以上の実施形態において、CNTヤーンは、バイアス角を有していない場合があるので、中空CNTチューブは、発動しない。例えば、濾過方法、ソック法、またはエレクトロスピニング法によって生成される、ランダムに配向されたCNTシートは、1つ以上の実施形態に従いラップされてもよい。1つ以上の実施形態において、バイアス角を有さない中空CNTチューブをパイプとして用いてもよい。
【0085】
1つ以上の実施形態において、中空CNTチューブは、ねじれを防止するために補強されてもよい。例えば、上記に開示されているCNTワイヤは、1つ以上の実施形態に従い、編組または他のパターンで中空CNT発動デバイス周囲に配置されてもよい。
【0086】
図9は、CNT筋肉デバイスの製造方法を描くフローチャートを示す。1つ以上の実施形態において、図9に示されるステップのうちの1つ以上は、図9に示される順序と異なる順序において、省略される、繰り返される、及び/または実行され得る。その結果、本発明の範囲は、図9に示されるステップの特定の配置に限定されない。
【0087】
ステップ905において、1つ以上のCNTシート(すなわち、第一CNTシート)を芯繊維周囲にラップする。例えば、図2及び3A~3Bに示されるように、CNTシート(204、302)を芯繊維(206、304)周囲にラップする。別の実施例において、図1に示されるθ、及び図4Bに示されるθ及びθなどのバイアス角を生成するようにCNTシートをラップしてもよい。
【0088】
ステップ910において、第一CNTシートに第一ゲスト発動材料を浸透させ、第一CNTヤーンを作製してもよい。例えば、上記の1つ以上の実施形態に従い、CNTシートに浸透させるための方法によって、第一CNTシートに浸透させてもよい。
【0089】
ステップ915において、第一CNTヤーンをアニールしてもよい。例えば、1つ以上の実施形態において、CNTヤーンをアニールするための上記の1つ以上の実施形態に従い、第一CNTヤーンをアニールしてもよい。
【0090】
ステップ920において、さらなるCNTシート(すなわち、第二CNTシート)を第一CNTヤーン周囲にラップしてもよい。例えば、図4A~4Bに示されるように、第二CNTヤーン(406)を第一CNTヤーン(402)周囲に配置する。1つ以上の実施形態において、CNTシートをラップするための上記の1つ以上の実施形態における方法に従い、第二CNTシートをラップしてもよい。
【0091】
ステップ925において、第二ゲスト発動材料を第二CNTシート中に浸透させ、第二CNTヤーンを作製してもよい。例えば、図4A~4Bに示されるように、第一CNTヤーン(402)周囲に配置される第二CNTヤーン(406)にゲスト発動材料を浸透させる。1つ以上の実施形態において、ゲスト発動材料を浸透させるための上記の1つ以上の実施形態における方法に従い、第二ゲスト発動材料を浸透させてもよい。
【0092】
1つ以上の実施形態において、第一及び第二ゲスト発動材料は、同じ材料からのものであってもよい。代替に、他の実施形態において、第一及び第二ゲスト発動材料は、異なる材料からのものであってもよい。
【0093】
ステップ930において、第二CNTヤーンをアニールしてもよい。例えば、CNTヤーンをアニールするための上記の1つ以上の実施形態に従い、第二CNTヤーンをアニールしてもよい。1つ以上の実施形態において、第一及び第二CNTヤーンを合わせてアニールしてもよい。代替に、他の実施形態において、第一及び第二CNTヤーンを別々に(例えば、異なる温度、アニーリング時間、アニーリング環境)アニールしてもよい。
【0094】
ステップ935において、芯繊維を第一CNTヤーンから除去してもよい。例えば、芯繊維は、上記に開示される1つ以上の実施形態に従いCNTヤーンから除去されてもよい。
【0095】
本開示を限定された数の実施形態に関してのみ説明したが、本開示の利益を有する当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく他の様々な実施形態が考案され得ることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ(CNT)筋肉デバイスであって、
第一中空CNTチューブであって、
第一中空CNTチューブ中心軸を有する前記第一中空CNTチューブを形成するようにラップされた第一セットの1つ以上のCNTシートと、
前記第一セットの1つ以上のCNTシートに浸透する第一熱膨張係数を有する第一熱的応答性ゲスト発動材料と、
を備える第一中空CNTチューブを備え、
前記第一セットの1つ以上のCNTシートにおけるCNTが、前記第一中空CNTチューブ中心軸に対して第一バイアス角にアライメントを取り、前記第一バイアス角は10°から80°の範囲であり、
熱に応答して、前記第一熱的応答性ゲスト発動材料の体積が膨張して前記CNT筋肉デバイスの第一回転及び/または引張運動を引き起こす、CNT筋肉デバイス。
【請求項2】
第二熱膨張係数を有する芯繊維をさらに備え、前記第一セットの1つ以上のCNTシートは、前記芯繊維周囲にラップされる、請求項1に記載のCNT筋肉デバイス。
【請求項3】
前記第二熱膨張係数が、前記第一熱膨張係数よりも小さい、請求項2に記載のCNT筋肉デバイス。
【請求項4】
第二中空CNTチューブであって、
前記第一中空CNTチューブ周囲にラップされて前記第二中空CNTチューブを形成する第二セットの1つ以上のCNTシートと、
前記第二セットの1つ以上のCNTシートに浸透する第三熱膨張係数を有する第二熱的応答性ゲスト発動材料と、
を備える、第二中空CNTチューブをさらに備え、
前記第二セットの1つ以上のCNTシートにおけるCNTが、前記第一中空CNTチューブ中心軸に対して第二バイアス角にアライメントを取り、前記第一バイアス角の程度が、前記第二バイアス角の程度とは異なる、請求項1に記載のCNT筋肉デバイス。
【請求項5】
カーボンナノチューブ(CNT)筋肉デバイスを製造する方法であって、
芯繊維周囲に第一セットの1つ以上のCNTシートをラップするステップと、
第一熱膨張係数を有する第一熱的応答性ゲスト発動材料を前記第一セットの1つ以上のCNTシートに浸透させて、中心軸を有する第一中空CNTチューブを作製するステップと、
を備え、
前記第一セットの1つ以上のCNTシートにおけるCNTが、前記第一中空CNTチューブの前記中心軸に対して第一バイアス角にアライメントを取り、前記第一バイアス角は10°から80°の範囲であり、
熱に応答して、前記第一熱的応答性ゲスト発動材料の体積が膨張し、前記膨張が前記CNT筋肉デバイスの回転及び/または引張運動を引き起こす、方法。
【請求項6】
前記第一中空CNTチューブ周囲に第二セットの1つ以上のCNTシートをラップするステップと、
第三熱膨張係数を有する第二熱的応答性ゲスト発動材料を前記第二セットの1つ以上のCNTシートに浸透させて、第二中空CNTチューブを形成するステップと、
をさらに備え、
前記第二セットの中空CNTチューブにおけるCNTが、前記第一中空CNTチューブの前記中心軸に対して第二バイアス角にアライメントを取り、前記第一バイアス角の程度が、前記第二バイアス角の程度とは異なる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第一中空CNTチューブをアニールするステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記芯繊維を前記第一中空CNTチューブから除去するステップをさらに備える、請求項5に記載の前記方法。
【請求項9】
前記芯繊維は、前記芯繊維を前記第一中空CNTチューブから引き出すことによって除去される、請求項8に記載の前記方法。
【請求項10】
前記芯繊維は、前記第一セットの1つ以上の第一CNTシート、及び前記第一熱的応答性ゲスト発動材料より低い融点を有し、
前記芯繊維は、前記芯繊維の前記融点を上回る温度、ならびに前記第一セットの1つ以上の第一CNTシート、及び前記第一熱的応答性ゲスト発動材料の前記融点を下回る温度に、前記芯繊維を加熱するステップを通じて前記第一中空CNTチューブから融解除去されることによって除去される、請求項8に記載の前記方法。
【請求項11】
前記第一中空CNTチューブの長さにわたり異なる圧力を加えて、融解した芯繊維を除去するステップをさらに備える、請求項10に記載の前記方法。
【請求項12】
前記芯繊維は、化学的にエッチング除去されることによって除去される、請求項8に記載の前記方法。
【請求項13】
前記芯繊維は、前記芯繊維の長さ沿いに弾性であり、前記芯繊維は、前記芯繊維の前記長さ沿いに伸長し、前記芯繊維の直径を減少させ、前記芯繊維を前記第一中空CNTチューブの内面から分離させることによって除去される、請求項8に記載の前記方法。
【請求項14】
前記第一セットの1つ以上のCNTシートをラップする前に、第一被覆の層を前記芯繊維上に形成するステップ、をさらに備え、
前記第一被覆は前記第一中空CNTチューブの内面に接着し、前記芯繊維を除去した後に前記第一中空CNTチューブの前記内面上に配置されたままである、請求項8に記載の前記方法。
【請求項15】
第二被覆の層を前記第一中空CNTチューブの外面上に形成するステップ、をさらに備え、
前記第二被覆は前記第一中空CNTチューブに接着し、前記芯繊維を除去した後に前記第一CNTヤーン上に留まる、請求項8に記載の前記方法。
【請求項16】
前記第一熱膨張係数は、前記第三熱膨張係数とは異なる、請求項4に記載のCNT筋肉デバイス。
【請求項17】
前記第一熱膨張係数は、前記第三熱膨張係数とは異なる、請求項6に記載の方法。
【請求項18】
前記第二中空CNTチューブをアニールするステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【外国語明細書】